説明

光透過性基材及び光透過性基材の製造方法、面光源装置、偏光板液晶表示装置

【課題】高輝度でモアレ等のムラの発生が抑制された薄層化に有効な面光源装置、及び面光源装置を備えた液晶表示装置を提供する、またそのような面光源装置に用いる光透過性基材を提供する。
【解決手段】光源12と、少なくとも一方の面に複数の集光部を有する集光シート14と、少なくとも一方の面に平坦部23と複数の凹部21を有する光透過性基材20と、をこの順に備える面光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性基材及び光透過性基材の製造方法、面光源装置、偏光板、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、薄型・軽量で、且つ消費電力が小さいことから広く使用されている。液晶表示装置は、液晶セル及び偏光板を含む。偏光板は、通常、保護膜と偏光膜とからなり、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護膜にて積層して得られる。透過型液晶表示装置では、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、更には一枚以上の光学補償シートを配置することもある。
【0003】
液晶表示装置は自発光型の表示装置ではないため、面光源が必要である。面光源の態様としては、液晶セルと光源との間に光拡散シートやプリズムシートなどのように光拡散能及び集光性を持つ部材を介在させて一様な面光源とするバックライト型が広く用いられており、その光源に冷陰極管(CCFL)やLEDが使用されている。また一部の液晶表示装置では、導光板のエッジ部分に光源を配置し、光拡散シートやプリズムシートなどと組み合わせて、面光源化している形態(エッジライトタイプ)も知られている。これらのバックライトでは上述の様に一般的に線光源あるいは点光源から面光源に変換をするため、光拡散シートを用いて均一な面光源化をしている。
【0004】
面光源を得るためのバックライト部材を備えた、従来の液晶表示装置の模式図を図7に示す。図7に示すように、従来の液晶表示装置は、複数の線光源56を有する光源52と、光拡散シート58と、集光シート54と、光拡散シート60と、液晶パネル72の順に構成されている。液晶パネル72は、液晶セル70と2枚の偏光板66とを有し、偏光板66は偏光膜62とその保護フィルム64とからなる。
光源52から光拡散シートを通して集光シート54に入射した光は、集光シート54内で正面側に集光されることにより、正面方向の輝度が高められる。一方、集光シート54の前面に配置される光拡散シート60は、集光シート54で正面側に集光されて縮小された視野角を所定の範囲内で拡散する。
このように集光シート54の両側に光拡散シート58,60を配置することで、輝度ムラの低減と表示特性の面均一化が達成されるとともに、入射光が液晶セル中の画素と干渉するのを抑制したり、プリズム内で発生するサイドローブを散乱させたりすることにより、モアレ等の干渉縞を生じるのを抑制することができる。
【0005】
しかし近年、液晶表示装置の部材数の削減や低消費電力化のため、光源52に利用される線光源56の数を減少することが試みられている。また液晶表示装置の薄型化のため、光源52と光拡散シート58,60との距離が近くなり、そのため、従来の光拡散シートでは、均一な光拡散を達成することが困難になってきている。そこで可能な限り距離を稼ぐため、光拡散シート代替として、液晶パネルを構成する偏光板のバックライト側偏光膜の保護フィルムに光拡散性を付与したものが提案されてきている。
【0006】
例えば、特許文献1には、多孔質不定形粒子と球状粒子とを分散含有する、所定の特性の光拡散層を有する光拡散偏光板が提案され、これによって光拡散シートを省略できることが開示されている。
また、特許文献2には、集光シート(プリズムシート)の透光性樹脂内に光散乱粒子を含有するプリズムシートにより、高輝度とモアレ発生の抑制できるプリズムシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−75134号公報
【特許文献2】特開2007−304553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の光拡散フィルムは、全光透過率が低いので、画像表示装置に用いると、正面白輝度の低下の一因になる場合がある。一方で、正面輝度を維持するため、ヘイズを下げる、つまり全光透過率を上げると、表示画面の均一性の悪化(バックライトのムラ等)やモアレ等の干渉縞を生じるのを抑制できなくなる場合がある。
更に、特許文献1のような表面に凸を有する光拡散フィルムを、拡散フィルムを介することなくプリズムシートと隣接させた液晶表示装置は、プリズムシートが光散乱フィルムの表面と擦れることにより、プリズムシートに傷がつきスポット的な輝度ムラが発生する問題を有していることが分かった。
特に、ノートパソコンなどのようにモバイル用途で振動や衝撃が与えられる場合や、バックライトを薄層化して光散乱フィルムとプリズムシートが接触しやすい場合に問題が顕在化してきていることが分かった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のプリズムシートは高輝度とモアレ発生の抑制の点では優れているが、光散乱のための粒子を含有する層の部分はプリズムシートの厚みが厚くなるため、LCDの薄層化の点では課題を有していた。
【0010】
本発明の目的は、高輝度でモアレ等のムラの発生が抑制された薄層化に有効な面光源装置を提供すること、またそのような面光源装置を用いた液晶表示装置を提供することである。また更には面光源装置に用いることのできる光透過性基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の構成により上記課題は達成された。
[1]
光源と、少なくとも一方の面に複数の集光部を有する集光シートと、少なくとも一方の面に平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材と、をこの順に備える面光源装置。
[2]
前記集光シートの集光部を有する面と前記光透過性基材の平坦部と凹部を有する面とが向かい合うように配置された、上記[1]に記載の面光源装置。
[3]
前記集光シートの集光部を有する面及び前記光透過性基材の平坦部と凹部を有する面の少なくともいずれかの面上に滑り剤を含む、上記[2]に記載の面光源装置。
[4]
前記集光シートの複数の集光部が、縞状、半円柱状、錘状、又は錘台形状である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の面光源装置。
[5]
下記式(1)〜(3)を満足する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の面光源装置。
式(1) 20≦Pa≦400
式(2) 0.5≦Lb≦100
式(3) 1.5≦(Pa/Lb)≦150
(式中、Paは集光シートにおいて隣接する集光部間の距離(μm)を示す。Lbは、凹部の開口部の平均長径長(μm)を示す。)
[6]
前記光透過性基材の仮想平面部の全面積(Sa)に対する前記凹部の開口部の総面積(Sd)の割合(Sd/Sa×100(%))が1〜90%であり、
前記光透過性基材のヘイズが15〜95%である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の面光源装置。
[7]
前記光透過性基材の平坦部及び凹部を有する面上に、少なくとも滑り剤を含有する層を有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の面光源装置。
[8]
前記滑り剤を含有する層が、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかの化合物とを含む組成物から形成される硬化層である、上記[7]に記載の面光源装置。
[9]
上記[1]〜[8]のいずれかに記載の面光源装置上に、1対の偏光膜に挟まれた液晶セルを含む、液晶表示装置。
[10]
前記光透過性基材を面光源装置側の偏光膜保護フィルムとして用いた、上記[9]の液晶表示装置。
[11]
少なくとも一方の面に平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材であって、
前記光透過性基材の仮想平面部の全面積(Sa)に対する前記凹部の開口部の総面積(Sd)の割合(Sd/Sa×100(%))が1〜90%であり、
前記光透過性基材のヘイズが15〜95%であり、
前記光透過性基材の凹部を有する面上に、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかを含む組成物から形成される硬化層を有する、光透過性基材。
[12]
少なくとも一方の面に平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材の製造方法であって、
少なくとも熱可塑性樹脂と溶媒を含むポリマー溶液を支持体に流延してウェブを形成し、前記支持体から前記ウェブを剥離した後乾燥して、平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材を作製する工程と、
光透過性基材の凹部を有する面上に、少なくとも滑り剤を含有する層を形成する工程と、を含み、
前記ポリマー溶液は2種以上の溶媒を含み、前記2種以上の溶媒のうち少なくとも1種は誘電率が35以上の溶媒である、光透過性基材の製造方法。
[13]
前記誘電率が35以上の溶媒の含有量が、前記ポリマー溶液に含まれる溶媒の全質量に対して、0.3〜30質量%の範囲である、上記[12]に記載の製造方法。
[14]
前記ポリマー溶液が、更に誘電率が2以上10未満の溶媒及び誘電率が10以上35未満の溶媒を含む、上記[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15]
前記光透過性基材を作製する工程において、
ポリマー溶液の流延を、組成の異なる複数のポリマー溶液を同時又は逐次で流延することにより行い、前記複数のポリマー溶液のうち少なくとも1種のポリマー溶液が、少なくとも誘電率が35以上の溶媒、誘電率が2以上10未満の溶媒、及び誘電率が10以上35未満の溶媒を含む、上記[12]に記載の製造方法。
[16]
前記光透過性基材の内部に空隙を実質的に有さない、上記[12]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]
前記滑り剤を含有する層を、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかの化合物とを含有する組成物を用いて形成する、上記[12]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]
上記[12]〜[17]のいずれかに記載の製造方法によって製造された光透過性基材。
[19]
上記[15]に記載の光透過性基材を偏光膜の保護フィルムとして有する偏光板。
[20]
上記[18]に記載の光透過性基材を有する面光源装置。
[21]
上記[19]に記載の偏光板又は上記[20]に記載の面光源装置を有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高輝度でモアレ等のムラの発生が抑制された薄層化に有効な面光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る面光源装置及び画像表示装置の構成例を示す模式図である。
【図2】集光シートの構成例を模式的に示す斜視図である。
【図3】図2の集光部の拡大図である。
【図4】集光シートの構成例を模式的に示す斜視図である。
【図5】図4の集光部の拡大図である。
【図6】(a)は光透過性基材の構成例を示す斜視図、(b)はその断面図である。
【図7】従来のバックライトユニット及び画像表示装置の一例を示す模式図である。
【図8】滑り剤を含有する層が形成された光透過性基材の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0015】
<液晶表示装置の構成>
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る面光源装置を備えた画像表示装置(液晶表示装置)を示す断面模式図である。
図1に示す画像表示装置10は、複数の線光源16を有する光源(バックライト)12と、光拡散シート18と、複数の集光部14Pを有する集光シート14と、光透過性基材20とが光の出射方向に向かってこの順に配置された面光源装置を有している。
光透過性基材20は、少なくとも一方の面(図1では光源12側の面)に平坦部23と複数の凹部21とを有する。面光源装置においては、集光シート14及び光透過性基材20は、集光シート14の集光部14Pがある面と光透過性基材20の凹部21がある面とが向かい合うように配置されている。
【0016】
画像表示装置10は、面光源装置上に更に、1対の偏光板26,28(下側偏光板26及び上側偏光板28)に挟まれた液晶セル30を有する液晶パネル32を有している。
下側偏光板26及び上側偏光板28は、偏光膜22の両面に保護フィルム24を有する。そして、光透過性基材20が、下側偏光板26の保護フィルム24の一方(図1では光源12側の保護フィルム24)として用いられている。
このように画像表示装置10では、下側偏光板26の保護フィルム24として光拡散性を付与した光透過性基材20を使用することで、図7における光拡散シート60と同様以上の性能を発揮させることができ、モアレや面内輝度ムラを軽減するだけでなく、光拡散シート60(図7)を省略することができ、面光源装置を薄層化できる。更には、光拡散シート60(図7)を除去した場合に課題となっていた集光シートのプリズムによる耐傷性が改良できる。
【0017】
面光源装置の薄層化のためには、集光シート14の集光部14Pの山部と光透過性基材20の平坦部23を形成する表面の平均距離が0mm以上3mm以下であることが好ましく、更に好ましくは0mm以上2mm以下であり、0mm以上1mm以下が最も好ましい。
【0018】
バックライトユニットは点灯開始直後で各部材に温度勾配が生じたり、画像表示装置の保管条件により各部材に湿度勾配が生じたり、両者の組み合わせで各部材に温湿度勾配が生じた場合には、部材のカールによる部分的な接触が起こり、各種のムラを起こすケースがある。本発明の構成を採ることで、部材の点数を少なくできるためバックライトユニットの熱容量が小さくなり、バックライトユニット内での温湿度勾配が速く解消される。
また、集光シート14と光透過性基材20が接していても、その間には集光シート14の集光部14Pの谷間や光透過性基材の凹部21などの空間が存在しており、水蒸気の通り道があるため内部の湿度勾配を速やかに解消できる。これらのために、本発明の構成を採ることで、温湿度勾配に起因する各種ムラは速やかに低減される。
また、光透過性基材20の表面は実質的な平坦部23とその中に形成された凹部21とからなるため、集光シート14と光透過性基材20が接触した場合でも点での接触ではなく、線での接触となるため圧力が分散される。更には、集光シート14及び/又は光透過性基材20の表面に滑り剤を含有することで、両部材が接触した際に更に効果的に応力が分散され、圧力分布に起因した位相差の微小変化によるムラが低減される。
【0019】
以下、特に集光シート14(以下、A部材という場合もある)及び光透過性基材20(以下、B部材という場合もある)について詳細に説明する。
<集光シート(A部材)>
集光シート14は、シートの少なくとも一方の面に複数の集光部14Pを有する。複数の集光部14Pは、面光源装置に必要とされる光源の角度分布により、縞状、半円柱状、錘状、又は錘台形状などの形状を採ることができる。シートの法線方向の光強度を高めるためには、断面が三角形状の縞状、半円柱状、円錐状、楕円錐状、四角錘状が好ましい。また、複数の集光部14Pは、集光シート14の表面上に周期的に配列されていることが好ましい。
【0020】
図2に本実施形態に係る集光シート14の構成例を示す。
図2に示す集光シート14は、光出射面側に、集光部として断面三角形状のプリズム部14Pが一方向(図においてX方向)に多数連続して縞状に配列されている。
図3は、図2に示す集光シート14のプリズム部14Pの拡大図である。プリズム部14Pの頂角θpは、70〜110゜の範囲が好ましく、75〜105゜の範囲がより好ましい。頂角θpを110°以下とすることで、好適な光集光性が向上し、好適な輝度向上効果が得られる。また、θpを70゜以上とすることにより、指向性が適度なものとし、正面以外から見た場合にも画面が暗くなるのを防止することができる。
【0021】
また、集光シート14の集光部(プリズム部)14Pの間の距離(ピッチ)Paは、20〜400μm(式(1):20≦Pa≦400)が好ましい。一般にピッチが大きくなるにつれ正面輝度が大きくなる傾向にある。しかし、ピッチが大きいと液晶表示パネルの画素ピッチとの干渉によりモアレの発生が懸念される。また、ピッチが大きくなると、集光シート14の表面凸部とそれに隣接する光透過性部材が接触した場合の応力集中が大きくなり、破損しやすくなる。一方、ピッチが小さいと、モアレ発生の懸念は弱まるが、得られる正面輝度は低下してしまう。
これら要因を満たすように、液晶表示装置の画素ピッチに応じて、集光シート14のピッチを設定することができる。
【0022】
なお、集光シート14の断面形状は三角形以外の形状でもよい。例えば、図4に示すように、光出射側に向かって凸に形成された双曲面、放物面あるいは高次の非球面を有するシリンドリカルレンズ体14L(半円柱状の集光部)が多数配列された集光シート14としてもよい。
この場合も集光シート14のピッチPa(図5)は、20〜400μmの範囲とすることが好ましい。
【0023】
集光シート14は、溶融押出成型方法、熱プレス法、硬化樹脂を用いた転写法等の手法を用いて製造することができる。
集光シート14の表面(特に集光部が形成されている面)に滑り剤を含有させ、集光シート14の破損を低下することができる。滑り剤を含有させるためには、滑り剤を添加した硬化性化合物を用いて集光シート14を形成することが好ましい。滑り剤及び硬化性化合物の種類、量、添加方法については後述の光透過性基材(B部材)の説明で合わせて言及する。
【0024】
<光透過性基材(B部材)>
図6(a)及び図6(b)に、光透過性基材20の構成例を示す。
図6(a)及び(b)に示すように、光透過性基材20は、平坦部23と、複数の凹部(くぼみ)21とを有する。
【0025】
(凹部)
光透過性基材20が有する複数の凹部21について説明する。
光透過性基材20の凹部の平均長径長(Lb)は0.5〜100μm(式(2):0.5≦Lb≦100)であることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが更に好ましい。本明細書中、凹部の長径とは、光透過性基材20表面に形成されている凹部の開口部(くぼみの端部)を結ぶ径の内、最も長い径のことを言う。
【0026】
光透過性基材20の凹部21の深さは5μm以下であることが好ましく、高拡散性能の観点では、1〜3μmであるのがより好ましい。凹部21の深さとは、特定の大きさのサンプルフィルム表面における、平均長径長が0.5〜100μmである全凹部21の深さの平均値のことを言う。
また、2つの凹部21間の平均間隔は拡散性能の調整の観点から1〜100μmであるのが好ましく、1〜50μmであるのがより好ましい。なお、本明細書中、2つの凹部の平均間隔とは、すべての凹部21について、それに最も近い凹部21との中心間の距離を測定し、その合計を凹部の数で割った値のことを言う。
本発明において、各凹部の中心位置の周期性に特に制限はないが、面光源装置として使用した際に集光シートに起因するモアレを解消する観点からは、周期性を有さないランダムなものであることが好ましい。
【0027】
本明細書では、光透過性基材20の凹部21の深さ、平均長径長(Lb)及び平均間隔は、表面形状測定装置によって測定される表面形状から算出される値を意味するものとする。表面形状測定装置としては、光干渉方式の計測装置を用いることもでき、触針式の計測装置を用いることもできる。光干渉方式の装置としては、三次元非接触表面形状計測システム(マイクロマップMM5000シリーズ;(株)菱化システム製)等を用いることができ、触針式の装置としては、触針式表面形状測定器(Dektak 6M;アルバック イーエス(株)製)等を用いることができる。なお、フィルム表面1mm2を1つ任意に選びこのような表面形状測定装置によって各凹部21における基材平坦部表面からくぼみの最深部までの距離を自動的に測定及び算出することができ、全凹部21についてこのような測定を行うことで凹部21の深さ(すなわち、全凹部21の深さの平均値)を算出することができる。凹部の平均長径長(Lb)及び平均間隔も同様に算出することができる。
【0028】
光透過性基材20は、基材表面における凹部21の個数が25〜1000000個/mm2であることが好ましい。光透過性基材20における凹部21の個数は100〜100000個/mm2であることが、高拡散性能、かつ、高全光透過率の観点からより好ましく、500〜7000個/mm2であることが特に好ましい。
【0029】
光透過性基材20は、基材表面における凹部21の個数分布の標準偏差が平均個数に対して±20%であることが、面内均一な拡散性能かつ全光透過率の観点から好ましい。前記フィルム表面における前記凹部の個数分布の標準偏差は平均個数に対して±10%であることがより好ましく、平均個数に対して±5%であることが特に好ましい。
ここで平均個数とは、光透過性基材20表面から1mm2の領域を100ヶ所任意に選び、それぞれに存在するくぼみの個数の平均値のことをいう。このように、均一に分布をすることで本願の光散乱性の効果を有している。
【0030】
光透過性基材20は、凹部21の深さの標準偏差が平均深さに対して±20%であることが、面内均一な拡散性能かつ全光透過率の観点から好ましい。光透過性基材20表面における前記凹部21の個数分布の標準偏差は平均深さに対して±10%であることがより好ましく、平均深さに対して±5%であることが特に好ましい。また、凹部21の個数平均分布は、単分散で、凹部21が均一に分布しているフィルムが好ましい。
ここで平均深さとは、凹部21を100個任意に選び、それらの深さの平均値のことをいう。
【0031】
凹部21を光透過性基材20表面に垂直な方向から観察した際の凹部21の開口部の形状は、円形状であっても多角形状であっても、楕円状であってもその他の曲線で囲まれる図形状であってもよいが、円形状に近いことが高全光透過率の観点から好ましい。前記くぼみが円形状であるときの円相当径(投影面積円相当径)は、0.5〜100μmであることが拡散性能の調整の観点から好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。同様に、凹部21を基材表面に垂直な方向から観察した際のくぼみ底部に形成されていてもよい平面部の形状は、円形状であっても多角形状であっても、楕円状であってもその他の曲線で囲まれる図形状であってもよいが、円形状に近いことが高全光透過率の観点から好ましい。凹部21の底部に形成されていてもよい平面部が円形状であるときの円相当径(投影面積円相当径)は、0.12〜85μmであることが高全光透過率の観点から好ましく、0.35〜40μmであることがより好ましく、0.45〜25μmであることが特に好ましい。
また、凹部21の短径は、光透過性基材20表面に形成されている開口部の長径中点から長径に直交した方向での開口部の径をあらわす。凹部21の平均長径長と平均短径長の比(アスペクト比)は、0.8〜1.2であることが高全光透過率の観点から好ましく、0.85〜1.15であることがより好ましく、0.9〜1.1であることが特に好ましい。
【0032】
(凹部の断面形状)
凹部21の断面形状の好ましい形状について説明する。なお、ここでいう断面形状とは、光透過性基材20を平面に置いた時に基材を厚み方向に垂直に切削した断面図における形状を表す。
凹部21の断面形状は特に制限はないが、下に凸であることが好ましい。
そしてその断面形状は、図6(b)に示すように光透過性基材20表面と概ね平行な底部25と、底部25と凹部21の開口部とを連結する側部27とから構成されることがより好ましい。このような形状の代表例として、カップ状のような形状が好ましい。カップ状とは、コーヒーカップやティーカップのように、凹部21の横幅のうち少なくとも25%が光透過性基材20表面と概ね平行な凹部21の底部25と、底部25から開口部に向かってゆるやかにカーブを描き、凹部21の端部の開口部ではフィルム表面に対して概ね垂直な面になっている凹部21の側部27(両側部)とをもつ形状を言う。その意味でクレーター状やサイクロイド曲線状などもカップ状の形状に含まれる。
【0033】
他に、凹部の断面形状として球状、方形状が考えられるが、球状では曲率が高いため、ヘイズを高くすることができるが、曲がる光も多いことから、前方への透過率がやや低くなり、結果全光透過率が低くなる。一方、方形状では、表面と平行な平面が多いため、全光透過率は高いが、光を曲げる面が少ないため、ヘイズがやや低くなる。
これらを考慮すると、前記凹部の断面形状がカップ状であると、光を曲げる面(例えば、凹部の側部)と、表面と平行な平面(例えば、凹部の底部)とが共に存在するため、高ヘイズ、かつ、高全光透過率な光学フィルムの作成が可能となる。
前記凹部の断面形状の確認方法に特に制限はないが、例えばSEMで確認することができる。
【0034】
凹部21は、任意の光透過性基材断面における開口部の長さ(すなわち、凹部の平均短径長、平均長径長両方とも)が0.5〜100μmであることが拡散性能の調整の観点から好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。
【0035】
