説明

光電変換装置の製造方法および光電変換装置

【課題】効率的に太陽電池の電極を形成する。
【解決手段】(a)複数の太陽電池セルSCを、複数の配線部材32を介して電気的に接続し、組立体31を形成する工程、(b)表面33a、裏面33b、および表面33aから裏面33bまで貫通する貫通孔35aを有する基板33を準備して、表面33a側に組立体31を配置する工程(c)組立体31の配線部材32を基板33の表面33a側から裏面33bに電気的に引き出す工程、(d)前記(c)工程の後、基板33の表面33a側に液状の樹脂34aを塗布し、組立体31を封止する工程、(e)液状の樹脂34aを硬化させる工程を有している。ここで、基板33の貫通孔35aには、前記(d)工程の前に導体柱35が埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置の製造技術に関し、特に、太陽電池モジュールの太陽電池セルから電力を取り出すための引き出し配線の形成に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-157652号公報(特許文献1)には、ガラスエポキシやアルミニウムなどの基板上に複数枚の太陽電池素子を配置して、これらをウレタン樹脂によって封入した太陽電池パネルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-157652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池に代表される光電変換装置では、太陽電池セル(セル)と呼ばれる複数の太陽電池素子を電気的に接続してモジュール化することにより要求電力量を出力する構造となっている。太陽電池セルには、入射光を電力に変換する光電変換部を備えるが、光電変換部の構成材料により分類すると、結晶シリコン系(単結晶または多結晶)、薄膜アモルファス・微結晶シリコン系、CIS(銅インジウムセレナイド)系、CIGS(二セレン化銅インジウムガリウム)系などの化合物系や色素増感・有機薄膜系などがある。
【0005】
太陽電池モジュールでは、上記のいずれの太陽電池セルを用いても、太陽電池セルおよび複数の太陽電池セルを接続する配線部材を保護するため、樹脂などの保護部材で封止する必要がある。また、太陽電池セルの損傷や配線部材の断線を防止ないしは抑制する観点からは、樹脂封止された複数の太陽電池セルおよび配線部材をガラス基板などの補強部材に固定する必要がある。このような太陽電池モジュールの構造としては、配線材を介して複数の太陽電池セルを電気的に接続した組立体をEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂により封止し、樹脂封止体の受光面側にガラス基板を、受光面の反対側にPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂シートを貼り付けた構造体が知られている(例えば、前記特許文献1の図11参照)。
【0006】
前記EVA樹脂を用いて封止する太陽電池モジュールは、例えば以下のように組み立てられる。まず、ガラス基板上に架橋前のEVA樹脂シートを載せ、その上に複数の太陽電池が配線材を介して電気的に接続された組立体、架橋前の別のEVA樹脂シート、およびPET樹脂シートを順次積層する。この時、前記組立体上に載せるEVA樹脂シートおよびPET樹脂シートには貫通孔が形成されており、前記配線材の一部をこの貫通孔に通すことで太陽電池セルから外部に電力を取り出すための引き出し配線とする。次に、減圧チャンバ(真空チャンバ)内にこの積層物を配置して、減圧状態で積層物を加熱しながら積層物をプレスする、所謂、真空ラミネート加工を施す。これによりEVA樹脂が流動化して前記組立体が封止される。そして、EVA樹脂に架橋処理を施し硬化させることにより、上記した太陽電池モジュールが得られる。
【0007】
ここで、上記の太陽電池モジュールの場合、太陽電池モジュール1個を組み立てるために要する時間が長いため、タクトタイムが長いという課題がある。特に、真空ラミネート加工の工程では、真空チャンバ内でEVA樹脂シートを一体化させるので長い加工時間を要する。一方、複数の太陽電池モジュールを一括して処理する場合には、大型の真空チャンバが必要となり、装置構成も煩雑になる。また、EVA樹脂シートで封止する方式の場合、補強部材としてガラス基板を用いるため、太陽電池モジュールの単位面積当たりの重量が重くなるという課題がある。
【0008】
そこで、本願発明者は、上記したEVA樹脂シートを用いた封止方式に代えて、以下の封止方式について検討した。すなわち、電気的に接続された複数の太陽電池セルを基板上に配置して、前記複数の太陽電池セル上から塗布装置を用いて液状(ペースト状)の樹脂を塗布する。そして複数の太陽電池セルおよび配線材が液状の樹脂により覆われた状態で樹脂を硬化させて複数の太陽電池セルおよび配線部材を封止する。この封止方式の場合、前記した真空ラミネート加工を含む封止方式と比較して、組立工程を単純化することができるので、タクトタイムを短縮することができる。また、封止用の樹脂を予めシート状に形成しておく必要がないので、封止用樹脂の選択の自由度が向上する。このため、例えば、封止用の樹脂を硬化させることで、太陽電池モジュールに要求される強度を確保することができれば、ガラス基板を取り付けなくても良いので太陽電池モジュールを軽量化することができる。
【0009】
