説明

光通信機器とそれを用いたペースト塗布機

【課題】複数の可動物にそれぞれ異なる信号の送受信を行う場合、光空間伝送装置を用いて、信号線をなくせるが、複数の可動物と間、特に送信方向と受信方向の異なる場合は、それぞれ光の方向を曲げるために複数の反射鏡を設置する必要があった。
【解決手段】複数の可動物との間で、送信方向と受信方向の異なる場合に1つの反射鏡で信号のやり取りができるように、反射鏡にスリットを設けることで各送信器と受信器との間で混信することなく、安定して信号が伝達できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼動部位が複数存在し、高速な情報通信を必要とする装置の制御系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の情報通信装置の相互間通信において、配線数を削減し省配線を行うため、光通信を用いて情報通信を行う光空間通信の手法が開発された。前記手法を装置内で使用する際に、装置構成が複雑になるに従い、光通信の光束の光軸の向きを途中で変える必要が生じ、一般的にミラー等を利用している。例えば特許文献1に示すように、可動体に信号を伝達する場合、ミラーを用いて光の伝達するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−115398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにミラーから反射された光束は、相手側光空間通信装置の距離により拡散して、必要とされる光信号の他に外部より反射された光が混在してしまうため、安定した通信品質が得られない可能性がある。
【0005】
その対策として、レンズなどにより光束を集中させる手法もあるが、光空間通信装置が移動する場合には焦点距離の調整が必要であり、複雑化した制御機構が必要不可欠である。また、一つの光空間通信装置に専用のミラーを設置していた。複数台の光空間通信装置を設置した際に、複数のミラーを設置する必要があった。
【0006】
また、この手法では各ミラーの調整が必要であり、設置スペースが多く必要である。また複数のミラーがあるため外部の光源が反射し、光信号のノイズとなる可能性がる。
【0007】
さらに、1枚のミラーで複数台の光空間通信装置を使用した際、通信装置の配置やミラーとの距離が異なる場合に、隣接又は近傍のミラーに対応する光空間通信装置の光束が光空間通信装置に入光し干渉することにより互いの光源の影響で安定した通信品質が得られない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、複数の発信源からの光信号を、方向の異なる複数の受信機に伝達するために、発信源と受信機との間反射ミラーを設けても信号を混信することなく、安定に伝達することのできる光空間通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、空中を伝播する光源に情報信号を付加して、それぞれ異なる距離の任意の場所に設置され、且つ任意の位置へ移動可能な複数の相手装置との間で光信号による情報通信を行う光空間通信装置であって、情報信号を付加した光を発信する複数の発信機と、方向の異なる位置にある複数の受信機と、前記発信機から受信機に光信号を送信するための反射鏡とを備え、前記反射鏡が前記発信機からの反射光を制御する形態手段を具備した構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、任意の位置に移動可能で複数の光空間通信装置を有する機構においてミラーに光通信制御系を設けることにより、光空間通信装置の設置間距離を最小化、且つ、各光空間通信装置において安定した通信品質の確保が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1枚のミラーで複数の異なる距離に配置された光空間通信装置の光源を反射させるためには、各光源の光束を正確に相手側光空間通信装置に反射させる必要がある。
【0012】
光空間通信装置の概念図を図3に示す。光通信を行うための送信側1より光信号S1が発せられ、受信側2へ送られる。光空間通信を利用する製造装置では殆どの場合、送信側1と受信側2が同軸上に配置することができない。そこで反射鏡(以下ミラーと称する場合もある)3の反射面4で光信号S1を受信側2の方向へ反射させ、反射光S2が受信側2で受信される。
【0013】
このとき送信側1から発せられる光信号S1はミラー3で反射するまでに光の拡散により、送信側1より発せられた直後の光束の径よりもミラー3に到達した光束の径(S1a)が大きくなってしまう。また、反射した反射光S2は反射した直後より受信側2に到達した時光束の径(S2a)が大きくなってしまう。光空間通信装置が隣接している場合には、干渉等の影響により通信品質が劣化する可能性が大きい。なお、光空間通信装置が1組のみの使用の場合に影響ない。
