光電センサ
【課題】ユーザが特に意識をしなくとも、感度が自動的に調整されて、調整された感度による受光量により適切なしきい値を容易に設定できるようにする。
【解決手段】光電センサの使用目的別に、しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容が異なる設定処理を準備して、各設定処理につき、感度を調整するタイミングを判断する上での判断規準と、感度の調整に用いる受光量の目標値と、調整された感度による受光量の中からしきい値の設定に用いられる基準受光量を定めるための処理の手順とが定義されたプログラムをメモリ106に登録する。CPU105は、操作部110における操作の内容に基づき当該操作に対応する設定処理を特定して、操作に応じて受光量のサンプリングを実行しながら、特定された設定処理用のプログラムに従って感度調整のタイミングを判別して感度調整処理を実行した後に、基準受光量を決定する。
【解決手段】光電センサの使用目的別に、しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容が異なる設定処理を準備して、各設定処理につき、感度を調整するタイミングを判断する上での判断規準と、感度の調整に用いる受光量の目標値と、調整された感度による受光量の中からしきい値の設定に用いられる基準受光量を定めるための処理の手順とが定義されたプログラムをメモリ106に登録する。CPU105は、操作部110における操作の内容に基づき当該操作に対応する設定処理を特定して、操作に応じて受光量のサンプリングを実行しながら、特定された設定処理用のプログラムに従って感度調整のタイミングを判別して感度調整処理を実行した後に、基準受光量を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出のための光を投光すると共に、その投光された光または投光された光に対する反射光を受光し、受光量を所定のしきい値と比較することにより物体を検出する光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサでの検出の精度を確保するには、検出対象の物体がある場合の受光量と物体が存在しない場合の受光量との間に十分な差が生じるように感度を調整し、双方の状態を区別するのに適した値をしきい値として登録する必要がある。
【0003】
感度の調整処理に関して、特許文献1には、設定モード中の受光量がユーザが定めた目標値になるように、投光駆動部に与える電流(投光電流)の強度や受光量の増幅率などを調整することにより、感度を自動的に調整することが記載されている(特許文献1の段落0060〜0064,0072〜0084)。
【0004】
また、特許文献2には、ユーザの設定作業に従ってしきい値を設定する例として、ワークを検出エリアに配置した状態でSETキーを押した後に、ワークを検出エリアから取り除いた状態でSETキーを再び押し、各キーの操作に応じて取り込んだ2種類の受光量を用いてしきい値を設定することが記載されている(特許文献2の段落0024)。さらに特許文献2には、受光量の経時的変化を象徴的に示す代表値を求め、この代表値に合わせてしきい値を補正することが記載されている(特許文献2の段落0028〜0029)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−101446号公報
【特許文献2】特開2007−139494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、光電センサにおける設定モードでは、感度を調整した上でしきい値の設定処理を行う必要があるが、ユーザはその必要性を認識せずに、感度調整処理を実施することなくしきい値を設定してしまうおそれがある。また必要性を認識しているユーザでも、感度調整を忘れてしきい値を設定することがあり、その場合には感度調整を行った後にしきい値の設定をやり直す必要があるので、ユーザの負担が増大する。
【0007】
さらに、特許文献2に記載されているように、しきい値の設定処理でも、定められた手順に従って作業をすることが要求されるので、ユーザの負担はより大きくなる。また慣れていない人が設定処理を行って作業を誤ると、感度やしきい値が検出に適さない状態になるおそれがある。
【0008】
本発明は上記の問題に着目し、ユーザが特に意識をしなくとも、しきい値を設定するより前に感度が自動的に調整されて、その調整された感度による受光量により、適切なしきい値を容易に設定できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光電センサは、検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ登録されたしきい値と比較することにより物体の検出処理を行う検出手段と、設定操作のための操作部とを具備する。
【0010】
本発明による第1の光電センサは、しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理のうちのいずれかに対応する操作を受け付ける操作受付手段と、操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、実行された操作に応じて取り込まれる受光量に基づき、しきい値の設定に用いられる基準となる基準受光量を判別する基準受光量判別手段と、基準受光量判別手段により判別された基準受光量をしきい値の設定に適した値にするための感度調整を実行する感度調整手段とを具備する。
【0011】
上記の構成のセンサでは、センサの使用目的別に定められた複数種の設定処理を、それぞれユーザが実行する操作の内容によって区別すると共に、設定処理毎に、しきい値の設定に用いられる基準受光量を判別するための判別規準が定められる。ユーザが、自身の使用目的に応じた設定処理に定められた操作手順に沿って受光量の取り込み操作を実行すると、その操作に応じて受光量データの取り込みが行われ、その内容に対応する判別規準に従って、基準受光量が判別される。判別された基準受光量は、感度調整処理によりしきい値の設定に適した値となるので、ユーザが特に意識をしなくとも、感度が良好な状態に設定され、その良好な感度による受光量を基準受光量とすることができる。これにより、しきい値を検出に適した値に設定することが可能になる。
【0012】
基準受光量は1つに限らず、設定処理によっては、レベルが異なる複数の基準受光量の判別が必要になる場合もある。基準受光量を判別する処理は、感度の調整後または感度の調整処理に並列して実行することができる。または、基準受光量が判別された後に、判別された基準受光量の1つがあらかじめ定めた目標値に適合するように、感度を決めるパラメータを調整してもよい。
【0013】
上記の光電センサの一実施形態は、操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、目標値に適合するように調整された基準受光量に基づき、しきい値として設定する受光量の値を判別する受光量判別手段を、さらに具備する。この構成によれば、ユーザが使用目的に応じた設定処理に定められた操作手順に従って受光量の取り込み操作を実行することにより、感度が良好に設定されると共に、その良好な感度に適合するレベルのしきい値を自動的に求めることが可能になる。
【0014】
本発明による第2の光電センサは、以下に述べる記憶手段、感度調整手段、基準受光量決定手段を具備する。
【0015】
記憶手段には、しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理について、操作に応じて取り込まれた受光量を用いて感度を調整する処理を定義する感度調整ルールと、しきい値の設定に用いられる基準受光量を調整された感度による受光量に基づき定める処理を定義する受光量決定ルールとが、それぞれ登録される。
【0016】
感度調整手段は、操作部において受光量の取り込みを指示する操作を受け付けたとき、その操作に応じて受光量の取り込みを実行しながら、受け付けた操作の内容に対応する感度調整ルールに従って感度を調整する。
基準受光量決定手段は、受け付けた操作により複数種の設定処理の中の1つが確定されたことに応じて、その確定された設定処理に対応する受光量決定ルールに従って、受け付けた操作に応じて取り込まれ、かつ感度調整手段により調整された感度に適合している受光量に基づきしきい値の設定に用いられる基準受光量を決定する。
【0017】
第2の光電センサでも、センサの使用目的別に定められた複数種の設定処理を、それぞれユーザが実行する操作の内容によって区別する。ユーザが、自身の使用目的に応じた設定処理に定められた操作手順に沿って受光量の取り込み操作を実行すると、その操作に応じて受光量データの取り込みが行われると共に、取り込まれた受光量を用いて、操作の内容に対応する設定処理に対して定められたルールに従って感度が調整され、調整された感度に適合している受光量に基づき、しきい値の設定に用いられる基準受光量が選択される。このように、ユーザが特に意識をしなくとも、良好な感度に調整された後に、調整後の感度に基づき基準受光量が選択されるので、感度およびしきい値を適切に設定して検出処理を行うことができる。
【0018】
なお、各設定処理に対し、それぞれ受光量決定ルールにより決定した基準受光量からしきい値を割り出すための規準を定めて記憶手段に登録しておけば、感度の調整および基準受光量の決定後にしきい値を自動設定することができる。ただし、これに限らず、基準受光量を表示して、ユーザによるしきい値の手動設定を受け付けてもよい。このしきい値の手動設定は、第1の光電センサにも適用することができる。
【0019】
また、感度の調整処理用のプログラムとして、各種設定処理に共通のスレッドが設定されている場合には、後記する目標値などの変数を感度調整用のスレッド実行部に連絡することを記述したプログラムを、感度調整ルールとしてもよい。
【0020】
上記の光電センサの一実施形態では、記憶手段には、少なくとも1つの設定処理に対し、操作に応じて取り込んだ受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整すると共に、この調整後に取り込まれた受光量が目標値を超えたとき、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことが定義された感度調整ルールが登録される。
【0021】
上記の実施形態によれば、最初の感度調整に用いられた受光量の強度がその後の受光量より大きかった場合でも、その後に目標値を超える受光量が得られたことにより感度が再調整される。
【0022】
他の実施形態では、記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が2回行われたことを操作の内容とする設定処理につき、1回目の操作に応じて取り込まれた受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整することと、2回目の操作に応じて取り込まれた受光量が感度調整に用いられた目標値を上回ったときに、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことと、感度調整処理のやり直しに応じて、1回目の操作に対する感度調整で目標値に合わせられた受光量を再調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、1回目の操作および2回目の操作に対してそれぞれ取り込まれて、最終の感度に適合している一対の受光量をしきい値の設定に用いられる基準受光量とすることが定義された受光量決定ルールとが登録される。
【0023】
上記の感度調整ルールおよび受光量決定ルールが適用される設定処理では、たとえば、ユーザは、検出エリアにワークを配備した状態で最初の操作を行い、ワークが配備されていない状態で2回目の操作を行うが、この順序は逆になってもよい。ユーザがいずれの順序で作業を行っても、各操作に応じて取り込まれた受光量のうちの大きい方が目標値に合わせる感度調整が行われ、その調整された感度の下でワークがある場合に得られる受光量とワークがない場合に得られる受光量とを基準受光量として、しきい値を適切に設定することが可能になる。
【0024】
上記の実施形態による光電センサには、さらに、受光量を表示するための表示部と、受光量の取り込みを指示する1回目および2回目の操作に応じて取り込まれた受光量を、それぞれ1回目の操作に応じて調整された感度に基づく倍率にて表示部に表示する表示制御手段とを設けることができる。この構成によれば、各回の操作に応じて取り込まれた受光量を統一された倍率の下で比較することができるので、ユーザは、ワークの有無と受光量との関係、ワークとセンサとの位置の適否、光軸にずれが生じていないかなどを容易に判別することが可能になる。
【0025】
他の実施形態による光電センサでは、記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が所定時間以上続けられたことを操作の内容とする設定処理につき、操作が続いている期間中の受光量の取り込みに並行して、取り込まれた受光量の中の最大値と最小値とを抽出することと、この処理により最大値が更新される都度、感度調整処理を実行すると共に、その時点までの受光量の最小値を調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、操作が終了した時点での受光量の最大値と最小値とをしきい値の設定に用いられる基準受光量とすることが定義された受光量決定ルールとが登録される。
【0026】
上記のプログラムによる設定処理では、ワークが検出対象位置を通過するようにして、その通過の前後を含む所定時間以上操作を続けると、その間に得られた最大受光量が目標値に合うように感度が調整される。また、この最大受光量より前にサンプリングされた受光量の中に最小受光量がある場合でも、その最小受光量は調整後の感度に適合する値に補正される。よって、ワークが通過する間に得られる最大受光量および最小受光量を最適な感度により取得し、これらを基準受光量として、しきい値を適切に設定することが可能になる。
【0027】
上記の実施形態による光電センサには、さらに受光量を表示するための表示部と、受光量の取り込みを指示する操作が続いている期間中に取り込まれた各受光量を、それぞれ当該操作に対する最初の感度調整処理において調整された感度に基づく倍率にて表示部に表示する表示制御手段とを設けることができる。この構成によれば、たとえばワークが検出対象位置を通過している間に受光量の取り込みを指示する操作が行われたことに応じて、その操作が続く期間中に取り込まれた受光量の変化を統一された倍率により表示することができ、ユーザは、ワークの有無と受光量との関係、ワークとセンサとの位置関係の適否、光軸にずれが生じていないかなどを容易に判別することができる。
【0028】
以下に、第1および第2の光電センサに共通する3つの実施形態を説明する。
第1の実施形態による光電センサには、受光量の目標値を用いて感度が調整されることを前提として、操作部において、感度調整処理に用いられる目標値の値を設定する操作が行われたことに応じて、その操作により設定された目標値を記憶手段に登録する目標値設定手段が設けられる。この構成によれば、ユーザが最適と考える受光量が得られるように感度を調整することが可能になる。
【0029】
第2の実施形態による光電センサには、基準受光量に基づき定められたしきい値を、感度調整手段により調整された感度による受光量と共に表示する表示部が設けられる。この表示部によれば、ユーザは、検出処理中にも、受光量としきい値とを見比べながら検出結果を確認し、感度やしきい値が検出に適した状態であるか否かを判別することができる。
【0030】
第3の実施形態による光電センサは、受光量を表示するための表示部と、検出手段による検出処理が行われている間に、あらかじめ定められたタイミングで検出処理に用いられる受光量につき感度調整処理による調整に適合する受光量に対する変化の度合いを求め、その変化の度合いに応じて登録されているしきい値を変更すると共に、表示部に表示される受光量を、実際の受光量を前記変化の度合いに応じて補正した値に変更する調整手段をさらに具備する。
【0031】
この実施形態によれば、時間の経過に従って受光量が変化すると、その変化の度合いに応じてしきい値が変更されるので、検出処理を安定して行うことができる。また感度やしきい値が変動しても、表示部では、当初の感度調整に適合する受光量に近い値が表示される状態が維持されるので、ユーザは一定の基準で受光状態を確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ユーザがしきい値を設定するための作業を行うことによって、しきい値が設定される前に自動的に感度が調整され、調整後の感度に適合する受光量を基準に、しきい値を適切な値に設定することが可能になる。また、センサの使用目的毎に、その目的に対応する操作を行うことによって、感度の調整やしきい値の設定を簡単に実行することができ、利便性が大幅に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】光ファイバ式の光電センサの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の光電センサの上面カバーを開けた状態を示す斜視図である。
【図3】上記光電センサの操作部および表示部を含む上面を正面視した図である。
【図4】上記光電センサの電気構成を示すブロック図である。
【図5】チューニング処理の種毎に、センサの使用目的、チューニング作業の内容、感度調整の方法、しきい値の設定方法をまとめた表である。
【図6】チューニング処理の進行の概略手順を示すフローチャートに表示器による表示の形態を対応づけて示す図である。
