光電子増倍管および放射線検出装置
【課題】 排気管を封止する際にも真空容器との間の接合の確実性を損なうことなく、検出効率のよい光電子増倍管および放射線検出装置を提供する。
【解決手段】 側管15の一側端部に受光面板13を、他側端部に管状部材31を介してステム29を気密に接合して構成された真空容器内に、光電面14、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19、およびアノード25を配置する。ステム29中央部には排気管40が接続されている。排気管40は同軸に配置され、ステム29側で互いに接続された外側管41と内側管43とを有している。外側管41はステム29との密着性が良好であり、内側管43は薄く、切断時の応力が少ないため、排気管40の封止時に真空容器との接合を損なうことがない。
【解決手段】 側管15の一側端部に受光面板13を、他側端部に管状部材31を介してステム29を気密に接合して構成された真空容器内に、光電面14、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19、およびアノード25を配置する。ステム29中央部には排気管40が接続されている。排気管40は同軸に配置され、ステム29側で互いに接続された外側管41と内側管43とを有している。外側管41はステム29との密着性が良好であり、内側管43は薄く、切断時の応力が少ないため、排気管40の封止時に真空容器との接合を損なうことがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子増倍管およびこれを用いた放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空容器の一側に設けられた光電面が放出した電子を、ダイノードにより増幅してアノードで検出する光電子増倍管において、真空容器の他端を構成するステムを大形のテーパ状ハーメチックガラスより構成し、ステムの中央部に金属排気管である金属チップ管を融着により下垂連設するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、真空容器の他端を構成するステムの真空容器外側面を囲むように配置された皿状のステム金属板に、排気管が気密に嵌合して固定されている例がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−290793号公報(第4項、第7図)
【特許文献2】特開2005−11592号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような排気管は、真空容器内を排気した後に切断および封止される。このとき、真空容器との接合部分に応力が生じ、接続が不充分になるなどの問題が発生する場合がある。
【0005】
そこで本発明は、排気管を封止する際にも真空容器との間の接合の確実性を損なうことのない、光電子増倍管および放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、一側端部を構成する受光面板と、他側端部を構成するステムとを有する真空容器内に、受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、光電面が放出した電子を増倍させる電子増倍部と、電子増倍部が増倍した電子に基づいて出力信号を送出する電子検出部とを備えた光電子増倍管において、ステムは、電子増倍部と対向する第1面と、第1面と対向する第2面とを有する絶縁性部材であり、ステムには真空容器の排気を行う排気管が設けられ、排気管は、同軸上に配置された外側管と内側管とを有し、外側管の外周面はステムと密着接合され、外側管の真空容器内部側の端部と内側管の真空容器内部側の端部とは連結されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、排気管が二重構造であるので、外側管はステムとの接合性を重視した構成にし、内側管は、封止が適正に行えることを重視した構成にするなど設計の自由度が拡大される。例えば、外側管はステムと熱膨張係数の類似した材料にして確実に接合し、内側管は薄く形成して封止時に生ずる応力を低減するとともになるべく排気管の長さを短くすることができる。
【0008】
外側管は、ステムとの接合部において、ステムの真空容器内部側に突出して設けられることが好ましい。このような構成によれば、ステムの形成時に排気管の接続部にステムの材料が這い上がることが防止される。
【0009】
外側管と内側管とは、真空容器内部側端部において溶接することができる。このような構成によれば、内側管を封止する際に生ずる変形による応力を最小限に留めることが可能になる。
【0010】
上記いずれかの光電子増倍管において、受光面板の外側に、放射線を光に変換して出力するシンチレータを設置してなる放射線検出装置を構成することができる。
【0011】
このような構成によれば、シンチレータに入射した放射線を検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気管を封止する際にも真空容器との間の接合の確実性を損なうことなく、検出効率のよい光電子増倍管および放射線検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜図22は、本発明の一実施の形態による光電子増倍管を含む放射線検出装置を示す図である。各図において実質的に同一の部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。なお、以下の説明において「上」、「下」等の語を、図面に示す状態に基づいて便宜的に用いることとする。
【0015】
図1は、本実施の形態による放射線検出装置1の概略断面図、図2は、図1のII−II面における光電子増倍管10の概略断面図である。図1、2に示すように、放射線検出装置1は、入射した放射線を光に変換して出力するシンチレータ3、および入射した光を電子に変換および増倍して検出する光電子増倍管10を備え、入射した放射線を検出して信号として出力する装置である。光電子増倍管10は、断面が略矩形の管状形状を有しており、管軸の方向をz軸、図1の紙面に垂直な軸をx軸、z軸及びx軸に垂直な軸をy軸とする。
【0016】
シンチレータ3は、z軸方向一端側に入射面5、他端側に出力面7を備え、断面が略矩形状を有している。シンチレータ3には、入射面5側から放射線が入射し、入射した放射線は、シンチレータ3内部で光に変換されてシンチレータ3内を伝搬し、出力面7側から出力される。光電子増倍管10は、シンチレータ3の出力面7側に接しており、シンチレータ3の中心軸と光電子増倍管10の管軸とはほぼ同軸に設けられている。
【0017】
光電子増倍管10は、z軸方向一側端部を構成する受光面板13、他側端部を構成するステム29、ステム29の周縁部に設けられた管状部材31、ステム29のxy平面のほぼ中央に設けられた排気管40、および、筒型形状を有する側管15が、気密に接続および固定されることにより形成された真空容器である。光電子増倍管10の真空容器内部には、フォーカス電極17、複数のダイノードDy1〜Dy12を備えた電極積層部、電子を検出し信号として出力する複数のアノード25を備えた電子検出部、および、電極積層部と電子検出部との間に備えられた引き出し電極19が配置されている。
【0018】
受光面板13は、例えばガラスで形成された略矩形の板状形状を有しており、その内部側、すなわちz軸方向下面側には、入射光を電子に変換する光電面14が設けられている。光電面14は、例えば予め蒸着したアンチモンにアルカリ金属蒸気を反応させることにより形成される。光電面14は、受光面板13の内部側のほぼ全面に設けられており、シンチレータ3から出力され受光面板3を通して入射した光を、電子に変換し放出する。側管15は、例えば金属で形成された断面が略矩形の筒型形状を有しており、光電子増倍管10の側面を構成している。側管15の一端部には受光面板13が、他端部には管状部材31を介してステム29が、互いに気密に固定されている。ここで、光電面14は側管15に電気的に接続され、同電位とされている。
【0019】
図3は、ステム29の内側面29a、管状部材31、および延出部32を示す平面図である。図1〜図3に示すように、ステム29は、例えばコバールガラスで形成された略矩形の板状を有しており、光電子増倍管10内部側の内側面29aと、外側面29bと、それらを接続する周縁部29cとを有している。ステム29には、アノード25を支持するための導電性のステムピン27が、アノード25のチャンネル数に対応した数(ここでは64本)だけ、気密に挿通されている。
【0020】
ステム29の周縁部29cには、周縁部29cを取り囲む管状部材31が気密に装着されている。管状部材31は、例えば金属で形成された断面が略矩形の管形状を有しており、側管15とも気密に接続されている。管状部材31からは、ステム29の内側面29aに沿って光電子増倍管10の内部側に延出部32が延出している。延出部32は、例えば金属で形成された平面視が略矩形状の環形状を有している。
【0021】
延出部32のx軸方向両縁部には、複数の貫通穴部22、48が形成されており、それぞれ支持ピン21、リードピン47が挿通固定されている。また図3のx方向左側縁部には、フォーカスピン51が延出部32に立設されている。
【0022】
支持ピン21は、導電性材料で形成され、本実施の形態では、x軸方向両縁部に3本ずつ合計6本設けられている。なお、図2は、図3のV−V面における断面を示しており、図2に示すように、支持ピン21は、ステム29を貫通してz軸方向上方に延び、引き出し電極19を載置するとともに、引き出し電極19と同電位とされている。
【0023】
図5に示すように支持ピン21はステム25を挿通してz軸方向に延びる支持部21a、及び支持部21aのz軸方向上端に設けられ電極積層部が載置される載置部21bで構成されている。ここで載置部21bは支持部21aに比較してxy平面における断面積が大きく形成されており、電極積層部は最下段の電極(本実施形態においては引き出し電極19)の下面と載置部21bの上面(載置面)が接する形で支持ピン21上に載置されている。ここで載置部21bは支持部21aに比較してxy平面における断面積が大きく形成されているため、z軸方向における電極積層体の位置精度を確実に規定するとともに、電極積層体を載置部21bの載置面上に安定して載置することが可能となる。
【0024】
リードピン47は、導電性材料で形成され、本実施の形態では、x軸方向両縁部に合計35本設けられている。図4は、図3のIV−IV面における断面を示しており、図4に示すように、リードピン47は、ステム29を貫通してz軸方向上方に延び、夫々所定のダイノードDy1〜Dy12、及び引出し電極19に接続されて所定の電位を供給している。なお、各リードピン47は、夫々接続するダイノードDy1〜Dy12の位置に応じた長さに形成されている。フォーカスピン51は、導電性材料で形成され、ステム29からz軸方向上方に延び、フォーカス電極17に接続されている。フォーカス電極17は管状部材31に溶接されたフォーカス電極ピン51を介して側管15に電気的に接続され光電面14と同電位とされている。
【0025】
