説明

光重合性インクジェット黒インク、インクカートリッジ、インクジェットプリンタ、印刷物及び製造方法

【課題】皮膚感さ性について安全な光重合性モノマーを用いた低粘度の光重合性インクジェット黒インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェットプリンタ及び印刷物、並びに該インクの製造方法の提供。
【解決手段】皮膚感さ性試験(LLNA法)における感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である光重合性モノマーと重合開始剤を含み、カーボンブラックや不溶分を含まず、かつ60℃粘度が15mPa・s以下であるクリアインクを用い、7重量%以下のカーボンブラックを含有させた、60℃粘度が20mPa・s以下である光重合性インクジェット黒インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性インクジェット黒インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェットプリンタ及び印刷物、並びに該インクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性インクジェットインクに使用する光重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物などが挙げられるが、流通量が多く安価で容易に入手できることから、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びアクリルアミド化合物が好ましい。
しかし、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びアクリルアミド化合物の多くは毒性をもつ。経口毒性や皮膚刺激性については比較的軽度のものも存在するが、インクジェットインクとして使用されている低粘度のものは、触れるとアレルギーを引き起こす皮膚感さ性について安全といえる材料ではない。
一方、インクジェットインクに用いるカーボンブラックなどの顔料を分散させるに際し、顔料表面に高分子分散剤を吸着させて良好な分散状態を得る方法は周知であり、分散性を良好にするために高分子分散剤の分子量などを規定した文献も多数知られているが(特許文献1〜3など)、低粘度化については全く触れられていない。Einstein式で示されるように分散系の粘度は顔料の体積分率に依存するため、高分子分散剤吸着による顔料体積の増加を抑制すべく吸着層の厚さをできるだけ薄くする必要があるが、分散剤をいくら低分子量化しても高分子分散剤の吸着状態を制御できないと、場合によっては厚い吸着層を形成してしまい、低粘度化できない。
また、特許文献4には、顔料の配合に伴う粘度上昇を低減する方法が示されているが、遠心分離により余剰の高分子分散剤を除去するという工程を必要とするため、インク作製工程が煩雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
皮膚感さ性について安全な光重合性モノマーを用いた低粘度の光重合性インクジェット黒インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェットプリンタ及び印刷物、並びに該インクの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、次の1)〜7)の発明によって解決される。
1) 皮膚感さ性試験(LLNA法)における感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である光重合性モノマーと重合開始剤を含み、カーボンブラックや不溶分を含まず、かつ60℃粘度が15mPa・s以下であるクリアインクを用い、7重量%以下のカーボンブラックを含有させた、60℃粘度が20mPa・s以下である光重合性インクジェット黒インク。
2) 前記カーボンブラックが、その表面に高分子分散剤からなる吸着層を有するものであり、カーボンブラックの平均一次粒径をh、吸着層の厚さをdとして、2d+h≦1.1hの関係を満足することを特徴とする1)に記載の光重合性インクジェット黒インク。
3) 前記光重合性モノマーが、下記式(1)で示されるポリエチレングリコールジメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、及びヒドロキシエチルアクリルアミドから選ばれた少なくとも1種の化合物である1)又は2)記載の光重合性インクジェット黒インク。
【化1】

式中、nは9又は14を示す。
4) 1)〜3)の何れかに記載の光重合性インクジェット黒インクを容器に収容したインクカートリッジ。
5) 4)記載のインクカートリッジを装着したインクジェットプリンタ。
6) 1)〜3)の何れかに記載の光重合性インクジェット黒インクを使用して作製した印刷物。
7) 皮膚感さ性試験(LLNA法)における感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である光重合性モノマーと重合開始剤を含み、カーボンブラックや不溶分を含まず、かつ60℃粘度が15mPa・s以下であるクリアインクを用い、上記と同じ光重合性モノマーとカーボンブラック及び分散剤を含む分散液を前記クリアインクで希釈して、カーボンブラックの割合が7重量%以下で、60℃粘度が20mPa・s以下である光重合性インクジェット黒インクを製造する方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、皮膚感さ性について安全な光重合性モノマーを用いた低粘度の光重合性インクジェット黒インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェットプリンタ及び印刷物、並びに該インクの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インクカートリッジの一例のケース(外装)も含めた概略図である。
【図2】インクジェットプリンタの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らが検討を重ねた結果、皮膚感さ性試験(LLNA法)における感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である光重合性モノマーとして使用可能な(メタ)アクリル酸エステル化合物及びアクリルアミド化合物が幾つか存在することを見出した。しかし、何れも粘度が高いため、インク材料として配合したときの粘度上昇を抑えるために工夫が必要である。また、光重合性モノマーを光硬化させるのに必要な重合開始剤によってもインク粘度が増加するので、この点にも配慮しなければならない。
なお、上記LLNA法とは、OECDテストガイドライン429として定められる皮膚感さ性試験であり、文献(例えば、「機能材料」2005年9月号、Vol.25、No.9、P55)に示されるように、皮膚感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満の場合に感さ性について問題なしと判断するものである。
また、MSDS(化学物質安全性データシート)において、皮膚感さ性陰性又は皮膚感さ性なしと評価されたものは、当然上記SI値を満たすので、本発明に包含される。
一方、インクの作製に際し、顔料を配合すると粘度は上昇するから、カーボンブラック顔料の配合による粘度上昇を抑制するためにも工夫が必要である。
粘度を低下させるには溶剤を配合する手段もあるが、溶剤の揮発性を考えると環境面やインクジェット吐出安定性に問題があるためなるべく使用しない方がよい。
【0008】
そこで更に検討した結果、上記光重合性モノマーと重合開始剤を含むが、カーボンブラックやワックスエマルジョンなどの不溶分を含まないインク材料(以下、クリアインクという)の状態で、60℃粘度を15mPa・s以下にすることが可能であり、この条件を満たせば、カーボンブラックを配合してインクジェット黒インク(以下、単にインクともいう)にした後も、60℃粘度が20mPa・s以下という低粘度を維持することができることを見出した。市販のインクジェット用ヘッドのうち、最も高粘度のインクに対応できるものでも60℃粘度20mPa・sが限界であるため、この粘度条件を満たす必要がある。
クリアインクにおいて光重合性モノマーは重合開始剤の溶媒として機能する。すなわち、重合開始剤を光重合性モノマーに溶解させてクリアインクとして用いる。
なお、ワックスエマルジョンは硬化後の塗膜強度確保のための添加剤であるが、これをカーボンブラックに対して過剰に加えると、上記粘度条件を達成できない可能性がある。
【0009】
本発明で用いることができるSI値が3未満の光重合性モノマーの具体例としては、下記一般式(1)で示されるポリエチレングリコールジメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【化2】

式中、nは9又は14を示す。
【0010】
カーボンブラックの配合量はインク全体の7重量%以下とする。この限定は、インクジェット黒インクの市販品の中で最も高い画像濃度が得られるものと同等の画像濃度を得るためには、7重量%配合する必要があることによる。カーボンブラックの配合量の下限はプリンタの種類などによって変わるため数値で示すことは難しい。特に最近は淡い色を出すために希薄なグレーインクを装備するようなケースもあり、従来に比べて極少量のカーボンブラックを配合する場合もあるため、状況に応じて適宜決定すればよい。
本発明のインクは、市販のインクジェット用ヘッドで吐出でき、上記数値範囲であれば市販のインクジェット黒インクと同程度の画像濃度が得られる。
本発明によれば、カーボンブラック分散液中に予め高分子分散剤を加えておくことにより、インクにした際に一定以下の低粘度にでき、かつ、良好にカーボンブラックを分散させることが可能なインクが得られる。
本発明のインクは、クリアインクに用いたのと同じ光重合性モノマーとカーボンブラック及び分散剤を混合した分散液を作製し、このカーボンブラック分散液を前記クリアインクで希釈して作製する。その際、クリアインクはカーボンブラックの分散媒として機能する。
【0011】
クリアインクにカーボンブラックを加えて分散させるには、高分子分散剤をカーボンブラック表面に吸着させる方法が有効である。良好な分散性を得るためには一定以上の厚い吸着層を形成する必要があるが、小粒径のカーボンブラックに厚い吸着層を形成すると、カーボンブラック粒子の体積が大幅に増加することになってしまい、結果として粘度を大きく増大させてしまう。
そこで請求項2のように、カーボンブラックの平均一次粒径をh、該カーボンブラックの表面に高分子分散剤が吸着して形成される吸着層の厚さをdとして、2d+h≦1.1hの関係を満足するようにすれば、本発明のインクを容易に作製することができ、これにより分散剤吸着に伴うカーボンブラックの体積増を抑制でき、市販のインクジェットヘッドで吐出可能な、60℃粘度が20mPa・s以下のインクとすることができる。
上記関係式を整理すると、20d≦h、となるから、平均一次粒径hが70nm以上のカーボンブラックを使用すれば、厚さ3.5nm以上の吸着層を形成できることになる。吸着層の厚さが3.5nmあれば良好な分散状態を得るために十分である。
なお、上記カーボンブラックの平均一次粒径は、毛細管粘度測定法、動的光散乱法又は電子顕微鏡で測定又は観察することにより求めることができる。
高分子分散剤としては、例えばポリエステル系、ポリビニル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリウレタン系などのポリマーを形成し得る1種又は2種以上のモノマーからなるホモポリマー又はコポリマー、あるいはこれらのポリマーであって、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基又はそれらの塩からなる官能基を有するものが使用できる。分子量は数千程度から数十万程度のものが好ましい。市販品としては、味の素社製アジスパー、日本ルーブリゾール社製ソルスパース、楠本化成社製ディスパロンなどを使用することができる。
【0012】
本発明のインクには、増感剤や重合促進剤などの重合を促進するための添加剤、保存安定性確保のための重合禁止剤、画像品質確保のための界面活性剤、硬化後の塗膜強度確保のためのワックスエマルジョンなどを含有させてもよい。
増感剤としては、例えば、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチアオキサントン、2−クロローチオキサントン、1−クロロー4−プロピルチオキサントンなどチオキサントン系化合物やその他にもベンゾフェノン系化合物が挙げられる。
重合促進剤としては、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、安息香酸−2−ジメチルアミノエチル、p−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルなどの3級アミン化合物が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ジ−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン、4−メチル−1−ナフトールなどのフェノール・キノン系化合物やアミン系化合物が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、フルオロアルキル系、ジメチルシロキサン系、アルキル系界面活性剤などが挙げられる。
ワックスエマルジョンとしては、例えば、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル化合物、フッ素系あるいはシリコン系ワックスなどが挙げられる。
本発明のインクは1000mJ/cm以下の光照射で重合させ硬化乾燥させることができる。
また、本発明のインクを使用して作製した印刷物は、仮に工程での不具合などによりわずかに未重合のモノマーが残ったとしても、皮膚感さ性が低いため高い安全性を有する。
【0013】
また、本発明のインクは容器に収容してインクカートリッジとして使用することが好ましい。これによりインクに直接触れる必要がなくなるため手や衣服の汚れを防止できるし、インク補充のための取扱作業を簡略化できる。
インクカートリッジは、インクを容器中に収容するとともに、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋を有するもの、などが好適に挙げられる。
インクカートリッジの一例について、図1を参照して説明する。
インクカートリッジ(200)は、インク注入口(242)からインク袋(241)内にインクを充填し排気した後、該インク注入口(242)を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口(243)に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。インク袋(241)は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋(241)は、図1に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース(244)内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
インクカートリッジ(200)は、インクを収容し、各種インクジェットプリンタに着脱可能に装着して用いることができるものであり、後述する本発明のインクジェット記録装置でも着脱可能に装着して用いることが好ましい。
【0014】
本発明のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジ及びインクを吐出させて記録を行う方式のヘッドを備えている。
印字(吐出)する方法としては、連続噴射型やオンデマンド型が挙げられる。またオンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
本発明のインクジェットプリンタの一例について図2を参照して説明する。
図2において、本発明のインクジェット記録用インクが収容されるインクカートリッジ20は、キャリッジ18内に収納される。ここで、インクカートリッジ20は便宜上複数設けられているが、複数である必要はない。このような状態でインクジェット記録用インクが、インクカートリッジ20からキャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aに供給される。なお、図2において、吐出ノズル面は下方向を向いた状態であるため見えない状態であるが、この吐出ノズルからインクジェット記録用インクが吐出される。
キャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aは、主走査モータ26で駆動される
タイミングベルト23によって、ガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。
一方、特定のコート紙(画像支持体)はプラテン19によって液滴吐出ヘッド18aと
対面する位置に置かれる。なお、図2中、1はインクジェットプリンタ、2は本体筐体、
16はギア機構、17は副走査モータ、25、27はギア機構をそれぞれ示す。
【実施例】
【0015】
以下、実施例、比較例及び参考例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0016】
<クリアインクの作製>
表1に示す光重合性モノマーと重合開始剤を混合してクリアインクA〜Gを作製した。これらの60℃粘度を表1に示す。皮膚感さ性が陽性のモノマーには低粘度のものがあるが(クリアインクAなど)、皮膚感さ性が陰性のモノマーには低粘度のものが少ない。
しかし、表1のクリアインクB〜Kに示すように、適切なモノマー配合組成とすれば、60℃粘度を15mPa・s以下とすることができる。
なお、クリアインクの60℃粘度は、東機産業社製コーンプレート型回転粘度計により恒温循環水の温度を60℃に設定して測定した値である。
【0017】
【表1】

なお、上記表中の60℃粘度を除く数値は重量部である。
【0018】
上記クリアインクB〜Kで用いた各光重合性モノマーのSI値は以下の通りである。
・ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(1.3)
・ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート(1.6)
・γ−ブチロラクトンメタクリレート(2.1)
・トリメチロールプロパントリメタクリレート(1.9)
・トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(1.3)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(皮膚感さ性陰性)
(MSDS:化学物質安全性データシートより)
・カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル(0.9)
・ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート(1.7)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(1.2)
・2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(皮膚感さ性なし)
(MSDS:化学物質安全性データシートより)
【0019】
実施例1〜10、比較例1〜20、参考例1〜3
重合開始剤を添加しない点以外は、上記各クリアインクA〜Kの作製の場合と同量の光重合性モノマーを用い、これに、塩基性官能基含有ポリエステル系分散剤(GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量3700)2重量%と、平均一次粒径が29nm、55nm、76nmの各カーボンブラック15重量%を配合した分散液を作製した。
次いで、インク中のカーボンブラックの配合割合が7重量%となるように、各カーボンブラック分散液に対し、対応する同じ光重合性モノマーを用いたクリアインクA〜Kを混合して希釈し、表2〜12に示す実施例1〜10、比較例1〜20、参考例1〜3の各インクを作製した。
これらのインクは何れも1000mJ/cm以下の光照射で重合して硬化乾燥させることができ、市販のインクジェット黒インクであるリコー製IpsioGX5000黒インクと同等の画像濃度を得ることができた。
表2〜12に、カーボンブラックの平均一次粒径、分散剤の吸着層厚さ、(2d+h)/h、カーボンブラックの配合割合、インクの60℃粘度を示す。
平均一次粒径は、電子顕微鏡(日本電子社製JEM−2010)を用いて測定した値である。
分散剤の吸着層厚さは、十分に希釈したインクについて、実測した相対粘度を用いて、Einstein式(ηr=1+2.5φ、ηr:相対粘度、φ:顔料の体積分率)により求めた顔料の体積分率φ1(吸着層を含む)から、予め秤量した既知の顔料の体積分率φ2(吸着層を含まない)を差し引いた吸着層体積を顔料表面積で除して算出した。即ち次の式により算出した。

分散剤の吸着層厚さ=(φ1−φ2)/顔料表面積

インクの60℃粘度の測定手段は、前述したクリアインクの場合と同様である。
【0020】
表2〜12の結果から、2d+h≦1.1hとすれば、60℃粘度が15mPa・sのクリアインクに対しカーボンブラックを7重量%配合することにより、60℃粘度が20mPa・s以下のインクジェット黒インクを作製できることが分かる。
【0021】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【符号の説明】
【0022】
1 インクジェットプリンタ
2 本体筐体
16 ギア機構
17 副走査モータ
18 キャリッジ
18a 液滴吐出ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
25 ギア機構
26 主走査モータ
27 ギア機構
200 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平10−7968号公報
【特許文献2】特開平10−237367号公報
【特許文献3】特開平10−251589号公報
【特許文献4】特開平10−237368号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚感さ性試験(LLNA法)における感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である光重合性モノマーと重合開始剤を含み、カーボンブラックや不溶分を含まず、かつ60℃粘度が15mPa・s以下であるクリアインクを用い、7重量%以下のカーボンブラックを含有させた、60℃粘度が20mPa・s以下である光重合性インクジェット黒インク。
【請求項2】
前記カーボンブラックが、その表面に高分子分散剤からなる吸着層を有するものであり、カーボンブラックの平均一次粒径をh、吸着層の厚さをdとして、2d+h≦1.1hの関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の光重合性インクジェット黒インク。
【請求項3】
前記光重合性モノマーが、下記式(1)で示されるポリエチレングリコールジメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、及びヒドロキシエチルアクリルアミドから選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1又は2記載の光重合性インクジェット黒インク。
【化3】

式中、nは9又は14を示す。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の光重合性インクジェット黒インクを容器に収容したインクカートリッジ。
【請求項5】
請求項4記載のインクカートリッジを装着したインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかに記載の光重合性インクジェット黒インクを使用して作製した印刷物。
【請求項7】
皮膚感さ性試験(LLNA法)における感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である光重合性モノマーと重合開始剤を含み、カーボンブラックや不溶分を含まず、かつ60℃粘度が15mPa・s以下であるクリアインクを用い、上記と同じ光重合性モノマーとカーボンブラック及び分散剤を含む分散液を前記クリアインクで希釈して、カーボンブラックの割合が7重量%以下で、60℃粘度が20mPa・s以下である光重合性インクジェット黒インクを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−162653(P2012−162653A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24450(P2011−24450)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】