説明

光電センサ

【課題】ユーザが任意の動作モードを容易に呼び出して使用することが可能な利便性に優れた光電センサを提供する。
【解決手段】押しボタンスイッチからなる操作部3に加え、更に通電状態を自立して保持可能な切り替え式スイッチからなる動作モード呼び出し操作部として、任意にON/OFFの変更操作が可能であるとともに、当該操作により変更された状態を保持するスライドスイッチ4のような動作モード呼び出し操作部を設け、当該切り替えスイッチを切り替えることによって実行される動作モードをユーザが選択可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出値の弁別に用いられる判定閾値等の、機器本体に動作に係る設定値を容易に、しかも円滑に変更することのできる光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光素子と当該発光素子から発せられた光を受光する受光素子を備え、検出対象物の有無によって変化する検出値である受光素子の受光量を予め設定された判定閾値と比較することで物体の有無を検出するように構成された光電センサが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図5にこの種の光電センサの例を示す。このような光電センサは同種の装置を複数台並べて使用されることも多々あることから、専ら前記筐体1の上面部にその表示部2や操作部3を設けている。具体的には、図6に拡大して示すように筐体1の上面部の限られた狭い領域に、表示部2として4桁の数字表示部を設けるとともに、操作部3を構成する4個の操作ボタン31,32,33,34を指先にて個別に操作可能な間隔で配置している。これらの操作ボタンは一般的な押しボタンスイッチであって、操作者が指で押した状態か押していない状態かを電気的なオン・オフ信号として発生させるためのものである。
【0004】
ところで上述した光電センサは近年益々小型化が進められており、その本体部は例えば幅50mm、高さ20mm、奥行き10mm程度の箱形の筐体1に収容して構成される。しかしながらこのように筐体1が小型になるにつれ、筐体1上に操作部3(操作ボタン)を設けるスペースが取りづらくなり、光電センサの使用にあたってユーザに小さな操作ボタンを操作することを強制するか、操作ボタンの数自体を減らし、各操作ボタンを複数回所定の順番で操作することで初めて所定の機能が呼び出されるような操作の階層構造化を取らざるを得ず、利便性が喪失されてしまう。
【0005】
これらの課題を解決するべく、光電センサに予め所定の分解能、検出対象物までの距離、応差など検出に必要な設定値の組み合わせを複数記憶させると共に、光電センサにスライドスイッチを取り付け、スライドスイッチのON/OFF状態ごとに上記組み合わせを変更できるよう構成することでユーザが操作ボタンを操作する頻度を減少させ、利便性を向上させた光電センサが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−229752号公報
【特許文献2】特開2007−096892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら光電センサにおいては上述したような設定値のみならず、様々な操作を操作ボタンで行う必要がある。一例として、光電センサにおいては前述した受光量と判定閾値を比較して物体の検出を行い、検出結果に基づいた出力を行う測定モードのほか、判定閾値を設定するための閾値設定モードや、表示部2に表示する数値を受光量の絶対値または判定閾値との相対値とで切替えるための表示値切り替えモードなど、光電センサに関して公知の各種機能(以下、動作モードと総称)が設けられ、例えば測定モード時に操作ボタン4を押下することによって測定モード→閾値設定モード→表示値切り替えモード→測定モード・・・と順にモードを変更するような操作が必要となる。しかしながら従来の光電センサにおいては単にスライドスイッチに設定値の組み合わせを割り付けるに過ぎないため、このような各種モードのうち任意のものを呼び出すために複数回操作ボタン4を操作しなければならず、ユーザに負担を強いるという課題があった。
【0008】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、その目的はユーザが任意の動作モードを容易に呼び出して使用することが可能な利便性に優れた光電センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明の請求項1に係る発明は、複数の動作モードを備え、機器本体の動作に係る設定値を記憶する内部記憶手段と、この内部記憶手段に記憶する設定値の変更に用いられる1以上の押しボタンからなる操作部とが設けられた光電センサであって、前記光電センサは更に、当該センサに関する値を表示可能な表示部と、通電状態を2以上のパターンから選択的に切り替え可能であるとともに、選択された当該パターンを自立して保持可能な切り替え式スイッチからなる動作モード呼び出し操作部とが設けられ、前記動作モード呼び出し操作部は、前記切り替えスイッチのパターンのいずれが選択されているかに応じて所定の動作モードを実行するものであるとともに、当該切り替えスイッチのパターンに応じて実行される動作モードをユーザが選択可能に構成されていることを特徴とする光電センサである。
【0010】
また、請求項2に係る発明は前記切り替え式スイッチはスライドスイッチまたは照光式プッシュスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の光電センサである。
【0011】
また、請求項3に係る発明は前記ユーザによる動作モードの選択は、前記切り替え式スイッチを所定のパターンに切替えた状態で、当該パターンに対し新たに割り付ける動作モードを実行し、更に前記操作部を操作することで行われるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の光電センサである。
【0012】
また、請求項4に係る発明は前記切り替え式スイッチの通電状態のパターンのうち少なくとも1つが選択されているときは前記現在の受光量に基づく値を表示するとともに、他のパターンが選択されているときは当該パターンに割り付けられた動作モードが実行されるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電センサである。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の請求項1に係る光電センサによれば、ユーザが選択した動作モードをスライドスイッチ4をONにしたとき容易に呼び出すことが可能となるため、ユーザはその使用状況に応じて使用頻度の高い動作モードを容易に呼び出すことが可能となり、例え光電センサ1の小型化に伴って操作部3の操作性が悪化し、また光電センサ1の多機能化によって様々な機能が付加されたとしてもその利便性を比較的損なうことなく光電センサ1を使用することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に係る発明によれば、そのスイッチの状態(ON/OFF等)が一見して判別可能であるので、いかなる動作モードが実行されているのかを容易に判別可能となる。
【0015】
また、請求項3に係る発明によれば、動作モード呼び出し操作部による動作モードの選択(割り付け)を容易に行うことが可能となる。
【0016】
また、請求項4に係る発明によれば、光電センサの本来の用途である現在の受光量に基づく値を表示して検出対象物の検出に勤める状態と、これ以外の各種動作モードとを選択的に切り替え式スイッチにより変更可能となるので、ユーザの利用において便利な光電センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光電センサを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る光電センサの、ユーザの操作に供する部位を拡大して表した図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る光電センサの、表示部の表示の例を表す図である。
【図4】従来の光電センサを示す斜視図である。
【図5】従来の光電センサの、ユーザの操作に供する部位を拡大して表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態について説明する。図1、図2は本実施の形態に係る光電センサ1を示すものである。なお、従来と同じ構成については同番号を付して説明を省略する。本実施例においては押しボタンスイッチからなる操作部3に加え、更に通電状態を自立して保持可能な切り替え式スイッチからなる動作モード呼び出し操作部として、任意にON/OFFの変更操作が可能であるとともに、当該操作により変更された状態を保持する、すなわち一般的に知られるリミットスイッチ等と異なり、外的負荷により接点がONまたはOFFしたあと、外的負荷が解消した場合であっても同様の接点状態を保持可能なスイッチ機構であるスライドスイッチ4を備える。
【0019】
スライドスイッチ4はユーザが手動でON/OFFを切り替え可能なスイッチであり、工場出荷時は一例としてスライドスイッチ4がOFFのとき動作モードを測定モードとし、スライドスイッチ4がONのとき閾値設定モードとする。すなわち、スライドスイッチ4がOFFのときは表示部2に現在の受光量の絶対値を数値表示する(測定モード)とともに、スライドスイッチ4をONにした場合は光電センサ1内に備えられた記憶メモリ(図示せず)に記憶された、現在設定されている閾値を表示部2に数値表示し、操作ボタン33,34の押下により当該閾値を変更可能な状態とする(閾値設定モード)。
【0020】
ここでユーザが例えば測定モード時においては表示部2に現在の受光量の絶対値を表示するのではなく、現在設定されている閾値と現在の受光量との相対値を表示するよう設定しようとする場合、当該設定を行うためのモード(表示値切り替えモード)を呼び出す必要がある。このような操作はユーザが操作ボタン32を押下することによって行われる。
【0021】
スライドスイッチ4がOFFの状態で操作ボタン32を押下するたび、光電センサ1は動作モードを測定モードから閾値設定モードへ、閾値設定モードから表示値切り替えモードへ、そして表示値切り替えモードから測定モードへと順に変更する。このときの表示部2における表示の変化を表したものが図3である。すなわち、測定モード時は図3中(a)で示すように現在の受光量(例えば1234)を表示し、閾値設定モード時は図3中(b)で示す現在の閾値(例えば567)を表示し、更に表示値切り替えモードでは図3中(c−1)で示すようにOFFと表示される。ここで、図3(c−1)が表示された状態で操作ボタン31を押下することにより表示は(c−2)のようにOnと変化し、これにより測定モード時の表示は現在の受光量と閾値との差(例えば1234−567の値である667)が表示されるようになる(図示せず)とともに記憶メモリに当該設定情報(表示値切り替えモードのON/OFF種別)を記憶する。また、当該表示を現在の受光量の絶対値表示へと戻したい場合は同様の手順により表示値切り替えモードへと変更したうえで操作ボタン31を押下操作し、当該機能をOFFに切替えることが可能である。
【0022】
続いてスライドスイッチ4をONにしたときに呼び出される機能を変更する手順について説明する。ユーザがスライドスイッチ4をONにしたとき閾値設定モードではなく表示値切り替えモードを呼び出すよう設定したい場合、まずユーザはスライドスイッチ4をONに切替える。このときの光電スイッチ1は前述した通り閾値設定モードとなり、表示部2には図3(b)が表示される。
【0023】
更にこの状態で操作ボタン32を押下することで、光電スイッチ1は閾値設定モードから表示値切り替えモードへと動作モードを変更するとともに、表示部2に図3(c−1)または図3(c−2)のいずれかを現在の設定に基づき表示する。このとき、すなわちスライドスイッチ4がONであり、更にスライドスイッチ4をONにした時に呼び出したい動作モードが現に実行されているときに更に操作ボタン31を押下することで、光電センサ1はスライドスイッチ4をONにしたときに呼び出す動作モードを現に実行されている動作モード(表示値切り替えモード)へと変更し、その旨を光電センサ1内の記憶メモリに記憶する。これによりユーザはスライドスイッチ4をON/OFFするだけで測定モードと表示値切り替えモードを容易に切り替えて光電センサ1を使用することが可能となる。
【0024】
なお、スライドスイッチ4をONにしたときに呼び出す動作モードを閾値設定モードへと戻したい場合、同様の手順によって変更することが可能である。すなわち、スライドスイッチ4をONにして表示値切り替えモードを呼び出し、操作ボタン32を2回押下操作することで動作モードを測定モード→閾値設定モードへと変更し、更に操作ボタン31を押下操作すればよい。
【0025】
上記の実施例によれば、ユーザが選択した動作モードをスライドスイッチ4をONにしたとき容易に呼び出すことが可能となるため、ユーザはその使用状況に応じて使用頻度の高い動作モードを容易に呼び出すことが可能となり、例え光電センサ1の小型化に伴って操作部3の操作性が悪化し、また光電センサ1の多機能化によって様々な機能が付加されたとしてもその利便性を比較的損なうことなく光電センサ1を使用することが可能となる。
【0026】
なお、上記の実施例においては簡単のため動作モードを測定モード、閾値設定モード、表示値切り替えモードの3つからなるものとして説明したが、これに限らず種々の動作モードを光電センサ1に設定可能にしてもよいことは言うまでも無い。例として、出力タイマのON/OFFを切替えるモード、相互干渉防止設定モード、省電力機能のON/OFFを切替えるモードなどを操作ボタン32の押下により呼び出されるようにするとともに、スライドスイッチ4をONにしたときに呼び出される機能として光電センサ1に持たせることが可能である。また、ON/OFFの変更のみ可能な2ステートのスライドスイッチ4に代えて3つ以上の状態へと切り替え可能な3ステート以上のスライドスイッチを用いても良いし、照光式プッシュスイッチなど他の公知なスイッチ類を用いても良い。ただしこのとき、スライドスイッチや照光式プッシュスイッチのようにそのスイッチの状態(ON/OFF等)が一見して判別可能なスイッチ類であるほうがユーザにとって便利であり好ましいことは言うまでも無い。そのほか、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 光電センサ
2 表示部
3 操作部
4 スライドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動作モードを備え、機器本体の動作に係る設定値を記憶する内部記憶手段と、この内部記憶手段に記憶する設定値の変更に用いられる1以上の押しボタンからなる操作部とが設けられた光電センサであって、
前記光電センサは更に、当該センサに関する値を表示可能な表示部と、
通電状態を2以上のパターンから選択的に切り替え可能であるとともに、選択された当該パターンを自立して保持可能な切り替え式スイッチからなる動作モード呼び出し操作部とが設けられ、
前記動作モード呼び出し操作部は、前記切り替えスイッチのパターンのいずれが選択されているかに応じて所定の動作モードを実行するものであるとともに、当該切り替えスイッチのパターンに応じて実行される動作モードをユーザが選択可能に構成されていることを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記切り替え式スイッチはスライドスイッチまたは照光式プッシュスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
前記ユーザによる動作モードの選択は、前記切り替え式スイッチを所定のパターンに切り替えた状態で、当該パターンに対し新たに割り付ける動作モードを実行し、更に前記操作部を操作することで行われるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の光電センサ。
【請求項4】
前記切り替え式スイッチの通電状態のパターンのうち少なくとも1つが選択されているときは前記現在の受光量に基づく値を表示するとともに、他のパターンが選択されているときは当該パターンに割り付けられた動作モードが実行されるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−239487(P2010−239487A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86655(P2009−86655)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】