凹部21の底部25は、光透過性基材20表面と概ね平行であることが高全光透過率の観点から好ましく、光透過性基材20表面に対する凹部21の底部25の面の傾きが±10°以内であることがより好ましく、±5°以内であることが特に好ましく、±2.5°以内であることがより特に好ましい。
【0036】
任意の光透過性基材20断面における凹部21の長さ(すなわち、凹部21の短径及び長径の両方とも)が0.12〜85μmであることが高全光透過率の観点から好ましく、0.35 〜40μmであることがより好ましく、0.45〜25μmであることが特に好ましい。
凹部21の底部25は、任意の場所における光透過性基材断面において、凹部21の横幅を100%とすると、少なくとも25〜85%の幅に形成されていることが好ましく、35〜80%の幅に形成されていることがより好ましく、45〜75%の幅に形成されていることが特に好ましい。
【0037】
光透過性基材20の仮想平面部の全面積(Sa)に対する凹部21の開口部の総面積(Sd:Sd+Sd+Sd+・・・+Sd)の割合(Sd/Sa×100(%))は、1〜90%が好ましく、より好ましくは2〜70%以下であり、更に好ましくは3〜70%である。特に凹部21を有する基材自身の耐擦傷性に重きを置く場合には、3〜50%である。この範囲の値にすることで、光の拡散性と耐擦傷性の両立を図ることができる。
【0038】
また、光透過性基材20が平坦部23と凹部21からなることで、スティッキング防止能が付与されており、光透過性基材20自身をロール形態で巻き取った際のハンドリング性や光透過性基材20とプリズムシートを重ねた時のハンドリングが良好であり、凹部21を有さない基材よりも耐擦傷性が改良できる。
【0039】
液晶セルの画素ピッチをPc(μm)、の集光シート14(A部材)の集光部(プリズム又はシリンドリカルレンズ等)のピッチをPa(μm)、凹部21を有する光透過性基材(部材B)の凹部21の平均長径長をLb(μm)としたとき、これらの値が以下の関係を満たすことが、白輝度の向上、輝度ムラの低減、モアレの低減、バックライトユニットの耐擦傷性の改良の点で好ましい。
Pa/Lbの値は、1.5〜150(式(3):1.5≦(Pa/Lb)≦150)が好ましく、更に好ましくは1.8〜100、最も好ましくは2.0〜60である。集光シートの周期的な表面形状(Pa)に起因するモアレの低減のために、ランダムに存在する凹部くぼみの長径長(Lb)が上記関係を満たすことが特に有効である。また、Pc/Paの値は、0.9〜15が好ましく、更に好ましくは1.0〜12、最も好ましくは1.5〜10である。
【0040】
この様な特性の表面性状は、後述する本発明の製造方法によって光透過性基材20を作製することによって形成することができるものであり、微粒子を分散含有させることによって達成することは困難である。なお、表面にくぼみをつけることは、例えば、表面を紙ヤスリで削ることや微細な粒子(砂やシリカ粒子など)を表面に当てることでも可能であるが、これらの場合、形状はランダムに近いものとなり、光透過性基材の有する凹部21の形状の範囲が上記範囲から外れるため、高ヘイズだが、全光透過率が低くなる。また表面を粗らす工程以外にも、表面クズなどを回収する工程などが増えるため、コストが高くなる。
【0041】
本発明の光透過性基材は上記所定の表面形状に基づく光拡散性を示す。従って、本発明の光透過性基材を保護フィルムとして有する偏光板を画像表示装置に利用することにより、モアレ等の干渉縞を発生させることなく、従来用いられていた光拡散シートを省略することができる。
本発明において、実質平坦な面とは、光の散乱を目的とした意図的な凹凸を有しておらず、製膜時の異物や擾乱に起因するレベルの凹凸を有する平坦な面をいう。実質平坦な面の中心線平均粗さRaは1nm〜80nm程度であり、好ましくは1nm〜50nm程度である。中心線平均粗さは、原子間力顕微鏡を用いて測定することができ、例えばセイコーインスツルメンツ株式会社製のSPI−3800Nを用いて測定することができる。この程度の平滑性であれば、表面の散乱に起因するヘイズは約1%以下となる。
【0042】
(その他の特性)
光透過性基材20のヘイズは、15%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのが特に好ましく、60%以上であるのが更に好ましい。ヘイズが高いほど、光拡散性能は高くなるが、一方、全光透過率の低下により、画像表示装置に利用すると、正面白輝度の低下の一因になる。その観点では、光透過性基材20のヘイズは、15〜95%であるのが好ましく、30〜90%であるのがより好ましく、最も好ましくは50〜90%である。
なお、ヘイズは、光透過性基材の全ヘイズ(基材の表面の形状に起因する表面散乱によるヘイズと基材の内部散乱によるヘイズとの両者とも含むもの)であり、ヘイズメーター(NDH2000;日本電色工業(株)製)により測定することができる。
【0043】
光透過性基材20の全光透過率は70%以上であることが好ましく、75〜95%であることがより好ましく、80〜93%であることが特に好ましい。更に、光透過性基材20の平行透過率は、5〜55%であることが好ましく、8〜40%であることがより好ましく、10〜40%であることが特に好ましい。なお、本明細書中、全光透過率とは直線光と拡散光を含む光線の透過率を表し、平行透過率とは直線光のみを含む光線の透過率を表す。
【0044】
(構成材料)
光透過性基材20の製造方法としては、熱や加圧のよるエンボス加工、硬化樹脂を用いたパターン転写法、又は溶媒組成に特徴のある熱可塑性樹脂の溶液成膜などの方法を用いて製造することができる。
特に、液晶表示装置のバックライトユニットなどのように高温光源に近い場所で使用する場合には、凹部を有する光透過性基材の凹部付近の残留応力が小さく、表面凹凸の熱膨張係数や湿度膨張係数といった寸法変化率が小さい基材を形成できる製造方法が好ましい。
その点では硬化樹脂を用いたパターン転写法、又は溶媒組成に特徴のある熱可塑性樹脂の溶液成膜による製造方法が好ましく、溶媒組成に特徴のある熱可塑性樹脂の溶液成膜による製造方法が最も好ましい。
【0045】
光透過性基材20の寸法変化率は以下の測定方法で求めることができる。
すなわち、まず各ポリマーのガラス転移温度+10℃で、24時間放置する。その前後での、凹部の平均長径長の寸法を測定し、その変化率を求める。寸法変化率が5%以下であることが、経時変化に対する拡散性能かつ全光透過率の安定性の観点から好ましい。前記ガラス転移温度前後における前記凹部の寸法変化率は3%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。本発明の光透過性基材は、基材組成物の密度がほぼ均一になっているために、寸法変化率が小さくなると推定される。
【0046】
光透過性基材20は、ポリマーから構成されていることが好ましい。利用するポリマーについての制限はないが、可視光に対して光透過性の高いポリマーから選択するのが好ましい。また、後述する溶液製膜法により光透過性基材20を製造する場合は、溶液製膜可能なポリマー材料から選択するのが好ましく、熱可塑性樹脂を使用するのがより好ましい。
使用可能なポリマー材料の例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート系共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。
偏光膜に直接張り合わせる場合には、通常、偏光膜がポリビニルアルコール膜であることを考慮すると、これと親和性があり、接着性が良好な、セルロースアシレート、ポリビニルアルコールを主成分のポリマーとして含有することが好ましく、経時安定性の観点からセルロースアシレートが好ましい。
ここで、「主成分のポリマー」とは、光透過性基材20が単一のポリマーからなる場合には、そのポリマーのことを示し、複数のポリマーからなる場合には、構成するポリマーのうち最も質量分率の高いポリマーのことを示す。
【0047】
セルロースアシレートの原料となるセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等を用いることができる。必要に応じてこれらを混合して使用してもよい。
セルロースアシレートは、原料セルロースをカルボン酸等によりアシル化することにより得られる。すなわち、セルロースアシレートは、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位及び6位に存在するヒドロキシル基の水素原子の全部又は一部が、アシル基で置換されている。
アシル基の炭素原子数は2〜22のであることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。アシル基の例としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、及び、シンナモイル基が挙げられる。前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が最も好ましい。
セルロースアシレートは、複数のアシル基で置換されていてもよい。
【0048】
セルロースアシレートのセルロースの水酸基に置換されているアセチル基(炭素数2)の置換度をSAとし、セルロースの水酸基に置換されている炭素数3以上のアシル基の置換度をSBとしたとき、SA及びSBを調整することにより、セルロースアシレートフィルムのヘイズを調整することができる。
セルロースアシレートフィルムに求めるヘイズにより、適宜、SA+SBを調整することができるが、好ましくは2.70<SA+SB≦3.00、より好ましくは2.80≦SA+SB≦3.00であり、更に好ましくは2.85≦SA+SB≦2.98である。SA+SBを大きくすることによりヘイズを高くしやすい傾向がある。
また、SBを調整することによっても、セルロースアシレートフィルムのヘイズを調整することができる。SBを大きくすることにより、ヘイズを高くしやすい傾向があると同時に、フィルムの弾性率や融点が下がる。フィルムのヘイズとその他の物性とのバランスを考慮すると、SBの範囲は、好ましくは0≦SB≦2.9、より好ましくは0.5≦SB≦2.5であり、更に好ましくは1≦SB≦2.0である。なお、セルロースの水酸基がすべて置換されているとき、上記の置換度は3となる。
【0049】
セルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行発明協会)p.7〜12に詳細に記載されているので、参照することができる。
【0050】
光透過性基材20は、主原料となる1種又は2種以上のポリマーとともに、添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、可塑剤(好ましい添加量はポリマーに対して0.01〜20質量%、以下同様)、紫外線吸収剤(0.001〜1質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。
【0051】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、有機材料、無機材料又はそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として添加される場合には、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。
補助的にフィルム内部に光散乱性を付与するための粒子を添加する場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
粒子により光透過性基材20に内部光拡散性を付与する際には、内部ヘイズの値に制限はないが、後方散乱性が高くなり全光透過率の低下が大きくなり過ぎない範囲に設定することが好ましい。具体的には、散乱粒子による内部ヘイズは1〜60%が好ましく、更に好ましくは3〜50%である。
【0052】
次に、光透過性基材20の好ましい製造方法について述べる。以下の方法によれば、煩雑な操作や特別な装置等が不要であり、簡易に本発明の光透過性基材20を製造することができる。
光透過性基材20の好ましい製造方法によれば、少なくとも熱可塑性樹脂と溶媒を含むポリマー溶液を支持体に流延してウェブを形成し、前記支持体から前記ウェブを剥離した後乾燥して、平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材を作製する工程を含む。
すなわち、光透過性基材20の製造においては、まず、熱可塑性樹脂と溶媒を含むポリマー溶液を調製する。ポリマー溶液中の熱可塑性樹脂の濃度は、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜25質量%であるのがより好ましく、10〜15質量%であることが更に好ましい。濃度が好ましい範囲であると、製膜性向上の観点や、ロングランに伴ってフィルムに発生するスジ状故障低減の観点から好ましい。
また、ポリマー溶液の粘度は、1000cP以上50000cP以下が好ましく、更に好ましくは5000cp以上20000cP以下である。
【0053】
