説明

光遅延装置、光回路および光遅延方法

【課題】小規模な構成で光信号に所定の遅延時間を与えること。
【解決手段】光経路r1においては、入力された光信号が同一の経路を繰り返し通過する。光スイッチ150は、光経路r1へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、光経路r1へ入力された光信号を出力する出力状態と、に切り替え可能である。制御部160は、光スイッチ150を、光信号が光経路r1へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは非出力状態にし、光信号が光経路r1へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点で出力状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を遅延させる光遅延装置、光回路および光遅延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットなどの普及により通信トラフィックの需要が増加している。通信トラフィックの需要の増加に応える技術として、たとえば、1本の光ファイバに光信号を通して通信を行う光ファイバ伝送技術が用いられている。大容量情報化社会に向け、幹線系の長距離化および大容量システムに加え、より柔軟でより経済的なトランスポート網が構築され、フォトニックネットワークが構成されている。これらはメトロ(市街地網)だけでなく、オフィスや家庭の近くまで引き込まれることが想定され、さらなる低コスト化および柔軟なフォトニックネットワークが求められている。
【0003】
このようなシステムの各ノードにおいては、従来の複数の光セルまたはタイムスロット(光パケット)に対して、所定の宛先に対応してルートを切り替えて出力機能を有することが求められる。フレキシブルなネットワークを構築する通信方式においては、複数の光パケットが同一のルートに出力される場合があり、光信号同士が衝突する場合もある。衝突した光信号同士は、たとえば、読み取り不能で受信エラーとなり、廃棄される。光パケットの廃棄は、システムの信頼性に影響するだけでなく、正常に受信できるまで送信者は再送を繰り返すことになり、ネットワークの効率が低下する。
【0004】
このような事態を回避するために、ノードに対して多方面から任意に送付されてくる各種の光信号に対して、スケジューラやバッファが求められる。スケジューラは、光信号の宛先に応じて光信号を送出するタイミングを管理する。バッファとしては、光信号を電気信号に変換して電気バッファに格納し、電気バッファから取り出した信号を再度光信号に変換して送出する構成が知られている。しかし、光から電気への変換および電気から光への変換を利用するため、大容量および高速化に限界があり、消費電力の増加および装置の複雑化/大規模化をまねく。
【0005】
これに対して、光信号を光のまま遅延させる光バッファが検討されている(たとえば、下記特許文献1〜4参照。)。光バッファは、同じタイミングで入力してきた光信号同士の衝突を回避して光パケットの廃棄率を下げるだけでなく、優先度の高い光信号を先に通すといった順序制御にも用いられる。従来の光バッファとしては、たとえば、長さの異なる複数の光ファイバをパラレルに配置する構成が知られている。この構成においては、光信号を長時間遅延させる場合には長い距離の光ファイバを通過させ、短時間遅延させる場合には短い距離の光ファイバを通過させて、所望の遅延時間に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−23306号公報
【特許文献2】特開2003−57698号公報
【特許文献3】特開2003−207812号公報
【特許文献4】特開2001−242494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では、光信号に所定の遅延時間を与えるための構成が大規模になるという問題がある。たとえば、長さの異なる複数の光ファイバをパラレルに配置する構成では、たとえば数百[m]から数[km]といった長い光ファイバをあらかじめ複数設けることになるため、ハードウェアが大型化する。
【0008】
たとえば従来のように異なるファイバ長を用意するという方法では、大型のハードウェアが複雑に構成され、実システムへの導入は非現実となるだけでなく、選択できる遅延時間が不連続であるため、パケット間に無効な隙間(パケット間ギャップ)が発生する。パケット間に活用することができない無効なすき間はパケット廃棄率の減少に対して効率的ではなく、フレキシブルに交通渋滞を整理することは困難である。このボトルネックを回避する手段として、光バッファ機能には、簡易な光回路構造、小型化、および遅延時間が細かく変えられる可変機能が求められる。
【0009】
また、従来技術において、遅延時間のフレキシブル性を得ようとすると、非現実なほどの大規模な設備が必要になる。たとえば、光パケットの1スロット時間が1[μs]でその光路長がたとえば200[m]の場合に、伝送路は0[m]、200[m]、400[m]、600[m]、800[m]、1000[m]、1200[m]、1400[m]、1600[m]、1800[m]、2000[m]…∞となる。
【0010】
また、従来技術においては、遅延時間のフレキシブル性を得ようとすると、たとえば光スイッチのマトリクス数や、光スイッチの後段のファイバの長さの種類も増加し、多くの光路が必要となることで、マトリクス光スイッチやm×1やK×mカプラにおける挿入損失も増加し、SNが劣化するなど、光伝送特性を劣化させてしまう。
【0011】
また、光パケットをループさせながらSSB(Single Side Band)変調器などによって変調して、変調による波長の変化によりループから光パケットを取り出す構成では、SSB変調器の挿入損失が大きい(たとえば10[dB])ため、光パケットが周回するたびに大きな損失を受けるという問題がある。これにより光伝送特性を劣化させてしまう。これを避けるために、光アンプを挿入することによって、この大きな挿入損失を補償することが考えられるが周回の回数のたびに、光アンプが発生させる雑音光が蓄積し増えること、また大きな利得を有する光増幅器は高価であるという問題がある。また、SSB変調器は高速の信号では特性が出にくいという問題があり、一般的には最大でも20〜25[Gb/s]程度の信号光にしか対応できず、たとえば40[Gb/s]といった高速には対応が困難である。
【0012】
また、従来技術においては、遅延時間は波長をシフトさせる回数(周回数)に依存する。また、光アンプを設けることで、増幅帯域はたとえば30[nm]程度に制限される。したがって、波長の変調の精度が仮に0.1[nm]であったとしても、光パケットはたとえば300回しか周回できない。このため、実現できる遅延時間が制限されるという問題がある。このため、たとえばWDMの広い帯域に適用することは困難と思われる。
【0013】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、小規模な構成で光信号に所定の遅延時間を与えることができる光遅延装置、光回路および光遅延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、光が同一の経路を繰り返し通過する光経路へ光信号を入力し、前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える光遅延装置、光回路および光遅延方法が提案される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、小規模な構成で光信号に所定の遅延時間を与えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる光遅延装置の構成例を示す図である。
【図2−1】図2−1は、光パケットの反射回数と光路長との関係の一例を示す図である。
【図2−2】図2−2は、光パケットの反射回数と遅延時間との関係の一例を示す図である。
【図2−3】図2−3は、光パケットの反射回数とパワーとの関係の一例を示す図である。
【図3】図3は、光パケットに与える遅延時間の一例を示す図である。
【図4】図4は、光スイッチの切り替えタイミングの一例を示す図である。
【図5】図5は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、光遅延装置を備える光遅延回路の装置構成の基本構成例の概略を示す図である。
【図7−1】図7−1は、光遅延装置を備える光回路の構成例1を示す図である。
【図7−2】図7−2は、図7−1に示した光回路による光パケットの制御の一例を示す図である。
【図8−1】図8−1は、光遅延装置を備える光回路の構成例2を示す図である。
【図8−2】図8−2は、図8−1に示した光回路による光パケットの制御の一例を示す図である。
【図9−1】図9−1は、実施の形態2にかかる光遅延装置の構成例を示す図である。
【図9−2】図9−2は、図9−1に示した光遅延装置の変形例を示す図である。
【図10】図10は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施の形態3にかかる光遅延装置の構成例を示す図である。
【図12】図12は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態4にかかる光遅延装置の構成例1を示す図である。
【図14】図14は、図13の光回路構造を用いた場合の光パケットの反射回数とパワーとの関係の一例を示すイメージ図である。
【図15】図15は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。
【図16】図16は、実施の形態5にかかる光遅延装置の構成例1を示す図である。
【図17】図17は、実施の形態5にかかる光遅延装置の構成例2を示す図である。
【図18】図18は、実施の形態5にかかる光遅延装置の構成例3を示す図である。
【図19】図19は、図18に示した光フィルタの特性の例1を示す図である。
【図20】図20は、図18に示した光フィルタの特性の例2を示す図である。
【図21】図21は、光遅延装置の変形例1を示す図である。
【図22】図22は、光遅延装置の変形例2を示す図である。
【図23】図23は、光遅延装置の変形例3を示す図である。
【図24−1】図24−1は、一部透過のミラーと光ファイバとの接続例1を示す図である。
【図24−2】図24−2は、一部透過のミラーと光ファイバとの接続例2を示す図である。
【図25−1】図25−1は、全反射のミラーと光ファイバとの接続例1を示す図である。
【図25−2】図25−2は、全反射のミラーと光ファイバとの接続例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる光遅延装置、光回路および光遅延方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる光遅延装置の構成例を示す図である。図1に示す光遅延装置100は、入力された光パケット(光信号)を所定(可変)の遅延量(遅延時間)だけ遅延させて出力する光遅延装置(光バッファ)である。遅延量は、たとえば、光パケットに実施されるべき遅延時間の情報を基に決定される。図1に示すように、光遅延装置100は、たとえば、サーキュレータ110と、ミラー120と、遅延線130と、ミラー140と、光スイッチ150と、制御部160と、を備えている。
【0019】
サーキュレータ110、ミラー120、遅延線130、ミラー140および光スイッチ150を接続する光経路は、たとえば光ファイバによって実現することができる。サーキュレータ110は、光遅延装置100へ入力された光パケットをミラー120へ出力する。また、サーキュレータ110は、ミラー120から出力された光パケットを光スイッチ150へ出力する。
【0020】
サーキュレータ110を用いることで、ミラー120から戻ってきた光パケットを、光遅延装置100の入力部に戻さずに光スイッチ150へ出力することができる。すなわち、サーキュレータ110の適用により光の進行方向を一定方向に保ち、逆方向の進行を抑えることができる。
【0021】
ミラー120は、所定の透過率(たとえば50%)を有する一部透過の反射媒体である(ハーフミラーのようなもの)。具体的には、ミラー120は、サーキュレータ110から出力された光を所定の反射率(たとえば50%)でサーキュレータ110へ反射させ、残りの光を遅延線130へ透過させる。また、ミラー120は、遅延線130からミラー120へ向かう光に対しても、その所定の反射率(たとえば50%)で遅延線130へ反射させ、残りの光をサーキュレータ110へ透過させる。
【0022】
遅延線130は、ミラー120から出力された光パケットを所定の時間遅延させ、遅延せた光パケットをミラー140へ出力する。また、遅延線130は、ミラー140から出力された光パケットを所定の時間遅延させ、遅延せた光パケットをミラー120へ出力する。遅延線130は、たとえば巻いた光ファイバによって実現することができる。
