説明

光量調整装置、レンズ鏡筒、及び投影装置

【課題】絞り羽根の絞り量を大きくできるようにし、コントラストの向上を可能とする。
【解決手段】光源からの光を通過させるための開口部111aが形成された絞りベース111と、開口部111aを通過する光の光軸101に直交する方向に移動可能に設けられ、開口部111aよりも小さい絞り開口116を形成するための絞り羽根112,113等の複数の絞り羽根と、複数の絞り羽根を移動させて絞り開口116の開口量を増減させる絞り羽根駆動モータ114と、絞りベース111との間に絞り羽根112,113を収容した羽根室118を形成する絞りカバー115とを備え、羽根室118は、羽根室118内の熱を外部に逃がすための通気穴119を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り羽根を移動させて絞り開口の開口量を増減させる光量調整装置、レンズ鏡筒、及び投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リフレクタに支持されたランプ等によって構成された光源部と、映像を形成するための画像形成部と、映像を投影するレンズ等によって構成された投影部(レンズ鏡筒)とを備えた液晶プロジェクタ(投影装置)が知られている。そして、このような液晶プロジェクタは、投影部に設けられた絞り羽根(光量調整装置)によって映像光を絞ることにより、コントラストを上げることができるようになっている。
【0003】
図12は、従来の液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒400を示す光軸401方向の断面図である。
図12に示すように、レンズ鏡筒400は、光量調整装置410と、光源側に配置されたレンズ420と、投影側に配置されたレンズ430と、光量調整装置410及びレンズ420,430を内面に保持する鏡筒440とを備えている。
【0004】
ここで、光量調整装置410は、上下一対の絞り羽根412,413を備えている。この絞り羽根412,413は、絞りベース411と絞りカバー415とによって形成された羽根室418内に収容されている。そして、絞り羽根駆動モータ414によって絞り羽根412,413を相互に移動させることにより、絞り開口416の開口量を増減させることができる。
【0005】
このような光量調整装置410において、絞り羽根412,413を絞ってコントラストを上げると、入射側面412a,413aで受ける光量が増え、絞り羽根412,413が高温になる。高温になった絞り羽根412,413の熱は、羽根室418内に放熱されるとともに、羽根室418の外に出ている出射側面412b,413bから鏡筒440の内部空間に逃がされる。
【0006】
しかし、出射側面412b,413bからの放熱だけでは不十分なため、入射側面412a,413aで受ける光量に応じて羽根室418内が次第に高温になる。そして、羽根室418内が高温になれば、絞り羽根412,413から羽根室418内への放熱ができなくなり、絞り羽根412,413の温度が上昇する。
【0007】
この絞り羽根412,413は、一般に合成樹脂によって形成されているので、絞り羽根412,413の温度が合成樹脂の耐熱限界を越えるようになると、絞り羽根412,413が変形等してしまう。そのため、入射側面412a,413aで受ける光量が所定の範囲内となるように、絞り羽根412,413の絞り量が制限されている。その結果、映像光を絞ってコントラストを向上させるには、一定の限界があった。
【0008】
そこで、合成樹脂製の絞り羽根412,413の入射側面412a,413aに、金属製の耐熱板を取り付けるようにした技術が知られている。この技術によれば、絞り羽根412,413を合成樹脂製として作動の円滑性、静音性、耐久性等を確保するとともに、金属製の耐熱板によって耐熱性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−237295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1の技術では、金属製の耐熱板によって絞り羽根の重量が増加するので、絞り羽根を円滑に作動させるために、大きな駆動力が必要となる。また、新たに耐熱板を取り付けるための工程が必要となるので、製造工程の複雑化やコスト増を招くこととなる。