説明

光部品

【課題】屈折率が異なる第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とが、それぞれの平面光波回路に形成された複数の光導波路同士を光結合するように端面で突き合わせ接続された光部品において、使用環境の温度変化に対して安定な光部品を提供すること。
【解決手段】光部品500は、第1の屈折率n1を有する第1の平面光波回路501と、第1の屈折率n1と異なる第2の屈折率n2を有する第2の平面光波回路502とが光軸方向に対して直角な端面で突き合わせ接続されている。第1及び第2の平面光波回路501、502には、それぞれ第1〜第n(nは2以上の整数)の光導波路が形成されている。第1の平面光波回路501の第i(iは1以上n以下の整数)の光導波路と第2の平面光波回路502の第iの光導波路の位置が接続界面において一致するように調心して接続する。この際、第1の平面光波回路501の第iの光導波路が界面の法線となす角度φiがスネルの法則を満足する範囲でi毎に異なるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光部品に関し、より詳細には、屈折率が異なる第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とが、それぞれの平面光波回路に形成された複数の光導波路同士を光結合するように端面で突き合わせ接続された光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの高度化に伴い、高機能な光モジュール(光部品)の需要が高まっている。平面光波回路は、基板上に光導波路を形成することによって様々な光波回路を実現することができ、光モジュールの構成部品として用いられている。光モジュールの更なる高機能化のために、異なる機能を有する平面光波回路を集積化したり、レンズ・空間位相変調器等の空間光学系部品と平面光波回路とを集積化したハイブリッド光モジュールが実現されている。具体的な光モジュールの例としては、石英系ガラスとニオブ酸リチウム(LN)のように異なる材料で構成された平面光波回路を光結合したRZ−DQPSK(Return to Zero Differential Quadrature Phase Shift Keying)モジュール等が挙げられる。
【0003】
石英系ガラスで構成された第1の平面光波回路と、LNで構成された第2の平面光波回路が突き合わせ接続された光モジュールを例に考える。図1に、特許文献1の従来例を示す。第1の平面光波回路1と第2の平面光波回路2との界面3において反射が生じる可能性があるが、これを防ぐためには、(1)まず、フレネルの反射Rが、戻り光として第1の平面光波回路1の光導波路4に結合しないように角度θを決める。一般には、角度θは4度から12度である。ここで、フレネルの公式は次式の通りである。n1及びnaは、それぞれ石英系ガラス及びLNの屈折率である。ただし、第1の平面光波回路と第2の平面光波回路との間に接着剤がある場合は、naは接着剤の屈折率となる。
【0004】
【数1】

【0005】
(2)次に、次式のスネルの法則を満足するように第2の平面光波回路2の光導波路5の角度φを決める。n2は、LNの屈折率である。
【0006】
【数2】

【0007】
図1では、接続界面3を平面光波回路の側壁6に対して角度α1だけ傾斜させているが、界面近傍において光導波路を傾斜させれば、反射を防止しつつ接続界面3と平面光波回路の側壁6のなす角を直角にすることができる。平面光波回路の側面に対して直角な端面で突き合わせ接続を行うと、平面光波回路を四隅を直角とした方形の形状にすることができ、平面光波回路の加工が容易となる。図2にそのような例を示す。整列部材4に並べられた光ファイバ3と第1の平面光波回路1と第2の平面光波回路2は、突き合わせ接続されている。この例では、第1の平面光波回路1と第2の平面光波回路2は、長方形の形状となっている。図1と標記が異なるが、第1の平面光波回路1の光導波路が界面の法線となす角をφ1、第2の平面光波回路2の光導波路が界面の法線となす角をθ1とする。この場合、スネルの法則は次式のようになる。
【0008】
【数3】

【0009】
上述の条件から、石英系ガラスで構成された第1の平面光波回路とLNで構成された第2の平面光波回路の突き合わせ接続では、φ1及びθ1として、それぞれ6度及び4度を用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−207664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図2の構成では、複数の光導波路同士を接続する場合に界面と光導波路のなす角がずれた際、導波路間隔が設計値から大きくずれてしまい、接続損失となる。更に、熱膨張係数の異なる平面光波回路同士の接続においては、使用環境の温度変化によって光学特性、特に接続損失が大きく変動するという問題がある。図3を参照して、端面に対して斜めに形成された斜め導波路の問題点を説明する。端面に対して角度ψで斜め導波路が形成されているときに、端面が研磨等の加工時に角度ずれθを生じた場合、導波路間隔ずれΔLを計算すると次式のようになる。
【0012】
【数4】