図5は、図2、すなわち、図3のV−V面における断面の一部拡大図であり、図6は、図4、すなわち、図3のIV−IV面における断面の一部拡大図である。図5、図6に示すように、貫通穴部22、48における支持ピン21およびリードピン47のステム29の内側面29aとの接続部分には、ステム29が盛り上がった這い上がり部33が形成されている。ここで、這い上がり部33と支持ピン21またはリードピン47との接点を点P1、這い上がり部33がないとした場合の内側面29aと支持ピン21またはリードピン47との仮想接点を点P2、管状部材31と延出部32との接点を点P3とすると、点P1−点P3間の距離は、点P3−点P2間の距離と比べて長くなっている。従って、本実施の形態では、這い上がり部33があることにより、支持ピン21またはリードピン47と管状部材31との沿面距離が長く確保されている。
【0026】
図1、図2に示すように、フォーカス電極17は、光電面14と所定の距離離間して対向するように配置されている。フォーカス電極17は、x軸方向に延びる複数のフォーカス片17aと、複数のフォーカス片17aによって形成された複数のスリット状の開口部17bを備えた略矩形薄型電極であり、電子をダイノードDy1の電子増倍孔18a(図7参照)に効率よく収束させためのものである。フォーカス電極17は、延出部32に立設されたフォーカスピン51(図3参照)を介して側管15に電気的に接続され光電面14と同電位とされている。
【0027】
ダイノードDy1〜Dy12は、電子を増倍させるための電極であり、フォーカス電極17のz軸方向下方に、略平行に対向するように積層されている。図7は、図1の部分拡大図である。図7に示すように、ダイノードDy1〜Dy12は、yz平面における断面が凹凸を有する電子増倍片18が互いに離間して平行に並んだ略矩形薄板型電極である。従って、ダイノードDy1〜Dy12には、隣接する電子増倍片18間にx軸方向に延びるスリット状の電子増倍孔18aが形成されていることとなる。所定数の電子増倍孔18aが各アノードに対応しており、アノード25の各チャネルのx軸方向境界部に対応する位置には、y軸方向に延びる隔壁71(図15参照)が設けられ、ダイノードDy1〜Dy12の複数チャネルのy軸方向境界を規定している。また、各ダイノードDy1〜Dy12間には、図2および図5に示すように、絶縁部材23が配置されている。ダイノードDy1〜Dy12には、リードピン47により、光電面14側からステム29側に向かって順次高い電位が供給されている。
【0028】
引き出し電極19は、ダイノードDy12のステム29側に、ダイノードDy12と絶縁部材23を介して離間し、略平行に対向するように配置されている。引き出し電極19は、ダイノードDy1〜Dy12と同一の材料から形成された薄板型電極であり、x軸方向に延びる複数の引き出し片19aと、複数の引き出し片19aによって形成された複数のスリット状の開口部19bを備えているが、この開口部は、ダイノードDy12から放出された電子をアノード25へ通過させるためのものであり、ダイノードDy1〜Dy12の電子増倍孔18aとは異なる。従って、開口部は、ダイノードDy12から放出された電子がなるべく衝突しないように設計されている。引き出し電極19には、ダイノードDy12よりも高くアノード25より低い所定の電位が与えられており、ダイノードDy12の2次電子面上の電界強度を均一にする。ここで、2次電子面とは、各ダイノードDyの電子増倍孔に形成された電子の増倍に寄与する部分のことを指す。
【0029】
引き出し電極19がない場合には、ダイノードDy12から電子を引き出すための電界は、ダイノードDy12−アノード25間の電位差及び距離に依存する。従って、例えば、各アノード25がxy平面に対して多少傾いて配置された場合には、ダイノードDy12−アノード25間の距離が、各位置によって異なってしまうため、ダイノードDy12に対する電界強度が均一にならず、電子を均一に引き出すことができない。しかしながら、本実施の形態では、ダイノードDy12−アノード25間に引き出し電極19が配置されているため、ダイノードDy12に対する電界は、ダイノードDy12−引き出し電極19間の電位差及び距離の電位差及び距離によって決定される。ダイノードDy12−引き出し電極19間の電位差及び距離は一定であるため、ダイノードDy12の2次電子面上の電界強度は均一になり、ダイノードDy12から電子を引き出す力も均一となる。従って、各アノード25がxy平面に対して多少傾いて配置された場合であっても、ダイノードDy12から電子を均一に引き出すことができる。
【0030】
引き出し電極19は、上述のように縁部において導電体で形成された支持ピン21の載置部21b上に載置されている。図5に示すように、支持ピン21と複数の絶縁部材23とはz方向軸35上に同軸に配置されているため、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19をz軸下方向に高い圧力をかけて固定することが可能となる。
【0031】
アノード25は、電子を検出し、ステムピン27を介して検出した電子に応じた信号を光電子増倍管10の外部に出力する電子検出部であり、引き出し電極19のステム29側に、引き出し電極19と略平行に対向するように設けられている。図1、2に示したように、アノード25は、ダイノードDy1〜Dy12の複数のチャネルに対応して複数設けられている薄板型電極であり、夫々ステムピン27に溶接接続され、ステムピン27を介して引き出し電極19よりも高い所定の電位を供給されている。また、アノード25には、製造時に排気管40から導入されるアルカリ金属蒸気を拡散させるため、複数のスリットが設けられている。
【0032】
以下、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25の構成についてさらに詳しく説明する。
【0033】
図8は、電子増倍部をz軸上方側から見た概観図であり、図9は、図8の部分拡大図である。図8に示すように、電子増倍部は、複数(本実施の形態では、64個)のアノード25を2次元に配列して構成され、各アノード25は夫々ステムピン27に支持されているとともにステムピン27を介して図示しない回路に電気的に接続されている。
【0034】
ここで、便宜的に単位アノードを図8の左上からアノード25(1−1)、25(1‐2)、…、25(8−8)とする。各アノード25(1−1)、25(1−2)、…、25(8−8)には、隣接する単位アノードとの間に凹部28が互いに対向して形成されており、凹部28には、ブリッジ残部26が残っている。アノード25は、製造時には隣接する単位アノード同士がブリッジによって接続された一体のアノード板の状態に形成されており、一体の状態で各ステムピン27に各アノードを溶接して固定する。その後にブリッジを切断し、アノード25(1−1)、25(1−2)、…、25(8−8)を互いに独立させる。ブリッジ残部26は、ブリッジを切り離した残りの部分である。
【0035】
また、x軸方向両縁部に相当するアノード25(1−1)、(2−1)、…、25(8−1)およびアノード25(1−8)、25(2−8)…、25(8−8)のうち、アノード25(1−1)、(1−8)、(8−1)、(8‐8)のコーナ部83を除いて、切り欠き部24が形成されている。よって、この切り欠き部24により、アノード25と支持ピン21、リードピン47、およびフォーカスピン51の接触を避けるとともに、電子検出部の有効面が側管15の近傍にまで広げられている。
【0036】
図10は、ダイノードDy12をz軸上方から見た概観図であり、図11は、図10の部分拡大図である。なお、図10、11では電子増倍片18、引き出し電極19の開口は省略されている。なお、図10、図11では、電子増倍片18、引き出し電極19の開口は省略されている。図10、11に示すように、ダイノードDy12と引き出し電極19とはxy平面においてアノード25とほぼ同一の外形を有している。すなわち、x軸方向両縁部に支持ピン21、リードピン47等を避ける切り欠き部49が形成されている。引き出し電極19の切り欠き部49には、突出部55が形成されており、支持ピン21は、突出部55を載置することにより、引き出し電極19全体を載置している。また、ダイノードDy12も、同様に突出部55を有している。ダイノードDy12の場合、リードピン47A、47Bと接続されて所定の電位を供給されているため、リードピン47A、47B周辺に突出部53が形成されている。また、y軸方向両縁部においては側管の内壁面の近傍まで電極が形成され、特に4ヶ所のコーナ部はコーナ部85が突出している。なお、ダイノードDy1〜Dy11もダイノードDy12と実質的に同様の構成であり、各リードピン47はz軸方向に延びて所定のダイノードと接続されている。
【0037】
図12は、フォーカス電極17をz軸上方側から見た概観図であり、図13は、図12の部分拡大図である。なお、図12、13では、図1及び図2で示したフォーカス片17a及び開口部17bは省略されている。図12、13に示すように、フォーカス電極17は、アノード25の切り欠き部24、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19の切り欠き部49を覆うようにx軸方向周縁部まで設けられている。なお、フォーカス電極17の切り欠き部24または切り欠き部49を覆う部分は、スリットの形成されていない平板状電極部分16を形成し、4つのコーナ部はスリットを有するコーナ部87となっている。
【0038】
以下、上記のようなフォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25のxy平面外形が光電子増倍管10内部での電子軌道に及ぼす作用について説明する。図14は、光電面14からダイノードDy1までの電子軌道をxy平面およびxz平面に投影して示す図である。図14に示すように、光電面14のx方向周縁部から放出された電子は、フォーカス電極17の切り欠き部24、49を覆うように設けられた平板電極部分16によりx軸方向中央側の電子増倍孔用開口89に集束され、軌道61のようにダイノードDy1に入射する。また、光電面14のコーナ部87に対向する領域から放出された電子は、フォーカス電極17のコーナ部87で集束され軌道63のようにダイノードDy1のコーナ部85に入射する。このように、フォーカス電極17およびダイノードDy1のコーナ部87、85が設けられているため、光電面14周縁部から放出された電子も、効率よくダイノードDy1に入射する。
【0039】
ところで、光電面14からダイノードDy1までの電子の走行距離に差が生じると、出力される信号の時間的揺らぎを生じる。例えば、光電面14のより中央部から放出された電子は、軌道65のようにダイノードDy1に入射する。軌道61と軌道65とはダイノードDy1のほぼ同一部分に入射するが、光電面14からダイノードDy1までの電子の走行距離に差が生じるため、出力される信号の時間的揺らぎを生じる。また、光電面14のコーナ部87に対向する領域から放出される電子は、斜め方向の軌道でダイノードDyのx軸方向中央側に入射することとなる。従って、各電極にコーナ部83、85、87が設けられていない場合、すなわち、各電極のコーナ部分が有効領域となっていない場合には、光電面14のコーナ部87に対向する領域から放出される電子は、ダイノードDy1に入射させるために大きく集束させる必要があるため、軌道61よりも更に軌道65との走行距離の差が大きくなる。しかしながら、本実施の形態においては、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25には切り欠き部24、49が設けられ、コーナ部83、85、87は電子の増倍および検出に対して有効領域となっているため、光電面14のコーナ部83、85、87に対向する領域から放出された電子の走行時間差が小さくなるように集束される。従って、各軌道61、63、65によってダイノードDy1に入射する電子の時間的ばらつきを最小限に抑制することができる。
【0040】
次に、ダイノードDy1〜Dy12に設けられる隔壁の構成について説明する。図15は、通常のダイノードに設けられる隔壁を示す図、図16は、所定のダイノードに設けられる隔壁を示す図、図17は、隔壁を多く設けたダイノードの全体図、図18は図17の断面図である。なお、図15、16では電子増倍片18が省略されている。
【0041】
ダイノードDy1〜Dy12は、本実施の形態では上述したようにx軸方向にスリットを有する構造であり、y軸方向には図15に示すように、アノード25の複数のチャネルのy軸方向境界部と対応する隔壁71が設けられている。光電子増倍管では受光面の有効領域を広くとるために、受光面の周縁部付近に入射した光に応じて光電面の周縁部から放出される光電子をxy平面の中心側に集束させる。周縁部からの電子は、集束に伴ってロスが生じるため、この結果、周縁部の電子増倍率の均一性が低下する傾向がある。そこで、図16、17に示すようにダイノードのy軸方向周縁部を除く領域にy軸方向に延びる隔壁73を設け、電子の増倍率を調整する。このような構成においては、図17のA−A断面では、図7に示すように電極積層部全体に電子増倍片18が存在するが、B−B断面では、図18に示すようにダイノードDy5のy方向周縁部を除く部分が隔壁73となっている。隔壁73部分には電子増倍孔18aが形成されず、隔壁73に入射する電子は増倍に寄与しないため、xy平面中央部の電子増倍が抑制されて電子の増倍率が均一化される。
【0042】
次に排気管の構成について説明する。図19は、排気管付近の構成を示す断面図である。排気管40は、ステム29の中央部に気密に接続されている。排気管40は、内側管43と外側管41との二重構造である。外側管41は、ステム29と密着させるため、ガラスと密着性がよく熱膨張係数の等しい例えばコバール金属で形成し、厚さは例えば0.5mm、外径は例えば5mm、長さは例えば5mmである。なお、ステム29の厚さは例えば4mmとすることができ、この場合、外側管41はステム29の外側面29bより1mm外側に突出する。外側管41が外側面29bよりも外側に突出していることにより、ステム29が外側管41を超えて内側管43と外側管41との間に入り込むことを防止している。また、排気管40は、封止(圧接)を容易にするために、封止後であっても、内側管43が外側管41の下端よりも突出するように構成されている。
【0043】
内側管43は、例えばコバール金属または銅で形成し、外径は例えば3.8mm、切断前の長さは例えば30mmであり、外側管41と同軸に配置し、ステム29の内側面29a側の一端部が外側管41と気密接合している。また、光電子増倍管10の製造終了時には内側管43の他端部を気密に封止するため、なるべく厚さが薄いことが好ましく、例えば0.15mmである。ステム29との接続部においては、ステム29の材料が排気管の内側に回りこまないように、接続部41aをz軸方向上側に例えば0.1mm突出させるように配置されている。
【0044】
次に、光電子増倍管10の製造方法を説明する。図20〜22は、排気管およびステムの製造方法を示す図である。図20に示すように、まず、外側管41と内側管43とを用意する。続いて、内側管43を外側管41の内部に同軸となるように配置する。このとき、内側管43と外側管41との一端同士の位置を合わせ、接合部41aをレーザ溶接によって接合する。接合後、外側管41の外面に、ステム29と融着しやすくするための酸化膜を形成する。また、管状部材31および延出部32を用意し、それらにステム29と融着しやすくするための酸化膜を形成する。図21に示すように、ステム29には、支持ピン21を装着する貫通孔28、ステムピン27を装着する貫通孔30等を夫々所定数、排気管を装着する貫通孔34を一箇所形成する。
【0045】
図22に示すように、排気管40、管状部材31、延出部32、ステム29、支持ピン21、ステムピン27、リードピン47等を夫々図示の位置に配置してカーボン治具(図示せず)に組み入れ、治具によりステム29をステム29の内側面29a、外側面29b側を挟むように加圧しながら本焼成することで、ガラスと各金属とが気密融着する。このとき、ステム29の材料が延出部32の貫通穴部22、48を挿通する支持ピン21、リードピン47のステム29との接続部分に押し出されることで這い上がり33が生ずる。融着後、治具を取り外し、酸化膜の除去および洗浄を行う。このようにしてステム部分が完成する。
【0046】
続いて、一体に形成されたアノード25をステムピン27上に載置し固定する。固定した後、ブリッジを切断しアノード25(1−1)、25(1−2)、…、25(8−8)として独立させる。支持ピン21上には、引き出し電極19をアノード25と略平行に離間して載置する。さらに引き出し電極19上に、絶縁部材23を介してダイノードDy12〜Dy1およびフォーカス電極17を順次離間して対向させた電極積層部を載置する。このとき、ダイノードDy1〜Dy12の夫々対応するリードピン47を突出部53に、フォーカス電極17を、フォーカスピン51と接続し、z軸下方向に圧力をかけて固定する。その後、受光面板13が固定された側管15端部を管状部材31と溶接固定して組み立てる。
【0047】
続いて、排気管40から光電子増倍管10内部を真空ポンプなどにより排気した後、アルカリ蒸気を導入し、光電面と2次電子面を活性化させる。再び、光電子増倍管内部を真空に排気した後、排気管40を構成する内側管43を所定の長さに切断し、先端を封止する。このとき、放射線検出装置1を回路基板上に載置する際に障害にならないように、ステム29との接続部分の密着度が損なわれない程度に内側管43を短くすることが好ましい。以上の工程により、光電子増倍管10が得られる。
【0048】
以上のように構成された本実施の形態による放射線検出装置1では、シンチレータ3の入射面5に放射線が入射すると、出力面7側に入射した放射線に応じた光を出力する。光電子増倍管10の受光面板13に、シンチレータ3が出力した光が入射すると、光電面4は、入射した光に応じた電子を放出する。光電面4に対向して備えられたフォーカス電極17は、光電面4から放出された電子を集束して、ダイノードDy1に入射させる。ダイノードDy1は入射した電子を増倍し、下段ダイノードDy2側に放出する。このようにダイノードDy1〜Dy12によって順次増倍された電子は、引き出し電極19を介してアノード25に達する。アノード25は到達した電子を検出し、ステムピン27を介して信号として外部に出力する。
【0049】
光電子増倍管10においては、電極積層体を載置するための支持ピン21を備える。支持ピン21を構成する載置部21bの載置面上に電極積層部を載置する構成とすることで電極積層部をz軸方向上側から大きな圧力をかけて固定することが可能となり、電極積層部の固定強度が高まり耐震性が向上するとともに、電極積層部(電極積層部を構成する各電極)のz軸方向の位置精度が高められる。また、電極積層部の最下段の電極である引き出し電極19が支持ピン21の載置部21b上に載置されて支持されており、アノード25との間に絶縁物を介していない。よって、電子が絶縁物に衝突して発光し、アノード25から出力される信号にノイズを発生させることを防止することができる。さらに、支持ピン21は導電性材料で形成されているため、電子が衝突しても発光しない。従って、一層、ノイズの発生を防止することができる。
【0050】
フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19は、支持ピン21と同軸に配置された絶縁部材23を介して互いに離間した状態で対向し積層されている。よって、z軸方向により高い圧力をかけてフォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19を固定することができるため更に耐震性が向上する。また、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19を絶縁部材23を介して積層することにより、各電極のxy平面内の位置を正確に規定することができる。
【0051】
ダイノードDy1〜Dy12の光電面14側にフォーカス電極17が設けられているので、光電面14が放出した電子を効率よくダイノードDy1に入射させることができる。
【0052】
ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25には切り欠き部49、24が形成され、切り欠き部分に、支持ピン21、リードピン47が配置されている。よって、各電極の有効面積を充分確保することが可能になるとともに、電子の走行時間差による信号の揺らぎなどを最小限に低減できる。また、リードピン47がz軸方向に向かって延びており、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25に形成された切り欠き部49、24がz軸方向において重なっていることで、さらに有効面積を確保することが可能になっている。
【0053】
また、フォーカス電極17は、ダイノードDy1〜Dy12の切り欠き部49を覆うようにxy平面周縁部まで設けられているので、光電面14におけるダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25に形成された切り欠き部に対応する領域から放出された光電子をダイノードDy1の有効領域に集束させることが可能となり、光電子増倍管における光検出の有効面積を大きく確保できるとともに、リードピン47に電子が衝突して増倍率を低下させるのを防止している。
【0054】
また、フォーカス電極17の開口部17bは、x軸方向、すなわち、引き出し電極19およびアノード25の切り欠き部49、24が形成されている縁部に対して垂直な方向に延びている。開口部17bには、できるだけ多くの電子を入射させることが好ましいが、フォーカス片17aに当たった電子は開口部17bには入射しない。従って、フォーカス片17aを避けるように電子の軌道を制御することが好ましい。その際、x軸方向の制御、すなわち、電子が本来進んでいる方向の制御は、y軸方向の制御に比べて難しい。本実施の形態では、開口部17bが、x軸方向、すなわち、引き出し電極19およびアノード25の切り欠き部49、24が形成されている縁部に対して垂直な方向に延びているため、比較的容易なy軸方向の制御を行えば、電子を効率良く開口部17bに入射させることができる。
【0055】
最終段ダイノードDy12とアノード25との間に引き出し電極19が設けられているため、ダイノードDy12のz軸方向下側の電界強度が均一化される。従って、ダイノード12の電子放出特性が均一化され、例えば各単位アノードがブリッジ切断後に傾き、アノード25−引き出し電極19間の距離にばらつきを生じたとしても、ダイノードDy12から各チャンネル領域毎に均一に電子を引き出すことができる。
【0056】
所定段のダイノードには隔壁73が設けられ、開口率を調整してxy平面内における電子増倍率のばらつきを低減している。
【0057】
アノード25は、一体に形成され、各アノードが対応するステムピン27に固定された後にブリッジを切断して単位アノード25を独立させるので、ステムピン27に載置する工程が簡略化できるとともに、各アノード25の設置位置の精度が高まる。また、ブリッジが凹部28内に設けられているので、アノード25の有効面を充分確保することができるとともに、ブリッジ残部が切り欠き内に配置されるので、ブリッジ残部間の放電を防止することができる。また、このように2次元に配列されたマルチアノードを用いることで、検出する光のxy平面内の入射位置を検出することができる。
【0058】
ステム29はガラスで形成され、周縁部29cに管状部材31、内側面29a上には延出部32が設けられ、延出部32には、支持ピン21、リードピン47が貫通し、フォーカスピン51が立設している。よって、各ピンを側管15近くに備えることができ、各電極の有効面を充分確保することが可能になっている。
【0059】
ステム29と支持ピン21、リードピン47との接続部分には這い上がり部33が形成され、管状部材31と各ピンとの沿面距離を大きくとることが可能になり、沿面放電の発生および増倍された電子が絶縁物に衝突して発生する発光によるノイズを防止する効果がある。また、延出部32に貫通穴部22、28が設けられているので、ステム29製造時にガラス材の逃げ部分として機能することになり、ステム29の厚さ調整を容易にしている。さらに、このようにステム29の厚さを制御することができるので、受光面板13に対するステム29の外側面29bの位置精度が高まり、結果として光電子増倍管全長の寸法精度が向上するため、例えば光電子増倍管を回路基板等に表面実装して使用する際に、光源と光電子増倍管の入射面との距離が一定となり、誤差の少ない光検出が可能となる。
【0060】
ステム29に設けられている排気管40は二重管構造となっており、外側管41は、ステム29との密着性が高い材料で厚く形成され、内側管43は、柔らかい材料で薄く形成されている。このような二重管構造としたことによって、外側管41の厚さによりレーザ溶接時のピンホールなどを防止できる。また内側管43は、ステム29の内側面29a側の端部でのみ外側管41と接続すればよく、外側管41でステム29との密着性を確保しながら、接続部に損傷を与えることなく長さも回路基板上に載置しても邪魔にならない程度に内側管43を短く切断して封止することが可能になる。また、内側管43を封止しやすいシール性の優れた材料とすることもできる。さらに、排気管40の管径を大きくとることもでき、アルカリ金属蒸気を導入する際に、処理時間を短縮できるとともに導入した蒸気の均一性も向上する。
【0061】
さらに、光電子増倍管10の受光面板13側にシンチレータ3を設けたので、放射線を検出して信号として出力することが可能である。
【0062】
次に、第1の変形例について図23を参照しながら説明する。図23は、電子検出部の変形例を示す斜視図である。上記実施の形態においては、電子検出部を構成するアノード25は2次元に配列されたマルチアノードであったが、第1の変形例においては、一次元に配列されたリニアアノード125である。リニアアノード125の境界部は、ダイノードDy1〜Dy12の隔壁71に相当する部分に設けられる。各リニアアノード125は、ステム29に貫通して設けられるステムピン127に接続されて支持され、所定の電位を供給されるとともに検出した電子に応じた信号を出力する。リニアアノード125にも隣接する単位アノードと対向する部分にブリッジを備えた凹部(図示せず)を設け、アノード125全体をステムピン127上に固定した後にブリッジを切断することが好ましい。
【0063】
続いて第2の変形例について、図24を参照しながら説明する。図24は、シンチレータの変形例を採用した放射線検出装置100を示す概略断面図である。上記実施の形態によるシンチレータ3に変えて、光電子増倍管のチャンネル領域に対応したサイズのシンチレータ103を一次元に複数個配置した放射線検出装置100とする。他の構成は、第1の変形例と同一である。このような構成によれば、放射線のxy平面内における入射位置の検出が可能となる。
【0064】
さらに図25を参照して、第3の変形例について説明する。図25は、シンチレータの他の変形例を採用した放射線検出装置200示す概略断面図である。第2の変形例によるシンチレータ103に変えて、アノード125の大きさよりも小さい、例えばアノード125の2分の1に相当するシンチレータ203を一次元に複数個配列した放射線検出装置200とする。他の構成は、第2の変形例と同一である。このような構成によれば、放射線のxy平面内における入射位置を、より正確に検出することが可能となる。
【0065】
さらに図26を参照して、第4の変形例について説明する。図26は、載置部21b及び引き出し電極19の形状の変形例の説明図である。載置部21bの引き出し電極19を載置する面には凸部21cが形成され、引き出し電極19の載置部21bに載置される面には凹部19cが形成されており、支持ピン21が引き出し電極19を載置した際には、凸部21cと凹部21cとは互いに嵌合される。このような構成によれば、フォーカス電極17、複数のダイノードDy1〜Dy12を備えた電極積層部のxy平面内における位置精度を向上させることができる。なお、引き出し電極19が配置されていない場合には、最終段のダイノードDy12に凹部を形成すればよい。また、載置部21bに凹部を形成し、引き出し電極19に凸部を形成してもよい。
【0066】
尚、本発明による光電子増倍管および放射線検出装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
例えば、管状部材31はステム29の内側面29a側に延出部32が延出しているが、外側面29b側に延出部32を設けるようにしてもよい。その場合には、延出部32の周囲や、延出部32を挿通しているリードピン47間に光電面14の電位が露出することとなる。ステム29の外側には、回路基板を密接して配置することが多いため、アノード25に対する電位差が最も大きい光電面14の電位が露出していると、耐電圧の点で問題が生じる可能性がある。従って、延出部32は、内側にある方が好ましい。
【0068】
製造方法において、排気管40は外側管41と内側管43とを接続した後にステム29と接続させたが、まず外側管41のみを酸化してステム29と接続し、酸化膜を除去した後に内側管43を外側管41と接続する方法もある。
【0069】
光電子増倍管および各電極の断面は略矩形としたが、断面が円形、またはその他の形状でもよい。この場合、光電子増倍管の形状に応じてシンチレータの形状も変更することが好ましい。
【0070】
隔壁73は、上記例では5段目のダイノードDy5に設けたが、他の段に設けてもよく、また、複数段のダイノードに設けるようにしてもよい。
【0071】
引き出し電極19の開口部19bは、ライン状に限らず、メッシュ状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の放射線検出装置は、医療用機械における画像診断装置などに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態による放射線検出装置1の概略断面図である。
【図2】図1のII−II面における光電子増倍管10の概略断面図である。
【図3】ステム29の内側面29a、管状部材31、および延出部32を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV平面における断面図である。
【図5】図2の部分拡大図である。
【図6】図4の部分拡大図である。
【図7】図1の部分拡大図である。
【図8】アノード25およびそのz軸下方側の構成をz軸上方側から見た概観図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】ダイノードDy12およびそのz軸下方側の構成をx軸上方から見た概観図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】フォーカス電極17およびそのz軸下方側の構成をz軸上方側から見た概観図である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】光電面14からダイノードDy1までの電子軌道をxy平面およびxz平面に投影して示す図である。
【図15】通常のダイノードに設けられる隔壁を示す図である。
【図16】所定のダイノードに設けられる隔壁を示す図である。
【図17】隔壁を多く設けたダイノードの全体図である。
【図18】図17の断面図である。
【図19】排気管付近の構成を示す断面図である。
【図20】排気管およびステムの製造方法を示す図である。
【図21】排気管およびステムの製造方法を示す図である。
【図22】排気管およびステムの製造方法を示す図である。
【図23】第1の変形例によるアノード125を示す斜視図である。
【図24】第2の変形例による放射線検出装置100を示す概略断面図である。
【図25】第3の変形例による放射線検出装置200を示す概略断面図である。
【図26】第4の変形例による放射線検出装置100を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1:放射線検出装置 3:シンチレータ 5:入射面 7:出射面 10:光電子増倍管 13:受光面板 14:光電面 15:側管 17:フォーカス電極 19:引き出し電極 21:支持ピン 23:絶縁部材 25:アノード 27:ステムピン 29:ステム 31:管状部材 32:延出部 33:這い上がり部 35:軸 47:リードピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子増倍管およびこれを用いた放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空容器の一側に設けられた光電面が放出した電子を、ダイノードにより増幅してアノードで検出する光電子増倍管において、真空容器の他端を構成するステムを大形のテーパ状ハーメチックガラスより構成し、ステムの中央部に金属排気管である金属チップ管を融着により下垂連設するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、真空容器の他端を構成するステムの真空容器外側面を囲むように配置された皿状のステム金属板に、排気管が気密に嵌合して固定されている例がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−290793号公報(第4項、第7図)
【特許文献2】特開2005−11592号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような排気管は、真空容器内を排気した後に切断および封止される。このとき、真空容器との接合部分に応力が生じ、接続が不充分になるなどの問題が発生する場合がある。
【0005】
そこで本発明は、排気管を封止する際にも真空容器との間の接合の確実性を損なうことのない、光電子増倍管および放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、一側端部を構成する受光面板と、他側端部を構成するステムとを有する真空容器内に、受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、光電面が放出した電子を増倍させる電子増倍部と、電子増倍部が増倍した電子に基づいて出力信号を送出する電子検出部とを備えた光電子増倍管において、ステムは、電子増倍部と対向する第1面と、第1面と対向する第2面とを有する絶縁性部材であり、ステムには真空容器の排気を行う排気管が設けられ、排気管は、同軸上に配置された外側管と内側管とを有し、外側管の外周面はステムと密着接合され、外側管の真空容器内部側の端部と内側管の真空容器内部側の端部とは連結されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、排気管が二重構造であるので、外側管はステムとの接合性を重視した構成にし、内側管は、封止が適正に行えることを重視した構成にするなど設計の自由度が拡大される。例えば、外側管はステムと熱膨張係数の類似した材料にして確実に接合し、内側管は薄く形成して封止時に生ずる応力を低減するとともになるべく排気管の長さを短くすることができる。
【0008】
外側管は、ステムとの接合部において、ステムの真空容器内部側に突出して設けられることが好ましい。このような構成によれば、ステムの形成時に排気管の接続部にステムの材料が這い上がることが防止される。
【0009】
外側管と内側管とは、真空容器内部側端部において溶接することができる。このような構成によれば、内側管を封止する際に生ずる変形による応力を最小限に留めることが可能になる。
【0010】
上記いずれかの光電子増倍管において、受光面板の外側に、放射線を光に変換して出力するシンチレータを設置してなる放射線検出装置を構成することができる。
【0011】
このような構成によれば、シンチレータに入射した放射線を検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気管を封止する際にも真空容器との間の接合の確実性を損なうことなく、検出効率のよい光電子増倍管および放射線検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜図22は、本発明の一実施の形態による光電子増倍管を含む放射線検出装置を示す図である。各図において実質的に同一の部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。なお、以下の説明において「上」、「下」等の語を、図面に示す状態に基づいて便宜的に用いることとする。
【0015】
図1は、本実施の形態による放射線検出装置1の概略断面図、図2は、図1のII−II面における光電子増倍管10の概略断面図である。図1、2に示すように、放射線検出装置1は、入射した放射線を光に変換して出力するシンチレータ3、および入射した光を電子に変換および増倍して検出する光電子増倍管10を備え、入射した放射線を検出して信号として出力する装置である。光電子増倍管10は、断面が略矩形の管状形状を有しており、管軸の方向をz軸、図1の紙面に垂直な軸をx軸、z軸及びx軸に垂直な軸をy軸とする。
【0016】
シンチレータ3は、z軸方向一端側に入射面5、他端側に出力面7を備え、断面が略矩形状を有している。シンチレータ3には、入射面5側から放射線が入射し、入射した放射線は、シンチレータ3内部で光に変換されてシンチレータ3内を伝搬し、出力面7側から出力される。光電子増倍管10は、シンチレータ3の出力面7側に接しており、シンチレータ3の中心軸と光電子増倍管10の管軸とはほぼ同軸に設けられている。
【0017】
光電子増倍管10は、z軸方向一側端部を構成する受光面板13、他側端部を構成するステム29、ステム29の周縁部に設けられた管状部材31、ステム29のxy平面のほぼ中央に設けられた排気管40、および、筒型形状を有する側管15が、気密に接続および固定されることにより形成された真空容器である。光電子増倍管10の真空容器内部には、フォーカス電極17、複数のダイノードDy1〜Dy12を備えた電極積層部、電子を検出し信号として出力する複数のアノード25を備えた電子検出部、および、電極積層部と電子検出部との間に備えられた引き出し電極19が配置されている。
【0018】
受光面板13は、例えばガラスで形成された略矩形の板状形状を有しており、その内部側、すなわちz軸方向下面側には、入射光を電子に変換する光電面14が設けられている。光電面14は、例えば予め蒸着したアンチモンにアルカリ金属蒸気を反応させることにより形成される。光電面14は、受光面板13の内部側のほぼ全面に設けられており、シンチレータ3から出力され受光面板3を通して入射した光を、電子に変換し放出する。側管15は、例えば金属で形成された断面が略矩形の筒型形状を有しており、光電子増倍管10の側面を構成している。側管15の一端部には受光面板13が、他端部には管状部材31を介してステム29が、互いに気密に固定されている。ここで、光電面14は側管15に電気的に接続され、同電位とされている。
【0019】
図3は、ステム29の内側面29a、管状部材31、および延出部32を示す平面図である。図1〜図3に示すように、ステム29は、例えばコバールガラスで形成された略矩形の板状を有しており、光電子増倍管10内部側の内側面29aと、外側面29bと、それらを接続する周縁部29cとを有している。ステム29には、アノード25を支持するための導電性のステムピン27が、アノード25のチャンネル数に対応した数(ここでは64本)だけ、気密に挿通されている。
【0020】
ステム29の周縁部29cには、周縁部29cを取り囲む管状部材31が気密に装着されている。管状部材31は、例えば金属で形成された断面が略矩形の管形状を有しており、側管15とも気密に接続されている。管状部材31からは、ステム29の内側面29aに沿って光電子増倍管10の内部側に延出部32が延出している。延出部32は、例えば金属で形成された平面視が略矩形状の環形状を有している。
【0021】
延出部32のx軸方向両縁部には、複数の貫通穴部22、48が形成されており、それぞれ支持ピン21、リードピン47が挿通固定されている。また図3のx方向左側縁部には、フォーカスピン51が延出部32に立設されている。
【0022】
支持ピン21は、導電性材料で形成され、本実施の形態では、x軸方向両縁部に3本ずつ合計6本設けられている。なお、図2は、図3のV−V面における断面を示しており、図2に示すように、支持ピン21は、ステム29を貫通してz軸方向上方に延び、引き出し電極19を載置するとともに、引き出し電極19と同電位とされている。
【0023】
図5に示すように支持ピン21はステム25を挿通してz軸方向に延びる支持部21a、及び支持部21aのz軸方向上端に設けられ電極積層部が載置される載置部21bで構成されている。ここで載置部21bは支持部21aに比較してxy平面における断面積が大きく形成されており、電極積層部は最下段の電極(本実施形態においては引き出し電極19)の下面と載置部21bの上面(載置面)が接する形で支持ピン21上に載置されている。ここで載置部21bは支持部21aに比較してxy平面における断面積が大きく形成されているため、z軸方向における電極積層体の位置精度を確実に規定するとともに、電極積層体を載置部21bの載置面上に安定して載置することが可能となる。
【0024】
リードピン47は、導電性材料で形成され、本実施の形態では、x軸方向両縁部に合計35本設けられている。図4は、図3のIV−IV面における断面を示しており、図4に示すように、リードピン47は、ステム29を貫通してz軸方向上方に延び、夫々所定のダイノードDy1〜Dy12、及び引出し電極19に接続されて所定の電位を供給している。なお、各リードピン47は、夫々接続するダイノードDy1〜Dy12の位置に応じた長さに形成されている。フォーカスピン51は、導電性材料で形成され、ステム29からz軸方向上方に延び、フォーカス電極17に接続されている。フォーカス電極17は管状部材31に溶接されたフォーカス電極ピン51を介して側管15に電気的に接続され光電面14と同電位とされている。
【0025】
図5は、図2、すなわち、図3のV−V面における断面の一部拡大図であり、図6は、図4、すなわち、図3のIV−IV面における断面の一部拡大図である。図5、図6に示すように、貫通穴部22、48における支持ピン21およびリードピン47のステム29の内側面29aとの接続部分には、ステム29が盛り上がった這い上がり部33が形成されている。ここで、這い上がり部33と支持ピン21またはリードピン47との接点を点P1、這い上がり部33がないとした場合の内側面29aと支持ピン21またはリードピン47との仮想接点を点P2、管状部材31と延出部32との接点を点P3とすると、点P1−点P3間の距離は、点P3−点P2間の距離と比べて長くなっている。従って、本実施の形態では、這い上がり部33があることにより、支持ピン21またはリードピン47と管状部材31との沿面距離が長く確保されている。
【0026】
図1、図2に示すように、フォーカス電極17は、光電面14と所定の距離離間して対向するように配置されている。フォーカス電極17は、x軸方向に延びる複数のフォーカス片17aと、複数のフォーカス片17aによって形成された複数のスリット状の開口部17bを備えた略矩形薄型電極であり、電子をダイノードDy1の電子増倍孔18a(図7参照)に効率よく収束させためのものである。フォーカス電極17は、延出部32に立設されたフォーカスピン51(図3参照)を介して側管15に電気的に接続され光電面14と同電位とされている。
【0027】
ダイノードDy1〜Dy12は、電子を増倍させるための電極であり、フォーカス電極17のz軸方向下方に、略平行に対向するように積層されている。図7は、図1の部分拡大図である。図7に示すように、ダイノードDy1〜Dy12は、yz平面における断面が凹凸を有する電子増倍片18が互いに離間して平行に並んだ略矩形薄板型電極である。従って、ダイノードDy1〜Dy12には、隣接する電子増倍片18間にx軸方向に延びるスリット状の電子増倍孔18aが形成されていることとなる。所定数の電子増倍孔18aが各アノードに対応しており、アノード25の各チャネルのx軸方向境界部に対応する位置には、y軸方向に延びる隔壁71(図15参照)が設けられ、ダイノードDy1〜Dy12の複数チャネルのy軸方向境界を規定している。また、各ダイノードDy1〜Dy12間には、図2および図5に示すように、絶縁部材23が配置されている。ダイノードDy1〜Dy12には、リードピン47により、光電面14側からステム29側に向かって順次高い電位が供給されている。
【0028】
