説明

光量調節装置および光学機器

【課題】光量調節装置の滑らかな動作を可能とし、高速動作にも対応できるようにする。
【解決手段】光量調節装置6は、固定開口54および複数のカム溝部51を有するベース部材50と、それぞれ駆動ピン11を有するとともにカム溝部に係合するカムピン12を有し、固定開口の周方向に複数配置されて光が通過する可変開口を形成する遮光羽根10と、ベース部材に対して固定開口の周方向に回転して駆動ピンに駆動力を伝達することで、複数の遮光羽根を回動させる駆動リング20と、駆動リングを回転駆動する駆動源部1とを有する。駆動リングは、リング形状部からラジアル方向外側に突出するように形成された部分であって駆動ピンに係合する駆動穴部を有する第1の羽根支持部122を有し、該第1の羽根支持部によって遮光羽根におけるベース部材とは反対側の羽根面を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラや交換レンズ等の光学機器に搭載され、絞り装置等と称される光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような光量調節装置においては、高速かつ滑らかな動作が求められている。特許文献1および図12から図14に示す従来の光量調節装置としての絞り装置では、駆動リングを固定開口の周囲で回転させて複数の絞り羽根を開閉方向に回動させ、該複数の絞り羽根により形成される絞り開口(可変開口)の大きさを変化させることにより光量を調節する。このような絞り装置は、虹彩型絞り装置とも称される。
【0003】
図12および図13に示すように、各絞り羽根210には、羽根面から互いに逆方向に延出した駆動ピン211とカムピン212が設けられている。図12および図14に示す駆動リング220には、複数の絞り羽根210の駆動ピン211がそれぞれ係合する複数の駆動穴部223が形成されている。
【0004】
図12に示す地板250には、その中央に固定開口254が形成されているとともに、該固定開口254の周囲に複数の絞り羽根210のカムピン212がそれぞれ係合する複数のカム溝部251が形成されている。押さえ板240は、地板250との間に複数の絞り羽根210と駆動リング220を挟むように配置され、地板250に固定される。
【0005】
このように、従来の絞り装置では、複数の絞り羽根210は、固定された地板250と回転する駆動リング220とによって回動可能に挟持(支持)される。具体的には、図15に示すように、各絞り羽根210の地板側とは反対側の羽根面は、ハッチングして示す駆動リング220によって支持される。また、各絞り羽根210の地板側の羽根面における駆動ピン211の裏側部分は、地板250によって支持される。
【0006】
さらに、各絞り羽根210の駆動リング側の羽根面におけるカムピン212の裏側の周辺部分は、駆動リング220にラジアル方向外側に延出するように形成された羽根支持部228によって支持される。羽根支持部228は、駆動リング220における周方向複数箇所に、駆動穴部223に近接して設けられている。複数の羽根支持部228の間には、これら羽根支持部228を含んでひとつながりのフランジを形成するように周方向に延びる連結部221が形成されている。複数の羽根支持部228と連結部221の地板側(絞り羽根側)の面は、1つの平面(フランジ面)として形成されている。
【0007】
また、駆動リング220の内周側には、押さえ板側に突出した円筒形状のラジアル支持部226が形成されており、該ラジアル支持部226の外周面には、押さえ板240の内周面に回転可能に当接する突起227が周方向複数箇所に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−114246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の絞り装置では、絞り羽根210における地板側とは反対側の羽根面は、回転する部材である駆動リング220によって支持されており、回動する絞り羽根210と回転する駆動リング220とが摺動する構造となっている。この場合、駆動リング220の回転方向と絞り羽根210の回動方向との関係によっては両者間の摩擦抵抗が大きくなり、絞り羽根210が滑らかに回動しにくくなるおそれがある。
【0010】
また、絞り羽根210の駆動リング側の羽根面におけるカムピン212の裏側の周辺部分は、駆動リング220の羽根支持部228によって支持されるが、絞り羽根210におけるカムピン212の真裏が支持されていない。このため、カムピン212がカム溝部251から脱落する可能性がある。
【0011】
さらに、複数の絞り羽根210の駆動リング側の羽根面における駆動ピン211の周囲部分が駆動リング220の1つの平面としてのフランジ面によって支持されているが、該フランジ面の平面度をかなり高くしないと、複数の絞り羽根210を確実に支持できない。このため、各絞り羽根210のがたつきや隣り合う絞り羽根210同士の引っ掛かりが生ずるおそれがある。
【0012】
これに加え、駆動リング220において複数の羽根支持部228と連結部221とがひとつながりのフランジを形成している。このフランジによって駆動リング220が回転する際のイナーシャが大きくなり、絞り装置を高速動作させにくい。しかも、フランジによって駆動リングのラジアル方向での剛性が高くなり、駆動リング220のラジアル支持部226に設けられた複数の突起227と押さえ板240の内周面との間のガタ量の精度がかなり高くないと、これらの間の摩擦抵抗が大きくなったり、駆動リング220のラジアル方向での必要以上のがたつきによって絞り羽根210の開閉位置の制御精度(開口径の制御精度)が低下したりする可能性もある。
【0013】
本発明は、滑らかな動作が可能であり、開口径の制御精度も良く、さらに高速動作にも対応できるようにした光量調節装置およびこれを備えた光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面としての光量調節装置は、光が通過する固定開口および複数のカム溝部を有するベース部材と、それぞれ駆動ピンを有するとともにカム溝部に係合するカムピンを有し、固定開口の周方向に複数配置されて光が通過する可変開口を形成する遮光羽根と、遮光羽根に対してベース部材とは反対側に配置され、ベース部材に対して固定開口の周方向に回転して駆動ピンに駆動力を伝達することで、可変開口の大きさを変化させるように複数の遮光羽根を回動させる駆動リングと、該駆動リングを回転駆動する駆動源部とを有する。遮光羽根におけるベース部材側の羽根面は、ベース部材によって支持されている。そして、駆動リングは、該駆動リングにおけるリング形状部からラジアル方向外側に突出するように形成された部分であって駆動ピンに係合する駆動穴部を有する第1の羽根支持部を有し、該第1の羽根支持部によって遮光羽根におけるベース部材とは反対側の羽根面を支持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遮光羽根における駆動リング側の羽根面が、駆動リングが有する第1の羽根支持部によって支持されることで、回動する遮光羽根と回転する駆動リングとの接触面積を小さくすることができる。この結果、遮光羽根が駆動リングから受ける摩擦抵抗を低減することができ、遮光羽根を滑らかに回動させることができ、開口径の制御精度も向上させることができる。しかも、駆動リングを、リング形状部と、該リング形状部からラジアル方向外側に突出した第1の羽根支持部とを有するように形成することで、駆動リングを小径化および軽量化することができる。このため、駆動リングの回転時のイナーシャを小さくすることができ、装置の高速応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である絞り装置の分解斜視図。
【図2】実施例1の絞り装置における駆動リングの斜視図。
【図3】実施例1の絞り装置における押さえ板の斜視図。
【図4】実施例1の絞り装置における絞り羽根の斜視図。
【図5】実施例1における絞り羽根と押さえ板と地板の関係を示す透過図。
【図6】(A)実施例1の絞り装置の断面図および(B)実施例1の絞り装置の変形例の断面図。
【図7】実施例1の絞り装置の斜視図。
【図8】本発明の実施例2である絞り装置の分解斜視図。
【図9】実施例2の絞り装置における駆動リングの斜視図。
【図10】実施例2の絞り装置における駆動リングの平面図。
【図11】実施例1,2の絞り装置を搭載した光学機器の概略図。
【図12】従来の絞り装置の分解斜視図。
【図13】従来の絞り装置における絞り羽根の斜視図。
【図14】従来の絞り装置における駆動リングの斜視図。
【図15】従来における絞り羽根と地板との関係を示す透過図。
【図16】従来の絞り装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1には、本発明の実施例1である光量調節装置としての虹彩型絞り装置6を分解して示している。また、図7には、本実施例の絞り装置6の組み立て状態を示している。なお、ここでは絞り装置について説明するが、シャッタ装置やシャッタ機能を有する絞り装置も、本発明の実施例としての光量調節装置に含まれる。
【0019】
絞り装置6は、アクチュエータ1と、押さえ板(押さえ部材)40と、駆動リング20と、複数の絞り羽根(遮光羽根)10と、地板(ベース部材)50と、フォトインタラプタ3とを有する。
【0020】
アクチュエータ1は、ステッピングモータ等の電磁アクチュエータである。アクチュエータ1の出力軸には、駆動リング20を回転駆動するピニオンギア2が取り付けられる。アクチュエータ1とピニオンギア2とにより駆動源部が構成される。
【0021】
フォトインタラプタ3は、駆動リング20の初期位置を検出するためのセンサとして用いられる。4はフォトインタラプタ3を保持するセンサ保持部材である。アクチュエータ1およびフォトインタラプタ3を保持したセンサ保持部材4はそれぞれ、ビス61とビス62により押さえ板40に取り付けられる。
【0022】
5は絞り装置の中心軸であり、該絞り装置が後述する撮像装置に搭載された場合には該撮像装置の光軸に一致する。以下の説明では、この中心軸5に平行な方向をスラスト方向という。押さえ板40、駆動リング20、複数の絞り羽根10および地板50は、この順でスラスト方向において積層される。すなわち、駆動リング20は、スラスト方向において、絞り羽根10に対して地板50とは反対側に配置され、押さえ板40は絞り羽根10および駆動リング20に対して地板50とは反対側に配置される。また、スラスト方向に直交する方向および面をそれぞれラジアル方向(径方向)およびラジアル面という。
【0023】
絞り羽根10は、地板50に形成された固定開口54の周方向に複数配置されている。本実施例では8つの絞り羽根10が用いられている。なお、絞り羽根の数は8に限らず、他の複数であってもよい。
【0024】
図4には1つの絞り羽根10を拡大して示している。絞り羽根10は、ラジアル面にほぼ平行になるように配置され、遮光機能を有する平板形状の羽根部と、該羽根部からスラスト方向における互いに反対側に突出するように設けられた駆動ピン11およびカムピン12とを有する。駆動ピン11とカムピン12のラジアル面内での位置は互いに異なっている。
【0025】
図2には、駆動リング20を拡大して示している。駆動リング20は、その中央に光通過開口24を有し、さらに該光通過開口の周囲における周方向複数箇所(8箇所)に設けられた第1の羽根支持部としての羽根支持突起部22と、該8つの羽根支持突起部22を周方向において連結するようにリング形状に形成された連結部(リング形状部)21とを有する。各羽根支持突起部22は、連結部21からラジアル方向外側に突出するように形成されている。8つの羽根支持突起部22にはそれぞれ、8つの絞り羽根10の駆動ピン11が挿入されて係合する駆動穴部23が形成されている。
【0026】
また、駆動リング20の外周部の一部には、ピニオンギア2に噛み合うギア部25が形成されている。ギア部25は、周方向に円弧状に延びてその外周に複数のギア歯が形成されたギア歯部と、連結部21からラジアル方向外側に延出してギア歯部につながってギア歯部と連結部21との間に空間を形成する2つのギア支柱部31とによって構成されている。なお、これらギア支柱部31には、2つの絞り羽根10の駆動ピン11が挿入されて係合する駆動穴部23が形成されている。つまり、ギア支柱部31は、8つの羽根支持突起部22のうち2つを兼ねている。
【0027】
また、駆動リング20の連結部21における周方向複数箇所(本実施例では8箇所)には、該連結部21からスラスト方向における押さえ板側に延出したラジアル支持壁部(回転支持部)26が形成されている。27はラジアル支持壁部26の外周面に凸面として形成された当接突起である。複数のラジアル支持壁部26の当接突起27が押さえ板40の内周面に当接することで、駆動リング20が押さえ板40の内周面に嵌合し、中心軸5周りで回転可能に支持される。
【0028】
さらに、駆動リング20の連結部21における押さえ板側の周方向複数箇所(本実施例では3箇所)にはスラストフック部28が設けられており、連結部21における地板側(絞り羽根側)の周方向複数箇所(本実施例では6箇所)にはスラスト押え突起29が設けられている。スラストフック部28とスラスト押え突起29とによって押さえ板40の内周部(駆動リング支持部)41をスラスト方向にて挟み込むことで、駆動リング20は押さえ板40によって回転可能にスラスト方向にて支持される。
【0029】
また、駆動リング20の周方向一箇所には、フォトインタラプタ3の発光部と受光部との間に入り込んで遮光する遮光突起部30が設けられている。
【0030】
図1に示すように、押さえ板40は、該押さえ板40と地板50との間に配置された絞り羽根10および駆動リング20を覆う(押さえる)ように配置され、地板50に3つのビス60により固定される。
【0031】
図3には、押さえ板40を拡大して示している。押さえ板40は、その中央に光通過開口44を有するリング形状に形成されており、駆動リング支持部45よりも外周側の部分には、絞り羽根10に向かって突出して、該絞り羽根10の羽根部(羽根面)のうちカムピン12の裏側部分を押さえる(支持する)第2の羽根支持部としての支持レール42が形成されている。
【0032】
なお、本実施例において、絞り羽根10を「支持する(又は押さえる)」とは、絞り羽根10の滑らかな回動に必要なガタを与えつつ、それ以上に絞り羽根10ががたついたり脱落したりしないように移動を制限することを意味する。つまり、回動する方向以外の方向(スラスト方向)にガタがないように押さえ込むことではない。
【0033】
支持レール42の内周部(駆動リング側の部分)には、傾斜面43が形成されている。傾斜面43は、駆動リング20側から支持レール42のレール面に向かって支持レール42のスラスト方向への突出量を緩やかに変化(増加)させるために設けられている。このように傾斜面43を設けることで、絞り羽根10が支持レール42に引っ掛かることなく、滑らかに回動することができる。
【0034】
地板50は、その中央に固定開口としての光通過開口54を有するリング形状に形成されており、該リング形状の部分には複数の絞り羽根10のカムピン12がそれぞれ係合する複数(絞り羽根10と同じ8つ)のカム溝部が形成されている。
【0035】
以上のように構成された絞り装置6においては、アクチュエータ1が動作してピニオンギア2が回転すると、駆動リング20が地板50および押さえ板40に対して中心軸5周りで(周方向にて)回転する。駆動リング20は、8つの絞り羽根10に駆動ピン11を介してアクチュエータ1からの駆動力を伝達する。これにより、各絞り羽根10は、カムピン12がカム溝部51に沿って移動することで駆動ピン11を中心として回動する。アクチュエータ1による駆動リング20の回転位置を制御することで、複数の絞り羽根10の回動位置、つまりは該複数の絞り羽根10の羽根部によって形成される絞り開口(可変開口)のサイズ(径)が制御される。絞り開口径に応じて、光通過開口44,24,54を通過する光量を変化させる(調節する)ことができる。
【0036】
駆動リング20の回転位置を制御するために必要な駆動リング20の回転初期位置の検出は、駆動リング20の遮光突起部30がフォトインタラプタ3の発光部と受光部との間に入り込んで発光部からの光を遮ったことを示す信号を検出することで行うことができる。
【0037】
本実施例の絞り装置6では、絞り羽根10は、回転する駆動リング20と接触しながら回動する。しかし、図5にハッチング部として示すように、絞り羽根10には、駆動リング20の羽根支持突起部22が接触するに過ぎないので、その接触面積は小さい。これは、図6(A)に示す断面図からも分かるように、絞り羽根10の押さえ板側の羽根面を、図15および図16に示した従来の絞り装置のように駆動リング220のみにより支持するのではなく、駆動リング20の羽根支持突起部22とともに押さえ板40の支持レール42によっても支持する構成を採用することによって実現している。しかも、押さえ板40は、駆動リング20のように回転せずに固定された部材である。一方、絞り羽根10の地板側の羽根面は、従来と同様に、固定された部材である地板50によって支持する。
【0038】
したがって、図15および図16に示すように、絞り羽根210を駆動リング220に大きな面積で接触させて支持する従来の絞り装置に比べて、本実施例の絞り装置6では、絞り羽根10が駆動リング20から受ける摩擦抵抗を小さくすることができる。このため、絞り羽根10を滑らかに回動させることができ、絞り開口の制御精度も向上させることができる。
【0039】
また、押さえ板40に絞り羽根10の羽根部におけるカムピン12の裏側部分を支持する支持レール42を設けたことで、カムピン12のカム溝部51からの脱落を防止することができる。さらに、支持レール42に傾斜面43を設けたことで、駆動リング側から支持レール42のレール面側に回動する絞り羽根10が支持レール42に引っ掛かることを防止でき、絞り羽根10の滑らかな回動を確保することができる。
【0040】
また、駆動リング20と押さえ板40(支持レール42)とによって絞り羽根10の一部ずつを支持することで、絞り羽根210を支持する役割を単独で有する駆動リング220の径が大きかった従来の絞り装置に比べて、駆動リング20の径を小さく、かつ軽くすることができる。このため、駆動リング20と押さえ板40との摩擦抵抗も小さくすることができ、駆動リング20を滑らかに回転駆動することができる。しかも、駆動リング20の径が小さくなり、かつ軽くなることで、回転時のイナーシャが小さくなる。したがって、駆動リング20の回転と停止を高速で繰り返したり、回転方向を高速で切り替えたりすることが可能となり、絞り装置6の高速応答性を向上させることができる。
【0041】
また、駆動リング20は、リング状の連結部21と、該連結部21に対してラジアル方向外側に突出するとともに駆動穴部23が形成された複数の羽根支持突起部22とを有し、該羽根支持突起部22によって、絞り羽根10の羽根部のうちその回動中心である駆動ピン11の近傍部分(根元部分)のみを支持する。したがって、駆動リング20と絞り羽根10との接触面積をより小さくしてこれらの間に発生する摩擦抵抗をより低減させることができ、より滑らかに絞り羽根10を回動させることができる。しかも、羽根支持突起部22が絞り羽根10の羽根部のうち駆動ピン11の根元部分を確実に支持するので、絞り羽根10の大きながたつきを抑制することができ、絞り羽根10の滑らかな回動を保証することができる。
【0042】
また、駆動リング20における周方向複数箇所に、連結部21からスラスト方向に突出し、押さえ板40に対して回転可能にラジアル方向にて当接(嵌合)する当接突起27を備えたラジアル支持壁部26が形成されていることで、駆動リング20の全周にわたってラジアル支持壁部を形成する場合に比べて、駆動リング20を軽量化することができ、回転時のイナーシャを小さくすることができる。しかも、ラジアル支持壁部26はラジアル方向において多少弾性を有するので、ラジアル支持壁部26と押さえ板40との嵌合ガタがほとんどない状態でも、適度な嵌め合い状態が確保され、押さえ板40に対する駆動リング20のがたつきを抑えつつ、駆動リング20を滑らかに回転させることができる。駆動リング20の押さえ板40に対する嵌合ガタが大きすぎると、絞り装置6の姿勢(つまりは該絞り装置6を搭載した撮像装置の姿勢)に応じて絞り羽根10の位置が変動し、光量調節誤差が生ずるが、本実施例ではこのような姿勢に応じた光量調節誤差を低減させることができる。
【0043】
また、駆動リング20において、ギア部25をギア歯部とこれを連結部21から離して支える支柱部31とで形成したことで、ギア部25に弾性を持たせながら高い機械強度を確保することができる。これにより、アクチュエータ1の駆動力がピニオンギア2からギア部25に伝達されるときのアクチュエータ1の軸振れに伴うギア詰まりを回避でき、駆動リング20の滑らかな回転駆動を可能とすることができる。
【0044】
なお、本実施例では、駆動リング20が押さえ板40によってスラスト方向にて支持される場合について説明したが、駆動リング20を押さえ板40と地板50によって挟むことにより、スラスト方向にて支持してもよい。
【0045】
また、本実施例では、押さえ板40を設けた場合について説明したが、ベース部材と駆動リングのみによって遮光羽根を良好に支持できる場合は、必ずしも押さえ板を設けなくてもよい。
【0046】
さらに、図6(B)に示すように、支持レール42における絞り羽根10の羽根面に対向するレール面を、傾斜面46としてもよい。この場合、傾斜面46は、支持レール(レール面)42の内径側から外径側に向かって絞り羽根10の羽根面に緩やかに近づくように(つまりは支持レール42のスラスト方向への突出量が緩やかに増加するように)形成される。また、傾斜面43と傾斜面46とは滑らかな曲面で繋がっており、これにより絞り羽根10が支持レール42に引っ掛かることなく滑らかに回転することができる。
【実施例2】
【0047】
図8には、本発明の実施例2である虹彩型絞り装置106を分解して示している。本実施例の絞り装置106は、実施例1の絞り装置6に対して、駆動リング20を駆動リング120に変更している。他の構成要素は、実施例1と基本的に同じである(若干形状が異なるだけである)ため、これらには実施例1と同符号を付して説明は省略する。
【0048】
図9には、駆動リング120を拡大して示している。駆動リング120は、その中央に光通過開口124を有し、さらに該光通過開口の周囲における周方向複数箇所(8箇所)に設けられた第1の羽根支持部としての羽根支持突起部122と、該8つの羽根支持突起部122を周方向において連結する連結部(リング形状部)121とを有する。連結部121は、内周側のリング部分と外周側のリング部分とに分かれてそれらの間に空間を形成した多重リング形状(本実施例では、二重リング形状)に形成されている。内周側リング部分と外周側リング部分の間の周方向複数箇所には、これらを一体化するためのリング支柱133が設けられている。以下の説明において、連結部121のうち外周側リング部を、外周連結部132と称する。
【0049】
