説明

光電気複合ケーブル

【課題】光ファイバによる高速度信号の通信が可能であり、低速度信号の通信を良好に行うことが可能な光電気複合ケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ52と、光ファイバ52の周囲に配置された複数本の電線55と、光ファイバ52の一端側に接続された光電気変換素子31と、光ファイバ52の他端側に接続された電気光変換素子33と、長手方向の両端に設けられたコネクタ12,13とを備え、複数本の電線55には、グランド線55EとSDA線55AとSCL線55Bとが含まれ、グランド線55EとSDA線55AとSCL線55Bは、横断面において光ファイバ52を内包する正三角形の各頂点の位置となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバと電線を有する光電気複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
映像や音声のデジタルデータ等を高速伝送するための通信ケーブルとして、例えば、ソース機器とシンク機器を繋ぐHDMIケーブルが知られている。HDMIケーブルは、シンク機器の構成や状態などの情報を伝送するDDC(Display Data Channel)ラインと、機器間の制御のための信号を伝送するCEC(Consumer Electronics Control)ラインを備えている。DDCラインでは、ケーブルアッセンブリにおけるSDA(シリアルデータ入力線)−GND間、およびSCL(シリアルクロック入力線)−GND間の静電容量を小さくするため、中心近くに配線されたグランド線までの距離をとることが行われている。
【0003】
HDMIケーブルとして用いられるフラットケーブルとして、差動伝送用導体がフラット状に配列されて絶縁樹脂で押出被覆され、シールドが絶縁樹脂の外側に設けられ、シールドとの静電容量が小さい低容量線用導体がシールドの外に設けられ、シールドと低容量線用導体が外被で一体に押出被覆され、低容量線用導体からシールドまでの距離が差動伝送用導体からシールドまでの距離よりも長くされたものであって導体が2本を一組として差動伝送するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−92805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、HDMIケーブルよりケーブル長が長くなるデジタルサイネージ(電子看板)用途のケーブルは、映像や音声等の高速度信号の通信のために光ファイバを用いることが考えられるが、このデジタルサイネージ用途のケーブルにも、SDAやSCL等の低速度信号を伝える低速信号線として電線が含まれる。そのようなケーブルにおいて、数百mの長さであっても低速信号線の伝送が可能であることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、光ファイバによる高速度信号の通信が可能であり、低速度信号の通信を良好に行うことが可能な光電気複合ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の光電気複合ケーブルは、光ファイバと、前記光ファイバの周囲に配置された複数本の電線と、前記光ファイバの一端側に接続された光電気変換素子と、前記光ファイバの他端側に接続された電気光変換素子と、長手方向の両端に設けられた電気接続部材とを備えた光電気複合ケーブルであって、
前記複数本の電線には、1本のグランド線と2本の機器認証信号線とが含まれ、
1本の前記グランド線と2本の前記機器認証信号線は、横断面において前記光ファイバを内包する正三角形の各頂点の位置となるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の光電気複合ケーブルにおいて、前記機器認証信号線に接続され、前記機器認証信号線で通信される信号を増幅する増幅素子が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバによって映像や音声などの高速度信号の通信を良好に行うことができる。また、低速信号線である機器認証信号線とグランド線が極力離れた位置に配置されるので、低速度信号の通信を行う機器認証信号線とグランド線との間の静電容量を極力小さくすることができ、低速度信号の通信を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る光電気複合ケーブルの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の光電気複合ケーブルの構成を示す模式図である。
【図3】図1の光電気複合ケーブルの端部の斜視図である。
【図4】図1の光電気複合ケーブルの断面構造を示す断面図である。
【図5】他の実施形態例に係る光電気複合ケーブルの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る光電気複合ケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、光電気複合ケーブル11は、長手方向の中央に複合ケーブル部11aを有し、その両端が、中継部21,23を介してコネクタ(電気接続部材)12,13に接続されている。一端側のコネクタ12は、ディスプレイ、モニターあるいはプロジェクタ等のシンク機器14のレセプタクルに接続される。また、他端側のコネクタ13は、パーソナルコンピュータ、ブルーレイディスクプレーヤあるいはハードディスクプレーヤ等のソース機器15のレセプタクルに接続される。ソース機器15から光電気複合ケーブル11を介してシンク機器14に映像信号等が送信されることにより、シンク機器14に映像が映し出される。また、ソース機器15は、例えば、LANによってサーバ16と通信可能であり、例えば、イーサネット(登録商標)によってサーバ16から映像信号等が送信される。これにより、このサーバ16から送信された映像信号等が一旦ソース機器15に受信され、ソース機器15から光電気複合ケーブル11を介してシンク機器14へ送信され、シンク機器14に映像が映し出される。
【0012】
光電気複合ケーブル11は、複合ケーブル部11aにおいて、高速度信号を光ファイバ(光ファイバテープ心線51)によって伝送するとともに、機器の認証や制御を行うための低速度信号を電線(導体を絶縁被覆した線)55によって伝送する。コネクタ12と中継部21との間には、複数本の電線41を有する電気ケーブル部43が設けられ、コネクタ12と中継部21との間では、この電気ケーブル部43を介して信号の通信が行われる。コネクタ13と中継部23との間には、複数本の電線42を有する電気ケーブル部44が設けられ、コネクタ13と中継部23との間では、この電気ケーブル部44を介して信号の通信が行われる。
【0013】
一端側の中継部21には、光電気変換素子31を備えた基板32が設けられ、他端側の中継部23には、電気光変換素子33を備えた基板34が設けられている。中継部21では光電気変換素子31に光ファイバテープ心線51の一端側が接続され、中継部23では電気光変換素子33に光ファイバテープ心線51の他端側が接続されている。
【0014】
光電気変換素子31としては、光信号を電気信号に変換するためのPD(Photo Diode)が用いられる。電気光変換素子33としては、電気信号を光信号に変換するためのVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が用いられる。また、基板32には、光電気変換素子31からの信号を増幅させるトランスインピーダンスアンプ(TIA)が実装されており、基板34には、電気光変換素子33を駆動させるドライバICが実装されている。
【0015】
電気ケーブル部44に含まれる電線42の一部は、中継部23の基板34に接続されて、ソース機器15からの高速度信号を光ファイバテープ心線51に伝送する。電気ケーブル部43に含まれる電線41の一部は、中継部21の基板32に接続されて、光ファイバテープ心線51からの高速度信号をシンク機器14に伝送する。
【0016】
中継部21,23には、低速信号増幅用のバッファICからなる増幅素子35,36が設けられており、複合ケーブル部11aに含まれる電線55の一部が増幅素子35,36に接続されている。また、電気ケーブル部44に含まれる電線42の一部が増幅素子36に接続され、電気ケーブル部43に含まれる電線41の一部が増幅素子35に接続されている。
【0017】
図3に示すように、光電気複合ケーブル11の端部に設けられたコネクタ12,13は、電気コネクタからなるものであり、その先端部には、複数の接続端子17が設けられている。これらの接続端子17がソース機器15またはシンク機器14のレセプタクルの雌端子に接続される。
【0018】
図4に示すように、光電気複合ケーブル11の複合ケーブル部11aは、最外層である外被50の内側に、光ファイバテープ心線51と複数本の電線55とを有する。光ファイバテープ心線51は、並列に配置された複数本(本例では4本)の光ファイバ52を樹脂によってテープ状に覆って一体化したものであり、光電気複合ケーブル11の横断面における中央に配置された保護チューブ53内に収容されている。
【0019】
光ファイバテープ心線51に含まれる光ファイバ52は、コアとクラッドからなるガラスファイバの周囲に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層を形成したものである。光ファイバ52は、映像、音声、水平/垂直同期及びピクセルクロック等の高速度信号を、光通信で伝送する。光ファイバ52としては、コアがガラスから形成されクラッドが高硬度プラスチックから形成されて折れ曲がり(キンク)に強く破断しにくいハードプラスチッククラッドファイバ(H−PCF)や、コア及びクラッドがプラスチックからなるプラスチックファイバであってもよい。
【0020】
保護チューブ53は、厚さ0.35mmのエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)からなるものであり、外径1.9mmとしたものである。保護チューブ53の外側の空間は収容部54として設けられており、この収容部54内には、6本の電線55が配置されている。これらの電線55は、それぞれ導体56を外被57で覆った絶縁ケーブルである。これらの電線55の周囲のスペースには、レーヨンやナイロンなどの介在が収容されていてもよい。
【0021】
6本の電線55は、SDA(Serial Data Access)線55A、SCL(Serial Clock Line)線55B、CEC線55C、電力線55D、グランド線55E及びHPD(Hot Plug Detect)線55Fとして設けられている。
【0022】
SDA線55A及びSCL線55Bは、DDCラインを構成する機器認証信号線である。ソース機器15は、SDA線55A及びSCL線55BのDDCラインでDDC信号を送受信し、シンク機器14の構成や状態などの情報を認証できる。例えば、ソース機器15は、シンク機器14の認識を10秒毎に繰り返すことにより、使用途中で別のシンク機器14が接続されることによる不正な通信を防ぐことができる。
【0023】
光電気複合ケーブル11は、CEC線55Cを備えていることから、このCEC線55Cによってソース機器15とシンク機器14との間での複雑な制御が可能となっている。
【0024】
電力線55Dは、例えば、5Vの電圧で電力を送るものであり、HPD線55Fは、電力線55Dで送った電力が戻って伝わることにより電力線55Dによる電力の供給が行われていることを検出するものである。これにより、起動中のソース機器15とシンク機器14とを光電気複合ケーブル11で接続すると、ソース機器15によってシンク機器14が即座に認識されて使用可能な状態になる。
【0025】
SDA線55A及びSCL線55Bは、例えば、AWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG28の絶縁ケーブルであり、錫メッキが施された軟銅線または銅合金線からなる外径0.127mmの素線を7本撚り合わせた導体56を、厚さ0.41mmのポリエチレン(PE)からなる外被57によって覆って外径1.2mmとしたものである。
【0026】
CEC線55C、電力線55D、グランド線55E及びHPD線55Fは、例えば、AWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG24の絶縁ケーブルであり、錫メッキが施された軟銅線または銅合金線からなる外径0.127mmの素線を19本撚り合わせた導体56を、厚さ0.26mmのポリエチレン(PE)からなる外被57によって覆って外径1.2mmとしたものである。
【0027】
収容部54の周囲には、薄紙テープからなる押さえ巻き58と、錫メッキ軟銅の編組からなるシールド層59と、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる外被50とが順に設けられている。寸法の一例として、収容部54の外径となる押さえ巻き58の部分の内径は4.6mmであり、押さえ巻き58の外径は4.7mmであり、シールド層59の外径は5.1mmである。また、外被50は、厚さ0.6mmであり、複合ケーブル部11aの外径は6.2mmである。
【0028】
電線55のうち、低速信号線であるSDA線55A及びSCL線55Bと、グランド線55Eは、複合ケーブル部11aの横断面において光ファイバ52を内包する正三角形の各頂点の位置となるように配置されている。これにより、SDA線55A及びSCL線55Bは、グランド線55Eに対して極力離れた位置に配置される。
したがって、SDA線55A及びSCL線55Bとグランド線55Eとの間の静電容量を極力小さくすることができるので、SDA線55AとSCL線55Bとの間でのクロストークを防止することができ、低速度信号の通信が良好に行われる。
【0029】
SDA線55A及びSCL線55Bは、各中継部21,23の増幅素子35,36に接続されており、これらの増幅素子35,36によって低速度信号が増幅されるようになっている。これにより、複合ケーブル部11aが数百mの長さであっても、低速度信号の波形がなまるようなことなく、良好に低速度信号の通信を行うことができる。複合ケーブル部11aの長さが50m程度であれば増幅素子は不要である。
【0030】
上記の寸法及び構造の光電気複合ケーブル11を作製し、SDA線55A及びSCL線55Bとグランド線55Eとの間での静電容量を測定した。その結果、SDA線55A及びSCL線55Bとグランド線55Eとの間で、それぞれ静電容量を小さくすることができた。これにより、50mの複合ケーブル部11aを有する光電気複合ケーブル11においても、増幅素子を使用せずにSDA線55A及びSCL線55Bにおいて良好に通信することができた。また、増幅素子35,36を設けることで、SDA線55A及びSCL線55Bの信号が増幅され、300mの複合ケーブル部11aを有する光電気複合ケーブル11においても、良好に通信することができた。
【0031】
これに対して、グランド線55Eを図4の55C,55Dまたは55Fの位置に配置するとSDA線55AまたはSCL線55Bがグランド線55Eと隣接して静電容量が大きくなり、50mの複合ケーブル部を有する光電気複合ケーブルで通信に支障が生じてしまった。また、300mの複合ケーブル部を有する光電気複合ケーブルでは、増幅素子で信号を増幅しても通信に支障が生じてしまった。
【0032】
このように、上記実施形態に係る光電気複合ケーブル11によれば、光ファイバ52によって映像や音声などの高速度信号の通信を良好に行うことができる。しかも、AWG24から28のSDA線55A、SCL線55B及びグランド線55Eを極力離れた位置に配置することで、シンク機器14の認証等を行うためのSDA線55A及びSCL線55Bとグランド線55Eとの間の静電容量を極力小さくすることができ、低速度信号の通信を良好に行うことができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、光電気複合ケーブル11の両端近傍に中継部21,23を設け、これらの中継部21,23に光電気変換素子31,電気光変換素子33及び増幅素子35,36を設けたが、図5に示すように、中継部21,23を設けず、コネクタ12,13に光電気変換素子31,電気光変換素子33及び増幅素子35,36を設けても良い。このようにすれば、中継部21,23及び電気ケーブル43,44を不要とすることができ、構造を簡略なものにして部品点数を削減することができる。
【符号の説明】
【0034】
11:光電気複合ケーブル、12,13:コネクタ(接続部材)、31,33:光電変換素子、35,36:増幅素子、50:外被、52:光ファイバ、55:電線、55A:SDA線(電線)、55B:SCL線(電線)、55E:グランド線(電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、前記光ファイバの周囲に配置された複数本の電線と、前記光ファイバの一端側に接続された光電気変換素子と、前記光ファイバの他端側に接続された電気光変換素子と、長手方向の両端に設けられた電気接続部材とを備えた光電気複合ケーブルであって、
前記複数本の電線には、1本のグランド線と2本の機器認証信号線とが含まれ、
1本の前記グランド線と2本の前記機器認証信号線は、横断面において前記光ファイバを内包する正三角形の各頂点の位置となるように配置されていることを特徴とする光電気複合ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光電気複合ケーブルであって、
前記機器認証信号線に接続され、前記機器認証信号線で通信される信号を増幅する増幅素子が設けられていることを特徴とする光電気複合ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−58335(P2013−58335A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194978(P2011−194978)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】