説明

光軸合わせ方法、光ファイバアレイユニットの製造方法及び光ファイバアレイユニット

【課題】光軸合わせを容易にする。
【解決手段】本発明の光軸合わせ方法は、端面に垂直な方向に対して所定角度で斜めに形成された複数の第1の光ファイバ用V溝であって、光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第1の光ファイバ用V溝に、第1の光ファイバを支持させることによって、第1の光ファイバアレイを構成する。また、端面に垂直な方向に対して所定角度で斜めに形成された複数の第2の光ファイバ用V溝であって、光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第2の光ファイバ用V溝に、第2の光ファイバを支持させることによって、第2の光ファイバアレイを構成する。そして、第1の光ファイバの光軸と第2の光ファイバの光軸とを平面に沿ってずらして、第1の光ファイバアレイの端面と第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸合わせ方法、光ファイバアレイユニットの製造方法及び光ファイバアレイユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光スイッチなどの光デバイスの製造の際に、光ファイバ同士の光軸を合わせること(光軸合わせ)が行われる。例えば、特許文献1では、光部品と光ファイバとを三次元的に相対移動させつつ、光量を測定することによって最適相対位置を求めることによって、光軸合わせが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−83379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバを保持する2つの光ファイバアレイの互いの端面を離した状態で光軸合わせを行うことがある。例えば、光スイッチを構成する場合、一方の光ファイバアレイに対して他方の光ファイバアレイを可動にするため、2つの光ファイバアレイの互いの端面を離した状態で光軸合わせが行われる。また、2つの光ファイバアレイの間にミラーやアイソレータなどの光素子を介在させる場合も、2つの光ファイバアレイの互いの端面を離した状態で光軸合わせが行われる。このような場合、端面同士を物理的に接触させる場合とは異なり、光ファイバアレイの端面の外部は、光ファイバのコアの屈折率とは異なる屈折率の媒質(例えば空気)になることがある。
【0005】
一方、光の入出力が行われる光ファイバアレイの端面において、反射戻り光の影響を軽減する目的で光軸に対して光ファイバアレイの端面を傾斜させることがある。そして、傾斜端面の外部が例えば空気の場合、スネルの法則に従い、端面で光が屈折する。このような光ファイバアレイの互いの端面を離した状態で光軸合わせする際には、屈折した光が空気中を伝搬することを見込む必要があり、端面同士を物理的に接触させる場合とは異なり、光ファイバの光軸をずらして配置する必要がある。
【0006】
本発明は、光軸に対して傾斜した端面を備える2つの光ファイバアレイの端面を互いに離して対向させる際の光軸合わせを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイの端面と、第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイの端面とを互いに離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させるための光軸合わせ方法であって、前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第1の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第1の光ファイバ用V溝に、前記第1の光ファイバを支持させることによって、前記第1の光ファイバアレイを構成し、前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第2の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第2の光ファイバ用V溝に、前記第2の光ファイバを支持させることによって、前記第2の光ファイバアレイを構成し、前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸とを前記平面に沿ってずらして、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させることを特徴とする光軸合わせ方法である。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光軸に対して傾斜した端面を備える2つの光ファイバアレイの端面を互いに離して対向させる際の光軸合わせが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、光スイッチ1の概略構成の説明図である。
【図2】図2A及び図2Bは、第1実施形態の光スイッチ1における光の伝搬経路の説明図である。図2Aは光の伝搬経路を上(Y方向)から見た図であり、図2Bは光の伝搬経路を横(X方向)から見た図である。
【図3】図3Aは、第1実施形態の光ファイバアレイ2の斜視図である。図3Bは、第1実施形態の光ファイバアレイ2の分解斜視図である。
【図4】図4Aは、V溝基板20の斜視図である。図4Bは、2つのV溝基板20のV溝加工時の説明図である。
【図5】図5AはV溝基板20の上面図であり、図5BはV溝基板20の正面図である。
【図6】図6Aは、光ファイバ10の端面付近の説明図である。図6Bは、光ファイバ10の端面から入出射する平行光の説明図である。
【図7】図7は、対向する光ファイバアレイの光軸合わせ方法のフロー図である。
【図8】図8は、図7の各処理の様子の説明図である。
【図9】図9Aは、S105の処理後であってS106の処理前における2本の光ファイバ10の光軸の位置関係の説明図である。図9Bは、S106の処理後であってS107の処理前における2本の光ファイバ10の光軸の位置関係の説明図である。図9Cは、S107の処理の説明図である。
【図10】図10A及び図10Bは、参考例の光ファイバアレイを用いた場合の光の伝搬経路の説明図である。
【図11】図11は、第2実施形態のV溝基板20の説明図である。
【図12】図12は、第2実施形態における対向する光ファイバアレイの光軸合わせ方法のフロー図である。
【図13】図13は、図12の各処理の様子の説明図である。
【図14】図14Aは、S203の処理後の2本の光ファイバ10の光軸の位置関係の説明図である。図14Bは、S206の処理の説明図である。
【図15】図15Aは、第3実施形態の光ファイバアレイ2の構成の説明図である。図15Bは、第3実施形態の光ファイバ10の構成の説明図である。
【図16】図16A及び図16Bは、第4実施形態の光スイッチ1における光の伝搬経路の説明図である。図16Aは光の伝搬経路を上(Y方向)から見た図であり、図16Bは光の伝搬経路を横(X方向)から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイの端面と、第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイの端面とを互いに離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させるための光軸合わせ方法であって、前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第1の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第1の光ファイバ用V溝に、前記第1の光ファイバを支持させることによって、前記第1の光ファイバアレイを構成し、前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第2の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第2の光ファイバ用V溝に、前記第2の光ファイバを支持させることによって、前記第2の光ファイバアレイを構成し、前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸とを前記平面に沿ってずらして、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させることを特徴とする光軸合わせ方法が明らかとなる。
