説明

光輝性半透明食品およびその製造方法

【課題】観る者に喜びと楽しみを与える光輝性半透明食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】観察面5と、当該観察面の裏側の反射面と、を有する光輝性半透明食品1であって、当該反射面のほぼ全域には、可食性反射層11を形成してあり、当該可食性反射層は、当該観察面から入射した光Hの少なくとも一部を少なくとも1回反射し、当該反射した光の少なくとも一部が当該観察面を介して外部観察可能となるように構成してある。光輝性半透明食品自身の中から輝きを放つことにより、観る者に喜びと楽しみを与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンディー(飴)、ゼリー食品、水羊羹、寒天、氷、アイスキャンディーなどの光輝性半透明食品およびその製造方法に係り、特に、宝石のように光輝性半透明食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ケーキの上に乗っているキャンディーやゼリー食品などが、キラキラと輝いたら、どれだけ素敵であろう。誕生日やクリスマスのときに食べるケーキや、結婚式、銀婚式さらに金婚式などのテーブルに置かれたケーキの上に、宝石のように輝くものが飾られていれば、その装飾性と意外性ゆえに喜びも楽しみも大きく膨らむに違いない。このため、キャンディーやゼリー食品などの光輝性半透明食品の装飾性を高めるための種々の試みがなされ、色々な先行技術が開示されている。たとえば、寒天と水羊羹との間に特定形状の金箔片を挟みこみ、それらを外部から観察できるようにした半透明食品(第1の先行技術、特許文献1)や、人体に無害な貴金属を食用物の表面または内部に設けた半透明食品(第2の先行技術、特許文献2)がある。さらに、文字や図形の形をした食用金属箔を、食用接着剤層を介して食品表面に貼りつけてある半透明食品(第3の先行技術、特許文献3)や、半透明食品を収容した透明容器の外面に反射鏡を形成したもの(第4の先行技術、特許文献4)なども光輝性半透明食品の装飾性を高めるための技術である。また、傾けたグラスの中に浮かぶ氷がキラキラと輝くなら、ゴージャスな雰囲気に包まれた者同士の会話もきっと弾むに違いない。ところが、氷の装飾性を高めようとする試みは、氷の形状に工夫を凝らす以外にこれまで行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−75697号公報(段落0010、図1、2)
【特許文献2】特開昭62−220149号公報(第2頁左欄、第1図)
【特許文献3】特開平6−125719号公報(段落0005〜0008、図2〜5)
【特許文献4】特開2010−159085号公報(段落0052、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1の先行技術に係る食品は、特定形状の金箔片の部分は光るように見えるが、それ以外の部分まで光るものではない。したがって、光る金箔片を外部から見ることはできても、食品自体が輝きを持って見えるものではない。また、第2の先行技術に係る食品は、外面を金箔によって被覆したものであり、食品全体としての輝きは外面を覆う金箔の輝きであって食品自体の輝きではない。このため、派手さは表現できるかもしれないが、食品が輝きを放つという感からほど遠く本発明の目的を達成することができない。さらに、第3の先行技術に係る食品は、文字や図形の形をした金箔を外面に露出させるものであって、これについても、金箔そのものの輝きであって食品の輝きとは異なる。最後に、第4の先行技術に係る食品であるが、その輝きは食品の収納容器に設けられた鏡による輝きであり、食品全体の輝きではないことはもとより、そもそも容器は食べられるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した第1から第4の先行技術は、それなりの装飾効果は認められるものの、食品自体が放つ輝きではない点で華麗さにおいて満たされないところがある。本発明が解決しようとする課題は、半透明食品に光るものを含ませたり、光るもので覆ったりするのではなく食品自身の中から輝きを放つことにより、観る者に喜びと楽しみを与える光輝性半透明食品およびその製造方法を提供することにある。その詳しい内容については、項を改めて説明する。なお、いずれかの請求項に係る発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、発明のカテゴリーの違いや記載順の如何に関わらず、その発明の性質上可能な範囲において他の発明にも適用があるものとする。