【図7】2点チューニング処理の処理手順を示すフローチャートに表示器による表示の形態を対応づけて示す図である。
【図8】移動ワークチューニング処理の処理手順を示すフローチャートに表示器による表示の形態を対応づけて示す図である。
【図9】感度調整に用いられる目標値を変更する操作に応じて表示部の表示が切り換えられる例を示す図である。
【図10】チューニング処理の進行の概略手順を示すフローチャートに表示器による表示の他の形態を対応づけて示す図である。
【図11】図10の受光量の表示をパーセント表示に置き換えた例を示す図である。
【図12】図10の受光量の表示をバーグラフ表示に置き換えた例を示す図である。
【図13】表示受光量と内部受光量との関係、および表示しきい値と内部しきい値との関係をまとめたグラフである。
【図14】表示受光量と内部しきい値とを自動調整する機能の有効/無効が切り替えられる場合の表示例を示す図である。
【図15】自動調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および図2は、本発明が適用される光ファイバ式の光電センサの外観を示す。
この光電センサ1は、本体部10と本体部10の前面に取り付けられる一対の光ファイバ11,12とを具備する。光ファイバ11は投光用で、他方の光ファイバ12は受光用である。各光ファイバ11,12の先端部には、それぞれレンズなどを含むヘッド部11A,12Aが取り付けられている。なお、実際の光ファイバ11,12は、図示の状態より長くすることができる。
【0035】
各光ファイバ11,12は、それぞれ本体部10の前面の挿入口11B,12Bに挿入される。投光用の光ファイバ11の挿入口11Bの近傍には投光部が設けられ、受光用の光ファイバ12の挿入口12Bの近傍には受光部が設けられる。また本体部10の背面からは、接続用のケーブル14が引き出されている。
【0036】
センサ1の使用時には、各光ファイバ11,12のヘッド部11A,12Aは、所定の距離を隔てて対向配備される。投光部から出た光は光ファイバ11を介してヘッド部11Aから出射され、受光側のヘッド部12Aに入射した光は、光ファイバ12を介して受光部に到達する。各ヘッド部11A,12Aの間に物体が入ると、ヘッド部11Aからヘッド部12Aに向かう光が遮られるため、受光部が受光する光量が減少する。
【0037】
受光部により生成された受光量データは、制御部(CPU)に入力され、あらかじめ登録されたしきい値との比較により光路が遮光されたか否かが判別されて、その判別結果が出力される。
【0038】
図1の例では、光電センサ1は、投光部から投光された光を受光部により受光し、この光路が遮光された状態を「物体あり」と判別する透過型のセンサとして機能するように設定されているが、各光ファイバ11,12の先端に共通のヘッド部を装着して、このセンサ1を、物体からの反射光を受光させる反射型の光電センサとして機能させることも可能である。
【0039】
本体部10の上面には、表示部100や複数の押ボタンスイッチSW1〜SW5が設けられる。使用時の上面にはカバー13が被せられるが、設定の際などには、カバー13が開放されて各押ボタンスイッチSW1〜SW5の操作が可能になる。図2は、カバー13が開放された状態の本体部10の斜視図であり、図3は上面を正面視した図である。なお、カバー13は透明であるので、カバー13が装着されている場合でも、カバー13を介して表示部100の表示を確認することができる。
【0040】
図2、3を参照して上面の構成を説明する。
この実施例では、本体部の前面寄りの位置に、押ボタンスイッチSW1が配備され、その後方に表示部100が設けられ、さらに表示部100の後方に4個の押ボタンスイッチSW2,SW3,SW4,SW5が配備されている。なお、押ボタンスイッチSW2,SW3のボタン部は一体になっているが、筐体10内のスイッチ本体(図示せず。)はそれぞれ独立している。
【0041】
表示部100には、一対の表示器101,102や5個の表示灯111〜115が設けられる。表示器101,102は、4個の7セグLEDが組み合わせられたもので、それぞれ4桁以内の数字やアルファベット文字列を表示する。なお、表示器101では、表示器102内のLEDよりも小さなLEDが使用されるが、以下の図6等に示す表示例では、模式的な説明図として両表示器101,102の表示を同じ大きさにして示す。
【0042】
前方の押ボタンスイッチSW1は、後記するチューニング処理に使用されるスイッチである。以後の説明では、このスイッチSW1を「チューニングボタンSW1」と呼ぶ。表示部100の後方の一対の押ボタンスイッチSW2,SW3は、表示器101,102に表示されるメニューや数値を変更するために用いられる。
【0043】
押ボタンスイッチSW4は、計測モードと設定モードとを切り替えるためのスイッチである。設定モードにおいて何らかの設定が行われると、設定された内容が確定する。押ボタンスイッチSW4により計測モードに切り替えられると、設定された内容にて計測が開始される。
【0044】
押ボタンスイッチSW5は、センサ1の出力形式を切り替えるためのものである。具体的には、受光量がしきい値を超えたときに出力をオン状態にする「ライトオンモード」か、受光量がしきい値より低いときに出力をオン状態とする「ダークオンモード」が選択される。一般に、センサ1を透過型にする場合にはダークオンモードが選択され、センサ1を反射型にする場合にはライトオンモードが選択される。
【0045】
表示灯111は、検出処理において、センサ1からの検出信号がオン状態になったときに点灯する。表示灯112はライトオンモードが選択されているときに点灯し、表示灯113はダークオンモードが選択されているときに点灯する。
表示灯114は、後記する自動調整処理が有効に設定されている場合に点灯し、表示灯115はチューニング処理中と処理後とに点灯する。
【0046】
図4は、上記光電センサ1の電気的構成を示す。
このセンサ1では、制御部となるCPU105に、投光部103や受光部104のほか、プログラムが格納されたメモリ106、表示部100、操作部110、外部機器用インタフェース107、出力部108、電源部109などが接続される。
【0047】
表示部100には、前述した表示器101,102や表示灯111〜115が含まれ、操作部110には、各押ボタンスイッチSW1〜SW5が含まれる。投光部103には、LED131とLED駆動回路132とが含まれ、受光部104には、フォトダイオード(PD)141のほか、増幅回路142やA/D変換回路143が含まれる。投光部103では、LED駆動回路132からLED131に駆動用の電流が流れて、投光処理が行われる。受光部104では、フォトダイオード141からの出力が増幅回路142およびA/D変換回路143により処理されることにより、受光量を表すディジタルデータ(以下、「受光量データ」という。)が生成される。
【0048】
CPU105は、メモリ106に格納されたプログラムに従って、投光部103および受光部104の動作を制御しながら、受光部104から受光量データを入力して検出処理を実行する。検出結果は、出力部108や外部機器用インタフェース107を介して出力される。
【0049】
図2,3に示したスイッチSW4により設定モードが選択されると、表示部100の各表示器101,102に、設定用のメニューが表示される。ユーザは、スイッチSW2,SW3によってメニュー表示を切り替えながら、所望の設定を実行する。
【0050】
計測モードにおいてチューニングスイッチSW1が操作されると、「チューニング」と呼ばれる設定処理が実施される。チューニングは、検出処理に不可欠な設定であるしきい値の設定処理と感度調整処理とを一括で行うものである。この実施例では、センサの使用目的別に4種類のチューニング処理が用意されている。
【0051】
感度の調整は、受光量を高速でサンプリングしながら、サンプリングされる受光量が所定の目標値になるまで、投光部103に流す駆動電流の強度や受光部104の増幅回路142の増幅率を変更する。この調整の目標値やしきい値を設定する上での基準は、チューニングの種別によって異なるが、この実施例では、ユーザが簡単な作業をすることによって、感度やしきい値を目的に適した状態に自動的に設定することができる。
【0052】
図5は、4種類のチューニング処理について、それぞれ使用目的、ユーザの作業内容、感度の調整方法、およびしきい値の設定方法を、表にまとめたものである。この表の記載に沿って、チューニング別に、処理の概要を説明する。
【0053】
<2点チューニング>
このチューニングは、物体の有無を判別する処理を行う場合に実行される。ユーザは、チューニングボタンSW1を2回操作するが、一方の操作は検出対象物(以下、「ワーク」という。)を検出エリアに配備した状態で行われ、他方の操作はワークが配備されていない状態で行われる。各回の操作は、いずれも3秒より短い時間で終える必要があるが、ワークを配備する/しないは、いずれが先になってもよい。
【0054】
感度調整処理では、1回目の操作中に得られる受光量(1回目受光量)と2回目の操作中に得られる受光量(2回目受光量)とのうちの大きい方を目標値に合わせる。目標値は、表示器101,102に表示可能な数値の最大値(以下、「表示最大値」という。この例での表示最大値は「9999」である。)に設定される。また、しきい値は、感度調整後の1回目受光量と2回目受光量との中間値に設定される。
【0055】
<移動ワークチューニング>
このチューニングは、移動するワークを検出対象として、ワークが検出エリアを通過している間はセンサからの出力を検出状態とし、通過が終了すると出力が非検出状態になるようにセンサ1を動作させたい場合に実施される。このチューニングを行う場合のユーザは、チューニングボタンSW1を7秒以上押し続ける。また、検出時と同様の条件でワークを移動させると共に、ワークが検出エリアに入っている状態とワークが検出エリアに入っていない状態とが含まれる期間中、チューニングボタンSW1を押し続けるようにする。
【0056】
感度調整処理では、チューニングボタンSW1が操作されている期間中の最大受光量を目標値に合わせる。この場合の目標値も表示最大値に設定されている。また、しきい値は、感度調整後の最大受光量と最小受光量との間の中間値に設定される。
【0057】
<位置決めチューニング>
このチューニングは、検出対象物が目標位置に到達しているときに出力を検出状態にし、その他の場合には出力を非検出状態とするようにセンサ1を動作させたい場合に実施される。ユーザは、2点チューニングと同様にチューニングボタンSW1を2回操作するが、2回目の操作では3秒以上の長押しを行う必要がある。また、1回目の操作は、ワークを配置しない状態で行い、2回目の操作でワークを目標位置に配置する。
【0058】
感度調整処理では、1回目の操作で得られた受光量が、表示部100に表示される数値範囲の中間値(この実施例では5000)になるようにする。また2回目の操作から3秒が経過した時点の受光量がしきい値に設定される。
【0059】
<最大感度チューニング>
このチューニングは、ヘッド部11Aと12Aとの距離が長い場合や、ヘッド部11A,12Aに汚れやホコリが付着する可能性が高い場合など、受光量の比較的小さな変化でオン・オフを切り替える必要がある場合に実施される。ユーザは、チューニングボタンSW1を3秒以上長押しするが、移動ワークチューニングと区別するために、長押しの期間は7秒より短くする必要がある。また、センサ1が透過型として使用される場合には、検出エリアにワークを配備した状態でチューニングボタンSW1を操作し、センサ2が反射型として使用される場合には、検出エリアからワークを除外した状態でチューニングボタンSW1を操作する。すなわち、透過型、反射型ともに、受光部103に光が入射しにくい状態を設定してから、チューニングボタンSW1を操作する。
【0060】
感度調整処理では、投光部103に与える駆動電流や受光部104の増幅倍率を最大値にすることにより、最大の感度を設定する。また、この最大の感度下で上記のチューニングボタンSW1の操作により取り込まれる受光量が表示部100に「0」と表示されるように、表示上の受光量を調整する。しきい値は、表示部100に表示される数値範囲の約10%に相当する値(999)に設定される。
【0061】
図4に示したメモリ106には、4種類のチューニング処理について、それぞれユーザの操作の態様から上記の要領で感度調整やしきい値の設定を行うのに必要なルールや処理手順を定義したプログラムが格納されている。CPU105は、チューニングボタンSW1の操作回数や操作の持続時間によって、その操作の態様に対応するチューニングの種類を特定し、特定されたチューニング用のプログラムを実行する。
【0062】
ユーザは、チューニングの種毎に異なる作業をする必要がある。しかし、この実施例の2点チューニングでは、ワークを配置する状態と配置しない状態とのいずれを先にしても良く、移動ワークチューニングでも、作業を開始する時点からワークの移動を行って良いようにしているので、ユーザの負担は比較的軽く、作業ミスも生じにくい。ユーザにとって、チューニングボタンSW1の操作は、しきい値の設定のための受光量の取り込みを指示するものであるが、センサ内では、この操作に応じて取り込んだ受光量に基づき感度調整処理が行われた後に、その調整された感度に適合する受光量を基準にしてしきい値が設定される。
【0063】
以下に説明するように、チューニング処理中の表示器101,102には、実行されるチューニングの種別や処理結果などが表示される。よって、ユーザは、目的とするチューニングが正しく選択されたかどうかやそのチューニングによる処理結果を、容易に確認することができる。
【0064】
図6は、ユーザの操作により進行するチューニング処理の流れと表示器101,102における主要な表示とを対応づけて示す。なお、図中の表示例(a)〜(f)で左側の表示器101に表示されている「St」は、ユーザ向けに命名されたチューニング処理の名称「スマートチューニング(Smart tuning)」の略である。チューニング処理中の表示器101では、この表示がほぼ固定され、右側の表示器102の表示が種々に切り換えられる。
【0065】
図6を参照して、チューニング処理の流れを説明する。なお、図6には示していないが、CPU105は、チューニングボタンSW1が操作されている間は、ほぼ一定の時間間隔で割り込みを入れて受光量をサンプリングする(各種チューニングのサブルーチン(ステップS7,S8,S10,S11)や後述する図10の実施例でも同様である。)。
【0066】
チューニングボタンSW1の最初の操作が行われると(ステップS1が「YES」)、CPU105は、その操作に応じて受光量をサンプリングしながら感度調整処理を実行する。この段階では、表示最大値(9999)を目標値として、受光量が目標値に達するまで投光電流や受光部の増幅率を調整する。
【0067】
上記のチューニングボタンSW1の操作時間が3秒より短かい場合(ステップS3が「NO」)には、表示器102には、図6(a)に示すように、「1St」の文字列(「First」を意味する。)が表示される。この状態で、ユーザがチューニングボタンSW1の2回目の操作を行う(ステップS4が「YES」)と、表示器102の表示は、図6(b)に示すように、「2nd」の文字列(「Second」を意味する。)を点滅表示する状態に切り替えられる。この点滅表示は、チューニングボタンSW1の操作が終了するまで続く。
【0068】
チューニングボタンSW1の2回目の操作時間が3秒より短い場合(ステップS6が「NO」)には、2点チューニング処理のサブルーチン(ステップS8)が実行される。このサブルーチンの実行に応じて表示器102の点滅表示は終了し、図6(c)に示すように、「2Pt」の文字列(「Two Point Tuning」の略)が表示される。
【0069】
チューニングボタンSW1の2回目の操作時間が3秒以上続いた場合(ステップS6が「YES」)には、位置決めチューニング処理のサブルーチン(ステップS7)が実行される。またこのサブルーチンの実行に応じて、図6(d)に示すように、表示器には「POS」の文字列(「Position」の略)が表示される。
【0070】
チューニングボタンSW1の1回目の操作が3秒以上続き、7秒が経過するより前に終了した場合(ステップS3が「YES」,ステップS9が「NO」)には、最大感度チューニング処理のサブルーチン(ステップS11)が実行される。このサブルーチンの実行に応じて、図6(e)に示すように、表示器102は、「Full」の文字列を表示する状態に切り替えられる。
【0071】
チューニングボタンSW1の1回目の操作が7秒以上続いた場合(ステップS3,S9が共に「YES」)には、移動ワークチューニング処理のサブルーチン(ステップS10)が実行される。またこのサブルーチンの移行に応じて、表示器102の表示は、図6(f)に示すように、「Auto」の文字列を表示する状態に切り替えられる。
【0072】
上記のとおり、この実施例では、チューニングボタンSW1の操作の形態に応じてチューニングの種別を特定し、特定した種別用のチューニング処理を実行すると共に、表示器102に、チューニングボタンSW1の操作回数や特定されたチューニング処理を示す文字列を表示する。これによりユーザは、作業の流れや自分が意図するチューニング処理に移行したかどうかを、容易に確認することができる。
また、図6には示していないが、チューニングボタンSW1が長押しされて、その操作時間が3秒に達すると、表示灯115が点灯状態から点滅状態に切り替えられる。したがって、ユーザが位置決めチューニング処理や最大チューニング処理を選択する場合には、表示灯115の点滅によって、チューニングボタンSW1から指を離すタイミングを判別することができる。
【0073】
この実施例では、チューニングボタンSW1の最初の操作が行われた時点では、チューニングの種別を特定できないので、表示最大値を目標値として感度調整処理を実行する(ステップS1,S2)が、表示最大値はフォトダイオード141の飽和を示すものではない。たとえば、センサ1が透過型に設定され、ワークが配置されている状態でチューニングボタンSW1が操作された場合には、フォトダイオード141に入射する光がかなり弱い状態で感度調整処理が行われるので、弱いレベルが表示最大値になる。この調整後にワークが除かれると、フォトダイオード141に強い光が入射するため、受光量は表示最大値を上回るレベルになる。
【0074】
上記の現象が生じることを考慮して、2点チューニング処理や移動ワークチューニング処理では、処理の開始後に表示最大値を上回る受光量を取得すると、再び感度調整処理を実行する。また、感度調整処理をやり直した場合には、その処理より前にしきい値の設定のための基準値の候補として取得している受光量を、再調整された感度に適合する値に補正する。
【0075】
図7は2点チューニング処理の詳細な手順を、図8は移動ワークチューニング処理の詳細な手順を、それぞれ示す。また、図7,8でも、フローチャート中の適所に表示器101,102における表示の態様を対応づけて示す。
【0076】
図7に示す2点チューニング処理では、まずステップS101において、チューニングボタンSW1の1回目の操作に応じてサンプリングされた受光量P1(1回目受光量)とチューニングボタンSW1の2回目の操作に応じてサンプリングされた受光量P2(2回目受光量)とを比較する。なお、ここでいう1回目受光量は、図6のステップS2の感度調整が終了した時点の受光量であるので、目標値の9999に一致する。2回目受光量も、この感度調整の下でサンプリングされた受光量となる。
【0077】
P1>P2であれば(ステップS101が「YES」)、図中の(g)に示すように、左側の表示器101に1回目受光量P1が、右側の表示器102に2回目受光量P2が、それぞれ表示される。この間に、P1とP2との差が検出誤差に相当する値Hysと比較される(ステップS105)。両者の間にHysを上回る差がある場合には、ステップS106に進み、P1,P2の平均値を求めて、これをしきい値に設定する。
【0078】
この後は、ステップS107において処理結果を表示する。たとえば、図中の(i)に示すように、左側の表示器101に感度調整により目標値に合わせられた最大受光量(9999となる。)を表示し、右側の表示器102に設定されたしきい値を表示する。この表示は、所定時間後またはユーザのスイッチ操作が行われると、(j)に示すような設定終了表示に切り替えられる。
【0079】
2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きくなった場合(ステップS101が「NO」)には、ステップS102において、感度調整処理を再実行する。この場合には、現在サンプリング中の表示最大値を上回る受光量が目標値(表示最大値)になるように、投光部103の駆動電流の強度や受光部104の増幅倍率を下げる調整が行われる。
【0080】
調整が終了すると、この調整後の受光量によりP2を更新する(ステップS103)。また、1回目受光量P1に(調整後倍率/調整前倍率)を乗算することにより、P1を補正する(ステップS104)。ここで言う倍率とは、投光部103の駆動電流や受光部104の増幅率などの感度パラメータの増減率の累積値である。したがって、2回目の感度調整処理で駆動電流や増幅倍率を下げた場合には、ステップS104の補正により1回目受光量P1が引き下げられる。
【0081】
上記の補正が終了すると、図中の(h)に示すように、表示器101に補正後の1回目受光量P1が表示され、表示器102には、再調整された感度により取得した2回目受光量P2(目標値と同じく、9999となる。)が表示される。
【0082】
この後は、先に述べたのと同様の流れで、ステップS105,S106,S107が実行される。
なお、P1,P2の差がHys以下である場合にも、しきい値の算出や結果の表示を行う(ステップS106,107)が、その前にステップS108に進み、所定時間、図中の(k)に示すようなエラー表示を実行する。
【0083】
次に、図8に示す移動ワークチューニング処理では、図6のステップS2の感度自動調整に用いた目標値を、最大受光量Pmaxおよび最小受光量Pminに初期値として設定する(ステップS201)。
【0084】
ステップS202では、新たにサンプリングされた受光量(以下、「新受光量」という。)を最大受光量Pmaxと比較する。新受光量がPmaxより小さい場合(ステップS202が「NO」)には、さらに新受光量を最小受光量Pminと比較し、新受光量がPminより小さい場合(ステップS205が「YES」)には、最小受光量Pminの値を新受光量に更新する(ステップS206)。
【0085】
一方、新受光量がPmaxより大きい場合(ステップS202が「YES」)には、ステップS203において感度調整処理が行われる。この場合にも、表示最大値が目標値に設定されて、Pmaxより大きかった新受光量がPmaxとなるように、投光部103の駆動電流や受光増幅率が引き下げられる。
さらに、続くステップS204では、最小受光量Pminに(調整後倍率/調整前倍率)を乗算することにより、Pminの値を補正する。
【0086】
ステップS202〜206の処理は、チューニングボタンSW1の操作が終了するまで実行される。この結果、チューニングボタンSW1が操作されている間の最大受光量Pmaxが表示最大値となるように感度が調整されると共に、チューニングボタンSW1が操作されている間の最小受光量Pminも、調整された感度に適合する値に補正される。このとき、図中の(m)に示すように、表示器101に最大受光量Pmaxが表示され、表示器102に最小受光量Pminが表示される。
【0087】
この後は、PmaxとPminとの間に検出誤差Hysを上回る差が生じているのを確認して(ステップS208)、これらの値の平均値を求めてしきい値に設定し(ステップS209)、その結果を表示する(ステップS210)。結果の表示では、図7の例と同様に、左側の表示器101に調整後の感度による最大受光量が表示され、右側の表示器102にしきい値が表示される(図8の(n))。さらにこの表示から終了表示(図8の(p)に移行する。
また、PmaxとPminとの間の差がHys以下となった場合には、ステップS211において、図中の(q)に示すようなエラー表示を所定時間実行してから、ステップS209,S210を実行する。
【0088】
なお、図8に示した処理では、受光量をサンプリングしながら感度を最適な状態に調整し、最終的に得た最大受光量Pmaxと最小受光量Pminとを、しきい値を設定する上での基準の受光量としたが、必ずしもその必要はない。たとえば、チューニングボタンSW1が操作されている間の感度の調整処理を操作開始直後の1回のみとして、Pmax,Pminの値を特定し、ボタンの操作が終了してから、Pmaxが表示最大値になるように感度を調整し、その調整に合わせてPminの値を補正してもよい。
【0089】
位置決めチューニング処理(図6のステップS7)および最大感度チューニング処理(図6のステップS11)に関しては、フローチャートを示さず、簡単に説明する。これらの処理では、図6のステップS2とは異なる目標値による感度調整が必要となるので、チューニングの種別が確定した段階で感度調整処理を再度実行してから、しきい値を設定する。
【0090】
位置決めチューニング処理では、2回目のボタン操作から3秒が経過した時点で、1回目のボタン操作に応じて表示最大値に設定された受光量が目標値(表示範囲の中間値である5000)になるように感度を再調整する(調整前の約1/2倍とする。)。そして、この感度調整後にサンプリングされた受光量をしきい値に設定する。
図5により説明したように、位置決めチューニング処理では、1回目のボタン操作時にはワークは配置されず、2回目のボタン操作の際にワークが配置される。したがって、センサ1が透過型として使用される場合には、感度調整の目標値より低い受光量がしきい値に設定され、センサ1が反射型として使用される場合には、感度調整の目標値より高い受光量がしきい値に設定される。
【0091】
最大感度チューニング処理では、チューニングボタンSW1の長押しが7秒より短い時間で終了したことに応じて、投光部103の駆動電流および受光部104の増幅率を共に最大にすることにより、最大の感度を設定する。また長押しの間にサンプリングされた受光量の最大値が表示部100に受光量0として表示されるように、表示上の受光量を調整する。また、表示範囲の10%に相当する値をしきい値に設定する。
なお、表示上で0とする受光量は最大値に限らず、長押しの間にサンプリングされた受光量の平均値または最終のサンプリング値としてもよい。
【0092】
このように、いずれのチューニング処理でも、それぞれのチューニング処理別に用意されたプログラムに従って、サンプリングされる受光量が使用目的に適した値になるように感度を調整した上で、しきい値を設定する。したがって、ユーザが感度を調整する必要性を意識していなくとも、支障なく、センサ1の使用目的に適した検出処理を安定して実行できる状態に設定することができる。
【0093】
なお、図6のステップS2,図7のステップS102,図8のステップS203の感度調整処理では、共通のスレッドが実行される。これらのチューニング処理では、感度調整処理のタイミングを判断して感度調整のための目標値を設定し、上記の共通のスレッドを呼び出すことにより感度調整処理を実行する。この目標値を、上記実施例では表示最大値であるとしたが、この値はデフォルト値であって、設定モードにおいて、適宜、変更することもできる。
【0094】
図9は、チューニングボタンSW1の最初の操作による感度調整処理(図6のステップS2)、および2点チューニング処理ならびに移動ワークチューニング処理における感度調整処理に使用される目標値がユーザの操作に応じて変更される場合に表示器101,102に展開される表示例を示す。図中の(a)は、設定モードにおいて、図2,3に示した押ボタンスイッチSW4の操作により呼び出された初期の表示であって、表示器101には、設定の内容を表す記号「P−Lu」が表示され、表示器102には、デフォルトの目標値(表示最大値の9999)が表示されている。
【0095】
この表示状態下で、ユーザが「−」符号の付いたスイッチSW3を操作すると、図9(b)に示すように、表示器102の数値が小さくなる。また、ユーザが「+」符号の付いたスイッチSW2を操作すると、図9(c)に示すように、表示器102の数値が大きくなる。なお、表示器102には、100から9999の範囲の数値を1度刻みで表示することができる。
【0096】
スイッチSW2,SW3の操作により表示器102の数値が変更され、スイッチSW4が操作されると、表示器101,102の表示は他の設定項目に関するものに変更され、その直前に表示器102に表示されていた数値により感度調整の目標値が更新される。また、スイッチSW4の操作により設定メニューが一巡すると、計測モードに戻る。
【0097】
つぎに、上記の実施例では、チューニングボタンSW1の操作回数や操作時間の長さによりチューニングの種別が確定してから、その確定された種別に対応するチューニング処理を実行するようにしているが、これに限らず、チューニング種別が確定しない段階から処理を開始したり、複数のチューニング処理を並列して実行してもよい。
【0098】
たとえば、チューニングボタンSW1の最初の操作が3秒未満で終了した場合には、2回目のチューニングボタンSW1の操作に対して直ちに2点チューニング処理を開始し、2回目の操作が3秒未満で終了した場合には、2点チューニング処理の結果を確定する。一方、2回目の操作が3秒以上続いた場合には、2点チューニング処理の結果を破棄して位置決めチューニング処理を実行する。
【0099】
また、チューニングボタンSW1の最初の操作による感度調整処理(ステップS2)の直後から、移動ワークチューニング処理のための受光量のサンプリングを開始して、感度の再調整をすることなく、最大受光量Pmaxおよび最小受光量Pminを特定する処理のみを実行する。そして、チューニングボタンSW1の操作が終了したときに、最終的な最大受光量Pmaxが表示最大値を超えている場合には、その超過の度合いに応じて感度を調整すると共に、最小受光量Pminも、調整後の感度に適合する値になるように補正する。
【0100】
上記の処理によれば、移動ワークチューニングを行うためにチューニングボタンSW1が7秒以上長押しされた場合には、その操作が行われた期間全体の受光量に基づき、感度の調整およびしきい値の設定を行うことができる。
ただし、チューニングボタンSW1の操作時間が7秒未満で終了した場合には、位置決めチューニング処理を中止して、最大感度チューニング処理を実行する。この処理では、感度を最大に設定すると共に、位置決めチューニング処理としてサンプリングされた受光量の最大値を、位置決めチューニング処理中の感度に対する最大感度の倍率を乗算した値に補正する。さらに補正後の受光量が受光量0として表示されるように、表示上の受光量を補正する。
【0101】
つぎに、先の図6〜図8に示した実施例では、チューニングボタンSW1の操作やその操作時間に応じてチューニングの種別を確定しながら、確定したチューニング種別を示す情報を表示器101,102に表示し、感度調整処理やしきい値の設定処理に応じてその処理結果に表示を切り替えるようにしているが、表示の態様はこれに限らず、たとえばチューニングボタンSW1の操作に対する表示を図10に示すような態様に変更してもよい。
【0102】
図10の例では、フローチャートに示す主要手順は図6に示したものと同様であるが、チューニングボタンSW1の最初の操作に応じた感度調整処理(ステップS2)では、表示範囲の中間値(5000)を目標値として、その時点における受光量が目標値になるように感度を調整する。また、この調整に応じて、図10(A)に示すように、表示器101には「1Pnt」の文字列(「1点目を意味する「1Point」の略である。)が表示され、表示器102には調整後の受光量が表示される。
【0103】
CPU105は、ステップS2で調整された感度をチューニングの種別が確定するまで維持して、受光量のサンプリングを繰り返しながらステップS3以下の処理を実行する。
ここでユーザが2点チューニングまたは位置決めチューニングを指定するために、チューニングボタンSW1の最初の操作を3秒未満で終了し、2回目の操作を行うと(ステップS3が「NO」,ステップS4が「YES」)、図10(B)に示すように、表示器101に「2Pnt」の文字列(2点目を意味する「2Point」の略である。)が点滅表示され、表示器102に毎回のサンプリングによる受光量が変動表示される。変動表示される受光量は、ステップS2の感度調整処理により調整された倍率により得られたものである。
【0104】
チューニングボタンSW1の2回目の操作が3秒未満で終了した場合(ステップS6が「NO」)には、図10(B)に示した点滅表示や変動表示も終了して、その終了直前の表示状態(図10(C)または図10(D))でしばらく表示が固定される。その間に、CPU105は、2点チューニング処理(ステップS8)を進行させる。
【0105】
図10(C)(D)の例において表示器102に表示されている数字は、チューニングボタンSW1の2回目の操作が終了する直前にサンプリングされた受光量を、ステップS2の感度調整処理により調整された倍率に基づき表したものである。
つまり、チューニングボタンSW1の2回目の操作終了直前に取り込まれた受光量(この実施例では、これを2回目受光量P2とする。)が1回目の操作中に取り込まれて感度調整の目標値に調整された1回目受光量P1より小さい場合には、図10(C)に示すように、表示器102には目標値(5000)より小さな値が表示される。また2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きい場合には、図10(D)に示すように、表示器102には目標値よりも大きな値が表示される。
【0106】
ステップS8の2点チューニング処理では、図7に示したのと同様の手順による処理を実施するが、図7(g)(h)に示した表示は行わず、2回目受光量P2が1回目受光量P1より小さい場合には、しきい値の設定処理(図7のステップS106)が完了したことに応じて、表示器101,102の表示を結果表示(受光量の目標値としきい値とを並列表示するもの)に切り替える。これに対し、2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きい場合には、再度の感度調整処理(図7のステップS102)や2回目受光量P2の更新処理(図7のステップS103)を実行すると共に、表示器102の表示も目標値を表す5000に変更し、その後、しきい値の設定が完了したことに応じて結果表示に切り替える。
【0107】
チューニングボタンSW1の2回目の操作が3秒続いた場合(ステップS6が「YES」)には、位置決めチューニング処理(ステップS7)へと移行する。また、操作から3秒が経過すると、表示器101の表示は図10(B)の表示状態から「POS」の文字列を点滅させる状態に切り替わる。さらに、チューニングボタンSW1の操作が終了すると、表示器101,102の点滅表示や変動表示が終了する。このとき、表示器102には、操作が終了する直前にサンプリングされた2回目受光量P2がステップS2の感度調整処理により調整された倍率による値で表示される。よって、2回目受光量P2が1回目受光量P1より小さい場合には、図10(E)に示すように、表示器102には目標受光量(5000)より小さい数値が表示され、2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きい場合には、図10(F)に示すように、表示器102には目標受光量より大きい数値が表示される。
【0108】
ユーザが移動ワークチューニングまたは最大感度チューニングを指定するために最初のチューニングボタンSW1の操作を3秒以上続けた場合(ステップS3が「YES」)には、図10(G)に示すように、表示器101で「1Pnt」の文字列が点滅表示され、表示器102で毎回のサンプリングによる受光量が変動表示される状態になる。
【0109】
さらに、チューニングボタンSW1の操作時間が7秒以上になると、図10(H)に示すように、表示器101の表示が「Auto」の文字列を点滅する状態に切り替えられる。この切替後も、表示器102では引き続き受光量の変動表示が行われるが、チューニングボタンSW1の操作が終了すると、点滅表示や変動表示も終了して、移動ワークチューニング処理(ステップS10)の結果表示(しきい値や目標値の表示)に切り替えられる。最大感度チューニングのためにチューニングボタンSW1の操作が7秒未満で終了したた場合(ステップS9が「NO」)にも、表示器101,102の点滅表示や変動表示を終了し、最大感度チューニング処理(ステップS11)の結果表示に切り替えられる。
【0110】
なお、この実施例では、チューニングボタンSW1の操作時間が3秒以上になった場合には、操作が終了するまで感度の再調整処理を実施することなく、毎回のサンプリングによる受光量により表示器102の表示を更新すると共に、移動ワークチューニング処理のための最大受光量Pmaxおよび最小受光量Pminを更新する処理を実行する。そしてチューニングボタンSW1の操作が7秒以上続いた後に終了すると、最大受光量Pmaxに基づき感度を調整すると共に、その調整に合わせて最小受光量Pminを補正し、しかる後にしきい値を設定する。また、チューニングボタンSW1の操作が3秒未満で終了した場合には、移動ワークチューニング処理(ステップS10)によりしきい値が設定される。
したがって、チューニングボタンSW1の操作が続く間に表示器102に表示される受光量は、すべてステップS2の感度調整処理で調整された倍率に基づく数値となるので、受光量の変化の状態を容易に確認することができる。
【0111】
2点チューニングや位置決めチューニングのためにチューニングボタンSW1が2回操作された場合にも、1回目受光量P1と2回目受光量P2とが同一の調整倍率に基づき調整された値により表示されるので、各回の受光量の違いを容易に把握することができる。2点チューニングや位置決めチューニングでは、ユーザ自身が検出エリアにワークを配置したり、ワークを取り除いたりしなければならないが、上記の表示によれば、ユーザは、ワークの有無と受光量との関係やワークとセンサとの位置関係の適否などを正しく判別しながら作業を進めることができる。
【0112】
さらに、上記の表示によれば、入光時の受光量と非入光時の受光量との比較に基づき、投光部103と受光部104との間での光軸の位置合わせにずれが生じていないかどうかを確認したり、入光時の受光量の強度に基づき投光部103のLED131が劣化していないかどうかをチェックすることも可能である。
【0113】
なお、図10の実施例では、目標値より高い値を表示するために受光量の目標値を表示中間値の5000に設定したが、2点チューニング処理や移動ワークチューニング処理では、しきい値を設定する前に目標値を表示最大値に変更して再度の感度調整を行ってもよい。
また、表示器102での表示は受光量の強度を示す数値に限らず、図11や図12に示すように、目標値に対する比率を表示してもよい。
【0114】
図11,図12ともに、2点チューニング用の操作に伴う表示の例であり、図中の(1)は2回目受光量P2が1回目受光量P1より小さくなった場合の表示例を示し、(2)は2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きくなった場合の表示例を示す。
【0115】
図11の例は、表示器102の最後の桁に「パーセント」を意味する「P」の文字を表示すると共に、他の3桁を用いて、目標値に対する実際の受光量の比を百分率で表した数値を表示したものである。
図12の例は、表示器102内の縦方向に配置されたLEDを用いて受光量の比率を表すバーグラフを表示したものである。
【0116】
上記の各実施例に示したチューニングによれば、ユーザが特に意識をしなくとも、感度が自動的に調整され、その調整された感度により、センサ1の使用目的に適したしきい値を設定することができる。ただし、感度やしきい値が適切に調整されたとしても、先端のヘッド部11A,12Aの汚れや位置ずれ、LED131やフォトダイオード141の経時変化などによって、受光量がしだいに低下する場合がある。受光量の低下の度合いが大きくなると、しきい値に対する余裕度が小さくなり、S/N比が低下する。また検出処理時の表示器101,102には、通常は受光量や検出に用いられるしきい値が表示されるが、当初の表示より受光量が低下すると、ユーザから、何らかの異変が生じていると誤解されるおそれもある。
【0117】
上記の問題点を考慮して、この実施例のセンサ1には、実際の受光量が変化しても、表示部100に表示される受光量をチューニング処理で調整された値に近い状態で維持し、検出処理に用いられるしきい値を受光量の低下に合わせて更新する自動調整処理の機能が組み込まれている。
【0118】
図13は、しきい値を超える受光量を対象として、受光部104からの受光量データが示す実際の受光量(内部受光量)と表示上の受光量(表示受光量)との関係と、検出処理に使用されるしきい値(内部しきい値)と表示上のしきい値(表示しきい値)との関係と、1つのグラフにまとめたものである。
【0119】
このグラフに示されるように、当初は、内部受光量と表示受光量とは共に目標値で一致し、内部しきい値と表示しきい値ともチューニング処理で設定された値で一致する。この後、内部受光量は時間軸に沿って緩やかに低下するが、この実施例では、所定の時間間隔をおいて内部受光量の減衰度合いをチェックし、その減衰度合いに応じた倍率を内部受光量に掛けることにより、表示受光量を目標値の付近で維持する。また、表示しきい値は、チューニング処理で設定された値に維持されるが、内部しきい値は、調整の都度、内部受光量の減衰度合いに応じた比率をもって引き下げられる。
【0120】
上記の処理によれば、表示上はチューニング処理の終了直後の表示を維持しながら、実際に得られている受光量やレベルに応じてしきい値を補正して検出処理を行うので、S/N比を維持することができる。一方で、表示上の受光量は安定した状態になるので、ユーザは、一定の基準に基づいて検出動作を確認することが可能になる。
【0121】
なお、内部受光量の劣化の度合いは、目標値をとるべき内部受光量を用いて判断するのが望ましいので、この実施例では、チューニング処理時に設定されたしきい値より大きな値Pokを基準にして、Pok以上の内部受光量を用いて表示受光量および内部しきい値の値を調整する。以下、このPokを「調整可能範囲の下限値」と呼ぶ。
【0122】
また、知識が豊富で受光量を正確に把握することを望むユーザもいるので、この実施例では、設定操作中のメニューにおいて、この自動調整機能を有効にするか否かを選択できるようにしている。図14は、この選択操作時の表示部の表示例であって、左側の表示器101に、自動調整機能を表す「dPc」の文字列(dynamic power controlの略)が表示される。右側の表示器102には、機能が有効に設定されている場合には「on」の文字列が表示され、機能が無効に設定されている場合には「oFF」の文字列が表示される。ユーザは、スイッチSW2,SW3によっていずれかの表示を選択し、スイッチSW4の操作によって、選択を確定することができる。自動調整機能が有効に設定された場合には、検出処理中に表示灯114が点灯する。
【0123】
図15は、自動調整処理の詳細な手順を示す。
この処理は、上記した選択操作により自動調整機能が有効に設定されていることと、先に述べた4種類のチューニング処理のいずれかが実行されたことを条件として、開始される。最初のステップS301では、実行されたチューニング処理に対応する目標値、調整可能範囲の下限値Pok、受光量のサンプリングのタイミング等の情報を取得する。なお、これらの情報も、各種チューニング処理用のプログラムに紐付けてメモリ106に登録される。または、目標値以外のパラメータをチューニング処理の結果から導出するための定義情報を登録しておき、この定義情報を用いてチューニング処理後に各パラメータを求めるようにしてもよい。
【0124】
ステップS302では、倍率Dに初期値として1.0を設定し、ステップS303では、サンプリング回数の計数のためのカウンタNUMに初期値の0を設定する。そして、以後は、内部受光量(受光部104から入力される受光量データ)をサンプリングし(ステップS304)、サンプリング値が調整可能範囲の下限値Pok以上であれば(ステップS305が「YES」)、カウンタNUMをインクリメントし、サンプリング値を保存する(ステップS306)。サンプリング値がPokより小さい場合にはステップS306はスキップされる。
【0125】
NUMの値があらかじめ定めた規定値に達すると(ステップS307が「YES」)、ステップS308に進み、保存されていたNUM個のサンプリング値の平均値を算出する。さらに、ステップS309において、このサンプリング値の平均値により目標値を除算する演算を実行し、その演算結果により倍率Dを更新する(ステップS309)。
【0126】
その後はステップS303に戻ってカウンタNUMをリセットし、以後も、上記と同じ処理を繰り返す。ただし、ステップS303に戻る前に、更新後の倍率Dがあらかじめ定めた許容値を超えていないかどうかをチェックし、Dが許容値を超えている場合(ステップS310が「YES」)には、所定時間、エラー表示(ステップS311)を行う。
CPU105は、上記の処理および図示しない検出処理に並列して、ステップS304でサンプリングされた内部受光量に倍率Dを掛けることにより表示受光量を導出し、この表示受光量を表示しきい値と共に表示部100に表示する。またCPU105は、表示しきい値にDの逆数1/Dを掛けることにより内部しきい値を求め、検出処理では、この内部しきい値と内部受光量とを比較することにより、物体の有無などを判別する。
【0127】
なお、上記の実施例では、センサ1の筐体10にチューニングボタンSW1などを含む操作部110を設けたが、操作部はこれに限らず、センサ1から独立したコンソールを操作部としてもよい。または、パーソナルコンピュータや外部コントローラ機器であるPLCなどの外部機器をセンサ1に接続して、外部機器側で行われた操作による信号をセンサ1に送信してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 光電センサ
100 表示部
103 投光部
104 受光部
105 制御部(CPU)
106 メモリ
107 外部機器用インタフェース
108 出力部
110 操作部
SW1 チューニングボタン
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出のための光を投光すると共に、その投光された光または投光された光に対する反射光を受光し、受光量を所定のしきい値と比較することにより物体を検出する光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサでの検出の精度を確保するには、検出対象の物体がある場合の受光量と物体が存在しない場合の受光量との間に十分な差が生じるように感度を調整し、双方の状態を区別するのに適した値をしきい値として登録する必要がある。
【0003】
感度の調整処理に関して、特許文献1には、設定モード中の受光量がユーザが定めた目標値になるように、投光駆動部に与える電流(投光電流)の強度や受光量の増幅率などを調整することにより、感度を自動的に調整することが記載されている(特許文献1の段落0060〜0064,0072〜0084)。
【0004】
また、特許文献2には、ユーザの設定作業に従ってしきい値を設定する例として、ワークを検出エリアに配置した状態でSETキーを押した後に、ワークを検出エリアから取り除いた状態でSETキーを再び押し、各キーの操作に応じて取り込んだ2種類の受光量を用いてしきい値を設定することが記載されている(特許文献2の段落0024)。さらに特許文献2には、受光量の経時的変化を象徴的に示す代表値を求め、この代表値に合わせてしきい値を補正することが記載されている(特許文献2の段落0028〜0029)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−101446号公報
【特許文献2】特開2007−139494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、光電センサにおける設定モードでは、感度を調整した上でしきい値の設定処理を行う必要があるが、ユーザはその必要性を認識せずに、感度調整処理を実施することなくしきい値を設定してしまうおそれがある。また必要性を認識しているユーザでも、感度調整を忘れてしきい値を設定することがあり、その場合には感度調整を行った後にしきい値の設定をやり直す必要があるので、ユーザの負担が増大する。
【0007】
さらに、特許文献2に記載されているように、しきい値の設定処理でも、定められた手順に従って作業をすることが要求されるので、ユーザの負担はより大きくなる。また慣れていない人が設定処理を行って作業を誤ると、感度やしきい値が検出に適さない状態になるおそれがある。
【0008】
本発明は上記の問題に着目し、ユーザが特に意識をしなくとも、しきい値を設定するより前に感度が自動的に調整されて、その調整された感度による受光量により、適切なしきい値を容易に設定できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光電センサは、検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ登録されたしきい値と比較することにより物体の検出処理を行う検出手段と、設定操作のための操作部とを具備する。
【0010】
本発明による第1の光電センサは、しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理のうちのいずれかに対応する操作を受け付ける操作受付手段と、操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、実行された操作に応じて取り込まれる受光量に基づき、しきい値の設定に用いられる基準となる基準受光量を判別する基準受光量判別手段と、基準受光量判別手段により判別された基準受光量をしきい値の設定に適した値にするための感度調整を実行する感度調整手段とを具備する。
【0011】
上記の構成のセンサでは、センサの使用目的別に定められた複数種の設定処理を、それぞれユーザが実行する操作の内容によって区別すると共に、設定処理毎に、しきい値の設定に用いられる基準受光量を判別するための判別規準が定められる。ユーザが、自身の使用目的に応じた設定処理に定められた操作手順に沿って受光量の取り込み操作を実行すると、その操作に応じて受光量データの取り込みが行われ、その内容に対応する判別規準に従って、基準受光量が判別される。判別された基準受光量は、感度調整処理によりしきい値の設定に適した値となるので、ユーザが特に意識をしなくとも、感度が良好な状態に設定され、その良好な感度による受光量を基準受光量とすることができる。これにより、しきい値を検出に適した値に設定することが可能になる。
【0012】
基準受光量は1つに限らず、設定処理によっては、レベルが異なる複数の基準受光量の判別が必要になる場合もある。基準受光量を判別する処理は、感度の調整後または感度の調整処理に並列して実行することができる。または、基準受光量が判別された後に、判別された基準受光量の1つがあらかじめ定めた目標値に適合するように、感度を決めるパラメータを調整してもよい。
【0013】
上記の光電センサの一実施形態は、操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、目標値に適合するように調整された基準受光量に基づき、しきい値として設定する受光量の値を判別する受光量判別手段を、さらに具備する。この構成によれば、ユーザが使用目的に応じた設定処理に定められた操作手順に従って受光量の取り込み操作を実行することにより、感度が良好に設定されると共に、その良好な感度に適合するレベルのしきい値を自動的に求めることが可能になる。
【0014】
本発明による第2の光電センサは、以下に述べる記憶手段、感度調整手段、基準受光量決定手段を具備する。
【0015】
記憶手段には、しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理について、操作に応じて取り込まれた受光量を用いて感度を調整する処理を定義する感度調整ルールと、しきい値の設定に用いられる基準受光量を調整された感度による受光量に基づき定める処理を定義する受光量決定ルールとが、それぞれ登録される。
【0016】
感度調整手段は、操作部において受光量の取り込みを指示する操作を受け付けたとき、その操作に応じて受光量の取り込みを実行しながら、受け付けた操作の内容に対応する感度調整ルールに従って感度を調整する。
基準受光量決定手段は、受け付けた操作により複数種の設定処理の中の1つが確定されたことに応じて、その確定された設定処理に対応する受光量決定ルールに従って、受け付けた操作に応じて取り込まれ、かつ感度調整手段により調整された感度に適合している受光量に基づきしきい値の設定に用いられる基準受光量を決定する。
【0017】
第2の光電センサでも、センサの使用目的別に定められた複数種の設定処理を、それぞれユーザが実行する操作の内容によって区別する。ユーザが、自身の使用目的に応じた設定処理に定められた操作手順に沿って受光量の取り込み操作を実行すると、その操作に応じて受光量データの取り込みが行われると共に、取り込まれた受光量を用いて、操作の内容に対応する設定処理に対して定められたルールに従って感度が調整され、調整された感度に適合している受光量に基づき、しきい値の設定に用いられる基準受光量が選択される。このように、ユーザが特に意識をしなくとも、良好な感度に調整された後に、調整後の感度に基づき基準受光量が選択されるので、感度およびしきい値を適切に設定して検出処理を行うことができる。
【0018】
なお、各設定処理に対し、それぞれ受光量決定ルールにより決定した基準受光量からしきい値を割り出すための規準を定めて記憶手段に登録しておけば、感度の調整および基準受光量の決定後にしきい値を自動設定することができる。ただし、これに限らず、基準受光量を表示して、ユーザによるしきい値の手動設定を受け付けてもよい。このしきい値の手動設定は、第1の光電センサにも適用することができる。
【0019】
また、感度の調整処理用のプログラムとして、各種設定処理に共通のスレッドが設定されている場合には、後記する目標値などの変数を感度調整用のスレッド実行部に連絡することを記述したプログラムを、感度調整ルールとしてもよい。
【0020】
上記の光電センサの一実施形態では、記憶手段には、少なくとも1つの設定処理に対し、操作に応じて取り込んだ受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整すると共に、この調整後に取り込まれた受光量が目標値を超えたとき、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことが定義された感度調整ルールが登録される。
【0021】
上記の実施形態によれば、最初の感度調整に用いられた受光量の強度がその後の受光量より大きかった場合でも、その後に目標値を超える受光量が得られたことにより感度が再調整される。
【0022】
他の実施形態では、記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が2回行われたことを操作の内容とする設定処理につき、1回目の操作に応じて取り込まれた受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整することと、2回目の操作に応じて取り込まれた受光量が感度調整に用いられた目標値を上回ったときに、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことと、感度調整処理のやり直しに応じて、1回目の操作に対する感度調整で目標値に合わせられた受光量を再調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、1回目の操作および2回目の操作に対してそれぞれ取り込まれて、最終の感度に適合している一対の受光量をしきい値の設定に用いられる基準受光量とすることが定義された受光量決定ルールとが登録される。
【0023】
上記の感度調整ルールおよび受光量決定ルールが適用される設定処理では、たとえば、ユーザは、検出エリアにワークを配備した状態で最初の操作を行い、ワークが配備されていない状態で2回目の操作を行うが、この順序は逆になってもよい。ユーザがいずれの順序で作業を行っても、各操作に応じて取り込まれた受光量のうちの大きい方が目標値に合わせる感度調整が行われ、その調整された感度の下でワークがある場合に得られる受光量とワークがない場合に得られる受光量とを基準受光量として、しきい値を適切に設定することが可能になる。
【0024】
上記の実施形態による光電センサには、さらに、受光量を表示するための表示部と、受光量の取り込みを指示する1回目および2回目の操作に応じて取り込まれた受光量を、それぞれ1回目の操作に応じて調整された感度に基づく倍率にて表示部に表示する表示制御手段とを設けることができる。この構成によれば、各回の操作に応じて取り込まれた受光量を統一された倍率の下で比較することができるので、ユーザは、ワークの有無と受光量との関係、ワークとセンサとの位置の適否、光軸にずれが生じていないかなどを容易に判別することが可能になる。
【0025】
他の実施形態による光電センサでは、記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が所定時間以上続けられたことを操作の内容とする設定処理につき、操作が続いている期間中の受光量の取り込みに並行して、取り込まれた受光量の中の最大値と最小値とを抽出することと、この処理により最大値が更新される都度、感度調整処理を実行すると共に、その時点までの受光量の最小値を調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、操作が終了した時点での受光量の最大値と最小値とをしきい値の設定に用いられる基準受光量とすることが定義された受光量決定ルールとが登録される。
【0026】
上記のプログラムによる設定処理では、ワークが検出対象位置を通過するようにして、その通過の前後を含む所定時間以上操作を続けると、その間に得られた最大受光量が目標値に合うように感度が調整される。また、この最大受光量より前にサンプリングされた受光量の中に最小受光量がある場合でも、その最小受光量は調整後の感度に適合する値に補正される。よって、ワークが通過する間に得られる最大受光量および最小受光量を最適な感度により取得し、これらを基準受光量として、しきい値を適切に設定することが可能になる。
【0027】
上記の実施形態による光電センサには、さらに受光量を表示するための表示部と、受光量の取り込みを指示する操作が続いている期間中に取り込まれた各受光量を、それぞれ当該操作に対する最初の感度調整処理において調整された感度に基づく倍率にて表示部に表示する表示制御手段とを設けることができる。この構成によれば、たとえばワークが検出対象位置を通過している間に受光量の取り込みを指示する操作が行われたことに応じて、その操作が続く期間中に取り込まれた受光量の変化を統一された倍率により表示することができ、ユーザは、ワークの有無と受光量との関係、ワークとセンサとの位置関係の適否、光軸にずれが生じていないかなどを容易に判別することができる。
【0028】
以下に、第1および第2の光電センサに共通する3つの実施形態を説明する。
第1の実施形態による光電センサには、受光量の目標値を用いて感度が調整されることを前提として、操作部において、感度調整処理に用いられる目標値の値を設定する操作が行われたことに応じて、その操作により設定された目標値を記憶手段に登録する目標値設定手段が設けられる。この構成によれば、ユーザが最適と考える受光量が得られるように感度を調整することが可能になる。
【0029】
第2の実施形態による光電センサには、基準受光量に基づき定められたしきい値を、感度調整手段により調整された感度による受光量と共に表示する表示部が設けられる。この表示部によれば、ユーザは、検出処理中にも、受光量としきい値とを見比べながら検出結果を確認し、感度やしきい値が検出に適した状態であるか否かを判別することができる。
【0030】
第3の実施形態による光電センサは、受光量を表示するための表示部と、検出手段による検出処理が行われている間に、あらかじめ定められたタイミングで検出処理に用いられる受光量につき感度調整処理による調整に適合する受光量に対する変化の度合いを求め、その変化の度合いに応じて登録されているしきい値を変更すると共に、表示部に表示される受光量を、実際の受光量を前記変化の度合いに応じて補正した値に変更する調整手段をさらに具備する。
【0031】
この実施形態によれば、時間の経過に従って受光量が変化すると、その変化の度合いに応じてしきい値が変更されるので、検出処理を安定して行うことができる。また感度やしきい値が変動しても、表示部では、当初の感度調整に適合する受光量に近い値が表示される状態が維持されるので、ユーザは一定の基準で受光状態を確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ユーザがしきい値を設定するための作業を行うことによって、しきい値が設定される前に自動的に感度が調整され、調整後の感度に適合する受光量を基準に、しきい値を適切な値に設定することが可能になる。また、センサの使用目的毎に、その目的に対応する操作を行うことによって、感度の調整やしきい値の設定を簡単に実行することができ、利便性が大幅に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】光ファイバ式の光電センサの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の光電センサの上面カバーを開けた状態を示す斜視図である。
【図3】上記光電センサの操作部および表示部を含む上面を正面視した図である。
【図4】上記光電センサの電気構成を示すブロック図である。
【図5】チューニング処理の種毎に、センサの使用目的、チューニング作業の内容、感度調整の方法、しきい値の設定方法をまとめた表である。
【図6】チューニング処理の進行の概略手順を示すフローチャートに表示器による表示の形態を対応づけて示す図である。
【図7】2点チューニング処理の処理手順を示すフローチャートに表示器による表示の形態を対応づけて示す図である。
【図8】移動ワークチューニング処理の処理手順を示すフローチャートに表示器による表示の形態を対応づけて示す図である。
【図9】感度調整に用いられる目標値を変更する操作に応じて表示部の表示が切り換えられる例を示す図である。
【図10】チューニング処理の進行の概略手順を示すフローチャートに表示器による表示の他の形態を対応づけて示す図である。
【図11】図10の受光量の表示をパーセント表示に置き換えた例を示す図である。
【図12】図10の受光量の表示をバーグラフ表示に置き換えた例を示す図である。
【図13】表示受光量と内部受光量との関係、および表示しきい値と内部しきい値との関係をまとめたグラフである。
【図14】表示受光量と内部しきい値とを自動調整する機能の有効/無効が切り替えられる場合の表示例を示す図である。
【図15】自動調整処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および図2は、本発明が適用される光ファイバ式の光電センサの外観を示す。
この光電センサ1は、本体部10と本体部10の前面に取り付けられる一対の光ファイバ11,12とを具備する。光ファイバ11は投光用で、他方の光ファイバ12は受光用である。各光ファイバ11,12の先端部には、それぞれレンズなどを含むヘッド部11A,12Aが取り付けられている。なお、実際の光ファイバ11,12は、図示の状態より長くすることができる。
【0035】
各光ファイバ11,12は、それぞれ本体部10の前面の挿入口11B,12Bに挿入される。投光用の光ファイバ11の挿入口11Bの近傍には投光部が設けられ、受光用の光ファイバ12の挿入口12Bの近傍には受光部が設けられる。また本体部10の背面からは、接続用のケーブル14が引き出されている。
【0036】
センサ1の使用時には、各光ファイバ11,12のヘッド部11A,12Aは、所定の距離を隔てて対向配備される。投光部から出た光は光ファイバ11を介してヘッド部11Aから出射され、受光側のヘッド部12Aに入射した光は、光ファイバ12を介して受光部に到達する。各ヘッド部11A,12Aの間に物体が入ると、ヘッド部11Aからヘッド部12Aに向かう光が遮られるため、受光部が受光する光量が減少する。
【0037】
受光部により生成された受光量データは、制御部(CPU)に入力され、あらかじめ登録されたしきい値との比較により光路が遮光されたか否かが判別されて、その判別結果が出力される。
【0038】
図1の例では、光電センサ1は、投光部から投光された光を受光部により受光し、この光路が遮光された状態を「物体あり」と判別する透過型のセンサとして機能するように設定されているが、各光ファイバ11,12の先端に共通のヘッド部を装着して、このセンサ1を、物体からの反射光を受光させる反射型の光電センサとして機能させることも可能である。
【0039】
本体部10の上面には、表示部100や複数の押ボタンスイッチSW1〜SW5が設けられる。使用時の上面にはカバー13が被せられるが、設定の際などには、カバー13が開放されて各押ボタンスイッチSW1〜SW5の操作が可能になる。図2は、カバー13が開放された状態の本体部10の斜視図であり、図3は上面を正面視した図である。なお、カバー13は透明であるので、カバー13が装着されている場合でも、カバー13を介して表示部100の表示を確認することができる。
【0040】
図2、3を参照して上面の構成を説明する。
この実施例では、本体部の前面寄りの位置に、押ボタンスイッチSW1が配備され、その後方に表示部100が設けられ、さらに表示部100の後方に4個の押ボタンスイッチSW2,SW3,SW4,SW5が配備されている。なお、押ボタンスイッチSW2,SW3のボタン部は一体になっているが、筐体10内のスイッチ本体(図示せず。)はそれぞれ独立している。
【0041】
表示部100には、一対の表示器101,102や5個の表示灯111〜115が設けられる。表示器101,102は、4個の7セグLEDが組み合わせられたもので、それぞれ4桁以内の数字やアルファベット文字列を表示する。なお、表示器101では、表示器102内のLEDよりも小さなLEDが使用されるが、以下の図6等に示す表示例では、模式的な説明図として両表示器101,102の表示を同じ大きさにして示す。
【0042】
前方の押ボタンスイッチSW1は、後記するチューニング処理に使用されるスイッチである。以後の説明では、このスイッチSW1を「チューニングボタンSW1」と呼ぶ。表示部100の後方の一対の押ボタンスイッチSW2,SW3は、表示器101,102に表示されるメニューや数値を変更するために用いられる。
【0043】
押ボタンスイッチSW4は、計測モードと設定モードとを切り替えるためのスイッチである。設定モードにおいて何らかの設定が行われると、設定された内容が確定する。押ボタンスイッチSW4により計測モードに切り替えられると、設定された内容にて計測が開始される。
【0044】
押ボタンスイッチSW5は、センサ1の出力形式を切り替えるためのものである。具体的には、受光量がしきい値を超えたときに出力をオン状態にする「ライトオンモード」か、受光量がしきい値より低いときに出力をオン状態とする「ダークオンモード」が選択される。一般に、センサ1を透過型にする場合にはダークオンモードが選択され、センサ1を反射型にする場合にはライトオンモードが選択される。
【0045】
表示灯111は、検出処理において、センサ1からの検出信号がオン状態になったときに点灯する。表示灯112はライトオンモードが選択されているときに点灯し、表示灯113はダークオンモードが選択されているときに点灯する。
表示灯114は、後記する自動調整処理が有効に設定されている場合に点灯し、表示灯115はチューニング処理中と処理後とに点灯する。
【0046】
図4は、上記光電センサ1の電気的構成を示す。
このセンサ1では、制御部となるCPU105に、投光部103や受光部104のほか、プログラムが格納されたメモリ106、表示部100、操作部110、外部機器用インタフェース107、出力部108、電源部109などが接続される。
【0047】
表示部100には、前述した表示器101,102や表示灯111〜115が含まれ、操作部110には、各押ボタンスイッチSW1〜SW5が含まれる。投光部103には、LED131とLED駆動回路132とが含まれ、受光部104には、フォトダイオード(PD)141のほか、増幅回路142やA/D変換回路143が含まれる。投光部103では、LED駆動回路132からLED131に駆動用の電流が流れて、投光処理が行われる。受光部104では、フォトダイオード141からの出力が増幅回路142およびA/D変換回路143により処理されることにより、受光量を表すディジタルデータ(以下、「受光量データ」という。)が生成される。
【0048】
CPU105は、メモリ106に格納されたプログラムに従って、投光部103および受光部104の動作を制御しながら、受光部104から受光量データを入力して検出処理を実行する。検出結果は、出力部108や外部機器用インタフェース107を介して出力される。
【0049】
図2,3に示したスイッチSW4により設定モードが選択されると、表示部100の各表示器101,102に、設定用のメニューが表示される。ユーザは、スイッチSW2,SW3によってメニュー表示を切り替えながら、所望の設定を実行する。
【0050】
計測モードにおいてチューニングスイッチSW1が操作されると、「チューニング」と呼ばれる設定処理が実施される。チューニングは、検出処理に不可欠な設定であるしきい値の設定処理と感度調整処理とを一括で行うものである。この実施例では、センサの使用目的別に4種類のチューニング処理が用意されている。
【0051】
感度の調整は、受光量を高速でサンプリングしながら、サンプリングされる受光量が所定の目標値になるまで、投光部103に流す駆動電流の強度や受光部104の増幅回路142の増幅率を変更する。この調整の目標値やしきい値を設定する上での基準は、チューニングの種別によって異なるが、この実施例では、ユーザが簡単な作業をすることによって、感度やしきい値を目的に適した状態に自動的に設定することができる。
【0052】
図5は、4種類のチューニング処理について、それぞれ使用目的、ユーザの作業内容、感度の調整方法、およびしきい値の設定方法を、表にまとめたものである。この表の記載に沿って、チューニング別に、処理の概要を説明する。
【0053】
<2点チューニング>
このチューニングは、物体の有無を判別する処理を行う場合に実行される。ユーザは、チューニングボタンSW1を2回操作するが、一方の操作は検出対象物(以下、「ワーク」という。)を検出エリアに配備した状態で行われ、他方の操作はワークが配備されていない状態で行われる。各回の操作は、いずれも3秒より短い時間で終える必要があるが、ワークを配備する/しないは、いずれが先になってもよい。
【0054】
感度調整処理では、1回目の操作中に得られる受光量(1回目受光量)と2回目の操作中に得られる受光量(2回目受光量)とのうちの大きい方を目標値に合わせる。目標値は、表示器101,102に表示可能な数値の最大値(以下、「表示最大値」という。この例での表示最大値は「9999」である。)に設定される。また、しきい値は、感度調整後の1回目受光量と2回目受光量との中間値に設定される。
【0055】
<移動ワークチューニング>
このチューニングは、移動するワークを検出対象として、ワークが検出エリアを通過している間はセンサからの出力を検出状態とし、通過が終了すると出力が非検出状態になるようにセンサ1を動作させたい場合に実施される。このチューニングを行う場合のユーザは、チューニングボタンSW1を7秒以上押し続ける。また、検出時と同様の条件でワークを移動させると共に、ワークが検出エリアに入っている状態とワークが検出エリアに入っていない状態とが含まれる期間中、チューニングボタンSW1を押し続けるようにする。
【0056】
感度調整処理では、チューニングボタンSW1が操作されている期間中の最大受光量を目標値に合わせる。この場合の目標値も表示最大値に設定されている。また、しきい値は、感度調整後の最大受光量と最小受光量との間の中間値に設定される。
【0057】
<位置決めチューニング>
このチューニングは、検出対象物が目標位置に到達しているときに出力を検出状態にし、その他の場合には出力を非検出状態とするようにセンサ1を動作させたい場合に実施される。ユーザは、2点チューニングと同様にチューニングボタンSW1を2回操作するが、2回目の操作では3秒以上の長押しを行う必要がある。また、1回目の操作は、ワークを配置しない状態で行い、2回目の操作でワークを目標位置に配置する。
【0058】
感度調整処理では、1回目の操作で得られた受光量が、表示部100に表示される数値範囲の中間値(この実施例では5000)になるようにする。また2回目の操作から3秒が経過した時点の受光量がしきい値に設定される。
【0059】
<最大感度チューニング>
このチューニングは、ヘッド部11Aと12Aとの距離が長い場合や、ヘッド部11A,12Aに汚れやホコリが付着する可能性が高い場合など、受光量の比較的小さな変化でオン・オフを切り替える必要がある場合に実施される。ユーザは、チューニングボタンSW1を3秒以上長押しするが、移動ワークチューニングと区別するために、長押しの期間は7秒より短くする必要がある。また、センサ1が透過型として使用される場合には、検出エリアにワークを配備した状態でチューニングボタンSW1を操作し、センサ2が反射型として使用される場合には、検出エリアからワークを除外した状態でチューニングボタンSW1を操作する。すなわち、透過型、反射型ともに、受光部103に光が入射しにくい状態を設定してから、チューニングボタンSW1を操作する。
【0060】
感度調整処理では、投光部103に与える駆動電流や受光部104の増幅倍率を最大値にすることにより、最大の感度を設定する。また、この最大の感度下で上記のチューニングボタンSW1の操作により取り込まれる受光量が表示部100に「0」と表示されるように、表示上の受光量を調整する。しきい値は、表示部100に表示される数値範囲の約10%に相当する値(999)に設定される。
【0061】
図4に示したメモリ106には、4種類のチューニング処理について、それぞれユーザの操作の態様から上記の要領で感度調整やしきい値の設定を行うのに必要なルールや処理手順を定義したプログラムが格納されている。CPU105は、チューニングボタンSW1の操作回数や操作の持続時間によって、その操作の態様に対応するチューニングの種類を特定し、特定されたチューニング用のプログラムを実行する。
【0062】
ユーザは、チューニングの種毎に異なる作業をする必要がある。しかし、この実施例の2点チューニングでは、ワークを配置する状態と配置しない状態とのいずれを先にしても良く、移動ワークチューニングでも、作業を開始する時点からワークの移動を行って良いようにしているので、ユーザの負担は比較的軽く、作業ミスも生じにくい。ユーザにとって、チューニングボタンSW1の操作は、しきい値の設定のための受光量の取り込みを指示するものであるが、センサ内では、この操作に応じて取り込んだ受光量に基づき感度調整処理が行われた後に、その調整された感度に適合する受光量を基準にしてしきい値が設定される。
【0063】
以下に説明するように、チューニング処理中の表示器101,102には、実行されるチューニングの種別や処理結果などが表示される。よって、ユーザは、目的とするチューニングが正しく選択されたかどうかやそのチューニングによる処理結果を、容易に確認することができる。
【0064】
図6は、ユーザの操作により進行するチューニング処理の流れと表示器101,102における主要な表示とを対応づけて示す。なお、図中の表示例(a)〜(f)で左側の表示器101に表示されている「St」は、ユーザ向けに命名されたチューニング処理の名称「スマートチューニング(Smart tuning)」の略である。チューニング処理中の表示器101では、この表示がほぼ固定され、右側の表示器102の表示が種々に切り換えられる。
【0065】
図6を参照して、チューニング処理の流れを説明する。なお、図6には示していないが、CPU105は、チューニングボタンSW1が操作されている間は、ほぼ一定の時間間隔で割り込みを入れて受光量をサンプリングする(各種チューニングのサブルーチン(ステップS7,S8,S10,S11)や後述する図10の実施例でも同様である。)。
【0066】
チューニングボタンSW1の最初の操作が行われると(ステップS1が「YES」)、CPU105は、その操作に応じて受光量をサンプリングしながら感度調整処理を実行する。この段階では、表示最大値(9999)を目標値として、受光量が目標値に達するまで投光電流や受光部の増幅率を調整する。
【0067】
上記のチューニングボタンSW1の操作時間が3秒より短かい場合(ステップS3が「NO」)には、表示器102には、図6(a)に示すように、「1St」の文字列(「First」を意味する。)が表示される。この状態で、ユーザがチューニングボタンSW1の2回目の操作を行う(ステップS4が「YES」)と、表示器102の表示は、図6(b)に示すように、「2nd」の文字列(「Second」を意味する。)を点滅表示する状態に切り替えられる。この点滅表示は、チューニングボタンSW1の操作が終了するまで続く。
【0068】
チューニングボタンSW1の2回目の操作時間が3秒より短い場合(ステップS6が「NO」)には、2点チューニング処理のサブルーチン(ステップS8)が実行される。このサブルーチンの実行に応じて表示器102の点滅表示は終了し、図6(c)に示すように、「2Pt」の文字列(「Two Point Tuning」の略)が表示される。
【0069】
チューニングボタンSW1の2回目の操作時間が3秒以上続いた場合(ステップS6が「YES」)には、位置決めチューニング処理のサブルーチン(ステップS7)が実行される。またこのサブルーチンの実行に応じて、図6(d)に示すように、表示器には「POS」の文字列(「Position」の略)が表示される。
【0070】
チューニングボタンSW1の1回目の操作が3秒以上続き、7秒が経過するより前に終了した場合(ステップS3が「YES」,ステップS9が「NO」)には、最大感度チューニング処理のサブルーチン(ステップS11)が実行される。このサブルーチンの実行に応じて、図6(e)に示すように、表示器102は、「Full」の文字列を表示する状態に切り替えられる。
【0071】
チューニングボタンSW1の1回目の操作が7秒以上続いた場合(ステップS3,S9が共に「YES」)には、移動ワークチューニング処理のサブルーチン(ステップS10)が実行される。またこのサブルーチンの移行に応じて、表示器102の表示は、図6(f)に示すように、「Auto」の文字列を表示する状態に切り替えられる。
【0072】
上記のとおり、この実施例では、チューニングボタンSW1の操作の形態に応じてチューニングの種別を特定し、特定した種別用のチューニング処理を実行すると共に、表示器102に、チューニングボタンSW1の操作回数や特定されたチューニング処理を示す文字列を表示する。これによりユーザは、作業の流れや自分が意図するチューニング処理に移行したかどうかを、容易に確認することができる。
また、図6には示していないが、チューニングボタンSW1が長押しされて、その操作時間が3秒に達すると、表示灯115が点灯状態から点滅状態に切り替えられる。したがって、ユーザが位置決めチューニング処理や最大チューニング処理を選択する場合には、表示灯115の点滅によって、チューニングボタンSW1から指を離すタイミングを判別することができる。
【0073】
この実施例では、チューニングボタンSW1の最初の操作が行われた時点では、チューニングの種別を特定できないので、表示最大値を目標値として感度調整処理を実行する(ステップS1,S2)が、表示最大値はフォトダイオード141の飽和を示すものではない。たとえば、センサ1が透過型に設定され、ワークが配置されている状態でチューニングボタンSW1が操作された場合には、フォトダイオード141に入射する光がかなり弱い状態で感度調整処理が行われるので、弱いレベルが表示最大値になる。この調整後にワークが除かれると、フォトダイオード141に強い光が入射するため、受光量は表示最大値を上回るレベルになる。
【0074】
上記の現象が生じることを考慮して、2点チューニング処理や移動ワークチューニング処理では、処理の開始後に表示最大値を上回る受光量を取得すると、再び感度調整処理を実行する。また、感度調整処理をやり直した場合には、その処理より前にしきい値の設定のための基準値の候補として取得している受光量を、再調整された感度に適合する値に補正する。
【0075】
図7は2点チューニング処理の詳細な手順を、図8は移動ワークチューニング処理の詳細な手順を、それぞれ示す。また、図7,8でも、フローチャート中の適所に表示器101,102における表示の態様を対応づけて示す。
【0076】
図7に示す2点チューニング処理では、まずステップS101において、チューニングボタンSW1の1回目の操作に応じてサンプリングされた受光量P1(1回目受光量)とチューニングボタンSW1の2回目の操作に応じてサンプリングされた受光量P2(2回目受光量)とを比較する。なお、ここでいう1回目受光量は、図6のステップS2の感度調整が終了した時点の受光量であるので、目標値の9999に一致する。2回目受光量も、この感度調整の下でサンプリングされた受光量となる。
【0077】
P1>P2であれば(ステップS101が「YES」)、図中の(g)に示すように、左側の表示器101に1回目受光量P1が、右側の表示器102に2回目受光量P2が、それぞれ表示される。この間に、P1とP2との差が検出誤差に相当する値Hysと比較される(ステップS105)。両者の間にHysを上回る差がある場合には、ステップS106に進み、P1,P2の平均値を求めて、これをしきい値に設定する。
【0078】
この後は、ステップS107において処理結果を表示する。たとえば、図中の(i)に示すように、左側の表示器101に感度調整により目標値に合わせられた最大受光量(9999となる。)を表示し、右側の表示器102に設定されたしきい値を表示する。この表示は、所定時間後またはユーザのスイッチ操作が行われると、(j)に示すような設定終了表示に切り替えられる。
【0079】
2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きくなった場合(ステップS101が「NO」)には、ステップS102において、感度調整処理を再実行する。この場合には、現在サンプリング中の表示最大値を上回る受光量が目標値(表示最大値)になるように、投光部103の駆動電流の強度や受光部104の増幅倍率を下げる調整が行われる。
【0080】
調整が終了すると、この調整後の受光量によりP2を更新する(ステップS103)。また、1回目受光量P1に(調整後倍率/調整前倍率)を乗算することにより、P1を補正する(ステップS104)。ここで言う倍率とは、投光部103の駆動電流や受光部104の増幅率などの感度パラメータの増減率の累積値である。したがって、2回目の感度調整処理で駆動電流や増幅倍率を下げた場合には、ステップS104の補正により1回目受光量P1が引き下げられる。
【0081】
上記の補正が終了すると、図中の(h)に示すように、表示器101に補正後の1回目受光量P1が表示され、表示器102には、再調整された感度により取得した2回目受光量P2(目標値と同じく、9999となる。)が表示される。
【0082】
この後は、先に述べたのと同様の流れで、ステップS105,S106,S107が実行される。
なお、P1,P2の差がHys以下である場合にも、しきい値の算出や結果の表示を行う(ステップS106,107)が、その前にステップS108に進み、所定時間、図中の(k)に示すようなエラー表示を実行する。
【0083】
次に、図8に示す移動ワークチューニング処理では、図6のステップS2の感度自動調整に用いた目標値を、最大受光量Pmaxおよび最小受光量Pminに初期値として設定する(ステップS201)。
【0084】
ステップS202では、新たにサンプリングされた受光量(以下、「新受光量」という。)を最大受光量Pmaxと比較する。新受光量がPmaxより小さい場合(ステップS202が「NO」)には、さらに新受光量を最小受光量Pminと比較し、新受光量がPminより小さい場合(ステップS205が「YES」)には、最小受光量Pminの値を新受光量に更新する(ステップS206)。
【0085】
一方、新受光量がPmaxより大きい場合(ステップS202が「YES」)には、ステップS203において感度調整処理が行われる。この場合にも、表示最大値が目標値に設定されて、Pmaxより大きかった新受光量がPmaxとなるように、投光部103の駆動電流や受光増幅率が引き下げられる。
さらに、続くステップS204では、最小受光量Pminに(調整後倍率/調整前倍率)を乗算することにより、Pminの値を補正する。
【0086】
ステップS202〜206の処理は、チューニングボタンSW1の操作が終了するまで実行される。この結果、チューニングボタンSW1が操作されている間の最大受光量Pmaxが表示最大値となるように感度が調整されると共に、チューニングボタンSW1が操作されている間の最小受光量Pminも、調整された感度に適合する値に補正される。このとき、図中の(m)に示すように、表示器101に最大受光量Pmaxが表示され、表示器102に最小受光量Pminが表示される。
【0087】
この後は、PmaxとPminとの間に検出誤差Hysを上回る差が生じているのを確認して(ステップS208)、これらの値の平均値を求めてしきい値に設定し(ステップS209)、その結果を表示する(ステップS210)。結果の表示では、図7の例と同様に、左側の表示器101に調整後の感度による最大受光量が表示され、右側の表示器102にしきい値が表示される(図8の(n))。さらにこの表示から終了表示(図8の(p)に移行する。
また、PmaxとPminとの間の差がHys以下となった場合には、ステップS211において、図中の(q)に示すようなエラー表示を所定時間実行してから、ステップS209,S210を実行する。
【0088】
なお、図8に示した処理では、受光量をサンプリングしながら感度を最適な状態に調整し、最終的に得た最大受光量Pmaxと最小受光量Pminとを、しきい値を設定する上での基準の受光量としたが、必ずしもその必要はない。たとえば、チューニングボタンSW1が操作されている間の感度の調整処理を操作開始直後の1回のみとして、Pmax,Pminの値を特定し、ボタンの操作が終了してから、Pmaxが表示最大値になるように感度を調整し、その調整に合わせてPminの値を補正してもよい。
【0089】
位置決めチューニング処理(図6のステップS7)および最大感度チューニング処理(図6のステップS11)に関しては、フローチャートを示さず、簡単に説明する。これらの処理では、図6のステップS2とは異なる目標値による感度調整が必要となるので、チューニングの種別が確定した段階で感度調整処理を再度実行してから、しきい値を設定する。
【0090】
位置決めチューニング処理では、2回目のボタン操作から3秒が経過した時点で、1回目のボタン操作に応じて表示最大値に設定された受光量が目標値(表示範囲の中間値である5000)になるように感度を再調整する(調整前の約1/2倍とする。)。そして、この感度調整後にサンプリングされた受光量をしきい値に設定する。
図5により説明したように、位置決めチューニング処理では、1回目のボタン操作時にはワークは配置されず、2回目のボタン操作の際にワークが配置される。したがって、センサ1が透過型として使用される場合には、感度調整の目標値より低い受光量がしきい値に設定され、センサ1が反射型として使用される場合には、感度調整の目標値より高い受光量がしきい値に設定される。
【0091】
最大感度チューニング処理では、チューニングボタンSW1の長押しが7秒より短い時間で終了したことに応じて、投光部103の駆動電流および受光部104の増幅率を共に最大にすることにより、最大の感度を設定する。また長押しの間にサンプリングされた受光量の最大値が表示部100に受光量0として表示されるように、表示上の受光量を調整する。また、表示範囲の10%に相当する値をしきい値に設定する。
なお、表示上で0とする受光量は最大値に限らず、長押しの間にサンプリングされた受光量の平均値または最終のサンプリング値としてもよい。
【0092】
このように、いずれのチューニング処理でも、それぞれのチューニング処理別に用意されたプログラムに従って、サンプリングされる受光量が使用目的に適した値になるように感度を調整した上で、しきい値を設定する。したがって、ユーザが感度を調整する必要性を意識していなくとも、支障なく、センサ1の使用目的に適した検出処理を安定して実行できる状態に設定することができる。
【0093】
なお、図6のステップS2,図7のステップS102,図8のステップS203の感度調整処理では、共通のスレッドが実行される。これらのチューニング処理では、感度調整処理のタイミングを判断して感度調整のための目標値を設定し、上記の共通のスレッドを呼び出すことにより感度調整処理を実行する。この目標値を、上記実施例では表示最大値であるとしたが、この値はデフォルト値であって、設定モードにおいて、適宜、変更することもできる。
【0094】
図9は、チューニングボタンSW1の最初の操作による感度調整処理(図6のステップS2)、および2点チューニング処理ならびに移動ワークチューニング処理における感度調整処理に使用される目標値がユーザの操作に応じて変更される場合に表示器101,102に展開される表示例を示す。図中の(a)は、設定モードにおいて、図2,3に示した押ボタンスイッチSW4の操作により呼び出された初期の表示であって、表示器101には、設定の内容を表す記号「P−Lu」が表示され、表示器102には、デフォルトの目標値(表示最大値の9999)が表示されている。
【0095】
この表示状態下で、ユーザが「−」符号の付いたスイッチSW3を操作すると、図9(b)に示すように、表示器102の数値が小さくなる。また、ユーザが「+」符号の付いたスイッチSW2を操作すると、図9(c)に示すように、表示器102の数値が大きくなる。なお、表示器102には、100から9999の範囲の数値を1度刻みで表示することができる。
【0096】
スイッチSW2,SW3の操作により表示器102の数値が変更され、スイッチSW4が操作されると、表示器101,102の表示は他の設定項目に関するものに変更され、その直前に表示器102に表示されていた数値により感度調整の目標値が更新される。また、スイッチSW4の操作により設定メニューが一巡すると、計測モードに戻る。
【0097】
つぎに、上記の実施例では、チューニングボタンSW1の操作回数や操作時間の長さによりチューニングの種別が確定してから、その確定された種別に対応するチューニング処理を実行するようにしているが、これに限らず、チューニング種別が確定しない段階から処理を開始したり、複数のチューニング処理を並列して実行してもよい。
【0098】
たとえば、チューニングボタンSW1の最初の操作が3秒未満で終了した場合には、2回目のチューニングボタンSW1の操作に対して直ちに2点チューニング処理を開始し、2回目の操作が3秒未満で終了した場合には、2点チューニング処理の結果を確定する。一方、2回目の操作が3秒以上続いた場合には、2点チューニング処理の結果を破棄して位置決めチューニング処理を実行する。
【0099】
また、チューニングボタンSW1の最初の操作による感度調整処理(ステップS2)の直後から、移動ワークチューニング処理のための受光量のサンプリングを開始して、感度の再調整をすることなく、最大受光量Pmaxおよび最小受光量Pminを特定する処理のみを実行する。そして、チューニングボタンSW1の操作が終了したときに、最終的な最大受光量Pmaxが表示最大値を超えている場合には、その超過の度合いに応じて感度を調整すると共に、最小受光量Pminも、調整後の感度に適合する値になるように補正する。
【0100】
上記の処理によれば、移動ワークチューニングを行うためにチューニングボタンSW1が7秒以上長押しされた場合には、その操作が行われた期間全体の受光量に基づき、感度の調整およびしきい値の設定を行うことができる。
ただし、チューニングボタンSW1の操作時間が7秒未満で終了した場合には、位置決めチューニング処理を中止して、最大感度チューニング処理を実行する。この処理では、感度を最大に設定すると共に、位置決めチューニング処理としてサンプリングされた受光量の最大値を、位置決めチューニング処理中の感度に対する最大感度の倍率を乗算した値に補正する。さらに補正後の受光量が受光量0として表示されるように、表示上の受光量を補正する。
【0101】
つぎに、先の図6〜図8に示した実施例では、チューニングボタンSW1の操作やその操作時間に応じてチューニングの種別を確定しながら、確定したチューニング種別を示す情報を表示器101,102に表示し、感度調整処理やしきい値の設定処理に応じてその処理結果に表示を切り替えるようにしているが、表示の態様はこれに限らず、たとえばチューニングボタンSW1の操作に対する表示を図10に示すような態様に変更してもよい。
【0102】
図10の例では、フローチャートに示す主要手順は図6に示したものと同様であるが、チューニングボタンSW1の最初の操作に応じた感度調整処理(ステップS2)では、表示範囲の中間値(5000)を目標値として、その時点における受光量が目標値になるように感度を調整する。また、この調整に応じて、図10(A)に示すように、表示器101には「1Pnt」の文字列(「1点目を意味する「1Point」の略である。)が表示され、表示器102には調整後の受光量が表示される。
【0103】
CPU105は、ステップS2で調整された感度をチューニングの種別が確定するまで維持して、受光量のサンプリングを繰り返しながらステップS3以下の処理を実行する。
ここでユーザが2点チューニングまたは位置決めチューニングを指定するために、チューニングボタンSW1の最初の操作を3秒未満で終了し、2回目の操作を行うと(ステップS3が「NO」,ステップS4が「YES」)、図10(B)に示すように、表示器101に「2Pnt」の文字列(2点目を意味する「2Point」の略である。)が点滅表示され、表示器102に毎回のサンプリングによる受光量が変動表示される。変動表示される受光量は、ステップS2の感度調整処理により調整された倍率により得られたものである。
【0104】
チューニングボタンSW1の2回目の操作が3秒未満で終了した場合(ステップS6が「NO」)には、図10(B)に示した点滅表示や変動表示も終了して、その終了直前の表示状態(図10(C)または図10(D))でしばらく表示が固定される。その間に、CPU105は、2点チューニング処理(ステップS8)を進行させる。
【0105】
図10(C)(D)の例において表示器102に表示されている数字は、チューニングボタンSW1の2回目の操作が終了する直前にサンプリングされた受光量を、ステップS2の感度調整処理により調整された倍率に基づき表したものである。
つまり、チューニングボタンSW1の2回目の操作終了直前に取り込まれた受光量(この実施例では、これを2回目受光量P2とする。)が1回目の操作中に取り込まれて感度調整の目標値に調整された1回目受光量P1より小さい場合には、図10(C)に示すように、表示器102には目標値(5000)より小さな値が表示される。また2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きい場合には、図10(D)に示すように、表示器102には目標値よりも大きな値が表示される。
【0106】
ステップS8の2点チューニング処理では、図7に示したのと同様の手順による処理を実施するが、図7(g)(h)に示した表示は行わず、2回目受光量P2が1回目受光量P1より小さい場合には、しきい値の設定処理(図7のステップS106)が完了したことに応じて、表示器101,102の表示を結果表示(受光量の目標値としきい値とを並列表示するもの)に切り替える。これに対し、2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きい場合には、再度の感度調整処理(図7のステップS102)や2回目受光量P2の更新処理(図7のステップS103)を実行すると共に、表示器102の表示も目標値を表す5000に変更し、その後、しきい値の設定が完了したことに応じて結果表示に切り替える。
【0107】
チューニングボタンSW1の2回目の操作が3秒続いた場合(ステップS6が「YES」)には、位置決めチューニング処理(ステップS7)へと移行する。また、操作から3秒が経過すると、表示器101の表示は図10(B)の表示状態から「POS」の文字列を点滅させる状態に切り替わる。さらに、チューニングボタンSW1の操作が終了すると、表示器101,102の点滅表示や変動表示が終了する。このとき、表示器102には、操作が終了する直前にサンプリングされた2回目受光量P2がステップS2の感度調整処理により調整された倍率による値で表示される。よって、2回目受光量P2が1回目受光量P1より小さい場合には、図10(E)に示すように、表示器102には目標受光量(5000)より小さい数値が表示され、2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きい場合には、図10(F)に示すように、表示器102には目標受光量より大きい数値が表示される。
【0108】
ユーザが移動ワークチューニングまたは最大感度チューニングを指定するために最初のチューニングボタンSW1の操作を3秒以上続けた場合(ステップS3が「YES」)には、図10(G)に示すように、表示器101で「1Pnt」の文字列が点滅表示され、表示器102で毎回のサンプリングによる受光量が変動表示される状態になる。
【0109】
さらに、チューニングボタンSW1の操作時間が7秒以上になると、図10(H)に示すように、表示器101の表示が「Auto」の文字列を点滅する状態に切り替えられる。この切替後も、表示器102では引き続き受光量の変動表示が行われるが、チューニングボタンSW1の操作が終了すると、点滅表示や変動表示も終了して、移動ワークチューニング処理(ステップS10)の結果表示(しきい値や目標値の表示)に切り替えられる。最大感度チューニングのためにチューニングボタンSW1の操作が7秒未満で終了したた場合(ステップS9が「NO」)にも、表示器101,102の点滅表示や変動表示を終了し、最大感度チューニング処理(ステップS11)の結果表示に切り替えられる。
【0110】
なお、この実施例では、チューニングボタンSW1の操作時間が3秒以上になった場合には、操作が終了するまで感度の再調整処理を実施することなく、毎回のサンプリングによる受光量により表示器102の表示を更新すると共に、移動ワークチューニング処理のための最大受光量Pmaxおよび最小受光量Pminを更新する処理を実行する。そしてチューニングボタンSW1の操作が7秒以上続いた後に終了すると、最大受光量Pmaxに基づき感度を調整すると共に、その調整に合わせて最小受光量Pminを補正し、しかる後にしきい値を設定する。また、チューニングボタンSW1の操作が3秒未満で終了した場合には、移動ワークチューニング処理(ステップS10)によりしきい値が設定される。
したがって、チューニングボタンSW1の操作が続く間に表示器102に表示される受光量は、すべてステップS2の感度調整処理で調整された倍率に基づく数値となるので、受光量の変化の状態を容易に確認することができる。
【0111】
2点チューニングや位置決めチューニングのためにチューニングボタンSW1が2回操作された場合にも、1回目受光量P1と2回目受光量P2とが同一の調整倍率に基づき調整された値により表示されるので、各回の受光量の違いを容易に把握することができる。2点チューニングや位置決めチューニングでは、ユーザ自身が検出エリアにワークを配置したり、ワークを取り除いたりしなければならないが、上記の表示によれば、ユーザは、ワークの有無と受光量との関係やワークとセンサとの位置関係の適否などを正しく判別しながら作業を進めることができる。
【0112】
さらに、上記の表示によれば、入光時の受光量と非入光時の受光量との比較に基づき、投光部103と受光部104との間での光軸の位置合わせにずれが生じていないかどうかを確認したり、入光時の受光量の強度に基づき投光部103のLED131が劣化していないかどうかをチェックすることも可能である。
【0113】
なお、図10の実施例では、目標値より高い値を表示するために受光量の目標値を表示中間値の5000に設定したが、2点チューニング処理や移動ワークチューニング処理では、しきい値を設定する前に目標値を表示最大値に変更して再度の感度調整を行ってもよい。
また、表示器102での表示は受光量の強度を示す数値に限らず、図11や図12に示すように、目標値に対する比率を表示してもよい。
【0114】
図11,図12ともに、2点チューニング用の操作に伴う表示の例であり、図中の(1)は2回目受光量P2が1回目受光量P1より小さくなった場合の表示例を示し、(2)は2回目受光量P2が1回目受光量P1より大きくなった場合の表示例を示す。
【0115】
図11の例は、表示器102の最後の桁に「パーセント」を意味する「P」の文字を表示すると共に、他の3桁を用いて、目標値に対する実際の受光量の比を百分率で表した数値を表示したものである。
図12の例は、表示器102内の縦方向に配置されたLEDを用いて受光量の比率を表すバーグラフを表示したものである。
【0116】
上記の各実施例に示したチューニングによれば、ユーザが特に意識をしなくとも、感度が自動的に調整され、その調整された感度により、センサ1の使用目的に適したしきい値を設定することができる。ただし、感度やしきい値が適切に調整されたとしても、先端のヘッド部11A,12Aの汚れや位置ずれ、LED131やフォトダイオード141の経時変化などによって、受光量がしだいに低下する場合がある。受光量の低下の度合いが大きくなると、しきい値に対する余裕度が小さくなり、S/N比が低下する。また検出処理時の表示器101,102には、通常は受光量や検出に用いられるしきい値が表示されるが、当初の表示より受光量が低下すると、ユーザから、何らかの異変が生じていると誤解されるおそれもある。
【0117】
上記の問題点を考慮して、この実施例のセンサ1には、実際の受光量が変化しても、表示部100に表示される受光量をチューニング処理で調整された値に近い状態で維持し、検出処理に用いられるしきい値を受光量の低下に合わせて更新する自動調整処理の機能が組み込まれている。
【0118】
図13は、しきい値を超える受光量を対象として、受光部104からの受光量データが示す実際の受光量(内部受光量)と表示上の受光量(表示受光量)との関係と、検出処理に使用されるしきい値(内部しきい値)と表示上のしきい値(表示しきい値)との関係と、1つのグラフにまとめたものである。
【0119】
このグラフに示されるように、当初は、内部受光量と表示受光量とは共に目標値で一致し、内部しきい値と表示しきい値ともチューニング処理で設定された値で一致する。この後、内部受光量は時間軸に沿って緩やかに低下するが、この実施例では、所定の時間間隔をおいて内部受光量の減衰度合いをチェックし、その減衰度合いに応じた倍率を内部受光量に掛けることにより、表示受光量を目標値の付近で維持する。また、表示しきい値は、チューニング処理で設定された値に維持されるが、内部しきい値は、調整の都度、内部受光量の減衰度合いに応じた比率をもって引き下げられる。
【0120】
上記の処理によれば、表示上はチューニング処理の終了直後の表示を維持しながら、実際に得られている受光量やレベルに応じてしきい値を補正して検出処理を行うので、S/N比を維持することができる。一方で、表示上の受光量は安定した状態になるので、ユーザは、一定の基準に基づいて検出動作を確認することが可能になる。
【0121】
なお、内部受光量の劣化の度合いは、目標値をとるべき内部受光量を用いて判断するのが望ましいので、この実施例では、チューニング処理時に設定されたしきい値より大きな値Pokを基準にして、Pok以上の内部受光量を用いて表示受光量および内部しきい値の値を調整する。以下、このPokを「調整可能範囲の下限値」と呼ぶ。
【0122】
また、知識が豊富で受光量を正確に把握することを望むユーザもいるので、この実施例では、設定操作中のメニューにおいて、この自動調整機能を有効にするか否かを選択できるようにしている。図14は、この選択操作時の表示部の表示例であって、左側の表示器101に、自動調整機能を表す「dPc」の文字列(dynamic power controlの略)が表示される。右側の表示器102には、機能が有効に設定されている場合には「on」の文字列が表示され、機能が無効に設定されている場合には「oFF」の文字列が表示される。ユーザは、スイッチSW2,SW3によっていずれかの表示を選択し、スイッチSW4の操作によって、選択を確定することができる。自動調整機能が有効に設定された場合には、検出処理中に表示灯114が点灯する。
【0123】
図15は、自動調整処理の詳細な手順を示す。
この処理は、上記した選択操作により自動調整機能が有効に設定されていることと、先に述べた4種類のチューニング処理のいずれかが実行されたことを条件として、開始される。最初のステップS301では、実行されたチューニング処理に対応する目標値、調整可能範囲の下限値Pok、受光量のサンプリングのタイミング等の情報を取得する。なお、これらの情報も、各種チューニング処理用のプログラムに紐付けてメモリ106に登録される。または、目標値以外のパラメータをチューニング処理の結果から導出するための定義情報を登録しておき、この定義情報を用いてチューニング処理後に各パラメータを求めるようにしてもよい。