【0023】
ミラー140は、遅延線130から出力された光パケットを遅延線130へ反射させる。ミラー140の反射率は、たとえば理想的には100%である。ミラー120、遅延線130およびミラー140は、入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する光経路r1(光回路)を形成する。具体的には、サーキュレータ110から入力された光パケットは、ミラー120,140(複数の反射媒体)の間を繰り返し往復する。この場合は、サーキュレータ110およびミラー120は、遅延対象の光パケットを光経路r1へ入力する入力部となる。
【0024】
ミラー120とミラー140との間の遅延線130を含む光路長は、光遅延装置100へ入力される光パケットの最大のスロット時間(時間長)で光が進む光路長の1/2以上とする。これにより、光パケットが光経路r1を1往復するためにかかる時間は、光パケットの最大のスロット時間(時間長)以上となる。
【0025】
すなわち、光経路r1は、入力される光パケットの最大のスロット時間以下の周期で光経路r1の同一の経路(たとえばミラー120からミラー140への往路)を通過する光路長を有する。したがって、光経路r1は、時間軸方向に光パケットの先端から末尾までが進む光路長以上の光路長を有する。これにより、光経路r1において、往復する光パケットの異なる部分同士(たとえば先頭と末尾)が干渉して光パケット内における反射回数が混在することを回避することができる。このため、光パケットの波形劣化を回避することができる。
【0026】
したがって、光遅延装置100へ入力された光パケットは、一部がミラー120によって反射して光スイッチ150へ出力されるとともに、残りはミラー120とミラー140との間で反射を繰り返す。また、ミラー120とミラー140との間で反射を繰り返す光パケットも、ミラー120へ入射するごとに一部がミラー120を透過して光スイッチ150へ出力される。このため、光スイッチ150には、光遅延装置100へ入力された光パケットに対して異なる遅延時間(往復回数)が与えられた各光パケットが入力される。
【0027】
光スイッチ150は、光経路r1へ入力された光パケットを出力しない非出力状態と、光経路r1へ入力された光パケットを出力する出力状態と、に切り替え可能な光スイッチである。具体的には、光スイッチ150は、光経路r1からミラー120を透過し、サーキュレータ110から出力された光を、通過させ(オン)、または遮断(オフ)する。また、光スイッチ150は、制御部160から出力される制御信号に応じて光のオン/オフを切り替える。
【0028】
制御部160には、たとえば、光遅延装置100へ光パケットが入力されるタイミングと、入力された光パケットに与える遅延時間と、を示す情報が入力される。制御部160は、入力された情報に基づいて、光スイッチ150へ制御運号を出力することで光スイッチ150のオン/オフ(出力状態/非出力状態)を切り替える。遅延時間は、たとえば、光が光経路r1を往復する周期の整数倍(ゼロ倍を含んでもよい)の時間である。
【0029】
具体的には、制御部160は、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点を計時する。制御部160は、所望の遅延時間になったら、その光パケットを光スイッチから通過させるように制御するものである。そして、制御部160は、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは光スイッチ150をオフ(非出力状態)にする。また、制御部160は、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点で光スイッチ150をオン(出力状態)に切り替える。これにより、光スイッチ150へ入力される光パケットのうちの、所定の遅延時間が与えられた光パケットを出力させることができる。
【0030】
また、制御部160は、光スイッチ150をオンにする場合に、光パケットの時間長より長く光スイッチ150をオンにする。光スイッチ150をオンにする時間は、たとえば光パケットの1スロット分以上の時間である(1スロット分未満の時間の場合には、光パケット信号の先頭から末尾までのすべてが光スイッチを通過しないことになってしまうため)。制御部160は、光スイッチ150をオンに切り替えてから光パケットの時間長が経過すると、光スイッチ150をオフに切り替える。これにより、光スイッチ150へ入力される光パケットのうちの、所定の遅延時間が与えられた光パケットのみを出力させることができる。
【0031】
このため、光遅延装置100へ入力された光パケットを所定の遅延時間だけ遅延させて出力することができる。制御部160は、たとえばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサなどによって実現することができる。また、制御部160は、光遅延装置100の外部に設けられていてもよい。この場合は、光スイッチ150は、光遅延装置100の外部からの制御信号によって制御される。また、制御部160は、スケジューラ(Buffer Managerやルーティングコントロール)の機能を有していてもよい。
【0032】
ここで、光遅延装置100による光パケットの遅延時間について説明する。光が1秒間に進む距離は、屈折率を1とすると299792458[m]であり、一般的な光ファイバの屈折率である1.45の場合には206753419[m]となる。ミラー120とミラー140との間の距離をA[m]とする。光が光遅延装置100へ入力されてからサーキュレータ110までの経路の距離をB[m]とする。サーキュレータ110とミラー120との間の距離をC[m]とする。サーキュレータ110と光スイッチ150との間の距離をD[m]とする。ミラー120とミラー140との間における光パケットの往復回数をNとする。
【0033】
この場合は、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから光スイッチ150によって出力されるまでの経路の距離は、(B+C+D)+2A×Nとなる。したがって、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから光スイッチ150によって出力されるまでの時間(遅延時間)は、一般的な光ファイバの屈折率である1.45を条件とした場合には((B+C+D)+2A×N)/206753419となる。
【0034】
図2−1は、光パケットの反射回数と光路長との関係の一例を示す図である。図2−1において、横軸は、ミラー120とミラー140との間を光パケットが往復する回数を示している。縦軸は、ミラー120とミラー140との間で往復する光パケットが進む光路長「m」を示している。また、ミラー120とミラー140との間の光路長が100[m](往復では200[m])である場合について説明する。
【0035】
図2−1の座標点211〜216に示すように、ミラー120とミラー140との間を光パケットが往復する回数が多くなるほど、ミラー120とミラー140との間で往復する光パケットが進む光路長が長くなる。たとえば、ミラー120とミラー140との間で往復する光パケットが進む光路長は、ミラー120とミラー140との間を光パケットが往復する回数に200[m]を乗じた長さになる。
【0036】
なお、サーキュレータ110とミラー120との間の光路長や、サーキュレータ110と光スイッチ150との間の光路長などについては、遅延線130を含む光経路r1の光路長に対して十分に短いため、ここでは考慮していない。
【0037】
図2−2は、光パケットの反射回数と遅延時間との関係の一例を示す図である。図2−2において、図2−1に示した部分と同様の部分については説明を省略する。図2−2の縦軸は、ミラー120とミラー140との間で往復した光パケットに与えられる遅延時間[μs]を示している。
【0038】
図2−2の座標点221〜226に示すように、ミラー120とミラー140との間を光パケットが往復する回数が多くなるほど、ミラー120とミラー140との間で往復した光パケットに与えられる遅延時間が長くなる。たとえば、ミラー120とミラー140との間を光パケットが1[μs]で1往復するとする。この場合は、ミラー120とミラー140との間で往復した光パケットに与えられる遅延時間は、ミラー120とミラー140との間を光パケットが往復した回数に1[μs]を乗じた長さになる。
【0039】
図2−3は、光パケットの反射回数とパワーとの関係の一例を示す図である。図2−3において、図2−1に示した部分と同様の部分については説明を省略する。図2−3の縦軸は、ミラー120とミラー140との間で往復した光パケットのパワーを、光遅延装置100へ入力された光パケットのパワーに対する相対値[dB]によって示している。図2−3においては、ミラー120の透過率が50%である場合について説明する。
【0040】
図2−3の座標点231〜236に示すように、ミラー120とミラー140との間を光パケットが往復する回数が多くなるほど、ミラー120とミラー140との間で往復した光パケットのパワーが小さくなる。たとえば、光経路r1を往復する光パケットは、ミラー120によって反射するごとにパワーが3[dB]低下する。
【0041】
図3は、光パケットに与える遅延時間の一例を示す図である。図3において、横軸は時間(Time)を示している。縦軸は光のパワーを示している。スロット時間t1は、光パケット311の最長のスロット時間である。図3においてはスロット時間t1を1[μs]とする。グラフ310の光パケット311は、光遅延装置100へ入力された光パケットである。
【0042】
グラフ320の光パケット321は、光経路r1を往復せずに光スイッチ150へ入力される光パケットである。すなわち、光パケット321は、サーキュレータ110からミラー120へ出力され、ミラー120によってサーキュレータ110へ反射した光パケットである。したがって、光遅延装置100へ入力された光パケット311に対して、光パケット321の遅延量はほぼゼロになる。制御部160は、光パケット321が光スイッチ150へ入力される期間T22においては光スイッチ150をオンにする。また、制御部160は、期間T22の後の期間T23においては光スイッチ150をオフにする。これにより、遅延量がほぼゼロの光パケット321を出力することができる。
【0043】
グラフ330の光パケット331は、光経路r1を1回往復して光スイッチ150へ入力される光パケットである。したがって、光遅延装置100へ入力された光パケット311に対して、光パケット331の遅延量は約1[μs]になる。制御部160は、光パケット331が光スイッチ150へ入力される期間T33においては光スイッチ150をオンにする。また、制御部160は、期間T33とは異なる期間T32,T34においては光スイッチ150をオフにする。これにより、遅延量が約1[μs]の光パケット331を出力することができる。
【0044】
グラフ340の光パケット341は、光経路r1を3回往復して光スイッチ150へ入力される光パケットである。したがって、光遅延装置100へ入力された光パケット311に対して、光パケット341の遅延量は約3[μs]になる。制御部160は、光パケット341が光スイッチ150へ入力される期間T43においては光スイッチ150をオンにする。また、制御部160は、期間T43とは異なる期間T42,T44においては光スイッチ150をオフにする。これにより、遅延量が約3[μs]の光パケット341を出力することができる。
【0045】
このように、図1に示した光遅延装置100によれば、入力された光パケットを所定の遅延時間によって遅延させて出力することができる。光パケットの遅延時間は、たとえば、光が光経路r1を往復する周期を単位として変化させることができる。また、光が光経路r1を往復する周期は、光パケットの最大のスロット長以上に設定されるため、光パケットの遅延時間は、光パケットのスロット長の単位で変化させることができる。これにより、たとえば光通信システムのノード内において、複数の光パケットを衝突しないように制御することが容易になる。
【0046】
なお、ミラー120とミラー140との間の光路長を長くし過ぎると、可変遅延時間が長くなる。したがって、適用する通信システムにおける所要の遅延時間に配慮して、ミラー120とミラー140との間の光路長を設定することが好ましい。たとえば、通信システムの例として、光パケットの1スロット時間が1[μs]で、所要の可変遅延時間が1[μs]〜10[μs]とし、光経路r1の屈折率を約1.45とする。
【0047】
この場合は、ミラー120とミラー140との間の光路長をたとえば100[m](往復で200[m])に設定する。これにより、光パケットの光経路r1における反射回数を1回〜10回に変化させることで、光パケットの遅延時間を1[μs]〜10[μs]に変化させることができる。
【0048】
ただし、光が光経路r1を往復する時間は、光経路r1の屈折率により異なる。具体的には、光経路r1の屈折率が高いほど、光が光経路r1を往復する時間は長くなる。したがって、屈折率が約1.45より高い光媒体(たとえばシリコン)を光経路r1に用いれば、光経路r1の長さをより短くすることもできる。このため、光遅延装置100のさらなる小型化を図ることができる。
【0049】
また、光パケットの1スロット分の最小の遅延時間を満たすには、パケット信号と精度よくタイミング(同期)をとるために、光スイッチ150の切り替えが、光パケットの1スロット時間の少なくとも1/100以下の高速性を有することが好ましい。たとえば、光パケットの1スロット時間が1[μs]の場合で、1スロット分の最小の遅延時間を満たすには、たとえば10[ns]以下の応答速度の光スイッチ150を用いることが好ましい。
【0050】
高速な光スイッチ150としては、電気光学効果を有するLN(LiNbO3)を用いる光スイッチやSOA(Semiconductor Optical Amplifier:半導体光増幅器)などを適用することができる。ただし、光パケットを送信する時間間隔が長い装置や光パケットの先頭と末尾には捨ててもよい重要度の低い情報しか入っていない場合などは、光スイッチ150は必ずしも高速である必要はなくなる。
【0051】
また、ミラー120とミラー140との間の光路長の2倍が、光パケットの1スロット分の光路長より長い場合は、遅延時間が異なる各光パケットが間隔を空けて光スイッチ150へ入力される。このため、光スイッチ150による特定の光パケットの切り出しが容易になる。このため、たとえば、光スイッチ150は必ずしも高速なスイッチでなくてもよい。または、制御部160による制御が必ずしも高速でなくてもよい。
【0052】
図4は、光スイッチの切り替えタイミングの一例を示す図である。図4において、横軸は時間(Time)を示している。縦軸は光の強度「dBm」を示している。スロット時間t1は、最長のスロット時間(たとえば1[μs])である。グラフ410の光パケット411は、光遅延装置100へ入力された光パケットである。グラフ420の光パケット421〜426は、光パケット421が光経路r1をそれぞれ0〜5回往復して光スイッチ150へ入力された光パケットである。ここでは、光経路r1を4往復した光パケット425(遅延時間はたとえば4[μs])を出力する場合について説明する。
【0053】
この場合は、制御部160は、光パケット421〜424,426が光スイッチ150へ入力される期間T31,T33においては光スイッチ150をオフにする。また、制御部160は、光パケット425が入力される期間T32において、光パケット425の先頭が光スイッチ150へ到達していない期間T32aにおいて光スイッチ150をオフからオンに切り替える。
【0054】
また、制御部160は、期間T32において、光パケット425の末尾が光スイッチ150から出力されてから、つぎの光パケット426が光スイッチ150へ到達するまでの期間T32bにおいて光スイッチ150をオンからオフに切り替える。これにより、光パケット425の先頭から末尾までを光スイッチ150から出力させるとともに、光パケット425の前後の光パケット424,426は光スイッチ150から出力させないようにすることができる。
【0055】
図5は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。制御部160は、たとえば図5に示す各ステップを繰り返し実行する。なお、図5に示す各ステップの実行前は、光スイッチ150はオフ(光を通さない状態)になっているとする。まず、制御部160は、光遅延装置100への光パケットの入力タイミングと、入力される光パケットに与えるべき遅延時間と、が通知されたか否かを判断し(ステップS501)、通知されるまで待つ(ステップS501:Noのループ)。入力タイミングおよび遅延時間は、たとえば光遅延装置100を管理する外部のスケジューラなどから通知される。
【0056】
ステップS501において、入力タイミングと遅延時間が通知されると(ステップS501:Yes)、制御部160は、通知された入力タイミングから、通知された遅延時間が経過したか否かを判断する(ステップS502)。そして、制御部160は、所定の遅延時間が経過するまで待つ(ステップS502:Noのループ)。
【0057】
ステップS502において、遅延時間が経過すると(ステップS502:Yes)、制御部160は、光スイッチ150をオンにする(ステップS503)。つぎに、制御部160は、ステップS503によって光スイッチ150をオンにしてから一定時間が経過したか否かを判断し(ステップS504)、一定時間が経過するまで待つ(ステップS504:Noのループ)。この一定時間とは、所定の遅延時間を有した光パケットの信号の先頭から末尾までを光スイッチから通過させるための時間であり、たとえばその装置仕様で定まっている光パケットの最長のスロット時間が好ましい。なお、光パケットの最長のスロット時間は、あらかじめ光遅延装置100のメモリに記憶されていてもよいし、スケジューラなどから通知されてもよい。
【0058】
ステップS504において、一定時間が経過すると(ステップS504:Yes)、制御部160は、光スイッチ150をオフにし(ステップS505)、一連の処理を終了する。以上の各ステップにより、通知された遅延時間だけ遅延させた光パケットを出力することができる。
【0059】
図6は、光遅延装置を備える光遅延回路の装置構成の基本構成例の概略を示す図である。図6に示すように、光遅延回路600は、分岐部610と、遅延部620と、光電変換部630と、光遅延装置100と、を備えている。分岐部610は、光遅延回路600へ入力された光パケットを分岐する。分岐部610は、分岐した各光パケットをそれぞれ遅延部620および光電変換部630へ出力する。遅延部620は、分岐部610から出力された光パケットを一定時間遅延させて光遅延装置100へ出力する。
【0060】
光遅延装置100の前段に遅延部620と分岐部610を設置しておくことで、光パケット信号が光遅延装置に入力する前に、光電変換部630でその光パケット信号情報を取り出した光パケット信号情報に応じた処理を光遅延装置100に通知(指示)することができる。
【0061】
光電変換部630(O/E)は、分岐部610から出力された光パケットを電気信号に変換し、変換した電気信号を光遅延装置100へ出力する。光遅延装置100は、たとえば図1に示した光遅延装置100である。光遅延装置100は、遅延部620から出力された光パケットを所定の遅延時間によって遅延させて出力する。
【0062】
たとえば、光遅延装置100の制御部160は、光電変換部630から出力された電気信号に基づいて光パケットの入力タイミングおよび遅延時間を取得し、取得した入力タイミングおよび遅延時間に基づいて光パケットを遅延させて出力する。遅延部620における光パケットの遅延時間は、たとえば、光遅延装置100へ入力される光パケットに対して、光電変換部630を経由して行われる遅延の制御が間に合うように設定する。
【0063】
なお、図6に示した光遅延装置100を備える光遅延回路600の装置構成は一例であり、光遅延装置100の構成はこのような構成に限らない。
【0064】
図7−1は、光遅延装置を備える光回路の構成例1を示す図である。図7−1に示すように、光回路700は、M(Mは1以上の自然数)個の分岐部711〜71Mと、M個の遅延部721〜72Mと、マトリックス光スイッチ730と、M個の光電変換部741〜74Mと、スケジューラ750と、N個(Nは1以上でM以下の自然数)の光遅延装置761〜76Nと、光カプラ770と、を備えている。
【0065】
光回路700には、M本の経路から光パケットが入力されるとする。分岐部711〜71Mは、それぞれM本の経路に対応して設けられている。分岐部711は、対応する経路から入力された光パケットを分岐し、分岐した各光パケットをそれぞれ遅延部721および光電変換部741へ出力する。同様に、分岐部712〜71Mは、それぞれ対応する経路から入力された光パケットを分岐し、分岐した各光パケットをそれぞれ遅延部722〜72Mおよび光電変換部742〜74Mへ出力する。
【0066】
遅延部721〜72Mは、それぞれ分岐部711〜71Mから出力された光パケットを一定時間遅延させてマトリックス光スイッチ730へ出力する。マトリックス光スイッチ730は、遅延部721〜72Mから出力される各光パケットを、光遅延装置761〜76Nのうちの任意の光遅延装置へ出力するM×Nの光経路スイッチ(光クロスコネクト)である。マトリックス光スイッチ730における経路切替は、たとえばスケジューラ750によって制御される。
【0067】
光電変換部741〜74Mは、それぞれ分岐部711〜71Mから出力された光パケットを電気信号に変換し、電気信号に変換したパケットをスケジューラ750へ出力する。スケジューラ750は、光電変換部741〜74Mから出力された各光パケットに基づいて、マトリックス光スイッチ730における経路切替および光遅延装置761〜76Nにおける光パケットの遅延時間を制御する。たとえば、スケジューラ750は、光電変換部741〜74Mから出力された各光パケットに含まれるヘッダ情報などに基づいて各経路の光パケットの優先度を取得し、取得した優先度に基づいて各制御を行う。
【0068】
光遅延装置761〜76Nのそれぞれは、マトリックス光スイッチ730から出力された光パケットを所定の遅延時間だけ遅延させ、遅延させた光パケットを光カプラ770へ出力する。光遅延装置761〜76Nのそれぞれの遅延時間はスケジューラ750によって制御される。光遅延装置761〜76Nのそれぞれには、たとえば図1に示した光遅延装置100を適用することができる。
【0069】
光カプラ770は、光遅延装置761〜76Nから出力される光パケットを合波して出力するN×1の合波器である。スケジューラ750は、たとえば、光カプラ770において光パケットが衝突しないように光遅延装置761〜76Nのそれぞれの遅延時間を調整する。光遅延装置761〜76Nによれば、たとえば光パケットのスロット長の単位で遅延時間を調整することができるため、光カプラ770において光パケットが衝突しないように容易に制御することができる。
【0070】
図7−2は、図7−1に示した光回路による光パケットの制御の一例を示す図である。図7−2において、図7−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図7−2に示すように、光回路700に対して、各経路から光パケット701〜703が入力されたとする。また、光パケット701〜703の各ヘッダには、光パケット703,702,701の順に高い優先順位が設定されていたとする。
【0071】
この場合は、スケジューラ750は、たとえば光パケット701〜703をそれぞれ光遅延装置761,762,76Nへ入力するようにマトリックス光スイッチ730を制御する。また、スケジューラ750は、光遅延装置761,762,76Nの順に長い遅延時間を設定する。これにより、光カプラ770の出力は光パケット703,702,701の順になり、優先順位にしたがって各パケットの順序を制御することができる。また、光パケット703,702,701が衝突しないようにすることができる。
【0072】
図7−1,図7−2に示したように、光回路700においては、光遅延装置761〜76Nから出力される各光信号を光カプラ770(合波部)によって合波する。そして、スケジューラ750(決定部)は、光カプラ770において各光信号が衝突しないように、光遅延装置761〜76Nにおける遅延時間をそれぞれ決定する。光遅延装置761〜76Nのそれぞれの制御部160は、スケジューラ750によって決定された遅延時間によって光信号を遅延させる。
【0073】
図8−1は、光遅延装置を備える光回路の構成例2を示す図である。図8−1に示すように、光回路800は、分岐部811,812と、遅延部821,822と、波長分離部831,832と、光電変換部841,842と、スケジューラ850と、n個(nは1以上の自然数)の光遅延装置861〜86nと、n個の光遅延装置871〜87nと、マトリックス光スイッチ880と、波長多重部891,892と、を備えている。
【0074】
分岐部811,812のそれぞれには、波長が異なる複数の光パケットを多重化した波長多重光が入力される。分岐部811は、入力された波長多重光を分岐し、分岐した各波長多重光をそれぞれ遅延部821および光電変換部841へ出力する。分岐部812は、入力された波長多重光を分岐し、分岐した各波長多重光をそれぞれ遅延部822および光電変換部842へ出力する。
【0075】
遅延部821は、分岐部811から出力された波長多重光を一定時間遅延させて波長分離部831へ出力する。遅延部822は、分岐部812から出力された波長多重光を一定時間遅延させて波長分離部832へ出力する。波長分離部831は、遅延部821から出力された波長多重光を波長ごとの各光パケットに分離し、分離した各光パケットをそれぞれ光遅延装置861〜86nへ出力する。波長分離部832は、遅延部822から出力された波長多重光を波長ごとの各光パケットに分離し、分離した各光パケットをそれぞれ光遅延装置871〜87nへ出力する。
【0076】
光電変換部841,842は、それぞれ分岐部811,812から出力された波長多重光を電気信号に変換し、電気信号に変換した信号をスケジューラ850へ出力する。スケジューラ850は、光電変換部841,842から出力された各波長多重信号に基づいて、光遅延装置861〜86n,871〜87nにおける光パケットの遅延時間およびマトリックス光スイッチ880における経路切替を制御する。たとえば、スケジューラ850は、光電変換部841,842から出力された各信号に含まれるヘッダ情報などに基づいて各光パケットの優先度を取得し、取得した優先度に基づいて各制御を行う。
【0077】
光遅延装置861〜86nのそれぞれは、波長分離部831から出力された光パケットを所定の遅延時間だけ遅延させ、遅延させた光パケットをマトリックス光スイッチ880へ出力する。光遅延装置871〜87nのそれぞれは、波長分離部832から出力された光パケットを所定の遅延時間だけ遅延させ、遅延させた光パケットをマトリックス光スイッチ880へ出力する。光遅延装置861〜86n,871〜87nのそれぞれの遅延時間はスケジューラ850によって制御される。光遅延装置861〜86n,871〜87nのそれぞれには、たとえば図1に示した光遅延装置100を適用することができる。
【0078】
マトリックス光スイッチ880は、光遅延装置861〜86n,871〜87nから出力される各光パケットを、波長多重部891,892のうちの任意の波長多重部の入力部へ出力する光経路スイッチ(光クロスコネクト)である。マトリックス光スイッチ880における経路切替は、たとえばスケジューラ850によって制御される。
【0079】
波長多重部891,892のそれぞれは、マトリックス光スイッチ880から出力される各光パケットを多重化し、多重化により得られた波長多重光を出力する。スケジューラ850は、たとえば、波長多重部891,892において同一波長の光パケットが衝突しないように光遅延装置861〜86n,871〜87nのそれぞれの遅延時間を調整する。光遅延装置861〜86n,871〜87nによれば、たとえば光パケットのスロット長の単位で遅延時間を調整することができるため、波長多重部891,892において同一波長の光パケットが衝突しないように容易に制御することができる。
【0080】
図8−2は、図8−1に示した光回路による光パケットの制御の一例を示す図である。図8−2において、図8−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図8−2に示すように、光回路800に対して、分岐部811,812にそれぞれ光パケット801,802が入力されたとする。光パケット801,802の宛先はともに波長多重部892の出力に接続されているとする。また、光パケット801,802の各ヘッダには、光パケット801,802の順に高い優先順位が設定されていたとする。また、光パケット801,802の波長はともにλ2であり、光パケット801,802はそれぞれ光遅延装置862,872へ入力されるとする。
【0081】
この場合は、スケジューラ850は、光遅延装置862の遅延時間を光遅延装置872より短く設定する。また、スケジューラ850は、光遅延装置862,872から出力される光パケット801,802をともに波長多重部892へ出力するようにマトリックス光スイッチ880を制御する。これにより、波長多重部892の出力は光パケット801,802の順になり、優先順位にしたがって各パケットの順序を制御することができる。また、同一波長の光パケット801,802が衝突しないようにすることができる。
【0082】
図8−1,図8−2に示したように、光回路800においては、光遅延装置861〜86n,871〜87nから出力される各光信号を波長多重部891,892(合波部)によって合波する。スケジューラ850(決定部)は、波長多重部891,892において各光信号が衝突しないように、光遅延装置861〜86n,871〜87nにおける遅延時間をそれぞれ決定する。光遅延装置861〜86n,871〜87nのそれぞれの制御部160は、スケジューラ850によって決定された遅延時間によって光信号を遅延させる。
【0083】
このように、実施の形態1にかかる光遅延装置100は、光が同一の経路を繰り返し通過する光経路r1へ光パケットを入力し、入力してから所定の遅延時間が経過した時点で光経路r1の光パケットを光スイッチ150から出力する。具体的には、光経路r1は、入力された光の一部を透過させる一部透過のミラー120を含む。光スイッチ150は、光経路r1からミラー120を透過して出力される光パケットのオン/オフを切り替える。これにより、小規模な構成で光パケットに所定の遅延時間を与えることができる。
【0084】
たとえば、設定可能な遅延時間ごとに長距離の光経路を設け、光スイッチによって光パケットを各経路に振り分ける構成に比べて、光遅延装置100は小規模な構成によって実現することができる。このため、たとえば光回路700や光回路800のような光遅延装置を含む光回路を小規模にすることができる。また、たとえば、光パケットをループさせながら変調し、変調による波長の変化によりループから光パケットを取り出す構成に比べて、光遅延装置100は、光パケットの波長に依存せずに光パケットを遅延させることができる。
【0085】
また、光遅延装置100は、光経路r1に設けられ、光パケットを遅延させる遅延線130を備えることで、光経路r1の光路長を確保しつつ光経路r1を小型化することができる。このため、光遅延装置100の小型化を図ることができる。また、光経路r1が、光パケットの最大の時間長(スロット長)によって光が進む光路長以上の光路長を有することで、光パケットの異なる部分同士(たとえば先頭と末尾)が衝突することによる光パケットの劣化を抑えることができる。
【0086】
また、制御部160は、光スイッチ150をオンにする場合に、光パケットの時間長だけ光スイッチ150をオンにする。これにより、特定の遅延時間(反射回数)の光パケット以外の光パケットが出力されることを回避し、出力される光パケットの劣化を抑えることができる。また、一部透過のミラー120に対して光パケットを垂直に入射する構成とすることができるため、たとえば、波長依存性、偏波依存性、偏波モード分散などを抑えることができる。このため、伝送品質の低下を抑えることができる。
【0087】
(実施の形態2)
図9−1は、実施の形態2にかかる光遅延装置の構成例を示す図である。図9−1において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図9−1に示すように、実施の形態2にかかる光遅延装置100は、図1に示した光スイッチ150に代えてSOA910を備えている。サーキュレータ110は、ミラー120から出力された光パケットをSOA910へ出力する。
【0088】
SOA910は、サーキュレータ110から出力された光を可変の増幅率によって増幅する半導体光増幅器である。SOA910の増幅率は、制御部160から出力される駆動電流によって制御される。制御部160は、SOA910へ出力する駆動電流によってSOA910の増幅率を制御する。
【0089】
たとえば、駆動電流をオフにすることでSOA910の増幅率がゼロになると、サーキュレータ110から出力された光を遮断(オフ)することができる。また、駆動電流をオンにすることでSOA910の増幅率がゼロより大きくなると、サーキュレータ110から出力された光を出力(オン)することができる。また、駆動電流の大きさを制御することでSOA910の増幅率を変化させることができる。
【0090】
このように、SOA910を用いることで、光のオン/オフを切り替える機能とともに、光を可変の増幅率によって増幅させることができる。これにより、光パケットが光経路r1を往復することによる光パケットの低下を補償することができる。また、駆動電流に対するSOA910の増幅率の応答は高速(たとえば[ns]オーダ)であるため、光のオン/オフの切り替えを高速に行うことができる。このため、特定の往復回数の光パケットをSOA910から精度よく出力することができる。
【0091】
たとえば、光遅延装置100のメモリには、光パケットに与える遅延時間と、SOA910の駆動電流の値と、を対応付ける対応情報(たとえばテーブルや計算式)が記憶されている。対応情報においては、たとえば、長い遅延時間ほど大きな駆動電流の値が対応付けられている。制御部160は、光パケットに与える遅延時間と、光遅延装置100のメモリに記憶された対応情報と、に基づいてSOA910における駆動電流の値を取得する。そして、制御部160は、取得した値の駆動電流をSOA910へ入力する。
【0092】
このように、制御部160は、たとえば、光パケットに与える遅延時間が長いほどSOA910の増幅率を大きくするようにSOA910を制御する。これにより、光パケットが光経路r1を往復することによる光パケットのパワーの低下を抑え、光パケットの伝送特性を高い品質に維持することができる。
【0093】
図9−2は、図9−1に示した光遅延装置の変形例を示す図である。図9−2において、図9−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図9−2に示すように、光遅延装置100は、図9−1に示した構成に加えて、分岐部921と、光電変換部922と、を備えていてもよい。分岐部921は、サーキュレータ110から出力される光パケットを分岐し、分岐した各光パケットをそれぞれSOA910および光電変換部922へ出力する。
【0094】
光電変換部922は、分岐部921から出力された光パケットを光電変換し、光パケットのパワーを示す信号を制御部160へ出力する。制御部160は、光電変換部922から出力された信号に基づいて、SOA910へ入力される光パケットのパワーを取得する。そして、制御部160は、取得したパワーに基づいてSOA910の増幅率を変化させる。
【0095】
たとえば、光遅延装置100のメモリには、光電変換部922から出力された信号に基づいて取得されるパワーと、SOA910の駆動電流の値と、を対応付ける対応情報(たとえばテーブルや計算式)が記憶されている。対応情報においては、たとえば、小さなパワーほど大きな駆動電流の値が対応付けられている。制御部160は、光電変換部922から出力された信号に基づいて取得したパワーと、光遅延装置100のメモリに記憶された対応情報と、に基づいてSOA910における駆動電流の値を取得する。そして、制御部160は、取得した値の駆動電流をSOA910へ入力する。
【0096】
この光回路構成では、図2−3に示したように、所定の遅延時間を長くとると、光パワーは小さくなるため、この小さくなった分、SOA910の増幅率を大きくすればいいことが分かる。たとえば、光電変換部922でモニタした信号に基づいてその光パワーの減少をキャッチして、その結果に基づいてSOA910の駆動電力を大きくするように制御するのが好ましい。
【0097】
図9−1または図9−2に示した光遅延装置100によれば、SOA910から出力される光パケットのパワーを、遅延時間にかかわらず所定の一定値に制御することができる。これにより、出力される光パケットの光レベルが小さ過ぎてSN比(Signal Noise Ratio:信号雑音比)が劣化することを回避することができる。また、出力される光パケットの光レベルが大き過ぎて非線形効果の影響により伝送特性が劣化することを回避することができる。このため、光パケットの伝送特性を高い品質に維持できる。
【0098】
ただし、制御部160による制御は、SOA910から出力されるパワーを一定にする制御に限らない。たとえば、制御部160は、SOA910から出力されるパワーを、光遅延装置100へ入力されたときのパワーより大きくするように制御してもよい。これにより、光遅延装置100に光パケットの増幅機能を持たせることができる。このため、たとえば光遅延装置100の前段におけるパワーの低下などを補償することもできる。
【0099】
図10は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。図9−2に示した制御部160は、たとえば図10に示す各ステップを繰り返し実行する。なお、図10に示す各ステップの実行前は、SOA910はオフになっているとする。図10に示すステップS1001,S1002は、図5に示したステップS501,S502と同様である。ステップS1002において遅延時間が経過すると(ステップS1002:Yes)、制御部160は、光電変換部922からモニタされる情報を取得する(ステップS1003)。
【0100】
ステップS1003によって取得した情報に基づいて、所定の光パワーがSOA910から出力されるようにSOA910の駆動電流を制御する(ステップS1004)。つぎに、制御部160は、ステップS1004によって駆動電流を制御してから一定時間が経過したか否かを判断し(ステップS1005)、一定時間が経過するまで待つ(ステップS1005:Noのループ)。
【0101】
ステップS1005において、一定時間が経過すると(ステップS1005:Yes)、制御部160は、SOA910の駆動電流をゼロにし(ステップS1006)、一連の処理を終了する。以上の各ステップにより、通知された遅延時間だけ遅延させた光パケットを出力するとともに、SOA910へ入力される光パケットのパワーに応じて光パケットを増幅して出力することができる。
【0102】
このように、実施の形態2にかかる光遅延装置100によれば、実施の形態1にかかる光遅延装置100と同様の効果を奏するとともに、光経路r1の光パケットをSOA910から出力することができる。これにより、光経路r1において往復することによって低下した光パケットのパワーを補償することができる。また、駆動電流のオン/オフが高速なSOA910を用いることで、特定の往復回数の光パケットをSOA910から精度よく出力し、光パケットの品質を向上させることができる。なお、SOA910の入出力側には光の進行方向が一定に保つように、アイソレータを適用することが好ましい。ただし、本光回路構成ではSOA910の入力側には既にサーキュレータが備えてあるため、アイソレータは出力側だけでもよい。
【0103】
また、実施の形態2にかかる光遅延装置100は、図6に示した光遅延回路600の光遅延装置100や、図7−1〜図8−2に示した光回路700,800の光遅延装置761〜76N,861〜86n,871〜87nなどに適用することもできる。
【0104】
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3にかかる光遅延装置の構成例を示す図である。図11において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図11に示すように、実施の形態3にかかる光遅延装置100は、図1に示した構成に加えて、光経路r1に設けられたSOA1110を備えている。図11に示す例では、SOA1110はミラー120と遅延線130との間に設けられている。ただし、SOA1110は遅延線130とミラー140との間に設けられていてもよい。
【0105】
SOA1110は、光経路r1を往復する光パケットを増幅する。ここで、SOA1110は可逆性があるため、SOA1110へ駆動電流を供給している間は、光経路r1を往復する光パケットは、SOA1110を双方向に通過する。
【0106】
制御部160は、光パケットが光経路r1へ入力されると、SOA1110をオンにする。これにより、光パケットは、SOA1110を双方向に通過しながら光経路r1を往復する。このため、たとえばSOA1110の増幅率を1以上にすれば、光パケットがミラー120において反射するごとに低下するパワーを補償することも可能である。
【0107】
また、制御部160は、光スイッチ150をオンにして光パケットを出力する際に、出力すべき光パケットが光スイッチ150によって反射してSOA1110を通過した後にSOA1110をオフにする。これにより、所定の遅延時間を有した光パケットだけを出力できるとともに、光経路r1に残った光パケットをSOA1110によって遮断することができる(SOA1110の媒体に光は吸収され、熱として周りに放出される)。
【0108】
SOA1110によって吸収された光パケットは熱となって光経路r1からなくなる。このため、光パケットを出力後も光パケットが光経路r1に残り、光遅延装置100へつぎに入力される光パケットと衝突することを回避することができる。このため、上述の図1や図9よりも優れた好ましい光回路構造と言える。
【0109】
ここで、増幅媒体であるSOA1110が反射媒体であるミラー120とミラー140とにはさまれているため、物理現象として発振が生じることがある(たとえば、GをSOA1110の増幅率、R1,R2をそれぞれミラー120,140の反射率とすると、G√R1R2>0の場合)。図11のようにSOA1110を双方向の光路として用いる場合には、SOA1110の入出力側にアイソレータを挿入できない構成となるため、SOA1110の利得を大きくするとこの発振の現象が生じてしまう。従って、図11のSOA1110の利得は、図9と比べて小さいという特徴がある。図9で用いるSOA910はその入出力側にアイソレータを挿入できるので発振の影響を生じさせずに利得を大きくできる。
【0110】
たとえば図11のSOA1110について、制御部160は、SOA1110の利得を、光経路r1を往復する光パケットのパワーを一定にする利得以下に設定するとよい。たとえば、ミラー120の透過率が50%の場合は、光パワーが3[dB]小さくなることと等価のため、SOA1110の利得は3[dB]以下に設定する。これにより、光経路r1における利得は1となり(増幅もしないし減少もしない)、ミラー120による光パワー減少を補償しつつも、光経路r1における発振を抑え、高い品質を維持することができる。
【0111】
たとえば、SOA1110の利得を、光経路r1を往復する光パケットのパワーを一定にするように設定する。これにより、光パケットがミラー120において反射するごとに低下する光パケットのパワーを補償するとともに、発振を抑えて光伝送特性を向上させることができる。
【0112】
なお、一般的なSOAはその用途から利得は10[dB]以上がのぞまれているが、本発明の図11で用いるSOA1110は、上述のように、r1範囲において利得は1(増幅もしないし減少もしない)のように小さい利得で動作させる。そこで、SOA1110の利得をたとえば3[dB]以下のように小さく設定するため、SOA1110半導体チップ長は一般的なSOAよりも短くて済む。また、SOA1110の利得をたとえば3[dB]以下のように小さく設定するため、SOA1110のPDL(偏向依存性)も小さくて済む為、好都合である。
【0113】
図12は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。図11に示した制御部160は、たとえば図5に示す各ステップを繰り返し実行する。なお、図12に示す各ステップの実行前は、光スイッチ150およびSOA1110はオフになっているとする。まず、制御部160は、光遅延装置100への光パケットの入力タイミングと、入力される光パケットに与えるべき遅延時間と、が通知されたか否かを判断し(ステップS1201)、通知されるまで待つ(ステップS1201:Noのループ)。
【0114】
ステップS1201において、入力タイミングと遅延時間が通知されると(ステップS1201:Yes)、制御部160は、ミラー間(ミラー120,140の間)のSOA1110をオンにする(ステップS1202)。これにより、光遅延装置100へ入力された光パケットが、ミラー120とミラー140との間でSOA1110を繰り返し通過するようになる。なお、制御部160は、ステップS1201において通知された入力タイミングになるのを待ってからSOA1110をオンにしてもよい。
【0115】
図12に示すステップS1203〜S1205は、図5に示したステップS503〜S505と同様である。ステップS1205において、一定時間が経過すると(ステップS1205:Yes)、制御部160は、ミラー間(ミラー120,140の間)のSOA1110をオフにする(ステップS1206)。また、制御部160は、光スイッチ150をオフにし(ステップS1207)、一連の処理を終了する。なお、ステップS1206とステップS1207の順序は逆でもよい。
【0116】
以上の各ステップにより、通知された遅延時間だけ遅延させた光パケットを出力することができるとともに、ミラー120とミラー140との間に残った光パケットをSOA1110によって吸収することができる。このため、光経路r1に光パケットが残り、つぎに光遅延装置100へ入力される光パケットと衝突することを回避することができる。
【0117】
このように、実施の形態3にかかる光遅延装置100によれば、光スイッチ150から光パケットを出力した後に光経路r1の内部に残る光パケットをSOA1110によって吸収することができる。これにより、実施の形態1にかかる光遅延装置100と同様の効果を奏するとともに、光伝送特性の劣化を抑えることができる。また、SOA1110によって光パケットを増幅することで、光経路r1を往復することによる光パケットのパワーの低下を補償することも可能である。
【0118】
また、実施の形態3にかかる光遅延装置100は、図6に示した光遅延回路600の光遅延装置100や、図7−1〜図8−2に示した光回路700,800の光遅延装置761〜76N,861〜86n,871〜87nなどに適用することもできる。また、実施の形態3にかかる光遅延装置100において、光スイッチ150に代えてSOA910(図9−1,図9−2参照)を設ける構成としてもよい。
【0119】
(実施の形態4)
図13は、実施の形態4にかかる光遅延装置の構成例1を示す図である。図13において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図13に示すように、実施の形態4にかかる光遅延装置100は、図1に示したミラー120に代えて、ミラー1310と、経路スイッチ1320と、を備えている。
【0120】
ミラー1310は、経路スイッチ1320から出力された光パケットを経路スイッチ1320へ反射させる。ミラー1310の反射率は、たとえば理想的には100%である。サーキュレータ110は、光遅延装置100へ入力された光パケットを経路スイッチ1320へ出力する。また、サーキュレータ110は、経路スイッチ1320から出力された光パケットを光スイッチ150へ出力する。
【0121】
経路スイッチ1320は、第1経路1321と第2経路1322とを切り替え可能な経路スイッチである。経路スイッチ1320は、第1経路1321に設定された場合は、サーキュレータ110から出力された光パケットを遅延線130へ出力するとともに、遅延線130から出力された光パケットをサーキュレータ110へ出力する。また、経路スイッチ1320は、第2経路1322に設定された場合は、遅延線130から出力された光パケットをミラー1310へ出力するとともに、ミラー1310から出力された光パケットを遅延線130へ出力する。
【0122】
この光回路構成に用いる経路スイッチ1320も、第1経路1321で光パケット信号を遅延線130に導きつつ、光パケット信号の先頭から末尾までが遅延線130にいる時間内で、第1経路1321から第2経路1322に切り替えて、光パケット信号をミラー1310とミラー140の間に閉じ込めるために、その応答に高速性がのぞまれる。たとえば、経路スイッチ1320には、たとえば、鉛(Pb)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の酸化化合物を用いたPLZT光スイッチや、マッハツェンダ型光スイッチなどを用いることができる。これにより、第1経路1321と第2経路1322とを高速(たとえばナノ秒オーダ)に切り替えることができる。
【0123】
したがって、ミラー1310、経路スイッチ1320の第2経路1322、遅延線130およびミラー140は、入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する光経路r1を形成する。この場合は、サーキュレータ110および経路スイッチ1320の第1経路1321は、遅延対象の光パケットを光経路r1へ入力する入力部となる。
【0124】
制御部160は、光遅延装置100へ光パケットが入力されると、経路スイッチ1320を第1経路1321に切り替える。これにより、光パケットが第1経路1321を通過して光経路r1へ入力される。光パケットが経路スイッチ1320を通過すると、制御部160は、経路スイッチ1320を第2経路1322に切り替える。これにより、光パケットは、ミラー1310とミラー140との間を往復する。
【0125】
光パケットが経路スイッチ1320を通過する時点は、たとえば、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから一定の時間が経過した時点である。一定の時間は、光遅延装置100へ入力された光パケットが遅延線130を通過するまでの光路長によって決まる時間(固定値)であり、たとえばあらかじめ光遅延装置100のメモリに記憶される。
【0126】
また、制御部160は、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点で経路スイッチ1320を第1経路1321に切り替える。これにより、光経路r1を往復していた光パケットが第1経路1321を通過してサーキュレータ110へ出力され、サーキュレータ110から光スイッチ150へ出力される。また、制御部160は、光スイッチ150をオン(出力状態)に切り替える。これにより、光スイッチ150へ入力される光パケットのうちの、所定の遅延時間が与えられた光パケットを出力させることができる。
【0127】
また、制御部160は、経路スイッチ1320を第1経路1321に切り替えることによって光パケットを光経路r1へ入力した後に、経路スイッチ1320を第1経路1321に維持してもよい。この場合は、光経路r1へ入力された光パケットは、ミラー140によって反射し、第1経路1321を通過してサーキュレータ110へ出力され、サーキュレータ110から光スイッチ150へ出力される。この場合は、光パケットは、最小の遅延時間を与えられて出力される。
【0128】
図13に示した光遅延装置100においては、光経路r1において一部透過の反射媒体を用いていないため(理想的に100%反射を用いているため)、光経路r1を往復する光パケットが挿入損失をほとんど受けない。このため、光パケットが光経路r1を往復する回数が多くても、光パケットのパワーはほとんど低下しない。このため、光遅延装置100は、入力された光パケットを、所定の遅延時間を与えつつ、ほとんど劣化させずに出力することができるため、図1より好ましい光回路構造と言える。
【0129】
また、経路スイッチ1320を第2経路1322から第1経路1321に切り替えて光パケットを出力することで、特定の遅延時間を与えた光パケットを光スイッチ150から出力した後に、光経路r1には光パケットが残らない。このため、光経路r1に光パケットが残り、光遅延装置100へつぎに入力される光パケットと衝突することを回避することができる。このため、図9よりも好ましい光回路構造と言える。
【0130】
図14は、図13の光回路構造を用いた場合の光パケットの反射回数とパワーとの関係の一例を示すイメージ図である。図14において、図2−3に示した部分と同様の部分については説明を省略する。図14の座標点1401〜1406に示すように、図13に示した光遅延装置100においては、ミラー1310とミラー140との間の光経路r1を光パケットが往復する回数によらず、光パケットのパワーがほぼ一定になる。このため、光遅延装置100は、入力された光パケットを、所定の遅延時間を与えつつ、ほとんど劣化させずに出力することができる。
【0131】
図15は、制御部による制御の一例を示すフローチャートである。図13に示した制御部160は、たとえば図15に示す各ステップを繰り返し実行する。なお、図15に示す各ステップの実行前は、光スイッチ150はオフになっており、経路スイッチ1320は第1経路1321に設定されているとする。まず、制御部160は、光遅延装置100への光パケットの入力タイミングと、光遅延装置100へ入力される光パケットに与えるべき遅延時間と、が通知されたか否かを判断し(ステップS1501)、通知されるまで待つ(ステップS1501:Noのループ)。
【0132】
ステップS1501において、入力タイミングと遅延時間が通知されると(ステップS1501:Yes)、制御部160は、入力された光パケットが経路スイッチ1320を通過する時点を過ぎたか否かを判断する(ステップS1502)。そして、制御部160は、光パケットが経路スイッチ1320を通過する時点を過ぎるまで待つ(ステップS1502:Noのループ)。
【0133】
ステップS1502において、光パケットが経路スイッチ1320を通過する時点を過ぎると(ステップS1502:Yes)、制御部160は、経路スイッチ1320を第1経路1321から第2経路1322へ切り替える(ステップS1503)。つぎに、制御部160は、ステップS1501において通知された入力タイミングから、通知された遅延時間が経過したか否かを判断し(ステップS1504)、遅延時間が経過するまで待つ(ステップS1504:Noのループ)。遅延時間が経過すると(ステップS1504:Yes)、制御部160は、経路スイッチ1320を第2経路1322から第1経路1321へ切り替える(ステップS1505)。
【0134】
図15に示すステップS1506〜S1508は、図5に示したステップS503〜S505と同様である。以上の各ステップにより、通知された遅延時間だけ遅延させた光パケットを出力することができるとともに、光パケットのパワーをほとんど低下させないようにすることができる。また、光経路r1に光パケットが残らないようにすることができる。このため、光経路r1に光パケットが残り、つぎに光遅延装置100へ入力される光パケットと衝突することを回避することができる。
【0135】
このように、実施の形態4にかかる光遅延装置100によれば、光が同一の経路を繰り返し通過する光経路r1へ光パケットを入力し、入力してから所定の遅延時間が経過した時点で光経路r1の光パケットを光スイッチ150から出力する。具体的には、第1経路1321と第2経路1322とに切り替え可能な経路スイッチ1320を備える。
【0136】
第1経路1321は、光パケットを光経路r1へ入力し、光経路r1から光パケットを出力する経路である。第2経路1322は、光経路r1へ入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する経路である。また、光スイッチ150は、非出力状態では光経路r1から第1経路1321により出力される光パケットのオン/オフを切り替える。これにより、小規模な構成で光パケットに所定の遅延時間を与えることができる。
【0137】
このため、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、出力する光パケットのパワーの低下を抑えることができる。このため、伝送品質を向上させることができる。また、光経路r1にSOA1110を設けなくても、光経路r1に光パケットが残ることを回避することができる。
【0138】
(実施の形態5)
図16は、実施の形態5にかかる光遅延装置の構成例1を示す図である。図16において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図16に示すように、実施の形態5にかかる光遅延装置100は、図1に示した遅延線130に代えて、励起光源1610と、合波器1620と、増幅媒体1630と、を備えている。励起光源1610は、励起光を生成して合波器1620へ出力する。励起光源1610が生成する励起光は、増幅媒体の希土類を励起するための用途であり、増幅媒体がエルビウムドープ光ファイバの場合は0.98[μm]や1.48[μm]の波長であることが望ましい。
【0139】
合波器1620は、サーキュレータ110から出力された光パケットと、励起光源1610から出力された励起光と、を合波してミラー120へ出力する。また、合波器1620は、ミラー120から出力された光パケットをサーキュレータ110へ出力する。ミラー120は、合波器1620から出力された光パケットの一部を合波器1620へ反射させ、残りの光パケットを増幅媒体1630へ透過させる。また、ミラー120は、増幅媒体1630から出力された光パケットの一部を増幅媒体1630へ反射させ、残りの光パケットを合波器1620へ透過させる。
【0140】
増幅媒体1630は、たとえば巻いたEDF(Erbium Doped Fiber:希土類ドープ光ファイバ)によって実現された遅延線である。増幅媒体1630は、ミラー120から出力された光パケットを所定の時間遅延させ、遅延させた光パケットをミラー140へ出力する。また、増幅媒体1630は、ミラー140から出力された光パケットの時間遅延させ、遅延させた光パケットをミラー120へ出力する。また、増幅媒体1630は、励起光と合波されて通過する光パケットを、励起光に応じて増幅する。
【0141】
一般的な希土類ドープ光ファイバ増幅器に適用されている希土類ドープ光ファイバは、一般的に数十メートルであり、その希土類ドープ濃度は1000[ppm]程度であるが、本発明に適用する増幅媒体1630は遅延線としての機能を有するため、長い距離を有することが条件になる(上述したように少なくとも往復で光パケット1スロット分以上の光路長が必要)。そこで、たとえば100[m]必要となり、一般的な光増幅器に用いられている光増幅媒体長よりも一桁長い。そこで、一般的な光増幅器と同じように良好な増幅特性を得ようとすると、一般的な光増幅媒体に比べて長さが一桁長い分、その光増幅媒体への希土類ドープ濃度は一桁薄くなる。増幅媒体1630をEDFによって実現することで、光パケットを低雑音かつ高利得で増幅することができる。これにより、光経路r1を光パケットが往復することによる光パケットのパワーの低下を高品質に補償することが可能になる。
【0142】
光パケットのパワーの低下を補償することで、光通信システムの全体の光伝送特性の向上を図ることができる。また、光遅延装置100によって光パケットを増幅することで、光通信システムに設ける光増幅器の数を削減することも可能である。なお、ここでは増幅媒体1630の前段に合波器1620を設ける構成について説明したが、このような構成に限らず、合波器1620の挿入位置は限定しないし、各種の励起方法(前方励起、後方励起、双方向励起、クラッド励起など)を適用することができる。また、光経路r1として希土類ドープ光ファイバを実施例に挙げたが、光ファイバよりも屈折率の高いEDW(希土類ドープ導波路)も必要な光路長を短くできるため将来的に候補になる可能性が考えられる。
【0143】
図17は、実施の形態5にかかる光遅延装置の構成例2を示す図である。図17において、図11または図16に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図17に示すように、実施の形態5にかかる光遅延装置100は、図11に示した遅延線130に代えて、励起光源1610と、合波器1620と、増幅媒体1630と、を備えている。このように、励起光源1610、合波器1620および増幅媒体1630を、実施の形態3にかかる光遅延装置100に適用してもよい。
【0144】
図18は、実施の形態5にかかる光遅延装置の構成例3を示す図である。図18において、図16に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図18に示すように、実施の形態5にかかる光遅延装置100においては、図11に示したミラー120および合波器1620を光フィルタ1810によって実現してもよい。
【0145】
励起光源1610は、励起光を生成して光フィルタ1810へ出力する。光フィルタ1810は、サーキュレータ110から出力された光パケットの一部をサーキュレータ110へ反射させる。また、光フィルタ1810は、残りの光パケットと、励起光源1610から出力された励起光と、を合波して増幅媒体1630へ透過させる。
【0146】
また、光フィルタ1810は、増幅媒体1630から出力された光パケットの一部を増幅媒体1630へ反射させ、残りの光パケットをサーキュレータ110へ透過させる。このように、ミラー120および合波器1620を光フィルタ1810によって実現することで、光遅延装置100の部品点数を減らすことができる。光フィルタ1810は、たとえば誘電体多層膜によって実現することができる。
【0147】
図19は、図18に示した光フィルタの特性の例1を示す図である。図19において、横軸は波長を示し、縦軸は透過特性[dB]を示している。波長透過特性1910は、図18に示した光フィルタ1810の特性の例である。励起光帯域B1は、励起光源1610から出力される励起光の波長帯域(たとえば1530〜1560[nm])である。信号光帯域B2は、サーキュレータ110から出力される光パケットの波長帯域(たとえば960〜980[nm]や1450〜1490[nm])である。
【0148】
波長透過特性1910に示すように、励起光帯域B1の透過特性は0[dB]であり、光フィルタ1810は、励起光をすべて増幅媒体1630へ透過させる。また、信号光帯域B2の透過特性は−3[dB]であり、光フィルタ1810は、光パケットを50%だけ増幅媒体1630へ透過させ、残りの50%をサーキュレータ110へ反射させる。
【0149】
図20は、図18に示した光フィルタの特性の例2を示す図である。図20において、図19に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。光フィルタ1810は、図20に示す波長透過特性2010を有していてもよい。雑音帯域B3,B4は、光パケットの波長も励起光の波長も設定されておらず、雑音のみが含まれている波長帯域(たとえば1520〜1530[nm]や1560−1570[nm])である。波長透過特性2010は、雑音帯域B3,B4においてたとえば−30[dB]の透過特性を有する。
【0150】
このように、励起光帯域B1、信号光帯域B2とは異なる雑音帯域B3,B4においては入力された光を透過させない波長透過特性2010を有する光フィルタ1810を用いることで、光パケットを増幅することによって発生する雑音を抑制することができる。
【0151】
このように、実施の形態5にかかる光遅延装置100においては、光経路r1に増幅媒体1630を設け、励起光源1610によって発振された励起光を、光経路r1の光パケットに合波する。これにより、増幅媒体1630によって、光経路r1の光パケットを遅延させるとともに増幅することができる。
【0152】
(光遅延装置の変形例)
図21は、光遅延装置の変形例1を示す図である。図21において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図21に示すように、光遅延装置100は、光カプラ2110と、ループファイバ2120と、光スイッチ150と、制御部160と、を備えていてもよい。
【0153】
光カプラ2110は、2入力2出力の1:1カプラ(3[dB]カプラ)である。光カプラ2110の入力部の一方には光カプラ2110の一端が接続される。光カプラ2110の入力部の他方には光遅延装置100へ入力された光パケットが入力される。光カプラ2110の出力部の一方はループファイバ2120の他端が接続されている。光カプラ2110の出力部の他方は光スイッチ150へ出力されている。光スイッチ150は、光カプラ2110から出力される光パケットのオン/オフを切り替える。
【0154】
したがって、ループファイバ2120は、入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する光経路r1を形成する。具体的には、光遅延装置100へ入力された光パケットは、ループファイバ2120を循環するとともに、光カプラ2110を通過するたびに一部が分岐されて光スイッチ150へ出力される。このように、入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する光経路r1は、ミラー間を反射させながら往復させる構成に限らない。
【0155】
また、図21に示す光遅延装置100によれば、サーキュレータ110を用いなくても、光経路r1へ光パケットを入力するとともに、光経路r1から光パケットを出力することができる。なお、ループファイバ2120は、たとえば巻いた光ファイバによって実現することができる。これにより、光パケットが光経路r1を1循環するための時間を長くすることができる。たとえば、ループファイバ2120は、200[m]以上の長さの光ファイバとする。これにより、光パケットが光経路r1を1循環するための時間を1[μs]以上にすることができる。
【0156】
また、ここではループファイバ2120によって光パケットを循環させる光経路r1を形成したが、たとえば、3つ以上のミラーを組み合わせることで光パケットを循環させる環状の光経路r1を形成してもよい。
【0157】
図22は、光遅延装置の変形例2を示す図である。図22において、図13に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図22に示すように、光遅延装置100は、図13に示したサーキュレータ110および光スイッチ150に変えて、経路スイッチ2210を備えていてもよい。光遅延装置100へ入力された光パケットは、経路スイッチ1320の第1経路1321へ入力される。
【0158】
経路スイッチ2210は、図1に示した光スイッチ150に対応する構成であり、光経路r1に設けられている。図22に示す例では、経路スイッチ2210は遅延線130とミラー140との間に設けられている。経路スイッチ2210は、第3経路2211と第4経路2212とを切り替え可能な経路スイッチである。経路スイッチ2210は、第3経路2211に設定された場合は、遅延線130から出力された光パケットをミラー140へ通過させるとともに、ミラー140から出力された光パケットを遅延線130へ通過させる。また、経路スイッチ2210は、第4経路2212に設定された場合に、光経路r1の光パケットを光遅延装置100の後段へ出力する。
【0159】
制御部160は、光遅延装置100へ光パケットが入力されると、経路スイッチ1320を第1経路1321に切り替えるとともに、経路スイッチ2210を第3経路2211に切り替える。これにより、光パケットが第1経路1321を通過して光経路r1へ入力される。光パケットが経路スイッチ1320を通過すると、制御部160は、経路スイッチ1320を第2経路1322に切り替える。これにより、光パケットは、ミラー1310とミラー140との間を往復する。
【0160】
また、制御部160は、光パケットが光遅延装置100へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点で経路スイッチ2210を第4経路2212に切り替える。これにより、光経路r1を往復していた光パケットが第4経路2212を通過して光遅延装置100の後段へ出力される。これにより、所定の遅延時間が与えられた光パケットを光遅延装置100の後段へ出力させることができる。
【0161】
このように、光経路r1からの光パケットの取り出しに経路スイッチ2210を用いることで、サーキュレータ110を省いた構成にすることもできる。経路スイッチ2210には、たとえば、鉛(Pb)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)の酸化化合物を用いたPLZT光スイッチや、マッハツェンダ型光スイッチなどを用いることができる。これにより、第3経路2211および第4経路2212を高速に切り替えることができる。
【0162】
図23は、光遅延装置の変形例3を示す図である。図23において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図23に示すように、光遅延装置100は、レンズ2311〜2314と、光ファイバ2320と、ミラー2330と、を備えていてもよい。光遅延装置100へ入力された光パケットは、レンズ2311を介してミラー2330へ斜め(たとえば45度)に入力される。
【0163】
ミラー2330は、所定の透過率(たとえば50%)を有する一部透過の反射媒体である。具体的には、ミラー2330は、レンズ2311から出力された光パケットを所定の反射率(たとえば50%)で反射させ、レンズ2314を介して光スイッチ150へ出力する。また、ミラー2330は、レンズ2311から出力された残りの光パケットを透過させ、レンズ2312を介して光ファイバ2320へ出力する。
【0164】
また、ミラー2330は、レンズ2313から出力された光パケットを所定の反射率(たとえば50%)で反射させ、レンズ2312を介して光ファイバ2320へ出力する。また、ミラー2330は、レンズ2313から出力された残りの光パケットを透過させ、レンズ2314を介して光スイッチ150へ出力する。光ファイバ2320は、レンズ2312から出力された光パケットをレンズ2313へ出力する。光ファイバ2320には遅延線130が設けられており、光パケットを遅延させる。
【0165】
したがって、ミラー2330、レンズ2312、光ファイバ2320およびレンズ2313は、入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する光経路r1を形成する。具体的には、光遅延装置100へ入力された光パケットは、ミラー2330、レンズ2312、光ファイバ2320およびレンズ2313を循環するとともに、ミラー2330を通過するたびに一部が透過して光スイッチ150へ出力される。このように、入力された光パケットが同一の経路を繰り返し通過する光経路r1は、ミラー間を反射させながら往復させる構成に限らない。
【0166】
また、図23に示す光遅延装置100によれば、サーキュレータ110を用いなくても、光経路r1へ光パケットを入力するとともに、光経路r1から光パケットを出力することができる。
【0167】
また、ここではレンズ2312からの光パケットを光ファイバ2320によってレンズ2313へ入力することで光パケットを循環させる構成について説明したが、このような構成に限らない。たとえば、ここではレンズ2312からの光パケットをレンズ2313へ入力する光学系を、複数のミラーなどを用いて実現してもよい。
【0168】
なお、上述した各実施の形態および各変形例はそれぞれ組み合わせることも可能である。また、上述した各実施の形態および各変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行うこともできる。たとえば、図1に示した光遅延装置100において、サーキュレータ110に代えて経路スイッチを設ける構成としてもよい。サーキュレータ110に代えて設ける経路スイッチは、たとえば、入力された光パケットをミラー120へ出力する経路と、ミラー120から出力された光パケットを光スイッチ150へ出力する経路と、に切り替え可能な経路スイッチである。
【0169】
(ミラーと光ファイバとの接続例)
図24−1は、一部透過のミラーと光ファイバとの接続例1を示す図である。図24−1に示すミラー120は、たとえば図1に示したミラー120である。光ファイバ2411は、ミラー120のサーキュレータ110の側の光ファイバである。光ファイバ2412は、ミラー120の遅延線130の側の光ファイバである。光コネクタ2431は、光ファイバ2411の端部に設けられた光コネクタである。光コネクタ2432は、光ファイバ2412の端部に設けられた光コネクタである。
【0170】
図24−1に示すように、光コネクタ2431と光コネクタ2432のいずれか一方の端面に反射膜を蒸着しておく。この反射膜がたとえばミラー120として機能することができる。なお、光コネクタ2431と光コネクタ2432の接続は、一般的な接続手段である光アダプタを用いればよい。これにより、簡易かつ低コストにミラー120を形成することができる。また、光遅延装置100の小型化を図ることができる。また、ミラー120と光ファイバ2411,2412に光を結合するためのレンズなどを設けなくてもよいため、サイズの縮小およびコストの低下を図ることができる。
【0171】
図24−2は、一部透過のミラーと光ファイバとの接続例2を示す図である。図24−2において、図24−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図24−2に示すように、たとえば、ミラー120と光ファイバ2411の間にレンズ2421を設け、ミラー120と光ファイバ2412の間にレンズ2422を設けてもよい。
【0172】
レンズ2421は、光ファイバ2411の端部から出射される光をコリメートしてミラー120へ入射する。また、光ファイバ2411は、ミラー120から出射される光を光ファイバ2411の端部へ集光する。レンズ2422は、光ファイバ2412の端部から出射される光をコリメートしてミラー120へ入射する。また、光ファイバ2412は、ミラー120から出射される光を光ファイバ2412の端部へ集光する。
【0173】
図25−1は、全反射のミラーと光ファイバとの接続例1を示す図である。図25−1に示すミラー140は、たとえば図1に示したミラー140である。光ファイバ2511は、ミラー140の遅延線130の側の光ファイバである。光コネクタ2531は、光ファイバ2511の端部に設けられた光コネクタである。図25−1に示すように、光コネクタ2531のファイバ端面に対して反射膜を蒸着させればよい。この場合は、光コネクタ2531に蒸着した反射膜がミラー140となる。これにより、簡易かつ低コストにミラー140を形成することができる。また、光遅延装置100の小型化を図ることができる。また、ミラー140と光ファイバ2511に光を結合するためのレンズなどを設けなくてもよいため、サイズの縮小およびコストの低下を図ることができる。
【0174】
図25−2は、全反射のミラーと光ファイバとの接続例2を示す図である。図25−2において、図25−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図25−2に示すように、たとえば、ミラー140と光ファイバ2511の間にレンズ2521を設けてもよい。レンズ2521は、光ファイバ2511の端部から出射される光をコリメートしてミラー140へ入射する。また、光ファイバ2511は、ミラー140から出射される光を光ファイバ2511の端部へ集光する。
【0175】
以上説明したように、光遅延装置、光回路および光遅延方法によれば、小規模な構成で光パケットに所定の遅延時間を与えることができる。なお、上述した各実施の形態においては、遅延対象の光信号の一例として光パケットを挙げたが、遅延対象の光パケットは光パケットに限らず、所定の長さを有する各種の光信号を適用することができる。
【0176】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0177】
(付記1)入力された光信号が同一の経路を繰り返し通過する光経路と、
前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチと、
前記光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える制御部と、
を備えることを特徴とする光遅延装置。
【0178】
(付記2)前記所定の遅延時間は、前記光信号に実施されるべき遅延時間の情報を基に決定されることを特徴とする付記1に記載の光遅延装置。
