説明

光通信モジュール及び光通信モジュールの製造方法

【課題】透光性の合成樹脂により成型された変換素子の収容体が、高熱によって変性することのない光通信モジュール及び光通信モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】光通信モジュール1は、光電変換素子5の本体部51の下面に電気信号の入出力を行わない第1端子52を設け、この第1端子52を半田にて導電板3に接続固定する。また本体部51の上面に電気信号の入出力を行う第2端子53a及び53bを設け、ワイヤボンディングにより第2端子53a及び53bを導電板3にワイヤ35a及び35bを介して接続する。また光電変換素子5の第1端子52と導電板3とを接続する半田には、収容体2を構成する透光性の合成樹脂を変性させない融解温度又は硬化温度の半田を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信を行うためのレーザダイオード及び/又はフォトダイオード等の変換素子をパッケージ化した光通信モジュール、及びこの光通信モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバなどを利用した光通信が広く普及している。光通信は、電気信号をレーザダイオードなどの変換素子にて光信号に変換し、光ファイバを介して光信号を送受信し、受信した光信号をフォトダイオードなどの変換素子が電気信号に変換することによって行われる。このため、レーザダイオード及び/又はフォトダイオード等の変換素子を、場合によっては変換素子を動作させるための周辺回路素子と共に、1つのパッケージとして構成した光通信モジュールが広く用いられている。この光通信モジュールは、OSA(Optical Sub-Assembly)と呼ばれている。近年では、光通信装置及び光通信モジュールに関する種々の発明がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、光信号を送信又は受信する光電素子と、これを固定するためのステムと、光電素子をカバーするためのキャップと、光電素子に電気信号を印加又は光電素子からの電気信号を伝送する複数本のリードとを備え、ステム及びキャップにて構成されるパッケージ内に位置する所定のリードの一端に平面部を設け、この平面部に、一端が光電素子に接続され他端がリードに接続される電気回路部品を設けた構成とすることにより、高周波特性が優れ、小型化できる光−電気変換モジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−167189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、以下の構成の光通信モジュールを発明し、既に出願している(この光通信モジュールを、従来の光通信モジュールという)。図7は、従来の光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。図において101は、従来の光通信モジュールであり、光電変換素子105及びこれが接続される導電板3が透光性の収容体2に収容された構成をなしている。収容体2は、透光性の合成樹脂(透明樹脂)にて樹脂成型されたものであり、平面視が略正方形をなすベース部21、このベース部21の上面に設けられた周壁22、ベース部21の下面に突設された筒部23、及びベース部21の下面の略中央に設けられたレンズ部24が、一体成形されている。収容体2には、ベース部21及び周壁22により、光電変換素子105を収容する凹所25が構成される。
【0006】
光通信モジュール101の収容体2には、ベース部21の上面(凹所25の底面)に、複数の導電板3がその上面を凹所25内に露出させて埋設されており、一の導電板3上に光電変換素子105が実装されている。導電板3には、ベース部21の下面に設けられたレンズ部24に対応する位置に開口31が形成されており、光電変換素子105は導電板3の開口31上に配される。
【0007】
光電変換素子105は、平面視が略正方形をなす直方体状の本体部151、この本体部151の下面の略中央に設けられた受光部又は発光部(図示は省略する)、本体部151の下面に受光部又は発光部の周囲に設けられた第1端子152、及び、本体部151の上面の略中央に設けられた第2端子153を有している。第1端子152及び第2端子153は、光電変換素子105と導電板3との間で電気信号の授受を行うためのものであり、例えばフォトダイオード又はレーザダイオードのアノード端子及びカソード端子などである。光電変換素子105は、第1端子152が半田付けにより導電板3に接続され、第2端子153がワイヤ135を介して接続(ワイヤボンディング)される。なお収容体2の凹所25には、光電変換素子105及び導電板3の接続終了後に、合成樹脂が流し込まれて樹脂封止を行うことにより、封止部27が設けられる。
【0008】
このような構成の従来の光通信モジュール101において、収容体2を成型する透明樹脂は、一般的に高い温度に対する耐性が低いという問題がある。このため、光電変換素子105を導電板3に半田付けする際、長時間に亘って高温環境下にさらされることによって、収容体2の合成樹脂が劣化し、黄変、クラック、割れ、融解又は表面劣化等が生じる虞がある。例えば透明樹脂の耐熱温度が260℃程度であり、Pb半田を用いた半田付けを行うために210℃〜250℃程度の過熱を行う必要がある場合、温度バラツキによって収容体2に上記のような変性が生じる虞があり、光通信モジュール105の歩留まりを低下させるという問題がある。
【0009】
この問題の対策として、融解温度が低い半田を用いることが考えられるが、このような半田にて光電変換素子105及び導電板3を接続した場合、封止部27の形成工程において半田が融解し、接続不良などが発生する虞がある。また別の対策として、耐熱温度が高い合成樹脂を用いて収容体2を成型することが考えられるが、このような合成樹脂は高コストであり、光通信モジュール105が高コスト化する虞がある。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、透明樹脂により成型された変換素子の収容体が、高熱によって変性することのない光通信モジュール及び光通信モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光通信モジュールは、光信号から電気信号へ又は電気信号から光信号への変換を行う変換素子と、該変換素子が実装された導電板と、前記変換素子との接続部分が露出するように前記導電板が埋設された透光性の樹脂成型体とを備える光通信モジュールであって、前記変換素子は、多面体形をなし、一の面に設けられ、導電性蝋材にて前記導電板に接続され、該導電板との間で電気信号の入出力を行わない第1の端子と、他の面に設けられ、金属線を介して前記導電板に電気的に接続され、該導電板との間で電気信号の入出力を行う第2の端子とを有し、前記導電板に実装された前記変換素子を合成樹脂で覆った封止部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光通信モジュールは、前記変換素子が、前記一の面に設けられた受光部又は発光部を有し、前記第1の端子は、前記一の面の前記受光部又は発光部の周囲に設けられ、前記導電板には、貫通孔が形成され、該貫通孔の周囲に前記第1の端子が接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光通信モジュールは、前記第1の端子及び前記導電板を接続する導電性蝋材が、前記樹脂成型体を構成する透光性の合成樹脂を変性させない温度で融解又は硬化する導電性蝋材であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光通信モジュールの製造方法は、多面体形をなし、一の面に設けられて電気信号の入出力を行わない第1の端子、及び、他の面に設けられて電気信号の入出力を行う第2の端子を有し、光信号から電気信号へ又は電気信号から光信号への変換を行う変換素子と、該変換素子が実装された導電板と、前記変換素子との接続部分が露出するように前記導電板が埋設された透光性の樹脂成型体とを備える光通信モジュールの製造方法であって、導電性蝋材にて前記第1の端子を前記導電板に接続する第1接続工程と、金属線を介して前記第2の端子及び前記導電板を電気的に接続する第2接続工程と、前記導電板に実装された前記変換素子を合成樹脂で覆う封止工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光通信モジュールの製造方法は、前記第1接続工程にて前記第1の端子及び前記導電板を接続する導電性蝋材は、前記樹脂成型体を構成する透光性の合成樹脂を変性させない温度で融解又は硬化する導電性蝋材であることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、多面体形をなす変換素子の一の面に、電気信号の入出力を行わない第1の端子を設け、第1の端子を導電性蝋材にて導電板へ接続する。また変換素子の他の面には、電気信号の入出力を行う第2の端子を設け、第2の端子と導電板とを金属線にて接続する(ワイヤボンディングする)。第1の端子及び第2の端子がそれぞれの方法で導電板に接続された変換素子は、樹脂封止される。
このような構成の変換素子は、まず、導電性蝋材にて第1の端子が導電板に接続されることによって、導電板に仮固定される。仮固定された変換素子は、ワイヤボンディングによって第2の端子が金属板に電気的に接続され、導電板との間で電気信号の入出力が可能となる。その後、変換素子は、合成樹脂で覆うことによって樹脂封止されて固定される。
導電性蝋材にて導電板に接続する第1の端子を、電気信号の入出力を行わない端子とし、第2の端子のワイヤボンディングの際に変換素子を固定しておくための仮固定用端子とすることで、変換素子の樹脂封止の際に熱によって導電性蝋材が融解した場合であっても、第2の端子と導電板とが金属線を介して接続されているため、変換素子及び導電板の間の電気信号の入出力が妨げられることはない。このため、第1の端子及び導電性蝋材を接続する導電性蝋材は、樹脂封止の温度に関係なく、融解温度又は硬化温度が低いものを用いることが可能となる。よって、第1の端子を導電板に接続する際に、透光性の合成樹脂で成形された樹脂成型体が導電性蝋材を溶解させるための熱によって変性することを防止できる。
【0017】
また、本発明においては、変換素子の一の面に受光部又は発光部を設け、この周囲に第1の端子を設ける。導電板には貫通孔を形成し、貫通孔の周囲に変換素子の第1の端子を接続する。これにより、変換素子の受光部又は発光部は、導電板の貫通孔を通して、更には透光性の合成樹脂で成形された樹脂成型体を通して、光信号の送受信を行うことができる。
【0018】
また、本発明においては、変換素子の第1の端子と導電板との接続を行う導電性蝋材には、透光性の合成樹脂を変性させない融解温度又は硬化温度の導電性蝋材を用いる。例えば透光性の合成樹脂の耐熱温度が260℃程度である場合、導電性蝋材として融解温度が150℃程度のBi半田を用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による場合は、電気信号の入出力を行わない第1の端子を導電性蝋材にて導電板へ接続し、電気信号の入出力を行う第2の端子をワイヤボンディングにより導電板へ接続することで変換素子を導電板に実装し、その後に変換素子を樹脂封止する構成とすることにより、樹脂封止の温度に関係なく、第1の端子を接続するために融解温度又は硬化温度が低い導電性蝋材を使用することができる。よって、透光性の合成樹脂を変性させない融解温度又は硬化温度の導電性蝋材を選択して第1の端子及び導電板の接続を行うことができ、透光性の合成樹脂により成型された変換素子の収容体が、高熱によって変性することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。
【図2】光電変換素子の構成を示す平面図である。
【図3】光通信モジュールの導電板の構成を示す模式的平面図である。
【図4】光通信モジュールの製造工程を説明するための模式図である。
【図5】光通信モジュールの製造工程を説明するための模式図である。
【図6】光通信モジュールの製造工程を説明するための模式図である。
【図7】従来の光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。図において1は、フォトダイオード又はレーザダイオード等の光電変換素子5をパッケージ化した光通信モジュールである。光通信モジュール1は、光ファイバなどの光通信線(図示は省略する)が連結され、この光通信線を介して他の光通信装置との間で光信号の送受信を行い、光信号と電気信号との間の変換を行うための部品である。
【0022】
光通信モジュール1は、光電変換素子5及びこれが実装される導電板3が透光性の収容体2に収容された構成をなしている。収容体2は、平面視が略正方形をなすベース部21を有しており、ベース部21の一側の面(図1において上面)の周囲には、周縁部分の一周に亘って周壁22が設けてあり、ベース部21の上面と周壁22とにより、光電変換素子5などを収容するための凹所25が構成されている。またベース部21の反対側の面(下面)には、略中央にレンズ部24が設けられると共に、このレンズ部24を囲んで、光通信線を連結するための円筒状の筒部23が下方へ突設されている。収容体2のベース部21、周壁22、筒部23及びレンズ部24は、透光性の合成樹脂にて一体成型されたものである。
【0023】
図2は、光電変換素子5の構成を示す平面図である。なお、図2Aには光電変換素子5の上面の構成を示し、図2Bには下面の構成を示してある。光電変換素子5は、平面視が略正方形をなす扁平な直方体状の本体部51を有している。本体部51の下面には、略中央に発光部又は受光部54が設けられると共に、4つの第1端子52が下面の四隅に発光部又は受光部54を囲んで設けられている。4つの第1端子52は、光電変換素子5の光電変換に係る電気信号の授受を行うものではなく、光電変換素子5を導電板3に半田付けするためのものである。
【0024】
光電変換素子5の本体部51の上面には、2つの第2端子53a及び53bが対角線上に並べて設けられている。第2端子53a及び53bは、光電変換に係る電気信号の授受を行うための端子であり、例えばフォトダイオード又はレーザダイオードのアノード端子及びカソード端子などである。また第2端子53a及び53bは、ワイヤボンディングにより導電板3にそれぞれ接続される。
【0025】
また、光通信モジュール1の収容体2には、ベース部21の上面(凹所25の底面)に、複数の金属製の導電板3がその上面を凹所25内に露出させて埋設されている。導電板3は、凹所25内における露出部分に光電変換素子5が実装され、光電変換素子5と外部との間で電気信号の送受信を行うためのものである。換言すれば、導電板3は、光通信モジュール1を用いた光通信の回路において、回路の構成要素をなす電気部品を接続する配線に相当するものである。
【0026】
図3は、光通信モジュール1の導電板3の構成を示す模式的平面図であり、導電板3の上面視の形状にベース部21の外形を一点鎖線で重ねて示したものである。図示の例では、光通信モジュールは3つの導電板3a〜3cを有している。第1の導電板3aは、ベース部21の略中央に配される略正方形の部分と、この部分からベース部21の一側面にて外部へ延出するように設けられた略長方形の部分とを有している。第1の導電板3aの略正方形の部分には、その中央に円形の開口31が形成されている。光電変換素子5は、下面の第1端子52が第1の導電板3aの開口31の周縁部分に半田付けされることによって固定されると共に、上面の一方の第2端子53bがワイヤ35bを介して接続される。
【0027】
第2の導電板3bは、略長方形をなしており、その一端部分がベース部21の外部へ延出するように、第1の導電板3aと並べて配されている。第2の導電板3bは、光電変換素子5の上面に設けられたもう一方の第2端子53aがワイヤ35aを介して接続される。第3の導電板3cは、第1の導電板3aの略正方形の部分を囲むように配され、その一端部分がベース部21の外部へ延出している。第3の導電板3cは、例えば接地電位に接続されて、光通信モジュール1をシールドするために用いられる。導電板3a〜3cのベース部21から延出した部分は、光通信モジュール1を例えば通信装置の回路基板に接続するための端子として用いられる。
【0028】
なお第1の導電板3aは、開口31の中心がレンズ部24の中心と略一致するように、ベース部21に埋設されている。また光電変換素子5は、下面の発光部又は受光部54の中心が、第1の導電板3aの開口31の中心及びベース部21の下面のレンズ部24の中心と略一致するように位置決めされ、第1端子52による半田付けにて第1の導電板3aに接続固定されている。またベース部21の下面に突設された筒部23は、その中心がレンズ24の中心と略一致するように設けられている。
【0029】
これにより光電変換素子5は、下面に設けられた発光部又は受光部54が、第1の導電板3aの開口31、透光性のベース部21及びレンズ部24を通して、筒部23に挿入して固定された光通信線との間で光信号の授受を行うことができる。また光電変換素子5は、上面に設けられた第2端子53a及び53bにて、ワイヤ35a、35b及び導電板3a、3bを介して、光通信装置などの回路基板に構成された通信回路との間で電気信号の授受を行うことができる。
【0030】
また、光通信モジュール1は、収容体2内に収容されて導電板3に半田付け及びワイヤボンディングにより接続された光電変換素子5に合成樹脂を盛って覆うことにより樹脂封止を行った封止部27を有している。封止部27を構成する合成樹脂は、透光性であってもよく、透光性でなくてもよい。ただし非透光性の合成樹脂を用いる場合、光電変換素子5の下側に樹脂が流れ込むことを防止する構成(例えば、第1端子52を環状とするなど)を採用することが望ましい。
【0031】
