説明

光輝性画像の記録方法

【課題】記録媒体に対して光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる光輝性画像の記録方法を提供する。
【解決手段】光輝性画像の記録方法は、記録媒体10に対して、インクジェット法によりインク組成物を付着させる工程と、前記記録媒体に付着された前記インク組成物に対して、インクジェット法により接着性組成物を付着させる工程と、前記記録媒体に、光輝性膜42が形成されたシート40を、前記接着性組成物が付着された面と、前記光輝性膜が形成された面とを対向させて接触させる工程と、前記接着性組成物を加熱する工程と、前記記録媒体および前記シートを剥離する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性画像の記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録面に光輝性を有する画像が形成された記録物の需要が高まっている。光輝性を有する画像を形成する方法としては、従来は、例えば、平坦性の高い記録面を有する記録媒体を準備して、これに金属箔を押しつけて記録する箔押し記録法、記録面が平滑なプラスチックフィルムに対して金属等を真空蒸着する方法、および、記録媒体に光輝性顔料インキを塗布し、さらにプレス加工を行う方法等が知られている。
【0003】
また、インクジェット法によって光輝性顔料を有するインク(以下、光輝性インクという)を吐出して画像を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。光輝性インクには、樹脂が含まれており、形成した画像の記録媒体に対する密着性が向上し、耐擦性の向上が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カラーインクの発色とは異なり、光輝性インクの光輝性は、記録後の表面における光輝性顔料の平滑な配列により発現する。そのため、光輝性インクによって、光輝性画像を形成する場合に、耐擦性をより優れたものとするために、多くの樹脂を添加すると、配列を阻害して光輝(光沢)性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
一方、光輝性画像の表面の平滑性を得るために、フィルム等にあらかじめ平滑な表面を有するように形成された光輝性の蒸着膜を、記録媒体に転写して光輝性に優れた画像を得る方法が考えられる。この方法では、例えば、記録媒体に接着剤を付着させ、該接着剤と蒸着膜とを接触させてフィルムから記録媒体へと蒸着膜を転写させる。
【0007】
ところが、この方法では、転写のために使用する接着剤と記録媒体との密着性が不足して光輝性画像の耐擦性が不足するといった不具合や、接着剤が記録媒体中に浸み込んでしまって蒸着膜と接触させることができなくなる不具合が生じる場合があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、記録媒体に対して光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる光輝性画像の記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1] 本発明に係る光輝性画像の記録方法は、記録媒体に対して、インクジェット法によりインク組成物を付着させる工程と、前記記録媒体に付着された前記インク組成物に対して、インクジェット法により接着性組成物を付着させる工程と、前記記録媒体に、光輝性膜が形成されたシートを、前記接着性組成物が付着された面と、前記光輝性膜が形成された面とを対向させて接触させる工程と、前記接着性組成物を加熱する工程と、前記記録媒体および前記シートを剥離する工程と、を含む。
【0011】
本適用例の記録方法によれば、記録媒体に対して光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる。
【0012】
[適用例2] 適用例1において、前記記録媒体は、インク吸収性を有し、前記インク組成物は、顔料を含有してもよい。
【0013】
本適用例によれば、インク組成物によって記録媒体の表面の孔を閉塞させやすいため、接着性組成物の記録媒体への浸透を抑制することができる。そのため、本適用例によれば、インク吸収性を有する記録媒体に対して、光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる。
【0014】
[適用例3] 適用例2において、前記顔料は、白色顔料であってもよい。
【0015】
本適用例によれば、インク組成物によって記録媒体の表面の孔をさらに閉塞させやすいため、接着性組成物の記録媒体への浸透を抑制することができる。したがって、本適用例によれば、インク吸収性を有する記録媒体に対して、光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる。
【0016】
[適用例4] 適用例3において、前記白色顔料の体積基準の平均粒子径は、300nm以上であってもよい。
【0017】
本適用例によれば、インク組成物によって記録媒体の表面の孔をさらに閉塞させやすいため、接着性組成物の記録媒体への浸透を抑制することができる。したがって、本適用例によれば、インク吸収性を有する記録媒体に対して、光輝性および密着性のさらに良好な画像を、容易に形成することができる。
【0018】
[適用例5] 適用例1において、前記記録媒体は、インク吸収性を実質的に有さず、前記インク組成物は、白色顔料を含有してもよい。
【0019】
本適用例によれば、記録媒体に記録される光輝性画像の下地に白色の記録層を形成することができる。そのため、本適用例によれば、インク吸収性を実質的に有さない記録媒体に対して、光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる。
【0020】
なお、本明細書において「インク吸収性を実質的に有さない記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。
【0021】
[適用例6] 適用例1において、前記記録媒体は、インク吸収性を実質的に有さず、前記インク組成物は、顔料を実質的に含有しなくてもよい。
【0022】
本適用例によれば、インク吸収性を実質的に有さない記録媒体に対して、光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる。
【0023】
なお、本明細書において、「インクが特定成分を実質的に含有しない」との文言は、当該特定成分を含有する意義を十分に発揮する量を意図的に含有させない場合を指し、例えばインク中の当該特定成分の含有量が0.05質量%未満であること、一層好ましくは0.01質量%未満、さらに好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることをいう。
【0024】
[適用例7] 適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、前記インク組成物は、3質量%以上の樹脂を含有してもよい。
【0025】
本適用例の記録方法によれば、記録媒体に対して密着性のさらに良好な画像を、容易に形成することができる。
【0026】
[適用例8] 適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、前記接着性組成物は、接着性化合物を含んでもよく、前記接着性化合物は、−10℃以上70℃以下のTgを有してもよい。