【0179】
(付記3)前記光経路に設けられ、前記光信号を遅延させる遅延線を備えることを特徴とする付記1または2に記載の光遅延装置。
【0180】
(付記4)前記光経路は、時間軸方向に前記光信号の先端から末尾までが進む光路長以上の光路長を有することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0181】
(付記5)前記制御部は、前記時点で、前記光信号の時間長だけ前記光スイッチを前記出力状態にすることを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0182】
(付記6)前記光経路は、複数の反射媒体の間を前記光信号が繰り返し往復する光経路であることを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0183】
(付記7)前記複数の反射媒体の少なくともいずれかは、入力された光の一部を透過させる一部透過の反射媒体であり、
前記光スイッチは、前記非出力状態では前記光経路から前記一部透過の反射媒体を透過して出力される光信号を遮断し、前記出力状態では前記光経路から前記一部透過の反射媒体を透過して出力される光信号を通過させることを特徴とする付記6に記載の光遅延装置。
【0184】
(付記8)遅延対象の光信号を前記一部透過の反射媒体へ入力するとともに、前記光経路から前記一部透過の反射媒体を透過して出力される光信号を前記光スイッチへ入力するサーキュレータを備えることを特徴とする付記7に記載の光遅延装置。
【0185】
(付記9)前記光スイッチは、半導体光増幅器であり、前記出力状態において前記光信号を増幅して出力することを特徴とする付記1〜8のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0186】
(付記10)前記制御部は、前記光スイッチを前記出力状態に切り替える場合に、前記遅延時間が長いほど前記光スイッチによる前記光信号の増幅率を大きくすることを特徴とする付記9に記載の光遅延装置。
【0187】
(付記11)前記光経路に設けられ、前記光信号を通過させる半導体光増幅器を備え、
前記制御部は、前記光スイッチを前記出力状態に切り替える場合に前記光経路の内部の光信号を前記光経路に設けられた前記半導体光増幅器によって吸収させることを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0188】
(付記12)前記光経路に設けられた前記半導体光増幅器は、繰り返し通過する光信号のパワーが一定になるように、前記繰り返し通過する光信号を増幅することを特徴とする付記11に記載の光遅延装置。
【0189】
(付記13)前記光信号を前記光経路へ入力するとともに前記光経路から前記光信号を出力する第1経路と、前記光経路へ入力された光信号が前記同一の経路を繰り返し通過するようにする第2経路と、に切り替え可能な経路スイッチを備え、
前記光スイッチは、前記出力状態では前記光経路から前記第1経路により出力される光信号を通過させることを特徴とする付記6に記載の光遅延装置。
【0190】
(付記14)光信号を前記第1経路から前記光経路へ入力するとともに、前記第2経路から出力される光信号を前記光スイッチへ入力するサーキュレータを備えることを特徴とする付記13に記載の光遅延装置。
【0191】
(付記15)励起光を発振する光源と、
前記光源によって発振された励起光を、前記光経路の前記光信号に合波する合波部と、
前記光経路に設けられ、前記光信号を遅延させるとともに、前記光信号を前記励起光に応じて増幅させる希土類ドープ光ファイバと、
を備えることを特徴とする付記1〜14のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0192】
(付記16)前記複数の反射媒体の少なくともいずれかは、入力された光の一部を透過させる一部透過の反射媒体であり、
前記合波部と前記一部透過の反射媒体は、前記光信号の波長帯域においては入力された光の一部を透過させるとともに、前記励起光の波長帯域においては入力された光を透過させる光フィルタによって実現されることを特徴とする付記15に記載の光遅延装置。
【0193】
(付記17)前記光フィルタは、前記光信号および前記励起光の各波長帯域とは異なる波長帯域においては入力された光を透過させないことを特徴とする付記16に記載の光遅延装置。
【0194】
(付記18)前記光経路は、前記光信号が循環する環状の光経路であることを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0195】
(付記19)前記光信号を前記光経路へ入力する第1経路と、前記光経路へ入力された光信号が前記同一の経路を繰り返し通過するようにする第2経路と、に切り替え可能な経路スイッチを備え、
前記光スイッチは、前記光経路へ入力された光信号が前記同一の経路を繰り返し通過するようにする第3経路と、前記光経路から前記光信号を出力する第4経路と、に切り替え可能な経路スイッチであることを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【0196】
(付記20)入力された光信号が同一の経路を繰り返し通過する光経路と、
前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチと、
前記光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える制御部と、
を備える複数の光遅延装置と、
前記複数の光遅延装置から出力される各光信号を合波する合波部と、
前記合波部において前記各光信号が衝突しないように、前記複数の光遅延装置における前記遅延時間をそれぞれ決定する決定部と、
を備え、
前記複数の光遅延装置のそれぞれの前記制御部は、前記決定部によって決定された遅延時間によって前記光信号を遅延させることを特徴とする光回路。
【0197】
(付記21)光が同一の経路を繰り返し通過する光経路へ光信号を入力し、
前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える、
ことを特徴とする光遅延方法。
【符号の説明】
【0198】
r1 光経路
100,761〜76N,861〜86n,871〜87n 光遅延装置
110 サーキュレータ
120,140,1310,2330 ミラー
130 遅延線
310,320,330,340,410,420 グラフ
311,321,331,341,411,421〜426,701〜703,801,802 光パケット
600 光遅延回路
610,711〜71M,811,812,921 分岐部
620,721〜72M,821,822 遅延部
630,741〜74M,841,842,922 光電変換部
700,800 光回路
730,880 マトリックス光スイッチ
770,2110 光カプラ
831,832 波長分離部
891,892 波長多重部
910,1110 SOA
1320,2210 経路スイッチ
1321 第1経路
1322 第2経路
1610 励起光源
1620 合波器
1630 増幅媒体
1810 光フィルタ
1910,2010 波長透過特性
2120 ループファイバ
2211 第3経路
2212 第4経路
2311〜2314,2421,2422,2521 レンズ
2320,2411,2412,2511 光ファイバ
2431,2432,2531 光コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光信号が同一の経路を繰り返し通過する光経路と、
前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチと、
前記光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える制御部と、
を備えることを特徴とする光遅延装置。
【請求項2】
前記所定の遅延時間は、前記光信号に実施されるべき遅延時間の情報を基に決定されることを特徴とする請求項1に記載の光遅延装置。
【請求項3】
前記光経路に設けられ、前記光信号を遅延させる遅延線を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光遅延装置。
【請求項4】
前記光経路は、時間軸方向に前記光信号の先端から末尾までが進む光路長以上の光路長を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記時点で、前記光信号の時間長だけ前記光スイッチを前記出力状態にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【請求項6】
前記光経路は、複数の反射媒体の間を前記光信号が繰り返し往復する光経路であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【請求項7】
前記複数の反射媒体の少なくともいずれかは、入力された光の一部を透過させる一部透過の反射媒体であり、
前記光スイッチは、前記非出力状態では前記光経路から前記一部透過の反射媒体を透過して出力される光信号を遮断し、前記出力状態では前記光経路から前記一部透過の反射媒体を透過して出力される光信号を通過させることを特徴とする請求項6に記載の光遅延装置。
【請求項8】
遅延対象の光信号を前記一部透過の反射媒体へ入力するとともに、前記光経路から前記一部透過の反射媒体を透過して出力される光信号を前記光スイッチへ入力するサーキュレータを備えることを特徴とする請求項7に記載の光遅延装置。
【請求項9】
前記光スイッチは、半導体光増幅器であり、前記出力状態において前記光信号を増幅して出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【請求項10】
前記光経路に設けられ、前記光信号を通過させる半導体光増幅器を備え、
前記制御部は、前記光スイッチを前記出力状態に切り替える場合に前記光経路の内部の光信号を前記光経路に設けられた前記半導体光増幅器によって吸収させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【請求項11】
前記光信号を前記光経路へ入力するとともに前記光経路から前記光信号を出力する第1経路と、前記光経路へ入力された光信号が前記同一の経路を繰り返し通過するようにする第2経路と、に切り替え可能な経路スイッチを備え、
前記光スイッチは、前記出力状態では前記光経路から前記第1経路により出力される光信号を通過させることを特徴とする請求項6に記載の光遅延装置。
【請求項12】
励起光を発振する光源と、
前記光源によって発振された励起光を、前記光経路の前記光信号に合波する合波部と、
前記光経路に設けられ、前記光信号を遅延させるとともに、前記光信号を前記励起光に応じて増幅させる希土類ドープ光ファイバと、
を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の光遅延装置。
【請求項13】
入力された光信号が同一の経路を繰り返し通過する光経路と、
前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチと、
前記光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える制御部と、
を備える複数の光遅延装置と、
前記複数の光遅延装置から出力される各光信号を合波する合波部と、
前記合波部において前記各光信号が衝突しないように、前記複数の光遅延装置における前記遅延時間をそれぞれ決定する決定部と、
を備え、
前記複数の光遅延装置のそれぞれの前記制御部は、前記決定部によって決定された遅延時間によって前記光信号を遅延させることを特徴とする光回路。
【請求項14】
光が同一の経路を繰り返し通過する光経路へ光信号を入力し、
前記光経路へ入力された光信号を出力する出力状態と、前記光経路へ入力された光信号を出力しない非出力状態と、に切り替え可能な光スイッチを、前記光信号が前記光経路へ入力されてから所定の遅延時間が経過する時点までは前記非出力状態にし、前記時点で前記出力状態に切り替える、
ことを特徴とする光遅延方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25−1】
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【図25−2】
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【公開番号】特開2012−242619(P2012−242619A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112770(P2011−112770)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】