説明

光電スイッチ

【課題】簡単な構造かつ低コストで、高速処理が可能な光電スイッチを提供する。
【解決手段】投光波形生成手段6で生成された複数の異なるパルス幅を有し周期性のない所定投光波形で1回投光して、その受光信号を複数サンプリングした受光量を検出して受光量演算手段7で投光時と非投光時の受光量の差を求め、異常除去手段8で受光量の差に基づき異常光成分を除去するので、周期性のある異常光を正常光と区別して除去することが容易となり、簡単な構造かつ低コストで、高速処理が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物に投光し当該検出対象物からの光を受光した信号を処理する光電スイッチに関し、特にその処理速度の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検出対象物に投光し当該検出対象物からの光を受光した信号を処理する光電スイッチが知られており、この光電スイッチは、検出対象物に向けて通常単一のパルス状波形(図6の51)を投光部から投光し、受光部で受光した受光信号の受光レベル(受光量)を演算し、受光量が設定されたしきい値以上であれば、検出対象物が検出されたと判定する。
【0003】
図6は従来の光電スイッチの動作を示す図である。(A)は投光−受光の距離が近い場合、(B)は投光−受光の距離が遠い場合を示す。受光部では検出対象物からだけでなく周囲の明るさも受光するため、例えば微分回路を使用し、受光量の変化量で自身が投光した光の強さを判断する。図6(A)のように、検出対象物による受光量が多い場合には、しきい値を超えるのでオン判定がされる。なお、図6(B)のように、投光−受光の距離が遠いために検出対象物による受光量が少ない場合には、しきい値を超えないのでオフ判定がされる。
【0004】
図7(A)、(B)は、投光した光以外の照明光などの振幅性外乱光(インバータ制御の蛍光灯などが一定の周期で点滅する)が入った場合における、光電スイッチの動作を示す図である。図7(A)のように、受光量が多い場合でも外乱光のマイナスの波形が重なった場合には、しきい値を超えないのでオフ判定がされ、図7(B)のように、受光量が少ない場合でも外乱光のプラスの波形が重なった場合には、しきい値を超えるのでオン判定がされるように、外乱光による誤判定が生じ得る。この場合、検出対象物からの光と外乱光との区別がつかないので、複数回の受光量を平均化する方法や、同一判定が連続した時のみ有効とする方法により、受光量から外乱成分を除去することが知られている。同一判定が連続した時のみ有効とする方法の例として、図8を示す。この図では、例えば3回連続してしきい値を超えたときに、検出対象物が検出されたと判定される。
【0005】
このような従来技術として、投光部の投光動作を複数回続けて実行させるとともに、受光信号を加算した値を受光量に相当する検出値として処理する光電スイッチが一例として挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−124791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のように、複数回の受光量を平均化したり、同一判定が連続したときに有効とする方法や、複数回の投光動作に対して加算して得られる値を検出値として処理する方法は、最初の投光から判定結果が出るまで処理時間を要するため、高速化の障害になるという問題があった。
【0008】
本発明は、前記の問題点を解決して、簡単な構造かつ低コストで、高速処理が可能な光電スイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明にかかる光電スイッチは、検出対象物に向けて投光する投光部と、検出対象物からの光を受光して受光信号を得る受光部と、受光信号の受光量に基づき検出対象物を検出する制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記投光部により投光される、複数の異なるパルス幅からなる所定投光波形を生成する投光波形生成手段と、前記所定投光波形が1回投光され、その受光信号が複数サンプリングされて得られた投光時と非投光時の受光量の差を演算する受光量演算手段と、演算された各受光量の差の演算に基づき異常光成分を除去する異常除去手段とを備えている。ここで、異常光とは、投光した光以外の光が受光部に入光する光をいい、一定周期で点滅する蛍光灯などの照明光のような外乱光が含まれる。
