説明

光電センサ

【課題】各種の製品を生産する生産ラインにて搬送される被検出物を替えた場合や搬送速度を変更した場合であっても、誤判定を抑制し得る設定を自動的に行うことができる光電センサを提供する。
【解決手段】通過時間検出手段としての検出センサ24で検出されたワークW(被検出物)の通過時間内に評価回数分だけパルス光を投光可能な算出周期、つまり、ワークWの検出が可能な周期が算出周期として制御手段としての制御部31によって求められる。そして、設定手段としての設定部32により投光素子11の投光周期が制御部31で求めた算出周期に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の製品を生産する生産ラインにて搬送されるワーク(被検出物)を検出するために例えば反射型の光電センサが用いられている。このような光電センサでは、ワークがセンサの検出領域を通過すると、投光素子から所定の投光周期で投光されたパルス光がワークにて反射される。そして、その反射されたパルス光を受光した受光素子により光電変換された信号に基づく受光信号レベルが例えばハイレベルとなり、これによりワークが検出される。このような光電センサでは、ノイズ等の影響によりハイレベルの受光信号が出力されてワークが検出領域を通過していないにも関わらず検出状態と判定されてしまう誤判定を防ぐために、受光信号レベルが連続してハイレベルとなる連続回数が所定の評価回数に達したときにはじめて検出状態と判定されるようになっている。
【0003】
しかしながら、生産ラインに流すワークが替わったときにも同じ光電センサが用いられる。従って、ワークが検出領域を通過する間に評価回数未満のパルス光しか投光されないがために、当然、ワークが検出領域を通過してもハイレベルの受光信号の連続回数が所定の評価回数に達することはなく、その結果、ワークの検出ができないといった不具合が生じる虞があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の光電センサでは、ワークが検出領域を移動する間に投光可能なパルス光の数を自動的に検出し、その数を評価回数として設定するようになっている。これにより、移動速度が速いワークに対しても検出領域を通過する間に評価回数以上のパルス光を投光することができるため、様々な生産ラインに応じたワークの検出が可能となる。
【特許文献1】特開平10−154449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークを非常に高速で流す生産ラインに上記特許文献1のような光電センサを用いたとき、ワークが検出領域を移動する間に顕著に少ない数(例えば1回)のパルス光しか投光できず、その結果、評価回数が少なく設定されてしまうことがある。そのように設定されると、前述のノイズ等の影響による誤判定を招く虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、各種の製品を生産する生産ラインにて搬送される被検出物を替えた場合や搬送速度を変更した場合であっても、誤判定を抑制し得る設定を自動的に行うことができる光電センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、検出領域を通過する被検出物に所定の投光周期でパルス光を投光する投光手段と、前記投光手段から投光されたパルス光を受光し、その受光量に応じたレベルの受光信号を出力する受光手段と、前記受光手段から出力された受光信号レベルと閾値とを前記投光周期に基づくタイミングで比較し、同じ比較結果が所定の評価回数連続するときに前記被検出物の検出状態を示す検出結果を出力する検出手段とを備えた光電センサであって、前記被検出物が前記検出領域を通過する通過時間を検出する通過時間検出手段と、前記通過時間内に前記評価回数分以上の前記パルス光を投光可能な算出周期を求める制御手段と、前記算出周期を前記投光周期に設定する設定手段とを備えたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、通過時間検出手段で検出された被検出物の通過時間内に評価回数分以上のパルス光を投光可能な算出周期、つまり、被検出物の検出が可能な算出周期が制御手段によって求められ、設定手段により算出周期が投光周期に設定される。このため、評価回数を使用環境等に応じた所定値以上に保った状態で、評価回数以上のパルス光を通過時間内に投光することができる。従って、各種の製品を生産する生産ラインにて搬送される被検出物を替えた場合や搬送速度を変更した場合であっても、誤判定を抑制し得る設定を自動的に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光電センサにおいて、前記制御手段は、前記評価回数分だけ前記パルス光を投光可能な算出周期の中で、最長の周期のものを求めることをその要旨とする。
【0010】
