説明

光電変換素子及びそれに用いられる組成物

【課題】特性が高い光電変換素子を提供する。
【解決手段】本発明は第一に、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する光電変換素子を提供する。


(I)
(式中。R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びそれに用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
π共役高分子化合物は、可視光の領域の光の吸収すること、及び、その導電特性が注目されており、光電変換素子への適用が検討されている。
近年、π共役高分子化合物を含む有機層を有する素子は、シリコン系半導体等の無機素子の製造に必要な高温プロセス及び真空プロセスを省くことができ、製造におけるエネルギーを低減できる。また、π共役高分子化合物を含む有機層を有する素子は、柔軟性を有するフィルム状の素子とすることが可能であり、次世代の素子として注目されている。
【0003】
π共役高分子化合物を含む有機層を有する素子としては、例えば、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を含む有機層を有する光電変換素子が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ポリマー レビューズ(Polymer Reviews)、2008年、第48巻、p.531−582
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記光電変換素子の特性は十分ではなく、新規な光電変換素子が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する光電変換素子を提供する。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【0007】
本発明は第二に、第1の化合物と、第1の化合物とは異なる第2の化合物とを含み、第1の化合物が、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であり、第2の化合物が、電子受容性化合物又は電子供与性の高分子化合物である組成物を提供する。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【0008】
本発明は第三に、第1の化合物と、第1の化合物とは異なる第2の化合物とを含み、第1の化合物が、重量平均分子量が10000以上の式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であり、第2の化合物が、電子受容性化合物又は電子供与性化合物である組成物を提供する。

(III)
(式中、Y’は2価の基を表す。R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【0009】
本発明は第四に、前記組成物と溶媒とを含む溶液を提供する。
【0010】
本発明は第五に、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有する光電変換素子の製造方法であって、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する層に、Y’で表される2価の基を脱離する処理を行い、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する活性層を形成する工程を有する光電変換素子の製造方法を提供する。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)

(III)
(式中、Y’は2価の基を表す。R、R、n及びmは、前述と同じ意味を表す。)
【0011】
本発明は第六に、前記光電変換素子を含むイメージセンサーを提供する。
【0012】
本発明は第七に、有機薄膜太陽電池である前記光電変換素子を提供する。
【0013】
本発明は第八に、前記有機薄膜太陽電池を含む太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、特性が高い新規な光電変換素子を提供するため、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の光電変換素子は、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【0017】
式(I)中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。該置換基は、炭素数1〜30の基が好ましい。置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの炭素数1〜30のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基、チエニル基などのヘテロアリール基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。
n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。n及びmは、0であることが好ましい。
【0018】
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が、さらに式(II)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。

(II)
(式中、C’は、置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、C’は式(I)で表される基とは異なる。)
【0019】
ここで、アリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団である。アリーレン基に含まれる芳香環を構成する炭素数は、通常、6〜60であり、好ましくは6〜20である。芳香族炭化水素としては、ベンゼン環を含む化合物、縮合環を含む化合物、独立したベンゼン環又は縮合環のうち2個以上の環が直接結合した構造を含む化合物又はビニレン等の基を介して結合した構造を含む化合物も含まれる。
【0020】
2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。2価の複素環基に含まれる環を構成する炭素数は通常3〜60である。
複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素に炭素原子と酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子とを含む化合物をいう。2価の複素環基の中でも、ヘテロアリーレン基が好ましい。
【0021】
置換されていてもよいアリーレン基の例としては、式1〜式41、式131〜式135で表される基が挙げられる。ヘテロアリーレン基の例としては、式42〜式130、式136〜式138で表される基が挙げられる。
【0022】

【0023】

【0024】

【0025】

【0026】

【0027】

【0028】

【0029】

【0030】

【0031】

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】
式1〜式138中、Rは、水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが置換基である場合、置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、チエニルなどのヘテロアリール基が挙げられる。置換基がアルキル基又はアルコキシ基である場合、置換基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜14であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましい。式120及び式122中、Xは=CH−又は窒素原子を表す。
【0043】
2価の芳香族アミン残基とは、窒素原子に3個の芳香族基が結合した芳香族アミン化合物から、異なる2個の芳香環上の水素原子を各々1個取り除いた基である。2価の芳香族アミン残基の例としては、式139、式140で表される基が挙げられる。

(式中、Rは前述と同じ意味を表す。)
【0044】
アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基等が挙げられる。
【0045】
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、光電変換効率の観点からは、繰り返し単位として式112で表される基を含むことが好ましい。
【0046】
本発明における高分子化合物とは、重量平均分子量が3×10以上の化合物を指す。式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の重量平均分子量は、3×10〜1×10であることが好ましい。重量平均分子量が3×10以上であると、デバイス作製時の膜形成において、膜中の欠陥の発生が抑制される。重量平均分子量が1×10以下であると、溶媒への溶解性や素子作製時の塗布性が高くなる。
重量平均分子量は、8×10〜5×10であることがより好ましく、1×10〜1×10であることが特に好ましい。デバイス作製時の膜形成において、膜中の欠陥の発生が抑制する観点からは、10000以上が好ましい。
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の数平均分子量は、1×103〜1×108であることが好ましく、2×103〜1×107であることがより好ましい。数平均分子量が1×103以上である場合には、強靭な薄膜が得られやすくなる。一方、1×108以下である場合には、高分子化合物の溶解性が高く、薄膜の作製が容易である。
なお、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンの標準資料を用いて算出したポリスチレン換算の重量平均分子量及びポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0047】
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、該高分子化合物が有する繰り返し単位の合計量を100とした場合、式(I)で表される繰り返し単位の量が20〜100であることが好ましく、30〜70であることがより好ましい。該高分子化合物が、さらに式(II)で表される繰り返し単位を含む場合、該高分子化合物が有する繰り返し単位の合計量を100とした際に、式(II)で表される繰り返し単位の量が20〜80であることが好ましく、30〜70であることがより好ましい。
【0048】
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、本発明の組成物を光電変換素子に用いる場合、変換効率の観点からは、該高分子化合物の光吸収末端波長が600nm以上であることが好ましく、650nm以上であることがより好ましく、700nm以上であることがさらに好ましく、720nm以上であることが特に好ましい。
【0049】
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、分子鎖末端に重合に関与する基が残っていると、得られた高分子化合物を用いた光電変換素子の特性が低下する可能性があるので、末端が重合に関与しない安定な基で保護されていることが好ましい。該安定な基としては、分子鎖主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基が好ましい。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基が例示される。
【0050】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する。該活性層は、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の他に、電子供与性化合物(p型の半導体)又は電子受容性化合物(n型の半導体)を含んでいてもよい。ここで、電極は、少なくとも一方が透明又は半透明であることが好ましい。
【0051】
本発明の光電変換素子の他の好ましい態様は、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層と有機層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有し、該有機層に電子受容性化合物又は電子供与性化合物を含む光電変換素子である。ここで、電極は、少なくとも一方が透明又は半透明であることが好ましい。式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が電子受容性化合物として用いられる場合、有機層中には電子供与性化合物が含まれる。また、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が電子供与性化合物として用いられる場合、有機層中には電子受容性化合物が含まれる。
【0052】
電子供与性化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよいが、高分子化合物が好ましい。電子供与性化合物の具体例としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンが挙げられる。
【0053】
電子受容性化合物は、仕事関数が3.0eV以上であることが好ましく、3.2eV以上であることがさらに好ましく、3.4eV以上であることが特に好ましい。ここで仕事関数は、真空準位を0eVとした場合の最低非占有軌道準位(LUMO)エネルギーの絶対値を指す。電子受容性化合物は、有機化合物でも無機化合物でもよいが、有機溶媒への溶解性の観点からは、有機化合物であることが好ましい。
電子受容性化合物の具体例としては、炭素材料、酸化チタン等の金属酸化物、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)等のフェナントロリン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体が挙げられ、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。
フラーレン、フラーレン誘導体としてはC60、C70、C76、C78、C84及びその誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体は、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0054】
フラーレン誘導体としては、例えば、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物が挙げられる。

(1) (2) (3) (4)

(式(1)〜(4)中、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rはアルキル基又はアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。)
【0055】
及びRで表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜30である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0056】
及びRで表されるアリール基は、その炭素数が通常6〜60であり、置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルキルオキシフェニル基(C1〜C12アルキルは、炭素数1〜12のアルキルであることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0057】
で表されるヘテロアリール基は、通常、炭素数が3〜60であり、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0058】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、式(5)で表される基が挙げられる。

(5)
(式中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0059】
で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0060】
60フラーレンの誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0061】
70フラーレンの誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0062】
また、フラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チエニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0063】
活性層中に本発明の高分子化合物とフラーレン誘導体とを含む場合、フラーレン誘導体の割合が、本発明の高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。
【0064】
活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0065】
本発明の光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0066】
前記の透明又は半透明の電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。該電極材料の具体例としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESA、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明の電極の材料の中でも、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0067】
一対の電極のうちの一方の電極の材料は、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0068】
光電変換効率を向上させるための手段として、活性層及び有機層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は酸化物等が挙げられる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用いて中間層を形成してもよい。
【0069】
中間層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0070】
(組成物)
本発明の光電変換素子は、光電変換効率の観点からは、第1の化合物と、第1の化合物とは異なる第2の化合物とを含み、第1の化合物が、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であり、第2の化合物が、電子受容性化合物又は電子供与性化合物である組成物(以下、「第1の組成物」という場合がある。)を活性層中に含むことが好ましい。
【0071】
第1の組成物に含まれる式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の重量平均分子量は、3×10〜1×10であることが好ましく、8×10〜5×10であることがより好ましく、1×10〜1×10であることが特に好ましい。デバイス作製時の膜形成において、膜中の欠陥の発生が抑制する観点からは、10000以上が好ましい。
また、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、さらに式(II)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0072】
第1の組成物としては、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物と、電子受容性化合物又は電子供与性の高分子化合物とを含むことが好ましく、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましく、該電子受容性化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体であることがさらに好ましい。
【0073】
第1の組成物中の第1の化合物の含有量は、組成物中の重量分率で表して、好ましくは0.01重量%〜99.9重量%、より好ましくは0.1重量%〜50重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜30重量%、特に好ましくは0.5重量%〜10重量%である。
組成物中の第2の化合物の含有量は、好ましくは0.01重量%〜99.9重量%、より好ましくは0.1重量%〜50重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜30重量%、特に好ましくは0.5重量%〜10重量%である。該組成物は、第1の化合物、第2の化合物以外の化合物を含んでいてもよい。
【0074】
第2の化合物が電子受容性化合物である場合、電子受容性化合物の含有量と第1の化合物との含有量比は、(電子受容性化合物の含有量)/(第1の化合物の含有量)が0.1〜10であることが好ましく、0.2〜5であることがさらに好ましい。
【0075】
第1の組成物は、第1の化合物と、第1の化合物とは異なる第2の化合物とを含み、第1の化合物が、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である組成物(以下、「第2の組成物」という場合がある。)から製造することができる。

(III)
(式中、Y’は2価の基を表す。R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【0076】
第2の組成物に含まれる式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の重量平均分子量は、3×10〜1×10であることが好ましく、8×10〜5×10であることがより好ましく、1×10〜1×10であることが特に好ましい。デバイス作製時の膜形成において、膜中の欠陥の発生が抑制する観点からは、10000以上が好ましい。
また、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、さらに式(IV)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。


(IV)
(式中、C’’は、置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、C’’は式(III)で表される基とは異なる。)
【0077】
C’’で表される置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基及びアルケニレン基の定義及び具体例は、前述のC’で表される置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基及びアルケニレン基の定義及び具体例と同じである。
【0078】
式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、該高分子化合物が有する繰り返し単位数の合計量を100とした場合、式(III)で表される繰り返し単位数の量が20〜100であることが好ましく、30〜70であることがより好ましい。該高分子化合物が、さらに式(IV)で表される繰り返し単位を含む場合、該高分子化合物が有する繰り返し単位数の合計量を100とした際に、式(IV)で表される繰り返し単位数の量が20〜80であることが好ましく、30〜70であることがより好ましい。
【0079】
式(III)中、Y’は、2価の基を表す。2価の基としては、式(III)で表される化合物に熱や光などのエネルギーを与えることで脱離しうる基が好ましい。Y’で表される2価の基としては、以下の基が例示される。

【0080】
式(Y−1)〜式(Y−8)中、R〜R13は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。中でも、水素原子又は炭素数1〜30の基が好ましい。
〜R12が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの炭素数1〜30のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
13が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの炭素数1〜30のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜30のアリール基、ビニル基が挙げられる。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子の中でも、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0081】
式(Y−1)〜式(Y−8)で表される基の中でも、式(Y−3)〜式(Y−7)で表される基が好ましく、式(Y−3)〜式(Y−5)で表される基がより好ましい。
【0082】
式(III)中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。該置換基は、炭素数1〜30の基が好ましい。置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの炭素数1〜30のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基、チエニル基などのヘテロアリール基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。
n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。n及びmは、0であることが好ましい。
【0083】
式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物の合成の容易さからは、Suzukiカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0084】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(100):
−E1−Q (100)
〔式中、E1は、式(III−1)で表される基を表す。

(III−1)
(式中、Y’、R、R、m及びnは、前述と同じ意味を表す。)
及びQは、同一又は相異なり、ボロン酸残基又はホウ酸エステル残基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物と、式(200):
1−E2−T2 (200)
〔式中、E2は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の芳香族アミン残基を表す。T1及びT2は、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。
【0085】
反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が0.6〜0.99モルであることが好ましく、0.7〜0.95モルであることがさらに好ましい。
【0086】
式(200)における、T1及びT2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0087】
式(200)における、T1及びT2で表されるアルキルスルホネート基の例としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が挙げられる。アリールスルホネート基の例としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が挙げられる。アリールスルホネート基の例としては、ベンジルスルホネート基等が挙げられる。
【0088】
式(200)における、Eで表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の芳香族アミン残基の具体例は、式1〜式140で表される基が挙げられる。
【0089】
Suzukiカップリング反応に用いられるパラジウム触媒としては、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウムアセテートが好ましい。
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モル、好ましくは0.0003モル〜0.1モルである。
【0090】
Suzukiカップリング反応に用いられる塩基は、無機塩基、有機塩基、無機塩等である。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウムが挙げられる。
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モル、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0091】
前記パラジウム触媒としてパラジウムアセテートを用いる場合は、配位子としてリン化合物を添加してもよい。リン化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。リン化合物を添加する場合、その添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0092】
Suzukiカップリング反応において、反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが挙げられる。高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基を水溶液として反応系中に加え、水相と有機相の2相の溶媒中でモノマーを反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、通常、水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる。
なお、塩基を水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を反応系中に加えてもよい。
【0093】
Suzukiカップリング反応の温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度である。高分子化合物の高分子量化の観点からは、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
Suzukiカップリング反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度であり、1時間〜30時間程度が好ましい。
【0094】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下であってパラジウム触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、反応容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、反応容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、脱気したトルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、脱気した炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0095】
式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、分子鎖末端に重合に関与する基が残っていると、得られた高分子化合物を用いた光電変換素子の特性が低下する場合があるので、末端が重合に関与しない安定な基で保護されていることが好ましい。該安定な基としては、分子鎖主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基が好ましい。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基が例示される。
【0096】
式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、素子に用いる場合、素子作製の容易性から、溶媒への溶解度が高いことが望ましい。具体的には、0.01wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することが好ましく、0.1wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがより好ましく、0.4wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがさらに好ましい。
【0097】
第2の組成物において、第2の化合物は、電子受容性化合物又は電子供与性化合物であることが好ましい。電子供与性化合物の中では、高分子化合物である電子供与性化合物が好ましい。電子受容性化合物の中では、フラーレン又はフラーレン誘導体が好ましい。
【0098】
第2の組成物中の第1の化合物の含有量は、組成物中の重量分率で表して、好ましくは0.01重量%〜99.9重量%、より好ましくは0.1重量%〜50重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜30重量%、特に好ましくは0.5重量%〜10重量%である。
組成物中の第2の化合物の含有量は、好ましくは0.01重量%〜99.9重量%、より好ましくは0.1重量%〜50重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜30重量%、特に好ましくは0.5重量%〜10重量%である。
【0099】
第2の化合物が電子受容性化合物である場合、電子受容性化合物の含有量と第1の化合物との含有量比は、(電子受容性化合物の含有量)/(第1の化合物の含有量)が0.1〜10であることが好ましく、0.2〜5であることがさらに好ましい。該組成物は、第1の化合物、第2の化合物以外の化合物を含んでいてもよい。
【0100】
<溶液>
本発明の溶液(インク)は、第2の組成物と溶媒とを含む。溶媒の例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒、デカリン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒が挙げられる。溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒が好ましく、ジクロロベンゼンがより好ましく、オルトジクロロベンゼンがさらに好ましい。
【0101】
また、成膜の容易さの観点からは、25℃における表面張力が15mN/m以上である溶媒が好ましく、15mN/mから100mN/mである溶媒がより好ましい。25℃における表面張力が15mN/mから100mN/mである溶媒の具体例としては、トルエン(27.9mN/m)、ベンゾニトリル(34.5mN/m)、1,3−ベンゾジオキソール(28.8mN/m)、オルトキシレン(29.8mN/m)、メタキシレン(28.5mN/m)、パラキシレン(28.0mN/m)、シクロヘキサノン(34.6mN/m)、クロロベンゼン(33.0mN/m)、オルトジクロロベンゼン(36.7mN/m)、メタジクロロベンゼン(35.4mN/m)、パラジクロロベンゼン(32.5mN/m)、cis−デカリン(32.2mN/m)、trans−デカリン(29.9mN/m)、エチルベンゼン(28.7mN/m)、1,2,4−トリメチルベンゼン(29.2mN/m)、1,3,5−トリメチルベンゼン(27.5mN/m)、クロロホルム(26.7mN/m)、テトラデカン(26.1mN/m)、エチレングリコール(48.4mN/m)があげられる。括弧内の数値は25℃における表面張力を表す。表面張力は、「Lange‘s Handbook of Chemistry 13th edition」、John.A.Dean編著、McGaw−Hill社、1972年発刊、pp.10/103−10/116に記載された値を記した。とりわけ、第1の化合物が共役高分子化合物である場合、共役高分子化合物の溶解性の観点からは、置換基を有する芳香族化合物が溶媒として好ましく、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メタジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、トルエンがより好ましい。
【0102】
溶液に含まれる溶媒の重量は、溶液全体の重量に対して、50〜99.9重量%であることが好ましい。
【0103】
(組成物の製造方法)
本発明の第1の組成物の製造方法は、第2の組成物を用い、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物のY’で表される2価の基を脱離し、式(I)で表される繰り返し単位を含む化合物を製造する工程を有する製造方法である。
【0104】
式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、熱、光等のエネルギーを与えることで、Y’で表される2価の基が脱離し、アントラセン骨格を生成することができる。熱を用いる場合は、Y’で表される2価の基が脱離する温度以上、かつ、高分子化合物が分解する温度以下であれば、任意の温度を設定することができる。通常は、150℃から400℃であり、好ましくは200℃から350℃である。熱処理を行う時間としては、工業的な範囲で選定できるが、通常は1分から50時間であり、好ましくは10分から24時間である。熱処理の雰囲気としては、不活性雰囲気が好ましく、不活性雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、真空が例示される。不活性雰囲気中に酸素を含む場合、酸素濃度が100体積ppm以下であることが好ましく、より好ましくは、10ppm以下である。また、不活性雰囲気が真空である場合、酸素分圧が200Pa以下であることが好ましく、より好ましくは50Paである。
光によりY’で表される2価の基を脱離する方法としては、400nm以下の波長の紫外線を照射する方法が例示される。光強度はY’で表される2価の基が脱離する強さであれば特に制限はない。光を照射する場合の雰囲気も、不活性雰囲気が好ましく、その範囲は上記に例示した範囲を好適に用いることができる。
脱離したY’で表される2価の基から生成する化合物は、精製により第1の組成物から除去してもよい。また、Y’で表される2価の基から生成する化合物は、電子供与性化合物又は電子受容性化合物として第1の組成物に含まれていてもよい。
【0105】
(光電変換素子の製造方法)
本発明の光電変換素子の製造方法は、一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む光電変換素子の製造方法であって、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む層に、Y’で表される2価の基を脱離する処理を行い、活性層を形成する工程を有する。
【0106】
本発明の光電変換素子は、例えば、一方の電極上に、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物と電子受容性化合物と溶媒とを含む溶液を塗布して薄膜を成膜する工程、該薄膜に熱・光等のエネルギーを与えてY’で表される2価の基を脱離して式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物と電子受容性化合物とを含む活性層を形成する工程、活性層上の他の一方の電極を形成する工程から製造することができる。
【0107】
成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
また、薄膜の形成は、真空蒸着法を用いてもよい。
【0108】
本発明の光電変換素子は、一方の電極上に、第1の組成物と溶媒とを含む溶液を塗布して活性層を形成し、該活性層上に他の一方の電極を形成して製造してもよい。
【0109】
<素子の用途>
本発明の光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0110】
また、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0111】
本発明の有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の有機薄膜太陽電池も使用目的や使用場所及び環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0112】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルム又は充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、又は上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0113】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
(NMR測定)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0116】
(数平均分子量および重量平均分子量の測定)
数平均分子量及び重量平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。測定する高分子化合物は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに30μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0117】
高分子化合物の吸収波長の測定には、紫外、可視、近赤外の波長領域で動作する分光光度計(例えば、日本分光製、紫外可視近赤外分光光度計JASCO−V670)を用いた。JASCO−V670を用いる場合、測定可能な波長範囲が200〜1500nmであるため、該波長範囲で測定を行った。まず、測定に用いる基板の吸収スペクトルを測定した。基板としては、石英基板、ガラス基板等を用いた。次いで、該基板の上に高分子化合物を含む溶液を塗布し、乾燥して高分子化合物を含む薄膜を形成した。その後、薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルを測定した。薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルと基板の吸収スペクトルとの差を、薄膜の吸収スペクトルとして得た。
【0118】
参考例1
(化合物(C−2)の合成)

化合物(C−2)の合成は、ケミカル コミュニケーションズ(Chemical Communications)、1997年、p.73−74に記載された方法に基づいて行った。四つ口フラスコに、化合物(C−1)(東京化成工業社製)を20.16g(60.00mmol)、無水マレイン酸を20.59g(210.0mmol)、及び、トルエンを250mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。この時、化合物(C−1)はトルエンに対して不溶であり、反応系中は不均一であった。オイルバス温度を120℃にして、反応液を3.5時間還流させることにより、Diels−Alder反応が進行し、反応系内は均一溶液となった。その後、反応液にメタノール20mLを30分おきに5回(計100mL)加え、3時間加熱環流させることで、無水物が開環したモノエステル体を得た。その後、反応液に濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた。エバポレータを用いて反応液中の溶媒を除去した後、ヘキサン200mLを加え、室温で1時間撹拌することで、無水マレイン酸を除去した。反応液にメタノール200mLを加え、濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた後、反応液を濾過して不溶物を取り除いた。クロロホルムを展開溶媒に用いたカラムで反応液の分離を行い、分離物をヘキサンで再沈殿を行い、無色粉末のアントラセンの架橋体(化合物C-2)を25.17g得た。
【0119】
得られた化合物(C−2)の1H-NMR(CD2Cl2,・(ppm))シフト値は、3.18 (s, 2H) , 3.50 (d, 6H) , 4.52 (s, 2H) , 7.18 (d, 2H) , 7.27 (s, 2H) , 7.45 (s, 2H) を示し、目的物の生成を確認した。
【0120】
参考例2
(化合物(C−3)の合成)

四つ口フラスコに、化合物(C−2)を4.802g、ビスピナコラートジボロンを10.16g及びジオキサンを150mL加え、室温(25℃)でアルゴンガスを用いて四つ口フラスコ中をバブリングした。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を408.3mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを277.2mg及び酢酸カリウムを3.926g加えた後、反応液を7時間加熱環流させた。反応後。液体クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。フィルターを用いて反応液に難溶である塩基を分離した。反応液をエバポレータで30分程乾燥させ、溶媒を取り除いた。参考例1と同様の方法で、反応液をカラムで分離した後、分離物を少量のアセトンに溶解させ、メタノールを加えて撹拌し、少量の水を加えていくことで、化合物(C−2)のビスピナコールエステル体(化合物(C−3))を3.50g得た。化合物(C−3)の収量は60.9%であり、液体クロマトグラフィーから求めたHPLC面百値による純度は、97.5%であった。
【0121】
得られた化合物(C−3)の1H-NMR(CD2Cl2, (ppm)) シフト値は、(s, 24H)、 3.17 (m, 2H) 、 3.48 (d, 6H) 、 4.58 (s, 2H) 、 7.28 (m, 2H) 、 7.50 (m, 2H) 、 7.67 (s, 2H) を示し、目的物の生成を確認した。
【0122】
参考例3
(高分子化合物1の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物(C−3)を287.1mg、化合物(D−1)を229.1mg、トルエンを10mL及びメチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を60.6mg(0.15mmol)を入れて均一溶液とし、25℃で30分間アルゴンバブリングを行った。反応液を90℃に昇温後、酢酸パラジウムを0.67mg(化合物D−1に対して1mol%)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを3.70mg(化合物D−1に対して3.5mol%)を加えた。その後、反応液を100℃で攪拌しながら、16.7重量(wt)%の炭酸ナトリウム水溶液1.90g(3.00mmol)を10分かけて滴下した。4時間後、反応液にフェニルホウ酸を3.66mg(0.03mmol)、酢酸パラジウムを0.67mg(化合物D−1に対して1mol%)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを3.70mg(化合物D−1に対して3.5mol%)加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。その後、反応液にジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水20mLを加え、2時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水20mlで2回、3wt%の酢酸水溶液20mLで2回、さらに水20mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン30mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製した高分子化合物1を60mg得た。GPCで測定した高分子化合物1のポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が13,000であり、数平均分子量(Mn)が4,000であった。
【0123】
参考例4
(高分子化合物2の合成)

化合物(D−1)にかえて化合物(D−2)を用いた以外は実施例2と同様に重合し、高分子化合物2を得た。GPCで測定した高分子化合物2のポリスチレン換算の分子量は、Mwが94,000であり、Mnが60,000であった。
【0124】
参考例5
(高分子化合物3の合成)

化合物(D−1)にかえて化合物(D−3)を用いた以外は実施例2と同様に重合し、高分子化合物3を得た。GPCで測定した高分子化合物3のポリスチレン換算の分子量は、Mwが28,000であり、Mnが20,000であった。
【0125】
参考例6
(吸収波長の測定)
高分子化合物1をオルトジクロロベンゼンに2重量%の濃度で溶解させ、溶液を作製した。該溶液をガラス板上に塗布し、50〜100nmの厚みの薄膜を形成し、該薄膜の吸収波長を測定した。次いで、窒素雰囲気下で、該薄膜を形成したガラス板を250〜300℃で1時間熱処理した。熱処理後のガラス板上の薄膜の吸収スペクトルを測定した。熱処理前の高分子化合物1の吸収波長のスペクトルは530nmに極大値を有しており、熱処理後の高分子化合物1の吸収波長のスペクトルは580nmに極大値を有していた。
【0126】
参考例7
(吸収波長の測定)
高分子化合物1にかえて高分子化合物2を用いた以外は、参考例2と同様に高分子化合物の吸収波長を測定した。熱処理前の高分子化合物2の吸収波長のスペクトルは525nmに極大値を有しており、熱処理後の高分子化合物2の吸収波長のスペクトルは550nmに極大値を有していた。
【0127】
参考例8
(吸収波長の測定)
高分子化合物1にかえて高分子化合物3を用いた以外は、参考例2と同様に高分子化合物の吸収波長を測定した。熱処理前の高分子化合物3の吸収波長のスペクトルは440nmに極大値を有しており、熱処理後の高分子化合物3の吸収波長のスペクトルは570nmに極大値を有していた。
【0128】
実施例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板を、オゾンUV処理して表面処理を行った。次に、高分子化合物1及びフラーレンC60PCBM(フェニルC61−酪酸メチルエステル)(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を、高分子化合物1の重量に対するC60PCBMの重量の比が3となるようにオルトジクロロベンゼンに溶解し、インク1を製造した。インク1の重量に対して、高分子化合物1の重量とC60PCBMの重量の合計は2.0重量%であった。該インク1をスピンコートによりガラス基板上に塗布し、高分子化合物1を含む有機膜を作製した。膜厚は約100nmであった。その後、有機膜上に真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ2nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着し、有機薄膜太陽電池を製造した。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正方形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)は0.30mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.96Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.30であり、光電変換効率(η)は0.086%であった。結果を表1に示す。
【0129】
実施例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
高分子化合物1にかえて高分子化合物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。Jsc(短絡電流密度)は0.39mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.73Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.24であり、光電変換効率(η)は0.068%であった。結果を表1に示す。
【0130】
実施例3
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
高分子化合物1にかえて高分子化合物3を用いた以外は、実施例1と同様の方法でインク及び有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。Jsc(短絡電流密度)は0.19mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.29Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.27であり、光電変換効率(η)は0.015%であった。結果を表1に示す。
【0131】
表1 光電変換素子評価結果


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有し、該活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する光電変換素子。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項2】
活性層が、さらに電子受容性化合物又は電子供与性化合物を含む請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
一対の電極と、該電極間に設けられた活性層と有機層とを有し、活性層に式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有し、有機層に電子受容性化合物又は電子供与性化合物を含む請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
電子供与性化合物が高分子化合物である請求項2又は3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
電子受容性化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体である請求項2又は3に記載の光電変換素子。
【請求項6】
式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が、さらに式(II)で表される繰り返し単位を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電変換素子。

(II)
(式中、C’は、置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、C’は式(I)で表される基とは異なる。)
【請求項7】
第1の化合物と、第1の化合物とは異なる第2の化合物とを含み、第1の化合物が、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であり、第2の化合物が、電子受容性化合物又は電子供与性の高分子化合物である組成物。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項8】
第1の化合物の重量平均分子量が10000以上である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第1の化合物が、さらに式(II)で表される繰り返し単位を含む請求項7又は8に記載の組成物。

(II)
(式中、C’は、置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、C’は式(I)で表される基とは異なる。)
【請求項10】
電子受容性化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体である請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
第1の化合物と、第1の化合物とは異なる第2の化合物とを含み、第1の化合物が、重量平均分子量が10000以上の式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であり、第2の化合物が、電子受容性化合物又は電子供与性化合物である組成物。

(III)
(式中、Y’は2価の基を表す。R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項12】
第1の化合物が、さらに式(IV)で表される繰り返し単位を含む請求項11に記載の組成物。

(IV)
(式中、C’’は、置換されていてもよいアリーレン基、2価の複素環基、2価の芳香族アミン残基、アルケニレン基又はアルキニレン基を表す。ただし、C’’は式(III)で表される基とは異なる。)
【請求項13】
電子供与性化合物が高分子化合物である請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
電子受容性化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体である請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物と溶媒とを含む溶液。
【請求項16】
溶媒が、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒又はエーテル溶媒である請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
溶媒の表面張力が15mN/m〜100mN/mである請求項15又は16に記載の溶液。
【請求項18】
一対の電極と、該電極間に設けられた活性層とを有する光電変換素子の製造方法であって、式(III)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する層に、Y’で表される2価の基を脱離する処理を行い、式(I)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する活性層を形成する工程を有する光電変換素子の製造方法。

(I)
(式中、R及びRは、同一又は相異なり、置換基を表す。n及びmは、同一又は相異なり、0〜3の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)

(III)
(式中、Y’は2価の基を表す。R、R、n及びmは、前述と同じ意味を表す。)
【請求項19】
請求項18に記載の光電変換素子の製造方法で製造された光電変換素子。
【請求項20】
請求項1〜6、19のいずれか一項に記載の光電変換素子を含むイメージセンサー。
【請求項21】
有機薄膜太陽電池である請求項1〜6、19のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項22】
請求項21に記載の有機薄膜太陽電池を含む太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−151468(P2012−151468A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284989(P2011−284989)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】