説明

光透過型金属電極、電子装置及び光学素子

【課題】シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極、電子装置及び光学素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、複数の第1金属線と、複数の第2金属線と、を含む光透過型金属電極が提供される。複数の第1金属線は、第1方向に沿って並ぶ。第1金属線は、第1方向と交差する第2方向に沿って延びる。複数の第2金属線は、第1方向と第2方向を含む平面に対して平行で第1方向と交差する第3方向に沿って並び、第1金属線と接触する。第2金属線は、その平面に対して平行で第3方向と交差する第4方向に沿って延びる。複数の第1金属線の第1方向における中心どうしの第1距離は、可視光を含む波長帯の最短の波長以下である。複数の第2金属線の第3方向における中心どうしの第2距離は、波長帯の最長の波長を超える。第1金属線と第2金属線の厚さは、最短の波長以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光透過型金属電極、電子装置及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子、光電変換素子及び表示装置などの電子装置において、光を透過する電極が用いられる。このような電極としては、例えば、酸化物導電材料の一つであるITO(Indium Tin Oxide)が用いられている。ガラス基板上にITO膜を形成したときの可視光領域の透過率は80%程度である。一方で、そのシート抵抗は、10Ω/□(オーム/square)以上100Ω/□以下程度であり、一般的な金属材料による電極に比べて高い。
【0003】
一方、金属薄膜に円形開口部を周期的に形成した金属ナノ構造体や、金属細線を用いた光透過性電極がある。しかしながら、これらの構成を用いても低いシート抵抗を維持しながら、広い波長範囲で高い透過率を得るにためは改良の余地がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Q. Chen and D. E. S. Cumming, “High transmission and low color cross-talk plasmonic color filters using triangular-lattice hole arrays in aluminum films”, Optics Express, Volume 18, Issue 13, 14056-14062 (2010).
【非特許文献2】M. Kang, M. Kim, J. Kim and L. J. Guo, “Organic Solar Cells Using Nanoimprinted Transparent Metal Electrodes”, Advanced Materials, Issue 20, 4408-4413(2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極、電子装置及び光学素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、複数の第1金属線と、複数の第2金属線と、を含む光透過型金属電極が提供される。前記複数の第1金属線は、第1方向に沿って並んで配置される。前記複数の第1金属線のそれぞれは、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる。複数の第2金属線は、前記第1方向と前記第2方向を含む平面に対して平行で前記第1方向と交差する第3方向に沿って並んで配置される。複数の第2金属線は、前記複数の第1金属線と接触する。前記複数の第2金属線のそれぞれは、前記平面に対して平行で前記第3方向と交差する第4方向に沿って延びる。前記複数の第1金属線のそれぞれの第1方向における中心どうしの第1距離は、可視光を含む波長帯のうちの最短の波長以下である。前記複数の第2金属線のそれぞれの第3方向における中心どうしの第2距離は、前記波長帯のうちの最長の波長を超える。前記第1金属線と前記第2金属線の前記平面に対して垂直な方向に沿った厚さは、前記最短の波長以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極を示す模式図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の特性を示す模式図である。
【図3】金属電極層の特性を示すグラフ図である。
【図4】第1の実施形態に係る光透過型金属電極の特性を示すグラフ図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、光透過型金属電極を示す模式的平面図である。
【図6】図6(a)〜図6(d)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の別の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、光透過型金属電極の特性を示すグラフ図である。
【図9】図9(a)〜図9(c)は、光透過型金属電極の特性を示すグラフ図である。
【図10】図10(a)及び図10(b)は、光透過型金属電極の特性を示すグラフ図である。
【図11】第1の実施形態に係る別の光透過型金属電極を示す模式的平面図である。
【図12】第1の実施形態に係る別の光透過型金属電極を示す模式的断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る電子装置を示す模式的断面図である。
【図14】第2の実施形態に係る別の電子装置を示す模式的断面図である。
【図15】第2の実施形態に係る別の電子装置を示す模式的断面図である。
【図16】第2の実施形態に係る別の電子装置を示す模式的断面図である。
【図17】第3の実施形態に係る光学素子を示す模式的斜視図である。
【図18】第3の実施形態に係る別の光学素子を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の構成を例示する模式図である。
図1(a)は斜視図である。図1(b)は、平面図である。
図1(a)及び図1(b)に表したように、本実施形態に係る光透過型金属電極310は、複数の第1金属線10と、複数の第2金属線20と、を含む。
【0010】
複数の第1金属線10は、第1方向D1に沿って並んで配置される。複数の第1金属線10のそれぞれは、第1方向D1と交差する第2方向D2に沿って延びる。この例では、第2方向D2は、第1方向D1に対して垂直である。
【0011】
例えば、第1方向D1と第2方向D2とを含む平面をX−Y平面とする。X−Y平面に対して平行な1つの方向をX軸方向とする。X−Y平面に対して平行でX軸方向に対して垂直な1つの方向をY軸方向とする。X軸方向とY軸方向とに対して垂直な方向をZ軸方向とする。
【0012】
例えば、第1方向D1は、X軸方向に対して平行である。第2方向D2は、Y軸方向に対して平行である。複数の第1金属線10のうちの1つから、複数の第1金属線10のうちの別の1つに向かう方向は、第1方向である。
【0013】
複数の第2金属線20は、第3方向D3に沿って並んで配置される。複数の第2金属線20は、複数の第1金属線10と接触する。第3方向D3は、第1方向D1と交差する。複数の第2金属線20のそれぞれは、第3方向D3と交差する第4方向D4に沿って延びる。第3方向D3及び第4方向D4は、第1方向D1と第2方向D2とを含む平面(X−Y平面)に対して平行である。
【0014】
この例では、第4方向D4は、第3方向D3に対して垂直である。この例では、第3方向D3は、Y軸方向に対して平行である。第4方向D4は、X軸方向に対して平行である。すなわち、第3方向D3は、第1方向D1に対して垂直である。ただし、後述するように、実施形態はこれに限らない。第3方向D3は、第1方向D1に対して非平行でも良い。
【0015】
以下では、説明を簡単にするために、第1方向D1がX軸方向に対して平行で、第2方向D2がY軸方向に対して平行で、第3方向D3がY軸方向に対して平行で、第4方向D4がX軸方向に対して平行である場合について説明する。
【0016】
説明を簡単にするために、複数の第1金属線10を適宜、第1アレイ15と言い、複数の第2金属線20を適宜第2アレイ25と言う。複数の第1金属線10と、複数の第2金属線20と、は実質的に同じ層(X−Y平面に対して平行な層)内に設けられている。複数の第1金属線10と、複数の第2金属線20と、を合わせて金属電極層30と言う。金属電極層30は、例えば、電極として機能する層である。金属電極層30は、第1アレイ15と第2アレイ25とを含む。第1アレイ15は、複数の第1金属線10を含む。第2アレイ25は、複数の第2金属線20を含む。
【0017】
複数の第1金属線10のそれぞれの第1方向D1における中心どうしの距離を第1距離p1とする。複数の第1金属線10のそれぞれの第1方向D1における中心どうしの距離(第1距離p1)は、複数の第1金属線10の全てにおいて同じでなくても良い。以下では、説明を簡単にするために、第1距離p1が、複数の第1金属線10の全てにおいて同じであるとして説明する。このときは、第1距離p1は、第1金属線10の配設ピッチ(周期)に相当する。
第1距離p1が、複数の第1金属線10どうしにおいて異なるときは、平均値を用いる。
【0018】
複数の第1金属線10のそれぞれの第1方向D1に沿った幅を第1幅w1とする。複数の第1金属線10のそれぞれの第1方向D1に沿った幅(第1幅w1)は、複数の第1金属線10の全てにおいて同じでなくても良い。以下では、説明を簡単にするために、第1幅w1が、複数の第1金属線10の全てにおいて同じであるとして説明する。
第1幅w1が、複数の第1金属線10どうしにおいて異なるときは、平均値を用いる。
【0019】
一方、複数の第2金属線20のそれぞれの第3方向D3における中心どうしの距離を第2距離p2とする。複数の第2金属線20のそれぞれの第3方向D3における中心どうしの距離(第2距離p2)は、複数の第2金属線20の全てにおいて同じでなくても良い。以下では、説明を簡単にするために、第2距離p2が、複数の第2金属線20の全てにおいて同じであるとして説明する。このときは、第2距離p2は、第2金属線20の配設ピッチ(周期)に相当する。
第2距離p2が、複数の第2金属線20どうしにおいて異なるときは、平均値を用いる。
【0020】
複数の第2金属線20のそれぞれの第3方向D3に沿った幅を第2幅w2とする。複数の第2金属線20のそれぞれの第3方向D3に沿った幅(第2幅w2)は、複数の第2金属線20の全てにおいて同じでなくても良い。以下では、説明を簡単にするために、第2幅w2が、複数の第2金属線20の全てにおいて同じであるとして説明する。
第2幅w2が、複数の第2金属線20どうしにおいて異なるときは、平均値を用いる。
【0021】
第1金属線10のZ軸方向(第1方向D1と第2方向D2を含む平面に対して垂直な方向)に沿った厚さを第1厚とする。第2金属線20のZ軸方向に沿った厚さを第2厚とする。第1厚は、必ずしも第2厚と同じでなくても良い。本実施形態では、第1厚は第2厚と同じである。以下では、第1厚及び第2厚が厚さtである場合として説明する。
【0022】
本実施形態においては、第1距離p1は、所定の長さ以下である。また、第2距離p2は、所定の長さを超える。
【0023】
ここで、光透過型金属電極310は、特定の波長の光を透過させる。この光の波長帯は、例えば、可視光の波長を含む。ここでは、可視光の波長は、400ナノメートル(nm)以上700nm以下とする。例えば、光透過型金属電極310は可視光を透過する。用途に応じて、光透過型金属電極310は赤外光を透過する。本願明細書において、赤外光の波長は、700nmを超え1マイクロメートル(μm)以下とする。
【0024】
本実施形態に係る光透過型金属電極310は、例えば、400nm以上1μm以下の波長の波長帯の光を透過する。この波長帯は、目的とする光(透過させる光)の波長帯である。この波長帯は、可視光を含む。この波長帯のうちで、最も短い波長を最短の波長λ1と言うことにする。この波長帯のうちで、最も長い波長を最長の波長λ2と言うことにする。最短の波長λ1及び最長の波長λ2は、用途に応じて定めることができる。400nm以上1μm以下の波長の波長帯を対象とするときは、最短の波長λ1は400nmであり、最長の波長λ2は1μmである。
【0025】
本実施形態においては、第1距離p1は、上記の可視光を含む波長帯のうちの最短の波長λ1以下である。第2距離p2は、上記の波長帯のうちの最長の波長λ2を超える。第1金属線10と第2金属線20の厚さtは、上記の最短の波長λ1以下である。
【0026】
これにより、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極が提供できる。
【0027】
第1距離p1は、例えば、10nm以上400nm以下である。第2距離p2は、例えば、1μm以上10μm未満である。厚さtは、5nm以上400nm以下である。
【0028】
第1金属線10及び第2金属線20には、金属が用いられる。第1金属線10及び第2金属線20は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉛、亜鉛、白金、コバルト、マグネシウム、クロム、タングステン及びパラジウムの少なくともいずれかを含む。第1金属線10及び第2金属線20は、上記の金属を含む合金を用いても良い。第1金属線10及び第2金属線20に金属を用いることで、低いシート抵抗が得られる。
【0029】
これらの金属材料は、例えば、透明酸化物半導体よりも低い抵抗率を有する。これにより、光透過型金属電極310のシート抵抗を、透明酸化物半導体を用いた透明電極のシート抵抗よりも低くすることができる。
【0030】
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の特性を例示する模式図である。
図2(a)は模式的斜視図である。図2(b)は、平面図である。
図2(a)に表したように、本実施形態に係る光透過型金属電極310は、例えば、基体50の上に設けられる。
【0031】
基体50には、例えば、石英基板、ガラス基板、サファイア基板などの透明基板やシリコン基板、ガリウム砒素基板、ガリウムリン基板、窒化ガリウム基板などの半導体基板、ポリエチレンテレフタラートなどのプラスチック基板などを用いることができる。基体50には、例えば、石英層、ガラス層、サファイア層、半導体層(シリコン層、ガリウム砒素層、ガリウムリン層及び窒化ガリウム層)、及び、有機材料層などを用いることができる。ただし、実施形態はこれに限らず、基体50の材料は任意である。
【0032】
図2(a)に表したように、第1アレイ15の延在方向に対して垂直な方向の電場を持つ光101は、第1アレイ15を透過する。第1アレイ15に入射した光101に対して、第1アレイ15は、例えば、ワイヤーグリッド偏光子として振る舞う。このように、光透過型金属電極310は、光透過性を有する。
【0033】
図4(b)に表したように、第1アレイ15に含まれる第1金属線10は、第1金属線10の延在方向(第2方向D2であり、この例ではY軸方向)に沿って、金属に基づく高い導電性を有する。第2アレイ25に含まれる第2金属線20は、第2金属線20の延在方向(第4方向D4であり、この例ではX軸方向)に沿って、金属に基づく高い導電性を有する。このように、金属電極層30においては、第2方向D2と第4方向D4を含む平面(X−Y平面)内において、高い導電性が得られる。
【0034】
一方、金属薄膜に数十〜数百ナノメートルサイズの円形開口部を周期的に形成した金属ナノ構造体を用いる構成(第1参考例)がある。ナノ開口を有する金属薄膜に光が入射すると、ナノ開口のエッジ部に表面電荷に由来した局在電場が生じる。この局在電場が入射電場と同様に振動するため、光が再輻射される。これにより、光の異常透過現象が生じる。それぞれのナノ開口から再輻射された光は、隣接ナノ開口からの光と干渉することによって、特定波長の光の透過が強められる。そのため、この金属ナノ構造体の透過スペクトルは、金属薄膜の材質、円形ナノ開口部の周期や開口径、周囲媒質の誘電率に応じた特定波長で、ピークを持つ。特定の波長では、開口率以上の透過率を得ることができる。特定波長でピーク値を取った後、ピーク波長よりも長波長側では著しく反射率が増大する。そのため、この金属ナノ構造体を光透過性電極として用いると、可視光の波長範囲全域で高い透明性を得ることは困難である。
【0035】
これに対し、後述するように、本実施形態に係る光透過型金属電極310は、広い波長範囲において、高い光透過性を有する。
【0036】
一方、マイクロメートルサイズの金属細線を用いた金属電極がある(第2参考例)。この金属電極は、光透過性の電極として利用され、光透過性が高いものの、光透過性を高くするために開口部が広く設けられている。そのため、透明酸化物半導体に比べてシート抵抗が高い。このような構造の金属電極では、開口部は光を透過させるが、金属部は光を遮蔽する。このような構造の金属電極の光学特性は、金属部と同じ体積を持つ平坦膜の金属薄膜の光学特性と一致する。
【0037】
このような開口部を有する金属細線からなる金属電極におけるシート抵抗Rsh(Ω/□)は、金属の比抵抗ρ(Ωm:オーム・メートル)、金属電極の厚さt(m:メートル)、及び、単位面積当たりの金属細線の占有率θを用いて、以下の第1式で表される。

sh=(ρ/t)×(1/θ) (1)

第1式から分かるように、高い光透過率を得るために金属細線の占有率θを減少させると、シート抵抗Rshが増大する。
【0038】
図3は、金属電極層の特性を例示するグラフ図である。
図3の横軸は、シート抵抗Rshである。縦軸は光透過率Trである。図3に示された曲線(特性C1)は、第2参考例の金属電極において、金属細線の占有率θ及び金属電極の厚さtを変えてシート抵抗Rshを変えたときの光透過率Trの変化を示している。
【0039】
図3に表したように、第1式の特性を有する第2参考例の金属電極においては、高い光透過率Trを得ようとすると、シート抵抗Rshは高くなる。特に、シート抵抗Rshが高い領域R1においては、光透過率Trは急激に低下する。
【0040】
本実施形態に係る光透過型金属電極310は、図3に例示した特性E1を有する。特性E1においては、シート抵抗Rshが低い領域R1において、第2参考例の特性C1よりも高い光透過率Trが得られる。このように、光透過型金属電極310においては、低いシート抵抗Rshと同時に、高い光透過率Trを得ることができる。
【0041】
本実施形態に係る光透過型金属電極310の特性の例についてさらに説明する。
光透過型金属電極310においては、例えば、金属ワイヤーグリッド偏光子(以下、簡単のために適宜「グリッド偏光子」と言う)の構造が利用されている。これにより、高い光透明性が得られる。グリッド偏光子は、例えば、金属細線が周期的に並んだ構造を有する。金属細線の延在方向に対して垂直な電場を有する偏光に対しては広い波長領域で、高い光透明性が得られる。
【0042】
図4は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の特性を例示するグラフ図である。
図4の横軸は、光の波長λである。縦軸は、光透過率Trである。
図4には、第1金属線10の延在方向に対して垂直な電場の偏光に関する光透過率(垂直透過率107)と、第1金属線10の延在方向に対して平行な電場の偏光に関する光透過率(平行透過率108)と、が例示されている。さらに、全ての偏光方向の光に関する光透過率(全透過率109)が示されている。
【0043】
図4に表したように、垂直透過率107は、所定の長さd以上において上昇する。一方、平行透過率108は、所定の長さd以上において、減少する。光透過型金属電極310においては、金属電極層30の全偏光に対する全透過率109は、垂直透過率107のスペクトルと、平行透過率108のスペクトルと、平均となる。
このため、光透過型金属電極310においては、波長依存性が小さく、広い波長範囲で、高い光透過率Trが得られる。
【0044】
グリッド偏光子を厚さの無い完全導体と仮定することで、グリッド偏光子に対して垂直な電場の偏光の光透過率(垂直透過率107)は、数式により表すことができる。これによると、グリッド偏光子の周期が入射光の波長以下の領域で、透過率が高くなる。また、グリッド偏光子の周期に対する細線幅の比が大きくなると、グリッド偏光子に対して垂直な電場の偏光の光透過率(垂直透過率107)が低くなる。
【0045】
一般に、グリッド偏光子の光透過率特性を検討する際には、グリッド偏光子の金属細線を完全導体として扱う。このため、厚さの効果については、考慮されない。さらに、リッド偏光子の金属細線の延在方向に対して平行な電場の偏光に対するグリッド偏光子の光透過特性(例えば平行透過率108)の性質に関しては、正しく記述されていない。
【0046】
本願発明者は、検討の結果、グリッド偏光子の金属細線の延在方向に対して平行な電場の偏光に対するグリッド偏光子の光透過特性は、グリッド偏光子の金属細線と同じ体積の金属平坦膜の光透過率特性と同じ程度であることを見出した。
【0047】
本実施形態に係る光透過型金属電極310においては、金属電極層30の厚さが、目的とする光の波長以下であれば、金属細線の延在方向に対して垂直な電場の偏光のみならず、金属細線の延在方向に対して平行な電場の偏光に対しても高い透過率が得られる。
【0048】
光透過型金属電極310においては、例えば、第1アレイ15(第1金属線10)において、グリッド偏光子の特性に基づいた高い光透過率Trが得られる。第1アレイ15の第1金属線10の第1距離p1は、金属電極層30を通過する光の波長以下に設定される。
【0049】
例えば、光透過型金属電極310を、可視光を透過させる電極として用いる場合には、第1金属線10の第1距離p1(周期に相当する)を、可視光の波長以下に設定する。具体的には、第1距離p1を400nm以下に設定する。
【0050】
第1金属線10の第1距離p1が10nm未満においては、微細加工の点で、製造が困難になり、歩留まりが悪くなる。このため、第1距離p1は、10nm以上であることが好ましい。
【0051】
一方、第2金属線20の第2距離p2(周期に相当する)は、金属電極層30を通過させる光の波長よりも大きく設定される。これにより、第1参考例のように特定波長でのみ光の異常透過現象が起こることが抑制され、第1金属線10をグリッド偏光子として作用させることができる。
【0052】
例えば、光透過型金属電極310を、可視光を透過させる電極として用いる場合には、第2金属線20の第2距離p2は、1μm以上であることが好ましい。第2距離p2が10μm以上では、第1金属線10が過度に長くなり、抵抗が高くなる。例えば、線幅が100nmで、厚さが100nm、長さが40μmのアルミニウムの1本の金属線の抵抗は、約100Ωと高い。
【0053】
図5(a)〜図5(c)は、光透過型金属電極の構成を例示する模式的平面図である。 図5(a)に表したように、第3参考例の光透過型金属電極393においては、第2金属線20の第2距離p2(周期に相当)は、10μm以上である。図5(b)に表したように、本実施形態に係る光透過型金属電極310においては、第2距離p2は、最長の波長λ2以上で、10μm未満である。図5(c)に表したように、第4参考例の光透過型金属電極394においては、第2距離p2は、最短の波長λ1未満である。
【0054】
第3参考例の光透過型金属電極393においては、高い光透過率Trが得られるが、シート抵抗Rshは高い。第4参考例の光透過型金属電極394においては、低いシート抵抗Rshが得られるが、光透過率Trは低い。
【0055】
これに対して、実施形態に係る光透過型金属電極310においては、低いシート抵抗Rshと、高い光透過率Trと、が得られる。光透過型金属電極310においては、例えばグリッド偏光子として機能する第1金属線10を、適切な間隔で設けられた第2金属線20により架橋することで、低いシート抵抗Rshと、高い光透過率Trと、が得られる。
【0056】
第1アレイ15と第2アレイ25とを含む金属電極層30のシート抵抗Rshは、上記の第1式を用いることで計算することができる。たとえば、金属電極層30として銀を用い、第1アレイ15及び第2アレイ25における金属線幅の周期に対する比が0.1で、金属電極層30の厚さtが100nmの場合、シート抵抗Rshは、約1.6Ω/□と算出される。
【0057】
金属電極層30の厚さが5nm未満になると、用いる金属材料や、金属線幅の周期に対する比によっては、シート抵抗Rshが5Ω/□よりも高くなることがある。
【0058】
第1アレイ15及び第2アレイ25の金属線幅の周期に対する比は、0.1以上0.5以下であることが好ましい。この比が0.1未満のときには、用いる金属材料や厚さtによっては、シート抵抗Rshが5Ω/□よりも高くなることがある。
【0059】
第1金属線10の第1距離p1に対する第1幅w1の比が0.5よりも大きくなると、例えば、第1金属線10の部分の光透過性が過度に低くなる。第2金属線20の第2距離p2に対する第2幅w2の比が0.5よりも大きくなると、第1アレイ15における光透過を担う領域を覆ってしまい、光透過率Trが過度に低くなる。
【0060】
第1アレイ15において、第1幅w1の第1距離p1に対する比は、0.1以上0.5以下に設定される。第2幅w2の第2距離p1に対する比は、0.1以上0.5以下に設定される。これにより、低いシート抵抗Rshと、高い光透過率Trと、を得やすくなる。
【0061】
以下、光透過型金属電極の製造方法の例について説明する。ただし、実施形態は、以下に説明する方法に限らない。実施形態において、光透過型金属電極の製造方法は任意である。実施形態においては、第1アレイ15においては、光の波長以下のラインアンドスペースの形状が設けられる。このような形状を有する構造を作製するために、微細加工技術が用いられる。
【0062】
図6(a)〜図6(d)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図6(a)に表したように、例えば、基体50の上に、金属膜30fを形成する。金属膜30fの形成には、例えば、抵抗加熱方式の真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザー蒸着法、スパッタ法、CVD法及びMBE法などが用いられる。
【0063】
図6(b)に表したように、金属電極層30のパターンに対応する形状を有するパターン層31を形成する。パターン層31の形成には、例えば、光リソグラフィー法、電子線リソグラフィー法、ナノインプリント法、ソフトインプリント法、ブロックポリマーリソグラフィー法、及び、走査プローブ法などを用いることができる。
【0064】
図6(c)に表したように、パターン層31をマスクとして用い、金属膜30fを加工する。この加工には、例えば、ドライエッチング法、イオンミリング法、及び、フォーカスイオンビーム法などを用いることができる。
【0065】
図6(d)に表したように、パターン層31を除去する。これにより、所定の形状を有する金属電極層30が形成される。これにより、光透過型金属電極310が形成される。
【0066】
図7(a)〜図7(c)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極の別の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図7(a)に表したように、例えば、基体50の上に、金属電極層30のパターンに対応する形状を有するパターン層32を形成する。このパターン層32は、金属電極層30のパターンを反転させたパターンを有する。パターン層32の形成には、任意の方法を用いることができる。
【0067】
図7(b)に表したように、金属膜30fを形成する。図7(c)に表したように、パターン層32を除去する。これにより、金属電極層30が形成され、光透過型金属電極310が形成される。この製造方法においては、例えば、リフトオフ法やめっき法が用いられる。
【0068】
金属電極層30の構造は、例えば、電子顕微鏡を用いて観察できる。例えば、撮像範囲内に、2本以上10本以下の第1金属線10を入れて撮像する。得られた電子顕微鏡像を用いて、第1金属線10の第1距離p1及び第1幅w1を測定することができる。撮像範囲内に、2本以上10本以下の第2金属線20を入れて、撮像する。得られた電子顕微鏡像を用いて、第2金属線20の第2距離p2及び第2幅w2を測定することができる。このとき、第1距離p1、第1幅w1、第2距離p2及び第2幅w2のそれぞれの平均値、及び、ばらつきを測定することができる。既に説明したように、これらの値として、得られた平均値を用いる。なお、金属電極層30の上に例えば誘電体など層が設けられている場合には、上記の電子顕微鏡観察の前に、必要に応じてその層を除去し金属電極層30を露出させる。
【0069】
光透過型金属電極310のシート抵抗Rshは、例えば、以下のようにして測定できる。必要に応じて金属電極層30を露出させる。金属電極層30の上に、間隔の異なる複数のオーミック接触の電極対を形成する。それぞれの電極対について、電流電圧特性を測定し、電気抵抗を算出する。電極間隔を横軸とし、電気抵抗を縦軸とした座標上に、測定された電気抵抗をプロットする。プロットされた点から得られた近似的な1次直線の傾きから、光透過型金属電極310のシート抵抗Rshを算出することができる。
【0070】
光透過型金属電極310において、第1アレイ15は、例えばグリッド偏光子として働く。第1アレイ15は、光の波長の長さ程度の領域で平均的な構造として光学的な応答を示す。例えばエッチングなどの製造工程に起因して金属線の側部に凹凸が存在すると、グリッド偏光子の線幅が乱れた構造となり、光透過率が変化することがある。
【0071】
本願発明者は、検討の結果、第1金属線10の第1幅w1のばらつきが、第1幅w1の平均値に対して±25%以内の範囲において、光学的特性が実質的に損なわれないことを見出した。
【0072】
第2アレイ25は、例えば、第1アレイ15の第1金属線10どうしを低抵抗で導通させる機能を果たす。第1金属線10の第1幅w1に比べて第2金属線20の第2幅w2は大きく設定される。このため、第2アレイ25における金属線の側部の凹凸の全体に占める割合は小さく、凹凸のシート抵抗Rshへの影響は小さい。
【0073】
本願発明者は、検討の結果、第2金属線20の第2幅w2のばらつきが、第2幅w2の平均値に対して±5%以内の範囲において、シート抵抗Rshへの影響が実質的に発生しないことを見出した。
【0074】
以下、本実施形態に係る光透過型金属電極310の特性の例について説明する。光透過型金属電極310の構成を変えてコンピュータによる光学シミュレーションの結果を、参考例と共に説明する。光学シミュレーションでは、厳密結合波解析を行う。厳密結合波解析の解析ソフトとして、Rsoft社のDiffractMODが用いられる。
【0075】
この光学シミュレーションにおいては、計算領域内に、基板である直方体と、直方体から離れた位置で、直方体に対して水平に光源と、が配置され、直方体内部で光源に対して水平な面への光強度が求められた。
【0076】
直方体の上面に、金属電極層30が水平に配置される。金属電極層30の第1金属線10は10本であり、第2金属線20は4本である。第1金属線10のそれぞれはY軸方向に沿い、第2金属線20のそれぞれはX軸方向に沿う。厳密結合波解析において、X軸方向及びY軸方向について、フーリエ展開の次数を10次として解析が行われる。
また、シート抵抗Rshは、抵抗率として文献値を用い、第1式により算出される。
【0077】
第1距離p1に対する第1幅w1の比を第1比θ1とする。第2距離p2に対する第2幅w2の比を第1比θ2とする。これらの値、及び、厚さt1を変えて、特性が求められた。
【0078】
図8(a)〜図8(c)、図9(a)〜図9(c)、及び、図10(a)及び図10(b)は、光透過型金属電極の特性を例示するグラフ図である。
これらの図の横軸は、波長λ(nm)であり、縦軸は、光透過率Trである。光透過率Trは、全偏光に関する透過率である。
【0079】
上記の各グラフは、シミュレーションの以下の第1〜第8条件601〜608の結果をそれぞれ示している。
第1条件601においては、第1距離p1(周期に相当する)200nm、第1比θ1は0.2、第2距離p2(周期に相当する)は5μm、第2比θ2は0.2、厚さt1は100nmである。
