説明

光音響イメージング用造影剤、及び、それを用いた光音響イメージング方法

【課題】 大きな光音響信号を発生する光音響イメージング用造影剤を提供すること。
【解決手段】 酸化鉄粒子を有する光音響イメージング用造影剤において、前記酸化鉄粒子の粒径が15nm以上500nm以下であることを特徴とする光音響イメージング用造影剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光音響イメージング用造影剤、及び、それを用いた光音響イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の情報を可視化する光音響イメージング法が知られている。光音響イメージング法では、検体に光を照射することで検体から発せられる光音響信号の強度と発生位置を測定することにより、検体内部の物質分布の画像を得る方法である。
【0003】
ここで、リゾビスト(登録商標)(複数の酸化鉄粒子を多糖類のデキストランでコーティングした、MRI用の造影剤)に光を照射すると、音響波を発生することが知られている(非特許文献1)。したがって、リゾビスト(登録商標)は光音響イメージング用造影剤として用いることができる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Biomed Tech2009; 54:pp.83−88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、リゾビスト(登録商標)を構成する酸化鉄粒子は粒径が小さく、発明者らの測定によると5nmであった。酸化鉄粒子の粒径が小さい場合、発生する音響波は小さく、測定される光音響信号は小さいと考えられる。そこで本発明は、発生する音響波が大きく、測定される光音響信号が大きい光音響イメージング用造影剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光音響イメージング用造影剤は、酸化鉄粒子を有する光音響イメージング用造影剤において、前記酸化鉄粒子の粒径が15nm以上500nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強い光音響信号を発する酸化鉄粒子を用いることから、従来技術に比べて優れた光音響信号を発する造影剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る光音響イメージング用造影剤の構造を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光音響イメージング用造影剤の構造を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光音響イメージング用造影剤を製造する工程の一例を示す図である。
【図4】光音響信号強度の波形である。
【図5】酸化鉄粒子の粒径と、モル吸光係数と光音響信号との関係を示す図である。
【図6】光音響イメージング用造影剤1(NP1)の評価結果である。
【図7】光音響イメージング用造影剤2(NP2)の評価結果である。
【図8】光音響イメージング用造影剤2(NP2)の安定性を示す図である。
【図9】(a)光音響イメージング用造影剤3(NP3)のcryo−TEM像である。(b)光音響イメージング用造影剤3(NP3)のcryo−FIB/SEM像である。
【図10】光音響イメージング用造影剤6(NP6)のcryo−TEM像である。
【図11】光音響イメージング用造影剤7(NP7)のTEM像である。
【図12】光音響イメージング用造影剤12(NP12)の安定性を示す図である。
【図13】光音響イメージング用造影剤12(NP12)の癌集積性を示す図である。
【図14】光音響イメージング用造影剤の粒径と光音響信号強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤(以下、造影剤と略すことがある)は、酸化鉄粒子を有し、酸化鉄粒子の粒径が15nm以上500nm以下であることを特徴としている。酸化鉄粒子の粒径が15nm以上の場合、15nm未満の場合に比べて、鉄原子1モルあたりのモル吸光係数の値、及び、鉄原子1モルあたりから測定される光音響信号の値が大きい。そのため、光音響イメージング方法において、本実施形態に係る造影剤を用いることで、大きな光音響信号を得ることができる。また、酸化鉄粒子の粒径が20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。また、酸化鉄粒子の粒径が100nm以下であることがさらに好ましい。
【0011】
本実施形態に係る造影剤の粒径は、15nm以上1000nm以下であることが好ましい。造影剤の粒径が1000nm以下の場合、EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果により、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多くの造影剤を集積させることができる。その結果、造影剤を生体内に投与した後、生体に光を照射すると、腫瘍部位から発せられる光音響信号は正常部位から発せられる光音響信号よりも大きくなる。したがって、造影剤の粒径を1000nm以下とすることにより、腫瘍部位を特異的に検出することができる。また、造影剤の粒径は500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。造影剤の粒径が200nm以下であると、造影剤が血中のマクロファージに取り込まれにくく、血中滞留性が高くなると考えられるからである。
【0012】
本明細書において造影剤の粒径とは、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いて、動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)法によって測定される流体力学的直径を意味する。粒径は、上記装置を用いて100回の積算を5回行い、算出された5つのデータの平均をとる。
【0013】
本実施形態に係る造影剤は、酸化鉄粒子を1個のみ有していてもよく、2個以上有していてもよい。造影剤の有する酸化鉄粒子の粒径が500nmである場合、造影剤の有する酸化鉄粒子は3個以下であることが好ましい。なお、酸化鉄粒子の粒径が大きい場合、例えば50nmの場合、造影剤に含まれる酸化鉄粒子の数が多くなるほど、鉄原子1モルあたりのモル吸光係数の値、及び、鉄原子1モルあたりから測定される光音響信号の値は大きい。一方で、酸化鉄粒子の粒径が5nmの場合、造影剤に含まれる酸化鉄粒子の数が多くなっても、鉄原子1モルあたりのモル吸光係数、及び測定される光音響信号の値はあまり変わらない。
【0014】
本実施形態に係る造影剤の有する酸化鉄粒子は1次粒子でもよいし、2次粒子でもよい。
【0015】
本実施形態において、酸化鉄粒子は、その1次粒子の表面、あるいは、2次粒子の表面が表面修飾剤で被覆されていてもよい。表面修飾剤としては、脂肪酸、両親媒性化合物などが挙げられる。また、酸化鉄粒子あるいは、脂肪酸で被覆された酸化鉄粒子を含有する疎水性ポリマーに両親媒性化合物を結合させてもよい。両親媒性化合物としては、リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、両親媒性ポリマーなどが挙げられる。なお、本実施形態において、表面修飾剤は1種類を用いてもよいし、複数種類用いてもよい。
【0016】
(光音響イメージング用造影剤の一例)
本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤(以下、造影剤と略すことがある)の一例の概略図を図1(a)に示す。本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤1は、図1(a)のように、酸化鉄粒子2と、必要に応じて設けられる両親媒性化合物3と、からなる。両親媒性化合物3は、光音響イメージング用造影剤1の表面に存在する。
【0017】
酸化鉄粒子2に光を照射すると、酸化鉄粒子2は、音響波を発生し、それを光音響信号として検出する。また、両親媒性化合物が光音響イメージング用造影剤1の表面に存在することにより、水や水溶液中で光音響イメージング用造影剤の凝集を抑制することができる。
【0018】
(酸化鉄粒子)
本発明において、酸化鉄粒子の粒径は15nm以上500nm以下である。
【0019】
本実施形態における酸化鉄粒子は、特に限定されないが、600乃至1300nmの近赤外波長領域に吸収をもつ。酸化鉄粒子として具体的には、Fe(マグネタイト)、γ−Fe(マグヘマイト)、またはこれらの混合物などが挙げられる。特に好ましくは、マグネタイトである。マグネタイトは、マグヘマイトより近赤外波長領域におけるモル吸光係数が高いことが知られており、したがって光を照射したときに発生する音響波も大きくなると考えられる。
【0020】
また、本実施形態における酸化鉄粒子は、単結晶、多結晶、非晶質(アモルファス)のいずれの結晶状態でもよい。
【0021】
本実施形態における酸化鉄粒子は市販のものを用いてもよいし、以下の方法で得たものを用いてもよい。例えば、FeClとFeClを水に溶解させて溶解液とし、この溶解液を攪拌しながらアンモニア水を加えて、酸化鉄粒子を得る方法である。
【0022】
(酸化鉄粒子の粒径)
本実施形態において、酸化鉄粒子の粒径とは、例えば透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて得られた画像から測定した酸化鉄の一次粒子の粒径である。酸化鉄粒子の形状が真球状でない場合は、酸化鉄粒子の像の短軸と長軸の長さを測定し、それらの値の平均値を直径とした。
【0023】
(脂肪酸)
本実施形態において脂肪酸とは、オレイン酸などが挙げられる。オレイン酸で被覆された酸化鉄粒子は次のようにして得られる。まず乾燥させた酸化鉄粒子に有機溶媒を加え酸化鉄粒子の分散溶液とし、この分散溶液にオレイン酸を加え、酸化鉄粒子の表面にオレイン酸を被覆させる。その後、酸化鉄粒子の表面に存在しないオレイン酸を有機溶媒で洗浄し、オレイン酸で被覆された酸化鉄粒子を得ることができる。なお、両親媒性化合物を結合、又は吸着させることができる、あるいは後述する第一液体に含まれる有機溶媒に酸化鉄粒子を分散させることができる化合物であれば、オレイン酸に限定されない。
