説明

光電流を利用する新規汎用濃度分析計

【課題】光電流時間変化を利用した分析装置において、これまで検出・定量が不可能であった化合物やイオンも分析可能な汎用濃度分析計を提供する。
【解決手段】超多孔質半導体薄膜光アノードと酸素還元カソードをLEDとともにセンサ部とし、LED点灯回路、電磁撹拌用回路、および光電流の時間変化計測装置とともに用いることにより、化合物やイオンの定量を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,センサ部の光源である発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵しパーソナルコンピューター(PC)で駆動する測定装置本体と,試料濃度に比例して光電流を生ずるセンサ部,及び電磁撹拌装置を合体して色々な有機及び無機の化合物やイオンなどを検出し、かつその濃度を分析できる新規汎用濃度分析計に関わる。
【背景技術】
【0002】
混合物溶液中の成分をカラムで分離して流出した試料中の分離成分の検出とその濃度を分析することは重要で,そのための装置として液体クロマトグラフが普及しているが,そのための検出と濃度分析装置は代表的には紫外・可視分光法であり,その他の装置などが用いられている。
【0003】
しかしながら、検出と定量に広く用いられている紫外・可視分光法は該試料中の化合物が紫外または可視光領域に吸収があるものに限られ,それ以外の化合物の検出及び濃度分析は全く不可能であった。この問題を解決するために他の各種分光法,電気化学的方法,導電率,屈折率,各種質量分析法,核磁気共鳴装置,発光法などの例もあるが,それぞれ色々な問題を抱えている.例えば,電気化学方法による検出及び成分濃度の分析は原理的には酸化還元波が現れ,かつ濃度定量には原理的には可逆的な酸化還元反応が起こる化合物に限定される。従って,紫外・可視光領域に吸収が無く,また電気化学的に酸化還元波が現れなければ成分を分離してもその検出及び濃度定量は全く不可能である.液体クロマトグラフに限らず,液体を用いる色々なクロマト法における分離した成分検出の簡便な検出と定量は依然として大きな問題点であった。
【0004】
この問題を解決するために,本発明者らは,該化合物やイオンが紫外・可視光領域に吸収を持たず,また電気化学的に適切な酸化還元波が生じなくとも,化合物やイオンの検出や濃度分析が簡単にできる方法を考案した。その原理は,超多孔質の半導体薄膜光アノード(電極)と酸素還元カソード(電極)を用いると,半導体の光励起で生ずる正孔が色々なバイオマスや無機・有機の化合物、イオンなどと反応し、また対極では酸素が電子と反応して定常的な光電流を生ずることにある(非特許文献1)。その基本的特許(特許文献1)は”光物理化学電池”として2006年3月9日に、出願人;茨城大学、発明者;金子正夫として、国際特許出願(PCT出願)した。また,それを実現するための特許として,センサ部の形状等を“バイオ光化学セルとその利用方法”として,同じく茨城大学より特許出願した(特許文献2)。
【0005】
本発明はすなわち、超多孔質の半導体薄膜光アノード(電極)と酸素還元カソード(電極)を、発光ダイオード(LED)とともにセンサ部として用い、これを、LED 点灯回路、測定時の試料撹拌用の電磁撹拌用回路、および光電流の時間変化を計測する装置とともに用いることにより、汎用濃度分析装置として、例えば液体クロマトグラフの検出及び濃度分析装置として、これまでは検出・定量ができなかった化合物やイオンについても有効に検出や濃度分析ができる。
【0006】
本法に類似の測定装置として、「光電流を用いた被検物質の特異的検出方法、それに用いられる電極、測定用セル、および測定装置」(特許文献3)があるが、この方法は増感物質の共存下で、被検物質と特異的に結合するプローブ物質を表面に備えた作用電極に接触させて被検物質をプローブ電極に結合させて、この結合により増感色素を作用電極に固定させ、この作用電極を対極とともに電解質媒体に接触させ、作用電極に光を照射すると増感剤の作用により流れる光電流を測定することにより被検物質の検出及び定量を行うものであり、方法が極めて複雑でかつ適用可能な被検物質は極めて限られており、汎用的に用いることは全く不可能で、本発明における汎用濃度分析計とは原理や機能が全く異なるものである。また、LEDやその点灯回路、あるいは撹拌制御装置が内蔵されているとの記載は一切なく、本発明とは全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/JP2006/305185
【特許文献2】特開2009−14605
【特許文献3】特開2006−119111
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】金子正夫、根本純一著、「バイオ光化学電池」、工業調査会(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
混合物溶液中の成分をカラムで分離して流出した試料中の成分分析及びその濃度を分析することは重要で,そのための装置として液体クロマトグラフが普及しているが,そのための分離成分検出と検出成分の濃度分析装置は主に紫外・可視分光法であり,その他の例としては電気化学的方法などが用いられてきた。
しかしながら、主に用いられている紫外・可視分光法は該試料中の化合物が紫外または可視光領域に吸収があるものに限られ,それ以外の化合物の検出及び濃度分析は全く不可能であった。この問題を解決するために,例えば電気化学分析法が用いられる例もあるが,電気化学方法による成分濃度の検出及び分析は、原理的には最低酸化還元波が現れ,かつ濃度定量には可逆的な酸化還元反応が起こる化合物に限定される。従って,紫外・可視光領域に吸収が無く,また電気化学的に酸化還元波が現れなければ成分を分離してもその検出及び濃度定量は全く不可能で,液体クロマトグラフに限らず,液体を用いる色々なクロマト法における分離した成分検出・濃度分析上の大きな問題点であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題を解決するために,本発明者らは,該化合物やイオンが紫外・可視光領域に吸収を持たず,また電気化学的に適切な酸化還元波が生じなくとも,化合物やイオンの検出や濃度分析が可能な方法を考案した。その原理は,超多孔質の半導体薄膜光アノード(電極)と酸素還元カソード(電極)を用いると,半導体の光励起で生ずる正孔が色々なバイオマスや無機・有機の化合物、イオンなどと反応し、また対極では酸素が電子と反応して定常的な光電流を生ずることにある(非特許文献1)。その基本的特許(特許文献1)は”光物理化学電池”として2006年3月9日に、出願人;茨城大学、発明者;金子正夫として、国際特許出願(PCT出願)した。また,それを実現するための特許として,センサ部の形状等を“バイオ光化学セルとその利用方法”として,同じく茨城大学より特許出願した(特許文献2)。
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動する測定装置本体と,液体中の化合物やイオンに応答して光電流を生じ、かつその試料濃度に比例した光電流を生ずるセンサ部,及び試料液体の電磁撹拌装置を組合わせて用いることにより、色々な有機及び無機の化合物やイオンなどを検出し、かつその濃度を分析できる汎用濃度分析計。測定装置本体の概念図を図1に示した。
【0012】
(2)超多孔質半導体薄膜を光アノード、酸素還元電極をカソードとし、光源として発光ダイオ−ド(LED)を有するセンサ部を、発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動する測定装置本体及び電磁撹拌装置と組み合わせて用いることを特徴とする汎用濃度分析計。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体クロマトグラフなどによりカラムで分離した化合物やイオンが紫外・可視光領域に吸収を持たず,また電気化学的に酸化還元波を生じなくとも,該化合物やイオンの検出や濃度分析が可能となり、これまでの液体クロマトグラフ等の機能を飛躍的に向上でき、研究開発や工場現場などにおける分離分析手段が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】上図は光電流を利用する新規汎用濃度分析計の装置本体概念図下図は外観図
【図2】種々の濃度のアンモニア水の光電流経時変化(横軸はLED照射時間、縦軸は光電流)
【図3】アンモニア水の濃度検量線(横軸はアンモニア水のモル濃度の対数、縦軸は光電流)
【図4】エタノール水溶液の濃度検量線(横軸はエタノールのモル濃度の対数、縦軸は光電流)
【図5】亜リン酸水溶液の濃度検量線(横軸は亜リン酸水のモル濃度の対数、縦軸は光電流)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について補足説明すれば、以下のとおりである。
本汎用濃度分析計の特徴は次のようにまとめられる。
(i)発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動することを特徴とする測定装置本体と,液体中の化合物やイオンに応答して光電流を生じ、かつその試料濃度に比例した光電流を生ずることを特徴とするセンサ部,及び試料液体の電磁撹拌装置とを組合わせて用いることにより、これまでの方法では不可能であった色々な有機及び無機の化合物やイオンなどを検出し、かつその濃度を分析することを特徴とする汎用濃度分析計。
【0016】
(ii)超多孔質半導体薄膜を光アノード、酸素還元電極をカソードとし、光源として発光ダイオ−ド(LED)を有することを特徴とするセンサ部を、発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動することを特徴とする測定装置本体を電磁撹拌調節用回路と組み合わせて用いることを特徴とする汎用濃度分析計。
【0017】
図1上図は、センサの一実施形態を示す平面図である。センサ中心部に底部が密封され、内部に光源XX3が設置された保護セルXX4を有し、保護セル上面から光源へリード線XX3aが接続された構造を有しており、 LED点灯回路XX6bを含む測定装
置本体XX6に接続されている。また、図に示すセンサ基板XX1と、センサ基板XX1の端部近傍に設けられた対極基板XX2にそれぞれの上方端部に接続されるリード
線XX1a、XX2aがともに本体部上方に接着されており、リード線XX1a、およびXX2aは電磁攪拌調節用回路XX6aを含む測定装置本体XX6へ接続され、光電流の時間変化信号デジタル化回路XX6cを介し、データ表示部位XX6dへデータ表示され、内部電磁攪拌調整用回路XX6aにより外部電磁攪拌調整装置XX5を調整しうる機構や、 LED点灯回路XX6bにより光源XX3を点灯させる機構を有する。LED点灯用回路は最大100mAまで電流制御可能な定電流回路を有する。
【0018】
電磁撹拌調節用回路は最大1,500rpmまでモータ制御可能な回路を有する。
【0019】
光電流の時間変化信号デジタル化については最大1,500μAの光電流時間変化信号をデジタル化する回路を有する。
【0020】
その他、PC無しでもモニターできるデータ表示素子(LCDディスプレイ)を搭載している。
【0021】
(超多孔質半導体薄膜光アノード)
特許文献1及び2に示した超多孔質半導体薄膜光アノードを用いることができる。半導体としては、(a)紫外域における超多孔質半導体電極としては、二酸化チタンが良好な結果を与えるが、その他、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化タングステン、炭化ケイ素などの超多孔質の紫外域半導体が用いられる。そのとき、結晶からなる半導体は表面が平らなため、光化学反応に有効に用いられる半導体表面はきわめて小さく、光電流値が高くならない。光電気化学反応が起こる光アノ−ド/液相の接触面積を大きくするため、実効表面積が見かけの電極面積の数100倍から1000倍以上の超多孔質半導体材料を用いることが好ましい。
【0022】
また(b)可視域半導体としては、シリコン、ガリウムヒ素、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、リン化ガリウムなどを作用電極として用いることができる。
【0023】
半導体を超多孔質電極とするためには、例えば、半導体材料のナノ微粒子粉末を、透明電導性材料からなる基板上に塗布してから焼結し、超多孔質半導体膜とすることが好ましい。透明導電性基板材料としては、透明電導性ガラス(ITO等)、金属、金属薄膜、炭素など色々な材料を用いることができる。また、塗布後の焼結時の加熱により、当該基板である電導性ガラスは、その電導度が低下することが起こりうる。その場合は、フッ素ド−プの透明電導性材料(FTO)を用いることにより、電極電導度の低下を少なくすることができ、好ましい。
【0024】
(対極)
十分な電流を流すことができる材料なら、白金、炭素、多孔質炭素、グラファイト、あるいはこれらを任意の組成で混合・圧縮したもの、透明電導性ガラス、或いはこれらに白金微粒子を坦持した電極、白金黒電極など特に限定するものでなく、いずれも用いることができる。金属錯体などを電極上に修飾したりして用いることもできる。
【0025】
(内蔵光源:発光ダイオ−ド LED、その設置位置)
本発明では省エネ型の種々の発光ダイオ−ド(LED)を内部照射型光源として用いるところに一つの特徴がある。これにより別の光源を準備することなく、本電極1本で光センサ部として機能でき、しかも光エネルギ−を無駄なく作用極に照射できる。光センサの色々な目的に対応できるように、LEDとしては紫外(UV)、可視部の色々な波長、特に単に白色光のみならず、青色、緑色、赤色の光の3原色、近赤外光、赤外光など、さまざまな波長の電磁波を発するダイオ−ドなどを内蔵できる。LEDは真横または真下に光が照射される位置・方向に設置し、作用極は照射方向に対して垂直に光を受けるように設置するのが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
(撹拌装置)
試料液の撹拌は光電流が出来るだけ短時間で定常値に達するために極めて重要で、測定条件に応じた適切な撹拌制御により、1秒から数分程度で測定を終了できる。ただし、フロー型セルなどの工夫により、同じ効果を持たせることは可能である。
【0027】
(汎用濃度分析計としての特徴)
本汎用濃度分析計は、これまでは濃度分析が容易でなかった色々な化合物やイオンの濃度測定に用いることができる。その一例はアンモニア水の濃度である。アンモニア水はこれまでppmオーダーの薄い濃度しか測定ができず、またその装置や手間も簡単ではなかったが、本装置により、1ppmから10万ppm範囲の6桁程度の極めて広範な濃度の測定が可能になる。また、アンモニアは200nm以上の紫外部には吸収のピークが無く、液体クロマトグラフの紫外・可視分光法による濃度定量は不可能であった。このようなことから、アンモニアは勿論、リン酸、硝酸、硫酸、過塩素酸などの無機イオンも本法により濃度を定量することができる
【0028】
この他、紫外部の200〜300nm範囲に吸収を持つ硝酸や硫酸イオンなどの電解質が多量に存在する液体ではその電解質の分離が難しいため、アンモニアは勿論、その波長範囲に吸収を持つ化合物は検出自身が不可能であった。しかしながら、本汎用濃度計では電解質イオンよりアンモニアやクロマトグラフによる被分離化合物により生ずる光電流が大きいため、電解質の分離が困難でも、分離した化合物を検出し、同時に濃度分析が可能である。また,クロマトグラフなどの高価なまたは手数のかかる装置を用いなくても,センサ部と試料溶液との間に,目的の化合物やイオンにとって選択的な透過が可能な選択透過膜を設置することにより,目的の化合物やイオンのみを透過させてその濃度を光電流により測定することが可能である.例えば,混合物試料溶液中のアンモニア濃度を選択的に測定したい場合には,センサ部と試料溶液との間に多孔質の疎水性膜を設置し,試料溶液にNaOHなどのアルカリを添加してpHを11以上にすると,アンモニウムイオンは全て酸解離して気体状アンモニアとなり,アンモニア気体のみが疎水性膜を透過してセンサ部に到達して光電流を生ずるので,他の共存化合物やイオンの影響を排除して高精度でアンモニア濃度を測定することが出来る.
【0029】
以下実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。これらの実施例は本汎用濃度分析計が従来の紫外・可視分光法などでは不可能であった化合物やイオンの濃度分析に極めて適していることを如実に示すものである。実施例でMとあるのはモル濃度(mol dm-3)である。
【実施例1】
【0030】
二酸化チタン(P−25)の平均粒径が20nmのナノ粒子、アセチルアセトン、界面活性剤をよく混合し、よく練ってペ−ストを作り、これを電導性ガラス(FTO)上に塗布してから、100℃で焼成し、これを繰り返し、最後に450℃で30分焼成し、超多孔質膜(厚さ約10μm、面積1cm)を当該電導性ガラス上に形成させてn−型半導体電極とした。この作用極は実効界面が見かけ面積の約1000倍ある。これを光アノードとし、白金黒を被覆した白金板(1cmx1cm)よりなる酸素還元カソードを用い、UV−LED(日亜化学工業 NCCU033)を内蔵したセンサ部を作製した。
発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動する測定装置本体を、上記で作製したセンサ部及び電磁撹拌装置と組み合わせて汎用濃度分析計を構成した。
この汎用濃度分析計を用いて、LED電流値を20mAに設定し、アンモニア水として濃度が1mMから4Mの4桁の範囲で8点濃度を変え、1200rpm(毎分1200回転)の撹拌条件下で光電流の時間変化を測定したところ、LED点灯後10秒後の光電流値の経時変化を図2に示したように、きれいな直線性を示し、かつその光電流値はアンモニア濃度に比例した。アンモニア濃度の対数と光電流の関係を図3に示した。約5桁の濃度範囲にも渡って、相関係数R2=0.9912の極めて良好な直線関係が得られた。これから、濃度未知のアンモニア水中での光電流値により、その濃度を決めることができる。
【実施例2】
【0031】
実施例2において、LED電流値を50mAと高く設定し、他は実施例2と同様にLED照射下の光電流を測定した。その光電流値は(1M濃度で約0.55mAcm−2)と実施例1の場合(約0.35mAcm−2)の約1.6倍で、LED光強度に対応した光電流が得られた。
【実施例3】
【0032】
実施例2において、LED(15mA)照射下の光電流を、水溶液を電磁撹拌した時(1200rpm)としない時に測定した。撹拌した条件では光電流の平衡値は少し低く、また半導体のフラットバンド電位(Efb)は撹拌しない条件では明らかに低く、撹拌条件が恐らく半導体表面の吸着状態に影響を与えて半導体の特性を変化させるということを示す結果となった。
【実施例4】
【0033】
実施例1において、アンモニアの代わりにエタノールを用いて、エタノールを1mMから1Mの4桁の範囲で水中で4点濃度を変え、また電解質としてNa2SO4を2M、NaOHを0.1Mになるように添加し(pHは約13)、LED電流値は50mA、撹拌速度は1000rpmで、その他は実施例1と同様にして光電流の経時変化を調べた。光電流は1mMでは始めから安定であったが、その他は時間とともに減少し、約1000秒後に全て定常値に達した。エタノール濃度の対数と定常光電流値をプロットすると図4に示したように直線となり、その相関係数R2=0.9099であった。これから濃度未知のエタノール水溶液中での光電流値により、その濃度を決めることができる。
【実施例5】
【0034】
実施例4において、エタノールの代わりにグリシンを用いた他は実施例4と同様にして、光電流の経時変化を測定した。光電流は1mMでは始めから安定であったが、その他は時間とともに減少し、約1000秒後に全て定常値に達した。グリシン濃度の対数と定常光電流値は直線関係を示し、これから、光電流の測定によりその濃度を決めることができる。
【実施例6】
【0035】
実施例4において、エタノールの代わりに亜リン酸を用いた他は実施例4と同様にして、光電流の経時変化を測定した。光電流は1mMでは始めから安定であったが、その他は時間とともに減少し、約1000秒後に全て定常値に達した。亜リン酸濃度の対数と定常光電流値は図5に示したように直線関係を示し、これから、光電流の測定によりその濃度を決めることができる。
【符号の説明】
【0036】
図1上図
XX1(センサ基板)
XX1a(センサ基板部に接続されるリード線)
XX2(対極基板)
XX2a(対極基板部に接続されるリード線)
XX3(光源)
XX3a(光源に接続されるリード線)
XX4(保護セル)
XX5(電磁攪拌調整装置)
XX6(測定装置本体)
XX6a(電磁攪拌調整用回路)
XX6b(LED点灯回路)
XX6c(光電流の時間変化信号デジタル化回路)
XX6d(データ表示部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動する測定装置本体と,液体中の化合物やイオンに応答して光電流を生じ、かつその試料濃度に比例した光電流を生ずるセンサ部,及び試料液体の電磁撹拌装置を組合わせて用いることにより、色々な有機及び無機の化合物やイオンなどを検出し、かつその濃度を分析できる汎用濃度分析計。
【請求項2】
請求項1において、超多孔質半導体薄膜を光アノード、酸素還元電極をカソードとし、光源として発光ダイオ−ド(LED)を有するセンサ部を、発光ダイオード(LED)用点灯回路,電磁撹拌装置の撹拌調節用回路,および光電流の時間変化をデジタル信号化して表示及び記録をする回路を内蔵し、パーソナルコンピューター(PC)で駆動する測定装置本体および電磁撹拌装置と組み合わせて用いることを特徴とする汎用濃度分析計。
【請求項3】
請求項1および2に於いて,センサ部と被測定試料溶液との間に溶質の選択透過膜を設置し,選択的に透過した溶質化合物やイオンの濃度を光電流により測定することを特徴とする汎用濃度分析計.

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−37303(P2012−37303A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175942(P2010−175942)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(300090846)株式会社ライフテック (13)
【出願人】(507033613)株式会社バイオフォトケモニクス研究所 (5)