説明

光通信モジュール

【課題】複数の光電素子を備える場合であっても、光電素子間の距離及びレンズ間の距離を狭めることで小型化することができる光通信モジュールを提供する。
【解決手段】OSA1のベース10、受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等を透光性の合成樹脂で一体成形する構成とすることにより、受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16の間の距離を短くすることができ、OSA1を小型に製造することができる。また、送信用レンズ面16をベース10に突設された柱部17の突端に設け、受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16の間の柱部17の周面を平面17aとすることにより、平面17aを境にして光を反射させることができるため、送信側から受信側へ、及び、受信側から送信側へ光が漏れることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信を行うためのレーザダイオード及び/又はフォトダイオード等の複数の光電素子をパッケージ化した光通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバなどを利用した光通信が広く普及している。光通信は、電気信号をレーザダイオードなどの光電素子にて光信号に変換し、光ファイバを介して光信号を送受信し、受信した光信号をフォトダイオードなどの光電素子が電気信号に変換することによって行われる。このため、レーザダイオード及び/又はフォトダイオード等の光電素子を、場合によっては光電素子を動作させるための周辺回路素子と共に、1つのパッケージとして構成した光通信モジュールが広く用いられている。この光通信モジュールは、OSA(Optical Sub-Assembly)と呼ばれている。近年では、光通信及び光通信モジュールに関する種々の発明がなされている。
【0003】
例えば特許文献1においては、受光用の第1フォトダイオード及び遮光された第2フォトダイオードの出力を差動アンプにそれぞれ利得調整アンプを介して入力すると共に、光パワーを検出する光パワー検出部の出力端子及び利得調整アンプの利得調整端子の間にローパスフィルタを介在させる構成とすることによって、高速で広いダイナミックレンジを必要とする通信に適用可能な光検出器が提案されている。
【0004】
また特許文献2においては、信号受信用のフォトダイオード、光レベル検出用のフォトダイオード、受信した信号を増幅する信号増幅部及びこの信号増幅部へ供給されるバイアス電流を制御するバイアス電流制御部を1つの基板上に形成し、光レベル検出用のフォトダイオードから出力される信号電流が所定の基準値以上となった場合に、バイアス電流制御部が信号増幅部を動作させる構成とすることにより、動作電流・電圧の大きさを必要に応じた量に制御でき、消費電力を低減することができる光受信装置が提案されている。またこの光受信装置は、信号受信用のフォトダイオードが信号高の拡がりよりも小さい略円形の光感応領域を有し、光レベル検出用のフォトダイオードが信号受信用のフォトダイオードの光感応領域を取り囲む光感応領域を有する構成とすることによって、信号光を効率よく検出でき、受信能力を向上することができる。
【0005】
上記の特許文献1及び2に係る発明は、光電素子の周辺回路に関するものであり、周辺回路の改良によって光通信の通信能力向上を図るものである。特許文献1及び2に係る発明では、光電素子及び周辺回路が搭載された基板をリードフレームに固定して透明な樹脂によって樹脂封止してモールド部を形成し、モールド部の表面に半球状のレンズ部を設けた構成の光通信モジュールを用いている。この光通信モジュールは、レンズ部が光ファイバの出射端に対向するように配される。
【0006】
また、特許文献3においては、光信号を送信又は受信する光電素子と、これを固定するためのステムと、光電素子をカバーするためのキャップと、光電素子に電気信号を印加又は光電素子からの電気信号を伝送する複数本のリードとを備え、ステム及びキャップにて構成されるパッケージ内に位置する所定のリードの一端に平面部を設け、この平面部に、一端が光電素子に接続され他端がリードに接続される電気回路部品を設けた構成とすることにより、高周波特性が優れ、小型化できる光−電気変換モジュールが提案されている。
【0007】
