説明

光電気混載可撓性プリント配線板及びその受発光素子実装方法

【課題】受発光素子と光導波路の位置合わせ、光路等の封止を容易にでき、可及的に薄型の光電気混載可撓性プリント配線板及びその受発光素子実装方法を提供する。
【解決手段】発光素子2と受光素子3はベアチップ形態で、それぞれ受光部2bと発光部3bの反対面に電極2a、3bを有する面発光型発光素子と面受光型受光素子であり、発光素子2、受光素子3および光導波路4が、可撓性プリント配線板本体1Aの一方の面に実装され、発光素子2の発光部2b、光導波路コア4、受光素子3の受光部3bが略同軸上に配置されており、発光素子2および受光素子3が可撓性プリント配線板本体1A表面と直交方向に対し、受発光方向が略90°となるように実装されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する光導波路を有する光電気混載可撓性プリント配線板及びその受発光素子実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および高機能化は益々促進されてきており、そのために回路基板に対する高密度化の要求が高まってきている。そこで、回路基板を片面から両面や三層以上の多層回路基板とすることにより、回路基板の高密度化を図っている。
その一環として、特許文献1に記載のような混成多層回路基板が、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話、ゲーム機などの小型電子機器を中心に広く普及している。この混成多層回路基板は、各種電子部品を実装する多層回路基板や硬質回路基板間を、コネクタ等を介して、別体の可撓性プリント配線板やフレキシブルフラットケーブルを一体化した可撓性ケーブル部によって接続する構成となっている。
【0003】
特にこれらの機器は情報量が増えてきており、これを伝送するための信号伝送速度はますます、高速になっていく傾向にある。パソコンにおいては2010年から2011年にかけて、伝送速度が6Gbpsの伝送規格へ移行しており、線路での伝送損失に対する考慮はますます重要になっている。
【0004】
さらに、高速でパルス信号を発信するために、信号源の信号振幅電圧が低電圧化していく傾向にあり、外部または自身から発するスパイクノイズにより、正確な信号伝送が妨げられ易い状況となっている。高速信号伝送を行う基板は、特性インピーダンス整合された伝送線路が必要となり、これをもっても、伝送損失が許容できない領域になりつつある。
上述のスパイクノイズに対しては伝送線路や機器内の耐ノイズ対策を講じる必要があり、伝送線路に対してはシールドを形成しなければならない。そのために、厚みが増し、ノートパソコン等のディスプレイとキーボードを繋ぐヒンジの屈曲性を確保することが困難な場合があった。このことから、電気信号を高速伝送するための損失や耐ノイズの問題を解決すべく、長距離伝送の分野で実用化されている光ファイバーを用いた光信号による高速信号伝送が、小型機器内でも適用を検討されている。
【0005】
さらに、上述のヒンジ部等に適用できるよう、可撓性を有する有機系のポリマー光導波路を、可撓性プリント配線板と組み合わせた伝送線路が特許文献2、特許文献3等に記載されている。
しかしながら、弾性率および耐熱性の低い樹脂材料からなる可撓性プリント配線板とポリマー光導波路を組み合わせた伝送線路は、発光、受光する光素子を実装する方法や条件に大きな制約がある。また、各部材の位置合わせ、ポリマー光導波路への45°ミラーの形成、光路やミラー面の保護を行う必要があり、煩雑な工程が必要であり、歩留り良く安価に製造することは構造上困難であった。
これらのことから、光導波路を有する光電気混載可撓性プリント配線板を安価に安定的に製造可能な構造が望まれている。
【0006】
図4は、特許文献3に記載の従来の光導波路を有する光電気混載可撓性プリント配線板の構造を模式的に示す断面構造図である。
すなわち、可撓性プリント配線板本体101の一方の面上に、電極部102a及び発光部102bを備えた発光素子102と、電極部103a、受光部103bを備えた受光素子103が所定間隔を隔てて搭載されている。
