説明

光量調節装置及びカメラ

【課題】小型化かつ薄型化を達成した光量調節装置を提供する。
【解決手段】入射光を遮蔽する遮蔽部材3と、遮蔽部材を覆う押え部材6と、押え部材と共に遮蔽部材を回転可能に保持する地板1と、遮蔽部材を駆動する駆動手段2,4,5とを有し、地板と押え部材の間に、遮蔽部材及び駆動手段を配置した光量調節装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ等の光学機器に用いられるシャッタや絞り用の光量調節装置及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の、光量調節装置を必要とするビデオカメラ、スチルカメラなどの製品では、小型化、薄型化の必要性が強く、必然的に電磁駆動シャッタや絞り等の光量調節装置も小型、薄型化する要望がある。上記光量調節装置としては、例えば特開平5−216090号公報(特許文献1)に開示されているものがある。
【0003】
上記小型化は、光学部材を保持する鏡筒の内部に上記光量調節装置やオートフォーカス等の機構が光学部材との隙間に収容されるため、光軸を中心とする極力小さい円筒内にこれらの部材を収めたいという要望からである。また、上記薄型化は、シャッタ部材や絞り部材からCCDなど撮像素子までの距離や、オートフォーカス等の為の駆動源までの距離が近くなるため、上記光量調節装置の光軸方向の寸法を小さくしたいという要望からである。
【特許文献1】特開平5−216090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記提案の、光量調節装置の一例である電磁駆動シャッタは、2枚の羽根、羽根押え部材、シャッタ地板、巻線コイル、マグネットなどから構成されている。そして、上記2枚の羽根は、羽根押え板とシャッタ地板の間に挟まれており、巻線コイル、マグネットは、シャッタ地板とステータの間に挟まれている。つまり、2枚の羽根と、巻線コイル及びマグネットでは、それぞれ別の部材の組み合わせによって形成された空間に保持されている。したがって、特許文献1に開示の光量調節装置においては、該光量調節装置全体の厚さが厚くなり、薄型化が十分ではなかった。また、上記のように羽根は羽根押え板とシャッタ地板の間に挟まれているため、小型化の面においても十分とはいえなかった。
【0005】
(発明の目的)
本発明は、小型化かつ薄型化を達成することのできる光量調節装置及びカメラを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、入射光を遮蔽する遮蔽部材と、前記遮蔽部材を覆う押え部材と、前記押え部材と共に前記遮蔽部材を回転可能に保持する地板と、前記遮蔽部材を駆動する駆動手段とを有する光量調節装置において、前記地板と前記押え部材の間に、前記遮蔽部材及び前記駆動手段を配置した光量調節装置とするものである。
【0007】
同じく上記目的を達成するために、上記の光量調節装置を具備したカメラとするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化かつ薄型化を達成することができる光量調節装置またはカメラを提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態は、以下に記載の実施例1ないし実施例3に示す通りである。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施例1に係わる電磁駆動シャッタについて、図面を参照しながら説明する。図1は電磁駆動シャッタの分解斜視図、図2は電磁駆動シャッタの平面図、図3及び図4は図1及び図2に示す電磁駆動シャッタのそれぞれ異なる部分で切断して示す断面図である。また、図5は図1ないし図4の電磁駆動シャッタを具備したデジタルズームカメラ(撮影装置)の概略図である。
【0011】
まず、図5により、本実施例1に係わる電磁駆動シャッタを具備するデジタルカメラについて説明する。図5において、11はカメラ本体であり、この内部には撮影を可能とする後述するレンズ群12等が配置されている。12はレンズ鏡筒内に配置されたレンズ群である。13は同じくレンズ鏡筒内に配置された電磁駆動シャッタであり、レンズ11を通過した被写体光の遮断を行う。14はレンズ群12を通過した被写体光束が受光(露光)される撮像媒体であるところの撮像素子であり、CCDやC−MOSもしくはフィルムである。
【0012】
次に、上記電磁駆動シャッタ13の構成について、図1を用いて説明する。図1において、1はマグネット地板である。2はロータである永久磁石であり、その外周面には2極に着磁された着磁部(N,S)が形成されている。3は軸受けとなる回転軸3a,3bを有するシャッタ羽根であり、永久磁石2がインサート成形や2色成形、もしくは別々に成形した後圧入する等により一体化されて配置されている。ここで、上記回転軸3aと3bは、図4に示すように、マグネット地板1の羽根回転軸受け穴1aと後述の羽根押え板6の羽根回転軸受け穴6aに回転自在に嵌合保持されている。
【0013】
4は軟磁性材料からなる馬蹄形状のステータヨークであり、該ステータヨーク4は永久磁石2との外周曲面に対向配置される磁極部4a,4bにて磁気的な回路を構成している。5は電磁コイルであり、端子ピンを有するボビン5aに導線が巻き付けられて構成される。
【0014】
上記ステータヨーク4が1枚若しくは複数枚(2〜N)積層連結された後に、電磁コイル5がステータヨーク4に矢印A方向より根元部まで挿入される。その後電磁コイル5が羽根取り付け側(図1の上側)よりマグネット地板1側(図1の下側)へ挿入され、位置決めされる。また、この状態で、上記永久磁石2が一体化されたシャッタ羽根3の回転軸3bがマグネット地板1の羽根回転軸受け穴1aに嵌合され、回転軸3aが後述の羽根押え板6の羽根回転軸受け穴6aに回転自在に嵌合される。この際、上記のように永久磁石2の外周曲面の着磁部(N,S)が磁極部4a,4bと対向配置された状態となる。
【0015】
6は光束が通過する開口部6bを有する単板で形成された羽根押え板であり、マグネット地板1との間にシャッタ羽根3が走行する適宜な空隙が形成されるように配置される。この羽根押え板6は、ステータヨーク4と電磁コイル5のボビンのつば部5b,5cを組み込み時に押え込んで固定している。また、羽根押え板6には、シャッタ羽根3が回動を自在とする走行用の溝(以下、走行用レール)6eが形成されており、該走行用レール6eの作動域の両端部にストッパー部6c,6dが設けられている。上記シャッタ羽根3は、その先端にコの字状に形成された係合部3cが羽根押え板6の走行用レール6eを挟み込んだ状態で回動する。
【0016】
上記のように構成された、光量調節装置の一例である電磁駆動シャッタは、上記レンズ群12と共にレンズ鏡筒の円周内に配置される。
【0017】
ここで、上記構成の電磁駆動シャッタの作動を説明する。電磁コイル5への通電がオフの状態では、ステータヨーク4は非励磁状態であり、永久磁石2の外周面の磁極部と各着磁部4a,4bとの間で吸引する力(ディテントトルク)によって、シャッタ羽根3は図2の羽根停止位置の状態に保持される。つまり、この際、シャッタ羽根3は図2の位置で羽根押え板6に形成されたストッパー部6cに当接する方向に永久磁石2により磁気的に吸引されてその状態が保持されている。
【0018】
上記の状態から、ステータヨーク4の磁極部4aがS極に、磁極部4bがN極に、それぞれなるように電磁コイル5が通電制御されたとする。すると、ステータヨーク4と永久磁石2との間に吸引力と反発力が生じて、永久磁石2は図2の状態から反時計回りの方向に約40°〜50°の角度で回転する。これにより、シャッタ羽根3は開放状態から開口部6bを遮蔽する閉じ位置に回転する。
【0019】
ここで、永久磁石2とステータヨーク4の配置関係は、永久磁石2の全作動角度40°〜50°の中間点である約20°〜25°の作動位置でディテントトルクがゼロとなり、ディテントトルクの方向も左右に切り替わるように配置されている。そこで、電磁コイル5への通電が行われて永久磁石2及びシャッタ羽根3が反時計回りに回転した後、電磁コイル5への通電オフの状態が維持されたとする。このような場合でも、上記ディテントトルクでシャッタ羽根3は羽根押え板6の作動端位置に形成されたストッパー部6dに当接して、図2は反対の位置(開口部6bを遮蔽した位置)に安定停止することになる。
【0020】
なお、ステータヨーク4の磁極部4aがN極に、磁極部4bがS極に、それぞれなるように電磁コイル5に通電制御されると、ステータヨーク4と永久磁石2との間に反発力と吸引力が生じ、永久磁石2が時計回りの方向に約40°〜50°の角度で回転して、シャッタ羽根3は初期の位置(図2に示す開口部6bを開放した位置)に戻る。
【0021】
この様に、電磁コイル5への正、逆通電による磁気的な吸引、反発動作の二つの力の働きを受けて、回転軸3a,3bを中心にして、シャッタ羽根3は羽根押え板6に形成されたストッパー部6c,6dの範囲内で両端部まで回転する。この際、シャッタ羽根3の係合部3cが羽根押え板6の走行用レール6eに案内されて回転する。電磁コイル5への通電がオフされた後は、永久磁石2がディテントトルクにて羽根押え板6のストッパー部6cの端部に付勢されて、その状態が保持されて停止する。
【0022】
以上のように、シャッタ羽根の駆動制御は、電磁コイル5への正、逆電流の通電制御で行う。また、コンパクトカメラ等のシャッタ羽根の駆動制御では、電磁コイル5への電流オン、オフ通電時間及びタイミングでシャッタ羽根の開閉駆動制御が行われる。
以上の実施例1によれば、以下のような効果を有する。
【0023】
前述した従来の電磁駆動シャッタにおいては、2枚の各羽根と、巻線コイル及びマグネットでは、それぞれ別の部材の組み合わせによって形成された空間に保持されていた。このため、全体の厚さが厚くなり、薄型化が十分ではなく、また、各羽根は羽根押え板とシャッタ地板の間に挟まれているため、小型化の面においても十分ではなかった。
【0024】
これに対し、本実施例1の電磁駆動シャッタにおいては、シャッタ羽根3、永久磁石(マグネット)2、巻線コイル5の全てが、羽根押え板6とマグネット地板1の間に挟まれている。したがって、上記従来例におけるシャッタ地板の分だけその厚みを薄くすることができ、かつ、電磁駆動シャッタ全体の小型化にも寄与するものとなる。また、このように電磁駆動シャッタを小型化することができるため、消費電力の点でも有利なものとなる。
【0025】
さらに、本実施例1の電磁駆動シャッタでは、シャッタ羽根3の先端に係合部3cを形成し、該係合部3cに羽根押え板6(詳しくは、走行用レール6e)を挟み込むようにしているため、従来のように羽根押え板とシャッタ地板により羽根を両側から挟み込む必要がなくなり、その分だけ電磁駆動シャッタを薄型化、かつ小型化することができる。
【0026】
以上から明らかなように、カメラ、とりわけデジタルスチルカメラに用いられる電磁駆動シャッタについて、特に電磁駆動ユニットの小型化を図ることにより、レンズの径方向の小型化をすることができる。つまり、光軸方向への小型化、すなわち薄型化をも図ることができる。
【実施例2】
【0027】
