光電変換素子の製造方法および光電変換素子
【課題】 生産性を向上させることが可能な光電変換素子の製造方法、および光電変換素子を提供する。
【解決手段】 本発明の光電変換素子の製造方法は、入射した光を光電変換する光電変換層2aを有する半導体基板2を準備する準備工程と、半導体基板2の主面2A上に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜4を成膜する成膜工程と、該成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜4を加熱してアルミニウム膜4の表面に酸化膜3を形成する加熱工程とを有する。
【解決手段】 本発明の光電変換素子の製造方法は、入射した光を光電変換する光電変換層2aを有する半導体基板2を準備する準備工程と、半導体基板2の主面2A上に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜4を成膜する成膜工程と、該成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜4を加熱してアルミニウム膜4の表面に酸化膜3を形成する加熱工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の製造方法および光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、光を電気に変換する光電変換素子の研究開発において、例えば、光電変換層を有する基板に光が入射した際に、光電変換層で発生したキャリアが基板の表面で再結合されることを抑制する目的で基板の表面に酸化膜を形成することがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−34499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された光電変換素子によれば、酸化膜を形成する際に、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が用いられていることから、当該
酸化膜を成膜する速度が遅く、生産性を向上させることが困難だった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の表面に酸化膜を高速に形成して、生産性を向上することが可能な光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光電変換素子の製造方法は、入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板を準備する準備工程と、前記半導体基板の主面上に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜を成膜する成膜工程と、該成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中で前記アルミニウム膜を加熱して該アルミニウム膜の表面に酸化膜を形成する加熱工程とを有する。
【0007】
また本発明の光電変換素子は、入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板と、該半導体基板の主面上に設けられた、該主面から離れるにつれて酸素の濃度が高くなっている酸化アルミニウムからなる酸化膜とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光電変換素子の製造方法によれば、成膜工程と加熱工程を経て酸化膜を形成することから、酸化膜を高速に形成することができ、生産性を向上させることができる。
【0009】
また本発明の光電変換素子によれば、取り出すことが可能な電力量を向上するとともに、酸化膜の表面から水分などの侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法を用いて作製した光電変換素子の断面図である。
【図2】図1に示す光電変換素子における酸化膜の深さ方向の酸素の濃度分布を示す図である。
【図3】本発明の光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】本発明の光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】本発明の光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における雰囲気内の酸素の濃度の変化を示す図である。
【図7】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における雰囲気内の酸素の濃度の変化を示す図である。
【図8】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における一工程を示す断面図である。
【図9】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について図を参照しながら説明する。
【0012】
<光電変換素子>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法を用いて製造された光電変換素子1を示す図である。図1に示すように、光電変換素子1は、具体的に、半導体基板(以下、単に基板という)2と、基板2の主面から離れるにつれて酸素の濃度が高くなっている酸化アルミニウムからなる酸化膜3とを有する。
【0013】
基板2は、例えば半導体基板などを用いることができる。基板2は、板状のものを用いることができる。基板2は、光が入射する受光面(図1における上面であり、以下では第1面という)2Aと、この第1面2Aに対して裏側に位置する裏面(図1における下面であり、以下では第2面という)2Bとを有する。
【0014】
基板2は、第1面2Aと第2面2Bとの間に、光を電気に変換する光電変換層2aを有している。光電変換層2aは、例えば一導電型半導体と逆導電型半導体との界面付近に形成することができる。そのため、基板2は、例えば、一導電型を持つ半導体基板を用いることができ、この基板2の第1面2A側に逆導電型層2’を形成することによって、一導電型と逆導電型との間に光電変換層2aを形成することができる。
【0015】
基板2としては、一導電型(例えば、p型)を有する板状の半導体を用いることができる。基板2を構成する半導体としては、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等のシリコン結晶を用いることができる。基板2の厚みは、例えば、250μm以下に設定することが
できる。基板2の形状は、特に限定されるものではないが、製法上の観点から平面視で四角形状としてもよい。
【0016】
本実施形態においては、基板2としてp型の導電型を持つシリコン基板を用いた例について説明する。シリコン基板からなる基板2がp型を持つようにする場合、ドーパント元素としては、例えば、ボロンあるいはガリウムなどを用いることができる。