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、耐熱板を取り付けることなく絞り羽根の絞り量を大きくできるようにし、コントラストの向上を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、光源からの光を通過させるための開口部が形成された絞りベースと、前記開口部を通過する光の光軸に直交する方向に移動可能に設けられ、前記開口部よりも小さい絞り開口を形成するための絞り羽根と、前記絞り羽根を移動させて前記絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、前記絞りベースとの間に前記絞り羽根を収容した羽根室を形成する絞りカバーとを備え、前記羽根室は、前記羽根室内の熱を外部に逃がすための通気穴を有する光量調整装置である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同様の絞りベース、絞り羽根、絞り羽根駆動手段、及び絞りカバーと、前記絞り羽根と平行に配置されたレンズと、前記絞り羽根及び前記レンズを内面に保持する鏡筒とを備え、前記羽根室は、前記羽根室内の熱を前記鏡筒の内部空間に逃がすための通気穴を有するレンズ鏡筒である。
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明と同様の絞りベース、絞り羽根、絞り羽根駆動手段、絞りカバー、レンズ、及び鏡筒を備え、請求項4に記載の発明と同様の通気穴を有する投影装置である。
【0014】
(作用)
上記の請求項1、請求項4、及び請求項6に記載の発明は、絞り羽根を収容した羽根室内の熱を外部(鏡筒の内部空間)に逃がすための通気穴を有している。そのため、絞り羽根の熱は、羽根室内から通気穴を通って外部に逃げるようになり、絞り羽根の温度上昇が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通気穴からの放熱によって絞り羽根の温度上昇が抑制されるので、絞り羽根の絞り量を大きくすることができる。その結果、投影装置のコントラストを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の投影装置の一実施形態としての、液晶プロジェクタにおける光学ユニットを示す側面図である。
【図2】図1に示す光学ユニットの画像形成部の周辺部を示す側面図である。
【図3】本発明の投影装置の一実施形態としての、液晶プロジェクタの構成を示す概念図である。
【図4】本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒(第1の実施の形態)の光軸方向の半分を示す斜視図である。
【図5】図4に示すレンズ鏡筒の光量調整装置の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5に示す光量調整装置において、絞り羽根を開いた状態を示す正面図である。
【図7】図5に示す光量調整装置において、絞り羽根を絞った状態を示す正面図である。
【図8】本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒(第1の実施の形態)を示す光軸方向の断面図である。
【図9】本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒(第2の実施の形態)を示す光軸方向の断面図である。
【図10】本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒(第3の実施の形態)の光軸方向の半分を示す斜視図である。
【図11】本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒(第3の実施の形態)を示す光軸方向の断面図である。
【図12】従来の液晶プロジェクタ用のレンズ鏡筒を示す光軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
ここで、本発明における投影装置は、以下の実施の形態では、液晶プロジェクタ10であるとする。また、本発明におけるレンズ鏡筒は、以下の実施の形態では、液晶プロジェクタ10用のレンズ鏡筒100,200,300であるとする。さらにまた、本発明における光量調整装置は、以下の実施の形態では、レンズ鏡筒100,200,300に設けられた光量調整装置110,210,310であるとする。
なお、説明は、以下の順序で行う

1.第1の実施の形態(レンズ鏡筒:通気穴の構成例)
2.第2の実施の形態(レンズ鏡筒:強制冷却手段を備えた構成例)