ところが、本願発明者がさらに検討を行った結果、液状(ペースト状)の樹脂を塗布して封止する方式では、以下の課題が生じることが判った。すなわち、液状の樹脂を塗布する場合、太陽電池セルから外部に電力を取り出すための引き出し配線を通すための貫通孔を基板に形成しておく必要があるが、前記貫通孔から硬化前の樹脂が漏れ出てしまうことが判った。硬化前の樹脂が貫通孔から漏れ出た場合、塗布装置が汚染される。また、引き出し配線が漏れ出た樹脂により封止されてしまう場合がある。また、漏れ出し量によっては、基板上の樹脂量が不足して、太陽電池セルの封止不良の原因となる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電変換装置を効率的に組み立てる技術を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的な形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の一実施の形態である光電変換装置の製造方法は、(a)光電変換部を備える複数の太陽電池素子を、複数の配線部材を介して電気的に接続し、組立体を形成する工程を有している。また、(b)表面、前記表面の反対側に位置する裏面、および前記表面および前記裏面のうち一方から他方まで貫通する複数の貫通孔を有する基板を準備して、前記表面側に前記組立体を配置する工程を有している。また(c)前記組立体の前記複数の配線部材を前記基板の前記表面側から前記裏面側に電気的に引き出す工程を有している。また、(d)前記(c)工程の後、前記基板の前記表面側に液状の樹脂を塗布し、前記組立体を封止する工程を有している。また、(e)前記液状の樹脂を硬化させる工程を有している。ここで、前記基板の前記複数の貫通孔には、前記(d)工程の前に複数の部材が埋め込まれているものである。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0015】
すなわち、光電変換装置を効率的に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態である光電変換装置に組み込まれる太陽電池セルの基本構造を示す拡大斜視図である。
【図2】図1に示す太陽電池セルの表面側の電極のレイアウトの一例を示す平面図である。
【図3】図1に示す太陽電池セルの裏面側の電極のレイアウトの一例を示す平面図である。
【図4】図1〜図3に示す太陽電池セルを複数個組み込んだ太陽電池モジュールの受光面側を示す平面図である。
【図5】図4のA−A線に沿った拡大断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿った拡大断面図である。
【図7】図4〜図6に示す光電変換装置の製造フローの概要を示す説明図である。
【図8】図7に示す太陽電池セル連結工程で得られる組立体を示す平面図である。
【図9】図7に示す基板準備工程で準備する基板を示す平面図である。
【図10】図9に示す貫通孔周辺の拡大断面図である。
【図11】図9に示す導体柱および貫通孔の平面形状を示す拡大平面図である。
【図12】図9〜図11に示す貫通孔に導体柱を圧入する工程を示す拡大断面図である。
【図13】図9に示す基板上に図8に示す組立体を配置した状態を示す平面図である。
【図14】図13のC部の拡大平面図である。
【図15】図13のD−D線に沿った断面図である。
【図16】図15に示す基板上に液状の樹脂を塗布した状態を示す断面図である。
【図17】図4に対する変形例である太陽電池モジュールを示す平面図である。
【図18】図17のA−A線に沿った拡大断面図である。
【図19】図17のB−B線に沿った拡大断面図である。
【図20】図7に対する変形例である光電変換装置の製造フローの概要を示す説明図である。
【図21】図20に示す連結セル配置工程を示す断面図である。
【図22】図20に示す埋め込み部材挿入工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0018】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0019】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。
【0020】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0021】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0022】
また、本願において用いる用語の意味を説明する。太陽電池セルとは、光エネルギーを電気的エネルギーに変換する光電変換部、および前記光電変換部で発生した電力を外部に取り出すための電極を備えた太陽電池素子である。また、太陽電池モジュールとは、配線材を介して複数の太陽電池セルを電気的に接続された組立体を樹脂封止したモジュールである。また、太陽電池パネルとは、太陽電池モジュールに電力取り出し用の端子群(ジャンクションボックスと呼ばれる)を取り付けたものである。また、光電変換装置、または太陽電池装置と記載した時は、特に異なる意味で用いる旨を記載した場合を除き、太陽電池モジュールまたは太陽電池パネルを意味する。
【0023】
また、以下の実施の形態では、光電変換装置の適用例として、本願発明者が具体的に検討した単結晶シリコン系または多結晶シリコン系の太陽電池を取り上げて詳しく説明する。
【0024】
(実施の形態1)
<太陽電池セルの構造>
図1は、本実施の形態の光電変換装置に組み込まれる太陽電池セルの基本構造を示す拡大斜視図である。また、図2は、図1に示す太陽電池セルの表面側の電極のレイアウトの一例を示す平面図、図3は図1に示す太陽電池セルの裏面側の電極のレイアウトの一例を示す平面図である。図1に示すように、本実施の形態の太陽電池セルSCは、表面1a、表面1aの反対側に位置する裏面1bおよび表面1aと裏面1bの間に形成された光電変換部(pn接合部)を有する基板(半導体基板)1を有している。基板1は、例えば単結晶シリコンまたは多結晶シリコン(以下、単にシリコン結晶と呼ぶ)に第1の不純物濃度で第1導電型(例えばp型)とするための不純物がドープされた半導体層(p型半導体層)2を有している。また、半導体層2の表面1a側には、シリコン結晶に第1導電型とは反対の第2導電型(例えばn型)とするための不純物がドープされた半導体層(n型半導体層)3が形成されている。太陽電池セルSCでは、この半導体層2、3のpn接合部で光起電力効果を利用して入力光から電力を発生させる。