引き出し電極19は、ダイノードDy12のステム29側に、ダイノードDy12と絶縁部材23を介して離間し、略平行に対向するように配置されている。引き出し電極19は、ダイノードDy1〜Dy12と同一の材料から形成された薄板型電極であり、x軸方向に延びる複数の引き出し片19aと、複数の引き出し片19aによって形成された複数のスリット状の開口部19bを備えているが、この開口部は、ダイノードDy12から放出された電子をアノード25へ通過させるためのものであり、ダイノードDy1〜Dy12の電子増倍孔18aとは異なる。従って、開口部は、ダイノードDy12から放出された電子がなるべく衝突しないように設計されている。引き出し電極19には、ダイノードDy12よりも高くアノード25より低い所定の電位が与えられており、ダイノードDy12の2次電子面上の電界強度を均一にする。ここで、2次電子面とは、各ダイノードDyの電子増倍孔に形成された電子の増倍に寄与する部分のことを指す。
【0029】
引き出し電極19がない場合には、ダイノードDy12から電子を引き出すための電界は、ダイノードDy12−アノード25間の電位差及び距離に依存する。従って、例えば、各アノード25がxy平面に対して多少傾いて配置された場合には、ダイノードDy12−アノード25間の距離が、各位置によって異なってしまうため、ダイノードDy12に対する電界強度が均一にならず、電子を均一に引き出すことができない。しかしながら、本実施の形態では、ダイノードDy12−アノード25間に引き出し電極19が配置されているため、ダイノードDy12に対する電界は、ダイノードDy12−引き出し電極19間の電位差及び距離の電位差及び距離によって決定される。ダイノードDy12−引き出し電極19間の電位差及び距離は一定であるため、ダイノードDy12の2次電子面上の電界強度は均一になり、ダイノードDy12から電子を引き出す力も均一となる。従って、各アノード25がxy平面に対して多少傾いて配置された場合であっても、ダイノードDy12から電子を均一に引き出すことができる。
【0030】
引き出し電極19は、上述のように縁部において導電体で形成された支持ピン21の載置部21b上に載置されている。図5に示すように、支持ピン21と複数の絶縁部材23とはz方向軸35上に同軸に配置されているため、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19をz軸下方向に高い圧力をかけて固定することが可能となる。
【0031】
アノード25は、電子を検出し、ステムピン27を介して検出した電子に応じた信号を光電子増倍管10の外部に出力する電子検出部であり、引き出し電極19のステム29側に、引き出し電極19と略平行に対向するように設けられている。図1、2に示したように、アノード25は、ダイノードDy1〜Dy12の複数のチャネルに対応して複数設けられている薄板型電極であり、夫々ステムピン27に溶接接続され、ステムピン27を介して引き出し電極19よりも高い所定の電位を供給されている。また、アノード25には、製造時に排気管40から導入されるアルカリ金属蒸気を拡散させるため、複数のスリットが設けられている。
【0032】
以下、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25の構成についてさらに詳しく説明する。
【0033】
図8は、電子増倍部をz軸上方側から見た概観図であり、図9は、図8の部分拡大図である。図8に示すように、電子増倍部は、複数(本実施の形態では、64個)のアノード25を2次元に配列して構成され、各アノード25は夫々ステムピン27に支持されているとともにステムピン27を介して図示しない回路に電気的に接続されている。
【0034】
ここで、便宜的に単位アノードを図8の左上からアノード25(1−1)、25(1‐2)、…、25(8−8)とする。各アノード25(1−1)、25(1−2)、…、25(8−8)には、隣接する単位アノードとの間に凹部28が互いに対向して形成されており、凹部28には、ブリッジ残部26が残っている。アノード25は、製造時には隣接する単位アノード同士がブリッジによって接続された一体のアノード板の状態に形成されており、一体の状態で各ステムピン27に各アノードを溶接して固定する。その後にブリッジを切断し、アノード25(1−1)、25(1−2)、…、25(8−8)を互いに独立させる。ブリッジ残部26は、ブリッジを切り離した残りの部分である。
【0035】
また、x軸方向両縁部に相当するアノード25(1−1)、(2−1)、…、25(8−1)およびアノード25(1−8)、25(2−8)…、25(8−8)のうち、アノード25(1−1)、(1−8)、(8−1)、(8‐8)のコーナ部83を除いて、切り欠き部24が形成されている。よって、この切り欠き部24により、アノード25と支持ピン21、リードピン47、およびフォーカスピン51の接触を避けるとともに、電子検出部の有効面が側管15の近傍にまで広げられている。
【0036】
図10は、ダイノードDy12をz軸上方から見た概観図であり、図11は、図10の部分拡大図である。なお、図10、11では電子増倍片18、引き出し電極19の開口は省略されている。なお、図10、図11では、電子増倍片18、引き出し電極19の開口は省略されている。図10、11に示すように、ダイノードDy12と引き出し電極19とはxy平面においてアノード25とほぼ同一の外形を有している。すなわち、x軸方向両縁部に支持ピン21、リードピン47等を避ける切り欠き部49が形成されている。引き出し電極19の切り欠き部49には、突出部55が形成されており、支持ピン21は、突出部55を載置することにより、引き出し電極19全体を載置している。また、ダイノードDy12も、同様に突出部55を有している。ダイノードDy12の場合、リードピン47A、47Bと接続されて所定の電位を供給されているため、リードピン47A、47B周辺に突出部53が形成されている。また、y軸方向両縁部においては側管の内壁面の近傍まで電極が形成され、特に4ヶ所のコーナ部はコーナ部85が突出している。なお、ダイノードDy1〜Dy11もダイノードDy12と実質的に同様の構成であり、各リードピン47はz軸方向に延びて所定のダイノードと接続されている。
【0037】
図12は、フォーカス電極17をz軸上方側から見た概観図であり、図13は、図12の部分拡大図である。なお、図12、13では、図1及び図2で示したフォーカス片17a及び開口部17bは省略されている。図12、13に示すように、フォーカス電極17は、アノード25の切り欠き部24、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19の切り欠き部49を覆うようにx軸方向周縁部まで設けられている。なお、フォーカス電極17の切り欠き部24または切り欠き部49を覆う部分は、スリットの形成されていない平板状電極部分16を形成し、4つのコーナ部はスリットを有するコーナ部87となっている。
【0038】
以下、上記のようなフォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25のxy平面外形が光電子増倍管10内部での電子軌道に及ぼす作用について説明する。図14は、光電面14からダイノードDy1までの電子軌道をxy平面およびxz平面に投影して示す図である。図14に示すように、光電面14のx方向周縁部から放出された電子は、フォーカス電極17の切り欠き部24、49を覆うように設けられた平板電極部分16によりx軸方向中央側の電子増倍孔用開口89に集束され、軌道61のようにダイノードDy1に入射する。また、光電面14のコーナ部87に対向する領域から放出された電子は、フォーカス電極17のコーナ部87で集束され軌道63のようにダイノードDy1のコーナ部85に入射する。このように、フォーカス電極17およびダイノードDy1のコーナ部87、85が設けられているため、光電面14周縁部から放出された電子も、効率よくダイノードDy1に入射する。
【0039】
ところで、光電面14からダイノードDy1までの電子の走行距離に差が生じると、出力される信号の時間的揺らぎを生じる。例えば、光電面14のより中央部から放出された電子は、軌道65のようにダイノードDy1に入射する。軌道61と軌道65とはダイノードDy1のほぼ同一部分に入射するが、光電面14からダイノードDy1までの電子の走行距離に差が生じるため、出力される信号の時間的揺らぎを生じる。また、光電面14のコーナ部87に対向する領域から放出される電子は、斜め方向の軌道でダイノードDyのx軸方向中央側に入射することとなる。従って、各電極にコーナ部83、85、87が設けられていない場合、すなわち、各電極のコーナ部分が有効領域となっていない場合には、光電面14のコーナ部87に対向する領域から放出される電子は、ダイノードDy1に入射させるために大きく集束させる必要があるため、軌道61よりも更に軌道65との走行距離の差が大きくなる。しかしながら、本実施の形態においては、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25には切り欠き部24、49が設けられ、コーナ部83、85、87は電子の増倍および検出に対して有効領域となっているため、光電面14のコーナ部83、85、87に対向する領域から放出された電子の走行時間差が小さくなるように集束される。従って、各軌道61、63、65によってダイノードDy1に入射する電子の時間的ばらつきを最小限に抑制することができる。
【0040】
次に、ダイノードDy1〜Dy12に設けられる隔壁の構成について説明する。図15は、通常のダイノードに設けられる隔壁を示す図、図16は、所定のダイノードに設けられる隔壁を示す図、図17は、隔壁を多く設けたダイノードの全体図、図18は図17の断面図である。なお、図15、16では電子増倍片18が省略されている。
【0041】
ダイノードDy1〜Dy12は、本実施の形態では上述したようにx軸方向にスリットを有する構造であり、y軸方向には図15に示すように、アノード25の複数のチャネルのy軸方向境界部と対応する隔壁71が設けられている。光電子増倍管では受光面の有効領域を広くとるために、受光面の周縁部付近に入射した光に応じて光電面の周縁部から放出される光電子をxy平面の中心側に集束させる。周縁部からの電子は、集束に伴ってロスが生じるため、この結果、周縁部の電子増倍率の均一性が低下する傾向がある。そこで、図16、17に示すようにダイノードのy軸方向周縁部を除く領域にy軸方向に延びる隔壁73を設け、電子の増倍率を調整する。このような構成においては、図17のA−A断面では、図7に示すように電極積層部全体に電子増倍片18が存在するが、B−B断面では、図18に示すようにダイノードDy5のy方向周縁部を除く部分が隔壁73となっている。隔壁73部分には電子増倍孔18aが形成されず、隔壁73に入射する電子は増倍に寄与しないため、xy平面中央部の電子増倍が抑制されて電子の増倍率が均一化される。
【0042】
次に排気管の構成について説明する。図19は、排気管付近の構成を示す断面図である。排気管40は、ステム29の中央部に気密に接続されている。排気管40は、内側管43と外側管41との二重構造である。外側管41は、ステム29と密着させるため、ガラスと密着性がよく熱膨張係数の等しい例えばコバール金属で形成し、厚さは例えば0.5mm、外径は例えば5mm、長さは例えば5mmである。なお、ステム29の厚さは例えば4mmとすることができ、この場合、外側管41はステム29の外側面29bより1mm外側に突出する。外側管41が外側面29bよりも外側に突出していることにより、ステム29が外側管41を超えて内側管43と外側管41との間に入り込むことを防止している。また、排気管40は、封止(圧接)を容易にするために、封止後であっても、内側管43が外側管41の下端よりも突出するように構成されている。