【0027】
本適用例の記録方法によれば、記録媒体に対して光輝性および密着性のさらに良好な画像を、容易に形成することができる。
【0028】
[適用例9] 適用例1ないし適用例8のいずれか一例において、前記インク組成物を付着させる工程と、前記接着性組成物を付着させる工程との間に、乾燥工程を含んでもよく、前記乾燥工程では、前記記録媒体に付着された前記インク組成物の40%以上95%以下の質量を減少させてもよい。
【0029】
本適用例の記録方法によれば、記録媒体に対して光輝性および密着性のさらに良好な画像を、容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態の記録方法の一工程の模式図。
【図2】実施形態の記録方法の一工程の模式図。
【図3】実施形態の記録方法の一工程の模式図。
【図4】実施形態の記録方法の一工程の模式図。
【図5】実施形態の記録方法の例を示すフローチャート。
【図6】実施形態の記録方法の例を示すフローチャート。
【図7】実施形態の記録装置の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0032】
1.光輝性画像の記録方法
1.1.用語の説明
1.1.1.光輝性画像
本実施形態の記録方法で記録される光輝性画像は光輝性を有する。光輝性は、例えば、画像の鏡面光沢度(日本工業規格(JIS)Z8741を参照。)によって評価することができる。例えば、金属顔料を含むインクで形成された画像において、表面が平坦である場合には、測定される鏡面光沢度は高く、光輝性の高い画像として評価しうる。また例えば、金属顔料を含むインクで形成された画像において、表面が粗い場合には、測定される鏡面光沢度は小さくなり、いわゆるマット調の画像となるが、このような場合であっても鏡面光沢度を測定することによって光輝性を評価することができる。
【0033】
1.1.2.インクジェット法
インクジェット法とは、インクジェット記録方式による記録方法を指し、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等の記録方法を指す。
【0034】
本実施形態の記録方法で使用するインクジェット法は、インクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジなどを備えたインクジェット記録装置によって行うことができる。ここで、インクジェット式記録ヘッドは、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの少なくとも4色のインクセットを収容するインクカートリッジを備え、フルカラー印刷ができるように構成されてもよい。また、本実施形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、後述のインク組成物や接着性組成物を充填し設置してもよい。また、それ以外のカートリッジには、通常のインクなどが充填されてもよい。インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミング、ヘッド駆動機構の走査、記録媒体の移動などを制御することができる。
【0035】
インクジェット法では、版を準備する等の工程が不要で、しかも比較的小規模の装置構成で所望の画像を容易に形成することができるため、インク組成物や接着性組成物の無駄を抑えることができる。
【0036】
1.1.3.記録媒体
本実施形態の記録方法で用いる記録媒体10は、特に限定されない。記録媒体10としては、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。より具体的には、日本工業規格JIS−P0001に記載されている紙類、JIS−L0206に記載されている織物類、JIS−L0222に記載されている不織布類、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、木材、金属、セラミックス、ガラスなどの材質のフィルム類、シート類が挙げられる。また記録媒体10としては、コート紙やアート紙等の塗工紙であってもよい。
【0037】
記録媒体10の市販品としては、パールコート紙(三菱製紙株式会社製)や、オーロラコート紙(日本製紙株式会社製)、写真用紙クリスピア(セイコーエプソン株式会社製)、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)、写真用紙エントリー(セイコーエプソン株式会社製)、フォト光沢紙(セイコーエプソン株式会社製)などがある。
【0038】
上記例示した記録媒体10は、その表面性状によって、インクを吸収するものと、インクをほとんど吸収しないかまたは全く吸収しないものと、に分類することができる。本明細書では、後者を、「インク吸収性を実質的に有さない記録媒体」と呼ぶことがある。ここで記録媒体10のインクの吸収性は、ブリストー(Bristow)法によって評価することができる。そして、「インク吸収性を実質的に有さない記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。
【0039】
このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)で採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0040】
1.1.4.インク組成物
記録媒体10に対して、インクジェット法により付着されるインク組成物は、顔料を含有するもの、および、顔料を含有しないもの、のいずれであってもよい。顔料を含有しないインク組成物は、顔料を含有するインク組成物から、顔料を除いたものに相当し、染料インクや、クリアインクと称される場合がある。インク組成物の組成は、特に限定されないが、界面活性剤、多価アルコール、有機溶媒、樹脂成分を含有することができる。また、インク組成物は、水系であっても、溶剤系(非水系)であってもよい。またインク組成物が顔料を含有する場合はさらに分散剤等が配合されてもよい。
【0041】
1.1.4.1.水
本実施形態のインク組成物は、水を50質量%以上含む水系インク組成物であっても、水の含有量が50質量%未満である非水系インク組成物であってもよい。インク組成物に使用可能な水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。また、水中にはイオン等が存在してもよい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、カビやバクテリアの発生を長期間抑制することができ、インク組成物を長期に安定に保つことができるためより好ましい。
【0042】
本実施形態のインク組成物に水を含有させる場合には、水の含有量は、例えばインク組成物の全量に対して20質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0043】
なお、水の含有量が20質量%以上95質量%以下であるということは、水以外の成分の含有量が5質量%以上80質量%以下であることを示している。本明細書では、水以外の成分のことを固形分と称する場合があり、水の含有量が20質量%以上95質量%以下であるということは、インク組成物における固形分の濃度が5質量%以上80質量%以下であることを指している。
【0044】
インク組成物に水を含有させる場合には、水は顔料を分散させる分散媒として機能してもよい。また、インク組成物が水を含むことにより、インクジェット記録装置のノズル付近でのインク組成物の不本意な乾燥(分散媒の蒸発)を防止しつつ、インクが付与される記録媒体上での乾燥を速やかに行うことができる。また、水系インク組成物は、環境負荷が小さいという利点もある。
