説明

光電変換素子及び色素増感太陽電池

【課題】変換効率等の光電変換特性と、長期間にわたり使用後も光電変換特性の低下が少なく耐久性、特に高温での耐久性に優れた光電変換素子及び色素増感太陽電池を提供する。
【解決手段】導電性支持体及び該導電性支持体の導電性表面を被覆するように設けられた半導体層を有し、該半導体層の半導体の表面に、特定の配位子を有する金属錯体色素と、酸性基を有する共吸着剤とが担持され、該共吸着剤がもつ酸性基はスルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基であ光電変換素子(ただし、前記共吸着剤の酸性基がカルボン酸基のみである場合、該共吸着剤はカルボン酸基を2つ以上有する)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電に使用される太陽電池として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、テルル化カドミウム、セレン化インジウム銅等の化合物からなる太陽電池が主な研究開発の対象とされ、その一部は実用化されている。しかし、これらの太陽電池を家庭用電源等の用途として広く普及させるためには、これらの太陽電池は、廉価で製造することや原材料の確保が困難であること、さらには、エネルギーペイバックタイムが長いこと等の問題点があり、これらを克服する必要がある。一方、集光部分の大面積化や廉価で提供することを目的として、有機材料を用いた太陽電池も多く提案されてきた。しかし、従来の太陽電池では、一般に変換効率が低く、耐久性が悪い場合が多かった。
【0003】
このような状況下で、ルテニウム錯体色素により分光増感された二酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式光電変換素子及び太陽電池、並びにこれを作製するための材料および製造技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらの文献に記載された湿式光電変換素子の第一の利点は、二酸化チタン等の廉価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用いることができるため、廉価で光電変換素子を提供できる点にある。また、これらの湿式光電変換素子の第二の利点は、用いる色素が広範囲の波長域の光を吸収できるため、可視光線のほぼ全ての波長領域の光を吸収し、電気に変換できることである。
【0004】
現在までに、光電変換素子に使用される金属錯体色素としてN3、N719、Z907などが開発されている。また、最近になって、金属錯体色素としてJ2が提案されている(特許文献3参照)。
一方、金属錯体色素のN3やブラックダイの色素分子の会合を抑制するために共吸着剤を用いることが知られており(特許文献4参照)、また金属錯体色素のJ2とケノコール酸を使用した光電変換素子も知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4927721号明細書
【特許文献2】国際公開第94/04497号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/091525号パンフレット
【特許文献4】特開2009−81141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの確認によると、N3やN719を使用した光電変換素子は、最初は高い光電変換効率を示す。しかし、使用後の変換効率の低下が大きく、耐久性に問題がある。これに対して、Z907を使用した光電変換素子は使用後の変換効率の低下は少ない。しかし、Z907は、N3やN719と比較して光電変換効率の初期値自体が低いが、光電変換効率と耐久性が改良されたとはいえ、いまだ満足できるものではない。
【0007】
前記特許文献3,4に記載された技術により一定の改良は実現できるかもしれない。しかし、耐久性や光電変換効率の向上は必ずしも十分とはいえず、逆に金属錯体色素の半導体微粒子への吸着性に影響を与えたり、耐久性が向上しても変換効率が低下したり、変換効率が向上しても耐久性が低下したりすることがあることが分かってきた。特に、耐久性においては、この種の色素増感型の光電変換素子において最も重要な改良項目であり、実用化の観点からも、特に高温での耐久性の向上が求められている。すなわち、変換効率等の光電変換特性と、長期間にわたり使用後も光電変換特性の低下が少なく耐久性、特に高温での耐久性に優れた光電変換素子及び、かかる光電変換素子からなる色素増感太陽電池の開発が必要とされている。
【0008】
本発明の課題は、変換効率等の光電変換特性と、長期間にわたり使用後も光電変換特性の低下が少なく耐久性、特に高温での耐久性に優れた光電変換素子及び色素増感太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0010】
<1>導電性支持体及び該導電性支持体の導電性表面を被覆するように設けられた半導体層を有する光電変換素子であって、
該半導体層の半導体の表面に、式(L1)で表される配位子を有する金属錯体色素と、酸性基を有する共吸着剤とが担持され、
該共吸着剤がもつ酸性基が、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基である光電変換素子(ただし、前記共吸着剤が、ケノデオキシコール酸の母核を有しカルボン酸基をもつ場合には、当該共吸着剤は酸性基を2つ以上有する。)。
【0011】
【化1】

[式中、R及びRは下記式(A)〜(G)のいずれかで表される置換基である。L11及びL12はエテニレン基、エチニレン基、及びアリーレン基から選ばれた少なくとも1種であって、かつR又はR、及びビピリジンと共役している。R及びRは置換基を表す。A及びAは酸性基を表す。n1〜n4は0〜3の整数を表す。]
【0012】
【化2】

[式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、又は芳香族へテロ環基を表す。R〜Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミノ基、ヘテロ環基、又はハロゲン原子を表す。ただし、式(A)においてRとRとが互いに連結してジオキサン環を形成することはない。
は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はヘテロ環基を表す。ここで、N原子に置換する2つのRは互いに連結して環を形成することはない。
mは1〜5の整数を表す。nは3〜5の整数を表す。Y及びXは各々独立に、S、O、Se、Te、又はNRを表す。Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。]
<2>前記共吸着剤が下記式(11)〜(17)のいずれかで表される<1>に記載の光電変換素子。
【0013】
【化3】

[式中、Raは、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基を有する基を表す。Rb及びRcは置換基を表す。Mは水素原子またはカチオン種を表す。Rdは炭素数1〜20のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。n1は0以上の整数を表す。n2は1又は2を表す。n3は0〜8の整数を表す。n4は0〜4の整数を表す。ただし、式(11)で表される化合物がカルボン酸基をもつ場合、該化合物は酸性基を少なくとも2つ有する。]
<3>前記金属錯体色素が下記式(1)で表される<1>又は<2>に記載の光電変換素子。
ML・CI 式(1)
[式中、Mは金属原子を表す。Lは式(L1)の配位子と同義である。Lは下記式(L2)を表す。Zは1座又は2座の配位子を表す。pは0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【0014】
【化4】

[式中、R、R、A、A、n1、n2は式、(L1)と同義である。n7及びn8は各々独立に1〜4の整数を表す。]
<4>前記金属錯体色素として前記式(L1)で表される配位子を有する色素に代え、あるいはこれとともに下記式(2)で表される色素を用いる<1>〜<3>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
MLm3m4mX・CI (2)
[式中、Mは金属原子を表す。Lは下記式(L3)で表される配位子を表す。Lは下記式(L4)で表される配位子を表す。Xは1座の配位子を表す。m3は1又は2である。m4は1又は2である。mXは0又は1である。CIは、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【0015】
【化5】

[式中、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成する原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。]
【0016】
【化6】

[式中、A〜Cは5員環以上の含窒素芳香環を表す。aは0または1の整数を表す。Vは置換基を表す。nは0以上の整数を表す。]
<5>前記金属錯体色素の金属元素又は前記金属元素Mが、Ru、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、W、又はCoである<1>〜<4>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<6>前記金属錯体色素100質量部に対して前記共吸着剤を1〜5000質量部で適用する<1>〜<5>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<7>前記式(A)〜(G)の連結基YがSである<1>〜<6>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<8>前記式(L1)のL11及びL12がエテニレン基又はエチニレン基である<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<9>導電性支持体と、その上側の前記半導体層と、さらにその上側の電荷移動体と、さらにその上側の対極とを有する<1>〜<8>のいずれか1項に記載の光電変換素子
<10>前記共吸着剤が、前記式(12)、(13)、及び(17)のいずれかで表されることを特徴とした<2>〜<9>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<11>前記共吸着剤が、炭素数5以上の置換基を有する<1>〜<10>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<12>前記共吸着剤の酸性基がエステル体であるとき、その末端基を構成するアルキル基は、メチル基もしくはエチル基である<1>〜<11>のいずれか1項に記載の光電変換素子
<13>前記共吸着剤を用いた時の酸化物半導体に吸着した色素の透過スペクトルにおける最大吸収の強度が、該共吸着剤を用いない場合の70%〜99%である<1>〜<12>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<14>前記共吸着剤の酸性基が塩を形成しているとき、その対イオンが、アルカリ金属イオンである<1>〜<13>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<15><1>〜<14>のいずれか1項に記載の光電変換素子を含有する色素増感太陽電池。
【0017】
本明細書において、炭素−炭素二重結合については、分子内にE型及びZ型が存在する場合、そのいずれであってもよい。特定の符号で表示された置換基や連結基、配位子等が複数あるとき、あるいは複数の置換基や配位子(置換基数を含む)等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基ないし配位子等は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数の置換基や配位子が近接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、変換効率等の光電変換特性と、長期間にわたり使用後も光電変換特性の低下が少なく耐久性、特に高温での耐久性に優れた光電変換素子及び色素増感太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の共役構造をもつ配位子を有する金属錯体色素と、これと相互作用を示す特定の酸性基を有する共吸着剤とを共に吸着させた半導体微粒子が、光電変換素子において優れた変換効率及び耐久性を発揮することを見出した。この理由は未明の部分を含むが以下のように推定される。
本発明において採用された特定の共吸着剤は、半導体微粒子に吸着させることにより、色素の非効率な会合を抑制する効果がある。一方で、その分色素の吸着量が減るため光吸収能の低下が生じる方向となる。これに対し、本発明で採用された特定の金属錯体色素は吸収スペクトルの最大吸収の強度が高く、前述の光吸収能低下による電池性能低下が少ない。そのため十分に共吸着剤を用いて非効率な会合を抑制することで本発明の効果を相互補完的に奏することができたと考えられる。以下に本発明についてその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0021】
[金属錯体色素]
(式(L1)で表される配位子)
本発明の光電変換素子は、下記式(L1)の配位子を有する金属錯体色素により増感された半導体微粒子を含有する。
【0022】
【化7】

【0023】
・R,R
前記式(L1)中、R及びRは各々独立に下記式(A)〜(G)を表す。RとRは同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。R及びRとして好ましくは、式(A)、式(F)、式(G)、さらに好ましくは式(A)、式(G)、特に好ましくは式(A)である。
【0024】
【化8】

【0025】
・R
は、置換基を有してよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、又は芳香族へテロ環基を表す。好ましくはアルキル基、アルキニル基、アリール基であり、より好ましくはアルキニル基である。アルキニル基として好ましくは炭素数2〜30、さらに好ましくは炭素数4〜25、特に好ましくは炭素数5〜18、最も好ましくは炭素数5〜15のアルキニル基であり、これらは置換基Tで置換されていてもよい。なお、芳香族へテロ環基としては、好ましくは5員又は6員で、環構成原子にS原子、O原子、N原子、Se原子又はTe原子を少なくとも1つ有するものであり、例えば、前記式(A)〜(G)のような芳香族ヘテロ環の環骨格が挙げられる。このうち、環骨格としては式(A)で表されるような環骨格が好ましく、特にチオフェン環が好ましい。
置換されてもよい置換基として好ましくは、アルキル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロ環基、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、特に好ましくはアルキル基である。アリール基として好ましくは、炭素数6〜30、さらに好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、これらは置換基Tで置換されていてもよく、置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、特に好ましくはアルコキシ基、アミノ基である。
【0026】
・R〜R
〜Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミノ基、ヘテロ環基又はハロゲン原子を表す。R〜R同士はそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。連結して形成する環は、好ましくは、5〜10員環、さらに好ましくは5〜8員環、特に好ましくは5員環または6員環である。式(A)においてRとRが互いに連結して形成する環は、ジオキサン環を除き、好ましくは、5〜10員環、さらに好ましくは5〜8員環、特に好ましくは5員環または6員環である。
5員環の例として例えば、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−オキサチオラン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール等が挙げられ、好ましくはシクロペンタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、さらに好ましくは、シクロペンタン、1,3−ジオキソラン、特に好ましくはシクロペンタンである。
6員環の例として例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、ピラン、ジヒドロピラン、ジオキサン、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン、ベンゼン、ジヒドロピラン、ジオキサン、ピペラジン、さらに好ましくはシクロヘキサン、ベンゼン、特に好ましくはシクロヘキサンである。
これらのうち環を形成していないものは、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、特に好ましくは水素原子である。
【0027】
・R
は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基を表す。Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、さらに好ましくはアルキル基、ヘテロ環基、特に好ましくはアルキル基である。
【0028】
・m、n
mは1〜5の整数を表す。mとして好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に好ましくは1または2である。nは3〜5の整数を表し、nとして好ましくは3又は4、さらに好ましくは3である。
【0029】
・X、Y
Y及びXは各々独立にS、O、Se、Te、NRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Y及びXとして好ましくはS、O、NR、さらに好ましくはS、NR、特に好ましくはSである。Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、特に好ましくはアルキル基を表す。
【0030】
・L11,L12
11及びL12は各々独立に、エテニレン基、エチニレン基、及びアリーレン基から選ばれた少なくとも1種であって、かつR、R、及びビピリジンと共役している。ここで、エテニレン基及びアリーレン基は置換されていても置換されていなくてもよい。
11及びL12は、エテニレン基、エチニレン基及び無置換のアリーレン基から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。エテニレン基は無置換でも置換されていてもよい。さらに好ましくは、L11及びL12は、エテニレン基及び/又はエチニレン基からなる共役鎖であり、エテニレン基は無置換でも置換されていてもよい。特に好ましくは、L11及びL12は、エテニレン基からなる共役鎖で、無置換でも置換されていてもよい。L11及びL12は、最も好ましくは無置換のエテニレンからなる共役鎖である。L11及びL12がこのような共役鎖であることにより、長波長化及びモル吸光係数増大による光吸収領域の拡大の効果を得ることができる。
【0031】
置換エテニレン基として好ましくはメチルエテニレン、ジメチルエテニレン、メトキシエテニレン、フェニルエテニレン、4−メトキシフェニルエテニレン、トリフルオロメチルエテニレン、さらに好ましくはメチルエテニレン、フェニルエテニレン、メトキシエテニレン、特に好ましくはメチルエテニレンである。
置換又は無置換のアリーレン基として好ましくは核原子数6〜50、さらに好ましくは核原子数6〜30、特に好ましくは6〜18、最も好ましくは核原子数6〜12のアリーレン基である。なお共役鎖が炭素−炭素二重結合を含む場合、各二重結合はE体であってもZ体であってもよく、E体とZ体のの混合物でもよい。
無置換のエテニレンからなる共役鎖として好ましくはエテニレン、ブタジエニレン、さらに好ましくはエテニレンである。
11及びL12の具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
【化9】

【0033】
L−11〜L−13の各nはそれぞれ1〜5の整数を表す。なお、Meはメチル基を表す。
【0034】
・R、R
及びRは各々独立に置換基を表し、例えば後記の置換基Tが挙げられる。置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、特に好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0035】
・n1、n2
n1及びn2は各々独立に0〜3の整数を表し、n1が1以上のときRはL11と連結して環を形成していてもよく、n2が1以上のときRはL12と連結して環を形成していてもよい。n1が2以上のときR同士は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。n2が2以上のときR同士は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。n1及びn2がともに1以上のときRとRが連結して環を形成していてもよい。これら形成される環の好ましい例としてベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。
【0036】
・n3、n4
n3及びn4は各々独立に0〜3の整数を表し、n3が2以上のときA同士は同じでも異なっていてもよく、n4が2以上のときA同士は同じでも異なっていてもよい。n3及びn4はそれぞれ好ましくは0〜2、さらに好ましくは0または1である。n3とn4の和は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0037】
・A、A
及びAは各々独立に酸性基もしくはその塩の基を表す。本発明において酸性基とは、基を構成する水素原子の中で最も酸性の強い水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例として例えばカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルアミノ基、リン酸基、スクアリン酸基、桂酸基、ホウ酸基が挙げられる。A及びAは、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。なお、酸性基の意味は後で共吸着剤の項で確認するが、その塩やエステル体を含む意味であり、カルボニル基、アルキレン基などの所定の連結基を伴っていてもよい。
【0038】
上記の酸性基の対イオンとして好ましくはプロトン、無機または有機のアンモニウムイオン、アルカリ金属イオンである。アルカリ金属として好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、さらに好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、特に好ましくナトリウムイオンである。無機または有機のアンモニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはアンモニウムイオン、3級及び4級アルキルアンモニウムイオン、さらに好ましくは3及び4級アンモニウムイオン、特に好ましくは4級アンモニウムイオンである。4級アンモニウムイオンとして好ましくはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、さらに好ましくはテトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、特に好ましくはテトラブチルアンモニウムイオンである。
【0039】
前記式(L1)で表される配位子の具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。また、これらの酸性基はプロトン非解離体のみ示しているが、これらのプロトン解離体でもよい。
【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
【化16】

【0047】
【化17】

【0048】
【化18】

【0049】
(式(1)で表される金属錯体)
本発明の式(L1)で表される構造の配位子を有する金属錯体色素は下記式(1)で表される金属錯体色素であることが好ましい。
MLZp・CI 式(1)
【0050】
・M
Mは金属原子を表し、Mは好ましくは4配位または6配位が可能な金属(例えばRu、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、W、Co、Zn、Pb)、さらに好ましくはRu、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、W、Co、特に好ましくはRu、Re、Rh、Os、Ir、W、最も好ましくはRuである。なお、本発明の式(L1)で表される構造の配位子を有する金属錯体色素の金属原子も上記Mと同義であり、好ましい範囲もMと同じである。
【0051】
・L
は式(L1)と同義である。
【0052】
・L
は下記式(L2)で表される。なお、Lは下記以外にも式L1で表される配位子であることも好ましい。
【0053】
【化19】

【0054】
式中R、R4、、A、n1、n2は式(L1)と同義である。
【0055】
・n7、n8
n7及びn8はそれぞれ1〜4の整数を表し、n7が2以上のときA同士は同じでも異なっていてもよく、n8が2以上のときA同士は同じでも異なっていてもよい。n7及びn8はそれぞれ好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1または2、特に好ましくは1である。n7とn8の和は好ましくは1〜4の整数、さらに好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2である。
【0056】
配位子Lは、下記式(L2−1)で表されることが好ましい。
【0057】
【化20】

式中、A、A2、、R、n1、n2は式(L1)と同義である。ただし、ここでのn1及びn2はそれぞれ好ましくは0〜3の整数、さらに好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
【0058】
配位子Lは、下記式(L2−2)で表されることが好ましい。
式中A、Aは、式(L1)におけるA、Aと同義である。
【0059】
【化21】

【0060】
以下にLの配位子の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの酸性基はプロトン非解離体のみ示しているが、これらのプロトン解離体でもよい。
【0061】
【化22】

【0062】
【化23】

【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
・Z、p
前記式(1)中、Zは1座または2座の配位子を表す。MがCu、Pd、Pt、Zn、Pb等、4配位を好む金属の場合は、pは0であり、6配位を好む金属の場合は、Zが1座配位子のときpは2であり、Zが2座配位子のときpは1である。pが2のとき2つのZは同じでも異なっていてもよい。
【0066】
配位子Zは、好ましくはアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子である。より好ましくはアシルオキシ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基またはアリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、特に好ましくはジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基およびイソシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子または1,3−ジケトンからなる配位子であり、最も好ましくは、ジチオカルバメート基、チオシアネート基およびイソチオシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトンからなる配位子である。なお配位子Zがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
【0067】
Zが2座配位子のとき、Zはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド、またはチオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。Zが1座配位子のとき、Zはチオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、チオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
【0068】
以下に配位子Zの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す構造式は幾つも取りうる共鳴構造のうちの1つの極限構造にすぎず、共有結合(−で示す)と配位結合(…で示す)の区別も形式的なもので、絶対的な区別を表すものではない。
【0069】
【化26】

【0070】
【化27】

【0071】
・CI
式(1)中、CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。色素が陽イオンまたは陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、色素中の金属、配位子および置換基に依存する。置換基が酸性基等の解離性基を有する場合、解離して負電荷を持ってもよく、この場合にも分子全体の電荷はCIにより中和される。
【0072】
正の対イオンは、酸性基を表すA及びAの対イオンと同じである。
負の対イオンは無機陰イオンおよび有機陰イオンのいずれでもよく、例えばハロゲン陰イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよいし、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
【0073】
上記で規定される特定の金属錯体色素は、溶液、特に好ましくは有機溶媒に溶解させたときの溶液における最大吸収波長が、好ましくは350〜1200nmの範囲であり、より好ましくは360〜900nmの範囲であり、特に好ましくは400〜850nmの範囲である。このことは、下記式(2)の金属錯体色素についても同様である。
【0074】
以下に式(1)で表される配位子を有する金属錯体色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。また、これらの酸性基はプロトン非解離体のみ示しているが、これらのプロトン解離体でもよい。さらに、これらの化合物はシス体、トランス体及びその混合物、光学活性体等の異性体になりえるが、特に限定されない。
【0075】
【化28】

【0076】
【化29】

【0077】
【化30】

後記実施例で示したものに「O」を付して示した。
【0078】
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、上記式(L1)の配位子を有する金属錯体と同時に、あるいはこれに代え、下記式(2)で表される化合物からなる色素を含むことが好ましい。
(式(2)で表される色素)
本発明の色素は下記式(2)で表される。
MLm3m4mX・CI (2)
【0079】
・M
Mは金属原子を表す。Mの好ましいものは、式(1)と同義である。
【0080】
・L
は下記式(L3)で表される。
【0081】
【化31】

【0082】
・Za、Zb、Zc
式中、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。酸性基は先に述べた酸性基Aが挙げられる。
【0083】
Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。形成される5員環又は6員環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Za、Zb及びZcは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び/又はハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環又はピリジン環がより好ましい。
【0084】
は下記式(L3−1)で表されることが好ましい。
【0085】
【化32】

【0086】
・A、A、A
式中、A、A、Aはそれぞれ独立に酸性基を表す。A、A、Aとしては上記式L1の酸性基Aとしてあげたものと同義である。
【0087】
・R〜R
〜Rはそれぞれ独立に置換基を表す。R〜Rとしては例えば前記の置換基Tが挙げられる。R〜Rとして好ましくはアルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、ビニル基を介したヘテロアリール基、ビニル基を介したアリール基である。
【0088】
・b1〜b3、c1〜c3
b1、b3およびc1、c3はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、b2、c2は0〜3の整数を表す。ただし、c1〜c3がすべて0であることはない。
【0089】
は下記式(L3−2)で表されることがさらに好ましい。
【0090】
【化33】

【0091】
・R〜R
式中、R、RおよびRは水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、アリール基または酸性基を表す。R、RおよびRのうち少なくとも1つは酸性基であり、好ましくは前記酸性基Aが挙げられる。
【0092】
・m3
m3は1又は2である。1であるのがより好ましい。
【0093】
・L
は下記式(L4)で表される。
【0094】
【化34】

【0095】
・V
Vは置換基を表し、Hammett則におけるσp値が正の置換基を表すことが好ましく、そのσpは0.05〜1がより好ましく、0.1以上であることが特に好ましい。
【0096】
ここでHammett則における置換基定数σp値について説明する。Hammett則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.ハメットにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページ、Corwin Hansch, A. LEO and R. W. TAFT“A Survey of Hammett Substituent Cosntants and Resonance and Field Parameters”Chem.Rev.1991,91,165−195などに詳しい。
【0097】
Vの少なくとも1つがヘテロ環基を含む置換基であることが好ましい。これによりεが向上し、IPCEが増大する。結果として変換効率の顕著な向上が見られる。
好ましいヘテロ環基としては、チオフェン、フラン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、およびこれらのベンゾ縮環体、トリアジン、などを挙げることができる。
【0098】
・n
nは0以上の整数を表す。好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。
【0099】
・A、C
AおよびCは、置換基を有していてもよい5員以上の含窒素芳香環を表し、下記式(L4−1)〜(L4−11)のいずれかで表されることが好ましい。
【0100】
【化35】

【0101】
式中、Vは上記式L4のVと同義であり、nは上記式L4のnと同義であり、好ましい範囲も同じである。*は結合位置を表す。Rは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。mの上限は各式中の「置換可能数」であり、式L4−1であれば3である。mが2以上の場合、複数のRは同じでも異なってもよい。Rとしては前記置換基Tがあげられ、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。なお、式(L4−6)、(L4−8)、(L4−10)においては、R、Vがピロール環に置換しているものを含む意味である。
前記環A及びCが前記式(L4−1)〜(L4−6)及び(L4−9)であることが好ましい。
【0102】
・B
Bは、置換基を有していてもよい5員環以上、好ましくは5〜14員環の含窒素芳香環を表す。形成される環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Bは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び/又はハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。
【0103】
Bは下記式(L4−21)または(L4−22)で表されることが好ましい。
【0104】
【化36】

【0105】
・R、R
式中、Rは置換基を表す。Rとしては後記置換基Tの例が挙げられる。Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。また、Rはアリール基またはヘテロ環基であることが好ましい。
がヘテロ環基である場合、チオフェン、フラン、ピロール、セレノフェン、およびそのベンゾ縮環体、およびこれらが自身も含めて2環以上連結したもの、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、ジチエノシクロペンタン、ジチエノシロール、などがより好ましい。
*は結合手を意味する。
【0106】
・da、db、dc
daはそれぞれ0〜5の整数を表す。dbは0〜2の整数を表す。dcは0〜4の整数を表す。
【0107】
・L
はそれぞれ独立に共役鎖を表し、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エテニレン基及び/又はエチニレン基からなる共役鎖を表す。エテニレン基やエチニレン基等は、無置換でも置換されていてもよい。エテニレン基が置換基を有する場合、該置換基はアルキル基であるのが好ましく、メチルであるのがより好ましい。Lは炭素原子数2〜6個の共役鎖であるのが好ましく、チオフェンジイル、エテニレン、ブタジエニレン、エチニレン、ブタジイニレン、メチルエテニレン又はジメチルエテニレンがより好ましく、エテニレン又はブタジエニレンが特に好ましく、エテニレンが最も好ましい。なお、共役鎖が炭素−炭素二重結合を含む場合、各二重結合はE型であってもZ型であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0108】
・a
aは0または1の整数を表す。
【0109】
・m4
m4は1又は2であり、1が好ましい。
【0110】
・配位子X
Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基及びアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する1座の配位子、又はハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド及びチオ尿素からなる群より選ばれる1座の配位子を表す。なお配位子Xがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
【0111】
・mX
配位子Xの数を表すmXは0又は1であり、好ましくは1である。
【0112】
・対イオンCIは、式(1)のCIと同義である。
【0113】
式(2)で表される構造を有する色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
【化37】

【0115】
本発明の金属錯体色素は、例えば、国際公開第2007/091525号パンフレット等に記載の方法もしくはそれに準じた方法で容易に合成できる。
【0116】
[共吸着剤]
本発明における半導体層(半導体膜とも称し、図1の感光層2)は、半導体の表面に金属錯体色素及び共吸着剤が担持されている。
以下に本発明で使用する共吸着剤を説明する。
本発明で使用する共吸着剤には、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸等の酸性基が選択される。本発明において酸性基とは、遊離水素をもつ酸性置換基のほか、その塩の基、を含む意味に用いる。このとき、酸性基という語を用いなくても、それを意味する場合には同義のものとして解釈するものとする。すなわち、例えば、カルボン酸基というときには、カルボン酸基そのものの他、カルボン酸塩を含む意味である。また、酸性基とはカルボン酸基等の酸性末端基部分のみではなく、カルボニル基やアルキレン基などの連結基を伴っていてもよく、当該連結基を含む意味として用いる。ただし、式(11)に関して酸性基が、カルボン酸基を含む場合、本発明の効果を効果的に発現するのに、酸性基を少なくとも2つ有する必要がある。
【0117】
本発明者等は共吸着剤の挙動を詳細に検討したところ、特に酸性基を有する共吸着剤においては、式(11)のような嵩高い化合物において酸性基としてカルボン酸基を1つのみ有する場合には、高温で半導体表面に吸着していた共吸着剤が脱離することがわかった。これは式(11)のような嵩高い化合物に特有の現象であり、その立体障害により密に吸着できず吸着力が低下することが原因であると考えられる。
その他の吸着剤を含め、脱離により生じた酸化物半導体上の隙間に酸化還元種が接近することにより逆の電荷の移動が起きたり、水が接近することで色素を脱着させる等の電池性能低下の要因となる。さらには、脱離した吸着剤自体が色素と交換吸着することで色素の脱着を促進する負の効果もある。
【0118】
酸性基としては、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基から選択される場合、2つ以上のカルボン酸基が好ましく、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基から選択される場合、リン酸基、ホスホン酸基が好ましい。
また共吸着剤は、着色していない共吸着剤が好ましい。また炭素数5以上の置換基を有するものがより好ましく、炭素数8以上の置換基を有するものがさらに好ましく、炭素数の上限は30以下が好ましい。共吸着剤の置換基は、嵩高い基が好ましく、例えば、分岐アルキル基(例えば、t−アルキル基、イソもしくはsec−アルキル基)やベンジル基を有したり、非芳香族の脂環もしくはヘテロ環又はこれらの縮合環基を有する基などが挙げられる。なかでもステロイド骨格の化合物が好ましい。
本発明で使用する好ましい共吸着剤は、以下の式(11)〜(17)のいずれかで表される。このうち、より好ましくは式(12)、(13)、(17)のいずれかで表される。なお、式(II)はケノデオキシコール酸に由来する骨格(母核)を有する化合物であり、したがってRaがカルボン酸基を含む場合、酸性基を2つ以上有することとなる。式(I)のケノデオキシコール酸の母核とはシクロアルカンの4環状構造部を指し、この骨格には不飽和結合が含まれていてもよい。
酸性基の塩における対イオンは、式(L1)におけるA、Aの酸性基で例示した対イオンが挙げられ、好ましい範囲も同じである。これらのうち、プロトン、すなわち酸性基、アルカリ金属イオンが好ましく、プロトン、すなわち酸性基が好ましい。
【0119】
【化38】