このような光軸合わせ方法によれば、第1の光ファイバの光軸と第2の光ファイバの光軸とをずらす方向が、複数の光ファイバ用V溝が形成された方向に沿っているため、光軸合わせの作業が容易になる。
【0013】
前記第1の光ファイバアレイには、前記複数の第1の光ファイバ用V溝を挟むように2つの第1のピン用V溝が形成されており、前記第2の光ファイバアレイには、前記複数の第2の光ファイバ用V溝を挟むように2つの第2のピン用V溝が形成されており、2つの位置決めピンのそれぞれの一端を前記第1のピン用V溝に固定して他端を前記第2のピン用V溝に固定することによって、前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸が前記平面に沿って配置されるように、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させることが望ましい。これにより、位置決めピンによる位置決め後の光軸合わせ作業が容易になる。
【0014】
前記第1の光ファイバアレイのV溝基板の端面と前記第2の光ファイバアレイのV溝基板の端面とを突き当てた状態で、前記第1の光ファイバ用V溝と前記第2の光ファイバ用V溝とを一緒にV溝加工するとともに、前記第1のピン用V溝と前記第2のピン用V溝とを一緒にV溝加工することが望ましい。これにより、第1の光ファイバの光軸と第2の光ファイバの光軸を平行にすることが容易になる。
【0015】
前記2つの位置決めピンを用いて前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させた後、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面との間を伝搬する光の方向に沿って、前記第1の光ファイバアレイと前記第2の光ファイバアレイの相対的位置を調整することが望ましい。これにより、光信号の伝送効率を高めることができる。
【0016】
前記第1のピン用V溝と前記第2のピン用V溝の位置を合わせた状態で前記第1の光ファイバアレイのV溝基板の端面と前記第2の光ファイバアレイのV溝基板の端面とを突き当てると、前記第1の光ファイバ用V溝と前記第2の光ファイバ用V溝が所定長さずれて形成されており、前記2つの位置決めピンを用いて前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させた後、互いの前記端面の間隔を調整することが望ましい。これにより、位置決めピンによる位置決め後の光軸合わせ作業が容易になる。
【0017】
前記第1の光ファイバアレイは、前記第1の光ファイバアレイの前記端面を構成する第1の平板を有しており、前記第1の光ファイバの前記光軸に垂直な端面と前記第1の平板の内側平面との間に屈折率整合剤が充填されており、前記第2の光ファイバアレイは、前記第2の光ファイバアレイの前記端面を構成する第2の平板を有しており、前記第2の光ファイバの前記光軸に垂直な端面と前記第2の平板の内側平面との間に屈折率整合剤が充填されていることが望ましい。これにより、簡単な構成で反射戻り光の影響を軽減することができる。
【0018】
第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイと、第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイとを備え、前記第1の光ファイバアレイの前記端面と、前記第2の光ファイバアレイの前記端面とを離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させる光ファイバアレイユニットの製造方法であって、前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第1の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第1の光ファイバ用V溝に、前記第1の光ファイバを支持させることによって、前記第1の光ファイバアレイを構成し、前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第2の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第2の光ファイバ用V溝に、前記第2の光ファイバを支持させることによって、前記第2の光ファイバアレイを構成し、前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸とを前記平面に沿ってずらして、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させることを特徴とする光ファイバアレイユニットの製造方法が明らかとなる。
【0019】
第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイと、第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイとを備え、前記第1の光ファイバアレイの前記端面と、前記第2の光ファイバアレイの前記端面とを離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させる光ファイバアレイユニットであって、前記第1の光ファイバアレイは、前記第1の光ファイバを保持するための第1の光ファイバ用V溝を複数備えており、前記第2の光ファイバアレイは、前記第2の光ファイバを保持するための第2の光ファイバ用V溝を複数備えており、複数の前記第1の光ファイバ用V溝及び複数の前記第2の光ファイバ用V溝は、前記光の伝搬経路を含む平面に沿ってずらして配置されていることを特徴とする光ファイバアレイユニットが明らかとなる。
【0020】
===第1実施形態===
<光スイッチ1の全体構成>
図1は、光スイッチ1の概略構成の説明図である。
光スイッチ1は、固定側光ファイバアレイ2Aと、可動側光ファイバアレイ2Bとを有する。固定側光ファイバアレイ2Aはベース3に固定されており、可動側光ファイバアレイ2Bはキャリッジ4に取り付けられている。キャリッジ4は、ガイド5に案内されながら、ボールネジを用いた移動機構6によって移動する。なお、光スイッチ1は、2つの光ファイバアレイから構成された光ファイバアレイユニットの一例である。
【0021】
固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bには、それぞれ光ファイバ10が保持されている。キャリッジ4が移動することによって、光接続される光ファイバ10が切り替わる。
【0022】
以下の説明では、図に示すようにX方向、Y方向及びZ方向を定義する。Z方向は、固定側光ファイバアレイ2Aの端面と可動側光ファイバアレイ2Bの端面が対向する方向であり、これらの端面に垂直な方向である。Y方向は、Z方向と垂直な方向であり、ベース3に固定側光ファイバアレイ2Aが載置される方向であるとともに、キャリッジ4に可動側光ファイバアレイ2Bが載置される方向である。X方向は、Z方向及びY方向に垂直な方向である。
【0023】
なお、固定側光ファイバアレイ2Aや可動側光ファイバアレイ2Bの端面は、XY平面に沿っている(X方向及びY方向に平行である)。また、Y方向は、上下方向に相当する。また、固定側光ファイバアレイ2Aの端面と可動側光ファイバアレイ2Bの端面は、Z方向に互いに離れて対向している。
【0024】
また、以下の説明では、X方向を軸とする回転方向をθx方向、Y方向を軸とする回転方向をθy方向、Z方向を軸とする回転方向をθz方向と呼ぶことがある。
【0025】
<光の伝搬経路>
図2A及び図2Bは、第1実施形態の光スイッチ1における光の伝搬経路の説明図である。図2Aは光の伝搬経路を上(Y方向)から見た図であり、図2Bは光の伝搬経路を横(X方向)から見た図である。図中には、光の伝搬経路の1つが太線で示されている。なお、説明を分かりやすくするため、寸法や角度が誇張されて図示されている。
【0026】
図中の右側の光ファイバ10は可動側光ファイバアレイ2Bに保持されており、図中の左側の光ファイバ10は固定側光ファイバアレイ2Aに保持されている。光ファイバ10は、Z方向に対して8度ほど傾いて、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bに保持されている。以下、光が図中の右から左に向かって伝搬するものとして説明する。但し、図中の左から右に向かって光が伝搬しても良い。
【0027】
図中の右側の光ファイバ10を伝搬した光は、可動側光ファイバアレイ2Bの端面から出射する。可動側光ファイバアレイ2Bの端面は、光軸に垂直な面に対して8度(所定角度)ほど傾いている。この端面の外部は空気であるため、スネルの法則に従い、光が屈折する。この結果、右側の可動側光ファイバアレイ2Bの端面から出射した光は、Z方向(光ファイバアレイ2Bの端面に垂直な方向)に対して11.9度ほど傾くように屈折する。
【0028】
空気中を伝搬した光は、左側の固定側光ファイバアレイ2Aの端面に入射する。左側の固定側光ファイバアレイ2Aの端面も、光ファイバ10の光軸に垂直な面に対して8度ほど傾いており、右側の可動側光ファイバアレイ2Bの端面と平行になっている。この結果、左側の固定側光ファイバアレイ2Aの端面に入射した光は、端面で屈折して、左側の光ファイバ10を伝搬する。
【0029】
上記のように、光の入出力が行われる端面(固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bの端面)が光ファイバ10の光軸に対して傾斜しているため、反射戻り光の影響を軽減することができる。但し、端面が傾斜しているので、2本の光ファイバ10(図中の左右の光ファイバ10)を光接続するためには、図2Aに示すように、屈折した光が空気中を伝搬することを見込んで、光ファイバ10の光軸をずらして配置する必要がある。
【0030】
本実施形態では、光の伝搬経路は、図2Bに示すようにX方向から見たときには真っ直ぐであるが、図2Aに示すようにY方向から見たときには屈折している。このように、本実施形態では、光は、光スイッチ1のキャリッジ4の移動方向(X方向)に沿って屈折しており、上下方向(Y方向)には屈折していない。このため、本実施形態では、2つの光ファイバアレイ(固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2B)の互いの端面を対向させつつ、X方向にずらして配置すればよい。
【0031】
光はXZ平面内(水平面内)を伝搬することになり、光の伝搬経路は、XZ平面に沿っている(光の伝搬経路を含む平面が、X方向及びZ方向と平行である)。2本の光ファイバ10の光軸は同じXZ平面内にあり、2本の光ファイバの光軸を上下方向(Y方向)にずらす必要がない。これにより、対向する2つの光ファイバアレイのいずれとも下面を接着面とすることができ、高さを揃えることができる。
【0032】
また、本実施形態では、2本の光ファイバ10の光軸をずらす方向(X方向)と、光スイッチ1のキャリッジ4の移動方向が、同じ方向になる。このため、光ファイバ10の光軸の光軸合わせ作業の際に、光スイッチ1のキャリッジ4を利用することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、2本の光ファイバ10の光軸が、同じ水平平面内(XZ平面内)に配置されることになるため、左右の光ファイバ10の光軸の光軸合わせ作業の際には、光ファイバ10を水平平面内で相対的に2次元移動させればよい(後述)。つまり、光軸合わせ作業の際に、上下方向に移動可能な位置決めステージを用意する必要はない。
【0034】
<光ファイバアレイ2の構成>
図3Aは、第1実施形態の光ファイバアレイ2の斜視図である。図3Bは、第1実施形態の光ファイバアレイ2の分解斜視図である。上記の固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bの構成は、図3A及び図3Bの光ファイバアレイ2とほぼ同じである(但し、光ファイバ10の数が異なることはある)。
【0035】
光ファイバアレイ2は、光ファイバ10をV溝基板20の光ファイバ用V溝21に載置するとともに、光ファイバ10をV溝基板20と押さえ板31との間に保持したものである。第1実施形態の光ファイバアレイ2では、更に平板32が光ファイバ10の端面に配置されている。
【0036】
以下の説明では、図に示すように前後方向、上下方向、左右方向を定義する。光ファイバアレイ2の端面(平板32の外側平面)の法線方向に沿って「前後方向」を定義し、光ファイバアレイ2から見て端面の側を「前」とし、反対側を「後」とする。また、V溝基板20から見て押さえ板31の側を「上」とし、反対側を「下」として上下方向を定義する。また、前後方向及び上下方向と垂直な方向を「左右方向」と定義し、前から見て右側を「右」とし、反対側を「左」とする。なお、「前後方向」は前述の「Z方向」と平行になり、「上下方向」は前述の「Y方向」と平行になり、「左右方向」は前述の「X方向」と平行になる。
【0037】
図4Aは、V溝基板20の斜視図である。図4Bは、2つのV溝基板20のV溝加工時の説明図である。図5AはV溝基板20の上面図であり、図5BはV溝基板20の正面図である。
【0038】
V溝基板20は、光ファイバ10を配列させるための部材である。V溝基板20は、例えばガラス製である。V溝基板20は、ガラス製に限らず樹脂製でも良いが、光ファイバ10と同等の線膨張係数の材質であることが望ましい。
【0039】
V溝基板20には、複数の光ファイバ用V溝21が形成されている。複数の光ファイバ用V溝21は水平(XZ平面内)に形成されている。つまり、複数の光ファイバ用V溝21は、光の伝搬経路(図2A及び図2B参照)を含むXZ平面に沿うように予め形成されている。光ファイバ10は、V溝基板20の光ファイバ用V溝21によって支持されて、配列させられる。このため、光ファイバ用V溝21に支持される光ファイバ10の光軸も、光の伝搬経路(図2A及び図2B参照)を含むXZ平面に沿うように配置されることになる。ここでは8本の光ファイバ用V溝21がV溝基板20に形成されているが、実際にはもっと多くのV溝(例えば数10本程度)が形成されても良い。
【0040】
光ファイバ用V溝21は、前後方向(前述のZ方向)に平行ではなく、前後方向に対して8度ほど傾いている。つまり、光ファイバ用V溝21は、V溝基板20の前側端面23の法線方向に対して8度ほど傾いている。これにより、光ファイバ用V溝21に支持される光ファイバ10の光軸も、光ファイバアレイ2の前側端面(平板32の外側平面32B)に対して傾斜することになる。
【0041】
光ファイバ用V溝21の左右外側には、2つのピン用V溝22が形成されている。ピン用V溝22は、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのV溝基板20同士を位置決めするためのピンを支持するためのものである。2つのピン用V溝22は、複数の光ファイバ用V溝21を挟むようにV溝基板20に形成されている。
【0042】
ピン用V溝22は、光ファイバ用V溝21と平行に、前後方向に対して8度ほど傾いて形成されている。また、ピン用V溝22も、複数の光ファイバ用V溝21と同様に、光の伝搬経路(図2A及び図2B参照)を含むXZ平面に沿うように予め形成されている。なお、ピン用V溝22を用いてV溝基板20同士を位置決めする方法については、後述する。
【0043】
V溝基板20の前側端面23は、V溝基板20の下面(図2Bの接着剤が塗布される面)に垂直な面になっている。V溝基板20の前側端面23は、平板32を接着するための接着面になる。V溝基板20の前側端面23に平板32が接着されると、平板32が光ファイバ10の光軸に対して斜めに取り付けられることになる。
【0044】
図4Bに示すように、V溝基板20の光ファイバ用V溝21及びピン用V溝22を加工するとき、対向する固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20の前側端面23同士を突き当てた状態で、V溝加工する。これにより、対向する固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20のV溝の角度を同じにすることができる。
【0045】
押さえ板31は、V溝基板20に支持された光ファイバ10を上から押さえるための板状の部材である(図3A及び図3B参照)。光ファイバ10の断面を見たときに、光ファイバ10は、光ファイバ用V溝21と接する2点と、押さえ板31と接する1点の計3点によって、保持されることになる。押さえ板31は、例えばガラス製である。樹脂製でも良いが、光ファイバ10と同等の線膨張係数の材質であることが望ましい。
【0046】
押さえ板31の前側端面31Aは、押さえ板31の下面に垂直な面になっている。また、押さえ板31の前側端面31Aは、V溝基板20の下面(図2Bの接着剤が塗布される面)に垂直な面になる。
【0047】
押さえ板31の前側端面31Aも、平板32を接着するための接着面になる。押さえ板31の前側端面31Aに平板32が接着されると、平板32が光ファイバ10の光軸に対して斜めに取り付けられることになる。
【0048】
押さえ板31は、上から見ると平行四辺形状になっている(図2A参照)。この平行四辺形の斜辺は、前後方向に対して8度ほど傾いている。つまり、この斜辺は、ピン用V溝22と平行である。また、この平行四辺形の2つの斜辺の間隔(左右方向の幅)は、2本のピン用V溝22の間隔よりも狭く設定されている。これにより、押さえ板31は、ピン用V溝22を塞がずに、光ファイバ10を上から押さえることが可能である。また、押さえ板31を平行四辺形状に形成することによって、押さえ板31の側面とピン用V溝22との間隔を確保できるので、押さえ板31の下面に接着剤を塗布して押さえ板31を接着固定する際に、接着剤がピン用V溝22に漏洩することを抑制できる。
【0049】
平板32は、光の入出射面となる内側平面32A及び外側平面32Bを有する光透過性の光学部材である。平板32は、例えばガラス製である。樹脂製でも良いが、V溝基板20や押さえ板31と同等の線膨張係数であることが望ましい。
【0050】
平板32は、光ファイバ10を伝搬する光を透過可能である。平板32の内側平面32Aは光ファイバ10の端面の側を向いており、外側平面32Bは光ファイバアレイ2の外側(他方の光ファイバアレイの側)を向いている。平板32の外側平面32Bは、光ファイバアレイ2の端面を構成することになる。そして、光ファイバ10を伝搬した光は、平板32を介して外側に出射し、逆に、外側から入射した光は平板32を介して光ファイバ10に入射することになる。
【0051】
平板32は、V溝基板20の下面に垂直な前側端面23及び前側端面31Aに接着されるため、平板32の内側平面32A及び外側平面32Bも、V溝基板20の下面に垂直な面になる。
平板32は、光ファイバ10の光軸に対して斜めに配置されている。V溝基板20の光ファイバ用V溝22が前後方向に対して8度ほど傾いているため、V溝基板20の前側端面23や押さえ板31の前側端面31Aに平板32が接着されると、平板32が光ファイバ10の光軸に対して斜めになる。これにより、平板32の外側平面32Bでの反射戻り光の影響を軽減することができる。
【0052】
平板32は、屈折率が均一になるように構成されている。但し、平板32の外側平面32BにARコート処理を施すことによって、屈折率の異なる2種類の薄膜を積層した反射防止膜がコーティングされても良い。ARコート処理を行う成膜装置が1度に処理できる容積には制約があるが、成膜処理の対象物が平板32単体であるため、成膜装置に多数の平板32をセットすることが可能であり、低コストで平板32の外側平面32Bに反射防止膜をコーティングできる。平板32の外側平面32Bに反射防止膜がコーティングされることによって、平板32の端面での反射戻り光の影響を更に軽減できる。なお、平板32の内側平面32Aに、接着用のコート処理を施しても良い。
【0053】
光ファイバ10、V溝基板20、押さえ板31及び平板32は、接着剤によって接着固定されている。また、光ファイバ10の端面と平板32の内側平面32Aとの間にも接着剤が充填されている。
【0054】
接着剤の屈折率は、光ファイバ10や平板32の屈折率(ガラスの屈折率)と同程度に調整されている。言い換えると、接着剤の屈折率は、空気の屈折率よりも、光ファイバ10や平板32の屈折率に近くなるように調整されている。このため、光ファイバ10の端面と平板32の内側平面32Aとの間に屈折率整合剤である接着剤を充填することによって、接着剤を充填しない場合と比べてフレネル反射を押さえることができる。つまり、接着剤は屈折率整合剤を兼ねている。
【0055】
図6Aは、光ファイバ10の端面付近の説明図である。
第1実施形態の光ファイバ10は、シングルモード光ファイバ11の先にGRINレンズ12を設けたレンズドファイバである。シングルモード光ファイバ11とGRINレンズ12は融着接続されている。なお、本文中において、単に「光ファイバ」と記載した場合には、光を伝搬するコアとその周辺を覆うクラッドから構成されたものを意味するが、光を伝搬する他の部材(例えばGRINレンズ)が一体的に融着接続されている場合には、その部材も含めたものを意味する。このため、GRINレンズ12も光ファイバ10の一部である。なお、融着接続以外の方法(例えば接着剤による接着)によって接続された部材は、一体的に融着接続されていないので、「光ファイバ」には含まれない。
【0056】
GRINレンズ12は、中心軸から外周に向かって徐々に屈折率が小さくなっている屈折率分布型レンズである。グレイデッドインデックス光ファイバも中心軸から外周に向かって徐々に屈折率が小さいので、GRINレンズ12としてグレイデッドインデックス光ファイバが用いられている。また、GRINレンズ12がコリメータレンズとして機能するように所定の長さになっている。これにより、シングルモード光ファイバ11からGRINレンズ12に入射する光は、GRINレンズ12内で平行光に変換されて、GRINレンズ12から放射される。逆に、GRINレンズ12に入射する平行光は、GRINレンズ12内で収束して、GRINレンズ12からシングルモード光ファイバ11に入力される。
【0057】
図6Bは、光ファイバ10の端面から入出射する平行光の説明図である。
光は伝播すると回折現象により広がる性質がある。このため、一方の光ファイバ10の端面から平行光を出射すると、出射したときの光のスポット径よりも広がった光が他方の光ファイバ10の端面に入射することになり、光信号を損失してしまう。
そこで、図に示すように、光を僅かに絞った状態で光を出射させる。これにより、出射された光は徐々にスポット径が狭まった後に、徐々にスポット径が広がる。そして、出射したときの光のスポット径に戻る位置に光ファイバ10の端面があれば、光信号の損失を抑制できる。つまり、光の一番細くなるところ(ビームウエスト)が、2本の光ファイバ10の端面の中心位置にあれば、最も効率的である。
このように、光ファイバ10の端面から入出射する光は厳密には平行光ではない。また、GRINレンズ12の長さは、コリメータレンズとして機能する長さよりも若干長い。但し、説明を簡略化するために、光ファイバ10の端面から入出射する光を平行光として説明することがある。
【0058】
図6Aに戻り、光ファイバ10の端面での光の伝搬について説明する。
本実施形態では、光ファイバ10の端面(GRINレンズ12の端面)は、光軸に対して垂直な面になっている。このため、光ファイバ10の端面を斜めに研磨する必要がないため、研磨加工の工数を減らすことができる。(なお、仮にGRINレンズ12の端面を斜め研磨すると、GRINレンズ12の光学特性が変わってしまい、GRINレンズ12がコリメータレンズとしての機能を果たすことができなくなる。)
光ファイバ10の端面を斜めに研磨する代わりに、平板32が光軸に対して斜めに配置されている。そして、光ファイバ10の端面と平板32との間には、屈折率整合剤として機能する接着剤が充填されている。このため、光ファイバ10の端面と接着剤との間や、接着剤と平板32の内側平面32Aとの間では、屈折せずに伝搬する。そして、平板32の外側平面32Bにおいて光が屈折する。
【0059】
以上説明した構成の光ファイバアレイ2によれば、2つの光ファイバアレイ2を対向させて光スイッチ1を製造する際に、光軸合わせの作業が容易になる。以下、光軸合わせ方法について説明する。
【0060】
<対向する光ファイバアレイの光軸合わせ方法>
図7は、対向する光ファイバアレイの光軸合わせ方法のフロー図である。図8は、図7の各処理の様子の説明図である。
【0061】
まず、作業者は、光軸方向ステージ61を準備する(S101)。この光軸方向ステージ61は、光ファイバアレイの光軸合わせに用いられるステージである。光スイッチ1のキャリッジ4や移動機構6がセットされたときのキャリッジ4の移動方向をX方向としたとき、光軸方向ステージ61の移動方向は、Z方向に対して11.9度ほど傾いている。つまり、光軸方向ステージ61は、対向する光ファイバアレイ間の光の伝搬方向(図2A参照)と平行に移動可能なステージとなる。
【0062】
次に、作業者は、光軸方向ステージ61上の治具51に固定側光ファイバアレイ2Aを取り付ける(S102)。これにより、固定側光ファイバアレイ2Aは、光軸方向ステージ61に対して固定される。なお、治具51は、固定側光ファイバアレイ2Aの下面(V溝基板20の下面)を開放した状態で、固定側光ファイバアレイ2Aを保持できる構造になっている。このため、後述するように、治具51に取り付けられた固定側光ファイバアレイ2Aの下面に接着剤を塗布してベース3に接着固定することが可能になっている。
【0063】
