説明

光電変換素子およびその製造方法

【課題】光電変換素子の光電変換効率の向上を図るとともに、光電変換素子の大型化やプラスチック基板への対応を可能とする。
【解決手段】光電変換素子10は、第1の電極30と第2の電極70との間に、電子輸送層40、光電変換層50および正孔輸送層60が狭持された構造を有する。電子輸送層40は、式M(X)aの物質およびその反応物を含有する。式において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、2B、3B族の金属、遷移金属から成る群より選ばれ、Xはハロゲン、カルボキシラート基、アルコキシ基、アルキル基および特定式で表されるアセトナート基から選ばれ、aはMの価数に応じて決まる、正の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池(光電変換素子)は、柔軟性に富むとともに、大面積化、軽量化および簡易で安価な製造法が期待できるため有望な次世代太陽電池と考えられている。現在、有機太陽電池の実用化に向けて、変換効率の大幅な向上が重要課題となっている。
【0003】
光電変換素子(有機太陽電池)の光電変換効率向上のため、様々なアクセプタ材料が検討されている。従来の光電変換素子では、アクセプタ材料のLUMO(最低非占有分子軌道)準位をPCBMに比べて浅くすることで開放電圧を増大が図られている。これらのアクセプタ材料のLUMO準位はPCBMと異なっており、それに適した電子輸送層用の材料も従来とは異なる性質が求められる。
【0004】
一方、光電変換層で生じた電荷輸送を高効率化するための電子輸送層の開発が進められている。従来、電子輸送層としては、TiO、CsCO、ZnOなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.K.K.Kyaw, X.W.Sun, C.Y.Jiang, G.Q.Lo, D.W.Zhao, D.L.Kwong, Applied Physics Letters 93, 221107(2008)
【非特許文献2】P. de Bruyn, D.J.D. Moet, P.W.M. Blom, Organic Electronics, 11, 1419-1422(2010)
【非特許文献3】C.Waldauf, M.Morana, P.Denk, P.Schilinsky, K.Coakley, S.A.Choulis, C.J.Brabec, Applied Physics Letters, 89, 233517(2006)
【非特許文献4】Hua-Hsien Liao, Li-Min Chen, Zheng Xu, Gang Li, and Yang Yang, APPLIED PHYSICS LETTERS 92, 173303 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子輸送層にTiOを用いる場合には、TiOの前駆体となる溶液の作製工程が複雑であり、さらに、前駆体からTiOへの反応のため大気下に長期間安置する必要があるため生産性の低下が避けられない。
【0007】
また、電子輸送層にCsCOを用いる場合には、CsCOの導電性が低いため、電子輸送層を数nmレベルまで大幅に薄型化しないと太陽電池性能が発現しない。しかし、スピンコート法やダイコート法などの従来の成膜方法では、膜厚を数nmレベルで均一に形成することが難しいため、素子の大型化に対応することが困難である。また、電子輸送層の膜厚が不均一な場合には、光電変換層と電子取出電極との接触を確実に防ぐことが難しくなる。光電変換層と電子取出電極とが接触すると、変換効率が大幅に低下するため、変換効率の高い素子を得る歩留まりが低下する。
【0008】
電子輸送層にZnOを用いる場合には、高温焼成(300℃)が必要であるため、基板として耐熱性の低いプラスチック材料を用いることができない。
【0009】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電変換素子の光電変換効率の向上を図るとともに、大型化やプラスチック基板にも対応可能な技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、光電変換素子である。当該光電変換素子は、光電変換層と、光電変換層の一方の主表面側に設けられた電子取出電極と、光電変換層の他方の主表面側に設けられた正孔取出電極と、光電変換層と電子取出電極との間に設けられた電子輸送層とを、備え、電子輸送層が下式の物質および、その反応物を含有することを特徴とする。
M(X)a (1)
上記(1)式において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、2B、3B族の金属、遷移金属から成る群より選ばれ、Xはハロゲン、カルボキシラート基、アルコキシ基、アルキル基、および下式で表されるアセトナート基から選ばれ、aはMの価数に応じて決まる、正の整数である。
【化1】

上式中、R、Rは水素または炭素数1〜20の直鎖、分岐のアルキル基、アルコキシ基から選ばれ、R、Rは同一でも違ってもよい。
【0011】
上記態様の光電変換素子によれば、光電変換効率の向上を図ることができる。また、上記態様の電子輸送層は比較的低温で形成することができるため、耐熱性の低いプラスチック基板上に光電変換素子を形成することができる。また、電子輸送層の導電性が、CsCOに比べ、良好であるため、電子輸送層を20〜60nm程度の膜厚で形成することができ、電子輸送層の厚さに多少のむらがあってもショートの発生を抑制することができる。このように、電子輸送層を厚膜に形成可能であるため、電子輸送層の形成については、スピンコート法、ダイコート法などの各種成膜方法を適用することができ、ひいては光電変換素子の大型化に対応することができる。
【0012】
上記態様の光電変換素子において、(1)式中のXがカルボキシラート基または、アセトナート基であり、電子輸送層におけるカルボキシル基吸収係数が0.5×10cm−1以上2.5×10cm−1以下であってもよい。電子輸送層のイオン化ポテンシャルが6.2eV以下であってもよい。電子輸送層が酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、ガリウムアセチルアセトナート、塩化ガリウム、亜鉛アセチルアセトナート、塩化亜鉛、ジエチル亜鉛からなる群より選ばれる1以上の金属化合物およびその反応物を含んでもよい。光電変換層が1160mV(vs Fc/Fc)以上の第一還元電位を有するフラーレン誘導体を含んでもよい。フラーレン誘導体がICBA(ビスインデンニルC60)であってもよい。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、光電変換素子の製造方法である。一対の電極と、当該一対の電極の間に位置する光電変換層と、一方の電極と光電変換層との間に設けられた電子輸送層とを有する光電変換素子の製造方法であって、金属カルボキシラートを含有する溶液を塗布により成膜した後、100℃以上150℃以下で加熱することにより電子輸送層を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0014】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光電変換素子の光電変換効率を向上させるとともに、光電変換素子の大型化やプラスチック基板への対応を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る光電変換素子の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る光電変換素子10の構成を示す概略断面図である。本実施の形態の光電変換素子10は有機半導体を含む光電変換層を有する有機薄膜太陽電池である。
【0018】
実施の形態に係る光電変換素子10は、基板20、第1の電極30、電子輸送層40、光電変換層50、正孔輸送層60および第2の電極70を備える。
【0019】
本実施の形態では、第1の電極30は負極(電子取出電極)であり、後述する光電変換層50と電子輸送層40を介して電気的に接続されている。第1の電極30は、光電変換層50の受光面側に位置しており、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO、FTO(Fluorine doped Tin Oxide)、ZnO、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、IZO(Indium doped Zinc Oxide)等の導電性金属酸化物や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属の薄膜やメッシュ、ストライプなどの透明導電膜で形成されている。また、第1の電極30は、受光性能を阻害しないように、光透過性を有する基板20の上に形成されている。例えば、基板20は、無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でもよい。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
【0020】
電子輸送層40は、第1の電極30と光電変換層50との間の領域に設けられている。電子輸送層40は光電変換層50から第1の電極30に電子を移動しやすくさせる機能を担う。また、電子輸送層40には、光電変換層50から第1の電極30に正孔を移動させにくくする機能を持たせることもできる。電子輸送層40の膜厚は、特に限定されないが、例えば、10〜100nm、好ましくは、20〜60nmが望ましい。
【0021】
電子輸送層40は下式の物質および、その反応物を含有している。
M(X)a (1)
上記(1)式において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、2B、3B族の金属、遷移金属から成る群より選ばれ、Xはハロゲン、カルボキシラート基、アルコキシ基、アルキル基、および下式で表されるアセトナート基から選ばれ、aはMの価数に応じて決まる、正の整数である。
【化2】

上式中、R、Rは水素または炭素数1〜20の直鎖、分岐のアルキル基、アルコキシ基から選ばれ、R、Rは同一でも違ってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0022】
Mの具体例としては、Li,Na,Mg,Al,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Rb,Sr,Zr,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Cs,Ba,La,Ir,Pt,Hg,TI,Pb,Biなどが挙げられる。また、Xの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クエン酸、エジレンジアミン四酢酸、安息香酸などのカルボン酸由来のカルボキシラート基が挙げられる。Xに用いられるアルコキシ基は特に限定されないが、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖どちらでも構わず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。また、Xに用いられるアルキル基は特に限定されないが、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖どちらでも構わず、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0023】
電子輸送層40が含有する物質としては、より具体的には、フッ化リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化ニッケル、塩化ガリウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸マンガン、ギ酸ニッケル、ギ酸銅、ギ酸亜鉛、ギ酸ルビジウム、ギ酸ストロンチウム、ギ酸セシウム、ギ酸バリウム、ギ酸タリウム、ギ酸鉛、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸クロム、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸ジルコニウム、酢酸モリブデン、酢酸ロジウム、酢酸パラジウム、酢酸銀、酢酸カドミウム、酢酸インジウム、酢酸スズ、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸水銀、酢酸タリウム、酢酸鉛、酢酸ビスマス、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マンガン、プロピオン酸ニッケル、プロピオン酸亜鉛、プロピオン酸ストロンチウム、プロピオン酸パラジウム、プロピオン酸バリウム、プロピオン酸鉛、酪酸リチウム、酪酸ナトリウム、酪酸マグネシウム、酪酸カリウム、酪酸カルシウム、酪酸マンガン、酪酸ニッケル、酪酸亜鉛、酪酸ストロンチウム、酪酸バリウム、酪酸鉛、アルミニウムアセチルアセトナート、スカンジウムアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート、クロムアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ガリウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートルテニウムアセチルアセトナート、ロジウムアセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナート、銀アセチルアセトナート、インジウムアセチルアセトナート、ランタンアセチルアセトナート、ネオジムアセチルアセトナート、サマリウムアセチルアセトナート、ユウロピウムアセチルアセトナート、ガドリニウムアセチルアセトナート、テルビウムアセチルアセトナート、エルビウムアセチルアセトナート、イリジウムアセチルアセトナート、白金アセチルアセトナート、タリウムアセチルアセトナート、鉛アセチルアセトナート、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸水素リチウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸バリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸マンガン、シュウ酸ニッケル、シュウ酸ストロンチウム、シュウ酸鉛、マロン酸アンモニウム、マロン酸水素アンモニウム、マロン酸ナトリウム、マロン酸水素ナトリウム、マロン酸カリウム、マロン酸水素カリウム、マロン酸リチウム、マロン酸水素リチウム、マロン酸カルシウム、マロン酸バリウム、マロン酸マグネシウム、マロン酸亜鉛、マロン酸マンガン、マロン酸ニッケル、マロン酸ストロンチウム、マロン酸鉛、コハク酸アンモニウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸リチウム、コハク酸カルシウム、コハク酸バリウム、コハク酸マグネシウム、コハク酸亜鉛、コハク酸マンガン、コハク酸ニッケル、コハク酸ストロンチウム、コハク酸鉛、グルタル酸アンモニウム、グルタル酸ナトリウム、グルタル酸カリウム、グルタル酸リチウム、グルタル酸カルシウム、グルタル酸バリウム、グルタル酸マグネシウム、グルタル酸亜鉛、グルタル酸マンガン、グルタル酸ニッケル、グルタル酸ストロンチウム、グルタル酸鉛、フタル酸アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム、フタル酸リチウム、フタル酸カルシウム、フタル酸バリウム、フタル酸マグネシウム、フタル酸亜鉛、フタル酸ニッケル、フタル酸ストロンチウム、フタル酸鉛などである。この中で、電子輸送層40が含有する物質として、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、ガリウムアセチルアセトナート、塩化ガリウム、亜鉛アセチルアセトナート、塩化亜鉛、ジエチル亜鉛が好ましい。
また、上述した物質の反応物とは、部分的あるいは全て加水分解したり、部分的に縮合した中間生成物を指す。具体的には、例えば、上述した物質を含む溶液を基板に塗布し、100℃以上150℃以下で加熱することで形成されるものや、前記(1)式中のXがカルボキシラート基または、アセトナート基である場合、電子輸送層中のカルボキシル基吸収係数が0.5×10cm−1以上2.5×10cm−1以下であるものが望ましい。
【0024】
電子輸送層40のイオン化ポテンシャルは、6.2eV以下が好ましく、6.0eV以下がさらに好ましく、5.8eV以下がより一層好ましい。なお、電子輸送層40のイオン化ポテンシャルは、後述するように光電子分光法を用いて測定することができる。
【0025】
本実施の形態の電子輸送層40は、上記(1)式で表される材料を含む溶液を塗布した後、100℃以上150℃以下の比較的低温で加熱することにより形成されうる。
加熱温度が100℃未満だと、電子輸送層として機能せず、光電変換性能が著しく低下したり、全く光電変換しなくなる。一方、加熱温度が150℃以上になると、イオン化ポテンシャルが大きくなりすぎ、光電変換性能が低下する。
また、前記溶液は、上記(1)式で表される材料を、所定の溶媒に溶解させることで作製することができる。溶媒としては、上記(1)式で表される材料を溶解できれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、2−メトキシエタノール、2-エトキシエタノールなどのアルコール系溶媒や、それらの混合物などが挙げられる。
また、前記溶液中の上記(1)式で表される材料の濃度は、特に限定されないが、1mg〜1g/ml、好ましくは、5mg〜500mg/ml、さらに好ましくは10mg〜100mg/mlが望ましい。
また、電子輸送層を形成するのに好ましい材料としては、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、ガリウムアセチルアセトナート、塩化ガリウム、亜鉛アセチルアセトナート、塩化亜鉛、ジエチル亜鉛が望ましく、中でも、酢酸亜鉛がもっとも望ましい。
【0026】
本実施の形態の光電変換層50はバルクヘテロ接合層であり、電子供与性を有するp型有機半導体と電子受容性を有するn型有機半導体とがナノレベルで混合して形成されている。p型有機半導体としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)などのポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、ポリカルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン等の有機色素分子およびこれらの誘導体や遷移金属錯体、トリフェニルアミン化合物やヒドラジン化合物等の電荷移動剤や、テトラリアフルバレン(TTF)のような電荷移動錯体等の電子ドナー性分子が挙げられる。
【0027】
n型有機半導体としては、フラーレン、[60]PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル)、ビス[60]PCBM、ICMA(モノインデンニルC60)、ICBA(ビスインデンニルC60)や[70]PCBM(フェニルC71酪酸メチルエステル)などのフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、化学修飾を施したカーボンナノチューブなどの炭素材料や、縮合環芳香族化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。
好ましくは、フラーレン、フラーレン誘導体である。なお、フラーレンとは、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C90、C96、C240、C540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
【0028】
本明細書において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本明細書における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でもよい。
【0029】
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでもよく、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言ってもよい)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、又はその他の公知の置換基、が例として挙げられる。
【0030】
更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0031】
以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でもよい。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、またはウレイド基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)を表す。
【0032】
また、2つのWが共同して環(芳香族又は非芳香族の、炭化水素環又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0033】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、または−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、またはアリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0034】
好ましく用いられるフラーレン誘導体としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化3】

【0036】
一般式(2)において丸枠付きFLはフラーレンC60又はC70又はC84を表す。
また、Yは置換基を表す。置換基としては、前述のWを用いることができる。
置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基であり、好ましいもの及びそれらの好ましい具体例はWで示したものが挙げられる。アルキル基としてさらに好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、アリール基、及び複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、またはピリジン環である。これらはさらに置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、nが2以上のとき複数のYは同一であっても異なっていてもよい。また、複数のXは可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0037】
nは1〜60の整数を表すが、好ましくは1〜10の整数である。
【0038】
以下に本実施の形態において好ましく用いられるフラーレン誘導体の具体例を挙げるが、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化4】

上記具体例の中でも、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(2−12)、(2−13)、(2−20)、(2−21)、(2−22)、(2−23)が好ましく、さらに、(2−20)、(2−21)、(2−22)、(2−23)が好ましい。
【0040】
本実施の形態に用いられるフラーレン及びフラーレン誘導体は、日本化学会編,季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。本実施の形態に用いられるフラーレン及びフラーレン化合物は例えば、日本化学会編,季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の方法又は記載の方法に準じて製造することができる。これらの電子アクセプター性分子の中で、n型有機半導体としてICBAを用いることにより、開放電圧(Voc)を向上させることができる。
【0041】
なお、n型有機半導体としてフラーレン誘導体が用いられる場合には、その第一還元電位は、1160mV(vs Fc/Fc)以上であることが好ましく、1250mV(vs Fc/Fc)以上であることがより好ましく、さらには1350mV(vs Fc/Fc)以上であることがより好ましい。n型有機半導体の第一還元電位の測定方法については後述する。
【0042】
光電変換層50の膜厚は、特に限定されないが、5〜1000nm、好ましくは、10〜500nm、より好ましくは、20〜200nm、さらに好ましくは、40〜100nmが望ましい。光電変換層の膜厚は薄い方が、耐光性が向上する傾向がみられる。
【0043】
正孔輸送層60は、第2の電極70と光電変換層50との間の領域に設けられている。正孔輸送層60は光電変換層50から第2の電極70に正孔を移動しやすくさせる機能を担う。また、正孔輸送層60には、光電変換層50から第2の電極70に電子を移動させにくくさせる機能を持たせることもできる。正孔輸送層60は、たとえば、PEDOT(ポリチオフェン、poly(ethylenedioxy)thiophene)/PSS(ポリスチレンスルフォネート、poly(styrenesulfonate))、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、ポリカルバゾール等の導電性高分子、MoO、WO等の無機化合物、フタロシアニン、ポルフィリン等の有機半導体分子およびこれらの誘導体や遷移金属錯体、トリフェニルアミン化合物やヒドラジン化合物等の電荷移動剤や、テトラリアフルバレン(TTF)のような電荷移動錯体等の正孔移動度が高い材料で形成される。正孔輸送層60の膜厚としては特に限定されないが、10〜100nm、好ましくは20〜60nmが望ましい。
【0044】
本実施の形態の第2の電極70は正極(正孔取出電極)であり、光電変換層50の受光面とは反対側において光電変換層50と正孔輸送層60を介して電気的に接続している。第2の電極70の材料は導電性を有していればよく、特に限定されないが、金、白金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、カリウムなどの金属、あるいはカーボン電極などを用いることができる。第2の電極70は、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法、溶媒に分散した金属微粒子を塗布し、溶媒を揮発除去する等の公知の方法で成膜することができる。
【0045】
光電変換素子10には紫外線をブロックする手段を組み込むことができる。紫外線をブロックする手段としては、素子を紫外線からブロックできれば特に限定されないが、紫外線吸収層や、紫外線反射層、紫外線を別の波長に変換する波長変換層などが挙げられる。
紫外線をブロックする手段を設ける位置は、素子を紫外線からブロックできれば特に限定されないが、光照射側の基板表面に上述したような紫外線ブロック機能を有する層を設けたり、紫外線ブロック機能を有するフィルムを貼り付けることや、光照射側基板として、紫外線ブロック機能付のものを使用することや、光照射側基板と透明道電膜との
間に紫外線ブロック機能を有する層を設けることや、サブストレート構造(金属電極側から積層した構造)の素子の場合には、封止材に紫外線ブロック機能を付与したものを使用することなどが挙げられる。
ブロックする紫外線の波長領域としては、特に限定されないが、330nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは、370nm以下、さらに好ましくは390nm以下、もっと好ましくは400nm以下、の波長領域で、透過率が10%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.1%以下が望ましい。
【0046】
本実施の形態に係る光電変換素子10によれば、光電変換効率の向上を図ることができる。また、本実施の形態の電子輸送層40は100℃以上150以下の比較的低温な条件で形成することができるため、プラスチック基板上に光電変換素子を形成することができる。また、電子輸送層40の導電性は、炭酸セシウムなどの絶縁性の高い物質から形成される層に比べれば良好であるため、電子輸送層40を20〜60nm程度の膜厚で形成することができる。電子輸送層40を20〜60nm程度の膜厚とすることにより、電子輸送層の厚さに多少のむらがあってもショートの発生を抑制することができる。このように、電子輸送層を厚膜に形成可能であるため、電子輸送層40の形成については、スピンコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、インクジェット法、スプレー法、スクリーン印刷法などの各種成膜方法を適用することができ、ひいては光電変換素子10の大型化に対応することができる。
【0047】
表1は、実施例1〜5、比較例1〜10の光電変換素子の作製条件を示す。表1を参照しながら、実施例1〜5、比較例1〜10の光電変換素子の作製方法を説明する。
【0048】
(実施例1)
<負極の形成>
ITOをスパッタ法により成膜したガラス基板(面抵抗値15Ω/□)を洗浄して負極(電子取出電極)を形成した。
<電子輸送層の形成>
溶液塗布法により電子輸送層を作製した。具体的には、酢酸亜鉛・2水和物(アルドリッチ社製)を濃度20mg/mlになるように2−メトキシエタノール中に溶解させ、さらに、モノエタノールアミンを添加(55μl/ml)して溶液を調製した。上述した負極用のITO上に、前記溶液を2000rpm(30秒)でスピンコートし、ホットプレート上で100℃、5分間熱処理して電子輸送層を形成した(表1参照)。
<光電変換層の形成>
P3HTとICBAを質量比1.0:1.0で混合し、合計濃度が2.5質量%となるようにオルトジクロロベンゼンに溶解させた。上記電子輸送層を形成した基板上に750rpm(10秒)でスピンコートし、光電変換層を形成した。
<正孔輸送層の形成>
光電変換層を作製した基板上にWOを抵抗加熱法により真空蒸着した。WO層の膜厚は10nmである。蒸着時の真空度は10−6Torr以下とした。
<正極の形成>
上記正孔輸送層まで作製した基板上にAgを抵抗加熱法により真空蒸着した。Ag層の膜厚は100nmである。蒸着時の真空度は10−6Torr以下とした。
<封止処理>
上記のように作製した光電変換素子(有機太陽電池素子)を熱硬化性封止剤を用いてカバーガラスと貼り合せ、封止素子を得た。
【表1】

【0049】
(実施例2、3)
実施例2および実施例3の光電変換素子の作製方法は、電子輸送層を形成する際の熱処理温度がそれぞれ120℃、150℃であることを除き、実施例1の光電変換素子の作製方法と同様である。
【0050】
(実施例4、5)
実施例4および実施例5の光電変換素子の作製方法は、光電変換層に用いるn型有機半導体として、それぞれ、Bis−PCBM、PCBMを用いたこと以外は、実施例1の光電変換素子の作製方法と同様である。
【0051】
(比較例1−3)
比較例1、比較例2および比較例3の光電変換素子の作製方法は、電子輸送層を形成する際の熱処理温度がそれぞれ25℃、60℃、80℃であることを除き、実施例1の光電変換素子の作製方法と同様である。
【0052】
(比較例4−6)
比較例4、比較例5および比較例6の光電変換素子の作製方法は、電子輸送層を形成する際の熱処理温度がそれぞれ200℃、300℃、400℃であることを除き、実施例1の光電変換素子の作製方法と同様である。なお、比較例4−6の光電変換素子では、熱処理温度が高いため酢酸亜鉛が酸化して酸化亜鉛となっている。
【0053】
(比較例7)
比較例7の光電変換素子の作製方法は、電子輸送層を下記のように作製したことを除き、実施例1の光電変換素子の作製方法と同様である。
<電子輸送層の形成>
炭酸セシウム(アルドリッチ社製)を濃度1.86mg/mlになるように2−エトキシエタノール中に溶解させ、溶液を調製した。上述した負極用のITO上に、前記溶液を5000rpm(30秒)でスピンコートし、ホットプレート上で150℃、10分間熱処理して電子輸送層を形成した。
【0054】
(比較例8)
比較例8の光電変換素子の作製方法は、電子輸送層の作製に用いる溶液として、炭酸セシウムの濃度を10倍にした以外は、比較例7の光電変換素子の作製方法と同様である。
得られた素子は、全く光電変換性能を示さず、歩留まりは算出できなかった。
【0055】
(比較例9、10)
比較例9および比較例10の光電変換素子の作製方法は、光電変換層に用いるn型有機半導体として、それぞれ、Bis−PCBM、PCBMを用いたこと以外は、比較例5の光電変換素子の作製方法と同様である。
【0056】
(光電変換効率の評価)
各実施例、各比較例の光電変換素子について、室温で1000W/m疑似太陽光を照射しながら電流電圧特性を測定した。得られた電流−電圧特性より太陽電池の光電変換効率を計算した。光電変換効率について得られた結果を表2に示す。
【0057】
<カルボキシル基吸収係数の評価方法>
実施例1〜5、比較例1〜6および9、10の各電子輸送層中のカルボキシル基吸収係数を、FT−IR法を用いて評価した(Takashi Ehara*, Takafumi Otsuki, Junya Abe, Takaaki Ueno, Masahiro Ito, and Takafumi Hirayama, Phys. Status Solidi A 206, No. 9, 2139-2142 (2009) 参照)。電子輸送層の赤外吸収スペクトルの測定には、島津製作所製フーリエ変換赤外分光光度計IRPrestige-21を用いた。赤外吸収スペクトルを測定する際に、ITO基板上に実施例1〜5、比較例1〜6および9、10の電子輸送層に相当する膜を成膜した試料を用いた。測定の分解能は2cm−1、積算回数は256回以上とした。赤外吸収スペクトル測定結果から吸収係数を評価する為、電子輸送層の膜厚についても評価した。膜厚測定方法には、触針式膜厚計(Dektakなど)や、電子顕微鏡による測定を用いた。
【0058】
得られた赤外吸収スペクトルの波数1200cm−1から2000cm−1の平均吸光率Aを求めた。積分の基線として、波数1200cm−1と2000cm−1の2点を通る直線を用いた。求めた平均吸光率Aと膜厚から電子輸送層中のカルボキシル基吸収係数aを下式に従い算出した。カルボキシル基吸収係数および膜厚について得られた結果を表2に示す。
【数1】

【0059】
なお、光電変換素子に組み込まれた電子輸送層におけるカルボキシル基吸収係数を評価する場合には、光電変換素子の最外層に位置するガラスやフィルムの一方を剥ぎ取り、封止材や光電変換層などを溶媒で溶解、除去して、透明導電膜などの電極上に電子輸送層を残存させる。電子輸送層膜面より上述した方法により、FT−IR測定を実施し、カルボキシル基吸収係数を定量することができる。
【0060】
(開放電圧測定)
各実施例、各比較例の光電変換素子について、それぞれ、Voc(開放電圧)を測定した。開放電圧に関して得られた結果を表2に示す。
【0061】
(歩留まり)
各実施例、各比較例の歩留まりに関しては、以下のように算出した。歩留まりに関して得られた結果を表2に示す。
(1)同じ素子を10個以上作製し、光電変換効率を評価する。
(2)ショートしているなど明らかに光電変換効率が低い素子は除いた上で、光電変換効率の平均値を算出する。
(3)算出した平均値の75%以上のものを良品として、歩留まり[%]=100×良品数/全数で歩留まりを算出する。
【0062】
(電子輸送層のイオン化ポテンシャルの測定)
電子輸送層のイオン化ポテンシャルは、理研計器(株)社製AC−3大気下光電子分光装置を用いて測定した。具体的には、ガラス基板上に電子輸送層溶液を塗布した後、熱処理を行ってイオン化ポテンシャル測定を行った。
なお、光電変換素子に組み込まれた電子輸送層のイオン化ポテンシャルを評価する場合には、光電変換素子の最外層に位置するガラスやフィルムの一方を剥ぎ取り、封止材や光電変換層などを溶媒で溶解、除去して、透明導電膜などの電極上に電子輸送層を残存させる。電子輸送層膜面より上述した方法により、イオン化ポテンシャルを測定する。
【0063】
(光電変換層のn型材料の酸化還元電位の同定)
A.J.Bard著「Electochemical Methods: Fundamentals and Applicaitons」を参考に以下のように実施した。
テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩のo−ジクロロベンゼン0.1M溶液を作製し、内部基準物質として50mLあたり4mgのフェロセン添加し測定溶液を調製する。この溶液2mLにフラーレン誘導体を1.5mg添加し、掃引速度20mV/sにて酸化還元電位をポテンショスタットガルバノスタット(ALS製エレクトロケミカルアナライザーモデル630A)にて測定する。第一還元電位は内部基準物質として添加したフェロセンの酸化/還元電位(Fc/Fc+)を基準とし、第一還元ピークとその酸化ピークの平均として決定する。
なお、光電変換素子に組み込まれた光電変換層のn型材料の酸化還元電位の同定する場合には、光電変換素子のカバーガラスの一方を剥ぎ取り、光電変換層をo−ジクロロベンゼンで溶解した後、テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩、内部基準物質として溶媒50mLあたり4mgのフェロセン添加し測定溶液を調製する。得られた溶液を用いて、掃引速度20mV/sにて酸化還元電位をポテンショスタットガルバノスタット(ALS製エレクトロケミカルアナライザーモデル630A)にて測定する。第一還元電位は内部基準物質として添加したフェロセンの酸化/還元電位(Fc/Fc)を基準とし、第一還元ピークとその酸化ピークの平均として決定した。
【表2】

【0064】
表2に示すように、各実施例の光電変換素子は、電子輸送層に酢酸亜鉛を用い、これとLUMO準位の浅いICBAと組み合わせることにより、各比較例の光電変換素子に比べて、光電変換効率が顕著に向上するとともに、開放電圧が顕著に増加することが確認された。
【0065】
各実施例の光電変換素子では、電子輸送層の形成のための溶液調整が容易であり、成膜も基板への塗布により容易に実施することができる。このため、光電変換素子の製造時間の短縮や光電変換素子の量産化を図ることができる。
【0066】
各実施例の光電変換素子は、電子輸送層において、CsCOに比べ、電子輸送に十分な導電性が得られるため、電子輸送層を厚膜(実施例では30nm)に形成することができる。このため、光電変換層と負極との間がショートすることを抑制することができ、ひいては、歩留まりの向上を図ることができる。また、電子輸送層を厚膜とすることにより、電子輸送層の厚さに多少のむらがあってもショートの発生を抑制することができる。電子輸送層を厚膜に形成可能であるため、電子輸送層の形成については、上述したスピンコート法の他、ダイコート法などの各種成膜方法を適用することができ、ひいては光電変換素子の大型化に対応することができる。
【0067】
各実施例の光電変換素子では、電子輸送層を形成する際の熱処理温度が100℃〜150℃の比較的低温な範囲であるため、基板として耐熱性の低いプラスチック基板、特にフレキシブル基板を用いることができる。この結果、光電変換素子の軽量化を図ることができる。また、安価なプラスチップ基板を用いることで、光電変換素子の製造コスト低減を図ることができる。さらに、基板としてフレキシブル基板を用いることにより、光電変換素子の柔軟性や可撓性をさらに高めることができる。この結果、光電変換素子の応用範囲を広げることができる。
【0068】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0069】
例えば、実施の形態に係る光電変換素子10では、光電変換層50と第1の電極30との間に電子輸送層40が設けられ、光電変換層50と第2の電極70との間に正孔輸送層60が設けられているが、正孔輸送層60の位置と電子輸送層40の位置とを入れ替えることもできる。電子輸送層40が第2の電極70と光電変換層50との間の領域に、および正孔輸送層60が第1の電極30と光電変換層50との間の領域に設けられている場合、第1の電極30は正極、第2の電極70は負極になる。
【符号の説明】
【0070】
10 光電変換素子、20 基板、30 第1の電極、40 電子輸送層、50 光電変換層、60 正孔輸送層、70 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換層と、
前記光電変換層の一方の主表面側に設けられた電子取出電極と、
前記光電変換層の他方の主表面側に設けられた正孔取出電極と、
前記光電変換層と前記電子取出電極との間に設けられた電子輸送層とを、
備え、
前記電子輸送層が下式の物質およびその反応物を含有することを特徴とする光電変換素子。
M(X)a (1)
上記(1)式において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、2B、3B族の金属、遷移金属から成る群より選ばれ、Xはハロゲン、カルボキシラート基、アルコキシ基、アルキル基および下式で表されるアセトナート基から選ばれ、aはMの価数に応じて決まる、正の整数である。
【化1】

上式中、R、Rは水素または炭素数1〜20の直鎖、分岐のアルキル基、アルコキシ基から選ばれ、R、Rは同一でも違ってもよい。
【請求項2】
前記(1)式中のXがカルボキシラート基または、アセトナート基であり、前記電子輸送層におけるカルボキシル基吸収係数が0.5×10cm−1以上2.5×10cm−1以下である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記電子輸送層のイオン化ポテンシャルが6.2eV以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記電子輸送層が酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、ガリウムアセチルアセトナート、塩化ガリウム、亜鉛アセチルアセトナート、塩化亜鉛、ジエチル亜鉛からなる群より選ばれる1以上の金属化合物およびその反応物を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記光電変換層が1160mV(vs Fc/Fc)以上の第一還元電位を有するフラーレン誘導体を含む請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記フラーレン誘導体がICBA(ビスインデンニルC60)である請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
一対の電極と、当該一対の電極の間に位置する光電変換層と、一方の電極と前記光電変換層との間に設けられた電子輸送層とを有する光電変換素子の製造方法であって、
下式の物質を含有する溶液を塗布により成膜した後、100℃以上150℃以下で加熱することにより前記電子輸送層を形成する工程を備えることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
M(X)a (1)
上記(1)式において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、2B、3B族の金属、遷移金属から成る群より選ばれ、Xはハロゲン、カルボキシラート基、アルコキシ基、アルキル基および下式で表されるアセトナート基から選ばれ、aはMの価数に応じて決まる、正の整数である。
【化2】

上式中、R、Rは水素または炭素数1〜20の直鎖、分岐のアルキル基、アルコキシ基から選ばれ、R、Rは同一でも違ってもよい。

【図1】
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【公開番号】特開2013−58714(P2013−58714A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227430(P2011−227430)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構最先端研究開発支援プログラム 低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発 高効率有機薄膜太陽電池の作製、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】