各羽根支持突起部122は、外周連結部132からラジアル方向外側に突出するように形成されている。8つの羽根支持突起部122にはそれぞれ、8つの絞り羽根10の駆動ピン11が挿入されて係合する駆動穴部123が形成されている。
【0050】
また、駆動リング120の外周部の一部には、ピニオンギア2に噛み合うギア部125が形成されている。ギア部125は、周方向に円弧状に延びてその外周に複数のギア歯が形成されたギア歯部と、外周連結部132からラジアル方向外側に延出してギア歯部につながってギア歯部と外周連結部132との間に空間を形成する複数(本実施例では4つ)のギア支柱部131とによって構成されている。
【0051】
また、外周連結部132における周方向複数箇所(本実施例では8箇所)には、該外周連結部132からスラスト方向における押さえ板側に延出したラジアル支持壁部(回転支持部)126が形成されている。127はラジアル支持壁部126の外周面に凸面として形成された当接突起である。複数のラジアル支持壁部126の当接突起127が押さえ板40の内周面に当接することで、駆動リング120が押さえ板40の内周面に嵌合し、中心軸5周りで回転可能に支持される。
【0052】
さらに、駆動リング120の外周連結部132における押さえ板側の周方向複数箇所(本実施例では3箇所)にはスラストフック部128が設けられており、外周連結部132における地板側(絞り羽根側)の周方向複数箇所(本実施例では6箇所)にはスラスト押え突起129が設けられている。スラストフック部128とスラスト押え突起129とによって押さえ板40の内周部(駆動リング支持部)41をスラスト方向にて挟み込むことで、駆動リング120は押さえ板40によって回転可能にスラスト方向にて支持される。
【0053】
また、駆動リング20の周方向一箇所には、フォトインタラプタ3の発光部と受光部との間に入り込んで遮光する遮光突起部130が設けられている。
【0054】
このように構成された絞り装置106においては、駆動リング120を多重リング状に形成したことで、駆動リング120を軽量化してその回転時のイナーシャを小さくすることができる。このため、図15に示した従来の絞り装置の駆動リング220のように多重リング形状を有さない駆動リングを使用する場合に比べて、駆動リング120(つまりは絞り羽根10)の滑らかな駆動を可能とするとともに、絞り装置106の高速応答性を向上させることができる。
【実施例3】
【0055】
図11には、実施例1,2にて説明した絞り装置を搭載した光学機器としてのビデオカメラ(撮像装置)の概略構成を示している。
【0056】
321はビデオカメラのレンズ鏡筒部である。該レンズ鏡筒部321内には、変倍レンズ332、実施例1,2の絞り装置6およびフォーカスレンズ329を含む撮影光学系が収容されている。
【0057】
325はCCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子である。撮像素子325は、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。絞り装置6の絞り開口を変化させることで、撮像素子325上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子325に到達する光量)を適切に設定することができる。
【0058】
撮像素子325から出力された電気信号は、画像処理回路326にて種々の画像処理を受ける。これにより、映像信号(ビデオ出力)が生成される。
【0059】
コントローラ322は、不図示のズームスイッチがユーザにより操作されることに応じて、ズームモータ331を制御し、変倍レンズ332を移動させて変倍(ズーミング)を行わせる。また、コントローラ322は、映像信号のコントラストを検出し、該コントラストに応じてフォーカスモータ328を制御し、フォーカスレンズ329を移動させてオートフォーカスを行う。
【0060】
さらに、コントローラ322は、映像信号のうち輝度情報に基づいて、絞り装置6(106)のアクチュエータ1を制御して光量を調節する。これにより、適切な輝度の映像を記録することができる。また、レンズ鏡筒部に内蔵された絞り装置6(106)が小型であるので、レンズ鏡筒部およびビデオカメラ全体の小型化を図ることができる。
【0061】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
滑らかに動作し、かつ高速応答性に優れた光量調節装置およびこれを搭載したカメラ等の光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0063】
1 アクチュエータ
10 絞り羽根
11 駆動ピン
12 カムピン