【0010】
この構成によれば、投光波形生成手段で生成された複数の異なるパルス幅を有し周期性のない所定投光波形で1回投光して、その受光信号を複数サンプリングした受光量を検出して受光量演算手段で投光時と非投光時の受光量の差を求め、異常除去手段で受光量の差に基づき異常光成分を除去するので、周期性のある異常光を正常光と区別して除去することが容易となり、簡単な構造かつ低コストで、高速処理が可能となる。
【0011】
好ましくは、前記生成される所定投光波形が、投光パルス幅と非投光パルス幅の組合せを複数の種類有するものである。したがって、所定投光波形が1つのパルス幅と異なる別のパルス幅を有するので、単一周期性のある異常光を正常光と区別して除去することがより容易となる。
【0012】
好ましくは、前記異常除去手段は、前記演算された各受光量の差に基づき、差の大きい投光時の受光量および差の小さい投光時の受光量を異常光として除去するものであり、残った受光量の差が1個である場合には当該1個における投光時の受光量が、複数個の場合には当該各投光時の受光量を加算または平均化した値が、それぞれ検出値とされる。または、前記異常除去手段は、前記投光時の各受光量間における受光量の差、および前記非投光時の各受光量間における受光量の差が所定割合を超えたとき、その投光波形パターンでのすべての受光量を異常光が混入しているものとして除去する。したがって、簡単な構造かつ低コストで、より高速処理が可能となる。
【0013】
好ましくは、複数の光電スイッチを有する場合、各光電スイッチにおける前記所定投光波形を互いに相異ならせている。したがって、各光電スイッチ同士の相互干渉を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電スイッチを示すブロック図である。この光電スイッチは、検出対象物に向けて投光する投光部1と、検出対象物からの光を受光して受光信号を得る受光部2と、受光信号の受光量に基づき検出対象物を検出する制御を行う制御部5とを備えている。この例では、投光部1からの投光による検出対象物からの反射光量を受光部2が検出する反射型の光電スイッチを用いているが、投光部1と受光部2との間における検出対象物の光路の遮断(遮光)による光量変化を検出する透過型の光電スイッチを用いてもよい。
【0015】
投光部1は、例えばLEDまたはレーザーダイオードなどの投光素子を有し、受光部2は、例えばフォトダイオードなどの受光素子を有する。受光部2からの受光信号は増幅回路3で増幅される。
【0016】
前記制御部5は、サンプリング回路4、投光波形(パルス)生成手段6、受光量演算手段7、異常除去手段8、および判定手段10を備えている。サンプリング回路4は、受光信号を所定のサンプリングタイミングでサンプリングして複数タイミングにおける各受光量を得る。この所定のサンプリングタイミングは投光波形(パルス)生成手段6により与えられる。投光波形(パルス)生成手段6は、複数の異なるパルス幅からなる所定投光波形を生成する。この生成された所定投光波形は、投光部1に与えられて検出対象物に向けて投光される。
【0017】
この例では、所定投光波形は、図2のように、所定の投光パルス幅をもつパルス31およびその2倍の投光パルス幅をもつパルス32を有する。この場合、所定投光波形の投光時および非投光時と、得られた受光量の各タイミングとが対応し、投光時に受光量R2、R4、R5が対応し、非投光時に受光量R1、R3、R6、R7が対応する。受光量R1〜R7は等間隔のタイミングで得られたものである。
【0018】
図3は、図2において一定周期の外乱光が混入した例を示す。この場合、外乱光がない図2では、受光量R4、R5およびR6、R7はそれぞれ一定の値で差がないが、図3では受光量の差(R5−R4)、(R7−R6)が、受光量の差(R2―R1)よりも大きく、外乱光が混入していると判断できる。これは、投光部1からの所定投光波形が所定の投光パルス幅をもつパルス31のほかに、2倍の投光パルス幅をもつパルス32があるため、投光波形に周期性がなく、このパルス32の幅の大きさ分だけ受光量R5が大きくなって、周期性のある外乱光の混入を検出できることによる。
【0019】
