説明

光量調整装置及びこれを備えたプロジェクタ装置

【課題】装置環境が高温であっても光量を調節する羽根部材が歪曲など変形する恐れが少なく、この羽根部材を直線方向に往復動するように規制支持する支持構造を簡単で小型に構成する。
【解決手段】光路開口を有する扁平板状の基板を形成しこの基板に光路開口を開閉する少なくとも1枚の羽根部材とこの羽根部材を開閉動する駆動手段を取り付ける。そしてこの羽根部材を往復動可能に支持する羽根ガイド手段を基板の両側端面に羽根部材の直線移動方向に沿って形成された側縁ガイド面と、羽根部材の両側縁若しくは片側側縁に形成した折曲げ係合片とで構成しこの羽根部材の折曲げ係合片を上記側縁ガイド面に係合すると共にこの羽根部材を押え板で基板に摺動自在に支持する。羽根部材は金属板などの薄板の両側縁を鉤状に折曲げてその端面を基板の側端面に形成した側縁ガイド面に当接係合することとなり羽根部材は基板の側縁ガイド面に案内されて直線方向に往復動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールカメラ、ビデオカメラ等の撮影装置、或いはプロジェクタ装置に組み込まれ、撮影光、投射光などの光量を調整する光量調整装置及びこれを用いたプロジェクタ装置に係わり、詳細には撮影光路若しくは投射光路内に配置され、その光路を通過する光量を羽根部材で適正な撮影光量に規制する光量絞り装置、若しくは光路を通過する光量を遮蔽するシャッタ装置、或いは光量を規制した後遮蔽する絞り兼用シャッタ装置などの光量調整装置における光量調節用の羽根部材の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の光量調整装置は、撮影装置、プロジェクタ装置などの光路中に配置された基板に1枚若しくは複数枚の羽根部材を摺動自在に配置し、この羽根部材を駆動モータなどの駆動手段で直線方向或いは回転方向に移動して基板に形成した光路開口を開閉するようにしている。そして絞り装置として光路中の光量を大小に規制する場合には羽根部材が光路開口を覆う口径を大小に変更して光路を通過する光量を調整し、シャッタ装置として光路中の光量を遮蔽する場合には羽根部材が光路開口から退避したオープン位置と光路開口を覆うクローズ位置との間で開閉動するように構成している。
【0003】
また、絞り兼用シャッタ装置としては、羽根部材を光路開口に撮影条件、投影条件に応じた所定の位置に臨ませて通過光量を規制し、この羽根部材を光路開口を覆う位置に移動してシャッタ動作を行うように構成している。
【0004】
このような光量調整装置としては、光路中にユニットフレームを構成する基板を配置し、この基板に光路開口を設け、この光路開口を開閉する羽根部材と、この羽根部材を開閉動する駆動モータを取り付けたユニット構造が広く知られ、この場合羽根部材を基板に回動自在に軸支持して回動する構造と、光路開口に対して羽根部材を直線方向に摺動自在に支持する構造がそれぞれ知られている。そして、この基板は合成樹脂のモールド成形で扁平形状に形成され、羽根部材は樹脂フィルム或いは金属薄板を適宜な形状に打ち抜き成形することが一般的な加工方法として用いられている。
【0005】
本発明は上述光路開口を形成した基板に羽根部材を直線方向にスライド移動自在に支持する構造に関する。
【0006】
従来、このような羽根支持構造としては基板に一体にガイドピンを形成し、このガイドピンに羽根部材に形成したスリット孔を嵌合して羽根部材を直線方向に往復動自在に支持するものが、例えば特許文献1(図1)に開示されている。同文献には絞り装置として一対の羽根部材を光路開口に対して直線方向に移動自在にピン−スリット係合で支持し、この一対の羽根部材を駆動モータの回転軸に連結した電動アームで相反方向に移動するように構成したものが開示されている。そして各羽根部材には光軸開口を挟んで両側部にスリット溝が設けられ、このスリット溝に基板に植設したピン部材を嵌合して直線方向に移動自在に支持されている。このような羽根構造はカメラなどの撮影装置の光量調整装置として一般的に採用され、羽根部材はプラスチックフィルムなどの打ち抜き成型品が使用されている。
【0007】
一方、最近リアープロジェクションテレビとして画面スクリーンに背面側から液晶その他の画像形成パネルに形成した画像を拡大投影する表示装置が多用され、この種の映写する光量を室内の明暗(明度)或いは画像の輝度変化に応じて光量調整する光量調整装置としては、光源などの影響によって高温下(通常のリアープロジェクションテレビでは200度C前後)で適正に光量調節し、しかも例えば輝度変化調節の場合数十分の1秒など高速開閉と、装置の小型化が要求されるに至っている。
【0008】
このような高温、高速、小型化が要求される条件下では羽根部材は合成樹脂では温度変化で変形する恐れがあり、この羽根部材を例えばアルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属薄板で構成してもスリット溝を形成した部位が温度環境で歪曲変形することがあり安定したスムーズな開閉動作が得られない。
【0009】
そこで本出願人は図7及び図8に示す羽根構造の改良を試みた。従来の羽根構造ではスリット溝を形成する部位が環境温度で歪曲するのと金属製の羽根では溝端縁がピン部材の摩耗を惹き起して羽根の運動を阻害する為、これを図8に示すように羽根を形成する際にスリット周縁に絞り加工(バーリング加工)によって折曲げ縁を形成する。つまり、図8に示すように基板100のガイドピン110、120にスライド可能に嵌合する羽根部材210、220のスリット215、225を図9で示す様に、羽根部材210、220をプレス加工成形する際に絞り加工を施すことによって折曲げ縁を形成し、この折曲げ縁でガイドピン110、120に嵌合する際の接触面積を大きくし耐久性の向上を図ることを試みた。この場合スリット215、225に絞り加工を施すためのスペースが更に増大し装置全体が大型となる欠点が生じた。
【0010】
【特許文献1】実公平7−14978号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように光路開口を形成した基板に1枚若しくは2枚の羽根部材を直線方向に摺動自在に支持する際に、特許文献1に開示されているように羽根部材にスリット溝を設けて基板に植設したピン部材に嵌合支持する構造にあっては、スリット溝を形成するために羽根部材に幅の狭い狭窄部が形成され、この部位が温度或いは衝撃などの外力で歪曲するなど変形することがあり、この部位の変形は羽根部材の円滑な運動の妨げとなる。この場合、図7に示すように羽根部材に形成するスリット溝にバーリング加工を施して部分的な変形を防止することも考えられるがいずれの構造であってもスリット溝を形成する羽根部材は移動する方向と直交する幅方向にある程度幅広に形成しなければならず勢い装置が幅広で大型となる欠点があった。
【0012】
そこで本発明は、プロジェクタ装置などの高温となる装置環境であっても光量を調節する羽根部材が歪曲など変形する恐れが少なく、この羽根部材を直線方向に往復動するように規制支持する支持構造を簡単で小型、特に羽根部材自体を移動方向と直交する幅方向の寸法を小さくすることが可能な光量調整装置の提供をその主な課題としている。
【0013】
更に本発明は、羽根部材を温度変化の小さい金属薄板で構成する場合に、この羽根部材を例えば剛性樹脂などの基板で往復方向に案内するとき、ガタつきが少なく、使用過程で摩耗などでガタ付きが生じたり、開閉運動が不安定となることの少ない光量調整装置およびプロジェクタ装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
例えば合成樹脂などで光路開口を有する扁平板状の基板を形成し、この基板に光路開口を開閉する少なくとも1枚の羽根部材と、この羽根部材を開閉動する駆動手段を取り付ける。そしてこの羽根部材を往復動可能に支持する羽根ガイド手段を、基板の両側端面に羽根部材の直線移動方向に沿って形成された側縁ガイド面と、羽根部材の両側縁若しくは片側側縁に形成した折曲げ係合片とで構成し、この羽根部材の折曲げ係合片を上記側縁ガイド面に係合すると共に、この羽根部材を押え板で基板に摺動自在に支持する。これによって羽根部材は金属板などの薄板の両側縁を例えば鉤状に折曲げてその端面を基板の側端面に形成した側縁ガイド面に当接係合することとなり、羽根部材は基板の側縁ガイド面に案内されて直線方向に往復動し、スリット溝などの特別な案内ガイド手段を要することなく装置の小型化と省スペース化が可能となる。
【0015】
尚、上記羽根部材が薄い金属板である場合には羽根の両側部に設けた折曲げ係合片は変形し易く、これと基板に設けた側縁ガイド面とが確実に係合しないことがある。この場合には請求項2の構成を採用する。つまり、羽根部材より厚く堅牢な金属板で形成した押え板の両側縁に折曲げ片を設け、この折曲げ片で側縁ガイド面に係合した羽根部材の折曲げ係合片を挟み込むように挟持する。これによって羽根部材の折曲げ係合片が軟弱で変形しやすい素材であっても基板の側縁ガイド面と押え板の折曲げ片との間でサンドイッチ状に保持され変形することがない。
【0016】
斯かる構成の光量調整装置をプロジェクタ装置など高温となる装置に組み込む場合には、羽根部材は金属材料で、前記基板は樹脂材料で、前記押え板は金属材料でそれぞれ構成することが好ましい。例えば上記羽根部材と上記押え板とはそれぞれアルミニウム合金、ステンレス鋼その他の金属薄板をプレス加工で打ち抜き成形し、上記基板は合成樹脂材料でモールド成形する。これによって基板は羽根部材或いは駆動モータなどの駆動手段を搭載するベースフレームとしてその加工が容易となり、羽根部材および押え板は熱或いは外部衝撃などに強い金属板でその加工もプレス加工で容易に成形できることとなる。この場合には羽根部材はその開閉動作が高速に行えるように薄板で質量を軽く構成し、押え板は外部衝撃に耐える厚板で構成することが好ましい。
【0017】
また、前記羽根部材は、前記光路開口から退避した退避位置(オープン位置)と、光路開口に進入した進入位置(クローズ位置)との間を相反方向に往復移動する一対の羽根部材で構成するのが一般的である。この場合前記基板と前記押え板には一対の羽根部材の表裏を支持する突起を設け、この突起には羽根部材が相互に干渉することなく重なり合うように案内する高低差を形成する。
【0018】
更に、本発明に係わるプロジェクタ装置は、光源と、この光源からの光により画像を形成する画像形成手段と、この画像形成手段で形成された画像をスクリーン上に投射する投影手段と、上記光源から上記投影手段に至る光路中に配置され、該光路中の光量を調節する光量調整装置とを備える。そしてこの光量調整装置を上述の構造で構成する。これによってプロジェクタ装置内部が例えば光源からの熱の影響で高温となっても羽根部材が容易に変形することがなく、ユニットとして装置内に小型な構成で組み込むことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は光路開口を有する基板に1枚若しくは複数の羽根部材を直線方向に平行移動させて光路開口を開閉する際に、羽根部材の両側縁に形成した折曲げ係合片を基板の両側端面に羽根の直線移動方向に沿って形成した側縁ガイド面に当接係合して羽根部材を運動規制するようにこの両者で羽根ガイド手段を構成してある為、羽根の折曲げ係合片と基板の側縁ガイド面との接触面積が大きく、従来の羽根のスリットと基板のピン部材を係合する場合に比べ運動が滑らかで円滑な開閉運動が得られる。これと同時に羽根部材はその両側縁若しくは片側側縁を折曲げられた折曲げ係合片を備えているため環境温度或いは外部衝撃によって容易に変形することがない。また、基盤上に配置される羽根部材にはその開閉運動を規制するスリットなどの案内手段を光路開口の位置する平面に設ける必要がなく、羽根の運動直交方向の寸法を抑えることが可能となりユニット装置として小型化が可能である。
【0020】
更に、本発明は羽根部材を環境温度で変形しない程度の金属薄板で質量を小さく構成し、基板側端面の側縁ガイド面に接合した羽根の折曲げ係合片を押え板の両側縁に形成した折曲げ片で挟み込むように挟持する構成を採用することによって、羽根部材を金属薄板で構成しても基板の側縁ガイド面にガタつきなく確実に係合して安定した開閉動作が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図示の実施態様に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明を採用した光量調整装置を内蔵したプロジェクタ装置の構成を示す概略構成図であり、図2はその光量調整装置を構成する基板に羽根部材を組込む分解斜視図、図3は基板に駆動モータ(駆動手段)を組込む分解斜視図をそれぞれ示す。
【0022】
一般にプロジェクタ装置はコンピュータの画像出力部に接続され、これからRGB信号を受けてスクリーン上に画像を投影する。或いはDVDプレーヤの出力部に接続され、これからコンポーネント信号を得て画像をスクリーン上に投影する。またテレビチューナに接続され、これからハイビジョン信号、ビデオ信号などを受けてその画像をスクリーン上に投影する。そしてこのようなプロジェクタ装置は画像形成方式として種々のものが知られているがその一例として図1には液晶パネル方式を用いた場合のレイアウト構成を示す。
【0023】
図1においてHはプロジェクタ装置、Sは画像を投影する為のスクリーンを示す。プロジェクタHは光源部、画像形成部、投光部で構成され、光源からの光を画像形成部に照射し、画像形成部に形成された画像に光を照射し、投光部からスクリーン上に投射するように構成されている。
【0024】
投光部Aには光源1が備えられ、メタルハイライドランプ、高圧水銀ランプ、NSHランプ、キセノンランプ、VIPランプ等の光源ランプが使用される。そして光源1から照射された光は対物面の反射鏡2によって、ほぼ平行光として反射され、例えばレンズアレイの一種であるインテグレータレンズからなるフィルタ3で有害不要な赤外線や紫外線をカットした後、後述する光量調整装置Eにより最適な明るさに光量調整される。その後この光は液晶パネルへの集光効率と周辺光量比を改善するインテグレータレンズ4を通過し、反射ミラー12aによりほぼ直角に折曲げられる。この光は分光ミラーによってR、G、B三原色に分岐されるが、まずG光とR光を透過させB光のみを反射させる特性を持ったダイクロイックミラー10aにより反射分離されたB光は、さらに反射ミラー12bを介して集光レンズ5aに導かれ平行光に集光されて画像形成手段、図示のものは液晶パネル8aを透過しB光の画像として合成プリズム11に至るように構成されている。
【0025】
そして1段目のダイクロイックミラー10aを透過したG光とR光は、R光を透過させG光を反射させる特性を持った2段目のダイクロイックミラー10bにより反射分離されたG光は、集光レンズ5bで平行光に集光され液晶パネル8bを透過しG光の画像として合成プリズム11に至る。さらに2段目のダイクロイックミラー10bを透過したR光は、2枚の反射ミラー12c、12dを介して集光レンズ5cに導かれ平行光に集光されて液晶パネル8cを透過しR光の画像として合成プリズム11に至る。そこで合成プリズム11にはR、G、B三原色が1つに合成されカラー画像として投影レンズ9に導かれ、この投影レンズ9で投影手段が構成され前方のスクリーンSに投写される。
【0026】
また、光量調整装置Eを通過した光はハーフミラー(若しくはダイクロイックミラー)150により光の一部が分光され、その光は集光レンズ160を介し光センサ(例えば、ホトダイオード)170により受光される。そして、光センサ(例えば、ホトダイオード)170の出力信号で図示しない光量調整回路により光量調整装置Eを制御して適切な光量調整を行うようになっている。
【0027】
この光量調整装置Eは上述のように光源1からインテグレータレンズ4との間に配置されるか、或いは投影レンズ9を構成するレンズアレイ内に組み込まれるか、光源から透光部に至る光路中に配置され、次の光量調整を行う。まず装置を使用する環境に応じて光量調整する場合には室内など使用環境の明るさを検出するホトセンサなどの検知センサを設けて、このセンサで検出した室内光の明るさに応じて光量調整装置Eを制御する。また画像のコマ毎にコントラスト調整若しくは輝度変化に応じた明るさ調整を行う場合には液晶パネル8に転送する画像データから各画像(コマ)毎の明るさ(輝度)を抽出し、投影する画像データとコントラスト、輝度変化の補正値を演算し、その演算結果に応じて光量調整装置Eを調整する。
【0028】
次に光量調整装置Eについて説明すると、図示の光量調整装置Eは、基板60と羽根部材80と、押え板90と、駆動モータ10(駆動手段;以下同様)とで構成されている。図2に示すように扁平板形状の基板60にはその平面(図2上面)に第1第2の羽根部材81、85が組み込まれ、この羽根部材の上方から押え板90が重ね合わせられ、基板60の背面側には駆動モータ10が図3に示すように取り付けられている。このように光量調整装置Hは光量調整ユニット50として構成されている。
