説明

光重合性組成物

【課題】粘度が低くて取り扱いが容易であり、製造が容易で安価に製造可能な光重合性組成物を提供する。
【解決手段】第1発明の光重合性組成物は、コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの末端水酸基が重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのエポキシ基に付加した重合性高分岐ポリマーと、重合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを含む。第2発明の光重合性組成物は、第1発明の光重合性組成物における重合性高分岐ポリマーの水酸基がエーテル化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線や光や電子線等のエネルギー照射によって硬化する光重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線等のエネルギー照射によって硬化する樹脂は、様々な産業分野において利用されている。例えば、光照射によって硬化する樹脂は、リソグラフィーのための材料として電子デバイス作製等に利用されている。近年、電子デバイスの構造はますます微細化しており、光硬化性樹脂を用いたリソグラフィー技術において、加工精度の更なる向上が求められている。
【0003】
従来、光リソグラフィーに用いられる光重合性組成物には、光化学反応を起こす高分子樹脂(プレポリマー)と、プレポリマーの希釈剤としての重合性の低分子(モノマー)と、光化学反応を開始させるための開始剤とから構成されているものがある(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
プレポリマーには、アクリル酸/1,6−ヘキサンジオール/アクリル酸(下式1)、無水フタル酸/プロピレンオキサイド/アクリル酸(下式2)、トリメリット酸/ジエチレングリコール/アクリル酸(下式3)等の比較的大きな分子量からなるポリエステル系紫外線硬化樹脂がよく用いられている。
【化1】

【0005】
しかし、プレポリマーは極めて粘度が高く、塗布等の取り扱いが困難なため、プレポリマーと共重合可能な多官能性のモノマーが希釈剤として加えられることが多い。この希釈剤は、プレポリマーよりも低分子量であり、これをプレポリマーに加えることにより、粘度を下げることができる。なお、プレポリマーを溶剤で希釈することによっても粘度を下げることは可能となるが、これでは光照射前に溶剤が揮発して表面に凹凸が生じてしまい、光硬化における加工精度が低下するという問題が生ずる。また、プレポリマーを溶剤で希釈した場合、溶剤の揮発によって粘度が変化してしまい、取り扱いも困難となる。
【0006】
このため、本発明者らは、特異な分岐構造を有するデンドリティック高分子の末端に、重合可能な炭素−炭素二重結合やエポキシ基を修飾させた重合性デンドリティック高分子を既に開発している(特許文献4及び特許文献5)。これらの重合性デンドリティック高分子は、大きな分子量を有する割には粘度が小さいという性質を有しており、これをプレポリマーとして用いることにより、粘度が低くて取り扱いが容易な光重合性組成物となる。
【0007】
なお、本発明に関係する技術として、特許文献6には、グリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−270973号公報
【特許文献2】特開平9−5997号公報
【特許文献3】特開平10−60655号公報
【特許文献4】特開2007−16154号公報
【特許文献5】特開2007−246483号公報
【特許文献6】特表2002−533495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献4及び5に記載の重合性デンドリティック高分子は、分岐構造を段階的に延ばして製造されるため、製造工程数が多くて手間がかかり、製造コストが高騰化するという問題があった。本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであって、粘度が低くて取り扱いが容易であり、製造が容易で安価に製造可能な光重合性組成物を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
高度に分岐した構造を有するデンドリティック高分子には、多官能基を有するモノマーを一段階づつ化学反応させて分岐構造を形成させたデンドリマーと、ABx型モノマーを重縮合させて一気に分岐構造を形成する高分岐ポリマーとが知られている。上記特許文献4及び5に記載の重合性デンドリティック高分子はデンドリマーである。発明者らは、デンドリマーの代わりに、製造が容易な高分岐ポリマーに重合性の官能基を修飾させた重合性高分岐ポリマーを光樹脂組成物の重合性成分として用いることにより、上記従来の問題点を解決できるのではないかと考え、鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明における第1発明の光重合性組成物は、コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの末端水酸基が重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのエポキシ基に付加した重合性高分岐ポリマーと、該重合性高分岐ポリマーと結合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを含むことを特徴とする。
【0011】
第1発明の光重合性組成物は、重合可能な炭素−炭素二重結合が修飾された重合性高分岐ポリマーと、該重合性高分岐ポリマーと結合可能な重合性モノマーとが含まれており、さらに光重合開始剤が含まれている。このため、この光重合性組成物に紫外線や可視光線や電子線等のエネルギーが照射されると、光重合開始剤からラジカルやカチオン等の重合開始剤が発生し、高分岐ポリマーと重合性モノマーとが結合し、さらには重合性モノマーどうしが重合し、硬化する。このため、集積回路の回路形成用パターン印刷等に利用することができる。
【0012】
また、第1発明の光重合性組成物に含まれている重合性高分岐ポリマーは、コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合して高分岐ポリマーとなっているため、高分岐ポリマーの特徴である、大きな分子量を有する割には粘度が小さいという性質を有している。このため、プレポリマーを含有する光重合性組成物と比較して、粘度が小さくハンドリングが容易で、印刷した場合の精度も高めることができる。
また、重合性高分岐ポリマーはモノマーを重縮合させて一気に分岐構造を形成することができるため、製造工程数が少なくて合成が容易であり、製造コストを低廉化することができる。
【0013】
また、重合性モノマーとは、重合性高分岐ポリマーと結合可能な化合物であればよく、モノマーが何個か結合したオリゴマーも含むものとする。重合性モノマーとしては、1分子に1つ以上の(メタ)クリル基を有するアクリル系モノマーを用いることがでる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ビス(3’−アクリルオキシエトキシ−2’−ヒドロキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを挙げることができる。発明者らは、アクリル系モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた光重合性組成物により、光照射で確実に重合物を得られることを確認している。
【0014】
また、光重合開始剤は光照射によってラジカルを発生する光ラジカル発生剤が好ましい。光ラジカル発生剤としては、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジ−n−ブチルアミノ)−4’−(ジエチルアミノ)スチルベン、ビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどを挙げることができる。また、下記化学式(4)及び化学式(5)の光ラジカル発生剤を用いることも好ましい。これらの光ラジカル発生剤は、強度の弱い光に対しても効率よくラジカルを発生するため、高感度の光重合性樹脂組成物とすることができる。
【化2】

【0015】
また、重合性モノマーとしては、1分子に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系モノマーを用いることもできる。具体的には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリ(ジメチルシロキサン)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を挙げることができる。その他、Poly[(phenyl glycidyl ether)-co-formaldehyde](ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド)やPoly(bisphenol A-co-epichlorohydrin), glycidyl end-caped(ポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン,グリシジルエンドキャップト)などを用いることもできる。Poly[(phenyl glycidyl ether)-co-formaldehyde](ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド)やPoly(bisphenol A-co-epichlorohydrin), glycidyl end-caped(ポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン,グリシジルエンドキャップト)などを用いることもできる。発明者らは、エポキシ系モノマーとして3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパンを用いた光重合性組成物により、光照射で確実に架橋物が得られることを確認している。
【0016】
光重合開始剤は、光照射によって酸を発生する光酸発生剤が好ましい。このような光酸発生剤としては、例えば[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウム-9,10-ジメトキシアントラセン-2-スルホネート、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジスルフェニルジスルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオルアンチモネート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ]フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−ジフェニル−スルフォニオ]フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。また、特開2004−255564号公報に記載されているオニウム性光酸発生剤、ヒドロキシ基含有芳香族スルホン酸のジフェニルヨードニウム塩類のイオン性光酸発生剤、DNQ(diazonaphthoquinone)類の光酸発生剤、ニトロベンジルスルホン酸類の非イオン性光酸発生剤を用いることもできる。光酸発生剤は触媒的に少量配合されるが、具体的な配合割合としては、0.5〜1.0重量%が好ましい。
【0017】
さらに、第1発明の光重合性組成物は、光増感剤が含まれていることが好ましい。こうであれば、光照射によって光増感剤が励起され、さらに励起された光増感剤によって重合開始剤がカチオンやラジカルを発生させることとなる。このため、光に対する重合性の感度を高めることができる。このような光増感剤として例えば、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0018】
重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルとしては、酸素を挟んでグリシジル基と反対側に重合可能な炭素−炭素二重結合を有する非対象エーテルであれば用いることができる。このようなグリシジルエーテルとして、例えばアリルグルシジルエーテルや、3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0019】
また、コア分子としては、グリシドールのエポキシ基と反応可能な水酸基を有する分子であれば、用いることができる。このようなコア分子としては、グリセロール、ジグリセリン、チオグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、meso−エリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、ヘキサメチレングリコール、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−フェニルジエタノールアミン、2−フェニル−1,3−プロパンジオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、1,2,3−ブタントリオール、アラビトール、リビトール、フロログルシノール、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン、ロイコキニザリン、キニザリン、アントラルフィン、クリサジン、ビスフェノールA、2,6−ジヒドロキシアントラキノン、プルプリン、アリザリン、1,8,9−トリヒドロキシアントラセン、ビス(3−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル−4,4’−ビフェノール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、及びトレイトール等が挙げられる。
発明者らは、コア分子としてトリエタノールアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン及びN−フェニルジエタノールアミンを用い、さらに重合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを混合して光重合性組成物としたものが、紫外線照射によって確実に硬化することを確認している。
【0020】
以上のように、第1発明の光重合性組成物では、コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの末端水酸基が重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのエポキシ基に付加した構造の重合性高分岐ポリマーが含まれているが、エポキシ基への付加における開環によって生じた水酸基のエーテル化により、新たな構造の重合性高分岐ポリマーとし、これを光重合性組成物を構成する成分としても良い。
【0021】
すなわち、第2発明の光重合性組成物は、コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの末端水酸基が重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのエポキシ基に付加した構造とされており、さらに該付加における該エポキシ基の開環によって生じた水酸基がエーテル化された重合性高分岐ポリマーと、重合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを含むことを特徴とする。
【0022】
第2発明の光重合性組成物においても、重合可能な炭素−炭素二重結合が修飾された重合性高分岐ポリマーと、該重合性高分岐ポリマーと結合可能な重合性モノマーとが含まれており、さらに光重合開始剤が含まれている。このため、この光重合性組成物に紫外線や可視光線や電子線等のエネルギーが照射されると、光重合開始剤からラジカルやカチオン等の重合開始剤が発生し、高分岐ポリマーと重合性モノマーとが共重合し、硬化する。このため、集積回路の回路形成用パターン印刷等に利用することができる。
【0023】
また、第2発明の光重合性組成物に含まれている重合性高分岐ポリマーは、コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合して高分岐ポリマーとなっているため、高分岐ポリマーの特徴である、大きな分子量を有する割には粘度が小さいという性質を有している。このため、プレポリマーを含有する光重合性組成物と比較して、粘度が小さくハンドリングが容易で、印刷した場合の精度も高めることができる。
また、重合性高分岐ポリマーはモノマーを重縮合させて一気に分岐構造を形成することができるため、製造工程数が少なくて合成が容易であり、製造コストを低廉化することができる。
【0024】
また、重合性モノマーとは、重合性高分岐ポリマーと結合可能な化合物であればよく、モノマーが何個か結合したオリゴマーも含むものとする。重合性モノマーとしては、1分子に1つ以上の(メタ)アクリル基を有するアクリル系モノマーを用いることができ、この場合の光重合開始剤は光照射によってラジカルを発生する光ラジカル発生剤が好ましく、前述した光ラジカル発生剤を用いることができる。発明者らは、アクリル系モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた光重合性組成物により、光照射で確実に重合物を得られることを確認している。
【0025】
また、重合性モノマーとしては、1分子に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系モノマーを用いることもできる。この場合の光重合開始剤は、光照射によって酸を発生する光酸発生剤が好ましく、前述した光酸発生剤を用いることができる。発明者らは、エポキシ系モノマーとして2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパンと3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを用いた光重合性組成物により、光照射で確実に重合物を得られることを確認している。
【0026】
さらに、第2発明の光重合性組成物は、光増感剤が含まれていることが好ましい。こうであれば、光照射によって光増感剤が励起され、さらに励起された光増感剤によって重合開始剤がカチオンやラジカルを発生させることとなる。このため、光に対する重合性の感度を高めることができる。
【0027】
重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルとしては、酸素を挟んでグリシジル基と反対側に重合可能な炭素−炭素二重結合を有する非対象エーテルであれば用いることができる。このようなグリシジルエーテルとして、例えばアリルグルシジルエーテルや、3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0028】
また、エーテル化としては、水酸基に容易に修飾できるものが好ましく、例えば、アリルエーテル化やメチルエーテル化、3,5−ビス(ブテニルオキシ)ベンジルエーテル化等が挙げられる。
【0029】
さらに、コア分子としては、グリシドールのエポキシ基と反応可能な水酸基を有する分子であれば、用いることができる。このようなコア分子としては、グリセロール、ジグリセリン、チオグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、meso−エリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、ヘキサメチレングリコール、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−フェニルジエタノールアミン、2−フェニル−1,3−プロパンジオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、1,2,3−ブタントリオール、アラビトール、リビトール、フロログルシノール、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン、ロイコキニザリン、キニザリン、アントラルフィン、クリサジン、ビスフェノールA、2,6−ジヒドロキシアントラキノン、プルプリン、アリザリン、1,8,9−トリヒドロキシアントラセン、ビス(3−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル−4,4’−ビフェノール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、及びトレイトール等が挙げられる。
発明者らは、コア分子としてトリエタノールアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン及びN−フェニルジエタノールアミンを用い、さらに重合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを混合して光重合性組成物としたものが、紫外線照射によって確実に硬化することを確認している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施例について詳細に述べる。
【0031】
本発明の光重合性組成物に用いるための重合性高分岐ポリマーを、以下の手順で調製した。
<重合性高分岐ポリマーの調製>
(合成例1)
合成例1では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
まず、コア分子としてトリエタノールアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。トリエタノールアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:6:9の割合(モル比)とした。また、反応溶媒としてジグライムを用いた。
【化3】

【0032】
重合工程
アルゴン雰囲気下トリエタノールアミン 1.86 g (12.47 mmol)を90℃に加熱し、これにカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.87 g (3.72 mmol)を加えて数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。ジグライム 10 mlを加え、グリシドール 5.54 g (74.78 mmol)を18 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約5.5時間を要して滴下した。
【0033】
修飾工程
30分攪拌後アリルグリシジルエーテル 12.82 g (112.32 mmol)を35 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約11.5時間を要して滴下した。同温度で約4時間攪拌した後冷却し、メタノール30 mlで希釈してアンバーライトIR 120B HAG 30 mlのカラムに通液して中和した。カラムを30 mlのメタノールで洗浄し、洗浄液共に減圧下濃縮した。残留液15.1 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=6/1)で精製した。表題化合物を無色油状物を3.13 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.82 (6H, m), 3.44-3.67 (72H, br), 3.87 (9H, s), 4.01 and 4.02 (18H, each s), 4.83 (9H, s), 5.16 (9H, d, J = 9.9 Hz), 5.30 (9H, d, J = 17.0 Hz), 5.90-5.94 (9H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 54.2, 63.1, 69.2, 69.6, 70.9, 71.1, 71.3, 71.6, 72.0, 72.6, 78.6, 78.9, 80.1, 80.3, 116.0, 134.9
【0034】
エーテル化工程
さらに、上記修飾工程で得られた化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化して合成例1の重合性高分岐ポリマーを得た(下記化学式参照)。
【化4】

すなわち、上記修飾工程で化合物 3.13 gをトルエン6 mlに溶解しこれに臭化テトラブチルアンモニウム 0.75 g (2.33 mmol) および水5.5 mlに溶解した水酸化ナトリウム4.7 g (117.5 mmol) を加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 3.15 g (26.0 mmol)を2 mlのトルエンに溶解して約1時間で滴下した。同温度で18時間攪拌した後水20 ml、トルエン20 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度20 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて飽和食塩水で3回洗浄後無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。微黄色残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=15/1)で精製し、表題化合物を微黄色油状物を2.52 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.79 (6H, s), 3.50-3.71 (81H, br), 3.99 and 4.00 (18H, each s), 4.13 (18H, s), 5.12-5.16 (18H, m), 5.27 (18H, d, J = 17.0 Hz), 5.87-5.95 (18H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 55.6, 71.3, 72.1, 72.6, 73.2, 78.5, 78.8, 79.9, 80.1, 116.9, 117.1, 136.2, 136.6
【0035】
(合成例2)
合成例2では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてトリエタノールアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。トリエタノールアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:9:12の割合(モル比)とした。また、反応溶媒としてジグライムを用いた。
【化5】

【0036】
重合工程
アルゴン雰囲気下トリエタノールアミン 1.49 g (0.01 mol)を90℃に加熱し、これにカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.78 mlを加えて数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。ジグライム 7.5 mlを加え、グリシドール 6.67 g (0.09 mol)を17 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約5.5時間を要して滴下した。
【0037】
修飾工程
そして、30分攪拌後アリルグリシジルエーテル 13.7 g (0.12 mol)を33 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約11.5時間を要して滴下した。同温度で約5.5時間攪拌した後冷却し、メタノール50 mlで希釈してアンバーライトIR 120B H AG 30 mlのカラムに通液して中和した。カラムを40 mlのメタノールで洗浄し、洗浄液共に減圧下濃縮した。表題化合物を褐色油状物を14.4 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.83 (6H, b), 3.43-3.67 (99H, m), 3.88 (12H, s), 4.01, 4.02 (各12H, s), 4.84 (12H, s), 5.17 (12H, d, J = 9.9 Hz), 5.29 (12H, d, J = 17.0 Hz), 5.90-5.94 (12H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 54.1, 69.3, 69.7, 70.0, 70.9, 71.2, 71.3, 71.7, 72.0, 72.8, 78.6, 78.8, 80.2, 80.4, 116.0, 134.8, 134.9
【0038】
エーテル化工程
さらに、上記修飾工程で得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化した(下記化学式参照)。
【化6】

【0039】
すなわち、上記修飾工程で得た化合物 6.5gをトルエン13 mlに溶解しこれに臭化テトラブチルアンモニウム 1.55 g (4.8 mmol) および水12 mlに溶解した水酸化ナトリウム9.59 g (239.8 mmol) を加えた。アルゴン雰囲気下40℃に加温、攪拌しながら臭化アリル 6.48 g (53.5 mmol)を4 mlのトルエンに溶解して約1時間で滴下した。同温度で17時間攪拌した後水20 mlを加えて分液した。水層を20 mlのトルエンで抽出し、有機層を併せて水で2回洗浄後無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。微黄色残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=15/1)で精製し、微黄色油状物を4.13 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.79 (6H, bs), 3.51-3.71 (111H, m), 4.00 and 4.01(24H, each s) 4.15 (24H, s), 5.15 (12H, d, J = 12.1 Hz), 5.17 (12H, d, J = 11.5 Hz), 5.29 (24H, d, J = 17.1 Hz), 5.91-5.96 (24H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 55.6, 71.2, 72.1, 72.5, 73.2, 78.5, 78.8, 79.9, 80.1, 116.9, 117.1, 136.2, 136.6
【0040】
(合成例3)
合成例3では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:4:8の割合(モル比)とした。
【化7】

【0041】
重合工程
アルゴン気流下N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン 1.88 g (6.77 mol)を80℃油浴上攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.63 g (2.69 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。脱水ジグライム 5 mlを加えて90℃に加熱しながらグリシドール 2.01 g (27.1 mmol)を脱水THF 11 mlに溶解して、THFを留去しながら約2.5時間を要して滴下した。
【0042】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 6.19 g (54.2 mmol)を脱水THF 22 mlに溶解して、THFを留去しながら約5.5 時間を要して滴下した。同温度で2.5時間攪拌した後冷却し、メタノール30 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 25 mlのカラムを通して中和した。減圧下溶媒を留去し(80℃)、残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=2/1)により精製し、さらに活性炭で処理した後0.2 μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、淡黄色油状物を3.57 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 0.91 (3H, bs), 1.32 (10H, bs), 1.49 (2H, bs), 2.59, 3.44-3.77 (58H, m,), 3.88 (8H, s), 4.02 (16H, s), 4.85 (8H, s), 5.16 (8H, d, J = 9.3 Hz), 5.28 8H, d, J = 17.6 Hz), 5.88-5.94 (8H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 14.3, 23.7, 28.5, 30.4, 30.6, 33.0, 57.0, 62.8, 64.6, 70.6, 70.9, 71.2, 72.6, 73.0, 73.3, 74.1, 79.8, 80.1, 81.2, 117.3,136.0, 136.1
【0043】
(合成例4)
合成例4では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:12:16の割合(モル比)とした。
【化8】

【0044】
重合工程
アルゴン気流下N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン1.09 g (3.91 mmol)を80℃油浴上攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.364 g (1.56 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。脱水ジグライム 5 mlを加えて90℃に加熱しながら、グリシドール 3.47 g (46.9 mmol)を脱水THF 11 mlに溶解して、THFを留去しながら約3.5時間を要して滴下した。
【0045】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 7.14 g (62.6 mmol)を脱水THF 22 mlに溶解して、THFを留去しながら約7 時間を要して滴下した。同温度で3時間攪拌した後冷却し、メタノール30 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 25 mlのカラムを通して中和した。減圧下溶媒を留去し(80℃)、残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=3/1)により精製し、さらに活性炭処理した後0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、淡黄色油状物を3.61 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 0.91 (3H, bs), 1.32 (10H, bs), 1.50 (2H, bs), 2.59 (6H, b), 3.42-3.77 (180H, m), 3.88 (16H, s), 4.01 (32H, s), 4.84 (16H, s), 5.17 (16H, d, J = 9.3 Hz), 5.30 (16H, d, J = 17.6 Hz), 5.90-5.94 (16H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 14.5, 23.7, 28.5, 30.6, 30.8, 33.0, 57.0, 62.8, 64.3, 70.6, 70.9, 71.2, 72.2, 72.4, 72.6, 73.0, 73.3, 74.1, 79.8, 80.1, 81.4, 136.0, 136.1
【0046】
(合成例5)
合成例5では、合成例4で得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化して重合性高分岐ポリマーを調製した(下記化学式参照)。
【化9】

すなわち、水3 mlに水酸化ナトリウム2.8 g (70.6 mmol) を溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 0.45 g (1.40 mmol) および上記修飾工程で得た化合物1.95 gをトルエン3.5 mlに溶解して加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 1.90 g (15.7 mmol)を0.5 mlのトルエンに溶解して滴下した。同温度で21時間攪拌した後水10 ml、トルエン20 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度15 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて飽和食塩水で3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/エタノール=25/1)で精製し、次いでメタノール溶液として0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、無色油状物を1.2 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 0.91 (3H, bs), 1.32 (10H, bs), 1.46 (2H, bs), 2.51-2.59 (6H, m), 3.49-3.70 (146H, m), 4.01 (32H, s), 4.15 (32H, s), 5.14 (16H, d, J = 11.0 Hz), 5.16 (16H, d, J = 11.5 Hz), 5.29 (32H, d, J = 17.0 Hz,), 5.85-5.91 (32H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 14.6, 23.8, 28.6, 30.6, 33.1, 57.0, 71.3, 72.2, 72.6, 73.3, 78.6, 78.8, 80.0, 80.2, 117.0, 117.2, 136.2, 136.6
【0047】
(合成例6)
合成例6では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテル:臭化アリルは1:28:32:32の割合(モル比)とした。
【化10】

【0048】
重合工程
アルゴン気流下N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン 0.4 g (1.44 mmol)を80℃油浴上で攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.134 g (0.576 mmol)を加えた。数分間攪拌した後減圧下メタノールを留去した。脱水ジグライム 5 mlを加えて100℃に加熱しながらグリシドール 2.99 g (40.37 mmol)を脱水THF 10 mlに溶解して、THFを留去しながら約3時間を要して滴下した。
【0049】
修飾工程
1時間攪拌後アリルグリシジルエーテル 5.27 g (46.14 mmol)を脱水THF 20 mlに溶解して、THFを留去しながら約6時間を要して滴下した。同温度で3時間攪拌した後冷却し、メタノール25 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 20 mlのカラムを通して中和した。減圧下80℃で溶媒を留去して橙色油状物を6.53 g得た。
【0050】
エーテル化工程
さらにエーテル化工程として、修飾工程で得られた油状物 3.0 gをトルエン7 mlに溶解し、これにアルゴン気流下臭化テトラブチルアンモニウム 0.69 g (2.14 mmol) および水酸化ナトリウム4.32 g (108.0 mmol) を水5 mlに溶解して加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 2.90 g (24.0 mmol)を1 mlのトルエンに溶解して1.5時間で滴下した。同温度で18時間攪拌した後水、トルエン各10 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度10 mlのトルエンで抽出し、有機層を併せて水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=30/1)で精製し、主留部1.4 gを得た。これを再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、次いでメタノール溶液として0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、無色油状物を0.59 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 0.91 (3H, bs), 1.32 (10H, bs), 1.46 (2H, bs), 2.52-2.60 (6H, m), 3.33 and 3.52-.3.66 (306H, m), 4.01(64H, s), 4.15 (64H, s), 5.14 (32H, d, J = 11.0 Hz), 5.16 (32H, d, J = 11.5 Hz), 5.29 (64H, d, J = 15.9.0 Hz), 5.91-5.92 (64H, m)
13C -NMR ((600 MHz, methanol-d4) δ: 14.6, 23.8, 28.6, 30.6, 33.1, 57.0, 71.3, 72.2, 72.6, 73.3, 78.6, 78.8, 80.0, 80.2, 117.0, 117.2, 136.2, 136.7
【0051】
(合成例7)
合成例7では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N,N’,N’-テトラキス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N,N’,N’-テトラキス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:8:16の割合(モル数比)とした。
【化11】

【0052】
重合工程
アルゴン気流下N,N,N’,N’-テトラキス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン1.67 g (4.7 mmol)を90℃油浴上攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.88 g (3.76 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。脱水ジグライム 10 mlおよびDMF 5 mlを加えて110℃に加熱しながらグリシドール2.78 g (37.5 mmol)を脱水THF 9 mlに溶解して、THFを留去しながら約3時間を要して滴下した。
【0053】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 8.58 g (75.2 mmol)を脱水THF 26 mlに溶解して、THFを留去しながら約6 時間を要して滴下した。同温度で3時間攪拌した後冷却し、メタノール30 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 30 mlのカラムを通して中和した。減圧下溶媒を留去し(80℃)、残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=3/1)により精製し、さらに活性炭処理した後0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、黄色油状物を3.67 g得た。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.66 (12H, br), 3.47-3.67 (116H, m), 3.86 (16H, s), 4.01 (32H, s), 4.85 (16H, s), 5.15-5.17 (16H, m), 5.28 (16H, d, J = 17.6 Hz), 5.88-5.94 (16H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 54.5, 59.3, 70.6, 70.9, 71.2, 72.6, 73.0, 73.3, 74.0, 79.9, 80.2, 117.2, 136.2
【0054】
(合成例8)
合成例8では合成例7で得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化して重合性高分岐ポリマーを調製した(下記化学式参照)。
【化12】

すなわち、上記修飾工程で得た化合物4.8 g (1.73 mmol)をトルエン10 mlに溶解し、これに水9 mlに溶解した水酸化ナトリウム7.43 g (185.8 mmol) および臭化テトラブチルアンモニウム 1.2 g (3.72mmol)を加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 5.02 g (41.5 mmol)を3 mlのトルエンに溶解して1.5時間で滴下した。同温度で15時間攪拌した後水20 ml、トルエン20 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度20 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=15/1)で精製し、次いで0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、黄色油状物を5.19 g得た(収率88.0%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.60-2.66 (12H, br), 3.49-3.66 (132H, m), 4.00 (32H, s), 4.14 (32H, s), 5.13 (16H, d, J = 12.1 Hz), 5.15 (16H, d, J = 11.5 Hz), 5.27 (32H, d, J = 17.0 Hz), 5.87-5.92 (32H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 54.0, 56.8, 70.1, 70.9, 71.4, 72.0, 77.3, 77.6, 78.7, 79.0, 115.8, 115.9, 135.0, 135.5
【0055】
(合成例9)
合成例9では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:12:16の割合(モル数比)とした。
【化13】

【0056】
重合工程
アルゴン気流下N,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン2.05 g (8.0 mmol)を100℃に加熱、攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.75 g (3.2 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。脱水ジグライム 7 mlおよびDMF 5 mlを加えてグリシドール 7.12 g (96.2 mmol)を脱水THF 13 mlに溶解して、THFを留去しながら約3.6時間を要して滴下した。
【0057】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 14.6 g (128.2 mmol)を脱水THF 26 mlに溶解して、THFを留去しながら約7.4 時間を要して滴下した。同温度で2時間攪拌した後冷却し、メタノール40 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 30 mlのカラムを通して中和した。減圧下溶媒を留去し(80℃)、残留油状物21.65 g中10 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=7/3)により精製し、さらにメタノール溶液として活性炭処理した後0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、黄色油状物を7.5 g得た。(収率68.2%)このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.63-2.66 (4H, br), 3.45-3.67 (132H, m), 3.87 (16H, s), 4.01 (32H, s,), 4.77 (16H, s), 5.17 (16H, d, J = 9.9 Hz), 5.30 (16H, d, J = 17.0 Hz), 5.90-5.93 (16H, m), 7.25-7.34 (5H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 61.4, 62.8, 64.5, 70.5, 70.9, 71.2, 72.6, 73.0, 73.2, 74.0, 79.8, 80.1, 117.2, 128.1, 129.4, 130.3, 130.4, 136.0, 136.2,
【0058】
(合成例10)
合成例10では合成例9で得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化して重合性高分岐ポリマーを調製した(下記化学式参照)。
【化14】

すなわち、上記修飾工程で得られた化合物4.39 gをトルエン8 mlに溶解し、これに水7.5 mlに溶解した水酸化ナトリウム6.35 g (158.7 mmol) および臭化テトラブチルアンモニウム 1.02 g (3.16mmol)を加えた。アルゴン気流下40℃に加温、攪拌しながら臭化アリル 4.29 g (35.47 mmol)を2 mlのトルエンに溶解して50分で滴下した。同温度で16時間攪拌した後水30 ml、トルエン30 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度30 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=25/1)で精製し、次いで0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、表題化合物を微黄色油状物を4.78 g得た(収率89.6%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 2.62 (4H, br), 3.50-3.65 (148H, m), 3.99 (32H, s), 4.13 (32H, s), 5.13 (16H, d, J = 12.1 Hz), 5.15 (16H, d, J = 11.0 Hz), 5.27 (32H, d, J = 17.0 Hz), 5.90-5.91 (32H, m), 7.24-7.33 (5H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 57.6, 61.5, 71.2, 72.5, 73.2, 72.1, 78.4, 78.7, 79.9, 80.1, 116.9, 117.1, 136.2, 136.6, 128.0, 129.3, 130.2, 141.0
【0059】
(合成例11)
合成例11では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN-フェニルジエタノールアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N-フェニルジエタノールアミン:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:6:8の割合(モル比)とした。
【化15】

【0060】
重合工程
アルゴン気流下N-フェニルジエタノールアミン 1.0 g (5.52 mmol)を90℃に加熱、溶融し、これにカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.26 g (1.11 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧してメタノールを留去し、脱水ジグライム 5 mlを加えた。90℃に加熱しながらグリシドール 2.45 g (33.1 mmol)を脱水THF 10 mlに溶解して、THFを留去しながら約3時間を要して滴下した。
【0061】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 5.04 g (44.2 mmol)を脱水THF 20 mlに溶解して、THFを留去しながら約6 時間を要して滴下した。同温度で5時間攪拌した後冷却し、メタノール25 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 20 mlのカラムを通して中和した。減圧下溶媒を留去し(80℃)、再度メタノール30 mlに溶解して活性炭処理した後0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、黄色油状物を5.06 g得た(収率60.2%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 3.40-3.66 (68H, m), 3.86 (8H, s), 4.00 (16H, s), 4.75 (8H, s), 5.16 (8H, d, J = 9.4 Hz), 5.28 (8H, d, J = 17.0 Hz), 5.89-5.92 (8H, m), 6.60-6.61 (1H, m), 6.72-6.73 (2H, m), 7.13-7.16 (2H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 50.7, 61.5, 63.2, 69.0, 69.3, 69.6, 70.0, 71.2, 71.4, 71.8, 72.0, 72.9, 78.6, 78.8, 80.1, 80.3, 117.2, 113.1, 117.2, 130.1, 149.1, 135.9, 136.1
【0062】
(合成例12)
合成例12では合成例11で得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化して重合性高分岐ポリマーを調製した(下記化学式参照)。
【化16】

【0063】
すなわち、上記修飾工程で得た化合物2.0 gをトルエン5 mlに溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 0.45 g (1.40mmol) および水3 mlに溶解した水酸化ナトリウム2.83 g (70.8 mmol)を加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 1.90 g (15.7 mmol)を0.5 mlのトルエンに溶解して50分で滴下した。同温度で16.5時間攪拌した後水10 ml、トルエン15 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度15 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、次いで0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、表題化合物を無色油状物を1.48 g得た。(収率61.5%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 3.50-3.64 (68H, m), 3.99 (16H, s), 4.13 (16H, s), 5.13 (8H, d, J = 11.0 Hz,), 5.15 (8H, d, J = 11.5 Hz), 5.27 (16H, d, J = 17.1 Hz), 5.89-5.90 (16H, m), 6.58-6.61 (1H, m,), 6.71-6.72 (2H, m,), 7.13-7.15 (2H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 52.0, 70.2, 71.2, 72.1, 72.5, 73.1, 78.4, 78.7, 79.8, 80.1, 116.9, 113.0, 117.1, 130.2, 149.1, 136.2, 136.6
【0064】
(合成例13)
合成例13では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてトリエタノールアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。トリエタノールアミン:グリシドール:3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテルは1:9:12の割合(モル比)とした。
【化17】

【0065】
重合工程
アルゴン雰囲気下トリエタノールアミン 0.2 g (1.34 mmol)を90℃に加熱し、これにカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.09 g (0.385 mmol)を加えて数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。ジグライム 4 mlを加え、130℃に昇温した後グリシドール 0.91 g (12.2 mmol)を4.5 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約1.5時間で滴下した。
【0066】
修飾工程
30分攪拌後3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテル 5.0 g (1.4 mmol)を7 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約3.5時間を要して滴下した。同温度で約2.5時間攪拌した後冷却し、トルエン25 mlで希釈して0.5% 蓚酸20 mlで洗浄した。さらに飽和食塩水で2回洗浄した後減圧下濃縮した。残留液6.28 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で精製し、黄色油状物を4.65 g得た(収率77.6%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 2.50 (48H, s), 2.72 (6H, s), 3.30-3.70 (123H, m), 3.95 (48H, s), 4.43 (24H, s), 5.08 (24H, d, J = 8.2 Hz), 5.15 (24H, d, J = 16.5 Hz), 5.86 (24H, bs), 6.36 (12H, s), 6.45 (24H, s)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 33.7, 58.1, 58.2, 67.3, 69.5, 69.8, 70.4, 71.9, 72.2, 72.8, 78.7, 73.4, 100.7, 106.2, 140.7, 160.2, 117.1, 134.6)
【0067】
(合成例14)
合成例14では合成例13で得た化合物の水酸基を水酸基をヨウ化メチルでメトキシ化した(下記化学式参照)。
【化18】

すなわち、上記修飾工程で得た化合物0.936 g (0.209 mmol)をトルエン3 mlに溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 0.09 g (0.28 mmol) および水3 mlに溶解した水酸化ナトリウム0.6 g (15.0 mmol) およびヨウ化メチル 1.07 g (7.54 mmolを加えた。35-37℃で8時間攪拌した後ヨウ化メチル 0.5 g (3.52 mmol)を追加してさらに16時間攪拌した。水、トルエン各10 mlを加えて抽出、分液し、水層を再度10 mlのトルエンで抽出した。抽出液を併せて水で3回洗浄後無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、次いでクロロホルム溶液として0.2μmフィルターでろ過した。減圧下80℃で濃縮し、表題化合物を淡黄色油状物を0.48 g得た(収率54.7%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 2.49 (48H, s), 3.31-3.70 (153H, m), 3.95 (48H, s), 4.43 (24H, s), 5.08 (24H, d, J = 9.4 Hz), 5.14 (24H, d, J = 16.5 Hz), 5.87 (24H, bs), 6.35 (12H, s), 6.46 (24H, s)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 33.7, 58.1, 58.2, 67.3, 70.1, 71.6, 78.8, 79.1, 79.5, 79.6, 79.8, 73.4, 100.7, 106.2, 140.8, 160.2, 117.1, 134.5
【0068】
(合成例15)
合成例15では合成例13で得た化合物の修飾工程で得られた化合物に、エーテル化工程として、3,5-ビス(ブテニルオキシ)ベンジルブロミドを用い、下記化学式に示す反応を行なった。
【化19】

すなわち、合成例13での修飾工程で得た化合物0.84 g (0.188 mmol)をトルエン2 mlに溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 0.082 g (0.25 mmol)、3,5-ビス(ブテニルオキシ)ベンジルブロミド 0.88 g (2.83 mmol) および水0.7 mlに溶解した水酸化ナトリウム0.51 g (12.75 mmol) を加えた。40℃に加温して20時間攪拌した後水、トルエン各10 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度10 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて水で3回洗浄後無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜20/1)で精製し、次いでクロロホルム溶液として0.2μmフィルターでろ過した。減圧下80℃で濃縮し、黄色油状物を0.7 g得た(収率51.5%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 2.45 (96H, s), 2.69 (6H, bs), 3.38-3.70 (101H, m), 3.89 (96H, s), 4.38 and 4.56 (each 24H, s), 5.05 and 5.10 (each 48H, bs), 5.83 (48H, bs), 6.31 (24H, s), 6.43 and 6.46 (48H, each s)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 33.7, 67.2, 70.6, 71.0, 72.1, 77.8, 78.7, 79.1, 73.3, 100.6, 106.0, 141.0, 141.4, 160.2, 117.0, 134.6
【0069】
(合成例16)
合成例16では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)オクチルアミンを用い、重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルとして3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテルを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン:グリシドール:3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテルは1:12:16の割合(モル比)とした。
【化20】

【0070】
重合工程
アルゴン雰囲気下N,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン0.29 g (1.04 mmol)を90℃に加熱し、カリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.096 g (0.41 mmol)を加えて数分間攪拌した。徐々に減圧し、メタノールを留去した後ジグライム 5 mlを加えて140℃に昇温した。グリシドール 0.91 g (12.3 mmol)を5 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約2時間を要して滴下した。
【0071】
修飾工程
次いで3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテル 5.0 g (16.4 mmol)を15 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約6時間を要して滴下した。同温度で2.5時間攪拌した後反応液をクロロホルム20 mlで希釈して0.5%蓚酸20 ml、次いで水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で2回精製した。さらにクロロホルム溶液として0.2μmフィルターでろ過し、減圧下80℃で濃縮した。表題化合物を淡褐色油状物を1.35 g得た(収率21.8%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 0.87 (3H, bs), 1.25 (10H, bs), 1.42 (2H, bs), 2.49 (64H, s), 2.61(6H, b), 3.45-3.66 (146H, m), 3.95 (64H, s), 3.98 (16H, s), 4.42 (32H, s), 5.08-5.14 (64H, m), 5.86 (32H, bs), 6.35 (16H, s), 6.45 (32H, s)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 14.1, 22.8, 27.7, 29.5, 32.0, 33.7, 67.3, 69.5, 71.3, 71.4, 78.8, 73.5, 100.7, 106.2, 140.6, 160.2, 117.1, 134.6
【0072】
(合成例17)
合成例17では合成例16で得た化合物の修飾工程で得られた化合物の水酸基を3,5-ビス(ブテニルオキシ)ベンジルブロミドでエーテル化した(下記化学式参照)。
【化21】

すなわち、上記修飾工程で得た化合物0.85 g (0.14 mmol)をトルエン2.2 mlに溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 85 mg (0.26 mmol)、水0.7 mlに溶解した水酸化ナトリウム0.53 g (13.25 mmol)および3,5-ビス(ブテニルオキシ)ベンジルブロミド 0.91 g (2.92 mmol)を加えてアルゴン気流下43-45℃で18時間攪拌した。冷却後水5 ml、トルエン10 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度5 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/エタノール=100/1〜10/1)で2回精製した。次いでクロロホルム溶液として0.2μmフィルターでろ過した。減圧下80℃で濃縮し、淡褐色油状物を0.35 g得た(25.7%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 0.84 (3H, bs), 1.26 (10H, bs), 1.36 (2H, bs), 2.44 (128H, bs), 3.40-3.70 (146H, m), 3.88 (128H, s), 4.38 (32H, s), 4.56 (32H, s), (5.06-5.11 (128H, m), 5.82 (64H, bs), 6.31 (32H, s), 6.42 - 6.45 (64H, m)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 33.7 (CH2), 67.2 (OCH2), 70.9, 72.2, 78.8, 73.2, 100.7, 106.0, 140.6, 160.2, 117.0, 134.6
【0073】
(合成例18)
合成例18では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてN,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミンを用い、下記化学式に示す反応を行なった。N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン:グリシドール:3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテルは1:12:16の割合(モル比)とした。
【化22】

【0074】
重合工程
アルゴン雰囲気下N,N-ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン0.37 g (1.44 mmol)を90℃に加熱し、これにカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.13 g (0.56 mmol)を加えて数分間攪拌した。徐々に減圧し、メタノールを留去した後ジグライム 5 mlを加えて130℃に昇温した。グリシドール 1.28 g (17.3 mmol)を5 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約2時間を要して滴下した。
【0075】
修飾工程
次いで3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテル 7.0 g (23.0 mmol)を15 mlの脱水THFに溶解して、THFを留去しながら約7時間を要して滴下した。同温度で3時間攪拌した後反応液をトルエン50 mlで希釈して0.5% 蓚酸 30 ml、次いで飽和食塩水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=15/1)で2回精製した。さらにクロロホルム溶液として0.2μmフィルターでろ過し、減圧下80℃で濃縮した。表題化合物を淡褐色油状物を4.6 g得た (収率53.5%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 2.49 (64H, s), 2.58(4H, br), 3.45-3.65 (148H, m), 3.94 (80H, bs), 4.41 (32H, s), 5.07-5.15 (64H, m), 5.85 (32H, bs), 6.35 (16H, s), 6.41 (32H, s), 7.20 (1H, b), 7.26 (4H, br)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 33.7, 67.3, 69.3, 71.3, 78.8, 73.4, 100.7, 106.2, 140.7, 160.2, 117.1, 134.6
【0076】
(合成例19)
合成例19では合成例18で得た化合物の修飾工程で得られた化合物ので得た化合物の水酸基を3,5-ビス(ブテニルオキシ)ベンジルブロミドでエーテル化した(下記化学式参照)。
【化23】

すなわち、上記修飾工程で得た化合物2.0 g (0.33 mmol)をトルエン5 mlに溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 0.2 g (0.62 mmol)、3,5-ビス(ブテニルオキシ)ベンジルブロミド2.15 g (6.91 mmol) および水1.6 mlに溶解した水酸化ナトリウム1.25 g (31.25 mmol) を加えた。40℃に加温して17時間攪拌した後水10 ml、トルエン20 mlを加えて抽出、分液した。抽出液を飽和食塩水で3回洗浄後無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/エタノール=20/1)で精製し、次いでクロロホルム溶液として0.2μmフィルターでろ過した。減圧下80℃で濃縮し、淡褐色油状物を1.6 g得た(収率49.7%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, CDCl3) δ: 2.41 (132H, s), 3.40-3.67 (148H, m), 3.85 (128H, bs), 4.35 (32H, s), 4.53 (32H, bs), 5.04 (128H, bs), 5.80 (64H, bs), 6.28 (32H, bs), 6.40 (64H, bs), 7.20 (1H, b), 7.26 (4H, br)
13C -NMR ((600 MHz, CDCl3) δ: 33.7, 67.2, 71.0, 72.1, 79.0, 73.2, 100.6, 105.8, 106.0, 141.0, 141.4, 160.1, 117.0, 134.6
【0077】
(合成例20)
合成例20では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてグリセロールを用い、下記化学式に示す反応を行なった。グリセロール:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:9:12の割合(モル比)とした。
【化24】

【0078】
重合工程
アルゴン気流下グリセロール 0.69 g (7.5 mmol)を90℃油浴上攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.53 g (2.25 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。脱水ジグライム 9 mlを加えて130℃に加熱しながらグリシドール 5.0 g (67.5 mmol)を脱水THF20 mlに溶解して、THFを留去しながら約5.5時間を要して滴下した。
【0079】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 10.3 g (90.0 mmol)を脱水THF 30 mlに溶解して、THFを留去しながら約10.5 時間を要して滴下した。同温度で4時間攪拌した後冷却し、メタノール20 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 20 mlのカラムを通して中和した。活性炭処理した後減圧下溶媒を留去し(80℃)、残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=5/1)により精製し、淡褐色油状物を10.56 g得た(収率66.2%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, Methanol-d4) δ: 3.44-3.66 (98H, m), 3.86 (12H, s), 4.01 (24H, s), 4.77 (12H, s), 5.16 (12H, d, J = 9.9 Hz), 5.28 (12H, d, J = 17.6 Hz), 5.89-5.93 (12H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 61.5, 69.3, 69.6, 69.7, 70.0, 71.2, 71.4 and 71.8, 72.0, 72.9, 78.6, 78., 116.0, 134.8, 135.0
【0080】
エーテル化工程
さらに、修飾工程得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化した(下記化学式参照)。
【化25】

すなわち、上記修飾工程で得た化合物2.0 gをトルエン6 mlに溶解し、これに水3.5 mlに溶解した水酸化ナトリウム3.4 g (85.0 mmol) および臭化テトラブチルアンモニウム 0.49 g (1.5 mmol)を加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 2.05 g (16.9 mmol)を0.5 mlのトルエンに溶解して45分で滴下した。同温度で16時間攪拌した後水10 ml、トルエン15 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度15 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/エタノール=50/1)で精製し、次いで0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、表題化合物を無色油状物を1.98 g得た(収率80.8%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, Methanol-d4) δ: 3.51-3.71 (110H, m), 4.01 (24H, s), 4.15 (24H, s), 5.15 (12H, d, J = 12.1 Hz), 5.16 (12H, d, J = 11.0 Hz), 5.28 (24H, d, J = 17.0 Hz), 5.91-5.93 (24H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 71.2, 72.1, 72.5, 73.2, 78.5, 78.8, 79.9, 80.2, 116.9, 117.1, 136.2, 136.6
【0081】
(合成例21)
合成例21では以下のようにして重合性高分岐ポリマーを調製した。
すなわち、コア分子としてエチレングリコールを用い、下記化学式に示す反応を行なった。エチレングリコール:グリシドール:アリルグリシジルエーテルは1:14:16の割合(モル比)とした。
【化26】

【0082】
重合工程
アルゴン気流下エチレングリコール 0.31 g (5.0 mmol)を80℃に加熱、攪拌しながらカリウムメトキシド (30% メタノール溶液) 0.35 g (1.5 mmol)を加えた。数分間攪拌した後徐々に減圧し、メタノールを留去した。脱水ジグライム 5 mlを加えて100℃に昇温し、グリシドール 5.19 g (70.1 mmol)を脱水THF 15 mlに溶解して、THFを留去しながら約5時間を要して滴下した。
【0083】
修飾工程
続いてアリルグリシジルエーテル 9.13 g (80.0 mmol)を脱水THF 25 mlに溶解して、THFを留去しながら約3 時間を要して滴下した。同温度で3時間攪拌した後冷却し、メタノール25 mlを加えてアンバーライトIR 120B H AG 20 mlのカラムを通して中和した。減圧下溶媒を留去し、残留油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=7/1)により精製した。メタノール溶液として0.2μmフィルターでろ過し、減圧下(80℃)濃縮して微黄色油状物を8.84 g得た(収率60.4%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ:3.43-3.67 (154H, m), 3.87 (16H, s), 4.01 (16H, s), 4.73 (16H, s), 5.16 (16H, d, J = 8.8 Hz), 5.28 (16H, d, J = 17.0 Hz), 5.88-5.93 (16H, br)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 59.3, 64.5, 70.4, 70.8, 71.1, 72.5, 72.9, 73.2, 74.0, 79.8, 80.0, 117.2, 136.0, 136.1
【0084】
エーテル化工程
さらに、上記修飾工程で得た化合物の水酸基を臭化アリルでアリルエーテル化した(下記化学式参照)。
【化27】

すなわち、上記修飾工程で得られた化合物3.0 g (1.025 mmol) をトルエン5 mlに溶解し、これに臭化テトラブチルアンモニウム 0.69 g (2.1 mmol)、 次いで水5.5 mlに溶解した水酸化ナトリウム4.47 g (111.8 mmol)を加えた。40℃に加温、攪拌下臭化アリル 2.98 g (24.6 mmol)を2 mlのトルエンに溶解して約1時間で滴下した。同温度で18時間攪拌した後水10 ml、トルエン10 mlを加えて抽出、分液した。水層を再度10 mlのトルエンで抽出し、抽出液を併せて飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、残留液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/エタノール=35/1)で精製し、次いでメタノール溶液として0.2μmフィルターで濾過した。減圧下80℃にて溶媒を留去し、無色油状物を2.59 g得た(収率70.9%)。このもののNMRを測定し、以下の結果を得た。
1H -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 3.50-3.70 (154H, m), 4.00 (32H, s), 4.13 (32H, s), 5.13 (16H, d, J = 12.1 Hz), 5.15 (16H, d, J = 11.0 Hz), 5.27 (32H, d, J = 17.0 Hz), 5.90-5.91 (32H, m)
13C -NMR (600 MHz, methanol-d4) δ: 59.5, 71.2, 71.9, 72.1, 72.5, 73.2, 78.4, 78.7, 79.9, 80.1, 116.9, 117.1, 136.1, 136.6
【0085】
<粘度測定>
上記合成例1〜21の重合性高分岐ポリマーは、従来のプレポリマーと比べて粘性が低く、容器からの出し入れ等において、ハンドリングが容易であった。また、冷暗所に保存すれば、重合禁止剤を添加しなくても重合固化することはなく、安定に保存することができた。合成例1,2,8及び10の重合性高分岐ポリマーについて、振動式粘度計を用いて粘度の測定を行なった。その結果、表1に示すように170〜378mPa・sの範囲となり、従来のプレポリマーよりもはるかに粘度が低かった。
【表1】

【0086】
<光ラジカル重合が可能な重合性組成物の調製>
以上のようにして合成した、合成例1〜19の重合性高分岐ポリマーを用い、これに、重合性モノマーとしてのトリメチロールプロパントリアクリレート(以下「TPA」という)と、光重合開始剤としての(4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン)(以下「EMK」という)とを、表2に示す割合で混合し、光ラジカル重合が可能な実施例1〜37の光重合性組成物を調製した。
【0087】
【表2】

【0088】
<紫外線照射による硬化試験>
以上のようにして調製した実施例1〜37の光重合性組成物の紫外線照射による硬化試験を、以下の手順で行った。すなわち、スライドガラスの上に7.5μmのポリイミド製スペーサーを置き、カバーガラスとスライドガラスとをスペーサーの厚み分だけ隔てつつ接着剤で固定する。こうして、スライドガラスとカバーガラスとの間に設けた隙間から光重合性組成物を染み込ませ、30Wの高圧水銀ランプによって所定の時間紫外線を照射した後、カバーガラスをピンセットで剥がすことができるか否かについて調べた。硬化の評価は、カバーガラスをピンセット引き剥がすことができない場合を○、引き剥がすことはできるがかなりの抵抗感がある場合を△、容易に引き剥がせる場合を×とした。
【0089】
【表3】

【0090】
その結果、表3に示すように、実施例の光重合性組成物は、紫外線照射によって短時間に硬化することが分かった。
【0091】
<カチオン重合が可能な重合性組成物の調製>
上記合成例20及び合成例21の重合性高分岐ポリマーを用い、これに、重合性モノマーとして、2,2-ビス(4-グリシジロキシフェニル)プロパン(以下「BGP」という)と、3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(以下「EEC」という)とを1:1に混合したものを重合性モノマーとして混合し、さらにカチオン開始剤として、光酸発生剤である[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ]-フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを加え、さらに、光増感剤としてイソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オンを加えて実施例38及び実施例39の光重合性組成物を調製した。各薬剤の調合割合を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
<紫外線照射による硬化試験>
以上のようにして調製した実施例38及び実施例39の光重合性組成物の紫外線照射による硬化試験を、上記と同様の方法で行なった。結果を表5に示す。この表から分かるように、重合性モノマーとしてエポキシ系モノマーを用い、光酸発生剤と光増感剤をくわえた実施例38及び実施例39においても、紫外線によって容易に硬化させることができた。
【0094】
【表5】

【0095】
以上のように、実施例の光重合性組成物では、一般的なカチオン系の光重合性組成物よりも、粘度が低く、取り扱いが容易である。また、重合性高分岐ポリマーを光樹脂組成物の重合性成分として用いることにより、従来のデンドリマーを用いた光重合組成物よりも製造が容易で安価に製造可能である。
【0096】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は光リソグラフィーのための材料として電子デバイス作製等に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの末端水酸基が重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのエポキシ基に付加した重合性高分岐ポリマーと、該重合性高分岐ポリマーと結合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを含むことを特徴とする光重合性組成物。
【請求項2】
重合性モノマーは、1分子に1つ以上の(メタ)アクリル基を有するアクリル系モノマーであり、光重合開始剤は光照射によってラジカルを発生する光ラジカル発生剤であることを特徴とする請求項1記載の光重合性組成物。
【請求項3】
重合性モノマーは、1分子に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系モノマーであり、光重合開始剤は光照射によって酸を発生する光酸発生剤であることを特徴とする請求項1記載の光重合性組成物。
【請求項4】
さらに光増感剤が含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光重合性組成物。
【請求項5】
前記重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルは、アリルグルシジルエーテル及び3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテルのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記 コア分子はグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−フェニルジエタノールアミン及び2−フェニル−1,3−プロパンジオールのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の光重合性組成物。
【請求項7】
コア分子の水酸基を基点としてグリシドールが分岐状に重合した高分岐ポリマーの末端水酸基が重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルのエポキシ基に付加した構造とされており、さらに該付加における該エポキシ基の開環によって生じた水酸基がエーテル化された重合性高分岐ポリマーと、該重合性高分岐ポリマーと結合可能な重合性モノマーと、光重合開始剤とを含むことを特徴とする光重合性組成物。
【請求項8】
重合性モノマーは、1分子に1つ以上の(メタ)アクリル基を有するアクリル系モノマーであり、光重合開始剤は光ラジカル発生剤であることを特徴とする請求項7記載の光重合性組成物。
【請求項9】
重合性モノマーは、1分子に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系モノマーであり、光重合開始剤は光酸発生剤であることを特徴とする請求項7記載の光重合性組成物。
【請求項10】
前記重合可能な炭素−炭素二重結合を有するグリシジルエーテルは、アリルグルシジルエーテル又は3,5-ビス(3−ブテニルオキシ)ベンジルグリシジルエーテルであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載の光重合性組成物。
【請求項11】
さらに光増感剤が含まれていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項記載の光重合性組成物。
【請求項12】
前記 コア分子はグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−フェニルジエタノールアミン及び2−フェニル−1,3−プロパンジオールのいずれかであることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項記載の光重合性組成物。
【請求項13】
エポキシ基の開環によって生じた水酸基のエーテル化は、アリルエーテル化、メチルエーテル化、又は3,5−ビス(ブテニルオキシ)ベンジルエーテル化であることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項記載の光重合性組成物。

【公開番号】特開2009−249605(P2009−249605A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102950(P2008−102950)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】