説明

光電変換回路

【課題】広いダイナミックレンジを確保しつつレンジ切換処理による遅延をなくして、レベル変化が激しい場合にも対応可能にする。
【解決手段】フォトダイオード11、演算増幅器12aおよび第1の抵抗12bとで構成され、フォトダイオード11の出力電流と第1の抵抗12bの抵抗値との積に絶対値が等しい電圧を出力する反転アンプ12と、第1の抵抗12bより小さい抵抗値を有し、電源の正側とフォトダイオード11との間に挿入された第2の抵抗21と、第2の抵抗21の両端の電圧を出力する差動増幅器22と、フォトダイオード11と演算増幅器12aの反転入力端子の接続点とアース間に接続され、反転アンプ12が飽和していないときには非導通状態、飽和しているときには導通状態となってフォトダイオード11の出力電流をバイパスさせるダイオード23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射された光の強度に対応した大きさの電気信号を出力する光電変換回路において、広いダイナミックレンジを確保しつつレンジ切換処理による遅延をなくすための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光の強度測定を行う光スペクトラムアナライザや光パワー計では、入射される光の強度に比例した電圧信号を出力するI/V(電流電圧)変換型の光電変換回路が用いられている。
【0003】
このI/V変換型の光電変換回路は、図6に示すように、電源の正電圧Va(+)にカソード側が接続され、入射光の強度に比例した電流Ip をアノード側から出力するフォトダイオード11と、非反転入力端子が接地された演算増幅器12aと帰還抵抗12bを用いた反転アンプ12とにより構成され、フォトダイオード11の出力電流Ip
を反転アンプ12の入力に与えることで、その出力端子に−Ip ×Rに等しい電圧Vout を出力させる。
【0004】
これは、演算増幅器を用いた反転アンプにおいては、その反転入力端子と非反転入力端子が仮想的に短絡接続された状態(イマジナリーショートという)となり、非反転入力端子が接地されてその電位がゼロボルトに固定された場合に、反転入力端子の電位もゼロボルトとなり、しかもその入力抵抗が非常に大きいので、フォトダイオード11から流れ込む電流Ip は、演算増幅器12aの帰還抵抗12bを介して出力に流れ、その結果−Ip ×Rに等しい電圧Vout を出力することになる。
【0005】
このようなI/V変換型の光電変換回路において、一般にフォトダイオード11のダイナミックレンジは入力光パワー換算(以下同様)で80dB以上の広さを有しているが、アンプ側の有効なダイナミックレンジは30〜40dB程度であるので、フォトダイオード11のダイナミックレンジ全体に対応する光電変換を行う場合、アンプ側でレンジ切換を行う必要が生じる。
【0006】
例えば、図7のように、異なる抵抗値Ra、Rb(Ra<Rb)をもつ二つの帰還抵抗12c、12dのいずれかをスイッチ12eによって選択できるようにし、入射光の強度が低くフォトダイオード11の出力電流Ip があるしきい値Ith(例えばIth=Vb(−)/Rb)より少ない範囲(非飽和領域)では、抵抗値が大きい方の帰還抵抗12dを用い、Vout
=−Ip ×Rbの出力電圧を得る。
【0007】
また、入射光の強度が高くフォトダイオード11の出力電流Ip がしきい値Ithを超える範囲(ただし、Vb(−)/Raは超えない)では、抵抗値が小さい方の帰還抵抗12cを用い、Vout =−Ip
×Raの出力電圧を得るようにしていた。ただし、Vb(+)、Vb(-)は反転アンプ12の正負同電圧の電源電圧であり、飽和出力電圧と等しいとする。
【0008】
ここで例えば、Ra=100Ω、Rb=1MΩ、アンプの電源電圧=飽和電圧=Vb(−)=−10Vとすると、抵抗値Rbの帰還抵抗12dが接続された場合、|Vb(−)|/Rb=10V/1MΩ=10μA以下の電流Ip に対して−10Vまでの非飽和の出力電圧を得ることができる。
【0009】
また、抵抗値Raの帰還抵抗12cが接続された場合には、|Vb(−)|/Ra=10V/100Ω=100mA以下の電流Ip
に対して−10Vまでの非飽和の出力電圧を得ることができる。
【0010】
残留ノイズのレベル等を考慮したアンプの有効なダイナミックレンジを40dB(10000倍)とすれば、その有効な出力範囲は−10V〜−1mVとなり、帰還抵抗12dが接続されているときの出力電圧−1mVは、1mV/1MΩ=1nAに相当するから、フォトダイオードの出力電流Ip の1nA〜10μAの範囲に対し、−1mV〜−10Vの出力電圧が得られる。
【0011】
また、帰還抵抗12cが接続されているときの出力電圧−1mVは、1mV/100Ω=10μAに相当するから、フォトダイオードの出力電流Ip の10μA〜100mAの範囲に対し、−1mV〜−10Vの出力電圧が得られることになる。
【0012】
したがって、入射光の強度が、フォトダイオード11の出力電流換算で1nA〜10μAの範囲にある場合には、スイッチ12eを帰還抵抗12d側(高ゲイン側)に接続して、そのときの演算増幅器12aの出力電圧を有効な出力として選択し、入射光の強度が、フォトダイオード11の出力電流換算で10μA〜100mAの範囲にある場合には、スイッチ12eを帰還抵12c側(低ゲイン側)に接続して、そのときの演算増幅器12aの出力電圧を有効な出力として選択する。
【0013】
ここで、帰還抵抗12cを接続しているときの出力は、帰還抵抗12dを接続しているときの出力のRa/Rb(=1/10000)に圧縮されているので、実際の入射光の強度に対応した出力にするためには、後続の演算回路でRb/Ra倍に換算する必要がある(必要であれば負の符号をとる絶対値処理も行う)。
【0014】
なお、上記のようにI/V変換回路の帰還抵抗の切換(レンジング)によりアンプ側のダイナミックレンジを拡大する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−300340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記構成の光電変換回路では、原理的にフォトダイオード11の出力電流に対していずれか一方のゲイン状態での電圧信号しか出力できないから、その出力を常時監視して、その出力が適正範囲、即ち、前記数値例で言うと、−1mV〜−10Vまでの電圧範囲にあれば、その出力電圧を有効として現状の帰還抵抗のままとし、適正範囲にないとき、例えば−1mVより高い場合や−10V(飽和電圧)に等しい場合には、他方の帰還抵抗に切換えて、適正範囲に入るか否かを調べるという処理が必要となる。
【0017】
したがって、適正範囲に無いと判断されたときのIp に比例した正しい出力電圧は取得できず、帰還抵抗切換後の出力電圧しか得られない。つまり、上記構成の光電変換回路では、強度が一定あるいは強度変化がゆるやかな光については対応できても、高速に且つレンジを超えるように大きくレベル変化する光に対しては、その強度に正確に比例した電気信号を得ることができない。
【0018】
本発明は、この問題を解決し、広いダイナミックレンジを確保しつつレンジ切換処理による遅延をなくして、レベル変化が激しい場合にも対応可能な光電変換回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の光電変換回路は、
電源の正側にカソード側が接続され、入射光を受けてその強度に対応した電流をアノード側から出射するフォトダイオード(11)と、
非反転入力端子が接地された演算増幅器(12a)および該演算増幅器の出力端子と反転入力端子との間に接続された第1の抵抗(12b)とで構成され、前記演算増幅器の反転入力端子が前記フォトダイオードのアノードに接続されて、前記フォトダイオードの出力電流と前記第1の抵抗の抵抗値との積に絶対値が等しい電圧を出力する反転アンプ(12)と、
前記第1の抵抗より小さい抵抗値を有し、前記電源の正側と前記フォトダイオードのカソードとの間に挿入された第2の抵抗(21)と、
前記第2の抵抗の両端に生じる該第2の抵抗の抵抗値と前記フォトダイオードの出力電流との積に絶対値が等しい電圧を出力する差動増幅器(22)と、
前記フォトダイオードのアノードおよび前記演算増幅器の反転入力端子の接続点にアノード側が接続され、カソード側が接地され、前記フォトダイオードの出力電流が前記反転アンプの出力を飽和させるレベルに達していないときには、前記演算増幅器の反転入力端子の電圧が素子固有の順方向電圧降下より低いことにより非導通状態となり、前記フォトダイオードの出力電流が前記反転アンプの出力を飽和させるレベルに達している範囲では、前記演算増幅器の反転入力端子の電圧が前記順方向電圧降下より高くなることにより導通状態となって前記フォトダイオードの出力電流をバイパスさせるダイオード(23)とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように構成したため、本発明の光電変換回路では、フォトダイオードの出力電流が反転アンプを飽和させない範囲ではダイオードが非導通となり、従来通り反転アンプの出力にフォトダイオードの出力電流と第1の抵抗の抵抗値との積に等しい電圧を出力させることができ、反転アンプが飽和している範囲では、ダイオードが導通状態となってフォトダイオードの出力電流をバイパスするので、反転アンプが飽和状態にあっても入力光強度に応じた電流が継続的に得られ、その電流と第2の抵抗の抵抗値との積に絶対値が等しい電圧を得ることができる。
【0021】
また、これら異なるレンジに対する出力がレンジ切換処理無しに並行して得られるので、スイッチ切換のための処理時間が必要とならず、レンジを超える変動の激しい光の強度に正しく対応して電圧が変化する信号を出力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成図
【図2】第1の実施形態の動作説明図
【図3】第1の実施形態の全体の動作説明図
【図4】第2の実施形態の構成図
【図5】第2の実施形態の動作説明図
【図6】I/V変換型の光電変換回路の基本構成図
【図7】ダイナミックレンジを拡大させた従来の光電変換回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した光電変換回路20の構成を示している。
【0024】
図1において、入射光を受けるフォトダイオード11のカソード側は、電源の正側Va(+)のラインに後述する第2の抵抗21を介して接続され、入射光を受けてその強度に対応した電流Ip をアノード側から出射する。
【0025】
フォトダイオード11のアノード側は、I/V変換用の反転アンプ12に接続されている。反転アンプ12は、非反転端子が接地され、正負の電源Vb(+)、Vb(-)の供給を受ける演算増幅器12aおよびその出力と反転入力端子の間を接続する抵抗値R1の第1の抵抗12bとで構成され、フォトダイオード11のアノードから出力される電流Ip
を演算増幅器12aの反転入力端子で受け、その電流Ip を第1の抵抗12bを介して出力端子側に流し、電流電流Ip と抵抗値R1の積に絶対値が等しい電圧Vout1=−Ip
×R1を出力させる。
【0026】
第2の抵抗21は、反転アンプ12の第1の抵抗12bに対して十分小さい抵抗値R2(例えば、R1=1MΩに対して、その1/10000の100Ω程度)を有し、電源の正側Va(+)とフォトダイオード11のカソードとの間に挿入され、フォトダイオード11の出力電流Ip に比例した電位差Ip ×R2を両端に発生させる。なお、抵抗値R2は、第1の抵抗12bの抵抗値R1に比べて小さく、且つ、その抵抗値そのものが、後述するようにフォトダイオード11の動作点を適正範囲に保持できる程度に設定されているものとする。
【0027】
この第2の抵抗21の両端に発生する電位差は、利得1の差動増幅器22に入力され、その電位差に絶対値が等しい電圧Vout2=−Ip ×R2が出力される。この差動増幅器22の電源も反転アンプ12と共通とする。ここで、差動増幅器22の出力電圧の極性は、反転アンプ12の出力電圧の極性と一致するように設定されている。
【0028】
このように、フォトダイオード11の出力電流Ip に比例した2種類の電圧信号Vout1、Vout2を出力させており、しかもその比例係数としての抵抗値R1、R2の比α=R1/R2は非常に大きく(例えば10000)設定されている。また、各電圧信号が出力できる負の最大の電圧は、飽和電圧、即ち、電源電圧Vb(−)であるから、α=R1/R2の比をもつ異なる入力レンジに対して同一電圧範囲の出力が並行して得られることになる。ここで、負の出力電圧範囲の下限は理論上0ボルトであるが、実際にはノイズの影響が無視できないので、両出力電圧の範囲(これが適正範囲となる)が同一となるように、出力範囲の上限と下限の比がα(=R1/R2)に等しくなるようにしている。つまり上限をVb(−)とすれば、下限は、その1/α=Vb(−)/αとなる。
【0029】
ただし、反転アンプ12の出力が電源電圧Vb(−)に達して飽和し、さらにフォトダイオード11の出力電流Ip が増した場合、出力側の電圧は電源電圧Vb(−)のままであるから、前記したイマジナリーショートの状態を維持できなくなり、その電流に応じて演算増幅器12aの反転入力端子の電位がゼロボルトから上昇し、フォトダイオード11の両端に印加される電圧が低下する。このフォトダイオード11の両端に印加される電圧は、フォトダイオード11の動作点を決定するものであり、印加電圧が大きく下がってしまうと出力電流も低下して、入力光強度に対応した電流が得られなくなり、その電流による電圧降下を検出している差動増幅器22の出力が不正確となる。
【0030】
これを解消するために、実施形態ではダイオード23のアノード側をフォトダイオード11のアノードと演算増幅器12の反転入力端子の接続点に接続し、カソード側を接地している。
【0031】
このようにダイオード23を接続したことで、フォトダイオード11の出力電流Ip が反転アンプ12の出力を飽和させるレベルに達していない範囲では、ダイオード23のアノードにかかる電圧は、演算増幅器12aのイマジナリーショートによりゼロボルトとなり、ダイオード素子固有の順方向電圧降下(例えば0.1V)より低いために非導通状態となり、フォトダイオード11と反転アンプ12によるI/V変換作用に影響を与えない。
【0032】
これに対し、フォトダイオード11の出力電流Ip が反転アンプ12の出力を飽和させるレベルに達してさらに増加しようとすると、前記したように演算増幅器12aの反転入力端子の電位が上昇しようとするが、その電位がダイオード23の素子固有の順方向電圧降下より高くなった時点でダイオード23が導通状態となり、フォトダイオード11の出力電流Ip
をバイパスする。
【0033】
ここで、ダイオード23の順方向電圧降下は、ショットキーバリアダイオード等を用いることでゼロボルトに極めて近くすることができ、しかもその電圧は、電流が変化してもほとんど一定であるので、反転アンプ12が飽和している状態でフォトダイオード11のカソード側の電位はほとんど変化しない。ただし、フォトダイオード11のアノード側の電圧は、第2の抵抗21による電圧降下分低くなるが、前記したように、第2の抵抗21の抵抗値を100Ω程度(あるいはそれ以下でもよい)と小さくしているので、その電圧降下は少なくて済み、フォトダイオード11の両端電圧を適正動作点から逸脱させないで済み、入力光強度に比例した電流を出力させることができる。
【0034】
したがって、反転アンプ12が飽和するような強さの光が入力した場合でも、その強度に比例した出力電圧Vout2を得ることができる。
【0035】
反転アンプ12の出力および差動増幅器22の出力は、それぞれA/D変換器25、26によって所定周波数のクロックC(フォトダイオード11に入力される光の強度変化に対して十分高速なクロック)に同期してサンプリングされ、デジタル値D1、D2にそれぞれ変換されて、有効値選択手段27に出力される。
【0036】
有効値選択手段27は、入力されたデジタル値D1、D2を内部のバッファに記憶し、適正範囲(前記例では、Vb(-)未満、Vb(-)/α以上の範囲)に入る値を選択して有効値Dout として、倍率情報Kとともに出力する。
【0037】
ここで倍率情報Kは、例えばデジタル値D1側が有効値として選択された場合には倍率1を示す「0」のデータ、デジタル値D2側が有効値として選択された場合には倍率α(=R1/R2)を示す「1」のデータである。
【0038】
次に、上記構成の光電変換回路20の数値例について簡単に説明する。
例えば、R1=1MΩ、R2=100Ω(α=10000)とし、反転アンプ12および差動増幅器22の電源電圧Vb(-)=飽和電圧=−10Vとする。なお、フォトダイオード11の電源Va(+)は、第2の抵抗21による電圧降下を見込んで、十分高く(例えば24V)設定されているものとする。
【0039】
上記条件で、図2のように、フォトダイオード11の出力電流Ip が1nA〜10μAの範囲で変化するとき、反転アンプ12の出力電圧Vout1は、−1mV(=−1nA×1MΩ)〜−10V(=−10μA×1MΩ)の範囲でIp
に比例して変化する。この範囲の動作は従来技術と同様である。
【0040】
また、フォトダイオード11の出力電流Ip が10μA〜100mAの範囲で変化するとき反転アンプ12は飽和状態となり、その出力電圧Vout1は飽和電圧のまま変化しないが、ダイオード23が導通してフォトダイオード11のアノード側の電位をほぼゼロボルト(ダイオードの順方向電位)保持しつつ、フォトダイオード11の出力電流をバイパスする。
【0041】
このため、フォトダイオード11からは入力光強度に比例した電流が継続的に出力され、その電流が第2の抵抗21に流れることによって生じる電圧降下分が差動増幅器22の出力電圧Vout2に現れる。
【0042】
したがって、図2に示しているように、フォトダイオード11の出力電流Ip が10μA〜100mAの範囲で変化するとき、差動増幅器22の出力電圧Vout2は、−1mV(=−10μA×100Ω)〜−10V(=−100mA×100Ω)の範囲でIp
に比例して変化する。
【0043】
図3は、この光電変換回路20のフォトダイオード11の出力電流に対する最終的な出力との関係を示す図であり、出力電流Ip が1nA以上10μA未満の範囲では、デジタル値D1×倍率1が有効な出力値となり、出力電流Ip が10μA以上100mA未満の範囲では、デジタル値D2×倍率10000が有効な出力値となるから、全体でみてIp
=1nA〜100mAの10倍(パワー換算で80dB相当)の広い範囲をカバーしている。
【0044】
また、前記したように、反転アンプ12の出力と差動増幅器22の出力は並行して出力されていて、その出力のうち適正範囲にあるものを選択出力するだけであるので、たとえ、図3に示しているように、レンジの境界の10μAを通過するようにIp(t)が変動しても、遅延なく有効値を選択して、その電流に対応した電圧信号Dout(t)を出力させる。
【0045】
(第2の実施形態)
なお、上記説明では発明を理解しやすいように反転アンプ12と差動増幅器22の出力のいずれかを有効値として選択する構成としていたが、これは本発明を限定するものではない。
【0046】
例えば、上記説明では演算増幅器12aや差動増幅器22の有効なダイナミックレンジをそれぞれ10000倍(パワー換算で40dB)とし、双方で80dB相当のダイナミックレンジを得ていたが、A/D変換器に入力される信号の直流ドリフトやノイズの問題を考慮し、アンプの有効な出力レンジの下限(前記例では−1mV)をノイズレベルから離すために、図4に示すような構成も考えられる。
【0047】
即ち、反転アンプ12の後段に、利得A(例えばA=100とする)の同相増幅器31、利得1の同相増幅器32(電圧ホロワ 省略可能)を並列に設け、それぞれの出力Vout3、Vout4をA/D変換器33、34によってデジタル値D3、D4に変換する。
【0048】
また、差動増幅器22の後段にも、利得A(=100)の同相増幅器35、利得1の同相増幅器36(電圧ホロワ 省略可能)を並列に設け、それぞれの出力Vout5、Vout6をA/D変換器37、38によってデジタル値D5、D6に変換する。なお、ここでは同相増幅器31、32、35、36を用いているが、反転増幅器を用いて各A/D変換器への入力信号の電圧を正極性に変換してもよい。
【0049】
この回路で、例えば、前記同様に第1の抵抗12bの抵抗値R1を1MΩ、第2の抵抗21の抵抗値R2を100Ω(α=10000)とすれば、図5のように、フォトダイオード11の出力電流Ip が1nA〜100nAの範囲では、反転アンプ12の出力Vout1が−1mV〜−100mVの範囲でIp に比例して変化し、利得100の同相増幅器31の出力Vout3が−100mV〜−10Vの範囲でIp
に比例して変化する。
【0050】
また、フォトダイオード11の出力電流Ip が100nA〜10μAの範囲では、反転アンプ12の出力Vout1が−100mV〜−10Vの範囲でIp に比例して変化し、利得1の同相増幅器32の出力Vout4が−100mV〜−10Vの範囲でIp
に比例して変化する。
【0051】
同様に、フォトダイオード11の出力電流Ip が10μA〜1mAの範囲では、差動増幅器22の出力Vout2が−1mV〜−100mVの範囲でIp に比例して変化し、利得100の同相増幅器35の出力Vout5が−100mV〜−10Vの範囲でIp
に比例して変化し、フォトダイオード11の出力電流Ip が1mA〜100mAの範囲では、差動増幅器22の出力Vout2が−100mV〜−10Vの範囲でIp に比例して変化し、利得1の同相増幅器36の出力Vout6が−100mV〜−10Vの範囲でIp
に比例して変化する。
【0052】
なお、フォトダイオード11の出力電流Ip が10μAを超える範囲では、前記同様に反転アンプ12は飽和しているが、フォトダイオード11の出力電流はダイオード23を介してバイパスされるので、入力光強度に比例した電流が継続して得られる。
【0053】
各同相増幅器31、32、35、36の出力は、それぞれA/D変換器33、34、37、38によってデジタル値D3〜D6に変換されて、前記同様に有効値選択手段27に入力され、そのうちの適正範囲(この場合絶対値が100mV以上10V未満)に入るものが有効値Dout として選択され、倍率情報Kとともに出力される。
【0054】
ここで倍率情報Kとしては、2ビット構成として、例えばデジタル値D3が有効値として選択された場合には倍率1を示す「00」のデータ、デジタル値D4が有効値として選択された場合には倍率100を示す「01」のデータ、デジタル値D5が有効値として選択された場合には倍率10000を示す「10」のデータ、デジタル値D6が有効値として選択された場合には倍率1000000を示す「11」のデータを出力する。
【0055】
このように、反転アンプ12と差動増幅器22の後段に同相増幅器31、32、35、36を接続した場合には、図5に示したように、各同相増幅器31、32、35、36の有効な出力レンジ(つまりA/D変換器への有効な入力レンジ)は、10V〜100mVの比較的狭い範囲におさまり、直流ドリフトやノイズ等の影響を受けにくくなる。
【0056】
また、4つの増幅器(反転アンプ12、差動増幅器22、同相増幅器31、35)で入力レンジを分割しているから、反転アンプ12と差動増幅器22の出力だけで入力レンジを分割する構成に比べて、直流ドリフトやノイズ等の影響を低減しつつ、ダイミックレンジを広げることができる。
【0057】
上記実施形態の数値例も一例であり、本発明を限定するものではない。また、利得1の同相増幅器32、36は電圧ホロアであるから、これらを省略してもよい。
【0058】
上記回路で第1の抵抗12bの抵抗値R1と第2の抵抗21の抵抗値R2との比α=R1/R2=10000であり、これは、反転アンプ12側全体の入力レンジの広さ(10μA/1nA=10000)および差動増幅器22側全体の入力レンジの広さ(100mA/10μA=10000)に相当しており、この実施例では、それぞれの広さを利得100と利得1倍の同相増幅器でカバーしているが、反転アンプ側と差動増幅器側それぞれの入力レンジの広さを抵抗比α=R1/R2に対応させればよく、他の数値例でも同様な光電変換処理が可能である。
【0059】
また、前記実施形態では、反転アンプ12の出力と差動増幅器22の出力のいずれか、あるいはそれらの増幅出力から有効値を選択して倍率情報とともに出力する構成であったが、出力形態は任意であり、この光電変換回路を用いる装置の処理方式に応じて種々変更可能である。例えば、反転アンプ12の出力と差動増幅器22の出力を一定時間A/D変換器でデジタル値に変換してメモリに記憶し、その記憶したデータに対して、前記倍率に相当するウエイトを掛けて加算演算することで、入射光の強度を求める場合も考えられる。
【符号の説明】
【0060】
11……フォトダイオード、12……反転アンプ、12a……演算増幅器、12b……第1の抵抗、20……光電変換回路、21……第2の抵抗、22……差動増幅器、23……ダイオード、25、26、33、34、37、38……A/D変換器、31、32、35、36……同相増幅器、27……有効値選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の正側にカソード側が接続され、入射光を受けてその強度に対応した電流をアノード側から出射するフォトダイオード(11)と、
非反転入力端子が接地された演算増幅器(12a)および該演算増幅器の出力端子と反転入力端子との間に接続された第1の抵抗(12b)とで構成され、前記演算増幅器の反転入力端子が前記フォトダイオードのアノードに接続されて、前記フォトダイオードの出力電流と前記第1の抵抗の抵抗値との積に絶対値が等しい電圧を出力する反転アンプ(12)と、
前記第1の抵抗より小さい抵抗値を有し、前記電源の正側と前記フォトダイオードのカソードとの間に挿入された第2の抵抗(21)と、
前記第2の抵抗の両端に生じる該第2の抵抗の抵抗値と前記フォトダイオードの出力電流との積に絶対値が等しい電圧を出力する差動増幅器(22)と、
前記フォトダイオードのアノードおよび前記演算増幅器の反転入力端子の接続点にアノード側が接続され、カソード側が接地され、前記フォトダイオードの出力電流が前記反転アンプの出力を飽和させるレベルに達していないときには、前記演算増幅器の反転入力端子の電圧が素子固有の順方向電圧降下より低いことにより非導通状態となり、前記フォトダイオードの出力電流が前記反転アンプの出力を飽和させるレベルに達している範囲では、前記演算増幅器の反転入力端子の電圧が前記順方向電圧降下より高くなることにより導通状態となって前記フォトダイオードの出力電流をバイパスさせるダイオード(23)とを備えたことを特徴とする光電変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−105197(P2012−105197A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253934(P2010−253934)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】