説明

光送信器及び光送信器の駆動条件設定装置

【課題】本発明は、長延化を図る光送信器を、無温調動作させることで、装置低廉化及び消費電力低減化し、光アクセス網への適用を容易にすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、変調した光信号を出力するDML12及びEA変調器13と、DML12及びEA変調器13での温度を測定する温度測定部14と、DML12及びEA変調器13での温度変化によらずDML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、DML12及びEA変調器13での各温度におけるDML12及びEA変調器13での駆動条件を設定したテーブルを格納する駆動条件設定テーブル格納部15と、温度測定部14が測定した温度及びテーブルが設定した当該温度における駆動条件に基づいて、DML12及びEA変調器13を制御する変調制御部16と、を備えることを特徴とする光送信器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信システムに用いられる光信号を発生する光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
光アクセスネットワークにおける伝送距離を拡大するために、分散耐性の向上が必要である。一般に、光アクセスネットワークにおいて光信号は、伝送するデータに応じて強度変調される。強度変調を含む変調では変調サイドバンドにより信号光の光周波数幅が拡大する。更に、直接変調半導体レーザ(DML:Directly Modulated Laser)や半導体電界吸収型(EA:Electro−Absorption)変調器を用いると、強度変調に位相変調を伴う。
【0003】
強度変調に位相変調を伴う変調器では、変調によって発生される信号光に周波数チャープが生ずる。周波数チャープは、例えば、EA変調器であれば、変調のために印加した電圧に応じて変調器の屈折率が変化することに起因する。つまり、屈折率が変化すると変調器を通過する光の位相が変調される。すると、位相の時間微分が光周波数であるので、出力光の周波数が変化することになる。この周波数変化を周波数チャープという。このことは例えば非特許文献1に示されている。
【0004】
周波数チャープを含む光周波数幅の拡大が生ずると、光ファイバ伝送特性に悪影響を及ぼす。一般的に、光ファイバの特性の1つとして、伝搬する光の周波数によって伝搬速度が異なるという性質がある。このため、光周波数幅の拡がった信号光は、1つのビット内に速く進む成分と遅く進む成分が存在することになり、その結果光ファイバを伝搬した後の信号波形が崩れることとなる。信号波形の崩れにより、符号間干渉(ISI:Inter−Symbol Interference)が発生し、伝送特性が劣化する。このことは例えば非特許文献2に示されている。
【0005】
そこで、位相変調と強度変調を調整することで、分散による伝送特性の劣化を抑圧し、分散耐性を向上する方法が提案されている。そのような方法として、DMLと光フィルタを組み合わせた方法や、DMLとEA変調器を組み合わせた方法が提案されている。DMLと光フィルタを組み合わせた方法は、変調の所定のタイミングでチャープした光を光フィルタで抜き出すことで実現する。DMLとEA変調器を組み合わせた方法は、DMLを光源と位相変調器とし、EA変調器を強度変調器とし、同期した位相変調と強度変調の変調度を調整する。これにより、単側波帯(SSB:Single Side Band amplitude modulation)変調としたり、ビットが拡がらない様にビットの立ち上がりと立ち下がりのチャープ量を調整したり、FSK(Frequency Shift Keying)においてチャープ量を伝送レートの半分にしたMSK(Minimum Shift Keying)変調としたりして、分散耐性を向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.Koyama and K.Iga,“Frequency Chirping in External Modulators”,Journal of Lightwave Technology,vol.6,no.1,pp.87−93,January 1988.