【0024】
(両親媒性化合物)
本実施形態において両親媒性化合物は、リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、両親媒性ポリマーから選択された少なくとも1つであることが好ましい。
【0025】
(リン脂質)
本実施形態においてリン脂質とは、リン酸を有する脂質であればどのようなものでもよい。本実施形態におけるリン脂質としては、ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol、以下PEGと略すことがある)を有するホスファチジル系リン脂質を有することが好ましい。本実施形態に係る酸化鉄粒子がPEGを有するリン脂質を有する場合、PEGに水分子が集まることにより、造影剤が嵩高くなり、造影剤がタンパク質に吸着することを抑制する効果があると考えられる。また、PEGを有すると、マクロファージに貪食されにくい。また、PEGを有すると、水、あるいは、水溶液中で凝集しにくい。
【0026】
また、リン脂質に、後述する抗体などの捕捉分子を結合する場合、アミノ基、カルボキシル基、NHS基、マレイミド基を有するリン脂質に、これら官能基を介して、捕捉分子を結合させることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係るリン脂質として例えば、化学式1で示されるN−(Aminopropyl polyethyleneglycol)carbonyl−distearoylphosphatidyl−ethanolamine (DSPE−PEG−NH)、化学式2で示される3−(N−Glutaryl)aminopropy,polyethleneglycol−carbonyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine (DSPE−PEG−COOH)、化学式3で示される3−(N−Succinimidyloxyglutaryl)aminopropy,polyethleneglycol−carbonyl distearoylphosphatidyl−ethanolamine (DSPE−PEG−NHS)、化学式4で示されるN−[(3−Maleimide−1−oxopropyl)aminopropyl polyethyleneglycol−carbonyl]distearoylphosphatidyl−ethanolamine(DSPE−PEG−MAL)、化学式5で示されるN−(Carbonyl−methoxypolyethleneglycol)−1,2−distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine, sodium salt (DSPE−PEG−CN)、化学式6で示される1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine−N−[poly(ethylene glycol)] (DSPE−PEG)等のリン脂質を挙げることができる。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
(ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル)
本実施形態におけるポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルとしては特に限定されないが、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、Tween40、Tween60、Tween80から選択された少なくとも1つのポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0035】
(両親媒性ポリマー)
本実施形態における両親媒性ポリマーとして、PEGを結合させたオクタデセン−無水マレイン酸交互共重合体、PEGを結合させたスチレン−無水マレイン酸共重合体、PEGを結合させたポリ乳酸、PEGを結合させた乳酸−グリコール酸共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。ここでPEGの重量平均分子量は1000乃至100000であり、好ましくは2000乃至20000のものを用いることができる。また、PEGの末端には、水酸基、メトキシ基、アミノ基、カルボキシル基、NHS基、又はマレイミド基のいずれかの官能基を有し、官能基がアミノ基、カルボキシル基、NHS基、又はマレイミド基の場合、捕捉分子を結合させることができる。
【0036】
(疎水性ポリマー)
本実施形態における疎水性ポリマーは、疎水性で、複数の酸化鉄粒子を含有させるバインダーとしての機能をもつポリマーであればどのようなものでもよい。ポリマーが疎水性であることにより、含有する酸化鉄粒子、あるいは、脂肪酸で被覆された酸化鉄粒子が流出しにくい。
【0037】
本実施形態における疎水性ポリマーとしては、炭素数6以下のヒドロキシカルボン酸を有するモノマーからなる、ホモポリマー、あるいは、2種類以上の前記モノマーからなるコポリマー、ビニル基を有するポリマーなどが挙げられる。ビニル基を有するポリマーはホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。本実施形態における酸化鉄粒子はこれらのうち少なくともいずれか1つで被覆されていることが好ましい。本実施形態に係る造影剤を生体内に投与する場合、長期にわたって造影剤が生体内に残らないように、疎水性ポリマーとしては、モノマーとして炭素数6以下のヒドロキシカルボン酸を有するポリマーを用いることが好ましい。これは、モノマーとして炭素数6以下のヒドロキシカルボン酸を有するポリマーは、加水分解によって切断させるエステル結合を有するからである。エステル結合を切断されたモノマーは代謝させやすいため、生体内に残りにくい。
【0038】
炭素数6以下のヒドロキシカルボン酸を有するポリマーとして、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体などが挙げられ、ビニル基を有するポリマーとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。上記疎水性のポリマーの重量平均分子量は2000乃至1000000であることが好ましく、10000乃至600000であることがさらに好ましい。
【0039】
(光音響イメージング用造影剤の他の例)
上記の例以外の光音響イメージング用造影剤について説明する。
図1(b)は、リン脂質4のみで酸化鉄粒子2を被覆した光音響イメージング用造影剤1の概略図である。
【0040】
図1(c)は、両親媒性ポリマー6のみで酸化鉄粒子2を被覆した光音響イメージング用造影剤1の概略図である。
【0041】
図1(d)は、両親媒性ポリマー6のみで酸化鉄粒子2を被覆した光音響イメージング用造影剤1の概略図であり、酸化鉄粒子2は光音響イメージング用造影剤1の表面に局在化している。
【0042】
図1(e)は、疎水性ポリマー7に含有された酸化鉄粒子2をポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル5のみで被覆した光音響イメージング用造影剤1の概略図である。
【0043】
図1(f)は、疎水性ポリマー7に含有された酸化鉄粒子2をリン脂質4、及びポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル5の両化合物で被覆した光音響イメージング用造影剤1の概略図である。
【0044】
図1(g)は、疎水性ポリマー7に含有された酸化鉄粒子2をリン脂質4、及びポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル5の両化合物で被覆した光音響イメージング用造影剤1であり、酸化鉄粒子2は光音響イメージング用造影剤1の表面に局在化した概略図である。
【0045】
図2(a)は、疎水性ポリマー7に含有された酸化鉄粒子2を両親媒性ポリマー6のみで被覆した光音響イメージング用造影剤1の概略図である。
【0046】
リン脂質4をもつ光音響イメージング用造影剤1には、少なくとも一部のリン脂質4に、腫瘍などの、標的組織、細胞、物質などに結合する捕捉分子9を結合させることができる。図2(b)、図2(e)、及び図2(f)は、リン脂質4を有する光音響イメージング用造影剤1に、捕捉分子9を結合させた光音響イメージング用造影剤10の概略図である。このようにして得られた光音響イメージング用造影剤10は、標的組織、細胞、物質なども特異的に結合することができる。
【0047】
また、両親媒性ポリマー6をもつ光音響イメージング用造影剤1には、少なくとも一部の両親媒性ポリマー6に捕捉分子9を結合させることができる。図2(c)、図2(d)、及び図2(g)は、両親媒性ポリマー6をもつ光音響イメージング用造影剤に、捕捉分子9を結合させた光音響イメージング用造影剤10の概略図である。このようにして得られた光音響イメージング用造影剤10は、標的組織、細胞、及び物質などに特異的に結合させることができる。
【0048】
また、以上の、本実施系形態に係る光音響イメージング用造影剤1及び10は、目的とする用途に対して、光音響イメージング用造影剤の粒径を制御することが可能である。
【0049】
(光音響イメージング用造影剤の製造方法)
本実施形態における光音響イメージング用造影剤の製造方法について説明する。
【0050】
光音響イメージング用造影剤を得る方法として、下記のドライアップ法や、ナノエマルジョン法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ドライアップ法で光音響イメージング用造影剤を製造する工程の一例を図3(a)に示している。具体的には、以下の(1)から(2)の工程を経て、光音響イメージング用造影剤の水分散液を得ることができる。
(1)有機溶媒に酸化鉄粒子2と、リン脂質4又は両親媒性ポリマー6を加えた第一液体11から、有機溶媒を留去させる工程。
(2)(1)で得られた残渣に水14を加えた後、超音波などを照射することにより、乳化させる工程。
【0052】
ナノエマルジョン法で光音響イメージング用造影剤を製造する工程の一例を図3(b)に示している。具体的には、以下の(1)から(3)の工程を経て、光音響イメージング用造影剤の水分散液を得ることができる。
(1)有機溶媒に酸化鉄粒子2と疎水性ポリマー7を加えた第一液体11を、水に、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル5、リン脂質4又は両親媒性ポリマー6を加えた第二液体12に加えて混合液を得る工程。
(2)前記混合液に超音波を照射して乳化することによりO/W型のエマルジョン13を得る工程。
(3)前記エマルジョン13の分散質から有機溶媒を留去する工程。
【0053】
(第一液体)
ドライアップ法における第一液体とは、有機溶媒に、酸化鉄粒子、及びリン脂質又は両親媒性ポリマーを分散、及び溶解させた液のことである。ナノエマルジョン法における第一液体とは、有機溶媒に、酸化鉄粒子、及び疎水性ポリマーを分散、及び溶解させた液のことである。
【0054】
第一液体に含まれる有機溶媒は、リン脂質、あるいは疎水性ポリマーを溶解し、かつ酸化鉄粒子が分散できる有機溶媒であればいかなる溶媒も適用可能であるが、揮発性の有機溶媒であることが好ましい。
【0055】
このような有機溶媒の具体例として、次の溶媒が挙げられる。ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、エーテル類(エチルエーテル、イソブチルエーテル、ブタノール等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等。これらを単独で用いても良いし、あるいは2種類以上を適宜の割合で混合して用いることもできる。但し、第一液体に含まれる有機溶媒は上記に限定されるものではない。
【0056】
また、第一液体中のリン脂質、両親媒性ポリマー、あるいは疎水性ポリマーの濃度は、これらが溶解する範囲であれば特に限定されないが、好ましい濃度として例えば、リン脂質については0.1乃至100mg/ml、両親媒性ポリマーについては1乃至100mg/ml、疎水性ポリマー7については0.5乃至100mg/mlとすることができる。
【0057】
また、ドライアップ法における第一液体に含まれるリン脂質と酸化鉄粒子との重量比は、好ましくは、10:1乃至1:10の範囲である。ドライアップ法における第一液体に含まれる両親媒性ポリマーと酸化鉄粒子との重量比は、好ましくは、10:1乃至1:100の範囲である。ナノエマルジョン法における第一液体に含まれる疎水性ポリマーと酸化鉄粒子との重量比は、好ましくは、1000:1乃至1:9の範囲である。
【0058】
(第二液体)
ナノエマルジョン法における第二液体とは、第一液体と混合した際にエマルジョンを安定化させることを目的として、水にリン脂質とポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルのうち、各々単独の化合物、あるいは各々複数の化合物、あるいは両親媒性ポリマーをあらかじめ加えた水溶液である。但し、第一液体と水を混合した分散液にリン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、あるいは両親媒性ポリマーを含ませることができれば、上記の方法に限定されるものではない。
【0059】
また、ナノエマルジョン法における第二液体に含まれるリン脂質とポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルの濃度は、第一液体との混合比にも依るが、好ましい濃度として例えば、リン脂質の好ましい濃度として、0.001mg/ml乃至100mg/mlとすることができる。また、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルについては0.1mg/ml乃至100mg/mlとすることができる。両親媒性ポリマーについては1mg/ml乃至100mg/mlとすることができる。
【0060】
(乳化)
ドライアップ法では、酸化鉄粒子と、リン脂質又は両親媒性ポリマーの混合溶液を乾燥させた後に、水を加えた溶液を乳化させて、ミセルを得る。ナノエマルジョン法では、第一液体と第二液体との混合液を乳化させて、水中油(O/W)型のエマルジョンを得る。
【0061】
エマルジョン及びミセルとは、本発明の目的を達成可能な範囲において如何なる物性のエマルジョン及びミセルも含めるものであるが、好ましくは1ピークの粒径分布のエマルジョン及びミセルである。
【0062】
このようなエマルジョンやミセルは従来公知の乳化手法によって調製することが可能である。従来公知の方法とは、例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機、タービン型攪拌機等のミキサーを利用する攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等がある。これらの方法は、単独で用いることも、あるいは複数を組み合わせて用いることも可能である。また、エマルジョン、及びミセルは1段階の乳化によって調製しても良いし、多段階の乳化によって調製しても良い。但し、乳化手法は、本発明の目的を達成できる範囲において上記手法に限定されない。
【0063】
特に、ナノエマルジョン法におけるエマルジョンは、第一液体と第二液体との混合液から調製される水中油(O/W)型のエマルジョンである。ここで、第一液体と第二液体の混合とは、第一液体と第二液体を空間的に隔離せずに互いに接触して存在させることであり、必ずしも互いに混和することを要さない。
【0064】
上記の混合液における第一液体と第二液体との割合は、水中油(O/W)型のエマルジョン12を形成することができれば特に限定はないが、好ましくは、第一液体と第二液体との重量比が、1:2乃至1:1000となる範囲で混合することが好ましい。
【0065】
(留去)
留去とは、第一液体に含まれる有機溶媒を除去する操作である。
【0066】
留去は、従来知られる何れの方法でも実施可能であるが、加熱によって除去する方法、あるいはエバポレーター等の減圧装置を利用した方法を挙げることができる。加熱による除去の場合の加熱温度は、好ましい温度は0℃から80℃の範囲である。但し、留去は、本発明の目的を達成できる範囲において上記手法に限定されない。
【0067】
(捕捉分子)
本発明において、捕捉分子とは、癌などの標的部位に特異的に結合する物質、前記標的部位の周辺に存在する物質に特異的に結合する物質など、生体分子や医薬品等の化学物質などから任意に選択される物質である。具体的には、抗体、抗体フラグメント、酵素、生物活性ペプチド、グリコペプチド、糖鎖、脂質、分子認識化合物などが挙げられる。本実施形態において、捕捉分子としては、一本鎖抗体であることが好ましい。
【0068】
本実施形態において、捕捉分子は、リン脂質又は両親媒性ポリマーをもつ光音響イメージング用造影剤に化学的に結合し、本発明に係る光音響イメージング用造影剤を構成する。このような光音響イメージング用造影剤を用いることで、標的部位の特異的な検出や、標的物質の動態、局在、薬効、及び代謝等の追跡を行うことができる。
【0069】
(捕捉分子の固定化)
リン脂質をもつ光音響イメージング用造影剤に捕捉分子を結合させることにより、本実施形態の光音響イメージング用造影剤を得ることができる。
【0070】
本実施形態において、リン脂質や両親媒性ポリマーをもつ光音響イメージング用造影剤に捕捉分子を結合させる方法として、リン脂質や両親媒性ポリマーが持つ官能基と捕捉分子8の官能基を反応させて化学結合する方法を使用することができる。
【0071】
即ち、リン脂質や両親媒性ポリマーの官能基がN−ヒドロキシスクシンイミド基である場合、捕捉分子のアミノ基と反応させて、光音響イメージング用造影剤に捕捉分子を結合させることができる。捕捉分子の固定化後、リン脂質や両親媒性ポリマーの未反応のN−ヒドロキシスクシンイミド基に対して、グリシン、エタノールアミン、末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコール等と反応させてスクシンイミド基を失活することが好ましい。
【0072】
あるいは、リン脂質や両親媒性ポリマーの官能基がマレイミド基である場合、捕捉分子のチオール基と反応させて、光音響イメージング用造影剤に捕捉分子を結合させることができる。捕捉分子の固定化後、リン脂質や両親媒性ポリマーの未反応のマレイミド基に対して、L−システイン、メルカプトエタノール、末端にチオール基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコール等と反応させてマレイミド基を失活することが好ましい。
【0073】
あるいは、リン脂質や両親媒性ポリマーの官能基がアミノ基である場合、グルタルアルデヒドを用いて捕捉分子8のアミノ基と反応させ、光音響イメージング用造影剤に捕捉分子を結合させることができる。捕捉分子を結合させた後、エタノールアミン、末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコール等を反応させてアルデヒド基の活性をブロックすることが好ましい。
【0074】
あるいは、アミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミド基やマレイミド基に置換して、捕捉分子を結合させても良い。
【0075】
(分散媒)
本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、さらに、分散媒を有していてもよい。上記の分散媒は、本実施形態に係る酸化鉄粒子を分散させるための液状の物質であり、例えば生理食塩水、注射用蒸留水などが挙げられる。本実施形態に係る造影剤は、上記本実施形態に係る酸化鉄粒子をこの分散媒に予め分散させておいてもよいし、本実施形態に係る酸化鉄粒子と分散媒とをキットにしておき、生体内に投与する前に粒子を分散媒に分散させて使用してもよい。
【0076】
(光音響イメージング用造影剤の造影)
前記の光音響イメージング用造影剤及びは、生理食塩水や注射用蒸留水等の溶媒中に分散して使用することができる。また、必要に応じて薬理上許容できる添加物を適宜添加しても良い。これら光音響イメージング用造影剤は、静脈注射あるいは皮下注射によって体内に導入することができる。
【0077】
(光音響イメージング方法)
本実施形態に係る光音響イメージング方法は、以下の各工程を有する。
(i)上記の光音響イメージング用造影剤が投与された検体に600nm乃至1300nmの波長領域の光を照射する工程
(ii)前記検体内に存在する前記造影剤から発生する音響波を検出する工程
ここで、音響波を検出する装置としては特に限定されないが、超音波探触子などを用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有する光音響イメージング用造影剤が得られる範囲で自由に変えることができる。
【0079】
なお、以下の実施例における光音響イメージング用造影剤の粒径は、動的光散乱解析装置(DLS−8000、大塚電子社製)を用いて測定した値である。上記装置を用いて100回の積算を5回行い、Marquardt解析により重量平均値を、あるいはCumulant解析によりキュムラント値をそれぞれ算出した。算出された5つのデータの平均を造影剤の粒径とした。また、以下の実施例における酸化鉄粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて得られた画像から測定した酸化鉄の一次粒子の粒径である。
【0080】
(実施例1)
(酸化鉄粒子の粒径と、モル吸光係数と光音響信号との関係)
粒径の異なる酸化鉄粒子を有する光音響イメージング用造影剤について、鉄原子1molあたり、及び粒子数1モルあたりのモル吸光係数と光音響信号を測定した。
【0081】
粒径の異なる酸化鉄粒子を有する光音響イメージング用造影剤として、ポリマーで被覆された酸化鉄粒子であって、その一次粒子の粒径がそれぞれ異なる酸化鉄粒子を用いた。具体的には、一次粒子の粒径が、5nm(鉄原子濃度1.45mg/ml、酸化鉄粒子濃度10nmol/ml、SHP−05、Ocean NanoTech社製)、10nm(鉄原子濃度5mg/ml、酸化鉄粒子濃度4.3nmol/ml、SHP−10、Ocean NanoTech社製)、15nm(鉄原子濃度5mg/ml、酸化鉄粒子濃度1.25nmol/ml、SHP−15、Ocean NanoTech社製)、20nm(鉄原子濃度5mg/ml、酸化鉄粒子濃度0.55nmol/ml、SHP−20、Ocean NanoTech社製)、及び50nm(鉄原子濃度5mg/ml、酸化鉄粒子濃度0.034nmol/ml、SHP−50、Ocean NanoTech社製)、及び100nm(後に記載の実施例10の粒子)である酸化鉄粒子を用いた。
【0082】
これらの酸化鉄粒子は水に分散し、酸化鉄粒子が1粒ずつの粒子化した状態で構成されている。分光光度計(Lambda Bio40、Perkin elemer社製)を用いて、710、750、800、及び850nmにおける吸光度を測定した。測定容器は、ポリスチレン製キュベットで、幅1cm、光路長0.1cmを用いた。この容器に、酸化鉄粒子の分散液200μlを入れて、吸光度を測定した。
【0083】
鉄原子1モルあたりのモル吸光係数と酸化鉄粒子数1モルあたりのモル吸光係数は、吸光度と鉄原子濃度および粒子濃度から計算した。
【0084】
光音響信号の計測は、パルスレーザー光を水に分散した光音響イメージング用造影剤に照射し、圧電素子を用いて造影剤からの光音響信号を検出し、高速プリアンプで増幅後、デジタルオシロスコープで波形を取得して行った。具体的な条件は以下の通りである。パルスレーザー光源として、チタンサファイアレーザ(LT−2211−PC、Lotis社製)を用いた。波長は710、750、800、及び850nm、エネルギー密度は20乃至50mJ/cm(選択した波長に依存する)、パルス幅は約20ナノ秒、パルス繰返周波数は10Hzとした。水に分散した光音響イメージング用造影剤をおさめる測定容器には、上記ポリスチレン製キュベットを用いた。光音響信号を検出する圧電素子には、エレメント径1.27cm、中心帯域1MHzの非収束型超音波トランスデューサ(V303、Panametrics−NDT社製)を用いた。水を満たしたガラス容器に前記の測定容器と圧電素子とを浸け、その間隔を2.5cmとした。光音響信号を増幅する高速プリアンプは増幅度+30dBの超音波プリアンプ(Model 5682、オリンパス社製)を用いた。増幅された信号をデジタルオシロスコープ(DPO4104、テクトロニクス社製)に入力した。前記ガラス容器の外からパルスレーザ光を前記ポリスチレン製キュベットに照射した。この際に生じる散乱光の一部をフォトダイオードで検出し、デジタルオシロスコープにトリガー信号として入力した。デジタルオシロスコープを32回平均表示モードとし、レーザーパルス照射32回平均の光音響信号取得を行った。図4は、典型的な光音響信号の波形である。図中の矢印で示すように、波形から光音響信号強度(V)を求めた。得られた光音響信号強度を照射パルスレーザーのエネルギー(J)で割った値を規格化光音響信号(VJ−1)と定義し、以下、評価手段として用いた。
【0085】
鉄原子1モルあたりの規格化光音響信号および酸化鉄粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は、それぞれ鉄原子濃度および粒子濃度から計算した。
