説明

光量調整装置

【課題】光路開口を開閉する複数の絞り羽根を駆動リングで開閉する際に羽根とリングとの摺動摩擦を小さくすると共に、羽根が反り返り変形することなく円滑な開閉運動が得られる光量調整装置を提供する。
【解決手段】光路開口を有する第1第2の基板11、41間に複数の絞り羽根21と、これを開閉する駆動リング31を開閉動可能に支持し、リング形状の駆動リングに羽根の開閉軌跡内に凹陥する切欠き部35と、その切欠き端面に形成した受動歯形部35gとを設け、この受動歯形部と駆動装置の駆動歯車53とを噛合する。このとき駆動リングの切欠き部と羽根との間に切欠き部の羽根をバックアップ支持するガイド部材(第2摺動リング36、カバー部材39)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラ、スチールカメラなどの撮像装置、或いはプロジェクタその他の投影装置に内蔵され、撮影光量、投映光量などの光量を調整する光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光量調整装置は、撮影光路(或いは投影光路)に光軸開口を有する基板を配置し、この基板に複数枚の光量調節羽根を開閉自在に配置して光軸開口を大口径又は小口径に光量調整する装置として知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板に形成した光軸開口の周囲に複数枚の羽根を配置し、光路口径を小径から大径まで相似形で開閉する虹彩絞り装置が開示されている。このような絞り装置は、多数枚の羽根で円形状に近い口径で多段階に光量調整する特徴が知られている。
【0004】
同文献には、中央に光路開口を有する上下一対のリング状基板の間に複数の絞り羽根を配置し、この複数の絞り羽根を基板の一方に設けた駆動ユニットで開閉する開閉機構が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、文献1と同様にリング形状に形成した基板間に複数の絞り羽根を配置し、基板の一方に設けた駆動ユニットで羽根を開閉動する装置が開示されている。
このように光路開口の周囲に複数の羽根を鱗状に配置し、基板の一方に設けた駆動ユニットで開閉動する装置は広く知られている。
【0006】
そして複数の羽根を開閉動する機構は、基板に羽根の運動軌跡に沿ってガイド溝を設け、このガイド溝に羽根に植設したピンを嵌合し、他方の基板に設けた伝動リングで羽根を所定方向に回動させることによって複数の羽根の運動を規制している。このため羽根を支持する基板には羽根の枚数に応じたガイド溝が光路開口の周縁に配置されている。このガイド溝の構造は特許文献1の図4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−20438号公報
【特許文献2】特開2006−322979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、光路開口を有する上下一対の基板間に複数の羽根を開閉自在に配置し、この複数の絞り羽根で光路口径を大小調節する絞り装置は、特許文献1、2などで既に知られている。この場合、複数の絞り羽根を同時に開閉動させるため基板の一方に駆動リングを回動自在に配置し、この駆動リングと各羽根部材をピン−スリット結合で連結して開閉駆動する開閉機構が知られている。
【0009】
従来の開閉機構は、駆動リングの1個所にアームを設け、このアームを電磁駆動装置などの駆動源に連結した伝動レバーに連結するアーム伝動機構と、駆動源に連結した回転軸に駆動歯車を設け、この駆動歯車と噛合する歯形を駆動リングに形成する歯車伝動機構が知られている。
【0010】
前者のアーム伝動機構は光路開口の周囲に回動リングを設け、このリングから開口の外側にアームを張り出させて駆動装置に連結しているため装置が開口外側に大径化する問題が知られている。また後者の歯車伝動による羽根開閉機構は、光路開口の周囲に設けた回動リングと駆動装置を歯車連結しているため、この歯車結合部がリングの外側に突出して装置が大径化する問題が知られている。
【0011】
そこで、歯車伝動機構で駆動リングの外周の一部に光路中心側に凹陥部(切欠き)を設け、この凹陥部内に歯車連結部を配置することが試みられている。このような伝動構造では、駆動リングの外側に歯車連結部が突出することがないため装置の小径化が可能となる。
【0012】
図11に歯車伝動機構を示すが、上下一対の基板100a、100b間に羽根101を支持し、この一方の基板に駆動リング102を回動自在に配置し、この駆動リングの一部を切り欠いて凹陥部105を形成し、この切欠き凹陥部105の端面に歯型108を形成して駆動装置(不図示)の駆動歯車109を噛合すると次の問題がある。
【0013】
駆動リング102に形成されている切欠き凹陥部105に羽根が図11(b)のように反り返って没入することがある。つまり羽根101は一方の基板100aと駆動リング102の間に挟まれて開閉自在に支持され、この駆動リングの一部には切欠き凹陥部105が設けられているため、この切欠き凹陥部に開閉軌跡が位置する羽根は部分的に反り返って凹陥部内に没入することがある。その状態を同図(b)に示すが、羽根の基端部が切欠き凹陥部内に没入すると、羽根先端は浮き上がって他の羽根先端と干渉する問題と、図示するように羽根の突起106と基板のガイド溝107を嵌合する機構の場合には嵌合部で円滑な運動が妨げられる。
【0014】
この場合、駆動リングの切欠き凹陥部を羽根の開閉軌跡の外側に形成すれば、羽根の没入は避けられるが、駆動リングが羽根の運動軌跡の外側にまで大径化し、羽根との摺動摩擦が増大するのと同時に絞り装置の大型化を招き、これを組み込む撮像装置の鏡筒が大きくなる問題をもたらす。
【0015】
本発明は、光路開口を開閉する複数の絞り羽根を駆動リングで開閉する際に羽根とリングとの摺動摩擦を小さくすると共に、羽根が反り返り変形することなく円滑な開閉運動が得られる光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を達成するため本発明は、光路開口を有する第1第2の基板間に複数の絞り羽根と、これを開閉する駆動リングを開閉動可能に支持し、リング形状の駆動リングに羽根の開閉軌跡内に凹陥する切欠き部と、その切欠き端面に形成した受動歯形部とを設け、この受動歯形部と駆動装置の駆動歯車とを噛合する。このとき駆動リングの切欠き部と羽根との間に切欠き部の羽根をバックアップ支持するガイド部材を設けることを特徴としている。
【0017】
更にその構成を詳述するに、光路開口(12)を有する一対の第1第2の基板(11、41)と、第1の基板に配置され光路開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根(21)と、第2の基板に所定の回転角度で回動自在に配置され複数の絞り羽根を開閉するリング形状の駆動リング(31)と、駆動リングを回転駆動する駆動手段(M)とを備える。
【0018】
上記一対の基板と絞り羽根と駆動リングとは、略中央に光路開口を形成して第1の基板、絞り羽根、駆動リング、第2の基板の順に積層状に重ね合わせられ、駆動手段は、第2の基板に取付けられ、駆動回転軸(52)と、この駆動回転軸の回転を駆動リングに伝達する駆動歯車(53)と、で構成され、駆動リングには、絞り羽根の開閉軌跡内に凹陥する切欠き部(35)と、この切欠き部の端面に形成され駆動歯車と噛合する受動歯形部(35g)とを設け、駆動リングの切欠き部と絞り羽根との間には、切欠き部に羽根の没入を阻止するように羽根をバックアップ支持するガイド部材(後述の第2摺動リング36、カバー部材39)を設ける。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、光路開口を有する第1第2の基板間に複数の絞り羽根と、これを開閉する駆動リングを支持し、この駆動リングに羽根の開閉軌跡内に凹陥する切欠き部を設けて切欠き端面に受動歯形部を形成し、この受動歯形部と駆動装置の駆動歯車とを噛合する際に、駆動リングの切欠き部と羽根との間に羽根をバックアップ支持するガイド部材を設けたものであるから以下の効果を奏する。
【0020】
駆動リングは絞り羽根の開閉軌跡内に凹陥する切欠き部に駆動歯車と噛合する受動歯形部を設けているから、駆動リングは複数の絞り羽根の開閉軌跡内に小径に構成することが可能である。これによって光路開口の周囲に開閉自在に配置した複数の絞り羽根と駆動リングとの間の摩擦を軽減することが出来、羽根を開閉する駆動装置を小型で省消費電力に構成することが出来る。
【0021】
また、駆動リングに形成される切欠き部には、羽根の没入を阻止するガイド部材が羽根をバックアップ支持するように配置されているから、羽根の端部が切欠き凹陥部に没入して反り返ることがない。これによって羽根の反り返りによる羽根先端部の浮き上がりと羽根基端部の運動規制ガイド(ガイド溝など)との係合不良が生ずることがなく、羽根の円滑な開閉動作が可能である。
