説明

光酸発生モノマーを製造する方法

【課題】短工程で重合性光酸発生モノマーを製造する方法の提供。
【解決手段】式(I)のスルトンを、重合性基を有する求核試薬と反応させて得たカチオン塩を第2のカチオンと交換する。


(式中、各Rは独立してF、C1−10アルキル、フッ素置換C1−10アルキル、C1−10シクロアルキル、もしくはフッ素置換C1−10シクロアルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFであり;nは0〜10の整数であり、並びにmは1〜4+2nの整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年12月31日に出願された米国仮出願第61/428,996号のノンプロビジョナル出願であり、その仮出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
フッ素化スルトンを用いて、重合性光酸発生モノマーを製造する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
所望のパターンをシリコンウェハ上に刻み込むための進歩したフォトリソグラフィ技術は、概して、溶解度変化を誘起させるために、パターンを転写するための鍵となる化学反応として、ポリ(メタクリラート)フォトレジストポリマー中のエステルの、酸への酸触媒脱保護に頼っている。化学増幅と称されるこの触媒プロセスは感光性試薬もしくは光酸発生剤(PAG)の照射によって引き起こされる。フォトレジストポリマー中に使用されるPAGは以下の2つの部分からなることができる:スルホナートアニオン、および、通常少なくとも1つの芳香族基を有するトリス(ヒドロカルビル)スルホニウムカチオン:ここで、このカチオンは光子を吸収して、そして分解して1つの酸プロトンを生じさせ、この酸プロトンは複合的な望ましい酸触媒化学反応をもたらす。スルホン酸超酸、例えば、硫黄原子から2〜3結合長さ以内にフッ素置換基を有するアルキルもしくはアリールスルホン酸はいくつかの用途において好ましい。
【0004】
フォトリソグラフィ技術における進歩がますます微細になる解像度を有するパターンをもたらすにつれて、フォトレジストマトリックス中での酸拡散が問題となる。あるアプローチにおいて、酸(例えば、スルホナートアニオン)の共役塩基をポリマーに結合させること、酸を限られた体積に限定すること、およびフォトレジストマトリックス中にPAGをより均一に分布させることによって、酸拡散は妨げられうる。
【0005】
米国特許出願公開第2009/0202943A1号は、(メタ)アクリラートモノマー結合によってポリマーに結合される光活性スルホニウムフルオロアルキルスルホン酸塩(すなわち、超酸の共役塩基)を有するアクリラートもしくはメタクリラートモノマーから製造されるポリマーを含むポジティブトーンレジストを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0202943A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このモノマーの典型的なものは、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチルスルホナートのトリアリールスルホニウム塩を(メタ)アクリル酸無水物と縮合させることにより製造される。このような縮合は原理的には使用されうるが、このアニオンの合成は市販の前駆体からの3工程の合成を伴い、かつこの前駆体はカチオンおよび/または多官能性アニオンとの副反応の可能性のせいで制限される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先行技術の上記および他の欠点は、式(I)のスルトンを、重合性基を有する求核試薬と反応させることを含むモノマーを製造する方法によって克服されうる:
【化1】

式中、各Rは独立してF、C1−10アルキル、フッ素置換C1−10アルキル、C1−10シクロアルキル、もしくはフッ素置換C1−10シクロアルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFであり;nは0〜10の整数であり、並びにmは1〜4+2nの整数である。
【0009】
また、モノマーは上記方法によって製造される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、典型的なモノマーについての質量減少対温度の熱重量分析プロットを示す。
【図2】図2は、X線結晶分析に基づく典型的なモノマーのカリウム塩のORTEPプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点が、添付の図面と共に以下の詳細な記載から明らかとなる。
【0012】
本明細書において開示されるのは、フッ素化スルトン前駆体から、光酸発生剤(本明細書において、PAG)として有用な新規オレフィンモノマーを製造する方法である。本明細書において使用される場合、「スルトン」とは、求核試薬の付加によって開環攻撃を受けうる環式スルホン酸エステルをいい、この開環求核攻撃はスルトン環酸素に対してアルファの炭素原子に特異的である。好ましくは、スルトンは1以上のフッ素原子でフッ素化されており、さらにより好ましくは、スルトンはスルホナート硫黄原子に対してアルファのジェミナルジフルオロメチレン基を含むことができる。開環反応に使用される求核試薬が(メタ)アクリル酸もしくはスチレンカルボン酸のようなカルボン酸、またはヒドロキシスチレン、またはヒドロキシメチルスチレンである場合には、スルトンとの反応の生成物はラジカル重合のためのモノマーとして有用であり得る。これらの例において、求核試薬はこれら化合物の1つのオキシアニオンであることができ、および塩基と(メタ)アクリル酸もしくはスチレンカルボン酸、ヒドロキシスチレン(フェノール性基を有する)、もしくはヒドロキシメチルスチレン(ベンジルアルコール部分を有する)との反応によって製造されうる。
【0013】
よって、スルトンの開環生成物は高収率で非常にきれいに得られる。低い拡散ガス放出特性を有する光酸発生剤は、開環生成物のカチオンが光活性カチオン、例えば、少なくとも1つのフェニル基を有するオニウムカチオンと交換されるカチオン交換(本明細書において、場合によっては「メタセシス」と称されるプロセス)によって開環生成物からさらに製造されうる。このようなモノマーは、好ましくはポリマー中に重合されそしてフォトレジスト組成物において使用される場合に、改良されたリソグラフィのための放射線、例えば、eビーム、x線および13.4〜13.5nmの波長を有する極端紫外(EUV)放射線に露光される際に酸を発生させる。このようなモノマーは望ましくは低い酸拡散を有し、そして高いコントラストおよび良好なライン形状を提供することができる。さらに、これらPAGの分解生成物は、従来のPAGと比較して、同様のフォトレジスト組成、露光および処理の条件下で低減される。
【0014】
本明細書において使用される場合、「オニウム」とは、ヨードニウムもしくはスルホニウムカチオンをいう。また、本明細書において使用される場合、「置換」とはハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシラート、アミド、ニトリル、チオール、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C7−10アルキルアリール、C7−10アルキルアリールオキシ、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせのような置換基を含むことを意味する。本明細書において式に関して開示された基もしくは構造は、他に特定されない限りは、または得られた構造の所望の特性にその置換が有意に悪影響を及ぼさない限りは、そのように置換されることができると理解される。また、本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリラート」とはアクリラートもしくはメタクリラートを意味し、他に特定されない限りはこれらのいずれかに限定されない。
【0015】
モノマーを製造する方法は式(I):
【化2】