次に、作業者は、位置決めピン52を用いて固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bとを位置合わせする(S103)。具体的には、作業者は、位置決めピン52の一端を固定側光ファイバアレイ2Aのピン用V溝22に固定するとともに、位置決めピン52の他端を可動側光ファイバアレイ2Bのピン用V溝22に固定する。なお、位置決めピン52はピン用V溝22に載置しただけでは固定されないので、不図示のピン用治具を用いてピンをピン用V溝22に押し付けることによって、位置決めピン52をピン用V溝22に固定する。2本の位置決めピン52を用いて位置合わせを行うことにより、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BとのY方向、θx方向、θy方向及びθz方向について位置決めが完了する。
【0064】
次に、作業者は、可動側光ファイバアレイ2Bをキャリッジ4に接着固定する(S104)。なお、接着剤を用いるのではなく、ネジなどを用いて固定しても良い。
【0065】
次に、作業者は、2つの位置決めピン52をピン用V溝22から外す(S105)。このとき、固定側光ファイバアレイ2Aは光軸方向ステージ61上の治具51に固定されており、可動側光ファイバアレイ2Bはキャリッジ4に固定されている。また、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BのX方向及びZ方向の位置合わせは未だ行われていない状態である。
【0066】
図9Aは、S105の処理後であってS106の処理前における2本の光ファイバ10の光軸の位置関係の説明図である。この段階では、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BのX方向(及びZ方向)の位置合わせが行われていないため、2本の光ファイバ10の光軸は合っていない。
【0067】
次に、作業者は、キャリッジ4を用いて可動側光ファイバアレイ2BをX方向に移動させることによって、固定側光ファイバアレイ2Aに対する可動側光ファイバアレイ2BのX方向の位置を合わせる(S106)。このとき、作業者は、可動側光ファイバアレイ2Bの光ファイバ10の端面から光を出射させ、キャリッジ4(可動側光ファイバアレイ2B)を移動させつつ、固定側光ファイバアレイ2Aの光ファイバ10に伝搬する光の強度の変化を検出し、光の強度が最も高くなる位置でキャリッジ4の移動を停止させる。
【0068】
図9Bは、S106の処理後であってS107の処理前における2本の光ファイバ10の光軸の位置関係の説明図である。S106において光の強度が最も高くなる位置で2本の光ファイバ10の位置を合わせた結果、この段階でも、2本の光ファイバ10の光軸は合っている。但し、この段階では、図6Bで説明したビームウエスト(光の一番細くなるところ)は、2本の光ファイバ10の端面の中心に位置していないおそれがある。このため、この段階で光ファイバアレイの光軸合わせ作業を終了してしまうと、光信号の伝送効率は未だ低い可能性がある。
【0069】
次に、作業者は、光軸方向ステージ61を用いて固定側光ファイバアレイ2Aを移動させることによって、可動側光ファイバアレイ2Bに対する固定側光ファイバアレイ2Aの位置を合わせる(S107)。このとき、作業者は、可動側光ファイバアレイ2Bの光ファイバ10の端面から光を出射させ、光軸方向ステージ61(固定側光ファイバアレイ2A)を移動させつつ、固定側光ファイバアレイ2Aの光ファイバ10に伝搬する光の強度の変化を検出し、光の強度が最も高くなる位置で光軸方向ステージ61の移動を停止させる。
【0070】
図9Cは、S107の処理の説明図である。S107では、対向する光ファイバアレイ間の光の伝搬方向(図2A参照)と平行に固定側光ファイバアレイ2Aが移動することになる。このため、S106の処理で合わせた光軸をずらさずに、ビームウエストが2本の光ファイバ10の端面の中心に位置するように、可動側光ファイバアレイ2Bに対する固定側光ファイバアレイ2Aの位置を合わせることができる。
【0071】
S106及びS107の処理によって、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BとのX方向及びZ方向についての位置決めが完了する。つまり、この段階で、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bとの6軸方向(X方向、Y方向、Z方向、θx方向、θy方向及びθz方向)の位置合わせが完了する。
【0072】
次に、作業者は、固定側光ファイバアレイ2Aをベースに接着固定する(S108)。治具51は、固定側光ファイバアレイ2Aの下面(V溝基板20の下面)を開放した状態で、固定側光ファイバアレイ2Aを保持できる構造になっている。このため、作業者は、治具51に取り付けられた固定側光ファイバアレイ2Aの下面に接着剤を塗布してベースに接着固定することが可能である。
【0073】
最後に、作業者は、治具51から固定側光ファイバアレイ2Aを外す(S109)。これにより、対向する固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bの光軸合わせ作業が完了する。そして、光軸合わせ後の対向する固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bは、図1に示すように光スイッチ1を構成する。
【0074】
上記の光軸合わせ方法では、Z方向に対して8度ほど斜めに形成された光ファイバ用V溝21であって、光の伝搬経路(図2A参照)を含むXZ平面に沿って形成された複数の光ファイバ用V溝21に光ファイバを支持させることによって構成された固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bが用いられている(図3A及び図3B参照)。光軸合わせの際には、屈折した光が空気中を伝搬することを見込んで光ファイバ10の光軸をずらして配置する必要があるが(図2A参照)、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bがこのような構成であるため、固定側光ファイバアレイ2Aの光ファイバ10の光軸と可動側光ファイバアレイ2Bの光ファイバ10の光軸とをXZ平面に沿ってずらせば良い(図7及び図8のS106及びS107参照)。つまり、上記の光軸合わせ方法では、固定側光ファイバアレイ2Aや可動側光ファイバアレイ2Bの下面(V溝基板20の下面:図2Bの接着剤が塗布される面)に沿って2つの光ファイバアレイを相対移動させるだけで良い。このため、光軸合わせの作業が容易になる。
【0075】
また、上記の光軸合わせ方法では、2本の位置決めピン52を用いて固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bとを位置合わせしている(図7及び図8のS103参照)。これにより、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BとのY方向、θx方向、θy方向及びθz方向について位置決めが完了する。残りのX方向及びZ方向の位置決めについては、光の伝搬経路を含む平面であるXZ平面に沿って固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bを相対移動させるだけなので、光軸合わせ作業が容易である。
【0076】
また、上記の光軸合わせ方法では、図4Bに示すようにV溝加工されたV溝基板20が用いられている。すなわち、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20の前側端面23同士を突き当てた状態で、光ファイバ用V溝21及びピン用V溝22がV溝加工されたV溝基板20が、用いられている。このため、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝の角度を同じにすることができる。これにより、対向する固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bの光軸を平行にすることが容易になり、光軸合わせ作業が容易になる。もし仮に、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20のV溝をそれぞれ別々に形成すると、加工誤差の影響のため光ファイバ10の光軸が平行になりにくくなり、厳しい条件下で光軸合わせ作業が行われることになる。
【0077】
また、上記の光軸合わせ方法では、光軸方向ステージ61を用いて、可動側光ファイバアレイ2Bの端面から固定側光ファイバアレイ2Aの端面までの間を伝搬する光の方向に沿って、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2Bの相対的位置が調整される(図7及び図8のS107、図9C参照)。これにより、S106の処理で合わせた光軸をずらさずに、ビームウエストが2本の光ファイバ10の端面の中心に位置するように、可動側光ファイバアレイ2Bに対する固定側光ファイバアレイ2Aの位置を合わせることができる。また、この調整によって、光信号の伝送効率を高めることができる。
【0078】
<参考例の光ファイバアレイ>
図10A及び図10Bは、参考例の光ファイバアレイを用いた場合の光の伝搬経路の説明図である。図中には、光の伝搬経路が太線で示されている。参考例においても、光が図中の右から左に向かって伝搬するものとして説明する。
【0079】
参考例では、光ファイバ10を支持する光ファイバ用V溝がZ方向に平行に形成されている。代わりに、参考例では、図中の左右の光ファイバアレイの端面は、下面(接着剤が塗布される面)に対して、垂直ではなく、傾斜している。この結果、参考例では、光の伝搬経路は、図10Aに示すようにY方向から見たときには真っ直ぐであるが、図10Bに示すようにX方向から見たときには屈折している。つまり、参考例では、光は、上下方向(Y方向)に屈折している。
【0080】
参考例においても、光ファイバ10の光軸を合わせるためには、対向する2つの光ファイバアレイの端面(傾斜端面)を平行にする必要がある。但し、参考例では、対向する2つの光ファイバアレイが同じ構造(V溝の数を除く)であるため(光ファイバアレイの端面が同じ方向に傾斜しているため)、一方の光ファイバアレイの姿勢に対して、他方の光ファイバアレイの姿勢を上下反転させる必要がある。この結果、参考例では、対向する2つの光ファイバアレイの接着面が異なってしまう。例えば、図中の場合、右側の光ファイバアレイではV溝基板の下面が接着面になるのに対し、左側の光ファイバアレイでは押さえ板の上面が接着面になる。したがって、参考例では、対向する2つの光ファイバアレイの傾斜端面を平行にする作業は手間がかかり、若しくは、対向する2つの光ファイバアレイの傾斜端面を平行にすることが困難になる。(これに対し、第1実施形態では、対向する2つの光ファイバアレイの端面は下面に対して垂直なので、2つの光ファイバアレイを同じ姿勢で対向させるだけで、光ファイバアレイの端面同士を平行にすることができる。)
また、仮に、対向する2つの光ファイバアレイの姿勢を上下反転させずに、互いの傾斜端面を平行に配置させる場合には、一方の光ファイバアレイにおける傾斜端面を下面に対して鈍角に構成し、他方の光ファイバアレイにおける傾斜端面を下面に対して鋭角に構成するなどして、2つの光ファイバアレイを異なる構造にする必要がある。この場合、2つの光ファイバアレイが異なる構造であるため、それぞれの光ファイバアレイの製造誤差などの影響により、互いの傾斜端面を平行に合わせることが製造上困難になる。(これに対し、第1実施形態では、対向する2つの光ファイバアレイがほぼ同じ構成であるため、互いの傾斜端面を平行に合わせ易い。)
また、参考例においても、図中の左右の光ファイバ10を光接続するためには、屈折した光が空気中を伝搬することを見込んで、光ファイバ10の光軸をずらして配置する必要がある。但し、参考例の場合、2本の光ファイバ10の光軸を上下方向(Y方向)にずらす必要がある。しかし、2本の光ファイバ10の光軸を上下方向にずらすためには、対向する2つの光ファイバアレイの高さを変えなければならないため、このような作業を光ファイバアレイの傾斜端面を平行にしながら行うことは手間がかかる。(これに対し、第1実施形態では、対向する2つの光ファイバアレイを、高さを変えることなく、X方向にずらして配置するだけでよい。)
===第2実施形態===
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態のV溝基板20は、第1実施形態と異なる形状になっている。また、第2実施形態の光軸合わせ作業は、第1実施形態と異なっている。
【0081】
<V溝基板>
前述の第1実施形態では、図4Bに示すように、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20の前側端面23同士を突き当てた状態で、光ファイバ用V溝21及びピン用V溝22をV溝加工していた。このため、第1実施形態では、2つのV溝基板20の前側端面23同士を突き当てると、突き当たる位置では、互いの光ファイバ用V溝21の位置が合致するとともに、互いのピン用V溝22の位置も合致していた。
【0082】
図11は、第2実施形態のV溝基板20の説明図である。図に示すように、第2実施形態では、2つのV溝基板20の互いのピン用V溝22の位置を合わせた状態で前側端面23同士を突き当てると、光ファイバ用V溝21の位置が、所定のずれ量g(=70μm)だけ左右方向にずれて形成されている。言い換えると、一方のV溝基板20のピン用V溝22から光ファイバ用V溝21までの長さ(=b)に対して、他方のV溝基板20のピン用V溝22から光ファイバ用V溝21までの左右方向の間隔を所定長さg(=70μm)だけ短く(又は長く)設定している。但し、V溝基板20の2つのピン用V溝22の間隔は、2本の位置決めピン52を用いて位置合わせをするため、同じ間隔(=a)である。
【0083】
このような形状の2つのV溝基板20を位置決めピン52を用いて位置合わせすると、光ファイバ用V溝21に支持された光ファイバ10(図11では不図示)の光軸がX方向(左右方向)に所定のずれ量g(=70μm)だけずれて位置合わせされることになる。
【0084】
なお、光ファイバ10の端面に対するビームウエスト(光の一番細くなるところ、図6B参照)の位置は、設計上の寸法から予め理論的に求めることが可能である。そして、ずれ量gは、光ファイバ10の端面の中心位置と、ビームウエストの中心位置との左右方向(X方向)における間隔の2倍に設定される。
【0085】
第2実施形態のV溝基板20の光ファイバ用V溝21及びピン用V溝22を加工するときにも、対向する固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20の前側端面23同士を突き当てた状態で、V溝加工することが可能である(前述の図4Bを参照)。但し、第2実施形態では、光ファイバ用V溝21及びピン用V溝22の一方のV溝を加工した後に、2つのV溝基板20を左右方向に所定長さgにて相対移動させてから、他方のV溝を加工すると良い。これにより、対向する固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのそれぞれのV溝基板20のV溝の角度を同じにすることができる。
【0086】
<光軸合わせ方法>
図12は、第2実施形態における対向する光ファイバアレイの光軸合わせ方法のフロー図である。図13は、図12の各処理の様子の説明図である。
【0087】
まず、作業者は、Z方向ステージ62を準備する(S201)。光スイッチ1のキャリッジ4や移動機構6がセットされたときのキャリッジ4の移動方向をX方向としたとき、Z方向ステージ62の移動方向は、Z方向と平行である。Z方向ステージ62は、前述の光軸方向ステージ61とは移動方向が異なっており、キャリッジ4の移動方向に対して垂直な方向である。このため、Z方向ステージ62は、前述の光軸方向ステージ61よりも単純な構成である。
【0088】
次に、作業者は、Z方向ステージ62上の治具51に固定側光ファイバアレイ2Aを取り付ける(S202)。これにより、固定側光ファイバアレイ2Aは、光軸方向ステージ61に対して固定される。
【0089】
次に、作業者は、位置決めピン52を用いて固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bとを位置合わせする(S203)。具体的には、作業者は、位置決めピン52の一端を固定側光ファイバアレイ2Aのピン用V溝22に固定するとともに、位置決めピン52の他端を可動側光ファイバアレイ2Bのピン用V溝22に固定する。
【0090】
図14Aは、S203の処理後の2本の光ファイバ10の光軸の位置関係の説明図である。
【0091】
第2実施形態では、2本の位置決めピン52を用いて位置合わせを行うと、光ファイバ10の光軸が所定のずれ量g(=70μm)だけずれて位置合わせされることになる。このため、第2実施形態では、S203において2本の位置決めピン52を用いて位置合わせを行うことにより、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BとのX方向、Y方向、θx方向、θy方向及びθz方向について位置決めが完了する。
【0092】
つまり、第2実施形態では、S203の処理が終わった段階で、固定側光ファイバアレイ2A及び可動側光ファイバアレイ2BのX方向の位置決めが完了している。このため、第2実施形態では、第1実施形態のS106のように、キャリッジ4を用いたX方向の位置合わせは不要になる。
【0093】
次に、作業者は、移動側光ファイバアレイ2Bをキャリッジ4に接着固定し(S204)、2つの位置決めピン52をピン用V溝22から外す(S205)。
【0094】
次に、作業者は、Z方向ステージ62を用いて固定側光ファイバアレイ2AをZ方向に移動させることによって、可動側光ファイバアレイ2Bに対する固定側光ファイバアレイ2Aの位置を合わせる(S206)。このとき、作業者は、可動側光ファイバアレイ2Bの光ファイバ10の端面から光を出射させ、Z方向ステージ62(固定側光ファイバアレイ2A)を移動させつつ、固定側光ファイバアレイ2Aの光ファイバ10に伝搬する光の強度の変化を検出し、光の強度が最も高くなる位置でZ方向ステージ62の移動を停止させる。
【0095】
図14Bは、S206の処理の説明図である。S206では、第1実施形態のS107とは異なり、固定側光ファイバアレイ2Aは、対向する光ファイバアレイ間の光の伝搬方向(図2A参照)とは異なる方向(Z方向)に移動することになる。
既に説明した通り、第2実施形態では、2本の位置決めピン52を用いて位置合わせを行うと、光ファイバ10の光軸が所定のずれ量g(=70μm)だけX方向にずれて位置合わせされている。そして、この所定距離gは、光ファイバ10の端面の中心位置と、ビームウエストの中心位置との左右方向(X方向)における間隔の2倍に設定されている。このため、S206の処理において光の強度が最も高くなる位置で2本の光ファイバ10の位置を合わせると、ビームウエスト(光の一番細くなるところ)は、2本の光ファイバ10の端面の中心に位置することになる。
したがって、S206の処理によって、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2BとのZ方向の位置決めが完了する。つまり、この段階で、固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bとの6軸方向(X方向、Y方向、Z方向、θx方向、θy方向及びθz方向)の位置合わせが完了する。
【0096】
次に、作業者は、固定側光ファイバアレイ2Aをベースに接着固定し(S207)、最後に、治具51から固定側光ファイバアレイ2Aを外す(S208)。これにより、対向する固定側光ファイバアレイ2Aと可動側光ファイバアレイ2Bの光軸合わせ作業が完了する。
【0097】
===第3実施形態===
前述の第1実施形態及び第2実施形態では、光ファイバ10の端面に、光ファイバ10の光軸に対して斜めに平板32を配置していた。これにより、簡単な構成で光ファイバ10の反射戻り光の影響を軽減することができていた。但し、平板32を用いずに、反射戻り光の影響を軽減することも可能である。
【0098】
図15Aは、第3実施形態の光ファイバアレイ2の構成の説明図である。
【0099】
第3実施形態の光ファイバアレイ2も、光ファイバ10をV溝基板20の光ファイバ用V溝21に載置するとともに、光ファイバ10をV溝基板20と押さえ板31との間に保持したものである。但し、第3実施形態の光ファイバアレイ2では、第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、平板32の無い構成になっている。
【0100】
第3実施形態のV溝基板20及び押さえ板31の形状・構成は、前述の第1実施形態や第2実施形態のV溝基板20及び押さえ板31と同様である。このため、ここでは説明を省略する。
【0101】
図15Bは、第3実施形態の光ファイバ10の構成の説明図である。
【0102】
第3実施形態の光ファイバ10は、シングルモード光ファイバ11の先にGRINレンズ12とコアレス光ファイバ13を設けたレンズドファイバである。シングルモード光ファイバ11、GRINレンズ12及びコアレス光ファイバ13は、融着接続されている。第3実施形態の光ファイバ10は、コアレス光ファイバ13がGRINレンズ12の先に設けられている点で、第1実施形態及び第2実施形態の光ファイバ10と異なっている。
【0103】
コアレス光ファイバ13は、GRINレンズ12の先に設けられている。GRINレンズ12からコアレス光ファイバ13に入射した平行光は、コアレス光ファイバ13内を平行光として伝搬し、コアレス光ファイバ13の端面から外部に放射される。逆に、外部からコアレス光ファイバ13に入射した平行光は、コアレス光ファイバ13を伝搬して、GRINレンズ12に入力される。
【0104】
コアレス光ファイバ13の端面は、光軸に対して傾斜している。このように端面を傾斜させることにより、反射戻り光の影響を軽減することができる。なお、コアレス光ファイバ13を設けずにGRINレンズ12の端面を傾斜させてしまうと、GRINレンズ12の光学特性が変わってしまい、GRINレンズ12のコリメータレンズとしての機能が損なわれてしまう。このため、GRINレンズ12の先にコアレス光ファイバ13を融着接続し、コアレス光ファイバ13の端面を光軸に対して傾斜させているのである。
【0105】
第3実施形態では、光ファイバ10の端面(コアレス光ファイバ13の端面)を光軸に対して斜めに研磨する必要がある。このため、研磨加工の工数を必要とする。但し、第3実施形態においても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、対向する光ファイバアレイの光軸合わせ作業が容易になる。
【0106】
===第4実施形態===
図16A及び図16Bは、第4実施形態の光スイッチ1における光の伝搬経路の説明図である。図16Aは光の伝搬経路を上(Y方向)から見た図であり、図16Bは光の伝搬経路を横(X方向)から見た図である。
【0107】
第4実施形態では、図16Aに示すように、上から見ると押さえ板31が長方形状になっている。押さえ板31が長方形状であっても、光ファイバ用V溝21に支持された光ファイバ10を上から押さえることができる。
【0108】
第4実施形態では、押さえ板31が単純な形状になるため、押さえ板31の製作コストを下げることができる。但し、押さえ板31が長方形状の場合、押さえ板31の側面とピン用V溝22との間隔が狭くなる箇所があるため、押さえ板31の下面に接着剤を塗布して押さえ板31を接着固定する際に、接着剤がピン用V溝22に漏洩するおそれがある。
【0109】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、例えば以下のように変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0110】
<光スイッチ1について>
前述の実施形態では、光スイッチ1について説明したが、対向する2つの光ファイバアレイを備えた光ファイバアレイユニットは光スイッチ1に限られるものではない。例えば、光ファイバアレイユニットが、対向する2つの光ファイバアレイを備え、この2つの光ファイバアレイの間に光アイソレータ素子を挿入した光アイソレータであっても良い。若しくは、光ファイバアレイユニットが、対向する2つの光ファイバアレイを備え、この2つの光ファイバアレイの間に光波長フィルタ素子を挿入した光波長フィルタであっても良い。
【0111】
<光ファイバ10について>
前述の第1実施形態及び第2実施形態では、シングルモード光ファイバ11の先にGRINレンズ12が設けられた光ファイバ10が用いられていた。また、前述の第3実施形態では、シングルモード光ファイバ11の先にGRINレンズ12及びコアレス光ファイバ13が設けられた光ファイバ10が用いられていた。但し、光ファイバの構成は、これに限られるものではない。
【0112】
例えば、シングルモード光ファイバの先にGRINレンズやコアレス光ファイバが無くても良い。但し、このような光ファイバの場合、光路にゴミ等があったり、光軸がずれたりすると接続損失が大きくなってしまう。
【0113】
また、シングルモード光ファイバ(SMF)の先ではなく、マルチモード光ファイバ(MMF)、分散シフト光ファイバ(DSF)、分散補償光ファイバ(DCF)、偏波保持光ファイバなどの光ファイバの先にGRINレンズ12等が設けられた光ファイバを用いても良い。また、これらの光ファイバやシングルモード光ファイバ(SMF)が1種類で単独で用いられる場合だけでなく、2種類以上の光ファイバが融着接続などにより組み合わされて用いられても良い。
【0114】
<光ファイバ10の数について>
前述の実施形態では、8本の光ファイバ10が、光ファイバアレイ2に固定されていた。但し、光ファイバアレイ2に固定される光ファイバ10の数は、8本に限られるものではない。