【0045】
1.1.4.2.界面活性剤
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。本実施形態のインク組成物に好適な界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤の少なくとも一種が挙げられる。これらの界面活性剤がインク組成物に配合されると、記録媒体の被記録面への濡れ性を高めることができる。
【0046】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y、サーフィノール104、82、465、485、TG、DF110−D(以上、日信化学株式会社製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに、本実施形態のインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0047】
本実施形態のインク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0048】
1.1.4.3.多価アルコール
本実施形態のインク組成物は、多価アルコールを含有してもよい。
【0049】
多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−若しくは1,3−プロピレングリコール、1,2−若しくは1,4−ブチレングリコール、(1,2−ブタンジオール若しくは1,4−ブタンジオール)、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、などの炭素数が4以上8以下のアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ若しくはポリアルキレングリコール類、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、などの複数の水酸基若しくはチオール基を有する化合物が挙げられる。
【0050】
多価アルコールの機能の一つとしては、記録媒体の記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることが挙げられる。また、例示したようなアルカンジオールは、インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果も有する場合がある。
【0051】
また、多価アルコールのうち、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4ないし8の1,2−アルカンジオールは、インク組成物の記録媒体への浸透性を高める作用がより良好であるためより好ましい。さらにこの中でも炭素数が6ないし8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、インク組成物の記録媒体への浸透性を高める作用が特に良好であるためより好ましい。
【0052】
本実施形態のインク組成物に多価アルコールを含有させる場合には、多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上8質量%以下である。
【0053】
多価アルコールは、単独で、または組み合わせにより、複数の機能を有することができ、上述のような浸透性を改良する機能の他の機能として、インクの乾燥を抑制する機能が挙げられ、インク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止する効果を高めることができる。さらに、多価アルコールは、一分子内の水酸基の数が、疎水性領域の大きさに対してより多い化合物であるほうが、水分を捕捉する機能が高くインク組成物の乾燥を抑制する効果は高くなるので、必要に応じて適宜に選択してもよい。
【0054】
1.1.4.4.有機溶媒
インク組成物には、有機溶剤が含有されてもよい。
【0055】
有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤であれば、インク組成物の吐出安定性を向上させたり、インク組成物の特性を大きく変化させたりすることなく粘度を容易に変更させたりすることができる。有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダソリジン−2−オン、1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン、アセトニルアセトン等のケトン類若しくはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類(多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル);γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類;フルフリルアルコール;テトラヒドロフルフリルアルコール;チオジグリコール;トリメチルグリシン;またはジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0056】
なお、例示した有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン、トリメチルグリシン等のように、常温で固体の物質も含まれている。しかし、該物質等は固体であっても水溶性を示し、さらに該物質等を含有する水溶液は水溶性有機溶剤の効果を期待して使用することができる。
【0057】
また、上記例示した有機溶剤のうち、グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果が高く、インク組成物に配合されると、インク組成物の記録媒体への浸透性を高めることができるとともに、カラー記録を行う場合には、記録媒体上で隣合うインク間のブリードが減少し、より鮮明な画像を得ることができる。
【0058】
さらに、上記例示した有機溶剤のうち、例えば、多価アルコール類、ケトン類、エステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール、およびトリメチルグリシンは、蒸気圧が純水よりも小さいか、常温で固体であって、揮発性が小さいため、保湿性が高い。そのため、これらの有機溶剤は、保湿剤としての効果が高く、インク組成物に配合されると、インク組成物からの水分の蒸発を抑制する効果を期待することができる。
【0059】
なお、保湿剤としては、上記例示した有機溶剤の他に、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類を挙げることができ、これらの糖類もインク組成物に好適に用いることができる。
【0060】
またなお、本項において有機溶剤として例示した化合物、および前項において多価アルコールとして例示した化合物には、重複する化合物があるが、そのような化合物は、有機溶剤および多価アルコールの両者の機能を備えている。
【0061】
インク組成物に有機溶剤を含有させる場合、有機溶剤および多価アルコールの合計の含有量は、インク組成物全量に対して、1質量%以上80質量%以下とすることが好ましく、インク組成物の粘度、保湿性や記録媒体への浸透、にじみ等を考慮すれば、例えば2質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