【0017】
逆導電型層2’は、基板2とpn接合を形成する半導体層である。逆導電型層2’は、基板2と逆の導電型を持つ層であり、基板2における第1面2A側に設けられている。基板2がp型の導電型を持つ場合であれば、逆導電型層2’はn型の導電型を持つように形成される。一方、基板2がn型の導電型を持つ場合であれば、逆導電型層2’はp型の導電型を持つように形成される。
【0018】
逆導電型層2’は、基板2の第1面2A上に形成または接合されていてもよいし、基板2内にイオンを注入および拡散させることによって基板2内に形成してもよい。具体的に、基板2がp型の導電型を持つシリコン基板において、逆導電型層2’がシリコン基板内
に形成されている場合には、例えば逆導電型層2’はシリコン基板における第1面2A側にリン等の不純物を拡散させることによって形成できる。
【0019】
基板2の第1面2A(主面)上に、酸化膜3が設けられている。酸化膜3は、受光面である第1面2Aに設けられていることから、透光性材料によって設けられている。ここで、透光性材料としては、透過率が、例えば50%以上のものを用いることができる。具体的には、例えば、酸化アルミニウム、酸化シリコンなどの酸化物を用いることができる。本実施形態では、酸化アルミニウムを用いる場合について説明する。なお、酸化膜3は、第2面2Bに設けられていてもよく、その場合は透光性を有していない材料を用いることができ、材料の選択性を広げることができる。
【0020】
酸化膜3は、基板2の第1面2Aの一部だけに設けられていてもよく、例えば第1面2Aの面積の50%以上に設けられている。本実施形態では、第1面2A全体を覆うように設けられている。酸化膜3は、厚みDhが、例えば200nm以上3μm以下となるように設
定されている。
【0021】
酸化膜3は、酸化アルミニウムを主として含んでいればよい。酸化膜3に含まれる酸化アルミニウムとしては、例えば、Al2O3、AlO、AlO2、Al2OまたはAl2O2などによって構成されている。
【0022】
酸化膜3は、図2に示すように、酸素の濃度が基板2の第1面2Aから離れるにつれて高くなっている。具体的には、酸化膜3は、第1面2A付近の酸素の濃度が、第1面2Aから離れるにつれて、例えば徐々に高くなっていてもよいし、階段状に高くなっていてもよい。このように酸化膜3内で酸素の濃度が変化していることから、酸化膜3内において第1面2Aから離れるにつれて、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムが存在しやすくなっている。
【0023】
本実施形態では、第1面2Aから離れるにつれて、酸化膜3の酸素の濃度が高くなるように設定されている。そのことから、酸化膜3は第1面2A付近の酸素が化学量論比よりも低くなりやすくなっており、酸素の濃度が化学量論比よりも小さい酸化アルミニウムが存在しやすくなっているため、固定電荷が発生しやすくなっている。そのため、酸化膜3において基板2との界面付近が負の電荷を帯びやすくなっており、例えば、基板2で発生した電子が基板2と酸化膜3との界面で他方主面(第2主面2B)へ反射されやすくすることができ、光電変換素子において取り出すことが可能な電力量を向上させることができる。さらに、酸化膜3は、第1面2Aから離れるにつれて酸素の濃度が高くなっていることから、隙間の少ない緻密な膜とすることができ、例えば空気中の水分の侵入を抑制することができる。
【0024】
(光電変換素子の変形例1)
基板2は、酸化膜3と接する第1面2A(表面)付近に、水素を含んでいてもよい。このように基板2の表面付近に水素が含まれていることから、基板2の表面が終端化されることとなり、不規則な準位が形成されることを抑制することができる。
【0025】
<光電変換素子の製造方法>
本発明の光電変換素子1の製造方法は、基板2を準備する準備工程、アルミニウム膜4を成膜する成膜工程、および酸化膜3を形成する加熱工程を有している。各工程について、詳細に以下説明する。
【0026】
(準備工程)
光電変換層2aを有する基板2を準備する工程について説明する。本実施形態において
基板2は、p型半導体基板を用いて、n型の逆導電型層2’が形成されることによって、光電変換層2aであるpn接合が形成されている。基板2が単結晶シリコン基板の場合は、例えば引き上げ法などによって形成される。また基板2が、多結晶シリコン基板の場合は、例えば鋳造法などによって形成される。なお、以下の説明において、基板2がp型の多結晶シリコン基板を用いた例について説明する。
【0027】
最初に、例えば、鋳造法により多結晶シリコンのインゴットを作製する。次いで、そのインゴットを、例えば、250μm以下の厚みにスライスする。このとき、初めから砥粒を
ワイヤーに固着させた砥粒固着ワイヤーでスライスする固着砥粒タイプのワイヤーソー装置を用いて、インゴットをスライスする。その後、スライス工程で汚染された基板2は洗浄液を用いて清浄化される。このとき、基板2の切断面には機械的ダメージ層が存在する。走査型電子顕微鏡で基板2の切断面を観察すると、遊離砥粒タイプを用いた場合に比べて、マイクロクラックの数は少なく、その深さも約1μm以下と小さくすることができる。
【0028】
また、顕微ラマン分光法を用いて基板2の表面の残留応力を評価すると、固着砥粒タイプの場合には、200MPa以上500MPa以下の圧縮応力が存在するのに対して、遊離砥粒タイプの場合には、200MPa以下の圧縮応力となる。すなわち、固着砥粒タイプを用い
ることにより、機械的ダメージ層が少なく且つマイクロクラック等の発生による残留応力の開放が少ない基板2が得られると推察することができる。
【0029】
逆導電型層2’は、基板2の第1面2A側から形成される。逆導電型層2’は、ペースト状態にしたP2O5を半導体基板1の表面に塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたPOCl3(オキシ塩化リン)を拡散源とした気相熱拡散法などによって形成される。逆導電型層2’は、例えば0.2μm以上2μm以下の深さ、例えば40Ω/□以上200以下Ω/□以下のシート抵抗を有するように形成される。
【0030】
気相熱拡散法では、POCl3等からなる拡散ガスを有する雰囲気中で、例えば600℃
以上800℃以下の温度において、基板2を5分以上30分以下熱処理して燐ガラスを基板2
の表面に形成する。その後、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気中で、例えば800℃以
上900℃以下の高い温度において基板2を例えば10分以上40分以下の間、熱処理すること
により燐ガラスから基板2にリンが拡散して逆導電型層2’が形成される。
【0031】
このようにして、基板2に逆導電型層2’が形成されることによって、基板2と逆導電型層2’との界面付近がpn接合となり、この界面付近が光電変換層2aとなる。このようにして、図3に示すような、光電変換層2aを有する基板2を準備することができる。
【0032】
(成膜工程)