【0006】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項1の食品」という)は、観察面と、当該観察面の裏側の反射面と、を有する光輝性半透明食品であって、当該反射面のほぼ全域には、可食性反射層を形成してあり、当該可食性反射層は、当該観察面から入射した光の少なくとも一部を少なくとも1回反射し、当該反射した光の少なくとも一部が当該観察面を介して外部観察可能となるように構成してあることを特徴とする。なお、「半透明」と記載したのは、およそ食品である限り「完全透明」は考えられないので、これを排除する趣旨である。本願では氷も半透明食品とみている。半透明食品の有色無色は問わない。たとえば、赤色や緑色の(もしくは、たとえば、色が混ざった、グラデーションした、模様が入っている)半透明食品もある。可食性反射層(の少なくとも反射面)の色についても、単一もしくは多色、さらに、特定の模様があってよい。透光性に欠ける食品は、光の入射が起こらないため、本発明の対象外である。観察面の形状は、本発明の目的達成に可能な範囲において、平面や曲面などを単独もしくは組み合わせて形成してよい。半透明食品の製造は、後述する製造方法によって行うことができるが、ある程度の大きさのキャンディー、氷、アイスキャンディー等を削り出し、これに可食性反射層を形成ことにより製造することもできる。
【0007】
請求項1の食品によれば、観察面から入射した光の一部または全部が可食性反射層に1回もしくは2回以上反射され、やがて、観察面から出て観察する者の目に届く。透明食品の屈折率や透明度、さらに、観察面や反射面(可食性反射層)の形状や周囲の照明環境等により程度の違いこそ生じる場合があるが、食品の中に何かが見えるというのではなく、食品自体が輝きを放つ(光輝性を有すること、本明細書では「光輝性」という)ことにより、食品に華麗さを添え、その装飾性を格段に高めることができる。このため、たとえば、ケーキの上に、請求項1の食品を載せることにより、ケーキ全体が素敵に華やいだものとなり、観る者(ケーキを食べる者)にとって装飾性と意外性ゆえに喜びも楽しみも大きく膨らますことができる。
【0008】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項2の食品」という)は、請求項1の食品であって、前記観察面は、複数の平面からなる多面体であることを特徴とする。
【0009】
請求項2の食品によれば、請求項1の食品の作用効果に加え、複数の平面を有することから、同じ方向から来る光であっても入射角が異なってくる。このことから、観察面から出る光は色々な角度に進むことになる。これが、食品の輝きを増し、一層の華やかさを醸し出す。多面体に構成することにより、外観の意匠的効果の向上にも資する。
【0010】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項3の食品」という)は、請求項2の食品であって、前記反射面が平面であることを特徴とする。観察面を多面体で、反射面を平面で、それぞれ構成することにより、ダイヤモンドのカット手法の一つであるローズカットに近似した形状になるが、ダイヤモンドはその底面からの入射光も計算されたものである点で、底面(反射面)からの入射光を対象外とする請求項3の食品(本発明に係る他の食品も同じ)と大きく異なっている。
【0011】
請求項3の食品によれば、請求項2の食品の作用効果に加え、反射面を平面にすることにより、可食性反射層の形態がシンプルであるため、その形成を比較的容易に行うことができる。底面からの入射光こそないが、ローズカット形状に形成することにより、たとえば、ダイヤモンドのブリリアントカットの形状に比べ、アンティークな雰囲気を演出することができる。好みや時、場所そして場合などに応じて使い分けるとよい。
【0012】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項4の食品」という)は、請求項1または2の食品であって、前記観察面を表面とする観察側ドーム部と、前記反射面を表面とする観察側ドーム部と、を備え、当該観察面および当該反射面は、それぞれ複数の平面からなる多面体であることを特徴とする。つまり、観察面と反射面の双方が、多面体となる。観察面と反射面が同じ形状である必要はなく、それぞれの目的に合った形状にすることが好ましい。
【0013】
請求項4の食品によれば、請求項1または2の食品の作用効果に加え、観察面に加え、観察側ドーム部の反射面が多面体となることにより、観察面から入射した光が2回以上反射される確率が高まり、これにより、反射光が観る者の方向へ進む可能性が高まる。つまり、観る者に対し輝きを増すことになる。