3.第3の実施の形態(レンズ鏡筒:鏡筒に流通口を備えた構成例)

【0018】
[投影装置の構成例]

図1は、本発明の投影装置の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10における光学ユニット20を示す側面図である。
また、図2は、図1に示す光学ユニット20の画像形成部40の周辺部を示す側面図である。
さらにまた、図3は、本発明の投影装置の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10の構成を示す概念図である。
図1から図3に示すように、本実施形態の液晶プロジェクタ10における光学ユニット20は、光源部30、画像形成部40、及び投影部50を備えている。
【0019】
ここで、光源部30は、ランプ31、リフレクタ32、及び防護ガラス33を備えている。
ランプ31は、赤色光(R光)、緑色光(G光)、及び青色光(B光)を含む無偏光の白色光を出射するメタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等であって、従来公知のさまざまなランプを用いることができる。そして、ランプ31から出射された白色光は、リフレクタ32によって反射されて平行光となり、防護ガラス33から出射される。
【0020】
また、画像形成部40は、フライアイレンズ34a,34bと、PS変換素子35と、コンデンサレンズ36とを含んで構成される。
フライアイレンズ34a,34bは、防護ガラス33から離間した位置に一対で配置されており、防護ガラス33からの出射光の輝度分布を均一にする。PS変換素子35は、短冊状に配列された偏光ビームスプリッタと、これに対応して間欠的に設けられた位相差板とからなり、偏光方向の変換を行う。そのため、コンデンサレンズ36から出射される光は、所定の偏光(例えば、p偏光)に揃えられた平行光となって画像形成部40に入射する。
【0021】
さらにまた、画像形成部40は、クロスダイクロイックミラー41、反射ミラー42a,42b、及びダイクロイックミラー43を備えている。
コンデンサレンズ36から出射された白色光は、クロスダイクロイックミラー41により、短波長側の青色の波長領域の光(B光)と、長波長側の赤色及び緑色の波長領域の光(R光+G光)とに分離される。そして、B光は、反射ミラー42aによって反射され、R光+G光は、反射ミラー42bによって反射される。さらに、R光+G光の中の短波長側のG光は、ダイクロイックミラー43によって反射され、長波長側のR光は、ダイクロイックミラー43を透過する。そのため、ダイクロイックミラー43によってG光とR光とが分離される。
【0022】
さらに、画像形成部40は、偏光素子44R,44G,44Bと、反射型の液晶パネル45R,45G,45Bと、スペーサプレート46と、クロスダイクロイックプリズム47とを含んで構成される。そして、偏光素子44R,44G,44B及び反射型の液晶パネル45R,45G,45Bは、スペーサプレート46の側面に固定され、スペーサプレート46は、クロスダイクロイックプリズム47の上下面に固定されている。
【0023】
偏光素子44Rは、ダイクロイックミラー43を透過したp偏光であるR光を透過して液晶パネル45Rに入射させる。赤色の画像情報を表示する液晶パネル45Rは、R光に対応する映像信号を印加し、R光の偏光方向を回転させて変調出力する。液晶パネル45Rで空間変調され、s偏光に変換されたR光は、偏光素子44Rによって反射され、クロスダイクロイックプリズム47に入射する。
【0024】
同様に、偏光素子44Gは、ダイクロイックミラー43で反射されたp偏光であるG光を透過して液晶パネル45Gに入射させる。緑色の画像情報を表示する液晶パネル45Gは、G光に対応する映像信号を印加し、G光の偏光方向を回転させて変調出力する。液晶パネル45Gで空間変調され、s偏光に変換されたG光は、偏光素子44Gによって反射され、クロスダイクロイックプリズム47に入射する。
【0025】
同様に、偏光素子44Bは、クロスダイクロイックミラー41で分離され、反射ミラー42aで反射されたp偏光であるB光を透過して液晶パネル45Bに入射させる。青色の画像情報を表示する液晶パネル45Bは、B光に対応する映像信号を印加し、B光の偏光方向を回転させて変調出力する。液晶パネル45Bで空間変調され、s偏光に変換されたB光は、偏光素子44Bによって反射され、クロスダイクロイックプリズム47に入射する。
【0026】
