光量調整体
【課題】本発明は、簡単な構造で光量調整を確実に行うことができる光量調整体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】光量調整体1は、一対の地組織2及び3の間に複数の遮光層4が設けられた編地部分と、地組織2及び3の外表面に接着固定された一対の光透過可能な支持体5及び6と、支持体5を移動させる操作部材7とを備えている。編地部分の構成糸は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工により地組織2及び3の間が所定間隔空けて保持されるように加工されている。地組織2及び3の経方向の鎖編からなる編目列20及び30の間に交互に編み込まれた連結糸により遮光層4が形成されている。操作部材7により支持体5を緯方向に移動させることで、遮光層4の傾斜角度を変化させて光量を調整する。
【解決手段】光量調整体1は、一対の地組織2及び3の間に複数の遮光層4が設けられた編地部分と、地組織2及び3の外表面に接着固定された一対の光透過可能な支持体5及び6と、支持体5を移動させる操作部材7とを備えている。編地部分の構成糸は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工により地組織2及び3の間が所定間隔空けて保持されるように加工されている。地組織2及び3の経方向の鎖編からなる編目列20及び30の間に交互に編み込まれた連結糸により遮光層4が形成されている。操作部材7により支持体5を緯方向に移動させることで、遮光層4の傾斜角度を変化させて光量を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や自動車等の車内に設置されて太陽光等の入射光を調整する光量調整体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内や車内に入射する外光を遮光するためにブラインドやシェードが設置されているが、遮光部材の材料としては、金属板、樹脂板、布帛といった様々な材料が用途に応じて使用されている。その中で織物や編物からなる布帛は、インテリアデザインとしても活用できることから、様々な種類のものが提案されている。例えば、特許文献1では、表地2、裏地3及び遮光層4からなり、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地2と裏地3との間が所定間隔空けて保持されるように成形された光透過性シート材が記載されている。また、特許文献2では、表編地及び裏編地を連結糸で連結し、表編地と裏編地との間に連結糸の立毛部分による立毛層を形成した二重カーテン地が記載されている。また、特許文献3では、一対の地組織を所定間隔で保持可能な長さを有する複数の糸列部を設け、糸列部は地組織に織り込まれた糸が多数配列して面状に形成されている点が記載されている。また、特許文献4では、鎖編糸と挿入糸とによってフロントとバックとの編組織が所定間隔を存置した離間状態で編成し、フロントとバックとの間に別の糸を斜め方向に掛け渡した編成部分を形成したブラインド用編生地が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4074884号公報
【特許文献2】特開2001−172841号公報
【特許文献3】特開2002−54050号公報
【特許文献4】実公平7−2633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、光透過性シート材を回動させることで透過する光量を調整することができるが、設置スペースが狭い場合に回動操作が難しくなる。特許文献2及び3では、遮光部分を可動するように構成して外光を入れたい時には可動部分を開く方向に回動させているが、布製のため幅が広くなると中央部分が弛んだり、繰返し回動させると可動部分が劣化するといった耐久性の面で問題がある。特許文献4では、フロント側の編組織の鎖編列に対して緯方向に振られた挿入糸を編み込んでいるが、バック側の編組織にはこうした挿入糸を編み込んでおらず、編地全体の強度が弱く変形しやすいため、透過する光量にバラツキが生じるようになる。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構造で光量調整を確実に行うことができる光量調整体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光量調整体は、シート状に織成又は編成された一対の地組織と、前記地組織の間に連結糸を所定の編成方向に編み込んで面状に形成されるとともに当該編成方向と直交する方向に所定間隔空けて複数配列された遮光層と、前記地組織の外表面を覆うように配置されて接着固定された光透過可能な一対の支持体と、前記支持体の少なくとも一方を前記編成方向と直交する方向に移動させて前記遮光層の前記支持体に対する傾斜角度を変化させる移動手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記地組織は、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成されており、前記遮光層は、前記地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで形成されており、前記支持体は、前記地組織の鎖編部分に接着固定されていることを特徴とする。さらに、前記地組織は、一対の前記挿入糸が隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成されており、経方向の前記編目列及び緯方向の前記挿入糸により格子状に形成されていることを特徴とする。さらに、前記遮光層は、構成糸が形態安定加工されて前記地組織を所定間隔空けて保持可能となっていることを特徴とする。さらに、前記支持体は、少なくとも一方が光透過可能な板状体であることを特徴とする。さらに、前記移動手段は、前記支持体を移動させた状態で保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のような構成を有することで、一対の地組織の間に所定の編成方向に編み込まれて面状に形成され当該編成方向と直交する方向に複数配列された遮光層を設け、一対の地組織の外表面を覆うように支持体を接着固定し、支持体を編成方向と直交する方向に移動させることで、すべての遮光層の傾斜角度を均一に変化させることができる。すべての遮光層の傾斜角度を均一に変化させることで、支持体を透過する光量が均一に変化するようになり、支持体の移動状態に応じて透過する光量を支持体全体で均一に調整することができる。
【0008】
また、地組織を、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成し、遮光層を、地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで形成し、支持体を、地組織の鎖編部分に接着固定することで、緯方向に所定間隔空けて配列された地組織の編目列の間には細い挿入糸以外に入射する光を遮るものはなく、その間の空隙から十分な光量を透過させることができる。そして、遮光層は、一対の地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されているので、遮光層の面方向に沿って編目列の間から透過する光を遮ることがなく、遮光層の面方向において十分な光量が透過するようになる。
【0009】
また、遮光層を有する地組織の外表面に支持体を設けた簡単な構造であることから、コンパクト化及び軽量化することが容易であり、支持体を移動することができるスペースがあれば設置できる。そのため、窓際に設置してもスペースをとることがなく、パネル化してガラス窓やパーティションとして用いることもでき、自動車の車内等の狭い場所でも設置することが可能となる。
【0010】
地組織及び遮光層を織物又は編物で構成しているので、支持体として可撓性のあるシート体を用いれば、全体を湾曲させることができ、設置場所のスペースに合せて変形させて取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態に関する斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の地組織に関する模式図である。
【図3】光量調整体の動作に関する正面図及び側面図である。
【図4】光量調整体の動作に関する正面図及び側面図である。
【図5】光量調整体の動作に関する正面図及び側面図である。
【図6】窓枠に光量調整体を取り付けた場合に関する斜視図及び断面図である。
【図7】別の移動手段を用いた変形例に関する正面図である。
【図8】図7に示す変形例の動作に関する正面図である。
【図9】図7に示す変形例の動作に関する側面図である。
【図10】別の移動手段を用いた別の変形例に関する斜視図である。
【図11】図10に示す変形例に関する正面図である。
【図12】図10に示す変形例の動作に関する側面図である。
【図13】図1に示す実施形態に関する編組織図である。
【図14】ダブルラッシェル編機の概略構成図である。
【図15】編地の形態安定加工及び支持体の接着固定加工に関する説明図である。
【図16】本発明に係る別の実施形態に関する斜視図である。
【図17】図16に示す実施形態に関する正面図及び断面図である。
【図18】図16に示す実施形態の動作に関する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0013】
図1及び図2は、本発明に係る実施形態に関する斜視図及び正面図である。光量調整体1は、一対の地組織2及び3の間に複数の遮光層4が形成された編地部分と、地組織2及び3の外表面に接着固定された一対の光透過可能な支持体5及び6と、支持体5を移動させる移動手段である一対の操作部材7とを備えている。編地部分の構成糸は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工により地組織2及び3の間が所定間隔空けて保持されるように加工されている。
【0014】
地組織2は、経方向に鎖編により編成された編目列20が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列20に交互に所定長さずつ挿入糸21を編み込んで平面状に形成されている。したがって、地組織2は、経方向に直線状に延びる編目列20と、隣接する編目列20の間に緯方向に振られて掛け渡すように配列された挿入糸21とにより格子状に形成されている。
【0015】
同様に、地組織3は、経方向に鎖編により編成された編目列30が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列30に交互に所定長さずつ挿入糸31を編み込んで平面状に形成されている。したがって、地組織3は、経方向に直線状に延びる編目列30と、隣接する編目列30の間に緯方向に振られて掛け渡すように配列された挿入糸31とにより格子状に形成されている。
【0016】
図2は、地組織2の編組織を示す模式図である。隣接する編目列20の間には、一対の挿入糸21a及び21bが緯方向に振られながら所定の長さずつ交互に編目列20に編み込まれており、経方向の編目列20及び緯方向の挿入糸21により格子状に編成されている。一対の挿入糸21a及び21bは、緯方向に互いに逆方向に振られて編目列20の間で互いに交差するようにされているため、経方向の編目列20には挿入糸21a及び21bが二重に編み込まれるとともに緯方向に挿入糸21が交差するように二重に掛け渡されるので、編地全体の強度を向上させて保形性を高め、地組織2の光透過性が確保されるようになっている。地組織3についても地組織2と同様の編組織で構成され、光透過性が確保されている。
【0017】
遮光層4は、地組織2の編目列20と地組織3の編目列30との間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されており、複数の遮光層4が緯方向に互いに平行となるように配列されている。遮光層4を形成する連結糸は密に配列されて遮光性を持たせており、連結糸に捲縮糸等の嵩高性の糸を使用することで遮光性をより向上させることができる。
【0018】
地組織及び遮光層は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工を施すことで、地組織2及び3が格子状の編組織として形状保持され、遮光層4が面状体として一体的に動作するようになっている。後述するように、遮光層4は、面状体として地組織2及び3に対する傾斜角度を変化するように動作して編地部分を透過する光量を調整することができる。
【0019】
地組織及び遮光層は、上述した編地以外に織地でも構成することができる。例えば、一対の地組織を平織で織成し、地組織の間に交互に連結糸を編み込んで遮光層を形成すればよい。この場合、地組織が上述した編地のように格子状に形成されていないので、光の透過性は低下するが、光透過性の高い糸を用いて地組織を織成すれば、遮光層による光量調整を行うことができる。
【0020】
支持体5及び6は、所定の厚さの板状体で、光透過可能な材料を用いて成形されている。光透過可能な材料としては、透明又は半透明のガラス材料、透明又は半透明の樹脂材料が挙げられ、地組織の編目列に接着固定可能なものがよい。支持体5は、地組織2の編目列20が接着固定されており、支持体5が地組織2と一体化されている。支持体6についても、地組織3の編目列30が接着固定されており、支持体6が地組織3と一体化されている。
【0021】
支持体5及び6は、平板状や湾曲形状のものを用いることができ、支持体同士が所定の間隙を保った状態で移動可能であれば、これらの形状以外に形成してもよい。
【0022】
固定側の支持体6には、地組織の緯方向に延設して取付部60が設けられており、移動側の支持体5には、支持体6の取付部60と同じ側の端面に沿って補強部材50が固定されている。
【0023】
一対の操作部材7は、所定間隔を置いて取付部60に軸支ピン70により回動可能に取り付けられている。操作部材7の根元部分は軸支ピン70により支持され、先端部分は外方に向かって折り曲げられて当接部71が形成されている。操作部材7の回動中心から当接部71の当接面71aまでの長さは、当接面71aが補強部材50に当接して押圧し支持体5を地組織の緯方向に移動させるのに必要な長さに設定されている。操作部材7には、所定の回動角度で保持できるようにストッパ(図示せず)が設けられている。ストッパとしては、例えば、取付部60に穿設された複数の位置決め孔に挿脱可能なストッパピンを操作部材7に取り付けておき、所望の回動角度まで操作部材7を回動させてストッパピンを位置決め孔に挿入して操作部材7を保持するようにすればよい。
【0024】
図3から図5は、光量調整体1の動作に関する正面図(各図(a))及び側面図(各図(b))である。図3では、操作部材7が補強部材50に沿うように横向きに回動して支持体5が下方に移動した状態を示しており、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる(図3(a)参照)。
【0025】
図4では、操作部材7を反時計回りに所定角度回動して支持体5が上方に移動した状態を示しており、遮光層4が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。このように遮光層4が支持体5及び6に対してほぼ直交する方向に設定されている状態を正面から見ると、入射する光は遮光層4に遮られることなく透過するようになる(図4(a)参照)。
【0026】
図5では、操作部材7が補強部材50に対してほぼ直交する状態に回動して支持体5が図4に示す状態よりもさらに上方に移動した状態を示しており、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる(図5(a)参照)。図3(a)の遮光層4の傾斜状態と比較すると、図3(a)の状態では上方から入射する光が遮光層4で反射されて正面に向かって照射される分遮光効果が図5(a)の状態よりも小さくなる。このように、遮光層4の傾斜角度を変化させることで透過する光量をきめ細かく調整することができる。
【0027】
以上説明したように、操作部材7を回動させて支持体5を押し上げる移動量を調整することができる。そのため、支持体5の移動量を調整して遮光層4の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。そして、支持体5の移動に合わせて遮光層4の傾斜角度を一斉に変化させることができ、編地部分全体で透過する光を均一に調整することが可能となる。
【0028】
操作部材7は、手で把持して回動させることができ、移動手段を簡単な構成とすることができる。上述した例では、操作部材7を折り曲げて当接部を形成しているが、楕円形状のカム部材を回動可能に取り付けて操作部材として用いてもよい。また、補強部材50に沿ってスライドする部材に傾斜面を形成しておき、部材をスライドさせながら傾斜面を補強部材50に当接させて押し上げるようにすることもできる。
【0029】
移動手段としては、上述したような支持体を押圧動作により移動させる手段のほかに支持体に取っ手や紐を取り付けて引張動作により移動させる手段を用いてもよい。また、手動により移動させる手段以外にもモータ、アクチュエータ等の駆動手段を用いて移動させる手段を用いることもできる。
【0030】
また、この例では、支持体6を固定しておき支持体5のみを移動させる機構であるが、支持体5を固定して支持体6のみを移動させるようにしてもよく、両支持体を互いに反対方向に移動させるようにしてもよい。
【0031】