1.1.4.5.樹脂成分
本実施形態のインク組成物は、樹脂成分を含有してもよい。樹脂成分を含有することにより、付着した組成物の定着性や耐擦性を向上させることができる。樹脂成分としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、樹脂成分は、インク組成物中に、溶液状態で含有されてもよいし、エマルション(粒子分散体)の状態で含有されてもよい。
【0063】
樹脂成分を粒子分散体として使用する場合には、樹脂の粒子の体積基準の平均粒子径は、特に限定されないが、20nm以上300nm以下であることが好ましい。このようにすれば、インク組成物が記録媒体10に塗布されたときに、表面に樹脂の粒子が濃化した層を形成することができる。そのため、形成される画像に良好な光沢やつやを付与するという効果や、接着性組成物の記録媒体10への浸透を抑制する効果を期待できる。
【0064】
インク組成物に樹脂成分を含有させる場合、その含有量は、インク組成物全量に対して、1質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、記録媒体と光輝性画像との密着性を高める観点から、2質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
1.1.4.6.色材
インク組成物には、必要に応じて色材を含有させてもよい。インク組成物が色材を含有することにより、光輝性画像の色調を変化させることができる場合がある。
【0066】
インク組成物に含有される色材としては、染料および顔料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。
【0067】
インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0068】
インク組成物に使用可能な顔料としては、無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
【0069】
無機顔料としては、例えば。カーボンブラックを挙げることができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。顔料の色としては、黒色、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。
【0070】
本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであってもよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を併用することができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックを含有させることが例示できる。
【0071】
また、本実施形態のインク組成物には、白色の顔料を使用してもよい。インク組成物に使用可能な白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア等の周期表第IV族の元素の酸化物が挙げられる。白色顔料としては、その他にも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、カオリン、クレー(粘土鉱物)、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0072】
また、インク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の顔料の含有量に対して、5〜200質量%、好ましくは30〜120質量%であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
【0073】
また、顔料を分散媒に分散させるには、樹脂分散、自己分散、マイクロカプセル型分散などを複数の方法があるが、本実施形態のインク組成物では、いずれの方法によって顔料が分散されてもよい。
【0074】
本実施形態のインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその体積基準の平均粒径が10nm以上500nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上500nm以下程度のものである。
【0075】
なお、顔料の体積基準の平均粒子径は、例えば、光(レーザー)散乱法、窒素吸着法などにより、粒径加積曲線を求めるなどして測定することができる。
【0076】
また、インク組成物を付着させる記録媒体10がインク吸収性を有する場合には、インク組成物には顔料を含有させることがより好ましい。インク吸収性を有する記録媒体に顔料を含有するインク組成物が付着されると、顔料が記録媒体の表面の凹部を閉塞させやすく、後に付着される接着性組成物が、記録媒体に吸収されることを抑制する効果を得ることができる。この場合においては、顔料の体積基準の平均粒子径は、記録媒体の表面の凹部を閉塞させやすくなる点で、300nm以上であることがより好ましい。
【0077】
本実施形態で使用されるインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1質量%以上25質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下の範囲である。
【0078】
1.1.4.7.その他の成分
本実施形態のインク組成物は、その他の成分として、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、尿素系化合物、アルカノールアミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、およびチオ尿素等などの添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0079】
さらに、インク組成物には、必要に応じてレベリング添加剤、マット剤、形成される画像の膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させてもよい。また、インク組成物は、接着性組成物が接触したときに、顔料が再分散しないものがより好ましい。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させることによって、再分散しにくくする効果が得られる場合がある。
【0080】
1.1.4.8.インク組成物の物性
インク組成物は、インクジェット法により記録媒体に付着できるように調製される。インク組成物がインクジェット法に適用できる条件は、例えば、粘度が挙げられ、インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2〜10mPa・sであり、より好ましくは3〜5mPa・sである。インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルからインク組成物が適量吐出され、インク組成物の飛行曲がりや飛散を低減することができるため、本実施形態の記録方法での使用により好適となる。インク組成物の粘度は、上述した成分の配合、種類、組成比を変化させることにより、適宜調節できる。
【0081】
1.1.5.接着性組成物
記録媒体10に付着されたインク組成物に対して、インクジェット法により付着される接着性組成物としては、以下のものを例示することができる。接着性組成物は、少なくとも接着性化合物を含む。
【0082】
1.1.5.1.接着性化合物