クロスダイクロイックプリズム47は、入射したR光、G光、及びB光を1つの映像光として合成し、投影部50に導く。そして、投影部50に導かれた映像光は、レンズ鏡筒100を介してスクリーンに拡大投影される。
なお、このような液晶プロジェクタ10は、比較的拡大率の小さいビジネス用だけでなく、拡大率が大きいホール用やシアタ用にも適用できる。
【0027】
<1.第1の実施の形態>
[レンズ鏡筒の構成例]

図4は、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10(図3参照)用のレンズ鏡筒100(第1の実施の形態)の光軸101方向の半分を示す斜視図である。
図4に示すように、レンズ鏡筒100は、光量調整装置110と、光源側に配置されたレンズ120と、投影側に配置されたレンズ130と、鏡筒140とを備えている。
【0028】
ここで、第1の実施の形態の光量調整装置110は、絞りベース111と、上下一対の絞り羽根112,113(第1の実施の形態では、合成樹脂製)と、絞り羽根駆動モータ114(本発明の絞り羽根駆動手段に相当)と、絞りカバー115とを備えている。また、絞りベース111と絞りカバー115との間には、絞り羽根112,113を収容する羽根室118が形成され、羽根室118には、通気穴119が設けられている。そして、光量調整装置110及びレンズ120,130が鏡筒140の内面に保持され、絞り羽根112,113とレンズ120,130とが平行に配置されている。
なお、第1の実施の形態では、2枚の絞り羽根112,113を使用しているが、絞り羽根は、1枚であっても、3枚以上であってもよい。
【0029】
ここで、絞りベース111には、クロスダイクロイックプリズム47(図3参照)からの映像光を通過させるための開口部111aが形成されている。そして、絞り羽根112,113は、開口部111aを通過する光の光軸101に直交する方向に上下に往復移動可能に設けられ、絞り羽根駆動モータ114によって互いに反対方向に移動する。そのため、絞り羽根112と絞り羽根113との間の絞り開口116の開口量を増減させることができ、図4に示す状態では、開口部111aよりも小さい絞り開口116が形成されている。
【0030】
図5は、図4に示すレンズ鏡筒100の光量調整装置110の構成を示す分解斜視図である。
図5に示すように、光量調整装置110は、絞り羽根112,113、絞り羽根駆動モータ114、絞りカバー115、及び絞り羽根駆動アーム117を備えている。
なお、光量調整装置110は、絞りベース111(図4参照)も備えているが、図5では、図示を省略している。
【0031】
ここで、絞りカバー115は、光軸101に対して垂直な方向に配置されており、図4に示す絞りベース111の開口部111aに対応する円状の開口部115aが形成されている。そのため、クロスダイクロイックプリズム47(図3参照)からの映像光は、開口部115aを通過した後に、絞り羽根112,113に到達することとなる。また、絞りカバー115には、4つのガイドピン115bが一体成形されている。さらにまた、凸状のレール115cが2列に設けられている。
【0032】
また、絞り羽根112は、ガイドピン115bを挿入するためのガイド穴112aを有しており、絞り羽根113は、同様のガイド穴113aを有している。そのため、絞り羽根112,113は、ガイド穴112a,113aにガイドピン115bを挿入することにより、絞りカバー115にそれぞれ独立に取り付けられることとなる。さらに、絞り羽根112,113は、長穴に形成されたガイド穴112a,113aにより、レール115c上で摩擦力が低減されながら、光軸101に対して垂直な方向に往復移動できるようになる。
【0033】
さらにまた、絞り羽根駆動モータ114は、絞りカバー115にビス締結や接着等によって固定される。そして、絞り羽根駆動モータ114の回転軸に絞り羽根駆動アーム117が取り付けられ、絞り羽根駆動アーム117の両端部には、駆動ピン117a,117bが一体成形されている。そして、駆動ピン117aが絞り羽根112のカム穴112bにはまり込み、駆動ピン117bが絞り羽根113のカム穴113bにはまり込む。
【0034】
このカム穴112b,113bは、絞り羽根駆動アーム117の正逆回転を絞り羽根112,113の往復移動に変換する。そのため、絞り羽根駆動モータ114によって絞り羽根駆動アーム117を正逆回転させれば、絞り羽根駆動モータ114の駆動力がカム穴112b,113bに伝達され、絞り羽根112,113が互いに逆向きに往復移動するようになる。そして、絞り羽根112,113は、ガイドピン115bに案内されながら開口部115aに出入りする。