【0014】
(請求項5載の発明の特徴)
請求項5載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項5食品」という)は、請求項1ないし4いずれかの食品であって、前記可食性反射層は、前記反射面に直接貼りした、可食性金属箔(たとえば、金箔や銀箔)もしくは可食性金属の粉末(フレーク)によって構成してあることを特徴とする。
【0015】
請求項5の食品によれば、請求項1ないし4いずれかの食品の作用効果に加え、可食性反射層の反射機能(光沢)を維持しながら、製造の便宜を図ることができる。つまり、可食性金属箔であればその表面の水分によって反射面に直接貼り付けることができる。直接貼りのよい点は、反射面と可食性金属箔の間に接着層を設けたときの反射機能の低下を防ぐとともに、接着層形成などの手間をかける必要がなくなる、という点である。
【0016】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項6の食品」という)は、請求項1ないし4いずれかの食品であって、前記可食性反射層は、可食性金属の粉末を混入した半透明食材により構成してあることを特徴とする。
【0017】
請求項6の食品によれば、請求項1ないし4の食品の作用効果に加え、上述した半透明食材を使用すれば、可食性反射層のバリエーションを増やすことができる。たとえば、可食性金属の粉末を複数種とすることによりカラーバリエーションを多様化したり、食材の色との協働により色々な色彩を創りだすことができる。
【0018】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係る光輝性半透明食品の製造方法(以下、適宜「請求項7の方法」という)は、観察面を介して外部から反射光を観察可能な光輝性半透明食品の製造方法である。具体的には、凝固したときに半透明である流動性原材料(凝固前のキャンディー、水羊羹、寒天、ジュースや水など)を型の凹部に流し込む流し込み工程(原材料の均しや擦り切りが必要な場合は、それらを含む)と、流し込んだ原材料が凝固した後に、当該凹部開口から露出する原材料の露出面のほぼ全域に、可食性反射層を形成する反射層形成工程(たとえば、可食性金属箔の貼り付け)と、当該可食性反射層が形成された食品を、当該型の凹部から取り出す取り出し工程と、を備えることを特徴とする。凹部(の底面)の形状は、食品の外観を決定するものであり好みに合わせて適宜設定可能であるが、食品の輝きをできるだけ増やすために多面体に設定することが好ましい。
【0019】
請求項7の方法によれば、流し込まれた原材料は、凹部開口から露出する部分以外は凹部(の底面)の形状に成形される。原材料の露出面は、原材料の流し込み工程のやり方次第であるが、露出面が平面となったり表面張力の作用や凝固に伴う引けなどにより若干の曲面となったりする場合が多い。ここで、原材料が、少なくとも可食性反射層形成を形成可能程度に)固まってから、その露出面に可食性反射層を形成する。その後、可食性反射層の形成された食材(食品)を型の凹部から取り出す。これにより、光輝性半透明食品の製造が完了する。この光輝性半透明食品によれば、食品自体が輝きを放つ(光輝性を有する)ことにより、食品に華麗さを添え、その装飾性を格段に高めることができる。
【0020】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係る光輝性半透明食品の製造方法(以下、適宜「請求項8の方法」という)は、請求項7の方法であって、前記可食性反射層は、可食性金属箔によって構成してあり、前記反射層形成工程における当該可食性金属は、前記原材料の露出面とともに当該露出面周囲を被覆するように(すなわち、露出面より広い)配してあり、前記取り出し工程の前に、前記可食性反射層が形成された食品の通過を許すも当該可食性金属箔の当該露出面周囲の通過を許さない開口付き押え部材を当該可食性金属箔の上に配する押え工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項8の方法によれば、請求項7の方法の作用効果に加え、原材料の露出面より広い(大きな)可食性金属で露出面よびその周囲を被覆しておき、露出面周囲だけを押え部材によって押えた状態で食品を取り出す。このとき、露出面周囲の可食性金属箔は押え部材によって押えられているのでそのまま型と押え部材との間に残される一方、露出面の上の可食性金属箔には押えがないので取り出しによって(ちぎられるように)切り離され食品の上に残る。請求項8の方法によれば、押え工程の採用により可食性反射層の形成を円滑に行うことができる。