つまり、半導体層2、3のpn接合部は光電変換部を構成する。また、半導体層3の表面1a側には、反射抑制膜、あるいは保護膜として機能する絶縁膜4が形成されている。この絶縁膜4は、例えば窒化珪素(Si)から成り、受光面である表面1a側から半導体層2、3に向かって入射した光が反射することを抑制する機能を有している。したがって、半導体層3の表面1a側の面を絶縁膜4で覆うことにより、入射光のエネルギーをpn接合部で効率的に吸収することができる。また、絶縁膜4は、半導体層3を例えば汚染などから保護するパッシベーション膜として機能する。したがって、半導体層3の表面1a側の面を絶縁膜4で覆うことにより、半導体層3の汚染や損傷を防止ないしは抑制することができる。一方、半導体層2の裏面1b側には、第1の不純物濃度よりも高い第2の不純物濃度で第1導電型(例えばp型)の不純物がドープされた半導体層(p型半導体層、逆電界領域)5が形成されている。なお、半導体層5は、半導体層5の裏面1b側に形成された面電極20aに含まれる例えばアルミニウムが熱拡散により半導体層2に分散することで形成される。この半導体層5は、pn接合部で発生したキャリアが裏面1bで再結合により焼失することを抑制するための逆電界領域であり、BSF(Back Surface Field)層と呼ばれる。
【0025】
また、基板1の表面1aには表面電極(電極)10が、基板1の裏面1bには裏面電極(電極)20がそれぞれ形成されている。表面電極10には、ある方向(例えば図1、図2ではY方向)に沿って延びる複数(多数)のフィンガ電極(電極、電極配線)10aと、フィンガ電極10aが延びる方向と交差(直交)する方向(例えば図1、図2ではX方向)に沿って延びるバス電極10bを含んでいる。フィンガ電極10aは、裏面電極20との間で発生した電力を取り出すための電極であって、図2に示すように表面1a全体に分布するように略等間隔で配置されている。一方、バス電極10bはフィンガ電極10aが取り出した電力を集約して外部に伝送するための集合配線(集合電極)であって、図2に示すように、複数のフィンガ電極10aと接続され、フィンガ電極10aよりも太い線幅で形成されている。例えば本実施の形態では、複数のフィンガ電極10aはそれぞれ50μm〜100μm程度の線幅で形成され、バス電極10bは1.5mm〜3mm程度の線幅で形成されている。集合配線であるバス電極10bの線幅を太くすることにより、伝送経路の内部インピーダンスを低減できるので電力伝送時の損失を低減することができる。また、伝送経路の内部インピーダンスを低減する観点から複数のバス電極10bを配置することが好ましい。図2に示す例では、複数(例えば2本)のバス電極10bが形成されている。
【0026】
一方、裏面電極20には、ある方向(例えば図1、図3ではX方向)に沿って延びる複数(図3では3個)の面電極(電極)20aと、複数の面電極20aの間に配置され、面電極20aと同じ方向(例えば図1、図3ではX方向)に沿って延びるバス電極20bを含んでいる。面電極20aは、複数のフィンガ電極10aとの間で発生した電力を取り出すための電極であって、図3に示すようにバス電極20bが配置された領域を除き、裏面1bの全体を覆うように配置されている。一方、バス電極20bは面電極20aが取り出した電力を集約して外部に伝送するための集合配線(集合電極)であって、図3に示すように、複数の面電極20aと接続され、フィンガ電極10a(図2参照)よりも太い線幅で形成されている。例えば本実施の形態では、バス電極20bは2mm〜4mm程度の線幅で形成されている。また、伝送経路の内部インピーダンスを低減する観点から複数のバス電極20bを配置することが好ましい。図3に示す例では、複数(例えば2本)のバス電極20bが形成されている。
【0027】
<光電変換装置>
次に、上記の太陽電池セルSCを複数個組み込んだ光電変換装置の構造について説明する。図4は図1〜図3に示す太陽電池セルを複数個組み込んだ太陽電池モジュールの受光面側を示す平面図、図5は図4のA−A線に沿った拡大断面図、図6は図4のB−B線に沿った拡大断面図である。
【0028】
上記のように太陽電池セルSCは、受光面である表面1a側から受光し、その光のエネルギーを光電変換部であるpn接合部で吸収して電力を生成する。言い換えれば、光エネルギーを電気的エネルギーに変換する。そして、生成した電力を表面電極10および裏面電極20を介して取り出して太陽電池セルSCの外部に伝送する。また、図4〜図6に示すように、複数の太陽電池セルSCを直列接続あるいは並列接続で電気的に接続し、モジュール化して、太陽電池モジュール(光電変換装置)30とする。このように複数の太陽電池セルSCをモジュール化することで、所望の電力量を得ることができる。図4では、行方向に4個、列方向に4個、合計16個の太陽電池セルSCを行列状(マトリクス状)に配置して、それぞれ直列接続により電気的に接続した例を示している。
【0029】
図4〜図6に示す太陽電池モジュール30は、配線部材32を介して複数の太陽電池セルSCを電気的に接続した組立体31を備えている。この組立体31は構造的に損傷し易いので、太陽電池モジュール30は、組立体31が樹脂封止されることにより形成されている。詳しくは、図5および図6に示すように、組立体31は、樹脂封止面である表面33aおよび表面33aの反対側の裏面33bを有する基板33上(基板33の表面33a側)に配置され、基板33の表面33a側を覆うように形成された樹脂体34により封止されている。複数の太陽電池セルSCを樹脂封止することで、太陽電池セルSCが外力により損傷することを防止ないしは抑制することができる。
【0030】