次に光通信モジュール1の製造工程について説明する。図4〜図6は、光通信モジュール1の製造工程を説明するための模式図である。光通信モジュール1の製造は、まず金属板などに切削などを行うことにより導電板3を製造し(図示は省略する)、この導電板3を金型内に収容して透光性の合成樹脂を流し込んで硬化させることにより収容体2の成型を行う(図示は省略する)。この工程にて用いられる透光性の合成樹脂は、本実施の形態においては、硬化後に260℃程度の耐熱性能を有する樹脂とする。
【0032】
次いで、収容体2に埋設された導電板3の露出部分(開口部31の周縁部分)に半田71を塗布し、光電変換素子5の下面に設けられた第1端子52と導電板3との接続固定を行う(図4参照)。このときに光電変換素子5は、下面の発光部又は受光部54の中心が、収容体2のレンズ部24の中心に略一致するように位置決めされて固定される。なお、この工程にて用いられる半田71は、収容体2を構成する透光性の合成樹脂を変性させない温度で融解する半田であり、例えば融解温度が150℃程度のBi半田を用いることができる。
【0033】
次いで、光通信モジュール1の上面に設けられた第2端子53a及び53bと、導電板3の所定箇所とを、ワイヤ35a及び35bにてそれぞれ接続するワイヤボンディングを行う(図5参照)。
【0034】
次いで、収容体2の凹所25内に液状の合成樹脂75を流し込み(図6参照)、合成樹脂75を硬化させることによって封止部27とする(図1参照)。なお、この工程にて用いられる合成樹脂75は、収容体2を構成する透光性の合成樹脂を変性させない温度で融解する合成樹脂であるが、光電変換素子5及び導電板3を接続する半田71を融解させる温度で融解する合成樹脂であってよい。
【0035】
以上の構成の光通信モジュール1は、光電変換素子5の本体部51の下面に電気信号の入出力を行わない第1端子52を設け、この第1端子52を半田71にて導電板3に接続固定すると共に、本体部51の上面に電気信号の入出力を行う第2端子53a及び53bを設け、ワイヤボンディングにより第2端子53a及び53bを導電板3にワイヤ35a及び35bを介して接続する。この構成によって、封止部27の樹脂封止を行う際の熱によって半田71が溶解した場合であっても、光電変換素子5の第2端子53a及び53bと導電板3とのワイヤ35a及び35bによる接続は維持されるため、光電変換素子5及び導電板3の間の電気信号の授受が妨げられることはない。よって、第1端子52及び導電板3を接続する半田71は、融解温度又は硬化温度が低いものを用いることが可能となり、半田付けの際に透光性の合成樹脂で成型された収容体2が熱によって変性することを防止できる。
【0036】
また、光電変換素子5の本体部51の下面の略中央に発光部又は受光部54を設け、その周囲に第1端子52を設けると共に、導電板3に開口部31を形成し、導電板3の開口部31の周縁部分に光電変換素子5の第1端子52を接続固定する構成とする。これにより、光電変換素子5の発光部又は受光部54は、導電板3の開口部31及び透光性の収容体2を通して光信号の送受信を行うことができる。
【0037】
また、光電変換素子5の第1端子52と導電板3とを接続する半田71には、収容体2を構成する透光性の合成樹脂を変性させない融解温度の半田、例えばBi半田などの低温半田を用いることにより、半田付けの際に透光性の合成樹脂で成型された収容体2が熱によって劣化し、黄変、クラック、割れ、融解又は表面劣化等が発生することを防止できる。
【0038】
なお本実施の形態において図示した収容体2、導電板3及び光電変換素子5の形状及び構成等は一例であって、これに限るものではない。光通信モジュール1は、収容体2の本体部21、周壁22、筒部23及びレンズ部24を一体成型する構成としたが、これに限るものではなく、光通信モジュール1が筒部23及びレンズ部24等を有しない構成であってもよく、これらを別体として製造して本体部21に固定する構成であってもよい。また光通信モジュール1は、導電板3として3つの導電板3a〜3cを有する構成としたが、これに限るものではなく、2つ以下又は4つ以上の導電板を有する構成であってもよい。
【0039】
また光電変換素子5の第1端子52の個数及び配置等は図2Bに示したものに限らない。光電変換素子5が2つの第2端子53a及び53bを有する構成としたが、これに限るものではなく、3つ以上の第2端子を有する構成であってもよい。また第2端子53a及び53bの配置は、図2Aに示したものに限らない。
【0040】
また光通信モジュール1の収容体2を構成する透光性の合成樹脂として、硬化後に260℃程度の耐熱性能を有する透光性の合成樹脂を用いる構成としたが、一例であってこれに限るものではない。同様に、光電変換素子5の第1端子52と導電板3とを接続する導電性蝋材として、融解温度が150℃程度のBi半田を用いる構成としたが、一例であってこれに限るものではない。透光性の合成樹脂及び導電性蝋材には種々のものを組み合わせて用いることができる。
【0041】
例えば導電性蝋材として、銀フィラーを含有したエポキシ系の樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性の導電性接着剤を用いることができる。また例えば熱硬化性の導電性蝋材を用いる場合、短時間で硬化させるためには高い温度(例えば180℃以上)が必要な導電性蝋材であっても、長時間に亘って低い温度(例えば120℃程度)を加えることで硬化させることが可能な導電性蝋材であれば、温度及び時間を適宜に調整することによって光電変換素子5及び導電板3の接続に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 光通信モジュール
2 収容体(樹脂成型体)
3、3a、3b、3c 導電板
5 光電変換素子(変換素子)
21 ベース部
22 周壁
23 筒部
24 レンズ部
25 凹所
27 封止部
31 開口部(貫通孔)
51 本体部
52 第1端子(第1の端子)
53a、53b 第2端子(第2の端子)
54 発光部又は受光部
71 半田(導電性蝋材)
75 合成樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号から電気信号へ又は電気信号から光信号への変換を行う変換素子と、該変換素子が実装された導電板と、前記変換素子との接続部分が露出するように前記導電板が埋設された透光性の樹脂成型体とを備える光通信モジュールであって、
前記変換素子は、
多面体形をなし、
一の面に設けられ、導電性蝋材にて前記導電板に接続され、該導電板との間で電気信号の入出力を行わない第1の端子と、
他の面に設けられ、金属線を介して前記導電板に電気的に接続され、該導電板との間で電気信号の入出力を行う第2の端子と
を有し、
前記導電板に実装された前記変換素子を合成樹脂で覆った封止部を備えること
を特徴とする光通信モジュール。
【請求項2】
前記変換素子は、前記一の面に設けられた受光部又は発光部を有し、
前記第1の端子は、前記一の面の前記受光部又は発光部の周囲に設けられ、
前記導電板には、貫通孔が形成され、該貫通孔の周囲に前記第1の端子が接続されていること
を特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。
【請求項3】
前記第1の端子及び前記導電板を接続する導電性蝋材は、前記樹脂成型体を構成する透光性の合成樹脂を変性させない温度で融解又は硬化する導電性蝋材であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光通信モジュール。
【請求項4】
多面体形をなし、一の面に設けられて電気信号の入出力を行わない第1の端子、及び、他の面に設けられて電気信号の入出力を行う第2の端子を有し、光信号から電気信号へ又は電気信号から光信号への変換を行う変換素子と、該変換素子が実装された導電板と、前記変換素子との接続部分が露出するように前記導電板が埋設された透光性の樹脂成型体とを備える光通信モジュールの製造方法であって、
導電性蝋材にて前記第1の端子を前記導電板に接続する第1接続工程と、
金属線を介して前記第2の端子及び前記導電板を電気的に接続する第2接続工程と、
前記導電板に実装された前記変換素子を合成樹脂で覆う封止工程と
を備えること
を特徴とする光通信モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第1接続工程にて前記第1の端子及び前記導電板を接続する導電性蝋材は、前記樹脂成型体を構成する透光性の合成樹脂を変性させない温度で融解又は硬化する導電性蝋材であること
を特徴とする請求項4に記載の光通信モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98492(P2013−98492A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242609(P2011−242609)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】