ポリマー溶液中の溶媒は、誘電率が35以上の溶媒を含み、かつ、少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含むことが好ましい。
このような溶媒を使用することで、表面形状が適切に制御された光透過性基材20を製造することができる。
通常は互いに相溶する溶媒を使用するため、表面に凹部(くぼみ)がないフィルムであることが多く、また、溶媒組成の調整により表面に凹部を形成させたとしても、同時にフィルム内部に空隙のあるフィルムとなってしまう。そして、このようなフィルムでは、フィルムを形成する材料と空隙の空気(屈折率は1.0)との間の屈折率差が大きいため、空隙部で広角の散乱が大きくなり後方散乱が起こりやすい。このような内部に空隙を有するフィルムでは、ヘイズ上昇に伴って後方散乱が大きくなり全光透過率も低下してしまうため、ヘイズ値と全光透過率とを両立させることができない。
本発明において2種の溶媒A及びBが相溶しないとは、A及びBの2種の溶媒のみからなる系において、一方の溶媒(A又はB)100gが20℃で溶解しうる他方の溶媒の量が共に4g以下であることをいう。
本発明では、誘電率が35以上の溶媒を含む少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒中に、ポリマー組成物を溶解してポリマー溶液を調製する工程、及びポリマー溶液を製膜することで、微細な凹部を表面に有するフィルムが得ることができる。また、本発明の光透過性基材は、内部に空隙を実質的に有さないことが好ましく、具体的には、フィルムの内部空隙率が10%以下(体積比)であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0054】
具体的には、誘電率が35以上の溶媒(以下、「高誘電率溶媒」という)を0.3質量%以上含む溶媒を用いることが好ましく、これによりフィルムの表面形状をより適切に制御することができる。高誘電率溶媒を1.0質量%以上含む溶媒を用いるのがより好ましく、高誘電率溶媒を1.5質量%以上含む溶媒を用いるのが更に好ましい。
一方、高誘電率溶媒の割合が高すぎると、ポリマーが溶解し難くなり、ポリマー溶液の調製が困難になったり、ポリマー溶液を調製できてもヘイズが高いドープとなってしまい、ドープの経時安定性が悪化したり、フィルム中の異物が増加することがある。この観点では、高誘電率溶媒は、30質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0055】
高誘電率溶媒を所定の範囲で含有する溶媒を用いて調製されたポリマー溶液を製膜することで、製膜時に又は製膜後に溶媒が蒸発する際に、溶液中でポリマーと高誘電率溶媒との相分離が起こると考えられる。その結果、本発明のフィルムが有するような、表面に微細な凹部がより得やすくなる。更に、効果的に表面の微細な凹部を形成させる観点から、高誘電率溶媒の沸点は、後述の低沸点溶媒の沸点よりも高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましく、10℃以上高いことが更に好ましく、また、両者が共沸しないことが好ましい。
【0056】
ここで、溶媒の誘電率について記載する。誘電率は電束密度Dと電場Eとの関係D=εEを与えるεをいい、溶剤分子の分極のし易さと相関を有するパラメータである。溶媒の誘電率の値は、例えば、日本化学会編「化学便覧基礎編I(改訂5版)」I−770頁に「比誘電率」として掲載されている。
【0057】
高誘電率溶媒の例には、水(誘電率78)、グリセリン(誘電率43)、エチレングリコール(誘電率37)、ジメチルホルムアミド(誘電率37)、アセトニトリル(誘電率38)、ジメチルスルホキシド(誘電率49)、ギ酸(誘電率58)、ホルムアミド(誘電率110)が含まれる。中でも、製膜過程での乾燥性や安全性といった取り扱い性の観点から水が好ましい。
高誘電率溶媒の沸点は、製膜時の表面形状制御の観点から70〜300℃が好ましく、更に好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜210℃である。
【0058】
高誘電率溶媒とともに、少なくとも1種のポリマーの良溶媒である有機溶媒を主溶媒として用いるのが好ましい。主溶媒の種類については特に制限はないが、前記高誘電率溶媒と互いに相溶しないことが好ましく、前記高誘電率溶媒と前記ポリマーの主溶媒以外の溶媒を用いない場合は前記ポリマーの主溶媒は前記高誘電率溶媒と互いに相溶しない溶媒である必要がある。
前記主溶媒は、沸点が80℃以下の有機溶媒が乾燥負荷低減の観点からより好ましい。前記主溶媒の沸点は、10〜80℃であることが更に好ましく、20〜60℃であることが特に好ましい。また、場合により沸点が30〜45℃である有機溶媒も前記主溶媒として好適に用いることができる。
このような主溶媒としては、ハロゲン化炭化水素を特に好ましく挙げることができ、場合により、エステル、ケトン、エーテル、アルコール及び炭化水素などが挙げることもでき、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、前記主溶媒は、エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。更に、前記エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。なお、本発明の製造方法に用いるポリマー溶液の主溶媒とは、単一の溶媒からなる場合には、その溶媒のことを意味し、複数の溶媒からなる場合には、構成する溶媒のうち、最も質量分率の高い溶媒のことを意味する。
【0059】
また、これら主溶媒と併用される有機溶媒としては、前記高誘電率溶媒の他に、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコール及び炭化水素などを挙げることもでき、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、前記有機溶媒としては、エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれか二つ以上を有していてもよい。更に、前記エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
なお、前記ポリマーの主溶媒が前記高誘電率溶媒と互いに相溶する溶媒である場合は、本発明では主溶媒と併用される有機溶媒が前記高誘電率溶媒と互いに相溶しない溶媒である必要がある。
【0060】
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンが更に好ましい。
前記エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0061】
光透過性基材20を構成するポリマーの主成分がセルロースアシレートである場合、上記の溶媒の中でも、前記高誘電率溶媒とともに、誘電率が10以上35未満の溶媒(本明細書中で「中誘電率溶媒」ということがある)と、誘電率が2以上10未満の低誘電率の溶媒(本明細書中で「低誘電率溶媒」ということがある)とを混合した溶媒を利用すると、高透明性のポリマー溶液を安定的に調製できるので好ましい。
すなわち、表面形状制御の観点からは、前記高誘電率溶媒を用いることが好ましく、ポリマーの溶解性向上の観点からは、低誘電率溶媒を用いることが好ましいが、これらの溶媒は相溶性が悪く、ドープの安定性が劣るため、中誘電率溶媒を併用することにより、相溶性を向上させることができ、フィルムの表面形状制御とドープ安定性との両立範囲を拡張し、製造適性を向上させることができるのである。
混合溶媒中の中誘電率溶媒の含有量は、0.3〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。
混合溶媒中の低誘電率溶媒の含有量は40〜99.5質量%であることが好ましく、60〜99質量%であることがより好ましく、70〜98質量%であることが特に好ましい。
【0062】
前記中誘電率溶媒の例には、上記アルコール類、ケトン類、エーテル類が含まれ、具体的には、アセトン(誘電率21)、メチルエチルケトン(誘電率19)、ジエチルケトン(誘電率14)、ジイソブチルケトン(誘電率15)、シクロペンタノン(誘電率19)、シクロヘキサノン(誘電率18)、メチルシクロヘキサノン(誘電率18)、2−エトキシ酢酸エチル(誘電率11)、2−メトキシエタノール(誘電率30)、1,2−ジアセトキシアセトン(誘電率16)、アセチルアセトン(誘電率17)、アセト酢酸エチル(誘電率16)、メタノール(誘電率33)、エタノール(誘電率24)、1−プロパノール(誘電率22)、2−プロパノール(誘電率22)、1−ブタノール(誘電率17)、2−ブタノール(誘電率16)、tert−ブタノール(誘電率11)、1−ペンタノール(誘電率14)、2−メチル−2−ブタノール(誘電率13)、シクロヘキサノール(誘電率15)等が含まれる。
【0063】
前記低誘電率溶媒の例には、上記ハロゲン化炭化水素類、エステル類が含まれ、具体的には、ジクロロメタン(誘電率誘電率9)、ジメトキシエタン(誘電率6)、1,4−ジオキサン(誘電率2)、1,3−ジオキソラン(誘電率3)、1,3,5−トリオキサン(誘電率3)、テトラヒドロフラン(誘電率8)、アニソール(誘電率4)及びフェネトール(誘電率4)、蟻酸エチル(誘電率9)、蟻酸n−プロピル(誘電率6)、蟻酸n−ペンチル(誘電率6)、酢酸メチル(誘電率7)、酢酸エチル(誘電率6)、酢酸n−ペンチル(誘電率5)、2−ブトキシエタノール(誘電率9)等が含まれる。
【0064】
これらの溶媒の中でも、水と、アルコール類の少なくとも一種と、ハロゲン化炭化水素類の少なくとも一種との混合溶媒が好ましく、水を0.3〜30質量%、アルコール類の少なくとも一種を1〜30質量%、及びハロゲン化炭化水素類の少なくとも一種を60〜99質量%含有する混合溶媒がより好ましい。中でも、水(誘電率78)と、メタノール(誘電率33)と、ジクロロメタン(誘電率9)との混合溶媒が好ましい。
水の含有量はフィルムのヘイズ上昇の観点から多い方が好ましいが、ポリマーの溶解性やポリマー溶液の粘弾性特性といった製膜性を考慮すると、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。また、アルコール類の含有量はフィルムのヘイズ上昇の観点から少ないほうが好ましいが、ポリマーの溶解性や、ロングランに伴ってフィルムに発生するスジ状故障低減を始めとする製膜性を考慮すると、3〜20質量%がより好ましく、5〜10質量%が更に好ましい。そして、主溶媒以外の溶媒の合計比率の好ましい範囲は、これらの組み合わせとして、0.8〜40質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましい。
【0065】
ポリマー溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて行うことができる。一例として、一旦、低温にて、溶媒中でポリマー及び所望により添加される添加剤を膨潤させつつ、溶解を進行させる工程(膨潤工程)と、その後、加熱及び加圧下で、ポリマー等を完全に溶解させる工程(溶解工程)とを含む方法である。
膨潤工程では、溶媒の温度を−10〜39℃程度の低温に維持する。膨潤工程時には、攪拌を実施し、ポリマー等の一部又は全部について、溶媒中への溶解を進行させるのが好ましい。膨潤工程は、一般的には、0.1〜6時間程度行うことが好ましい。
次に、溶解工程では、溶媒の温度を40〜240℃程度の温度まで加熱するとともに、0.2〜30MPa程度まで加圧するのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではなく、溶質及び溶媒の種類に応じて決定される。溶解工程は、0.1〜6時間程度行うことが好ましい。
【0066】
次に、得られたポリマー溶液を用いて製膜する。製膜は、一般的なソルベントキャスト法に従って行うことができる。具体的には、調製したポリマー溶液(ドープ)を、ドラム又はバンド等の支持体上に流延し、溶媒を蒸発させて製膜する。前記ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
ドープは、単層で流延してもよく、複数層で共流延してもよい。複数層で共流延する場合には、多層シート・フィルム製造で一般的に用いられる方法を用いることができ、例えば、層数の調整が容易なフィードブロック法や、各層の厚み精度に優れるマルチマニホールド法を用いることができ、フィードブロック法がより好ましい。
また、製膜方法が複数層を同時又は逐次流延する共流延である場合、特に層が3層以上の場合には、ヘイズ上昇の観点からは、本発明の製造方法に基づくドープは、表層若しくは表層の次の層に用いられることが好ましい。本発明の製造方法に基づくドープを表層の次の層に用いる場合には、表層の厚みは10μm、又はフィルム総厚みの10%のうちの小さい方の厚み以下であることが好ましく、5μm又は5%以下であることがより好ましく、3μm又は3%以下であることが更に好ましく、このような場合、経時でのギーサー汚れが低減されることがあるため好ましい。また、前記ドラム又はバンド表面からの剥離性の観点からは、本発明の製造方法に基づくドープは、支持体と直接接触しない層に用いられることが好ましい。
