説明

光量子計

【課題】可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光量子束密度を計測することができる光量子計を提供する。
【解決手段】本発明の光量子計は、複数の受光部10a〜10bと、信号選択部30と、信号合成部40と、出力部50と、を有する。複数の受光部は、可視光領域および遠赤色光領域の波長において互いに異なる範囲の波長の光を受光して、受光した光強度に応じた大きさの光強度信号を出力する。信号選択部30は、各々の受光部から出力される光強度信号のうちの少なくとも1つを選択する。信号合成部40は、信号選択部30で選択された光強度信号を合成する。出力部50は、信号合成部40で合成された合成光強度信号に基づいて、特定の波長帯域の光量子束密度を算出して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量子計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物の栽培環境、たとえば光、温度、湿度を人為的に制御することにより、効率的に植物を栽培する植物工場が注目されている。植物工場では、栽培する植物の種類および成長段階に応じて栽培環境を適切に制御することが重要である。とくに、植物に対して照射される照明光の波長分布が、植物の成長を大きく左右する要因であることが近年の研究で明らかになってきている。
【0003】
植物に照射する照明光を適切に制御するには、植物表面における光量子束密度を正確に計測して、計測結果に基づいて植物工場の照明光源を制御する必要がある。一般に、植物表面における光量子束密度は光量子計で計測される。これは、光量子計が人間の視感度に依存せずに可視光領域の光量子束密度を計測することができるためである。植物表面の光量子束密度を計測する光量子計としては、たとえば下記特許文献1の光量子測定器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−333061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の光量子測定器では、可視光領域全体としての光量子束密度を計測することができるものの、可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光量子束密度を計測することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光量子束密度を計測することができる光量子計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
本発明の光量子計は、複数の受光手段と、信号選択手段と、信号合成手段と、出力手段と、を有する。複数の受光手段は、可視光領域および遠赤色光領域の波長において互いに異なる範囲の波長の光を受光して、受光した光強度に応じた大きさの光強度信号を出力する。信号選択手段は、各々の受光手段から出力される光強度信号のうちの少なくとも1つを選択する。信号合成手段は、信号選択手段で選択された光強度信号を合成する。出力手段は、信号合成手段で合成された合成光強度信号に基づいて、特定の波長帯域の光量子束密度を算出して出力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光強度信号を選択的に合成して光量子束密度を算出するので、可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光量子束密度を簡易な構成で計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における光量子計の外観図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における光量子計のブロック図である。
【図3】図2に示す受光部を説明するためのブロック図である。
【図4】図2に示す受光部における光量子エネルギーに対する感度分光特性を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における光量子計のブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態における光量子計の受光部を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本発明の光量子計の実施の形態を説明する。なお、図中、同一の部材には、同一の符号を用いた。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態における光量子計の外観図である。本実施の形態の光量子計では、可視光領域(400〜700nm)および遠赤色光領域(700〜800nm)における特定の波長帯域の光強度信号を選択的に合成して光量子束密度を算出する。なお、以下では、本実施の形態における光量子計の主要な構成を説明し、それ以外の構成については従来の光量子計と同様であるので説明を省略する。
【0013】
図1に示すとおり、本実施の形態の光量子計100は、センサユニット110、光量子計本体120、および接続ケーブル130を有する。センサユニット110と光量子計本体120とは、接続ケーブル130を介して互いに接続されている。
【0014】
センサユニット110は、受光強度に応じた電気信号を出力する。具体的には、センサユニット110は、対象となる物体に近接して設置されて、当該対象となる物体の近傍における照射光を受光し、受光強度に応じた電気信号(以下、光強度信号と称する)を出力する。本実施の形態では、上記対象となる物体は、たとえば植物工場で栽培されている植物である。植物工場内の照明光は、直接的に植物に照射されるか、あるいは壁面などで反射して間接的に植物に照射される。センサユニット110は、植物に対する照射光とほぼ同じ強さの光を受光して、その受光強度に応じた光強度信号を出力する。
【0015】
本実施の形態のセンサユニット110は、1つの円筒状の収容器に収容された3つの受光部10a〜10cを備える。上記収容器の上面には、開口部が形成されており、受光部10a〜10cは、上記開口部に取り付けられた受光窓111に受光面を向けて、互いに近接して配置されている。受光窓111は、たとえば光学的光拡散加工されたガラス板あるいはプラスチック板などで形成されている。受光窓111から差し込んだ照明光の受光強度に応じて、受光部10a〜10cは光強度信号を出力する。
【0016】
光量子計本体120は、センサユニット110に入射した光の光量子束密度を算出し、算出結果を表示する。本実施の形態の光量子計本体120は、操作パネル121および表示パネル122を備えており、接続ケーブル130を介してセンサユニット110に接続されている。接続ケーブル130は、数m程度の長さを有しており、光量子計100の操作者は、植物に近接して設置されたセンサユニット110から離れて光量子計100を操作することができる。
【0017】
操作パネル121は、光量子計本体120で実行される処理に関する設定を行う。具体的には、操作パネル121は、電源スイッチおよび波長選択スイッチを有する。電源スイッチは、センサユニット110および光量子計本体120の電源をオンまたはオフするためのスイッチである。また、波長選択スイッチは、光量子束密度を計測する波長帯域を設定するためのもので、波長帯域の設定に応じてセンサユニット110の受光部10a〜10cからの光強度信号うちの少なくとも1つが選択される。
【0018】
なお、電源スイッチおよび波長選択スイッチは、機械スイッチまたは電子スイッチで構成することができる。あるいは、光量子計本体120に通信インターフェースをさらに搭載して、センサユニット110および光量子計本体120の電源をオンまたはオフする指令と、波長選択スイッチを設定する指令とをパーソナルコンピュータなどの端末から送信することもできる。
【0019】
以上のとおり、センサユニット110に入射した光は、光強度信号に変換され、光強度信号は、接続ケーブル130を通じて光量子計本体120に伝達される。光量子計本体120は、操作パネル121の設定に応じて、受光部10a〜10cからの光強度信号を選択し、光量子束密度を算出して算出結果を表示パネル122に表示する。
【0020】
以下、図2および図3を参照して、本実施の形態の光量子計の構成をより詳細に説明する。図2は本実施の形態における光量子計のブロック図であり、図3は図2に示す受光部を説明するためのブロック図である。
【0021】
図2に示すとおり、本実施の形態の光量子計100は、受光部10a〜10c、増幅部20a〜20c、信号選択部30、信号合成部40、および出力部50を有する。
【0022】
受光部10a〜10cは、受光手段として、特定の波長帯域ごとに入射光の光強度を検出する。具体的には、受光部10a〜10cは、可視光領域および遠赤色光領域の波長において互いに異なる範囲の波長の光を受光して、受光した光強度に応じた大きさの光強度信号を出力する。本実施の形態では、3つの受光部10a〜10cの出力端子は、接続ケーブル130を介して増幅部20a〜20cの入力端子にそれぞれ接続される。
【0023】
図3に示すとおり、受光部10aは、光学フィルタ1aおよび光センサ2aを備える。本実施の形態では、光学フィルタ1aは、400〜500nmの波長帯域の光(青色に相当)を透過し、それ以外の波長の光を遮断する光学フィルタであり、光センサ2aは、たとえばシリコン・フォトダイオード(以下、Siフォトダイオードと称する)である。
【0024】