【0120】
・Ra
Raは酸性基を表す。該酸性基はスルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基から選択される基である。酸性基は上述のとおり連結基を含んでいてもよい。
Raが連結基を含むとき、該連結基はアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基は、好ましくは置換もしくは無置換の、直鎖もしくは分岐のものであってよく、炭素数1〜30のアルキレン基が好ましい。ここでのアルキレン基は酸素原子(エーテル基)やカルボニル基を介在していてもよく、すなわち、アルキレンオキシ基やアルキレンカルボニル基を有する基を含む意味である。具体的には、メチレン、エチレン、n−プロピレン、2−メチルプロパンジイル、n−オクタンジイル、2−エチルヘキサンジイル、ドデカンジイル基、n−ヘキサデカンジイルである。Raはその他、下記式(A)で表される基であることが望ましい。
【0121】
−CH(CH)−(CH)x−C(=O)X−L−B 式(A)
【0122】
式中、xは1または2を表し、2が好ましい。XはO、S、NRを表し、NRが好ましい。ここで、Rは水素原子、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基を表し、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基は置換基Tで挙げたアルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。Lはアルキレン基を表し、このアルキレン基は置換基を有してもよく、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜10のアルキレン基である。Bは酸性末端基を表す。
アルキレンオキシ基としてはエチレンオキシ基が好ましい。
【0123】
共吸着剤が式(11)のようにカルボン酸基を含む2つ以上の酸性基を有する場合、組み合わされる酸性基は特に制限されないが、カルボン酸基を複数有することが好ましく、コハク酸基を有することがより好ましい。さらに具体的には、Raがカルボン酸基を有するとき、2つ以上の酸性基を有することが好ましく、コハク酸基を有することがより好ましい。
【0124】
・n1〜n4
n1は0以上の整数を表し、n2は1又は2を表す。n1が2以上の時、複数のRbは互いに同一でも異なっていてもよく、n2が1の時、2つのRcは互いに同一でも異なっていてもよい。n3は1〜8の整数を表す。n4は1〜4の整数を表す。ただし、式(11)で表される化合物において、その酸性基としてカルボン酸基のみである場合、該カルボン酸基を少なくとも2つ有する。なお、前記のとおり式(11)の脂肪族環構造部をケノデオキシコール酸の母核といい、これは脱水素されて不飽和結晶を含んでいてもよい(後記例示化合物K−14参照)。
【0125】
・M
は水素原子、カチオン種を表す。
におけるカチオン種は、式(L1)におけるA、Aの酸性基で例示した対イオンが挙げられ、好ましい範囲も同じである。これらのうち、プロトン、アルカリ金属イオンが好ましく、プロトンが最も好ましい。
【0126】
・Rb、Rc
Rb及びRcは各々独立に置換基を表す。
Rb及びRcにおける置換基は置換基Tで挙げた置換基が挙げられる。このうち、Rbはアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基が好ましく、Rcはアルキル基、アルケケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましい。
【0127】
・Rd
Rdは炭素数1〜20のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。アルキレン基としては、炭素数1〜10のものが好ましい。アルキレンオキシ基としてはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基が好ましい。
【0128】
以下に本発明で使用する共吸着剤の具体的化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
【化39】

【0130】
【化40】

【0131】
前記特定の共吸着剤は、市販のものを使用してもよく、また、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸のカルボキシル基を有するステロイド化合物のカルボキシル基を、アミノコハク酸誘導体や、2−アミノエタンスルホン酸誘導体等のアミノ基を有するアルキルもしくはアリールのスルホン酸誘導体やカルボン酸誘導体でアミド化することにより容易に合成できる。
共吸着剤は、本発明の共吸着剤を単独で用いても、本発明の共吸着剤以外の共吸着剤と併用してもよい。併用してもよい共吸着剤としては、カルボン酸基もしくはその塩の基、そのエステル体を1つ有するステロイド化合物(例えばコール酸)やピバロイル酸等が挙げられる。本発明においては、酸化物半導体に吸着した金属錯体色素の透過吸収スペクトルの最大吸収の強度が、共吸着剤を使用しない場合の70%〜99%であることが好ましく、80%〜95%であることがさらに好ましい。また、本発明の共吸着剤の酸化物半導体に吸着させる際の使用量は、上記特定の金属錯体色素100質量部に対し1〜5000質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましく、50〜300質量部がさらに好ましい。共吸着剤の適用量をこの範囲とすることで、冒頭で述べた金属錯体との相互作用を一層効果的に引き出すことができ好ましい。
【0132】
なお、本明細書において化合物(錯体、色素を含む)の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の一部を変化させた誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基及び配位子についても同様)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0133】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0134】
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0135】
[光電変換素子及び色素増感型太陽電池]
図1に示されるように、本発明の光電変換素子10は、導電性支持体1、その上に設置される上記本発明の色素化合物21により増感した半導体層(半導体膜)である感光層2、正孔輸送層3、及び対極4からなる。半導体層(半導体膜)を設置した導電性支持体は光電変換素子において作用電極として機能する。本実施形態においては、この光電変換素子10を外部回路6で動作手段Mに仕事をさせる電池用途に使用できるようにした色素増感太陽電池を利用したシステム100として示している。
【0136】
本実施形態において受光電極5は、導電性支持体1、およびその上に塗設される色素化合物21の吸着した半導体微粒子22の層(半導体層である感光層)2よりなる。本実施形態においては受光電極5に電解質3を含むものとして示しているが、これを含まないものとしてみてもよい。半導体層である感光層2は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。一層の感光層中の色素化合物21は一種類でも多種の混合でもよいが、そのうちの少なくとも1種は、上述した本発明の金属錯体色素を用いる。半導体層である感光層2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素化合物21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体に到達する。このとき金属錯体色素は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に電解質3に戻るのが色素増感型太陽電池であり、色素増感光電変換素子はこの電池の負極として働く。本発明において光電変換素子及び色素増感型太陽電池に用いられる材料及び各部材の作成方法については、この種のものにおける通常のものを採用すればよく、例えば米国特許第4927721号明細書、米国特許第4684537号明細書、米国特許第5084365号明細書、米国特許第5350644号明細書、米国特許第5463057号明細書、米国特許第5525440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。以下、主たる部材について概略を説明する。
【0137】
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスもしくはプラスチックの支持体である。支持体としては、ガラス及びプラスチックの他、セラミック(特開2005―135902号公報)、導電性樹脂(特開2001―160425号公報)を用いてもよい。支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003―123859号公報記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002―260746号公報記載のライトガイド機能が挙げられる。
【0138】
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
【0139】
導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としては、ガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスもしくはプラスチックの支持体1m当たりの0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。
【0140】
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0141】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合するか、または半導体電極として用いてもよい。
【0142】
半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、湿式法の他、乾式法、その他の方法が挙げられる。
【0143】
透明導電膜と半導体層(酸化物半導体層)の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。光電極と対極の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層(半導体層)の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。色素増感太陽電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜60℃が好ましい。
【0144】
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
前記色素が塩である場合、前記特定の金属錯体色素の対イオンは特に限定されず、例えばアルカリ金属イオン又は4級アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0145】
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。電荷移動層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極と対極との間に設けられる。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。
【0146】
以上の液体電解質及び擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいはホール輸送材料などの固体電荷輸送系を用いても良い。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いても良い。
【0147】
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要である。好ましい濃度としては合計で0.01モル/1以上であり、より好ましくは0.1モル/1であり、特に好ましくは0.3モル/1以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/1程度である。
【0148】
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対向電極との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の光電気化学電池においては、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対向電極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。光電気化学電池の対向電極としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、またはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。光電気化学電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。このようにして得られる本発明の光電気化学電池の特性は、一般的にはAM1.5Gで100mW/cmのとき、開放電圧0.01〜1.5V、短絡電流密度0.001〜20mA/cm、形状因子0.1〜0.9、変換効率0.001〜25%である。
本発明は、特許第4260494号公報、特開2004−146425号公報、特開2000−340269号公報、特開2002−289274号公報、特開2004−152613号公報、特開平9−27352号公報等に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池に適用することができる。
【実施例】
【0149】
以下に、本発明を、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0150】
合成例(例示化合物D−1−1aの合成)
下記のスキームの方法に従って例示色素D−1−1aを合成した。
【0151】
(i)化合物d−1−2の合成
d−1−1 25g、Pd(dba)33.8g、トリフェニルホスフィン8.6g、ヨウ化銅2.5g、1−へプチン25.2gをトリエチルアミン70ml、テトラヒドロフラン50mlに室温で攪拌し、80℃で4.5時間攪拌した。濃縮後カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物d−1−2 26.4gを得た。
(ii)d−1−4の合成
d−1−3 6.7gを窒素雰囲気下、−15℃でTHF(テラヒドロフラン)200mlに溶解し、別途調製したLDA(リチウムジイソプロピルアミド)をd−1−3の2.5等量を滴下し、75分攪拌した。その後d−1−2 15gをTHF30mlに溶解した溶液を滴下し0℃で1時間攪拌し、室温で終夜攪拌した。濃縮後、水150mlを加え、塩化メチレン150mlで分液・抽出し、塩水で有機層を洗浄し、有機層を濃縮した。得られた結晶はメタノールで再結晶後、d−1−4 18.9gを得た。
【0152】
(iii)化合物d−1−5の合成
d−1−4 13.2g、PPTS(ピリジニウムパラトルエンスルホン酸)1.7gを、トルエン1000mlに加え、窒素雰囲気下で5時間加熱還流を行った。濃縮後、飽和重曹水及び塩化メチレンで分液を行い、有機層を濃縮した。得られた結晶はメタノール及び塩化メチレンで再結晶後、d−1−5 11.7gを得た。
(iv)例示色素D−1−1aの合成
化合物d−1−5 4.0g、d−1−6 2.2g、をDMF60mlに加え70℃で4時間攪拌した。その後d−1−7 2.1gを加え160℃で3.5時間加熱攪拌した。その後チオシアン酸アンモニウム 19.0gを加え130℃で5時間攪拌した。濃縮後、水1.3ml加えろかし、ジエチルエーテルで洗った。粗精製物をTBAOH(水酸化テトラブチルアンモニウム)と共にメタノール溶液に溶解し、SephadeXLH−20カラムで精製した。主層の分画を回収し濃縮後硝酸0.2Mを添加して、沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−1−1b 600mgを得た。精製物をメタノール溶液に溶解し、硝酸1Mを添加して沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−1−1aを570mg得た。
得られた化合物D−1−1aの構造はNMR測定により確認した。
H−NMR(DMSO−d、400MHz):δ(ppm)in aromatic regions:9.37(1H,d),9.11(1H,d),9.04(1H,s)、8.89(2H),8.74(1H,s),8.26(1H,d),8.10−7.98(2H),7.85−7.73(2H),7.60(1H,d),7.45−7.33(2H),7.33−7.12(5H,m),6.92(1H,d)
得られた例示色素D−1−1aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は568nmであった。
【0153】
【化41】

【0154】
(例示色素D−1−21aの合成)
下記のスキームの方法に従ってd−2−4を合成し、以下例示色素D−1−1aと同様にして例示色素D−1−21aを合成した。得られた例示色素D−1−21aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は570nmであった。
【0155】
【化42】

【0156】
(例示色素D−1−16aの合成)
下記のスキームの方法に従ってd−3−2を合成し、以下例示色素D−1−1aと同様に、例示色素D−1−16aを合成した。得られた例示色素D−1−16aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は574nmであった。
【0157】
【化43】

【0158】
(例示色素D−1−17aの合成)
下記のスキームの方法に従ってd−4−2を合成し、以下例示色素D−1−1aと同様にして、例示色素D−1−17aを合成した。得られた例示色素D−1−17aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は588nmであった。
【0159】
【化44】

【0160】
(例示色素D−1−22aの合成)
下記のスキームの方法に従ってd−5−6を合成し、以下例示色素D−1−1aと同様にして、例示色素D−1−22aを合成した。得られた例示色素D−1−22aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は570nmであった。
【0161】
【化45】

【0162】
(例示色素D−1−23aの合成)
下記のスキームの方法に従ってd−6−3を合成し、以下例示色素D−1−1aと同様にして例示色素D−1−23aを合成した。得られた例示色素D−1−23aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は571nmであった。
【0163】
【化46】

【0164】
(例示色素D−1−24aの合成)
前記例示色素D−1−21aの合成において、d−2−2の代わりに下記のd−7−1を用いて、D−1−24aを合成した。得られた例示色素D−1−24aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は574nmであった。
【0165】
【化47】

【0166】
(例示色素D−8−1の合成)
下記のスキームの方法に従って、以下例示色素D−1−1aと同様にして、例示色素D−8−1を合成した。得られた例示色素D−8−1について、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は580nmであった。
【0167】
【化48】

【0168】
実施例1
(光電変換素子の作製)
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。このうち一方の導電膜上にアナターゼ型酸化チタン粒子(平均粒径:50nm)を焼結して受光電極を作製した。その後、受光電極上にシリカ粒子とルチルとを40:60(質量比)で含有する分散液を塗布及び焼結して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成させた。
次に、下記表1に記載された本発明又は比較の金属錯体色素(増感色素)のエタノール溶液(3×10−4モル/l)に48時間浸漬したものを共吸着剤を使用しない系である比較例とした。一方、エタノール中に金属錯体色素(3×10−4モル/1)と共に下記表1中に記載の共吸着剤を0.3×10−4モル〜30×10−4モル/1の範囲で調整し、下記表1に記載の色素吸着量となるように各々濃度調整した。溶解させた液に上記の共吸着剤を使用しない系と同じ時間である48時間浸漬した。このうち本発明の金属錯体色素と本発明の共吸着剤の組み合わせである本発明の試料を含め、下記表1の組み合わせの試料を作製した。これらの各金属錯体色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる半導体層である感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/mとした。金属錯体色素の塗布量は、金属錯体色素の種類に応じ、適宜0.1〜10ミリモル/mの範囲から選択した。
電解液としては、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/1)、ヨウ素(0.1モル/1)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
【0169】
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cmであった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた色素増感太陽電池の変換効率を測定した結果を下記表1に示す。下記表1には、変換効率が8.5%以上のものをAAA、7.5%以上8.5%未満のものをAA、7.0%以上7.5%未満のものをA、6.5%以上7.0%未満のものをB、6.5%未満のものをCとして、これらの評価ランクで示した。
【0170】
(色素吸着量の測定)
色素吸着量は以下のようにして測定した。
色素および共吸着剤を吸着させた酸化物半導体を10%のNaOHを含有するメタノール溶液に24時間浸し脱着させる。これを濃縮乾固し質量を測定した後に一定濃度に希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する。その後あらかじめ色素純品を用い作成しておいた検量線を用いて酸化物半導体から脱着させた成分中の色素含量を求める。またこの結果を用いて、脱着成分質量から色素質量を除いたものを共吸着剤量とする。共吸着剤未使用時の吸着量についても同様の操作を行う。
【0171】
(耐久性の測定)
耐久性は、以下の2種類の条件で評価した。
(耐久性)
変換効率の初期値に対し40℃で照射し続けたときの500時間後の変換効率が95%以上のものをAAA、90%以上95%未満のものをAA、85%以上90%未満のものをA、75%以上85%未満のものをB、85%未満のものをCとして評価し、AA及びAAAを合格とした。
(85℃の耐久性)
変換効率の初期値に対し85℃で照射し続けたときの300時間後の変換効率が95%以上のものをAAA、90%以上95%未満のものをAA、85%以上90%未満のものをA、75%以上85%未満のものをB、75%未満のものをCとして評価し、A、AA及びAAAを合格とした。
これらの結果をまとめて、下記表1に示した。
【0172】
【表1−1】

【0173】
【表1−2】

【0174】
【表1−3】

【0175】
【表1−4】

【0176】
【表1−5】

* 対共吸着剤なし・・・100%:
共吸着剤未使用(以下の表において同様)
試験No.がc***のものは比較例(以下の表において同様)
【0177】
ここで、以下の増感色素を比較金属錯体色素として用いた。
また、表中のCDCAはケノコール(ケノデオキシコール酸)を表す。
【0178】
【化49】

【0179】
この結果、表1から明らかなように、本発明の試料はいずれも変換効率と耐久性に優れ、特に高温条件での耐久性に優れていることがわかる。なお、c104の結果がJ2色素とCDCAを併用した前記特許文献3に該当する比較例である。
【0180】
実施例2
1.ITO膜用原料化合物溶液の調製
塩化インジウム(III)四水和物5.58gと塩化スズ(II)二水和物0.23gとをエタノール100mlに溶解して、ITO膜用原料化合物溶液とした。
【0181】
2.FTO膜用原料化合物溶液の調製
塩化スズ(IV)五水和物0.701gをエタノール10mlに溶解し、これにフッ化アンモニウム0.592gの飽和水溶液を加え、この混合物を超音波洗浄機に約20分間かけ、完全に溶解して、FTO膜用原料化合物溶液とした。
【0182】
ついで、厚さ2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した。ヒータの加熱温度が450℃になったところで、ITO膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧した。
【0183】
このITO膜用原料化合物溶液の噴霧後、2分(この間ガラス基板表面にエタノールを噴霧し続け、基板表面温度の上昇を抑えるようにした。)経過し、ヒータの加熱温度が530℃になった時に、FTO膜用原料化合物溶液を同様の条件で2分30秒間噴霧した。これにより、耐熱ガラス板上に厚さ530nmのITO膜と厚さ170nmのFTO膜とが形成され、透明電極板が得られた。
【0184】
さらに、同様の耐熱ガラス板を使用して、これの上に同様の操作により厚さ530nmのITO膜のみを成膜した透明電極板と、同じく厚さ180nmのFTO膜のみを成膜した透明電極板とをそれぞれ作製した。
【0185】
これら3種の透明電極板を加熱炉にて、450℃で2時間加熱した。
次に、上記具体例で得られた3種の透明電極板を用いて、特許第4260494号公報に記載の図2に示された構造の色素増感太陽電池を作製した。酸化物半導体多孔質膜15の形成は、平均粒径約230nmの酸化チタン微粒子をアセトニトリルに分散してペーストとし、これを透明電極11上にバーコート法により厚さ15μmに塗布し、乾燥後450℃で1時間焼成して行い、この酸化物半導体多孔質膜15に下記表2に示すような金属錯体色素と共吸着剤の組み合わせを担持した。
ここで、金属錯体色素と共吸着剤は、色素が0.1×10−4〜0.3×10−3M、共吸着剤が0.1×10−5〜0.5×10−2の間で濃度調整した混合溶液に12時間酸化物半導体を浸漬させることで担持させた。この際、色素と共吸着剤との比率を変えることで色素:共吸着剤の吸着量比を調整した。
【0186】
さらに、対極16には、ガラス板上にITO膜とFTO膜とを積層した導電性基板を使用し、電解質層17には、ヨウ素/ヨウ化物の非水溶液からなる電解液を用いた。得られた色素増感太陽電池の平面寸法は25mmC25mmとした。
【0187】
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cmであった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率を測定した結果を下記表2に示す。下記表2には、変換効率が8.5%以上のものをAAA、7.5%以上8.5%未満のものをAA、7.0%以上7.5%未満のものをA、6.5%以上7.0%未満のものをB、6.5%未満のものをCとして、これらの評価ランクで示した。
【0188】
(色素吸着量の測定)
色素吸着量は実施例1と同様の方法で測定した。
【0189】
【表2】

【0190】
【表3】

【0191】
表2からわかるように、導電層がITO膜のみの場合やFTO膜のみの場合においても、本発明の試料はいずれも変換効率が高いことがわかる。
【0192】
実施例3
以下の方法で、異なる構造の色素増感太陽電池の試験セル(i)及び(iv)を作製し、この試験セルについて、光電変換特性を測定し、変換効率を求めた。
(試験セル(i))
100C100mmのFTO膜付きガラスの表面に、エッチング法により深さ5μmの溝を格子回路パターン状に形成した。エッチングは、フォトリソにてパターン形成した後に、フッ酸を用いて行った。これに、めっき形成を可能とするためにスパッタ法により金属導電層(シード層)を形成し、更にアディティブめっきにより金属配線層3を形成した。金属配線層3は、透明基板2表面から凸レンズ状に3μm高さまで形成した。回路巾は60μmとした。この上から、遮蔽層5としてFTO膜を400nmの厚さでSPD法により形成して、電極基板(i)とした。なお、電極基板(i)の断面形状は、特開2004−146425号公報に記載の図2に準ずるものとなっている。
電極基板(i)上に平均粒径25nmの酸化チタン分散液を塗布・乾燥し、450℃で1時間加熱・焼結した。これを金属錯体色素のエタノール溶液中に40分間浸漬して金属錯体色素を担持した。ここで、下記表3に示すような金属錯体色素と共吸着剤の組み合わせを担持した。なお、金属錯体色素と共吸着剤は、実施例1と同様にして濃度調整し、吸着させた。
50μm厚の熱可塑性ポリオレフィン樹脂シートを介して白金スパッタFTO基板と対向して配置し、樹脂シート部を熱溶融させて両極板を固定した。予め、白金スパッタ極側に電解液の注液口を開けておき、電極間に0.5Mのヨウ化塩と0.05Mのヨウ素とを主成分に含むメトキシアセトニトリル溶液を注液した。更に、周辺部及び電解液注液口をエポキシ系封止樹脂を用いて本封止し、集電端子部に銀ペーストを塗布して試験セル(i)とした。AM1.5の疑似太陽光により、試験セル(i)の光電変換特性を評価した。その結果を下記表3に示す。
【0193】
(試験セル(iv))
100mm角のFTOガラス基板上に、アディティブめっき法により金属配線層3(金回路)を形成した。金属配線層3(金回路)は基板表面に格子状に形成し、回路幅50μm、回路厚5μmとした。この表面に厚さ300nmのFTO膜を遮蔽層5としてSPD法により形成して電極基板(iv)とした。電極基板(iv)の断面をSEM、EDXを用いて確認したところ、配線底部でめっきレジストの裾引きに起因すると思われる潜り込みがあり、影部分にはFTOが被覆されていなかった。
電極基板(iv)を用い、試験セル(iv)を作製した。AM1.5の疑似太陽光により試験セル(iv)の光電変換特性を評価した。下記表3には、変換効率が8.5%以上のものをAAA、7.5%以上8.5%未満のものをAA、7.0%以上7.5%未満のものをA、6.5%以上7.0%未満のものをB、6.5%未満のものをCとして、これらの評価ランクで示した。
【0194】
【表4】

【0195】
表3から明らかなように、本発明の試料はいずれも変換効率が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0196】
1 導電性支持体
2 感光体
21 色素
22 半導体微粒子
3 電荷移動体
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 色素増感太陽電池を利用したシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体及び該導電性支持体の導電性表面を被覆するように設けられた半導体層を有する光電変換素子であって、
該半導体層の半導体の表面に、式(L1)で表される配位子を有する金属錯体色素と、酸性基を有する共吸着剤とが担持され、
該共吸着剤がもつ酸性基が、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基である光電変換素子(ただし、前記共吸着剤が、ケノデオキシコール酸の母核を有しカルボン酸基をもつ場合には、当該共吸着剤は酸性基を2つ以上有する。)。
【化1】

[式中、R及びRは下記式(A)〜(G)のいずれかで表される置換基である。L11及びL12はエテニレン基、エチニレン基、及びアリーレン基から選ばれた少なくとも1種であって、かつR又はR、及びビピリジンと共役している。R及びRは置換基を表す。A及びAは酸性基を表す。n1〜n4は0〜3の整数を表す。]
【化2】

[式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、又は芳香族へテロ環基を表す。R〜Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミノ基、ヘテロ環基、又はハロゲン原子を表す。ただし、式(A)においてRとRとが互いに連結してジオキサン環を形成することはない。
は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はヘテロ環基を表す。ここで、N原子に置換する2つのRは互いに連結して環を形成することはない。
mは1〜5の整数を表す。nは3〜5の整数を表す。Y及びXは各々独立に、S、O、Se、Te、又はNRを表す。Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。]
【請求項2】
前記共吸着剤が下記式(11)〜(17)のいずれかで表される請求項1に記載の光電変換素子。
【化3】

[式中、Raは、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はカルボン酸基を有する基を表す。Rb及びRcは置換基を表す。Mは水素原子またはカチオン種を表す。Rdは炭素数1〜20のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。n1は0以上の整数を表す。n2は1又は2を表す。n3は0〜8の整数を表す。n4は0〜4の整数を表す。ただし、式(11)で表される化合物がカルボン酸基をもつ場合、該化合物は酸性基を少なくとも2つ有する。]
【請求項3】
前記金属錯体色素が下記式(1)で表される請求項1又は2に記載の光電変換素子。
ML・CI 式(1)
[式中、Mは金属原子を表す。Lは式(L1)の配位子と同義である。Lは下記式(L2)を表す。Zは1座又は2座の配位子を表す。pは0〜2の整数を表す。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化4】

[式中、R、R、A、A、n1、n2は式、(L1)と同義である。n7及びn8は各々独立に1〜4の整数を表す。]
【請求項4】
前記金属錯体色素として前記式(L1)で表される配位子を有する色素に代え、あるいはこれとともに下記式(2)で表される色素を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
MLm3m4mX・CI (2)
[式中、Mは金属原子を表す。Lは下記式(L3)で表される配位子を表す。Lは下記式(L4)で表される配位子を表す。Xは1座の配位子を表す。m3は1又は2である。m4は1又は2である。mXは0又は1である。CIは、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化5】

[式中、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成する原子群を表す。ただし、Za、Zb及びZcが形成する環のうち少なくとも1つは酸性基を有する。]
【化6】

[式中、A〜Cは5員環以上の含窒素芳香環を表す。aは0または1の整数を表す。Vは置換基を表す。nは0以上の整数を表す。]
【請求項5】
前記金属錯体色素の金属元素又は前記金属元素Mが、Ru、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、W、又はCoである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記金属錯体色素100質量部に対して前記共吸着剤を1〜5000質量部で適用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記式(A)〜(G)の連結基YがSである請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記式(L1)のL11及びL12がエテニレン基又はエチニレン基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
導電性支持体と、その上側の前記半導体層と、さらにその上側の電荷移動体と、さらにその上側の対極とを有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子
【請求項10】
前記共吸着剤が、前記式(12)、(13)、及び(17)のいずれかで表されることを特徴とした請求項2〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記共吸着剤が、炭素数5以上の置換基を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記共吸着剤の酸性基がエステル体であるとき、その末端基を構成するアルキル基は、メチル基もしくはエチル基である請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子
【請求項13】
前記共吸着剤を用いた時の酸化物半導体に吸着した色素の透過スペクトルにおける最大吸収の強度が、該共吸着剤を用いない場合の70%〜99%である請求項1〜12のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項14】
前記共吸着剤の酸性基が塩を形成しているとき、その対イオンが、アルカリ金属イオンである請求項1〜13のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の光電変換素子を含有する色素増感太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−216496(P2012−216496A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284562(P2011−284562)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】