さらに、組成の異なる複数のポリマー溶液を同時又は逐次で流延する場合、前記複数のポリマー溶液のうち少なくとも1種のポリマー溶液が、少なくとも誘電率が35以上の溶媒、誘電率が2以上10未満の溶媒、及び誘電率が10以上35未満の溶媒を含むことが好ましい。
【0067】
ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、例えば、特開昭58−127737号公報、同61−106628号公報、特開平2−276830号公報、同4−259511号公報、同5−163301号公報、同9−95544号公報、同10−45950号公報、同10−95854号公報、同11−71463号公報、同11−302388号公報、同11−322946号公報、同11−322947号公報、同11−323017号公報、特開2000−53784号公報、同2000−273184号公報、同2000−273239号公報、米国特許第2336310号明細書、米国特許第2367603号明細書、米国特許第2492078号明細書、米国特許第2492977号明細書、米国特許第2492978号明細書、米国特許第2607704号明細書、米国特許第2739069号明細書、米国特許第2739070号明細書、英国特許第640731号明細書、英国特許第736892号明細書、特公昭45−4554号公報、特公昭49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、特開昭60−203430号公報、特開昭62−115035号公報に記載のものを採用できる。
前記ドープは、表面温度が10℃以下の、ドラム及びバンド等の支持体上に流延することが好ましい。
【0068】
上記ポリマー溶液を支持体上で製膜し、支持体から剥ぎ取った後に、更に乾燥することが好ましい。この乾燥工程で、膜中の残留溶剤を蒸発することができる。乾燥は、乾燥風を送風することで行うことができる。乾燥風の温度を段階的に上昇させて、多段階的に乾燥を行ってもよい。溶液流延製膜方法の流延工程、乾燥工程の詳細については、特開2005−104148号公報の120〜146頁にも記載があり、適宜本発明に製造方法に適用することができる。
【0069】
また、ポリマー溶液を製膜する際に、上記の3層以上の共流延を行う場合には、表層若しくは表層の次の層に用いるドープとして以下に記載するドープを用いることも可能である。以下に記載するドープは、単層流延で製膜すると、基材の内部に空隙が生じてしまうものであるが、共流延で表層若しくは表層の次の層に使用し、更に全体として表面側30μm程度の部分することで、フィルムの中央付近では閉じた空隙だったものが、表面付近で開いた空隙となり、結果として表面にのみくぼみが形成され凹部を有するフィルムが形成できる。
このようなドープに用いられる溶媒は、前記高誘電率溶媒を含まず、誘電率が10〜35程度の中誘電率溶媒と誘電率が4〜10程度の低誘電率の低誘電率溶媒とを併用する。全溶剤に対する中誘電率溶剤の割合は、凹部の形成しやすさ及びドープの搬送工程での析出等を考慮し、20〜90質量%が好ましく、更に好ましくは20〜50質量%である。
【0070】
製膜されたポリマーフィルムは、そのまま光透過性基材20として利用することができる。また、所望により延伸処理を実施して、更にヘイズを調整してもよい。延伸条件については特に制限はない。通常行われる条件、例えば、延伸温度が(Tg−20)〜(Tg+50)℃程度、及び延伸倍率が20〜40%程度で実施することができる。
延伸は、ロール延伸機を利用して実施することができる。縦又は横一軸延伸処理を行っても、二軸延伸処理を行ってもよい。一般的には、長尺状のフィルムを長手方向に延伸する、縦一軸延伸処理が行われるであろう。
また、後述のように光透過性基材20の凹部を有する面上に滑り剤を含有する層を形成してもよい。
【0071】
光透過性基材20の厚みについては、特に制限はないが、一般的には、20〜200μm程度であり、薄型化の観点では、20〜100μm程度が好ましく、更に好ましくは20〜80μmである。
【0072】
<(A部材)又は(B部材)の表面に含有される滑り剤>
(A部材)及び(B部材)部材の間の滑り性を良化させて、応力の集中を防ぎ、擦れあいによる部材の破損を防止するために、(A部材)及び(B部材)の少なくともいずれかの表面には、(A部材)又は(B部材)に対向する面上に滑り剤を含有することが好ましい。滑り剤の構造に限定はないが、ポリシロキサン部分構造を含む化合物やフッ素原子を含む化合物が挙げられる。
【0073】
(ポリシロキサン構造を含む化合物)
ポリシロキサン構造を含む化合物としては、下記一般式(I)で表される構造を含む化合物を用いることができる。
一般式(I)
【0074】
【化1】

【0075】
一般式(I)中、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。
アリール基としては、炭素数6〜20が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。
アルキル基及びアリール基はさらなる置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては特に限定されないがハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)が好ましい。
【0076】
ポリシロキサン構造を含む化合物は、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有していることが好ましい。
分子内に電離放射線硬化性官能基を有するシリコーン系化合物の例としては、信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−1821(以上商品名)や、チッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、FM6621、FM−1121、サイラプレーンFM0275、サイラプレーンFM0721やGelest製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0077】
分子内に熱硬化性官能基を有するシリコーン系化合物の例としては、水酸基を含む化合物としては、“X−22−160AS”、“KF−6001”、“KF−6002”、“KF−6003”、“X−22−170DX”、“X−22−176DX”、“X−22−176D”、“X−22−176F”{以上、信越化学工業(株)製};“FM−4411”、“FM−4421”、“FM−4425”、“FM−0411”、“FM−0421”、“FM−0425”、“FM−DA11”、“FM−DA21”、“FM−DA25”{以上、チッソ(株)製};“CMS−626”、“CMS−222”{以上、Gelest社製}等が挙げられる。
また、水酸基と反応する官能基を有するシリコーン系化合物の例としては、“X−22−162C”、“KF−105”{以上、信越化学工業(株)製};“FM−5511”、“FM−5521”、“FM−5525”、“FM−6611”、“FM−6621”、“FM−6625”{以上、チッソ(株)製}等が挙げられる。
【0078】
また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
【0079】
また、特にシリコーン系化合物の固定性を高めて使用する場合には、主鎖又は側鎖にポリシロキサン構造を有し、かつ架橋性反応基を有する共重合体を用いることができる。具体的な化合物としては、特開2007−291372号公報の表1、表2に記載の共重合体、及び特開2008−106190号公報の表1に記載の共重合体を挙げることができる。
【0080】
また、ポリシロキサン構造を含有する高分子ラジカル発生剤を、ラジカル反応性の硬化性化合物と共に用いるとポリシロキサン構造が固定された硬化層が形成できる。このような化合物は、特開2008−106190号公報の段落0036〜0049に記載されている。
【0081】
[フッ素原子含有滑り剤]
滑り剤として、フッ素原子を含有する化合物からなる滑り剤を使用することも好ましい。
フッ素原子含有化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10である。
フルオロアルキル基は、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(エーテル結合を有する基としては、例えば、CHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0082】
フッ素原子を含有する化合物は、硬化型の官能基を含有する含フッ素化合物が好ましい。硬化型の官能基に特に制限はないが、水酸基、シラノール基、グリシジル基、オキセタニル基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基などが挙げられる。なかでも水酸基、シラノール基、エポキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基など好ましく、特に好ましくは、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基である。
【0083】
フッ素原子を含有する化合物は、更に部材形成物質との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は複数個あることが好ましく、その置換基は同一であっても異なっていても良い。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。
【0084】
フッ素原子を含有する化合物は、ポリマーやオリゴマーの形態であってもよい。ポリマー又はオリゴマー中に、フッ素原子を含まない化合物からなる構成単位を含んでいても良い。また、ポリマー又はオリゴマーの分子量に特に制限はない。
【0085】
フッ素原子を含有する化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。
好ましいフッ素原子含有化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、これら化合物の具体例は、特開2007−108726号公報の0136〜0141段落、特開2007−114772号公報の0129〜0152段落、特開2007−272197号公報の0039〜0058段落に記載されている。
以上の滑り剤は、単独で使用してもよいし、併用してもかまわない。
【0086】
これら滑り剤を(A部材)又は(B部材)の表面に含有させるための方法は、部材形成後に塗布又は転写する方法、部材形成時に部材形成材料とともに添加する方法が挙げられる。塗布方法としては、滑り剤を含有する塗布液を用いたスピン塗布、浸漬塗布、ロールコート塗布、グラビアコート塗布、カーテンフロー塗布、ダイコート塗布、スプレイ塗布等を挙げることができる。転写方法としては、滑り剤を含有する転写シートを作成し、必要に応じて加熱しながら転写シートと基材を圧着させて滑り剤を基材に転写する方法が挙げられる。
【0087】
また、滑り剤は、(A部材)又は(B部材)のどちらか一方にのみ含有されても良いが、両方に含有することが好ましい。両部材に含有される場合には、構造の同一の滑り剤が含まれていることが好ましい。
また、片方の部材から、転写させることにより、表面に含有する態様も好ましい。その際には、(B部材)に滑り剤を用いることが好ましい。
【0088】
これら滑り剤の(A部材)及び/又は(B部材)の表面での含有量は、光電子スペクトル法(ESCA)により算出することができる。一般には、光電子スペクトル法で表面を分析した場合、約5nm程度の深さに対する組成の情報が得られるといわれている。光電子スペクトル法で求めた表面中における、滑り剤の含有率は5%以上が好ましく、10%以上が更に好ましく、最も好ましくは15%以上100%以下である。ポリシロキサン構造を有する化合物を用いた場合には、珪素原子と炭素原子の原子比率(Si/C)で表記すると、光電子分光スペクトルで求めたSi/Cの値は、0.05〜0.50が好ましく、更に好ましくは0.10〜0.50、最も好ましくは0.20〜0.50である。また、フッ素原子含有化合物を用いた場合には、フッ素原子と炭素原子の原子比率(F/C)で表記すると、光電子分光スペクトルで求めたF/Cの値は、0.20〜3.0が好ましく、更に好ましくは0.50〜2.7であり、最も好ましくは1.0〜2.5である。
【0089】
本願においては、光電子スペクトル法での表面組成分析は、島津製作所(株)製“ESCA−3400”で(真空度1×10-5Pa、X線源;ターゲットMg、電圧12kV、電流20mA)最表面の分析を行うことができる。
【0090】
以下、(A部材)又は(B部材)の表面に滑り剤を含有させる特に好ましい態様について説明する。
好ましい第1の態様は、(B部材)の表面(好ましくは凹部を有する面上)に滑り剤を含有する層を形成するものである。この第1の態様の光透過性基材の模式図を図8に示す。図8に示す光透過性基材40は、凹部を有する面上に滑り剤を含有する層42を有する。
滑り剤を含有する層は、滑り剤を必須成分とし、必要に応じて硬化性樹脂、溶剤、硬化開始剤、レベリング剤、粘度調整剤、帯電防止剤、その他添加剤を含有する。好ましい態様は、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかと、必要に応じてその他の添加剤等とを含む組成物を塗布し、硬化させることにより得られる硬化層を(B部材)の表面に形成することである。
滑り剤を含有する層(硬化層)は、一定膜厚の均一層でもよいが、滑り剤含有率が分布をもった不均一な層でも構わない。
【0091】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂は、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかを用いて、これを架橋反応又は重合反応させることにより形成されることが好ましい。
滑り剤含有層を形成する硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の架橋反応又は重合反応により形成され得る。
硬化型の官能基に特に制限はないが、水酸基、シラノール基、グリシジル基、オキセタニル基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基などが挙げられる。なかでも水酸基、シラノール基、エポキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基など好ましく、特に好ましくは、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基である。
【0092】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
【0093】
更にはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0094】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。
【0095】
滑り剤含有層の光硬化性モノマーとして用いられる化合物は、特開2007−298974号公報段落[0158]〜[0165]に記載されている化合物を用いることができる。
【0096】
(カチオン重合性基を有する化合物)
カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等が挙げられるが、好ましくは開環重合性の基であり、より好ましくはエポキシ基又はオキセタニル基であり、特に好ましくはエポキシ基である。これらの基は可能な位置に置換基を有していても良い。
【0097】
これらのカチオン重合性基は、硬化剤一分子当たり、複数個導入されていることが好ましく、より好ましくは、1分子当たり、2〜20個導入されたものであり、特に好ましくは3〜10個導入されたものである。
【0098】
本発明において好適に使用される化合物としては、例えば市販のものでは、デナコールEX314,同411,同421,同521,同611,同612等(以上ナガセ化成工業株式会社製、)、セロキサイド、GT301,同401等(以上ダイセル工業株式会社製)等を挙げることができる。その他、特開2007−298974号公報段落[0169]〜[0176]に記載されている化合物を用いることができる。
【0099】
これら多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0100】
[架橋性ポリマ−バインダー]
本発明に用いる硬化性化合物としては、反応性基を有するポリマーを用いることができる。
【0101】
ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖及びポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖及びポリエーテル主鎖が更に好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
ポリオレフィン主鎖は飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖はウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖はイミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋構造を有する。
【0102】
架橋反応性付与のための構成単位としては主として以下の(A)、(B)、(C)で示される単位が挙げられる。
(A):グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、
(B):カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、
(C):分子内に上記(A)、(B)の官能基と反応する基とそれとは別に架橋性官能基を有する化合物を、上記(A)、(B)の構成単位と反応させて得られる構成単位、(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で合成できる構成単位)が挙げられる。
【0103】
上記(C)の構成単位は該架橋性官能基が光重合性基であることが好ましい。ここに、光重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シンナモイル基、シンナミリデンアセチル基、ベンザルアセトフェノン基、スチリルピリジン基、α−フェニルマレイミド基、フェニルアジド基、スルフォニルアジド基、カルボニルアジド基、ジアゾ基、o−キノンジアジド基、フリルアクリロイル基、クマリン基、ピロン基、アントラセン基、ベンゾフェノン基、スチルベン基、ジチオカルバメート基、キサンテート基、1,2,3−チアジアゾール基、シクロプロペン基、アザジオキサビシクロ基などを挙げることができ、これらは1種のみでなく2種以上であってもよい。これらのうち、(メタ)アクリロイル基及びシンナモイル基が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0104】
<架橋性化合物>
本発明を構成するモノマーあるいはポリマーバインダ−が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。また、架橋性化合物のみを用いて、滑り剤と硬化させることも可能である。
例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら架橋性化合物の具体例については、特開2007−298974号公報[0179]〜[0183]に記載されている。
【0105】
<開始剤>
各種のエチレン性不飽和基を有するモノマー又はポリマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
【0106】
(光開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0107】
これらの開始剤は単独でも混合して用いても良い。
「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159、及び、「紫外線硬化システム」 加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0108】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,127,184,500,819,907,369,379,1173,1870,2959,4265,4263など)及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0109】
また、本発明においては、光増感剤や熱開始剤を用いることもできる。これら重合開始剤の具体例については、特開2007−298974号公報[0190]〜[0219]に記載されている。
【0110】
これら開示剤及び増感剤は、硬化性モノマーやポリマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。2種以上を併用して用いることもできる。
【0111】
<硬化触媒>
本発明のフィルムには、硬化を促進する硬化触媒として電離放射線又は熱の照射によりラジカルや酸を発生する化合物を使用することができる。具体的な化合物に関しては、特開2007−298974号公報の[0220]〜[0231]に記載されている。
【0112】
これら硬化触媒の使用割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
その他、具体的な化合物や使用法として、例えば特開2005―43876号公報記載の内容などを用いることができる。
【0113】
<塗布溶剤>
滑り剤含有層を形成するための塗布組成物に用いられる溶剤としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。
【0114】
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2―ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル(90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2―ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2―プロパノール(82.4℃)、1―ロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2―ブタノンが特に好ましい。
【0115】
沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2―メチル−4―ペンタノン(メチルイソブチルケトンと同じ、115.9℃)、1―ブタノール(117.7℃)、N,N―ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N―ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2―メチル−4−ペンタノンである。
【0116】
また、塗布溶媒の全て又は一部が、(部材A)又は(部材B)を膨潤又は溶解することは、部材と滑り層の密着性を改良できる点で好ましい。このような溶媒の使用量は、全溶媒中の1〜100質量%がこのましく、更に好ましくは2〜30質量%である。滑り剤含有層形成用塗布液の溶剤を除いた揮発残存成分(固形分)中で、滑り剤含有量は、0.1〜99質量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜50質量%であり、最も好ましくは1〜30質量%である。また、硬化性樹脂は、固形分中1〜99.9質量%が好ましく、50〜99.5質量%が更に好ましく、最も好ましくは70〜98質量%である。また、固形分濃度は、塗布装置や部材により異なるが、0.1〜50質量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜25質量%、最も好ましくは1〜15質量%である。この範囲にすることで、薄層で均一性の高い塗膜形成が可能となる。
【0117】
本発明において、滑り剤含有層の厚みは、(A部材)及び(B部材)の集光性能や光散乱性能などの基本的な性能を大きく逸脱しない限りにおいて特に制限はないが、1nm以上1μm未満が好ましく、更に好ましくは2nm以上0.1μm未満であり、最も好ましくは3nm以上80nm以下である。この範囲にすることで、十分な滑り性や滑り剤の塗布性が付与でき、光学特性も満足できる。凸状や凹状の表面形態を有する部材においては、滑り剤含有層の膜厚を計測するのは容易ではないが、基材の法線方向の投影面積当たりの塗布量として、上記好ましい塗布膜厚量になるように滑り剤含有層が塗布されていることが好ましい。
【0118】
滑り剤含有層は、塗布し溶媒を乾燥した後に、必要に応じ硬化することができる。電離放射線硬化系の材料を用いた場合には、電離放射線の種類については、特に制限はなく、x線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して層を硬化するのが好ましい。照射の際には、前記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。電離放射線照射時の温度はハンドリング性及び面内の性能の均一性から、一般に20〜200℃、好ましくは30〜150℃、最も好ましくは40〜120℃である。膜面温度が該上限値以下であれば、バインダー中の低分子成分の流動性が上昇しすぎて面状が悪化したり、支持体が熱によりダメージを受けたりする問題が生じないので好ましい。また該下限値以上であれば、硬化反応の進行が十分で、膜の耐擦傷性が良好なものとなるので好ましい。