【符号の説明】
【0115】
1 光スイッチ、2 光ファイバアレイ、
2A 固定側光ファイバアレイ、2B 可動側光ファイバアレイ、
3 ベース、4 キャリッジ、5 ガイド、6 移動機構、
10 光ファイバ、11 シングルモード光ファイバ、
12 GRINレンズ、13 コアレス光ファイバ、
20 V溝基板、21 光ファイバ用V溝、
22 ピン用V溝、23 前側端面、
31 押さえ板、31A 前側端面、
32 平板、32A 内側平面、32B 外側平面、
51 治具、52 位置決めピン、
61 光軸方向ステージ、62 Z方向ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイの端面と、
第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイの端面と
を互いに離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させるための光軸合わせ方法であって、
前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第1の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第1の光ファイバ用V溝に、前記第1の光ファイバを支持させることによって、前記第1の光ファイバアレイを構成し、
前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第2の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第2の光ファイバ用V溝に、前記第2の光ファイバを支持させることによって、前記第2の光ファイバアレイを構成し、
前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸とを前記平面に沿ってずらして、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させる
ことを特徴とする光軸合わせ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光軸合わせ方法であって、
前記第1の光ファイバアレイには、前記複数の第1の光ファイバ用V溝を挟むように2つの第1のピン用V溝が形成されており、
前記第2の光ファイバアレイには、前記複数の第2の光ファイバ用V溝を挟むように2つの第2のピン用V溝が形成されており、
2つの位置決めピンのそれぞれの一端を前記第1のピン用V溝に固定して他端を前記第2のピン用V溝に固定することによって、前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸が前記平面に沿って配置されるように、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させる
ことを特徴とする光軸合わせ方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光軸合わせ方法であって、
前記第1の光ファイバアレイのV溝基板の端面と前記第2の光ファイバアレイのV溝基板の端面とを突き当てた状態で、前記第1の光ファイバ用V溝と前記第2の光ファイバ用V溝とを一緒にV溝加工するとともに、前記第1のピン用V溝と前記第2のピン用V溝とを一緒にV溝加工する
ことを特徴とする光軸合わせ方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光軸合わせ方法であって、
前記2つの位置決めピンを用いて前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させた後、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面との間を伝搬する光の方向に沿って、前記第1の光ファイバアレイと前記第2の光ファイバアレイの相対的位置を調整する
ことを特徴とする光軸合わせ方法。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の光軸合わせ方法であって、
前記第1のピン用V溝と前記第2のピン用V溝の位置を合わせた状態で前記第1の光ファイバアレイのV溝基板の端面と前記第2の光ファイバアレイのV溝基板の端面とを突き当てると、前記第1の光ファイバ用V溝と前記第2の光ファイバ用V溝が所定長さずれて形成されており、
前記2つの位置決めピンを用いて前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させた後、互いの前記端面の間隔を調整する
ことを特徴とする光軸合わせ方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光軸合わせ方法であって、
前記第1の光ファイバアレイは、前記第1の光ファイバアレイの前記端面を構成する第1の平板を有しており、
前記第1の光ファイバの前記光軸に垂直な端面と前記第1の平板の内側平面との間に屈折率整合剤が充填されており、
前記第2の光ファイバアレイは、前記第2の光ファイバアレイの前記端面を構成する第2の平板を有しており、
前記第2の光ファイバの前記光軸に垂直な端面と前記第2の平板の内側平面との間に屈折率整合剤が充填されている
ことを特徴とする光軸合わせ方法。
【請求項7】
第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイと、
第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイと
を備え、
前記第1の光ファイバアレイの前記端面と、前記第2の光ファイバアレイの前記端面とを離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させる光ファイバアレイユニットの製造方法であって、
前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第1の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第1の光ファイバ用V溝に、前記第1の光ファイバを支持させることによって、前記第1の光ファイバアレイを構成し、
前記端面に垂直な方向に対して前記所定角度で斜めに形成された複数の第2の光ファイバ用V溝であって、前記光の伝搬経路を含む平面に沿って形成された複数の前記第2の光ファイバ用V溝に、前記第2の光ファイバを支持させることによって、前記第2の光ファイバアレイを構成し、
前記第1の光ファイバの光軸と前記第2の光ファイバの光軸とを前記平面に沿ってずらして、前記第1の光ファイバアレイの端面と前記第2の光ファイバアレイの端面とを対向させて配置させる
ことを特徴とする光ファイバアレイの製造方法。
【請求項8】
第1の光ファイバを保持する第1の光ファイバアレイであって、前記第1の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第1の光ファイバの光軸が所定角度で斜めに保持されている前記第1の光ファイバアレイと、
第2の光ファイバを保持する第2の光ファイバアレイであって、前記第2の光ファイバアレイの端面に垂直な方向に対して前記第2の光ファイバの光軸が前記所定角度で斜めに保持されている前記第2の光ファイバアレイと
を備え、
前記第1の光ファイバアレイの前記端面と、前記第2の光ファイバアレイの前記端面とを離して対向させて、前記第1の光ファイバを伝搬し前記第1の光ファイバアレイの端面から出射した光を、前記第2の光ファイバアレイの端面から入射し前記第2の光ファイバに伝搬させる光ファイバアレイユニットであって、
前記第1の光ファイバアレイは、前記第1の光ファイバを保持するための第1の光ファイバ用V溝を複数備えており、
前記第2の光ファイバアレイは、前記第2の光ファイバを保持するための第2の光ファイバ用V溝を複数備えており、
複数の前記第1の光ファイバ用V溝及び複数の前記第2の光ファイバ用V溝は、前記光の伝搬経路を含む平面に沿ってずらして配置されている
ことを特徴とする光ファイバアレイユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−88767(P2013−88767A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232024(P2011−232024)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】