20,120 駆動リング
21,121 連結部
22,122 羽根支持突起部
23,123 駆動穴部
25,125 ギア部
26,126 ラジアル支持壁部
40 押さえ板
42 支持レール
43 傾斜面
50 地板
51 カム溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する固定開口および複数のカム溝部を有するベース部材と、
それぞれ駆動ピンを有するとともに前記カム溝部に係合するカムピンを有し、前記固定開口の周方向に複数配置されて前記光が通過する可変開口を形成する遮光羽根と、
前記遮光羽根に対して前記ベース部材とは反対側に配置され、前記ベース部材に対して前記固定開口の周方向に回転して前記駆動ピンに駆動力を伝達することで、前記可変開口の大きさを変化させるように前記複数の遮光羽根を回動させる駆動リングと、
該駆動リングを回転駆動する駆動源部とを有し、
前記遮光羽根における前記ベース部材側の羽根面は、前記ベース部材によって支持されており、
前記駆動リングは、該駆動リングにおけるリング形状部からラジアル方向外側に突出するように形成された部分であって前記駆動ピンに係合する駆動穴部を有する第1の羽根支持部を有し、該第1の羽根支持部によって前記遮光羽根における前記ベース部材とは反対側の羽根面を支持していることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記複数の遮光羽根および前記駆動リングに対して前記ベース部材とは反対側に配置されて前記ベース部材に固定され、前記駆動リングを回転可能に支持する押さえ部材を有しており、
前記遮光羽根における前記ベース部材とは反対側の羽根面は、前記第1の羽根支持部と前記押さえ部材とによって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記複数の遮光羽根および前記駆動リングに対して前記ベース部材とは反対側に配置されて前記ベース部材に固定され、前記駆動リングを回転可能に支持する押さえ部材を有しており、
前記押さえ部材は、該押さえ部材のうち前記駆動リングを回転可能に支持する駆動リング支持部よりも前記遮光羽根側に突出するように形成された第2の羽根支持部を有し、
前記遮光羽根における前記ベース部材とは反対側の羽根面は、前記第1の羽根支持部と前記第2の羽根支持部とよって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記第2の羽根支持部は、前記遮光羽根における前記ベース部材とは反対側の羽根面のうち、前記カムピンの裏側部分を支持することを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記第2の羽根支持部における前記駆動リング支持部側の部分に、前記遮光羽根側への突出量が変化する傾斜部を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記駆動リングにおける周方向複数箇所に、前記押さえ部材側に延出するように形成され、かつ外周面が前記押さえ部材の内周面に当接する凸面として形成された回転支持部が設けられていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項7】
前記駆動リングにおける前記リング形状部が、空間を挟んで少なくとも内周側と外周側とに分かれた多重リング形状を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項8】
前記駆動リングは、前記駆動源部からの駆動力が伝達されるギア部を有しており、
該ギア部は、
複数のギア歯が形成されたギア歯部と、
前記リング形状部からラジアル方向外側に延出して前記ギア歯部につながり、該ギア歯部と前記リング形状部との間に空間を形成するギア支柱部とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項9】
前記ギア支柱部は、前記第1の羽根支持部を兼ねていることを特徴とする請求項8に記載の光量調節装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の光量調節装置を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−145929(P2012−145929A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274625(P2011−274625)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】