【0035】
図6は、図5に示す光量調整装置110において、絞り羽根112,113を開いた状態を示す正面図である。
また、図7は、図5に示す光量調整装置110において、絞り羽根112,113を絞った状態を示す正面図である。
【0036】
ランプ31(図3参照)が点灯していないときは、絞り羽根112,113が羽根室118(図4参照)内に完全に収納され、図6に示すように、開口部115aが全開する。具体的には、絞り羽根駆動モータ114によって絞り羽根駆動アーム117が反時計回りに回転し、絞り羽根112を絞りカバー115の上方に移動させるとともに、絞り羽根113を絞りカバー115の下方に移動させる。そのため、絞り羽根112,113が開いた状態となり、開口部115aが全開する。
【0037】
次に、図7に示すような絞り羽根112,113を絞った状態とするには、絞り羽根駆動モータ114によって絞り羽根駆動アーム117を時計回りに回転させる。これにより、絞り羽根112が絞りカバー115の下方に移動するとともに、絞り羽根113が絞りカバー115の上方に移動する。その結果、絞りカバー115の開口部115a(図6参照)よりも小さい絞り開口116が形成され、絞り開口116によって映像光が絞られるので、コントラストを向上させることができる。
なお、このような絞り開口116の形成は、投影中に自動的に行うこともできる。また、第1の実施の形態では、2枚の絞り羽根112,113によって2段階の絞りを実現しているが、3枚の絞り羽根によって無段階に調整可能な絞りとすることもできる。
【0038】
図8は、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10(図3参照)用のレンズ鏡筒100(第1の実施の形態)を示す光軸101方向の断面図である。
図8に示す状態は、絞り羽根112,113を絞った状態であり、絞り羽根112,113によって絞りカバー115の開口部115a(図6参照)よりも小さい絞り開口116が形成されている。そのため、絞り羽根112,113は、入射側面112a,113aで映像光を受けることとなる。
【0039】
このように、入射側面112a,113aが強力な映像光に長時間さらされると、映像光によって絞り羽根112,113が高温になる。高温になった絞り羽根112,113の熱は、絞り羽根112,113を収容する羽根室118内に放熱されるとともに、羽根室118の外に出ている出射側面112b,113bから鏡筒140の内部空間に逃がされる。
しかし、出射側面112b,113bからの放熱だけでは不十分なため、入射側面112a,113aで受ける光量に応じて羽根室118内の温度が上昇する。
【0040】
ここで、羽根室118(118a,118b)を形成する絞りベース111と絞りカバー115との間には、光軸101に対して垂直な方向に通気穴119(119a,119b)が設けられている。そのため、下方の羽根室118b内には、通気穴119bから鏡筒140の内部空間に存在する比較的低温の空気が入り、絞り羽根113の熱を奪う。また、この羽根室118b内の空気は、絞りベース111及び絞りカバー115と絞り羽根113との隙間から鏡筒140の内部空間に放出される。
【0041】
同様に、上方の羽根室118a内には、絞りベース111及び絞りカバー115と絞り羽根112との隙間から鏡筒140の内部空間に存在する比較的低温の空気が入り、絞り羽根112の熱を奪う。また、この羽根室118a内の空気は、通気穴119aから鏡筒140の内部空間に放出される。
なお、第1の実施の形態では、通気穴119(119a,119b)を光軸101に対して垂直な方向に設けているが、光軸101に対して平行な方向に設けることもできる。その場合の通気穴は、例えば、絞りベース111の絞り羽根112,113との平行面に設ける。
【0042】
このように、第1の実施の形態のレンズ鏡筒100は、羽根室118a,118b内の熱を通気穴119a,119bから外部に逃がすことができる。そのため、合成樹脂製の絞り羽根112,113を絞ることにより、入射側面112a,113aで受ける光量が増加しても、絞り羽根112,113が効率的に冷却されるので、合成樹脂の耐熱限界を越えることはない。その結果、合成樹脂製の絞り羽根112,113による円滑な応答性及び静音性を確保しつつ、絞り量を従来よりも増加させることができるので、コントラストの向上が可能となる。
なお、絞り羽根112,113が合成樹脂製であることにより、静音性等の点で優れるが、絞り羽根は、金属製であってもよい。