特許文献4においては、光源及び/又は光検出器を内蔵し、光信号を通す開口が形成された第1面及びその反対側の第2面を有する第1パッケージと、回路基板などの挿入物を収容する開口が形成され、第1パッケージの第2面に垂直に設けられた第2パッケージと、第1パッケージ及び第2パッケージを機械的に接続し、第1パッケージの光源及び/又は光検出器を第2パッケージの開口内に露出する接点に電気的に接続するリードフレームとを備え、回路基板などの挿入物を第2パッケージに機械的に接続し、且つ、開口内の接点に電気的に接続することにより、回路基板などに搭載された回路素子が光源及び/又は光検出器を動作させることができる光デバイスモジュールが提案されている。また、この光デバイスモジュールでは、第1パッケージにはレンズを保持したレンズブロックが固定され、レンズブロックに形成された開口に光ファイバが嵌合される。
【0008】
特許文献5においては、光サブアセンブリを光通信モジュールのPCB(Printed Circuit Board)に接続するためのリードフレームコネクタの製造方法が提案されている。この方法においては、導電性リボンに導電部の形状を刻印し、この導電部を必要に応じて曲げると共に、オープンリール方式によって射出成形プロセスを通して導電部を絶縁するケースを成形し、その後、導電性リボンを切断して単一のリードフレームコネクタとする。1つのケースに入れられた複数の導電部は、その接続部分をケースに形成された穴を通して打ち抜くことにより、電気的に分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−40976号公報
【特許文献2】国際公開第01/015348号パンフレット
【特許文献3】特開2005−167189号公報
【特許文献4】米国特許第7455463号明細書
【特許文献5】米国特許第7370414号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光通信装置が双方向通信を行うためには、光電素子としてフォトダイオードなどの受光素子と、レーザダイオードなどの発光素子とを備える必要がある。このため、受光素子及び発光素子の両光電素子を備え、光信号の送受信を行うことができる光通信モジュールが求められる。このような光通信モジュールを用いることによって、光通信装置を小型化することができる。
【0011】
特許文献1及び2に係る発明は、光電素子としてフォトダイオードを用いる受信用のものであり、光信号を送信する光通信モジュールについては言及されておらず、複数の光電素子を搭載する構成についても言及されていない。また特許文献3に係る発明は、送信又は受信のいずれかを行う1つの光電素子を備える構成であり、複数の光電素子を搭載する構成については言及されていない。
【0012】
特許文献4に記載の光デバイスモジュールは、第1パッケージに光源及び光検出器の両光電素子を内蔵する構成であり、光信号の送受信を行うことができる。しかしながら特許文献4の光デバイスモジュールは、光源及び光検出器が第1パッケージに形成された2つの開口内にそれぞれ配置され、第1パッケージに固定されるレンズブロックに設けられた2つのレンズを通して光源及び光検出器がそれぞれ光信号の送受を行う構成であるため、2つの光電素子間の距離を狭めることは容易でなく、レンズブロックの2つのレンズ間の距離を狭めることは容易でない。よって、特許文献4に記載の光デバイスモジュールは小型化が容易ではないという欠点がある。
【0013】
特許文献5に記載のリードフレームコネクタは、1つの光電素子と回路基板とを接続するために用いられるものである。よって、受光素子及び発光素子の両光電素子を光通信装置が備えるためには、リードフレームコネクタを2つ用いて各光電素子を回路基板に接続する必要があり、小型化は容易ではない。
【0014】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数の光電素子を備える場合であっても、光電素子間の距離及びレンズ間の距離を狭めることで小型化することができる光通信モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光通信モジュールは、電気信号を光信号に変換して送信する発光素子と、光信号を受信して電気信号に変換する受光素子と、前記発光素子及び前記受光素子を並べて保持する保持部と、透光性の基部に一体的に並設された受信用レンズ面及び送信用レンズ面と、前記送信用レンズ面を光軸方向へ前記受信用レンズ面より前記基部から突出させるように、前記基部に一体的に突設され、突端に前記送信用レンズ面が設けられた柱部とを備え、前記保持部に保持された前記受光素子は前記受信用レンズ面及び前記基部を通して光信号を受信し、前記保持部に保持された前記発光素子は前記基部、前記柱部及び前記送信用レンズ面を通して光信号を送信するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光通信モジュールは、前記柱部の周面が、前記受信用レンズ面の側が平面に成形してあることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光通信モジュールは、前記基部及び前記保持部が、透光性の合成樹