説明

光輝性化粧材

【課題】塗布、塗工の安定性が良くないことから、製造時のムラ、スジ、抜け(インプレッションロールの傷などの凹凸による)などが生じにくい安定した光沢感、奥行き感を出すことができる光輝性化粧材を提供すること。
【解決手段】材上にグラビア版により印刷した光輝性顔料層を有する化粧材において、前記光輝性顔料の粒径が1〜20μmであり、前記グラビア版の凹部セルの径が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セル同士の間隔が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セルの版深が20〜60μmあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の光輝性化粧材は、ノックダウン式家具RTA(Ready to Assemble furniture)用化粧紙、メラミン化粧板用チタン紙、キッチン用部材、鋼板ラミネート用シート、建築内装材、外装材、アルミニウム基材へのラッピング用シート、木質系基材への積層、ラッピング、真空成形用に使われる化粧材であって、光輝性顔料を用いたものに関する。本発明において化粧材とは化粧紙(紙基材)、化粧シート(熱可塑性樹脂基材)、およびこれらの化粧紙、化粧シートを木質系基材等に積層したもの、化粧紙にメラミン樹脂やジアリルフタレート樹脂を含浸して加熱加圧硬化させた化粧板も含むものとする。また本発明において、光輝性顔料とは、真珠光沢の通称パール顔料、メタリック調顔料を示すものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂基材や薄紙、チタン紙、含浸紙に光輝性を出そうとして光輝性顔料により絵柄模様を印刷することは行われていた。しかしならが、インキ顔料の粒径(通常0.1から1μm程度)に比べて粒径の大きい光輝性顔料での印刷は、塗布、塗工の安定性が良くないことから、ムラ、スジ、抜け(インプレッションロールの傷などの凹凸による)などが生じやすかった。
【0003】
光輝性顔料としての原材料を検討し、塗布、塗工方法を検討するということがなされているが、十分な安定性を得るにはいたっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2961949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、塗布、塗工の安定性が良くないことから、製造時のムラ、スジ、抜け(インプレッションロールの傷などの凹凸による)などが生じにくい安定した光沢感、奥行き感を出すことができる光輝性化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、基材上にグラビア版により印刷した光輝性顔料層を有する化粧材において、前記光輝性顔料の粒径が1〜20μmであり、前記グラビア版の凹部セルの径が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セル同士の間隔が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セルの版深が20〜60μmあることを特徴とする光輝性化粧材である。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、基材上にグラビア版により印刷した光輝性顔料層を有する化粧材において、前記光輝性顔料の粒径が10〜35μmであり、前記グラビア版の凹部セルの径が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セル同士の間隔が80〜125μmであり、グラビア版の凹部セルの版深が40〜60μmあることを特徴とする光輝性化粧材である。
【0008】
また、請求項3記載の発明は前記グラビア版がスクリーンレスで作製した版により印刷したことを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の光輝性化粧材である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2記載の発明により、光輝性顔料の粒径とグラビア版の凹部セル径、グラビア版凹部セルの間隔、グラビア版凹部セルの版深を同時に限定することにより、全面ベタ光輝性顔料層を安定して製造することが可能となり、安定した光沢感、奥行き感を有する化粧材を提供することが可能となった。
【0010】
また請求項3記載の発明により、グラビア版作製時にスクリーンをつかわないことにより、版のセルの形状を意図した再現性の良い形状になる為、光輝性顔料の印刷後のシャープさがある。更に、スジ、ムラが生じなくなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光輝性化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】グラビア版の一実施例の表面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1に本発明の光輝性化粧材の一実施例の断面の構造を示す。基材1上にグラビア版により印刷した光輝性顔料層2を有する。
【0013】
本発明における基材1としては、基本的には従来の一般の化粧材に使用されていたものと同様のものを使用することができる。紙基材として、薄紙、チタン紙、含浸紙を用いてもよい。樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することができる点で好適である。
【0014】
上記の各種の熱可塑性樹脂の中でも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の様な塩素(ハロゲン)を含有する樹脂の採用は望ましいものではなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を採用することが望ましい。中でも各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。これらのうちポリオレフィン系樹脂は、従来ポリ塩化ビニル樹脂を代替する化粧材用材料として採用が進んでいたものの、切削加工性の悪さが目立つことが指摘されて来たが、本発明によって切削加工性の格段の改善が可能となり、本発明の効果が最も顕著に発現する素材である。
【0015】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した様に多くの種類のものが知られており、それらの中から化粧材の使用目的等に応じて適宜選択して使用すれば良いが、中でも一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独または共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独または適宜配合したり、それらにさらにアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用したりすることができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1またはオクテン−1、のコモノマーの1種または2種以上を15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素添加物等の改質剤を適宜添加することもできる。
【0016】
また、基材1には、必要に応じて例えば着色剤、充填剤(シリカ、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等)紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤(ステアリン酸、金属石けん等)、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。なお、基材1は、化粧材を貼り合わせる基板などの表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽するために、隠蔽性の不透明に着色されたものが用いられる場合が多いが、基板の表面の質感を活かすために、透明乃至半透明のものが用いられる場合もある。
【0017】
本発明における光輝性顔料層2はグラビア印刷により設けられる。バインダー樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等またはそれらの混合物等がよく使用されるが、勿論これらに限定されるものではない。印刷による絵柄の種類は、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字または記号、それらの組み合わせ等、所望により任意であり、単色無地であっても良い。また、化粧材の隠蔽性を向上するために、光輝性顔料層2の裏面側に、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキまたは塗料による隠蔽層(図示せず)が併設される場合もある。層厚は、乾燥後の塗布量で1〜3g/mとなるように設ける、特には2g/mが最適である。1g/mより薄いと十分な光輝性が発現されず、3g/mより厚いと抜けなどの不具合が発生し易くなる。
【0018】
本発明に用いる光輝性顔料としては、天然の雲母に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物を被覆したパール顔料が好適に使用可能であり、その他アルミ粉等の金属粉も使用可能である。
【0019】
本発明における光輝性顔料の粒径としては、1〜20μmの銀色のもの、あるいは10〜35μmの金色のものが用いられる。特には銀色のものとしては平均粒径10μm、金色のものとしては平均粒径21μmで粒径にばらつきの少ないものが最適である。35μmより大きいとムラやスジなどの不具合が発生し易くなる。
【0020】
図2に本発明におけるグラビア版の一実施例の表面の構造を示す。グラビア版の凹部セル3に光輝性顔料4が埋め込まれてグラビア印刷される。
本発明に用いるグラビア版としては、図示しないが、鉄芯に銅メッキ層を設け、エッチングにより凹部セルを設けたあと、クロムメッキした通常のグラビア版が使える。
また本発明におけるグラビア版は、スクリーンレスで作製した版を用いることにより、版のセルの形状を意図した再現性の良い形状になる為光輝性顔料の印刷後のシャープさがあり、更に、スジ、ムラが生じなくなるという効果があり、好適であるが、とくにこれに限定するものではない。
【0021】
本発明におけるグラビア版としては、本発明では前記光輝性顔料4の粒径によってグラビア版の凹部セル径5、グラビア版の凹部セル同士の間隔6、グラビア版の凹部セルの版深(図示しない)を範囲をもって限定する。
【0022】
前記光輝性顔料4の粒径が1〜20μmの銀色のものを用いるときは、グラビア版の凹部セル径5は80〜125μm、グラビア版の凹部セル同士の間隔6は80〜125μm、グラビア版の凹部セルの版深(図示しない)は20〜60μmのものを用いる。
【0023】
前記光輝性顔料4の粒径が10〜35μmの金色のものを用いるときは、グラビア版の凹部セル径5は80〜125μm、グラビア版の凹部セル同士の間隔6は80〜125μm、グラビア版の凹部セルの版深(図示しない)は40〜60μmのものを用いる。
【実施例1】
【0024】
光輝性顔料4として平均粒径10μmの銀色のパール顔料を用い、水性アクリル樹脂系のグラビアインキを作製した。次に、版深36μmのグラビア版を表1の条件で作製した。次に、坪量80g/mのチタン紙に印刷し、実施例1〜6の光輝性化粧材を得た。
【実施例2】
【0025】
光輝性顔料4として平均粒径21μmの金色のパール顔料を用い、水性アクリル樹脂系のグラビアインキを作製した。次に、版深50μmのグラビア版を表2の条件で作製した。次に、チタン紙に印刷し、実施例7〜14の光輝性化粧材を得た。
【0026】
<比較例1から2>
グラビア版の凹部セルの径を200μmと80μm、凹部セル同士の間隔を200μmと40μmにした以外は実施例1と同様にして光輝性化粧材を作製した。
【0027】
<比較例3から4>
グラビア版の凹部セルの径を200μmと80μm、凹部セル同士の間隔を200μmと40μmにした以外は実施例2と同様にして光輝性化粧材を作製した。
【0028】
<性能比較>
以上のように作製した実施例1〜14および比較例1〜4について、目視にて○:合格(意匠良好、スジ、ムラ無し)、△:良好合格(意匠やや劣る、スジ、ムラ無し)、×:不合格(意匠不十分、スジ、ムラ有り)にて評価した。結果を表1、表2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、ノックダウン式家具RTA(Ready to Assemble furniture)用化粧紙、メラミン化粧板用チタン紙、キッチン用部材、鋼板ラミネート用シート、建築内装材、外装材、アルミニウム基材へのラッピング用シート、木質系基材への積層、ラッピング、真空成形用に使われる光輝性化粧材を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…基材
2…光輝性顔料層
3…グラビア版の凹部セル
4…光輝性顔料
5…グラビア版の凹部セル径
6…グラビア版凹部セルの間隔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にグラビア版により印刷した光輝性顔料層を有する化粧材において、前記光輝性顔料の粒径が1〜20μmであり、前記グラビア版の凹部セルの径が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セル同士の間隔が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セルの版深が20〜60μmあることを特徴とする光輝性化粧材。
【請求項2】
基材上にグラビア版により印刷した光輝性顔料層を有する化粧材において、前記光輝性顔料の粒径が10〜35μmであり、前記グラビア版の凹部セルの径が80〜125μmであり、前記グラビア版の凹部セル同士の間隔が80〜125μmであり、グラビア版の凹部セルの版深が40〜60μmあることを特徴とする光輝性化粧材。
【請求項3】
前記グラビア版がスクリーンレスで作製した版により印刷したことを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の光輝性化粧材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−194976(P2010−194976A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44936(P2009−44936)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】