説明

光量調節装置及び光学機器

【課題】画質のばらつきが抑制された光量調節装置及び光学機器を提供する。
【解決手段】本実施例に係る光量調節装置1は、開口81を有する基板80と、基板80に直動可能に支持された直動羽根30、50と、基板80に揺動可能に支持された揺動羽根60とを備え、直動羽根30、50及び揺動羽根60は、開口81から退避して全開状態を形成し、直動羽根30、50は、開口81を覆って全閉状態を形成し、揺動羽根60は、開口81よりも径の小さい絞り開口61を有し、開口81と絞り開口61とが重なって小絞り状態を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量調節装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラ用の光量調節装置としては、基板に形成された開口を複数の羽根によって小絞り状態にするものが知られている。特許文献1に開示されている装置は、基板が矩形状に形成されており、羽根が基板の長手方向に沿って直動するものである。特許文献1に開示されている装置は、所謂ギロチン式光量調節装置といわれるものである。
【0003】
【特許文献1】特開2008−65252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、複数の羽根が協働して開口部の口径を絞るため、羽根の僅かな位置ずれなどにより、小絞り状態での口径にばらつきが発生する恐れがある。これにより露光量がばらつき、撮像画質にも影響を与える恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、画質のばらつきが抑制された光量調節装置及び光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口を有する基板と、前記基板に直動可能に支持された直動羽根と、前記基板に揺動可能に支持された揺動羽根とを備え、前記直動羽根及び前記揺動羽根は、前記開口から退避して全開状態を形成し、前記直動羽根は、前記開口を覆って全閉状態を形成し、前記揺動羽根は、前記開口よりも径の小さい絞り開口を有し、前記開口と前記絞り開口とが重なって小絞り状態を形成する、ことを特徴とする光量調節装置によって達成できる。揺動する羽根に絞り開口が形成されているため、小絞り状態での口径のばらつきを抑制できる。これにより、露光量を一定にでき撮像画質のばらつきを抑制できる。
【0007】
また、上記の光量調節装置を備えた光学機器も、画質のばらつきが抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画質のばらつきが抑制された光量調節装置及び光学機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例を説明する。
【0010】
図面を参照しながら本実施例の光量調節装置の構成を説明する。図1は、光量調節装置1の分解斜視図である。光量調節装置1は、羽根押さえ板10、摺動板20、直動羽根(第2直動羽根)30、摺動板40、直動羽根(第1直動羽根)50、揺動羽根60、薄板70、基板80、駆動レバー90、FPC100、電磁アクチュエータ110を含む。直動羽根30、直動羽根50、揺動羽根60は、それぞれ基板80に移動可能に支持されている。直動羽根30、直動羽根50、揺動羽根60の移動によって、開口11、71、81を通過する光量が調節される。
【0011】
羽根押さえ板10は、基板80との間で羽根等を保持する。羽根押さえ板10には、被写体光が通過する開口11が形成されている。また、羽根押さえ板10には、駆動レバー90の駆動ピン93aの逃げ孔13a、および、駆動ピン93bの逃げ孔13bが半円弧状に形成されている。開口11と、13a、13bは、羽根押さえ板10の長手方向に順に形成されている。尚、羽根押さえ板10の外周部には複数の爪部19が形成されている。同様に、基板80の外周部にも係合部89が形成されている。爪部19と係合部89との係合により羽根押さえ板10と基板80とが組み付けられる。
【0012】
直動羽根30には、円弧状の切欠31と、駆動レバー90の駆動ピン93bと係合するカム溝33とが形成されている。カム溝33は、中腹付近で折れ曲がった形状に形成されている。また、直動羽根30には、基板80に形成されたガイドピン88a、88bとそれぞれ係合する案内溝38a、38bが形成されている。案内溝38a、38bは、基板80の長手方向に直線状に形成されている。案内溝38a、38bと、ガイドピン88a、88bとの係合により、直動羽根30は直動可能に支持される。
【0013】
摺動板20は、羽根押さえ板10と直動羽根30との間に挟まれる。また、摺動板40は、直動羽根30と直動羽根50との間に挟まれる。摺動板20には、駆動ピン93a、93bとそれぞれ係合する嵌合孔23a、23bが形成されている。摺動板40にも同様に、駆動ピン93a、93bとそれぞれ係合する嵌合孔43a、43bが形成されている。摺動板20、40は、円板状に形成されている。摺動板20、40は、羽根押さえ板10、直動羽根30間、および直動羽根30、直動羽根50間で発生する各羽根の動作不良を防止する機能を有している。
【0014】
直動羽根50には、円弧状の切欠51と、駆動レバー90の駆動ピン93aと係合するカム溝53とが形成されている。カム溝53は、中腹付近で折れ曲がった形状に形成されている。また、直動羽根50には、ガイドピン88a、88bとそれぞれ係合する案内溝58a、58bが形成されている。案内溝58a、58bは直動羽根50の長手方向に直線状に形成されている。案内溝58a、58bと、ガイドピン88a、88bとの係合により、直動羽根50は直動可能に支持される。
【0015】
揺動羽根60は、開口11、71、81の径よりも更に小さい径を有した小絞り開口61が形成されている。揺動羽根60には、駆動ピン93aと係合するカム溝63が形成されている。揺動羽根60には、基板80に形成された支軸86aと摺動回転可能に係合する軸孔66が形成されている。これにより揺動羽根60は、支軸86aによって揺動可能に支持される。駆動レバー90が回動することにより、駆動ピン93aが旋回して、揺動羽根60が揺動する。基板80には、小絞り開口61と、開口11、71、81とが重なる位置を規定するための位置決めピン86bが形成されている。位置決めピン86bは突起状に形成されている。
【0016】
薄板70には、被写体光が通過する開口71と、駆動ピン93a、93bのそれぞれの旋回を許容する逃げ溝73a、73bとが形成されている。また、薄板70には、ガイドピン88a、88bとそれぞれ嵌合する嵌合孔78a、78bが形成されている。これにより薄板70は、基板80に対して固定される。
【0017】
基板80には、被写体光が通過する開口81と、駆動レバー90の回動を逃すための逃げ孔83とが形成されている。尚、詳しくは後述するが、基板80には、駆動レバー90の回動範囲を規制するための規制部84a、84bが形成されている。規制部84a、84bは、逃げ孔83の中心を介して互いに対向するように突出している。
【0018】
尚、開口11、71、81のうち、開口71が最も径が小さい。従って、後述する全開状態における露光量は、開口71の開口径に依存する。
【0019】
駆動レバー90は、アーム部91と、アーム部91の第1及び第2端部のそれぞれに形成された駆動ピン93a、93bとを含む。駆動ピン93aは、第1駆動ピンに相当する。駆動ピン93bは、第2駆動ピンに相当する。駆動レバー90は、アーム部91の中心で、電磁アクチュエータ110の回転軸112と連結されている。駆動レバー90は、電磁アクチュエータ110の動力によって回動する。
【0020】
FPC100は、外部機器と電磁アクチュエータ110とを電気的に接続するためのものである。FPC100は可撓性を有している。
【0021】
電磁アクチュエータ110は、ロータと、ステータと、コイルと、ベース板114とを含む。ロータは、周方向に異なる極性に着磁され、回転可能に支持されている。ステータは、ロータを略包囲する形状に形成されている。ロータには、コイルが巻回されている。コイルの通電状態によって、ステータが励磁され、ステータとロータとの間で発生する磁気的吸着力、反発力によって、ロータが回転する。電磁アクチュエータ110は、所謂ステップモータであるため、コイルへの通電状態に応じてロータの停止位置を制御できる。回転軸112は、ロータに圧入されており、ロータと一体に回転する。ロータ、ステータ、コイルは、ベース板114に一体に組みつけられている。
【0022】
次に、羽根の移動について説明する。図2乃至4は、羽根の移動状態を示しており、図2は、全開状態、図3は全閉状態、図4は小絞り状態を示している。尚、図2乃至図4には、羽根押さえ板羽根押さえ板10、摺動板20、40、薄板70については省略してある。但し、開口71については点線で示している。また、直動羽根30、50、揺動羽根60、基板80については線種を変えて示している。直動羽根30については細線で、直動羽根50については実線で、揺動羽根60については太線で示している。また、基板80については点線で示している。
【0023】
図2を参照して全開状態について説明する。切欠31、51は、開口71、81から退避した位置に位置付けられる。また、切欠31、51は、開口71、81を介して互いに対向するように位置付けられる。揺動羽根60についても開口71、81から退避した位置に位置付けられる。駆動レバー90は、光量調節装置1の幅方向と略平行となるように位置付けられる。全開状態では、駆動ピン93aは、カム溝53の一端に位置し、カム溝63の中腹位置に位置する。駆動ピン93bは、カム溝33の一端に位置する。このように、直動羽根30、50、揺動羽根60は、開口71、81から退避して全開状態を形成する。
【0024】
全開状態から全閉状態への動作について説明する。
次に、図2に示した状態から駆動レバー90が反時計方向に回動すると、駆動ピン93aは、開口71、81に近づくように移動し、駆動ピン93bは、開口71、81から離れるように移動する。駆動ピン93aは、カム溝53の一端から離れてカム溝53の中腹付近の折れ曲がった部位を過ぎた位置に移動する。これにより、直動羽根50は、開口71、81に臨む位置に移動する。具体的には、直動羽根50は図中の右方向に移動する。
【0025】
駆動ピン93bは、カム溝33の一端から離れてカム溝33の中腹付近の折れ曲がった部位を過ぎた位置に移動する。これにより、直動羽根30も、開口71、81に臨む位置に移動する。具体的には、直動羽根30は、図中の左方向に移動する。即ち、直動羽根30と直動羽根50とが互いに相反する方向に重なり量が大きくなるように直動する。図3に示すように、直動羽根30と直動羽根50とは協働で、開口71、81を覆って全閉状態とする。
【0026】
また、駆動ピン93aとカム溝63との係合により、揺動羽根60は、支軸86aを支点として時計方向に揺動する。これにより、揺動羽根60は、開口71、81から退避した位置から、臨む位置にへと移動する。尚、全閉状態となる電磁アクチュエータ110の回転位置は、コイルへの通電状態に応じて制御される。
【0027】
次に、全閉状態から小絞り状態への動作について説明する。
図3に示した状態から、駆動レバー90が更に反時計方向に移動すると、駆動ピン93aは、開口71、81から離れるように移動し、駆動ピン93bは、開口71、81に近づくように移動する。駆動ピン93aは、カム溝53の他端に移動する。これにより、直動羽根50は全閉状態から全閉状態への動作時の移動方向と相反する方向、即ち、図中の左方向に更に移動する。
【0028】
駆動ピン93bは、カム溝33の他端に移動する。これにより、直動羽根30は、直動羽根50と同様に、全閉状態から全閉状態への動作時の移動方向と相反する方向、即ち、図中の右方向に更に移動する。ここで、直動羽根30と直動羽根50とは更に互いに相反する方向に直動する。また、この際に、切欠31、51は、開口71、81の中心を介して互いに対向する。
【0029】
また、駆動ピン93aは、カム溝63の他端に移動し、揺動羽根60は、更に時計方向に揺動する。小絞り開口61は、開口71、81に同心状に重なる。また、小絞り開口61は、切欠31、51との間に位置する。これにより、揺動羽根60は小絞り状態を形成する。尚、小絞り状態から駆動レバー90が時計方向に回動すると、全閉状態、全開状態へと移行する。
【0030】
以上のように、揺動羽根60に形成された小絞り開口61によって小絞り状態を形成することにより、小絞り状態での露光量のばらつきを抑制できる。これにより、画質のばらつきも抑制できる。
【0031】
また、複数の羽根が揺動するタイプの光量調節装置の場合、基板に形成された開口付近に、開口から退避した羽根が位置付けられる。従って、このような光量調節装置は、開口を中心とした略円形状を免れない。全閉状態を形成する羽根を直動式にし、小絞り状態を形成する羽根を揺動式にすることにより、矩形状に形成された所謂ギロチン式の光量調節装置においても、小絞り状態での露光量のばらつきを抑制できる。
【0032】
また、小絞り開口が形成された羽根についても、他の羽根と同様に直動式にすることが考えられる。しかしながら、直動式の羽根は、直動羽根30、50に示すようにその移動方向を制限すべく、案内溝38a、38b、58a、58bのように長溝を形成し、小絞り開口61を開口71から退避した位置から臨む位置へ移動させる必要がある。このため、直動羽根30、50は、移動方向に大型化する。上記実施例のように、揺動羽根60を揺動式とすることにより、羽根の小型化を維持でき、装置全体の軽量化に貢献している。
【0033】
また、前述したように、基板80には、逃げ孔83の中心に向かって互いに対向するように突出した規制部84a、84bが形成されている。図4に示すように、小絞り状態においては、駆動レバー90は、規制部84bに当接することにより、所定の回動位置に位置付けられる。これにより、小絞り状態での駆動レバー90の位置が規制される。また、小絞り状態においては、揺動羽根60は、基板80の支軸86aに隣接した位置決めピン86bに当接する。揺動羽根60が位置決めピン86bに当接することにより、小絞り開口61と開口71、81とが重なる際の揺動羽根60の位置が規定される。これにより、小絞り状態での揺動羽根60の位置を安定して維持することができる。
【0034】
全開状態においては、図2に示すように、駆動レバー90は規制部84aに当接することにより、所定の回動位置に位置付けられる。これにより、全開状態での駆動レバー90の位置が規制される。
【0035】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0036】
上記実施例において、直動羽根30、50が協働で全閉状態を形成するが、このような構成に限定されず、一枚の直動式の羽根により全閉状態を形成してもよい。また、一枚の直動羽根と、小絞り開口が形成された揺動羽根とが協働して全閉状態を形成してもよい。
【0037】
光量調節装置1は、レンズ等を備えた光学機器に採用できる。光学機器に採用した場合にも、画質のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】光量調節装置の分解斜視図である。
【図2】全開状態での光量調節装置の正面図である。
【図3】全閉状態での光量調節装置の正面図である。
【図4】小絞り状態での光量調節装置の正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 光量調節装置
10 羽根押さえ板
30、50 直動羽根
33、53、63 カム溝
60 揺動羽根
61 小絞り開口
80 基板
83 逃げ孔
84a、84b 規制部
86b 位置決めピン(位置決め部)
90 駆動レバー
91 アーム部
93a、93b 駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する基板と、前記基板に直動可能に支持された直動羽根と、前記基板に揺動可能に支持された揺動羽根とを備え、
前記直動羽根及び前記揺動羽根は、前記開口から退避して全開状態を形成し、
前記直動羽根は、前記開口を覆って全閉状態を形成し、
前記揺動羽根は、前記開口よりも径の小さい絞り開口を有し、前記開口と前記絞り開口とが重なって小絞り状態を形成する、ことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記基板は、前記開口と前記絞り開口とが重なる際の前記揺動羽根の位置を規定する位置決め部を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
回動することにより前記直動羽根及び前記揺動羽根を駆動する駆動レバーを有しており、
前記基板は、前記駆動レバーの回動範囲を規制する規制部を有しており、
前記駆動レバーの回動が前記規制部に規制されている際に、前記揺動羽根は前記位置決め部により前記開口と前記絞り開口とが重なる位置に規定されている、ことを特徴とする請求項2に光量調節装置。
【請求項4】
前記直動羽根は、第1及び第2直動羽根を含み、
前記駆動レバーは、アーム部と、前記アーム部の第1及び第2の端部にそれぞれ設けられた第1及び第2駆動ピンとを含み、
前記第1駆動ピンは、前記第1直動羽根と前記揺動羽根とに係合し、
前記第2駆動ピンは、前記第2直動羽根と係合する、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の光量調節装置を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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