【0119】
電離放射線照射時の酸素濃度は3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1%体積以下であり、更に好ましくは0.1%以下である。
【0120】
熱により硬化が進行するバインダーを使用する場合には、硬化温度は、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜130℃、最も好ましくは80〜110℃である。支持体が高温で劣化しやすい場合には低温が好ましい。熱硬化に要する時間は、30秒〜60分が好ましく、更に好ましくは1分〜20分である。
【0121】
本発明の(A部材)又は(B部材)の表面に滑り剤を含有させる好ましい第2の態様は、(A部材)の集光部(プリズム又はシリンドリカルレンズ)を硬化性の材料で形成する際に硬化性材料に滑り剤を添加する方法である。
(A部材)を硬化性材料で形成する際には、上記好ましい態様1の頁で述べた硬化性樹脂、重合開始剤、架橋剤を用いることができる。硬化樹脂のなかでも耐熱性、耐擦傷性、耐光黄変性などの点で、ウレタン(メタ)アクリレート化合物やエステル系(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これら化合物は、特開2009−47899号公報の段落[0042]〜[0077]に記載されているものを用いることができる。(A部材)に滑り剤を含有せしめる本態様においては、プリズム又はシリンドリカルレンズを形成する硬化性樹脂に対して、滑り剤の使用量は0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
【0122】
本発明においては、(A部材)及び/又は(B部材)に滑り剤含有層を形成した場合の各部材の好ましい表面形状の値や光学特性の値は、上記それぞれの部材で述べた値と同一の範囲である。
【0123】
なお、本実施形態においては面光源装置は光拡散シート18を有する構成となっているが、本発明の面光源装置では光拡散シート18は必須ではなく、光拡散シート18は省略してもかまわない。
【0124】
[偏光板]
偏光膜(以下、偏光子とも言う)は、一般的に偏光膜保護フィルムに貼合されて、画像表示装置等、種々の用途に用いられる。本発明においては、画像表示装置の部品点数を減らして薄層化を図るために、偏光板保護フィルムとして(B部材)である凹部を有する光透過性基材を用いることが好ましい。
偏光膜と貼合する前に、偏光板保護フィルムの貼合面は、偏光膜と貼合する前に、表面処理してもよい。表面処理によって、偏光膜との接着性が改善される。表面処理の例には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理(鹸化処理)及び紫外線照射処理等が含まれる。前記偏光板保護フィルムが、セルロースアシレートを主成分として含有する場合は、鹸化処理を施すことが特に好ましい。
【0125】
前記偏光子については特に制限はない。種々の偏光子を利用することができる。Optiva Inc.に代表される塗布型偏光子、又はバインダーとヨウ素、若しくは二色性色素とからなる偏光子が好ましい。
前記偏光子の、偏光板保護フィルムを貼合する面と反対側の面にも、保護フィルムが貼合されているのが好ましい。該保護フィルムのポリマー材料の中でも、セルロースアシレートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましい。
【0126】
本発明の光透過性基材(B部材)と、偏光膜とを貼合する際、接着剤を用いてもよく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を接着剤として用いることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0127】
本発明の偏光板は、光散乱性以外にも他の機能を有する層を更に有していてもよい。液晶セルの複屈折を補償するための光学補償層、反射防止層、防眩層、ハードコート層、帯電防止層等を有していてもよい。
【0128】
[光学補償フィルム]
偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、少なくとも1枚が、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい態様である。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
【実施例】
【0129】
[集光シート(A部材)の作製]
(プリズムシート(P−1),(P−2)の作製)
光出射面に断面二等辺三角形のプリズム体が配列されたプリズムシートをポリカーボネート樹脂の溶融押出成形により作製した。シートの厚さ(シートの裏面からプリズムの谷までの厚さ)125μm、プリズム頂角90°、プリズム体のピッチ(Pa)110μmとしたものを(P−1)とした。(P−1)に対して、ピッチ(Pa)を200μmに変更した試料(P−2)を同様にして作製した。
【0130】
(プリズムシート(P−101)〜(P−103)の作製)
厚さ80μmのポリエチレンテレフタレート上に表1に示す組成(質量部)の硬化性組成物を塗布し、型押し光硬化することでプリズムシート(P−1)と同じ表面形状・膜厚のプリズムシート(P−101)〜(P−103)を作製した。
【0131】
【表1】

【0132】
以下に表中で使用した化合物を示す。
・ウレタンアクリレート(Cpd−1):特開2009−47899号公報の例示化合物(4)
・ポリブチレングリコールジメタアクリレート(Cpd−2):ブチレングリコールユニットの平均繰り返し度が5〜10の混合物
・光重合開始剤(Irg127):光重合開始剤イルガキュア127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
・滑り剤(硬化性シリコーンA):両末端メタアクリレート変性ジメチルシロキサンFM−7725、平均分子量10000、チッソ(株)製
・滑り剤(硬化性フルオロポリエーテル):フッ素ポリエーテル含有多官能アクリレート、特開2007−114772号公報の示化合物(C−3)
【0133】
[光透過性基材(B部材)の作製]
表2に示した組成(質量部)でドープを作製した。
【0134】
【表2】

【0135】
使用した材料を以下に示す。
・セルローストリアセテートA:アセチル置換度2.94、粘度平均重合度300、6位のアセチル置換度は0.94
・セルローストリアセテートB:アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310、6位のアセチル置換度は0.89
・可塑剤:エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量1000)
・溶媒:ジクロロメタン(誘電率9)、メタノール(誘電率33)、及び水(誘電率78)
なお、ドープの固形分濃度は17質量%になるように調整した。ドープ試料009は、ポリマーが溶解せず流延用のドープが形成できなかった。
【0136】
セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは50m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルムを得た。
表2のドープを組み合わせ表3に示した構成になるように流延し、光透過性基材(F−1)〜(Fー11)を作製した。複数のドープを用いる場合には、フィードブロック法に準じて共流延を行った。また、複数層を共流延する際の基層とは、ステンレス支持体側を表す。
【0137】
[光透過性基材の評価]
得られた各光透過性基材フィルムの中央部の試料を三次元非接触表面形状計測システム(マイクロマップMM5000シリーズ;(株)菱化システム製)を用いて観察し、フィルム表面1mm2に存在するくぼみについて深さ、開口部長径、開口部短径、中心間隔、個数の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。なお、得られた光透過性基材において、フィルム面に垂直な方向から観察した際の凹状のくぼみ開口部の形状は、円形状に近く、その円相当径(投影面積円相当径)は、約5〜16μmの範囲であった。同様に、凹状のくぼみのフィルム面に垂直な方向から観察した際のくぼみ底部の形状は、円形状に近く、その円相当径(投影面積円相当径)は、約3〜10μmの範囲であった。また、各光透過性基材における表3に記載した以外の基材の厚み方向断面の詳細は、くぼみ底部はくぼみ全体の横幅を100%とすると60〜70%の幅で形成されており、フィルム表面に対する前記くぼみ底部の面の傾きは±2.5°以内であり、くぼみ底部からくぼみ端部に向かって、徐々に曲率半径が小さくなる形状であった。また、得られたフィルムの内部空隙率は、いずれも1%(体積比)以下であった。また本文記載の方法により求めたガラス転移温度以上での凹部くぼみの寸法変化率は、0.5%以下であった。
【0138】
【表3】

【0139】
なお、上記表において、光透過性基材の光学特性(ヘイズ、全光透過率、平行透過率)は、ヘイズメーター(NDH2000;日本電色工業(株)製)により測定した。
また、ドープ試料No.008を用いて光透過性基材(F−1)に準じて作製した基材は、F−1同様に表面に本願の凹部の形成が観察されなかった。
【0140】
[滑り剤含有層形成用塗布液の調製]
表4に示す組成(質量部)の滑り剤含有層用組成物S−201〜S−205を調製した。希釈溶媒として、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの10:90質量比の混合溶媒を用い、固形分濃度5質量%に溶解して塗布液とした。
【0141】
【表4】

【0142】
使用した材料を以下に示す。
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
・サイメル303:熱硬化性化合物、メチロール化メラミン、日本サイテックインダストリーズ(株)製
・硬化触媒:キャタリスト4050、アミンブロックトルエンスルホン酸、日本サイテックインダストリーズ(株)製
・滑り剤(硬化性シリコーンA):両末端メタアクリレート変性ジメチルシロキサンFM−7725、平均分子量10000、チッソ(株)製
・滑り剤(硬化性シリコーンB):アクリレート部位を分子内が複数個有するジメチルシロキサンユニット含有共重合体、平均分子量45000、特開2008−106190号公報の例示共重合体P−7
・滑り剤(硬化性フルオロポリエーテル):フッ素ポリエーテル含有多官能アクリレート、特開2007−114772号公報の示化合物(C−3)
・滑り剤(硬化性シリコーンA):両末端メタアクリレート変性ジメチルシロキサンFM−7725、平均分子量10000、チッソ(株)製
【0143】
[滑り剤含有層を有する光透過性基材の作製]
特開2003−211052号公報の図1に記載されたスロットダイコーターを用いて、表3に示した光透過性基材(F−3)の凹部が形成された表面側に、上記表4の滑り剤含有層形成用塗布液を乾燥膜厚70nmになるように塗布した。塗布後30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、塗布層を硬化させた。硬化条件は、組成物S−201〜S−204を用いた場合には、窒素パージ下酸素濃度を0.1%以下にして160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照射量500mJ/cmの紫外線を照射した。
組成物S−205を用いた場合には、110℃で10分間熱硬化させた。すべり剤含有層の膜厚は、塗布液が凹凸のない表面上に均一厚みの膜を形成したと仮定したときの計算値である。このすべり剤含有層の形成により、表3で評価した表面形状や光学特性の変化は実質認められなかった。
このようにして滑り剤層を有する光透過性基材(F−3/S−201)、(F−3/S−202)、(F−3/S−203)、(F−3/S−204)、(F−3/S−205)を作成した。
これら基材の表面を光電子スペクトル法(ESCA)で解析した結果、以下の値となり、滑り剤に起因するSiやFの原子が表面に存在していることが確認された。
基材(F−3/S−201):Si/C=0.49(元素モル比)
基材(F−3/S−202):Si/C=0.48(元素モル比)
基材(F−3/S−203):Si/C=0.49(元素モル比)
基材(F−3/S−204):F/C=2.3(元素モル比)
基材(F−3/S−205):Si/C=0.49(元素モル比)
【0144】
[比較用凹凸部材((比較用H−1)〜(比較用H−3))の作製]
表5に示す組成の光散乱層形成用塗布液を作製した。表中組成物の配合比は質量部を表す。凝集シリカのサイズは平均2次粒子サイズを表す。これら塗布液を80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)の上に塗布し、90℃で40秒間乾燥の後、更に窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量50mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ5.0μmの光散乱性ハードコート層を形成した.ハードコート層表面は、凹凸形状を有していた。このようにして得られた凹凸部材のヘイズ及び表面形状(JIS B 0601に基づく算術平均粗さRa及び平均山谷間隔Sm)を測定した結果を表5に合わせて示す。
【0145】
【表5】

【0146】
なお、上記表におけるヘイズ、全光透過率、平行透過率は、ヘイズメーター(NDH2000;日本電色工業(株)製)により測定した。
また、平均山谷間隔Smは、JIS−B0601(1982)に準じて、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3Fを用いて測定した。
【0147】
[液晶表示装置を用いた評価]
LG Display社製ノートPC(R700−XP50K、WXGA+、画素数1440×900、17インチ)を分解し、バックライトと液晶パネルの間にある拡散シートを取り外し、更に液晶セルに貼られたバックライト側の偏光板の保護フィルムを剥がして、その代わりに(B部材)として以下の表5に示すフィルムを貼り付けた。また、バックライトユニット中の2枚のプリズムシートを以下の表6に示すプリズムシートに交換した。
【0148】
このように作製した液晶表示装置を用いて以下の評価を行った。
(1)正面白輝度
作製した液晶表示装置にビデオ信号ジェネレーター(VG−848;アストロデザイン(株)製)より信号を入力し、全面ベタ表示で256/256階調の白色表示とし、暗室下において液晶表示装置平面の法線(正面)方向から輝度計(BM5−A;(株)トプコン製)にて輝度を測定した。画面の中央の点から3cmの間隔で上下各1点、左右各1点の合計5点を測定し、平均値を算出した。バックライト側偏光板の表面に光散乱性を有さない基材(F−1)を使用した場合を基準として、以下の3段階で評価した。
◎:ほとんど低下していない(基準値の98%以上100%以下)
○:やや低下している(基準値の95%以上98%未満)
×:低下している(基準値の95%未満)
【0149】
(2)輝度不均一性
モアレ評価と同様の方法で液晶表示装置を全面ベタ表示で128/256階調の灰色表示とし、暗室下において液晶表示装置平面の法線(正面)方向から輝度計(BM5−A;(株)トプコン製)にて輝度を測定した。画面の中央の点から左右方向に0.5cm刻みで各8cmを測定し、[隣接する3cm内での輝度の極大値と極小値の差]÷[隣接する3cm内での輝度の平均値]×100を輝度不均一性(%)とした。この輝度不均一性は、3%以下であるとほとんどの人が不均一性を感じず、3%を超え6%以下では一部の人が不均一性を感じる程度であり、10%を超えるとほとんどの人が不均一であると感じる指標である。商品的には10%以下が必要である。
【0150】
(3)モアレ
作製した液晶表示装置にビデオ信号ジェネレーター(VG−848;アストロデザイン(株)製)より信号を入力し、全面ベタ表示で128/256階調の灰色表示とし、暗室下で様々な方向から画面を目視観察し、モアレ発生の有無を評価した。
◎:モアレが観察されない。
○:モアレが僅かに観察されるがほとんど気にならない。
▲(黒△):モアレが観察され、やや気になる。
×:モアレが明瞭に観察される。
評価は4人で行い、それぞれの液晶表示装置に対して最高の評価をした1人と最低の評価をした1人の評価を除いた2人の評価を元に判定した。その2人の評価が異なるときは、両者の評価を併記した。例えば「○▲」は1人が○の評価で、一人が▲の評価である。モアレのレベルとしては、実用的には○以上が必要である。
【0151】
(4)耐擦傷性
(A部材)をプリズム面が上になるように平滑ガラス面上に固定した。(B部材)を20mm×20mmに切り取り、(B部材)の凹(凸)面とプリズム面が接するように配置した。(B部材)の上面を、底面20mm×20mm×高さ10mmに切り取った消しゴム(MONO:商品名、(株)トンボ鉛筆製)を介して擦り試験機のヘッドに固定し、100g/cm2の荷重で垂直に上方から押し付けた。25℃60RH%の条件下においてストローク長3.5cm、擦り速度1.8cm/sにて200往復させた。擦り方向は、プリズムの山頂が連なる方向に100往復したのち、それと直交する山谷方向に100往復した。擦り試験終了後に、(A部材)の破損の程度を顕微鏡で観察した。破損の程度は、傷の大きさ及び頻度から6段階にランク付けした。
◎ :非常に注意深く見ても、傷が見えない。
○ :非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
○△:弱い傷が見える。
△ :中程度の傷が見える。
× :大きい傷が見える。
××:大きい傷が見え、頻度も多い。
耐擦傷性試験後の(A部材)を液晶表示装置に組み立てた場合に、×及び××の評価の部材を用いた場合には、白点状の故障として認識され、△の評価の部材を用いた場合には、若干の白点は認識できるものの実用に耐えうるレベルのものであった。
【0152】
以上の評価結果を表6に示す。
【0153】
【表6】

【0154】
表6によれば、集光シートと、表面に凹部を有する光透過性基材とを組み合わせた本発明の面光源装置は、正面輝度が高く、輝度均一性に優れ、モアレの発生が抑制され、かつ耐擦傷性に優れることが分かる。
特に、ヘイズが60%以上(F−2〜F−6,F−8,F−11)の光透過性基材を用いた構成では、輝度均一性が高くモアレの発生が抑制されていることがわかる。
また、集光シート又は光透過性基材に滑り剤を含有する構成では、耐擦傷性に優れることが分かる。特に集光シートのプリズム間ピッチが広くなる((P−1)→(P−2))と耐擦傷性が悪化する傾向にあるが、滑り剤を含有させることで十分なレベルにまで改良できることが分かる。
また、比較試料の硬化性樹脂中に微粒子を含有させて形成される光透過性部材は表面に凹凸を有しており、本発明の部材と同じヘイズであっても、正面輝度、モアレ、耐擦傷性の点で本発明の構成に劣るものであった(比較用H−1,2,3とF−6,11,7を用いた構成の比較)。また、光透過性基材の表面が平坦で凹状のくぼみのない基材(F−1、F−9)を用いた場合では耐擦傷性が悪く、平坦部と凹部を組み合わせて有する本発明の形状が耐擦傷性の改良に有効であることを示している。
以上の実施例により、本発明の効果は、平坦部と凹部とからなる光透過性基材の特殊な形状によりもたらされていることが分かる。
【符号の説明】
【0155】
10 画像表示装置
12 光源
18 光拡散シート
14 集光シート
14P プリズム部(集光部)
14L シリンドリカルレンズ体(集光部)
20,40 光透過性基材
21 凹部
22 偏光膜
23 平坦部
24 保護フィルム
26 下側偏光板
28 上側偏光板
30 液晶セル
32 液晶パネル
42 滑り剤を含有する層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、少なくとも一方の面に複数の集光部を有する集光シートと、少なくとも一方の面に平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材と、をこの順に備える面光源装置。
【請求項2】
前記集光シートの集光部を有する面と前記光透過性基材の平坦部と凹部を有する面とが向かい合うように配置された、請求項1に記載の面光源装置。
【請求項3】
前記集光シートの集光部を有する面及び前記光透過性基材の平坦部と凹部を有する面の少なくともいずれかの面上に滑り剤を含む、請求項2に記載の面光源装置。
【請求項4】
前記集光シートの複数の集光部が、縞状、半円柱状、錘状、又は錘台形状である、請求項1〜3のいずれかに記載の面光源装置。
【請求項5】
下記式(1)〜(3)を満足する請求項1〜4のいずれかに記載の面光源装置。
式(1) 20≦Pa≦400
式(2) 0.5≦Lb≦100
式(3) 1.5≦(Pa/Lb)≦150
(式中、Paは集光シートにおいて隣接する集光部間の距離(μm)を示す。Lbは、凹部の開口部の平均長径長(μm)を示す。)
【請求項6】
前記光透過性基材の仮想平面部の全面積(Sa)に対する前記凹部の開口部の総面積(Sd)の割合(Sd/Sa×100(%))が1〜90%であり、
前記光透過性基材のヘイズが15〜95%である、請求項1〜5のいずれかに記載の面光源装置。
【請求項7】
前記光透過性基材の平坦部及び凹部を有する面上に、少なくとも滑り剤を含有する層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の面光源装置。
【請求項8】
前記滑り剤を含有する層が、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかの化合物とを含む組成物から形成される硬化層である、請求項7に記載の面光源装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の面光源装置上に、1対の偏光膜に挟まれた液晶セルを含む、液晶表示装置。
【請求項10】
前記光透過性基材を面光源装置側の偏光膜保護フィルムとして用いた、請求項9の液晶表示装置。
【請求項11】
少なくとも一方の面に平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材であって、
前記光透過性基材の仮想平面部の全面積(Sa)に対する前記凹部の開口部の総面積(Sd)の割合(Sd/Sa×100(%))が1〜90%であり、
前記光透過性基材のヘイズが15〜95%であり、
前記光透過性基材の凹部を有する面上に、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかを含む組成物から形成される硬化層を有する、光透過性基材。
【請求項12】
少なくとも一方の面に平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材の製造方法であって、
少なくとも熱可塑性樹脂と溶媒を含むポリマー溶液を支持体に流延してウェブを形成し、前記支持体から前記ウェブを剥離した後乾燥して、平坦部と複数の凹部を有する光透過性基材を作製する工程と、
光透過性基材の凹部を有する面上に、少なくとも滑り剤を含有する層を形成する工程と、を含み、
前記ポリマー溶液は2種以上の溶媒を含み、前記2種以上の溶媒のうち少なくとも1種は誘電率が35以上の溶媒である、光透過性基材の製造方法。
【請求項13】
前記誘電率が35以上の溶媒の含有量が、前記ポリマー溶液に含まれる溶媒の全質量に対して、0.3〜30質量%の範囲である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ポリマー溶液が、更に誘電率が2以上10未満の溶媒及び誘電率が10以上35未満の溶媒を含む、請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記光透過性基材を作製する工程において、
ポリマー溶液の流延を、組成の異なる複数のポリマー溶液を同時又は逐次で流延することにより行い、前記複数のポリマー溶液のうち少なくとも1種のポリマー溶液が、少なくとも誘電率が35以上の溶媒、誘電率が2以上10未満の溶媒、及び誘電率が10以上35未満の溶媒を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
前記光透過性基材の内部に空隙を実質的に有さない、請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
前記滑り剤を含有する層を、電離放射線硬化性官能基及び熱硬化性官能基の少なくともいずれかを有する滑り剤と、電離放射線硬化性化合物及び熱硬化性化合物の少なくともいずれかの化合物とを含有する組成物を用いて形成する、請求項12〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれかに記載の製造方法によって製造された光透過性基材。
【請求項19】
請求項15に記載の光透過性基材を偏光膜の保護フィルムとして有する偏光板。
【請求項20】
請求項18に記載の光透過性基材を有する面光源装置。
【請求項21】
請求項19に記載の偏光板または請求項20に記載の面光源装置を有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−76954(P2011−76954A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229024(P2009−229024)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】