【0013】
ここで、Lは角度ずれθが生じたときの導波路間隔、L0は角度ずれが無いとき導波路間隔、すなわち設計値である。
【0014】
たとえば、導波路間隔L0が2500μmの場合、6度の斜め導波路の端面角度が0.2度ずれると導波路間隔は0.9μm以上ずれる(図4参照)。導波路間隔が0.9μm以上ずれていると、接続損失は0.2dB以上増加し、更に環境温度が50度変化したときには0.5dB以上増加する。この接続損失の増加は導波路間隔が大きくなればなるほど顕著になる。即ち、複数の光導波路が並んでいる端面の角度がずれた場合、中心付近の光導波路の間隔ずれに比べて、端の光導波路の間隔ずれが大きくなるという単一の光導波路同士の接続にはない問題がある。
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、屈折率が異なる第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とが、それぞれの平面光波回路に形成された複数の光導波路同士を光結合するように端面で突き合わせ接続された光部品において、使用環境の温度変化に対して安定な光部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、第1の屈折率を有する第1の平面光波回路と、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の平面光波回路とが突き合わせ接続された光部品であって、前記第1及び第2の平面光波回路は、それぞれ第1〜第n(nは2以上の整数)の光導波路を有し、前記第1の平面光波回路の第i(iは1以上n以下の整数)の光導波路と前記第2の平面光波回路の第iの光導波路の位置が、前記第1の平面光波回路と前記第2の平面光波回路との接続界面において一致し、前記第1又は第2の平面光波回路の第iの光導波路が前記接続界面の法線となす角度が、スネルの法則を満足する範囲でi毎に異なり、かつ前記接続界面において第1の光導波路と第nの光導波路の中間付近に位置する光導波路ほど大きく、前記中間付近から離れるにつれて小さくなっていることを特徴とする。
【0017】
また、第2の態様は、第1の態様において、前記接続界面において、前記第iの光導波路の前記角度の方向を第1の光導波路と第nの光導波路の中間を中心として、前記第iの光導波路と前記中心との距離が小さくなる向きに設定されていることを特徴とする。
【0018】
また、第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記第1の平面光波回路と、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の平面光波回路とは、前記第1の平面光波回路の側面に対して直角な端面と前記第2の平面光波回路の側面に対して直角な端面とが突き合わせ接続されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第4の態様は、第1乃至第3のいずれかの態様において、前記第1の平面光波回路が石英系ガラスで構成されており、前記第2の平面光波回路がLNで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の平面光波回路と第2の平面光波回路にそれぞれ複数の光導波路を形成し、スネルの法則を満足する範囲で、第1又は第2の平面光波回路の各光導波路が接続界面の法線となす角度がおのおの異なり、かつ接続界面において第1の光導波路と第nの光導波路の中間付近に位置する光導波路ほど大きく、前記中間付近から離れるにつれて小さくなるようにすることにより、屈折率が異なる第1の平面光波回路と第2の平面光波回路とが、それぞれの平面光波回路に形成された複数の光導波路同士を光結合するように端面で突き合わせ接続された光部品において、使用環境の温度変化に対して安定な光部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】石英系ガラスで構成された第1の平面光波回路と、LNで構成された第2の平面光波回路が突き合わせ接続された従来例を示す図である。
【図2】直角な界面において反射を防止するための構成を示す図である。
【図3】端面に対して斜めに形成された斜め導波路の問題点を説明するための図である。
【図4】斜め導波路における導波路間隔と導波路間隔ずれの関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る光部品を示す図である。
【図6】本発明に係る光部品において、第1の平面光波回路を石英系ガラスで構成されたPLCとし、第2の平面光波回路をLNで構成した場合の反射減衰量を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る光部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図5に、本発明の第1の実施形態に係る光部品を示す。光部品500は、第1の屈折率n1を有する第1の平面光波回路501と、第1の屈折率n1と異なる第2の屈折率n2を有する第2の平面光波回路502とが突き合わせ接続されている。第1の平面光波回路501及び第2の平面光波回路502の接続端面503は、第1の平面光波回路の側面506および第2の平面光波回路の側面507に対して直角である。第1の平面光波回路501には、第1〜第n(nは2以上の整数)の光導波路が形成されており、第2の平面光波回路502にも、同様に第1〜第nの光導波路が形成されている。
【0024】