組立体31を構成する配線部材32は、複数の太陽電池セルSCを電気的に接続する帯状の導体膜であって、例えば銅膜の表面に接合部材として半田膜が形成されて成る。また、配線幅(配線部材32の延在方向に対して直交する方向の長さ)は例えば2mm〜3mm程度、厚さは例えば100μm程度である。図5、図6に示すように複数の太陽電池セルSCを直列接続する場合、一つの太陽電池セルSCの裏面電極20を他の太陽電池セルSCの表面電極10と接続し、これを順次繰り返す必要がある。このため、配線部材32は隣り合う太陽電池セルSCの間で傾斜させる必要がある。配線部材32に薄い導体膜を用いれば、配線部材32を変形させ易くすることができるので、容易に直列接続することができる。また、基材導体膜である銅膜の表面に接合部材として半田膜を形成することで、太陽電池セルSCのバス電極10b、20bと容易に接合することができる。また、半田膜を溶融させてバス電極10b、20bと接合すれば、配線部材32がバス電極10b、20bから剥離し難くなるので、電気的接続信頼性を向上させることができる。
【0031】
また、図4〜図6に示すように複数の太陽電池セルSCは、複数の配線部材32を介して電気的に接続され、複数の太陽電池セルSCおよび複数の配線部材32により形成される通電経路は、通電経路中に設けられた配線引出部32aにおいて、導体柱35と電気的に接続されている。導体柱35は、複数の太陽電池セルSCおよび複数の配線部材32により形成される通電経路を太陽電池モジュール30の外部に引き出すための引出配線であって、太陽電池モジュール30には、2個以上の導体柱35が形成されている。そして、導体柱35の一方を正極、他方を負極の引き出し配線とすることで、複数の太陽電池セルSCで生成した電力を太陽電池モジュール30の外部に取り出すことができる。導体柱35は、配線部材として用いるので導電性が要求されるため、例えば、銅や鉄などの金属材料で形成する。
【0032】
また、太陽電池モジュール30の基板33は、組立体31を樹脂封止する際に用いる基材であって、例えば、樹脂から成る。図5、図6に示すように本実施の形態では複数の太陽電池セルSCは、受光面とは反対側に配置される裏面電極20が基板33と対向するように配置するので、基板33には光(太陽光)の透過性は要求されず、太陽電池モジュール30の強度や軽量化を図る観点から好ましい材料を選択することができる。本実施の形態では、例えば、ガラスエポキシ樹脂を板状に成形し、基板33としている。ただし、太陽電池セルSCの基板33との対向面側を受光面とする場合(例えば両面受光タイプ)には、基板33の光の透過特性が光電変換装置の光電変換効率に大きな影響を与える。したがって、この場合には、ガラスエポキシ樹脂よりも太陽光の透過特性が高い(太陽光を吸収し難い)材料(例えばガラスなど)で基板33を形成することが好ましい。
【0033】
また、基板33には複数の導体柱35を挿入するための複数の貫通孔35aが形成されている。貫通孔35aは、基板33の表面33aおよび裏面33bのうちの一方から他方までを貫通するように形成され、貫通孔35aの開口部に導体柱35が埋め込まれている。貫通孔35aは導体柱35の形状に倣って形成され、本実施の形態では、円柱形の導体柱35に対して貫通孔35aは円筒形に形成される。また導体柱35の円の直径は貫通孔35aの円の直径に対して同じ、あるいは僅かに大きくなるように形成され、貫通孔35a内に導体柱35が圧入されることで挿入されている。言い換えれば、導体柱35は所謂、嵌め合い構造により貫通孔35a内に保持される。
【0034】
また基板33の表面33a側には組立体31が配置され、表面33a側には複数の太陽電池セルSCと複数の配線部材32を覆うように樹脂体34が形成されている。樹脂体34は、組立体31と基板33の間にも廻り込んでおり、組立体31は樹脂体34により封止されている。なお、図示は省略したが、組立体31と基板33の間に確実に樹脂体34を廻り込ませるため、太陽電池セルSCよりも平面積が小さいスペーサ部材(図示は省略)を組立体31と基板33の間に配置することができる。
【0035】
図5、図6に示すように本実施の形態では樹脂体34は複数の太陽電池セルSCの受光面を覆うように形成される。このため、樹脂体34の光の透過特性が太陽電池モジュール30の光電変換効率に大きな影響を与える。また、太陽電池モジュール30の組立効率の観点から、樹脂体34は容易、かつ、確実に組立体31を封止できる材料で構成することが好ましい。そこで、本実施の形態では、ウレタン樹脂、詳しくは、主剤としてのポリオール化合物と硬化剤としてのイソシアネート化合物を混合することで硬化させたウレタン樹脂で、樹脂体34を構成している。上記のウレタン樹脂で樹脂体34を構成することで、太陽電池セルSCの受光面を樹脂体34で覆うことによる光電変換効率の低下を抑制することができる。また、詳細は後述するが、主剤と硬化剤を混合して硬化させる樹脂を用いることで、容易、かつ、確実に組立体31を封止することができるので、太陽電池モジュール30の組立効率を向上させることができる。
【0036】
このように太陽電池モジュール30は基板33を受光面の反対側に配置することで、基板33の材料選択の自由度を向上させることができる。この結果、太陽電池モジュール30の軽量化、あるいは強度向上を図ることができる。
【0037】
<光電変換装置の製造方法>
次に、前記した太陽電池モジュール30の製造方法について説明する。前記した太陽電池モジュール30は、図7に示すフローに沿って製造される。図7は、図4〜図6に示す光電変換装置の製造フローの概要を示す説明図である。以下フローの概要について説明する。なお、光電変換装置の製造方法は、太陽電池セルSCを製造する工程、および複数の太陽電池セルSCをモジュール化する工程に大別されるが、太陽電池セルSCの製造工程は図1を用いて簡単に説明する。
【0038】
<太陽電池セル形成工程>
まず、太陽電池セル形成工程では、表面1a(図1参照)、表面1aの反対側に位置する裏面1b(図1参照)、および表面1aと裏面1bの間に形成された太陽電池本体(pn接合部)を有する基板1を準備する。本工程において準備する基板1は、図1に示す半導体層2、3および絶縁膜4が形成されている。ただし、本実施の形態では、図1に示す半導体層5は図7に示す裏面電極形成工程に含まれる焼成工程(裏面電極焼成工程)においてアルミニウムが熱拡散することで形成されるため、基板準備工程の段階では、図1に示す半導体層5が配置される領域にも半導体層2が配置されている。なお、基板1を準備する、とは、基板1を製造するという意味の他、外部で製造された基板1を購入し、準備することも含んでいる。