接着性組成物に含有される接着性化合物としては、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、などの接着剤に汎用されるモノマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられ、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、およびそれらの変性体を例示することができる。また、接着性化合物としては、ロジン、糊化デンプン、ニカワ、各種の糖類等の天然樹脂またはその変性体などの粘着性を有する物質であってもよい。
【0083】
接着性化合物のさらに具体的な例としては、塩化ビニル系エマルジョン(Tg=−2℃)、塩化ビニル系エマルジョン(Tg=42℃)(例えば、日信化学工業株式会社から入手可能な塩化ビニル系接着剤)、モビニール727 (Tg=5℃)、モビニール718A (Tg=−6℃)、モビニール752 (Tg=15℃)、モビニール7525 (Tg=−16℃)、モビニール745 (Tg=21℃)(例えば、日本合成化学工業株式会社から入手可能なアクリル系接着剤)、スーパーフレックス840 (Tg=5℃)、スーパーフレックス500M (Tg=−39℃)(例えば、第一工業製薬株式会社から入手可能なウレタン系接着剤)などが挙げられる。
【0084】
なお、接着性化合物としてエマルションを採用する場合、合成によってこれを得てもよく、例えば、乳化重合、懸濁重合等の方法により樹脂のモノマーを重合することによって得ることができる。
【0085】
接着性化合物のガラス転移温度(Tg)は、本実施形態の記録方法における加熱工程において操作を容易化することができる、装置を構成しやすいなどの点から、−10℃以上100℃以下であることが好ましく−10℃以上70℃以下であることがより好ましい。
【0086】
接着性組成物は、上述の物質を含有することにより、加熱されることによって接着性を発揮することができる。また、接着性組成物には、反応によって接着性を発揮する化合物を採用してもよく、必要に応じて重合開始剤、反応助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。さらに、接着性組成物は、圧力を印加することによって接着性を発揮する感圧型の接着剤を含んでもよい。感圧型の接着剤としては、例えば、接着剤を微小なカプセルに封入した構造を有する物質が挙げられる。接着性組成物は、上記例示した物質の2種以上の混合物であってもよい。
【0087】
1.1.5.2.接着性組成物の物性
接着性組成物は、インクジェット法により記録媒体に付着できるように調製される。接着性組成物がインクジェット法に適用できる条件は、例えば、粘度が挙げられ、接着性組成物の20℃における粘度は、好ましくは2〜10mPa・sであり、より好ましくは3〜5mPa・sである。接着性組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルから接着性組成物が適量吐出され、接着性組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、本実施形態の記録方法での使用により好適である。
【0088】
接着性組成物は、粘度を調節するために、例えば、界面活性剤、多価アルコール、有機溶媒、樹脂成分を含有することができる。また、接着性組成物は、水系であっても溶剤系(非水系)であってもよい。
【0089】
接着性組成物に含有されうる界面活性剤、多価アルコール、有機溶媒、樹脂成分、および水に関しては、上述のインク組成物の項で述べたと同様であるので、説明を省略する。
【0090】
接着性組成物の粘度の調節は、接着性組成物の粘度は、その成分の配合、種類、組成比を変化させることにより、適宜調節できる。
【0091】
接着性組成物は、インク組成物に付着した後に、接着性を発揮することができる。また、接着性組成物によって形成された表面と、後述する光輝性膜が形成されたシートの光輝性膜との間の接着力(密着力)は、光輝性膜が形成されたシートにおける光輝性膜とシートとの間の接着力(密着力)よりも、大きくなるように設計される。
【0092】
1.1.6.光輝性膜が形成されたシート
光輝性膜が形成されたシートは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド等の材質からなるフィルム等のプラスチックフィルム(シート)の表面に、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金からなる光輝性を有する膜が形成されたものを挙げることができる。
【0093】
このような光輝性膜が形成されたシートは、シートの表面に、蒸着、スパッタ等によって金属の膜を形成することによって得ることができる。また、このような光輝性膜が形成されたシートは、市販品を利用してもよい。さらに、光輝性膜が形成されたシートは、光輝性膜がシートから剥離しやすいように、表面(界面)処理されたものや、剥離を容易化する層を有するものであってもよい。
【0094】
1.2.光輝性画像の記録方法
本実施形態に係る光輝性画像の記録方法は、記録媒体10に対して、インクジェット法によりインク組成物を付着させる工程と、記録媒体10に付着されたインク組成物に対して、インクジェット法により接着性組成物を付着させる工程と、記録媒体10に、光輝性膜42が形成されたシート40を、接着性組成物が付着された面と、光輝性膜42が形成された面とを対向させて接触させる工程と、接着性組成物を加熱する工程と、記録媒体10およびシート40を剥離する工程と、を含む。
【0095】
図1ないし図4は、本実施形態に係る光輝性画像の記録方法の各工程の模式図である。図5および図6は、本実施形態に係る光輝性画像の記録方法の例を示すフローチャートである。
【0096】
1.2.1.インク組成物を付着させる工程
本実施形態の光輝性画像の記録方法は、記録媒体10に対して、インクジェット法によりインク組成物を付着させる工程を含む(図5:ステップS11)。
【0097】
図1に示すように、本工程により、記録媒体10の表面に、インク層20が形成される。インク層20の厚みは、例えば、50nm以上、5μm以下とすることができる。インク層20の平面的な大きさ(面積)や形状は、特に限定されない。インク層20は、記録媒体10の全面に形成されていてもよいし、記録媒体10の表面の一部に形成されてもよい。
【0098】
インク層20の機能の一つとしては、記録媒体10に対して、接着層30および光輝性膜42を密着させることが挙げられる。また、インク組成物が色材を含有する場合には、インク層20の機能の一つとしては、得られる光輝性画像の色調を調節することが挙げられる。さらに、記録媒体10がインク吸収性であって、かつインク組成物が顔料を含有する場合には、インク層20の機能の一つとしては、記録媒体10の表面の孔を閉塞させ、接着性組成物が記録媒体10の内部に浸透することを抑制することが挙げられる。
【0099】
また、インク層20の記録媒体10に対して接着層30および光輝性膜42を密着させる機能は、記録媒体10がインク吸収性を実質的に有さない場合に顕著である。
【0100】
さらに、インク層20の記録媒体10の表面の孔を閉塞させ、接着性組成物が記録媒体10の内部に浸透することを抑制する機能は、インク組成物が白色顔料を含有する場合に顕著であり、しかも、当該白色顔料の体積基準の平均粒子径が300nmであると、なお顕著となる。
【0101】
1.2.2.接着性組成物を付着させる工程
本実施形態の光輝性画像の記録方法は、インク層20に対してインクジェット法により接着性組成物を付着させる工程を含む(図5:ステップS12)。
【0102】
図2に示すように、本工程により、記録媒体10の表面に形成されたインク層20の上に、接着層30が形成される。接着層30の厚みは、例えば、50nm以上、5μm以下とすることができる。接着層30の平面的な大きさ(面積)や形状は、特に限定されない。接着層30は、インク層20の全面に形成されていてもよいし、インク層20の表面の一部に形成されてもよい。
【0103】
接着層30の機能の一つとしては、インク層20に対して光輝性膜42を接着させることが挙げられる。
【0104】
ここで、接着層30の接着性とは、インク層20と光輝性膜42とを、接着する性質のことをいう。接着性は、接着層30が形成されたそのままの状態で発現されていてもよいし、接着層30に、例えば、温度(熱)、圧力、および放射線(光等)の少なくとも一種の刺激が印加されたときに発現されてもよい。
【0105】
接着層30の機能の一つとしては、光輝性膜42が形成されたシート40から、光輝性膜42を剥がしとって、転写先である記録媒体10側へ光輝性膜42を転写させることが挙げられる。
【0106】
1.2.3.記録媒体とシートとを接触させる工程
本実施形態の光輝性画像の記録方法は、記録媒体10に、光輝性膜42が形成されたシート40を、接着性組成物が付着された面と、光輝性膜42が形成された面とを対向させて接触させる工程を含む(図5:ステップS13)。
【0107】
図3に示すように、本工程により、記録媒体10上に形成された接着層30と、シート40上に形成された光輝性膜42とが接触される。本工程は、図示の例では接着層30および光輝性膜42のみが接触されているが、光輝性膜42は、インク層20や記録媒体10にも接触されてもよい。接着層30と光輝性膜42とを接触させる態様は、特に限定されず、シート40と記録媒体10とを重ね合わせるだけでもよいし、プレスやローラーによって圧着してもよい。また、接着性組成物が圧力を受けることによって接着性を発揮する場合は、本工程において圧着する態様をとることが好ましく、その場合は、必要な圧力を印加して行うことができる。
【0108】
本工程は、接着層30の材質等に従って、適宜に行われる。例えば、接着層30が常温で十分な接着性を有する場合には、記録媒体10をシート40に対して配置してわずかな圧力を印加するだけで行うことができる。必要に応じて、プレス加工、ローラー圧着等を行ってもよい。
【0109】
また、接着層30が熱によって接着性を発揮する性質を有する場合には、適宜な加熱手段を用いて、記録媒体10およびシート40の少なくとも一方を加熱して行ってもよい。本工程で、記録媒体10およびシート40の少なくとも一方を加熱して行う場合には、「1.2.4.接着性組成物を加熱する工程」を兼ねることができる。さらに、接着層30が圧力によって接着性を呈する場合には、例えば、ローラー圧着、プレス加工や治具等を用いて圧力を印加して行うことができる。
【0110】
1.2.4.接着性組成物を加熱する工程
本実施形態の光輝性画像の記録方法は、接着性組成物を加熱する工程を含む(図5:ステップS14)。接着層30は、「1.2.2.接着性組成物を付着させる工程」により、接着性組成物によって形成されている。本工程は、必要に応じて行われることができる。例えば、接着性組成物が加熱により接着性を発揮する性質を有する接着性化合物を含む場合には本工程を行う。
【0111】
本工程は、例えば、温風、電熱線、赤外線ヒーター、電磁加熱などの方法などにより行うことができる。さらに、本工程は、「1.2.3.記録媒体とシートとを接触させる工程」とタイミングを一致させて行ってもよいし、記録媒体とシートとを接触させる工程の後に行ってもよい。すなわち、例えば、記録媒体とシートとを接触させる工程で、プレスやローラーを用いる場合にプレスやローラーを加熱して、これを用いて行うことにより、本工程を行うことができる。また、記録媒体とシートとを接触させる工程の後に、別の加熱用の装置を用いて行ってもよい。
【0112】
本工程の加熱により、接着層30(接着性組成物)が到達する温度は、特に限定されない。しかし、接着性組成物が、ガラス状態とゴム状態の相転移を利用して接着性を発揮する種のものである場合には、ガラス転移点(Tg)よりも高い温度まで加熱されることが好ましい。また、接着性化合物が、反応(例えば硬化反応)を利用して接着性を発揮する種のものである場合には、反応温度よりも高い温度まで加熱されることが好ましい。
【0113】
また、接着層30が熱可塑性の重合体を含有する場合には、本工程では、接着層30は、熱可塑性の重合体のTg(ガラス転移温度)およびTm(融点)の少なくとも一方よりも高い温度まで加熱されることが好ましい。
【0114】
本工程により、接着層30と光輝性膜42とが接着される。なお、接着層30は、インク層20とも接着され、さらに、インク層20は、記録媒体10に密着している。したがって、本工程を経ると、記録媒体10、インク層20、接着層30、光輝性膜42、およびシート40の積層体が形成される。そして、接着層30および光輝性膜42の間の接着力は、次の工程に備えて、少なくとも光輝性膜42およびシート40の間の接着力よりも大きくなるように設定される。
【0115】
1.2.5.記録媒体およびシートを剥離する工程
本実施形態の光輝性画像の記録方法は、記録媒体10およびシート40を剥離する工程を含む(図5:ステップS15)。
【0116】
図4に示すように、本工程により、シート40から記録媒体10側へ光輝性膜42が転写される。光輝性膜42のうち接着層30と接着された部分が転写される。図示の例では、接着層30に直接接している光輝性膜42の部分だけが転写されているが、光輝性膜42の転写される部分は、接着層30よりも大きい面積を有してもよい。このような態様は、例えば、光輝性膜42の厚み、光輝性膜42とシート40との接着力、接着層30と光輝性膜42との接着力、記録媒体10とシート40とを接触させる態様、および、本工程における剥離角度などによって調節することができる。
【0117】
本工程は、例えば、一般的なピーラーなどを用いて行うことができる。また、本工程は、ローラー等を適宜配置して、シート40や記録媒体10の搬送とともに適宜に行うことができる。さらに、本工程は、例えば、ユーザーが人力で行ってもよい。
【0118】
接着層30が熱可塑性の化合物を含む場合には、本工程は、「加熱工程」の後、接着層30が冷却されてから行われることが好ましい。このような場合には、例えば、加熱工程の後、冷却工程を設けることができる。冷却工程としては、例えば、冷却期間を設けることや、冷却手段(冷却ローラーなど)を用いて接着層30を冷却することが挙げられる。
【0119】
1.2.6.乾燥工程
本実施形態の光輝性画像の記録方法は、乾燥工程を含んでもよい(図6:ステップS21)。乾燥工程は、必要に応じて行われる。
【0120】
乾燥工程は、「インク組成物を付着させる工程(ステップS11)」と、「接着性組成物を付着させる工程(ステップS12)」の間に行われることができる。乾燥工程は、記録媒体10に付着したインク組成物(インク層20)の乾燥を行う工程である。乾燥工程は、例えば、温風、電熱線、赤外線ヒーター、電磁加熱などの方法などにより行うことができる。
【0121】
乾燥工程では、インク組成物中の水や溶媒等が除去される。すなわち、乾燥工程は、記録媒体10に付着した直後(インクジェットのノズルから吐出された直後)のインク組成物から、水や溶媒等の成分を除去することができる。
【0122】