【0022】
これと共に、複数の絞り羽根を樹脂シートなどの打ち抜き成型で、薄く軽量に構成することが出来、これによる羽根の反り返りを招くことがない。
【0023】
更に、本発明はガイド部材を樹脂、金属などのプレート形状で羽根と駆動リングとの間に介在させることにより、羽根と駆動リングが互いに接することがない。これによって例えば駆動リングを金属プレートのプレス成型で構成してもバリなどの影響で羽根の運動が阻害されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係わる光量調整装置の組立分解図。
【図2】図1の装置における第1基板(地板)と羽根の組立て分解状態の斜視説明図。
【図3】図1の装置における第2基板(押さえ板)と羽根の組立て分解状態の斜視説明図。
【図4】図1の装置における各構成の平面状態を示し、(a)は第1基板(地板)を、(b)は第1摺動リングを示す。
【図5】図1の装置における各構成の平面状態を示し、(a)は駆動リングを、(b)はガイド部材(第2摺動リング)を示す。
【図6】図1の装置における要部構成を示し、(a)は要部断面説明図、(b)は要部平面説明図。
【図7】図1乃至図6に示すガイド部材(第2摺動リング)とは異なる実施形態を示す。
【図8】図1の装置における絞り羽根の開閉状態を示し、(a)は絞り羽根の組み合わせ状態を、(b)は羽根の開閉軌跡を示す説明図。
【図9】図1の装置における羽根と地板との結合状態の説明図であり、(a)は羽根の形状を、(b)は羽根と地板の結合状態を、(c)は(b)図の結合部の拡大説明図。
【図10】図1の装置における電磁駆動ユニットの説明図。
【図11】従来の羽根開閉機構の説明図であり、(a)はその構造を示し、(b)は羽根が反り返った状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。図1は本発明に係わる光量調整装置Aの組立分解図である。図1に示すように光量調整装置Aは、第1基板組(地板組)1と、羽根組2と、駆動リング組3と、第2基板組4(押さえ板組)で構成されている。そして第1基板組1に羽根組2が組み込まれ、この羽根組2の上に駆動リング組3と第2基板組4が組み込まれている。このような構成によって羽根組2は第1基板組1と第2基板組4にサンドイッチ状に挟持され、第1第2基板組1,4を固定ビスで一体化(不図示)している。
【0026】
[第1基板組の構成]
図2に従って第1基板組1の構成について説明する。第1基板組1は地板11と第1摺動リング15で構成されている。この地板11は、光路開口12の口径(最大口径)を規制するのと同時にこの光路口径を開閉する複数の絞り羽根21を開閉自在に支持する。また、第1摺動リング15は、地板11と絞り羽根21との間に介在され地板11と羽根が直接接触するのを避け、羽根の円滑な摺動を得る。以下各構成について説明する。
【0027】
地板11は図2にその斜視形状を、図4に平面形状を示すように光路開口12を有するリング形状に形成されている。この地板11の外径Dxは撮像装置の鏡筒形状に適合するように設定され、光路開口12の直径Dyは撮像装置の光路径と一致するように設定されている。
【0028】
上記地板11は、金属、樹脂などで絞り装置に強靭性を持たせる材質・寸法に形成されている。特に図示の地板11は、ガラス繊維などの強化繊維を混入した合成樹脂のモールド成形で形成している。これは地板11を薄型で小型軽量に構成するのと同時に絞り羽根21と後述する第1摺動リング15に発生する静電気を接地するためである。
【0029】
上述のように中央部に光路開口12が設けられた地板11には、開口周縁に絞り羽根を支持する羽根支持面11xが設けられ、この支持面に後述する第1摺動リング15を介して絞り羽根21を支持する。このため、羽根支持面11xは平坦面若しくは光路中心を中心とするリング状の凹凸面で構成する。また、羽根支持面11xには、絞り羽根21を開閉方向に案内(運動規制)するガイド溝13が形成してある。このガイド溝13の構成については後述する。図示14は押さえ板41を固定する連結突起であり、突起内部にネジ穴が形成してある。
【0030】
「第1摺動リング」
第1摺動リング15は、地板の羽根支持面11xと絞り羽根21との間に介在し、羽根部材が直接地板11と接触するのを避け、羽根を円滑に開閉するために設けられている。この第1摺動リング15は、後述する羽根部材21との摩擦係数が小さい樹脂フィルムで形成されている。図示の第1摺動リング15は羽根部材21と同一素材で、例えばポリエチレン樹脂フィルム(PPフィルム)の型抜き成形で形成されている。そして図4(b)にその形状を示すように地板11のガイド溝13と一致するガイド溝16が形成されている。このガイド溝16については後述する。
【0031】
従って、地板11を樹脂のモールド成形で、第1摺動リング15を樹脂フィルムの型抜き成形で形成する場合には、地板11の形状精度に比べ摺動リング15の形状精度を高精細に形成することが出来、また第1摺動リング15の材質を絞り羽根21と同一材質(同一耐電列)にすることによって羽根が摺動することによって静電気が発生することがない。これと共に熱変化などの温度特性は羽根部材と実質的に同一となる。図示のものは、第1摺動リング15と後述する絞り羽根21をポリエチレン樹脂(PETフィルム)で構成している。
【0032】
このように第1摺動リング15は地板11と略々同一形状に形成され、中央に位置する光路開口12の周縁に複数の絞り羽根21の基端部21xを支持し、先端部21yは光路開口内部に臨ませるように支持する(図8(b)参照)。
【0033】
[羽根組の構成]
羽根組2は、図2にその斜視構成を、図8に平面構成を示すが複数の絞り羽根21a〜21iで構成されている。図示の絞り羽根21は、9枚の羽根で構成され、各羽根の形状は同一形状に形成されている。図9(a)に羽根形状の一例を示すが、基端部21xは上述の第1摺動リング15を介して地板11に支持される。また羽根の先端部21yは光路開口12を開閉する。このとき複数の羽根部材の先端部21xは互いに鱗状に重なり合って円形状の光路口径を形成する形状になっている。
【0034】
各羽根部材21a〜21iには、図2に示すように第1の突起(ガイドピン)22と第2の突起(作動ピン)23が表裏に植設されている。このガイドピン22は各羽根部材21に地板11側に面する位置に配置され、作動ピン23はその反対面(後述する第2基板側)に配置されている。このガイドピン22は後述するように地板11のガイド溝13と、第1摺動リング15のガイド溝16に嵌合し、作動ピン23は後述する駆動リング31の嵌合孔33に嵌合する。なお、図示24は羽根部材21に第1第2の突起22、23を植設(例えば溶融接着)する際の位置決め孔であり、羽根外形状と第1第2の突起22,23の植設位置を設定するための位置決め孔である。
【0035】
[ガイド溝とカイドピンの関係]
上述の地板11に形成されたガイド溝13と第1摺動リング15に形成されたガイド溝16と各羽根部材21に形成されたガイドピン22の関係について説明する。
【0036】
地板11のガイド溝13は図9(b)に示すように凹陥溝で構成され地板外部(同図矢印方向)の光が透過されない盲穴形状に形成されている。また地板11をモールド成形で形成する関係から抜きテーパθが形成され、その平均内径はdcに設定されている。
【0037】
また第1摺動リング15のガイド溝16は、内径dbの貫通孔で形成されている。この貫通孔は樹脂フィルムの型抜き成形で均一径に形成されている。
【0038】
一方、各絞り羽根21にはガイドピン22が植設され、その外径はdaに設定されている。そこで、このピン外径daとガイド溝内径dbとの関係は、da≦db<dcの関係に設定されている。つまり第1摺動リング15のガイド溝16は地板11のガイド溝13より狭小幅(db<dc)でガイドピン外径daと適合する寸法(da≦db)に設定されている。
【0039】
従って同図に示すように各羽根部材21に植設されたガイドピン22は第1摺動リング15のガイド溝16と係合して運動規制され、地板11のガイド溝13とは接触しないこととなる。このためガイドピン22はテーパθを有する地板11のガイド溝13と不安定に係合することがなく、これによって羽根部材21が傾くことも、浮き上がることもない。
【0040】
[第2基板組の構成]
図3に従って第2基板組4と駆動リング組3について説明する。第2基板組4は押さえ板41と、補強板42と、押さえ板に固定した駆動ユニットMで構成されている。また駆動リング組3は、駆動リング31と第2摺動リング36で構成される。以下各構成について説明する。
【0041】
「押さえ板」
押さえ板41は図3に示すように中央部に開口43を有するリング形状に形成され、前述の地板11と略々同一形状に形成されている。図示の押さえ板41は樹脂のモールド成形で、外周の一部に駆動ユニットMの取付座46が設けてある。この取付座46に後述する駆動ユニットMがビスなどで固定される。図示45は押さえ板41を地板11の連結突起14にビス止めする連結孔である。
【0042】
「補強板」
補強板42は、図3に示すように金属などの比較的強靭な板材で構成され、樹脂製の押さえ板41を補強する。従って押さえ板41に十分な強度が得られるときには補強板42を省くことが可能である。この補強板42は押さえ板41と略々同一形状に形成され、中央に開口44が形成してある。
【0043】
上記押さえ板41の開口43と補強板42の開口44は、いずれも光路開口12の開口径Dより大きく設定してあり、開口43の開口径D1と開口44の開口径D2と光路開口12の開口径Dとは、D2≧D1>Dに設定されている。
【0044】
駆動リング組3は駆動モータ(後述の駆動ユニット)Mの駆動を絞り羽根21に伝達する駆動リング31と、第2摺動リング36で構成されている。
【0045】
「駆動リング」
駆動リング31は図3に斜視構成を、図5(a)に平面構成を示すが、樹脂のモールド成形(金属のプレス成型であっても良い)で中央部に光路開口12を有するリング形状いう)に形成されている。この駆動リング31は、補強板42を介して押さえ板41に回動自在に取り付けられている。このため駆動リング31には光路開口12の周縁にフランジ32と係合突起34が形成してある。フランジ32は押さえ板41の開口43と補強板42の開口44に嵌合し、光路開口12の中心と一致する回転中心で回動するように嵌合されている。また係合突起34はフランジ32の周面に形成され、押さえ板41の開口43と補強板42の開口44に円滑に回動するように嵌合してある。この係合突起34と共に駆動リング31には係合突起38が補強板42と摺接する面に形成され両者を円滑に摺動するのを補助している。
【0046】
[切欠き凹陥部の構成]
上述のように駆動リング31は押さえ板41に所定回転角度で回転自在に支持されている。この駆動リング31には、図5(a)に示すように外周の一部に切欠き部35が設けてある。この切欠き部35は予め設定された角度範囲θを有する凹陥形状に形成されている。この切欠き部35は、リング外径から光路中心O側に窪んだ凹形状で羽根の開閉軌跡内に配置してある(図6(b)参照)。この切欠き部35の端面には受動歯形部35gが形成されている。この受動歯形部35gには、押さえ板41の取付座46に取付けられた後述する駆動ユニットMの駆動歯車53と噛合する位置に設けられている。
【0047】
従って駆動リング31は切欠き部35の受動歯形部35gを駆動ユニットMの駆動歯車53で回転駆動することによって駆動リング31は角度範囲θで正逆転することとなる。このとき光路開口12の周囲に配置された絞り羽根21の一部は切欠き部35に部分的に位置した状態で開閉動することとなる。
【0048】
上記駆動リング31には、各絞り羽根21a〜21iに植設された作動ピン23と嵌合する嵌合孔33が光路開口12の周縁に設けられている。この嵌合孔33は絞り羽根21の枚数に応じて光路開口12の周縁に複数(図示のものは9個所)配置されている(図5参照)。
【0049】
このような構成において駆動リング31は、押さえ基板41に回動自在に支持され、駆動ユニットMの駆動歯車53によって所定角度回転することとなる。そして駆動リング31の回転は各羽根部材21a〜21iに伝達されることとなる。
【0050】
そこで本発明は上述の駆動リング31と絞り羽根21との間に、駆動リングの切欠き凹陥部35に羽根が部分的に没入して反り返るのを防止するため、羽根と切り欠き凹陥部35との間に羽根をバックアップ支持する「ガイド部材」を配置する。この「ガイド部材」は図1乃至図6に示すように羽根と駆動リング31との間に摺動リング36を配置するか、図7に示すように駆動リング31にカバー部材39を設ける。順次その構成を説明する。
【0051】
「第2摺動リング」
摺動リング36(第2摺動リングという)は、図5(b)に平面形状を、図6(a)に断面形状を示す。図5(b)に示すように第2摺動リング36は中央に光路開口を備え略々駆動リング31と同一形状に形成されている。そしてこの摺動リング36には、駆動リング31の嵌合孔33と合致する位置に嵌合孔37が設けてある。この嵌合孔37と嵌合孔33には、絞り羽根21の第2の突起(作動ピン)23が嵌合する。
【0052】