図6は、窓ガラス板8を保持する窓枠9に光量調整体を取り付けた場合に関する斜視図(図6(a))及びA−A断面図(図6(b))である。この例では、窓ガラス板8に直接編地部分を接着固定し、編地部分の窓ガラス板8とは反対側に面に光透過性を有する板状の支持体5が接着固定されている。そして、窓枠9の下部に操作部材7が回動可能に取り付けられており、操作部材7を回動させることで支持体5を上下動させて光量調整を行うことができる。
【0032】
窓の前面に従来のカーテンやブラインドを設置するスペースがない場合でも、この例のように窓に直接取り付けることができれば、窓から入射する光の光量調整を行うことが可能となる。
【0033】
図7は、上述した例とは別の移動手段を用いた変形例に関する正面図である。この例では、支持体5を上方に引き上げるようにして移動させている。支持体5の上端部には、ワイヤ72を取り付ける一対の取付片51及び52が固定されている。支持体6の内表面には、上側縁及び左側縁に沿ってL字型の取付板61が固定されている。取付板61には、取付片51及び52に対向配置されたプーリ62及び63が回動可能に軸支されている。また、取付板61の角部にはプーリ64が回動可能に軸支されており、取付片51及び52に一端を固定された2つのワイヤ72はそれぞれプーリ62及び63に掛けて水平方向に案内されてプーリ64に掛けられて下方向に案内されるようになっている。
【0034】
そして、ワイヤ72の他端は、取付板61の下方に回動可能に軸支された巻き付けローラ73に掛けられて固定されている。巻き付けローラ73は、操作レバー74により回動させることができ、巻き付けローラ73を反時計回りに回動させることで、ワイヤ72が巻き取られて支持体5がワイヤ72により引き上げられるようになる。
【0035】
操作レバー74の回動範囲には3本のストッパピン75a〜75cが取付板61に突設されている。そして、操作レバー74は、手前側に回動可能となるように巻き付けローラ73に一端が軸支されており、反時計回りに回動した場合にストッパピン75a〜75cの先端を越えて回動させることができる。巻き付けローラ73には、ワイヤ72を介して時計回りに回動させる力が作用しているため、操作レバー74が所定の回動角度で保持されるように、いずれかのストッパピンに当接させて時計周りに回動しないようにする。
【0036】
図8は、操作レバー74を反時計回りに回動させてストッパピン75bを越えた状態でストッパピン75bに係止させた場合を示す正面図である。こうして操作レバー74をストッパピン75bに係止させておけば、支持体5を引き上げた状態に保持することができる。
【0037】
図9は、光量調整体の動作に関する側面図であり、操作レバー74をストッパピン75aに当接させて保持した状態(図9(a))、操作レバー74をストッパピン75bに当接させて保持した状態(図9(b))及び操作レバー74をストッパピン75cに当接させて保持した状態(図9(c))を示している。
【0038】
図9(a)では、支持体5が支持体6に対して下方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0039】
図9(b)では、図9(a)の状態よりも支持体5が上方に移動した状態となり、遮光層4が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。このように遮光層4が支持体5及び6に対してほぼ直交する方向に設定されている状態を正面から見ると、入射する光は遮光層4に遮られることなく透過するようになる。
【0040】
図9(c)では、図9(b)の状態よりも支持体5がさらに上方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0041】
操作レバー74の回動角度をきめ細かく調整するためには、ストッパピンの数を増加させることが考えられるが、ストッパピン以外の方法を用いてもよい。例えば、巻き付けローラ73の回転軸に係合歯車を固定して係合爪を取付板に回動可能に軸支しておき、巻き付けローラ73の回動に合わせて係合爪を係合歯車に係止して所定の回転角度に保持することができる。
【0042】
以上説明したように、操作レバー74を回動させて支持体5を引き上げる移動量を調整することができる。そのため、支持体5の移動量を調整して遮光層4の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。そして、支持体5の移動に合わせて遮光層4の傾斜角度を一斉に変化させることができ、編地部分全体で透過する光を均一に調整することが可能となる。
【0043】
図10及び11は、上述した例とは別の移動手段を用いた別の変形例に関する斜視図及び正面図である。この例では、ウォームギヤを用いて支持体5を引き上げるようにしている。支持体5の上端部には、シート状の取付片53及び54の一端が固定されている。支持体6内表面には、上側縁及び左側縁に沿ってL字型の取付板65が固定されている。取付板65には、ウォームホイール80を一端に固定した棒状の軸体81を軸支する支持部66が突設されている。軸体81には、取付片53及び54の他端が固定されており、軸体81を回動させることで取付片53及び54が巻き取られるようになっている。
【0044】
取付板65の左側縁には支持部67が突設されており、上端部にウォーム83を形成した軸体82が支持部67により回動可能に軸支されている。軸体82の下端部には操作ツマミ部76が形成されている。
【0045】
ウォームギヤでは、ウォーム83からウォームホイール80に回動が伝達されるが、ウォームホイール80からウォーム83には回動が伝達できないため、ウォーム83の回動を停止した状態のまま保持される。そのため、支持体5は引き上げられた状態のまま保持されるようになる。したがって、ウォーム83の回動する角度を調整することで支持体5を引き上げる移動量を調整することができる。そのため、支持体5の移動量を調整して遮光層4の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。支持体5を元の状態に戻す場合には、軸体82を反対方向に回動させてウォームホイール80を時計回りに回動させるようにすればよい。
【0046】
図12は、光量調整体の動作に関する側面図であり、ウォーム83を回動させ支持体5を引き上げて遮光層4の傾斜角度を変化させている。
【0047】
図12(a)では、支持体5が支持体6に対して下方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0048】
図12(b)では、図12(a)の状態よりも支持体5が上方に移動した状態となり、遮光層4が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。このように遮光層4が支持体5及び6に対してほぼ直交する方向に設定されている状態を正面から見ると、入射する光は遮光層4に遮られることなく透過するようになる。
【0049】
図12(c)では、図12(b)の状態よりも支持体5がさらに上方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0050】
この例では、操作ツマミ部76により軸体82を回動させて支持体5を上下動することで遮光層4の傾斜角度を任意の角度位置に設定することができ、きめ細かい光量調整を行うことができる。
【0051】
図13は、本実施形態に関する編組織図である。L1及びL2は表地2の挿入糸21であり、L3は鎖編により編成される地組織2の編目列20である。図示されるように、一対の挿入糸21であるL1及びL2が隣接する編目列20に所定長さずつ交互に編み込まれ、隣接する編目列20の間で交差するように掛け渡される。L4は連結糸であり、編目列20及び30の編目に交互に編み込まれる。L5は鎖編により編成される地組織3の編目列30であり、L6及びL7は地組織3の挿入糸31である。地組織2と同様に一対の挿入糸31であるL6及びL7は隣接する編目列30に所定長さずつ交互に編み込まれ、隣接する編目列30の間で交差するように掛け渡されている。
【0052】
図14は、編成するためのダブルラッシェル編機に関する概略構成図である。地組織2を編成するために、フロントニードル100、トリックプレート101及びステッチコーム102が設けられており、地組織3を編成するために、バックニードル110、トリックプレート111及びステッチコーム112が設けられている。ガイドL1〜L7をスイングしながら、フロントニードル100及びバックニードル110により地組織2及び3を編成し、連結糸を交互に両ニードルを掛けて編み込まれる。
【0053】
地組織2及び3の編成糸としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維あるいはこれらの混合繊維を用いることができ、長繊維糸又は紡績糸のいずれであってもよく、特に限定されない。また、地組織の強度を高めるために編成糸に金属繊維を用いたり、混繊するようにしてもよい。