フレキシブルプリント配線基板101には、発光部102b及び受光部103bに対応
して裏面に向けて別に穴加工された光路孔104,104が設けられ、両面フレキシブルプリント配線基板101の反対面には、可撓性を有するポリマー光導波路105が接着剤106を介して張り合わされている。
【0007】
光導波路105のコア105aの延長上にはミラー部107が形成されている。発光素子102は、比較的安価な半導体レーザであるVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER[垂直共振器面発光レーザ:半導体ウエハー基板の垂直方向に発光する])が用いられ、このVCSELの波長850nmに合わせ、受光素子103は波長850nmに感度を有するフォトダイオードが用いられている。
発光素子102及び受光素子103の各電極102a、103aは、発光部102b及び受光部103b側の面に設けられており、フレキシブル配線基板101に対して、半田バンプ109を用いてフリップチップボンディング方式により実装されている。
【0008】
発光素子102及び受光素子103の実装については、図4(B)乃至(E)に示すように、次の手順で行われる。実装手順については、発光素子102も受光素子103も同じなので、以下、受発光素子123と記載する。
i)ピックアップ前にCCD等のカメラ111にて認識する(図4(B)参照)。
ii)受発光素子123の対向する2側面を、ピックアップツール112でピックアップし
、実装前の受発光素子112をストックしているトレー上から実装装置(ここではフリップチップボンダー)内へ移動する(図4(C)参照)。
iii)ピックアップツール112が180°反転し、実装用の吸引ノズル113へ受発光素子123を持ちかえる(図4(D)参照)。
iv)吸引ノズル113で受発光素子123を吸着し、カメラ114で受発光素子123を認識し(図4(E)参照)、実装ステージへ移動し、基板へ実装する。
【0009】
この発光素子102、受光素子103の下部の空間、光路孔104内部、さらにミラー部107を保護する必要があり、それぞれ透明性の封止樹脂108を用いて封止する。ミラー部107においては封止樹脂108の屈折率が高い場合にはミラーとして機能しなくなることから、スパッタ法、蒸着法等で金属薄膜をミラー部107に形成する必要もある。可撓性プリント配線板本体101および光導波路105とも可撓性を備えていることから、屈曲を行うことができる。
【0010】
この従来構造の場合、安定的に光信号伝送するためには、発光部102b、発光素子102側の光路孔104、ミラー部107、光導波路105、受光素子103側の光路孔104、受光部103bの光軸が30〜50μm程度の精度に入っている必要があり、寸法伸縮が起こり易い可撓性プリント配線板を用いる場合、非常に困難である。
加えて、受発光素子123の下部および光路孔104内に封止した樹脂部においても光伝送損失が増加するため、信号伝送するために発光素子102へ印加する電力を増やす必要があり、消費電力の低減の観点からも不利となる。
【0011】
これに対して、特許文献4にでは、光導波路へミラーを形成しない光伝送モジュールについて記載されているが、以下の点で問題がある。
図5(A)は、特許文献4に記載の従来の光導波路へミラーを形成しない光伝送モジュールの構造を示す断面構造図である。
発光素子202及び受光素子203は端面入出射型であり、これはVCSEL等の面発光型の発光素子と比べ高価である。また、この場合も、半田バンプ209による実装となっており、導波路205とのバンプ高さ方向の位置精度を出すことが困難である。少なく見積もっても10μm単位で変動する。XY方向の位置精度を確保する手段は記載されているが、Z方向については記載がない。
【0012】
上記のXY方向の位置精度を確保する方法として、光導波路205のXY方向の位置を発光素子202及び受光素子203実装後にレーザでカットすることが記載されている。この方法では、光導波路205の側壁形状が悪く、損失が大きくなること、レーザの加工位置精度が少なくとも数μm以上はあるため、ここでも損失が発生してしまう。加えて、本工程は煩雑である。