【0124】
ステップS302では、倍率Dに初期値として1.0を設定し、ステップS303では、サンプリング回数の計数のためのカウンタNUMに初期値の0を設定する。そして、以後は、内部受光量(受光部104から入力される受光量データ)をサンプリングし(ステップS304)、サンプリング値が調整可能範囲の下限値Pok以上であれば(ステップS305が「YES」)、カウンタNUMをインクリメントし、サンプリング値を保存する(ステップS306)。サンプリング値がPokより小さい場合にはステップS306はスキップされる。
【0125】
NUMの値があらかじめ定めた規定値に達すると(ステップS307が「YES」)、ステップS308に進み、保存されていたNUM個のサンプリング値の平均値を算出する。さらに、ステップS309において、このサンプリング値の平均値により目標値を除算する演算を実行し、その演算結果により倍率Dを更新する(ステップS309)。
【0126】
その後はステップS303に戻ってカウンタNUMをリセットし、以後も、上記と同じ処理を繰り返す。ただし、ステップS303に戻る前に、更新後の倍率Dがあらかじめ定めた許容値を超えていないかどうかをチェックし、Dが許容値を超えている場合(ステップS310が「YES」)には、所定時間、エラー表示(ステップS311)を行う。
CPU105は、上記の処理および図示しない検出処理に並列して、ステップS304でサンプリングされた内部受光量に倍率Dを掛けることにより表示受光量を導出し、この表示受光量を表示しきい値と共に表示部100に表示する。またCPU105は、表示しきい値にDの逆数1/Dを掛けることにより内部しきい値を求め、検出処理では、この内部しきい値と内部受光量とを比較することにより、物体の有無などを判別する。
【0127】
なお、上記の実施例では、センサ1の筐体10にチューニングボタンSW1などを含む操作部110を設けたが、操作部はこれに限らず、センサ1から独立したコンソールを操作部としてもよい。または、パーソナルコンピュータや外部コントローラ機器であるPLCなどの外部機器をセンサ1に接続して、外部機器側で行われた操作による信号をセンサ1に送信してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 光電センサ
100 表示部
103 投光部
104 受光部
105 制御部(CPU)
106 メモリ
107 外部機器用インタフェース
108 出力部
110 操作部
SW1 チューニングボタン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ登録されたしきい値と比較することにより物体の検出処理を行う検出手段と、設定操作のための操作部とを具備する光電センサにおいて、
前記しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理のうちのいずれかに対応する操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、実行された操作に応じて取り込まれる受光量に基づき、前記しきい値の設定に用いられる基準となる基準受光量を判別する基準受光量判別手段と、
前記基準受光量判別手段により判別された基準受光量をしきい値の設定に適した値にするための感度調整処理を実行する感度調整手段とを具備する、光電センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された光電センサにおいて、
前記操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、目標値に適合するように調整された基準受光量に基づき、前記しきい値として設定する受光量の値を判別する受光量判別手段を、さらに具備する光電センサ。
【請求項3】
請求項2に記載された光電センサにおいて、
前記目標値を記憶するための記憶手段と、
前記操作部において、前記感度調整処理に用いられる目標値の値を設定する操作が行われたことに応じて、その操作により設定された目標値を前記記憶手段に登録する目標値設定手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項4】
検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ登録されたしきい値と比較することにより物体の検出処理を行う検出手段と、設定操作のための操作部とを具備する光電センサにおいて、
前記しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理について、操作に応じて取り込まれた受光量を用いて感度を調整する処理を定義する感度調整ルールと、前記しきい値の設定に用いられる基準受光量を調整された感度による受光量に基づき定める処理を定義する受光量決定ルールとが、それぞれ登録される記憶手段と、
前記操作部において受光量の取り込みを指示する操作を受け付けたとき、その操作に応じて受光量の取り込みを実行しながら、受け付けた操作の内容に対応する感度調整ルールに従って感度を調整する感度調整手段と、
前記受け付けた操作により複数種の設定処理の中の1つが確定されたことに応じて、その確定された設定処理に対応する受光量決定ルールに従って、前記受け付けた操作に応じて取り込まれ、かつ感度調整手段により調整された感度に適合している受光量に基づき、前記しきい値の設定に用いられる基準受光量を決定する基準受光量決定手段とを具備する、光電センサ。
【請求項5】
前記記憶手段には、少なくとも1つの設定処理に対し、前記操作に応じて取り込んだ受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整すると共に、この調整後に取り込まれた受光量が前記目標値を超えたとき、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことが定義された感度調整ルールが登録されている、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項6】
前記記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が2回行われたことを操作の内容とする設定処理につき、1回目の操作に応じて取り込まれた受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整することと、2回目の操作に応じて取り込まれた受光量が前記感度調整に用いられた目標値を上回ったときに、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことと、感度調整処理のやり直しに応じて、前記1回目の操作に対する感度調整で目標値に合わせられた受光量を再調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、1回目の操作および2回目の操作に対してそれぞれ取り込まれて、最終の感度に適合している一対の受光量を前記しきい値の設定に用いられる基準受光量とすることが定義された受光量決定ルールとが登録されている、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項7】
請求項6に記載された光電センサにおいて、
受光量を表示するための表示部と、前記受光量の取り込みを指示する1回目および2回目の操作に応じて取り込まれた受光量を、それぞれ前記1回目の操作に応じて調整された感度に基づく倍率にて前記表示部に表示する表示制御手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項8】
前記記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が所定時間以上続けられたことを操作の内容とする設定処理につき、操作が続いている期間中の受光量の取り込みに並行して、取り込まれた受光量の中の最大値と最小値とを抽出することと、この処理により最大値が更新される都度、感度調整処理を実行すると共に、その時点までの受光量の最小値を調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、操作が終了した時点での受光量の最大値と最小値とを前記しきい値の設定に用いられる基準受光量とすることとが定義された受光量決定ルールとが登録されている、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項9】
請求項8に記載された光電センサにおいて、
受光量を表示するための表示部と、前記受光量の取り込みを指示する操作が続いている期間中に取り込まれた各受光量を、それぞれ当該操作に対する最初の感度調整処理において調整された感度に基づく倍率にて前記表示部に表示する表示制御手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載された光電センサにおいて、
前記操作部において、前記感度調整処理に用いられる目標値の値を設定する操作が行われたことに応じて、その操作により設定された目標値を前記記憶手段に登録する目標値設定手段を、さらに具備する光電センサ。
【請求項11】
請求項1または4に記載された光電センサにおいて、
前記基準受光量に基づき定められたしきい値を、感度調整手段により調整された感度による受光量と共に表示する表示部を、さらに具備する光電センサ。
【請求項12】
請求項1または4に記載された光電センサにおいて、
受光量を表示するための表示部と、
前記検出手段による検出処理が行われている間に、あらかじめ定められたタイミングで検出処理に用いられる受光量につき前記感度調整処理による調整に適合する受光量に対する変化の度合いを求め、その変化の度合いに応じて登録されているしきい値を変更すると共に、表示部に表示される受光量を、実際の受光量を前記変更の度合いに応じて補正した値に変更する調整手段を、さらに具備する光電センサ。
【請求項1】
検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ登録されたしきい値と比較することにより物体の検出処理を行う検出手段と、設定操作のための操作部とを具備する光電センサにおいて、
前記しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理のうちのいずれかに対応する操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、実行された操作に応じて取り込まれる受光量に基づき、前記しきい値の設定に用いられる基準となる基準受光量を判別する基準受光量判別手段と、
前記基準受光量判別手段により判別された基準受光量をしきい値の設定に適した値にするための感度調整処理を実行する感度調整手段とを具備する、光電センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された光電センサにおいて、
前記操作受付手段が受け付けた操作の内容によって異なる判別規準に従って、目標値に適合するように調整された基準受光量に基づき、前記しきい値として設定する受光量の値を判別する受光量判別手段を、さらに具備する光電センサ。
【請求項3】
請求項2に記載された光電センサにおいて、
前記目標値を記憶するための記憶手段と、
前記操作部において、前記感度調整処理に用いられる目標値の値を設定する操作が行われたことに応じて、その操作により設定された目標値を前記記憶手段に登録する目標値設定手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項4】
検出のための光を投光する投光部と、投光動作に応じて受光処理を行う受光部と、受光処理により得られた受光量をあらかじめ登録されたしきい値と比較することにより物体の検出処理を行う検出手段と、設定操作のための操作部とを具備する光電センサにおいて、
前記しきい値の設定に用いる受光量の取り込みを指示する操作の内容をセンサの使用目的毎に異ならせることにより使用目的別に準備された複数種の設定処理について、操作に応じて取り込まれた受光量を用いて感度を調整する処理を定義する感度調整ルールと、前記しきい値の設定に用いられる基準受光量を調整された感度による受光量に基づき定める処理を定義する受光量決定ルールとが、それぞれ登録される記憶手段と、
前記操作部において受光量の取り込みを指示する操作を受け付けたとき、その操作に応じて受光量の取り込みを実行しながら、受け付けた操作の内容に対応する感度調整ルールに従って感度を調整する感度調整手段と、
前記受け付けた操作により複数種の設定処理の中の1つが確定されたことに応じて、その確定された設定処理に対応する受光量決定ルールに従って、前記受け付けた操作に応じて取り込まれ、かつ感度調整手段により調整された感度に適合している受光量に基づき、前記しきい値の設定に用いられる基準受光量を決定する基準受光量決定手段とを具備する、光電センサ。
【請求項5】
前記記憶手段には、少なくとも1つの設定処理に対し、前記操作に応じて取り込んだ受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整すると共に、この調整後に取り込まれた受光量が前記目標値を超えたとき、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことが定義された感度調整ルールが登録されている、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項6】
前記記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が2回行われたことを操作の内容とする設定処理につき、1回目の操作に応じて取り込まれた受光量があらかじめ定めた目標値に適合するように感度を調整することと、2回目の操作に応じて取り込まれた受光量が前記感度調整に用いられた目標値を上回ったときに、当該目標値を超過した受光量が目標値に適合するように感度調整処理をやり直すことと、感度調整処理のやり直しに応じて、前記1回目の操作に対する感度調整で目標値に合わせられた受光量を再調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、1回目の操作および2回目の操作に対してそれぞれ取り込まれて、最終の感度に適合している一対の受光量を前記しきい値の設定に用いられる基準受光量とすることが定義された受光量決定ルールとが登録されている、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項7】
請求項6に記載された光電センサにおいて、
受光量を表示するための表示部と、前記受光量の取り込みを指示する1回目および2回目の操作に応じて取り込まれた受光量を、それぞれ前記1回目の操作に応じて調整された感度に基づく倍率にて前記表示部に表示する表示制御手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項8】
前記記憶手段には、受光量の取り込みを指示する操作が所定時間以上続けられたことを操作の内容とする設定処理につき、操作が続いている期間中の受光量の取り込みに並行して、取り込まれた受光量の中の最大値と最小値とを抽出することと、この処理により最大値が更新される都度、感度調整処理を実行すると共に、その時点までの受光量の最小値を調整された感度に適合する値に補正することとが定義された感度調整ルールと、操作が終了した時点での受光量の最大値と最小値とを前記しきい値の設定に用いられる基準受光量とすることとが定義された受光量決定ルールとが登録されている、請求項4に記載された光電センサ。
【請求項9】
請求項8に記載された光電センサにおいて、
受光量を表示するための表示部と、前記受光量の取り込みを指示する操作が続いている期間中に取り込まれた各受光量を、それぞれ当該操作に対する最初の感度調整処理において調整された感度に基づく倍率にて前記表示部に表示する表示制御手段とを、さらに具備する光電センサ。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載された光電センサにおいて、
前記操作部において、前記感度調整処理に用いられる目標値の値を設定する操作が行われたことに応じて、その操作により設定された目標値を前記記憶手段に登録する目標値設定手段を、さらに具備する光電センサ。
【請求項11】
請求項1または4に記載された光電センサにおいて、
前記基準受光量に基づき定められたしきい値を、感度調整手段により調整された感度による受光量と共に表示する表示部を、さらに具備する光電センサ。
【請求項12】
請求項1または4に記載された光電センサにおいて、
受光量を表示するための表示部と、
前記検出手段による検出処理が行われている間に、あらかじめ定められたタイミングで検出処理に用いられる受光量につき前記感度調整処理による調整に適合する受光量に対する変化の度合いを求め、その変化の度合いに応じて登録されているしきい値を変更すると共に、表示部に表示される受光量を、実際の受光量を前記変更の度合いに応じて補正した値に変更する調整手段を、さらに具備する光電センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−102424(P2013−102424A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227461(P2012−227461)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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