次に、図4に示すように、基板2に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜4を成膜する。アルミニウム膜4は、基板2の第1面2Aに成膜してもよいし、第2面2Bに成膜してもよいし、第1面2Aおよび第2面2Bの両面に成膜してもよい。本実施形態では、第2面2Bにアルミニウム膜4を成膜する場合について説明する。
【0033】
アルミニウム膜4は、例えば、スパッタリング法、CVD法または蒸着法などを用いて成膜を行なうことができる。本実施形態では、スパッタリング法を用いて成膜を行なう場合について説明する。スパッタリング法を用いて成膜を行なった場合は、成膜速度を例えば5nm/min以上で行なうことができる。スパッタリング法を用いることから、成膜速度を速めてもアルミニウム膜4の膜質の劣化を招きにくいため、10nm/min以上に設定してもよい。このように成膜速度を速めることができるため、本工程の生産性を向上させることができる。
【0034】
アルミニウム膜4の成膜は、酸素を含む雰囲気中で行なわれる。雰囲気内における酸素の濃度は、全体に対して、例えば1%以上35%以下となるように設定することができる。雰囲気内の各元素の濃度は、本工程が閉鎖された雰囲気中(系)において行なわれるため、それぞれの元素を含むガスの流量によって定めることができる。例えば、酸素を含むガスの流量が、全体のガスの流量に対して、10%であれば、酸素の濃度を10%とすることができる。すなわち、雰囲気中では、酸素以外の元素が主として含まれるように設定されている。なお、ここでいう「閉鎖された雰囲気」とは、雰囲気中にガスを流入するとともに、ガスを排気して構成された雰囲気も含むものである。
【0035】
雰囲気内に流がされるガスは、スパッタリング法によってアルミニウム原料を成膜する時間の一部に行なわれればよい。雰囲気内へのガスの流入は、例えば、スパッタリングの時間全てにおいて行なってもよいし、ある一定時間のみ行なってもよい。スパッタリング時間に対してガスの流入時間を調節することによって、成膜される膜の膜質を調整することができる。
【0036】
このように酸素の濃度が低い雰囲気中において、スパッタリング法でアルミニウム膜4を成膜することによって、アルミニウム膜4は酸素の濃度が化学量論比よりも小さい酸化アルミニウムによって構成されることとなる。アルミニウム膜4は、例えば、AlO、AlO2、Al2OまたはAl2O2などによって構成されている。なお、アルミニウム膜4は、膜全体として化学量論比よりも小さくなっていればよい。
【0037】
(加熱工程)
成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中で、アルミニウム膜4を加熱する。雰囲気中の酸素の濃度は、成膜工程の酸素の濃度よりも高くなるように設定されていればよい。酸素の濃度は、成膜工程と同様に、ガスの流量によって定めることができる。そのため、加熱工程では、成膜工程の酸素のガスの流量よりも高い流量に設定して、酸素のガスを雰囲気内に流入させる。
【0038】
酸素の流入は、例えば、アルミニウム膜4の加熱時間中ずっと行なってもよいし、アルミニウム膜の加熱時間の一部のみ行なってもよい。このように、酸素の流入を、加熱時間によって変化させることによって、酸化膜3の膜質を変化させることができる。具体的に、加熱時間は、例えば1秒以上5分以下となるように設定することができる。加熱温度は、例えば200℃以上900℃以下となるように設定することができる。
【0039】
アルミニウム膜4を加熱することによって、図5に示すように、アルミニウム膜4の表面に酸化膜3を形成することができる。具体的には、雰囲気中に存在する酸素がアルミニウム膜4の表面からさらに酸化していくことによって、酸化膜3が形成されることとなる。これにより、アルミニウム膜4を構成していた、酸素の濃度が化学量論比よりも小さい酸化アルミニウムがさらに酸化されて、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムとすることができる。
【0040】
本実施形態では、加熱工程よりも酸素の濃度が低い状態で成膜工程を行ない、その後、成膜工程よりも酸素の濃度が高い状態で加熱工程を行なうことから、速い成膜速度で成膜工程を行ない、加熱工程を行なうことによって、酸化膜3を形成することができる。これによって、酸化膜3の形成時間を短縮することができることから、光電変換素子を製造する時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0041】
従来は、ALD法を用いて、アルミニウム層と酸素層を順次積層して酸化膜を形成していたため、酸化膜を形成する工程に時間がかかっていた。その結果、光電変換素子を製造
する時間の長時間化を招いており、生産性を向上させることは困難だった。一方、生産性を向上させるために、酸化膜をスパッタリング法で形成しようとした場合、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al2O3)を用いると、スパッタ粒子の速度が速くなると基板2の表面にダメージを与えやすくなるため、成膜速度を速めることが困難だった。また、ターゲットをアルミニウムとしてスパッタリング法を用いてAl2O3からなる酸化膜を形成しようとした場合には、成膜工程の雰囲気中の酸素濃度を高くする必要があり、成長速度を速めることができなかった。
【0042】
本実施形態では、酸化膜3(アルミニウム膜4)をp型半導体層側である第2主面2Bに形成している。そのため、基板2のp型半導体層内で発生した電子が、基板2と酸化膜3との界面でn型半導体層側へ反射されやすくすることができる。その結果、光電変換素子1から取り出される電力量を向上させることができる。
【0043】
(光電変換素子の製造方法の変形例1)
成膜工程において、図6に示すように、アルミニウム膜3を基板2の第2面2Bに成膜するにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていってもよい。具体的には、酸素の流量を、アルミニウム膜3の成膜時間が経つにつれて、小さくしていけばよい。
【0044】
これにより、雰囲気内の酸素の濃度が、アルミニウム膜3の成膜とともに低くなることから、アルミニウム膜3の酸素の濃度が、基板2の第1面2Aから離れるにつれて低くなる。その後、加熱工程で、アルミニウム膜4が表面から酸化されることから、酸化膜3の深さ方向における酸素の濃度のばらつきを小さくすることができ、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムからなる酸化膜3をアルミニウム膜3全体に形成することができる。すなわち、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムを、酸化膜3の深さ方向に均一に形成することができる。これによって、酸化膜3全体にわたって酸化アルミニウムが緻密に積層され、水分などが酸化膜3の表面から侵入することをさらに抑制することができる。
【0045】
(光電変換素子の製造方法の変形例2)
加熱工程において、図7に示すように、加熱時間が経つにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていってもよい。具体的に、酸素の流量を、加熱時間が経つにつれて、ガスの流量を小さくしていくことによって、雰囲気中に含まれる酸素の濃度を低くしてもよい。
【0046】
アルミニウム膜4が表面から酸化されることから、加熱時間の経過とともに、雰囲気中の酸素の濃度を低くすることによって、酸化膜3の深さ方向に含まれる酸素の濃度のばらつきを小さくすることができる。その結果、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムを酸化膜3の深さ方向に均一にすることができ、水分などの侵入をさらに抑制することができる。
【0047】
(光電変換素子の製造方法の変形例3)
成膜工程を、希ガスを主として含む雰囲気中で行なってもよい。希ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴンまたはキセノンなどを用いることができる。希ガスは、主として雰囲気中に含まれるように設定され、例えば、雰囲気中に含まれる他の元素の濃度よりも高くなるように設定される。具体的には、希ガスは、例えば、全体に対して90%以上となるように設定することができる。
【0048】
成膜工程において、雰囲気中に存在する酸素の濃度よりも高く希ガスの濃度を設定することによって、アルミニウムが酸化されにくくすることができる。このように成膜工程において、雰囲気中でアルミニウムが酸化されにくくなることによって、アルミニウム膜4の成膜速度を速くした場合でも、基板2が損傷を受けにくくすることができる。その結果
、成膜工程にかかる時間をさらに短縮することができ、光電変換素子の生産性を向上させることができる。
【0049】
(光電変換素子の製造方法の変形例4)
成膜工程を、水素を含む雰囲気中で行なってもよい。成膜工程の際に水素を含む雰囲気中で行なうことによって、基板2にダングリングボンドが存在していた場合、終端化することができる。このように基板2を終端化することによって、基板2の表面に不規則な準位が形成されることを抑制することができる。その結果、光電変換素子の光電変換効率の低下を抑制することができる。
【0050】
(光電変換素子の製造方法の変形例5)
加熱工程の前に、図8に示すように、アルミニウム膜4上に導電ペースト5を所定パターンに塗布する工程を有していてもよい。導電ペースト5としては、例えば銀を主成分とする材料を用いることができる。
【0051】
導電ペースト5が塗布される所定のパターンは、適宜設定すればよい。基板1の第1面2A(受光面)側に電極を形成する場合は、例えばバスバー電極および櫛歯電極となるように設けることができる。一方、第2面2B側に電極を形成する場合は、例えば、電極が基板2とポイント接触されるように、平面形状が円形状または多角形状などになるように設けることができる。
【0052】
アルミニウム膜4上に導電ペースト5を塗布した後、アルミニウム膜4および塗布した導電ペースト5を加熱する。ここで、アルミニウム膜4および導電ペースト5の加熱は、前述した加熱工程と同時に行なうことができる。加熱工程の加熱温度および加熱時間は、導電ペーストの拡散・硬化時間および酸化膜3の形成時間によって適宜調整すればよい。なお、アルミニウム膜4の加熱と導電ペースト5の加熱は別の工程で行なってもよい。
【0053】
このようにアルミニウム膜4および導電ペースト5を加熱することによって、図9に示すように、導電ペースト5中の銀を、アルミニウム膜4内に拡散(ファイヤースルー)させるとともに、アルミニウム膜4に酸化膜3を形成することができる。導電ペースト5の拡散は、所定のパターンに近い状態でアルミニウム膜4内に転写されて、酸化膜3に電極5’が形成されることとなる。
【0054】
このように電極を形成することにより、加熱工程を経た後に電極を改めて形成する必要がなくなるため、光電変換素子1の製造工程が増えることを抑制することができる。その結果、光電変換素子1の生産性を向上させることができる。
【0055】
本発明は以下の実施形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【0056】
成膜工程および加熱工程における酸素の濃度は、装置の大きさ、形状、加熱機構または構造などの条件によって適宜設定すればよく、両工程の酸素の濃度は相対的に決めればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 光電変換素子
2 基板(半導体基板)
2A 第1面(受光面)
2B 第2面
2’ 逆導電型層
2a 光電変換層
3 酸化膜
4 アルミニウム膜
5 導電ペースト
5’ 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の製造方法および光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、光を電気に変換する光電変換素子の研究開発において、例えば、光電変換層を有する基板に光が入射した際に、光電変換層で発生したキャリアが基板の表面で再結合されることを抑制する目的で基板の表面に酸化膜を形成することがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−34499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された光電変換素子によれば、酸化膜を形成する際に、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が用いられていることから、当該
酸化膜を成膜する速度が遅く、生産性を向上させることが困難だった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の表面に酸化膜を高速に形成して、生産性を向上することが可能な光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光電変換素子の製造方法は、入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板を準備する準備工程と、前記半導体基板の主面上に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜を成膜する成膜工程と、該成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中で前記アルミニウム膜を加熱して該アルミニウム膜の表面に酸化膜を形成する加熱工程とを有する。
【0007】
また本発明の光電変換素子は、入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板と、該半導体基板の主面上に設けられた、該主面から離れるにつれて酸素の濃度が高くなっている酸化アルミニウムからなる酸化膜とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光電変換素子の製造方法によれば、成膜工程と加熱工程を経て酸化膜を形成することから、酸化膜を高速に形成することができ、生産性を向上させることができる。
【0009】
また本発明の光電変換素子によれば、取り出すことが可能な電力量を向上するとともに、酸化膜の表面から水分などの侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法を用いて作製した光電変換素子の断面図である。
【図2】図1に示す光電変換素子における酸化膜の深さ方向の酸素の濃度分布を示す図である。
【図3】本発明の光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】本発明の光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】本発明の光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における雰囲気内の酸素の濃度の変化を示す図である。
【図7】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における雰囲気内の酸素の濃度の変化を示す図である。
【図8】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における一工程を示す断面図である。
【図9】本発明の光電変換素子の製造方法の変形例における一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について図を参照しながら説明する。
【0012】
<光電変換素子>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法を用いて製造された光電変換素子1を示す図である。図1に示すように、光電変換素子1は、具体的に、半導体基板(以下、単に基板という)2と、基板2の主面から離れるにつれて酸素の濃度が高くなっている酸化アルミニウムからなる酸化膜3とを有する。
【0013】
基板2は、例えば半導体基板などを用いることができる。基板2は、板状のものを用いることができる。基板2は、光が入射する受光面(図1における上面であり、以下では第1面という)2Aと、この第1面2Aに対して裏側に位置する裏面(図1における下面であり、以下では第2面という)2Bとを有する。
【0014】
基板2は、第1面2Aと第2面2Bとの間に、光を電気に変換する光電変換層2aを有している。光電変換層2aは、例えば一導電型半導体と逆導電型半導体との界面付近に形成することができる。そのため、基板2は、例えば、一導電型を持つ半導体基板を用いることができ、この基板2の第1面2A側に逆導電型層2’を形成することによって、一導電型と逆導電型との間に光電変換層2aを形成することができる。
【0015】
基板2としては、一導電型(例えば、p型)を有する板状の半導体を用いることができる。基板2を構成する半導体としては、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等のシリコン結晶を用いることができる。基板2の厚みは、例えば、250μm以下に設定することが
できる。基板2の形状は、特に限定されるものではないが、製法上の観点から平面視で四角形状としてもよい。
【0016】
本実施形態においては、基板2としてp型の導電型を持つシリコン基板を用いた例について説明する。シリコン基板からなる基板2がp型を持つようにする場合、ドーパント元素としては、例えば、ボロンあるいはガリウムなどを用いることができる。
【0017】
逆導電型層2’は、基板2とpn接合を形成する半導体層である。逆導電型層2’は、基板2と逆の導電型を持つ層であり、基板2における第1面2A側に設けられている。基板2がp型の導電型を持つ場合であれば、逆導電型層2’はn型の導電型を持つように形成される。一方、基板2がn型の導電型を持つ場合であれば、逆導電型層2’はp型の導電型を持つように形成される。
【0018】
逆導電型層2’は、基板2の第1面2A上に形成または接合されていてもよいし、基板2内にイオンを注入および拡散させることによって基板2内に形成してもよい。具体的に、基板2がp型の導電型を持つシリコン基板において、逆導電型層2’がシリコン基板内
に形成されている場合には、例えば逆導電型層2’はシリコン基板における第1面2A側にリン等の不純物を拡散させることによって形成できる。
【0019】
基板2の第1面2A(主面)上に、酸化膜3が設けられている。酸化膜3は、受光面である第1面2Aに設けられていることから、透光性材料によって設けられている。ここで、透光性材料としては、透過率が、例えば50%以上のものを用いることができる。具体的には、例えば、酸化アルミニウム、酸化シリコンなどの酸化物を用いることができる。本実施形態では、酸化アルミニウムを用いる場合について説明する。なお、酸化膜3は、第2面2Bに設けられていてもよく、その場合は透光性を有していない材料を用いることができ、材料の選択性を広げることができる。
【0020】
酸化膜3は、基板2の第1面2Aの一部だけに設けられていてもよく、例えば第1面2Aの面積の50%以上に設けられている。本実施形態では、第1面2A全体を覆うように設けられている。酸化膜3は、厚みDhが、例えば200nm以上3μm以下となるように設
定されている。
【0021】
酸化膜3は、酸化アルミニウムを主として含んでいればよい。酸化膜3に含まれる酸化アルミニウムとしては、例えば、Al2O3、AlO、AlO2、Al2OまたはAl2O2などによって構成されている。
【0022】
酸化膜3は、図2に示すように、酸素の濃度が基板2の第1面2Aから離れるにつれて高くなっている。具体的には、酸化膜3は、第1面2A付近の酸素の濃度が、第1面2Aから離れるにつれて、例えば徐々に高くなっていてもよいし、階段状に高くなっていてもよい。このように酸化膜3内で酸素の濃度が変化していることから、酸化膜3内において第1面2Aから離れるにつれて、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムが存在しやすくなっている。
【0023】
本実施形態では、第1面2Aから離れるにつれて、酸化膜3の酸素の濃度が高くなるように設定されている。そのことから、酸化膜3は第1面2A付近の酸素が化学量論比よりも低くなりやすくなっており、酸素の濃度が化学量論比よりも小さい酸化アルミニウムが存在しやすくなっているため、固定電荷が発生しやすくなっている。そのため、酸化膜3において基板2との界面付近が負の電荷を帯びやすくなっており、例えば、基板2で発生した電子が基板2と酸化膜3との界面で他方主面(第2主面2B)へ反射されやすくすることができ、光電変換素子において取り出すことが可能な電力量を向上させることができる。さらに、酸化膜3は、第1面2Aから離れるにつれて酸素の濃度が高くなっていることから、隙間の少ない緻密な膜とすることができ、例えば空気中の水分の侵入を抑制することができる。
【0024】
(光電変換素子の変形例1)
基板2は、酸化膜3と接する第1面2A(表面)付近に、水素を含んでいてもよい。このように基板2の表面付近に水素が含まれていることから、基板2の表面が終端化されることとなり、不規則な準位が形成されることを抑制することができる。
【0025】
<光電変換素子の製造方法>
本発明の光電変換素子1の製造方法は、基板2を準備する準備工程、アルミニウム膜4を成膜する成膜工程、および酸化膜3を形成する加熱工程を有している。各工程について、詳細に以下説明する。
【0026】
(準備工程)
光電変換層2aを有する基板2を準備する工程について説明する。本実施形態において
基板2は、p型半導体基板を用いて、n型の逆導電型層2’が形成されることによって、光電変換層2aであるpn接合が形成されている。基板2が単結晶シリコン基板の場合は、例えば引き上げ法などによって形成される。また基板2が、多結晶シリコン基板の場合は、例えば鋳造法などによって形成される。なお、以下の説明において、基板2がp型の多結晶シリコン基板を用いた例について説明する。
【0027】
最初に、例えば、鋳造法により多結晶シリコンのインゴットを作製する。次いで、そのインゴットを、例えば、250μm以下の厚みにスライスする。このとき、初めから砥粒を
ワイヤーに固着させた砥粒固着ワイヤーでスライスする固着砥粒タイプのワイヤーソー装置を用いて、インゴットをスライスする。その後、スライス工程で汚染された基板2は洗浄液を用いて清浄化される。このとき、基板2の切断面には機械的ダメージ層が存在する。走査型電子顕微鏡で基板2の切断面を観察すると、遊離砥粒タイプを用いた場合に比べて、マイクロクラックの数は少なく、その深さも約1μm以下と小さくすることができる。
【0028】
また、顕微ラマン分光法を用いて基板2の表面の残留応力を評価すると、固着砥粒タイプの場合には、200MPa以上500MPa以下の圧縮応力が存在するのに対して、遊離砥粒タイプの場合には、200MPa以下の圧縮応力となる。すなわち、固着砥粒タイプを用い
ることにより、機械的ダメージ層が少なく且つマイクロクラック等の発生による残留応力の開放が少ない基板2が得られると推察することができる。
【0029】
逆導電型層2’は、基板2の第1面2A側から形成される。逆導電型層2’は、ペースト状態にしたP2O5を半導体基板1の表面に塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたPOCl3(オキシ塩化リン)を拡散源とした気相熱拡散法などによって形成される。逆導電型層2’は、例えば0.2μm以上2μm以下の深さ、例えば40Ω/□以上200以下Ω/□以下のシート抵抗を有するように形成される。
【0030】
気相熱拡散法では、POCl3等からなる拡散ガスを有する雰囲気中で、例えば600℃
以上800℃以下の温度において、基板2を5分以上30分以下熱処理して燐ガラスを基板2
の表面に形成する。その後、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気中で、例えば800℃以
上900℃以下の高い温度において基板2を例えば10分以上40分以下の間、熱処理すること
により燐ガラスから基板2にリンが拡散して逆導電型層2’が形成される。
【0031】
このようにして、基板2に逆導電型層2’が形成されることによって、基板2と逆導電型層2’との界面付近がpn接合となり、この界面付近が光電変換層2aとなる。このようにして、図3に示すような、光電変換層2aを有する基板2を準備することができる。
【0032】
(成膜工程)
次に、図4に示すように、基板2に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜4を成膜する。アルミニウム膜4は、基板2の第1面2Aに成膜してもよいし、第2面2Bに成膜してもよいし、第1面2Aおよび第2面2Bの両面に成膜してもよい。本実施形態では、第2面2Bにアルミニウム膜4を成膜する場合について説明する。
【0033】
アルミニウム膜4は、例えば、スパッタリング法、CVD法または蒸着法などを用いて成膜を行なうことができる。本実施形態では、スパッタリング法を用いて成膜を行なう場合について説明する。スパッタリング法を用いて成膜を行なった場合は、成膜速度を例えば5nm/min以上で行なうことができる。スパッタリング法を用いることから、成膜速度を速めてもアルミニウム膜4の膜質の劣化を招きにくいため、10nm/min以上に設定してもよい。このように成膜速度を速めることができるため、本工程の生産性を向上させることができる。
【0034】
アルミニウム膜4の成膜は、酸素を含む雰囲気中で行なわれる。雰囲気内における酸素の濃度は、全体に対して、例えば1%以上35%以下となるように設定することができる。雰囲気内の各元素の濃度は、本工程が閉鎖された雰囲気中(系)において行なわれるため、それぞれの元素を含むガスの流量によって定めることができる。例えば、酸素を含むガスの流量が、全体のガスの流量に対して、10%であれば、酸素の濃度を10%とすることができる。すなわち、雰囲気中では、酸素以外の元素が主として含まれるように設定されている。なお、ここでいう「閉鎖された雰囲気」とは、雰囲気中にガスを流入するとともに、ガスを排気して構成された雰囲気も含むものである。
【0035】
雰囲気内に流がされるガスは、スパッタリング法によってアルミニウム原料を成膜する時間の一部に行なわれればよい。雰囲気内へのガスの流入は、例えば、スパッタリングの時間全てにおいて行なってもよいし、ある一定時間のみ行なってもよい。スパッタリング時間に対してガスの流入時間を調節することによって、成膜される膜の膜質を調整することができる。
【0036】
このように酸素の濃度が低い雰囲気中において、スパッタリング法でアルミニウム膜4を成膜することによって、アルミニウム膜4は酸素の濃度が化学量論比よりも小さい酸化アルミニウムによって構成されることとなる。アルミニウム膜4は、例えば、AlO、AlO2、Al2OまたはAl2O2などによって構成されている。なお、アルミニウム膜4は、膜全体として化学量論比よりも小さくなっていればよい。
【0037】
(加熱工程)
成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中で、アルミニウム膜4を加熱する。雰囲気中の酸素の濃度は、成膜工程の酸素の濃度よりも高くなるように設定されていればよい。酸素の濃度は、成膜工程と同様に、ガスの流量によって定めることができる。そのため、加熱工程では、成膜工程の酸素のガスの流量よりも高い流量に設定して、酸素のガスを雰囲気内に流入させる。
【0038】
酸素の流入は、例えば、アルミニウム膜4の加熱時間中ずっと行なってもよいし、アルミニウム膜の加熱時間の一部のみ行なってもよい。このように、酸素の流入を、加熱時間によって変化させることによって、酸化膜3の膜質を変化させることができる。具体的に、加熱時間は、例えば1秒以上5分以下となるように設定することができる。加熱温度は、例えば200℃以上900℃以下となるように設定することができる。
【0039】
アルミニウム膜4を加熱することによって、図5に示すように、アルミニウム膜4の表面に酸化膜3を形成することができる。具体的には、雰囲気中に存在する酸素がアルミニウム膜4の表面からさらに酸化していくことによって、酸化膜3が形成されることとなる。これにより、アルミニウム膜4を構成していた、酸素の濃度が化学量論比よりも小さい酸化アルミニウムがさらに酸化されて、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムとすることができる。
【0040】
本実施形態では、加熱工程よりも酸素の濃度が低い状態で成膜工程を行ない、その後、成膜工程よりも酸素の濃度が高い状態で加熱工程を行なうことから、速い成膜速度で成膜工程を行ない、加熱工程を行なうことによって、酸化膜3を形成することができる。これによって、酸化膜3の形成時間を短縮することができることから、光電変換素子を製造する時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0041】
従来は、ALD法を用いて、アルミニウム層と酸素層を順次積層して酸化膜を形成していたため、酸化膜を形成する工程に時間がかかっていた。その結果、光電変換素子を製造
する時間の長時間化を招いており、生産性を向上させることは困難だった。一方、生産性を向上させるために、酸化膜をスパッタリング法で形成しようとした場合、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al2O3)を用いると、スパッタ粒子の速度が速くなると基板2の表面にダメージを与えやすくなるため、成膜速度を速めることが困難だった。また、ターゲットをアルミニウムとしてスパッタリング法を用いてAl2O3からなる酸化膜を形成しようとした場合には、成膜工程の雰囲気中の酸素濃度を高くする必要があり、成長速度を速めることができなかった。
【0042】
本実施形態では、酸化膜3(アルミニウム膜4)をp型半導体層側である第2主面2Bに形成している。そのため、基板2のp型半導体層内で発生した電子が、基板2と酸化膜3との界面でn型半導体層側へ反射されやすくすることができる。その結果、光電変換素子1から取り出される電力量を向上させることができる。
【0043】
(光電変換素子の製造方法の変形例1)
成膜工程において、図6に示すように、アルミニウム膜3を基板2の第2面2Bに成膜するにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていってもよい。具体的には、酸素の流量を、アルミニウム膜3の成膜時間が経つにつれて、小さくしていけばよい。
【0044】
これにより、雰囲気内の酸素の濃度が、アルミニウム膜3の成膜とともに低くなることから、アルミニウム膜3の酸素の濃度が、基板2の第1面2Aから離れるにつれて低くなる。その後、加熱工程で、アルミニウム膜4が表面から酸化されることから、酸化膜3の深さ方向における酸素の濃度のばらつきを小さくすることができ、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムからなる酸化膜3をアルミニウム膜3全体に形成することができる。すなわち、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムを、酸化膜3の深さ方向に均一に形成することができる。これによって、酸化膜3全体にわたって酸化アルミニウムが緻密に積層され、水分などが酸化膜3の表面から侵入することをさらに抑制することができる。
【0045】
(光電変換素子の製造方法の変形例2)
加熱工程において、図7に示すように、加熱時間が経つにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていってもよい。具体的に、酸素の流量を、加熱時間が経つにつれて、ガスの流量を小さくしていくことによって、雰囲気中に含まれる酸素の濃度を低くしてもよい。
【0046】
アルミニウム膜4が表面から酸化されることから、加熱時間の経過とともに、雰囲気中の酸素の濃度を低くすることによって、酸化膜3の深さ方向に含まれる酸素の濃度のばらつきを小さくすることができる。その結果、酸素の濃度が化学量論比に近い酸化アルミニウムを酸化膜3の深さ方向に均一にすることができ、水分などの侵入をさらに抑制することができる。
【0047】
(光電変換素子の製造方法の変形例3)
成膜工程を、希ガスを主として含む雰囲気中で行なってもよい。希ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴンまたはキセノンなどを用いることができる。希ガスは、主として雰囲気中に含まれるように設定され、例えば、雰囲気中に含まれる他の元素の濃度よりも高くなるように設定される。具体的には、希ガスは、例えば、全体に対して90%以上となるように設定することができる。
【0048】
成膜工程において、雰囲気中に存在する酸素の濃度よりも高く希ガスの濃度を設定することによって、アルミニウムが酸化されにくくすることができる。このように成膜工程において、雰囲気中でアルミニウムが酸化されにくくなることによって、アルミニウム膜4の成膜速度を速くした場合でも、基板2が損傷を受けにくくすることができる。その結果
、成膜工程にかかる時間をさらに短縮することができ、光電変換素子の生産性を向上させることができる。
【0049】
(光電変換素子の製造方法の変形例4)
成膜工程を、水素を含む雰囲気中で行なってもよい。成膜工程の際に水素を含む雰囲気中で行なうことによって、基板2にダングリングボンドが存在していた場合、終端化することができる。このように基板2を終端化することによって、基板2の表面に不規則な準位が形成されることを抑制することができる。その結果、光電変換素子の光電変換効率の低下を抑制することができる。
【0050】
(光電変換素子の製造方法の変形例5)
加熱工程の前に、図8に示すように、アルミニウム膜4上に導電ペースト5を所定パターンに塗布する工程を有していてもよい。導電ペースト5としては、例えば銀を主成分とする材料を用いることができる。
【0051】
導電ペースト5が塗布される所定のパターンは、適宜設定すればよい。基板1の第1面2A(受光面)側に電極を形成する場合は、例えばバスバー電極および櫛歯電極となるように設けることができる。一方、第2面2B側に電極を形成する場合は、例えば、電極が基板2とポイント接触されるように、平面形状が円形状または多角形状などになるように設けることができる。
【0052】
アルミニウム膜4上に導電ペースト5を塗布した後、アルミニウム膜4および塗布した導電ペースト5を加熱する。ここで、アルミニウム膜4および導電ペースト5の加熱は、前述した加熱工程と同時に行なうことができる。加熱工程の加熱温度および加熱時間は、導電ペーストの拡散・硬化時間および酸化膜3の形成時間によって適宜調整すればよい。なお、アルミニウム膜4の加熱と導電ペースト5の加熱は別の工程で行なってもよい。
【0053】
このようにアルミニウム膜4および導電ペースト5を加熱することによって、図9に示すように、導電ペースト5中の銀を、アルミニウム膜4内に拡散(ファイヤースルー)させるとともに、アルミニウム膜4に酸化膜3を形成することができる。導電ペースト5の拡散は、所定のパターンに近い状態でアルミニウム膜4内に転写されて、酸化膜3に電極5’が形成されることとなる。
【0054】
このように電極を形成することにより、加熱工程を経た後に電極を改めて形成する必要がなくなるため、光電変換素子1の製造工程が増えることを抑制することができる。その結果、光電変換素子1の生産性を向上させることができる。
【0055】
本発明は以下の実施形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【0056】
成膜工程および加熱工程における酸素の濃度は、装置の大きさ、形状、加熱機構または構造などの条件によって適宜設定すればよく、両工程の酸素の濃度は相対的に決めればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 光電変換素子
2 基板(半導体基板)
2A 第1面(受光面)
2B 第2面
2’ 逆導電型層
2a 光電変換層
3 酸化膜
4 アルミニウム膜
5 導電ペースト
5’ 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板を準備する準備工程と、
前記半導体基板の主面上に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜を成膜する成膜工程と、
該成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中で前記アルミニウム膜を加熱して該アルミニウム膜の表面に酸化膜を形成する加熱工程と
を有する光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記成膜工程において、前記アルミニウム膜を前記主面に成膜するにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていく請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、加熱時間が経つにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていく請求項1または2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記成膜工程を、希ガスを主として含む雰囲気中で行なう請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記成膜工程を、水素を含む雰囲気中で行なう請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記準備工程において、前記光電変換層がn型半導体層およびp型半導体層から構成されており、該p型半導体層が前記主面側に位置する前記半導体基板を準備する請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程の前に、前記アルミニウム膜上に銀を主成分として含む導電ペーストを所定のパターンに塗布する工程を有し、前記加熱工程において、前記アルミニウム膜および塗布した前記導電ペーストを加熱して、前記導電ペースト中の銀を前記アルミニウム膜内に拡散させることによって、前記半導体基板に銀を含む前記酸化膜からなる電極を形成する請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板と、
該半導体基板の主面上に設けられた、該主面から離れるにつれて酸素の濃度が高くなっている酸化アルミニウムからなる酸化膜と
を有する光電変換素子。
【請求項9】
前記半導体基板は、前記酸化膜と接する表面付近に、水素を含んでいる請求項8に記載の光電変換素子。
【請求項1】
入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板を準備する準備工程と、
前記半導体基板の主面上に、酸素を含む雰囲気中でアルミニウム膜を成膜する成膜工程と、
該成膜工程よりも高い濃度の酸素を含む雰囲気中で前記アルミニウム膜を加熱して該アルミニウム膜の表面に酸化膜を形成する加熱工程と
を有する光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記成膜工程において、前記アルミニウム膜を前記主面に成膜するにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていく請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、加熱時間が経つにつれて雰囲気中の酸素の濃度を低くしていく請求項1または2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記成膜工程を、希ガスを主として含む雰囲気中で行なう請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記成膜工程を、水素を含む雰囲気中で行なう請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記準備工程において、前記光電変換層がn型半導体層およびp型半導体層から構成されており、該p型半導体層が前記主面側に位置する前記半導体基板を準備する請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程の前に、前記アルミニウム膜上に銀を主成分として含む導電ペーストを所定のパターンに塗布する工程を有し、前記加熱工程において、前記アルミニウム膜および塗布した前記導電ペーストを加熱して、前記導電ペースト中の銀を前記アルミニウム膜内に拡散させることによって、前記半導体基板に銀を含む前記酸化膜からなる電極を形成する請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
入射した光を光電変換する光電変換層を有する半導体基板と、
該半導体基板の主面上に設けられた、該主面から離れるにつれて酸素の濃度が高くなっている酸化アルミニウムからなる酸化膜と
を有する光電変換素子。
【請求項9】
前記半導体基板は、前記酸化膜と接する表面付近に、水素を含んでいる請求項8に記載の光電変換素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−115376(P2013−115376A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262810(P2011−262810)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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