説明

光電子および電子デバイスにおける使用に適した複合フィルム

【課題】ELデバイス(特にOLED)、光電池、および半導体デバイス(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、および集積回路一般など)を含む、電子または光電子デバイス(特に導電ポリマーを含むデバイス)の製造において、基板、特に可撓性基板として使用するのに適した、改善されたバリア特性を有するフィルムを提供すること。
【解決手段】ポリマー基板、平坦化被覆層、および無機バリア層を含む複合フィルムであって、前記バリア層は、2nmから1000nmの厚さを有し、マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって得ることができる前記複合フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の電子および光電子デバイス、特にエレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイデバイス、特に有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスにおける基板としての使用に適した被覆されたポリマー基板に関する。本発明は、被覆されたポリマー基板の製造プロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイは、優れた視認性(visibility)(高い輝度、高いコントラスト、非常に速い応答速度、および広い視角を含む)、極めて薄い輪郭、および非常に低い電力消費を特徴とする自発光(self−emitting)ディスプレイモードである。ELディスプレイ自体は、カソードレイチューブ(CRT)、蛍光、およびプラズマディスプレイのように、光を放出する。液晶ディスプレイ(LCD)とは異なり、バックライトの必要がない。ELに関する応答速度は、LCDに関する応答速度の1000倍速く、したがってこのモードを動画での使用に特に良好に適するようにすることができる。ELディスプレイは、航空機および船舶制御装置、自動車音響機器、計算機、携帯電話、可搬コンピュータ、楽器、工場モニタ、および電子医療機器を含む、様々な用途で使用することができる。ELディスプレイに関する他の主な用途は、光源として、特に、小型LCDパネルを暗い周囲光状況において読み取りを容易にするために、小型LCDパネルに関するバックライトとしての用途である。
【0003】
ELディスプレイは、2つのプレート間に燐光(phosphorenscent)または他のエレクトロルミネセンス物質の薄いフィルムを挟むことよって作用し、各プレートは、所定パターンの導電素子、すなわち電極を備え、それによってディスプレイ上にアドレス指定可能な画素(pixel)を形成する。電極は、エレクトロルミネセンス物質上または別個の支持体上の被膜として形成される。電極または各電極が、光を透過することを意図される場合、電極は、例えば透明の導電金属酸化物を使用して半透明または透明被膜として形成される。同様に、支持体または各支持体は、必要に応じて半透明または透明であり得る。一般的に少なくともアノードは透明である。支持体は、一般的に電極のためのベースとして、および絶縁層としての両方の機能を果たす。基板は、使用、貯蔵、および輸送における化学的および物理的損傷に対する保護も与える。ガラス、ならびにポリマーフィルムは、絶縁支持体として使用されてきた。
【0004】
ELディスプレイデバイスは、様々なカソード材料を使用していた。初期の研究はアルカリ金属を用いた。他のカソード材料は、真鍮および導電金属酸化物(例えば、インジウム錫酸化物)などの金属の混合物を含む。インジウム、銀、錫、鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウムなどの様々な単体金属カソードも使用されてきた。
【0005】
EL構造における比較的最近見出されたことは、有機ルミネセンス媒体が、アノードとカソードとを分離する2つの非常に薄い層(組み合わされた厚さで<1.0μm)からなるデバイスを含む。代表的なOLEDデバイスは、例えば特許文献1で開示されるOLEDデバイスである。
【0006】
電流が導電要素を通過するとき、エレクトロルミネセンス物質は、光を放出する。LCDディスプレイのように光源を遮るのではなく、発光技術であるELディスプレイは、すべての光条件で高い視認性が重要な用途において最も有用である。
【0007】
非常に高い純度を有する三原色を生成できる新規な有機エレクトロルミネセンス材料の開発は、均一なレベルの輝度および耐用寿命を有する可能なフルカラーディスプレイを作り出す。そのような特徴を有するポリマーおよび他の有機材料は、溶媒に溶解されかつ溶液から加工処理することができ、電子デバイスの印刷を可能にする。導電ポリマー材料は、共役ポリマーおよび樹枝状ポリマーを含む。非ポリマー(一般に「小分子」と呼ばれる)有機材料も、OLEDなどのELディスプレイデバイスでの使用のために開発され、これらは、一般にさらに遷移金属を含む。導電性共役ポリマーは、特に関心がある。本明細書で使用する場合、用語「導電性共役ポリマー」は、その主鎖に沿ってπ電子の非局在化を有するポリマーを言う。このタイプのポリマーは、非特許文献1で精査されている。好ましい実施形態において、導電性共役ポリマーは、
(i)ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)などの炭化水素共役ポリマー、
(ii)ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの主鎖にヘテロ原子を有する共役複素環式ポリマー、および
(iii)少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは6つ以上の繰り返しサブユニットを含む、オリゴチオフェン、オリゴピロール、オリゴアニリン、オリゴフェニレン、およびオリゴ(フェニレンビニレン)などの共役オリゴマー
から選択される。
【0008】
ELデバイスにおける使用に加えて、そのような導電ポリマーおよび他の有機材料は、光電池および半導体デバイス(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、および集積回路一般など)を含む、様々な他の電子および光電子デバイスでの使用のために提案された。
【0009】
本発明は、ELデバイス(特にOLED)、光電池、および半導体デバイス(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、および集積回路一般など)を含む、導電ポリマーを典型的には含む電子または光電子デバイスの絶縁および支持基板に関する。本発明は、光電子デバイス、特にELデバイス(特にOLED)または光電池デバイスの基板、および特にELデバイス(特にOLED)に特に関する。
【0010】
基板は、透明、半透明または不透明でもよいが、通常は透明である。基板は、通常、光学的透明度、平坦性および最小限の複屈折に関する厳密な仕様を満たす必要がある。典型的には、0.7%未満のヘイズと組み合わせられた400nm〜800nmにわたる85%の全体光透過率(TLT)が、ディスプレイ用途に関して望ましい。表面の平滑性および平坦性は、電極導電被膜などの後に施す被膜の完全性を確実にするために必要である。基板は、良好なバリア特性、すなわち気体および溶媒の透過に対する高い抵抗性も有するべきである。可撓性、耐衝撃性、硬さ、および耐引っ掻き性などの機械特性も、重要な考慮事項である。
【0011】
光学用高級ガラスまたは水晶は、基板などの電子ディスプレイ用途で以前に使用されていた。これらの材料は、光学および平坦性要件を満たすことができ、良好な耐熱耐薬品性およびバリア特性を有している。しかし、これらの材料は、所望される機械特性のいくつか、最も顕著なものとして低い密度、可撓性および耐衝撃性を有していない。機械特性がより望ましいために、プラスチック材料が、ガラスまたは水晶のシートの代替品として提案されてきた。プラスチック基板は、より大きな可撓性および改善された耐衝撃性を有し、等しい厚さのガラスまたは水晶シートより軽量である。さらに、可撓性プラスチック基板は、リールツーリールプロセス(reel−to−reel process)で、基板上への例えば前記導電ポリマーを使用する電子デバイスの印刷を可能とし、その結果、コストが低減し、曲面デバイスの製造が可能となろう。
【0012】
ポリマー材料の1つの欠点は、低い耐薬品性および劣ったバリア特性である。光電子デバイスにおける基板の水蒸気透過速度は、10-6g/m2/日未満であることが望ましく、酸素透過速度は、10-5g/mL/m2/日未満であることが望ましい。ポリマー基板はこの非常に厳しい要件を満たすことができない。ポリマーフィルムのバリア特性を改善する被覆は、一般に高温度においてスパッタリングプロセスで適用される。バリア層は、有機または無機でもよく、その上に堆積される層に対する良好な親和性を示し、平滑な表面を形成できることが必要である。バリア層を形成するための使用に適した材料は、例えば特許文献2に開示されている。典型的な有機バリア層は、光硬化性のモノマーもしくはオリゴマー、または熱可塑性樹脂を含む。光硬化性のモノマーまたはオリゴマーは、低い揮発性および高い融点を有すべきである。そのようなモノマーの例には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどのトリメチロールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートなどの長鎖アクリレート、およびジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。そのようなオリゴマーの例には、アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ケタールなどの光開始剤を、樹脂を硬化するために使用することができる。適した熱可塑樹脂の例には、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの有機材料は、典型的には真空堆積によって適用される。典型的な無機バリア層は、低い水分透過性を示しかつ水分に対して安定した材料で作られる。その例には、SiO2、SiO、GeO、Al23、ZrO2などの酸化物、TiN、Si34などの窒化物、およびAl、Ag、Au、Pt、Niなどの金属が挙げられる。無機材料は、通常、標準条件下での真空堆積、スパッタリングなどの気相技術を使用して適用される。バリア層自体は、1つ以上の個別の層を含み、1つ以上の有機層および1つ以上の無機層を含むことができる。交互の無機および有機層の多層構成は、プロセスが複雑であり価格が高いが、バリア特性を増大するために使用されてきた。
【0013】
ポリマー基板のさらなる欠点は、ディスプレイデバイスの製造中に、処理条件、特に高い温度に晒されると、カールなどの許容できない寸法ひずみを受ける傾向を示すことである。バリア層堆積に使用される高温技術(スパッタリングなど)の間に良好な高温寸法安定性を示すポリマー基板の例は、熱安定化されたポリ(エチレンナフタレート)(PEN)フィルム(特許文献3に開示される)である。
【0014】
バリア層の完全性を確実にし、その中の欠陥または「ピンホール」を防ぐために、ポリマー基板の表面は、良好な平滑性を示さなければならない。バリア層内のすべてのピンホールは、水蒸気および酸素分子の通過のための通路を提供する。ポリマー基板の表面平滑性は、しばしば従来のガラス基板に劣る。ポリマー基板の表面平滑性を改善するために、平坦化被覆層が、例えば特許文献4で提案されてきた。
【0015】
より大きな可撓性および改善された耐衝撃性を有し、等しい厚さのガラスまたは水晶シートより軽いバリア被覆ポリマー材料を含む、電子ディスプレイデバイスを作ることが可能である。しかしながら、バリア特性における改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4720432号明細書
【特許文献2】米国特許第6198217号明細書
【特許文献3】国際公開第03/22575号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/87247号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願第0419400号明細書
【特許文献6】英国特許出願第838708号明細書
【特許文献7】欧州特許出願第0429179号明細書
【特許文献8】欧州特許出願第0408197号明細書
【特許文献9】米国特許第3443950号明細書
【特許文献10】米国特許第5069942号明細書
【特許文献11】米国特許第5415942号明細書
【特許文献12】国際公開第02/079757号パンフレット
【特許文献13】特開平6−116487号公報
【特許文献14】特開昭63−37167号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】W.J. Feast, "Polymer", Vol.37(22), 5017-5047, 1996
【非特許文献2】WYKO Surface Profiler Technical Reference Manual, Veeco Process Metrology, Arizona, US, June 1998
【非特許文献3】G.Nisato, M Kuilder, P.Bouten, L Moro, O.Philips and N.Rutherford, Society For Information Display, Digest of Technical Papers, 2003, 550-553
【非特許文献4】Density related properties of metal oxide films, Proc SPIE 5250, Advances in Optical Thin Films, p1-11(2004)
【非特許文献5】H.A. MacLeod, Thin Film Optical Filters, Third Ed., 2001, Bristol and Philadelphia, Institute of Physics Publishing
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、ELデバイス(特にOLED)、光電池、および半導体デバイス(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、および集積回路一般など)を含む、電子または光電子デバイス(特に導電ポリマーを含むデバイス)の製造において、基板、特に可撓性基板として使用するのに適した、改善されたバリア特性を有するフィルム、特に良好な表面平滑性、良好な高温寸法安定性、および高い光学的透明度を有するフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、ポリマー基板、平坦化被覆層、および無機バリア層を含む複合フィルムが提供され、バリア層は、2nmから1000nmの厚さを有し、高エネルギー気相蒸着によってバリア層を適用することによって得ることができ、複合フィルムは、さらに電極層を含む。
【0020】
高エネルギー堆積プロセスは、好ましくはプラズマ気相蒸着、好ましくはプラズマスパッタリング、好ましくはプラズママグネトロンスパッタリング、好ましくはプラズマ反応性マグネトロンスパッタリング、好ましくはプラズマパルスDC反応性マグネトロンスパッタリングである。好ましくは、前記プラズマ気相蒸着またはスパッタリングは、マイクロ波で活性化される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】試験セルの構成を示す図である。
【図2】試験セルの構成を示す図であり、図1の線II−IIに沿った断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用する場合、光電子デバイスとは、好ましくは、ELデバイス(特にOLED)および光起電性デバイス、ならびに特にELデバイス(特にOLED)を指す。本明細書で使用する場合、用語電子デバイスとは、光電子デバイスを除外し、好ましくは有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタ、集積回路一般などの半導体デバイス、および特に有機電界効果トランジスタを指す。
【0023】
平坦化被覆層は、層順が、ポリマー基板/平坦化被覆層/無機バリア層であるように、ポリマー基板と無機バリア層との間に配置される。
【0024】
好ましい実施形態において、基板は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)またはポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、好ましくはPEN、および好ましくは熱安定化され熱硬化された配向(oriented)ポリエステルフィルムなどのポリエステルフィルムである。
【0025】
特に好ましい実施形態において、基板は、特許文献3に記載され、そのような基板のその開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。したがって、基板は、好ましくはポリ(エチレンナフタレート)を含む、熱安定化され熱硬化された配向フィルムである。好ましくは、前記基板は、−40℃から+100℃の温度範囲内の、40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、より好ましくは25×10-6/℃未満、より好ましくは20×10-6/℃未満の線熱膨張係数(CLTE)を有する。一実施形態において、前記基板は、−40℃から+120℃の温度範囲内の、40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、より好ましくは25×10-6/℃未満、より好ましくは20×10-6/℃未満の線熱膨張係数(CLTE)を有する。
【0026】
PET基板に関して、−40℃から+80℃の温度範囲内の線熱膨張係数(CLTE)は、好ましくは40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、より好ましくは25×10-6/℃未満、より好ましくは20×10-6/℃未満である。
【0027】
好ましくは、基板(特にPEN基板)は、1%未満、好ましくは0.75%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.25%未満、およびより好ましくは0.1%未満の、本明細書に規定されるように測定された230℃で30分間での収縮を有する。一実施形態において、基板(特にPEN基板)は、0.5%未満、好ましくは0.25%未満、および好ましくは0.1%未満、およびより好ましくは0.05%以下の、本明細書に規定されるように測定された150℃で30分間での収縮を有する。一実施形態において、基板(特にPET基板)は、0.5%未満、好ましくは0.25%未満、および好ましくは0.1%未満、およびより好ましくは0.05%以下の、本明細書に規定されるように測定された120℃で30分間での収縮を有する。
【0028】
好ましくは、基板は、元の寸法の0.75%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.25%未満、およびより好ましくは0.1%未満の、フィルムを8℃から200℃へ加熱し、次に8℃に冷却する前後に25℃で測定された残留寸法変化ΔLrを有する。
【0029】
特に好ましい実施形態において、基板は、230℃で30分後に前述の収縮特徴を有し、好ましくは前述の残留寸法変化ΔLr特徴を有する、ポリ(エチレンナフタレート)を含む熱安定化され熱硬化された配向フィルムである。好ましいPEN基板およびそれらの調製は、一般的な原理がPET基板などの他の基板にも適用可能であることが理解されるが、より詳細に以下に記載される。
【0030】
基板は、支持ベースの不在において無関係に存在できることを意味する自己支持性である。基板の厚さは、好ましくは約12μmと300μmとの間、より好ましくは約25μmと250μmとの間、より好ましくは約50μmと250μmとの間である。
【0031】
PENポリエステルは、従来の方法によって合成することができる。典型的なプロセスは、直接エステル化またはエステル交換反応と、これに続く重縮合を含む。したがって、PENポリエステルは、2,5−、2,6−、または2,7−ナフタレンジカルボン酸、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸、またはその低級アルキル(6個の炭素原子までの)ジエステルをエチレングリコールと縮合することによって得ることができる。典型的には、重縮合は固相重合段階を含む。固相重合は、例えば窒素で流動化した流動床上、または回転真空乾燥機を使用する真空流動床上で実施できる。適切な固相重縮合技術が、その開示が参照によって本明細書によって組み込まれる、例えば特許文献5に開示される。
【0032】
一実施形態において、PENは、ゲルマニウム触媒を使用して調製される。このゲルマニウム触媒は、ポリマー製造の触媒残留物、望ましくない無機堆積物、および他の副産物などの、汚染物のレベルの低いポリマー材料を提供する。「より洗浄な」ポリマー組成物は、改善された光学的透明度および表面平滑性を促進する。
【0033】
適切に基板を調製するために使用されるPENは、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.5、特に0.79〜1.0のPET等価な固有粘度(IV、本明細書で記載されるように測定される)を有する。0.5未満のIVでは、機械的特性などの所望の特性を欠いたポリマーフィルムが生じ、一方、1.5を超えるIVは達成するのが困難であり、そのようなIVではその原料を加工処理するのが恐らく困難となろう。
【0034】
基板の形成は、当技術でよく知られている従来技術によって行うことができる。好都合には、基板の形成は、以下に記載の手順に従う押し出しによって行われる。一般的に言えば、このプロセスは、溶融ポリマーの層を押し出すステップと、押出物を急冷するステップと、少なくとも1つの方向に急冷された押出物を配向するステップとを含む。
【0035】
基板は、単軸配向にしてもよいが、好ましくは二軸配向にする。配向は、例えばチューブラー法またはフラットフィルム法など、配向フィルムを製造するための当分野公知の任意のプロセスによって起こし得る。二軸配向は、機械的および物理的特性の満足ゆく組合せを達成するために、フィルムの面における相互に垂直な二方向に延伸することによって行われる。
【0036】
チューブラー法では、同時二軸配向は、熱可塑ポリエステルチューブを押し出した後、急冷し、再加熱し、次いで横配向を起こすために内部ガス圧により膨張させ、さらに縦配向を起こすと見込まれる速度で引くことによって起こし得る。
【0037】
好ましいフラットフィルムプロセスでは、基板形成用ポリエステルは、スロットダイから押し出し、冷却したキャスティングドラム上で迅速に急冷することにより、ポリエステルが非晶質状態に急冷されることを確実にする。配向は、ポリエステルのガラス転移温度より高い温度で、少なくとも一方向に急冷された押出物を延伸することによって行われる。逐次配向は、最初に一方向、通常は長手方向に、すなわちフィルムの延伸機械を通って前進する方向に平坦な急冷された押出物を延伸し、次に横断方向に延伸することによって行うことができる。押出物の前方延伸は、1組の回転ロールまたは2対のニップロールにわたって好都合に行われ、横方向の延伸は、次に、幅出し機で行われる。代わりに、配向は、同時の延伸によって押し出されたフィルムで生成することができる。ここで、フィルムは、幅出し機オーブンにおいて、プロセスの本質的に同一段階である長手方向および横方向に延伸される。順次および同時の延伸の両方の経路に関して、延伸の程度は、ポリエステルの性質によって部分的に決定される。しかしながら、配向されたフィルムの寸法は、延伸の各方向におけるその元の寸法の2倍から5.5倍、好ましくは2.5倍から5倍であるように、PENフィルムは、通常延伸される。典型的にはPENフィルムの延伸は、70℃から160℃、典型的には70℃から155℃の範囲の温度で行われる。より大きな引張比(例えば、約8倍まで)は、一方向だけにおける配向が必要であるなら、使用することができる。例えば、機械および横方向における延伸条件を制御するために達成することができる平衡にされた特性を有するフィルムを得ることが望ましい。
【0038】
該延伸フィルムは、特許文献6に記載されるように、ポリエステルのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、寸法制限下で熱硬化することにより、ポリエステルの結晶化を引き起こすことによって、寸法が安定化される。寸法制限の張力は、一般に、フィルム幅1mあたり約19kgから約75kg、好ましくはフィルム幅1mあたり約45kgから約50kgの範囲にあり、約2.6mの幅を有するフィルムについては、約50kgから約190kgの範囲、好ましくは120kg〜130kgの範囲の張力である。実際の熱硬化温度および時間は、フィルムの組成に応じて変化するが、フィルムの耐引き裂き性を実質的に劣化させないように選択されるべきである。これらの制約内で、約135℃から250℃の熱硬化温度が、一般的に望ましく、より好ましくは235℃〜240℃である。加熱の持続期間は、使用される温度に依存するが、典型的には5秒から40秒、好ましくは8秒から30秒の範囲である。
【0039】
フィルムは、次に、フィルム内の大部分の固有収縮が生じることを可能にして(弛緩する)、それによって非常に低い残留収縮を有するフィルムを生成し、結果として高い寸法安定性を可能にするために、ポリエステルのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、それを最小の物理的制約下で加熱することによってさらに熱安定化される。さらなる熱安定化段階の間に生じるフィルム収縮または弛緩は、高温度でフィルムが受ける線張力(line tension)を制御することによって、または線速度を制御することによって行われる。フィルムが受ける張力は、低い張力であり、典型的には、フィルム幅1mあたり5kg未満であり、好ましくはフィルム幅1mあたり3.5kg未満であり、より好ましくはフィルム幅1mあたり1kgから約2.5kgの範囲であり、かつ典型的にはフィルム幅1mあたり1.5kgから約2.0kgの範囲である。フィルム速度を制御する弛緩プロセスに関して、フィルム速度(したがってひずみ弛緩)における低減は、典型的には0%から2.5%の範囲にあり、好ましくは0.5%から2.0%の範囲にある。熱安定化ステップの間にフィルムの横方向寸法における増大は存在しない。熱安定化ステップに使用されるべき温度は、最終フィルムからの特性の所望の組合せに応じて変わることができ、より高い温度はより良好な、すなわちより低い残留収縮特性を与える。135℃から250℃の温度は、一般的に望ましく、好ましくは190℃から250℃であり、より好ましくは200℃から230℃であり、より好ましくは少なくとも215℃であり、典型的には215℃から230℃である。加熱の持続期間は、使用される温度に依存するが、典型的には10秒から40秒の範囲であり、20秒から30秒の持続期間が好ましい。この熱安定化プロセスは、平坦および垂直構成を含む様々な方法によって実施されることができ、かつ別個のプロセスステップとして「オフライン」、またはフィルム製造プロセスの連続として「インライン」のいずれかであり得る。一実施形態において、熱安定化は「オフライン」で行われる。
【0040】
基板は、1つ以上の別個の層を含むことができる。それぞれの層の組成は、同一または異なることができる。例えば、基板は、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の層を含むことができ、典型的な多層構造は、AB、ABA、ABC、ABAB、ABABA、またはABCBAタイプであり得る。好ましくは、基板は、ただ1つの層を含む。基板が、1つ以上の層を含む場合、基板の調製は、当技術分野でよく知られている従来の技術に従って、共押し出し、積層、または鋳造によって好都合に行われる。
【0041】
基板は、ポリマーフィルムの製造に好都合に用いられる任意の添加剤を好都合に含むことができる。したがって、架橋剤、染料、顔料、ボイド形成剤(voiding agent)、潤滑剤、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、表面活性剤、スリップ剤、蛍光増白剤(optical brightener)、光沢改善剤、分解助剤(prodegradent)、粘度改質剤、および分散安定剤などの薬剤を、適切に組み込むことができる。基板の成分は、従来の方法でともに混合されることができる。
【0042】
好ましい実施形態において、本明細書に記載されるフィルムは、光学的に透明であり、好ましくは、標準ASTM D 1003に従って測定されて、<3.5%、好ましくは<2%、より好ましくは<1.5%、より好ましくは≦1%、特に0.7%未満の散乱可視光(ヘイズ)である%を有する。一実施形態において、ヘイズは、0.6%から1.0%の範囲にある。好ましくは、400nm〜800nmの範囲で全光透過(TLT)は、標準ASTM D 1003に従って測定されて、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、およびより好ましくは少なくとも85%である。この実施形態において、充填剤は、典型的にはわずかな量だけ、所定層の重量の一般的には0.5%を超えない、好ましくは0.2%未満だけ存在する。
【0043】
代わりの実施形態において、基板は、不透明であり、多く充填され、0.1から2.0、より好ましくは0.2から1.5、より好ましくは0.25から1.25、より好ましくは0.35から0.75、および特に0.45から0.65の範囲の透過光学密度(TOD)(Sakura Densitometer、タイプPDA65、透過モード)を好ましくは示す。フィルムは、有効な量の不透明化剤(opavifying agent)をポリマーブレンドに組み込むことによって、好都合に不透明にされる。適切な不透明化剤は、相溶性を有さない樹脂充填剤、粒子無機充填剤、または2つ以上のそのような充填剤の混合物を含む。好ましい粒子無機充填剤は、二酸化チタンおよびシリカを含む。適切な相溶性を有さない樹脂は、ポリアミドおよびオレフィンポリマーを含み、特にその分子に6個までの炭素原子を含むモノアルファオレフィンのホモまたはコポリマーを含む。所定層に存在する充填剤の量は、層ポリマーの重量に基づき、好ましくは1重量%から30重量%、より好ましくは3重量%から20重量%、特に4重量%から15重量%、および特に5重量%から10重量%の範囲にある。
【0044】
基板に平坦化被覆組成物を適用する前に、被覆の接着を促進するために基板を前処理することが望ましいことがある。火炎処理、コロナ放電、および/または樹脂被覆などの当業者に知られている様々な接着促進技術を使用することができる。
【0045】
好ましい実施形態において、基板は、平坦化被覆組成物への基板の接着を改善するためにプライマー層で被覆される。プライマー層は、ポリエステルおよびアクリル樹脂を含む当技術で知られている任意の適切な接着促進ポリマー組成物であり得る。プライマー組成物は、また、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の混合物であり得る。アクリル樹脂は、任意にオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含むことができる。プライマー組成物のポリマーは、好ましくは水溶性または水分散性である。
【0046】
ポリエステルプライマー成分は、以下のジカルボン酸およびジオールから得られる成分を含む。適切な二酸は、テレフタール酸、イソフタル酸、フタル酸、フタル酸無水物、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、脂肪酸、トリメリト酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、および5−ナトリウムスルホイソフタール酸を含む。2つ以上のジカルボン酸成分を使用するコポリエステルが好ましい。ポリエステルは、マレイン酸またはイタコン酸などのわずかな量の不飽和の二酸成分、またはp−ヒドロキシ安息香酸などのわずかな量のヒドロキシカルボン酸成分を任意に含むことができる。適切なジオールは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、およびポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを含む。ポリエステルのガラス転移点は、好ましくは40℃から100℃、さらに好ましくは60℃から80℃である。適切なポリエステルは、比較的わずかな量の1つ以上の他のジカルボン酸コモノマー、特にイソフタル酸およびナトリウムスルホイソフタール酸などの芳香族二酸、および任意に比較的わずかな量のジエチレングリコールなどのエチレングリコールとは異なる1つ以上のグリコールを有する、PETまたはPENのコポリエステルを含む。
【0047】
一実施形態において、プライマー層は、アクリレートまたはメタクリレートポリマー樹脂を含む。アクリル樹脂は、1つ以上の他のコモノマーを含むことができる。適切なコモノマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルなどである)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、および2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ含有モノマー、グリシジル(glycidyl)アクリレート、グリシジルメタクリレート、およびアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸、およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第四級アミン塩など)などのカルボキシル基またはその塩含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基は、好ましくは上述のアルキル基から選択される)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基は、好ましくはメトキシ、エトキシ、ブトキシ、イソブトキシなどである)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、およびN−フェニルメタクリルアミド、マレイン酸無水物およびイタコン酸無水物などの酸無水物、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、イタコン酸モノアルキル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、およびブタジエンを含む。好ましい実施形態において、アクリル樹脂は、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含む1つ以上のモノマーで共重合化される。
【0048】
オキサゾリン基を含むモノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、および2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンを含む。1つ以上のコモノマーを使用できる。2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0049】
ポリアルキレンオキシド鎖を含むモノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル部分にポリアルキレンオキシドを付加することによって得られるモノマーを含む。ポリアルキレンオキシド鎖は、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドを含む。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返しユニットは、3から100であることが好ましい。
【0050】
プライマー組成物が、ポリエステルおよびアクリル成分の混合物、特にオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含むアクリル樹脂を含む場合に、ポリエステルの含有量は、5重量%から95重量%、好ましくは50重量%から90重量%であり、アクリル樹脂の含有量は、5重量%から90重量%、好ましくは10重量%から50重量%であることが好ましい。
【0051】
他の適切なアクリル樹脂は、
(i)(a)35モル%から40モル%のアルキルアクリレート、(b)35%から40%のアルキルメタクリレート、(c)10モル%から15モル%のイタコン酸などの遊離カルボキシ基を含むコモノマー、および(d)15モル%から20モル%のp−スチレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸および/またはその塩のコポリマーであって、その一例が、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献7に開示されるような、比率37.5/37.5/10/15モル%の、エチルアクリレート/メチルメタクリレート/イタコン酸/p−スチレンスルホン酸、および/またはその塩を含むコポリマー、および、
(ii)アクリルおよび/またはメタクリルポリマー樹脂であって、その一例が、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献8に開示されるような、約35モル%から60モル%のエチルアクリレート、約30モル%から55モル%のメチルメタクリレート、および約2モル%から20モル%のメタクリルアミドを包むもの
を含む。
【0052】
プライマーまたは接着層は、基板への接着を改善し、かつ内部架橋結合可能でもあるべきである架橋剤も含むことができる。適切な架橋剤は、メラミンとホルムアルデヒドの任意にアルコキシル化された縮合生成物を含む。プライマーまたは接着層は、架橋剤の架橋を容易にするために、硫酸アンモニウムなどの架橋触媒を含むこともできる。他の適切な架橋剤および触媒は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献7に開示される。
【0053】
プライマー被膜は、フィルムの取り扱いを補助するためにわずかな量の1つ以上のタイプの充填剤粒子も含むことができ、特に平坦化被覆組成物が、オフラインで被覆される。一実施例において、充填剤は、シリカ、および/またはシリカとチタニアの複合無機粒子を含むことができる。微細な粒子の平均粒子直径は、好ましくは40nmから120nmに及ぶ。プライマー被膜は、本明細書に開示されるように基板の光学特性に害を及ぼすべきではない。
【0054】
プライマー層は、フィルム表面の取り扱いおよびスリップ特性を改善するために脂肪族ワックスを任意に含むことができる。脂肪族ワックスの含有量は、好ましくは、改善を得るために少なくとも0.5重量%であり、好ましくは0.5重量%から30重量%であり、さらに好ましくは1重量%から10重量%である。ポリエステルフィルム基板および以降に適用される層へのプライマー層の接着に害を及ぼすことがあり得るので、含有量が30重量%を超えることは望ましくない。適切な脂肪族ワックスは、ブラジルロウヤシワックス、キャンデリアワックス、ライスワックス、木蝋(Japan tallow)、ホホバ油、パームワックス、ロジン改質ワックス、アウリキュリ(ouricury)ワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、およびバークワックスなどの野菜ワックス、密蝋、ラノリン、鯨蝋、イボタ蝋(insect wax)、セラックワックスなどの動物ワックス、モンタン蝋、オゾケライト、およびセレシンワックスなどの鉱物ワックス、パラフィンワックス、微結晶ワックス、および石油などの石油ワックス、Fischer−Tropschワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンオキシドワックス、ポリプロピレンワックス、およびポリプロピレンオキシドワックスなどの合成炭化水素ワックスを含む。ブラジルロウヤシワックス、パラフィンワックス、およびポリエチレンワックスが好ましい。水分散剤としてワックスを使用することが好ましい。
【0055】
プライマー被膜は、当技術分野で知られているような、帯電防止剤および/または湿潤剤を含むことができる。
【0056】
さらに適切なプライマーは、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献9に開示される。
【0057】
基板上へのプライマー層の被覆は、インラインまたはオフラインで実施することができるが、好ましくは「インライン」で実施され、好ましくは二軸延伸動作の前方延伸と側方延伸との間に実施される。
【0058】
任意に下塗り基板は、次に平坦化組成物で被覆される。本明細書で使用されるように、用語「平坦化被覆組成物」は、基板に適用されたときに、基板の表面平滑性を増大するポリマー被覆組成物を言い、好ましくは、本明細書で測定されるようにRa値が、0.7nm未満であり、好ましくは0.6nm未満であり、好ましくは0.5nm未満であり、好ましくは0.4nm未満であり、好ましくは0.3nm未満であり、理想的には0.25nm未満であるように、かつ好ましくは、本明細書で測定されるようにRq値が、0.9nm未満であり、好ましくは0.8nm未満であり、好ましくは0.75nm未満であり、好ましくは0.65nm未満であり、好ましくは0.6nm未満であり、好ましくは0.50nm未満であり、好ましくは0.45nm以下であり、好ましくは0.35nm未満であり、理想的には0.30nm未満であるように、表面平滑性が改善される。
【0059】
好ましい実施形態において、平坦化被覆組成物は、ポリシロキサン、好ましくは特許文献4に開示されるようなポリシロキサンであり、
(a)約5重量パーセントから約50重量パーセントの固体であって、この固体は、約10重量パーセントから約70重量パーセントのシリカ、および約90重量パーセントから約30重量パーセントの一般式RSi(OH)3(式中、Rは、メチル、および約40%までの、ビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される基から選択される。)の部分的に重合された有機シラノールを含むもの、および
(b)約95重量パーセントから約50重量パーセントの溶媒であって、この溶媒は、約10重量パーセントから約90重量パーセントの水、および約90重量パーセントから約10重量パーセントの低脂肪アルコール含むもの、
を含む組成物から誘導されるポリシロキサンを含み、
前記被覆組成物は、約3.0から約8.0のpH、好ましくは約3.0から約6.5のpHを有する。
【0060】
好ましいポリシロキサン平坦化被覆組成物は、特に有効なバリア特性をもたらす表面を、バリア層、特に二酸化ケイ素バリア層が、本明細書で以下に記載される好ましい堆積技術に従って、その上に適用されたときに、提供する。
【0061】
好ましくは被覆組成物のpHは、6.2未満、好ましくは約6.0以下である。好ましくは被覆組成物のpHは、少なくとも3.5、好ましくは少なくとも4.0である。一実施形態において、被覆組成物のpHは、約4.0から約5.0の範囲、好ましくは約4.1から約4.8の範囲、好ましくは約4.3から約4.5の範囲にある。被覆溶液のpHは、酸性溶液または塩基性溶液の添加を含む当業者によく知られている技術に従って調整することができる。例えば、pHの調整に適した酸は、塩酸および酢酸を含み、適切な塩基は、水酸化ナトリウムを含む。
【0062】
被覆組成物のシリカ成分は、例えば、テトラエチルオルトシリケートを加水分解し、ポリケイ酸を形成することによって得ることができる。加水分解は、例えば脂肪族アルコールおよび酸の添加によって、従来の手順を使用して実施することができる。あるいは、本発明の被覆組成物で使用されるシリカは、コロイド状シリカであり得る。コロイド状シリカは、一般的に約5nm〜25nm、好ましくは約7nm〜15nmの粒子サイズを有するべきである。本発明で使用することができる典型的なコロイド状シリカは、「Ludox SM」、「Ludox HS−30」、および「Ludox LS」分散剤(Grace Davison)として市販で入手可能なコロイド状シリカを含む。
【0063】
有機シラノール成分は、一般式RSi(OH)3を有する。R基の少なくとも約60%、および好ましくはこれら基の約80%から100%はメチルである。R基の約40%までが、ビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルから選択された高級アルキルまたはアリールであり得る。
【0064】
シリカおよび部分的に重合された有機シラノールを含む被覆組成物の組み合わされた固体は、全被覆組成物の約5重量パーセントから50重量パーセントまでを構成する。これらの固体の中でシリカは、約10重量パーセントから70重量パーセントまで、好ましくは約20重量パーセントから60重量パーセントまでを構成すべきであり、補足する残りは、有機シロキサノールを含む。本明細書における有機シロキサノールの重量パーセントは、RSiO1.5として計算される。
【0065】
被覆組成物の溶媒成分は、一般に水および1つ以上の低級脂肪族アルコールの混合物を含む。水は、一般的に溶媒の約10重量パーセントから90重量パーセントを構成し、一方、低級脂肪族アルコールは、補足的に約90重量パーセントから10重量パーセントを構成する。脂肪族アルコールは、一般に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、およびターシャーリーブタノールなどの1個から4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールである。
【0066】
水およびアルコールの基本的な溶媒成分に加えて、成分の溶媒部分は、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの、約10重量パーセントまでの相溶性極性溶媒をさらに含むことができる。
【0067】
被覆組成物に存在することができるさらに他の成分は、硬化触媒を含む。これらは、好ましくは組成物の全重量に基づき約0.01%から0.1%の濃度、特に約0.01重量%から0.3重量%で存在する。被覆組成物に使用することができる硬化触媒は広範囲に変化することができる。代表的な触媒は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、蟻酸ナトリウム、および蟻酸カリウムなどのカルボン酸のアルカリ金属塩を含む。使用することができる他の代表的な硬化触媒は、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムカルボキシレートを含む。
【0068】
他の適切な被覆組成物が、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献10および11に開示される。そこに開示される組成物は、低減されたアルカリ金属カチオン含有量(アルカリ金属は、シリカヒドロゾルを安定化するために使用されていた)を有し、かつとりわけポリマー基板への改善された接着性を示す。
【0069】
組成物は、特に使用される開始材料に応じて、様々な技術によって調製されることができる。例えば、有機トリアルコキシシランが、予備加水分解されたポリケイ酸の存在で加水分解することができる。あるいは、有機トリアルコキシシランは、予備加水分解することができ、次に、ポリケイ酸の溶液に添加され、しばしば結果として特に迅速な硬化時間を生じる。これら組成物の調製におけるさらに別の代替法は、有機トリアルコキシシランとテトラエチルオルソシリケートを共に共加水分解することである。
【0070】
コロイド状シリカが、被覆組成物におけるシリカ源として使用される場合、有機シラノールは、有機トリアルコキシシランの予備加水分解を通して、または酸性化されたコロイド状シリカ分散物の存在における有機トリアルコキシシランの加水分解によって、シリカと混合することができる。組成物に必要な成分の調製および混合のさらに他の方法は、個別成分の取り扱いにおいて当業者には明らかである。
【0071】
被覆組成物は、連続ならびに浸漬被覆の手順を含む、従来の被覆技術を使用して適用することができる。被覆は、一般に、約1ミクロンから約20ミクロン、好ましくは約1.5ミクロンから10ミクロン、約2ミクロンから約10ミクロン、特に約3ミクロンから約10ミクロンの乾燥厚さで適用される。被覆組成物は、フィルム製造とは別個のプロセスステップとして「オフライン」、またはフィルム製造プロセスの一連として「インライン」で適用することができる。被覆されたフィルムの表面平滑性を改善するために、塵粒子などからの汚染を避けることが望ましく、したがって、被覆が、好ましくは、塵のない環境においてオフラインで行われる。
【0072】
基板へ適用した後で被覆組成物は、約20℃から約200℃、好ましくは約20℃から約150℃の温度で硬化することができる。20℃の周囲温度では、数日の硬化時間が必要であるが、150℃の高温では、数秒間で被覆を硬化する。
【0073】
基板層が平坦にされると、無機バリア層が適用される。一態様において、本明細書で記載されるバリア特性における改善を達成するために、本発明は、以下に記載される方法で適用される平坦化された基板と無機バリア層との組合せにある。バリア層の厚さは、好ましくは約2nmから約750nm、好ましくは約2nmから約500nm、好ましくは約10nmから約400nmであり、一実施形態において、厚さは、約2nmから約300nm、好ましくは10nmから約200nmである。バリア層の形成に適切な材料は、低い水分透過性を示し、かつ水分に対して安定な無機材料である。その例には、SiO2、SiO、GeO、Al23、ZrO2などの酸化物、TiN、Si34などの窒化物、Al、Ag、Au、Pt、Niなどの金属が挙げられる。好ましい実施形態において、バリア層は、二酸化ケイ素、ZrO2、またはSi34、および好ましくは二酸化ケイ素を含む。バリア層は、連続するステップで適用される、同一または異なる、好ましくは同一の2つ以上の別個の無機材料の層を含むことができる。好ましくは、バリア層は、無機材料の1つの層を含む。
【0074】
改善されたバリア特性は、システムへのエネルギー入力が従来技術におけるものよりも高い気相蒸着技術を使用して、バリア材料を適用することによって与えられることが見出された。適切なプロセスは、例えば、プラズマ電子ビーム技術、プラズマスパッタリング技術などのプラズマ気相蒸着技術を含む。スパッタリング技術が好ましい。好ましいより高いエネルギー技術は、無機バリア材料の構造を修正し、より密にパックされた層を提供することによってその密度における増大を導くことができると考えられる。本発明者らは、使用される技術が、基板上に堆積されるバリア材料の柱状パターンの成長を避けることができると考える。柱状の成長パターンは、被覆されたバリア材料のナノスケールの間隔を通して気相拡散を可能にすることがあり、それによって、バリア特性を低減する。
【0075】
スパッタリングは、薄膜被覆の堆積に関するよく知られた技術であり、多数の変形を有する。その基本的な形態において、固体ターゲットは、所望の薄膜の化学的構成で1つ以上の要素を含み、スパッタリングガス(通常はアルゴンなどの不活性ガス)の活性なイオンで衝突される。これらの活性なイオンは、ターゲット表面の少なくとも一部から原子を物理的に取り除くことができる。ターゲットは、通常チャンバ内に含まれ、最初に空気および水蒸気を取り除くために初期圧力に排気され、次に動作圧力に不活性ガスで戻される。ターゲットから取り除かれた(スパッタリングされた)原子は、他のガス原子/分子との衝突を介して大きなエネルギーが失われることなく、チャンバの減圧で少なくとも数センチメートルの距離を自由に移動する。スパッタリングされた原子の少なくとも一部は、基板に到達し、基板で、少なくとも一部の原子は、付着しかつ薄膜の被覆を形成する。プロセスは、薄膜の被覆の所望の厚さが得られるまで継続される。複数のターゲットおよび複数の電源が、堆積速度を増大するために、または均一性を確実するために使用できる。
【0076】
マグネトロンスパッタリングのプロセスにおいて、磁界が、スパッタリングガスのイオン化レベルが増大するようにターゲットの後に作られる。これは、ターゲットから原子の取り除き速度において大きな増大、したがって所定の被覆厚さを得るために必要な時間の低減を導く。動作圧力の広範な範囲に対するプロセスの安定性の増大を含む、多数の他の利点が存在する。複数の磁石が、堆積速度を増大するために、または均一性を確実にするために使用することができる。
【0077】
反応性スパッタリングのプロセスにおいて、酸素および/または窒素などの反応性ガスは、スパッタリングガスに加えて、またはスパッタリングガスの代わりにチャンバ内に導入される。反応性ガスは、スパッタリングされた原子と結合し、基板上に酸化物または窒化物または酸窒化物(oxynitride)などの化合物薄膜を形成する。その最も一般的な実施形態において、固体要素ターゲットは、スパッタリングガスおよび反応性ガスとともに使用される(例えば、固体アルミニウムターゲットは、酸素の存在下でアルゴンによってスパッタリングされ、アルミニウム対酸素比が、通常の化学量論的な比率を有することがあるまたは有さないことがある、アルミニウム酸化物を形成することがある。)。
【0078】
DC(直流)スパッタリングのプロセスにおいて、直流電源が使用される。代替電源は、数キロヘルツの周波数での交流(AC)、および無線周波数(RF)電源である。高パワーDC電源は、交流電源より実質的により安価であり、DCスパッタリングは、金属薄膜の堆積に特に適している。
【0079】
パルス状DCスパッタリングのプロセスにおいて、DC電源はパルス状である(単極性(unipolar)または双極性(bipolar))。この方法は、高速度でスパッタリングされないターゲット部分上の酸化物の形成によって引き起こされる、反応性マグネトロンスパッタリングのすべての問題を回避する。これら堆積物は、DC電源およびスパッタリングガスイオンによって帯電される誘電体コンデンサとして作用する。最終的に誘電体絶縁破壊を生じ、非常に大きな局所化された電流が電源から引き出されることになり、かつ基板上にターゲット表面からの小滴または粒子の排出も生じる。これは、電源および被覆の品質を劣化させる。電源をパルス状にすることは、ターゲット酸化物に蓄積される電荷を散逸することによってこの効果を低減することを可能にし、スパッタリングガスイオンおよびスパッタリングされた原子の平均エネルギーを増大するさらなる利点を有する。
【0080】
マイクロ波で活性化された(マイクロ波補助された)スパッタリングのプロセスにおいて、マイクロ波プラズマ源は、バリア層の堆積の間にスパッタリングチャンバ内で反応性ガスを活性化し、および/またはスパッタリングされた原子の堆積の前に基板のプラズマ前処理を行うために使用される。マイクロ波活性化は、反応性スパッタリングにおいて特に有利である。なぜなら、プラズマは、ガスが他の状態であるよりも反応性であり、より容易に所望の化合物薄膜を形成するからである。複数のマイクロ波源を用いることができる。
【0081】
したがって、本発明に記載されるプロセスは、スパッタリングチャンバ内のプラズマ環境の生成を含む。本明細書で使用されるように、用語「プラズマ」は、高温でイオン化されたガス状雰囲気(これは、いくつかのイオン化されていない分子または原子も含んでいてもよい)であって、結果として生じる電荷がなく、正および負イオンの数が等しいものを言う。
【0082】
単一のプラズマ源または複数のプラズマ源を使用することができ、複数の源が使用される場合、それら源は、順次にまたは同時に使用することができる。複数の源は、同一または異なっていてもよい。好ましい実施形態において、プラズマは、複数の源、例えば、典型的には装置において空間的に分離されるマイクロ波およびマグネトロンプラズマ源から生成される。
【0083】
本明細書で使用されるように、「より高いエネルギーの気相蒸着技術」は、システムへのエネルギー入力が、従来のスパッタリング技術におけるものよりも高い、マグネトロンスパッタリング、反応性マグネトロンスパッタリング、およびパルス状DC反応性マグネトロンスパッタリングなどのプロセスを言う。プラズマ強化なしに行われる(以下に規定されるように)とき、そのようなプロセスは、本明細書に記載される好ましい平坦化およびバリア層で特に有用である。
【0084】
本発明の好ましいプロセスは、プラズマ強化されたプロセスである。本明細書で使用されるように、「プラズマ強化された」プロセスは、
(i)バリア層の堆積の間に、追加のプラズマ源(従来のスパッタリングまたはマグネトロンスパッタリングプロセスなどの従来の気相蒸着環境に対して)が存在し、2つ以上のプラズマ源が、バリア層の堆積の間に使用される(例えば、マイクロ波で活性化されたマグネトロンスパッタリングまたはマイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリング)プロセスを含み、および/または
(ii)プラズマ源(例えば、マイクロ波源)は、バリア層を堆積する前に基板のプラズマ前処理を実施するために使用される、
プロセスを言う。
【0085】
好ましくは、本発明のプロセスは、無機バリア被覆の堆積前に平坦化された基板のプラズマ前処理を行うステップを含み、好ましくは、バリア層堆積の間に前述の追加のプラズマ源をさらに含む。一実施形態において、プラズマ前処理は、約2分から8分の間、好ましくは約5分の持続期間の間に、スパッタリングガス(好ましくは、アルゴンまたはアルゴンおよび酸素、好ましくはアルゴンおよび酸素)中で行われる。好ましくは、プラズマ前処理は、マイクロ波で活性化され、すなわちマイクロ波プラズマ源を使用して、典型的には他のプラズマ源なしに行われる。
【0086】
本発明における好ましいスパッタリング方法は、パルス状のDC反応性マグネトロンスパッタリング、好ましくはマイクロ波で活性化されたパルス状のDC反応性マグネトロンスパッタリングである。
【0087】
スパッタリングプロセスにおいて、初期圧力は、好ましくは10-6トール以下である。動作圧力は、好ましくは2ミリトールから5ミリトールの範囲にある。スパッタリングガスは、好ましくはアルゴンである。反応性ガスは好ましくは酸素である。シリコンまたは他のわずかにドープされたシリコンターゲット、典型的にはボロンでドープされたシリコンターゲットを含む、スパッタリング技術において従来の任意のターゲットが使用される。好ましくは、DC電源は、約2kWから約6kW(ほぼ38cm×13cmサイズの矩形ターゲットに関して)の範囲にある。好ましくは、マイクロ波電源は、約1kWから約3kWの範囲にある。
【0088】
バリア層を含む複合フィルムは、好ましくは、10-2g/m2/日未満、より好ましくは10-3g/m2/日未満、より好ましくは10-4g/m2/日未満、より好ましくは10-5g/m2/日未満、最も好ましくは10-6g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)を示し、かつ/または10-3mL/m2/日未満、より好ましくは10-4mL/m2/日未満、最も好ましくは10-5mL/m2/日未満の酸素透過速度(OTR)を示す。スパッタリングプロセスのパラメータは、所望のWVTRおよび/またはOTRを達成するために制御されることができる。
【0089】
ポリマー基板、平坦化被覆層、および無機バリア層を含む複合フィルムは、好ましくは特に低い収縮を示す。好ましい実施形態において、複合フィルムの収縮は、本明細書で規定されるように150℃で30分後、0.01%以下、好ましくは0.005%以下、好ましくは0.0025%以下である。
【0090】
一実施形態において、本発明の複合フィルムは、基板層、および本明細書で記載されるようにその両面に平坦化被覆層を含む。このタイプの対称フィルムは、以降の加工処理の間にフィルムカールが最小化され、または避けられる、寸法安定フィルムを提供するのに特に有用である。この実施形態において、バリア層は、被覆基板の一方または両方の表面に、好ましくは両方の表面に提供することができる。
【0091】
本発明は、したがって複合フィルム、特に電子または光電子デバイス(特にデバイスが導電ポリマーを含む)における基板として使用するのに適している複合フィルムの製造方法を提供する。前記方法は、
(i)ポリマー基板層を形成するステップと、
(ii)少なくとも1つの方向に基板層を延伸するステップと、
(iii)基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルム幅1mあたり約19から約75kgの範囲の張力において寸法制限下で熱硬化するステップと、
(iv)基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルムを熱安定化するステップと、
(v)好ましくはRa値および/またはRq値が、上述された閾値を満足するように、平坦化被覆組成物を適用するステップと、
(vi)高エネルギー気相蒸着、好ましくはプラズマ気相蒸着、好ましくはプラズマスパッタリング、好ましくはプラズママグネトロンスパッタリング、好ましくはプラズマ反応性マグネトロンスパッタリング、好ましくはプラズマパルス状のDC反応性マグネトロンスパッタリング、および好ましくは、前記プラズマ気相蒸着またはスパッタリングがマイクロ波で活性化されることによって、厚さ2nmから1000nmの無機バリア層を適用するステップとを含む。
【0092】
バリア層が堆積されると、電極およびエレクトロルミネセンス材料(例えば導電ポリマー)を含む以降の層は、当技術で知られている従来の製造技術に従って適用することができる。電極は、例えば本明細書に記載の電極から選択された電極などの当技術で知られている任意の適切な電極でよい。一実施形態において、電極は、導電金属酸化物、好ましくはインジウム錫酸化物である。
【0093】
本発明のさらなる態様に従って、本明細書で記載されるような基板層、基板層の表面上に本明細書で記載されるような平坦化被覆層、被覆層表面上に明細書で記載されるようなバリア層を含み、および任意にバリア層の表面の少なくとも一部上に電極層をさらに含み、かつ任意にエレクトロルミネセンス材料(例えば導電ポリマー)の層をさらに含む複合フィルムが提供される。本発明のこの態様の一実施形態において、複合フィルムは、前記基板層、基板層の両方の表面に前記平坦化被覆層、前記被覆基板の両方の表面にバリア層を含む。
【0094】
本発明のさらなる態様に従って、電子または光電子デバイス(特に導電ポリマーを含むデバイス)の製造方法が提供され、前記方法は、
(i)ポリマー基板層を形成するステップと、
(ii)少なくとも1つの方向に基板層を延伸するステップと、
(iii)基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルム幅1m当たり約19から約75kgの範囲の張力において寸法制限下で熱硬化するステップと、
(iv)基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルムを熱安定化するステップと、
(v)好ましくはRa値および/またはRq値が、上述された閾値を満足するように、平坦化被覆組成物を適用するステップと、
(vi)高エネルギー気相蒸着、好ましくはプラズマ気相蒸着、好ましくはプラズマスパッタリング、好ましくはプラズママグネトロンスパッタリング、好ましくはプラズマ反応性マグネトロンスパッタリング、好ましくはプラズマパルスDC反応性マグネトロンスパッタリング、および好ましくは、前記プラズマ気相蒸着またはスパッタリングがマイクロ波で活性化されることによって、厚さ2から1000nmの無機バリア層を設けるステップと、
(vii)前記電子または光電子デバイスにおける基板として、前記ポリマー基板層、前記平坦化被覆層、および前記無機バリア層を含む前記複合フィルムを提供するステップとを含む。
【0095】
本明細書で記載される複合フィルムおよび電子または光電子デバイスの製造方法は、導電材料を含む電極層を提供するステップをさらに含んでいてもよく、これは、典型的にはバリア層の少なくとも一部上に導電材料を適用することによって実施される。本明細書で記載される製造方法におけるさらなるステップは、エレクトロルミネセンス材料(例えば導電ポリマー)の層を提供するステップである。
【0096】
本発明のさらなる態様に従って、本明細書で規定されるような複合フィルムを含む電子または光電子デバイスが提供される。電子または光電子デバイスは、典型的には1つ以上のエレクトロルミネセンス材料の層、2つ以上の電極、および1つ以上の基板層をさらに含む。
【0097】
本発明の一実施形態において、用語エレクトロルミネセンスディスプレイデバイス、特に有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスとは、それぞれ電極を含む2つの層間に配置された発光エレクトロルミネセンス材料(特に導電ポリマー材料)の層を含むディスプレイデバイスを指し、生成するその複合構造は、2つの基板(または支持体または被覆)層間に配置される。
【0098】
本発明の一実施形態において、用語光電池とは、それぞれ電極を含む2つの層間に配置された導電ポリマー材料の層を含むデバイスを指し、生成するその複合構造は、2つの基板(または支持体または被覆)層間に配置される。
【0099】
本発明の一実施形態において、用語トランジスタとは、導電ポリマーの層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも1つの層、ならびに1つ以上の基板層を含むデバイスを指す。
【0100】
以下の試験方法は、ポリマーフィルムの所定の特性を決定するために使用することができる。
(i)フィルムの透明度は、全輝度透過(Total Luminance Transmission)(TLT)、およびASTM D−1003−61に従ってGardnerXL211ヘイズメータ(hazemeter)を使用して、フィルムの全体厚さを通るヘイズ(散乱された透過可視光の%)を測定することによって評価することができる。
【0101】
(ii)フィルムの透過光学濃度(TOD)は、透過モードでMacbeth Densitometer TR927(Dent&Woods Ltd、Basingstoke、UK)を使用して測定することができる。
【0102】
(iii)寸法安定性は、(a)線熱膨張係数(CLTE)、または(b)所定の軸に沿った長さの残留変化が、所定の温度にフィルムを加熱し、その後フィルムを冷却した後に測定される温度サイクル方法のいずれかによって評価することができる。
【0103】
両測定法は、温度、変位、力、固有変形(eigendeformation)、ベースライン(baseline)、および炉温度調整に関する知られている手順に従って、較正および検査した熱機械解析器PE−TMA−7(Perkin Elmer)を使用して行った。フィルムは、牽引解析クランプを使用して試験された。牽引クランプに必要なベースラインは、極低膨張係数の標本(水晶)を使用して得られ、(スキャン後のベースライン減算に依存する)CLTEの正確さおよび精密さは、標準材料、例えばCLTE値がよく知られている純粋なアルミニウムホイルを使用して評価された。元のフィルムサンプル内の知られている配向軸から選択された標本は、ほぼ12mmのクランプ分離を使用するシステム内に搭載され、5mm幅にわたる75mNの印加される力を受ける。印加される力は、フィルム厚さにおける変化に関して調整され、すなわち一定の張力を確実にし、フィルムは、解析の軸に沿って湾曲される。標本長さは、23℃の温度で測定された長さに正規化される。
【0104】
CLTE試験方法(a)において、標本は、8℃に冷却され、安定化され、次に8℃から+240℃に5℃/分で加熱される。CLTE値(α)は、式
α=ΔL/(Lx(T2−T1))
から導かれ、ここでΔLは、温度範囲(T2−T1)にわたる標本の長さにおける測定された変化であり、Lは、23℃での元の標本長さである。CLTE値は、Tgの温度(PENに関しては120℃)まで信頼性があると考えられる。
【0105】
データは、23℃に正規化された温度とともに標本長さにおける%変化の関数としてプロットすることができる。
【0106】
温度サイクル試験方法(b)において、方法(a)の手順に類似する手順が使用され、温度は、8℃と数度高い温度との間でサイクルされた。したがって、フィルムサンプルは、8℃から140℃、160℃、180℃、または200℃に加熱され、次に8℃に冷却された。それぞれ横および機械方向に沿った長さは、この熱処理の前後に25℃で測定され、長さにおける変化ΔLrは、元の長さのパーセンテージとして計算される。
【0107】
(iv)固有粘度(IV)
IVは、以下の手順を使用して溶融粘度計によって測定された。知られている温度および圧力で較正されたダイを通る予備乾燥された押出物の流れの速度は、コンピュータに結合された変換器によって測定される。コンピュータプログラムは、実験的に決定された回帰式から溶融粘度値(log10粘度)および等価量IVSを計算する。分単位の時間に対するIVのプロットは、コンピュータによって行われ、劣化速度が計算される。ゼロ時間へのグラフの外挿は、初期IVおよび等価溶融粘度を与える。ダイオリフィスの直径は、0.08までのIVに関して284℃、IV>0.80に関して295℃の溶融温度で、0.020インチである。
【0108】
(v)収縮
所定温度での収縮は、所定時間の持続期間、加熱されたオーブン内にサンプルを配置することによって測定される。%収縮は、加熱前後で所定方向におけるフィルムの寸法の%変化として計算される。
【0109】
(vi)表面平滑性
表面平滑性は、当技術でよく知られている従来の非接触、白色、移相干渉計技術を使用して測定された。使用された機器は、波長604nmの光源を使用するWyko NT3300表面プロファイラ(profiler)である。WYKO表面プロファイラ技術参照マニュアル(非特許文献2)(その開示が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照して、その技術を使用して得ることができる特徴データは、以下を含む。
【0110】
平均化パラメータ−粗さ平均(Ra):評価領域内の測定された高さ偏差および平均表面から測定された絶対値の算術平均。
【0111】
平均化パラメータ−平方根平均二乗粗さ(Rq):評価領域内の測定された高さ偏差および平均表面から測定された平方根平均二乗平均。
【0112】
極値(Extreme Value)パラメータ−最大プロファイルピーク高さ(Rp):平均表面から測定された評価領域における最高ピークの高さ。
【0113】
平均化極値パラメータ−平均最大プロファイルピーク高さ(Rpm):評価領域における10個の最高ピークの算術平均値。
【0114】
極ピーク高さ(Extreme Peak Height)分散:200nmより高い高さのRp値の数分布。
【0115】
表面積インデックス:表面の相対平坦性の尺度。
【0116】
粗さパラメータおよびピーク高さは、従来技術に従ってサンプル表面積、または「平均表面」の平均レベルに対して測定される。(ポリマーフィルム表面は、完全に平坦でないことがあり、しばしばその表面を横切って穏やかな起伏を有する。平均表面は、起伏および表面高さの逸脱(surface height departures)を通って中央に延び、平均表面上下に等しい体積が存在するようにプロファイルを分割する面である。)
【0117】
表面プロファイル解析は、単一の測定においてスキャンされる面積である表面プロファイラ機器の「視野」内のフィルム表面の別個の領域をスキャンすることによって行われる。フィルムサンプルは、別個の視野を使用して、またはアレイを形成するために連続する視野をスキャンすることによって解析することができる。本明細書で行われる解析は、各視野が480×736画素を含むWyko NT3300表面プロファイラの全解像度を使用した。
【0118】
RaおよびRqの測定のために、解像度は、50倍の倍率を有する対物レンズを使用して増強される。得られる視野は、0.163μmの画素サイズを有する90μm×120μmの寸法を有する。
【0119】
RpおよびRpmの測定のために、視野は、10倍の倍率を有する対物レンズを「0.5倍の視野の乗算器」と組み合わせて使用して、5倍の全体倍率を与えるように、好都合に増加させる。得られる視野は、1.63μmの画素サイズを有する0.9mm×1.2mmの寸法を有する。好ましくは、Rpは、100nm未満であり、より好ましくは60nm未満であり、より好ましくは50nm未満であり、より好ましくは40nm未満であり、より好ましくは30nm未満であり、かつより好ましくは20nm未満である。
【0120】
本明細書におけるRaおよびRqの測定のために、表面積の同一部分にわたる5つの連続するスキャンの結果は、平均値を与えるために組み合わされる。Rpに関して以下に提示したデータは、100個の測定値からの平均値である。測定値は、10%の変調閾値(信号雑音比)を使用して行われ、すなわち閾値未満のデータポイントは、悪いデータとして識別される。
【0121】
表面形状は、200nmより高い高さを有する極ピークの存在に関して解析することもできる。この解析において、一連のRpの測定値は、5cm2の全面積にわたる1.63μmの画素サイズで取得される。結果は、データポイントが、ピーク高さの予備決定された範囲に割り当てられるヒストグラムの形態で提示することができ、例えば、ヒストグラムは、25nmのチャネル幅のx軸に沿って等間隔で離間されたチャネルを有する。ヒストグラムは、ピーク高さ(x軸)に対するピークカウント(y軸)のグラフの形態で存在することができる。Rp値から決定される5cm2面積当たりの300nmから600nmの範囲における表面ピークの数は、計算されかつN(300−600)として表記することができる。本発明による平坦化被覆の使用は、好ましくはN(300−600)の低減を結果として生じ、平坦化被覆の適用前後のN(300−600)の比率である低減Fは、少なくとも5、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも30である。好ましくは、平坦化されたフィルム(被覆後)のN(300−600)値は、5cm2面積当たり、50未満、好ましくは35未満、好ましくは20未満、好ましくは10未満、かつ好ましくは5未満のピークである。表面積インデックスは、以下のように「3次元表面積」および「側方表面積」から計算される。サンプル面積の「3次元(3D)表面積」は、ピークおよびバレー(valley)を含む露光された3D表面積の全体である。「側方表面積」は、側方方向で測定された表面積である。3D表面積を計算するために、表面高さを有する4つの画素が、X、Y、およびZ次元を有する中心に配置された画素を生成するために使用される。4つの得られる矩形面積は、次にほぼ立方体の体積を生成するために使用される。この4つの画素ウインドウは、データセット全体を通って移動される。側方表面積は、視野における画素数を各画素のXYサイズで乗算することによって計算される。表面積インデックスは、3D表面積を側方面積で除算することによって計算され、これは表面の相対平坦性の尺度である。単位に非常に近いインデックスは、側方(XY)面積が、全体の3D面積(XYZ)に非常に近い非常に平坦な表面を表す。
【0122】
「PV95」として本明細書で言及されるピークツーバレー(Peak−to−Valley)値は、平均表面の面に対して参照される表面高さに応じて、正および負の表面高さの周波数分布から得ることができる。値PV95は、ピークツーバレー高さの差であり、最高および最低2.5%のデータポイントを省略することによって、分散曲線のピークツーバレー表面高さデータの95%を含む。PV95パラメータは、表面高さの全体のピークツーバレー広がりの統計的な有意な尺度を提供する。
【0123】
(vii)複合フィルムの浸透性および水蒸気透過速度(g/m2/日)および/または酸素透過速度(mL/m2/日)は、特許文献12に記載される(および非特許文献3でもさらに議論される)カルシウム劣化試験(calcium degradation test)を使用して測定される。図1および図2は、試験セル構成を示す。図2は、図1の線II−IIに沿った断面である。
【0124】
試験基板は、ほぼ13cm×13cmの四方の方形に切断され、残留水分を取り除くために1時間120℃に加熱される。カルシウムの薄層(2)(100nm)は、基板の中心に4個の20mm×15mmの面積のパターンで、酸素および水分のない環境で試験基板(1)上に堆積される。ガラスシートまたは蓋(3)は、閉鎖されたボックスを形成するために、実質的に密閉シール(4)を介してその縁部に沿って基板に相互接続される。シールは、例えば接着剤またははんだ金属であり得る。カルシウム層は、初期的に高い反射金属鏡である。構造体は、次に、エージング条件を加速するために60℃で90%の相対湿度の湿度チャンバ内に配置される。試験の間に、ボックス内に浸透する水または酸素は、カルシウムと反応し、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを形成する。カルシウム金属の初期層は、次第にカルシウム塩の透明層へ劣化する。層の透明性または透過率は、ボックス内に拡散した水または酸素の量に関する指標である。試験セルの写真が、定期的な間隔で取られ、サンプルの評価が続く。写真の自動化された画像解析が、カルシウム層の光学透過率の分布を生じる。濃度計(densitometer)(例えばX−rite Model 360)が、光学濃度を測定するために使用された。カルシウム−カルシウム塩積層体の透過の光学モデリングは、セル内の酸化カルシウム厚さの分布の決定を可能にする。セル内の酸化カルシウム厚さは、次に、時間の関数として水分吸収量に関係付けることができ、カプセル体(encapsulant)の実効浸透速度を生じる。試験データは、時間(x軸)に対する元のパーセンテージ(y軸)として表現された光学透過率のグラフとして報告することができる。従来、バリア特性は、その元の値の50%に低下に対する光学透過率に関して取られた時間について表現することができる。好ましくは、本発明のフィルムは、光学透過率の元の値(すなわちt=0時間で)の50%の低下に関して、特に10-3g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)と組み合わせて、少なくとも100、好ましくは少なくとも250、好ましくは少なくとも500、および好ましくは少なくとも1000の寿命(時間)を示す。
【0125】
(viii)異なる基板上の無機層の密度は、Pulker,H.K.およびSchlichtherle,S.の方法(非特許文献4)に従って、屈折率測定値から計算することができ、調製法の異なる広範なSiO2サンプルに関して、密度(ρ)および測定された屈折率(n)が、以下によって関連付けられることが示された。
【0126】
【数1】

【0127】
ここで、シリカベースの材料に関して、α/M=0.0364cm3/gおよびb=1.3である。
【0128】
屈折率は、以下のように光学測定値から得られる。UV−Vis−IRスペクトロメータ(Hitachi U−3501)が、350nmから850nmの波長範囲で、複合フィルムサンプルで透過率データを収集するために使用された。分光エリプソメータ(ellipsometer)(Jobin Yvon UV)が、55°および70°の入射角度で350nmから850nmの波長範囲にわたって、エリプソメトリック(ellipsometric)パラメータ、Ψ(プサイ)およびΔ(デルタ)を測定するために使用された。透過率プサイおよびデルタの測定値は、ポリマー基板、平坦化されたポリマー基板、および平坦化された基板ならびに無機バリア層を含む複合フィルムに行われた。これらデータから、個別層の屈折率(n)は、組み合わされた透過率およびエリプソメトリックデータへの理論モデルの最小二乗フィッティング(least−squares fitting)の標準の方法によって決定される。例えば、シリカなどの透明フィルムに関して、層の屈折率(n)は、標準のCauchyモデルによってフィッティングすることができ、それによってnの波長依存性は、以下の形態でn(λ)によって表され、ここでλは波長であり、
【0129】
【数2】

【0130】
ここで、a、b、cは調整可能なパラメータである。a、b、およびcの初期のトライアル値を使用して、透過率プサイおよびデルタは、よく知られている式(例えば、非特許文献5参照)を使用してn(λ)から計算することができる。パラメータa、b、およびcは、その後、Levenberg−Marquardt最小二乗ルーチン(例えば、上述の非特許文献5参照)を使用して、組み合わされたエリプソメトリックおよび透過率実験データへの計算されたデータの最良のフィットを得るために最適化することができる。一実施形態において、無機バリア層は、少なくとも2.4g/cm3の密度を有する。
【0131】
本発明は、さらに以下の実施例によって示される。実施例は、例示目的だけのためであり、上述された本発明を制限することを意図するものではないことは理解されるであろう。詳細の修正は、本発明の範囲から逸脱せずに行うことができる。
【実施例】
【0132】
ベースフィルム1(被覆されていない基板の調製)
ジメチルナフタレートを、標準的エステル交換反応において、210ppmの酢酸マンガン四水和物触媒の存在下でエチレングリコールと反応させ、ビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレートおよびその低オリゴマーを得た。エステル交換反応の終了時に、0.025重量%の燐酸安定化剤が添加され、次に0.036重量%の三酸化アンチモン重縮合触媒が添加される。標準のバッチ重縮合反応が実施された。
【0133】
ポリマー組成物を、押出成形し、研磨した高温回転ドラム上にキャストした。フィルムは、次に、前方延伸ユニットに供給され、フィルムは、その元の寸法のほぼ3.1倍に、押出方向に一連の温度制御ローラ上で延伸された。延伸温度は、ほぼ145℃であった。フィルムは、次に、145℃の温度の幅出し機オーブン内を通過され、フィルムは、その元の寸法のほぼ3.5倍に横向きの方向に延伸された。二軸延伸フィルムは、次に、冷却されかつリールに巻かれる前に、従来の手段によって約240℃までの温度で熱硬化された。全体のフィルム厚さは125μmであった。熱硬化された二軸延伸フィルムは、次に、繰り出され、かつ一連の4つのフロテーションオーブン(flotation oven)を通過され、ウェブ(web)の輸送制御と適合する最小線張力を印加することによって緩和させた。熱安定化されたフィルムは、次に巻き取られた。各4つのオーブンは、横方向における3つの制御された温度領域(左、中央、および右)を有した。
左 中央 右
オーブン1 200 213 200
オーブン2 200 213 200
オーブン3 200 213 200
オーブン4 195 213 195
【0134】
熱安定化ステップの間のフィルムの線速度は15m/分である。フィルムに使用される張力(1360mmの元のロール幅)は、24N〜25Nである。
【0135】
ベースフィルム2(下塗り基板の調製)
水性プライマー被膜組成物が、50nmの被覆厚さを与えるために前方延伸ステップと側方延伸ステップとの間に基板上に被覆されたことを別とすれば、ベースフィルム1に関する手順に従った。プライマー被膜は、以下の固体含有量を有していた。
【0136】
(i)67%のコポリエステルエマルジョン(コポリエステルの酸成分は、65モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸、30モル%のイソフタル酸、および5モル%の5−ナトリウムスルホイソフタール酸を含み、およびグリコール成分は、90モル%のエチレングリコールおよび10モル%のジエチレングリコールを含み、Tg=80℃、平均分子量=13000であり、特許文献13の実施例1に記載される方法に従って製造された。);
(ii)20%のアクリル樹脂の水性分散液(30モル%のメチルメタクリレート、30モル%の2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、10モル%のポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート、および30モル%のアクリルアミドを含み、Tg=50℃であり、特許文献14の製造実施例1から3に記載される方法に従って製造された。);
(iii)3%の不活性粒子(シリカおよびSiO2−TiO2、40nm〜120nmの範囲の平均粒子直径)
(iv)5%のブラジルロウヤシワックス
(v)5%のポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル
ベースフィルム3(平坦化および下塗り基板の調製)
ベースフィルム2の手順に従い、生成したフィルムは、次に、以下のようにして得られる第2の(平坦化)被覆組成物で、オフラインで被覆された。
【0137】
(i)517cm3のメチルトリメトキシシラン(OSi Specialitiesから得られる)が、室温で1034cm3の脱イオン(demineralised)水に添加され、かつ24時間攪拌された。
【0138】
(ii)54cm3の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Aldrich Chemical Companyから得られる)が、室温で108cm3の脱イオン水に添加され、かつ24時間攪拌された。
【0139】
(iii)53cm3の10%酢酸水溶液(Aldrich Chemical Company)が、700cm3のLudox LSコロイド状シリカ(12nm)に添加された。これに、162cm3の加水分解された3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン/水混合物、および1551cm3の加水分解されたメチルトリメトキシシラン/水混合物が添加された。この混合物は、被覆前に12時間攪拌された。組成物の最終pHは、6.05であった。被覆は、1分間130℃で硬化された。平坦化被覆の厚さは、2.8μm±0.2μmであった。
【0140】
ベースフィルム3の表面粗さパラメータは、表1に示される。
【0141】
【表1】

【0142】
ベースフィルム4
ベースフィルム2の手順に従い、生成したフィルムは、次に、4.0μm±0.2μmの厚さで、UV硬化されたブチルアクリレートを含む平坦ハードコート層で、オフラインで被覆された。
【0143】
ベースフィルム5、6および7
水性プライマー被膜組成物が以下の固体組成物を有することを除いて、ベースフィルム2の手順に従った。
(i)アクリルポリマー(AC201(登録商標)、Rohm and Haas)
(ii)硝酸アンモニウム
(iii)コロイド状シリカ、および
(iv)表面活性剤/乳化剤(脂肪エステル、RCO(OCH2CH2nOCH3
得られたフィルムは、次に1.9μm±0.2μm(ベースフィルム5に関して)、2.5μm±0.2μm(ベースフィルム6に関して)、および4.5μm±0.2μm(ベースフィルム7に関して)の厚さに、ベースフィルム4を作るために使用されたものと同一の第2の(平坦化)被覆組成物で、オフラインで被覆された。
【0144】
ベースフィルム1から7を、次に、以下に説明される方法に従って、厚さ100nmの二酸化ケイ素バリア層で被覆し、以後それぞれ参考例1、参考例2、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、および実施例5と呼ばれる複合フィルムを得た。
【0145】
バリア層は、ステンレス鋼チャンバ内に各ベースフィルムを配置することによって適用され、10-6トール(約1.3×10-9バール)未満の圧力に排気され、かつ3ミリトールの圧力で、アルゴンガスで5分間プラズマ前処理を受けた。マイクロ波補助されたパルス状DC反応性マグネトロンスパッタリングが、回転ドラムの周辺に支持されたポリマー基板上に、SiO2の薄膜被覆を堆積するために使用された。この回転ドラムは、シリコンおよび酸素に富むマイクロ波プラズマのスパッタリングされるターゲット正面を繰り返し通過する。堆積されたフィルムの化学量論およびその機械的および光学特性は、最適化され、一貫性は、プロセスパラメータの制御によって確実にされる。好ましいプロセスパラメータは、以下である。
(i)初期圧力:10-6トール以下、
(ii)動作圧力:3ミリトール、
(ii)スパッタリングガス:アルゴン、
(iii)反応ガス:酸素、
(iv)ターゲット:ボロンドープされたシリコンターゲット(SCI Engineering Materials,Columbus,Ohio,USによって製造された、ほぼサイズ38cm×13cmの矩形ターゲット)、
(v)DC電力:4.5kW、
(vi)マイクロ波電力:2.5kW。
【0146】
実施例のバリア特性は、本明細書で記載されるカルシウム浸透性試験で試験され、結果(表2参照)は、光学透過率の元の値(すなわちt=0時間)の50%の低下に関して寿命(時間単位)で報告された。
【0147】
【表2】

【0148】
実施例1、3、4、および5の複合フィルムは、バリア層が非平坦化基板上に直接適用された(参考例1の場合には下塗りされていない表面上、参考例2の場合には下塗りされた表面上)、参考例1または2のフィルムのバリア特性より有意に大きい優れたバリア特性を示す。実施例1、3、4、および5の複合フィルムは、実施例2のフィルムと比較したとき、驚くべき優れたバリア特性も示す。
【0149】
本明細書で記載されるように二酸化ケイ素層は、平坦層と組み合わせて使用したとき、有効なバリア層を提供することをデータは示す。データは、二酸化ケイ素層が、本明細書で記載される好ましい平坦層と組み合わせて使用されるとき、驚くべき有効なバリア性能も示す。
【0150】
実施例1は、無機バリア層としてAl23、AlN、ZrO2、またはSi34を使用して繰り返され、良好なバリア特性が観察された。
次に、本発明の態様を示す。
1. 複合フィルムの製造方法であって、
(i)ポリマー基板層を形成するステップと、
(ii)少なくとも1つの方向に前記基板層を延伸するステップと、
(iii)前記基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルム幅の1mあたり19から75kg/mの範囲の張力において寸法制限下で熱硬化するステップと、
(iv)前記基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、前記フィルムを熱安定化するステップと、
(v)平坦化被覆組成物を適用するステップであって、前記被覆基板の表面が、0.7nm未満のRa値および/または0.9nm未満のRq値を示すように適用するステップと、
(vi)マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって厚さ2から1000nmの無機バリア層を設けるステップと
を含むことを特徴とする方法。
2. 前記スパッタリングは、パルスDCスパッタリングであることを特徴とする上記1に記載の方法。
3. ステップ(vi)は、前記バリア層の堆積の前に前記平坦化基板のプラズマ前処理をさらに含むことを特徴とする上記1または2に記載の方法。
4. 前記プラズマ前処理は、マイクロ波で活性化されることを特徴とする上記3に記載の方法。
5. 前記無機バリア層の堆積前に、平坦化された基板が、2分から8分の間の期間、プラズマ前処理を受けることを特徴とする上記3または4に記載の方法。
【0151】
6. スパッタリングガスがアルゴンであり、初期圧力が10-6トール以下であり、動作圧力が、2ミリトールから5ミリトールの範囲にあることを特徴とする上記1から5のいずれかに記載の方法。
7. 前記平坦化被覆組成物が、ポリシロキサンを含むことを特徴とする上記1から6のいずれかに記載の方法。
8. 前記平坦化被覆組成物が、
(a)5重量パーセントから50重量パーセントの固体であって、前記固体は、10重量パーセントから70重量パーセントのシリカ、および90重量パーセントから30重量パーセントの一般式RSi(OH)3(式中、Rは、メチル、および40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピルおよびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される基から選択される)の部分的に重合された有機シラノールから構成されるもの、および
(b)95重量パーセントから50重量パーセントの溶媒であって、前記溶媒は、10重量パーセントから90重量パーセントの水、および90重量パーセントから10重量パーセントの低脂肪アルコールから構成される溶媒、
から誘導され、
前記被覆組成物は、3.0から8.0のpHを有することを特徴とする上記1から7のいずれかに記載の方法。
9. 前記シリカは、5nmから25nmの粒子サイズを有するコロイド状シリカであることを特徴とする上記8に記載の方法。
10. 前記被覆組成物の前記pHが、3.0から6.5の範囲にあることを特徴とする上記8または9に記載の方法。
【0152】
11. 前記ポリマー基板は、ポリ(エチレンナフタレート)またはポリ(エチレンテレフタレート)から誘導されることを特徴とする上記1から10のいずれかに記載の方法。
12. 前記ポリマー基板は、2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されることを特徴とする上記1から11のいずれかに記載の方法。
13. 前記ポリ(エチレンナフタレート)が、0.5〜1.5の固有粘度を有することを特徴とする上記11または12に記載の方法。
14. 前記複合フィルムは、10-3g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)を示すことを特徴とする上記1から13のいずれかに記載の方法。
15. 前記複合フィルムは、10-6g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)を示すことを特徴とする上記14に記載の方法。
16. 前記複合フィルムは、10-3mL/m2/日未満の酸素透過速度(OTR)を示すことを特徴とする上記1から15のいずれかに記載の方法。
17. 前記複合フィルムの前記ポリマー基板は、230℃、30分で1%未満の収縮を有することを特徴とする上記1から16のいずれかに記載の方法。
18. 前記複合フィルムの前記ポリマー基板は、8℃から200℃まで前記フィルムを加熱し次いで8℃に冷却する前後の25℃で測定された、元の寸法の0.75%未満の残留寸法変化ΔLrを有することを特徴とする上記1から17のいずれかに記載の方法。
19. 前記複合フィルムの前記ポリマー基板は、40×10-6/℃未満の−40℃から+100℃の温度範囲内の線熱膨張係数(CLTE)を有する、ポリ(エチレンナフタレート)フィルムを含む熱安定化され熱硬化された配向フィルムであることを特徴とする上記1から18のいずれかに記載の方法。
20. 前記複合フィルムは、<1.5%の散乱可視光(ヘイズ)の%を有することを特徴とする上記1から19のいずれかに記載の方法。
【0153】
21. 前記基板が、二軸配向されることを特徴とする上記1から20のいずれかに記載の方法。
22. 前記平坦化被覆基板の表面が、0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すことを特徴とする上記1から21のいずれかに記載の方法。
23. 前記複合フィルムは、150℃、30分で0.01%以下の収縮を有することを特徴とする上記1から22のいずれかに記載の方法。
24. 前記無機バリア層が、二酸化ケイ素を含むことを特徴とする上記1から23のいずれかに記載の方法。
25. 電子または光電子デバイスの製造方法であって、
(i)ポリマー基板層を形成するステップと、
(ii)少なくとも1つの方向に前記基板層を延伸するステップと、
(iii)前記基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルム幅の1mあたり19から75kg/mの範囲の張力において寸法制限下で熱硬化するステップと、
(iv)前記基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、前記フィルムを熱安定化するステップと、
(v)平坦化被覆組成物を適用するステップであって、前記被覆基板の表面が、0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すように適用するステップと、
(vi)マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって厚さ2から1000nmの無機バリア層を適用するステップと、
(vii)前記電子または光電子デバイスにおける基板として、前記ポリマー基板層、前記平坦化被覆層、および前記無機バリア層を含む前記複合フィルムを提供するステップとを含むことを特徴とする方法。
26. 前記バリア層を適用するステップは、上記2から6のいずれかで規定される通りであることを特徴とする上記25に記載の方法。
【0154】
27. 前記無機バリア層の前記表面の少なくとも一部上に導電材料を適用することによって電極層を提供するステップをさらに含むことを特徴とする上記1から26のいずれかに記載の方法。
28. 複合フィルムを含む電子または光電子デバイスであって、前記複合フィルムは、ポリマー基板、平坦化被覆層、および無機バリア層を含み、前記バリア層は、2nmから1000nmの厚さを有し、マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって前記バリア層を適用することによって得ることができ、前記複合フィルムは、電極層をさらに含むことを特徴とする電子または光電子デバイス。
29. 前記複合フィルムおよび/またはその製造方法が、上記1から24および上記27のいずれかで規定される通りであることを特徴とする電子または光電子デバイス。
30. 前記電子または光電子デバイスは、導電性共役ポリマーを含むことを特徴とする上記28または29に記載のデバイス。
31. 前記デバイスは、エレクトロルミネセンスディスプレイデバイスであることを特徴とする上記28から30のいずれかに記載のデバイス。
32. 前記デバイスは、有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスであることを特徴とする上記28から30のいずれかに記載のデバイス。
33. ポリマー基板、平坦化被覆層、および無機バリア層を含む複合フィルムであって、前記バリア層は、2nmから1000nmの厚さを有し、マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって前記バリア層を適用することによって得ることができ、前記複合フィルムは、電極層をさらに含むことを特徴とする複合フィルム。
34. 前記複合フィルムは、上記7から24のいずれかで規定される通りであることを特徴とする上記33に記載の複合フィルム。
35. 前記バリアを適用するステップは、上記1から6のいずれかで規定される通りであることを特徴とする上記33または34に記載の複合フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基板、平坦化被覆層、および無機バリア層を含む複合フィルムであって、前記バリア層は、2nmから1000nmの厚さを有し、マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって得ることができる前記複合フィルム。
【請求項2】
無機バリア層の表面の少なくとも一部に電極層をさらに含む請求項1記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記平坦化被覆した基板の表面が、0.7nm未満のRa値および/または0.9nm未満のRq値を示す請求項1又は2記載の複合フィルム。
【請求項4】
(i)ポリマー基板層を形成するステップと、
(ii)少なくとも1つの方向に前記基板層を延伸するステップと、
(iii)前記基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、フィルム幅の1mあたり19から75kg/mの範囲の張力において寸法制限下で熱硬化するステップと、
(iv)前記基板層のポリマーのガラス転移温度より高いが、その溶融温度より低い温度で、前記フィルムを熱安定化するステップと、
(v)平坦化被覆組成物を適用するステップであって、前記被覆基板の表面が、0.7nm未満のRa値および/または0.9nm未満のRq値を示すように適用するステップと、
(vi)マイクロ波で活性化された反応性マグネトロンスパッタリングによって厚さ2から1000nmの無機バリア層を設けるステップと
を含む製造方法により得ることができる請求項1記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記スパッタリングは、パルスDCスパッタリングである請求項1〜4のいずれか1項記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記バリア層の堆積の前に前記平坦化基板のプラズマ前処理をさらに含む方法により得ることができる請求項1〜5のいずれか1項記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記プラズマ前処理は、マイクロ波で活性化される請求項6記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記無機バリア層の堆積前に、平坦化された基板が、2分から8分の間の期間、プラズマ前処理を受ける請求項6または7に記載の複合フィルム。
【請求項9】
スパッタリングガスがアルゴンであり、初期圧力が10-6トール以下であり、動作圧力が、2ミリトールから5ミリトールの範囲にある請求項1から8のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記平坦化被覆組成物が、ポリシロキサンを含む請求項1から9のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項11】
前記平坦化被覆組成物が、
(a)5重量パーセントから50重量パーセントの固体であって、前記固体は、10重量パーセントから70重量パーセントのシリカ、および90重量パーセントから30重量パーセントの一般式RSi(OH)3(式中、Rは、メチル、および40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピルおよびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される基から選択される)の部分的に重合された有機シラノールから構成されるもの、および
(b)95重量パーセントから50重量パーセントの溶媒であって、前記溶媒は、10重量パーセントから90重量パーセントの水、および90重量パーセントから10重量パーセントの低脂肪アルコールから構成される溶媒、
を含む組成物であって、
3.0から8.0のpHを有する組成物から、平坦化被覆層が誘導される請求項1から10のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記シリカは、5nmから25nmの粒子サイズを有するコロイド状シリカである請求項11に記載の複合フィルム。
【請求項13】
前記被覆組成物の前記pHが、3.0から6.5の範囲にある請求項11または12に記載の複合フィルム。
【請求項14】
前記ポリマー基板は、ポリ(エチレンナフタレート)またはポリ(エチレンテレフタレート)から誘導される請求項1から13のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項15】
前記ポリマー基板は、2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項16】
前記ポリ(エチレンナフタレート)が、0.5〜1.5の固有粘度を有する請求項11または12に記載の複合フィルム。
【請求項17】
前記複合フィルムは、10-3g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)を示すことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項18】
前記複合フィルムは、10-6g/m2/日未満の水蒸気透過速度(WVTR)を示すことを特徴とする請求項17に記載の複合フィルム。
【請求項19】
前記複合フィルムは、10-3mL/m2/日未満の酸素透過速度(OTR)を示すことを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項20】
前記複合フィルムの前記ポリマー基板は、230℃、30分で1%未満の収縮を有することを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項21】
前記複合フィルムの前記ポリマー基板は、8℃から200℃まで前記フィルムを加熱し次いで8℃に冷却する前後の25℃で測定された、元の寸法の0.75%未満の残留寸法変化ΔLrを有する請求項1から20のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項22】
前記複合フィルムの前記ポリマー基板は、40×10-6/℃未満の−40℃から+100℃の温度範囲内の線熱膨張係数(CLTE)を有する、ポリ(エチレンナフタレート)フィルムを含む熱安定化され熱硬化された配向フィルムである請求項1から21のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項23】
前記複合フィルムは、<1.5%の散乱可視光(ヘイズ)の%を有する請求項1から22のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項24】
前記基板が、二軸配向される請求項1から23のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項25】
前記複合フィルムは、150℃、30分で0.01%以下の収縮を有する請求項1から24のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項26】
前記無機バリア層が、二酸化ケイ素を含む請求項1から25のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項27】
請求項1から26のいずれかに記載の複合フィルムを含む電子または光電子デバイス。
【請求項28】
請求項4記載の工程と(vii)前記電子または光電子デバイスにおける基板として、前記ポリマー基板層、前記平坦化被覆層、および前記無機バリア層を含む前記複合フィルムを提供する工程とを含む方法により得ることができる請求項27記載のデバイス。
【請求項29】
前記方法が、無機バリア層の前記表面の少なくとも一部上に導電材料を適用することによって電極層を提供する工程をさらに含む請求項28記載のデバイス。
【請求項30】
前記電子または光電子デバイスは、導電性共役ポリマーを含む請求項27、28または29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記デバイスは、エレクトロルミネセンスディスプレイデバイスである請求項27から30のいずれかに記載のデバイス。
【請求項32】
前記デバイスは、有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスであることを特徴とする請求項27から30のいずれかに記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131231(P2012−131231A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20679(P2012−20679)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2008−501408(P2008−501408)の分割
【原出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】