【0022】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係る光輝性半透明食品の製造方法(以下、適宜「請求項9の方法」という)は、請求項7の方法であって、観察面を介して外部から反射光を観察可能な光輝性半透明食品の製造方法であって、観察面を表面とする観察側ドーム部形成用の凹部を有する観察側型と、反射面を表面とする観察側ドーム部形成用の凹部を有する反射側型と、を有する合わせ型を準備する型準備工程と、当該反射側型の凹部の中に、当該観察側ドーム部の反射面のほぼ全域を被覆可能な可食性金属箔を配する金属箔配置工程と、凝固したときに半透明である流動性原材料を、当該反射側型の凹部と当該観察側型の凹部の、それぞれに流し込む流し込み工程と、流し込んだ原材料が凝固する前に、当該観察側型と当該反射側型とを合わせて観察側ドーム部と観察側ドーム部と可食性金属箔とを一体凝固させる一体化工程と、当該可食性反射層が形成された食品を、当該合わせ型の両凹部から取り出す取り出し工程と、を備えることを特徴とする。なお、可食性金属箔は、必要量より多く配し、一体化工程の後に余分な分を取り除くようにしてもよい。
【0023】
請求項9の方法によれば、反射側型の凹部への流動性食材の流し込みにより、観察側金型では観察側ドーム部が形成される。同様にして反射側金型では観察側ドーム部が形成され、併せて、流し込み以前に凹部の中に配されていた可食性金属箔が観察側ドーム部の反射面に付着する。観察側ドーム部と観察側ドーム部とが一体凝固させ、取り出すことにより、可食性金属箔を反射面上に備えた光輝性半透明食品を得ることができる。
【0024】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係る光輝性半透明食品(以下、適宜「請求項10の食品」という)は、請求項7ないし9いずれかに記載された方法により製造されたことを特徴とする。
【0025】
請求項7ないし9いずれかに記載された方法により製造してあるので、食品自体が輝きを放つ(光輝性を有する)ことにより、食品に華麗さを添え、その装飾性を格段に高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、半透明食品に光るものを含ませたり、光るもので覆ったりするのではなく、食品自身の中から輝きを放つことにより、観る者に喜びと楽しみを与える光輝性半透明食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】半透明食品の平面図である。
【図2】図1に示す半透明食品を矢印A方向に見た正面図である。
【図3】図1に示す半透明食品の底面図である。
【図4】半透明食品の平面図である。
【図5】図4に示す半透明食品を矢印A方向に見た正面図である。
【図6】図4に示す半透明食品の、反射層の一部を切り欠いて示す底面図である。
【図7】半透明食品をするための半透明食品製造具の概略図である。
【図8】図7に示す半透明食品製造具を用いた半透明食品の製造方法を示す図である。
【図9】図5に示す半透明食品の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、各図を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。ここでは、まず、本実施形態に係る光輝性半透明食品(以下、単に「半透明食品」という)について説明し、その後、半透明食品の製造方法に言及する。
【0029】
(半透明食品の構造1)
図1〜3を参照しながら、本実施形態に係る半透明食品について説明する。半透明食品1は、図1に示すように平面視円形、図2に示すように正面(側面)視ほぼ台形の観察側ドーム部3をその主要部位として構成してあり、その素材は少なくとも凝固したときに半透明となるキャンディー(ゼリー食品や寒天、さらに、水などでもよい)である。観察側ドーム部3の外周面全域は観察面5を構成する。観察面5は、基本的にどのような形状でも構わないが、多面体により構成することが好ましい。本実施形態では天面5aと、その周囲を囲むように配した平面5b〜5iとからなる9面体とした。各平面は、水平面に対する角度が隣接平面同士で互いに異ならせてあり、そのように構成したのは、光の入射角を異ならせることにより輝きに広がりを持たせるためである。なお、観察面5を構成する平面の数と角度は、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0030】