【0013】
さらに、特許文献5では、面発光型の発光素子を用い、光導波路へミラーを形成しない光伝送モジュールについて記載されているが、以下の点で問題がある。
図5(B)は、特許文献5に記載の従来の面発光型の発光素子302及び面受光型の受光素子303を用い、光導波路305へミラーを形成しない光伝送モジュールの構造を模式的に示す断面構造図、同図(C)は発光素子実装部の拡大図である。
発光素子302及び受光素子303は面発光型及び面受光型の素子を用いており、これをサブマウント基板309に接続し、サブマウント基板309をベース310へ搭載する際に光軸Lが水平方向に向くようにしている。
【0014】
これに対する懸案は3点ある。
サブマウント基板309を用いることで、実質的な発光部302b及び受光部303bの厚みが厚くなり、光通信モジュールとしての厚みを薄くすることが困難である。
サブマウント基板309へ発光素子302及び受光素子303を接続する際、2つある電極の少なくとも1つの電極をワイヤーボンディング308で接続しているにもかかわらず、後の工程上の都合等から樹脂等での封止をこの時点では行わないことを勧めている。しかし、このようにすると、サブマウント基板309をベース310へ搭載して封止されるまでの間に、ワイヤー308が切断される恐れがあり、好ましくない。
サブマウント基板310へ受発光素子302,303を接続する際、各素子に2つある電極のうち少なくとも1つの電極をワイヤーボンディングで接続していることから、受発光部302b、303bと光導波路305端面の距離がワイヤー308のループ分だけ余計に離れてしまうため、伝送損失がここでも発生するため、消費電力低減の観点から不利となる。
サブマウント基板309の端面の機械的な精度で発光素子302及び受光素子303の光軸Lの精度が変化するため、高精度にサブマウント基板309の外形を加工する必要があり、サブマウント基板309の作製がコスト高となる。
【0015】
また、封止材307による固定は、サブマウント基板309に接続された発光素子302,受光素子303及び光導波路305の光軸Lを位置決めし、一括して封止材307で固定するものであり、これに対する懸案は2つある。
第1に、位置決めはアクティブ、パッシブいずれでも良いとの記載があるが、この構成でアクティブアライメントを行うためには、サブマウント基板309上にワイヤー308がむき出しになった状態での通電が必要であり、やはり、ワイヤー308の切断の恐れがあり、位置合わせが実質的に困難であると考えられる。
また、パッシブアライメントのためには、光軸Lを所定の位置合わせ、ターゲットに対し合わせ込んでいく必要があるが、光素子側にアライメントマークを作り込んだ場合には、光軸L方向からの認識が必要となり、困難である。また、面方向からのアライメントでは発光素子302及び受光素子303の発光部302b及び受光部303bの高さ、光導波路305の高さの規定が困難である。このことから、ある程度の位置ズレ、を見込んでおく必要があり、やはり消費電力の観点で不利となる。
この工法は光軸Lの位置決めを行い、これを保持している状態で一括して封止しなければ成立しないと考えられるが、サブマウント基板309、光導波路305の仮固定方法に関する十分な記述はなく、接着剤層を加えていることは読み取れないため、実施は困難である。
【0016】
このように、ミラーを形成しない特許文献4、特許文献5のような光伝送モジュールの発光素子及び受光素子を、受発光部の反対面に電極があるもので置き換えることも考えられるが、好適な小型の素子はなく、薄型の光伝送モジュールを実現することは困難であった。
例えば、特許文献6に記載されているようなLEDパッケージがあるが、そのサイズは小型のものでも、長さ1.6mm×幅0.8mm×厚み0.25mmと大きく、取り付けた際の光伝送モジュール厚み方向は0.8mmとなってしまうため、薄型化・小型化を達成することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2631287号公報(第4ページ、第5図)
【特許文献2】特開2009−58923号公報(第17ページ、第11図)
【特許文献3】特開2010−286777号公報(第13ページ、第5図)
【特許文献4】特開2010−26508号公報(第16ページ、第1図)
【特許文献5】特開2008−10837号公報(第18ページ、第6図)
【特許文献6】特開平10−294496号公報(第3ページ、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記した従来技術の問題を考慮してなされたもので、その目的は、受発光素子と光導波路の位置合わせ、光路等の封止を容易にでき、可及的に薄型の光電気混載可撓性プリント配線板及びその受発光素子実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的達成するために、本願発明は次のように構成される。
第1の発明は、少なくとも1層の導電層と可撓性絶縁層を有する可撓性プリント配線板本体と、該可撓性プリント配線板本体に接着剤を介して接着される光導波路とを備え、
該光導波路は、少なくとも2つの光入出力部を有する1本以上の可撓性の光導波路コアと、少なくとも前記光導波路コアに接する可撓性の光導波路クラッドとを備えた構成で、
前記可撓性プリント配線板本体には、発光素子と受光素子が実装され、発光素子の発光部からの光が光導波路を通じて受光部に伝送される構成の光電気混載可撓性プリント配線板において、
前記発光素子と受光素子はベアチップ形態で、それぞれ受光部と発光部の反対面に電極を有する面発光型発光素子と面受光型受光素子とし、
前記発光素子、前記受光素子および光導波路が、可撓性プリント配線板本体の一方の面に実装され、前記発光素子の発光部、前記光導波路コア、前記受光素子の受光部が略同軸上に配置されており、前記発光素子および受光素子を前記可撓性プリント配線板本体表面と直交方向に対し、受発光方向が略90°となるように実装されていることを特徴とする。
前記発光素子及び前記受光素子の各電極は、可撓性プリント配線板本体への実装時に底部側となる前記発光素子、前記受光素子の固定面側に片寄せて配置されていることが好ましい。
前記発光素子の発光部と前記光導波路の光入力部、前記受光素子の受光部と前記光導波路の光出力部は各々一体の封止樹脂にて封止することが好ましい。
【0020】
また、本発明の光電気混載可撓性プリント配線板の受発光素子実装方法は、
前記発光素子と前記受光素子を受発光素子と記載し、発光素子と受光素子の発光部と受光部を受発光素子の受発光部と記載するものとすると、受発光部を上に向けて載置されて
いる多数の受発光素子から、第1のカメラによってピックアップ対象の受発光素子を認識し、
認識したピックアップ対象の受発光素子について、前記受発光部が設けられた受発光面に対して直角の4端面のうち対向する2端面をピックアップツールによって把持して実装装置内へ移動し、
ピックアップツールを90°回転させ、吸引手段によって回転した受発光素子の受発光面とは反対側の面を吸引保持し、受発光部の受発光方向を水平方向に向ける共に受発光素子の四端面のうちの底部固定面が吸引手段の吸引保持部からはみ出す形で下方に向け、
前記吸引手段で吸引保持した受発光素子の外形を第2のカメラによって認識して実装ステージへ移動し、可撓性プリント配線板本体に対して固定面を固定することにより、前記可撓性プリント配線板本体の表面と直交する方向に対して受発光方向が略90°となるように、前記受発光素子を実装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
これらの特徴により、本発明は次のような効果を奏する。
本発明による光導波路を有する光電気混載可撓性プリント配線板は、発光素子、光導波路、受光素子が可撓性プリント配線板本体の一方の面に実装され、発光素子の発光部、光導波路コア、前記受光素子の受光部が略同軸上に配置されていることから、発光素子の発光部と光導波路コアの入出力部である端面までの距離、受光素子の受光部と光導波路コアの端面までの距離が近く設定でき、光伝送損失が少なく、伝送効率が良い構造となるため、消費電力の低減が可能となる。
【0022】
また、面方向型の受発光素子を可撓性プリント配線板本体に対し、受発光方向が可撓性プリント配線板本体表面の直交方向に対して略90°(可撓性プリント配線板本体と平行方向)となるように実装することで、安価な面発光型の発光素子、面受光型の受光素子を適用することが可能となり、部材コストを低減することが可能となる。
さらに、発光素子及び受光素子については、ベアチップ状態の素子単体を直接可撓性プリント配線板本体上へ実装しているため、全体厚みを薄くすることが可能となる。
これらのことから、発光素子及び受光素子と光導波路の位置合わせ、光路等の封止が容易となり、消費電力を低減可能な光導波路を有する光電気混載可撓性プリント配線板を安価で安定的に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る光導波路を備えた光電気混載可撓性プリント配線板の概念的構成を示すもので、(A)は可撓性プリント配線板本体部以外の部分を断面にして示す断面図、同図(B)は上面図である。
【図2】図1の発光素子及び受光素子の共通構成を受発光素子として示す概念的構成図。
【図3】図2の受発光素子の実装方法を示す概念的断面工程図。
【図4】(A)は、従来の発光素子・受光素子および光導波路が実装された光電気混載可撓性プリント配線板の概念的断面構成図、(B)は、従来の受発光素子の実装方法を示す概念的断面工程図。
【図5】(A)は他の従来の光電気混載光伝送モジュールの概念的断面構成図。(B)、(C)はさらに他の従来の光電気混載光伝送モジュールの概念的断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図示の実施の形態を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光導波路を備えた光電気混載のフレキシブルプリント配線基板の構造図であって、同図(A)は可撓性プリント配線板本体部以外の部分を断面にして示す断面図、同図(B)は上面図である。
この光電気混載可撓性プリント配線板1は、可撓性プリント配線板本体1Aと、この可撓性プリント配線板本体1Aに接着剤5を介して接着される光導波路4と、可撓性プリント配線板本体1Aに実装されるベアチップ状態の発光素子2及び受光素子3とを備えている。
可撓性プリント配線板本体1Aの構成自体は、特に図示しないが、少なくとも1層の導電層と可撓性絶縁層を有する通常の構成である。
発光素子2、受光素子3および光導波路4は、可撓性プリント配線板本体1の一方の面に実装され、発光素子2の発光部2b、光導波路コア4a、受光素子3の受光部3bが略同軸上に配置されている。発光素子2および受光素子3は面発光型及び面受光型の素子で、可撓性プリント配線板本体1と直交方向に対し、受発光方向が略90°となるように、言い換えれば受発光方向が可撓性プリント配線板本体1と平行方向となるように実装されている。
すなわち、可撓性プリント配線板本体1A上に発光素子2と受光素子3が所定距離離して発光部2bと受光部3bは互いに対向するように搭載されており、これらの間にポリマー光導波路4が接着剤5を介し、張り合わされている。
また、発光素子2と受光素子3は、可撓性プリント配線板本体1Aの素子搭載部9にDAF(ダイアタッチメントフィルム)等の絶縁性の接着層7によって固定され、素子搭載部9に、各素子の電極2a、3aが素子搭載部9とワイヤーボンディングによる電気接続部8を介して電気的に接続されている。
また、発光素子2、受光素子3及び光導波路4の入出力部は、電気接続部8も含めてそれぞれ透明性の封止樹脂10によって封止されている。
【0025】
(光導波路の構成)
光導波路4はポリマー製で、少なくとも2つの光入出力部を有する1本以上の可撓性の光導波路コアとしてのコア部4aと、少なくともコア部4aに接する上下の可撓性の光導波路クラッドであるクラッド部4b、4cとを備えた構成となっている。
ポリマー製の光導波路4は透明性が高く、柔らかいアクリル樹脂等をベース樹脂としており、相対的に屈折率の低いクラッド部4a、4c及び屈折率の高いコア部4aからなる。本例では下部のクラッド部4c上にコア部4a用のフィルムを張り合わせ、フォトファブリケーション手法により所定の幅のコア層を形成した。このコア層形成時に、発光素子2及び受光素子3の各素子との位置合わせ用のターゲットマーク6も同時に形成した。光コア部4bは、幅、厚みとも50μmとした。
尚、ポリマー製の光導波路4の作製方法としては、現像を行うことなく、単一材料から露光・加熱処理のみで屈折率の異なる複合材料を作製可能なフォトブリーチング手法でも作製可能である。この場合、単一材料からポリマー導波路が作製可能なため、コスト的に有利である。
【0026】
光導波路4を可撓性プリント配線板本体1Aに接着する接着剤5は、光導波路4の端部のみを接着しており、可撓性プリント配線板本体1Aと光導波路4の間には接着剤5の厚みに相当する空間がある。したがって、同図の中央部で可撓性プリント配線板本体1Aおよび光導波路4を折り曲げる際に各々に加わるストレスを低減でき、屈曲性に優れた構造となる。
光軸Lを安定的に揃える手法は後述するが、本発明の光電気混載可撓性プリント配線板1は、発光素子2の発光部2bと光導波路4の端面までの距離、受光素子3の受光部3bと光導波路4の端面までの距離が近く、50μm以内に配置可能であり、光伝送損失が少なく、伝送効率が良い構造となる。
また。封止樹脂10の屈折率はコア部とクラッド部の中間である。
【0027】
(発光素子、受光素子の構成)
次に、図2を参照して、発光素子と受光素子の構成について説明する。
発光素子2と受光素子3の構造は、四角形状にダイシングされた同一寸法のベアチップであり、発光部2b及び受光部3bの反対側の面に各電極2a、3aが設けられる点は同じなので、発光素子2と受光素子3をまとめて受発光素子2−3と記載し、各電極2a,3aを受発光素子2−3の電極2a−3a、発光素子2と受光素子3の発光部2bと受光部3bをまとめて受発光部2b−3bと記載して説明する。
【0028】
図において、図2(A)は受発光素子の断面図、図2(B)は受発光素子の上面図である。
受発光素子2−3は四角板形状のベアチップで、受発光部2−3bが設けられる四角形状の受発光面kと、電極が設けられる受発光面kと反対側の互いに平行の四角形状の電極面mと、受発光面k及び電極面mと直角の4つの端面とを有し、四端面のうちの一つの端面が実装時に底部固定面n1となり、電極面mに設けられる電極2a−3aは底部固定面n1側に片寄せて設けられている。
底部固定面n1を可撓性プリント配線板本体1A側へ実装するため、図2(C)に示す、素子高さHと素子厚みTの比率が実装性に影響をおよぼす。素子高さTは底部固定面n1と上端面n2間の寸法、素子厚みTは、受発光面kと電極面m間の寸法である。この素子厚みTに対し、素子高さHがあまりにも高いと実装後に受発光素子2−3が基板から剥がれ易い。また、取り付け角度が安定しにくいため、光軸(角度)がズレ易いことが懸念される。なお、Wは素子の幅である。
【0029】
このことから、図2(C)〜(E)に示すように、素子高さHを1とした場合、素子厚みTは最小0.5、最大1とする。尚、基準となる素子高さHは、0.2mm〜0.35mm程度である。最小0.5を下回る場合は、上述のように安定性に懸念があり、最大1を上回る場合には、電極を形成する際の貫通孔の形成がコスト高となることと、実装面積が大きくなり、高密度化の妨げとなることが懸念される。これらを勘案し、好適な厚み比率の範囲は0.6〜0.8とした。これは素子高さ0.3mmの場合、素子厚み0.18mm〜0.24mmに相当する。
また、受発光素子2−3は、同図(F)に示すように、受発光部2b−3bが幅(W)方向に複数設けられたアレイ型の構成でもよい。この場合も、素子高さHと素子厚みTの関係は同様である。
【0030】
また、受発光素子2−3の可撓性プリント配線板本体1Aへの固定は、搭載部9に対してダイアタッチメントフィルム7によって固定され、電気的な接続部8はボールボンディングされることから、同図(A)にあるように、電極2a−3aが素子実装時の底部固定面n1側に片寄せておく必要がある。
受発光面kの反対面に位置する電極面mにおける電極2a−3aの配置場所は、ベアチップ作製時に任意に設定できる。その大きさは、ボールの大きさ、位置精度等にもよるが50μm〜100μm程度である。
【0031】
(光電気混載可撓性プリント配線板の作製手順)
本発明の光導波路を備えた光電気混載可撓性プリント配線板の作製手順は、まず、可撓性プリント配線板本体1Aを作製し、これに接着剤5を介し、可撓性プリント配線板本体1Aと位置合わせし、光導波路4を張り合わせる。
この際、光導波路4側の位置合わせ用のターゲットは、上述の発光素子2及び受光素子3の各光素子との位置合わせ用のターゲットマーク6を用いることも可能である。無論、光導波路4の外形、コア部4b等と位置を合わせることも可能である。
この後、発光素子2、受光素子3のチップ外形と光導波路4の位置合わせ用のターゲットマーク6の面方向の位置合わせを(光軸合わせ)し実装する。
【0032】
(受発光素子の実装方法)
次に、受発光素子2−3の実装方法について、図3を参照して説明する。
i)ピックアップ前にCCD等の第1カメラ11にて認識(図3(A)参照)
ダイシングされた状態で、受発光部2b−3bを上に向けて載置されている多数の受発光素子2−3から、第1のカメラによってピックアップ対象の受発光素子を認識する。
ii)受発光素子2−3のピックアップ(図3(B)参照)
ピックアップツール12にて、受発光素子2−3の対向する2端面を把持し、実装前のトレー上あるいはダイシングテープから不図示の実装装置(ここではボールボンディんグ用ボンディング装置)内へ移動する。
【0033】
iii)吸引ノズル13への持ち替え(図3(C)参照)
ピックアップツール12が90°回転し、実装用の吸引ノズル13へ受発光素子2−3を持ちかえる。
すなわち、ピックアップツール12を90°回転し、吸引ノズル13によって受発光素子2−3の電極面mを吸引保持し、受発光部2b−3bの受発光方向を水平方向に向ける共に受発光素子2−3の四端面のうちの底部固定面n1が吸引ノズル13の吸引保持部であるノズル先端部13aからはみ出す形で下方に向ける。この状態でピックアップツール12を解放することにより、受発光素子2−3はノズル13に保持される。
この吸引ノズル13は吸着可能であるが、溶着用の超音波のホーン等は搭載しておらず、受発光素子2−3を高精度に位置合わせすることに特化しているものである。ノズル先端部13aからはみ出した底部固定面n1が可撓性プリント配線板本体1Aに固定されることになる。
【0034】
iv)実装
吸引ノズル13で受発光素子2−3を吸着し、第2カメラ14で受発光素子2−3の外形を認識し(図3(D)参照)、実装ステージへ移動し、可撓性プリント配線板本体1Aへ実装する(図3(E)参照)。
これにより、可撓性プリント配線板本体1Aと直交方向に対して受発光方向が略90°となるように、換言すれば、受発光素子2−3の受発光方向が可撓性プリント配線板本体1Aと平行に実装される。
受発光素子2−3は、DAF(ダイアタッチメントフィルム)テープ等の絶縁性の接着層7で搭載部9上に固定され、受発光素子2−3の電極部2a−3aを、金ワイヤーを用いたボールボンディングにより電気的に接続する(電気接続部8)。ボンディング方法については、ワイヤーボンディングに限定されるものではないが、半田バンプを使用する場合に比べ高さ方向の制度に影響がでない。
【0035】
v)光軸の調整
先ず、高さ方向の光軸の調整は、発光部2b、受光部3bの高さ、接着層7のDAFテープの厚み、素子搭載部9の導体厚み、下部クラッド部4cの厚み、接着剤5の厚みを調整し、発光部2b、受光部3bと光導波路4のコア部4bと高さ方向の光軸を合せる。
一方、面方向(可撓性プリント配線板本体1Aの面と平行方向)の位置合わせは、光導波路4に形成されたターゲットマーク6を用いて、位置合わせをする。
vi)封止
この後、光導波路4のコア部4bの端面と発光部2b、受光部3bを保護し、空間を封止するために透明性の封止樹脂10を用いて封止する。この封止についても可撓性プリント配線板本体1Aの片側に配置されている発光素子2及び受光素子3の廻りを1か所ずつ行うだけで良いので簡便である。
【0036】
これらのことにより、発光素子2及び受光素子3と光導波路4の位置合わせ、光路等の封止が容易となり、消費電力を低減可能な光導波路を有する光電気混載可撓性プリント配線板1が得られる。
尚、可撓性プリント配線板本体としては、両面フレキシブルプリント配線板に限らず、導体層が1層の片面フレキシブルプリント配線板でも良いし、導体層が3層以上の多層フレキシブルプリント配線板でも良い。
【符号の説明】
【0037】
1 光電気混載可撓性プリント配線板
1A 可撓性プリント配線板本体
2 発光素子
2a 電極部、2b 発光部
3 受光素子
3a 電極部、3b 受光部
2−3 受発光素子
2−3a 受発光部、2−3b 電極部
k 受発光面、m 電極面、n1 底部固定面
4 光導波路
4a コア部、 4b、4c クラッド部
5 接着剤
6 ターゲットマーク
7 接着層
8 電気接続部
9 素子搭載部
10 封止樹脂
11 第1カメラ、12 ピックアップツール、13 ノズル(吸引手段)
14 第2カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の導電層と可撓性絶縁層を有する可撓性プリント配線板本体と、該可撓性プリント配線板本体に接着剤を介して接着される光導波路とを備え、
該光導波路は、少なくとも2つの光入出力部を有する1本以上の可撓性の光導波路コアと、少なくとも前記光導波路コアに接する可撓性の光導波路クラッドとを備えた構成で、
前記可撓性プリント配線板本体には、発光素子と受光素子が実装され、発光素子の発光部からの光が光導波路を通じて受光部に伝送される構成の光電気混載可撓性プリント配線板において、
前記発光素子と受光素子はベアチップ形態で、それぞれ受光部と発光部の反対面に電極を有する面発光型発光素子と面受光型受光素子であり、
前記発光素子、前記受光素子および光導波路が、可撓性プリント配線板本体の一方の面に実装され、前記発光素子の発光部、前記光導波路コア、前記受光素子の受光部が略同軸上に配置されており、前記発光素子および受光素子を前記可撓性プリント配線板本体表面と直交方向に対し受発光方向が略90°となるように実装されていることを特徴とする光電気混載可撓性プリント配線板。
【請求項2】
前記発光素子及び前記受光素子の各電極は、可撓性プリント配線板本体への実装時に底部側となる前記発光素子、前記受光素子の固定面側に片寄せて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光電気混載可撓性プリント配線板。
【請求項3】
前記発光素子の発光部と前記光導波路の光入力部、前記受光素子の受光部と前記光導波路の光出力部は各々一体の封止樹脂にて封止されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電気混載可撓性プリント配線板。
【請求項4】
請求項1に記載の光電気混載可撓性プリント配線板に発光素子及び受光素子を実装する方法であって、
前記発光素子と前記受光素子を受発光素子と記載し、発光素子と受光素子の発光部と受光部を受発光素子の受発光部と記載するものとすると、受発光部を上に向けて載置されている多数の受発光素子から、第1のカメラによってピックアップ対象の受発光素子を認識し、
認識したピックアップ対象の受発光素子について、前記受発光部が設けられた受発光面に対して直角の4端面のうち対向する2端面をピックアップツールによって把持して実装装置内へ移動し、
ピックアップツールを90°回転させ、吸引手段によって回転した受発光素子の受発光面とは反対側の面を吸引保持し、受発光部の受発光方向を水平方向に向ける共に受発光素子の四端面のうちの底部固定面が吸引手段の吸引保持部からはみ出す形で下方に向け、
前記吸引手段で吸引保持した受発光素子の外形を第2のカメラによって認識して実装ステージへ移動し、可撓性プリント配線板本体に対して固定面を固定することにより、前記可撓性プリント配線板本体の表面と直交する方向に対して受発光方向が略90°となるように、前記受発光素子を実装することを特徴とする光電気混載可撓性プリント配線板の受発光素子実装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−37134(P2013−37134A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172163(P2011−172163)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】