図1の受光量演算手段7は、前記所定投光波形が1回投光され、その受光信号が複数サンプリングされて前記投光時と非投光時の受光量の差を演算する。例えば、図3のように、所定投光波形の投光時に対応するタイミングでサンプリングして得られた受光量R2、R4、R5と、非投光時に対応するタイミングでサンプリングして得られた受光量R1、R3、R6との差、(R2−R1)、(R4−R3)、(R5−R6)が演算される。
【0020】
図1の異常除去手段8は、各受光量の差の演算に基づき異常光を除去する。異常光は、インバータ制御により一定周期で点滅する蛍光灯などの照明光のような外乱光である。例えば、複数の受光量の差に基づき、差の大きい投光時の受光量および差の小さい投光時の受光量を異常光として除去する。残った受光量の差が1個である場合には当該1個における投光時の受光量が、複数個の場合には当該各投光時の受光量を加算または平均化した値が、それぞれ検出対象物の検出値とされる。判定手段10は、しきい値保存用メモリ9に記憶されたしきい値と検出された受光量を比較して、しきい値以上である場合には、検出対象物が検出されたと判定して判定出力をオンする。
【0021】
前記所定投光波形は、投光パルス幅と非投光パルス幅の組合せを複数の種類有するものである。例えば、図2の投光パルス幅比が1:2のほか、図4(A)に示すように1:3でも、図4(B)のように2:1でもよく、図4(C)のように、4つの投光パルスによる1:2:1:2などでもよい。この例では、1つの投光パルス幅に対して他の投光パルス幅を整数倍にしているが、整数倍でなくてもよい。
【0022】
以下、上記構成を有する本光電スイッチの動作の一例について図5のフローチャートを用いて説明する。この例では、図3のように、受光量の差(R2−R1)、(R4−R3)、(R5−R6)が演算され、投光時の受光量データはR2、R4、R5の3つである。
【0023】
まず、投光が開始され(ステップS1)、所定の投光時間が経過した否かが確認される(ステップS2)。投光時間が経過していなければ、ステップS2に戻る。投光時間が経過していれば、投光を終了する(ステップS3)。
【0024】
つぎに、受光量が読み出され(ステップS4)、所定の消灯(非投光)時間が経過したか否かが確認される(ステップS5)。消灯時間が経過していなければ、ステップS5に戻る。消灯時間が経過していれば、全投光パターンを終了する(ステップS6)。そして、投光時と消灯(非投光)時の受光量の差が演算され(ステップS7)、受光量差のばらつきが規定内か否かが確認される(ステップS8)。規定内でなければ、ステップS1に戻る。規定内であれば、受光量差から投光時の最大値と最小値が削除され(ステップS9)、残った受光量データの平均値が計算される(ステップS10)。
【0025】
この例では、投光時の受光量データが3つであるので、データを大きい順に並べ替え(d1>d2>d3)、最大値d1と最小値d3を除去し、残った受光量データのd2が使用される。
【0026】
なお、投光時の受光量データが4つの場合、データを大きい順に並べ替え(d1>d2>d3>d4)、d1とd4を除去し、d2とd3の平均値を使用する。受光量データの数が多い場合、複数の大きいデータと、複数の小さいデータとを除去してもよい。例えば受光量データが6つの場合、データを大きい順に並べ替え(d1>d2>d3>d4>d5>d6)、大きい2つのデータd1、d2と、小さい2つのデータd5とd6とを除去し、d3とd4の平均値を使用する。
【0027】
つぎに、ステップS10で計算された受光量データの平均値がしきい値以上であるか否かが確認され(ステップS11)、しきい値以上であれば、検出対象物が検出されたものとして、オン判定が出力され(ステップS12)、しきい値未満であれば、検出対象物が検出されないものとして、オフ判定が出力される(ステップS13)。
【0028】
こうして、本発明は、投光波形生成手段6で生成された複数の異なるパルス幅を有し周期性のない所定投光波形で1回投光して、その受光信号を複数サンプリングした受光量を検出して受光量演算手段7で投光時と非投光時の受光量の差を求め、異常除去手段8で受光量の差に基づき異常光成分を除去するので、周期性のある異常光を正常光と区別して除去することが容易となり、簡単な構造かつ低コストで、高速処理が可能となる。
【0029】
また、異常除去手段8は、投光時の各受光量間における受光量の差、および非投光時の各受光量間における受光量の差が所定割合を超えたとき、その投光波形パターンでのすべての受光量を異常光が混入しているものとして除去することもできる。例えば、図2では、受光量の差(R5−R4)、(R7−R6)は通常0であるが、実際には外乱光成分や受光部2のノイズ成分が現れる。したがって、この値を監視し、異常な値、例えば受光量の差(R2−R1)の25%の値以上になれば、異常除去手段8は、受光量R5、R7を異常光として除去する。
【0030】
なお、この実施形態では、異常除去手段8を設けているが、これを省略して、受光量演算手段7により、受光量差を加算した(R2−R1)+(R4−R3)+(R5−R6)を検出した受光量として、判定手段10でしきい値と比較するようにしても、複数の点を加算した値のため、従来のように単一のパルス状波形の連続投光により加算した値を検出値とするよりも安定した結果が得られる。
【0031】
なお、複数の光電スイッチを有する場合、各光電スイッチにおける各所定投光波形を互いに相異ならせてもよい。この場合、各光電スイッチ同士の相互干渉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る光電スイッチを示すブロック図である。
【図2】図1の光電スイッチにおける投光および受光の動作を示すタイムチャートである。
【図3】図1の光電スイッチにおける投光および受光の動作を示すタイムチャートである。
【図4】(A)〜(C)は投光波形の変形例を示す図である。
【図5】図1の光電スイッチの動作を示すフローチャートである。
【図6】(A)、(B)は従来の光電スイッチの動作を示すタイムチャートである。
【図7】(A)、(B)は従来の光電スイッチの動作を示すタイムチャートである。
【図8】従来の光電スイッチの動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1:投光部
2:受光部
5:制御部
6:投光波形(パルス)生成手段
7:受光量演算手段
8:異常除去手段
10:判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物に向けて投光する投光部と、検出対象物からの光を受光して受光信号を得る受光部と、受光信号の受光量に基づき検出対象物を検出する制御を行う制御部とを備えた光電スイッチであって、
前記制御部は、
前記投光部により投光される、複数の異なるパルス幅からなる所定投光波形を生成する投光波形生成手段と、
前記所定投光波形が1回投光され、その受光信号を複数サンプリングして得られた投光時と非投光時の受光量の差を演算する受光量演算手段と、
演算された各受光量の差に基づき異常光成分を除去する異常除去手段と、を備えた光電スイッチ。
【請求項2】
請求項1において、前記生成される所定投光波形が、投光パルス幅と非投光パルス幅の組合せを複数の種類有するものである、光電スイッチ。
【請求項3】
請求項1において、前記異常除去手段は、前記演算された各受光量の差に基づき、差の大きい投光時の受光量および差の小さい投光時の受光量を異常光として除去するものであり、残った受光量の差が1個である場合には当該1個における投光時の受光量が、複数個の場合には当該各投光時の受光量を加算または平均化した値が、それぞれ検出値とされる、光電スイッチ。
【請求項4】
請求項1において、前記異常除去手段は、前記投光時の各受光量間における受光量の差、および前記非投光時の各受光量間における受光量の差が所定割合を超えたとき、その投光波形パターンでのすべての受光量を異常光が混入しているものとして除去する、光電スイッチ。
【請求項5】
請求項2において、複数の光電スイッチを有する場合、各光電スイッチにおける前記所定投光波形を互いに相異ならせている、光電スイッチ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−41462(P2010−41462A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202753(P2008−202753)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(392023751)ジック オプテックス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】