【0043】
<2.第2の実施の形態>
[レンズ鏡筒の構成例]

図9は、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10(図3参照)用のレンズ鏡筒200(第2の実施の形態)を示す光軸201方向の断面図である。
図9に示す第2の実施の形態のレンズ鏡筒200は、図8に示す第1の実施の形態のレンズ鏡筒100と同様に、光量調整装置210と、光源側に配置されたレンズ220と、投影側に配置されたレンズ230と、鏡筒240とを備えている。
【0044】
また、光量調整装置210は、絞りベース211と、上下一対の絞り羽根212,213と、絞り羽根駆動モータ214(本発明の絞り羽根駆動手段に相当)と、絞りカバー215とを備えている。そして、絞りベース211と絞りカバー215とによって羽根室218が形成され、羽根室218には、光軸201に対して垂直な方向に通気穴219が設けられている。
【0045】
さらに、第2の実施の形態のレンズ鏡筒200は、光量調整装置210に、強制冷却ファン250(本発明の強制冷却手段に相当)が取り付けられている。この強制冷却ファン250は、羽根室218内の熱を強制的に外部に逃がすことができる。そのため、絞り羽根212,213が絞られて入射側面212a,213aで受ける光量が増加しても、絞り羽根212,213の熱は、羽根室218内から鏡筒240の内部空間に強制的に放出される。その結果、絞り羽根212,213をより一層効率的に冷却できるようになる。
なお、第2の実施の形態では、強制冷却ファン250を鏡筒240の内部に設置してレンズ鏡筒200の大型化を回避しているが、鏡筒240の外に設置してもよい。
【0046】
<3.第3の実施の形態>
[レンズ鏡筒の構成例]

図10は、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10(図3参照)用のレンズ鏡筒300(第3の実施の形態)の光軸301方向の半分を示す斜視図である。
また、図11は、本発明のレンズ鏡筒の一実施形態としての、液晶プロジェクタ10用のレンズ鏡筒300(第3の実施の形態)を示す光軸301方向の断面図である。
【0047】
図10及び図11に示す第3の実施の形態のレンズ鏡筒300は、図8に示す第1の実施の形態のレンズ鏡筒100と同様に、光量調整装置310と、光源側に配置されたレンズ320と、投影側に配置されたレンズ330と、鏡筒340とを備えている。そして、光量調整装置310及びレンズ320,330は、それぞれ鏡筒340の内面に保持されている。
【0048】
また、光量調整装置310は、絞りベース311と、上下一対の絞り羽根312,313と、絞り羽根駆動モータ314(本発明の絞り羽根駆動手段に相当)と、絞りカバー315とを備えている。そして、絞りベース311と絞りカバー315とによって羽根室318が形成され、羽根室318には、光軸301に対して垂直な方向に通気穴319が設けられている。
【0049】
ここで、第3の実施の形態のレンズ鏡筒300では、通気穴319と対向する位置の鏡筒340に、流通口341,342が形成されている。そのため、流通口341,342から羽根室318に低温の外気が流入し、絞り羽根312,313の熱を奪う。さらに、羽根室318内で高温となった空気は、流通口341,342から大気中に放出される。その結果、絞り羽根312,313をより一層効率的に冷却できるようになる。
【0050】
また、流通口341,342は、鏡筒340に元々設けられているズームガイド穴を利用しているので、新たな穴を設ける必要がない。言いかえれば、ズームガイド穴が流通口341,342として機能するように、ズームガイド穴と通気穴319とが対向する位置に光量調整装置310を取り付けている。そのため、レンズ鏡筒300の製造コストを上げることなく冷却能力を向上させることができる。
なお、鏡筒340に穴を開け、羽根室318内の熱を強制的に外部に逃がす強制冷却ファン(強制冷却手段)を鏡筒340の下に設置してもよい。鏡筒340の中に強制冷却ファンを入れると像が揺れる可能性があるが、鏡筒340の外とすることにより、このような問題の発生を回避できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形が可能である。例えば、
(1)実施形態では、通気穴119を光軸101に対して垂直な方向に設けたが、これに限らず、羽根室118内の熱が外部に逃げるような位置、形状等であればよい。
【0052】