【0029】
基板60は、合成樹脂などのモールド成形で扁平板形状に形成され、光路開口61と、この光路開口を形成した平面(図2右側;以下羽根支持面という)より段差を有して低い平面(図2左側;以下駆動装置取付け部という)に後述する駆動モータ10の伝動アーム70が配置されるように全体として細長矩形状に形成されている。そしてこの基板60には周囲にフランジ壁69が形成され、羽根支持面にはリブ状の突出部64と63が形成されている。63で図示する突出部は第1羽根部材81を支持するガイドリブであり、64で図示する突出部は第2羽根部材85を支持するガイドリブである。このガイドリブ63、64には、羽根部材の厚さに相当する段差が形成され第1羽根部材81を支持するガイドリブ63に対し、第2羽根部材85を支持するガイドリブ64は少なくとも羽根の厚さ分高く形成されている。これは第1羽根部材の上に重ね合わせられる第2羽根部材が互いに干渉しないように第1羽根部材81を低い位置に、第2羽根部材85を高い位置に支持するためである。また、基板の駆動装置取付け部には後述する駆動モータ10の回転軸13を挿通する貫通孔62が形成してある。そして上記ガイドリブ上に第1第2の羽根部材80を載置して組み込んだ後、上記フランジ壁69に押え板90を重ね合わせて支持する構造になっている。
【0030】
このように構成した基板60にはその両側縁に羽根の移動方向に沿って側縁ガイド面65、67が形成してある。図示の側縁ガイド面はレール状突出壁で形成され左側縁ガイド面65と右側縁ガイド面67が基板60の左右側端面に配置されている。図示66及び68は後述する押え板90を係止する突起爪である。
【0031】
次に羽根部材80について説明すると、基板に形成された光路開口61の開口径を大小調節する光量絞り動作、或いは光路開口を遮蔽するシャッタ動作を行う羽根部材は1枚若しくは複数枚の羽根部材で構成される。図示のものは第1第2の2枚の羽根部材で絞り動作を行う絞り装置を例示している。第1の羽根部材81は略半円形状の絞り開口縁82を有する板状材で構成され図2左右方向に基板60のガイドリブ63に支持され、同様に第2の羽根部材85も絞り開口縁86を有する板状材で構成されガイドリブ64に支持されている。この絞り開口縁82と86とは互いに対向して中央に半月状の開口径を形成するように配置されている。この第1第2の羽根部材はアルミ合金、ステンレス鋼など装置仕様に応じた金属板で形成され、第1の羽根部材には前述の基板60に形成した右側縁ガイド面67に当接係合する折曲げ係合片84が設けられている。
【0032】
また第2の羽根部材85には左側縁ガイド面65と当接係合する折曲げ係合片88がそれぞれ形成されている。このように各羽根部材81、85に、その側縁に折曲げ係合片84、88を形成したのは羽根部材の特に開口縁82、86を形成する部位が環境温度などで変形しないようにその断面二次モーメントを大きくするためである。従って各羽根部材は温度、外部衝撃などで変形し難い形状となり、同時にこの各折曲げ係合片84、88は基板の左右側縁ガイド面65、67に当接支持され、このガイド面に沿って直線方向に移動自在に案内される。尚第1第2の羽根部材80は例えば金属薄板をプレス加工で打ち抜き成形することによって外形状も、絞り開口縁も、また折曲げ係合片も一体成形することが出来る。
【0033】
次に、押え板90の構成について説明すると、押え板90は基板60と略々同一形状に形成され、基板のフランジ壁69に結合する。そして開口91が基板の光路開口61と一致する位置に設けられている。この開口61は光路開口61と同一径化か若干大きい口径に形成され、その周縁には前記基板60に形成したガイドリブ63と対向する位置にガイドリブ93が、ガイドリブ64に対向する位置にガイドリブ94が設けてある。この押え板の両ガイドリブには高低差を有するように形成され、ガイドリブ93は高い位置で第1の羽根部材81を当接支持し、ガイドリブ94は低い位置で第2羽根部材85を支持するようになっている。尚図示92a、92bは後述する伝動アーム70の伝動ピン73の逃げ溝である。
【0034】
