説明

光電変換素子、光電気化学電池、及びそれらに用いられる色素

【課題】長波長域において高いIPCEを発揮し、光電変換効率を達成し、しかも耐久性に優れる光電変換素子、光電気化学電池、及びそれらに用いられる色素の提供。
【解決手段】導電性支持体上に、色素が吸着された半導体微粒子の層を有する感光体と、電荷移動体と、対極とを含む積層構造よりなる光電変換素子であって、前記色素の少なくとも一種が下記式(1)で表される構造を有することを特徴とする光電変換素子。


(式中、Qは芳香環を表す。X、Xは硫黄原子、セレン原子、酸素原子、またはCRを表す。R、Rはアルキル基を表す。R、R’はアルキル基または芳香族基である。Pは特定の原子群を表す。Pはポリメチン色素を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、PとPとは異なるものとする。Wは電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換効率が高く、耐久性に優れた光電変換素子、光電気化学電池、及びそれらに用いられる色素に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵のクリーンエネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくにその契機となったのは、スイス ローザンヌ工科大学のGraetzel等の研究成果である。彼らは、ポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した構造を採用し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特許文献1には、この技術を応用し、ルテニウム錯体色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が記載されている。しかしながら従来のルテニウム錯体色素は、可視光線を用いて光電変換できるものの、700nmより長波長の赤外光をほとんど吸収することができないため、赤外域での光電変換能が低くなりがちである。また、ルテニウムのような高価な希少金属のみによらずに太陽光発電を行うことが、普及のために望まれる。
【0005】
そこで、金属錯体以外の色素を利用する光電変換素子の研究も進められている。本出願人は、先に特定のポリメチン色素を利用した素子の開発を行った(特許文献2参照)。これにより、近赤外線〜赤外域に高い光電変換特性を示す素子を完成した。さらに、特許文献3には、非対称のビススクアリリウム色素を用いることで、600nm以上の長波長領域において高い光電変換効率を達成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5463057号明細書
【特許文献2】特許4217320号明細書
【特許文献3】特開2009−242379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2等の技術により、金属錯体を必須とせず、広い波長領域を利用した高い光電変換効率を達成できる素子が提供されてきた。しかしながら、本発明者は、グリーンエネルギーの本格的な供給源としてその一翼を担うことを見据え、その性能で十分とはせず、さらに高い特性を発揮する光電変換素子の開発を目指した。
上記本技術分野の現状に鑑み、本発明は、800nmを超える波長域において高いIPCE(電流-電圧特性:Incident Photon to Current Conversion Efficiency)を発揮し、高光電変換効率を達成し、しかも耐久性に優れる光電変換素子、光電気化学電池、及びそれらに用いられる色素の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)導電性支持体上に、色素が吸着された半導体微粒子の層を有する感光体と、電荷移動体と、対極とを含む積層構造よりなる光電変換素子であって、前記色素の少なくとも一種が下記式(1)で表される構造を有する光電変換素子。
【0009】
【化1】

(式中、Qは芳香環を表す。X、Xは硫黄原子、セレン原子、酸素原子、またはCRを表す。R、Rはアルキル基を表す。R、R’はアルキル基または芳香族基である。Pは下記式P11または下記式P12で表される原子群を表す。Pはポリメチン色素を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、PとPとは異なるものとする。Wは電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。)
【0010】
【化2】

(式中、R、R、R10、R11は、酸性基を有することがある脂肪族基、又は酸性基を有することがある芳香環基を表す。R、R12は硫黄原子または下記式Rを表す。R、R、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは酸素原子又は置換基を表す。n21は0以上の整数を表す。n22、n31は0又は1を示す。)
【0011】
【化3】

(式RにおけるR13、R14はシアノ基又は酸性基を表す。)
(2)前記Pが下記式P11−1またはP12−1である(1)記載の光電変換素子。
【0012】
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、R11、n21は、式P11,P12と同義である。)
(3)前記n22、n31が0である(1)又は(2)に記載の光電変換素子。
(4)前記Pが下式P11−2またはP12−2で表される(1)又は(3)に記載の光電変換素子。
【0013】
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R10、n21は、P11、P12と同義である。)
(5)前記n21が0または1である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(6)前記Rが下記式R91又はR92で表される(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0014】
【化6】

(式R92中、R15は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
(7)前記Rが酸素原子ある(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(8)前記Pを形成する原子群が下記式P21または下記式P22で表される(1)〜(7)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0015】
【化7】

(式中、R21、R22、R23は水素原子又は置換基を表す。Arは、Hammett則におけるσp値が0以下の置換基又はπ過剰系複素環基を有する芳香環基を表す。n41は0以上の整数を表す。)
(9)前記Arが下記式RC1、RC2、又はRC3で表される(1)〜(8)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0016】
【化8】

(式RC1〜RC4中、YはS、NR24、またはC(R25を表す。R24はアルキル基を表す。R25は置換基を表す。Aは芳香環を表す。R26〜R29は水素原子もしくは置換基を表す。EはS、NR30、Oを表す。R30はアルキル基を表す。DはHammett則におけるσp値が0以下の置換基を表す。Bは芳香環を表す。Xは−SR、−OR、−NRを表し、Rはアルキル基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。ndは0〜4の整数を表す。*は結合手を表し、式P21及び式P22でみて、メチン鎖を介して連結しても、二重結合になって直接連結されてもよい。kは正の整数である。)
(10)前記式(1)で表される色素において、前記Pが電子のアクセプターをなし、Pがドナーをなし、該色素がドナー・アクセプター型の分子を構成している(1)〜(9)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(11)前記感光体が下記式(I)で表される色素をさらに有する(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
Mz(LLm1(LLm2(X)m3・CI : 式(I)
[式(I)において、Mzは金属原子を表す。LLは下記式LL1で表される2座の配位子を表す。LLは下記式LL2で表される2座又は3座の配位子を表す。Xは1座又は2座の配位子を表す。m1は0〜3の整数を表す。m2は1〜3の整数を表す。m3は0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【0017】
【化9】

(式LL1において、R51及びR52は酸性基を表す。R53及びR54は置換基を表す。R55及びR56はアルキル基又は芳香環基を表す。d1及びd2は0〜5の整数を表す。L及びLは共役鎖を表す。a1及びa2は0〜3の整数を表す。d3は0又は1を表す。b1およびb2は0〜3の整数を表す。)
【0018】
【化10】

(式LL2において、Za、Zb及びZcは5又は6員環を形成しうる原子群を表す。cは0又は1を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。)
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の光電変換素子を備える光電気化学電池。
(13)下記式(1)で表される構造を有する色素化合物。
【0019】
【化11】

(式中、Qは芳香環を表す。X、Xは硫黄原子、セレン原子、酸素原子、またはCRを表す。R、Rはアルキル基を表す。R、R’はアルキル基または芳香族基である。Pは下記式P11または下記式P12で表される原子群を表す。Pはポリメチン色素を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、PとPは異なるものとする。Wは電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。)
【0020】
【化12】

(式中、R、R、R10、R11は脂肪族基又は芳香環基を表す。R、R12は硫黄原子または下記式Rを表す。R、R、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは酸素原子又は置換基を表す。n21は0以上の整数を表す。n22、n31は0又は1を示す。)
【0021】
【化13】

(式RにおけるR13、R14はシアノ基又は酸性基を表す。)
【0022】
本明細書において、芳香環とは、芳香族環及び複素環(脂肪族複素環及び芳香族複素環)を含む意味に用いる。炭素−炭素二重結合はE型又はZ型のいずれであってもよい。複数の置換基や配位子を同時に択一的に規定するときには、それぞれの置換基ないし配位子は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数の置換基や配位子が近接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池は、800nmを超える波長域において高いIPCEを発揮し、高光電変換効率を達成し、しかも耐久性に優れる。また、上記本発明の色素化合物は、新規な化合物であり、上記高性能を発揮する光電変換素子及び光電気化学電池に用いられる増感色素として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の光電変換素子は、特定の構造を有する増感色素を吸着した半導体微粒子の層を有する感光体を具備する。上記色素化合物は、複環構造の母核(式(1)のP、Pに挟まれた環状原子群)の左右に、互いに異なる機能性の原子群(P、P)を有する。この構造により、分子内でπ電子が非局在化しつつ、一方でHOMO(最高被占軌道)/LUMO(最低空軌道)の局在化が促進される。ここで重要なことは、単に非対称性の構造としたのではなく、中央の複環構造に特有の母核を採用し、かつ片側の原子群(P)に電子吸引性のロダニン残基が導入されていることである。これにより、光電変換素子において、800nm超という長波長領域でも高いIPCEを発揮し、高光電変化効率を実現し、さらに高い耐久性を達成した。
この理由は未解明の点を含むが、推定を含めて下記のように説明できる。つまり、チタニア等の半導体微粒子に上記特定の色素が吸着したとき、分子内でHOMOの局在化した側がドナーとして機能し、逆にLUMOの局在化した側がアクセプターとして機能することが予想される。これにより、半導体微粒子側に配置されたLUMOより効率的に半導体微粒子に電子を送り込み、反対に電子の逆移動は抑制して、高い光電変換効率が達成されたと考えられる。超長波長領域での特性の良化及び耐久性の良化については、ロダニン残基の高い電子吸引性並びに複環構造の母核を含む分子構造が寄与したと推察される。以下に本発明についてその好ましい実施態様に基づき、詳細に説明する。
【0026】
[素子の構造]
本発明の光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体1上にその順序で配された、感光体層2、電荷移動体層3、及び対極4からなる。前記導電性支持体1と感光体2とにより受光電極5を構成している。その感光体2は導電性微粒子22と増感色素21とを有しており、色素21はその少なくとも一部において導電性微粒子22に吸着している(色素は吸着平衡状態になっており、一部電荷移動体層に存在していてもよい。)。感光体2が形成された導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせるようにして、光電気化学電池100として作動させることができる。
【0027】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22を含む感光体層(半導体膜)2よりなる電極である。感光体層(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有している。そこでこの電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっている。電極上の電子が外部回路で仕事をしながら、励起されて酸化された色素は電解質中の還元剤(例えば、I)から電子を受け取り、基底状態の色素に戻ることにより、光電気化学電池として作用する。この際、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0028】
上記素子の作動原理からも分かるとおり、一般に、増感色素の増感域の長波長化を実現するために、色素のHOMO/LUMOギャップを小さくすることが好ましい。そこで、色素のHOMOのエネルギー準位を上げ、必要に応じてLUMOを下げることが考えられる。HOMOのエネルギー準位を上げることにより、色素のHOMOのエネルギー準位と電解液中の還元剤(例えば、I)のエネルギー準位との差が小さくなるため、還元剤による酸化された色素の還元速度が遅くなる。また、色素のLUMOのエネルギー準位を下げると、半導体微粒子(例えば、酸化チタン)の導電帯のエネルギー準位との差が小さくなるため、電子注入効率が低下し、短絡電流やフィルファクターが小さくなり、光電変換効率を高くすることは困難である。
一方、半導体微粒子の導電帯のエネルギー準位を下げて電子注入効率を上げることが考えられる。この方法では、短絡電流を大きくすることはできるが、開放電圧は小さくなる。
これに対して、本発明の好ましい実施形態によれば、上記バンドギャップの縮小とともに、上述した両軌道の局在化を大きく促進させ、超長波長での光電変換効率の向上や耐久性の向上を一層効果的に達成する分子設計ができ好ましい。
【0029】
本実施形態の光電変換素子は、導電性支持体上に後述の色素が吸着された多孔質半導体微粒子の層を有する感光体を有する。このとき色素において一部電解質中に解離したもの等があってもよい。感光体は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。本実施形態の光電変換素子の感光体には、特定の増感色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができる。なお、光電変換素子の上下は特に定めなくてもよいが、本明細書において、図示したものに基づいて言えば、受光側となる対極4の側を上部(天部)の方向とし、支持体1の側を下部(底部)の方向とする。
【0030】
[色素]
(一般式(1)の化合物からなる色素)
本発明の光電変換素子においては、少なくとも下記一般式(1)で表される化合物からなる色素が使用される。一般式(1)の色素は、その式と別の共鳴構造式で表されるものも含まれる。このことは、一般式(1)に導入される原子群(P11、P12、Ar等)のすべての化学式について同様であり、分子全体として整合する共役構造として解釈されるものである。
【0031】
【化14】

【0032】
・Q
式(1)中、Qは芳香環を表す。芳香環は上述のように芳香族環及び複素環を含む。芳香族環としては、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が好ましい。複素環としては、後記例示置換基HArexの環構造が挙げられる。
【0033】
・X、X
、Xは硫黄原子、セレン原子、酸素原子、またはCRを表す。ここでR、Rはアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が挙げられ、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、デシル、1−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等が好ましく、メチル、エチル、イソプロピル、デシル、1−エチルペンチル、2−エトキシエチル、ベンジルがより好ましく、メチル、エチル、デシル、2−エトキシエチルが特に好ましい。以下、このアルキル基の例示及び好ましいものを、アルキル基「Rex」と呼ぶ。X、Xは酸素原子もしくはCRが好ましく、CRがより好ましい。なお、一般式(1)中、X,Xと、N−R,N−R’との上下の関係は反転したものであってもよい(つまり、N−Rが下、N−R’が上という関係であってもよい)。
【0034】
・R、R’
R、R’はアルキル基または芳香族基である。アルキル基としては、上記アルキル基Rexが挙げられる。芳香族基としては、炭素原子数6〜26のアリール基が挙げられ、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニルが好ましく、フェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニルがより好ましい。以下、この芳香族基(アリール基)の例示及び好ましいものを、芳香族基「Arex」と呼ぶ。
【0035】
・P
は後記式P11または式P12で表される原子群を表す。
【0036】
・P
はポリメチン色素を形成するのに必要な原子群を表す。
【0037】
ただし、PとPは異なるものとする。ここで、両原子群が異なるとは、本発明の効果を奏する範囲で異なっていればよく、その具体的な構造は限定されない。典型的には、前記式(1)で表される色素において、前記Pが電子のアクセプターをなし、Pがドナーをなす、該色素がドナー・アクセプター型の分子を構成することが好ましい。ここで、ドナー・アクセプター型の色素とは光が照射された際に色素内のドナー部位が分子内の共役を介してアクセプター部位へ電子を移動する分子内光誘起電子移動を生じる色素をいう。
【0038】
・W
は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。一般に、色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、色素中の助色団及び置換基に依存する。一般式(1)の構造を有する色素が解離性の置換基を有する場合、解離して負電荷を有していてもよい。この場合、分子全体の電荷はWによって中和される。
が陽イオンの場合、例えば、プロトン、無機若しくは有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)又はアルカリ金属イオンである。Wが陰イオンの場合、無機陰イオン又は有機陰イオンのいずれであってもよい。例えば、ハロゲン陰イオン、(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなどが挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとしてイオン性ポリマーあるいは、色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよいし、金属錯イオン(例えば、ビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III))でもよい。
【0039】
【化15】

【0040】
・R、R、R10、R11
式中、R、R、R10、R11は、酸性基を有することある脂肪族基、又は酸性基を有することある芳香環基を表す。脂肪族基としては、前記アルキル基Rexの他、下記のシクロアルキル基CRexが挙げられる。CRexとして、好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基であり、より好ましくは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等である。芳香環基としては、前記芳香族基Arexの他、下記の複素環基HArexが挙げられる。HArexとしては、好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基であり、より好ましくは、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等である。
【0041】
酸性基とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、例えば、カルボキシ基、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基など、あるいはこれらのいずれかを有する基が挙げられ、好ましくはカルボキシ基あるいはこれを有する基である。また酸性基はプロトンを放出して解離した形を採っていてもよく、塩であってもよい。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホニル基、若しくはホスホリル基、又はこれらの塩のいずれかであることが好ましい。酸性基とは、連結基を介して結合した基でもよく、例えば、カルボキシビニレン基、ジカルボキシビニレン基、シアノカルボキシビニレン基、カルボキシフェニル基などを好ましいものとして挙げることができる。なお、ここで挙げた酸性基及びその好ましい範囲を酸性基Acということがある。
【0042】
・R、R12
、R12は、硫黄原子または下記式Rを表す。
【0043】
【化16】

式RにおけるR13、R14はシアノ基又は酸性基を表す。R13、R14はは両者がシアノ基もしくは酸性基であってもよいが、シアノ基と酸性基との組合せであることが好ましい。好ましい酸性基としては、前記酸性基Acが挙げられる。
【0044】
・R、R、R
、R、Rは水素原子又は置換基を表す。置換基としては、置換基Tが挙げられる。R、R、Rはアルキル基Rex又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
・R
は酸素原子又は置換基を表す。Rが2価の置換基であるとき、下記式R91又はR92で表されることが好ましい。
【0045】
【化17】

式R92中、R15は水素原子もしくはアルキル基を表す。アルキル基としては、上記アルキル基Rexが挙げられる。
【0046】
n21は0以上の整数を表し、0〜3であることが好ましく、0または1であることがより好まい。n22、n31は0又は1を示し、0であることが好ましい。
【0047】
本発明においては前記Pが下記式P11−1またはP12−1であることが好ましい。
【0048】
【化18】

式中、R、R、R、R、R、R11、n21は、式P11,P12と同義である。
【0049】
本発明においては、前記Pが下式P11−2またはP12−2で表されることもまた好ましい。
【化19】

式中、R、R、R、R、R、R10、n21は、P11、P12と同義である。
【0050】
本発明においては前記Pが下記式P21またはP22であることが好ましい。
【0051】
【化20】

【0052】
・R21、R22、R23
式中、R21、R22、R23は置換基を表す。置換基としては、後記置換基Tが挙げられ。R21、R22、R23はアルキル基Rex又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0053】
・n41
n41は0以上の整数を表し、0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
【0054】
・Ar
Arは、Hammett則におけるσp値が0以下の置換基を有する芳香環基または前記σp値が0以下の置換基を有するπ過剰系複素環基を表す。π過剰系複素環基とは、π過剰系複素環化合物の残基を意味する。π過剰系とは、典型的には、窒素原子等のローンペアを含めπ電子系の数が環を構成する原子の数を上回る状態を意味する。詳細は、例えば、「新編 ヘテロ環化合物 基礎編」(講談社サイエンテイフィック)p15等を参照することができる。
【0055】
ここでHammett則における置換基定数σp値について説明する。Hammett則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.ハメットにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。
【0056】
置換基定数σが0以下の置換基としては、電子供与性の置換基が挙げられ、具体的には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは前記Rexが挙げられる。アルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、より好ましくは、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等である。σp値が0以下の置換基において、σp値は、−0.13以下であることが好ましく、−0.2以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、−1.2以上であることが実際的である。
【0057】
逆に、置換基定数σp値が正のものとしては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ホルミル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、メルカプト基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、パーフルオロアルキル基、ヘテロ環基(例えば、ヘテロ環がピリジン環、ピリミジン環で、2−ピリミジニル基、4―ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、2−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基)、電子求引性基が置換したフェニル基(電子求引性基としては上記置換基定数σpが正の基として挙げた基で、特にカルボキシ基が好ましく、3−カルボキシフェニル基又は4−カルボキシフェニル基)等が挙げられる。σp値が正の置換基において、σp値は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。上限値は特にないが、1.4以下であることが実際的である。
【0058】
Arは直接またはメチン鎖を介して連結してよく、直接連結する場合には共役構造が上記式とは異なることを意味する。
【0059】
前記Arは、下記式RC1、RC2、RC3、RC4で表されることことが好ましい。
【0060】
【化21】

【0061】
・Y
式中、YはS、NR24、またはC(R25を表す。R24はアルキル基を表す。アルキル基の好ましいものとしては前記Rexが挙げられる。R25は置換基を表す。置換基としては後記置換基Tが挙げられる。
【0062】
・A
Aは芳香環を表す。芳香環の好ましいものとしては、前記芳香族基Arex及び複素環基HArexが挙げられる。
【0063】
・R26〜R29
26〜R29は水素原子もしくは置換基を表す。置換基の好ましいものとしては後記置換基Tが挙げられる。好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基等である。
【0064】
・E
EはS、NR29、Oを表す。R29はアルキル基を表す。アルキル基の好ましいものとしては前記Rexが挙げられる。
【0065】
・D
DはHammett則におけるσp値が0以下の置換基を表す。
【0066】
・B
Bは芳香環を表す。芳香環の好ましいものとしては、前記芳香族基Arex及び複素環基HArexが挙げられる。
【0067】
・R、nd
XはSR、OR、NRを表し、Rはアルキル基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。ndは0〜4の整数を表す。Rの置換基の好ましいものとしては後記置換基Tが挙げられる。好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基等である。
【0068】
*は結合手を表し、メチン鎖を介して連結されてもよい。
kは正の整数である。1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0069】
前記式P21又はP22が式(1)の母核とともになす構造は下記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)で表される構造であることが好ましい。
【0070】
【化22】

式中、Q、P、X、X、R、R’、W1、Ar、n41は前記式(1)と同じ意味を表す。R210、R211、R212、R220、R221は水素原子又は置換基を表し、好ましいものはR21、R22、R23と同じである。
【0071】
なお、本明細書において「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは特定の名称ないし化学式で示すときには、当該化合物そのものに加え、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換基ないし配位子をその名称で呼ぶとき、あるいは「基」という語を末尾に付して呼ぶときには、所望の効果を奏する範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよいことを意味する。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0072】
導入可能な好ましい置換基(以下、置換基Tという。)としては、
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0073】
一般式(1)で表される本発明の色素は、エタノール溶液における極大吸収波長が、好ましくは500〜1300nmの範囲であり、より好ましくは600〜1100nmの範囲である。
以下に本発明の一般式(1)で表される色素の好ましい具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。*は下記一般スキームの母核に結合する炭素原子の位置を表す。Buはブチル基を表す。
【0074】
【化23】

【0075】
【化24】

【0076】
【化25】

【0077】
【化26】

【0078】
【化27】

【0079】
【化28】

【0080】
【化29】

【0081】
【化30】

【0082】
【化31】

【0083】
【化32】

【0084】
【表A】


【0085】
一般式(1)で表される化合物からなる色素の合成は、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal,第40巻(3号),253〜258頁、Dyes and Pigments,第21巻,227〜234頁及びこれらの文献中に引用された文献の記載等を参考にして行うことができる。
例えば、前記例示色素14は、以下のスキームにより得ることができる。他の色素も同様の方法で得ることができる。
【0086】
【化33】

NMP:1−メチル−2−ピロリドン、Cl−Ph:クロロベンゼン、AcOH:酢酸、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、Py:ピリジン、Allyl:アリル基
【0087】
(一般式(I)の化合物からなる色素)
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、さらに金属錯体色素と併用することが好ましい。金属錯体色素と併用することで、互いの吸着状態を制御し、各々よりも高い効率や耐久性を達成することができる。
【0088】
金属錯体色素としては、下記一般式(I)で表される化合物からなる色素を含むことが好ましい。
Mz(LLm1(LLm2(X)m3・CI : 式(I)
(式(I)において、Mzは金属原子を表す。LLは下記式LL1で表される2座の配位子を表す。LLは下記式LL2で表される2座又は3座の配位子を表す。Xは前記LL及びLL以外の1座又は2座の配位子を表す。m1は0〜3の整数を表す。m2は1〜3の整数を表す。m3は0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。)
【0089】
【化34】

(式LL1において、R51及びR52は酸性基を表す。R53及びR54は置換基を表す。R55及びR56はアルキル基又は芳香基を表す。d1及びd2は0〜5の整数を表す。L及びLは共役鎖を表す。a1及びa2は0〜3の整数を表す。b1及びb2は0〜3の整数を表す。d3は0又は1を表す。)
【0090】
【化35】

(式LL2において、Za、Zb及びZcは5又は6員環を形成しうる原子群を表す。cは0又は1を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。)
【0091】
・金属原子Mz
Mzは金属原子を表す。Mzは好ましくは4配位または6配位が可能な金属であり、より好ましくはRu、Fe、Os、Cu、W、Cr、Mo、Ni、Pd、Pt、Co、Ir、Rh、Re、Mn又はZnである。特に好ましくは、Ru、Os、Zn又はCuであり、最も好ましくはRuである。
【0092】
*LL(式LL1)
・m1
m1は0〜3の整数であり、1〜3であるのが好ましく、1であるのがより好ましい。m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。
【0093】
・R51及びR52
51及びR52はそれぞれ独立に酸性基を表す。例えばカルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロキサム酸基、例えば、−CONHOH、−CON(CH)OH等)、ホスホリル基(例えば−OP(O)(OH)等)及びホスホニル基(例えば−P(O)(OH)等)並びにこれらの塩が挙げられ、好ましくはカルボキシ基、ホスホニル基及びこれらの塩であり、より好ましくはカルボキシ基又はその塩である。R51およびR52はピリジン環上のどの炭素原子に置換してもよい。
【0094】
・R53及びR54
53、R54はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくは前記置換基Tである。
【0095】
配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また配位子LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0096】
・R55およびR56
式中、R55およびR56はそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香環基を表す。芳香族基としては、好ましくは炭素原子数6〜30の芳香族基、例えば、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル等である。複素環(ヘテロ環)基としては、好ましくは炭素原子数1〜30のヘテロ環基、例えば、2−チエニル、2−ピロリル、2−イミダゾリル、1−イミダゾリル、4−ピリジル、3−インドリルである。好ましくは1〜3個の電子供与基を有するヘテロ環基であり、より好ましくはチエニルが挙げられる。該電子供与基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基(以上好ましい例はR53及びR54の場合と同様)またはヒドロキシ基であるのが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはヒドロキシ基であるのがより好ましく、アルキル基であるのが特に好ましい。R55とR56は同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
55とR56は、直接ベンゼン環に結合していてもよい。R55とR56は、L及び/又はLを介してベンゼン環に結合していてもよい。
【0097】
・d1、d2
d1、d2は0〜5の整数であるが、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0098】
・L及びL
及びLはそれぞれ独立に共役鎖を表し、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エテニレン基及び/又はエチニレン基からなる共役鎖を表す。エテニレン基やエチニレン基等は、無置換でも置換されていてもよい。エテニレン基が置換基を有する場合、該置換基はアルキル基であるのが好ましく、メチルであるのがより好ましい。L及びLはそれぞれ独立に、炭素原子数2〜6個の共役鎖であるのが好ましく、チオフェンジイル、エテニレン、ブタジエニレン、エチニレン、ブタジイニレン、メチルエテニレン又はジメチルエテニレンがより好ましく、エテニレン又はブタジエニレンが特に好ましく、エテニレンが最も好ましい。LとLは同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。なお、共役鎖が炭素―炭素二重結合を含む場合、各二重結合はE型であってもZ型であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0099】
・d3
d3は0または1である。特に、d3が0のときa2は1又は2であるのが好ましく、d3が1のときa2は0又は1であるのが好ましい。a1とa2の和は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0100】
・b1及びb2
b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数であるのが好ましい。b1が2以上のとき、R53は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b2が2以上のとき、R54は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。またb1及びb2がともに1以上のとき、R53とR54が連結して環を形成していてもよい。形成する環の好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。
【0101】
・a1及びa2
a1及びa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。a1とa2の和が1以上であって、配位子LLが酸性基を少なくとも1個有するときは、一般式(I)中のm1は2または3であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。a1が2以上のときR51は同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときR52は同じでも異なっていてもよい。a1は0又は1であるのが好ましく、a2は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0102】
*LL(式LL2)
・m
m2は1〜3の整数であり、1〜2であるのが好ましい。mが2のときLLは同じでも異なっていてもよい。
【0103】
・Za、Zb、Zc
Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。形成される5員環又は6員環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Za、Zb及びZcは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び/又はハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環又はピリジン環がより好ましい。
【0104】
・c
cは0または1を表す。cは0であるのが好ましく、LLは2座配位子であるのが好ましい。
配位子LLは、下記一般式(LL2−1)〜(LL2−8)のいずれかにより表されるのが好ましく、一般式(LL2−1)、(LL2−2)、(LL2−4)、又は(LL2−6)により表されるのがより好ましく、一般式(LL2−1)又は(LL2−2)により表されるのが特に好ましく、一般式(LL2−1)により表されるのが特に好ましい。
【0105】
【化36】

【0106】
式中、R101〜R108はそれぞれ独立に酸性基又はその塩を表す。R101〜R108は、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロキサム酸基、例えば−CONHOH、−CON(CH)OH等)、ホスホリル基(例えば−OP(O)(OH)等)若しくはホスホニル基(例えば−P(O)(OH)等)又はこれらの塩を表す。R101〜R108は、好ましくはカルボキシ基、ホスホリル基若しくはホスホニル基又はこれらの塩等、さらに好ましくはカルボキシ基若しくはホスホニル基又はこれらの塩であり、より好ましくはカルボキシ基又はその塩である。
【0107】
式中、R109〜R116はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子(以上好ましい例は、前記R53及びR54の場合と同様)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基またはアシルアミノ基である。
【0108】
式中、R117〜R121はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基(好ましくは炭素数1〜20のもの)、芳香族基(好ましくは炭素数6〜26のもの)、炭素原子で結合するヘテロ環基(好ましくは5又は6員環)を表し、好ましくは、脂肪族基、芳香族基であり、より好ましくはカルボキシ基を有する脂肪族基である。配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また、LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0109】
式中、R101〜R116は環上のどの位置に結合していてもよい。またe1〜e6はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜2の整数を表す。e7及びe8はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表す。e9〜e12及びe15はそれぞれ独立に0〜6の整数を表し、e13、e14及びe16はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。e9〜e16はそれぞれ独立に0〜3の整数であるのが好ましい。
【0110】
e1〜e8が2以上のとき、R101〜R108はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、e9〜e16が2以上のとき、R109〜R116はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R101〜R116は互いに連結して、あるいは縮環して環を形成していてもよい。
なお、上記式LL2−1〜LL2−8では、置換基R101〜R116を所定の芳香環に結合手を延ばして示しているが、その芳香環に置換したものに限定されない。つまり、例えば、式LL2−1では、左側のピリジン環にR101,R109が置換した形になっているが、これらが右側のピリジン環に置換した形態であってもよい。
【0111】
*配位子X
一般式(4)中、Xは1座又は2座の配位子を表す。配位子Xの数を表すm3は0〜2の整数を表し、m3は好ましくは1又は2である。Xが1座配位子のとき、m3は2であるのが好ましく、Xが2座配位子のとき、m3は1であるのが好ましい。m3が2以上のとき、Xは同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
【0112】
配位子Xは、LL及びLL以外の配位子であることが好ましい。具体的に、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、サリチル酸、グリシルオキシ、N,N−ジメチルグリシルオキシ、オキザリレン(−OC(O)C(O)O−)等)、アシルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルチオ基、例えば、アセチルチオ、ベンゾイルチオ等)、チオアシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオアシルオキシ基、例えば、チオアセチルオキシ基(CHC(S)O−)等))、チオアシルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオアシルチオ基、例えば、チオアセチルチオ(CHC(S)S−)、チオベンゾイルチオ(PhC(S)S−)等))、アシルアミノオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノオキシ基、例えば、N−メチルベンゾイルアミノオキシ(PhC(O)N(CH)O−)、アセチルアミノオキシ(CHC(O)NHO−)等))、チオカルバメート基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオカルバメート基、例えば、N,N−ジエチルチオカルバメート等)、ジチオカルバメート基(好ましくは炭素原子数1〜20のジチオカルバメート基、例えば、N−フェニルジチオカルバメート、N,N−ジメチルジチオカルバメート、N,N−ジエチルジチオカルバメート、N,N−ジベンジルジチオカルバメート等)、チオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオカルボネート基、例えば、エチルチオカルボネート等)、ジチオカルボネート(好ましくは炭素原子数1〜20のジチオカルボネート、例えば、エチルジチオカルボネート(COC(S)S―)等)、トリチオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20のトリチオカルボネート基、例えば、エチルトリチオカルボネート(CSC(S)S−)等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、ベンゾイル等)、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えばメタンチオ、エチレンジチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20のアリールチオ基、例えば、ベンゼンチオ、1,2−フェニレンジチオ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えばメトキシ等)及びアリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、例えばフェノキシ、キノリン−8−ヒドロキシ等)からなる群から選ばれた基で配位された1座又は2座の配位子、若しくはハロゲン原子(好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボニル(…CO)、ジアルキルケトン(好ましくは炭素原子数3〜20のジアルキルケトン、例えばアセトン((CHCO…)等)、1,3−ジケトン(好ましくは炭素原子数3〜20の1,3−ジケトン、例えば、アセチルアセトン(CHC(O…)CH=C(O−)CH)、トリフルオロアセチルアセトン(CFC(O…)CH=C(O−)CH)、ジピバロイルメタン(t−CC(O…)CH=C(O−)t−C)、ジベンゾイルメタン(PhC(O…)CH=C(O−)Ph)、3−クロロアセチルアセトン(CHC(O…)CCl=C(O−)CH)等)、カルボンアミド(好ましくは炭素原子数1〜20のカルボンアミド、例えば、CHN=C(CH)O−、−OC(=NH)−C(=NH)O−等)、チオカルボンアミド(好ましくは炭素原子数1〜20のチオカルボンアミド、例えば、CHN=C(CH)S−等)、またはチオ尿素(好ましくは炭素原子数1〜20のチオ尿素、例えば、NH(…)=C(S−)NH、CHN(…)=C(S−)NHCH、(CHN−C(S…)N(CH等)からなる配位子を表す。なお、「…」はMzに配位する配位結合を示す。
【0113】
配位子Xは、好ましくはアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、より好ましくはアシルオキシ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基またはアリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、特に好ましくはジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基およびイソシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子または1,3−ジケトンからなる配位子であり、最も好ましくは、ジチオカルバメート基、チオシアネート基およびイソチオシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトンからなる配位子である。なお配位子Xがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
【0114】
Xが2座配位子のとき、Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド、またはチオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。Xが1座配位子のとき、Xはチオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、チオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
【0115】
*対イオンCI
一般式(I)中のCIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。一般に、色素が陽イオン又は陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、色素中の金属、配位子および置換基に依存する。
置換基が解離性基を有することなどにより、一般式(I)の色素は解離して負電荷を持ってもよい。この場合、一般式(I)の色素全体の電荷はCIにより電気的に中性とされる。
【0116】
対イオンCIが正の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機又は有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、アルカリ金属イオン又はプロトンである。
対イオンCIが負の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
【0117】
*結合基
一般式(I)で表される構造を有する色素は、半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を少なくとも1つ以上有するのが好ましい。この結合基を色素中に1〜6個有するのがより好ましく、1〜4個有するのが特に好ましい。カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基(例えば−CONHOH等)、ホスホリル基(例えば−OP(O)(OH)等)、ホスホニル基(例えば−P(O)(OH)等)等の酸性基(解離性のプロトンを有する置換基)を色素中に有することが好ましい。
【0118】
一般式(I)で表される構造を有する色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例における色素がプロトン解離性基を有する配位子を含む場合、該配位子は必要に応じて解離しプロトンを放出してもよい。
【0119】
【化37】

【0120】
【化38】

【0121】
本発明の一般式(I)により表される色素は、特開2001−291534号公報や当該公報に引用された方法を参考にして合成することができる。
一般式(I)で表される化合物からなる色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜1000nmの範囲であり、より好ましくは350〜950nmの範囲であり、特に好ましくは370〜900nmの範囲である。
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、少なくとも前記一般式(1)で表される化合物からなる色素と、一般式(I)で表される化合物からなる色素を用いて、広範囲の波長の光を利用することにより、高い変換効率を確保することができる。
【0122】
一般式(I)で表される化合物からなる色素と、一般式(1)で表わされる化合物からなる色素の配合割合は、前者をR、後者をSとすると、モル%の比で、R/S=95/5〜10/90、好ましくはR/S=95/5〜50/50、さらに好ましくはR/S=95/5〜60/40、より一層好ましくはR/S=95/5〜65/35、最も好ましくはR/S=95/5〜70/30である。
【0123】
本発明の色素は下記一般式(1)’で表されるものと同時に用いてもよい。

[一般式(1)’において、Q’は4価の芳香族基を示し、X1’、X2’はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、又はCRを表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合するヘテロ環基を表し、これらは置換されていてもよい。R、R’はそれぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合するヘテロ環基を表し、これらは置換されていてもよい。P1’、P2’はそれぞれ独立に色素残基を表す。W1’は電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。]
一般式(1)’の例として下記が挙げられる。

【0124】
[光電変換素子]
(感光体層)
光電変換素子の実施態様については図1に基づき既に説明した。本実施形態において感光体層2は、後述の色素が吸着された半導体微粒子22の層からなる多孔質半導体層で構成されている。この色素は一部電解質中に解離したもの等があってもよい。また、感光体層2は目的に応じて設計され、多層構造からなるものであってもよい。
上述したように感光体層2には、特定の色素が吸着した半導体微粒子22を含むことから、受光感度が高く、光電気化学電池100として使用する場合に、高い光電変換効率を得ることができ、さらに高い耐久性を有する。
【0125】
(電荷移動体)
本発明の光電変換素子10に用いられる電解質組成物には、酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。
【0126】
ヨウ素塩のカチオンは5員環又は6員環の含窒素芳香族カチオンであるのが好ましい。特に、一般式(1)により表される化合物がヨウ素塩でない場合は、再公表WO95/18456号公報、特開平8−259543号公報、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等のヨウ素塩を併用するのが好ましい。
【0127】
本発明の光電変換素子10に使用される電解質組成物中には、ヘテロ環4級塩化合物と共にヨウ素を含有するのが好ましい。ヨウ素の含有量は電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0128】
本発明の光電変換素子10に用いられる電解質組成物は溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物中の溶媒含有量は組成物全体の50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのが特に好ましい。
【0129】
溶媒としては低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、又はその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルフォラン等)、水、特開2002−110262記載の含水電解液、特開2000−36332号公報、特開2000−243134号公報、及び再公表WO/00−54361号公報記載の電解質溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0130】
また、本発明の電解質としては、正孔導体物質を含む電荷輸送層を用いても良い。正孔導体物質として、9,9’−スピロビフルオレン誘導体などを用いることができる。
【0131】
また、電極層、感光体層(光電変換層)、電荷移動体層(ホール輸送層)、伝導層、対極層を順次に積層することができる。p型半導体として機能するホール輸送材料をホール輸送層として用いることができる。好ましいホール輸送層としては、例えば無機系又は有機系のホール輸送材料を用いることができる。無機系ホール輸送材料としては、CuI、CuO,NiO等が挙げられる。また、有機系ホール輸送材料としては、高分子系と低分子系のものが挙げられ、高分子系のものとしては、例えばポリビニルカルバゾール、ポリアミン、有機ポリシラン等が挙げられる。また、低分子系のものとしては、例えばトリフェニルアミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、フェナミン誘導体等が挙げられる。この中でも有機ポリシランは、従来の炭素系高分子と異なり、主鎖のSiに沿って非局化されたσ電子が光伝導に寄与し、高いホール移動度を有するため、好ましい(Phys. Rev. B, 35, 2818(1987))。
【0132】
(導電性支持体)
図1に示すように、本発明の光電変換素子には、導電性支持体1上には多孔質の半導体微粒子22に増感色素21が吸着された感光体層2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子の分散液を導電性支持体に塗布・乾燥後、本発明の色素溶液に浸漬することにより、感光体層2を製造することができる。
【0133】
導電性支持体1としては、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、又は表面に導電膜層を有するガラスや高分子材料を使用することができる。導電性支持体1は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。導電性支持体1としては、ガラスや高分子材料に導電性の金属酸化物を塗設したものを使用することができる。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスや高分子材料の支持体1m当たり、0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。好ましく使用される高分子材料の一例として、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。導電性支持体1上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746記載のライトガイド機能が上げられる。
【0134】
この他にも、金属支持体も好ましく使用することができる。その一例としては、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、銅を挙げることができる。これらの金属は合金であってもよい。さらに好ましくは、チタン、アルミニウム、銅が好ましく、特に好ましくは、チタンやアルミニウムである。
【0135】
(半導体微粒子)
図1に示すように、本発明の光電変換素子10には、導電性支持体1上には多孔質の半導体微粒子22に増感色素21が吸着された感光体層2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子22の分散液を前記導電性支持体1に塗布・乾燥後、上述の色素溶液に浸漬することにより、感光体層2を製造することができる。本発明においては半導体微粒子として、前記の特定の界面活性剤を用いて調製したものを適用する。
【0136】
(半導体微粒子分散液)
本発明においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が、半導体微粒子分散液全体の10質量%以下よりなる半導体微粒子分散液を前記導電性支持体1に塗布し、適度に加熱することにより、多孔質半導体微粒子塗布層を得ることができる。
【0137】
半導体微粒子分散液を作製する方法としては、ゾル・ゲル法の他に、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法、微粒子に超音波などを照射して超微粒子に粉砕する方法、又はミルや乳鉢などを使って機械的に粉砕しすり潰す方法、等が挙げられる。分散溶媒としては、水及び各種の有機溶媒のうちの一つ以上を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0138】
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、又はキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。しかし、これらの分散助剤は、導電性支持体上へ製膜する工程の前に、ろ過法や分離膜を用いる方法、あるいは遠心分離法などによって大部分を除去しておくことが好ましい。半導体微粒子分散液は、半導体微粒子以外の固形分の含量が分散液全体の10質量%以下とすることができる。この濃度は好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.2%である。すなわち、半導体微粒子分散液中に、溶媒と半導体微粒子以外の固形分を半導体微分散液全体の10質量%以下とすることができる。実質的に半導体微粒子と分散溶媒のみからなることが好ましい。
【0139】
半導体微粒子分散液の粘度が高すぎると分散液が凝集してしまい製膜することができず、逆に半導体微粒子分散液の粘度が低すぎると液が流れてしまい製膜することができないことがある。したがって分散液の粘度は、25℃で10〜300N・s/mが好ましい。さらに好ましくは、25℃で50〜200N・s/mである。
【0140】
半導体微粒子分散液の塗布方法としては、アプリケーション系の方法としてローラ法、ディップ法等を使用することができる。またメータリング系の方法としてエアーナイフ法、ブレード法等を使用することができる。またアプリケーション系の方法とメータリング系の方法を同一部分にできるものとして、特公昭58−4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号明細書等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機を使用してスピン法やスプレー法で塗布するのも好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセット及びグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。また本発明の半導体微粒子分散液は粘度が高く、粘稠性を有するため、凝集力が強いことがあり、塗布時に支持体とうまく馴染まない場合がある。このような場合に、UVオゾン処理で表面のクリーニングと親水化を行うことにより、塗布した半導体微粒子分散液と導電性支持体1表面の結着力が増し、半導体微粒子分散液の塗布が行い易くなる。
【0141】
半導体微粒子層全体の好ましい厚さは0.1μm〜100μmである。半導体微粒子層の厚さはさらに1μm〜30μmが好ましく、2μm〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は0.5g〜400gが好ましく、5g〜100gがより好ましい。なお、上記微粒子分散液を塗布して製膜する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜適用すればよい。
【0142】
なお、半導体微粒子22の支持体1m当たりの塗布量は0.5g〜500g、さらには5g〜100gが好ましい。
【0143】
半導体微粒子22に増感色素21を吸着させるには、溶液と本発明にかかる色素よりなる色素吸着用色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子22を長時間浸漬するのが好ましい。色素吸着用色素溶液に使用される溶液は、本発明にかかる増感色素21が溶解できる溶液なら特に制限なく使用することができる。例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、t−ブタノール、アセトニトリル、アセトン、n−ブタノールなどを使用することができる。その中でも、エタノール、トルエンを好ましく使用することができる。
【0144】
増感色素21の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01ミリモル〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1ミリモル〜50ミリモル、特に好ましくは0.1ミリモル〜10ミリモルである。この場合、本発明にかかる増感色素21の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
【0145】
また、増感色素21の半導体微粒子22に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001ミリモル〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。
【0146】
このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0147】
(対極)
対極4は、光電気化学電池の正極として働くものである。対極4は、通常前述の導電性支持体1と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では対極の支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対極4の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金、カーボン、導電性ポリマーが挙げられる。
【0148】
対極4の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192号公報などが挙げられる。
【0149】
(受光電極)
受光電極5は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしても良い。好ましいタンデム型の構成例としては、特開2000−90989、特開2002−90989号公報等に記載の例が挙げられる。
【0150】
受光電極5の層内部で光散乱、反射を効率的に行う光マネージメント機能を設けてもよい。好ましくは、特開2002−93476号公報に記載のものが挙げられる。
【0151】
導電性支持体1と多孔質半導体微粒子層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。好ましい例としては、特開平06−507999号公報等が挙げられる。
【0152】
受光電極5と対極4の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。好ましい例としては、特開2001−283941号公報が挙げられる。
【0153】
セル、モジュールの封止法としては、ポリイソブチレン系熱硬化樹脂、ノボラック樹脂、光硬化性(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ガラスフリット、アルミナにアルミニウムアルコキシドを用いる方法、低融点ガラスペーストをレーザー溶融する方法などが好ましい。ガラスフリットを用いる場合、粉末ガラスをバインダーとなるアクリル樹脂に混合したものでもよい。
【0154】
実施例1
1.色素の調製
以下に、実施例により本発明の色素の調製法を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体および調製ルートについてはこれにより限定されるものではない。
【0155】
(1)調製例1
(例示化合物14の調製)
色素14を下記に示すスキームに従って調製した。
【0156】
【化39】

【0157】
(1−1)化合物1−3の合成
0.58gの化合物1−1と0.82gの化合物1−2を1−ブタノール7mLとトルエン10mLの混合溶媒中で混合し、90℃で5時間加熱攪拌した。その後反応液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより0.40gの化合物1−3を得た。
【0158】
(1−2)化合物1−5の合成
0.38gの化合物1−3と0.2gの化合物1−4を1−ブタノール5mLとトルエン8mLの混合溶媒中で混合し、トリエチルアミンをml加えて90℃で4時間加熱攪拌した。その後反応液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより0.40gの化合物1−5を得た。
【0159】
(1−3)化合物14の合成
0.4gの化合物1−5と0.4gのモルホリンをアセトニトリル10ml中で混合し、氷冷した。そこへテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を0.04g添加し、3時間反応を行った。その後反応液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより0.2gの化合物14を得た。同定をミリマスにより行ったところ、以下のような結果を得た。
Mass実測値(m/z);(M+H):1180.7051
Mass計算値(m/z);(M+H):1180.7058(C7198S)
【0160】
(2)調製例2
(色素19の調製)
色素19は下記に示すスキームに従って調製した。
【0161】
【化40】

【0162】
(2−1)化合物2−2の合成
0.41gの化合物1−3と0.25gの化合物2−1を1−ブタノール5mLとトルエン8mLの混合溶媒中で混合し、トリエチルアミンをml加えて87℃で4時間加熱攪拌した。その後反応液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより0.48gの化合物2−2を得た。
【0163】
(2−2)化合物19の合成
0.45gの化合物2−2と0.41gのモルホリンをアセトニトリル10ml中で混合し、氷冷した。そこへテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を0.06g添加し、4時間反応を行った。その後反応液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより0.25gの化合物19を得た。同定をミリマスにより行ったところ、以下のような結果を得た。
Mass実測値(m/z);(M+H):1210.6797
Mass計算値(m/z);(M+H):1210.6800(C719610S)
【0164】
(3)調製例3
(色素67の調製)
化合物67を下記に示すスキームに従って調製した。
【0165】
【化41】

【0166】
(3−1)化合物3−3の合成
1.08gの化合物3−1、1.04gの化合物3−2、及びトリエチルアミン1mLを1−ブタノール5mLとトルエン15mLの混合溶媒中で混合し、100℃にて6時間加熱攪拌した。その後反応液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより0.32gの化合物3−3を得た。
【0167】
(3−2)化合物67の合成
0.25gの化合物3−3と0.10gの化合物3−4を、1−ブタノール5mLとトルエン5mLの混合溶媒中で混合し、90℃にて3時間加熱攪拌した。その後、反応液へ水と酢酸エチルを加えて抽出・分液を行い、酢酸エチル層を濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、0.13gの67を得た。同定はミリマスにより行ったところ、以下のような結果を得た。
Mass実測値(m/z);(M+H):1773.9112
Mass計算値(m/z);(M+H):1773.9116(C10713311
【0168】
同様の方法により、実験に使用した本発明の一般式(1)の色素を調製した。また本発明の一般式(I)で表される色素は、特許第4576494号公報や当該公報に引用された方法を参考にして調製した。
【0169】
(色素の極大吸収波長の測定)
用いた色素の極大吸収波長を測定した。その結果を表に示す。測定は、分光光度計(U−4100(商品名)、日立ハイテク社製)によって行い、溶液はエタノールを用い、濃度が2μMになるように調整した。
【0170】
【表1】

【0171】
実施例2
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をフッ素樹脂コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製,Degussa P−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triron X−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズを濾別した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザーにより測定した。
2.電極1Aの作製
フッ素をドープした酸化スズを被覆した20mm×20mmの導電性ガラス板(旭ガラス(株)製、商品名:TCOガラス−U、表面抵抗:約30Ω/m)を準備し、その導電層側の両端(端から3mmの幅の部分)にスペーサー用粘着テープを張った後で、導電層上にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。分散液の塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこの半導体塗布ガラス板を電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃で30分間焼成した。半導体塗布ガラス板を取り出し冷却した後、表に示す色素のエタノール溶液(濃度:2×10−4mol/L)に1時間浸漬した。色素が吸着した半導体塗布ガラス板を4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し、自然乾燥させて、色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)を得た。電極Aの色素増感酸化チタン微粒子層の厚さは10μmであり、酸化チタン微粒子の塗布量は20g/mであった。また色素の吸着量は、その種類に応じて0.1〜10mmol/mの範囲内であった。
【0172】
3.光電気化学電池の作製
アセトニトリルを溶媒として、0.5mol/Lの1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩電解質および0.05mol/Lのヨウ素を含んだ溶液を調製した。この溶液に、溶媒+窒素含有高分子化合物+塩を100wt%とした場合の重量組成比として10wt%となる様に窒素含有高分子化合物(1−1)を加え、さらにこの窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子部位のモル比が0.5となる量の求電子剤(1−2)を混合し、均一な反応溶液とした。
【0173】
【化42】

【0174】
【化43】

【0175】
一方、導電性ガラス板上に形成された色素増感TiO微粒子層の上にスペーサーを介して白金を蒸着したガラス板からなる対極の白金薄膜側を載置し、導電性ガラス板と白金蒸着ガラス板とを固定した。得られた組立体の開放端を上記電解質溶液に浸漬し、毛細管現象により色素増感TiO微粒子層中に反応溶液を浸透させた。次いで80℃で30分間加熱して、架橋反応を行った。
【0176】
これにより、図1に示すように、導電性ガラスからなる導電性支持体1(ガラスの透明基板上に導電層が設層されたもの)、感光体層2、電荷移動体層3、白金からなる対極4及びガラスの透明基板(図示せず)が順に積層された本発明の光電気化学電池を得た。
【0177】
3−1.IPCE(量子収率)の測定
作製した光電気化学電池の400〜900nmにおけるIPCEをペクセル社製のIPCE測定装置にて測定した。各光電気化学電池の850nmにおけるIPCEを下記の表に示す。
3−2.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)及びシャープカットフィルター(KenkoL−37、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は70mW/cmであった。この模擬太陽光を、50℃で、上記のようにして作製した光電気化学電池に照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)で測定した。この初期の電池性能結果は、変換効率(3.5%以上:AA、2.5%以上3.5%未満:A、2.0%以上2.5%未満:B、2.0%未満:Cで評価)、開放電圧およびフィルファクター(開放電圧(V)、フィルファクターについては、0.6以上:AA、0.45〜0.6:A、0.3〜0.45:B、0.3未満:Cで評価)の値を示した。
また、85℃で1000時間暗所保存後の変換効率の低下率及び500時間連続光照射後の変換効率の減少率も測定した。この耐久性試験の結果は、試験後の減少率が10%以下の場合にAA、10〜25%の場合にA、25%〜40%の場合にB、40%以上の低下の場合にCと評価した。これらの結果を下記表に示す。
なお、試料番号c11、c12、c13ではそれぞれS−1、S−2、S−3を色素として用いた。S−2は特開2009−242379号公報で開示された色素に相当し、S−1、S−3は特開2000−195570号公報で開示された色素S−14、S−18である。
【0178】
【化44】

【0179】
【表2】

【0180】
上記表から本発明の色素を使用した試料は、いずれも、変換効率に優れ、しかも暗所保管後の変換効率の低下率、連続光照射後の変換効率の低下率がいずれも低いことがわかる。
【0181】
実施例3
溶媒としてアセトニトリルを用い、ヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム0.62mol/lを溶解した電解質溶液を調製した。ここに下記に示すNo.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物をそれぞれ濃度0.5mol/lになるように別々に添加し、溶解した。
【0182】
【化45】

【0183】
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより、導電膜を形成した。この導電膜上にアナターゼ型酸化チタン粒子を含有する分散液(水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100mlにアナターゼ型酸化チタン(日本アエロジル社製のP−25(商品名))を32g配合し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使用して均一に分散、混合して得た、半導体微粒子分散液)を塗布し、その後500℃で焼結して厚さ15μmの感光層を形成した。この感光層に、上記No.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物電解液を、滴下した。
ここにポリエチレンフィルム製のフレーム型スペーサー(厚さ25μm)をのせ、白金対電極でこれを覆い、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子に、Xeランプを光源として強度100mW/cmの光を照射した。表に得られた開放電圧と光電変換効率を示した。開放電圧は、6.3V以上のものをAA、6.0V以上6.3V未満のものをA、5.7V以上6.0V未満のものをB、5.7V未満のものをCとして表示した。変換効率は、3.5%以上のものをAA、2.5%以上3.5%未満のものをA、2.0%以上2.5%未満のものをB、2.0%未満のものをCとして表示した。
なお、下記表7には、ベンズイミダゾール系化合物を加えていない電解液を用いた光電変換素子の結果も示した。
【0184】
【表3】

【0185】
上記表の結果から、本発明の色素はいずれも変換効率が高いことがわかる。
【0186】
実施例4
(1)第1光電変換層の形成
市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、平均粒径30nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlを、硬質ガラスビーズを使用しペイントシェイカーにより6時間分散させ酸化チタン懸濁液を作成した。次いで、この酸化チタン懸濁液を、ドクターブレードを用いて、予め酸化スズ導電層が付着されたガラス板に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、電気炉で、500℃で40分間焼成し、酸化チタン膜を得た。
【0187】
これとは別に、Ru−1をエタノールに溶解した。
【0188】
【化46】

【0189】
この色素の濃度は3×10−4モルであった。次に、この溶液中に膜状の酸化チタンを形成した前記のガラス板を入れ、60℃で720分間色素吸着を行ってから乾燥し、本発明の第1光電変換層(試料A)を得た。
【0190】
(2)第2光電変換層の形成
市販の酸化ニッケル粒子(キシダ化学、平均粒径100nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlを、ガラスビーズを使用しペイントシェイカーで8時間分散させ酸化ニッケル懸濁液とした。次いで、この酸化チタン懸濁液を、ドクターブレードを用いて、酸化スズ導電層が付着されたガラス板に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、300℃で30分間焼成し、酸化ニッケル膜を得た。
【0191】
これとは別に、本発明の色素及び比較色素S−1をジメチルスルホキシドにそれぞれ溶解した。
この色素の濃度は0.5×10−4モルであった。次に、この溶液中に膜状の酸化チタンを形成した前記のガラス板を入れ、40℃で70分間色素吸着を行ってから乾燥し、本発明の第2光電変換層(試料B)を得た。
【0192】
(3)前記の試料A上に試料Bを位置させる。これら2つの電極の間に液体電解質を入れ、この側面を樹脂で封止した後、リード線を取付けて、本発明の光電変換素子(素子構成C)を作成した。なお、液体電解質は、アセトニトリル/炭酸エチレンの混合溶媒(体積比が1:4)に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドとヨウ素とを、それぞれの濃度が0.46モル/l、0.06モル/lとなるように溶解したものを用いた。
【0193】
また、前記の試料Aを一方の電極として備え、対電極として白金を担持した透明導電性ガラス板を用いた。2つの電極の間に液体電解質を入れ、この側面を樹脂で封止した後、リード線を取付けて、本発明の光電変換素子(素子構成D)を作成した。
【0194】
得られた光電変換素子(素子構成C及びD)にソーラーシミュレーターで1000W/mの強度の光を照射した。変換効率は、6.5%以上のものをAA、6.0%以上6.5%未満のものをA、5.0%以上6.0%未満のものをB、5.0%未満のものをCとして下記表に示した。
【0195】
【表4】

【0196】
上記表より、本発明の色素はいずれも光電変換効率に優れ、この系でも有効であることがわかる。
【0197】
実施例5
(光電変換素子の作製)
図1に示す光電変換素子を以下のようにして作製した。
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。
次に、水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100mlにアナターゼ型酸化チタン(日本アエロジル社製のP−25(商品名))を32g配合し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使用して均一に分散、混合し、半導体微粒子分散液を得た。この分散液を透明導電膜に塗布し、500℃で加熱して受光電極を作製した。
その後、同様にシリカ粒子とルチル型酸化チタンとを40:60(質量比)で含有する分散液を作製し、この分散液を前記の受光電極に塗布し、500℃で加熱して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成した。
次に、下記表に記載された増感色素(複数混合または単独)のエタノール溶液に、上記の絶縁性多孔体が形成されたガラス基板を1時間浸漬した。増感色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/mであった。電解液は、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/l)、ヨウ素(0.1モル/l)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
【0198】
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cmであった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率を測定した結果を下記表に示した。結果は、変換効率が7.5%以上のものをAA、7.2%以上7.5%未満のものをA、6.9%以上7.2%未満のものをB、6.9%未満のものをCとして評価した。
【0199】
【表5】

吸着溶液濃度 色素1:1×10−4mo1/L
色素2:0.2×10−4mol/L
【0200】
上記表5から明らかなように、本発明の色素を用いて作製された試料(電気化学電池)は、いずれも変換効率が7.5%以上と高い値を示した。これに対し、比較例の試料はいずれも変換効率が7.2%未満であり不十分であった。
【符号の説明】
【0201】
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 光電気化学電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、色素が吸着された半導体微粒子の層を有する感光体と、電荷移動体と、対極とを含む積層構造よりなる光電変換素子であって、前記色素の少なくとも一種が下記式(1)で表される構造を有する光電変換素子。
【化1】

(式中、Qは芳香環を表す。X、Xは硫黄原子、セレン原子、酸素原子、またはCRを表す。R、Rはアルキル基を表す。R、R’はアルキル基または芳香族基である。Pは下記式P11または下記式P12で表される原子群を表す。Pはポリメチン色素を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、PとPとは異なるものとする。Wは電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。)
【化2】

(式中、R、R、R10、R11は、酸性基を有することがある脂肪族基、又は酸性基を有することがある芳香環基を表す。R、R12は硫黄原子または下記式Rを表す。R、R、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは酸素原子又は置換基を表す。n21は0以上の整数を表す。n22、n31は0又は1を示す。)
【化3】

(式RにおけるR13、R14はシアノ基又は酸性基を表す。)
【請求項2】
前記Pが下記式P11−1またはP12−1である請求項1記載の光電変換素子。
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、R11、n21は、式P11,P12と同義である。)
【請求項3】
前記n22、n31が0である請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記Pが下式P11−2またはP12−2で表される請求項1又は3に記載の光電変換素子。
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R10、n21は、P11、P12と同義である。)
【請求項5】
前記n21が0または1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記Rが下記式R91又はR92で表される請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化6】

(式R92中、R15は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【請求項7】
前記Rが酸素原子ある請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記Pを形成する原子群が下記式P21または下記式P22で表される請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化7】

(式中、R21、R22、R23は水素原子又は置換基を表す。Arは、Hammett則におけるσp値が0以下の置換基又はπ過剰系複素環基を有する芳香環基を表す。n41は0以上の整数を表す。)
【請求項9】
前記Arが下記式RC1、RC2、又はRC3で表される請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化8】

(式RC1〜RC4中、YはS、NR24、またはC(R25を表す。R24はアルキル基を表す。R25は置換基を表す。Aは芳香環を表す。R26〜R29は水素原子もしくは置換基を表す。EはS、NR30、Oを表す。R30はアルキル基を表す。DはHammett則におけるσp値が0以下の置換基を表す。Bは芳香環を表す。XはSR、OR、NRを表し、Rはアルキル基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。Rは置換基を表す。ndは0〜4の整数を表す。*は結合手を表し、式P21及び式P22でみて、メチン鎖を介して連結しても、二重結合になって直接連結されてもよい。kは正の整数である。)
【請求項10】
前記式(1)で表される色素において、前記Pが電子のアクセプターをなし、Pがドナーをなし、該色素がドナー・アクセプター型の分子を構成している請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記感光体が下記式(I)で表される色素をさらに有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換素子。
Mz(LLm1(LLm2(X)m3・CI : 式(I)
[式(I)において、Mzは金属原子を表す。LLは下記式LL1で表される2座の配位子を表す。LLは下記式LL2で表される2座又は3座の配位子を表す。Xは1座又は2座の配位子を表す。m1は0〜3の整数を表す。m2は1〜3の整数を表す。m3は0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化9】

(式LL1において、R51及びR52は酸性基を表す。R53及びR54は置換基を表す。R55及びR56はアルキル基又は芳香環基を表す。d1及びd2は0〜5の整数を表す。L及びLは共役鎖を表す。a1及びa2は0〜3の整数を表す。d3は0又は1を表す。b1およびb2は0〜3の整数を表す。)
【化10】

(式LL2において、Za、Zb及びZcは5又は6員環を形成しうる原子群を表す。cは0又は1を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子を備える光電気化学電池。
【請求項13】
下記式(1)で表される構造を有する色素化合物。
【化11】

(式中、Qは芳香環を表す。X、Xは硫黄原子、セレン原子、酸素原子、またはCRを表す。R、Rはアルキル基を表す。R、R’はアルキル基または芳香族基である。Pは下記式P11または下記式P12で表される原子群を表す。Pはポリメチン色素を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、PとPは異なるものとする。Wは電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。)
【化12】

(式中、R、R、R10、R11は脂肪族基又は芳香環基を表す。R、R12は硫黄原子または下記式Rを表す。R、R、Rは水素原子又は置換基を表す。Rは酸素原子又は置換基を表す。n21は0以上の整数を表す。n22、n31は0又は1を示す。)
【化13】

(式RにおけるR13、R14はシアノ基又は酸性基を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2013−30320(P2013−30320A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164425(P2011−164425)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】