乾燥工程を行うと、インク層20が形成された後、接着性組成物が付着される時に、接着性組成物が、インク層20に残存する溶媒等と混合することを抑制することができる。これにより、接着性化合物が表面に濃化しやすくなる場合があり、接着層30と光輝性膜42との接着性をさらに高めることができる場合がある。
【0123】
乾燥工程における乾燥の程度は、記録媒体10に付着した直後(インクジェットのノズルから吐出された直後)のインク組成物の質量を、例えば、10%以上99%以下減少させる程度であり、より好ましくは、40%以上95%以下減少させる程度である。
【0124】
本実施形態の記録方法が、乾燥工程を含む場合、記録媒体10に対して、密着性のさらに良好な画像を形成することができる場合がある。
【0125】
1.2.7.作用効果
本実施形態の記録方法は、上述の工程を行うことにより、記録媒体に対して光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができる。
【0126】
2.記録装置
以下に、上述の記録方法に好適に使用できる記録装置の一例を例示する。図7は、本実施形態に係る光輝性画像の記録方法に使用する記録装置の一例の模式図である。
【0127】
本実施形態の記録装置1000は、記録媒体10を搬送する第1搬送手段510と、光輝性膜42が形成されたシート40を搬送する第2搬送手段520と、インク組成物を用いて画像を記録する第1記録手段710と、接着性組成物を用いて画像を記録する第2記録手段720と、接触手段800と、加熱手段900と、剥離手段950と、を備える。
【0128】
2.1.第1搬送手段および第2搬送手段
第1搬送手段510は、記録媒体10を搬送する。第2搬送手段520は、光輝性膜42が形成されたシート40を搬送する。
【0129】
第1搬送手段510は、例えば、ローラー512によって構成されることができる。第1搬送手段510は、複数のローラー512を有してもよい。第1搬送手段510は、図示の例では、記録媒体10の搬送される方向(図中矢印で示した。)において、第1記録手段710より上流側に設けられているが、これに限定されず、記録媒体10が搬送できる限り、設けられる位置や個数は任意である。
【0130】
第2搬送手段520は、例えば、ローラー522によって構成されることができる。第2搬送手段520は、複数のローラー522を有してもよい。第2搬送手段520は、図示の例では、シート40の搬送される方向において、第2記録手段720より上流側に設けられているが、これに限定されず、記録媒体10に対して、光輝性膜42が形成されたシート40を積層できるように配置される限り、設けられる位置や個数は任意である。
【0131】
第1搬送手段510および第2搬送手段520は、それぞれ、給紙ロール、給紙トレイ、排紙ロール、排紙トレイ、および各種のプラテンなどを備えてもよく、記録媒体10および光輝性膜42が形成されたシート40を積層できるように構成される。
【0132】
第1搬送手段510によって搬送される記録媒体10は、第1記録手段710、および第2記録手段720によってインク組成物、および接着性組成物が付着される位置へ搬送される。また、第2搬送手段520によって、光輝性膜42が形成されたシート40は、接触手段800によって記録媒体10と光輝性膜42が形成されたシート40とが接触できる位置へ搬送される。
【0133】
なお、図7では、記録媒体10および光輝性膜42が形成されたシート40がいずれも連続体である場合を例示しているが、記録媒体10および光輝性膜42が形成されたシート40の少なくとも一方が単票であっても、第1搬送手段510および第2搬送手段520を適宜に構成することで、上記のような記録媒体の搬送を行うことができる。
【0134】
第1記録手段710は、記録媒体10に対してインク組成物を用いて画像(インク層20)を記録する。第2記録手段720は、記録媒体10に対して接着性組成物を用いて画像(接着層30)を記録する。第1記録手段710および第2記録手段720は、別々の記録ヘッド712、722としてもよいし、一体的に記録ヘッド700として構成してもよい。
【0135】
2.2.接触手段、加熱手段および剥離手段
接触手段800は、記録媒体10と光輝性膜42が形成されたシート40とを接触させる。接触手段800の構成としては、例えば、加圧ローラーを例示することができる。
【0136】
加熱手段900は、記録媒体10の搬送される方向(図中矢印で示した。)において、接触手段800より下流側に設けられる。加熱手段900は、例えば加熱ローラーによって構成することができる。また、加熱機構を有する加圧手段としては、例えば、一般的なラミネーター装置の要部の構成が挙げられる。さらに、加熱手段900は、記録媒体10の搬送される方向において接触手段800と同じ位置または接触手段800よりも下流側に設けられることが好ましい。例えば、接触手段800に加熱機構を備えることで、当該加熱機構を加熱手段900とすることができる。
【0137】
その後剥離手段950によって記録媒体10と光輝性膜42が形成されたシート40は分離される。剥離手段950は、公知の剥離手段を採用できるが、例えば傾斜をつけた土手分離、摩擦を利用したリタードローラ分離などがある。剥離手段950により、図示のように、記録媒体10上に、インク層20、接着層30および光輝性膜42が積層された光輝性画像が形成される。
【0138】
また、記録装置1000は、第1記録手段710および第2記録手段720の間に、乾燥手段920を備えてもよい。乾燥手段920を備える場合は、第1記録手段710および第2記録手段720は、別々の記録ヘッド712、722とすることが好ましい。乾燥手段920としては、公知の乾燥手段を採用できる。
【0139】
以上説明した構成の本実施形態の記録装置1000は、本実施形態の光輝性画像の記録方法に好適である。
【0140】
3.実験例
以下、いくつかの実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0141】
3.1.インク組成物
インク組成物として、クリアインク、イエローインク、マゼンダインク、ホワイトインクを準備した。各インクは、以下のように作製した。
【0142】
イエローインクは、以下のようにして調製した。高分子分散剤(メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレート=25/50/15/10の質量比で共重合したもの。重量平均分子量12,000)40部を水酸化カリウム7部、水23部およびトリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル30部の混合液に投入し、80℃で加熱および撹拌して重合反応を行い、高分子分散剤ワニスを調製した。このワニス(固形分43%)2.4kgに、イエロー顔料(ピグメントイエロー155(PY155))を3.0kg、エチレングリコール1.5kgおよび水8.1kgを配合し、混合撹拌機で撹拌しプレミキシングを行った。この顔料分散混合液を0.5mmのジルコニアビーズを85%充填した1.5リットルの有効容積を有する多ディスク型羽根車を備えた横型のビーズミルで多パス方式により分散を行った。具体的には、ビーズ周速を8m/秒、1時間に30リットルの吐出量で2パス行い、顔料分散混合液を得た。次に0.05mmのジルコニアビーズを95%充填した1.5リットルの有効容積を有する横型のアニュラー型のビーズミルで循環分散を行った。スクリーンは0.015mmのものを使用し、ビーズ周速を10m/秒で、顔料分散混合液量10kgを循環量300リットル/時で4時間分散処理を行い、イエロー顔料分散液を得た。その後、イエロー顔料が表1の含有量となるように、表1に記載の溶剤を添加してイエローインクを得た。