【0039】
基板1の製造方法について簡単に説明すると、例えば以下の工程で製造される。基板1の製造工程には、まず、半導体層2を構成する半導体基板を準備する。本実施の形態では、例えば導電型がp型の結晶シリコン基板を準備する。次に、p型の結晶シリコン基板の一方の面にn型の半導体層3を堆積させてpn接合部を形成する。さらに、半導体層3の表面1a側(pn接合部の反対面側)に例えば窒化珪素(Si)から成る絶縁膜4を堆積させて半導体層3を覆うことで、図1に示す基板1(但し、半導体層5は除く)が形成される。
【0040】
次に、裏面電極形成工程では、基板1の裏面1bに面電極20aの原料ペースト(面電極材、アルミニウムペースト)およびバス電極20bの原料ペースト(バス電極材、銀ペースト)を塗布した後、焼成(アニール)することで、図1に示す面電極20aおよびバス電極20bを形成する。またこの時、面電極材中のアルミニウムが基板1(詳しくは半導体層2)に熱拡散してP+層となり半導体層(BSF層)5が形成される。
【0041】
次に、裏面電極20が形成された基板1を反転させた(反転工程)後、表面電極形成工程では図1に示すフィンガ電極10aおよびバス電極10bを形成する。本工程では、基板1の表面1aにフィンガ電極10aの原料ペースト(フィンガ電極材、銀ペースト)およびバス電極20bの原料ペースト(バス電極材、銀ペースト)を塗布した後、焼成(アニール)することで、図1に示すフィンガ電極10aおよびバス電極10bを形成する。以上の工程により、図1〜図3に示す太陽電池セルSCが得られる。
【0042】
<太陽電池セルモジュール化工程>
次に、複数の太陽電池セルSCをモジュール化する工程について説明する。まず、図7に示す太陽電池セル連結工程では、図8に示すように複数の太陽電池セルSCを、複数の配線部材32を介して電気的に接続し、組立体31を形成する。図8は、図7に示す太陽電池セル連結工程で得られる組立体を示す平面図である。本工程では、太陽電池セルSCのバス電極10b、20b(図1参照)のうちの一方(例えば表面電極10のバス電極10b)に、帯状に延びる導電膜である配線部材32の一端部を接合する。配線部材32の表面には、半田材からなるめっき膜(半田めっき膜)が形成されており、この半田めっき膜を介して、バス電極10b、20bと配線部材32を電気的に接続することができる。次に、太陽電池セルSCのバス電極10b、20b(図1参照)のうちの一方(例えば表面電極10のバス電極10b)に配線部材32の一端部が接合された状態で、太陽電池セルSCを整列配置し、太陽電池セルSCのバス電極10b、20b(図1参照)のうちの他方(例えば裏面電極20のバス電極20b)に配線部材32の他端部を接合する。これにより、複数の太陽電池セルSCが直列に接続される。図8に示すように行列状に太陽電池セルSCを配置する場合には、例えば行毎に直列接続した複数の中間組立体31aを形成し、この複数の中間組立体31aの配線部材32同士を接続することで、組立体31が得られる。また、複数の太陽電池セルSCおよび複数の配線部材32により形成される通電経路と外部とを電気的に接続するための配線引出部32aも本工程で形成される。
【0043】
また、図7に示す基板準備工程では、図9、図10に示すように表面33a、表面33aの反対側に位置する裏面33b、表面33aおよび裏面33bのうち一方から他方まで貫通する複数の貫通孔35a、および複数の貫通孔35aに挿入されて基板33に保持される複数の導体柱35を有する基板33を準備する。図9は、図7に示す基板準備工程で準備する基板を示す平面図、図10は図9に示す貫通孔周辺の拡大断面図である。また、図11は図9に示す導体柱および貫通孔の平面形状を示す拡大平面図、図12は、図9〜図11に示す貫通孔に導体柱を圧入する工程を示す拡大断面図である。
【0044】
図9に示す複数の貫通孔35aの開口形状は複数の導体柱35の形状に倣って形成される。例えば本実施の形態では図11に示すように、導体柱35は円柱形状を成し、貫通孔35aは、導体柱35の形状に倣った円筒形状を成す。また導体柱35の円の直径D1は貫通孔35aの開口径(円の直径)D2に対して同じ、あるいは僅かに大きくなるように形成されている。図11では直径D1の方が開口径D2よりも僅かに大きい例を示している。このように貫通孔35aの開口径D2が狭いので、導体柱35を貫通孔35aに挿入する場合には、図12に示すように圧入治具40を用いて導体柱35を貫通孔35a内に圧入する。圧入治具40は特に限定されないが、例えばハンマ、あるいは圧縮空気を用いて導体柱35に押圧力を付与する装置を用いることができる。このように導体柱35の円の直径D1が貫通孔35aの開口径(円の直径)D2に対して同じ、あるいは僅かに大きくなるように形成することで、圧入された導体柱35と貫通孔35aの間に隙間が生じることを防止ないしは抑制できる。このため、図7に示す樹脂塗布工程で液状の樹脂を塗布した場合でも貫通孔35aから樹脂が漏れ出すことを防止ないしは抑制できる。また、導体柱35が基板33に保持されるので、基板33のハンドリングが容易になる。
【0045】
また、図12に示すように、導体柱35の高さH1は、貫通孔35aの高さH2よりも大きくなるように形成され、図10に示すように導体柱35の一方の端部が基板33の表面33a側において突出していることが好ましい。導体柱35の一方の端部を基板33の表面側に突出させることで、図7に示す導体柱接合工程で、配線部材32と導体柱35を容易に接合することができる。
【0046】
また、前記したように導体柱35は複数の太陽電池セルSC(図5参照)で生成した電力を太陽電池モジュール30(図5参照)の外部に取り出す引出配線として用いるので、確実に基板33の裏面側に引き出すことが好ましい。この観点から、図10に示すように導体柱35の他方の端部は、基板33の裏面33bと同じ高さになっている、または裏面33bにおいて突出していることが好ましい。図10では、裏面33bにおいて導体柱35の端部が突出している例を示している。
【0047】
次に、図7に示す連結セル配置工程では、図13に示すように基板33の表面33a上に組立体31を配置(搭載)する。図13は、図9に示す基板上に図8に示す組立体を配置した状態を示す平面図、図14は図13のC部の拡大平面図、図15は図13のD−D線に沿った断面図である。
【0048】
本工程では、図14に示すように、配線部材32の一部(図14では配線引出部32a)が導体柱35と重なるように配置する。この時、導体柱35と配線部材32の電気的接続信頼性を向上させる観点から、導体柱35と配線部材32の接触面積を広くすることが好ましい。また、導体柱35のインピーダンス成分を低減する観点から導体柱35の円の直径D1を広くすることが好ましい。したがって本実施の形態では、導体柱35の円の直径D1は、配線部材32の幅W1よりも広くなっている。
【0049】
また、本工程では、図15に示すように複数の太陽電池セルSCの受光面の反対側に位置する裏面1bが、それぞれ基板33の表面33aと対向するように配置する。言い換えれば、本工程では複数の太陽電池セルSCの受光面が基板33とは反対側を向くように基板33上に組立体31を配置する。このように、複数の太陽電池セルSCの受光面が基板33の反対側を向くように組立体31を配置すれば、基板33には光透過性が要求されないため、強度や軽量化を図る観点、あるは製造コストの観点から好ましい材料を選択することができる。
【0050】
次に、図7に示す導体柱接合工程では、図15に示す導体柱35と配線部材32を接合し、電気的に接続する。本工程では、例えば配線部材32の表面に形成された半田膜を溶融させて導体柱35と接合する。また、予め導体柱35に半田膜を形成しておけば、導体柱35と配線部材32の電気的接続信頼性をさらに向上させることができる。また、本実施の形態によれば前記したように導体柱35の一方の端部を基板33の表面側に突出させることで、図7に示す導体柱接合工程で、配線部材32と導体柱35を容易に接合することができる。
【0051】
次に、図7に示す樹脂塗布工程では、図16に示すように基板33の表面33a側に液状の樹脂34aを塗布し、組立体31を封止する。図16は、図15に示す基板上に液状の樹脂を塗布した状態を示す断面図である。本工程では、塗布装置41を用いて基板33の表面33a上に樹脂34aを塗布する。塗布装置41は、例えば塗布ヘッドに形成された開口部(吐出口)41aから塗布材料を吐出しながら、基板と開口部41aの相対的位置関係を移動させることにより塗布する吐出装置であって、例えばスリットコータと呼ばれる装置を用いることができる。また、組立体31を樹脂34aで封止するためには、組立体31と基板33の間にも樹脂34aを回り込ませる必要があるので、塗布する段階では樹脂34aの粘度が低いことが好ましい。樹脂34aを低粘度とすることで、組立体31と基板33の間に樹脂34aを回り込ませることができる。本実施の形態では、例えば主剤としてのポリオール化合物と硬化剤としてのイソシアネート化合物を混合して塗布し、塗布後に硬化させてウレタン樹脂を形成する方法を適用している。このように複数液(例えば主剤と硬化剤)を混合させる複数液混合方式で樹脂体34(図5参照)を形成する場合、硬化前の樹脂34aの粘度を低く抑えることができる。
【0052】
ここで、前記したように組立体31と基板33の間に樹脂34aを回り込ませる観点からは、樹脂34aの粘度を低くすることが好ましいが、樹脂34aの粘度が低い場合には新たな課題が発生する。すなわち、基板33に貫通孔が形成されている場合、孔が塞がれていなければ貫通孔から硬化前の樹脂34aが漏れ出てしまう。硬化前の樹脂34aが貫通孔から漏れ出た場合、塗布装置41が汚染される。また、引出配線が樹脂34aに封止されてしまう場合がある。また、漏れ出し量によっては、基板33上の樹脂34aの量が不足して、組立体31の一部が露出してしまう場合がある。
【0053】
そこで、本実施の形態では、図16に示すように貫通孔35aの開口形状は導体柱35の形状に倣って形成され、導体柱35は貫通孔35aに圧入されることにより基板33に保持される。言い換えれば、導体柱35は、貫通孔35aとの間に隙間が生じることを抑制するように貫通孔35aに埋め込まれている。このため、本実施の形態によれば、貫通孔35aから硬化前の樹脂34aが漏れ出てしまうことを防止ないしは抑制することができる。したがって、塗布装置41の汚染を防止ないしは抑制できる。また、引出配線である導体柱35が封止されることを抑制し、特に外部との接続面である基板33の裏面33b側において、導体柱35を確実に露出させることができる。また、基板33上の樹脂34aの量が不足して、組立体31の一部が露出することを防止ないしは抑制できる。
【0054】
次に、図7に示す樹脂硬化工程では、基板33上で組立体31を封止する樹脂34aを硬化させて、図4から図6に示す太陽電池モジュール30を取得する。本工程では、樹脂34aを硬化温度(例えば30℃〜80℃程度)まで加熱した後、放置することで樹脂34aが硬化して、図5および図6に示す樹脂体34(本実施の形態ではウレタン樹脂)にする。硬化後の樹脂体34は、基板33上で封止された組立体31を外力の印加から保護するために必要な強度を備えている。また、複数の太陽電池セルSCの受光面に太陽光を到達させるために必要な透明度(太陽光に対する透過性)を備えている。
【0055】
図4〜図6に示す太陽電池モジュール30は、上記の工程により取得できるが、太陽電池パネル(光電変換装置、図示は省略)の製造方法では、上記により得られた太陽電池モジュール30の導体柱35に電力取り出し用の配線(図示は省略)を接合し、ジャンクションボックスと呼ばれる端子群と電気的に接続する。これにより、太陽電池モジュール30内で変換された電力を外部に取り出すことが可能となる。
【0056】
(実施の形態2)
前記実施の形態では、貫通孔35a内に導体柱35を埋め込むことで、貫通孔35aを塞ぎ、かつ、基板33の表面33a側から裏面33b側に電力を引き出す実施態様について説明した。本実施の形態では、変形例として、配線を引き出すために基板に形成した貫通孔に基板33と同じ材料からなる埋め込み部材を埋め込む実施態様について説明する。なお、本実施の形態では、前記実施の形態との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。図17は図4に対する変形例である太陽電池モジュールを示す平面図、図18は図17のA−A線に沿った拡大断面図、図19は図17のB−B線に沿った拡大断面図である。
【0057】
図17から図19に示す太陽電池モジュール50は、配線部材32の一部(配線引出部32a)が表面33aおよび裏面33bのうち一方から他方まで貫通する貫通孔51aの側壁に沿って裏面33b側に引き出されている点で前記実施の形態1で説明した太陽電池モジュール30(図4から図6参照)と相違する。また、貫通孔51aには、基板33と同じ材料(例えばガラスエポキシ樹脂)から成る埋め込み部材51が挿入されている点で前記実施の形態1で説明した太陽電池モジュール30と相違する。基板33と同じ材料で貫通孔51aを埋めることで、基板33の外観を一様にすることができる。
【0058】
また、上記のように配線部材32の一部を裏面33b側から引き出すことで、前記実施の形態1の太陽電池モジュール30の製造工程と比較して製造工程を簡略化することができる。図20は図7に対する変形例である光電変換装置の製造フローの概要を示す説明図である。また、図21は図20に示す連結セル配置工程を示す断面図である。また図22は、図20に示す埋め込み部材挿入工程を示す断面図である。
【0059】
図20と図7を比較して判るように、本実施の形態では、配線部材32(図18、図19参照)の一部を基板33(図18、図19参照)の裏面33b(図18、図19参照)側に引き出すので、引き出し用の導電性部材を別途設ける必要がない。このため、図7に示す導体柱接合工程を省略することができる。詳しくは、本実施の形態では、図20に示す連結セル配置工程において、図21に示すように配線引出部32aの端部と、貫通孔51aとが重なるように組立体31が基板33の表面33a側に配置される。そして、連結セル配置工程の後、埋め込み部材挿入工程として、図22に示すように基板33の表面33a側から貫通孔51aに向かって複数の埋め込み部材51を挿入する。この時、配線引出部32aの端部が基板33の裏面33b側に露出するように埋め込み部材51で配線引出部32aを押し出す。これにより、貫通孔51aは、埋め込み部材51により塞がれ、かつ、配線部材32の一部(配線引出部32a)は折り曲げられ、基板33の裏面33b側に露出する。
【0060】
ここで、配線部材32を基板33の裏面33b側に確実に露出させる観点から以下の態様が好ましい。まず、貫通孔51aの開口径は、基板33の厚さよりも大きいことが好ましい。これにより、図20に示す連結セル配置工程で貫通孔51a上に重なる配線引出部32aの長さを基板33の厚さよりも大きくすることができる。また、埋め込み部材51の平面寸法は、貫通孔51aの平面寸法よりも小さくすることが好ましい。埋め込み部材51と共に配線引出部32aを貫通孔51a内に通す隙間を確保するためである。ただし、埋め込み部材51と貫通孔51aの隙間が過剰に大きくなると、樹脂塗布工程において、液状の樹脂34a(図16参照)が漏れ出る原因となるので、埋め込み部材51と貫通孔51aの隙間は、例えば100μm〜300μm程度とすることが好ましい。この程度の隙間であれば、樹脂34aの表面張力により隙間から漏れ出ることを抑制できる。また、本実施の形態では、樹脂塗布工程において、埋め込み部材51と貫通孔51aの隙間に樹脂34aが埋め込まれ、これが硬化することで、埋め込み部材51が基板33に保持される。したがって、埋め込み部材51の脱落防止の観点からは、樹脂塗布工程において、樹脂34aが埋め込み部材51と貫通孔51aの隙間に入ることが好ましい。また、埋め込み部材51および貫通孔51aの平面形状は特に限定されないが、貫通孔51aは埋め込み部材51の形状に倣って形成されていることが好ましい。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0062】
例えば、前記実施の形態では、光電変換装置の例として太陽電池モジュールに適用した実施態様について説明したが、太陽電池パネルなど、他の光電変換装置にも広く適用することができる。
【0063】
また例えば、前記実施の形態で説明した各変形例を適宜組み合わせて適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、太陽電池や太陽電池を組み込んだ電気製品に幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
1a 表面
1b 裏面
1c アライメントマーク
2、3 半導体層
4 絶縁膜(絶縁体)
5 半導体層(BSF層)
10 表面電極
10a フィンガ電極
10b バス電極
20 裏面電極
20a 面電極
20b バス電極
30、50 太陽電池モジュール(光電変換装置)
31 組立体
31a 中間組立体
32 配線部材
32a 配線引出部
33 基板
33a 表面
33b 裏面
34 樹脂体
34a 樹脂
35 導体柱
35a 貫通孔
40 圧入治具
41 塗布装置
41a 開口部
51 埋め込み部材
51a 貫通孔
SC 太陽電池セル(太陽電池素子)
D1 直径
D2 開口径
H1 高さ
W1 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光電変換部を備える複数の太陽電池素子を、複数の配線部材を介して電気的に接続し、組立体を形成する工程、
(b)表面、前記表面の反対側に位置する裏面、前記表面および前記裏面のうち一方から他方まで貫通する複数の貫通孔、および前記複数の貫通孔に挿入されて保持される複数の導体柱を有する基板を準備して、前記表面側に前記組立体を配置する工程、
(c)前記基板の前記複数の導体柱と前記組立体の前記複数の配線部材を電気的に接続する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記基板の前記表面側に液状の樹脂を塗布し、前記組立体を封止する工程、
(e)前記液状の樹脂を硬化させる工程、
を有し、
前記複数の貫通孔の開口形状は前記複数の導体柱の形状に倣って形成され、前記複数の導体柱は前記複数の貫通孔に圧入されることにより前記基板に保持されることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(b)工程では前記複数の太陽電池素子の受光面の反対側に位置する裏面が、それぞれ前記基板の前記表面と対向するように配置することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記複数の導体柱の高さは、前記複数の貫通孔の高さよりも大きくなるように形成され、
前記複数の導体柱の一方の端部は、前記基板の前記表面側において突出していることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記複数の導体柱の他方の端部は、前記基板の前記裏面と同じ高さになっている、または前記裏面において突出していることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記複数の配線部材は、帯状に延びる導体膜により形成され、
前記複数の導体柱は円柱形状を成し、
前記複数の導体柱の円の直径は、前記配線部材の配線幅よりも大きいことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
(a)光電変換部を備える複数の太陽電池素子を、複数の配線部材を介して電気的に接続し、組立体を形成する工程、
(b)表面、前記表面の反対側に位置する裏面、および前記表面および前記裏面のうち一方から他方まで貫通する複数の貫通孔を有する基板を準備して、前記表面側に前記組立体を配置する工程、
(c)前記基板の前記表面側から前記複数の貫通孔に向かって複数の埋め込み部材を挿入する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記基板の前記表面側に液状の樹脂を塗布し、前記組立体を封止する工程、
(e)前記液状の樹脂を硬化させる工程、
を有し、
前記組立体は、前記複数の太陽電池素子、前記複数の配線部材、および前記複数の配線部材と電気的に接続される複数の配線引出部を有し、
前記(b)工程では、前記複数の配線引出部の端部と、前記複数の貫通孔とがそれぞれ重なるように前記組立体が配置され、
前記(c)工程では、前記配線引出部の端部が前記基板の前記裏面側に露出するように前記埋め込み部材で前記配線引出部を押し出すことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(b)工程では前記複数の太陽電池素子の受光面の反対側に位置する裏面が、それぞれ前記基板の前記表面と対向するように配置することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記複数の配線部材は、帯状に延びる導体膜により形成されることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記複数の貫通孔の開口径は、前記基板の厚さよりも大きいことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記複数の埋め込み部材は、前記基板と同じ材料で形成されていることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項11】
表面、前記表面の反対側に位置する裏面、前記表面および前記裏面のうち一方から他方まで貫通する複数の貫通孔、および前記複数の貫通孔に挿入されて保持される複数の導体柱を有する基板と、
光電変換部を備える複数の太陽電池素子、および前記複数の太陽電池素子と前記複数の導体柱を電気的に接続する複数の配線部材を有し、前記基板の前記表面側に配置される組立体と、
前記基板の前記表面側に形成され、前記組立体を封止する樹脂体と、
を有し、
前記複数の貫通孔の開口形状は前記複数の導体柱の形状に倣って形成され、前記複数の導体柱は前記複数の貫通孔に圧入されることにより前記基板に保持されることを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
表面、前記表面の反対側に位置する裏面、前記表面および前記裏面のうち一方から他方まで貫通する複数の貫通孔、および前記複数の貫通孔に挿入される複数の埋め込み部材を有する基板と、
光電変換部を備える複数の太陽電池素子、および前記複数の太陽電池素子と電気的に接続する複数の配線部材を有し、前記基板の前記表面側に配置される組立体と、
前記基板の前記表面側に形成され、前記組立体を封止する樹脂体と、
を有し、
前記組立体は、前記複数の太陽電池素子、前記複数の配線部材、および前記複数の配線部材と電気的に接続される複数の配線引出部を有し、
前記複数の配線引出部は前記埋め込み部材と共に前記複数の貫通孔にそれぞれ挿入され、前記基板の前記裏面側に露出していることを特徴とする光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−77712(P2013−77712A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216937(P2011−216937)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】