第2条件602においては、第1距離p1は700nm、第1比θ1は0.3、第2距離p2は5μm、第2比θ2は、0.3、厚さt1は300nmである。
第3条件603においては、第1距離p1は200nm、第1比θ1は0.7、第2距離p2は5μm、第2比θ2は、0.3、厚さt1は300nmである。
第4条件604においては、第1距離p1は200nm、第1比θ1は0.3、第2距離p2は5μm、第2比θ2は、0.3、厚さt1は700nmである。
第5条件605においては、第1距離p1は200nm、第1比θ1は0.3、第2距離p2は500nm、第2比θ2は、0.3、厚さt1は200nmである。
第6条件606においては、第1距離p1は200nm、第1比θ1は0.3、第2距離p2は5μm、第2比θ2は、0.7、厚さt1は100nmである。
第7条件607においては、第1距離p1は200nm、第1比θ1は0.3、第2距離p2は5μm、第2比θ2は、0.3、厚さt1は4nmである。
第8条件608においては、第1距離p1は200nm、第1比θ1は0.1、第2距離p2は5μm、第2比θ2は、0.05、厚さt1は50nmである。
【0080】
図8(a)に表したように、第1条件601においては、広い波長範囲において、0.4以上の高い光透過率Trが得られる。第1条件601の構成において、金属電極層30としてAgを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは0.8Ω/□である。
【0081】
図8(b)に表したように、第2条件602においては、約500nm以下の波長λにおいて光透過率Trが低下している。第2条件602においては、第1距離p1が700nmであり、第1距離p1よりも短い波長λにおいて光透過率Trが低下する。なお、第2条件602の構成において、金属電極層30としてAuを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは、0.3Ω/□である。
【0082】
図8(c)に表したように、第3条件603においては、約500nm以下の波長λにおいて光透過率Trが著しく低下している。なお、第3条件603の構成において、金属電極層30としてCuを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは0.2Ω/□である。
【0083】
図9(a)に表したように、第4条件604においては、約500nm以下の波長λにおいて光透過率Trが著しく低下している。第4条件604においては、厚さt1が700nmであり、厚さt1よりも短い波長λにおいて光透過率Trが低下する。なお、第4条件604の構成において、金属電極層30としてAuを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは0.1Ω/□である。
【0084】
図9(b)に表したように、第5条件605においては、約500nm〜約700nmの範囲の特定の波長領域においては光透過率Trは高いが、それ以外の波長領域においては、光透過率Trが低い。なお、第5条件605の構成において、金属電極層30としてAgを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは0.3Ω/□である。
【0085】
図9(c)に表したように、第6条件606においては、400nm〜1μmの範囲において光透過率Trは低い。第6条件606においては、第2比θ2が0.7と大きいため、金属電極30の大面積被覆により、光透過率Trが低くなる。なお、第6条件606の構成において、金属電極層30としてNiを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは2.3Ω/□である。
【0086】
図10(a)に表したように、第7条件607においては、400nm〜1μmの範囲において高い光透過率Trが得られる。第7条件607においては、厚さt1は4nmと薄い。第7条件607の構成において、金属電極層30としてAuを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは20Ω/□と非常に高い。
【0087】
図10(b)に表したように、第8条件608においても、400nm〜1μmの範囲において高い光透過率Trが得られる。第8条件608においては、第2比θ2は、0.05と非常に小さい。第8条件608の構成において、金属電極層30としてNiを用いた場合には、計算によって求められるシート抵抗Rshは28Ω/□と非常に高い。
【0088】
このように、本実施形態に係る光透過型金属電極310においては、第1距離p1は最短の波長λ1以下、第2距離p2は最長の波長λ2を超え、厚さt1はλ1以下に設定することで、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極を提供できる。
【0089】
図11は、第1の実施形態に係る別の光透過型金属電極の構成を例示する模式的平面図である。
図11に表したように、本実施形態に係る別の光透過型金属電極320も、複数の第1金属線10と、複数の第2金属線20と、を含む。この例では、第3方向D3は、第1方向D1(例えばX軸方向)に対して垂直でなく傾斜しており、第4方向D4は、第2方向D2(例えばY軸方向)に対して垂直でなく傾斜している。これ以外は、光透過型金属電極310と同様なので説明を省略する。光透過型金属電極320によっても、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極を提供することができる。
【0090】
図12は、第1の実施形態に係る別の光透過型金属電極の構成を例示する模式的断面図である。
図12は、図1のA1−A2線断面に相当する断面図である。
図12に表したように、本実施形態に係る光透過型金属電極330は、第1金属線10及び第2金属線20を含む金属電極層30を含む。光透過型金属電極330は、薄膜層35をさらに含む。
【0091】
薄膜層35は、第1金属線10及び第2金属線20に接する。薄膜層35は、第1金属線10及び第2金属線20の材料とは異なる材料を含む。この例では、薄膜層35は、第1金属線10及び第2金属線20を覆っている。ただし、薄膜層35は、第1金属線10どうしの間の空間、及び、第2金属線20どうしの間の空間、第1金属線10の上、及び、第2金属線20の上、の少なくともいずれかに設けられていても良い。
【0092】
薄膜層35を設けることで、例えば、第1金属線10及び第2金属線20の機械的強度が向上する。薄膜層35は、光透過性を有する。薄膜層35は、絶縁性である。薄膜層35には、有機または無機材料が用いられる。
【0093】
以下、本実施形態に係るいくつかの実施例について説明する。
【0094】
(第1の実施例)
石英基板上に、真空蒸着によりAg層を100nmの厚さで形成する。レジスト(THMR−iP3250、(株)東京応化工業)を乳酸エチル(EL)で1:2(レジスト:EL=1:2)に希釈した溶液を準備する。この溶液をAg層上へ、2800rpmで、35秒間で、スピンコートを行う。この後、ホットプレート上において100℃で90秒間加熱して溶媒を蒸発させる。これによりレジスト膜が形成される。レジスト膜の厚さは、170nmである。
【0095】
石英モールドを用意する。石英モールドの1つの面(転写面)には、複数の凸部が設けられている。転写面の法線に沿ってみたときに、1つの凸部は、実質的に長方形の形状を有する。この例では、長方形の短辺の長さ(第1軸に沿った長さ)は160nmで、長辺の長さ(第1軸に対して垂直な第2軸に沿った長さ)は4μmである。複数の凸部は、200nmの第1軸に沿った周期と、5μmの第2軸に沿った周期と、で並ぶ。凸部の高さは、200nmである。レジスト膜付基板を125℃に加熱した状態で、石英モールドの転写面を、レジスト膜に20MPaの圧力で押し付けて、熱ナノインプリントを行う。熱ナノインプリント後、基板を室温まで冷却し、石英モールドをリリースする。熱ナノインプリント後において、レジスト膜上に、第1軸に沿った長さが160nm、第1軸に沿った周期が200nm、第2軸に沿った長さが4μm、第2軸に沿った周期が5μm、深さが190nmの凹パターンが形成される。
【0096】
凹パターンが形成されたレジスト膜を、CF:30sccm、10mTorr、RFパワー100Wの条件で、60秒間の反応性イオンエッチングを行う。CFのRIEにより、Ag膜が露出する。イオンミリング装置を用いて、加速電圧500V、イオン電流40mAの条件で180秒間、Ag層のエッチングを行う。エッチング後、レジスト膜を除去するため、アセトンに浸漬し超音波洗浄を行う。これより、光透過型金属電極310が得られる。
光透過型金属電極310のシート抵抗Rshは、例えば、0.8Ω/□である。この光透過型金属電極310における光透過率Trは、400nm以上1000nm以下の波長に対して、40%以上55%以下である。
【0097】
(第2の実施例)
石英基板上に、真空蒸着によりAu層を300nmの厚さで形成する。第1の実施例と同様の方法を用い、石英基板上にレジスト膜を形成する。レジスト膜の厚さは、170nmである。この例では、石英モールドの1つの凸部の第1軸に沿った長さは270nmで、第2軸に沿った長さは横6.8μmである。複数の凸部は、300nmの第1軸に沿った周期と、8μmの第2軸に沿った周期と、で並ぶ。凸部の高さは、200nmである。レジスト膜付基板を125℃に加熱した状態で石英モールドの転写面をレジスト膜に20MPaの圧力で押し付けて熱ナノインプリントを行う。基板を室温まで冷却し石英モールドをリリースした後において、レジスト膜上に、第1軸に沿った長さが270nm、第1軸に沿った周期が300nm、第2軸に沿った長さが6.8μm、第2軸に沿った周期が8μm、深さが190nmの凹パターンが形成される。
【0098】
凹パターンが形成されたレジスト膜を、O:30sccm、1.3Pa、RFパワー100Wの条件で70秒間のエッチングを行う。OのRIEにより、Au膜が露出する。イオンミリング装置を用いて、加速電圧500V、イオン電流40mAの条件で600間、Au層のエッチングを行う。エッチング後、レジスト膜を除去するため、O:30sccm、13.3Pa、RFパワー100Wの条件で180秒間エッチングを行う。これにより、光透過型金属電極310が得られる。
この光透過型金属電極310のシート抵抗Rshは、例えば、0.9Ω/□である。この光透過型金属電極310における光透過率Trは、400nm以上1000nm以下の波長に対して、35%以上46%以下である。
【0099】
(第3の実施例)
石英基板に真空蒸着によりCu層を100nmの厚さで形成する。第1の実施例と同様の方法を用い、レジスト膜を形成する。レジスト膜の厚さは、150nmである。この例では、石英モールドの1つの凸部の第1軸に沿った長さは70nmで第2軸に沿った長さは7.2μmである。複数の凸部は、100nmの第1軸に沿った周期と、9μmの第2軸に沿った周期と、で並ぶ。凸部の高さは150nmである。レジスト膜付基板を125℃に加熱した状態で石英モールドの転写面をレジスト膜に40MPaの圧力で押し付けて熱ナノインプリントを行う。基板を室温まで冷却し石英モールドをリリースした後において、レジスト膜上に、第1軸に沿った長さが70nm、第1軸に沿った周期が100nm、第2軸に沿った長さが7.2μm、第2軸に沿った周期が9.0μm、深さが140nmの凹パターンが形成される。
【0100】
凹パターンが形成されたレジスト膜を、CF:30sccm、10mTorr、RFパワー100Wの条件で50秒間の反応性イオンエッチングを行う。CFのRIEにより、Cu膜が露出する。イオンミリング装置を用いて、加速電圧500V、イオン電流40mAの条件で180秒間、Cu層のエッチングを行う。エッチング後、レジスト膜を除去するため、アセトンに浸漬し超音波洗浄を行う。これにより、光透過型金属電極310が作製される。
この光透過型金属電極310のシート抵抗Rshは、例えば、1.0Ω/□である。この光透過型金属電極310における光透過率Trは、400nm以上1000nm以下の波長に対して、35%以上45%以下である。
【0101】
(第4の実施例)
石英基板上に、真空蒸着法によりAl層を厚さ100nmで形成する。第1の実施例と同様の方法を用い、レジスト膜を形成する。レジスト膜の厚さは、170nmである。この例では、石英モールドの1つの凸部の第1軸に沿った長さは320nmで、第2軸に沿った長さは2.4μmである。複数の凸部は、400nmの第1軸に沿った周期と、3μmの第2軸に沿った周期と、で並ぶ。凸部の高さは200nmである。レジスト膜付基板を125℃に加熱した状態で、石英モールドの転写面をレジスト膜に20MPaの圧力で押し付けて熱ナノインプリントを行う。基板を室温まで冷却し石英モールドをリリースした後において、レジスト膜上に、第1軸に沿った長さが320nm、第1軸に沿った周期が400nm、第2軸に沿った長さが2.4μm、第2軸に沿った周期が3μm、深さが170nmの凹パターンが形成される。
【0102】
反応性リアクティブエッチング装置により、レジスト残膜を除去した後、塩素プラズマエッチングによりAl層をエッチングする。残ったレジスト膜はアセトンで除去する。これにより、光透過型金属電極310が作製される。
この光透過型金属電極310のシート抵抗Rshは、例えば、1.1Ω/□である。この光透過型金属電極310における光透過率Trは、400nm以上1000nm以下の波長に対して、35%以上40%以下である。
【0103】
(第5の実施例)
n−GaP基板上に、真空蒸着法によりAu層を厚さ300nmで形成する。第1の実施例と同様にして、レジスト膜を形成する。レジスト膜の厚さは、150nmである。この例では、石英モールドの1つの凸部の第1軸に沿った長さは70nmで、第2軸に沿った長さは3.5μmである。複数の凸部は、100nmの第1軸に沿った周期と、5μmの第2軸に沿った周期と、で並ぶ。凸部の高さは、150nmである。レジスト膜付基板を125℃に加熱した状態で石英モールドの転写面をレジスト膜に20MPaの圧力で押し付けて熱ナノインプリントを行う。基板を室温まで冷却し、石英モールドをリリースした後において、レジスト膜上に、第1軸に沿った長さが320nm、第1軸に沿った周期が400nm、第2軸に沿った長さが3.5μm、第2軸に沿った周期が5μm、深さが140nmの凹パターンが形成される。
【0104】
反応性リアクティブエッチング装置により、レジスト残膜を除去した後、イオンミリングによりAu層をエッチングする。残ったレジスト膜はアセトンで除去する。これにより、光透過型金属電極310が作製される。
この光透過型金属電極310のシート抵抗Rshは、例えば、1.1Ω/□である。この光透過型金属電極310における光透過率Trは、400nm以上1000nm以下の波長に対して、35%以上40%以下である。
【0105】
(第2の実施形態)
本実施形態は、電子装置に係る。電子装置は、例えば、半導体発光素子、光電変換素子及び表示装置などを含む。本実施形態に係る電子装置では、第1の実施形態に係る任意の光透過型金属電極(例えば、光透過型金属電極310、320及び330など)及びその変形を用いることができる。以下では、光透過型金属電極310を用いる例として説明する。
【0106】
図13は、第2の実施形態に係る電子装置の構成を例示する模式的断面図である。
図13に表したように、本実施形態に係る電子装置410(半導体発光素子)は、第1の実施形態に係る光透過型金属電極310と、構造体201と、を含む。
【0107】
構造体201には、光透過型金属電極310を介して電荷が供給される。すなわち、構造体201には、光透過型金属電極310を介して電流が流れる。構造体201には、光透過型金属電極310を介して供給された電荷に基づく電圧が印加される。
【0108】
この例では、構造体201は、積層体210を有する。積層体210は、光透過型金属電極310を介して電荷が供給される。積層体210は、第1導電形の第1半導体層211と、第2導電形の第2半導体層212と、発光部213と、を含む。第2半導体層212は、第1半導体層211と、Z軸方向(X−Y平面の法線方向)に沿って積層される。発光部213は、第1半導体層211と第2半導体層212との間に設けられる。発光部213は、光透過型金属電極310を介して供給された電荷に基づいて光を放出する。