【0143】
同様の手法にて、それぞれ、顔料を含まないもの、マゼンダ顔料(ピグメントレッド122(PR122))を含むもの、および白色顔料(二酸化チタン)を用いるもの、と変更して、クリアインク、マゼンダインク、ホワイトインクを得た。各インクの組成は、表1に示した。また、ホワイトインクは、白色顔料として、体積基準の平均粒子径が280nm、および330nmの2種類の二酸化チタンを用い、それぞれについてホワイトインク1、およびホワイトインク2を作製した。なお、スチレン−アクリル酸共重合体は、ジョンクリル7100(BASF社製)を使用した。
【0144】
【表1】

【0145】
3.2.接着性組成物
表1に示す各成分を表1に示す配合量で十分に混合し、3種類の接着性組成物を得た。
【0146】
3.3.記録媒体および光輝性膜が形成されたシート
記録媒体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET50A(リンテック社製))およびスーパーファイン紙 マット(セイコーエプソン株式会社製)を用いた。光輝性膜が形成されたシートは、シリコン系の離型剤が用いられ、アルミニウムが蒸着されたものを用いた。
【0147】
3.4.記録装置
セイコーエプソン株式会社製、形式PX−G5500、インクジェットプリンターのインクタンクに、インク組成物および接着性組成物を充填し、各記録媒体に対して、インク組成物、接着性組成物の順にそれぞれ、45mg/inchの量でテストパターン印刷を行った。いずれの場合も、インク組成物の上に接着性組成物が付着されるように印刷した。そして、印刷面に対して、シートの光輝性膜が形成された面を向かい合わせて、市販のラミネーター装置に通過させた。なお、転写の際に、JOL−DIGITAL−4JOL0(日本オフィスラミネーター株式会社製)を用い、熱圧着ローラー温度を130℃、圧力を30kg/cm、速度を20cm/秒と設定した。
【0148】
その後、実験者が手で剥離して光輝性画像の評価に供した。
【0149】
各実験例で使用したインク組成物、接着性組成物、記録媒体、および評価結果を表2に示す。
【0150】
3.5.画像転写性の評価
下記の基準に従い、画像転写性を評価し、評価結果を表2に記載した。
【0151】
◎ :得られた光輝性画像は平滑で剥離ムラが見られない。
【0152】
○ :接着層の5%以下の面積で剥離ムラが見られる。
【0153】
△ :接着層の5%超20%以下の面積で剥離ムラが見られる。
【0154】
× :接着層の20%超の面積で剥離ムラが見られる。
【0155】
3.6.密着性の評価
各実験例において、記録媒体とシートとを剥離してから、48時間経過した時点で、サウザーランドラブテスターを用い、JIS K5701に準じて耐擦性試験を行い、耐擦性試験前後の光輝性画像について、光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、密着性の評価とした。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表2に記載した。なお、表中、実験例8では、剥離ムラが顕著で、密着性の評価を行うことができなかったため、「−」と記載してある。
【0156】
◎ :光沢度の低下率が10%未満
○ :光沢度の低下率が10%以上20%未満
× :光沢度の低下率が20%以上
【0157】
【表2】

【0158】
3.7.評価結果
表2をみると、インク組成物を付着させた実験例1−8では、画像転写性および密着性ともに良好な結果を示している。また、インク組成物に含有される顔料の体積基準の平均粒子径が100nmよりも大きければ、さらに良好な結果を示し、330nmにおいて特に良好な結果となることから、280nmを超えると特に良好な結果を示すことが予想できる。また、接着性組成物の接着性化合物が変化しても、評価結果はいずれも良好であった。さらに、記録媒体の種類が、PETであってもマットであっても、インク組成物を付着させた実験例1−8では、良好な結果を示した。
【0159】
以上のことから、本発明の記録方法によれば、広範な種類の、インク組成物、接着性組成物、および記録媒体において、記録媒体に対して光輝性および密着性の良好な画像を、容易に形成することができることが判明した。
【0160】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0161】
10…記録媒体、20…インク層、30…接着層、40…シート、42…光輝性膜、510…第1搬送手段、520…第2搬送手段、512,522…ローラー、700,712,722…記録ヘッド、710…第1記録手段、720…第2記録手段、800…接触手段、900…加熱手段、920…乾燥手段、950…剥離手段、1000…記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して、インクジェット法によりインク組成物を付着させる工程と、
前記記録媒体に付着された前記インク組成物に対して、インクジェット法により接着性組成物を付着させる工程と、
前記記録媒体に、光輝性膜が形成されたシートを、前記接着性組成物が付着された面と、前記光輝性膜が形成された面とを対向させて接触させる工程と、
前記接着性組成物を加熱する工程と、
前記記録媒体および前記シートを剥離する工程と、
を含む、光輝性画像の記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記記録媒体は、インク吸収性を有し、
前記インク組成物は、顔料を含有する、記録方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記顔料は、白色顔料である、記録方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記白色顔料の体積基準の平均粒子径は、300nm以上である、記録方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記記録媒体は、インク吸収性を実質的に有さず、
前記インク組成物は、白色顔料を含有する、記録方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記記録媒体は、インク吸収性を実質的に有さず、
前記インク組成物は、顔料を実質的に含有しない、記録方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記インク組成物は、3質量%以上の樹脂を含有する、記録方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記接着性組成物は、接着性化合物を含み、
前記接着性化合物は、−10℃以上70℃以下のTgを有する、記録方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
前記インク組成物を付着させる工程と、前記接着性組成物を付着させる工程との間に、乾燥工程をさらに含み、
前記乾燥工程では、前記記録媒体に付着された前記インク組成物の40%以上95%以下の質量を減少させる、記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75408(P2013−75408A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216165(P2011−216165)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】