のスルトンを、重合性基を有する求核試薬と反応させることを含む。式(I)においては、各Rは独立してF、C1−10アルキル、フッ素置換C1−10アルキル、C1−10シクロアルキル、もしくはフッ素置換C1−10シクロアルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFである。本明細書においては、炭素原子についてRもしくは他の置換基が特定されていない場合には、その炭素原子のそれぞれの原子価は水素原子で満たされていることが一般的に理解される。典型的な基Rには、1以上のフッ素原子に加えて、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、3−オクチル、n−デシル、または1以上のフッ素置換基を有する上記アルキル基のいずれか、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロブチルなど;または、シクロアルキル基、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、1−メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、1−もしくは2−アダマンチル、1−もしくは2−デカリニル;または、1以上のフッ素置換基を有する上記シクロアルキル基のいずれか、例えば、ペルフルオロシクロペンチル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)シクロヘキシル、ペルフルオロシクロヘキシルなどが挙げられうる。より好ましくは、RはFである。
【0016】
また、式(I)においては、nは0〜10の整数であり、好ましくはnは1、2もしくは3である。スルトンは置換基Rをm個含むことができ、mは1〜4+2nの整数である。スルトンはR置換基を1つだけ含むことができ(この場合、置換基はFであり、かつnは1である)、または1つより多い置換基がF基の他に含まれることができ、ここで、置換基Rの合計数は最大で2×(2+n)、すなわち4+2n個の置換基に限定される(スルトン環炭素原子の数2+nで、各環炭素が2個以下の置換基を有する)。好ましくは、置換基の合計数はmが1〜4の整数であるように特定される。あるいは、mは0であることができ、および/またはRはFではない。
【0017】
好ましくは、スルトンは式(II)、(III)または(IV)のものである:
【化3】

式中、各Rは独立してF、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFであり;aは1〜6の整数であり、bは1〜8の整数であり、cは1〜10の整数である。
【0018】
より好ましくは、スルトンは式(V)のものであり得る:
【化4】

式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してH、F、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであって、ただしR、R、RもしくはRの少なくとも1つはFである。好ましくは、R、RもしくはRの少なくとも1つがフッ素原子であることができ、ここでそれぞれの残りのR、Rおよび/またはRはHであり、かつRはHである。また好ましくは、R、Rおよび/またはRについて両方ともフッ素原子であり、ここで残りのR、Rおよび/またはRはHであり、かつRはHである。
【0019】
さらにより好ましくは、スルトンは式(VI)または(VII)のものであり得る:
【化5】

式中、RおよびRはそれぞれ独立してH、F、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであって、ただしRもしくはRの少なくとも1つがFである。好ましくは、RもしくはRの少なくとも1つがフッ素原子であることができ、ここでそれぞれの残りのRおよび/またはRはHである。また好ましくは、Rおよび/またはRについて両方ともフッ素を含み、ここで残りのRおよび/またはRはHである。
【0020】
式(II)の典型的なスルトンには下記式のものが挙げられる:
【化6】