脂により一体成形してあることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光通信モジュールは、前記基部内に設けられ、前記発光素子からの光信号の出射経路と前記受光素子への光信号の入射経路を遮断する遮光部を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る光通信モジュールは、前記発光素子及び受光素子がそれぞれ接続される複数の導電体を備え、前記遮光部は、前記導電体の一部により構成してあることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、電気信号を光信号に変換して送信する発光素子と、光信号を受信して電気信号に変換する受光素子とを光通信モジュールが備え、発光素子及び受光素子は保持部に並べて(即ち、発光素子の光軸と受光素子の光軸とが略平行となるように)保持される。
また光通信モジュールは、発光素子からの光を光ファイバなどへ集光する送信用レンズ面、及び光ファイバなどから受光素子へ光を集光する受信用レンズ面を備え、この2つのレンズ面を透光性の基部に一体的に並設する。このとき送信用レンズ面は、受信用レンズ面よりも基部から突出させるために、基部に突設した柱部の突端に設ける。基部、柱部、送信用レンズ面及び受信用レンズ面は透光性の合成樹脂又はガラス等の素材により一体的に成形する。複数のレンズを別体として成形した場合には各レンズを保持するための鏡筒などがそれぞれ必要であるが、複数のレンズ面を一体的に成形することで、レンズ面の間の距離を狭めることができる。
この構成によって、基部に突設された柱部に設けられた送信用レンズ面は、基部に設けられた受信用レンズ面より、光電素子の光電領域(発光素子の発光領域又は受光素子の受光領域)までの距離が柱部の突出量だけ長くなる。発光素子から送信用光ファイバの入射端までの距離と、受光素子から受信用光ファイバの出射端までの距離とが略等しくなるように、送信用光ファイバ及び受信用光ファイバを配設した場合、送信用レンズ面から送信用光ファイバまでの距離は、受信レンズ面から受信用光ファイバまでの距離より短い。
発光素子から発せられた光は基部及び柱部を通して送信用レンズ面へ到達し、このときに光の一部が送信用レンズ面より外側へ広がって柱部の周面に到達した場合には、この光は柱部の周面にて反射されて送信用レンズ面へ到達する。送信用レンズ面に到達した光は送信用光ファイバへ集光される。このため、発光素子からの光が受信用レンズ面へ入射し、受光素子にて受光されることはない。
また受信用光ファイバから出射された光は送信用レンズ面にて受光素子へ集光される。このとき受信用光ファイバからの光の一部が受信用レンズ面より外側へ広がって柱部の周面に到達した場合には、この光は柱部の周面にて反射されて受信用レンズ面に到達する。このため、受信用光ファイバから出射した光が、柱部から送信用レンズ面へ入射して送信用光ファイバへ集光されることはない。
よって、本発明の光通信モジュールは、複数の光電素子に係る光信号が誤送受されることなく、並設された2つのレンズ面の間の距離及び並設された2つの光電素子の間の距離を狭めることができ、小型化することができる。
【0021】
また、本発明においては、送信用レンズ面が設けられる柱部の側面は、受信用レンズ面の側を平面に成形する。これにより、受信用光ファイバから受信用レンズ面外へ出射された光を、柱部の側面に設けられた平面にて受信用レンズ面へ向けてより確実に反射することができると共に、発光素子から出射された光を柱部の平面にて送信用レンズ面へ向けてより確実に反射することができる。
【0022】
また、本発明においては、基部、柱部、送信用レンズ面及び受信用レンズ面と、発光素子及び受光素子を保持する保持部とを、透光性の合成樹脂により一体成形する。発光素子及び受光素子は、透光性の合成樹脂により樹脂封止してもよく、保持部に蓋体などを接合して覆うことにより封止してもよい。これにより、光通信モジュールを構成する部品数を削減でき、製造工程を容易化できる。
【0023】
また、本発明においては、発光素子から送信用レンズ面への光の出射経路と、受信用レンズ面から受光素子への光の入射経路とを遮断する遮光部を基部内に設ける。これにより、透光性の基部を通して発光素子が発した光を受光素子が受信するなどの光信号の誤送受が発生することを確実に防止できる。
【0024】
また、本発明においては、発光素子及び受光素子には、電気信号を授受するための導電体がそれぞれ接続される。これら複数の導電体は、保持部にて保持することができる。例えばこの導電体を折り曲げるなどして発光素子からの出射経路及び受光素子への入射経路の間に配することによって、導電体の一部を遮光部として用いる。これにより、別部材などを用いることなく、容易に遮光部を実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による場合は、基部に突設した柱部の突出端に設けた送信用レンズ面、及び基部に設けた受信用レンズ面を、透光性の素材により基部及び柱部と共に一体的に成形することにより、隣り合う送信用レンズ面及び受光用レンズ面の間の距離を狭めて配することができ、発光素子及び受光素子の間の距離を狭めて配することができるため、光通信モジュールを小型化することができ、これを搭載する光通信装置を小型化することができる。
また、発光素子の発光領域及び送信用レンズ面の距離が、受光素子の受光領域及び受信用レンズ面の距離より柱部の突出量だけ長い構成とすることにより、発光素子から出射された光信号が受光素子にて受光され、又は、受光素子にて受光すべき光信号が出射されるなど光信号の誤送受が発生することを防止できる。よって、隣り合うレンズ面の間の距離及び隣り合う光電素子の間の距離を狭めて小型化した光通信モジュールであっても、光信号の誤送受を防止でき、精度のよい光通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的平面図である。
【図3】本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的平面図である。
【図4】本発明に係る光通信モジュールに備えられる受光素子及び発光素子の構成を示す模式図である。
【図5】OSAと2つの光ファイバとが対向配置された状態を示す模式図である
【図6】本発明の変形例に係る光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。図2は、本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的平面図であり、光通信モジュールの蓋体40(後述する)を装着していない状態を図示してある。また図3は、本発明に係る光通信モジュールの構成を示す模式的平面図であり、図2の反対側の光通信モジュールの構成を図示してある。
【0028】
図において1は、フォトダイオード(受光素子)20及びレーザダイオード(発光素子)50が封入されて1つの部品として構成されたOSAであり、本発明に係る光通信モジュールに相当する。OSA1は、平面視が略長方形をなす板状のベース(保持部且つ基部)10を備えており、ベース10は光を透過する合成樹脂により成形されている。ベース10は、一側の面(図1において上側の面、以下では単に上面という)にフォトダイオード20及びレーザダイオード50が接続され、反対側の面(図1において下側の面、以下では単に下面という)に受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16が設けられている。ベース10の上面には、周縁部分の一周に亘って周壁部12が設けてあり、ベース10の上面と周壁部12とにより、フォトダイオード20及びレーザダイオード50を収容する凹所12aが構成されている。
【0029】
図4は、本発明に係る光通信モジュールに備えられる受光素子及び発光素子の構成を示す模式図であり、フォトダイオード20及びレーザダイオード50の下面側の3つの構成例を(a)〜(c)に示したものである。なお、フォトダイオード20及びレーザダイオード50は略同じ構成であるため、レーザダイオード50については図4に括弧書きで符号を付してある。
【0030】
フォトダイオード20(レーザダイオード50)は、平面視が略正方形をなす板状であり、下面の略中央には、光を検知して電気信号に変換する受光部(受光領域)22(電気信号に応じて光を発する発光部(発光領域)52)が設けられ、受光部22(発光部52)の周囲に一又は複数の接続端子部21(51)が設けられている。接続端子部21(51)は、フォトダイオード20(レーザダイオード50)の電気信号を入出力するための端子であり、且つ、半田又は導電性接着剤等を介して導電板30への接続を行うためのものである。
【0031】
例えば、接続端子部21(51)は、受光部22(発光部52)を囲む環状とすることができる(図2(a)参照)。この例では、フォトダイオード20(レーザダイオード50)の下面には接続端子部21(51)を1つしか設けることができないが、フォトダイオード20(レーザダイオード50)は入出力の端子を2つ必要とするため、上面又は側面等に接続端子部を設ける必要がある。本実施の形態においては、フォトダイオード20(レーザダイオード50)の上面に別の接続端子部(図示は省略する)を設ける構成とし、上面の接続端子部と導電板30とを金属製のワイヤ35(36)にて電気的に接続する構成とする。
【0032】