本発明に係る光部品500においては、第1の平面光波回路501の第i(iは1以上n以下の整数)の光導波路504と第2の平面光波回路502の第iの光導波路505の位置が接続界面において一致するように調心して接続する。この際、界面における反射を防止するために、各平面光波回路の複数の光導波路をそれぞれ界面近傍で傾斜させて形成し、第1の平面光波回路501の第iの光導波路が界面の法線となす角度φiが、接続界面において第1の光導波路と第nの光導波路の中間付近に位置する光導波路ほど大きく、前記中間付近から離れるにつれて小さくなるようにする。また、第1の平面光波回路501の光導波路および第2の平面光波回路502の光導波路のそれぞれが接続界面の法線となす角は、スネルの法則を満足する範囲で設定する。即ち、光導波路と接続界面の法線となす角が接続界面において中間付近の光導波路ほど大きく、端になるほど小さくする。このような構成を採ることで、第1の光導波路と第nの光導波路の中間付近から離れた位置にある光導波路の間隔ずれを小さくすることができる。また、両端の光導波路の角度は反射減衰量の目標値を満足する程度に設定しておけば、その内側に配置されている光導波路での反射減衰量は目標値よりも十分大きく、良好な値となる。なお、第2の平面光波回路502の第iの光導波路が界面となす角度θiは、スネルの法則を満足するように選択されるので、自ずとi毎に異なる値となる。
【0025】
図6に、本発明に係る光部品500において、第1の平面光波回路を石英系ガラスで構成されたPLCとし、第2の平面光波回路をLNで構成した場合の反射減衰量の例を示す。一般的に、LN端面はフレネル反射損失を低減させるため無反射コート膜が形成され、反射を低減されている。そこで,第1の平面光波回路であるPLCの反射減衰量について述べる。この例では、PLCの光導波路と端面の角度が3度のとき、反射減衰量は45dBとなる。従って、両端の光導波路の角度を3度とし、その内側に配置されている光導波路の角度を3度よりも大きくしていけば、自ずと各光導波路の反射減衰量を45dB以上に設定することが可能となる。
【0026】
図7に、本発明の第2の実施形態に係る光部品を示す。光部品700は、第1の屈折率n1を有する第1の平面光波回路701と、第1の屈折率n1と異なる第2の屈折率n2を有する第2の平面光波回路702と、第1の屈折率n1を有する第3の平面光波回路703とが突き合わせ接続されている。第1の平面光波回路701及び第3の平面光波回路703は、シリコン基板上の石英系光導波路で形成されており、第2の平面光波回路702と接続される界面にそれぞれ6本の斜め光導波路711〜716及び731〜736と、Y分岐導波路を備える構成となっている。第2の平面光波回路702は、LN基板上の光導波路で形成されており、6本の斜め光導波路721〜726が形成されており、各光導波路には500μm間隔で電極751が形成されており、位相変調器として機能する。電極の間隔は電極間の電気的クロストークによって制限されるため、極端に狭くすることが困難である。この構成において、電極ペア741、742をPSK変調用とし、電極ペア743をRZ変調用として駆動することによって、RZ−DQPSKモジュールとして機能する。
【0027】
光導波路711、712、715、716、731、732、735、736は端面との角度を3度とし,光導波路713、714、733、734は6度とし、それぞれと接続される第2の平面光波回路の光導波路721〜726は、スネルの法則を満足する角度に設定されている。また、第1の平面光波回路701または第3の平面光波回路703と第2の平面光波回路702との接続界面において光導波路711〜716、721〜726、731〜736の導波路間隔が狭くなる方向に各光導波路が曲げられている。即ち、接続界面において、光導波路の角度の方向を光導波路721と光導波路726の中間を中心として、各光導波路と前記中心との距離が狭くなる向きに設定されていることによって、接続界面での導波路間隔を狭くしている。
【0028】
このような構成にすることによって、反射減衰量を40dB以上にしつつ、端面の角度ずれが0.2度になっても、導波路間隔のずれは0.4μm以下になり、環境温度が50度変化しても損失変動を0.2dB以下に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
500 光部品
501 第1の平面光波回路
502 第2の平面光波回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率を有する第1の平面光波回路と、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の平面光波回路とが突き合わせ接続された光部品であって、
前記第1及び第2の平面光波回路は、それぞれ第1〜第n(nは2以上の整数)の光導波路を有し、
前記第1の平面光波回路の第i(iは1以上n以下の整数)の光導波路と前記第2の平面光波回路の第iの光導波路の位置が、前記第1の平面光波回路と前記第2の平面光波回路との接続界面において一致し、
前記第1又は第2の平面光波回路の第iの光導波路が前記接続界面の法線となす角度が、スネルの法則を満足する範囲でi毎に異なり、かつ前記接続界面において第1の光導波路と第nの光導波路の中間付近に位置する光導波路ほど大きく、前記中間付近から離れるにつれて小さくなっていることを特徴とする光部品。
【請求項2】
前記接続界面において、前記第iの光導波路の前記角度の方向を第1の光導波路と第nの光導波路の中間を中心として、前記第iの光導波路と前記中心との距離が狭くなる向きに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【請求項3】
前記第1の平面光波回路と、前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する第2の平面光波回路とは、前記第1の平面光波回路の側面に対して直角な端面と前記第2の平面光波回路の側面に対して直角な端面とが突き合わせ接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光部品。
【請求項4】
前記第1の平面光波回路は、石英系ガラスで構成されており、前記第2の平面光波回路は、LNで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−226108(P2012−226108A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93496(P2011−93496)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】