【0021】
スルトンは、それ自体、前駆体アルファ−オメガアルコール−スルホン酸化合物を熱の存在下で脱水環化することによって一般的に製造されうる。この環化は250℃以下、好ましくは50〜200℃の温度で行われうる。これらの温度での加熱は充分な収率で環化を達成するのに必要な任意の時間にわたるものでありうる。水共沸混合物(例えば、ベンゼン/水、もしくはトルエン/水を使用する)を形成する溶液から蒸留によって水を除くために共沸脱水が使用されてもよく、または環化の際に発生する水の除去を伴う反応蒸留が使用されてもよい。あるいは、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドのような脱水剤が使用されてよく、または酸無水物(例えば、無水酢酸)または硫酸を使用するような、脱水酸性条件下で環化が行われてもよい。
【0022】
環化されてスルトンを形成しうるアルファ−オメガスルホン酸化合物は、それ自体、対応するアルファ−オメガヒドロキシ−ブロモ化合物からスルフィン酸を形成することによるような方法によって製造されうる。この反応においては、炭酸水素ナトリウムのような弱塩基の存在下で、臭素基が亜ジチオン酸ナトリウム(Na)によって置き換えられて、中間体アルファ−オメガヒドロキシスルフィナートを形成し、次いでそのスルフィナートを酸化して対応するスルホナートを形成する。スルフィナートの酸化は、水性過マンガン酸カリウムもしくは過酸化水素のような過酸化物の水溶液を用いた酸化のような好適な方法を用いて行われうる。このアルファ−オメガヒドロキシスルホナート塩は、次いで、酸で直接処理することによって、またはカチオン交換樹脂のような固体酸源を用いたプロトン化によって、対応するスルホン酸に変換されうる。有用な、このような樹脂には、スルホン酸強カチオン交換樹脂、例えば、アンバーライト(AMBERLITE(商標))120H、またはアンバーリスト(AMBERLYST(商標))15H樹脂(ロームアンドハースカンパニーから入手可能)が挙げられる。
【0023】
モノマーを製造する方法は、スルトンを求核試薬と反応させることを含む。この文脈において使用される「反応」とは、スルトンの開環を伴う、スルトン酸素に対してアルファの炭素への求核試薬の付加を意味する。求核試薬は本明細書に開示されるスルトンと反応して所望の開環生成物を生じさせうるあらゆる求核性基を含むことができるが、求核試薬は好ましくはポリマーを提供するラジカル、アニオン、カチオンもしくは制御されたフリーラジカル重合方法のような重合条件下で反応することができる重合性基である。
【0024】
好ましくは、求核試薬は、カルボキシもしくはヒドロキシ含有のハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていないC2−30オレフィン含有化合物のオキシアニオンである。より好ましくは、求核試薬は以下のもののオキシアニオンである:C3−20ビニルカルボン酸、C8−20ビニル芳香族カルボン酸、ヒドロキシ含有C5−20ビニルカルボキシラート、またはC7−20ビニルヒドロキシ芳香族化合物。ヒドロキシ芳香族化合物は、使用される場合には、フェノール性ヒドロキシ基、または非フェノール性ヒドロキシ基、例えば、ベンジルヒドロキシ基、またはペンダントヒドロキシ基を含むことができる。
【0025】
典型的な求核試薬には、以下の化合物のオキシアニオンが挙げられる:不飽和カルボン酸、例えば、(メタ)アクリル酸、2−((メタ)アクリロイル)酢酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸など、ヒドロキシ含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラートなど、ノルボルネンのカルボン酸、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸など、およびスチレンカルボン酸;ヒドロキシスチレン、例えば、o、m、もしくはp−ヒドロキシスチレン、またはビニルベンジルアルコール、例えば、4−ビニルベンジルアルコール。
【0026】
オキシアニオンはヒドロキシ含有のハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていないC2−30オレフィン含有化合物を、塩基(この塩基の共役酸については、12より大きいpKaを有する)と反応させることによって形成されるが、ただし、使用されるこの塩基は求核試薬のプロトン化前駆体の脱プロトン化をもたらすのに充分に塩基性である;ただし、この塩基はそれ自体、求核試薬における他の官能基との有意な反応が起こらないように充分に非求核性である。この目的に有用な塩基には、この求核試薬の共役酸についてのプロトンの酸性度に応じて変わるが、炭酸塩塩基、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸グアニジウムもしくは炭酸水素ナトリウムなど;水酸化物塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムなど;アルコキシド塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムアムラート、もしくはカリウムt−ブトキシドなど;アミド塩基、例えば、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルシラジド、ナトリウムヘキサメチルシラジド、カリウムヘキサメチルシラジドなど;アミン塩基、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、t−ブチルアミン、プロトンスポンジ、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピラジン、ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラメチルシクロヘキサン、ジアザビシクロノナン(DBN)、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、およびTroger’s塩基など;水素化物塩基、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ルビジウム、水素化セシウム、水素化カルシウムなど;グリニャール試薬もしくは有機リチウム試薬、例えば、メチルマグネシウムクロリド、もしくはn−ブチルリチウムなど;求核試薬の前駆体と直接反応した、または媒体中に溶解したアルカリ金属、例えば、Li、Na、K、RbおよびCsなど(例えば、アンモニア(Li/NH)、またはグラファイト(例えば、KC))が挙げられる。好ましくは、オキシアニオンは水酸化物(例えば、NaOHもしくはKOH)、アルコキシド(例えば、ナトリウムエトキシド、もしくはカリウムt−ブトキシド)、炭酸塩(例えば、NaCO、もしくはNaHCO)、または水素化物(NaHもしくはKH)塩基の使用により製造される。オキシアニオンがフェノールもしくはアルコールのアニオンである場合には、最も好ましくは、その反応条件は、非プロトン性でエノール化できない溶媒中でNaHもしくはKHを使用するアルコール/フェノール/カルボン酸の脱プロトン化のものである。
【0027】
スルトンと求核試薬との反応は溶媒中で行われうる。この目的のために有用な溶媒には、水、アンモニア、エーテル、例えば、エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンもしくはジオキソランなど;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、2−メチルプロパノール、メチルセロソルブもしくはエチルセロソルブなど;アセトニトリル;アミド、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびヘキサメチルホスホラミド;ジメチルスルホキシド、およびスルホランが挙げられうる。上述の少なくとも1種を含む組み合わせが使用されてよい。反応条件は特に限定されず、約250℃以下の温度で、開環付加をもたらすのに好適な時間にわたって行われうる。
【0028】
よって、重合性モノマーは式(I)のスルトンを使用して上記方法によって製造されうる。このモノマーは一般式(VIII)を有する化合物である:
【化7】

式中、各R、RおよびRは独立してH、F、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFである。また、式(VIII)において、nは1〜10の整数であり、好ましくはnは1、2もしくは3である。
【0029】
また、式(VIII)においては、Aは求核試薬の反応残基である。好ましくは、Aは、本明細書において上述したような、ハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていないC2−30オレフィン含有重合性基を提供する求核試薬の反応残基である。Gは有機もしくは無機カチオンである。
【0030】
より好ましくは、化合物は式(IX)、(X)、(XI)、(XII)または(XIII)を有する:
【化8】

式中、各R、R、R、RおよびR10は独立してH、F、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであり、各R11は独立してF、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであり、Lはハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていないC1−30アルキレン基、C2−30アルケニレン基、単環式もしくは多環式C3−30シクロアルキレン基、単環式もしくは多環式C6−30アリーレン基、または単環式もしくは多環式C7−30アルキレン−アリーレン基であり、kおよびlはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、kが0である場合にはlは1である;mは0〜4の整数であり;nは1、2もしくは3であり;並びに、Gは有機もしくは無機カチオンである。
【0031】
化合物は、より好ましくは、式(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)または(XVIII)のものでありうる:
【化9】

式中、RおよびR10は独立してH、F、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであり、並びに、Gは有機もしくは無機カチオンである。好ましくは、RおよびR10は独立してHまたは−CHである。
【0032】
モノマーは、スルトンと求核試薬との反応によって提供されるアニオン構造に加えて、カチオンGを含み、ここで、このカチオンは求核試薬と会合する(すなわち、求核試薬の塩のカチオンとしての)カチオンであることができる。この方法においては、このカチオンは、例えば、無機カチオン、例えば、アルカリ金属カチオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、もしくはセシウムなど;アルカリ土類金属カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、もしくはストロンチウムなど;典型金属カチオン、例えば、アルミニウム、スズ、鉛もしくはビスマス、または遷移金属カチオン、例えば、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルトもしくは銀であってよく;または、このカチオンは有機カチオン、例えば、アンモニウムカチオン、例えば、アンモニウム、アルキルアンモニウム、例えば、モノ−、ジ−、トリ−およびテトラアルキルアンモニウム、例えば、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、もしくはセチルアンモニウムなど;イミニウムイオン;グアニジニウムイオン、アルキルホスホニウムカチオン;または、アルキル、アリールもしくはアルアルキル基で置換されたヨウ素もしくは硫黄のオニウムカチオンであり得る。上述の少なくとも1種を含む組み合わせが使用されうる。好ましくは、カチオンは、光分解性であるオニウムカチオンであり、従ってこのモノマーは光分解性でもあって、すなわち光酸発生剤(PAG)モノマーである。
【0033】
本明細書において開示されるPAGモノマーはカチオン−アニオン構造をベースにしており、ここで、カチオンは好ましくはアリール置換オニウム(すなわち、二置換ヨードニウムもしくは三置換スルホニウム)カチオン、例えば、トリフェニルスルホニウムカチオンなどであるか、または置換基であるアリール基が、1以上の隣のアリール基に、例えば、当該オニウムを含む複素環構造で、もしくは縮合芳香環システムの部分として、さらに結合されている構造のものである。
【0034】
モノマーが光分解性である場合、すなわち、オキシアニオン求核試薬とスルトンとの反応生成物が光分解性でない第1のカチオンを有する塩である場合には、この方法は、この光分解性でない第1のカチオンを式(XIX)の第2のカチオンに代えることをさらに含む。
【化10】

式中、XはSもしくはIであり、各Rは独立して、C1−30アルキル基、多環式もしくは単環式C3−30シクロアルキル基、多環式もしくは単環式C6−30アリール基、または上述の少なくとも1種を含む組み合わせを含むハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていない基である;場合によっては、2つのR基は単結合で互いにさらに結合されているが、この場合、各Rは独立して単環式C6−30アリール基である;並びに、aは2もしくは3であり、XがIである場合にはaは2であり、またはXがSである場合にはaは3である。
【0035】
好ましくは、Gは式(XX)、(XXI)または(XXII)を有する:
【化11】

式中、XはIもしくはSであり、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立してヒドロキシ、ニトリル、ハロゲン、C1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C1−10アルコキシ、C1−10フルオロアルコキシ、C6−20アリール、C6−20フルオロアリール、C6−20アリールオキシ、またはC6−20フルオロアリールオキシであり、ArおよびArは独立してC10−30縮合もしくは単結合(singly bonded)多環式アリール基であり;R16はXがIである場合には孤立電子対であり、またはXがSである場合にはC6−20アリール基である;並びに、pは2または3の整数であり、XがIである場合にはpは2であり、XがSである場合にはpは3である;qおよびrはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、sおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数である。
【0036】
式(XXI)における典型的なPAGカチオンGには以下の構造が挙げられる:
【化12】

【化13】

【0037】
【化14】

【化15】

【0038】
式中、XはSもしくはIであり、ただしXがIである場合にはR’は孤立電子対であり、RはC1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C1−10アルコキシ、もしくはC1−10フルオロアルコキシ基であり、XがSである場合にはR’はC6−30アリール、C6−30アリーレン、もしくはC7−20アルキル−アリール基である;各R”は独立してH、OH、ハロゲン、C1−20アルキル、C1−20フルオロアルキル、C1−20アルコキシ、C1−20フルオロアルコキシ、C3−20シクロアルキル、C3−20フルオロシクロアルキル、C6−20アリール、C7−20アルキル−アリール、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせであり、各R’’’は独立してH、C1−20アルキル、C1−20フルオロアルキル、C1−20アルコキシ、C1−20フルオロアルコキシ、C3−20シクロアルキル、C3−20フルオロシクロアルキル、C6−20アリール、C7−20アルキル−アリール、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせである。
【0039】
PAGカチオンはモノマー中に含まれることができ、このことは溶液中で第1のカチオン/アニオン対Aが第2のカチオン/アニオン対Bと反応して交換した生成物であるAおよびBを形成する、場合によっては本明細書においてメタセシス反応と称されるカチオン交換反応によって行われうる。メタセシス(すなわち、イオン交換)反応は、例えば、二相媒体中で行われることができ、この二相媒体中では、例えば、臭化トリフェニルスルホニウムのような低活性カチオン/高活性アニオンが、例えば、(4−スルホ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル−2−メチル−2−プロペノアート)のナトリムもしくはカリウム塩のような高活性カチオン/低活性アニオンと交換されることができる。この二相媒体はあらゆる好適な二相媒体、好ましくは、残留する高活性塩(例えば、上記例示においてNaBrもしくはKBr)を溶かしそして取り出すための水相と、低活性塩(例えば、4−スルホ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル−2−メチル−2−プロペノアートのトリフェニルスルホニウム塩)を溶かしそして取り出すためのエーテルもしくは好ましくはジクロロメタンなどの有機媒体とを有するものであることができる。交換は周囲温度で、交換平衡をもたらすのに好適な時間にわたって行われることができ、溶媒、量および時間は当業者によって決定されうる。
【0040】
一般式(VIII)の典型的なモノマーには以下のものが挙げられる:
【化16】

式中、RはH、F、C1−6アルキル、もしくはC1−6フルオロアルキルである。好ましくは、RはHもしくは−CHである。
【0041】
本明細書に開示されるPAGモノマーを含むモノマーは、これらとの共重合に好適なコモノマーと共に重合されうる。好ましくは、モノマーがPAGモノマーである場合には、このPAGモノマーは、酸感受性基を有する1種以上のコモノマーと共に、および場合によって他の特性、例えば、エッチング制御、溶解速度制御および接着性などを提供する他のコモノマーと共に、重合されてコポリマーを形成する。このコポリマーはフォトレジストにおいて、好ましくはEUVリソグラフィのためのフォトレジストにおいて有用であることができ、そして他の波長の放射線よりもEUV放射線に露光される場合に特異的な吸光および分解特性を望ましく有することができる。例えば、EUV放射線源はEUV領域(約12〜14nm、使用される典型的な放射は13.4〜13.5nmである)における放射スペクトルに加えて、光酸発生剤が感受性であり得る長波長で、例えば、248nmおよび/または193nm(これらはDUVおよび193nmリソグラフィで使用されるKrFおよびArFエキシマレーザーの放射帯域でもある)で放射しうる。
【0042】
本発明は以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0043】
ここで使用された全ての化合物は、手順が以下に示されているもの以外は市販されている。核磁気共鳴(NMR)スペクトルはVarian INOVA300(FT300MHz、H;282MHz、19F)スペクトロメータを用いて得られた。Hおよび19Fスペクトルについての化学シフトは、テトラメチルシランまたは内部溶媒共鳴(internal solvent resonance)を内部基準とし、そしてテトラメチルシランに対して相対的に報告される。4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブタノールはシンクエストラボラトリーズ(Synquest Laboratories)から得られた。全ての他の試薬は、他に特定されない限りは、アルドリッチから入手された。溶媒はアルドリッチもしくはフィッシャーサイエンティフィックから得られた。
【0044】
熱重量分析(TGA)はTAインスツルメンツQ5000熱重量分析装置を用い、窒素下で5℃/分の温度勾配割合で操作して得られた。
【0045】
X線結晶学的データはBruker SMART X2Sベンチトップクリスタログラフィックシステムを用いて得られた。単位格子の予備的決定のためにAPEX2バージョン2009.9ソフトウェア(Bruker AXS Inc.)が使用された。積分強度の決定および単位格子精密化はSAINTバージョン7.68Aソフトウェア(Bruker AXS Inc.,2009)を用いて行われた。吸収効果についてのデータは、SADABSバージョン2008/1ソフトウェア(Bruker AXS Inc.)を用いて、マルチスキャン技術を使用して修正された。
【0046】
ポリマーの分子量(Mw)および多分散度(PD)は、1mg/mlのサンプル濃度、およびテトラヒドロフランで流速1ml/分で溶離させた、ポリスチレン標準物質を使用して較正された普遍的較正曲線を用いる、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定された。
【0047】
実施例1:2−メチル−2−プロペン酸4−スルホ−3,3,4,4−テトラフルオロブチルエステルナトリウム塩(1:1)の製造。
【0048】
A.4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルフィン酸ナトリウム中間体の製造。
【化17】

【0049】
4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブタノール(5.00g、22.2mmol)が、アセトニトリル15mLおよび水22mL中のNaHCO(5.60g、66.67mmol)およびNa(11.61g、66.67mmol)のスラリーに添加された。この混合物はワックス浴中で約55℃で2日間攪拌しつつ加熱された。このスラリーは静置させられ、一部分が取り出され、これはH NMR(DO)によって反応が完了していたことを示した。この反応混合物はろ過され、揮発性物質が減圧下でロータリーエバポレータで除去され、スルフィン酸塩中間体を白色固体として生じ、これは再びワックス浴内に置かれ、減圧下80℃で週末の間加熱された。19F NMRスペクトルでスルフィン酸塩中間体の特徴を確認した。19F NMR(DO)d−112.55(dd,2F)、−131.30(dd,2F)。
【0050】
B.4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム中間体の製造(小スケール)。
【化18】

【0051】
上述のように製造された固体が25mLの水に溶かされ、0℃に冷却され、そして5mLの50%水性H(w/w)が水蒸気の発生下で添加された。1時間攪拌した後で、一部分のNMRスペクトルをとると、反応が約50%完了していたことを示した。追加の(5mL)Hが添加され、攪拌が続けられた。NMR分析は反応が完了したことを示した。揮発性物質が減圧下ロータリーエバポレータで除去されて、白色固体を得た。濃厚物中のおよび固体中の過酸化物の存在を確認するために過酸化物試験ストリップが使用され、濃厚物は廃棄され、固体は水中に再溶解された。過酸化物がなくなるまで亜硫酸水素ナトリウムが添加された。このスラリーはろ過され、ロータリーエバポレータで揮発性物質が除去されて、白色固体としてスルホン酸塩を得た。19F NMR(DO)d−112.44(dd,2F)、−117.08(dd,2F)。
【0052】
C.4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルフィン酸ナトリウム中間体の製造(大スケール)。
4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブタノール(19.92g、88.54mmol)が、アセトニトリル60mLおよび水88mL中のNaHCO(22.31g、265.6mmol)およびNa(46.25g、265.6mmol)のスラリーに添加された。この混合物はワックス浴中で約55℃で2日間加熱されたが、多量の固形分が存在したせいで攪拌はされなかった。19F NMRスペクトルは生成物への変換がほとんどなかったことを示した。次いで、温度が約80℃に上げられた。温度が上がるにつれて、この混合物の攪拌を可能にするのに充分に、無機塩(NaHCOおよびNa)が溶解した。追加の亜ジチオン酸ナトリウム(17g)および炭酸水素ナトリウム(15g)が添加された。NMRスペクトルはさらなる反応が起こったことを示した。この反応混合物周囲温度まで冷却されて、追加の水(100mL)およびアセトニトリル(100mL)が添加され、その結果全ての固体材料が溶解した。各層についてNMRスペクトルがとられた。水層はスルフィナートとおそらく少量のスルホナートを含んでいるが、出発材料の臭化物は認められず、一方で、アセトニトリル層はかなりの量の出発材料を示す。これら層が分離された。水層はとっておかれ、アセトニトリル層(200mL)に追加の亜ジチオン酸ナトリウム(30g)および炭酸ナトリウム(38g)が、約100mLの水と共に添加された。この反応混合物は約85℃で一晩加熱された。この溶液が冷却され、ろ過され、従前に分けられていた水層と合わせられ、そしてロータリーエバポレータで揮発性物質が除去された。得られたクランチーな固体が約200mLのエーテルで洗浄され、真空下で乾燥させられた。
【0053】
D.4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム中間体の製造(大スケール)。
上述のように製造された固体が25mLの水に溶かされ、氷浴中で0℃に冷却され、そして50mLの50%水性H(w/w)が水蒸気の発生下で添加された。この反応混合物は一晩攪拌された。19F NMRスペクトルはこの反応が約90〜95%完了していたことを示した。追加の(20mL)H溶液が添加され、NMR分析が反応が完了したことを示すまで攪拌が続けられた。次いで、過酸化物がなくなるまで亜硫酸水素ナトリウムが添加された。次いで、このスラリーはろ過され、ロータリーエバポレータで揮発性物質が除去されて、白色固体を得て、この白色固体は実施例1のパートBで記載されたのと同じ特性性能を有していた。
【0054】
E.4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸中間体の製造。
【化19】

【0055】
4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウムを含んでいた実施例1のパートDからの白色固体がメタノール(約200mL)で抽出され、ろ過されて粒子状物質を除いた。得られた淡黄色溶液は、約8cmのアンバーライト(AMBERLITE(商標))120H酸性カチオン交換樹脂を充填したカラムを通され、スルホン酸としてのプロトン化化合物の明褐色溶液を得た。追加のメタノールが使用されて、残りのスルホン酸をフラッシュした。減圧下で揮発性物質が除去されて、非常に暗褐色オイルを得て、このオイルは黒色小粒子を含んでいた。収率は15.5g、出発4−ブロモ3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブタノールを基準にして77.2%であった。
【0056】
このスルホン酸は、窒素雰囲気下、5℃/分の温度勾配割合で熱重量分析(TGA)によって特徴付けられた。図1は熱重量分析(TGA)プロットデータを示し、この図においては、約150℃に到達するまではこのスルホン酸の分解は約30%の質量減少まで徐々に進行し、約150℃に到達した時点で分解は加速し、分解の最大速度は159.6℃の温度で起こり、そして約245℃の温度で化合物は質量減少の完了に到達することが認められうる。
【0057】
F.3,3,4,4−テトラフルオロブタンスルトンの製造。
【化20】