図2に示す符号7は、観察側ドーム部3の一部を構成する底部を示す。底部7は、不要であれば省略可能な部位ではあるが、観察側ドーム部3の裾野先端を補強するために設けてある。観察面5の裏側となる観察側ドーム部3(底部7)の底面は、平面状の反射面9になっている。図2および3に示すように、反射面9のほぼ全域には、可食性反射層11(以下、単に「反射層11」という)を貼り付け形成してある。可食性反射層11は、食べても害にならない可食性金属箔により構成することが好ましい。たとえば、金箔や銀箔などが好適である。反射層11は、接着剤などを用いることなく、キャンディーでできている反射面5の水分や粘着性などを利用して直接貼り付けることが好ましい。接着剤を用いると、その分だけ反射層11に入射する光と反射する光が減衰し、その分、半透明食品1の輝きが失われるからである。また、可食性金属箔は、1枚ものを使用するのが一般的であるが、たとえば、金箔と銀箔を組み合わせてもよいし、粉状もしくはフレーク状にしたものを塗したりスプレーで吹き付けたりしてもよい。それぞれが、違った輝きを放ってくれる。
【0031】
ここで、上記構成を有する半透明食品1に、観察面5(ここでは、天面5aとする)から光Hが入射したときの例を示す(図2参照)。この例では説明の便宜上、理想的な状態を想定しており、屈折、減衰、乱反射その他の光学的現象は無視している。かくして、天面5aに入射した光Hは、そこを通過して入射光h1となり反射層11によって反射される。反射された反射光h2は天面5aに向かって進み、その一部は観察光h3として天面5aを通過し、他の一部は天面5aと空間との界面で反射されて反射光h4となり再び反射層11に向かって進む。反射光h4は反射層11に反射され再反射光h5となる。再反射光h5は、その一部が観察光h6として天面5aを通過する。観察光h3やh6が観る者の目に届き輝きとして認識される。上記例では、反射層11による反射は2回であるが、入射角や入射箇所によっては1回のときも3回以上のときもある。半透明食品1の内部では、このような光学的現象の一部または全部が繰り返され、その結果、半透明食品1の内部から輝きが放たれる。
【0032】
(半透明食品の構造2)
図4〜6を参照しながら、本実施形態に第1変形例について説明する。第1変形例に係る半透明食品31が半透明食品1と異なる点は、観察側ドーム部の観察面を構成する平面数(カット数)の違いと、半透明食品1が有していない反射側ドーム部を半透明食品31が有していること、半透明食品1の底部7が半透明食品31では繋ぎ部に代わっていること、の3点である。そこで、両者共通する部位については可能な範囲において説明を省略するとともに、上記3点について解説する。
【0033】
図4〜6に示すように、半透明食品31は、半透明食品1ではキャンディーを素材としていたが、ここでは氷を素材としている。観察側ドーム部33と、反射側ドーム部41と、観察側ドーム部33と反射側ドーム部41との間に位置する円盤状の繋ぎ部37と、から外観構成されている。
【0034】
観察側ドーム部33は、正面(側面)視ほぼ台形に形成してあり、この点は、観察側ドーム部3と共通する。両者とも多面体である点で共通するが、両者間で異なるのは、観察側ドーム部33が33面体であるのに対し、観察側ドーム部3が9面体であること。すなわち、平面(カット面)の数である。なお、平面数は、上記した数に拘束されるものではなく、その観察側ドーム部のデザインや輝きの設計、さらに、製造の容易性などを勘案して適宜設定することができる。繋ぎ部37は、観察側ドーム部33および反射側ドーム部41の裾野(先端)部分の欠けを防ぐための補強部位である。なお、図6では、図面を簡略にするためにカット面を示す破線を省略してある。
【0035】
反射側ドーム部41について説明する。反射側ドーム部41は、繋ぎ部37と一体化した円形底辺を持ち下方の頂点Pに向かって先細りする逆さ円錐(多角錘)形状に形成してある。反射側ドーム部41の側面(反射面43 図6参照)は、頂点Pを頂点とする複数(本実施形態では12個)の二等辺三角形のカット面が周方向に並んでいる。反射面43のほぼ全域には、可食性金属箔(本実施形態では、金箔)からなる可食性反射層45(反射層45)を形成してある。形成方法は、反射層11と同様の手法で、氷表面の水分を使った貼り付けである。
【0036】
図5に示すように、半透明食品31の天面35aから入射した光Hはh1となって進み反射層45に反射される。反射された反射光h2は、再び反射層45に反射されて反射光h3は、天面35aを透過して観察光h4となり観る者の目に届く。図5においても、屈折、減衰、乱反射その他の光学的現象はすべて無視しているが、上記した光の進行によって半透明食品31である氷にキラキラとした輝きが生まれる。この氷を、たとえば、ウイスキーや焼酎の水割りなどのグラスの中に入れれば、グラスの中に輝く宝石が浮かんでいるように見える。ドリンクウオーターや清涼飲料水などでも効果は変わらない。氷が融けると、剥がれた反射層の素材がグラスの中に浮遊するが、観る者は、この変化の過程を楽しむことができる。さらに、この素材は可食性のものであるから、観る者は、ウイスキーなどと一緒にこの素材を飲むことができる。特に、この素材が金箔であるなら、縁起がよい、体によい、ということで観る者を喜ばせることになる。
【0037】
(反射層の変形例)
これまで説明した反射層11,45は、可食性金属箔を貼り付けることより形成してあるが、この代わりに、可食性金属の粉末を塗すことにより形成することができる。さらに、可食性金属の粉末を混入した半透明食材(たとえば、ゼリー、寒天、水)を、反射材として使用することもできる。
【0038】
(半透明食品の製造方法1)
図7を参照しながら、まず、半透明食品1の製造に使用する半透明食品製造具について説明する。半透明食品製造具51(製造具51)は、型53と押え部材59とから概略構成してある。型53は、ガイド板55と、ガイド板55とほぼ同じ面積の可動板57と、ガイド板55と可動板57との間に差し入れて両者間の間隔を一定に保つための着脱スペーサー61と、から構成してある。ここでは、半透明食品1はキャンディーであり、反射層11は金箔で構成してあることにする。
【0039】
ガイド板55には、所望形状のガイド孔55hを貫通形成してある。一方、可動板57の上面には、ガイド孔55hにほぼぴったりと入る凸部57aを起立形成してある。凸部57aの上面には、所望形状の底部57cを持った凹部57bを形成してある。底部57cの形状は、半透明食品1の観察面5の形状を決定する。符号59は、板状の押え部材を示す。押え部材59は、抜き開口59hを備えている。抜き開口59hは、凹部57bよりも僅かに大きく、かつ、可食性金属箔の凹部57bの周囲にはみ出た部分の通過を許さない大きさに形成してある。上記のように形成したのは、金箔が貼られたキャンディーは抜き開口59hを通過できるが、凹部57b周囲にある金箔は通過できないようにするためである。なお、図17では、説明を簡単にするために、ガイド孔55h、凸部57a、抜き開口59hは、各々1個ずつとしてあるが、効率よく生産するためには、複数個とすることが好ましい。
【0040】
図8(a)は、型53をセットした状態を示す。このとき、可動板57とガイド板55の間には着脱スペーサー61が差し入れられ、これによって、可動板57の凸部57aの頂点がガイド板55の上面とほぼ面一となる。ここで、凹部57bの中に固まる前のキャンディーCを凹部57bの上面一杯になるまで流し込み、凝固後に、キャンディーCの露出面がガイド板55の上面とほぼ面一か僅かに盛り上がるようにする。キャンディーCがほぼ凝固したところで、反射層11の素材である金箔KをキャンディーCが完全に隠れるように配置する(図8(b))。金箔KはキャンディーCに張り付いた状態となる。
【0041】
その上で、押え部材59をガイド板55の上に載せる(図8(c))。このとき、抜き開口59hとガイド孔55h(凹部57bの周囲)が一致していなければならない。今、キャンディーCの露出面からはみ出した金箔Kは、押え部材59とガイド板55によって挟まれた状態にある。
【0042】
次に、着脱スペーサー61を抜き取り、ガイド板55に対し可動板57を相対移動可能な状態にして(図8(d))、可動板57を押し上げる(ガイド板55を押し下げる)ことにより、凸部57aがガイド板55の上に突き出し、これに伴い、金箔Kの余分な部分がちぎれるように切断される(図8(e))。余分な部分は、押え部材59とガイド板55の間に残されたままである。最後に、凹部57bから取り出すことにより、半透明食品1の製造過程を修了する(図8(f))。
【0043】
(半透明食品の製造方法2)
図9を参照しながら、半透明食品31の製造方法について説明する。ここで使用するのは、観察側型73と反射側型75からなる合わせ型である。観察側型73は、観察側ドーム部33を形成するための凹部73aを備えている。反射側型75は、反射側ドーム部41を形成するための凹部75aを有している。
【0044】
まず、合わせ型71を用意する。凹部73aと凹部75aに凝固前のキャンディーCを流し込む。凹部75aへの流し込みの前に、凹部75aの底部に反射層45となる金箔Kを敷いておく。キャンディーCが凝固する前に、観察側型73と反射側型75を合わせ、凹部73a内のキャンディーCと凹部75a内のキャンディーCとを一体化させる(図9(b)。キャンディーCが凝固したら金箔ごと取り出すことにより、半透明食品31の生産を完了する(図9(c))。
【符号の説明】
【0045】
1 光輝性半透明食品(半透明食品)
3 観察側ドーム部
5 観察面
5a 天面
5b〜5i 平面
7 底部
9 反射面
11 可食性反射層(反射層)
31 光輝性半透明食品(半透明食品)
33 観察側ドーム部
35 観察面
35a 天面
37 繋ぎ部
41 反射側ドーム部
43 反射面
45 可食性反射層(反射層)
51 半透明食品製造具
53 型
55 ガイド板
55h ガイド孔
57 可動板
57a 凸部
57b 凹部
57c 底部
59 押え部材
59h 抜き開口
61 着脱スペーサー
71 合わせ型
73 観察側型
73a 凹部
75 反射側型
75a 凹部
C キャンディー
P 頂点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察面と、当該観察面の裏側の反射面と、を有する光輝性半透明食品であって、
当該反射面のほぼ全域には、可食性反射層を形成してあり、
当該可食性反射層は、当該観察面から入射した光の少なくとも一部を少なくとも1回反射し、当該反射した光の少なくとも一部が当該観察面を介して外部観察可能となるように構成してある
ことを特徴とする光輝性半透明食品。
【請求項2】
前記観察面は、複数の平面からなる多面体である
ことを特徴とする請求項1記載の光輝性半透明食品。
【請求項3】
前記反射面が平面である
ことを特徴とする請求項2記載の光輝性半透明食品。
【請求項4】
前記観察面を表面とする観察側ドーム部と、前記反射面を表面とする観察側ドーム部と、を備え、
当該観察面および当該反射面は、それぞれ複数の平面からなる多面体である
ことを特徴とする請求項1または2記載の光輝性半透明食品。
【請求項5】
前記可食性反射層は、前記反射面に直接貼りした、可食性金属箔もしくは可食性金属の粉末によって構成してある
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の光輝性半透明食品。
【請求項6】
前記可食性反射層は、
可食性金属の粉末を混入した半透明食材により構成してある
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の光輝性半透明食品。
【請求項7】
観察面を介して外部から反射光を観察可能な光輝性半透明食品の製造方法であって、
凝固したときに半透明である流動性原材料を型の凹部に流し込む流し込み工程と、
流し込んだ原材料が凝固した後に、当該凹部開口から露出する原材料の露出面のほぼ全域に、可食性反射層を形成する反射層形成工程と、
当該可食性反射層が形成された食品を、当該型の凹部から取り出す取り出し工程と、
を備えることを特徴とする光輝性半透明食品の製造方法。
【請求項8】
前記可食性反射層は、可食性金属箔によって構成してあり、
前記反射層形成工程における当該可食性金属は、前記原材料の露出面とともに当該露出面周囲を被覆するように配してあり、
前記取り出し工程の前に、前記可食性反射層が形成された食品の通過を許すも当該可食性金属箔の当該露出面周囲の通過を許さない開口付き押え部材を当該可食性金属箔の上に配する押え工程と、
を備えることを特徴とする請求項7記載の光輝性半透明食品の製造方法。
【請求項9】
観察面を介して外部から反射光を観察可能な光輝性半透明食品の製造方法であって、
観察面を表面とする観察側ドーム部形成用の凹部を有する観察側型と、反射面を表面とする観察側ドーム部形成用の凹部を有する反射側型と、を有する合わせ型を準備する型準備工程と、
当該反射側型の凹部の中に、当該観察側ドーム部の反射面のほぼ全域を被覆可能な可食性金属箔を配する金属箔配置工程と、
凝固したときに半透明である流動性原材料を、当該反射側型の凹部と当該観察側型の凹部の、それぞれに流し込む流し込み工程と、
流し込んだ原材料が凝固する前に、当該観察側型と当該反射側型とを合わせて観察側ドーム部と観察側ドーム部と可食性金属箔とを一体凝固させる一体化工程と、
当該可食性反射層が形成された食品を、当該合わせ型の両凹部から取り出す取り出し工程と、
を備えることを特徴とする光輝性半透明食品の製造方法。
【請求項10】
請求項7ないし9いずれかに記載された方法により製造された
ことを特徴とする光輝性半透明食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81385(P2013−81385A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221560(P2011−221560)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(511242144)
【出願人】(511242199)
【出願人】(511242203)
【Fターム(参考)】