図示の摺動リング36は、羽根と同一素材、例えばポリエチレン樹脂(PETフィルム)で型抜き成形してある。これは摺動リング36と絞り羽根21が同一素材で帯電列が同一であるため、羽根の摺動によって両者間に静電気が発生することがないためである。また図6(a)に示すように羽根の厚さt1に対して摺動リング36の厚さt2を、t1>t2に設定してある。
【0053】
このように摺動リング36には切欠き凹陥部35が羽根の開閉軌跡内に凹陥形状に配置され、この切欠き凹陥部35を覆うように第2摺動リング36が配置されている。これは羽根部材21が切欠き凹陥部35内に没入し、羽根が反り返るのを防止するためである。このため第2摺動リング36は少なくとも駆動リング31の切欠き凹陥部35を覆う形状と、その位置に配置する。
【0054】
[ガイド部材の異なる実施形態]
図7はガイド部材の異なる実施形態を示し、先の実施形態と同一の構成については同一符合を付して説明を省略する。駆動リング31の切欠き凹陥部35には、絞り羽根21をバックアップ支持するようにカバー部材39が設けられている。図示のカバー部材39は駆動リング31に一体形成してある。この他、カバー部材39は樹脂フィルム片などで構成し、駆動リング31に接着剤で添着しても良い。
【0055】
[駆動ユニットM]
図10に駆動ユニットMの一実施形態を示す。同図の駆動ユニットMはマグネットロータ50と、ステータコイル51と駆動回転軸52と、駆動歯車53と、ヨーク54で構成されている。マグネットロータ50は駆動回転軸52と永久磁石56を一体化して構成され、駆動回転軸52の両端部はコイル枠55に軸受け支持されている。永久磁石56は外周にNS2極が形成され、駆動回転軸52には駆動歯車53が取り付けられている。また、ステータコイル51はコイル枠55と、これに巻回されたコイル58で構成されている。このコイル枠55は内部にロータを内蔵するため、左右若しくは上下に2分割されている。このコイル枠55にはブラケット57が一体形成され、外周にヨーク54が嵌装されている。
【0056】
このような構成で、コイル58に通電するとマグネットロータ50は時計方向若しくは反時計方向に所定角度正逆転し、駆動歯車53を正逆転する。このように構成された駆動ユニットMは押さえ板41の取付座46にブラケット57をネジなどで固定する。そして駆動歯車53を駆動リング31の受動歯形部35に噛合する。これによって駆動リング31は、図5(a)時計方向と反時計方向に所定角度往復動し、絞り羽根21を開閉動する。
【0057】
[組立て状態の説明]
図1に従って光量調整装置Aの組み立て状態を説明する。上述のように構成された地板11に第1摺動リング15を重ね合わせる。このとき地板11に設けた位置決めピン17が第1摺動リング15の位置決め孔18に嵌合して両者の位置決めがなされる。
【0058】
地板11と第1摺動リング15を重ね合わせて、摺動リング15上に第1〜第9絞り羽根21a〜21iを図2に示すように重ね合わせる。このとき各羽根部材21のガイドピン22をガイド溝13とガイド溝16に嵌合する。
【0059】
次いで、図3に示すように各羽根部材21の上に第2摺動リング36を重ね合わせ、各羽根部材21a〜21iの作動ピン23をリング側の嵌合孔37に嵌合する。そこで押さえ板41に補強板42を重ね合わせて第2摺動リング36上に重ね合わせる。このとき押さえ板41にマウントした駆動ユニットMの駆動歯車53を駆動リング31の切欠き凹陥部35と噛合させる。
【0060】
そこで地板11と押さえ板41を固定ビスで固定する。これによって地板11、第1摺動リング15、羽根部材21、第2摺動リング36、駆動リング31、補強板42、押さえ板41が順次上方に重ね合わせられ、一体化される。
【0061】
[羽根の開閉動作]
次に、図8に従って絞り羽根の開閉動作について説明する。同図(a)は光路開口12の周囲に複数の絞り羽根を配置した状態を示し、(b)はこの複数の羽根の1枚の開閉動作状態を示す。同図(a)のように光路開口12の周囲には、光路中心Oを基準に所定角度隔てた位置(図示のものは9枚の羽根を角度40度ずつ隔てた位置)に複数の絞り羽根21a〜21iが鱗状に配置されている。各絞り羽根21a〜21iは地板11に形成したガイド溝16に第1の突起(ガイドピン)22が嵌合してある。これと共に各絞り羽根21に形成された第2の突起(作動ピン)23は、駆動リング31の嵌合孔33に嵌合されている。
【0062】
そして駆動リング31は光路中心Oを中心に前述の駆動ユニットMによって所定角度範囲で時計方向と反時計方向に回転する。このときの羽根の開閉動作を同図(b)に従って説明する。作動ピン23は駆動リング31の回転で図示光路中心Oから半径Lの円弧軌跡x−xで図示c点からd点に同図時計方向に回転移動する。またガイドピン22はガイド溝16に沿って図示y−y軌跡でa点からb点に移動する。
【0063】
この作動ピン23とガイドピン22の移動で絞り羽根21は同図実線(オープン状態)から同図破線(クローズ状態)に開閉動する。なお図示の装置はクローズ状態のとき光路開口12は小口径の小絞り状態に設定され、オープン状態のときには全開状態に設定されている。従って駆動ユニットMに供給する電流に応じて絞り羽根21は、小絞り状態から全開状態に任意の開口径で開閉し、光路を通過する光量を大小調整することとなる。
【符号の説明】
【0064】
A 光量調整装置
1 第1基板組(地板組)
2 羽根組
3 駆動リング組
4 第2基板組(押さえ板組)
11 地板
12 光路開口
13 ガイド溝
15 第1摺動リング
16 ガイド溝
21 絞り羽根(羽根部材)21a〜21i
21x 基端部
21y 先端部
22 第1の突起(ガイドピン)
23 第2の突起(作動ピン)
31 駆動リング
35 切欠き部
35g 受動歯形部
36 第2摺動リング
39 カバー部材
41 押さえ板
42 補強板
53 駆動歯車
M 駆動ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有する一対の第1第2の基板と、
前記第1の基板に配置され前記光路開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、
前記第2の基板に所定の回転角度で回動自在に配置され前記複数の絞り羽根を開閉するリング形状の駆動リングと、
前記駆動リングを回転駆動する駆動手段と、
を備え、
前記一対の基板と絞り羽根と駆動リングとは、略中央に光路開口を形成して第1の基板、絞り羽根、駆動リング、第2の基板の順に積層状に重ね合わせられ、
前記駆動手段は、前記第2の基板に取付けられ、
駆動回転軸と、
この駆動回転軸の回転を前記駆動リングに伝達する駆動歯車と、
で構成され、
前記駆動リングには、
前記絞り羽根の開閉軌跡内に凹陥する切欠き部と、
この切欠き部の端面に形成され前記駆動歯車と噛合する受動歯形部と、
が設けられ、
前記駆動リングの切欠き部と前記絞り羽根との間には、切欠き部に羽根の没入を阻止するように羽根をバックアップ支持するガイド部材が設けられていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記複数の絞り羽根と前記駆動リングとの間に介在するリング状のプレート部材であることを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、合成樹脂シートを型抜き成型して形成されていると共に、型抜き成型時のダレ面が前記複数の絞り羽根と接するように支持することを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記複数の絞り羽根と同一素材で構成されていると共に、羽根の厚さに比べ薄いシート材で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記複数の絞り羽根は、それぞれ羽根表面に第1の突起が、羽根裏面に第2の突起が形成され、
前記第1の突起は、前記第1の基板に形成されたガイド溝と嵌合し、
前記第2の突起は、前記駆動リングに形成された嵌合孔に嵌合していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光量調整装置。
【請求項6】
前記第1の基板と複数の絞り羽根との間には、羽根を開閉自在に案内する摺動リングが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光量調整装置。
【請求項7】
前記摺動リングと、複数の絞り羽根と、ガイド部材とは、それぞれ合成樹脂シートの型抜き成形で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の光量調整装置。
【請求項8】
前記ガイド部材は、前記駆動リングと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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