【0058】
4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸(2.00g、8.84mmol)が、ショートパス蒸留カラムに繋がれた5mLの丸底フラスコに入れられた。このシステムは真空下に置かれ、このフラスコは加熱ワックス浴に沈められ、温度が130℃から徐々に180℃まで上げられた。この温度上昇が起こっている間に、水は蒸留されて蒸留装置の冷却装置領域に入り始めた。この装置が取り外され、このフラスコはマイクロ蒸留装置に再接続され、そして窒素下で加熱が再開された。圧力が徐々に下げられて、その結果、生成物であるスルトンおよび水が留出して、2相液体生成物を形成していた。下のスルトン層はピペットで取り出され、無水硫酸マグネシウムで乾燥させられ、ピペットフィルタを通してろ過されて、無色液体として生成物を得た。
【0059】
G.3,3,4,4−テトラフルオロブタンスルトンの製造(大スケール)。
4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸(6.78g、30.0mmol)が、V−チューブを介してシュレンク管に繋がれた50mLの丸底フラスコに入れられた。このシステムは真空下に置かれ、シュレンク管は液体窒素中に沈められた。このスルホン酸を含むフラスコは加熱ワックス浴に沈められ、温度が徐々に約160℃まで上げられた。生成物であるスルトンおよび水は徐々に留出し、レシーバー容器内で凍結した。融解させた後で、2層が形成していた。下のスルトン層はピペットで取り出され、無水硫酸マグネシウムで乾燥させられ、ろ過されて、無色液体として生成物を得た(3.85g、61.7%)。
【0060】
H.2−メチル−プロペン酸4−スルホ−3,3,4,4−テトラフルオロブチルエステルナトリウムもしくはカリウム塩(1:1)の製造。
【化21】

【0061】
NMRチューブスケール、ナトリウム塩(1:1):
水素化ナトリウム(0.029g、1.2mmol)が1mLのCDCN中のメタクリル酸(0.103g、1.2mmol)にゆっくりと添加された。一晩攪拌後、3,3,4,4−テトラフルオロブタンスルトン(0.250g、1.2mmol)が添加され、そしてこの混合物がNMRチューブに移された。この反応進行はH NMRによって監視された。この混合物は75℃まで徐々に加熱され、75℃の時点で反応は完了した。
【0062】
バルクスケール、カリウム塩(1:1):
メタクリル酸(1.708g、19.85mmol)が、40mLのTHF中の水素化カリウム(1.150g、28.66mmol)にゆっくりと添加された。一晩攪拌後、この反応混合物はろ過され、減圧下で揮発性物質が除去された。3,3,4,4−テトラフルオロブタンスルトン(3.260g、15.66mmol)、メタクリル酸(2.0mL)、および少量のヒドロキノンが上記メタクリル酸カリウムに添加され、この混合物は次いで75℃で一晩加熱された。アセトン(10mL)がこの混合物に添加された。固体が濾別され、追加のアセトンで洗浄され、そして減圧下で乾燥させられた。次いで、固体が水で抽出され、ろ過された。減圧下で揮発性物質が除去されて、白色結晶固体を得た(4.10g、78.8%)。
【0063】
図2は、生成物である2−メチル−2−プロペン酸4−スルホ−3,3,4,4−テトラフルオロブチルエステルカリウム塩(1:1)のORTEPプロットを示す。単結晶x線回折試験に好適な結晶は、実施例1パートH(バルクスケール)の生成物の水溶液のエバポレーションによって成長させられた。結晶は平坦で無色の針の形状に成長した。データセットはBruker SMART X2Sベンチトップクリスタログラフィックシステムを使用した直接方法で集められた。XPREPバージョン2008/2ソフトウェア(Bruker AXS Inc.)は空間群が、式単位CKOSについて、Z=4で、Pl 21/c1であると決定した。この構造はXSバージョン2008/1ソフトウェア(Bruker AXS Inc.)を用いて解析され、そしてその後の構造精密化はXLバージョン2008/4ソフトウェア(Bruker AXS Inc.)を用いて行われた。Fについての173変数での最終的な異方性のフルマトリックス最小二乗精密化は観察されたデータについてR=5.11%に、全てのデータについてR=16.75%に収束した。
【0064】
実施例2
トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホナートの製造。
【化22】

【0065】
1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホン酸カリウム(2g、6.02mmol)および臭化トリフェニルスルホニウム(2.25g、6.57mmol)が、15mLのジクロロメタンおよび15mLの蒸留脱イオン水と共に、100mL丸底フラスコに入れられた。この混合物は36時間にわたって激しく攪拌された。攪拌は停止させられ、この混合物は2つの透明な層に分かれ、有機層が30mLの1%(w/w)水酸化アンモニウム水溶液で2回洗浄され、30mLの蒸留脱イオン水で5回洗浄された。この有機層は硫酸ナトリウムで乾燥させられ、ろ過された。ヒドロキノン(1mg)が添加され、ロータリーエバポレーションおよび高真空によって溶媒が除去されて、無色粘稠オイルとして生成物を得た(2.65g、4.76mmol)。H NMR(d−アセトン):7.9(br)、6.1(s)、5.6(s)、4.4(t)、2.8(m)、1.9(s)。19F NMR(d−アセトン):−112.7(s)、−119.7(s)。
【0066】
実施例3
フェニルジベンゾチオフェニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホナートの製造。
【化23】