【非特許文献2】B.Wedding、“New Method for Optical Transmission beyond Dispersion Limit”,Electronics Letters,vol.28,no.14,pp.1298−1300,July 1992.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光アクセスネットワークでは、装置低廉化及び消費電力低減化が重要であり、そのために、光送信器の無温調化が必要である。しかし、上記に示すシステムでは、温調が必要である。DMLと光フィルタを組み合わせた方法であれば、環境温度の変化に伴い半導体レーザの発振波長が変化すると、抜き出すべきタイミングと波長の関係が崩れるためである。DMLとEA変調器を組み合わせた方法は、環境温度の変化に伴い半導体レーザの発振強度とEA変調器の消光特性が変化し、それに伴い調整した位相変調と強度変調の変調度の関係が崩れるためである。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、長延化を図る光送信器を、無温調動作させることで、装置低廉化及び消費電力低減化し、光アクセス網への適用を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、変調部での温度変化によらず、変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、又は、変調部での温度変化によらず、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、変調部での各温度における変調部での駆動条件を設定することとした。
【0010】
具体的には、本発明は、変調した光信号を出力する変調部と、前記変調部での温度を測定する温度測定部と、前記変調部での温度変化によらず前記変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを格納する駆動条件設定テーブル格納部と、前記温度測定部が測定した温度及び前記テーブルが設定した当該温度における駆動条件に基づいて、前記変調部を制御する変調制御部と、を備えることを特徴とする光送信器である。
【0011】
この構成によれば、変調部での温度変化によらず、変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすため、光送信器を無温調動作させることができる。
【0012】
また、本発明は、変調した光信号を出力する変調部と、前記変調部での温度を測定する温度測定部と、前記変調部での温度変化によらず前記光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを格納する駆動条件設定テーブル格納部と、前記温度測定部が測定した温度及び前記テーブルが設定した当該温度における駆動条件に基づいて、前記変調部を制御する変調制御部と、を備えることを特徴とする光送信器である。
【0013】
この構成によれば、変調部での温度変化によらず、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすため、光送信器を無温調動作させることができる。
【0014】
また、本発明は、前記温度測定部は、前記変調部での出力強度及び駆動条件に基づいて、前記変調部での温度を推定することを特徴とする光送信器である。
【0015】
この構成によれば、光送信器は、通常出力強度を約一定とする目的で、出力強度測定手段が既に設けられているため、無温調化のために新規に温度を測定するための部品を追加しなくてもよい。
【0016】
また、本発明は、変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定部と、前記変調部での周波数変動の情報を取得する周波数変動取得部と、前記変調部での温度変化によらず前記変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成部と、を備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定装置である。
【0017】
この構成によれば、各温度で変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たす設定のテーブルを予め作成するため、このテーブルを利用することにより、光送信器を無温調動作させることができる。
【0018】
また、本発明は、変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定部と、前記光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得するエラーレート取得部と、前記変調部での温度変化によらず前記光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成部と、を備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定装置である。
【0019】
この構成によれば、各温度で光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす設定のテーブルを予め作成するため、このテーブルを利用することにより、光送信器を無温調動作させることができる。
【0020】
また、本発明は、変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定ステップと、前記変調部での周波数変動の情報を取得し、前記変調部での温度変化によらず前記変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、前記変調部での前記温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成ステップと、を順に備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定方法である。
【0021】
この構成によれば、各温度で変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たす設定のテーブルを予め作成するため、このテーブルを利用することにより、光送信器を無温調動作させることができる。
【0022】