【0054】
連結糸としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維あるいはこれらの混合繊維を用いることができ、長繊維糸又は紡績糸のいずれであってもよく、特に限定されない。遮光性を向上させるためには、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維等の合成繊維を用いた捲縮糸といった嵩高性の糸を用いるのが好ましい。
【0055】
図15は、図13で示す編組織で編成された編地を形態安定加工(樹脂加工)して支持体を接着固定する工程に関する説明図である。編地Fは必要に応じて染色及び精錬しておく。そして、編地Fをローラにより搬送して、樹脂液を貯留する液槽200内に搬入し編地Fに樹脂材料を含浸させる。含浸させる樹脂材料としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂等が好ましい。
【0056】
含浸された編地を絞りローラ201により挟圧して余分な樹脂液を絞り取り、乾燥機202内に搬入する。乾燥機202では編地の両側端の耳部をピンに掛けて張設した状態で乾燥させる。乾燥工程では、150℃で2〜3分乾燥させるのがよい。編地の両側端を引っ張って張設した状態で乾燥させるので、隣接する編目列の間に交差するように掛け渡された挿入糸が緊張状態となって地組織の編目列が経方向に直線状に延び緯方向に挿入糸が直線状に延びて格子状に形成されるとともに地組織が所定間隔を空けて保持された状態で形態安定加工されるようになる。
【0057】
なお、熱セット加工により地組織が同様の形態で安定した状態となる場合には、樹脂含浸を行うことなく編地の両側端の耳部をピンに掛けて張設した状態で熱セット加工するようにしてもよい。
【0058】
形態安定加工された編地は、カッタ203により所定の長さに切断される。切断された編地Tは、ローラ塗布装置204に搬送されて下面全体の編目列に対して塗布ローラにより接着剤が塗布される。この場合、編目列は鎖編で形成されているため、挿入糸よりも外方に突出した状態となっており、塗布ローラ上に接触するように編地Tを経方向に搬送すれば、編目列の表面部分にだけ塗布ローラが接触して接着剤を塗布することができる。
【0059】
接着剤としては、固化した状態で透明となる接着剤で、編地に滲み込みにくい高粘度のものがよい。例えば、乾燥タイプの合成接着剤が好ましく、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、変性オレフィン系接着剤が挙げられる。特に、湿気硬化型変性シリコン系接着剤が好ましく、アクリル変成シリコン樹脂がより好ましい。
【0060】
編目列に接着剤を塗布した後、編地Tを接着面を下にして透明な樹脂製の板状体Sの上面に載置して接着固定する。板状体Sに接着固定した編地Tの残りの面に接着剤を塗布するために、再度ローラ塗布装置204に搬送し、残りの面全体の編目列に対して塗布ローラにより接着剤を編目列に塗布する。そして、もう一枚の板状体Sの上面に編地Tを載置して残りの面の編目列に板状体Sを接着固定する。こうして編地Tの両面に支持体となる板状体を接着固定することができる。
【0061】
なお、地組織の編目列がわずかに湾曲して平面状でない場合には、塗布ローラにより接着剤を塗布する際に編地Tの両端部を引張りながら搬送することで編目列に均一に接着剤を塗布することができる。
【0062】
図16及び図17は、本発明に係る別の実施形態に関する斜視図及び正面図である。また、図18は、光量調整の動作に関する側面図である。
【0063】
光量調整体1’は、一対の地組織2’及び3’の間に複数の遮光層4’からなる遮光部が設けられた編地部分と、地組織2’及び3’の外表面に接着固定された一対の光透過可能な支持体5’及び6’と、支持体5’を移動させる操作部材7’とを備えている。図1と同様に、編地部分の構成糸は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工により地組織2’及び3’の間が所定間隔空けて保持されるように加工されている。
【0064】
この例では、図18に示すように、遮光層4’は、地組織2’及び3’の編目列20’及び30’に1つおきに連結して形成されている。そのため、遮光層4’の間隔は図1の場合に比べて大きくなるが、遮光層4’がその分幅を拡げることができる。そのため、支持体5’を操作部材7’により図1と同様に移動させて光量調整を行うと、遮光層4’が遮蔽する場合と遮蔽しない場合のコントラストを大きくすることが可能となる。
【0065】
図18(a)では、操作部材7’が補強部材50’に沿うように横向きに回動して支持体5が下方に移動した状態を示しており、遮光層4’が支持体6’から支持体5’に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。正面から見ると、幅の広い遮光層4’が表出し、図3に示す場合に比べて遮光効果を大きくすることができる。
【0066】
図18(b)では、操作部材7’を反時計回りに所定角度回動して支持体5’が上方に移動した状態を示しており、遮光層4’が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。正面から見ると、入射する光は遮光層4’に遮られることなく透過するようになる。また、図4に示す場合に比べて遮光層4’の密度が小さくなるため、透過する光量を大きくすることができる。
【0067】
図18(c)では、操作部材7’が補強部材50’に対してほぼ直交する状態に回動して支持体5’がさらに上方に移動した状態を示しており、遮光層4’が支持体6’から支持体5’に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。正面から見ると、幅の広い遮光層4’が表出し、図3に示す場合に比べて遮光効果を大きくすることができる。図18(a)の遮光層4’の傾斜状態と比較すると、図18(a)の状態では上方から入射する光が遮光層4’で反射されて正面に向かって照射されるため、図18(c)の状態の方が遮光効果を大きくなる。
【0068】
以上説明したように、支持体5’の移動量を調整して遮光層4’の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。そして、支持体5’の移動に合わせて遮光層4’の傾斜角度を一斉に変化させることができ、編地部分全体で透過する光を均一に調整することが可能となる。
【0069】
図16に示す編地を編成する場合には、図13に示す編組織図においてL4の連結糸の間隔を長くすることで遮光層4’の幅を拡げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る光量調整体は、簡単な構成で設置スペースが小さいので、室内や車内にスペースをあまりとらずに設置でき、光量調整が必要な様々な場所に使用可能である。また、遮光層により確実に視界を遮ることができることから、室内のパーティションとしても用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 光量調整体
2 地組織
20 編目列
21 挿入糸
3 地組織
30 編目列
31 挿入糸
4 遮光層
5 支持体
6 支持体
7 操作部材
8 窓ガラス板
9 窓枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や自動車等の車内に設置されて太陽光等の入射光を調整する光量調整体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内や車内に入射する外光を遮光するためにブラインドやシェードが設置されているが、遮光部材の材料としては、金属板、樹脂板、布帛といった様々な材料が用途に応じて使用されている。その中で織物や編物からなる布帛は、インテリアデザインとしても活用できることから、様々な種類のものが提案されている。例えば、特許文献1では、表地2、裏地3及び遮光層4からなり、全体の構成糸を樹脂加工により固着させて表地2と裏地3との間が所定間隔空けて保持されるように成形された光透過性シート材が記載されている。また、特許文献2では、表編地及び裏編地を連結糸で連結し、表編地と裏編地との間に連結糸の立毛部分による立毛層を形成した二重カーテン地が記載されている。また、特許文献3では、一対の地組織を所定間隔で保持可能な長さを有する複数の糸列部を設け、糸列部は地組織に織り込まれた糸が多数配列して面状に形成されている点が記載されている。また、特許文献4では、鎖編糸と挿入糸とによってフロントとバックとの編組織が所定間隔を存置した離間状態で編成し、フロントとバックとの間に別の糸を斜め方向に掛け渡した編成部分を形成したブラインド用編生地が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4074884号公報
【特許文献2】特開2001−172841号公報
【特許文献3】特開2002−54050号公報
【特許文献4】実公平7−2633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、光透過性シート材を回動させることで透過する光量を調整することができるが、設置スペースが狭い場合に回動操作が難しくなる。特許文献2及び3では、遮光部分を可動するように構成して外光を入れたい時には可動部分を開く方向に回動させているが、布製のため幅が広くなると中央部分が弛んだり、繰返し回動させると可動部分が劣化するといった耐久性の面で問題がある。特許文献4では、フロント側の編組織の鎖編列に対して緯方向に振られた挿入糸を編み込んでいるが、バック側の編組織にはこうした挿入糸を編み込んでおらず、編地全体の強度が弱く変形しやすいため、透過する光量にバラツキが生じるようになる。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構造で光量調整を確実に行うことができる光量調整体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光量調整体は、シート状に織成又は編成された一対の地組織と、前記地組織の間に連結糸を所定の編成方向に編み込んで面状に形成されるとともに当該編成方向と直交する方向に所定間隔空けて複数配列された遮光層と、前記地組織の外表面を覆うように配置されて接着固定された光透過可能な一対の支持体と、前記支持体の少なくとも一方を前記編成方向と直交する方向に移動させて前記遮光層の前記支持体に対する傾斜角度を変化させる移動手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記地組織は、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成されており、前記遮光層は、前記地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで形成されており、前記支持体は、前記地組織の鎖編部分に接着固定されていることを特徴とする。さらに、前記地組織は、一対の前記挿入糸が隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成されており、経方向の前記編目列及び緯方向の前記挿入糸により格子状に形成されていることを特徴とする。さらに、前記遮光層は、構成糸が形態安定加工されて前記地組織を所定間隔空けて保持可能となっていることを特徴とする。さらに、前記支持体は、少なくとも一方が光透過可能な板状体であることを特徴とする。さらに、前記移動手段は、前記支持体を移動させた状態で保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のような構成を有することで、一対の地組織の間に所定の編成方向に編み込まれて面状に形成され当該編成方向と直交する方向に複数配列された遮光層を設け、一対の地組織の外表面を覆うように支持体を接着固定し、支持体を編成方向と直交する方向に移動させることで、すべての遮光層の傾斜角度を均一に変化させることができる。すべての遮光層の傾斜角度を均一に変化させることで、支持体を透過する光量が均一に変化するようになり、支持体の移動状態に応じて透過する光量を支持体全体で均一に調整することができる。
【0008】
また、地組織を、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成し、遮光層を、地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで形成し、支持体を、地組織の鎖編部分に接着固定することで、緯方向に所定間隔空けて配列された地組織の編目列の間には細い挿入糸以外に入射する光を遮るものはなく、その間の空隙から十分な光量を透過させることができる。そして、遮光層は、一対の地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されているので、遮光層の面方向に沿って編目列の間から透過する光を遮ることがなく、遮光層の面方向において十分な光量が透過するようになる。
【0009】
また、遮光層を有する地組織の外表面に支持体を設けた簡単な構造であることから、コンパクト化及び軽量化することが容易であり、支持体を移動することができるスペースがあれば設置できる。そのため、窓際に設置してもスペースをとることがなく、パネル化してガラス窓やパーティションとして用いることもでき、自動車の車内等の狭い場所でも設置することが可能となる。
【0010】
地組織及び遮光層を織物又は編物で構成しているので、支持体として可撓性のあるシート体を用いれば、全体を湾曲させることができ、設置場所のスペースに合せて変形させて取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態に関する斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の地組織に関する模式図である。
【図3】光量調整体の動作に関する正面図及び側面図である。
【図4】光量調整体の動作に関する正面図及び側面図である。
【図5】光量調整体の動作に関する正面図及び側面図である。
【図6】窓枠に光量調整体を取り付けた場合に関する斜視図及び断面図である。
【図7】別の移動手段を用いた変形例に関する正面図である。
【図8】図7に示す変形例の動作に関する正面図である。
【図9】図7に示す変形例の動作に関する側面図である。
【図10】別の移動手段を用いた別の変形例に関する斜視図である。
【図11】図10に示す変形例に関する正面図である。
【図12】図10に示す変形例の動作に関する側面図である。
【図13】図1に示す実施形態に関する編組織図である。
【図14】ダブルラッシェル編機の概略構成図である。
【図15】編地の形態安定加工及び支持体の接着固定加工に関する説明図である。
【図16】本発明に係る別の実施形態に関する斜視図である。
【図17】図16に示す実施形態に関する正面図及び断面図である。
【図18】図16に示す実施形態の動作に関する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0013】
図1及び図2は、本発明に係る実施形態に関する斜視図及び正面図である。光量調整体1は、一対の地組織2及び3の間に複数の遮光層4が形成された編地部分と、地組織2及び3の外表面に接着固定された一対の光透過可能な支持体5及び6と、支持体5を移動させる移動手段である一対の操作部材7とを備えている。編地部分の構成糸は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工により地組織2及び3の間が所定間隔空けて保持されるように加工されている。
【0014】
地組織2は、経方向に鎖編により編成された編目列20が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列20に交互に所定長さずつ挿入糸21を編み込んで平面状に形成されている。したがって、地組織2は、経方向に直線状に延びる編目列20と、隣接する編目列20の間に緯方向に振られて掛け渡すように配列された挿入糸21とにより格子状に形成されている。
【0015】
同様に、地組織3は、経方向に鎖編により編成された編目列30が緯方向に所定間隔空けて配列されて隣接する編目列30に交互に所定長さずつ挿入糸31を編み込んで平面状に形成されている。したがって、地組織3は、経方向に直線状に延びる編目列30と、隣接する編目列30の間に緯方向に振られて掛け渡すように配列された挿入糸31とにより格子状に形成されている。
【0016】
図2は、地組織2の編組織を示す模式図である。隣接する編目列20の間には、一対の挿入糸21a及び21bが緯方向に振られながら所定の長さずつ交互に編目列20に編み込まれており、経方向の編目列20及び緯方向の挿入糸21により格子状に編成されている。一対の挿入糸21a及び21bは、緯方向に互いに逆方向に振られて編目列20の間で互いに交差するようにされているため、経方向の編目列20には挿入糸21a及び21bが二重に編み込まれるとともに緯方向に挿入糸21が交差するように二重に掛け渡されるので、編地全体の強度を向上させて保形性を高め、地組織2の光透過性が確保されるようになっている。地組織3についても地組織2と同様の編組織で構成され、光透過性が確保されている。
【0017】
遮光層4は、地組織2の編目列20と地組織3の編目列30との間に交互に連結糸を編み込んで経方向に面状に形成されており、複数の遮光層4が緯方向に互いに平行となるように配列されている。遮光層4を形成する連結糸は密に配列されて遮光性を持たせており、連結糸に捲縮糸等の嵩高性の糸を使用することで遮光性をより向上させることができる。