【0109】
ここで、本願明細書において、積層されている状態は、直接重ねられる状態に加え、間に別の要素が挿入された状態で重ねられる状態を含む。
【0110】
例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。また、第1導電形がp形であり、第2導電形がn形でも良い。この例では、第1半導体層211はn形であり、第2半導体層212はp形である。電子装置410は、LED(Light Emitting Diode)及びLD(Laser Diode)などの半導体発光素子である。
【0111】
この例では、光透過型金属電極310は、第2半導体層212に接して設けられている。第1半導体層211の上には、第1半導体層用電極214が設けられている。第1半導体層用電極214の上に、第1パッド215が設けられている。光透過型金属電極310の上に、第2パッド216が設けられている。
【0112】
この例では、半導体層を成長させる基板217がさらに設けられている。基板217は除去されていても良い。
【0113】
それぞれの電極から発光部213に注入された電子及び正孔は、発光部213で再結合し、光が放出される。この光は、光透過型金属電極310を透過して電子装置410の外部に出射する。発光部213の発光のピーク波長は、例えば、光透過型金属電極310に関して説明した最短の波長λ1以上、最長の波長λ2以下である。
【0114】
半導体発光素子の発光強度を上げるために、注入電流を増加させることが有効である。例えば、酸化物透明電極を用いた場合は、電流−輝度特性において、ある電流値で輝度はピークを持ち、それ以上の電流を流すと輝度は低下する。これは、酸化物透明電極の抵抗率が高いため、均一に電流注入することができず、均一に発光できないためである。
【0115】
このとき、本実施形態においては、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極310を用いることにより、電流集中による輝度低下を抑制できる。本実施形態に係る電子装置410(半導体発光素子)によれば、高輝度で、高効率の半導体発光素子を提供することができる。また、大面積の半導体発光素子を提供することができる。
【0116】
図14は、第2の実施形態に係る別の電子装置の構成を例示する模式的断面図である。 図14に例示する電子装置420は、光電変換素子である。電子装置420は光透過型金属電極310と、光透過型金属電極310を介して電荷が供給される構造体201と、を含む。
【0117】
構造体201は、入射する光を電気エネルギーに変換する活性層221を含む。活性層221は、例えば、p形層222と、p形層222に積層されたn形層223と、を含む。構造体201は、さらに対向電極224を含む。光透過型金属電極310と、対向電極224と、の間に、活性層221が配置される。
【0118】
電子装置420は、例えば、太陽電池である。電子装置420において、光透過型金属電極310を介して、外部から光が活性層221に照射される。
【0119】
照射された光によって、活性層221において、キャリアが分離され、電圧が生じる。このとき、光透過型金属電極310から、活性層221で生じた電荷に基づく電流を図示しない回路へと取り出すことができる。このとき、活性層221には、電流に対応する電荷(電流と逆極性の電荷)が、対向電極224を介して供給されることになる。
【0120】
電子装置420によれば、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極310を用いることにより、高効率で大面積の光電変換素子を提供することができる。
【0121】
図15は、第2の実施形態に係る別の電子装置の構成を例示する模式的断面図である。 図15に例示する電子装置430は、表示装置である。この例では、表示装置には、液晶が用いられている。電子装置430は、光透過型金属電極310と、光透過型金属電極310を介して電荷が供給される構造体201と、を含む。
【0122】
構造体201は、光学層231を含む。この例では、光学層231において、複屈折性、旋光性、散乱性、回折性及び吸収性の少なくともいずれかを含む光学特性が変化する。光学層231として液晶が用いられている。
【0123】
具体的には、第1基板235の上に光透過型金属電極310が設けられる。光透過型金属電極310は、例えば、画素ごとに分割されている。複数の画素電極となる光透過型金属電極310には、図示しない薄膜トランジスタなどが接続される。一方、第2基板236上に、例えば、カラーフィルタ233(例えば赤、緑、青のカラーフィルタ233a、233b、233c)が設けられる。これらのカラーフィルタ233の上に対向電極232が設けられる。光透過型金属電極310と対向電極232との間に液晶層(光学層231)が配置される。
【0124】
画素電極(光透過型金属電極310)に図示しない駆動回路から電荷が供給され、画素電極と対向電極との間に電圧が生じる。この電圧に応じて、液晶層(光学層231)の光学特性が変化する。光学特性の変化は、例えば、図示しない偏光素子などを用いることで、光の透過率として利用される。
【0125】
電子装置430においては、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極310を用いることで、良好な表示特性が得られる。
【0126】
対向電極232に、光透過型金属電極310を用いても良い。また、カラーフィルタは、第1基板235上に設けられても良い。
【0127】
光学層231として、光透過型金属電極310を介して供給された電荷に基づいて光を放出する層を用いても良い。例えば、光学層231は有機発光層を含むことができる。例えば、光透過型金属電極310は、有機EL表示装置にも用いることができる。
【0128】
図16は、第2の実施形態に係る別の電子装置の構成を例示する模式的断面図である。 図16に例示する電子装置440は、発光装置である。この例では、発光装置には、有機発光層が用いられている。電子装置440は、光透過型金属電極310と、光透過型金属電極310を介して電荷が供給される構造体201と、を含む。電子装置440は、例えば、エレクトロルミネッセンス素子である。
【0129】
構造体201は、基板241と、基板241の上に設けられた電極層242と、電極層242の上に設けられた発光層243と、を含む。構造体201の発光層243の上に光透過型金属電極310が設けられる。
【0130】
発光層243には、光透過型金属電極310を介して電荷が供給され、発光層243において光が放出される。光は、光透過型金属電極310を介して外部に出射する。
【0131】
電子装置440においては、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極310を用いることで、高い輝度と高い効率が得られる。また、大面積においても均一な発光強度が得られる。電子装置440は、例えば照明装置などに用いられる。
【0132】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、光学素子に係る。本実施形態に係る光学素子では、第1の実施形態に係る任意の光透過型金属電極(例えば、光透過型金属電極310、320及び330など)及びその変形を用いることができる。以下では、光透過型金属電極310を用いる例として説明する。
図17は、第3の実施形態に係る光学素子の構成を例示する模式的斜視図である。
図17に表したように、本実施形態に係る光学素子510は、光透過型金属電極310と、光学部材202と、を含む。光学部材202は、光透過型金属電極310と積層される。光学部材202には、光透過型金属電極310が透過する光が入射する。この例では、光学素子510は、タッチパネルである。
【0133】
光学部材202として、基板251が用いられている。基板251の上に光透過型金属電極310が設けられている。基板251上には、さらに、駆動回路252が設けられている。光学素子510(タッチパネル)は、光透過型金属電極310と対向しつつ光透過型金属電極310と離間する対向電極(図示せず)をさらに含んでも良い。光学素子510(タッチパネル)において、例えば、抵抗変化型または静電容量型の方式が用いられる。
【0134】
光学素子510(タッチパネル)においては、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極310を用いることで、透明性を損なうことなく、接触感度が向上できる。
【0135】
図18は、第3の実施形態に係る別の光学素子の構成を例示する模式的断面図である。 図18に表したように、本実施形態に係る光学素子520は、例えば、カラーフィルタである。光学素子520は、光透過型金属電極310と、光学部材202と、を含む。光学部材202は、カラーフィルタ233(例えば赤、緑、青のカラーフィルタ233a、233b、233c)を含む。光学部材202は、基板251をさらに含むことができる。基板251の上にカラーフィルタ233が設けられ、カラーフィルタ233の上に光透過型金属電極310が設けられる。
【0136】
光学素子520(カラーフィルタ)は、例えば、液晶表示装置などに用いられる。シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極310を用いることで、良好な表示特性を得ることができる。
【0137】
実施形態によれば、シート抵抗が低く、広い波長範囲で高い透過率を有する光透過型金属電極、電子装置及び光学素子が提供される。
【0138】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光透過型金属電極に含まれる第1金属線、第2金属線部及び薄膜層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0139】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0140】
その他、本発明の実施の形態として上述した光透過型金属電極、電子装置及び光学素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての光透過型金属電極、電子装置及び光学素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0141】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
10…第1金属線、 15…第1アレイ、 20…第2金属線、 25…第2アレイ、 30…金属電極層、 30f…金属膜、 31、32…パターン層、 35…薄膜層、 50…基体、 λ…波長、 λ1…最短の波長、 λ2…最長の波長、 101…光、 107…垂直透過率、 108…並行透過率、 109…全透過率、 201…構造体、 202…光学部材、 210…積層体、 211…第1半導体層、 212…第2半導体層、 213…発光部、 214…第1半導体層用電極、 215…第1パッド、 216…第2パッド、 217…基板、 221…活性層、 222…p形層、 223…n形層、 224…対向電極、 231…光学層、 232…対向電極、 233、233a〜233c…カラーフィルタ、 235…第1基板、 236…第2基板、 241…基板、 242…電極層、 243…発光層、 251…基板、 252…駆動回路、 310、320、330、393、394…光透過型金属電極、 410、420、430、440…電子装置、 510、520…光学素子、601〜608…第1〜第8条件、 C1…特性、 D1〜D4…第1〜第4方向、 E1…特性、 R1…領域、 Rsh…シート抵抗、 Tr…光透過率、 d…長さ、 p1、p2…第1及び第2距離、 t…厚さ、 w1、w2…第1及び第2厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って並んで配置された複数の第1金属線であって、前記複数の第1金属線のそれぞれは前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる複数の第1金属線と、
前記第1方向と前記第2方向を含む平面に対して平行で前記第1方向と交差する第3方向に沿って並んで配置され前記複数の第1金属線と接触する複数の第2金属線であって、前記複数の第2金属線のそれぞれは、前記平面に対して平行で前記第3方向と交差する第4方向に沿って延びる複数の第2金属線と、
を備え、
前記複数の第1金属線のそれぞれの第1方向における中心どうしの第1距離は、可視光を含む波長帯のうちの最短の波長以下であり、
前記複数の第2金属線のそれぞれの第3方向における中心どうしの第2距離は、前記波長帯のうちの最長の波長を超え、
前記第1金属線と前記第2金属線との前記平面に対して垂直な方向に沿った厚さは、前記最短の波長以下である光透過型金属電極。
【請求項2】
前記第1距離は、10ナノメートル以上400ナノメートル以下であり、
前記複数の第1金属線のそれぞれの前記第1方向に沿った幅の前記第1距離に対する比は、0.1以上0.5以下である請求項1記載の光透過型金属電極。
【請求項3】
前記第2距離は、1マイクロメートル以上10マイクロメートル未満であり、
前記複数の第2金属線のそれぞれの前記第3方向に沿った幅の前記第2距離に対する比は、0.1以上0.5以下である請求項1または2に記載の光透過型金属電極。
【請求項4】
前記厚さは、5ナノメートル以上400ナノメートル以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の光透過型金属電極。
【請求項5】
前記第1金属線及び前記第2金属線は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉛、亜鉛、白金、コバルト、マグネシウム、クロム、タングステン及びパラジウムの少なくともいずれかを含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の光透過型金属電極。
【請求項6】
前記第1金属線及び前記第2金属線に接し、前記第1金属線及び前記第2金属線の材料とは異なる材料を含む薄膜層をさらに備えた請求項1〜5のいずれか1つに記載の光透過型金属電極。
【請求項7】
前記光透過型金属層のシート抵抗は5Ω/□以下である請求項1〜6のいずれか1つに記載の光透過型金属電極。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の光透過型金属電極と、
前記光透過型金属電極を介して電荷が供給される構造体と、
を備えた電子装置。
【請求項9】
前記構造体は、前記電荷が供給される積層体を有し、
前記積層体は、
第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層と前記平面の法線方向に沿って積層された第2導電形の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記電荷に基づいて光を放出する発光部と、
を含む請求項8記載の電子装置。
【請求項10】
前記構造体は、入射する光を電気信号に変換する活性層を含み、
前記金属層には、前記電気信号を含む電流が流れる請求項8記載の電子装置。
【請求項11】
前記構造体は、
前記電荷に基づいて光を放出する、及び、前記電荷に基づいて、複屈折性、旋光性、散乱性、回折性及び吸収性の少なくともいずれかを含む光学特性が変化する、のいずれかの光学層を含む請求項8記載の電子装置。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の光透過型金属電極と、
前記光透過型金属電極と積層され、前記光透過型金属電極が透過する光が入射する光学部材と、
を備えた光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−68898(P2013−68898A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209112(P2011−209112)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】