また例えば、フォトダイオード20(レーザダイオード50)の下面に2つの接続端子部21a及び21b(51a及び52b)を設ける構成としてもよい(図2(b)参照)。この場合、各接続端子部21a及び21b(51a及び51b)は、略長方形とし、受光部22(発光部52)を間にして配設することができる。また例えば、電気信号を入出力するための2つの接続端子部21a及び21b(51a及び51b)の他に、電気信号の入出力を行わず半田又は導電性接着剤等による接続を行うためのみのダミーの接続端子部21c及び21d(51c及び51d)を設ける構成としてもよい(図2(c)参照)。この場合、4つの接続端子部21a〜21d(51a〜51d)は、フォトダイオード20(レーザダイオード50)の下面の四隅にそれぞれ配設することができる。
【0033】
なお、以降の説明及び図面においては、図2(a)に示したフォトダイオード20及びレーザダイオード50をOSA1が備えるものとする。
【0034】
また、OSA1のベース10には金属製の導電板30(30a〜30d)が、その一面が凹所12a内に露出するように埋め込まれて保持されている。導電板30は、凹所12a内における露出部分に、フォトダイオード20の接続端子部21及びレーザダイオード50の接続端子部51が半田又は導電性接着剤等を用いて接続され、フォトダイオード20及びレーザダイオード50の上面などに設けられた端子がワイヤ35、36を介して接続される。凹所12a内において、フォトダイオード20及びレーザダイオード50は、ベース10の長手方向に並べて配される。導電板30は、フォトダイオード20及びレーザダイオード50と外部との間で電気信号の授受を行うためのものであり、換言すれば、導電板30は、フォトダイオード20及びレーザダイオード50を用いた通信回路において、回路の構成要素を接続する配線に相当するものである。
【0035】
本実施の形態のOSA1は4つの導電板30a〜30dを備えており、第1の導電板30a及び第2の導電板30bはフォトダイオード20に接続され、第3の導電板30c及び第4の導電板30dはレーザダイオード50に接続される。第1の導電板30a及び第3の導電板30cは、ベース10の長手方向に並べて配され、略円形の開口31が形成された略正方形の部分と、この部分からベース10の長辺側の外部へ延出する部分とをそれぞれ有している。開口31の直径は、フォトダイオード20及びレーザダイオード50の下面の一辺の長さより小さく、且つ、フォトダイオード20の受光部22及びレーザダイオード50の発光部52の直径より大きい。フォトダイオード20は、第1の導電板30aの開口31の周縁部分に半田又は導電性接着剤を介してその接続端子部21が接続され、レーザダイオード50は、第3の導電板30cの開口31の周縁部分に半田又は導電性接着剤を介してその接続端子部51が接続される。
【0036】
また第1の導電板30aは、略正方形の部分の一辺から折り曲げて設けられた遮光板部32を有している。遮光板部32は、ベース10の上面に露出せず、第1の導電板30aから下方へ折り曲げられてベース10内に埋め込まれる態様で、ベース10の略中央に配されている。これにより遮光板部32は、透光性のベース10内において、フォトダイオード20が設けられた側と、その反対のレーザダイオード50が設けられた側との間で光が透過することを妨げ、光信号の誤送受を防止している。
【0037】
第2の導電板30b及び第4の導電板30dは、第1の導電板30a及び第3の導電板30cを囲むようにベース10の周縁に沿ってそれぞれ配設され、その一端部分がベース10の長辺から外側へ延出している。第2の導電板30bは、フォトダイオード20の上面に設けられた端子とワイヤ35を介して接続され、第4の導電板30dは、レーザダイオード50の上面に設けられた端子とワイヤ36を介して接続される。
【0038】
4つの導電板30a〜30dは、ベース10の一の長辺からそれぞれ端部が延出しており、この延出部分は例えば通信装置の回路基板にOSA1を接続するための端子として用いられる。OSA1を備える通信装置は、第1の導電板30a及び第2の導電板30bの間の電圧又は電流を調べることによって、光信号の受信を行うことができ、第3の導電板30c及び第4の導電板30dの間に所定の電圧を印加することによって光信号の送信を行うことができる。
【0039】
また、OSA1のベース10の下面には、送信用レンズ面15及び受信用レンズ面16がベース10の長手方向に並べて設けられている。送信用レンズ面15及び受信用レンズ面16は、ベース10及び周壁部12等と共に透光性の合成樹脂にて一体成形されたものである。受信用レンズ面15は、ベース10の上面側に保持された第1の導電板30aの開口31の反対側に、即ち受信用レンズ面15の中心と第1の導電板30aの開口31の中心とが略一致するように、ベース10の下面に設けられている。第1の導電板30aに接続されたフォトダイオード20は、受信用レンズ面15にて集光された光を、透光性のベース10及び第1の導電板30aの開口31を通して、受光部22にて受光することができる。
【0040】