【0018】
地組織及び遮光層は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工を施すことで、地組織2及び3が格子状の編組織として形状保持され、遮光層4が面状体として一体的に動作するようになっている。後述するように、遮光層4は、面状体として地組織2及び3に対する傾斜角度を変化するように動作して編地部分を透過する光量を調整することができる。
【0019】
地組織及び遮光層は、上述した編地以外に織地でも構成することができる。例えば、一対の地組織を平織で織成し、地組織の間に交互に連結糸を編み込んで遮光層を形成すればよい。この場合、地組織が上述した編地のように格子状に形成されていないので、光の透過性は低下するが、光透過性の高い糸を用いて地組織を織成すれば、遮光層による光量調整を行うことができる。
【0020】
支持体5及び6は、所定の厚さの板状体で、光透過可能な材料を用いて成形されている。光透過可能な材料としては、透明又は半透明のガラス材料、透明又は半透明の樹脂材料が挙げられ、地組織の編目列に接着固定可能なものがよい。支持体5は、地組織2の編目列20が接着固定されており、支持体5が地組織2と一体化されている。支持体6についても、地組織3の編目列30が接着固定されており、支持体6が地組織3と一体化されている。
【0021】
支持体5及び6は、平板状や湾曲形状のものを用いることができ、支持体同士が所定の間隙を保った状態で移動可能であれば、これらの形状以外に形成してもよい。
【0022】
固定側の支持体6には、地組織の緯方向に延設して取付部60が設けられており、移動側の支持体5には、支持体6の取付部60と同じ側の端面に沿って補強部材50が固定されている。
【0023】
一対の操作部材7は、所定間隔を置いて取付部60に軸支ピン70により回動可能に取り付けられている。操作部材7の根元部分は軸支ピン70により支持され、先端部分は外方に向かって折り曲げられて当接部71が形成されている。操作部材7の回動中心から当接部71の当接面71aまでの長さは、当接面71aが補強部材50に当接して押圧し支持体5を地組織の緯方向に移動させるのに必要な長さに設定されている。操作部材7には、所定の回動角度で保持できるようにストッパ(図示せず)が設けられている。ストッパとしては、例えば、取付部60に穿設された複数の位置決め孔に挿脱可能なストッパピンを操作部材7に取り付けておき、所望の回動角度まで操作部材7を回動させてストッパピンを位置決め孔に挿入して操作部材7を保持するようにすればよい。
【0024】
図3から図5は、光量調整体1の動作に関する正面図(各図(a))及び側面図(各図(b))である。図3では、操作部材7が補強部材50に沿うように横向きに回動して支持体5が下方に移動した状態を示しており、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる(図3(a)参照)。
【0025】
図4では、操作部材7を反時計回りに所定角度回動して支持体5が上方に移動した状態を示しており、遮光層4が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。このように遮光層4が支持体5及び6に対してほぼ直交する方向に設定されている状態を正面から見ると、入射する光は遮光層4に遮られることなく透過するようになる(図4(a)参照)。
【0026】
図5では、操作部材7が補強部材50に対してほぼ直交する状態に回動して支持体5が図4に示す状態よりもさらに上方に移動した状態を示しており、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる(図5(a)参照)。図3(a)の遮光層4の傾斜状態と比較すると、図3(a)の状態では上方から入射する光が遮光層4で反射されて正面に向かって照射される分遮光効果が図5(a)の状態よりも小さくなる。このように、遮光層4の傾斜角度を変化させることで透過する光量をきめ細かく調整することができる。
【0027】
以上説明したように、操作部材7を回動させて支持体5を押し上げる移動量を調整することができる。そのため、支持体5の移動量を調整して遮光層4の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。そして、支持体5の移動に合わせて遮光層4の傾斜角度を一斉に変化させることができ、編地部分全体で透過する光を均一に調整することが可能となる。
【0028】
操作部材7は、手で把持して回動させることができ、移動手段を簡単な構成とすることができる。上述した例では、操作部材7を折り曲げて当接部を形成しているが、楕円形状のカム部材を回動可能に取り付けて操作部材として用いてもよい。また、補強部材50に沿ってスライドする部材に傾斜面を形成しておき、部材をスライドさせながら傾斜面を補強部材50に当接させて押し上げるようにすることもできる。
【0029】
移動手段としては、上述したような支持体を押圧動作により移動させる手段のほかに支持体に取っ手や紐を取り付けて引張動作により移動させる手段を用いてもよい。また、手動により移動させる手段以外にもモータ、アクチュエータ等の駆動手段を用いて移動させる手段を用いることもできる。
【0030】
また、この例では、支持体6を固定しておき支持体5のみを移動させる機構であるが、支持体5を固定して支持体6のみを移動させるようにしてもよく、両支持体を互いに反対方向に移動させるようにしてもよい。
【0031】
図6は、窓ガラス板8を保持する窓枠9に光量調整体を取り付けた場合に関する斜視図(図6(a))及びA−A断面図(図6(b))である。この例では、窓ガラス板8に直接編地部分を接着固定し、編地部分の窓ガラス板8とは反対側に面に光透過性を有する板状の支持体5が接着固定されている。そして、窓枠9の下部に操作部材7が回動可能に取り付けられており、操作部材7を回動させることで支持体5を上下動させて光量調整を行うことができる。
【0032】
窓の前面に従来のカーテンやブラインドを設置するスペースがない場合でも、この例のように窓に直接取り付けることができれば、窓から入射する光の光量調整を行うことが可能となる。
【0033】
図7は、上述した例とは別の移動手段を用いた変形例に関する正面図である。この例では、支持体5を上方に引き上げるようにして移動させている。支持体5の上端部には、ワイヤ72を取り付ける一対の取付片51及び52が固定されている。支持体6の内表面には、上側縁及び左側縁に沿ってL字型の取付板61が固定されている。取付板61には、取付片51及び52に対向配置されたプーリ62及び63が回動可能に軸支されている。また、取付板61の角部にはプーリ64が回動可能に軸支されており、取付片51及び52に一端を固定された2つのワイヤ72はそれぞれプーリ62及び63に掛けて水平方向に案内されてプーリ64に掛けられて下方向に案内されるようになっている。
【0034】
そして、ワイヤ72の他端は、取付板61の下方に回動可能に軸支された巻き付けローラ73に掛けられて固定されている。巻き付けローラ73は、操作レバー74により回動させることができ、巻き付けローラ73を反時計回りに回動させることで、ワイヤ72が巻き取られて支持体5がワイヤ72により引き上げられるようになる。
【0035】
操作レバー74の回動範囲には3本のストッパピン75a〜75cが取付板61に突設されている。そして、操作レバー74は、手前側に回動可能となるように巻き付けローラ73に一端が軸支されており、反時計回りに回動した場合にストッパピン75a〜75cの先端を越えて回動させることができる。巻き付けローラ73には、ワイヤ72を介して時計回りに回動させる力が作用しているため、操作レバー74が所定の回動角度で保持されるように、いずれかのストッパピンに当接させて時計周りに回動しないようにする。
【0036】
図8は、操作レバー74を反時計回りに回動させてストッパピン75bを越えた状態でストッパピン75bに係止させた場合を示す正面図である。こうして操作レバー74をストッパピン75bに係止させておけば、支持体5を引き上げた状態に保持することができる。
【0037】
図9は、光量調整体の動作に関する側面図であり、操作レバー74をストッパピン75aに当接させて保持した状態(図9(a))、操作レバー74をストッパピン75bに当接させて保持した状態(図9(b))及び操作レバー74をストッパピン75cに当接させて保持した状態(図9(c))を示している。
【0038】
図9(a)では、支持体5が支持体6に対して下方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0039】
図9(b)では、図9(a)の状態よりも支持体5が上方に移動した状態となり、遮光層4が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。このように遮光層4が支持体5及び6に対してほぼ直交する方向に設定されている状態を正面から見ると、入射する光は遮光層4に遮られることなく透過するようになる。