【0014】
上記に対して、複数の光空間通信装置を使用する場合には、双方の光空間通信装置の設置距離により通信品質に大きく影響する場合がある。また送信側1、受信側2の双方の位置が固定の場合は、光束の拡散する量を考慮し、互いの通信装置の配置を決めることで通信品質の劣化を防止することが可能である。しかし、送信側1又は受信側2が光軸方向Aに任意に移動可能で且つ複数の光空間通信装置する場合、任意の位置での光束の拡散量を計算し、光空間通信装置の間隔距離Lを決める必要があり、送信側1と受信側2の最大距離での光束の拡散径に準じた光空間通信装置間距離Lを設定する必要がある。
【0015】
こうした場合には、光空間通信装置間距離Lは大きくなり、設置スペースが大きくなってしまう。
【0016】
そこで本発明では、任意に移動可能な送信側1又は受信側2で変化する可能性のある光束径に対応するため、光の反射を行うミラー3に光束の拡散を制御するための機構を設けることとした。
【0017】
図1に本発明の光空間通信装置の概略図を示す。この図では、送信側に情報を備えた光を発信する複数の発光部(又は送信機)1が設けられ、この送信機1は図の矢示方向A(光軸方向)に移動可能に構成されている。本発明は異なる情報を光に載せて送信する複数の送信機と、送信機の発信方向とは異なる向きの受信方向に設置された複数の受信機に信号を伝達するために、1つの反射鏡を用いて、それぞれの光の進行方向を変化させて、それぞれの受信機が対応する送信機の光を受信できるように構成したものである。例えば、図4に示すような複数の塗布ヘッドを備えた塗布装置において、ガントリ上に移動可能に設けられた複数の塗布ヘッドに信号を伝達するために、固定部(地上側)に設けられた複数の送信機から、反射鏡を介して信号を伝達する構成としている。
【0018】
図3に示したように、送信機1から発せられた光信号S1は反射鏡であるミラー3に到達するまでに光束径S1aが発信直後よりも大きくなる。一方、ミラー3は反射部4とスリット5(又は、光反射抑制素材などの貼付け等により構成してもよい)を設けた構成としてある。このスリット5の部分は、光の反射を抑制するために設けたもので、光の反射を制御する制御部の役目を持つ。また、反射部4は相互に任意の反射方向に設定可能な構成としてある。この反射鏡3に光束が当ると、拡散した光束は反射部4とスリット5にぶつかる。そのうち、スリット5にぶつかった光は吸収され、反射部4にぶつかった光は反射光S2となり受信機2側へ向かう。
【0019】
また、スリット5に当った光は、反射光の方向とは別の方向に(又は反射抑制素材により)反射するように制御される。すなわち、反射部4に当った光量分だけが反射光S2となり、受信機2側へ向かう。これにより、受信機2側の光通信の光量及び光束径は送信部1の移動方向Aの位置に関係なく、定量化することが可能である。また、各光空間通信装置に対応した反射部を限定することにより、外部(又は隣接もしくは近傍の光空間通信装置)の光源による干渉光を低減し、安定した通信品質を保つことが可能である。
【0020】
反射鏡3に施すスリット5の例として、図2に示すように種々の幾何学的形状が考えられる。(a)は長方形型5aの切抜き穴であり、(b)は平行四辺形型5bの切抜き穴であり、図2(c)の十字形状5cの切抜き穴などが考えられる。切抜き穴を例としたが、穴を開ける代わりに光の反射を抑制する素材(光吸収部材)で反射部の周囲を形成か、又は、反射部周囲に反射を抑制する塗料を塗布することでも可能である。また、反射部4は平面反射面、局面を施した面などの形状が可能であり、反射鏡3に対して任意の反射角度設定が可能なものとする。
【0021】
反射鏡3は反射部4とスリット5の組み合わせにより、対応可能な光空間通信装置の数を増やすことができる。
【0022】
上記の発明をシール塗布装置に適用した場合の構成を図4に示す。図4に示したシール塗布装置は、架台50上に架台の長手方向に移動可能に、2つのガントリ(門型の移動機構)20A,20Bが基板16を載置するテーブルを跨ぐように設けてある。さらに、ガントリのフレーム30A,30B上には複数の塗布ヘッド8A〜8D、8E〜8Hがフレームの長手方向に移動可能に設けてある。各塗布ヘッドには塗布制御を行うために駆動系が設けてあるが、この駆動系への制御信号や、位置合わせのための信号等を送る必要がある。この際、装置全体を制御する主制御部10から各塗布ヘッド部の制御部に信号線で接続することも可能であるが、信号線が多くなり移動における抵抗となり位置合わせ精度が低下するという問題がある。そのため信号線による影響を低減すると共に、制御信号を確実に伝達するために光空間伝送を採用し、信号伝送に使用する部品点数を極力低減する構成とした。そこで、地上側の送受信機と塗布ヘッド側に設けた送受信機がほぼ直角方向を向いているため、光の方向を変更するための反射鏡が通常送信機又は受信機の数必要であるが、1つの反射鏡で複数の送信機と受信機間で信号の伝達を行えるようにしたものである。すなわち先に説明したスリット付きの反射鏡を用いて光の進む方向を変更する様にしたものである。
【0023】
主制御部10は制御信号を送受信機11A〜11Hに送信する。送受信機11A〜11Hからは電気信号を光信号に変換して、光信号をヘッド側に設けた送受信機13A〜13Hに送信する。これら送受信機のうち送受信機11A〜11Dは、フレーム30Aに設けられている塗布ヘッド8A〜8Dの送受信機13A〜13Dとの間で信号を伝送するためのものである。また、送受信機11E〜11Hはフレーム30Bに設けられている塗布ヘッド8E〜8Hに設けられている送受信機間で(図示せず)信号を伝送するためのものである。この場合送受信機11A〜11Hはフレーム30A,30Bの移動方向に向けて信号光を出射し、それぞれのフレームに設けたスリット付きの反射鏡で光をフレームの長手側に進むように反射させて、フレームに設けた各塗布ヘッドに光を伝達する構成となっている。
【0024】
また本図では、電力線も非接触給電が行えるように構成してある。すなわち、電源部54から架台上両端部に電線支持部材19が設けて有る。この電線支持部材19の間を移動するガントリ20A,20Bに設けた給電コア6A,6Bを貫通するように1次給電線17,18が配線されている。各コア6A,6Bにはそれぞれ2次給電線7A,7Bが巻きつけて設けられており、この2次給電線が各フレーム30A,30Bに設けた電線支持部材15を介して、同フレームに取り付けられている各塗布ヘッドに設けた給電コア9A〜9Hを貫通して配線されている。各ヘッドに設けた給電コアに設けた3次給電線を介して各ヘッドに電力が供給される構成としてある。
【0025】
本実施例の光空間通信装置は、図のようにほぼ直角方向に光の伝送方向を曲げる必要があり、反射鏡13A,13B,14A,14Bそれぞれ配置してある。この反射鏡には先に説明したようにスリットが設けてあり、このスリットにより各送受信機が光信号を混信することなく伝達することが可能となっている。なお、本実施例では地上側(架台側)送受信機は固定されているが、ヘッド側の送受信機はフレーム30A,30Bに沿って移動する構成となっている。なお、移動するヘッド側の送信機は、地上側の受信機にヘッドの位置情報等を送信する構成となっている。
【0026】
このように、本発明の反射鏡の構成を適用することで、送信機と受信機間に設ける反射鏡を1つで良くなり、装置構成を複雑にすることなく、確実に信号の送受信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】複数の光空間通信装置を有する通信構成の概念図である。
【図2】反射鏡の光束の制御を行うための形態実施例の図である。
【図3】光空間通信装置を有する通信構成の概念図である。
【図4】ペースト塗布装置に光空間通信を適用したときの構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1…送信側、2…受信側、3…反射鏡(ミラー)、4…反射部、5…スリット、6A,6B…コア、8A〜8H…塗布ヘッド、9A〜9H…給電コア、10…主制御部、11A〜11H…送受信機、13A,13B,14A,14B…反射鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中を伝播する光源に情報信号を付加して、それぞれ異なる距離の任意の場所に設置され、且つ任意の位置へ移動可能な複数の相手装置との間で光信号による情報通信を行う光空間通信装置であって、
情報信号を付加した光を発信する複数の送信機と、方向の異なる位置にある複数の受信機と、前記送信機から受信機に光信号を送信するための反射鏡とを備え、前前記反射鏡が前記複数の送信機からの反射光をそれぞれ制御する制御手段を具備したことを特徴とする光空間通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載した光空間通信装置において、
前記制御手段は前記反射鏡に複数のスリットを設けたものであること特徴とする光空間通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載した光空間通信装置において、
前記複数の送信機と受信機との間に1つの反射鏡を設けて、前記制御手段にてそれぞれ対応する送信機と受信機間で信号のやり取りができるようにしたことを特徴とする光空間通信装置。
【請求項4】
架台上に基板を載置するテーブルを設け、可動式の門型フレームに複数の塗布ヘッドを前記フレームの長手方向に移動可能に設け、架台側に設けた送受信機と前記塗布ヘッドに設けた送受信機間で信号のやり取りを行う構成のペースト塗布機において、
前記架台側の送受信機とヘッド側の送受信機間に反射鏡を1つ設けて、前記反射鏡に送信側の光信号が混信しないように複数のスリットを設けたことを特徴とするペースト塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate