説明

光電変換装置及びその製造方法

【課題】 対象物に光を照射して応答を検出する際の検出感度の向上及びノイズの低減をはかる。
【解決手段】 不透明な配線層107,108を有する基板100上に、複数の発光素子200と複数の受光素子300を基板面内方向に離間して形成した光電変換装置であって、発光素子200及び受光素子300は基板100上に形成したバンク202,302の開口部にそれぞれ形成されている。発光層の半導体材料203〜205と受光層の半導体材料303,305とは異なり、発光素子200及び受光素子300の上部電極層207,307とは共通である。さらに、配線層107,108は、バンク202,302の開口部で規定される各領域の外側の領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、対象物に光を照射する光源と対象物からの反射光を検出するセンサを基板上に一体化した光源−センサ一体型の光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体に対して光を照射しその応答を検出するセンサや、表示装置の表面の状態を光学的に検出するセンサなどに用いる光源−センサ一体型の光電変換装置が提案されている。
【0003】
例えば、複写機の原稿読み取り装置として、基板上に薄膜発光素子と固体撮像素子(受光素子)を重ならない領域に独立に形成し、発光素子から基板と反対側に取り出した光を対象物に照射し、対象物からの反射光を受光素子で検出する光源一体型の固体撮像装置が提案されている。この装置では、発光素子と受光素子を同一基板上に形成することで、対象物の状態を精度良く検出することができる。
【0004】
しかし、この種の装置にあっては、基板上に発光素子と受光素子を独立に形成するために、各々の構成に制約が生じると共に、その製造に多大な手間が掛かる。また、例えば受光素子を形成した後に発光素子を形成する場合、発光素子の形成の際に、既に形成された受光素子の上層がダメージを受けて素子特性の劣化を招くおそれがある。特に、有機系半導体材料を用いた場合にこの問題は顕著に現れる。さらに、発光素子と受光素子を同一基板上に形成した場合、発光素子からの光の一部がデバイス内の各層で反射して受光素子に入射し、これが検出ノイズの増大を招くことになる。
【0005】
また、生体に近赤外光を照射し、その応答を検出して生体内の情報を得る近赤外分光法として、例えばパルスオキシメータが実用化されている。しかし、生体内の近赤外光は、可視光よりは透過し易いが散乱が大きいため、入射光に対する反射光の検出では、光量が数%以下になり高感度での検出が必要である。このため、近赤外光に感度が高い受光素子を得るのに、受光素子として一般的な微結晶SiのPINフォトダイオードではバンドギャップの点から不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−153449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、対象物に光を照射して応答を検出する際の検出感度の向上及びノイズの低減をはかり得る光源−センサ一体型の光電変換装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態は、不透明な配線層を有する基板上に、複数の発光素子と複数の受光素子を基板面内方向に離間して形成した光電変換装置であって、前記発光素子及び前記受光素子は前記基板上に形成したバンクの開口部にそれぞれ形成されている。前記発光素子の発光層の半導体材料と前記受光素子の受光層の半導体材料とは異なり、前記発光素子の上部電極層と前記受光素子の上部電極層とは共通である。そして、前記基板上の不透明な配線層は、前記バンクの開口部で規定される各領域の外側の領域に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の素子配列例を示す模式図。
【図2】図1の光電変換装置の断面構成を示す模式図。
【図3】図1の光電変換装置における素子構造を示す断面図。
【図4】図1の光電変換装置における画素部の回路構成を示す図。
【図5】図3の素子構造及び図4の回路構成に対応する素子の平面レイアウトを示す図。
【図6】第2の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の素子構造を示す断面図。
【図7】図6の素子構造に対応する素子の平面レイアウトを示す図。
【図8】図6の光電変換装置における画素部と溝との関係を示す図。
【図9】図6の光電変換装置の製造工程の前半を示す断面図。
【図10】図6の光電変換装置の製造工程の後半を示す断面図。
【図11】第3の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の画素部の回路構成を示す図。
【図12】図11の回路構成に対応する素子の平面レイアウトを示す図。
【図13】図11の光電変換装置における画素部と溝との関係を示す図。
【図14】図11の光電変換装置における画素部と溝との関係の別の例を示す図。
【図15】第4の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の画素部の平面レイアウトを示す図。
【図16】図15の光電変換装置における素子構造を示す断面図。
【図17】図15の光電変換装置における画素部と溝との関係を示す図。
【図18】図15の光電変換装置における画素部と溝との関係の別の例を示す図。
【図19】図12の光電変換装置における画素部と溝との関係の別の例を示す図。
【図20】図12の光電変換装置における画素部と溝との関係の更に別の例を示す図。
【図21】第5の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の基本素子構成を示す断面図。
【図22】第6の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の素子構造を示す断面図。
【図23】第7の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の素子構造を示す断面図。
【図24】第8の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の素子構造を示す断面図。
【図25】第9の実施形態の光源−センサ一体型の光電変換装置における画素部の回路構成を示す図。
【図26】第10の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置における画素部の回路構成を示す図。
【図27】第11の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置における画素部の回路構成を示す図。
【図28】図27の光電変換装置における画素部の平面レイアウトを示す図。
【図29】図27の光電変換装置における素子構造を示す断面図。
【図30】第2の実施形態の光電変換装置の受光層に用いた半導体材料の分子構造を示す図。
【図31】第2の実施形態の光電変換装置の発光層に用いたドーピング材料の分子構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の光電変換装置を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わる光源−センサ一体型の光電変換装置の素子配列例を示す模式図である。
【0012】
本実施形態の光電変換装置は、基板10上に発光素子20と受光素子30をマトリクス状に配置して構成されており、対象物への光の照射と、対象物に照射した光の応答の2次元的な検出が可能となっている。なお、図1では、発光素子20と受光素子30が列毎に交互に並んでいるが、この並び方は受光素子30が多くなることも、発光素子20が多くなることも可能である。
【0013】
図2は、図1の光電変換装置(センサアレイ)の断面構成を示す模式図である。基板10の上に発光素子と受光素子が交互に配置されている。図中の21,22が発光素子であり、31,32,33が受光素子である。発光素子21,22及び受光素子31,32,33を覆うように、別の基板11とその間を封着する封着層12が形成されている。これにより、外部からの機械的力や水分、酸素などの化学的影響から素子を保護するようになっている。基板11には気体を透過させにくいバリア層を形成しておくことができ、封着層12もバリア性の高い材料を選択することができる。
【0014】
発光素子21からの光を対象物13に照射し、その応答を受光素子31,32,33で検出することで、対象物13内を透過、散乱した情報が検出される。発光素子21の隣接画素(受光素子)31だけではなく、離れた画素32,33での受光により、深い光路を通った情報を得ることができる。このため、発光素子20と受光素子30の位置関係の適切な組合せを取ることで、深さ方向の情報を含む様々な生体の情報を獲得することができる。なお、離れた位置の受光素子の信号は弱くなることから、受光素子を高感度で動作させ、不要な光によるノイズを防ぐ必要がある。
【0015】
また、別の期間には発光素子21は発光させず発光素子22を発光させて周辺の受光素子で受光することで、対象物13の情報を2次元的に獲得することができる。これは、特に生体センサとして適用でき、各受光素子に入る光の通過する光路14の情報、生体センサでは例えば酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンの量に対応した光の強度が反射光として得られる。
【0016】
760nmと840nmといったマルチ波長の発光を順次させることで、分光的に酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの量を算出することもできる。また、特に腕などの部位では曲面になっているので、センサアレイがフレキシブルで曲げられることが望ましい。
【0017】
図3は、本実施形態の発光素子と受光素子を含む基本構成を示す素子構造断面図である。発光素子200からの光を透過する透明基板100の上に、アクティブマトリクス層が形成されている。即ち、基板100上に、受光素子300からの信号を読み取る薄膜トランジスタ110、発光素子200への電圧を制御する薄膜トランジスタ120を含む、駆動用,制御用,読取用の各薄膜トランジスタと、走査線,信号線,電源線などの配線107,108等が形成されている。
【0018】
ここでは、受光素子300側のトランジスタ110は、ゲート101、ゲート絶縁層102、ソース103、ドレイン104及び半導体層105から構成されたボトムゲート、ボトムコンタクトの有機薄膜トランジスタで形成されている。発光素子200側のトランジスタ120もトランジスタ110と同様の構成である。
【0019】
有機半導体は、低分子系,高分子系の材料でもよく、インクジェットなどの塗布で形成しても、蒸着で形成してもよい。薄膜トランジスタとしては有機半導体だけでなく、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、InGaZnOxなどの金属酸化物を活性層でもよく、逆スタッガ型、プレナー型など種々の構造のものを用いてもよい。特に、有機薄膜トランジスタは、フレキシブル性が高く、生体センサに適用するのに好適である。
【0020】
なお、基板100もPEN,PES,PCなどのプラスチック基板やガラス繊維と有機樹脂からなるハイブリッド基板でもよく、0.1mm以下の薄いガラス基板を含むものでもよい。有機樹脂基板などでガス透過性があって問題となる場合は、バリア層を設けたものを用いてもよい。また、静電シールド電極を配置したものでもよい。
【0021】
薄膜トランジスタ110,120が形成された基板100の上に、パッシベーション層、層間絶縁層となる絶縁層106が形成され、この絶縁層106にはアクティブマトリクス層の電極と接続するためのコンタクトホールが形成されている。絶縁層106上には、コンタクトホールを介してアクティブマトリクス層の電極と接続された透明電極201,301が形成されている。透明電極201,301はITOでもよく、ITOなどの微粒子を樹脂に分散させたものでもよく、更には有機透明導電膜でもよい。透明電極201,301及び絶縁層106の上には、発光素子200の領域を決めるバンク202と受光素子300の領域を決めるバンク302が形成されている。バンク202,302は絶縁材料で形成され、発光素子200及び受光素子300を形成すべき領域に開口が形成されている。開口におけるバンク202,302の底面は、透明電極201,301の外周よりも内側に形成されている。これにより、画素電極のエッジに起因する発光層及び受光層の有機半導体層に欠陥や電界集中による電流集中部が形成されることを防ぎ、劣化を防止することが可能となっている。
【0022】
また、バンク202,302の上部開口位置の範囲には、信号線層、ゲート層などの配線107,108を平面的に重ならないようにする。これにより、発光層からの光が、アレイ絶縁層106を伝播していったものが、信号線層、ゲート層などの配線107,108に直接当たって受光層側に伝搬するのを防ぐようになっている。本実施形態では、配線107,108(反射する電極層)を、発光層、受光層のバンク上部開口の直下から、バンクの厚さ分の距離の2倍以上離した。これにより、絶縁層106に閉じ込められた光が散乱しても受光層に入射する量を軽減でき、また発光層からの光が配線107,108で散乱して絶縁層106内に伝播するのを抑制することができる。即ち、微弱な光を受光するのに問題となる基板内での迷光を抑制し、検出感度を高くすることができる。
【0023】
受光素子300では、透明電極301の上にホール注入層303が形成され、その上に光電変換層305が形成されている。光電変換層305は有機半導体を含むとよく、有機p型半導体と有機n型半導体を適当な溶媒に溶解して塗布した後に乾燥、アニールによってp型半導体とn型半導体が微視的に相分離してp−n接合が自己組織的に形成されるバルクへテロ構造であるとよい。ホール注入層303には、PEDOT:PSS、NPBを用いることができる。なお、受光素子300の層構成として電荷輸送層や層の間の相互拡散を防ぐ中間層、電荷を閉じ込めるためのブロック層などを含めてもよい。
【0024】
一方、発光素子200は、透明電極201上にホール注入層203、ホール輸送層204、発光層205を順次積層することにより形成されている。発光層205は有機半導体とすると発光波長を種々変更できるのでよい。なお、発光素子200でも、中間層やブロック層を設けることや発光層を多層にして、より電子−正孔が結合しやすく電荷を閉じ込めるなどの工夫を行うために層構成を変化させてもよい。また、発光素子200、受光素子300を構成する各層は必ずしもバンク内だけでなく、バンクの上にも形成されてもよい。蒸着で形成する場合にはメタルマスクなどにより成膜領域を形成してバンク上で境界を持つようにすればよい。
【0025】
そして、発光素子200の電子注入層206及びカソード電極207と受光素子300の電子注入層306及びカソード電極307を共通に形成する。電子注入層206,306にはLiF,CsFなどのフッ化物や、Caなどのカルシウム化合物を用いることができ、カソード電極207,307にはAl,Agなどの金属層を用いることができる。
【0026】
電子注入層206,306は仕事関数を小さく(3eV程度)にすることが望ましいことから、前述のような酸素や水分に弱い材料を用いるとよい。発光素子200と受光素子300の電子注入層206,306及びカソード電極207,307を共通にすることで、耐性の低い材料を用いても、発光素子200と受光素子300が同時に形成できるため、受光素子300及び発光素子200のそれぞれの特性を高くすることができる。特に、受光活性層をバルクへテロ接合とすることで、受光活性層形成後の表面が安定的となり、受光層300の形成後に発光素子200の各層を形成しても、その影響を小さくすることができる。
【0027】
さらに、カソード電極207,307を全面で形成することができ、全体の抵抗を低減することができる。これにより、発光素子200での電流による電圧降下が低減されると共に、受光素子300が他の素子との電気的カップリングを低減することができ、クロストークや分布を低減することができる。また、耐環境性の低い電子注入層206,306を保護するために、図示されていない封着層や封着基板を電極形成直後に形成することができ、発光素子200及び受光素子300共に素子特性を劣化させることなく、高い性能を維持することができる。
【0028】
近赤外光の発光及び受光には、所定のバンドギャップ、遷移準位ギャップが必要であり、材料特性のバリエーションが多い有機半導体をそれぞれの素子に用いることが好適である。特に、フレキシブル基板上の素子形成では基板の耐熱性が低く、無機材料系では実現が困難であっても、有機半導体を用いることでプロセスの低温化が得られて、かつ高性能な有機半導体を用いることができ、高感度、高性能化が図られる。
【0029】
図4は、本実施形態の1つの画素部回路図を示したものである。受光素子300のアノードはトランジスタ110を介してセンサ用信号線115と接続される。トランジスタ110のゲートはセンサ用走査線114と接続される。発光素子200のアノードは駆動用トランジスタ120のドレインと接続され、駆動用トランジスタ120のソースは電源線126に接続されている。駆動用トランジスタ120のゲートには、蓄積容量122と制御用トランジスタ121のドレインが接続されている。蓄積容量122のもう一方の端子は電源線126に接続されている。制御用トランジスタ121のソースは発光素子用信号線125に接続され、制御用トランジスタ121のゲートは発光素子用走査線124に接続されている。発光素子200のカソードはカソード電極123(図3の207)に接続され、受光素子300のカソードはカソード電極113(図3の307)に接続されており、これらカソード電極113,123は共通の電極として画素領域全体をほぼ覆うように接続されている。
【0030】
このような回路構成では、発光素子200側では、走査線124をハイレベル(トランジスタがpチャネルの場合は電圧としては低電圧)として制御用トランジスタ121がオンすることにより、信号線125の信号電圧で駆動用トランジスタ120のゲート電圧を設定する。走査線124がローレベル(同pチャネルの場合は電圧としては高電圧)となって制御用トランジスタ121がオフしても、蓄積容量122とゲート容量によって電圧が保持される。そして、その電圧に応じた電流が駆動用トランジスタ120から発光素子200に供給されることで、発光素子200が所定の強度で発光する。
【0031】
一方、受光素子300側では、走査線114がハイレベルになりトランジスタ110がオンすることで受光素子300の電荷を信号線115に流すことができる。信号線115の先には、図示しない積分回路を設けてあり、流れてきた電荷量に比例した出力電圧を得ることができる。同時に信号線115の電位を所定の値にするようになっており、受光素子300のアノード側の電位を検出感度として適当なバイアス電位にすることができる。走査線114をローレベルとしてトランジスタ110をオフにすると、受光素子300のアノード電位は受光素子300に入射する光量による光電流と素子の容量によって、電位が変動しながら次にトランジスタ110がオンするまでの時間の光照射量に応じた電荷を蓄積することとなる。これを順次読み出すことにより、検査対象物からの光の反射量を検出することができる。受光素子300はマトリクス状に繰り返されており、2次元的な検出が可能となり、図2で示すようなセンサとして使用することができる。
【0032】
図5は、図4の回路に基づいて図3の断面図にも対応した素子のレイアウト図を示す。図5のA−A’断面が図3に対応している。図5ではバンク構造までの図を示しており、発光素子、受光素子、共通電極などは省略されている。
【0033】
受光素子300の透明電極301の内側にバンクの境界312があり、この内側で受光層が機能する。受光素子用走査線114にトランジスタ110のゲートが接続されており、受光素子用信号線115にトランジスタ110のソース、受光素子300の下部電極301にトランジスタ110のドレインが接続されている。半導体層105は有機半導体で塗布又は蒸着で形成されている。
【0034】
発光素子200の透明電極201の内側にバンクの境界212があり、この内側で発光層が機能する。駆動用トランジスタ120及び制御用トランジスタ121が、受光素子用トランジスタ110と同様な構成で形成されている。蓄積容量122は、トランジスタ120のゲート、走査線124と同じ層で下部電極を、ゲート絶縁膜102と同じ層で絶縁層を、トランジスタ120のソース/ドレイン、信号線126と同じ層で上部電極を、それぞれ形成しており、トランジスタ121とはコンタクトホールで接続されている。トランジスタ120,121の半導体層135,145もトランジスタ110の半導体層105と同様に形成されている。
【0035】
発光素子200と受光素子300の共通の層は全面に形成するが、バンクやパッシベーション・層間絶縁層により絶縁されており、機能に問題はない。さらに、共通の層であるカソード電極207,307は外部からの静電ノイズに対してシールドとなることから、受光素子300の検出電荷が小さくても、ノイズの影響なく検出することができる。
【0036】
このように本実施形態によれば、発光素子200と受光素子300を同一基板100上に形成し、発光素子200の発光層の半導体材料と受光素子300の受光層の半導体材料を異ならせ、発光素子200の電荷注入層206及びカソード電極207と受光素子300の電荷注入層306及びカソード電極307を共通にすることにより、対象物に光を照射して応答を検出する際の検出感度の向上及びノイズの低減をはかることができる。
【0037】
より具体的には、有機半導体などで構成された所定の特性(例えば近赤外に感度を有する)を持つ受光素子300と所定の特性(例えば近赤外の特定の波長で発光する)を持つ発光素子200が一体に形成されると共に、高性能・高感度を確保できる。それぞれの電荷注入層206,306に性能が高いが耐水、耐薬品、耐酸素等の耐性が低いフッ化物やカルシウム化合物などを用いることができ、高性能が確保できる。また、上部の電極207,307を共通して厚くも薄くもでき、熱工程を通すこともなく、高性能を確保することができる。そして、同一基板100上に配置した発光素子200からのアレイ内での光が絶縁層を伝播して受光素子300に入射する光を低減でき、ノイズを減らして高感度の検出が可能となる。
【0038】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係わる光電変換装置の基本素子構成を示す断面図である。また、図7は、本実施形態の平面レイアウト図を示している。図7のA−A’の断面が図6に相当するようになっている。なお、前記図3及び図5と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0039】
本実施形態においては、図6に示すように、発光素子200と受光素子300との間にバンクの溝500が形成されている点が特徴である。さらに、発光素子200と受光素子300の共通の電子注入層206,306とカソード電極207,307と同じ構成406,407がバンクの溝500内に形成されている。また、図7に示すように、受光素子300の信号線115と発光素子200の電源線126との間に溝500を配置している。このようにバンクの溝500を形成し、溝500内のカソード電極407が発光素子200からの光を反射及び吸収することで、発光素子200からの光が受光素子300へ至ることを大幅に低減でき、微弱な対象物からの光を高感度にノイズが少なく検出できる。カソード電極407(207,307)としては、AlやAgなどで100nm以上あることが望ましい。
【0040】
溝500は、図7に示したように発光素子200と受光素子300の列を通しておくと遮光として好適である。画素回路に溝500の位置を記載したものを、図8に示す。配線と溝500の重なりなどの関係は詳細には示しておらず、配線に重なっているものも重なっていないものも表している。なお、溝500は部分的に形成してもよい。走査線との間にバンクを残すことで寄生容量を減らす効果はある。
【0041】
このように本実施形態によれば、発光素子200からの光が発光素子200と受光素子300との間にあるバンクの溝500により遮断され、受光素子300に照射されることを抑制できる。このため、本来の対象物からの応答光とは別の光(迷光)によるノイズを低減でき、検出感度が高くできる。また、バンクの溝500に発光素子200からの光を吸収又は反射する材料407等を埋め込むことにより、上記のノイズを更に低減することができる。
【0042】
図9及び図10は、第2の実施形態の光電変換装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0043】
まず、図9(a)に示すように、プラスチック基板や有機樹脂にガラス繊維を入れたハイブリッド基板(基板や有機樹脂に対してバリア層やアンダーコート層を形成してもよい)、又はガラス基板等の基板100の上に、ゲート電極101及び走査線等を形成する。これらの形成には、Agナノインクを印刷し焼成してもよく、MoTa,MoWなどの導電膜をスパッタ等で成膜した後に、通常のフォトリソグラフィ工程でレジストパターン形成し、エッチングして形成してもよい。ここでは、MoWをスパッタで200nm成膜した後に、ドライエッチングで加工形成した。
【0044】
次いで、図9(b)に示すように、ゲート絶縁層102を成膜し、所定のコンタクトホールを形成する。ポリイミド、アクリル樹脂、フッ素樹脂、部分フッ素樹脂、PVP(ポリビニルフェノール)などの有機層を塗布、アニールしてからレジストをパターニングしてエッチングしてもよい。また、印刷法で局所的に塗布してもよく、感光性を持たせて露光、現像してからアニールして硬化することでパターン形成してもよい。さらに、CVDやスパッタでSiOxなどの無機膜を成膜し、フォトリソグラフィ工程でコンタクトホールをエッチングしてもよく、無機膜と有機膜を積層してもよい。ここでは、感光性部分フッ素化樹脂を用いて、露光現像後、150℃でアニールして成膜した。
【0045】
次いで、図9(c)に示すように、ソース/ドレイン電極103,104及び信号線や電源線等の配線107,108を成膜し、パターン形成する。ゲートと同じように種々の方法、材料で形成することができるが、ここではAgナノインクを印刷でパターン塗布し、150℃で焼成して成膜した。
【0046】
次いで、図9(d)に示すように、半導体層105を塗布や蒸着、CVDなどで成膜する。半導体層は有機材料でも無機材料でもよい。印刷する場合には表面エネルギーのパターンを形成してから塗布してもよく、バンクパターンを形成して塗布してもよい。ここでは、図示していないが、感光性樹脂でバンクを露光現像、アニールにして形成した。さらに、ソース/ドレイン電極のAg電極の仕事関数を高めるPFBTないしF4TCNQのSAM(自己組織単分子層)を溶液に浸漬して形成した。有機半導体としては、低分子系のTIPS−Pentacene(6,13-bis(triisopropyl-silylethynyl) pentacene)或いは Cn−BTBT(2,7-dialkyl[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene)をインクジェット法で塗布、乾燥して形成した。膜厚は10〜1000nmとした。
【0047】
次いで、図9(e)に示すように、これらの上にパッシベーション及び層間絶縁となる絶縁層106を形成し、絶縁層106にコンタクトホールパターンを形成する。絶縁層106は、有機膜でも無機膜でもよく、両者の積層でもよい。ここでは、感光性フッ素樹脂を用いて露光現像後、150℃以下でアニールして0.5〜3μm形成した。
【0048】
次いで、図10(f)に示すように、発光素子200及び受光素子300の透明導電電極201,301を形成する。ITOをスパッタし、フォトリソ工程でエッチング加工して形成してもよく、ITO粒子などを分散したインクを印刷塗布してアニールしてもよい。ここでは、ITOナノ粒子を分散したインクの印刷、アニールで形成した。
【0049】
次いで、図10(g)に示すように、これらの上にバンク202,302を形成すると共に、透明導電電極201,301の内側に位置するように202,302バンクの開口を形成する。これらはパターン印刷で形成してもよく、感光性樹脂を用いてもよい。ここでは、感光性アクリル樹脂を用いて膜厚を5〜10μmとした。さらに、発光素子200と受光素子300との間に、バンクの溝500を形成する。
【0050】
次いで、図10(h)に示すように、受光素子側のバンクの開口内に受光素子300の受光活性層を含む各層303,305を形成する。ホール注入層303としては、PEDOT:PSSを塗布し、乾燥して成膜した。ここで、受光素子300内のみにPEDOT:PSSを形成してもよく、発光素子200のホール注入層としても全体に形成してもよい。発光素子200と受光素子300に共通のホール注入層を設けることで、電極表面をプラズマ処理などで界面制御(清浄化、仕事関数制御)が行いやすい。ホール注入層303上に受光活性層305として、p型有機半導体とn型有機半導体を溶媒に溶かしてインクジェット或いはディスペンサーなどで局所塗布した。その後、乾燥、アニールすることでバルクへテロ構造を形成した。
【0051】
近赤外に感度を有する材料として、p型半導体としてPDTP−DTDPP(Bu)(poly{N-[1-(2-ethylhexyl)-3-ethylheptanyl]-dithieno[3,2-b:2',3'-d]pyrrole-3,6-dithien-2-yl-2,5-dibutylpyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione-5',5''-diyl})を用いたが、PDTP−DTDPP(poly{N-[1-(2-ethylhexyl)-3-ethylheptanyl]-dithieno[3,2-b:20,30-d]pyrrole-3,6-dithien-2-yl-2,5-di(2-ethylhexyl)-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione-50,500-diyl})を用いてもよい。n型半導体としてフラーレンのPCBM或いはPC70BMを用いるとよい。
【0052】
これらの分子構造を、図30(a)〜(d)に示す。PDTP−DTDPP(Bu)のHOMO−LUMO差は1.27eVで、近赤外光を吸収する材料であり、素子での感度として波長1100nmまで、特に700〜900nmで外部量子効率EQEが20%以上を得ることができる。溶媒としてクロロフォルムとo−ジクロロベンゼンの混合溶媒(体積比率4:1)を用いたが、有機材料と下地基板で特性が得られる適切な溶媒を選択するとよい。
【0053】
活性層305の膜厚は1〜10μmとした。膜厚を厚くすることで暗電流を低減することができることが分かり、暗電流により受光素子300の電荷が蓄積されて光照射時の信号との差が少なくなる。特に、2μm以上とすることで暗電流が十分に低減でき、感度が下がることが防止されて好適である。一方で、発光素子200からの横方向からの光による感度が高くなることから、迷光によるノイズが増加する傾向があり、第2の実施形態の構造のバンクの溝500による遮光の効果がより高くなる(リークが低減する)ことが分かった。バルクへテロ構造を形成するのに、120℃でアニールすると良い。なお、受光素子300として波長や感度に応じてp型半導体とn型半導体の積層として形成してもよい。
【0054】
次いで、図10(i)に示すように、発光素子200の発光層を含む各層203,204,205を形成する。ここでは、ホール注入層203としてPEDOT:PSSを用い、発光層205としてPVKとOXD−7を混合した電子輸送を向上したホスト層にPt(tpbp)(Pt-tetraphenyltetrabenzoporphyrin)をドーピングすることにより、近赤外波長(ピーク波長780nm付近)を発光させた。
【0055】
別の構成として、ホール注入層203としてPEDOT:PSS或いはMoO3 、ホール輸送層204としてNPB、発光層205としてAlq3 をホストにドーパントを導入、更にホールブロック層としてBCP、電子輸送層としてAlq3 を積層した。ドーパントとして triphenylamine 系と benzobis(thiadiazole) 系を結合させたものを用いた(ピーク波長750〜850nam付近をドーパント材料と濃度で変化)。HOMO−LUMOギャップが大きいホスト材料に電子−正孔を注入し、ドーパントのHOMO−LUMO準位にキャリアが移動して再結合することで発光する。
【0056】
このような材料を受光素子300として使うと受光素子の感度が殆ど得られないが、本実施形態のようにそれぞれ別の構成とすることで生体からの情報のような微弱な信号をも得ることができる。発光素子200の各層203〜205は蒸着で形成してもよく、一部は塗布で形成してもよい。これらの有機発光素子は熱工程に弱いことから、受光素子300のバルクへテロ構造のアニール(120℃など)は発光素子200の成膜前に形成することができるので、発光素子200を劣化させることがない。なお、ホール輸送層は発光素子200と受光素子300で同時に形成してもよい。近赤外発光に適したドーピング材料の構造を、図31(a)(b)に示す。
【0057】
最後に、図10(j)に示すように、発光素子200と受光素子300の共通の電子注入層206,306とカソード電極207,307を形成する。ここでは、電子注入層はLiF,CsFなどで、カソード電極はAlとした。Alの膜厚は100nm〜3μmとした。厚いほど溝500での遮光性が増加し、抵抗も低減でき、封着までの水透過を低減してプロセス劣化を抑えることができる。ここでは記載していないが、電極形成後に封着するが、発光素子200と受光素子300の電極形成が同時に得られていることから、素子劣化を抑制して封着することができる。
【0058】
このように本実施形態では、発光素子200と受光素子300の材料及び構成を最適なものにすることができ、近赤外光で微弱な信号を得ることができる。なお、この製造方法は他の実施形態への適用も可能である。
【0059】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係わる光電変換装置の画素部の回路構成を示す図である。また、図12は対応する画素部のレイアウト図を示す。
【0060】
本実施形態では、受光素子300の検出回路として、アクティブ型のアンプを設けている例である。受光素子300の一方の電極がソースフォロアのアンプ用薄膜トランジスタ111のゲートに接続されており、そのソース電極は電源線116と接続されている。トランジスタ111のドレイン電極は、スイッチ用トランジスタ110を介して信号線115に接続されている。スイッチ用トランジスタ110のゲートは走査線134と接続されていて、ハイレベルになってスイッチをオンすることで、信号線115へ電流を供給するようになっている。受光素子300の入射光に応じた電荷でアンプ用トランジスタ111のゲート電圧が設定されて、おおよそVth分低い電圧が、スイッチ用トランジスタ110を介して信号線115に供給される。
【0061】
このようにすることで、信号線115に流れる電荷量は、前記図4の回路に示したアンプのない回路に比べてトランジスタの寸法、オン電流に合わせた大きな電荷量にできることから、外部ノイズの影響を抑制することができる。これは、特に生体センサで人に密着させて使い、またウエアラブルに張り付けるように使用する場合には、ノイズの影響は重要であり、有効となる。なお、アンプ型の場合には、受光素子300の電荷は読み出しに対して一定の電圧に戻すことができないため、リセット用トランジスタ112を受光素子300に接続して、別の走査線134のハイレベルのタイミングでリセット用信号線117の電圧に設定することにより、繰り返し読み出しができるようにしている。発光素子側の回路や構成は前記図4、図5と同等としている。
【0062】
ここでは、受光素子300の読み出し用の走査線114は画素の上下で隣接したものを用いており、読み出し後にリセットを行ってから、次の読み出しまでの間の時間で受光素子300の電荷蓄積を行うようにしている。また、発光素子200の書き込み用の走査線124とも共通にしている。これにより、走査線134の本数を減らすことで、画素内の面積を広くし、発光素子200や受光素子300の有効面積を増やすことができて、検出感度や発光強度の増加に有効である。なお、走査線134の共通化は他の実施例にも適用できると共に、アンプ型でも別の走査線にすることも可能である。逆に、読み出し用走査線とリセット用走査線を別にすることも可能である。これらの配線を別にすることで、タイミングが自由にコントロールできて感度調整やノイズ低減に効果がある。
【0063】
本実施形態では、さらに発光素子200のバンク(画素の境界212)と受光素子300のバンク(画素の境界312)との間に溝500を形成している。発光素子200と受光素子300の共通のカソード電極407及び電子注入層406をバンク溝500に形成することで更に遮光性を高めている。これにより、受光素子300への光の入射が抑制されてノイズが減る。
【0064】
溝500の底面は発光素子200の電源線126と重なるようにしている。これにより、溝500の側面に照射された光が基板方向に反射されたときにも電源線126が遮光して下方方向のみの光として射出できるようになり、受光素子300への迷光を抑制することができる。さらに、本実施形態では、受光素子300の電源線116を発光素子200の電源線126と隣接するように配置した。このとき、溝500の底面が受光素子300の電源線116と重なるようにすることで、溝500の幅を広くして加工精度を緩和して作りやすくなる。さらに、電源線という電位変動のない或いは少ない電極とカソード電極との間の絶縁層が薄くなっても、カソード電極は寄生容量の影響がなく、ノイズが少なく、さらには変動しにくい電極とすることができる。受光素子側の電源線116との重なりは迷光の入射経路としての遮光にもなり、光学的なノイズ低減の効果も有する。複数の画素に渡る広域的な溝500と画素回路との関係を、図13に示す。
【0065】
なお、受光素子300の電源線116は、図11及び図12とは逆に電源線を図の右側に置くようにしてもよい。それにより、発光素子200の左側に受光素子300を配置する場合の溝のレイアウトとして、受光素子300の電源線と重ねるようにすることができ、発光素子側の電源線との重なりと同じような効果を得ることができる。広域的な画素と溝500との関係を、図14に示した。電圧が変動しない電源線が発光素子200と受光素子300の並びにそれぞれ配置されるので、溝500を配線に重ねて配置しても寄生容量で影響が少なく、配置が可能となる。遮光効果が配線に重ねることで向上する。
【0066】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態の画素の平面レイアウト図を示し、A−A’の断面図を図16で示す。
【0067】
本実施形態では、バンクの溝の配置を工夫したものであり、発光素子200の外周に溝510を配置すると共に、アクティブマトリクスの電極(電源線)126上に溝510の底面を重ねていることを特徴とする。溝510は、発光素子200と受光素子300との間で電極126と重なっており、溝510の側面に照射された光が基板方向に反射するのに対して斜め方向に出射することを電極126で抑制している。これにより、受光素子300に至る迷光が抑制されてリークによるノイズが低減できる。
【0068】
図15及び図16では溝510に重ねる配線は電源線126であるが、この代わりに走査線や信号線も利用できる。これらのマトリクス交差を利用すれば、発光素子部の外周を取り巻くように溝を配置することができ、遮光効果を改善することとなる。図17に、溝510と画素回路との関係を模式的に示した。
【0069】
溝510のレイアウトとしては、多重に形成することも可能である。図18には、第4の実施形態に受光素子側にも溝510を多重に配置したものを示す。図19には、図14のレイアウトにさらに溝520を加えたものである。このように多重化することで遮光効果を高めると共に、ノイズの低減やインピーダンスマッチングなどを得ることもできる。
【0070】
また、溝を部分的に形成することも可能である。溝同士の関係で遮光を得るようにしたり、強度の強い箇所の遮光を行ったりすればよい。図20には、一例として溝530が受光素子300の信号線近傍のみに途切れ途切れに形成している。走査線との重なりには溝を形成しないことで走査信号の遅延を低減したり、走査信号の大きな電位変化が共通電極にノイズとして乗ることを抑制することができる。溝540との間で遮光を得ており、電源線と走査線の重なり上に溝を形成することで走査線との重なりによる寄生容量の発生を抑えることで前述の問題は発生しないようにできる。受光素子側の電源線に沿った溝550は全体に通しており、これらの溝で遮光が得られるようになっている。
【0071】
このように、溝510は受光素子300との間で多段に形成してもよく、一部に溝510がない箇所があっても他の箇所で補うようにすればよい。
【0072】
(第5の実施形態)
図21は、第5の実施形態に係わる光電変換装置の基本素子構成を示す断面図である。
【0073】
本実施形態では、発光素子200と受光素子300との間に配置するバンクの溝500に受光素子300の受光活性層305を含む層405を形成することが特徴である。受光活性層は受光感度波長の光に対して吸収する特性を有することから、バンクの溝500に形成することで、迷光の吸収による遮光効果が得られる。また、受光活性層は、半導体層であり、1〜10μmと云うように厚く形成される。このため、半導体であることから、電気的にも金属よりは導電性が低く、下層のアクティブ層との静電容量によるカップリングが小さくなり、溝500の配置位置の制約を小さくすることができる。
【0074】
また、本実施形態は、発光素子200と受光素子300の共通電極207,307を半透過にし、基板100と反対側にも光を取り出す場合に有効である。即ち、半透過の電極層を用いることで、電極の遮光効果が薄くなっていても、受光活性層による吸収で迷光の影響を抑制することができる。
【0075】
(第6の実施形態)
図22は、第6の実施形態に係わる光電変換装置の基本素子構成を示す断面図である。
【0076】
本実施形態では、共通の電極層を受光素子200と発光素子300で連続させずに、受光素子300の領域と発光素子200の領域で分離するパターン形成をすることに特徴がある。即ち、発光素子200の電極層207と受光素子300の電極層307とは、ギャップ410を設けて相互に絶縁されている。これは、電極層を成膜するときにマスク蒸着などによって実現することができる。
【0077】
これにより、発光素子200に流れる電流によって受光素子300のカソード電極電位が変動する影響を防止することになり、微弱な変動を検知するのに容易になる。画素領域が広い場合や発光素子の変換効率が低い場合などに適用できる。なお、電極を分離するか一面に形成するかは材料やデバイスの設計によって適切な方を選択することができる。
【0078】
(第7の実施形態)
図23は、第7の実施形態に係わる光電変換装置の基本素子構成を示す断面図である。
【0079】
本実施形態では、発光素子200の構成として、光学機能層250を含めた例である。光学機能層250としては透過波長を制限するカラーフィルタが1つであり、また光の取り出しを増加させるマイクロレンズを含む取り出し機構部材が1つである。光学機能層250は発光素子200の下部電極201の下に形成するとよく、バンク層で覆うようにすることで、バンク層の溝500を形成した場合にも遮光が得られて有効である。
【0080】
(第8の実施形態)
図24は、第8の実施形態に係わる光電変換装置の基本素子構成を示す断面図である。
【0081】
本実施形態は、図21の実施形態を改良したものである。トップエミッション、上部受光構造で、共通電極を薄層MgAg合金などの半透過電極607で形成すると、電極のシート抵抗が高く、発光のための電流で電極内の電圧降下が発生する。このため、発光強度ムラが出ると共に、受光層との共通電極に印加されるバイアス電位へ影響を与えて、受光感度ムラを発生させる。特に、デバイスサイズが大きくなる場合、例えば腕に巻きつけて広範囲で信号を得る場合などでは問題となる。
【0082】
そこで本実施形態では、対向する基板600に電極601,602を設けて十分に抵抗を下げることを特徴とする。保護・封止基板としても機能する基板600上に、低抵抗化を図るための補助配線601とこれに接続したITOなどからなる透明低抵抗電極602を形成し、発光・受光素子基板と接着層603を介して貼り合わせている。発光・受光素子基板の半透過電極607と対向基板600の電極601,602とは面内全面或いは局所的に、電気的に接続することで、抵抗を大幅に下げて、半透過電極607内の電圧降下を抑制する。接着層603が導電性を有した構成、例えば接着材に透明導電微粒子を分散させたもの、などが望ましい。或いは対向電極の凸部が半透過電極607と直接接触して接続し、間を接着層で充填して固定することでも効果が得られる。
【0083】
なお、発光・受光素子基板の発光素子、受光素子間に設けた溝500内には、前記図21と同様に受光活性層を主成分とする層405を充填するとよいが、他の溝の構成と組合せてもよい。
【0084】
(第9の実施形態)
図25は、第9の実施形態に係わる光電変換装置における画素部の回路構成を示す図である。
【0085】
本実施形態では、発光素子200の画素210,220と受光素子300の画素310とで画素サイズが異なっており、発光素子200の画素210,220を走査方向に重ねた幅で受光素子300の画素310の走査方向ピッチを設定しているものである。発光素子画素は発光波長が異なる発光素子LED1、LED2で構成されている。生体の近赤外光の情報として、例えば波長760nmと840nmの光を照射することで、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの量に対応した信号が得られ、その信号からヘモグロビンの状態を検出できるようになるが、その際に発光素子からの光の経路が2つの波長で同一の箇所を通ることが前提となる。従って、本実施形態のように2波長の発光素子を隣接させて配置することは有効であり、加えて受光素子の空間分解能は2波長に対して設定できればよいので、図25に示すように配置することで、受光面積が大きく取ることができ、検出感度を向上させることができる。特に、発光素子200の走査線124を画素の上下に分けることで、受光素子画素の中に走査線を通す必要がなく、受光面積を大きくするのに好適である。
【0086】
溝500の形成は、受光素子300に対して行えばよいから、発光素子200の列と受光素子300の列の間に溝500を形成すればよい。それぞれ発光素子200、受光素子300の電源線に一部或いは全部を重ねるように配置するとなおよい。また、配線との関係は他の実施形態と同様に行ってよい。
【0087】
(第10の実施形態)
図26は、第10の実施形態に係わる光電変換装置における画素部の回路構成を示す図である。
【0088】
本実施形態では、波長の異なる発光素子200の画素210,220を信号線の並びに沿った方向で隣接させており、受光素子300の画素310はそれに対応して配置したものである。受光素子300の感度が十分であるが、発光素子200の発光効率が低めである場合や、発光素子200の電流密度を低減して寿命を長くするためにはこのような複数の発光素子200を横に隣接して受光素子300を横に配置する配列が望ましい。
【0089】
前記図2で示したように生体情報を得る際に最隣接画素での受光は浅い情報のみであり、より深い情報を得るには離れた画素での受光信号の解析を行うことから、このような発光素子配列としてもよく、必要に応じて位置に対する補正を行うなどすればよい。
【0090】
溝500の形成では、受光素子300に対して行えばよく、発光素子200間に溝500を形成しないことで、レイアウトの自由度や開口率を改善することもできる。
【0091】
(第11の実施形態)
図27は、第11の実施形態に係わる光電変換装置における画素部の回路構成を示す図である。
【0092】
本実施形態では発光素子200の発光強度の劣化を中心に受光素子300の経時変化も含めて校正するための構成を示している。発光素子200の光を基板外に出して反射光を受光する受光素子300に対して、発光素子200からの光を基板外に出さずに内部で発光強度を計測するモニタ用受光素子350を設けてある。モニタ用受光素子350の受光信号をもとに発光素子200への電流を制御して同一の強度になるようにフィードバックを掛ける、或いはモニタ用受光素子350の信号をもとに受光素子300の信号を補正するようにすればよい。さらに、受光素子300の周りに設けた溝510によって受光素子300への迷光を抑制して感度を上げる。このとき、モニタ用受光素子350と発光素子200との間での光学的なカップリング構造700は溝510から離す構造とする。これにより、発光素子200の劣化があっても精度を持って生体からの情報を取得することができる。
【0093】
具体的な画素レイアウトを、図28に示す。また、光学的カップリング構造を示すA−A’断面、及び発光・受光素子の基本構造を示すB−B’断面が図29(a)(b)である。画素レイアウトで示すように光学的カップリング構造として発光素子200の光の一部をモニタ用受光素子350に基板内部で導くために、不透明な反射材701を発光素子200の下から受光素子350の下に配置した。受光素子350の下は受光面全体に重なるように配置することで、基板外部に出て反射してきた光の影響を抑制することができる。
【0094】
発光素子200では図のように1つの大きな画素の一部に反射材701を設けると発光素子画素全体の劣化を評価するのに良い。一方、発光素子200の構成として反射材の段差により、発光素子200のリーク電流や電界集中による劣化が発生する場合には、画素(バンク)を外部用と内部用に分けて配置し、下部電極は接続して同時に駆動するようにしてもよい。
【0095】
反射材701としてアレイのゲート電極層を用いることで工程を削減できる。必要に応じて反射材用の別の層を設けてもよく、アレイの構成部材で兼用してもよい。反射材による光学的カップリングの機構は断面図の図29(a)で説明する。反射材701に当たった光702は反射して、カソード電極407などで反射して受光素子350に到達する。また、光路703に示すようにアレイの絶縁層内を界面反射を通して伝播する場合もある。この場合、臨界角以下になると光が絶縁層外に出にくくなるため、反射材701の受光素子近傍で凹凸を付けるなどして散乱構造704を設けるとよい。ゲート電極を形成した後に、局所的にエッチング処理して荒らすようにしたが、ゲート電極上に印刷で散乱面を局所的に塗布形成してもよく、下層の絶縁層を荒らして上に電極を形成するなどしてもよい。
【0096】
このように、光学的カップリングを内部に設けることで、外部の状態に依存せずに発光素子200の状態(発光強度劣化など)を把握することができる。このカップリングでもたらされる光の量は外部からの反射光の強度に近いものがよい。あまり大きな光量が入射すると受光素子350の劣化が実受光素子300との差が出て補正の精度が低下する要因となる。カップリング量が一定であることが重要であり、反射材701と全面に設けたカソード電極407との反射を利用するのは好適といえる。
【0097】
一方、外部を通って受光する正規のルートについては、図29(b)に示すように発光素子200と受光素子300との間に溝500を設けている。これにより、基板内での反射迷光を遮断することで受光素子300への光が外光のみとなることで生体内からの反射光の強度が弱いものでも高感度に検出することができる。
【0098】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0099】
発光素子や受光素子の構造及び材量等は実施形態に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。発光素子の発光層の材料と受光素子の受光層の材料が異なり、発光素子及び受光素子の上部の電極が共通であればよい。
【0100】
また、バンクに設ける溝の形状や埋め込み材等は、仕様に応じて適宜変更可能である。溝の位置は発光素子と受光層との間であれば良く、埋め込み材料は発光層からの光を吸収するものであればよい。
【0101】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0102】
10,100…基板
20,200…発光素子
30,300…受光素子
101…ゲート
102…ゲート絶縁層
103…ソース
104…ドレイン
105…半導体層
110,111,112…受光素子側トランジスタ
114…センサ用走査線
115…センサ用信号線
116…受光素子用電源線
120,121…発光素子側トランジスタ
122…蓄積容量
124…発光素子用走査線
125…発光素子用信号線
126…発光素子用電源線
134…走査線
201,301…透明電極
202,302…バンク
203,303…ホール注入層
204…ホール輸送層
205…発光層
206,306…電子注入層
207,307,407…カソード電極
305…光電変換層
500,510,520,530,540…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明な配線層を有する基板上に、複数の発光素子と複数の受光素子を基板面内方向に離間して形成した光電変換装置であって、
前記発光素子及び前記受光素子は前記基板上に形成したバンクの開口部にそれぞれ形成され、
前記発光素子の発光層の半導体材料と前記受光素子の受光層の半導体材料とは異なり、前記発光素子の上部電極層と前記受光素子の上部電極層とは共通であり、且つ前記基板上の不透明な配線層は、前記バンクの開口部で規定される各領域の外側の領域に形成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
不透明な配線層を有する基板上に、複数の発光素子と複数の受光素子を基板面内方向に離間して形成した光電変換装置であって、
前記発光素子及び前記受光素子は前記基板上に形成したバンクの開口部にそれぞれ形成され、
前記発光素子の発光層の半導体材料と前記受光素子の受光層の半導体材料とは異なり、前記発光素子の上部電極層と前記受光素子の上部電極層とは共通であり、且つ前記発光素子と前記受光素子との間のバンクの一部に溝が形成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記発光素子及び前記受光素子は、前記発光層又は前記受光層として有機半導体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記発光素子及び前記受光素子は、前記上部電極層と共に、電荷注入層を共通にしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記発光素子のバンクと前記受光素子のバンクは同じ材料であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記受光素子は、バルクへテロ接合の活性層を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記バンクの溝に、前記発光素子と前記受光素子の共通な上部電極層が形成されていることを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記受光素子はバルクへテロ接合の活性層を含み、前記バンクの溝に前記受光素子の活性層が形成されていることを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記バンクの溝の底面と前記基板上の不透明な配線層とは平面的に重なっていることを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。
【請求項10】
基板上に薄膜トランジスタ及び不透明な配線を有するアクティブマトリクス層を形成する工程と、
前記アクティブマトリクス層が形成された前記基板上に、発光素子用の下部電極層及び受光素子用の下部電極層をそれぞれ形成する工程と、
前記各下部電極層が形成された前記基板上に、前記発光素子用の下部電極層上に第1の開口を有し、且つ前記受光素子用の下部電極層上に第2の開口を有するバンクを形成する工程と、
前記バンクの第2の開口内に前記受光素子の受光層を形成する工程と、
前記バンクの第1の開口内に前記発光素子の発光層を形成する工程と、
前記発光層、前記受光層、及び前記バンク上に前記発光素子及び前記受光素子で共通のの上部電極層を同時に形成する工程と、
を含むことを特徴とする光電変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−73965(P2013−73965A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209848(P2011−209848)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】