また、受光部10b,10cも、受光部10aと同様に光学フィルタ1b,1cおよび光センサ2b,2cをそれぞれ備える。光学フィルタ1bは、500〜600nmの波長帯域の光(緑色に相当)を透過し、それ以外の波長の光を遮断する光学フィルタであり、光学フィルタ1cは、600〜700nm(赤色に相当)の波長帯域の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断する光学フィルタである。光センサ2b,2cは、光センサ2aと同様に、たとえばSiフォトダイオードである。Siフォトダイオードは、短波長の光量子エネルギーに対する感度が長波長の光量子エネルギーに対する感度よりも小さいという特徴を有している。したがって、受光部10a〜10cにおける光量子エネルギーに対する感度分光特性は波長が短くなるほど小さくなる。
【0025】
なお、上述のとおり、本実施の形態では、光量子計100は3つの受光部10a〜10cを備える。しかしながら、受光部の個数は3つに限定されない。光量子計100は、たとえば6つの受光部10a〜10fを備えてもよい。その場合、400〜700nmの波長帯域を6分割して6つの受光部10a〜10fに各々50nm幅の波長帯域を分担させることができる。また、受光部10a〜10fが分担する波長帯域は、互いに重なる部分ができるように設定することもできるし、飛び飛びになるように設定することもできる。
【0026】
増幅部20a〜20cは、所定の信号レベルまで光強度信号を増幅する。本実施の形態では、増幅部20a〜20cは、光量子計本体120に収容されており、一般的な信号増幅回路を用いて構成することができる。
【0027】
信号選択部30は、信号選択手段として、光強度信号を選択する。具体的には、信号選択部30は、受光部10a〜10cの各々から出力される光強度信号のうちの少なくとも1つを選択する。信号選択部30は、光量子計本体120に収容されており、スイッチ30a〜30cを備える。スイッチ30a〜30cの入力端子は、増幅部20a〜20cの出力端子にそれぞれ接続され、スイッチ30a〜30cの出力端子は信号合成部40の入力端子41a〜41cにそれぞれ接続される。
【0028】
スイッチ30a〜30cは、操作パネル121の波長選択スイッチを介して操作者が設定する波長帯域に応じてオンまたはオフされる。たとえば、400〜500nmの波長帯域に設定する場合、スイッチ30aはオンされる一方で、スイッチ30b,30cはオフされる。また、400〜700nmの波長帯域に設定する場合、スイッチ30a〜30cはすべてオンされる。なお、スイッチ30a〜30cは、機械スイッチまたは電子スイッチで構成することができる。
【0029】
信号合成部40は、信号合成手段として、光強度信号を合成する。具体的には、信号合成部40は、信号選択部30で選択された光強度信号を合成する。信号合成部40は、光量子計本体120に収容されており、合成部41および合成増幅部42を備える。信号合成部40の入力端子41a〜41cは信号選択部30のスイッチ30a〜30cの出力端子にそれぞれ接続され、信号合成部40の出力端子は出力部50の入力端子に接続される。
【0030】
本実施の形態では、信号合成部40の入力端子41a〜41cの各々から延伸した配線は、結線部41dにおいて一点で結線される。したがって、信号選択部30で選択された複数の光強度信号は、結線部41dにおいて足し合わされて合成される。結線部41dにおいて合成された光強度信号は、合成光強度信号として合成増幅部42へ出力される。なお、信号選択部30で選択された光強度信号が1つである場合は、信号レベルがゼロである他の光強度信号と合成されて合成光強度信号として合成増幅部42へ出力されることになる。
【0031】
合成増幅部42は、合成光強度信号を所定レベルまで増幅する。合成増幅部42は、一般的な信号増幅回路を用いて構成することができる。
【0032】
出力部50は、出力手段として、特定の波長帯域の光量子束密度を算出して出力する。具体的には、出力部50は、信号合成部40で合成された合成光強度信号に基づいて、特定の波長帯域の光量子束密度を算出して出力する。出力部50は、光量子計本体120に収容されており、算出部51および表示部52を備える。
【0033】
算出部51は、光量子束密度を算出する。具体的には、算出部51は、信号合成部40で合成された合成光強度信号に基づいて、受光部10a〜10cに入射した光の特定の波長帯域の光量子束密度を算出する。算出部51は、たとえばCPU、ROM、およびRAMを備えており、ROMには光量子束密度を算出するためのソフトウェアプログラムが格納されている。CPUは、ROMのソフトウェアプログラムに従って光量子束密度を算出したのちに算出結果をRAMに格納する。なお、算出部51は、CPU、ROM、およびRAMを使用した構成に限定されず、ASICまたはFPGAを使用した構成とすることもできる。また、光強度信号に基づいて光量子束密度を算出する具体的な手順については、従来の光量子計と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0034】
算出部51で算出された光量子束密度は、表示部52によって表示され、表示パネル122を通じて光量子計100の操作者に認識される。表示部52は、たとえば液晶パネルを備えており、算出された光量子束密度はμmol/msの単位を有する数値として液晶パネルに表示される。なお、表示部52は、液晶パネルに限定されず、LED、7セグメントLEDなどを備えることもできる。
【0035】
以上のとおり構成される本実施の形態の光量子計の作用について、図4を参照して説明する。図4は、図2に示す受光部における光量子エネルギーに対する感度分光特性を説明するための図である。図4において、横軸は受光部に入射する光の波長であり、縦軸は波長700nmを100%としたときの各波長の光量子エネルギーの割合を示す。たとえば、波長400nmにおける受光部の感度は、波長700nmにおける感度の約57.1%である。
【0036】
図3に示すとおり、受光部10a〜10cに入射した光は、光学フィルタ1a〜1cにより特定の波長帯域に分割されて光センサ2a〜2cに到達する。このとき、光子1個あたりが有するエネルギーは波長が短いほど大きくなる。一方、本実施の形態では、受光部10a〜10cは、図4に示す光量子エネルギーに対する感度分光特性を有する。したがって、光センサ2a〜2cに到達する光が有する光量子エネルギーの波長特性と、受光部10a〜10cの光量子エネルギーに対する感度分光特性とが相殺して、光センサ2a〜2cは、光量子エネルギーの波長特性に依存することなく、光強度信号を出力することができる。
【0037】
そして、図2に示すとおり、受光部10a〜10cから出力された光強度信号は、増幅部20a〜20cで所定の信号レベルまで増幅され、信号選択部30のスイッチ30a〜30cで操作パネル121の設定に応じて選択される。次に、選択された光強度信号は、信号合成部40で合成される。そして、信号合成部40で合成された合成光強度信号に基づいて、出力部50で光量子束密度が算出されて表示パネル122に表示される。
【0038】
なお、本実施の形態では、光センサ2a〜2cにSiフォトダイオードを採用することにより、受光部10a〜10cにおいて図4に示す光量子エネルギーに対する感度分光特性を実現している。光量子エネルギーに対する感度分光特性が波長に依存しない光センサを光センサ2a〜2cに採用する場合は、図4に示すような感度分光特性を有する光学フィルタを受光部10a〜10cにさらに備える必要がある。
【0039】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、以下の効果を奏する。
【0040】
(a)本実施の形態の光量子計によれば、可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光強度信号を選択的に合成して光量子束密度を算出するので、可視光領域および遠赤色光領域における特定の波長帯域の光量子束密度を簡易な構成で計測することができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の光量子計は、第1の実施の形態の光量子計の構成に加えて、光強度信号を光量子計の外部に出力する外部出力部をさらに有する。以下、図5を参照して、本実施の形態における光量子計を説明する。
【0042】
図5に示すとおり、本実施の形態の光量子計200は、受光部10a〜10c、増幅部20a〜20c、信号選択部30、信号合成部40、出力部50、および外部出力部60を有する。本実施の形態の光量子計200の構成は、外部出力部60を除いて、第1の実施の形態の光量子計の構成と同一であるので、重複する部分の説明を省略する。
【0043】
外部出力部60は、外部出力手段として、増幅部20a〜20cから出力された光強度信号を光量子計200の外部に出力する。外部出力部60の入力端子は、増幅部20a〜20cの出力端子にそれぞれ接続されており、外部出力部60の出力端子は、光量子計200の外部機器(不図示)の入力端子に接続されている。外部機器は、たとえば、パーソナルコンピュータである。
【0044】
外部出力部60の出力端子から出力された光強度信号は、外部機器に取り込まれて外部機器の処理に利用される。たとえば、光強度信号は、パーソナルコンピュータに取り込まれて、植物の近傍における光強度データとしてメモリやハードディスク装置に格納される。パーソナルコンピュータは、たとえば、植物工場で栽培されている様々な植物の近傍における光強度データを蓄積し、当該光強度データに基づいて植物工場内の照明光の強度を波長ごとに制御することができる。
【0045】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、第1の実施の形態における効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0046】
(b)本実施の形態の光量子計は、受光部から出力される光強度信号を直接的に外部機器に出力するための外部出力部をさらに有する。したがって、光量子計は、外部機器に光強度信号を供給することができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態では、光量子計の受光部は、合計3つの光センサを備えていた。一方、第3の実施の形態では、光量子計の受光部は、光センサを1つだけ備える。
【0048】
本実施の形態の光量子計は、第1の実施の形態の光量子計と同様に受光部、増幅部、信号選択部、信号合成部、および出力部を有する。本実施の形態の光量子計の構成は、受光部の構成を除いて、第1の実施の形態の光量子計の構成と同一であるので、重複する部分の説明を省略する。以下、図6を参照して、本実施の形態における光量子計を説明する。
【0049】
図6は、本実施の形態における光量子計の受光部を説明するためのブロック図である。
図6に示すとおり、本実施の形態における光量子計の受光部10は、複数の光学フィルタ1a〜1c、光センサ2、光学フィルタ切替器3、および保持部4を有する。
【0050】
本実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、光学フィルタ1a、光センサ2、光学フィルタ切替器3、および保持部4が1つの受光手段として機能し、光学フィルタ1b、光センサ2、光学フィルタ切替器3、および保持部4が他の受光手段として機能する。すなわち、光センサ2、光学フィルタ切替器3、および保持部4の各構成は複数の受光手段で共用される。
【0051】
光学フィルタ1a〜1cは、第1の実施の形態における光学フィルタ1a〜1cとそれぞれ同一である。また、光センサ2は、第1の実施の形態における光センサ2a〜2cと同様にSiフォトダイオードを備える。光センサ2の出力端子は、増幅部20の入力端子に接続されている。光学フィルタ1a〜1cおよび光センサ2についての詳しい説明は省略する。
【0052】
光学フィルタ切替器3は、光学フィルタ1a〜1cのうちの1つを選択する。具体的には、光学フィルタ切替器3は、操作パネル121の波長選択スイッチの設定に応じて、光学フィルタ1a〜1cのうちの1つを選択し、どの光学フィルタが選択されたのかを保持部4に伝達する。光学フィルタ切替器3は、光学フィルタ1a〜1cを光センサ2の位置に対して相対的に移動させる移動手段を備えており、選択された光学フィルタは、光センサ2と相対する位置に移動される。したがって、受光部10に入射した光は、選択された光学フィルタを透過して光センサ2に到達する。
【0053】
保持部4は、光強度信号の値を保持する。保持部4は、複数の保持回路a〜cと当該保持回路a〜cを制御する制御回路とを備える。保持部4の制御用入力端子は光学フィルタ切替器3に接続されており、保持部4の信号用入力端子は増幅部20の出力端子に接続されている。また、保持部4の出力端子は、信号選択部の入力端子に接続されている。
【0054】
保持部4の保持回路a〜cは、光学フィルタ1a〜1cと対応付けられている。たとえば、光学フィルタ切替器3が光学フィルタ1aを選択した場合、制御回路は、光強度信号の値を保持回路aに保持するように制御する。したがって、光学フィルタ1a〜1cを次々に切り替えることにより、光学フィルタ1a〜1cを透過した光に対応する光強度信号が、保持回路a〜cにそれぞれ保持される。そして、保持回路a〜cは、保持された光強度信号の値を信号選択部に出力する。
【0055】
以上のとおり構成される本実施の形態の光量子計では、受光部10は、光センサ2を1つだけ備える。受光部10に入射した光は、光学フィルタ切替器3によって選択された光学フィルタを透過して光センサ2に到達する。光センサ2から出力された光強度信号は、増幅部20で増幅されたのち保持部4で保持される。保持部4で保持された光強度信号は信号選択部に出力される。
【0056】
本実施の形態の光量子計では、光学フィルタ1a〜1cを次々に切り替えることによって、複数の波長帯域における光強度信号の値を保持部4で保持する。したがって、保持部4に保持された複数の波長帯域の光強度信号を選択的に合成して、特定の波長帯域の光量子束密度を算出することができる。
【0057】
以上のとおり、説明した本実施の形態は、第1および第2の実施の形態における効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0058】
(c)本実施の形態の受光部は、光センサを1つだけ備える。したがって、計測する波長帯域の数が多数となる場合であっても、センサユニットのサイズを小型に維持することができる。
【0059】
以上のとおり、実施の形態において、本発明の光量子計を説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0060】
たとえば、第1〜第3の実施の形態では、400〜500nm、500〜600nm、および600〜700nmを含む3つの波長帯域の光量子束密度を計測する場合について例示的に説明した。しかしながら、本発明は、上記3つの波長帯域を計測する場合に限定されない。第1および第2の実施の形態の場合、受光部、増幅部、および信号選択部のスイッチの個数を加減することにより、任意の複数の波長帯域の光量子束密度を計測する構成に変更することが可能である。また、第3の実施の形態の場合、光学フィルタ、保持回路、および信号選択部のスイッチの個数を加減することにより、任意の複数の波長帯域の光量子束密度を計測する構成に変更することが可能である。
【0061】
また、第1〜第3の実施の形態では、センサユニットと光量子計本体とは別々に形成された。しかしながら、センサユニットと光量子計本体とは一体に形成してもよい。
【0062】
また、第1〜第3の実施の形態では、光量子計で植物工場内の植物近傍における光量子束密度を計測する場合を例示した。しかしながら、本発明の光量子計は植物工場における植物に限定されず、他の対象物の近傍における光量子束密度を計測できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1a〜1c 光学フィルタ、
2,2a〜2c 光センサ、
3 光学フィルタ切替器、
4 保持部、
10,10a〜10f 受光部(受光手段)、
20a〜20c 増幅部、
30 信号選択部(信号選択手段)、
30a〜30c スイッチ、
40 信号合成部(信号合成手段)、
41 合成部、
41a〜41c 信号合成部の入力端子、
41d 結線部、
42 合成増幅部、
50 出力部(出力手段)、
51 算出部、
52 表示部、
60 外部出力部(外部出力手段)、
100,200 光量子計、
110 センサユニット、
111 受光窓、
120 光量子計本体、
121 操作パネル、
122 表示パネル、
130 接続ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域および遠赤色光領域の波長において互いに異なる範囲の波長の光を受光して、受光した光強度に応じた大きさの光強度信号を出力する複数の受光手段と、
各々の前記受光手段から出力される光強度信号のうちの少なくとも1つを選択する信号選択手段と、
前記信号選択手段で選択された前記光強度信号を合成する信号合成手段と、
前記信号合成手段で合成された合成光強度信号に基づいて、特定の波長帯域の光量子束密度を算出して出力する出力手段と、
を有する、光量子計。
【請求項2】
前記複数の受光手段は、
400〜500nmの波長の光を受光する第1受光手段と、
500〜600nmの波長の光を受光する第2受光手段と、
600〜700nmの波長の光を受光する第3受光手段と、を備え、
前記信号選択手段は、
前記第1受光手段の出力部と前記信号合成手段との間に接続される第1スイッチと、
前記第2受光手段の出力部と前記信号合成手段との間に接続される第2スイッチと、
前記第3受光手段の出力部と前記信号合成手段との間に接続される第3スイッチと、を備え、
前記信号合成手段は、
前記第1〜第3スイッチを介して印加された光強度信号を合成する合成部と、
当該合成部で合成された合成光強度信号を増幅する合成増幅部と、
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の光量子計。
【請求項3】
前記複数の受光手段の出力部に接続され、当該複数の受光手段から出力される光強度信号を直接的に外部機器に出力するための外部出力手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の光量子計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163482(P2012−163482A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25012(P2011−25012)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(392017303)システム・インスツルメンツ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】