また、本発明は、変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定ステップと、前記光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得し、前記変調部での温度変化によらず前記光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、前記変調部での前記温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成ステップと、を順に備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定方法である。
【0023】
この構成によれば、各温度で光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす設定のテーブルを予め作成するため、このテーブルを利用することにより、光送信器を無温調動作させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、長延化を図る光送信器を、無温調動作させることで、装置低廉化及び消費電力低減化し、光アクセス網への適用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光送信器の構成を示す図である。
【図2】本発明の光送信器の駆動条件設定システムの構成の例を示す図である。
【図3】本発明の光送信器の駆動条件設定装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の駆動条件設定テーブルの内容を示す図である。
【図5】本発明の駆動条件設定方法のフローを示す図である。
【図6】本発明の駆動条件設定方法のフローを示す図である。
【図7】本発明の駆動条件設定方法のフローを示す図である。
【図8】本発明の光送信器の検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(光送信器)
本発明の光送信器の構成を図1に示す。光送信器1は、伝送信号出力部11、DML12、EA変調器13、温度測定部14、駆動条件設定テーブル格納部15及び変調制御部16から構成される。本実施形態では、変調部として、DML12及びEA変調器13が配置されているが、DML12単体が配置されていてもよく、強度変調器及び位相変調器としてそれぞれDML12及びEA変調器13が配置されていてもよく、その他の変調器が配置されていてもよい。
【0028】
DML12及びEA変調器13は、変調部として、変調した光信号を出力する。具体的には、DML12は、変調制御部16からの電流信号(平均電流値I1及び電流振幅Ipp)に基づいて変調した変調光をEA変調器13に出力し、EA変調器13は、変調制御部16からの電圧信号(平均電圧値V2及び電圧振幅Vpp)に基づいて変調した信号光を後述の光ファイバN1に出力する。ここで、DML12及びEA変調器13は、それぞれ電気的に分離された状態で一体形成されていることが、光送信器1の小型化を達成するうえで好ましい。
【0029】
温度測定部14は、一形態として、DML12及びEA変調器13での温度を測定する。具体的には、DML12及びEA変調器13の温度の差異が無視できる場合は、温度測定部14は、DML12及びEA変調器13の両方又は一方の温度を測定してもよく、DML12の周囲及びEA変調器13の周囲の両方又は一方の温度を測定してもよい。DML12及びEA変調器13の温度の差異が無視できない場合は、それぞれ温度を測定する。そして、DML12及びEA変調器13が単一の基板にマウントされている場合は、温度測定部14は、その基板の温度を測定してもよいし、その基板の周囲の環境温度を測定してもよい。さらに、DML12及びEA変調器13から離れた部位で温度を測定する場合は、温度測定部14は、温度の測定点からDML12及びEA変調器13への温度勾配に基づいて、DML12及びEA変調器13の温度を計算すればよい。
【0030】
温度測定部14は、他形態として、DML12及びEA変調器13での出力強度及び駆動条件に基づいて、DML12及びEA変調器13での温度を推定する。ここで、温度測定部14は、DML12での出力強度及び印加電流に基づいて、DML12及びEA変調器13での温度を推定してもよい。この場合、DML12での出力強度は温度の上昇に伴い減少するので、DML12での出力強度及び印加電流の関係から単純に温度が推定できる。そして、温度測定部14は、EA変調器13での出力強度及び印加電圧並びにDML12での印加電流に基づいて、DML12及びEA変調器13での温度を推定してもよい。この場合、DML12の出力強度は温度の上昇に伴い減少し、EA変調器13の消光特性は温度の低下に伴い劣化するので、EA変調器13での出力強度及び印加電圧並びにDML12での印加電流の組み合わせから温度が推定できる。温度測定部14は、前者の方法に基づいて、DML12及びEA変調器13での温度を推定することが望ましい。いずれの方法であっても、光送信器1は、通常出力強度を約一定とする目的で、出力強度測定手段が既に設けられているため、無温調化のために新規に温度を測定するための部品を追加しなくてもよい。
【0031】
駆動条件設定テーブル格納部15は、一形態として、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、DML12及びEA変調器13での各温度におけるDML12及びEA変調器13での駆動条件を設定したテーブルを格納する。よって、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たすため、光送信器1を無温調動作させることができる。
【0032】
ここで、周波数変動とは、変調サイドバンドや周波数チャープを含む変調に伴う周波数変動である。変調サイドバンドや周波数チャープを含む全体の周波数変動に関する予め定められた条件とは、例えば、想定する伝送距離の伝送路の波長分散との関係から、伝送路の分散によるエラーレート又はアイ開口ペナルティが所定の値を満たすことである。伝送路の分散によるエラーレート又はアイ開口ペナルティの所定の値とは、例えば、エラーレート10−12又は1dBである。
【0033】
例えば、信号光の波長が零分散波長の長波長側であり、信号光の立ち上がりで周波数が減少し波長が長くなり、信号光の立ち下がりで周波数が増加し波長が短くなる場合に、信号光の前縁で遅れ、信号光の後縁で早くなり、信号光の幅が狭くなり圧縮され、それが継続すると前縁と後縁が逆転し、信号光の幅が拡がり始める。そこで、予め定められた条件は、信号光の波長と想定する伝送距離とその伝送路分散に応じた、信号光の幅の広がりと圧縮に応じて設定するのが望ましい。
【0034】
また、信号光の立ち上がりと立ち下がりのそれぞれでの周波数変動を考慮せずに、単純に周波数幅が所定の値以下であることを、予め定められた条件としてもよい。この場合は、設定は容易であるが、伝送路の分散によるエラーレート又はアイ開口ペナルティが所定の値を満足するためには、信号光の立ち上がりと立ち下がりのそれぞれでの周波数変動を考慮した場合よりも小さな値、例えば半分程度の値とするのが望ましい。
【0035】
更に、予め定められた条件として、周波数チャープが小さく変調サイドバンドによる周波数変動が主である場合は、変調サイドバンドによる周波数広がりが小さくなればよい。例えば、SSB変調とし、そのサイドバンド抑圧比が20dB以上であるとか、MSK変調が成立する強度変調と周波数変調の関係となればよい。
【0036】
駆動条件設定テーブル格納部15は、他形態として、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、例えば、予め定められたエラーレート閾値以下となるように、DML12及びEA変調器13での各温度におけるDML12及びEA変調器13での駆動条件を設定したテーブルを格納する。よって、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすため、例えば、予め定められたエラーレート閾値以下となるため、光送信器1を無温調動作させることができる。予め定められたエラーレート閾値とは、例えば、エラーレート10−12などである。
【0037】
駆動条件設定テーブル格納部15は、上記の2形態を組み合わせた形態として、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、DML12及びEA変調器13での各温度におけるDML12及びEA変調器13での駆動条件を設定したテーブルを格納する。よって、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすため、光送信器1を無温調動作させることができる。
【0038】
テーブルのパラメータとして、各変調器での変調度及びチャープ量を制御するパラメータであればよい。DML12及びEA変調器13が配置されている場合には、当該パラメータは、各温度における、DML12に印加される平均電流値及び変調振幅、並びにEA変調器13に印加される平均電圧値及び変調振幅である。DML12単体が配置されている場合には、当該パラメータは、各温度における、DML12に印加される平均電流値及び変調振幅である。その他の変調器が配置されている場合には、当該パラメータは、各温度における、それぞれの変調器に印加される平均電流値及び変調振幅又は平均電圧値及び変調振幅等の、その他の変調器での変調度及びチャープ量を決定するパラメータである。電圧値及び電流値は、電圧値=電流値×抵抗の換算式で関係付けられるため、当該パラメータは、電圧表示でも電流表示でもよい。当該パラメータは、平均値でも上限値又は下限値でもよい。
【0039】
変調制御部16は、温度測定部14が測定した温度及びテーブルが設定した当該温度における駆動条件に基づいて、DML12及びEA変調器13を制御する。具体的には、変調制御部16は、伝送信号出力部11から伝送信号を取得し、温度測定部14から温度の情報を取得する。そして、変調制御部16は、駆動条件設定テーブル格納部15が格納するテーブルを参照して、当該温度における駆動条件の情報を取得する。さらに、変調制御部16は、伝送信号及び駆動条件に基づいて、DML12に電流信号(平均電流値I1及び電流振幅Ipp)を出力し、EA変調器13に電圧信号(平均電圧値V2及び電圧振幅Vpp)を出力する。
【0040】
ここで、それぞれの出力は、所定の位相関係にある。所定の位相関係とは、例えば、DML12で変調光として出力される光に印加された変調の位相と、EA変調器13で信号光として出力される光に印加された変調の位相が、伝搬遅延を加味して位相差を零とする位相関係である。位相関係を調整するためには、DML12に印加する変調の位相とEA変調器13に印加する変調の位相を調整してもよいし、DML12とEA変調器13の間の伝搬光の位相を、印加する電流量等で調整する位相調整部(不図示)を設けて、位相調整部に印加する電流量等を変更することにより、調整してもよい。そして、変調制御部16は、測定された温度がテーブルに記載されていなくても、補間処理を用いて、記載された温度での駆動条件から測定された温度での駆動条件を求めてもよい。
【0041】
DML12及びEA変調器13での周波数変動が満たすべき予め定められた条件として、以下の条件などがあげられる。第1の条件は、変調サイドバンドによる周波数変動が主たる周波数変動である場合に、SSB変調が実現するように、強度変動と周波数変動の関係を調整することである。第2の条件は、チャープによる周波数変動が主たる周波数変動である場合に、ビットの立ち上がり及び立ち下がりのチャープ量を所定のチャープ量となるように調整することである。第3の条件は、変調サイドバンドによる周波数変動が主たる周波数変動である場合に、MSK変調が実現するように、強度変動と周波数変動の関係を調整することである。
【0042】
第1の条件について、以下に詳細に説明する。第1の条件は、変調サイドバンドによる光周波数幅の拡がりが、チャープによる光周波数幅の拡がりより、伝送特性の劣化の主たる原因であるときに、有効である。第1の条件は、DML12及びEA変調器13での周波数チャープ量の合計をΔf、DML12及びEA変調器13での強度変調度の合計をM、伝送帯域をBとしたときに、Δf=MB/2である。
【0043】
例えば、DML12に対して、反転されている伝送信号を用いて変調を与えることとし、EA変調器13に対して、反転されていない伝送信号を用いて変調を与えることとする。DML12での周波数チャープ量Δf1は、Δf1=α1(1/P1)(dP1/dt+LP1)と表される。ここで、α1、P1、dP1/dt及びLは、それぞれ、DML12でのチャープパラメータ、光強度、光強度の時間微分及び非線形係数である。EA変調器13での周波数チャープ量Δf2は、Δf2=α2(1/P2)(dP2/dt)と表される。ここで、α2、P2及びdP2/dtは、それぞれ、EA変調器13でのチャープパラメータ、光強度及び光強度の時間微分である。
【0044】