図6は本発明の実施例2に係わる、光量調節装置の一例である電磁駆動シャッタの要部構成のみを示す図である。その他の構成は図1と同様であるものとする。
【0028】
上記実施例1との相違点について説明する。上記実施例1では、シャッタ羽根3に、該シャッタ羽根3の回転軸3a,3bを一体成形している。そして、この回転軸3aと3bをマグネット地板1に形成された羽根回転軸受け穴1aと羽根押え板6に形成された羽根回転軸受け穴6aにより回転自在に嵌合保持する構成としていた。
【0029】
これに対し、本発明の実施例2では、マグネット地板1の、羽根回転軸受け穴1aがあった位置に羽根回転軸1dを設ける。そして、この羽根回転軸1dにシャッタ羽根3に設けた軸受け穴3dを嵌合している。
【0030】
つまり、本実施例2では、シャッタ羽根3に一体成形された回転軸穴3dがマグネット地板1に設けられた羽根回転軸1dに回転自在に嵌合保持されており、回転軸穴3dの外径部に永久磁石2がインサート成形や2色成形、若しくは別々に成形した後に圧入される等して一体化された構成となっている。
【実施例3】
【0031】
図7は本発明の実施例3に係わる、光量調節装置の一例である電磁駆動シャッタの要部構成のみを示す図である。その他の構成は図1と同様であるものとする。
【0032】
図7では、永久磁石2を摺動性の良いプラスチックマグネットとし、該永久磁石2に羽根回転軸受け穴2aを設ける。そして、この羽根回転軸受け穴2aがマグネット地板1に設けられた羽根回転軸1eに回転自在に嵌合保持される構成にしている。永久磁石2の上部にはシャッタ羽根3が固定される。
【0033】
以上の実施例1〜3によれば、電磁駆動シャッタを非常に薄型に配置することができ、電磁駆動シャッタを薄型化、小型化することができる。さらに、組込み時も一方向からの部品の組込みとする構成をとることができ、非常に組み立て性の良い電磁駆動シャッタとすることができる。更に、このように小型化、薄型化した電磁駆動シャッタでも高速でシャッタ駆動することができるばかりでなく、消費電力を増やすことなく、小型と低消費電力化を両立させた電磁駆動シャッタとすることができるものである。
【0034】
上記実施例1〜3においては、光量調節装置の一例として、シャッタ羽根3を備えた電磁駆動シャッタについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、シャッタ羽根の代わりに絞り羽根を用いて、絞り羽根を開口に出し入れすることで口径の変更を行う方式の電磁駆動絞りであってもよい。さらには、シャッタ羽根と絞り羽根の両方を備えた光量調節装置であってもよい。更には、開口の通過光束量を調節するNDフィルタ等の透過光束調節羽根を備えた光量調節装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係わる電磁駆動シャッタを示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の電磁駆動シャッタを示す平面図である。
【図3】本発明の実施例1の電磁駆動シャッタを示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1の電磁駆動シャッタにおいて図3とは異なる部分で切断した状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1の電磁駆動シャッタを具備したカメラを示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施例2に係わる電磁駆動シャッタの要部構成のみを示す断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係わる電磁駆動シャッタの要部構成のみを示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 マグネット地板
1d 羽根回転軸
1e 羽根回転軸
2 永久磁石
3 シャッタ羽根
3a,3b 回転軸
3c 係合部
3d 回転軸穴
4 ステータヨーク
5 電磁コイル
6 羽根押え板
6a 羽根回転軸受け穴
6b 開放口径部
6c,6d ストッパー部
6e 走行用レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を遮蔽する遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を覆う押え部材と、
前記押え部材と共に前記遮蔽部材を回転可能に保持する地板と、
前記遮蔽部材を駆動する駆動手段と、
を有する光量調節装置において、
前記地板と前記押え部材の間に、前記遮蔽部材及び前記駆動手段を配置したことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記押え部材は、前記遮蔽部材の回転を案内する走行用レール部と、該走行用レール部の両端に設けられて前記遮蔽部材の回転規制を行うストッパー部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材の回転端には、前記走行用レール部に係合する係合部を有することを特徴とする請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、シャッタ羽根、絞り羽根もしくは透過光束調節羽根であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の光量調節装置を具備したことを特徴とするカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate