説明

光電変換素子及び固体撮像素子

【課題】光電変換効率の低下をできるだけ抑えつつ、暗電流を減少させることができる光電変換素子及び固体撮像素子を提供する。
【解決手段】本発明は、一対の電極と、一対の電極の間に配置された光電変換層とを含む光電変換部を有する光電変換素子であって、光電変換層の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、一対の電極の正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部電極と、下部電極に対向する上部電極と、下部電極と上部電極との間に形成された有機光電変換層とを備えた光電変換素子及び固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光センサは、シリコン(Si)などの半導体基板中にフォトダイオード(PD)を形成して作成した素子が一般的であり、固体撮像素子としては、半導体基板中にPDを2次元的に配列し、各PDで光電変換により発生した信号電荷に応じた信号をCCDやCMOS回路で読み出す平面型固体撮像素子が広く用いられている。カラー固体撮像素子を実現する方法としては、平面型固体撮像素子の光入射面側に、色分離用に特定の波長の光のみを透過するカラーフィルタを配した構造が一般的であり、特に、現在デジタルカメラなどに広く用いられている方式として、2次元的に配列した各PD上に、青色(B)光、緑色(G)光、赤色(R)光をそれぞれ透過するカラーフィルタを規則的に配した単板式固体撮像素子がよく知られている。
【0003】
ただし、単板式固体撮像素子においては、カラーフィルタが限られた波長の光のみしか透過しないため、カラーフィルタを透過しなかった光が利用されず光利用効率が悪い。また、高集積化に伴い、PDのサイズが光の波長と同程度のサイズとなり、光がPDに導波されにくくなる。また、青色光、緑色光、赤色光を、近接するそれぞれ別々のPDで検出した後それらを演算処理することによって色再現するため、偽色が生じることがあり、この偽色を回避するために光学的ローパスフィルタを必要とし、このフィルタによる光損失も生じる。
【0004】
従来、これらの欠点を解決する素子として、シリコンの吸収係数の波長依存性を利用して、シリコン基板内に3つのPDを積層し、それぞれのPDのpn接合面の深さの差によって色分離を行うカラーセンサが報告されている。しかしながら、この方式では、積層されたPDでの分光感度の波長依存性がブロードであり、色分離が不十分であるという問題点がある。特に、青色と緑色の色分離が不十分である。
【0005】
この問題点を解決するために、緑色光を検出してこれに応じた信号電荷を発生する有機光電変換素子をシリコン基板上方に設け、シリコン基板内に積層した2つのPDで青色光と赤色光を検出するという積層型撮像素子が提案されている。シリコン基板上方に設けられる有機光電変換素子は、シリコン基板上に積層された下部電極と、下部電極上に積層された有機材料からなる有機光電変換層と、有機光電変換層上に積層された上部電極とを含んで構成されており、下部電極と上部電極間に電圧を印加することで、有機光電変換層内で発生した信号電荷が下部電極と上部電極に移動し、いずれかの電極に移動した信号電荷に応じた信号が、シリコン基板内に設けられたCCDやCMOS回路等で読み出される構成となっている。本明細書において、光電変換層とは、そこに入射した特定の波長の光を吸収し、吸収した光量に応じた電子及び正孔を発生する層のことを言う。
【0006】
従来の光電変換素子において、光電変換効率を高める為にフラーレン類を積層もしくは混合する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−74216号公報
【特許文献2】特開2004−165474号公報
【特許文献3】特開2007−123707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の光電変換素子において、光電変換効率を高める為にフラーレン類を積層もしくは混合する方法により確かに光電変換効率は向上するが、暗電流も大きくなってしまい、十分な光電流/暗電流比が得られないという問題があった。この暗電流の増加は有機太陽電池などにおいては大きな問題にはならないが、有機撮像素子や有機イメージスキャナなどの低い暗電流を必要とするアプリケーションでは致命的な欠点となり、従来の方法をこのようなアプリケーションに用いることは難しかった。またフラーレン類の吸収スペクトルはブロードであるため、シャープな分光感度を必要とする撮像素子や可視光透過性赤外光電変換素子では、暗電流だけでなく吸収スペクトルという点においても、フラーレン類を光電変換層に用いることは難しかった。
【0009】
光電変換層にフラーレンを用いた従来の有機光電変換素子は、効率を最大限に高めることを目的として素子構成の最適化が行われてきた。例えば、光電変換層の構成としてn型有機半導体であるフラーレンとp型有機半導体である銅フタロシアニンでは体積比1:1程度の構成がもっとも太陽電池としての効率が高くなることが報告されている(例えば、Appl.Phys.Lett., Vol.84, p4218)。しかし、これまでの検討はほとんどが太陽電池に関するものであり、撮像素子に必要な光電流/暗電流比の向上についての報告はない。
【0010】
また、太陽電池では、光照射における無バイアス状態での短絡電流値と、バイアス印加時の開放電圧値やフィルファクターを最大化する構成が必要とされる。しかし、短絡によるリーク電流以外の暗電流については特に問題となることはなく、例えば数μA/cm2程度の暗電流であってもよい。それにくらべて撮像素子やイメージスキャナでは、バイアス印加時の大きな光電流と小さな暗電流が求められる。例えば、暗い室内での撮影を行う場合などは、光電流がかなり小さくなるため、撮像素子にはそれよりさらに低い暗電流が求められ、多くとも数nA/cm2、できれば数百pA/cm2〜数pA/cm2程度の暗電流に抑える必要がある。例えば太陽電池用途として最適化した有機光電変換素子に数ボルトのバイアスを印加した場合、効率は確かに高いが暗電流が数十μA/cm2程度と大きすぎる為に撮像素子として用いることはできない。また暗電流を抑えるために印加するバイアスを小さくしたりゼロにした場合は、効率が十分得られなくなり、やはり撮像素子として用いることはできない。
【0011】
さらに、できるだけ幅広い波長の可視光を吸収して光電変換し、エネルギーとして取り出したい太陽電池とは違って、撮像素子の場合は、シャープな吸収スペクトルを求められる。例えば400nm〜500nmにピークをもつ青色光のみ、500nm〜600nmにピークをもつ緑色光のみ、600nm〜700nmにピークをもつ赤色光のみ、もしくは可視光すべてを透過して近赤外光のみなど、半値幅100nm程度のシャープな分光感度が必要とされる。しかし、フラーレンは可視域に幅広い吸収スペクトルをもっているため、フラーレンとp型有機半導体を体積比1:1くらいで光電変換層を形成すると、撮像素子に必要なシャープな分光感度スペクトルを得ることは難しい。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、光電変換効率の低下をできるだけ抑えつつ、暗電流を減少させることができる光電変換素子及び固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のように、これまでに太陽電池で検討されたフラーレンによる効率向上効果を撮像素子としてそのまま利用するのは難しく、新たに検討を行う必要があった。そこで、本発明者は、様々な試行錯誤の上、p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、光電変換層の上下に配置された一対の電極の、正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方が小さく
なるように構成することにより、フラーレンによる効率向上と低い暗電流を両立させ十分な光電流/暗電流比を得られることを見出した。また、通常、フラーレンの混合比率を低下させると効率の向上効果も低下してしまうと思われるが外部から電圧を印加する場合は意外にもそれほど大きな低下は見られず、暗電流が顕著に低下した。そのため、結果として撮像素子に十分な光電流/暗電流比を得ることができた。
さらに、フラーレンの体積比を下げることでフラーレン由来のブロードな吸収スペクトルも小さくなり、シャープな分光感度を必要とする撮像素子へ適用することも可能となった。
【0014】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1)一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された光電変換層とを含む光電変換部を有する光電変換素子であって、前記光電変換層の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、前記一対の電極の正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方が小さい光電変換素子。
(2)上記(1)記載の光電変換素子であって、
前記光電変換層に前記正孔捕集電極側から入射光が照射する光電変換素子。
(3)上記(1)又は(2)記載の光電変換素子であって、
前記光電変換部が、前記一対の電極間への電圧印加時に前記一対の電極の一方から前記光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する第1の電荷ブロッキング層を前記一方の電極と前記光電変換層との間に備える光電変換素子。
(4)上記(3)記載の光電変換素子であって、
前記光電変換部が、前記一対の電極間への電圧印加時に前記一対の電極の他方から前記光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する第2の電荷ブロッキング層を前記他方の電極と前記光電変換層との間に備える光電変換素子。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記一対の電極間に外部から印加される電圧を前記一対の電極間の距離で割った値が1.0×105V/cm〜1.0×107V/cmである光電変換素子。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記フラーレン類がフラーレンC60もしくはフラーレンC70である光電変換素子。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記p型有機半導体がフタロシアニン類である光電変換素子。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記p型有機半導体がナフタロフタロシアニン類である光電変換素子。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記p型有機半導体がキナクリドン類である光電変換素子。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
少なくとも1つの前記光電変換部が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換部の前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換部の前記一対の電極のうちの前記電荷を取り出すための電極と前記電荷蓄積部とを電気的に接続する接続部とを備える光電変換素子。
(11)上記(10)記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板内に、前記光電変換部の前記光電変換層を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備える光電変換素子。
(12)上記(11)記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
(13)上記(12)記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の入射光の入射方向に対して垂直な方向に
配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
(14)上記(12)又は(13)記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板上方に積層された前記光電変換部が1つであり、
前記複数のフォトダイオードが、青色の波長域の光を吸収する青色用フォトダイオードと、赤色の波長域の光を吸収する赤色用フォトダイオードであり、
前記光電変換部の前記光電変換層が緑色の波長域の光を吸収するものである光電変換素子。
(15)上記(10)〜(14)のいずれか1つ記載の光電変換素子であって、
前記少なくとも1つの光電変換部のうちのいずれかの前記光電変換材料が近赤外域に吸収スペクトルの最大ピークをもつ有機半導体である光電変換素子。
(16)上記(15)記載の光電変換素子であって、
前記光電変換材料が可視域の光に対して透明である光電変換素子。
(17)上記(16)記載の光電変換素子であって、
前記光電変換材料がSnPcもしくはシリコンナフタロシアニン類である光電変換素子。
(18)上記(10)〜(17)のいずれか1つ記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記多数の光電変換素子の各々の前記電荷蓄積部に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備える固体撮像素子。
(19)上記(1)〜(9)のいずれか1つ記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記半導体基板の上方に形成され、前記光電変換層で吸収される光の波長域とは異なる波長域の光を透過するカラーフィルタ層と、
前記光電変換層下方の前記半導体基板内に形成され、前記カラーフィルタ層及び前記光電変換層を透過した光を吸収して前記光に応じた電荷を発生する光電変換素子と、
前記光電変換層で発生した電荷に応じた信号及び前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号をそれぞれ読み出す信号読み出し部とを備える固体撮像素子。
(20)上記(19)記載の固体撮像素子であって、
前記カラーフィルタ層が前記光電変換層よりも上方に形成されている固体撮像素子。
(21)上記(20)記載の固体撮像素子であって、
前記カラーフィルタ層が、多数の前記光電変換素子の各々に対応する多数のカラーフィルタで構成され、
前記多数のカラーフィルタが、それぞれ異なる波長域の光を透過する複数種類のカラーフィルタに分類される固体撮像素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光電変換効率の低下をできるだけ抑えつつ、暗電流を減少させることができる光電変換素子及び固体撮像素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態である光電変換素子の基本的構成を示す断面模式図である。
図1に示す光電変換素子は、基板Sと、該基板S上に形成された下部電極(画素電極)101と、下部電極101上に形成された正孔ブロッキング層105と、正孔ブロッキング層105上に形成された光電変換層102と、光電変換層102上に形成された電子ブロッキング層103と、電子ブロッキング層103上に形成された上部電極(対向電極)
104とを備える。
【0018】
光電変換層102は、光電変換機能を有する有機材料を含んで構成される。有機材料としては、例えば電子写真の感光材料に用いられているような、様々な有機半導体材料を用いることができる。その中でも、高い光電変換性能を有すること、分光する際の色分離に優れていること、長時間の光照射に対する耐久性が高いこと、真空蒸着を行いやすいこと、等の観点から、キナクリドン骨格を含む材料やフタロシアニン骨格を含む有機材料が特に好ましい。
【0019】
本発明にかかる光電変換素子は、光電変換層102がp型有機半導体とフラーレン類の混合層102aと、p型有機半導体のみからなる単一層102bとから構成されている。本実施形態では、混合層102aは、p型有機半導体とフラーレン類の体積比が1:1となるように構成されている。p型有機半導体としては、例えば、後述するように、フタロシアニン類、ナフタロフタロシアニン類、キナクリドン類を用いることが好ましい。
【0020】
光電変換層102として以下の化1で示されるキナクリドンを用いた場合には、光電変換層102にて緑色の波長域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生することが可能となる。光電変換層102として以下の化2で示される亜鉛フタロシアニンを用いた場合には、光電変換層102にて赤色の波長域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生することが可能となる。
【0021】
光電変換層102は、この上の電子ブロッキング層103が、上部電極104形成時に光電変換層102に与えられる損傷を軽減する役割も果たす場合、光電変換層102上に上部電極104が直接形成される従来構成よりも厚みを薄くすることが可能となる。光電変換層102の厚みは、光吸収率やバイアス電圧の低電圧化等を考慮すると、10nm〜200nm程度であることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
【化2】

【0024】
図1に示す光電変換素子は、上部電極104上方から光が入射するものとしている。又、図1に示す光電変換素子は、光電変換層102で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、正孔を上部電極104に移動させ、電子を下部電極101に移動させるように、下部電
極101及び上部電極104間にバイアス電圧が印加されるものとしている。つまり、上部電極104を正孔捕集電極とし、下部電極101を電子捕集電極としている。
【0025】
光電変換素子は、光電変換層102の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層102aを含むものとし、p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、一対の電極101,104の正孔捕集電極104側より電子捕集電極101側の方が小さくなるように構成されている。上記構成では、電子捕集電極101側にフラーレン類を含まない単一層102bを形成し、正孔捕集電極104側に単一層102bよりp型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が大きい混合層102aを形成した。しかし、光電変換層102の構成はこれに限定されず、正孔捕集電極104側より電子捕集電極101側のフラーレン類の体積比の方が小さくなる範囲で変形が可能である。例えば、光電変換層102は、正孔捕集電極104側に形成するp型有機半導体とフラーレン類との第1の混合層を形成し、電子捕集電極101側に第1の混合層よりもp型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が小さい第2の混合層を形成してもよい。
【0026】
上部電極104は、光電変換層102に光を入射させる必要があるため、透明な導電性材料で構成されている。ここで、透明とは、波長が約420nm〜約660nmの範囲の可視光を約80%以上透過することを言う。透明な導電性材料としてはITOを用いることが好ましい。
【0027】
下部電極101は導電性材料であればよく、透明である必要はない。しかし、図1に示す光電変換素子は、後述するが、下部電極101下方にも光を透過させることが必要になる場合もあるため、下部電極101も透明な導電性材料で構成することが好ましい。上部電極104と同様に、下部電極101においてもITOを用いることが好ましい。
【0028】
光電変換層102を構成する有機材料は、有機p型半導体及び有機n型半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。有機p型半導体及び有機n型半導体として、それぞれキナクリドン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを特に好ましく用いることができる。
【0029】
有機p型半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
【0030】
有機n型半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれ
ばいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0031】
p型有機色素、又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0032】
次に金属錯体化合物について説明する。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体であり、金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、または錫イオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または亜鉛イオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、または亜鉛イオンである。前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0033】
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座配位子である。例えばピリジン配位子、ビピリジル配位子、キノリノール配位子、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子)などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられ
る。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環置換チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、またはシロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる)であり、より好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、またはシロキシ配位子が挙げられる。
【0034】
なお、上部電極104と下部電極101からなる一対の電極の一方から光電変換層102に電荷が注入されるのを抑制するため、一方の電極(例えば上部電極104)と光電変換層102との間に第1の電荷ブロッキング層(例えば電子ブロッキング層)を形成する構成としてもよく、また、他方の電極(例えば下部電極101)と光電変換層102との間に第2の電荷ブロッキング層(例えば正孔ブロッキング層105)を形成する構成としてもよい。
【0035】
電子ブロッキング層103は、光電変換層102に光を入射させる必要があるため、波長が約420nm〜約660nmの範囲の可視光を80%以上、好ましくは90%以上透過する材料で構成される。又、電子ブロッキング層103は、バイアス電圧印加時に、上部電極104から光電変換層102に電子が注入されるのを抑制すると共に、光電変換層102で発生した正孔を輸送する機能を持たせる必要があるため、前述のように、電子輸送性・注入性が低く、かつ正孔輸送性が高い材料が用いられる。
【0036】
次に、電子ブロッキング層103および正孔ブロッキング層105を構成する有機材料の候補について説明する。
【0037】
(正孔ブロッキング層)
正孔ブロッキング層105には、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(4-(ジメチルアミノスチリル))-4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
【0038】
正孔ブロッキング層105の厚みは、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに
好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0039】
正孔ブロッキング材料の候補として、具体的には、下記の化3〜化8で示される材料が例として挙げられる。Eaはその材料の電子親和力、lpはその材料のイオン化ポテンシャルを示す。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
実際に正孔ブロッキング層105に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層の材料により、選択の幅が規定される。隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換層の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが良い。
【0047】
(電子ブロッキング層)
電子ブロッキング層103には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
【0048】
電子ブロッキング層103の厚みは、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0049】
また、電子ブロッキング材料の候補として、具体的には、例えば下記の化9〜化15で示される材料が挙げられる。
【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
実際に電子ブロッキング層103に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層102の材料により、選択の幅が規定される。隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換層102の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものがよい。
【0058】
上部電極104と下部電極101との間に外部から印加される電圧を、電極101,104間の距離で割った値が1.0×105V/cm〜1.0×107V/cmであることが好ましい。
【0059】
以下の第2実施形態〜第5実施形態では、上述したような光電変換素子を半導体基板上方に積層した構成のセンサとしてあげられる構成例を説明する。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0060】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。図2において図1と同等の構成には同一符号を付してある。
固体撮像素子100は、図2に示す1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
【0061】
図2に示す固体撮像素子の1画素は、p型シリコン基板1と、p型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102、光電変換層102の上に形成された電子ブロッキング層103(図示省略)、光電変換層102の下に形成された正孔ブロッキング層105(図示省略)、及び、電子ブロッキング層103上に形成された上部電極104からなる第一実施形態で説明した構成の光電変換素子とを含んで構成され、光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜14が形成されている。上部電極104上には透明な絶縁膜15が形成されている。
【0062】
p型シリコン基板1内には、その浅い方からn型不純物領域(以下、n領域と略す)4と、p型不純物領域(以下、p領域と略す)3と、n領域2がこの順に形成されている。n領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のn領域(n+領域という)6が形成され、n+領域6の周りはp領域5によって囲まれている。
【0063】
n領域4とp領域3とのpn接合面のp型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、n領域4とp領域3は、青色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。本実施形態において、Bフォトダイオードは、半導体基板内に形成され、光電変換部102の光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部として機能する。Bフォトダイオードで発生した電子は、n領域4に蓄積される。
【0064】
n領域2とp型シリコン基板1とのpn接合面のp型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、n領域2とp型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた電荷を蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。Rフォトダイオードは、半導体基板内に形成され、光電変換部102の光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部として機能する。Rフォトダイオードで発生した電子は、n領域2に蓄積される。
【0065】
n+領域6は、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、n+領域6の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域6にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部9は、下部電極101とn+領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
【0066】
n領域2に蓄積された電子は、p型シリコン基板1内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n領域4に蓄積された電子は、p領域3内に形成されたnチャネルMOSトランジスタか
らなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域6に蓄積されている電子は、p領域5内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子100外部へと出力される。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、n領域2、n領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
【0067】
このような構成により、光電変換層102でG光を光電変換し、p型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光およびR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B−G間およびG−R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の固体撮像素子に比べ、大きく優れた点である。
【0068】
本実施形態の固体撮像素子100において、光電変換層102の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、一対の電極101,104の正孔捕集電極104側より電子捕集電極101側の方が小さい。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態では、図2のシリコン基板1内に2つのフォトダイオードを積層するのではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、p型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
【0070】
図3は、本発明の第3実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。図3において図1と同等の構成には同一符号を付してある。
図3に示す固体撮像素子200の1画素は、p型シリコン基板17と、p型シリコン基板17上方に形成された下部電極101、下部電極101上に形成された光電変換層102、光電変換層102上に形成された電子ブロッキング層103(図示省略)、光電変換層102の下に形成された正孔ブロッキング層105(図示省略)、及び、電子ブロッキング層103上に形成された上部電極104からなる第一実施形態で説明した構成の光電変換素子とを含んで構成され、光電変換素子上には開口の設けられた遮光膜34が形成されている。また、上部電極104上には透明な絶縁膜33が形成されている。
【0071】
遮光膜34の開口下方のp型シリコン基板17表面には、p領域19とn領域18からなるフォトダイオードと、p領域21とn領域20からなるフォトダイオードとが、p型シリコン基板17表面に並んで形成されている。p型シリコン基板17表面上の任意の面方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
【0072】
p領域19とn領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に下部電極101が形成されている。p領域21とn領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に下部電極101が形成されている。カラーフィルタ28,29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
【0073】
p領域19とn領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をn領域18に蓄積する基板内光電変換部として機能する。p領域21とn領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた電子を発生し、発生した電子をn領域20に蓄積する基板内光電変換部として機能する。
【0074】
n型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、n+領域23が形成され、n+領域23の周りはp領域22によって囲まれている。
【0075】
n+領域23は、絶縁膜24,25に開けられた開口に形成された接続部27を介して下部電極101と電気的に接続されている。下部電極101で捕集された正孔は、n+領域23の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域23にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部27は、下部電極101とn+領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
【0076】
n領域18に蓄積された電子は、p型シリコン基板17内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n領域20に蓄積された電子は、p型シリコン基板17内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域23に蓄積されている電子は、p領域22内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子200外部へと出力される。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、n領域18、n領域20、及びn+領域23に蓄積された電子をp型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその電子に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0077】
このように、信号読み出し部は、CCDおよびCMOS構造が挙げられるが、消費電力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点からは、CMOSの方が好ましい。
【0078】
なお、図3では、カラーフィルタ28,29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28,29を設けず、n領域20とp領域21のpn接合面の深さと、n領域18とp領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしてもよい。この場合、p型シリコン基板17と下部電極101との間(例えば絶縁膜24とp型シリコン基板17との間)に、光電変換層102を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、p型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけばよい。
【0079】
また、p型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、p型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。更に、p型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、p型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としてもよい。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、p型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としてもよい。
【0080】
本実施形態の固体撮像素子200において、光電変換層102の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、一対の電極101,104の正孔捕集電極104側より電子捕集電極101側の方が小さい。
【0081】
(第4実施形態)
本実施形態の固体撮像素子は、図1のシリコン基板内にフォトダイオードを設けず、シ
リコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換素子を積層した構成である。
図4は、本発明の第4実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図4に示す固体撮像素子300は、シリコン基板41上方に、下部電極101r、下部電極101r上に積層された光電変換層102r、光電変換層102r上に形成された正孔ブロッキング層(図示省略)、光電変換層102rの下に形成された電子ブロッキング層(図示省略)、及び、正孔ブロッキング層上に積層された上部電極104rを含むR光電変換素子と、下部電極101b、下部電極101b上に積層された光電変換層102b、光電変換層102b上に形成された正孔ブロッキング層(図示省略)、光電変換層102rの下に形成された電子ブロッキング層(図示省略)、及び、正孔ブロッキング層上に積層された上部電極104bを含むB光電変換素子と、下部電極101g、下部電極101g上に積層された光電変換層102g、光電変換層102g上に形成された正孔ブロッキング層(図示省略)、光電変換層102rの下に形成された電子ブロッキング層(図示省略)、及び、正孔ブロッキング層上に積層された上部電極104gを含むG光電変換素子とが、それぞれに含まれる下部電極をシリコン基板41側に向けた状態で、この順に積層された構成となっている。
【0082】
シリコン基板41上には透明な絶縁膜48が形成され、その上にR光電変換素子が形成され、その上に透明な絶縁膜59が形成され、その上にB光電変換素子が形成され、その上に透明な絶縁膜63が形成され、その上にG光電変換素子が形成され、その上に開口の設けられた遮光膜68が形成され、その上に透明な絶縁膜67が形成されている。
【0083】
G光電変換素子に含まれる下部電極101g、光電変換層102g、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、及び上部電極104gは、それぞれ、図1に示す下部電極101、光電変換層102、電子ブロッキング層103、正孔ブロッキング層105、及び上部電極104と同じ構成である。ただし、光電変換層102gは、緑色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を用いる。
【0084】
B光電変換素子に含まれる下部電極101b、光電変換層102b、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、及び上部電極104bは、それぞれ、図1に示す下部電極101、光電変換層102、電子ブロッキング層103、正孔ブロッキング層105、及び上部電極104と同じ構成である。ただし、光電変換層102bは、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を用いる。
【0085】
R光電変換素子に含まれる下部電極101r、光電変換層102r、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、及び上部電極104rは、それぞれ、図1に示す下部電極101、光電変換層102、電子ブロッキング層103、正孔ブロッキング層105、及び上部電極104と同じ構成である。ただし、光電変換層102rは、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する有機材料を用いる。
【0086】
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、n+領域43,45,47が形成され、それぞれの周りはp領域42,44,46によって囲まれている。
【0087】
n+領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して下部電極101rと電気的に接続されている。下部電極101rで捕集された正孔は、n+領域43の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域43にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部54は、下部電極101rとn+領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
【0088】
n+領域45は、絶縁膜48、R光電変換素子、及び絶縁膜59に開けられた開口に形成された接続部53を介して下部電極101bと電気的に接続されている。下部電極101bで捕集された正孔は、n+領域45の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域45にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部53は、下部電極101bとn+領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
【0089】
n+領域47は、絶縁膜48、R光電変換素子、絶縁膜59、B光電変換素子、及び絶縁膜63に開けられた開口に形成された接続部52を介して下部電極101gと電気的に接続されている。下部電極101gで捕集された正孔は、n+領域47の電子と再結合するため、捕集した正孔の数に応じ、n+領域47にリセット時に蓄積された電子が減少することとなる。接続部52は、下部電極101gとn+領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
【0090】
n+領域43に蓄積されている電子は、p領域42内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域45に蓄積されている電子は、p領域44内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、n+領域47に蓄積されている電子は、p領域46内に形成されたnチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子300外部へと出力される。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成してもよい。つまり、n+領域43,45,47に蓄積された電子をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であってもよい。
【0091】
以上の説明において、B光を吸収する光電変換層とは、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換層とは、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換層とは、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
【0092】
本実施形態の固体撮像素子300において、各光電変換層102g,102b,102rの少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、各光電変換層102g,102b,102rに対応する一対の電極101g,101b,101r,104g,104b,104rの正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方が小さい。
【0093】
(第5実施形態)
図5は、本発明の第五実施形態を説明するための固体撮像素子の断面模式図である。
p型シリコン基板81上方の同一面上の行方向とこれに直交する列方向には、主としてRの波長域の光を透過するカラーフィルタ93rと、主としてGの波長域の光を透過するカラーフィルタ93gと、主としてBの波長域の光を透過するカラーフィルタ93bとの3種類のカラーフィルタがそれぞれ多数配列されている。
【0094】
カラーフィルタ93rは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、Rの波長域の光の他に、赤外域の光の一部も透過する。カラーフィルタ93gは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、Gの波長域の光の他に、赤外域の光の一部も透過する。カラーフィルタ93bは、公知の材料を用いることができるが、このよう
な材料は、Bの波長域の光の他に、赤外域の光の一部も透過する。
【0095】
カラーフィルタ93r,93g,93bの配列は、公知の単板式固体撮像素子に用いられているカラーフィルタ配列(ベイヤー配列や縦ストライプ、横ストライプ等)を採用することができる。
【0096】
カラーフィルタ93r下方には、カラーフィルタ93rに対応させてn型不純物領域(以下、n領域という)83rが形成されており、n領域83rとp型シリコン基板81とのpn接合によって、カラーフィルタ93rに対応するR光電変換素子が構成されている。
【0097】
カラーフィルタ93g下方には、カラーフィルタ93gに対応させてn領域83gが形成されており、n領域83gとp型シリコン基板81とのpn接合によって、カラーフィルタ93gに対応するG光電変換素子が構成されている。
【0098】
カラーフィルタ93b下方には、カラーフィルタ93bに対応させてn領域83bが形成されており、n領域83bとp型シリコン基板81とのpn接合によって、カラーフィルタ93bに対応するB光電変換素子が構成されている。
【0099】
n領域83r上方には下部電極87r(図1の下部電極101と同じ機能を持つ)が形成され、n領域83g上方には下部電極87g(図1の下部電極101と同じ機能を持つ)が形成され、n領域83b上方には下部電極87b(図1の下部電極101と同じ機能を持つ)が形成されている。下部電極87r,87g,87bは、それぞれカラーフィルタ93r,93g,93bの各々に対応して分割されている。下部電極87r,87g,87bは、それぞれ、可視光及び赤外光に対して透明な材料で構成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zico Oxide)等を用いることができる。透明電極87r,87g,87bは、それぞれ、絶縁層内に埋設されている。
【0100】
下部電極87r,87g,87bの各々の上には、主として波長580nm以上の赤外域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生し、赤外域以外の可視域(波長約380nm〜約580nm)の光を透過する、カラーフィルタ93r,93g,93bの各々で共通の一枚構成である光電変換層89(図1の光電変換層102と同じ機能を持つ)が形成されている。光電変換層89を構成する材料は、例えば、フタロシアニン系有機材料やナフタロシアニン系有機材料を用いる。
【0101】
光電変換層89上には、カラーフィルタ93r,93g,93bの各々で共通の一枚構成である上部電極80(図1の上部電極104と同じ機能を持つ)が形成されている。上部電極80は、可視光及び赤外光に対して透明な材料で構成され、例えばITOやIZO等を用いることができる。なお、図示していないが、光電変換層89と上部電極80との間には、図1の電子ブロッキング層103と同じ機能を持つ電子ブロッキング層が形成されている。
【0102】
下部電極87rと、それに対向する上部電極80と、これらに挟まれる光電変換層89の一部とにより、カラーフィルタ93rに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子を、半導体基板上に形成されたものであるため、R基板上光電変換素子という。
【0103】
下部電極87gと、それに対向する上部電極80と、これらに挟まれる光電変換層89の一部とにより、カラーフィルタ93gに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をG基板上光電変換素子という。
【0104】
下部電極87bと、それに対向する上部電極80と、これらに挟まれる光電変換層89の一部とにより、カラーフィルタ93bに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をB基板上光電変換素子という。
【0105】
n領域83rの隣には、R基板上光電変換素子の下部電極87rと接続された高濃度のn型不純物領域(以下、n+領域という)84rが形成されている。尚、n+領域84rに光が入るのを防ぐために、n+領域84r上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0106】
n領域83gの隣には、G基板上光電変換素子の下部電極87gと接続されたn+領域84gが形成されている。なお、n+領域84gに光が入るのを防ぐために、n+領域84g上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0107】
n領域83bの隣には、B基板上光電変換素子の下部電極87bと接続されたn+領域84bが形成されている。なお、n+領域84bに光が入るのを防ぐために、n+領域84b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0108】
n+領域84r上にはタングステン、アルミニウム等の金属からなるコンタクト部86rが形成され、コンタクト部86r上に下部電極87rが形成されており、n+領域84rと下部電極87rはコンタクト部86rによって電気的に接続されている。コンタクト部86rは、可視光及び赤外光に対して透明な絶縁層85内に埋設されている。
【0109】
n+領域84g上にはタングステン、アルミニウム等の金属からなるコンタクト部86gが形成され、コンタクト部86g上に下部電極87gが形成されており、n+領域84gと下部電極87gはコンタクト部86gによって電気的に接続されている。コンタクト部86gは絶縁層85内に埋設されている。
【0110】
n+領域84b上にはタングステン、アルミニウム等の金属からなるコンタクト部86bが形成され、コンタクト部86b上に下部電極87bが形成されており、n+領域84bと下部電極87bはコンタクト部86bによって電気的に接続されている。コンタクト部86bは絶縁層85内に埋設されている。
【0111】
n領域83r,83g,83b、n+領域84r,84g,84bが形成されている以外の領域には、n領域83r及びn+領域84rに蓄積されている電子に応じた信号をそれぞれ読み出すためのnチャネルMOSトランジスタからなる信号読み出し部85rと、n領域83g及びn+領域84gに蓄積されている電子に応じた信号をそれぞれ読み出すためのnチャネルMOSトランジスタからなる信号読み出し部85gと、n領域83b及びn+領域84bに蓄積されている電子に応じた信号をそれぞれ読み出すためのnチャネルMOSトランジスタからなる信号読み出し部85bとが形成されている。信号読み出し部85r,85g,85bは、それぞれ、CCDによって構成してもよい。尚、信号読み出し部85r,85g,85bに光が入るのを防ぐために、信号読み出し部85r,85g,85b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0112】
このような構成によれば、RGBカラー画像と、赤外画像とを同一解像度で同時に得ることができる。このため、この固体撮像素子を電子内視鏡等に応用すること等が可能となる。
【0113】
本実施形態の固体撮像素子400において、光電変換層89の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、上下方向に一対の電極(80と87g,80と87b,80
と87r),の正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方が小さい。
【0114】
上記実施形態の光電変換部のうち、のいずれかの光電変換材料が近赤外域に吸収スペクトルの最大ピークをもつ有機半導体とすることができる。このとき、光電変換材料が可視域の光に対して透明とすることが好ましい。さらに、光電変換材料がSnPcもしくはシリコンナフタロシアニン類であることが好ましい。
【0115】
以下、本発明の実施例を説明する。本実施例では、p型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子において、p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、一対の電極の正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方を小さく構成することで、十分な外部量子効率を確保しつつ、暗電流を低減できることを実証する。
【0116】
(実施例1)
図6は、実施例1の光電変換素子の構成を示す図である。
25mm角のITO電極付ガラス基板を、アセトン、セミコクリーン、イソプロピルアルコール(IPA)でそれぞれ15分超音波洗浄した。最後にIPA煮沸洗浄を行った後、UV/O3洗浄を行った。その基板を有機蒸着室に移動し、室内を1×10-4Pa以下に減圧した。その後、基板ホルダーを回転させながら、ITO電極上に、第一の電荷ブロッキング層としてm-MTDATAを抵抗加熱法により蒸着速度0.5〜1Å/secで厚み1000Åとなるように蒸着した。次に、光電変換層のp型有機半導体として、Silicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)(シグマアルドリッチジャパン株式会社から購入し昇華精製を施したもの)の蒸着速度を3.0Å/secに保ちながら、n型有機半導体であるフラーレンC60(シグマアルドリッチジャパン株式会社昇華品)の蒸着速度を3.0Å/secに保つことにより、体積比を1:1に保ちながら合計100Åとなるように共蒸着してp型有機半導体とフラーレンC60が混合された光電変換層を形成した。さらにその上に、光電変換層としてSilicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)(同上)の蒸着速度を3.0Å/secに保ちながら合計200Åとなるように共蒸着してp型有機半導体のみの光電変換層を形成した。光電変換層は、合計で300Åとした。続いて、昇華精製を行ったAlq3を蒸着速度1〜2Å/secで厚み300Åとなるように蒸着して第二の電荷ブロッキング層とした。
【0117】
次に、この基板を、真空中を保ちながら金属蒸着室に搬送した。室内を1×10-4Pa以下に保ったまま、第二の電荷ブロッキング層上に、対向電極としてアルミを厚み1000Åとなるように蒸着した。また、最下層のITO電極と、アルミ対向電極とが形成する光電変換領域の面積は2mm×2mmとした。この基板を大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、UV硬化性樹脂を用いて、吸湿剤を張ったガラスで封止を行った。
【0118】
このようにして作製した素子を、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置(ソースメータはケースレー6430を使用)を用いて、素子に対して1.0×10V/cmの外部電界(電界強度1.0×10V/cm)を与えた場合において、光非照射時に流れる暗電流値と光照射時に流れる光電流値を測定し外部量子効率を算出した。光電変換領域の面積は2mm×2mmのうち1.5mmφの領域に対して光照射を行った。照射した光量は50μW/cmとした。また、光照射時に得られた外部量子効率を光非照射時に得られた暗電流密度で割った値をS/N比とした。
【0119】
(実施例2)
図7は、実施例2の光電変換素子の構成を示す図である。
実施例1と同様に25mm角のITO電極付ガラス基板を、アセトン、セミコクリーン、イソプロピルアルコール(IPA)でそれぞれ15分超音波洗浄した。最後にIPA煮沸洗浄を行った後、UV/O3洗浄を行った。その基板を有機蒸着室に移動し、室内を1×10-4Pa以下に減圧した。その後、基板ホルダーを回転させながら、ITO電極上に、第一の電荷ブロッキング層としてm-MTDATAを抵抗加熱法により蒸着速度0.5〜1Å/secで厚み1000Åとなるように蒸着した。次に、光電変換層のp型有機半導体として、Silicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)(シグマアルドリッチジャパン株式会社から購入し昇華精製を施したもの)の蒸着速度を5.0Å/secに保ちながら、n型有機半導体であるフラーレンC60(シグマアルドリッチジャパン株式会社昇華品)の蒸着速度を2.0Å/secに保つことにより、体積比を5:2に保ちながら合計80Åとなるように共蒸着してp型有機半導体とフラーレンC60が混合された光電変換層を形成した。さらにその上に、光電変換層としてSilicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)(同上)の蒸着速度を5.0Å/secに保ちながら、n型有機半導体であるフラーレンC60((同上)の蒸着速度を0.5Å/secに保つことにより、体積比を10:1に保ちながら合計220Åとなるように共蒸着してp型有機半導体とフラーレンC60が混合された光電変換層を形成した。続いて、昇華精製を行ったAlq3を蒸着速度1〜2Å/secで厚み300Åとなるように蒸着して第二の電荷ブロッキング層とした。光電変換層は、合計で300Åとした。
【0120】
次に、実施例1と同様にこの基板を、真空中を保ちながら金属蒸着室に搬送した。室内を1×10-4Pa以下に保ったまま、第二の電荷ブロッキング層上に、対向電極としてアルミを厚み1000Åとなるように蒸着した。また、最下層のITO電極と、アルミ対向電極とが形成する光電変換領域の面積は2mm×2mmとした。この基板を大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、UV硬化性樹脂を用いて、吸湿剤を張ったガラスで封止を行った。このように作製した素子について、実施例1と同様の測定を行い、S/N比を算出した。
【0121】
(比較例1)
図8は、比較例1の光電変換素子の構成を示す図である。
実施例1と同様に25mm角のITO電極付ガラス基板を、アセトン、セミコクリーン、イソプロピルアルコール(IPA)でそれぞれ15分超音波洗浄した。最後にIPA煮沸洗浄を行った後、UV/O3洗浄を行った。その基板を有機蒸着室に移動し、室内を1×10-4Pa以下に減圧した。その後、基板ホルダーを回転させながら、ITO電極上に、第一の電荷ブロッキング層としてm-MTDATAを抵抗加熱法により蒸着速度0.5〜1Å/secで厚み1000Åとなるように蒸着した。次に、光電変換層のp型有機半導体として、Silicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)(シグマアルドリッチジャパン株式会社から購入し昇華精製を施したもの)の蒸着速度を5.0Å/secに保ちながら、n型有機半導体であるフラーレンC60(シグマアルドリッチジャパン株式会社昇華品)の蒸着速度を1.0Å/secに保つことにより、体積比を5:1に保ちながら合計300Åとなるように共蒸着してp型有機半導体とフラーレンC60が混合された光電変換層を形成した。続いて、昇華精製を行ったAlq3 を蒸着速度1〜2Å/secで厚み300Åとなるように蒸着して第二の電荷ブロッキング層とした。
【0122】
次に、実施例1と同様にこの基板を、真空中を保ちながら金属蒸着室に搬送した。室内を1×10-4Pa以下に保ったまま、第二の電荷ブロッキング層上に、対向電極としてアルミを厚み1000Åとなるように蒸着した。また、最下層のITO電極と、アルミ対向電極とが形成する光電変換領域の面積は2mm×2mmとした。この基板を大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、UV硬化性樹脂を用いて、吸湿剤を張ったガラスで封止を行った。このように作製した素子について、実施例1と同様の測定を行い、S/N比を算出した。結果を下記表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
実施例1と実施例2では、光電変換層中において、正孔捕集電極側に比べて電子捕集電極側のフラーレン混合量を小さくすることにより、混合量が均一の従来例1に比べて若干の光電変換効率の減少が見られるが、暗電流は大幅に小さくなるため、S/N比を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1実施形態である光電変換素子の断面模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態の固体撮像素子の構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明の第3実施形態の固体撮像素子の構成を示す断面模式図である。
【図4】本発明の第4実施形態の固体撮像素子の構成を示す断面模式図である。
【図5】本発明の第5実施形態の固体撮像素子の構成を示す断面模式図である。
【図6】実施例1の光電変換素子を示す図である。
【図7】実施例2の光電変換素子を示す図である。
【図8】比較例1の光電変換素子を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
101 下部電極
102 光電変換層
102a 混合層
102b 単一層
103 電子ブロッキング層
104 上部電極
105 正孔ブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された光電変換層とを含む光電変換部を有する光電変換素子であって、前記光電変換層の少なくとも一部がp型有機半導体とフラーレン類の混合層を含む光電変換素子であって、該p型有機半導体に対するフラーレン類の体積比が、前記一対の電極の正孔捕集電極側より電子捕集電極側の方が小さい光電変換素子。
【請求項2】
請求項1記載の光電変換素子であって、
前記光電変換層に前記正孔捕集電極側から入射光が照射する光電変換素子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光電変換素子であって、
前記光電変換部が、前記一対の電極間への電圧印加時に前記一対の電極の一方から前記光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する第1の電荷ブロッキング層を前記一方の電極と前記光電変換層との間に備える光電変換素子。
【請求項4】
請求項3記載の光電変換素子であって、
前記光電変換部が、前記一対の電極間への電圧印加時に前記一対の電極の他方から前記光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する第2の電荷ブロッキング層を前記他方の電極と前記光電変換層との間に備える光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記一対の電極間に外部から印加される電圧を前記一対の電極間の距離で割った値が1.0×105V/cm〜1.0×107V/cmである光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記フラーレン類がフラーレンC60もしくはフラーレンC70である光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記p型有機半導体がフタロシアニン類である光電変換素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記p型有機半導体がナフタロフタロシアニン類である光電変換素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
前記p型有機半導体がキナクリドン類である光電変換素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子であって、
少なくとも1つの前記光電変換部が上方に積層された半導体基板と、
前記半導体基板内に形成され、前記光電変換部の前記光電変換層で発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部と、
前記光電変換部の前記一対の電極のうちの前記電荷を取り出すための電極と前記電荷蓄積部とを電気的に接続する接続部とを備える光電変換素子。
【請求項11】
請求項10記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板内に、前記光電変換部の前記光電変換層を透過した光を吸収し、該光に応じた電荷を発生してこれを蓄積する基板内光電変換部を備える光電変換素子。
【請求項12】
請求項11記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内に積層されたそれぞれ異なる色の光を吸収
する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
【請求項13】
請求項12記載の光電変換素子であって、
前記基板内光電変換部が、前記半導体基板内の入射光の入射方向に対して垂直な方向に配列されたそれぞれ異なる色の光を吸収する複数のフォトダイオードである光電変換素子。
【請求項14】
請求項12又は13記載の光電変換素子であって、
前記半導体基板上方に積層された前記光電変換部が1つであり、
前記複数のフォトダイオードが、青色の波長域の光を吸収する青色用フォトダイオードと、赤色の波長域の光を吸収する赤色用フォトダイオードであり、
前記光電変換部の前記光電変換層が緑色の波長域の光を吸収するものである光電変換素子。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項記載の光電変換素子であって、
前記少なくとも1つの光電変換部のうちのいずれかの前記光電変換材料が近赤外域に吸収スペクトルの最大ピークをもつ有機半導体である光電変換素子。
【請求項16】
請求項15記載の光電変換素子であって、
前記光電変換材料が可視域の光に対して透明である光電変換素子。
【請求項17】
請求項16記載の光電変換素子であって、
前記光電変換材料がSnPcもしくはシリコンナフタロシアニン類である光電変換素子。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記多数の光電変換素子の各々の前記電荷蓄積部に蓄積された前記電荷に応じた信号を読み出す信号読み出し部を備える固体撮像素子。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか1項記載の光電変換素子をアレイ状に多数配置した固体撮像素子であって、
前記半導体基板の上方に形成され、前記光電変換層で吸収される光の波長域とは異なる波長域の光を透過するカラーフィルタ層と、
前記光電変換層下方の前記半導体基板内に形成され、前記カラーフィルタ層及び前記光電変換層を透過した光を吸収して前記光に応じた電荷を発生する光電変換素子と、
前記光電変換層で発生した電荷に応じた信号及び前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号をそれぞれ読み出す信号読み出し部とを備える固体撮像素子。
【請求項20】
請求項19記載の固体撮像素子であって、
前記カラーフィルタ層が前記光電変換層よりも上方に形成されている固体撮像素子。
【請求項21】
請求項20記載の固体撮像素子であって、
前記カラーフィルタ層が、多数の前記光電変換素子の各々に対応する多数のカラーフィルタで構成され、
前記多数のカラーフィルタが、それぞれ異なる波長域の光を透過する複数種類のカラーフィルタに分類される固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−99866(P2009−99866A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271667(P2007−271667)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】