Δf=MB/2を満たすためには、α1(1/P1)(dP1/dt+LP1)+α2(1/P2)(dP2/dt)=B(k1I1−k2V2)/2を満たせばよい。ここで、I1は、DML12での印加電流の変調振幅であり、V2は、EA変調器13での印加電圧の変調振幅である。そして、k1は、DML12において周波数チャープ量が印加電流値に比例するときの比例係数であり、k2は、EA変調器13において周波数チャープ量が印加電圧値に比例するときの比例係数である。ここで、比例係数は、温度に依存していなくてもよく、温度に依存していてもよい。温度に依存せず一定である場合は、温度によらずに一定の値を用い、温度に依存して変化する場合は、その温度の応じた値を用いる。そして、周波数チャープ量は、印加電流値及び印加電圧値に、比例するとして例示したが、比例していなくてもその関係に応じて設定すればよい。
【0045】
(光送信器の駆動条件設定装置)
本発明の光送信器の駆動条件設定システムの構成の例を図2に示す。駆動条件設定システムNは、光ファイバN1、光増幅器N2、バンドパスフィルタN3、光減衰器N4、光カプラN5、周波数チャープ測定器N6、光受信器N7、エラー検出器N8、DML12、EA変調器13、温度設定部21、パルスパターン発生器111及びフェーズシフタ112、113から構成される。DML12及びEA変調器13は、上記の図1に示したものと同様である。温度設定部21は、ペルチェ素子などの温度調節素子を含み、後述の図3に示したものと同様である。
【0046】
パルスパターン発生器111は、上記の図1に示していない伝送信号を伝送信号出力部11に供給する外部の装置と、上記の図1に示した外部からの伝送信号を受けて変調部に電圧信号又は電流信号を出力する伝送信号出力部11と、変調制御部16の一部の機能を組み合わせたものと同様である。但し、パルスパターン発生器111の出力する信号は、外部の装置が出力する信号を摸擬した信号であり、例えば外部の装置が8B/10Bの信号を出力するのであれば8B/10Bに応じた信号を、64B/66Bの信号を出力するのであれば64B/66Bに応じた信号を出力する。当該応じた信号として、同符号連続の条件がより厳しい擬似ランダムパターンとしてもよい。パルスパターン発生器111が担う変調制御部16の一部の機能とは、平均電圧量及び電圧振幅の調整機能である。
【0047】
フェーズシフタ112、113は、上記の図1に示した変調制御部16の残りの機能を担う。フェーズシフタ112、113の担う残りの機能とは、印加する電圧信号の位相の調整機能である。パルスパターン発生器111からDML12およびEA変調器13に対して、0と1のビットを互いに反転した電圧信号を出力する例を示しているが、パルスパターン発生器111からDML12およびEA変調器13に対して、0と1のビットを互いに反転させていない電圧信号を出力してもよい。0と1のビットを互いに反転させていない電圧信号のみを用いる場合、必要に応じて0と1のビットを互いに反転させるために、一方の出力にインバーターを介してもよい。
【0048】
パルスパターン発生器111の出力は2出力としているが、単一出力を分岐してそれぞれに入力してもよいし、分岐した一方の出力をインバーター等で反転してもよい。パルスパターン発生器111は、伝送信号の符号長を考慮せずに、正弦波信号の出力としてもよい。この場合、パルスパターン発生器111の代わりに、シンセサイザーを用いてもよい。正弦波信号の出力の場合、同符号連続等のパターン効果の影響が表れないので、その効果の分だけ予め定める条件を厳しく例えばエラーレート10−12の代わりにエラーレート10−13とすればよい。また、パルスパターン発生器111の代わりに、AWG(Arrayed Waveguide Grating)を用いてもよい。パルスパターン発生器111の出力するパターンは、PRBS(Pseudo Random Binary Sequence)信号を用いてもよい。その段数は、想定される変調フォーマットに応じて段数を設定することが望ましい。
【0049】
周波数チャープ測定器N6を用いた周波数変動測定およびエラー検出器N8を用いたエラーレート測定は、並列に測定しても、いずれか単一で測定してもよい。なお、伝送路損失が十分小さいときは、光増幅器N2およびバンドパスフィルタN3は備えなくともよい。伝送路での非線形現象が無視できる場合は、光増幅器N2又は光増幅器N2とバンドパスフィルタN3は、光ファイバN1の前に配置してもよい。ASEが無視できる程度である場合又は十分大きい信号を光増幅器N2で増幅する場合、バンドパスフィルタN3は備えなくてもよい。バンドパスフィルタN3は光受信器N7の前に備えてもよい。
【0050】
周波数チャープ測定器N6は伝送後に測定するとしているが、伝送せずに測定してもよい。即ち光カプラN5を光ファイバN1の前に設置して、周波数チャープ測定器N6と光ファイバN1への入力を分岐してそれぞれ測定してもよい。周波数変動のみを測定する場合は、EA変調器13の出力を直接周波数チャープ測定器N6に入力し、光ファイバN1、光増幅器N2、バンドパスフィルタN3、光減衰器N4、光カプラN5、光受信器N7およびエラー検出器N8を備えずともよい。
【0051】
本発明の光送信器の駆動条件設定装置の構成を図3に示す。駆動条件設定装置2は、温度設定部21、周波数変動・エラーレート取得部22及び駆動条件設定テーブル作成部23から構成される。光送信器1及び駆動条件設定装置2は、一部について同一の装置内に配置されていてもよく、全てについて異なる装置として配置されていてもよい。少なくとも光送信器1は、パルスパターン発生器111、フェーズシフタ112、113、光ファイバN1、光増幅器N2、バンドパスフィルタN3、光減衰器N4、光カプラN5、周波数チャープ測定器N6、光受信器N7、エラー検出器N8を含まない。
【0052】
温度設定部21は、強度変調した光信号を出力するDML12及びEA変調器13での温度を設定する。周波数変動・エラーレート取得部22は、DML12及びEA変調器13での周波数変動の情報を、周波数チャープ測定器N6から取得するか、光信号の伝搬後のエラーレートの情報を、エラー検出器N8から取得する。
【0053】
光送信器1及び駆動条件設定装置2を同一の装置内に配置する場合、温度設定部21は光送信器1及び駆動条件設定装置2の温度を調整する恒温槽等の装置となる。恒温槽等の装置の代わりに、DML12及びEA変調器13にペルチェ素子等の温調を備えている場合、その温調を用いてもよい。この場合、温度設定部21は、DML12及びEA変調器13に備えた温調を駆動するドライバを備えることが望ましい。
【0054】
最も望ましくは、DML12及びEA変調器13に温調を備えないことである。この場合、温調及びそのドライバの設置のコストが低減されるからである。次に望ましくは、温調は備えるがそのドライバを備えないことである。この場合、温調のドライバの設置のコストが低減されるからである。その次に望ましくは、温調とそのドライバを備えるが温調とそのドライバを駆動しないことである。
【0055】
駆動条件設定テーブル作成部23は、一形態として、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、DML12及びEA変調器13での各温度におけるDML12及びEA変調器13での駆動条件を設定したテーブルを作成する。そして、駆動条件設定テーブル作成部23は、駆動条件設定テーブル格納部15にテーブルを登録する。
【0056】
駆動条件設定テーブル作成部23は、他形態として、DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、例えば、予め定められたエラーレート閾値以下となるように、DML12及びEA変調器13での各温度におけるDML12及びEA変調器13での駆動条件を設定したテーブルを作成する。そして、駆動条件設定テーブル作成部23は、駆動条件設定テーブル格納部15にテーブルを登録する。
【0057】
一体整形されたDML12及びEA変調器13を駆動条件設定装置2に設置して、駆動条件設定装置2において駆動条件設定テーブルを作成した後に、一体整形されたDML12及びEA変調器13を駆動条件設定装置2から外して光送信器1に設置して、光送信装置1において駆動条件設定テーブルを格納してもよい。
【0058】
本発明の駆動条件設定テーブルの内容を図4に示す。各温度において、DML12に印加される電流に関するバイアスIbias及び駆動振幅Ipp、並びにEA変調器13に印加される電圧に関するバイアスVbias及び駆動振幅Vppが最適化されている。
【0059】
DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、各温度において、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす設定表を作成するときにおける、本発明の駆動条件設定方法のフローを図5に示す。温度測定部21は、DML12及びEA変調器13での温度を設定する(ステップS1)。変調制御部16は、DML12に対して、駆動振幅Ipp及びバイアス電流Ibiasを出力し、EA変調器13に対して、駆動振幅Vpp及びバイアス電圧Vbiasを出力する(ステップS2)。周波数変動・エラーレート取得部22は、周波数チャープ測定器N6及びエラー検出器N8から、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得する(ステップS3)。
【0060】
駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすならば(ステップS4においてYES)、ステップS2で出力した駆動振幅Ipp、バイアス電流Ibias、駆動振幅Vpp及びバイアス電圧Vbiasを、ステップS1で設定した温度に対して書き込む(ステップS5)。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たさないならば(ステップS4においてNO)、ステップS2〜S4を繰り返させる。以上に説明の処理が、各温度において実行される。
【0061】
DML12及びEA変調器13での温度変化によらず、各温度において、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすようにするときにおける、本発明の駆動条件設定方法のフローの一例を図6及び図7に示す。温度測定部21は、DML12及びEA変調器13での温度を設定する(ステップS11)。以下の処理では、DML12での駆動振幅Ipp、EA変調器13での駆動振幅Vpp、DML12でのバイアス電流Ibias及びEA変調器13でのバイアス電圧Vbiasの順序で、テーブルに書き込む値を決定する。
【0062】
変調制御部16は、DML12に対して、駆動振幅Ippを出力する(ステップS12)。周波数変動・エラーレート取得部22は、周波数チャープ測定器N6及びエラー検出器N8から、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得する(ステップS13)。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たし、かつ、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす、例えば予め定められたエラーレート閾値以下であるならば(ステップS14においてYES)、当該駆動振幅Ippを記憶する。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たさず、又は、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たさない、例えば予め定められたエラーレート閾値以下でないならば(ステップS14においてNO)、駆動振幅Ippを変化させてステップS12〜S14を繰り返させる。駆動条件設定テーブル作成部23は、ステップS13が所定回数繰り返されたならば(ステップS14においてYES)、最適な駆動振幅Ippを記憶してもよい。
【0063】
変調制御部16は、EA変調器13に対して、駆動振幅Vppを出力する(ステップ15)。周波数変動・エラーレート取得部22は、周波数チャープ測定器N6及びエラー検出器N8から、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得する(ステップS16)。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たし、かつ、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす、例えば予め定められたエラーレート閾値以下であるならば(ステップS17においてYES)、当該駆動振幅Vppを記憶する。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たさず、又は、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たさない、例えば予め定められたエラーレート閾値以下でないならば(ステップS17においてNO)、駆動振幅Vppを変化させてステップS15〜S17を繰り返させる。駆動条件設定テーブル作成部23は、ステップS16が所定回数繰り返されたならば(ステップS17においてYES)、最適な駆動振幅Vppを記憶してもよい。
【0064】