【0040】
図9(c)では、図9(b)の状態よりも支持体5がさらに上方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0041】
操作レバー74の回動角度をきめ細かく調整するためには、ストッパピンの数を増加させることが考えられるが、ストッパピン以外の方法を用いてもよい。例えば、巻き付けローラ73の回転軸に係合歯車を固定して係合爪を取付板に回動可能に軸支しておき、巻き付けローラ73の回動に合わせて係合爪を係合歯車に係止して所定の回転角度に保持することができる。
【0042】
以上説明したように、操作レバー74を回動させて支持体5を引き上げる移動量を調整することができる。そのため、支持体5の移動量を調整して遮光層4の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。そして、支持体5の移動に合わせて遮光層4の傾斜角度を一斉に変化させることができ、編地部分全体で透過する光を均一に調整することが可能となる。
【0043】
図10及び11は、上述した例とは別の移動手段を用いた別の変形例に関する斜視図及び正面図である。この例では、ウォームギヤを用いて支持体5を引き上げるようにしている。支持体5の上端部には、シート状の取付片53及び54の一端が固定されている。支持体6内表面には、上側縁及び左側縁に沿ってL字型の取付板65が固定されている。取付板65には、ウォームホイール80を一端に固定した棒状の軸体81を軸支する支持部66が突設されている。軸体81には、取付片53及び54の他端が固定されており、軸体81を回動させることで取付片53及び54が巻き取られるようになっている。
【0044】
取付板65の左側縁には支持部67が突設されており、上端部にウォーム83を形成した軸体82が支持部67により回動可能に軸支されている。軸体82の下端部には操作ツマミ部76が形成されている。
【0045】
ウォームギヤでは、ウォーム83からウォームホイール80に回動が伝達されるが、ウォームホイール80からウォーム83には回動が伝達できないため、ウォーム83の回動を停止した状態のまま保持される。そのため、支持体5は引き上げられた状態のまま保持されるようになる。したがって、ウォーム83の回動する角度を調整することで支持体5を引き上げる移動量を調整することができる。そのため、支持体5の移動量を調整して遮光層4の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。支持体5を元の状態に戻す場合には、軸体82を反対方向に回動させてウォームホイール80を時計回りに回動させるようにすればよい。
【0046】
図12は、光量調整体の動作に関する側面図であり、ウォーム83を回動させ支持体5を引き上げて遮光層4の傾斜角度を変化させている。
【0047】
図12(a)では、支持体5が支持体6に対して下方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0048】
図12(b)では、図12(a)の状態よりも支持体5が上方に移動した状態となり、遮光層4が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。このように遮光層4が支持体5及び6に対してほぼ直交する方向に設定されている状態を正面から見ると、入射する光は遮光層4に遮られることなく透過するようになる。
【0049】
図12(c)では、図12(b)の状態よりも支持体5がさらに上方に移動した状態となり、遮光層4が支持体6から支持体5に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。このように遮光層4が傾斜した状態を正面から見ると、遮光層4が表出して入射する光が遮られるようになる。
【0050】
この例では、操作ツマミ部76により軸体82を回動させて支持体5を上下動することで遮光層4の傾斜角度を任意の角度位置に設定することができ、きめ細かい光量調整を行うことができる。
【0051】
図13は、本実施形態に関する編組織図である。L1及びL2は表地2の挿入糸21であり、L3は鎖編により編成される地組織2の編目列20である。図示されるように、一対の挿入糸21であるL1及びL2が隣接する編目列20に所定長さずつ交互に編み込まれ、隣接する編目列20の間で交差するように掛け渡される。L4は連結糸であり、編目列20及び30の編目に交互に編み込まれる。L5は鎖編により編成される地組織3の編目列30であり、L6及びL7は地組織3の挿入糸31である。地組織2と同様に一対の挿入糸31であるL6及びL7は隣接する編目列30に所定長さずつ交互に編み込まれ、隣接する編目列30の間で交差するように掛け渡されている。
【0052】
図14は、編成するためのダブルラッシェル編機に関する概略構成図である。地組織2を編成するために、フロントニードル100、トリックプレート101及びステッチコーム102が設けられており、地組織3を編成するために、バックニードル110、トリックプレート111及びステッチコーム112が設けられている。ガイドL1〜L7をスイングしながら、フロントニードル100及びバックニードル110により地組織2及び3を編成し、連結糸を交互に両ニードルを掛けて編み込まれる。
【0053】
地組織2及び3の編成糸としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維あるいはこれらの混合繊維を用いることができ、長繊維糸又は紡績糸のいずれであってもよく、特に限定されない。また、地組織の強度を高めるために編成糸に金属繊維を用いたり、混繊するようにしてもよい。
【0054】
連結糸としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維あるいはこれらの混合繊維を用いることができ、長繊維糸又は紡績糸のいずれであってもよく、特に限定されない。遮光性を向上させるためには、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維等の合成繊維を用いた捲縮糸といった嵩高性の糸を用いるのが好ましい。
【0055】
図15は、図13で示す編組織で編成された編地を形態安定加工(樹脂加工)して支持体を接着固定する工程に関する説明図である。編地Fは必要に応じて染色及び精錬しておく。そして、編地Fをローラにより搬送して、樹脂液を貯留する液槽200内に搬入し編地Fに樹脂材料を含浸させる。含浸させる樹脂材料としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂等が好ましい。
【0056】
含浸された編地を絞りローラ201により挟圧して余分な樹脂液を絞り取り、乾燥機202内に搬入する。乾燥機202では編地の両側端の耳部をピンに掛けて張設した状態で乾燥させる。乾燥工程では、150℃で2〜3分乾燥させるのがよい。編地の両側端を引っ張って張設した状態で乾燥させるので、隣接する編目列の間に交差するように掛け渡された挿入糸が緊張状態となって地組織の編目列が経方向に直線状に延び緯方向に挿入糸が直線状に延びて格子状に形成されるとともに地組織が所定間隔を空けて保持された状態で形態安定加工されるようになる。
【0057】
なお、熱セット加工により地組織が同様の形態で安定した状態となる場合には、樹脂含浸を行うことなく編地の両側端の耳部をピンに掛けて張設した状態で熱セット加工するようにしてもよい。
【0058】
形態安定加工された編地は、カッタ203により所定の長さに切断される。切断された編地Tは、ローラ塗布装置204に搬送されて下面全体の編目列に対して塗布ローラにより接着剤が塗布される。この場合、編目列は鎖編で形成されているため、挿入糸よりも外方に突出した状態となっており、塗布ローラ上に接触するように編地Tを経方向に搬送すれば、編目列の表面部分にだけ塗布ローラが接触して接着剤を塗布することができる。
【0059】
接着剤としては、固化した状態で透明となる接着剤で、編地に滲み込みにくい高粘度のものがよい。例えば、乾燥タイプの合成接着剤が好ましく、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、変性オレフィン系接着剤が挙げられる。特に、湿気硬化型変性シリコン系接着剤が好ましく、アクリル変成シリコン樹脂がより好ましい。
【0060】
編目列に接着剤を塗布した後、編地Tを接着面を下にして透明な樹脂製の板状体Sの上面に載置して接着固定する。板状体Sに接着固定した編地Tの残りの面に接着剤を塗布するために、再度ローラ塗布装置204に搬送し、残りの面全体の編目列に対して塗布ローラにより接着剤を編目列に塗布する。そして、もう一枚の板状体Sの上面に編地Tを載置して残りの面の編目列に板状体Sを接着固定する。こうして編地Tの両面に支持体となる板状体を接着固定することができる。
【0061】
なお、地組織の編目列がわずかに湾曲して平面状でない場合には、塗布ローラにより接着剤を塗布する際に編地Tの両端部を引張りながら搬送することで編目列に均一に接着剤を塗布することができる。
【0062】
図16及び図17は、本発明に係る別の実施形態に関する斜視図及び正面図である。また、図18は、光量調整の動作に関する側面図である。
【0063】
光量調整体1’は、一対の地組織2’及び3’の間に複数の遮光層4’からなる遮光部が設けられた編地部分と、地組織2’及び3’の外表面に接着固定された一対の光透過可能な支持体5’及び6’と、支持体5’を移動させる操作部材7’とを備えている。図1と同様に、編地部分の構成糸は、熱セット加工、樹脂加工等の形態安定加工により地組織2’及び3’の間が所定間隔空けて保持されるように加工されている。
【0064】
この例では、図18に示すように、遮光層4’は、地組織2’及び3’の編目列20’及び30’に1つおきに連結して形成されている。そのため、遮光層4’の間隔は図1の場合に比べて大きくなるが、遮光層4’がその分幅を拡げることができる。そのため、支持体5’を操作部材7’により図1と同様に移動させて光量調整を行うと、遮光層4’が遮蔽する場合と遮蔽しない場合のコントラストを大きくすることが可能となる。
【0065】
図18(a)では、操作部材7’が補強部材50’に沿うように横向きに回動して支持体5が下方に移動した状態を示しており、遮光層4’が支持体6’から支持体5’に向かって斜め下方に傾斜した状態に設定されている。正面から見ると、幅の広い遮光層4’が表出し、図3に示す場合に比べて遮光効果を大きくすることができる。
【0066】
図18(b)では、操作部材7’を反時計回りに所定角度回動して支持体5’が上方に移動した状態を示しており、遮光層4’が地組織に対してほぼ直交する方向に設定されている。正面から見ると、入射する光は遮光層4’に遮られることなく透過するようになる。また、図4に示す場合に比べて遮光層4’の密度が小さくなるため、透過する光量を大きくすることができる。
【0067】
図18(c)では、操作部材7’が補強部材50’に対してほぼ直交する状態に回動して支持体5’がさらに上方に移動した状態を示しており、遮光層4’が支持体6’から支持体5’に向かって斜め上方に傾斜した状態に設定されている。正面から見ると、幅の広い遮光層4’が表出し、図3に示す場合に比べて遮光効果を大きくすることができる。図18(a)の遮光層4’の傾斜状態と比較すると、図18(a)の状態では上方から入射する光が遮光層4’で反射されて正面に向かって照射されるため、図18(c)の状態の方が遮光効果を大きくなる。
【0068】
以上説明したように、支持体5’の移動量を調整して遮光層4’の傾斜角度を調整すれば、編地部分を透過する光量を調整することが可能となる。そして、支持体5’の移動に合わせて遮光層4’の傾斜角度を一斉に変化させることができ、編地部分全体で透過する光を均一に調整することが可能となる。
【0069】
図16に示す編地を編成する場合には、図13に示す編組織図においてL4の連結糸の間隔を長くすることで遮光層4’の幅を拡げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る光量調整体は、簡単な構成で設置スペースが小さいので、室内や車内にスペースをあまりとらずに設置でき、光量調整が必要な様々な場所に使用可能である。また、遮光層により確実に視界を遮ることができることから、室内のパーティションとしても用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 光量調整体
2 地組織
20 編目列
21 挿入糸
3 地組織
30 編目列
31 挿入糸
4 遮光層
5 支持体
6 支持体
7 操作部材
8 窓ガラス板
9 窓枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に織成又は編成された一対の地組織と、前記地組織の間に連結糸を所定の編成方向に編み込んで面状に形成されるとともに当該編成方向と直交する方向に所定間隔空けて複数配列された遮光層と、前記地組織の外表面を覆うように配置されて接着固定された光透過可能な一対の支持体と、前記支持体の少なくとも一方を前記編成方向と直交する方向に移動させて前記遮光層の前記支持体に対する傾斜角度を変化させる移動手段とを備えていることを特徴とする光量調整体。
【請求項2】
前記地組織は、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成されており、前記遮光層は、前記地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで形成されており、前記支持体は、前記地組織の鎖編部分に接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調整体。
【請求項3】
前記地組織は、一対の前記挿入糸が隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成されており、経方向の前記編目列及び緯方向の前記挿入糸により格子状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光量調整体。
【請求項4】
前記遮光層は、構成糸が形態安定加工されて前記地組織を所定間隔空けて保持可能となっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光量調整体。
【請求項5】
前記支持体は、少なくとも一方が光透過可能な板状体であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光量調整体。
【請求項6】
前記移動手段は、前記支持体を移動させた状態で保持することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光量調整体。
【請求項1】
シート状に織成又は編成された一対の地組織と、前記地組織の間に連結糸を所定の編成方向に編み込んで面状に形成されるとともに当該編成方向と直交する方向に所定間隔空けて複数配列された遮光層と、前記地組織の外表面を覆うように配置されて接着固定された光透過可能な一対の支持体と、前記支持体の少なくとも一方を前記編成方向と直交する方向に移動させて前記遮光層の前記支持体に対する傾斜角度を変化させる移動手段とを備えていることを特徴とする光量調整体。
【請求項2】
前記地組織は、経方向に鎖編により編成される複数の編目列を緯方向に所定間隔空けて配列するとともに隣接する編目列に交互に所定長さずつ挿入糸を編み込んで形成されており、前記遮光層は、前記地組織の編目列の間に交互に連結糸を編み込んで形成されており、前記支持体は、前記地組織の鎖編部分に接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調整体。
【請求項3】
前記地組織は、一対の前記挿入糸が隣接する編目列の間で互いに交差するように緯方向に振りながら掛け渡して編成されており、経方向の前記編目列及び緯方向の前記挿入糸により格子状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光量調整体。
【請求項4】
前記遮光層は、構成糸が形態安定加工されて前記地組織を所定間隔空けて保持可能となっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光量調整体。
【請求項5】
前記支持体は、少なくとも一方が光透過可能な板状体であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光量調整体。
【請求項6】
前記移動手段は、前記支持体を移動させた状態で保持することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光量調整体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−168894(P2010−168894A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296310(P2009−296310)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(395003648)株式会社カズマ (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(395003648)株式会社カズマ (5)
【Fターム(参考)】
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