説明

光量調節装置および光学機器

【課題】良好な絞り開口形状を得つつ、絞り羽根の反りを抑制する。
【解決手段】光量調節装置は、光が通過する固定開口1aを有するベース部材1と、光の進行方向である光軸方向において部分的に重なり合って固定開口に面する絞り開口を形成し、ベース部材に対して回動して絞り開口を変化させる複数の絞り羽根4,5とを有する。各絞り羽根のうちベース部材に対する回動中心側とは反対側の部分を先端部とするとき、複数の絞り羽根は、少なくとも絞り開口が最小である最小絞り状態において、先端部が光軸方向にてベース部材に重ならない複数の第1の絞り羽根5と、少なくとも最小絞り状態において、先端部が光軸方向にてベース部材に重なる第2の絞り羽根4とを含む。第2の絞り羽根は、複数の第1の絞り羽根に対して、光軸方向のうちベース部材側およびその反対側のうち少なくとも一方にて重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置や交換レンズ装置等の光学機器に搭載される光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような光量調節装置(絞り装置)において形成される絞り開口の形状は、できるだけ円形に近い方が好ましく、円形に近い絞り開口を形成するために3枚以上の多数枚の絞り羽根が用いられる場合が多い。特許文献1には、ベース部材に形成した固定開口の周囲で回動可能な駆動リングによって多数枚の絞り羽根を移動(回動)させることで、円形に近い多角形の絞り開口を形成する虹彩絞り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−48928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の虹彩絞り装置では、以下のような問題がある。図7には、従来の虹彩絞り装置を含む撮像装置の構成を示している。101は絞り装置のベース部材であり、103はベース部材101の固定開口の周囲で回動可能な駆動リングである。106は駆動リング103を回動させるアクチュエータであり、105は駆動リング103によってベース部材101に設けられた軸部(図示せず)を中心として回動される複数の絞り羽根である。さらに、114は絞り装置に隣接して配置されたレンズであり、113は該レンズ114および絞り装置を含む撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子である。
【0005】
図7には、複数の絞り羽根105を絞り込んで小絞り開口を形成した状態を示している。絞り開口を絞り込んでいくと、複数の絞り羽根105は、その先端同士が互いに重なり合うことでレンズ114側に反っていく。このため、この反った絞り羽根105とレンズ114との干渉を避けるために、絞り装置に対するレンズ14の退避スペースhを予め確保しておく必要がある。この結果、撮像装置が大型化する。
【0006】
本発明は、良好な絞り開口形状を得つつ、絞り羽根の反りを抑制することができるようにした光量調節装置およびこれを備えた光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての光量調節装置は、光が通過する固定開口を有するベース部材と、光の進行方向である光軸方向において部分的に重なり合って固定開口に面する絞り開口を形成し、ベース部材に対して回動して絞り開口を変化させる複数の絞り羽根とを有する。各絞り羽根のうちベース部材に対する回動中心側とは反対側の部分を先端部とするとき、複数の絞り羽根は、少なくとも絞り開口が最小である最小絞り状態において、先端部が光軸方向にてベース部材に重ならない複数の第1の絞り羽根と、少なくとも最小絞り状態において、先端部が光軸方向にてベース部材に重なる第2の絞り羽根とを含む。そして、第2の絞り羽根が、複数の第1の絞り羽根に対して、光軸方向のうちベース部材側およびその反対側のうち少なくとも一方にて重なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の絞り羽根を用いて良好な絞り開口形状を得ることができるとともに、第2の絞り羽根によって第1の絞り羽根の反りを制限することにより光量調節装置の薄型化を図ることができる。したがって、これを搭載した光学機器の小型化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1である絞り装置の分解斜視図。
【図2】実施例1における第2の絞り羽根を示す正面図。
【図3】実施例1における第1の絞り羽根を示す正面図。
【図4】実施例1における最小絞り状態を示す正面図。
【図5】全ての絞り羽根を第2の絞り羽根とした絞り装置の正面図。
【図6】本発明の実施例2である絞り装置の分解斜視図。
【図7】従来の絞り装置を搭載した撮像装置の断面図。
【図8】実施例1,2の絞り装置を搭載した撮像装置の断面図。
【図9】実施例1における全閉状態を示す正面図。
【図10】実施例1における全閉状態を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1には、本発明の実施例1である光量調節装置としての虹彩絞り装置を分解して示している。また、図2および図3にはそれぞれ、本実施例の虹彩絞り装置にて用いられる第2の絞り羽根と第1の絞り羽根を示している。さらに、図4には、第1および第2の絞り羽根によって最小絞り開口Aが形成された状態を示している。
【0012】
本実施例の絞り装置は、光が通過する固定開口1aが形成されたベース部材1を有する。ベース部材1は、後に詳しく説明する複数の絞り羽根(複数の第1の絞り羽根5および1つの第2の絞り羽根4)の回動中心となる複数の軸部1dと、後述する駆動リング3の回転を案内するガイド1eとを有する。固定開口1aおよび複数の絞り羽根により形成される絞り開口を通過する光の進行方向(光の通過方向)を、以下、光軸方向という。
【0013】
羽根駆動部6はステッピングモータ等のアクチュエータにより構成され、ベース部材1に取り付けられている。羽根駆動部6の出力軸には、羽根駆動アーム2が取り付けられている。羽根駆動アーム2には、リング駆動ピン2bが設けられている。
【0014】
駆動リング3には、リング駆動ピン2bと係合する長孔部3bと、複数(8枚)の絞り羽根4,5を回動させる複数の羽根駆動ピン3cとが設けられている。複数の羽根駆動ピン3cのうち1つは1枚の第2の絞り羽根4の基端部に形成されたカム孔部4cに係合しており、残りの羽根駆動ピン3cは複数(7枚)の第1の絞り羽根5の基端部に形成されたカム孔部5cに係合している。第1および第2の絞り羽根5,4の基端部には、さらにベース部材1の軸部1dが挿入される孔部5d,4dが形成されている。
【0015】
第1および第2の絞り羽根5,4は、光軸方向において部分的に重なり合って固定開口1aに面する絞り開口を形成する。各絞り羽根において、回動中心側である基端部とは反対側の部分を先端部といい、基端部と先端部との間の部分を中間部という。
【0016】
羽根駆動部6によって羽根駆動アーム2が回動されて駆動リング3が回転すると、羽根駆動ピン3cがカム孔部5c,4c内を移動しながら第1および第2の絞り羽根5,4を軸部1dを中心として回動させる。これにより、絞り開口が、全ての絞り羽根4,5が固定開口1aに面した領域外に退避することで形成される開放絞り開口と、全ての絞り羽根4,5の重なり量が最も多くなって形成される最小絞り開口Aとの間で変化し、該絞り開口を通過する光の量が調節される。なお、以下の説明において、開放絞り開口が形成された状態を開放状態といい、最小絞り開口が形成された状態を最小絞り状態という。
【0017】
カバー部材としての仕切り板7は、ベース部材1の固定開口1aと同じ径の固定開口7aを有しており、ベース部材1との間に駆動リング3と絞り羽根4,5を挟んで、後述するケース11とともにベース部材1にビスにより固定される。
【0018】
また、仕切り板7に対して絞り羽根4,5とは反対側には、NDフィルタ8を保持したフィルタ保持板9が配置される。フィルタ保持板9は、不図示のフィルタ駆動部によって回動されるNDアーム10によって平行移動するように駆動され、絞り開口に面する領域に対して挿抜される。絞り開口に面する領域に挿入されたNDフィルタ8は、絞り開口を通過する光を減衰させる。これにより、絞り開口を、いわゆる小絞り回折が発生するほど絞り込まなくても、絞り開口を通過する光の量を調節することができる。
【0019】
ケース11は、仕切り板7との間にフィルタ保持板9を挟んで、仕切り板7とともにベース部材1にビスにより固定される。
【0020】
本実施例の絞り装置において、第2の絞り羽根4は、開放絞り開口(固定開口1a)より小さい絞り開口が形成される全ての絞り状態において、図2に示すように中間部がベース部材1の固定開口1aを横断するように延び、先端部4eが光軸方向にてベース部材1に重なる。仕切り板7は、第2の絞り羽根4の先端部4eを、ベース部材1との間で挟み込むようにして回動可能に支持する。一方、第1の絞り羽根5は、図3に示すように、少なくとも最小絞り状態では、固定開口1aを横断せず、その先端部5eは光軸方向にてベース部材1に重ならない。
【0021】
そして、本実施例では、図1および図4に示すように、第2の絞り羽根4を、複数の第1の絞り羽根5に対して光軸方向におけるベース部材1側にて重なるように配置している。
【0022】
このため、少なくとも複数の第1の絞り羽根5の大部分が重なり合って最小絞り開口を形成する最小絞り状態では、第2の絞り羽根4の中間部によって第1の絞り羽根5の光軸方向(ベース部材1側)への反りを制限するようにこれら第1の絞り羽根5を押さえる。この反りの制限効果は、最小絞り開口だけでなく、その近傍サイズの絞り開口が形成される状態においても得ることができる。したがって、図8に示すように、第1の絞り羽根5のベース部材1側への反りを抑制することができ、絞り装置の薄型化を実現することができる。
【0023】
第2の絞り羽根4は、ベース部材1に設けられた固定開口1aを横断する長さを有するので、その長さは第1の絞り羽根5よりも長い。このため、仮に図5に示すように8枚の全ての絞り羽根を第2の絞り羽根4とすると、これらの絞り羽根4の重なり合いが複雑になり、絞り羽根4の配置スペースとして絞り羽根8枚分のスペースが必要となる。この結果、絞り装置の光軸方向の厚みが増加する。
【0024】
これに対して、本実施例のように第1の絞り羽根5も用いた場合には、図4に示す最小絞り状態(およびその近傍サイズの絞り開口が形成される状態)において、第1の絞り羽根5の先端部5eを仕切り板7側に寄せることができる。このため、絞り羽根の配置スペースとして絞り羽根8枚分のスペースを設ける必要がなくなる。具体的には、開放状態(絞り羽根の固定開口1aに面する領域外への退避時)の絞り羽根の重なり数である4枚分の配置スペースで足りるため、絞り装置の厚みを薄くすることができる。
【0025】
さらに、全ての絞り羽根を第2の絞り羽根4とすると、図5に示すように、各絞り羽根4の先端部4eと他の絞り羽根4とのクリアランスが絞り羽根3枚分となり、これら絞り羽根4同士の干渉の可能性が高くなる。本実施例のように第1の絞り羽根5も用いた場合は、図4に示すように、第1の絞り羽根5の先端部5eと他の絞り羽根とのクリアランスが羽根4枚分となるため、干渉の可能性を低くすることができる。一方、全ての絞り羽根を第1の絞り羽根5とすると、図7に示した従来の絞り装置と同じ課題を持つことになる。
【0026】
なお、本実施例では、第2の絞り羽根4の先端部4eが、開放絞り開口(固定開口1a)より小さい絞り開口が形成される全ての絞り状態において、光軸方向にてベース部材1に重なる場合について説明したが、第2の絞り羽根4の先端部4eは、少なくとも最小絞り状態においてベース部材1に重なればよい。これにより、少なくとも最小絞り状態での第1の絞り羽根5の反りの制限効果を得ることができる。
【0027】
また、本実施例では、第2の絞り羽根4を、複数の第1の絞り羽根5に対してベース部材1側にて重なるように配置した場合について説明したが、第2の絞り羽根4を、複数の第1の絞り羽根5に対してベース部材1側とは反対側(仕切り板7側)にて重なるように配置してもよい。これにより、第1の絞り羽根5の仕切り板7側への反りや倒れを制限することができる。
【0028】
また、本実施例では、第2の絞り羽根4の先端部4eを、ベース部材1と仕切り板7とにより挟み込んで支持する場合について説明したが、ベース部材1に第2の絞り羽根4の先端部4eに係合するレールを設ける等、他の方法で第2の絞り羽根4の先端部4eを支持するようにしてもよい。
【0029】
さらに、図9および図10に示すように、本実施例で説明した絞り装置に、絞り開口を全閉するシャッタ機能を持たせて、絞り開口が最小である最小絞り状態を、絞り開口が第1の絞り羽根および第2の絞り羽根により閉じ切られる(完全に閉じられる)全閉状態としてもよい。
【実施例2】
【0030】
図6には、本発明の実施例2である光量調節装置としての虹彩絞り装置を分解して示している。実施例1では、第2の絞り羽根4を複数の第1の絞り羽根5に対してベース部材1側およびその反対側のうち一方にて重なるように配置した場合について説明したが、本実施例では、ベース部材1側およびその反対側(仕切り板7側)の両方にて重なるように配置している。
