説明

光重合性組成物およびそれを用いた機能性パネル

【課題】低表面自由エネルギー化合物の相溶性に優れた配合を採用することで、多種多様な低表面自由エネルギー化合物の使用を可能としつつ、機能パネルの塗布層に用いた際、耐薬品性や耐温水性等の特性に加え、特に水廻り用部材として好適である防汚性に優れた効果を発揮し得る光重合性組成物、並びにそれをも用いた機能性パネルを提供すること。
【解決手段】本発明の光重合性組成物は、(A)1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有する低極性(メタ)アクリレートオリゴマーと、(B)溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと、(C)低表面自由エネルギー化合物とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低表面自由エネルギー化合物が優れた相溶性を示す光重合性組成物に関し、該組成物を用いることで、特に優れた防汚性を発揮する機能性パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建築用資材としての機能性パネルは、建築物の壁面、床面または天井の壁面として配置される部材であり、その配置される場所に応じ、防音効果や湿度調節性などの様々な機能が付与されている。こうした機能性パネルは、特に住宅内における浴室、洗面所または台所などの水廻り用部材として用いられる場合には、より過酷な使用環境下に耐えうる、防汚性、耐水性、耐湿性など種々の特性を有することが求められる。特に水回り用部材は、水気や湿気に晒されるが故に、水垢やカビ、洗浄剤や染色剤等の薬剤が付着して汚れが容易に発生してしまう。
【0003】
このような汚れに対し、表面自由エネルギーの小さい低表面自由エネルギー化合物を配合することにより、表面自由エネルギーを低下させた組成物を部材表面に塗布して、部材に良好な防汚性を付与することが試みられている。その一方で、低表面自由エネルギー化合物は塗料用組成物への相溶性が芳しくないため、組成物が白濁して充分に硬化した塗膜を形成することができなかったり、塗膜の均一性が損なわれたりする場合もある。
【0004】
こうしたなか、例えば、特許文献1では、低表面自由エネルギー化合物が有する相溶性の問題を改善すべく、塗料硬化物との相溶性基または相溶性セグメント等を有する低表面自由エネルギー化合物を用いた塗料硬化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−69378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、その骨格内に塗料硬化物との相溶性基または相溶性セグメント等を有する低表面自由エネルギー化合物であると、骨格内に高極性部位と低極性部位が混在する分子設計となる。そのような場合、低表面自由エネルギー化合物の配合量が少なすぎると表面自由エネルギーの低下効果が充分に得られないために防汚性が充分に発揮できず、配合量が多すぎるとコスト高になるとともに塗膜が必要以上に軟化して得られる機能性パネルのハードコート性が損なわれるおそれがある。
また、塗料硬化物の組成変更に伴って、低表面自由エネルギー化合物の相溶性も大きく変動する可能性が高く、自由な配合設計が困難な状況にある。
【0007】
そこで、本発明は、低表面自由エネルギー化合物の相溶性に優れた配合を採用することで、多種多様な低表面自由エネルギー化合物の使用を可能としつつ、機能パネルの塗布層に用いた際、耐薬品性や耐温水性等の特性に加え、特に水廻り用部材として好適である防汚性に優れた効果を発揮し得る光重合性組成物、並びにそれをも用いた機能性パネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、特定のオリゴマー、モノマーおよび低表面自由エネルギー化合物を用いることにより、優れた相溶性を発揮して良好な防汚性を付与し得る光重合性組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の光重合性組成物は、
(A)1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有する低極性(メタ)アクリレートオリゴマーと、
(B)溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと、
(C)低表面自由エネルギー化合物
とを含有することを特徴とする。
【0010】
前記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)のn−ヘプタントレランスは、0.5g/10g以上であるのが望ましい。
前記光重合性モノマー(B)は、下記式(1)で表されるモノマーであってもよい。
(CH2=CR1COO)n2 ・・・・・(1)
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数5〜20のn価の炭化水素基を示す。nは1〜4の整数を示す。)。
【0011】
前記低表面自由エネルギー化合物(C)は、フッ素化合物および/またはケイ素化合物であってもよい。
前記光重合性組成物は、前記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記光重合性モノマー(B)との合計100質量部に対し、前記低表面自由エネルギー化合物(C)を0.1〜5.0質量部の量で含有するのが望ましい。
【0012】
本発明の機能性パネルは、上記光重合性組成物を硬化させてなる塗布層と、基材層とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光重合性組成物は、低表面自由エネルギー化合物の相溶性が極めて良好であり、かかる組成物を塗布層として用いることで、防汚性に優れた機能性パネルを容易に得ることができる。こうした良好な相溶性は、低表面自由エネルギー化合物の種類に関わらず、また配合量を低減しても充分に保持することができるので、自由な配合設計が確保されるとともに、ハードコート性等の他の物性を損なうことなくコスト削減を実現することができる。
上記光重合性組成物からなる塗布層を含む本発明の機能性パネルは、特に水回り部材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光重合性組成物は、
(A)1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有する低極性(メタ)アクリレートオリゴマーと、
(B)溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと、
(C)低表面自由エネルギー化合物
とを含有することを特徴としている。
【0015】
[低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)]
本発明の光重合性組成物は、1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有する低極性(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する。低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、極性の低いオリゴマーであり、有機溶剤に対して高い溶解性を示し、下記式(i)で表される1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有するオリゴマーである。
【化1】

上記式(i)中、mは1〜200の整数を示す。
【0016】
また、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)が低極性であることは、具体的には、n−ヘプタントレランスの値で表すことができ、かかる値は好ましくは0.5g/10g以上、より好ましくは0.7g/10g以上である。なお、n−ヘプタントレランスとは、樹脂10gを25℃に保ちながら、これにn−ヘプタンを滴下し、白濁するまで添加することのできるn−ヘプタンの量(g)の値を意味し、有機溶剤に対する溶解性の指標となるものであり、該値が大きいほど低極性であることを示す。
【0017】
上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)としては、例えば、具体的には、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー、フッ素系(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン系(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。これら光重合性オリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε-カプロラクトンの付加物等と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0018】
なかでも、機能性パネルとして耐薬品性および耐染色性以外の好適な特性を付与する観点から、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、これはポリオールとして活性水素基(OH基)を1個または複数個有するブチレンオキサイド変性ポリオールを用い、該ポリオールとポリイソシアネートとからウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させることによって、または該ポリオールにイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを付加させることによって製造されるものである。かかる低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、単官能オリゴマー、2官能オリゴマー、多官能オリゴマーのいずれであってもよいが、得られる光重合性組成物の適度な架橋密度を実現させる観点から、その官能基数は2以上であるのが好ましく、3以上であるのがより好ましい。
なお、ここで官能基数とは、上記官能基の数を複数の分子から求め、これらを平均して1分子中に有する官能基の数として換算した値を意味する。
【0019】
上記ポリオールとして用いるブチレンオキサイド変性ポリオールは、アルカリ触媒の存在下、多価アルコールに1,2‐ブチレンオキサイド(BO)を付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。また、1,2‐ブチレンオキサイド(BO)だけでなく、プロピレンオキサイド(PO)等の他のアルキレンオキサイドを同時に付加重合させたポリエーテルポリオールであってもよい。この場合、BOと他のアルキレンオキサイドとの比率はモル比で20:80〜100:0、好ましくは50:50〜100:0であるのが望ましい。これらブチレンオキサイド変性ポリオールのGPCによる重量平均分子量は、通常100〜15,000、好ましくは500〜5,000である。
【0020】
上記ポリオールとして、上記ブチレンオキサイド変性ポリオールを単独で用いてもよく、他のポリオールとを組み合わせて用いてもよい。この場合、他のポリオールとしては、たとえばプロピレンオキサイド(PO)を付加重合させて得られるポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。なお、ブチレンオキサイド(BO)を付加重合させて得られるポリエーテルポリオールは、用いるポリオール全量中、通常20質量%以上、好ましくは50〜100質量%であるのが望ましい。
【0021】
上記ポリイソシアネートとしては、分子内にイソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、2,4‐トリレンジイソシアネート(2,4‐TDI)、2,6‐トリレンジイソシアネート(2,6‐TDI)、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’‐MDI)、2,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’‐MDI)、1,4‐フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5‐ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン‐1,4‐ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記ウレタンプレポリマーの合成においては、ウレタン化反応用の触媒を用いることが好ましい。該ウレタン化反応用触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチレンジアミン等の環状アミン類;p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等のビスマス系化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これら触媒の中でも、有機スズ化合物が好ましい。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記触媒の使用量は、上記ポリオール100質量部に対して0.001〜1.0質量部の範囲の量であるのが好ましい。
【0023】
また、上記ウレタンプレポリマーに付加させる水酸基を有する(メタ)アクリレートは、水酸基を1つ以上有し、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−またはCH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有する化合物である。該水酸基を有する(メタ)アクリレートは、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加することができる。該水酸基を有するアクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これら水酸基を有するアクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、GPCによる重量平均分子量が、通常400〜100,000、好ましくは800〜10,000である。
【0025】
このような上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を、後述する光重合性モノマー(B)とともに配合すれば、低表面自由エネルギー化合物(C)を極めて良好に相溶させることができるので、得られる光重合性組成物を用いればに優れた防汚性を付与された機能性パネルを実現することができるとともに、光重合性組成物を基材上に塗布して光照射するだけで短時間に硬化させることができ、耐薬品性および耐染色性等の物性にも優れた効果を発揮し得る。
【0026】
[光重合性モノマー(B)]
本発明の光重合性組成物は、溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマー(B)を含有する。このSP値(δ)とは、一般に液体のモル蒸発エネルギー(ΔEv)およびモル体積(V)より、次式によって定義される。
SP値(δ)=(δEv/V)0.5
さらに、SP値はFedors法によれば化学構造のみから推算することができる(「溶解パラメーター値(Solubility Parameter Values)」、ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)、第4版(J,Brandrup他編集)参照)。なお、本明細書においてSP値とは、Fedors法よって算出される値を意味し、該値が低いほど光重合性モノマー(B)が低極性であることを示す。上記光重合性モノマー(B)のSP値は、好ましくは19.6(J/cm3)0.5以下、より好ましくは19.4(J/cm3)0.5以下である。SP値の下限値については特に制限されないが、通常17.0(J/cm3)0.5以上である。
【0027】
このようなSP値を示す光重合性モノマー(B)であると、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)との良好な相溶性を保持しつつ、該モノマー自体が有する極性が有効に低下する。そして用いる光重合性モノマー(B)が低極性であるが故に、後述する低表面自由エネルギー化合物(C)の相溶性の向上に大きく寄与することができ、これから得られる光重合性組成物を硬化させて塗布層を形成した際には、硬化後の塗布層自体の反応性を充分に抑制することも可能になるものと推定される。このように、上記塗布層が形成された本発明の機能性パネルは、低表面自由エネルギー化合物(C)が非常に良好に相溶性を発揮しているために防汚性に優れ、また必要以上に洗浄剤や染色剤などと反応することがなく、良好な耐温水性を保持するとともに良好な耐薬品性や耐染色性をも発現することができる。
【0028】
上記光重合性モノマー(B)としては、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)またはメタクロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましく用いられ、単官能性モノマー、2官能性モノマーおよび多官能性モノマーのいずれであってもよい。
【0029】
単官能性モノマーとしては、たとえば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート;エーテル骨格(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0030】
2官能性モノマーとしては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
多官能性モノマーとしては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら光重合性モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
なお、2種以上の光重合性モノマー(B)を用いた場合のSP値は、該モノマーが有するSP値に各々のモノマーが有するSP値に各配合割合(モノマー全量を1とした場合の各モノマーの割合)を乗じ、これらを加算した値を意味する。たとえば、光重合性モノマー(B)全量1に対し、SP値19.0の光重合性モノマーを3/4、SP値21.0の光重合性モノマーを1/4の量で配合した場合、下記式(X)にしたがって、用いた光重合性モノマー(B)全体のSP値が求められる。
光重合性モノマー(B)のSP値=(19.0×3/4)+(21.0×1/4)=19.5・・・(X)
【0033】
上記光重合性モノマー(B)のなかでも、下記式(1)で表されるモノマーであるのが好ましい。
(CH2=CR1COO)n2 ・・・・・(1)
【0034】
上記式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。
上記式(1)中、R2は炭素数5〜20のn価の炭化水素基を示し、ヘテロ原子を含まず、鎖状であっても環状であってもよい。また、基中の−CH2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。nは1〜4の整数を示す。
【0035】
すなわち、上記式(1)において、たとえば鎖状であって飽和モノマーである場合、n=1のときにR2は炭素数5〜20のアルキル基となり、n=2のときにR2は炭素数5〜20のアルキレン基となる。さらに、鎖状であって飽和モノマーである場合、n=3のときにR2は炭素数5〜20のアルカントリイル基となり、n=4のときに炭素数5〜20のアルカンテトライル基となる。このようなR2としては、たとえば、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH3、シクロヘキシル基、シクロヘプタン基、シクロオクタン基、シクロノナン基、シクロデカン基等のアルキル基、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−等のアルキレン基、下記式(2)で表されるようなアルカントリイル基、下記式(3)で表されるようなアルカンテトライル基などがある。
【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

【0038】
2の炭素数が5未満であると、鎖状の炭化水素基の場合にはモノマーのSP値が上昇する傾向にあり、環状の炭化水素基の場合には入手自体が困難となる。また、R2の炭素数が20を超えると、環状の炭化水素基の場合には得られる光重合性組成物の架橋密度が低下する傾向にある。仮に、架橋密度が必要以上に低下すると、ヘアーカラーなどの染色剤が塗布層内部に浸出しやすくなるため、パネルが染色されてしまうおそれがある。
【0039】
上記式(1)で表されるモノマーとしては、具体的には、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが好ましく、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートがより好ましい。このようなモノマーであると、より好適なSP値を有するために良好な低極性を示す傾向にあり、得られる機能性パネルの防汚性のみならず、耐薬品性や耐染色性をもさらに向上させることが可能となる。また、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の反応性希釈剤としての機能を有効に発揮することもできる。
【0040】
また、上記光重合性モノマー(B)の官能基数は、通常1〜6、好ましくは1〜4である。なお、官能基数が1である場合、架橋密度が上昇する傾向にあるが、官能基数が2〜6、好ましくは2〜4であると、光重合性組成物の架橋反応を適度に保持することができる傾向にあるため、特に染色剤が塗布層内部に浸出してパネルが染色される現象をより有効に抑止しやすくなるものと推定される。したがってこの場合にも、良好な防汚性のみならず、耐薬品性や耐染色性をも有効に保持したまま、好適な硬化性を有する塗布層が形成された機能性パネルを得ることができる。
【0041】
[低表面自由エネルギー化合物(C)]
本発明の光重合性組成物は、低表面自由エネルギー化合物(C)を含有する。低表面自由エネルギー化合物(C)とは、表面自由エネルギーが小さい化合物を意味し、これを含有することによって光重合性組成物の濡れ性を低下させ、かかる組成物からなる塗布層を基材上に形成することによって、水接触角を高くして水垢に代表される種々の汚れの付着を抑制し、機能性パネルの防汚性を向上させることが可能となる。
【0042】
低表面自由エネルギー化合物(C)としては、例えば、フッ素化合物またはケイ素化合物が好適なものとして挙げられ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。かかるフッ素化合物としては、具体的には、−CF3、−CF2H、−CF2CF2−、および−CF2CFH−からなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を有する化合物であるのが望ましい。なお、これらの骨格は昇順するほど好適である。上市のフッ素化合物として、モディパーF200(日油(株)製)やオプツールDAC(ダイキン工業(株)製)等を用いることができる。
【0043】
上記ケイ素化合物としては、具体的には、下記式(ii)で表されるジメチルシロキサン骨格を有する化合物であるのが望ましい。
【化4】

上記式(ii)中、qは1〜200の整数を示す。かかるケイ素化合物としては、サイラプレーン(チッソ製)、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン製)等の上市のシリコーンオイルを用いることができる。
【0044】
[光重合性組成物]
本発明の機能性パネルに用いられる光重合性組成物は、低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、低表面自由エネルギー化合物(C)とを含有している。これら低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との配合量は、質量比で、通常80:20〜20:80、好ましくは30:70〜70:30の量である。モノマーの配合量が少なすぎると、得られる光重合性組成物の粘度が上昇して塗布性が悪化するおそれがあるとともに、耐薬品性および耐染色性等の物性を充分に確保できない可能性がある。また、モノマーの配合量が多すぎると、塗膜の柔軟性が低下して脆性が高くなる傾向にある。したがって、低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との配合量が上記範囲内であると、光重合性モノマー(B)が有する低極性を充分に発揮させることができるため、これらSP値にも起因する、機能性パネルの耐薬品性および耐染色性を向上させつつ、低表面自由エネルギー化合物(C)の優れた相溶性を確保して良好な防汚性を発揮することが可能となる。さらに、光重合性モノマー(B)が低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)に対して有効な希釈剤として作用することも可能となり、光重合性組成物が適度な粘度を呈しやすく、良好な塗布性をも付与することができる。
【0045】
また、低表面自由エネルギー化合物(C)の配合量は、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との合計100質量部に対し、通常0.1〜5.0質量部、好ましくは0.1〜4.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部の量である。低表面自由エネルギー化合物(C)の配合量が0.1質量部未満であると、充分な防汚性を実現できないおそれがあり、5.0質量部を超えると、塗膜が必要以上に軟化してハードコート性が損なわれるおそれがあるとともに、相溶性が充分に確保できない化合物量が増大するおそれがある。
【0046】
なお、上記光重合性組成物は、モノマーとして上記所定のSP値を有する光重合性モノマー(B)のほか、本発明の効果を損なわない範囲内で、さらに上記光重合性モノマー(B)以外のモノマーを含有してもよい。すなわち、他のモノマーを配合する場合、他のモノマー各々のSP値から上記式(X)にしたがって算出されるSP値が、上記SP値の範囲内であればよい。
【0047】
上記光重合性組成物には、公知の光重合開始剤を用いることができる。該光重合開始剤は紫外線を照射させることによって、上述した低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との重合を開始させる作用を奏する。該光重合開始剤としては、具体的には、たとえば、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノンおよび3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記光重合性組成物における光重合開始剤の配合量は、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲の量であるのが望ましい。光重合開始剤の配合量が0.1質量部未満では、重合反応を開始させる効果が小さく、一方、10質量部を超えると、重合反応を開始させる効果が飽和する一方、原料のコストが高くなる。
【0048】
また、上記光重合性組成物には、求められる硬化反応性や安定性等を考慮し、必要に応じてさらに光増感剤を含有させてもよい。該光増感剤は、光を照射させることによって、エネルギーを吸収し、該エネルギーまたは電子が重合開始剤に移動して、重合を開始させる作用を有する。該光増感剤としては、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。これら光増感剤の配合量は、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲の量であるのが望ましい。
【0049】
さらに、上記光重合性組成物には、求められる硬化反応性や安定性等を考慮し、必要に応じて重合禁止剤を含有させてもよい。該重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエ−テル、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-キノン等が挙げられる。これら重合禁止剤の配合量は、上記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲の量であるのが望ましい。
【0050】
また、上記塗布層の形成に用いる光重合性組成物は、希釈溶媒としてエーテル、ケトン、エステル等の有機溶媒を含有していてもよく、該有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、または乳酸ブチル等が挙げられる。これらの希釈溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記光重合性組成物は、上述のとおり必要に応じて希釈溶媒を用い、塗布液状としてこれを基材上の面に塗布する。塗布する方法には公知の方法を採用することができ、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、押出コート、スピンコート等が挙げられる。
【0052】
[塗布層]
上記光重合性組成物を基材上に塗布し、次いで光硬化させることによって、基材層上に塗布層を形成する。光硬化させる方法としては、紫外線を照射させる方法が一般的である。塗布層を形成する基材層上の面は、表面および裏面のうち、一方の面だけであっても双方の面であってもよく、必要に応じて適宜選択すればよい。なお、光重合性組成物を硬化させる際の光の照射量は、紫外線を採用する場合、通常、照射強度20〜2000mW/cm2、照射量100〜5000mJ/cm2であり、これによって上記光重合性組成物は、通常数秒〜数十秒で硬化する。このように短時間で硬化させることが可能であるので、得られる機能性パネルの生産性向上を図ることができる。
【0053】
上記塗布層の厚さは、要求される意匠性や耐薬品性の程度から適宜選択し得るものであり、特に限定されないが、通常1μm〜200μmの範囲の厚さであると想定される。
【0054】
なお、紫外線を照射する場合、紫外線硬化反応はラジカル反応であるため、酸素による阻害を受けやすい。そのため、上記光重合性組成物を基材に塗布した後、酸素との接触を回避し得るよう、窒素雰囲気下で該組成物を硬化させてもよい。
また、光硬化させることによって形成された塗布層の表面自由エネルギーは、良好な防汚性を充分に確保する観点から、通常12〜30mJ/m2であるのが望ましい。
【0055】
[基材層]
本発明の機能性パネルに用いられる基材層の材質としては、スレート、コンクリート、金属、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ガラス等の無機質材;木質材のほか、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、不飽和ポリエステル樹脂等の有機質材;およびこれらの複合材が挙げられる。なかでも、有機質剤にガラス繊維や炭素繊維などの繊維を加えた材質、いわゆるFRP(繊維強化プラスチック)であるのが好ましい。FRPとしては、不飽和ポリエステル樹脂、充填剤およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含むシート状のシートモールディングコンパウンド(SMC)、SMCと同様の複合材であって短繊維を含む塊状のBMCなどが挙げられる。一般に、FRPは、熱硬化性樹脂、有機過酸化物(硬化剤)、充填剤、低収縮剤、内部離型剤、強化材、架橋剤、および増粘剤などを配合したものであって、所定の温度に設定した金型内に入れて加圧し、建材として配置する場所に応じた形状に成形して用いられるものである。なかでも、熱可塑性樹脂として不飽和ポリエステル、充填剤、および強化材としてガラス繊維もしくは炭素繊維を含むFRPであると、得られる機能性パネル全体の強度および耐久性等をより向上させることができる。
【0056】
不飽和ポリエステルは、無水マレイン酸、フマル酸などの多塩基酸の不飽和酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリメチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチルプロパンモノアリルエーテル、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールジオキシプロピルエーテルなどの多価アルコールとから生成される。
【0057】
充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。コストダウンの観点からは炭酸カルシウムが好ましく、FRP自体の耐薬品性を向上させる観点からは水酸化アルミニウムが好ましい。しかしながら上述のとおり、上記塗布層を形成すれば、基材として充填剤に炭酸カルシウムを用いたFRPを採用しても、機能性パネル全体の耐薬品性を充分に向上させることができるため、低コストのFRPからなる基材層を有した機能性パネルを容易に実現できる。
【0058】
強化材としてのガラス繊維および炭素繊維は、繊維長が20〜50mm程度、繊維径が5〜25μm程度のものが好適に用いられ、FRP中に10〜70質量%の量で含有されているのが望ましい。上記基材層として用いられるFRPは、これらの成分を混合し、FRP製造装置などにより所定の厚みおよび大きさを有するFRPとして製造される。
【0059】
なお、基材層の厚さは、機能性パネルの用途により変動し得るが、通常2.5mm以上である。厚さの上限は特に制限されず、適宜選択することができる。
【0060】
[機能性パネル]
本発明の機能性パネルは、上記塗布層と基材層を含み、該塗布層は該基材層上に形成されてなる。機能性パネル全体の厚さは、通常、2.5mm以上であるのが好ましい。機能性パネル全体の厚さの上限は特に制限されず、上記塗布層を基材層上の表面および裏面の双方に形成してもよく、必要に応じてこれら基材層および塗布層に加え、これらの層間に種々の材質からなる中間層を形成した多層構造としてもよい。この際、上記塗布層は上述のとおり優れた防汚性のみならず、耐薬品性および耐染色性をも奏するため、該塗布層を機能性パネルの最表面層として形成するのが望ましい。中間層としては、たとえば、基材層と塗布層との接着性を向上させるためのアンダーコート層、機能性パネルの意匠性を向上させるための模様や色彩を付与した化粧層等が挙げられる。
【0061】
このようにして得られる本発明の機能性パネルは、基材層に上記特定の塗布層が形成されているため、優れた防汚性を発揮するとともに耐温水性や耐薬品性、耐染色性にも優れており、水垢に代表される種々の汚れの付着を有効に抑制しつつ、酸やアルカリを含んだ刺激性の強い洗浄剤の使用によっても変質や劣化が発生しにくい。また、ヘアーカラーのような染色剤の使用によっても変色や染色が生じにくい。したがって、本発明の機能性パネルは、特に住宅内の浴室または台所に配置される機能性パネルとして好適である。
【0062】
また、基材層として、不飽和ポリエステル樹脂およびガラス繊維もしくは炭素繊維を含むFRPを採用すれば、優れた防汚性、耐薬品性および耐染色性だけでなく、さらに優れた耐久性が付与された機能性パネルを実現することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
[製造例1:オリゴマー(a)の調製]
グリセリン(関東化学(株)製)1molに水酸化カリウムを触媒として、反応温度110℃でエチレンオキサイド6molを付加してポリオールを得た。上記ポリオールに、2,4−トリレンジイソシアネート3molを窒素ガス導入管、攪拌機及び冷却管の付いた反応容器に仕込み、70℃で2時間反応させた。
【0065】
次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート6mol、触媒として微量のジブチル錫ジラウレートを徐々に加え、さらに70℃で15時間反応させて、重量平均分子量約1300のポリエチレンオキサイド単位を有するウレタンアクリレートオリゴマー(a)を得た。
【0066】
[製造例2:オリゴマー(b)の調製]
グリセリン(関東化学(株)製)1molに水酸化カリウムを触媒として、反応温度110℃でプロピレンオキサイド6molを付加してポリオールを得た。上記ポリオールに、2,4−トリレンジイソシアネート3molを窒素ガス導入管、攪拌機及び冷却管の付いた反応容器に仕込み、70℃で2時間反応させた。
【0067】
次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート6mol、触媒として微量のジブチル錫ジラウレートを徐々に加え、さらに70℃で15時間反応させて、重量平均分子量約1300のポリプロピレンオキサイド単位を有するウレタンアクリレートオリゴマー(b)を得た。
【0068】
[製造例3:オリゴマー(c)の調製]
CaPa3050(パーストープ社製)1molに、2,4−トリレンジイソシアネート3molを窒素ガス導入管、攪拌機及び冷却管の付いた反応容器に仕込み、70℃で2時間反応させた。
【0069】
次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート6mol、触媒として微量のジブチル錫ジラウレートを徐々に加え、さらに70℃で15時間反応させて、重量平均分子量約1400のエステル骨格を有するウレタンアクリレートオリゴマー(c)を得た。
【0070】
[製造例4:オリゴマー(d)の調製]
プロピレングリコール(関東化学(株)製)1molに水酸化カリウムを触媒として、反応温度110℃でブチレンオキサイド12molを付加してポリオールを得た。上記ポリオールに、2,4−トリレンジイソシアネート2molを窒素ガス導入管、攪拌機及び冷却管の付いた反応容器に仕込み、70℃で2時間反応させた。
【0071】
次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート4mol、触媒として微量のジブチル錫ジラウレートを徐々に加え、さらに70℃で15時間反応させて、重量平均分子量約1500のブチレンオキサイド単位を有するウレタンアクリレートオリゴマー(x)を得た。
【0072】
ペンタエリスリトール(関東化学(株)製)1molに水酸化カリウムを触媒として、反応温度110℃でブチレンオキサイド4molを付加してポリオールを得た。上記ポリオールに、2,4−トリレンジイソシアネート4molを窒素ガス導入管、攪拌機及び冷却管の付いた反応容器に仕込み、70℃で2時間反応させた。
【0073】
次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート8mol、触媒として微量のジブチル錫ジラウレートを徐々に加え、さらに70℃で15時間反応させて、重量平均分子量約1500のブチレンオキサイド単位を有するウレタンアクリレートオリゴマー(y)を得た。
【0074】
上記ウレタンアクリレートオリゴマー(x)とウレタンアクリレートオリゴマー(y)とをアクリル官能基比で50:50になるように混合し、平均官能基数3、重量平均分子量約1500の1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(d)を得た。
【0075】
[製造例5:オリゴマー(e)の調製]
プロピレングリコール(関東化学(株)製)1molに水酸化カリウムを触媒として、反応温度110℃でブチレンオキサイド8molを付加してポリオールを得た。上記ポリオールに、2,4−トリレンジイソシアネート2molを窒素ガス導入管、攪拌機及び冷却管の付いた反応容器に仕込み、70℃で2時間反応させた。
【0076】
次に、ペンタエリスリトールトリアクリレート4mol、触媒として微量のジブチル錫ジラウレートを徐々に加え、さらに70℃で15時間反応させて、重量平均分子量約1600の1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有するウレタンアクリレートオリゴマー(e)を得た。
【0077】
得られた各オリゴマーにつき、下記に示す方法に従ってn−ヘプタントレランスを測定した。結果を表1に示す。
【0078】
《n−ヘプタントレランスの測定》
各種オリゴマー10gを25℃に保ちながら、ここにn−ヘプタンを滴下し、白濁するまで添加して、この際におけるn−ヘプタンの量(g)の値を測定した(単位:g/10g)。
【0079】
【表1】

【0080】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
表2〜3に示す配合量に従い、攪拌装置に各種オリゴマーおよび光重合性モノマーを投入して混合し、さらに低表面自由エネルギー化合物を投入し、次いで光重合開始剤(IRGACURE 184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1質量部を加えて2分間攪拌し、脱泡処理を施して各光重合性組成物を得た。
【0081】
得られた光重合性組成物を用い、下記方法に従って、組成物中における低表面自由エネルギー化合物(C)の相溶性を評価した。結果を表2〜3に示す。
【0082】
《相溶性の評価》
得られた光重合性組成物を目視にて判定し、良好な相溶性を発揮して透明であるものを○、明らかに白濁または層分離しているものを×として評価した。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
※1:フッ素化合物、モディパーF200(日油(株)製)
※2:ケイ素化合物、TSF4452、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製
※3:フッ素化合物、オプツールDAC(ダイキン工業(株)製)
※4:ケイ素化合物、サイラプレーンFM7725(チッソ製)
※5:オリゴマーとモノマーとの合計100質量部に対する配合量
※6:1,9−ノナンジオールアクリレート(共栄社化学(株)製)、SP値=19.2(J/cm3)0.5
※7:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製)、SP値=20.2(J/cm3)0.5
※8:アクリロイルモルフォリン(新中村化学工業(株)製)、SP値=25.0(J/cm3)0.5
※9:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製)、SP値=18.7(J/cm3)0.5
【0086】
上記結果によれば、低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と光重合性モノマー(B)とを配合した実施例1〜3は、いずれの低表面自由エネルギー化合物(C)を配合した場合にも優れた相溶性を発揮し、配合量を低減してもその特性を維持することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,2−ポリブチレンオキサイド単位を有する低極性(メタ)アクリレートオリゴマーと、
(B)溶解パラメーター(SP値)が20.0(J/cm3)0.5以下である光重合性モノマーと、
(C)低表面自由エネルギー化合物
とを含有することを特徴とする光重合性組成物。
【請求項2】
前記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)のn−ヘプタントレランスが、0.5g/10g以上であることを特徴とする請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記光重合性モノマー(B)が、下記式(1)で表されるモノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の光重合性組成物;
(CH2=CR1COO)n2 ・・・・・(1)
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数5〜20のn価の炭化水素基を示す。nは1〜4の整数を示す。)。
【請求項4】
前記低表面自由エネルギー化合物(C)が、フッ素化合物および/またはケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光重合性組成物。
【請求項5】
前記低極性(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記光重合性モノマー(B)との合計100質量部に対し、前記低表面自由エネルギー化合物(C)を0.1〜5.0質量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光重合性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光重合性組成物を硬化させてなる塗布層と、基材層とを含むことを特徴とする機能性パネル。

【公開番号】特開2011−168758(P2011−168758A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56551(P2010−56551)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】