変調制御部16は、DML12に対して、バイアス電流Ibiasを出力する(ステップS18)。周波数変動・エラーレート取得部22は、周波数チャープ測定器N6及びエラー検出器N8から、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得する(ステップS19)。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たし、かつ、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす、例えば予め定められたエラーレート閾値以下であるならば(ステップS20においてYES)、当該バイアス電流Ibiasを記憶する。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たさず、又は、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たさない、例えば予め定められたエラーレート閾値以下でないならば(ステップS20においてNO)、バイアス電流Ibiasを変化させてステップS18〜S20を繰り返させる。駆動条件設定テーブル作成部23は、ステップS19が所定回数繰り返されたならば(ステップS20においてYES)、最適なバイアス電流Ibiasを記憶してもよい。
【0065】
変調制御部16は、EA変調器13に対して、バイアス電圧Vbiasを出力する(ステップ21)。周波数変動・エラーレート取得部22は、周波数チャープ測定器N6及びエラー検出器N8から、DML12及びEA変調器13での周波数変動及び光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得する(ステップS22)。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たし、かつ、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たす、例えば予め定められたエラーレート閾値以下であるならば(ステップS23においてYES)、当該バイアス電圧Vbiasを記憶する。駆動条件設定テーブル作成部23は、DML12及びEA変調器13での周波数変動が予め定められた条件を満たさず、又は、光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たさない、例えば予め定められたエラーレート閾値以下でないならば(ステップS23においてNO)、バイアス電圧Vbiasを変化させてステップS21〜S23を繰り返させる。駆動条件設定テーブル作成部23は、ステップS22が所定回数繰り返されたならば(ステップS23においてYES)、最適なバイアス電圧Vbiasを記憶してもよい。
【0066】
駆動条件設定テーブル作成部23は、ステップS14、ステップS17、ステップS20及びステップS23でそれぞれ記憶した駆動振幅Ipp、駆動振幅Vpp、バイアス電流Ibias及びバイアス電圧Vbiasを、ステップS11で設定した温度に対して書き込む(ステップS24)。以上に説明の処理が、各温度において実行される。
【0067】
DML12での駆動振幅Ipp及びEA変調器13での駆動振幅Vppを変化させたときのエラーレートの変化は、DML12でのバイアス電流Ibias及びEA変調器13でのバイアス電圧Vbiasを変化させたときのエラーレートの変化より小さい。そこで、この形態では、まずDML12での駆動振幅Ipp及びEA変調器13での駆動振幅Vppを変化させた後に、次にDML12でのバイアス電流Ibias及びEA変調器13でのバイアス電圧Vbiasを変化させている。しかし、他の形態では、まずDML12でのバイアス電流Ibias及びEA変調器13でのバイアス電圧Vbiasを変化させた後に、次にDML12での駆動振幅Ipp及びEA変調器13での駆動振幅Vppを変化させてもよい。さらに、周波数変動及びエラーレートが今のステップにおいて前のステップよりも高くなったときには、先のステップに進むことなく前のステップを繰り返してもよい。なお、図5から図7では、周波数変動及びエラーレートがともに予め定められた条件を満たすかどうかを判断したが、周波数変動及びエラーレートのいずれか一方が予め定められた条件を満たすかどうかを判断してもよい。
【0068】
(光送信器の検証結果)
光送信器1の検証結果について説明する。パルスパターン発生器111の10Gbit/sのNRZ(Non Return to Zero)のデータ信号に対して、01を反転させていない信号及び01を反転させている信号を用いて、それぞれDML12及びEA変調器13を駆動した。このときのPRBS(Pseudo Random Binary Sequence)信号の段数を31段とした。
【0069】
100kmの伝送後の検証については、光送信器1の光出力信号に対して、光ファイバN1としての17ps/nm/kmの分散特性を有する通常のSMF(Single Mode Fiber)を用いて100kmの伝送を行い、光増幅器N2としてのEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)を用いて伝搬損失の補償を行い、バンドパスフィルタN3を用いて濾波を行い、エラー検出器N8を用いてエラーレートを測定した。Back to Backの伝送後の検証については、光ファイバN1、光増幅器N2及びバンドパスフィルタN3を用いない。
【0070】
本発明の光送信器の検証結果を図8に示す。白三角は、温度30℃に対して最適化された駆動条件を用いた、温度30℃におけるBack to Backの伝送後のエラーレートを示しており、黒三角は、温度30℃に対して最適化された駆動条件を用いた、温度30℃における100kmの伝送後のエラーレートを示している。黒丸は、温度30℃に対して最適化された駆動条件を用いた、温度55℃における100kmの伝送後のエラーレートを示しており、白丸は、温度55℃に対して最適化された駆動条件を用いた、温度55℃における100kmの伝送後のエラーレートを示している。
【0071】