この発明では、被検出物を検出可能な算出周期の中での比較的長い周期を投光周期に設定される。ここで、投光周期が短い場合と長い場合とでは投光手段の劣化は当然短い場合の方が顕著になるが、これを防ぐために一般には、投光周期が短くすればするほど、投光手段に流す投光させるための投光電流を少なくされ、これにより検出感度(検出距離)が悪化する。即ち、この発明では、被検出物の検出が可能な算出周期の中で、耐ノイズ性能が最も向上するような最適な周期を投光周期に設定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光電センサにおいて、前記通過時間検出手段は、前記被検出物を検出可能となるように外部に設けられたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、通過時間検出手段は検出領域を通過する被検出物を検出可能となるように外部に設けられるため、被検出物の通過時間を正確に検出することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光電センサにおいて、前記投光周期を設定する設定モードにおいて、前記通過時間検出手段は、前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記通過時間を検出し、その通過時間に対応する算出周期が投光周期に設定されることをその要旨とする。
【0013】
この発明では、投光周期を設定する設定モードにおいて、通過時間検出手段は受光手段から出力される受光信号に基づいて通過時間を検出、つまり、自身のセンサで被検出物の通過時間を検出するため、例えば通過時間検出手段として別の検出センサを設ける必要がなくなり、光電センサの部品点数を抑えることが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光電センサにおいて、前記通過時間検出手段は、外部から入力される前記通過時間に応じたデータに基づいて前記通過時間を検出することをその要旨とする。
【0015】
この発明では、外部から入力される通過時間に応じたデータ(被検出物の移動速度や移動方向長さ)基づいて通過時間を容易に検出することができる。また、例えば通過時間検出手段として別の検出センサを設ける必要がなくなり、光電センサの部品点数を抑えることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電センサにおいて、前記算出周期が前記通過時間と対応づけて記憶された記憶手段を備え、前記制御手段は、前記算出周期を前記記憶手段から求めることをその要旨とする。
【0017】
この発明では、算出周期が通過時間と対応づけて記憶された記憶手段から求められるため、例えば演算処理等によって算出周期を求めるものに比べて容易に求めることができる。
【発明の効果】
【0018】
従って、上記記載の発明によれば、各種の製品を生産する生産ラインにて搬送される被検出物を替えた場合や搬送速度を変更した場合であっても、誤判定を抑制し得る設定を自動的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施の形態の光電センサ1は、一定速度で順次搬送されるワークWの搬送経路(図1の矢印方向に沿う経路)の脇に配置されている。この光電センサ1は該搬送経路を横切るようにパルス光を投光する投光素子11と、投光素子11から投光されワークWにて反射された光を受光する受光素子12とを備え、該受光素子12での受光量に基づいて搬送されるワークWの有無を検出するものである。尚、光電センサ1は、ワークWの少なくとも一部が光電センサ1の検出領域を通過するように設けられている。
【0020】
光電センサ1は、上記投光素子11を有する投光回路21と、上記受光素子12を有する受光回路22と、これら投光回路21及び受光回路22と電気的に接続されてワークWの検出動作を行う制御回路23とを備えている。本実施の形態では、投光回路21が投光手段を、受光回路22が受光手段をそれぞれ構成している。また、光電センサ1は、該センサ1とは別体として構成されるとともにワークWの脇に配置された通過時間検出手段としての検出センサ24を備えている。検出センサ24は、ワークWが光電センサ1の検出領域を通過する時間(以下、通過時間)を検出可能な例えば光電センサ等からなるとともに、光電センサ1本体とは接続ケーブル(図示略)にて接続されてその内部の制御回路23と電気的に接続されている。
【0021】
制御回路23は、検出センサ24と電気的に接続された制御手段としての制御部31と、該制御部31及び上記投光回路21と電気的に接続された設定手段としての設定部32とを有している。また、制御回路23は、上記受光回路22と電気的に接続された比較部33と、該比較部33と電気的に接続されるとともに該比較部33からの出力に基づいてワークWの検出を行う検出手段としてのカウント部34とを有している。
【0022】
設定部32は、制御部31からの出力に基づいて投光素子11をパルス点灯させるための投光パルス信号(図2及び図3参照)を投光回路21に出力し、投光回路21はその信号を受けて投光素子11を所定の投光周期でパルス点灯させる。投光素子11からの出射光が、検出可能領域に進入したワークWで反射されて受光素子12にて受光されると、受光素子12はその入射光を光電変換して受光回路22に出力し、受光回路22はその電気信号を増幅して比較部33に出力する。即ち、比較部33には受光素子12での受光量に応じたレベルの受光信号(アナログ信号)が入力される。尚、受光回路22は投光パルス信号に基づき投光素子11のパルス点灯と同じ周期で受光信号を出力する。
【0023】
比較部33は、受光回路22からの受光信号のレベルと予め設定された閾値とを投光周期に基づくタイミングで比較し、ハイレベル若しくはローレベルの受光パルス信号をカウント部34に比較結果として出力する。本実施の形態では、比較部33は受光信号のレベルが閾値以上のときにハイレベルの受光パルス信号を出力し、閾値以下のときにローレベルの受光パルス信号を出力する(図2及び図3参照)。
【0024】
カウント部34は、比較部33から出力されるハイレベル及びローレベルの受光パルス信号の連続回数をそれぞれカウントする。そして、カウント部34は、ハイレベルの受光パルス信号の連続回数が所定の評価回数(本実施の形態では4回)に達したときにハイレベルの出力信号(検出状態を示す検出結果)を出力する。また、ローレベルの受光パルス信号の連続回数が前記評価回数に達したときにローレベルの出力信号(非検出状態を示す検出結果)を出力する。カウント部34の出力信号は、図示しない出力回路に出力される。尚、ハイレベル及びローレベルのカウント値は、評価回数にそれぞれ達したとき、又は受光パルス信号のレベルが反転したときにクリアされる。また、上記所定の評価回数はノイズ等の影響による誤検出を防ぐために使用環境を考慮した値に設定されている。
【0025】
上記の光電センサ1では、投光素子11の投光周期は、検出センサ24にて検出されたワークWの通過時間に応じて制御部31が求める算出周期に設定される。検出センサ24は、搬送経路上で移動するワークWの移動速度及びワークWにおける移動方向の長さを測定し、その各測定結果と予め入力された光電センサ1の検出領域に関するデータ(ワークWの搬送経路に沿う方向における光電センサ1の検出領域幅等のデータ)とに基づいてワークWの通過時間を検出する。そして、検出センサ24はワークWの通過時間に応じた信号を制御部31に出力する。
【0026】
制御部31は、ワークWの通過時間と算出周期とが対応づけて記憶された記憶手段としてのメモリ31aを有しており、そのメモリ31aには、算出周期として通過時間内に前記比較部33から出力されるハイレベルの受光パルス信号が評価回数だけ連続することが可能な周期(即ち、評価回数分だけパルス光を投光可能な算出周期)が記憶されている。つまり、算出周期はワークWの検出が可能な周期である。また、本実施の形態では、評価回数分だけパルス光を投光可能な算出周期の中で、最長の周期のものが記憶されている。制御部31は検出センサ24からの出力を受けると、検出センサ24が検出した通過時間に対応する算出周期をメモリ31aから求め、その算出周期に応じた信号を設定部32に出力する。そして、設定部32は制御部31で求めた算出周期を投光素子11の投光周期に設定する。これにより、評価回数分だけパルス光を投光可能な算出周期の中で、最長のものが投光周期に設定される。尚、図2における投光パルス信号は設定部32の設定により投光周期が最適化されたものである。
【0027】
このような光電センサ1では、ワークWを検出するための評価回数を一定に保った状態で、投光素子11の投光周期をワークWの検出が可能な算出周期に設定することができる。このため、例えばノイズ等の影響による誤検出を抑制しつつも、搬送するワークWが替わりその通過時間が変わった場合等に応じて最適な投光周期を設定することができる。
【0028】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)通過時間検出手段としての検出センサ24で検出されたワークW(被検出物)の通過時間内に評価回数分だけパルス光を投光可能な算出周期、つまり、ワークWの検出が可能な周期が算出周期として制御手段としての制御部31によって求められる。そして、設定手段としての設定部32により投光素子11の投光周期が制御部31で求めた算出周期に設定される。このため、評価回数を使用環境等に応じた所定値以上に保った状態で、通過時間内に評価回数以上のパルス光を投光することができる。従って、様々な生産ラインに応じたワークWの検出を可能にしつつも誤判定を抑制し得る設定を自動的に行うことができる。
【0029】
(2)ワークWの通過時間内に前記比較部33から出力されるハイレベルの受光パルス信号が評価回数だけ連続する算出周期が制御部31にて求められる。このため、ワークWを検出可能な算出周期の中で、最長の周期のものが投光周期に設定される。即ち、耐ノイズ性能が向上する最適な周期に投光周期を設定することができる。
【0030】
(3)検出センサ24は検出領域を通過するワークWを検出可能となるように外部に設けられるため、ワークWの通過時間を正確に検出することが可能となる。
(4)算出周期が通過時間と対応づけて記憶された記憶手段としてのメモリ31aから求められるため、例えば、演算処理等によって算出周期を求めるものに比べて容易に求めることができる。
【0031】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、制御部31は算出周期が通過時間に対応づけて記憶されたメモリ31aを有し、そのメモリ31aから周期を求めたが、特にこれに限定されるものではなく、例えばメモリ31aを設けずにワークWの通過時間から演算処理することで、ワークWの通過時間内に前記比較部33から出力されるハイレベルの受光パルス信号が評価回数連続する周期を求めてもよい。
【0032】
・上記実施の形態では、ワークWの通過時間を検出するための検出センサ24を設けたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば検出センサ24を設けずに投光周期を設定する設定モードを設け、そのモードにおいて受光素子12から出力される受光信号に基づいてワークWの通過時間を検出してもよい。また、ユーザーから入力されるワークWの移動速度及び移動方向長さ等の入力データから通過時間を算出する算出手段を設けてもよい。これらの構成によれば、光電センサ1の部品点数を抑えることが可能となる。また、外部から入力される通過時間に応じたデータに基づいて容易に通過時間を検出することができる。
【0033】
・上記実施の形態では、メモリ31aは制御部31に備えられたが、特にこれに限定されるものではない。
・上記実施の形態では、本発明を反射型の光電センサ1に具体化したが、これ以外に例えば、透過型の光電センサでもよく、また、ファイバセンサやレーザーセンサ等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態における光電センサを示す概略構成図である。
【図2】投光周期の設定前の光電センサの検出動作を示すタイミングチャート。
【図3】投光周期の設定後の光電センサの検出動作を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0035】
1…光電センサ、11…投光素子、12…受光素子、21…投光手段を構成する投光回路、22…受光手段を構成する受光回路、31…制御手段としての制御部、31a…記憶手段としてのメモリ、32…設定手段としての設定部、34…検出手段としてのカウント部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域を通過する被検出物に所定の投光周期でパルス光を投光する投光手段と、
前記投光手段から投光されたパルス光を受光し、その受光量に応じたレベルの受光信号を出力する受光手段と、
前記受光手段から出力された受光信号レベルと閾値とを前記投光周期に基づくタイミングで比較し、同じ比較結果が所定の評価回数連続するときに前記被検出物の検出状態を示す検出結果を出力する検出手段と
を備えた光電センサであって、
前記被検出物が前記検出領域を通過する通過時間を検出する通過時間検出手段と、
前記通過時間内に前記評価回数分以上の前記パルス光を投光可能な算出周期を求める制御手段と、
前記算出周期を前記投光周期に設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光電センサにおいて、
前記制御手段は、前記評価回数分だけ前記パルス光を投光可能な算出周期の中で、最長の周期のものを求めることを特徴とする光電センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電センサにおいて、
前記通過時間検出手段は、前記被検出物を検出可能となるように外部に設けられたことを特徴とする光電センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光電センサにおいて、
前記投光周期を設定する設定モードにおいて、前記通過時間検出手段は、前記受光手段から出力される受光信号に基づいて前記通過時間を検出し、その通過時間に対応する算出周期が投光周期に設定されることを特徴とする光電センサ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光電センサにおいて、
前記通過時間検出手段は、外部から入力される前記通過時間に応じたデータに基づいて前記通過時間を検出することを特徴とする光電センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電センサにおいて、
前記算出周期が前記通過時間と対応づけて記憶された記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記算出周期を前記記憶手段から求めることを特徴とする光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−298655(P2008−298655A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146340(P2007−146340)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】