【0043】
内側管43は、例えばコバール金属または銅で形成し、外径は例えば3.8mm、切断前の長さは例えば30mmであり、外側管41と同軸に配置し、ステム29の内側面29a側の一端部が外側管41と気密接合している。また、光電子増倍管10の製造終了時には内側管43の他端部を気密に封止するため、なるべく厚さが薄いことが好ましく、例えば0.15mmである。ステム29との接続部においては、ステム29の材料が排気管の内側に回りこまないように、接続部41aをz軸方向上側に例えば0.1mm突出させるように配置されている。
【0044】
次に、光電子増倍管10の製造方法を説明する。図20〜22は、排気管およびステムの製造方法を示す図である。図20に示すように、まず、外側管41と内側管43とを用意する。続いて、内側管43を外側管41の内部に同軸となるように配置する。このとき、内側管43と外側管41との一端同士の位置を合わせ、接合部41aをレーザ溶接によって接合する。接合後、外側管41の外面に、ステム29と融着しやすくするための酸化膜を形成する。また、管状部材31および延出部32を用意し、それらにステム29と融着しやすくするための酸化膜を形成する。図21に示すように、ステム29には、支持ピン21を装着する貫通孔28、ステムピン27を装着する貫通孔30等を夫々所定数、排気管を装着する貫通孔34を一箇所形成する。
【0045】
図22に示すように、排気管40、管状部材31、延出部32、ステム29、支持ピン21、ステムピン27、リードピン47等を夫々図示の位置に配置してカーボン治具(図示せず)に組み入れ、治具によりステム29をステム29の内側面29a、外側面29b側を挟むように加圧しながら本焼成することで、ガラスと各金属とが気密融着する。このとき、ステム29の材料が延出部32の貫通穴部22、48を挿通する支持ピン21、リードピン47のステム29との接続部分に押し出されることで這い上がり33が生ずる。融着後、治具を取り外し、酸化膜の除去および洗浄を行う。このようにしてステム部分が完成する。
【0046】
続いて、一体に形成されたアノード25をステムピン27上に載置し固定する。固定した後、ブリッジを切断しアノード25(1−1)、25(1−2)、…、25(8−8)として独立させる。支持ピン21上には、引き出し電極19をアノード25と略平行に離間して載置する。さらに引き出し電極19上に、絶縁部材23を介してダイノードDy12〜Dy1およびフォーカス電極17を順次離間して対向させた電極積層部を載置する。このとき、ダイノードDy1〜Dy12の夫々対応するリードピン47を突出部53に、フォーカス電極17を、フォーカスピン51と接続し、z軸下方向に圧力をかけて固定する。その後、受光面板13が固定された側管15端部を管状部材31と溶接固定して組み立てる。
【0047】
続いて、排気管40から光電子増倍管10内部を真空ポンプなどにより排気した後、アルカリ蒸気を導入し、光電面と2次電子面を活性化させる。再び、光電子増倍管内部を真空に排気した後、排気管40を構成する内側管43を所定の長さに切断し、先端を封止する。このとき、放射線検出装置1を回路基板上に載置する際に障害にならないように、ステム29との接続部分の密着度が損なわれない程度に内側管43を短くすることが好ましい。以上の工程により、光電子増倍管10が得られる。
【0048】
以上のように構成された本実施の形態による放射線検出装置1では、シンチレータ3の入射面5に放射線が入射すると、出力面7側に入射した放射線に応じた光を出力する。光電子増倍管10の受光面板13に、シンチレータ3が出力した光が入射すると、光電面4は、入射した光に応じた電子を放出する。光電面4に対向して備えられたフォーカス電極17は、光電面4から放出された電子を集束して、ダイノードDy1に入射させる。ダイノードDy1は入射した電子を増倍し、下段ダイノードDy2側に放出する。このようにダイノードDy1〜Dy12によって順次増倍された電子は、引き出し電極19を介してアノード25に達する。アノード25は到達した電子を検出し、ステムピン27を介して信号として外部に出力する。
【0049】
光電子増倍管10においては、電極積層体を載置するための支持ピン21を備える。支持ピン21を構成する載置部21bの載置面上に電極積層部を載置する構成とすることで電極積層部をz軸方向上側から大きな圧力をかけて固定することが可能となり、電極積層部の固定強度が高まり耐震性が向上するとともに、電極積層部(電極積層部を構成する各電極)のz軸方向の位置精度が高められる。また、電極積層部の最下段の電極である引き出し電極19が支持ピン21の載置部21b上に載置されて支持されており、アノード25との間に絶縁物を介していない。よって、電子が絶縁物に衝突して発光し、アノード25から出力される信号にノイズを発生させることを防止することができる。さらに、支持ピン21は導電性材料で形成されているため、電子が衝突しても発光しない。従って、一層、ノイズの発生を防止することができる。
【0050】
フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19は、支持ピン21と同軸に配置された絶縁部材23を介して互いに離間した状態で対向し積層されている。よって、z軸方向により高い圧力をかけてフォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19を固定することができるため更に耐震性が向上する。また、フォーカス電極17、ダイノードDy1〜Dy12および引き出し電極19を絶縁部材23を介して積層することにより、各電極のxy平面内の位置を正確に規定することができる。
【0051】
ダイノードDy1〜Dy12の光電面14側にフォーカス電極17が設けられているので、光電面14が放出した電子を効率よくダイノードDy1に入射させることができる。
【0052】
ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25には切り欠き部49、24が形成され、切り欠き部分に、支持ピン21、リードピン47が配置されている。よって、各電極の有効面積を充分確保することが可能になるとともに、電子の走行時間差による信号の揺らぎなどを最小限に低減できる。また、リードピン47がz軸方向に向かって延びており、ダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25に形成された切り欠き部49、24がz軸方向において重なっていることで、さらに有効面積を確保することが可能になっている。
【0053】
また、フォーカス電極17は、ダイノードDy1〜Dy12の切り欠き部49を覆うようにxy平面周縁部まで設けられているので、光電面14におけるダイノードDy1〜Dy12、引き出し電極19およびアノード25に形成された切り欠き部に対応する領域から放出された光電子をダイノードDy1の有効領域に集束させることが可能となり、光電子増倍管における光検出の有効面積を大きく確保できるとともに、リードピン47に電子が衝突して増倍率を低下させるのを防止している。
【0054】
また、フォーカス電極17の開口部17bは、x軸方向、すなわち、引き出し電極19およびアノード25の切り欠き部49、24が形成されている縁部に対して垂直な方向に延びている。開口部17bには、できるだけ多くの電子を入射させることが好ましいが、フォーカス片17aに当たった電子は開口部17bには入射しない。従って、フォーカス片17aを避けるように電子の軌道を制御することが好ましい。その際、x軸方向の制御、すなわち、電子が本来進んでいる方向の制御は、y軸方向の制御に比べて難しい。本実施の形態では、開口部17bが、x軸方向、すなわち、引き出し電極19およびアノード25の切り欠き部49、24が形成されている縁部に対して垂直な方向に延びているため、比較的容易なy軸方向の制御を行えば、電子を効率良く開口部17bに入射させることができる。
【0055】
最終段ダイノードDy12とアノード25との間に引き出し電極19が設けられているため、ダイノードDy12のz軸方向下側の電界強度が均一化される。従って、ダイノード12の電子放出特性が均一化され、例えば各単位アノードがブリッジ切断後に傾き、アノード25−引き出し電極19間の距離にばらつきを生じたとしても、ダイノードDy12から各チャンネル領域毎に均一に電子を引き出すことができる。
【0056】
所定段のダイノードには隔壁73が設けられ、開口率を調整してxy平面内における電子増倍率のばらつきを低減している。
【0057】
アノード25は、一体に形成され、各アノードが対応するステムピン27に固定された後にブリッジを切断して単位アノード25を独立させるので、ステムピン27に載置する工程が簡略化できるとともに、各アノード25の設置位置の精度が高まる。また、ブリッジが凹部28内に設けられているので、アノード25の有効面を充分確保することができるとともに、ブリッジ残部が切り欠き内に配置されるので、ブリッジ残部間の放電を防止することができる。また、このように2次元に配列されたマルチアノードを用いることで、検出する光のxy平面内の入射位置を検出することができる。
【0058】
ステム29はガラスで形成され、周縁部29cに管状部材31、内側面29a上には延出部32が設けられ、延出部32には、支持ピン21、リードピン47が貫通し、フォーカスピン51が立設している。よって、各ピンを側管15近くに備えることができ、各電極の有効面を充分確保することが可能になっている。
【0059】
ステム29と支持ピン21、リードピン47との接続部分には這い上がり部33が形成され、管状部材31と各ピンとの沿面距離を大きくとることが可能になり、沿面放電の発生および増倍された電子が絶縁物に衝突して発生する発光によるノイズを防止する効果がある。また、延出部32に貫通穴部22、28が設けられているので、ステム29製造時にガラス材の逃げ部分として機能することになり、ステム29の厚さ調整を容易にしている。さらに、このようにステム29の厚さを制御することができるので、受光面板13に対するステム29の外側面29bの位置精度が高まり、結果として光電子増倍管全長の寸法精度が向上するため、例えば光電子増倍管を回路基板等に表面実装して使用する際に、光源と光電子増倍管の入射面との距離が一定となり、誤差の少ない光検出が可能となる。
【0060】
ステム29に設けられている排気管40は二重管構造となっており、外側管41は、ステム29との密着性が高い材料で厚く形成され、内側管43は、柔らかい材料で薄く形成されている。このような二重管構造としたことによって、外側管41の厚さによりレーザ溶接時のピンホールなどを防止できる。また内側管43は、ステム29の内側面29a側の端部でのみ外側管41と接続すればよく、外側管41でステム29との密着性を確保しながら、接続部に損傷を与えることなく長さも回路基板上に載置しても邪魔にならない程度に内側管43を短く切断して封止することが可能になる。また、内側管43を封止しやすいシール性の優れた材料とすることもできる。さらに、排気管40の管径を大きくとることもでき、アルカリ金属蒸気を導入する際に、処理時間を短縮できるとともに導入した蒸気の均一性も向上する。
【0061】
さらに、光電子増倍管10の受光面板13側にシンチレータ3を設けたので、放射線を検出して信号として出力することが可能である。
【0062】
次に、第1の変形例について図23を参照しながら説明する。図23は、電子検出部の変形例を示す斜視図である。上記実施の形態においては、電子検出部を構成するアノード25は2次元に配列されたマルチアノードであったが、第1の変形例においては、一次元に配列されたリニアアノード125である。リニアアノード125の境界部は、ダイノードDy1〜Dy12の隔壁71に相当する部分に設けられる。各リニアアノード125は、ステム29に貫通して設けられるステムピン127に接続されて支持され、所定の電位を供給されるとともに検出した電子に応じた信号を出力する。リニアアノード125にも隣接する単位アノードと対向する部分にブリッジを備えた凹部(図示せず)を設け、アノード125全体をステムピン127上に固定した後にブリッジを切断することが好ましい。
【0063】
続いて第2の変形例について、図24を参照しながら説明する。図24は、シンチレータの変形例を採用した放射線検出装置100を示す概略断面図である。上記実施の形態によるシンチレータ3に変えて、光電子増倍管のチャンネル領域に対応したサイズのシンチレータ103を一次元に複数個配置した放射線検出装置100とする。他の構成は、第1の変形例と同一である。このような構成によれば、放射線のxy平面内における入射位置の検出が可能となる。
【0064】
さらに図25を参照して、第3の変形例について説明する。図25は、シンチレータの他の変形例を採用した放射線検出装置200示す概略断面図である。第2の変形例によるシンチレータ103に変えて、アノード125の大きさよりも小さい、例えばアノード125の2分の1に相当するシンチレータ203を一次元に複数個配列した放射線検出装置200とする。他の構成は、第2の変形例と同一である。このような構成によれば、放射線のxy平面内における入射位置を、より正確に検出することが可能となる。
【0065】
さらに図26を参照して、第4の変形例について説明する。図26は、載置部21b及び引き出し電極19の形状の変形例の説明図である。載置部21bの引き出し電極19を載置する面には凸部21cが形成され、引き出し電極19の載置部21bに載置される面には凹部19cが形成されており、支持ピン21が引き出し電極19を載置した際には、凸部21cと凹部21cとは互いに嵌合される。このような構成によれば、フォーカス電極17、複数のダイノードDy1〜Dy12を備えた電極積層部のxy平面内における位置精度を向上させることができる。なお、引き出し電極19が配置されていない場合には、最終段のダイノードDy12に凹部を形成すればよい。また、載置部21bに凹部を形成し、引き出し電極19に凸部を形成してもよい。
【0066】
尚、本発明による光電子増倍管および放射線検出装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
例えば、管状部材31はステム29の内側面29a側に延出部32が延出しているが、外側面29b側に延出部32を設けるようにしてもよい。その場合には、延出部32の周囲や、延出部32を挿通しているリードピン47間に光電面14の電位が露出することとなる。ステム29の外側には、回路基板を密接して配置することが多いため、アノード25に対する電位差が最も大きい光電面14の電位が露出していると、耐電圧の点で問題が生じる可能性がある。従って、延出部32は、内側にある方が好ましい。
【0068】
製造方法において、排気管40は外側管41と内側管43とを接続した後にステム29と接続させたが、まず外側管41のみを酸化してステム29と接続し、酸化膜を除去した後に内側管43を外側管41と接続する方法もある。
【0069】
光電子増倍管および各電極の断面は略矩形としたが、断面が円形、またはその他の形状でもよい。この場合、光電子増倍管の形状に応じてシンチレータの形状も変更することが好ましい。
【0070】
隔壁73は、上記例では5段目のダイノードDy5に設けたが、他の段に設けてもよく、また、複数段のダイノードに設けるようにしてもよい。
【0071】
引き出し電極19の開口部19bは、ライン状に限らず、メッシュ状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の放射線検出装置は、医療用機械における画像診断装置などに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態による放射線検出装置1の概略断面図である。
【図2】図1のII−II面における光電子増倍管10の概略断面図である。
【図3】ステム29の内側面29a、管状部材31、および延出部32を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV平面における断面図である。
【図5】図2の部分拡大図である。
【図6】図4の部分拡大図である。
【図7】図1の部分拡大図である。
【図8】アノード25およびそのz軸下方側の構成をz軸上方側から見た概観図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】ダイノードDy12およびそのz軸下方側の構成をx軸上方から見た概観図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】フォーカス電極17およびそのz軸下方側の構成をz軸上方側から見た概観図である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】光電面14からダイノードDy1までの電子軌道をxy平面およびxz平面に投影して示す図である。
【図15】通常のダイノードに設けられる隔壁を示す図である。
【図16】所定のダイノードに設けられる隔壁を示す図である。
【図17】隔壁を多く設けたダイノードの全体図である。
【図18】図17の断面図である。
【図19】排気管付近の構成を示す断面図である。
【図20】排気管およびステムの製造方法を示す図である。
【図21】排気管およびステムの製造方法を示す図である。
【図22】排気管およびステムの製造方法を示す図である。
【図23】第1の変形例によるアノード125を示す斜視図である。
【図24】第2の変形例による放射線検出装置100を示す概略断面図である。
【図25】第3の変形例による放射線検出装置200を示す概略断面図である。
【図26】第4の変形例による放射線検出装置100を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1:放射線検出装置 3:シンチレータ 5:入射面 7:出射面 10:光電子増倍管 13:受光面板 14:光電面 15:側管 17:フォーカス電極 19:引き出し電極 21:支持ピン 23:絶縁部材 25:アノード 27:ステムピン 29:ステム 31:管状部材 32:延出部 33:這い上がり部 35:軸 47:リードピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側端部を構成する受光面板と、他側端部を構成するステムとを有する真空容器内に、前記受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、前記光電面が放出した電子を増倍させる電子増倍部と、前記電子増倍部が増倍した電子に基づいて出力信号を送出する電子検出部とを備えた光電子増倍管において、
前記ステムは、前記電子増倍部と対向する第1面と、前記第1面と対向する第2面とを有する絶縁部材であり、
前記ステムには真空容器の排気を行う排気管が設けられ、
前記排気管は、同軸上に配置された外側管と内側管とを有し、前記外側管の外周面は前記ステムと密着接合され、前記外側管の前記真空容器内部側の端部と前記内側管の前記真空容器内部側の端部とは連結されていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項2】
前記外側管は、前記ステムとの接合部において、前記ステムの前記真空容器内部側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光電子増倍管。
【請求項3】
前記外側管と前記内側管とは、前記真空容器内部側端部において溶接されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電子増倍管。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光電子増倍管の前記受光面板の外側に、放射線を光に変換して出力するシンチレータを設置してなることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項1】
一側端部を構成する受光面板と、他側端部を構成するステムとを有する真空容器内に、前記受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、前記光電面が放出した電子を増倍させる電子増倍部と、前記電子増倍部が増倍した電子に基づいて出力信号を送出する電子検出部とを備えた光電子増倍管において、
前記ステムは、前記電子増倍部と対向する第1面と、前記第1面と対向する第2面とを有する絶縁部材であり、
前記ステムには真空容器の排気を行う排気管が設けられ、
前記排気管は、同軸上に配置された外側管と内側管とを有し、前記外側管の外周面は前記ステムと密着接合され、前記外側管の前記真空容器内部側の端部と前記内側管の前記真空容器内部側の端部とは連結されていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項2】
前記外側管は、前記ステムとの接合部において、前記ステムの前記真空容器内部側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光電子増倍管。
【請求項3】
前記外側管と前記内側管とは、前記真空容器内部側端部において溶接されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電子増倍管。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光電子増倍管の前記受光面板の外側に、放射線を光に変換して出力するシンチレータを設置してなることを特徴とする放射線検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−234366(P2007−234366A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53808(P2006−53808)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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