(2)実施形態では、2枚の絞り羽根112,113を備えるようにしているが、絞り羽根は、1枚であっても、3枚以上であってもよい。
また、実施形態では、絞り羽根112,113により、開口部115aの全開状態と絞り開口116の形成状態との2段階で開口量を増減させている。しかし、これに限らず、映像光の強さ等に応じて、連続的に開口量を増減するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 液晶プロジェクタ(投影装置)
100 レンズ鏡筒
110 光量調整装置
111 絞りベース
111a 開口部
112,113 絞り羽根
114 絞り羽根駆動モータ(絞り羽根駆動手段)
115 絞りカバー
116 絞り開口
118 羽根室
119 通気穴
200 レンズ鏡筒
210 光量調整装置
211 絞りベース
212,213 絞り羽根
214 絞り羽根駆動モータ(絞り羽根駆動手段)
215 絞りカバー
218 羽根室
219 通気穴
250 強制冷却ファン(強制冷却手段)
300 レンズ鏡筒
310 光量調整装置
311 絞りベース
312,313 絞り羽根
314 絞り羽根駆動モータ(絞り羽根駆動手段)
315 絞りカバー
318 羽根室
319 通気穴
341,342 流通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を通過させるための開口部が形成された絞りベースと、
前記開口部を通過する光の光軸に直交する方向に移動可能に設けられ、前記開口部よりも小さい絞り開口を形成するための絞り羽根と、
前記絞り羽根を移動させて前記絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、
前記絞りベースとの間に前記絞り羽根を収容した羽根室を形成する絞りカバーと
を備え、
前記羽根室は、前記羽根室内の熱を外部に逃がすための通気穴を有する
光量調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光量調整装置において、
前記通気穴は、前記開口部を通過する光の光軸に対して垂直又は平行な方向に設けられている
光量調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光量調整装置において、
前記羽根室内の熱を強制的に外部に逃がして前記絞り羽根を冷却する強制冷却手段を備える
光量調整装置。
【請求項4】
光源からの光を通過させるための開口部が形成された絞りベースと、
前記開口部を通過する光の光軸に直交する方向に移動可能に設けられ、前記開口部よりも小さい絞り開口を形成するための絞り羽根と、
前記絞り羽根を移動させて前記絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、
前記絞りベースとの間に前記絞り羽根を収容した羽根室を形成する絞りカバーと、
前記絞り羽根と平行に配置されたレンズと、
前記絞り羽根及び前記レンズを内面に保持する鏡筒と
を備え、
前記羽根室は、前記羽根室内の熱を前記鏡筒の内部空間に逃がすための通気穴を有する
レンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズ鏡筒において、
前記通気穴は、前記開口部を通過する光の光軸に対して垂直な方向に設けられ、
前記鏡筒は、少なくとも前記通気穴と対向する位置に、前記鏡筒の内外の空気を流通させる流通口を有する
レンズ鏡筒。
【請求項6】
光源からの光を通過させるための開口部が形成された絞りベースと、
前記開口部を通過する光の光軸に直交する方向に移動可能に設けられ、前記開口部よりも小さい絞り開口を形成するための絞り羽根と、
前記絞り羽根を移動させて前記絞り開口の開口量を増減させる絞り羽根駆動手段と、
前記絞りベースとの間に前記絞り羽根を収容した羽根室を形成する絞りカバーと、
前記絞り羽根と平行に配置されたレンズと、
前記絞り羽根及び前記レンズを内面に保持する鏡筒と
を備え、
前記羽根室は、前記羽根室内の熱を前記鏡筒の内部空間に逃がすための通気穴を有する
投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−221358(P2011−221358A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91704(P2010−91704)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】