温度30℃に対して最適化された駆動条件を用いて、温度30℃においてBack to Backの伝送を行ったときには、エラーレートが10−12であるときの最小受信感度は−14.2dBmであった。温度30℃に対して最適化された駆動条件を用いて、温度30℃において100kmの伝送を行ったときには、エラーレートが10−12であるときの最小受信感度は−12.8dBmであった。温度30℃に対して最適化された駆動条件を用いて、温度55℃において100kmの伝送を行ったときには、エラーレートが10−12であるときの最小受信感度は−11.1dBmであった。温度55℃に対して最適化された駆動条件を用いて、温度55℃において100kmの伝送を行ったときには、エラーレートが10−12であるときの最小受信感度は−13.2dBmであった。このように、温度55℃において100kmの伝送を行ったときに、駆動条件の最適化前後で最小受信感度が(−11.1dBm)−(−13.2dBm)=2.1dBm改善した。
【0072】
温度調節素子を備える従来技術のある光送信器においては、室温で設定温度30℃に設定した際の温度調節素子の消費電力は1.2Wであり、室温で設定温度を55℃に設定した際の消費電力は1.7Wであった。本発明の光送信器においては、温度調節素子が不要となるため、上記の消費電力を軽減する効果を見込めることが想定される。
【0073】
なお、DML12やEA変調器13での周波数変動に、変調ビット列に対するパターン依存性がある場合は、そのパターン依存性を打ち消すように、変調制御部16からDML12やEA変調器13への変調信号を変形してもよい。例えば、同一符号の連続する長さが長くなる程、周波数チャープ量が増加する場合は、変調信号の透過振幅が増加する周波数−透過強度特性を有する低域濾波器を経由させればよい。逆に、同一符号の連続する長さが長くなる程、周波数チャープ量が減少する場合は、変調信号の透過振幅が減少する周波数−透過強度特性を有する高域濾波器を経由させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る光送信器及び光送信器の駆動条件設定装置は、長延化を図る光アクセス網において、温調を備えずに環境温度によらずに分散耐性を向上することができるため、装置低廉化及び消費電力低減化するときに適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:光送信器
2:駆動条件設定装置
11:伝送信号出力部
12:DML
13:EA変調器
14:温度測定部
15:駆動条件設定テーブル格納部
16:変調制御部
21:温度設定部
22:周波数変動・エラーレート取得部
23:駆動条件設定テーブル作成部
111:パルスパターン発生器
112、113:フェーズシフタ
N:駆動条件設定システム
N1:光ファイバ
N2:光増幅器
N3:バンドパスフィルタ
N4:光減衰器
N5:光カプラ
N6:周波数チャープ測定器
N7:光受信器
N8:エラー検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調した光信号を出力する変調部と、
前記変調部での温度を測定する温度測定部と、
前記変調部での温度変化によらず前記変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを格納する駆動条件設定テーブル格納部と、
前記温度測定部が測定した温度及び前記テーブルが設定した当該温度における駆動条件に基づいて、前記変調部を制御する変調制御部と、
を備えることを特徴とする光送信器。
【請求項2】
変調した光信号を出力する変調部と、
前記変調部での温度を測定する温度測定部と、
前記変調部での温度変化によらず前記光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを格納する駆動条件設定テーブル格納部と、
前記温度測定部が測定した温度及び前記テーブルが設定した当該温度における駆動条件に基づいて、前記変調部を制御する変調制御部と、
を備えることを特徴とする光送信器。
【請求項3】
前記温度測定部は、前記変調部での出力強度及び駆動条件に基づいて、前記変調部での温度を推定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項4】
変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定部と、
前記変調部での周波数変動の情報を取得する周波数変動取得部と、
前記変調部での温度変化によらず前記変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成部と、
を備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定装置。
【請求項5】
変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定部と、
前記光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得するエラーレート取得部と、
前記変調部での温度変化によらず前記光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、前記変調部での各温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成部と、
を備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定装置。
【請求項6】
変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定ステップと、
前記変調部での周波数変動の情報を取得し、前記変調部での温度変化によらず前記変調部での周波数変動が予め定められた条件を満たすように、前記変調部での前記温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成ステップと、
を順に備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定方法。
【請求項7】
変調した光信号を出力する変調部での温度を設定する温度設定ステップと、
前記光信号の伝搬後のエラーレートの情報を取得し、前記変調部での温度変化によらず前記光信号の伝搬後のエラーレートが予め定められた条件を満たすように、前記変調部での前記温度における前記変調部での駆動条件を設定したテーブルを作成する駆動条件設定テーブル作成ステップと、
を順に備えることを特徴とする光送信器の駆動条件設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175352(P2012−175352A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34714(P2011−34714)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】