【0031】
これにより、第1の絞り羽根5のベース部材1側への反りを制限することができるだけでなく、第1の絞り羽根5の仕切り板7側への倒れを制限することができる。
【実施例3】
【0032】
図8には、実施例1または実施例2にて説明した絞り装置を搭載した光学機器の例としての撮像装置を示している。符号1,3,4,5,6はそれが付された部材が、実施例1にて同符号を付した部材であることを示している。
【0033】
被写体からの光は撮影光学系15に入射し、該撮影光学系15に含まれる絞り装置の絞り開口を通過して、CCDセンサやCMOSセンサ等により構成される撮像素子13上に被写体像を形成する。撮像素子13は、被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。撮像装置は、この撮像信号から映像信号を生成し、該映像信号を記録したり表示したりする。
【0034】
実施例1,2の絞り装置では、複数の第1の絞り羽根5のベース部材1側への反りを第2の絞り羽根4によって制限しているので、撮影光学系15において絞り装置に隣接するレンズ14を絞り羽根4,5に近接する位置に配置することができる。このため、図7に示すように絞り羽根105の反りが発生した従来の絞り装置を用いる場合に比べて、撮影光学系15や撮像装置を小型化することができる。
【0035】
なお、実施例1,2で説明した絞り装置は、本実施例で説明したような撮像装置に限らず、交換レンズ等の他の光学機器にも搭載することができる。
【0036】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
良好な絞り開口形状を有する小型の光量調節装置およびこれを搭載した小型の光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ベース部材
3 駆動リング
4 第2の絞り羽根
5 第1の絞り羽根
6 駆動部
7 仕切り板
8 NDフィルタ
9 ND保持板
11 ケース
13 撮像素子
14 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する固定開口が形成されたベース部材と、
前記光の進行方向である光軸方向において部分的に重なり合って前記固定開口に面する絞り開口を形成し、前記ベース部材に対して回動して前記絞り開口を変化させる複数の絞り羽根とを有し、
前記各絞り羽根のうち前記ベース部材に対する回動中心側とは反対側の部分を先端部とするとき、
前記複数の絞り羽根は、
少なくとも前記絞り開口が最小である最小絞り状態において、前記先端部が前記光軸方向にて前記ベース部材に重ならない複数の第1の絞り羽根と、
少なくとも前記最小絞り状態において、前記先端部が前記光軸方向にて前記ベース部材に重なる第2の絞り羽根とを含み、
前記第2の絞り羽根が、前記複数の第1の絞り羽根に対して、前記光軸方向のうち前記ベース部材側およびその反対側のうち少なくとも一方にて重なっていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記第2の絞り羽根の前記先端部は、前記固定開口より小さい前記絞り開口が形成される全ての絞り状態において、前記光軸方向にて前記ベース部材に重なることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記第2の絞り羽根は、少なくとも前記最小絞り状態において、前記複数の第1の絞り羽根の前記光軸方向への反りを制限するように該第1の絞り羽根を押さえることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記第2の絞り羽根の前記先端部を、前記ベース部材との間で挟み込むカバー部材を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記絞り開口が最小である最小絞り状態は、前記第1および第2の絞り羽根が前記開口を閉じ切る全閉状態であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光量調節装置を含む光学系を有することを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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