このように構成された押え板90の左右両側部には、折曲げ片99aと99bがその両側部に形成してあり、この左右両側部の折曲げ片は基板60に形成した側縁ガイド面65及び67と対向する位置に形成してある。また押え板90の側縁には位置決め片97、98が折曲げ形成され、この位置決め片は基板に形成した位置決め用切欠き(図2参照)と係合する。また押え板90の左右側縁には基板に形成した突起爪66、68と嵌合する嵌合孔を有する連結片95、96が折曲げ形成されている。従って押え板90を基板90のフランジ壁69に合致するように両者を合体すれば位置決め片97、98と切欠きによって位置決めされ連結片95、96と突起爪66、67とが互いに嵌合して一体化される。
【0035】
次に駆動モータ10について説明すると、図3に示すように中空円筒状のマグネット12とその中空部に嵌合する回転軸13とから成るロータ11と、このロータ11を包み込み回転可能に支持し外周に図示せぬ電導コイルを巻廻する上下2体のコイル枠14、15と、電導コイルへ通電するための端子16と、ロータ11と磁気回路を形成するヨーク17と、端子16が貫通する絶縁板18と、端子16を外部電源と接続するプリント板19とから構成されている。
【0036】
上記の回転軸13には図2に示すように伝動アーム組70が基板の貫通孔62を介して基板の表裏面に配置される。この伝動アーム組70は、アーム71と、アーム71の中央部位に基板60の貫通孔62から突出する駆動モータ10の回転軸13に取り付けられる取付ボス72と、アーム71の両端部に上方に突出した伝動ピン73、73と、取付けボス72の外周に巻廻され一端がアーム71に他端が基板60の側端部に張設され常時伝動アーム70を時計方向(羽根部材のクローズ方向)に回動付勢するスプリング74を備えている。そしてアーム71に左右一対形成された伝動ピン73は前述の第1羽根部材81に形成されたスリット孔83と第2羽根部材85に形成されたスリット孔87にそれぞれ嵌合している。従ってアーム71の揺動運動で第1第2の羽根部材は反対方向に移動し、その運動は側縁ガイド面65及び67に沿って直線運動となる。この側縁ガイド面65、67と折曲げ係合片84、88とで羽根ガイド手段が構成されている。
【0037】
以上説明した光量調整ユニット50は、図4に断面図で示すような構造体を構成する。図4に従って説明するに、この図面は図3で示す光量調整ユニット50を組立たてた状態でその長手方向に対し直交する方向に一箇所をカットした断面では無く、各部品の位置関係を説明するために数箇所をカットして合成した断面を示す説明図である。図4中、図2と同一符号を付した部材はその断面を示すものである。特に、第1の羽根部材81は基板60の突出量の低い第1のガイドリブ63と押え板90の突出量の高い第3のガイドリブ93により基板60の基準平面に対し平行になるよう少なくとも3箇所(図示せず)を支持され、第2の羽根部材85は基板60の突出量の高い第2のガイドリブ64と押え板90の突出量の低い第4のガイドリブ94により基板60の基準平面に対し平行になるよう少なくとも3箇所(図示せず)を支持され、互いに一定の隙間を持って離間し摺動摩擦を低減し円滑な作動ができるように工夫されている。
【0038】
また、図5に分解斜視図で拡大して示す様に、基板60の両側端面から突出した側縁ガイド面67に第1羽根部材81の折曲げ係合片84が当接し、この側縁ガイドと反対側の側縁ガイド面65に第2羽根部材85の折曲げ係合片88が当接し、ガイド面の方向に摺動自在に案内される。図示のものは羽根部材を熱で変形しない程度の厚さの金属板で小さい質量に構成した関係で折曲げ係合片が外力で変形し易い構造になっている。
【0039】
そこで前述の押え板90に形成した折曲げ片99a、99bで羽根の折曲げ係合片を外側から挟み込んで挟持するようにしてある。これによって各羽根部材の折曲げ係合片は側縁ガイド面と押え板90の折曲げ片でサンドイッチ状に挟まれて保護され衝撃などの外力で変形しないようになっている。
【0040】
このように羽根部材80に形成した折曲げ係合片84、88を基板の側縁ガイド面と押え板の折曲げ片で挟んで支持したので図6に示す様に前述の図7で説明した装置と比較して幅方向の図示寸法Lだけ小さくすることが出来、装置全体をコンパクトに構成することが可能である。これと同時に羽根部材80はその片側に形成した折曲げ係合片で片持ち状に保持することが可能となり、羽根部材の小型化と同時に一層装置のコンパクト化を可能としている。
【0041】
なお、本発明にあって図2に示す羽根部材80には片側側縁に折曲げ係合片を形成する場合を示したが、羽根部材の両側面に折曲げ係合片を形成しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプロジェクタ装置の概略構成図。
【図2】図1の装置に内蔵した本発明に係わる光量調整装置の分解斜視図。
【図3】図2の装置の基板に組込む駆動モータの分解斜視図。
【図4】図2の光量調整装置の断面説明図。
【図5】図4の装置の要部拡大分解斜視図。
【図6】本発明に係わる図2の光量調整装置と図7の装置との大きさを対比するための説明図。
【図7】本発明に先行する装置構造の分解斜視図。
【図8】図7の装置構造の断面説明図。
【符号の説明】
【0043】
H プロジェクタ装置
E 光量調整装置
8 画像形成手段
9 投影レンズ(投影手段)
10 駆動モータ
50 光量調整ユニット
60 基板
61 光路開口
65、67 側縁ガイド面
70 伝動アーム
80 羽根部材
81 第1羽根部材
84 (第1羽根部材の)折曲げ係合片
85 第2羽根部材
88 (第2羽根部材の)折曲げ係合片
90 押え板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有する扁平板状の基板と、
上記基板に取り付けられ上記光路開口を開閉する少なくとも1つの羽根部材と、
上記基板に設けられ上記羽根部材を直線方向に移動自在に案内する羽根ガイド手段と、
上記羽根部材を上記羽根ガイド手段に沿って直線方向に往復移動する駆動手段と、
上記基板に上記羽根部材を保持する押え板と、を備えた光量調整装置であって、
上記羽根ガイド手段は、
上記基板の両側端面に上記羽根部材の直線移動方向に沿って形成された側縁ガイド面と、
上記羽根部材の両側縁若しくは片側側縁に形成した折曲げ係合片と、で構成され、
上記羽根部材の折曲げ係合片を上記側縁ガイド面に係合すると共に、この羽根部材を上記押え板で上記基板に摺動自在に支持したことを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記押え板には両側縁に折曲げ片が設けられ、この折曲げ片は、前記側縁ガイド面に係合した前記羽根部材の折曲げ係合片を該側縁ガイド面との間に挟持するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記羽根部材は金属材料で、前記基板は樹脂材料で、前記押え板は金属材料でそれぞれ構成され、
上記羽根部材と上記押え板とはそれぞれアルミニウム合金、ステンレス鋼その他の金属薄板をプレス加工で打ち抜き成形され、
上記基板は合成樹脂材料でモールド成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記羽根部材は、前記光路開口から退避した退避位置と、該光路開口に進入した進入位置との間を相反方向に往復移動する一対の羽根部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記基板と前記押え板には前記一対の羽根部材の表裏を支持する突起がそれぞれに形成され、この突起は上記一対の羽根部材が重なり合うように案内する高低差を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光量調整装置。
【請求項6】
光源と、
上記光源からの光により画像を形成する画像形成手段と、
上記画像形成手段で形成された画像をスクリーン上に投射する投影手段と、
上記光源から上記投影手段に至る光路中に配置され、該光路中の光量を調節する光量調整装置と、を有するプロジェクタ装置であって、
上記光量調整装置は請求項1乃至5の何れかに記載の構成を備えていることを特徴とするプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−114672(P2007−114672A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308499(P2005−308499)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】