【0067】
1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホン酸カリウム(1.91g、5.75mmol)および臭化フェニルジベンゾチオフェニウム(2.14g、6.27mmol)が、15mLのジクロロメタンおよび15mLの蒸留脱イオン水と共に、100mL丸底フラスコに入れられた。この混合物は週末にわたって激しく攪拌された。攪拌は停止させられ、この混合物は2つの透明な層に分かれ、有機層が30mLの1%水酸化アンモニウム水溶液で2回洗浄され、30mLの蒸留脱イオン水で5回洗浄された。ロータリーエバポレーションおよび高真空によってジクロロメタンが除去されて、白色粉体として生成物を得た(2.41g、4.35mmol)。H NMR(d−アセトン):8.6(d)、8.4(d)、8.0(t)、7.8(br)、7.6(t)、6.1(s)、5.6(s)、4.4(t)、2.8(m)、1.9(s)。19F NMR(d−アセトン):−112.7(s)、−119.8(s)。
【0068】
実施例4
トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホナートの共重合(典型的なポリマー)。
2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(3.32g、16.25mmol)、アルファ−(ガンマブチロラクトン)メタクリラート(4.40g、23.75mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(3.13g、6.25mmol)およびトリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(メタクリロイルオキシ)ブタン−1−スルホナート(アセトニトリル中50重量%溶液;4.17g、3.75mmol)が、16.8gの乳酸エチル/シクロヘキサノン(70/30 v/v)に溶解された。2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(1.24g、3.75mmol)がモノマー溶液に溶かされた。80℃の油浴中であらかじめ加熱された容器に少量(〜5mL)のモノマー溶液が入れられ、5分後、この容器に残りのモノマー溶液が4時間にわたって供給された。この反応混合物はさらに2時間加熱された。この反応液は室温まで冷却され、1Lの攪拌されたメチルt−ブチルエーテルおよび2−プロパノール(90/10 v/v)中で沈殿させられた。得られた白色粉体ポリマーは吸引ろ過によって単離され、真空オーブン内で45℃で48時間乾燥させられた(収率7.3g、58%)。
【0069】
本明細書に開示された全ての範囲は終点を含み、その終点は互いに独立して組み合わせ可能である。「場合によって」または「任意の」とはその後に記載された事象もしくは状況が起こってもよく、または起こらなくてもよく、そしてその記載はその事象が起こる例およびその事象が起こらない例を含む。本明細書において使用される場合、「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金もしくは反応生成物を包含する。全ての参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
さらに、用語「第1」、「第2」などは、本明細書においては、順序、品質もしくは重要性を示すものではなく、1つの要素を他のものから区別するために使用されることもさらに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のスルトンを、重合性基を有する求核試薬と反応させることを含むモノマーを製造する方法:
【化1】

式中、各Rは独立してF、C1−10アルキル、フッ素置換C1−10アルキル、C1−10シクロアルキル、もしくはフッ素置換C1−10シクロアルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFであり;nは0〜10の整数であり、並びにmは1〜4+2nの整数である。
【請求項2】
スルトンが下記式のものである請求項1に記載の方法:
【化2】

式中、各Rは独立してF、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであって、ただしRの少なくとも1つはFであり;aは1〜6の整数であり、bは1〜8の整数であり、cは1〜10の整数である。
【請求項3】
スルトンが下記式のものである請求項1に記載の方法:
【化3】

式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立してH、F、C1−10アルキル、もしくはフッ素置換C1−10アルキルであって、ただしR、R、RもしくはRの少なくとも1つはFである。
【請求項4】
スルトンが下記式:
【化4】

のものである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
求核試薬が、カルボキシ含有もしくはヒドロキシ含有のハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていないC2−30オレフィン含有化合物のオキシアニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
求核試薬が、C3−20ビニルカルボン酸、C8−20ビニル芳香族カルボン酸、ヒドロキシ含有C5−20ビニルカルボキシラート、またはC7−20ビニルヒドロキシ芳香族化合物のオキシアニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
求核試薬が(メタ)アクリル酸もしくはp−ヒドロキシスチレンのオキシアニオンである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オキシアニオンが、ヒドロキシ含有のハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていないC2−30オレフィン含有化合物と、塩基とを反応させることにより形成され、前記塩基が前記塩基の共役酸について12より大きいpKaを有する請求項5に記載の方法。
【請求項9】
オキシアニオンとスルトンとの反応生成物が第1のカチオンを有する塩であり、
当該方法が前記第1のカチオンを式:
【化5】

(式中、XはSもしくはIであり、
各Rは独立して、C1−30アルキル基、多環式もしくは単環式C3−30シクロアルキル基、多環式もしくは単環式C6−30アリール基、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせを含むハロゲン化されたもしくはハロゲン化されていない基であり、
場合によっては、2つのR基は単結合で互いにさらに結合されているが、この場合、各Rは独立して単環式C6−30アリール基である、並びに、
aは2もしくは3であり、XがIである場合にはaは2であり、またはXがSである場合にはaは3である)
の第2のカチオンと交換することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項10】
請求項1の方法によって製造された重合性モノマー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−140426(P2012−140426A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−287313(P2011−287313)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】