同様に送信用レンズ面16は、ベース10の上面側に保持された第3の導電板30cの開口31の反対側に、即ち送信用レンズ面16の中心と第3の導電板30cの開口31の中心とが略一致するように、ベース10の下面に設けられている。ただし、ベース10の下面には、略円錐台形をなし、その周面の一部を平面17aに形成された柱部17が下方へ突出して設けられており、送信用レンズ面16は、この柱部17の突出端面(下端面)に設けられている。柱部17は、ベース10及び送信用レンズ面16と共に一体成形されたものである。第3の導電板30cに接続されたレーザダイオード50の発光部52からの光は、第3の導電板30cの開口31、透光性のベース10及び柱部17を通して送信用レンズ面16から出射され、送信用の光ファイバなどに集光される。柱部17の平面17aは、略台形をなしており、柱部17の受信用レンズ面15側の周面に形成されている。平面17aの上底及び下底の長さは、受信用レンズ15の直径より長い。
【0041】
また、OSA1のベース10には、凹所12a内の上面の略中央に丸棒状の位置決め部13が突設されている。位置決め部13は、フォトダイオード20及びレーザダイオード50を凹所12a内にて導電板30(30a及び30c)に接続する際の位置決めの基準をなすものであり、受信用レンズ面15の中心及び送信用レンズ面16の中心からの位置を高精度に定めて設けられている。位置決め部13は、ベース10と一体的に成形されている。
【0042】
フォトダイオード20及びレーザダイオード50を導電板30に接続する製造装置は、例えばカメラなどでベース10の上面の撮影を行って位置決め部13の位置を基準とし、位置決め部13から所定の距離及び方向だけ離れた位置にフォトダイオード20及びレーザダイオード50を接続する構成とすればよい。これにより、フォトダイオード20の受光部22の中心と受信用レンズ面15の中心とが略一致するように、フォトダイオード20を第1の導電板30aに接続することができ、レーザダイオード50の発光部52の中心と送信用レンズ面16の中心とが略一致するように、レーザダイオード50を第3の導電板30cに接続することができる。
【0043】
OSA1のベース10、周壁部12、位置決め部13、受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等は、透光性の合成樹脂により一体成形されている。即ち、ベース10は、フォトダイオード20、レーザダイオード50及び導電板30等を保持する保持部であり、且つ、受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等が設けられる基部である。OSA1の製造は、例えば、予め所望の形状に加工された導電板30を金型内に配置し、液状の透明樹脂を流し込んで硬化させる方法、所謂射出成形によって一体成形を行うことができる。合成樹脂の一体成形を行った後でフォトダイオード20及びレーザダイオード50をベース10に露出する導電板30に接続する構成であるため、ベース10及び周壁部12等を構成する合成樹脂は、フォトダイオード20及びレーザダイオード50の耐熱性能などに関係なく選択することができるため、成形精度が高く、温度変化などの周辺環境による変形などが発生し難い合成樹脂を選択することができる。
【0044】
また、OSA1は、ベース10の上面側に設けられた周壁12の上端に接合され、凹所12aを封止する蓋体40を備えている。蓋体40は、平面視がベース10と同じ略長方形をなす板状であり、周壁12の上端に例えば超音波溶接又は接着剤による接着等の方法で接合される。蓋体40は、透光性又は非透光性のいずれであってもよく、ベース10及び周壁部12等と同じ素材で成形されるものであってもよく、異なる素材で成形されるものであってもよい。なお蓋体40を接合するときに、凹所12a内に窒素ガス又はドライエアー等のガスを封入してもよく、凹所12a内を真空としてもよい。
【0045】
本発明のOSA1は、通信装置の回路基板などに搭載され、受信用の光ファイバ及び送信用の光ファイバの端面に受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16が対向するように配置される。図5は、OSA1と2つの光ファイバとが対向配置された状態を示す模式図である。なお、図5に示すOSA1は図1に示したOSA1と同じものであるが、符号を一部省略してある。
【0046】
受信用の光ファイバ91及び送信用の光ファイバ92は、例えばOSA1が搭載された通信装置の筐体などに支持され、その端面がOSA1の受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16にそれぞれ対向し、且つ、両端面の位置を揃えて固定される。本発明のOSA1は、ベース10の下面に柱部17を突設し、柱部17の突端に送信用レンズ面16を成形することで、レーザダイオード50から送信用レンズ面16までの距離をフォトダイオード20から受信用レンズ面15までの距離より長くした構成、即ち送信用レンズ面16を受信用レンズ面15より突出させた位置に設ける構成である。このため、送信用レンズ面16から送信用の光ファイバ92の端面までの距離は、受信用レンズ面15から受信用の光ファイバ91の端面までの距離より短い。
【0047】
受信用の光ファイバ91の光(図5の二点鎖線の矢印参照)は、出射先に対向配置されたOSA1の受信用レンズ面15に入射し、フォトダイオード20の受光部22へ集光される。しかし、光の一部は受信用レンズ面15外へ出射され、更にその一部は柱部17が設けられた側へ出射される。柱部17が設けられた側へ出射された光は、柱部17に形成された平面17aに到達し、平面17aにて受信用レンズ面15側へ向けて反射される。このとき、柱部17をなす透光性の合成樹脂の屈折率、柱部17に成形した平面17aの傾斜角、及び受信用の光ファイバ91から平面17aへの光の入射角範囲(即ち、受信用の光ファイバ91の配置)等を適切に設定することによって、受信用の光ファイバ91から平面17aへ到達した光の大部分を反射することができる。平面17aにて反射された光の一部は、受信用レンズ面15へ入射してフォトダイオード20の受光部22へ集光される。なお、受信用の光ファイバ91から出射された光の大部分が直接に送信用レンズ面16へ入射することがないように、受信用の光ファイバ91からの出射光の広がり範囲を考慮して、光ファイバ91と送信用レンズ面16との配置を設定する(ただし、光の一部がレーザダイオード50に達した場合であっても、レーザダイオード50に達する光は微弱であり、レーザダイオード50は外部からの光に対してフォトダイオード20ほど弱くはないため、問題とならない)。
【0048】
また、レーザダイオード50の発光部52から出射した光(図5の一点鎖線の矢印参照)は、柱部17を透過して送信用レンズ面16に到達し、送信用の光ファイバ92へ集光される。しかし、光の一部は送信用レンズ面16外へ(即ち、柱部17の周面へ)到達し、更にその一部は柱部17の平面17aに到達する。これらの光は、柱部17の周面及び平面17aにて送信用レンズ面16へ向けて全反射され、送信用レンズ面16にて送信用の光ファイバ92へ集光される。このとき、柱部17をなす透光性の合成樹脂の屈折率、柱部17に成形した平面17aの傾斜角、及びレーザダイオード50から平面17aへの光の入射角範囲等を適切に設定することによって、レーザダイオード50から平面17aへ到達した光の略全てを反射することができる。よって、レーザダイオード50の光が受信用レンズ面15側へ漏れて、フォトダイオード20にて受光されることを防止できる。
【0049】
例えば、レーザダイオード50から出射する光(レーザダイオード50の光軸に対して最も傾いた光)の平面17aに対する入射角をθとし、柱部17をなす合成樹脂の屈折率をnとした場合、全反射条件(sinθ=1/n)を満たすように平面17aの傾斜角を設定することで、レーザダイオード50からの光が受信用レンズ面15側へ漏れることを防止できる。
【0050】
以上の構成のOSA1は、受信用のフォトダイオード20と送信用のレーザダイオード50とを備え、1つの部品で光通信の送受信を行うことができるため、このOSA1を搭載する通信装置の小型化及び低価格化等に寄与することができる。また、ベース10、受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等を透光性の合成樹脂で一体成形する構成とすることにより、受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16の間の距離を短くすることができ、OSA1を小型に製造することができる。また、送信用レンズ面16をベース10に突設された柱部17の突端に設け、受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16の間の柱部17の周面を平面17aとすることにより、平面17aを境にして光を反射させることができるため、送信側から受信側へ、及び、受信側から送信側へ光が漏れることを防止できる。よって、本発明のOSA1は、2つのレンズ面の距離を狭めて小型化した場合であっても、光の漏れを防止して光信号の誤送受が発生することを防止することができる。また、ベース10内部に埋め込まれた導電板30の一部を遮光部32とし、送信側と受信側との間に配する構成とすることにより、透光性のベース10内を通して送信側及び受信側の間で光が漏れることを防止でき、光信号の誤送受が発生することをより確実に防止できる。
【0051】
なお、本実施の形態においてはOSA1がフォトダイオード20及びレーザダイオード50の2つの光電素子を備える構成としたが、これに限るものではなく、3つ以上の光電素子を備える構成としてもよい。この場合、受光素子と発光素子とを交互に配置することが望ましい。また、受信用レンズ面15及び送信用レンズ面16の間の柱部17の周面に平面17aを成形する構成としたが、これに限るものではなく、受信側及び送信側の間で光を反射することができる構成であれば曲面などのその他の形状であってもよく、例えば柱部17は平面17aを有さない円錐台形であってもよい。また、フォトダイオード20及びレーザダイオード50はその下面に受光部22及び発光部52を有する構成としたが、これに限るものではなく、上面に受光部22及び発光部52を有する構成であってもよく、この場合には例えば蓋体40に受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等を設ければよい。また、フォトダイオード20及びレーザダイオード50の位置決めを、ベース10に設けた位置決め部13を用いて行う構成としたが、これに限るものではなく、他の方法により位置決めを行ってもよい。
【0052】
(変形例)
図6は、本発明の変形例に係る光通信モジュールの構成を示す模式的断面図である。上述の実施の形態1に係るOSA1は、ベース10に設けられた凹所12a内にフォトダイオード20及びレーザダイオード50を収容して、蓋体40にて凹所12aを封止することによりフォトダイオード20及びレーザダイオード50を封止する構成である。これに対して変形例に係るOSA1は、フォトダイオード20及びレーザダイオード50を透光性の合成樹脂により封止した封止部110に、受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等を一体成形する構成である。これにより、OSA1の製造工程を簡略化することができる。
【0053】
なお、フォトダイオード20及びレーザダイオード50の樹脂封止と、透光性の合成樹脂による受信用レンズ面15、送信用レンズ面16及び柱部17等の一体成形とを別に行う構成であってもよい。例えば、図1に示したOSA1において、蓋体40にて凹所12aを封止するのではなく、凹所12a内に合成樹脂を流し込んで封止する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 OSA(光通信モジュール)
10 ベース(保持部、基部)
12 周壁部
12a 凹所
13 位置決め部
15 受信用レンズ面
16 送信用レンズ面
17 柱部
17a 平面
20 フォトダイオード(受光素子)
21 接続端子部
22 受光部
30、30a〜30d 導電板
31 開口
32 遮光部
35、36 ワイヤ
40 蓋体
50 レーザダイオード(発光素子)
51 接続端子部
52 発光部
91、92 光ファイバ
110 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を光信号に変換して送信する発光素子と、
光信号を受信して電気信号に変換する受光素子と、
前記発光素子及び前記受光素子を並べて保持する保持部と、
透光性の基部に一体的に並設された受信用レンズ面及び送信用レンズ面と、
前記送信用レンズ面を光軸方向へ前記受信用レンズ面より前記基部から突出させるように、前記基部に一体的に突設され、突端に前記送信用レンズ面が設けられた柱部と
を備え、
前記保持部に保持された前記受光素子は前記受信用レンズ面及び前記基部を通して光信号を受信し、前記保持部に保持された前記発光素子は前記基部、前記柱部及び前記送信用レンズ面を通して光信号を送信するようにしてあること
を特徴とする光通信モジュール。
【請求項2】
前記柱部の周面は、前記受信用レンズ面の側が平面に成形してあること
を特徴とする光通信モジュール。
【請求項3】
前記基部及び前記保持部は、透光性の合成樹脂により一体成形してあること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光通信モジュール。
【請求項4】
前記基部内に設けられ、前記発光素子からの光信号の出射経路と前記受光素子への光信号の入射経路を遮断する遮光部を備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の光通信モジュール。
【請求項5】
前記発光素子及び受光素子がそれぞれ接続される複数の導電体を備え、
前記遮光部は、前記導電体の一部により構成してあること
を特徴とする請求項4に記載の光通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−238751(P2010−238751A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82468(P2009−82468)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】