【0086】
図5は、粒径の異なる酸化鉄粒子のモル吸光係数および光音響信号である。図5(a)は710nmにおける酸化鉄粒子中に含まれる鉄原子1モルあたりのモル吸光係数を、図5(b)は710nmにおける酸化鉄粒子数1モルあたりのモル吸光係数を示している。酸化鉄粒子の粒径が大きくなると、鉄原子1モルあたりのモル吸光係数が上昇する傾向にあった。他の波長においても、鉄原子1モルあたりのモル吸光係数の上昇が認められた。この効果により、酸化鉄粒子数1モルあたりのモル吸光係数は、酸化鉄粒子の粒径が大きくなるにつれて著しく上昇した。
【0087】
図5(c)は710nmにおける酸化鉄粒子中に含まれる鉄原子1モルあたりの規格化光音響信号を、図5(d)は710nmにおける酸化鉄粒子数1モルあたりの規格化光音響信号を示している。酸化鉄粒子の粒径が大きくなると、鉄原子1モルあたりの規格化光音響信号が上昇した。他の波長においても、同様に、鉄原子1モルあたりの規格化光音響信号が上昇した。この効果により酸化鉄粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は、酸化鉄粒子の粒径が大きくなるにつれて著しく上昇した。
【0088】
酸化鉄粒子の粒径が大きくなるほど、光の吸収量が多くなり、それにともなって、酸化鉄粒子から出る光音響信号が強くなった。特に、15nm以上の酸化鉄粒子において、光の吸収量の増加と、光音響信号の増加が認められた。
【0089】
(実施例2)
(光音響イメージング用造影剤1(NP1)の作製)
ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤は、以下の方法で作製した。
【0090】
オレイン酸に被覆された50nm酸化鉄粒子(13.8mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)及び、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg、M.W.20000、乳酸:グリコール酸=1:1、PLGA5020、和光純薬工業社製)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調製した。
【0091】
次に、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、60mg、キシダ化学社製)を溶解した水溶液(12ml)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。
【0092】
その後、超音波分散機(Ultrasonic disruptor UD−200、Tomy製)で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調製した。
【0093】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤1の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤1をNP1と略す場合がある。
【0094】
(実施例3)
(光音響イメージング用造影剤2(NP2)の作製)
リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤は、以下の方法で作製した。
【0095】
オレイン酸に被覆された50nm酸化鉄粒子(13.8mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)及び、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調製した。
【0096】
次に、Tween20(60mg)と化学式4で示される末端がマレイミド基のリン脂質(7.3mg、DSPE−PEG−MAL、SUNBRIGHT DSPE−020MA、日油社製)を溶解した水溶液(12ml)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。
【0097】
その後、超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調製した。
【0098】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤2の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤2をNP2と略す場合がある。
【0099】
(NP1及びNP2の物性評価)
NP1及びNP2は水に分散させ、上記動的光散乱解析装置を用いて、粒径を測定した。その結果を図6(a)及び図7(a)に示す。NP1及びNP2の粒径(重量換算)は、各々205及び176nmであった。
【0100】
透過型電子顕微鏡(TEM、H800、日立社製)を用いて、NP1及びNP2を観察した。図6(b)及び図7(b)は光音響イメージング用造影剤のTEM写真である。酸化鉄粒子を複数個有する光音響イメージング用造影剤が観察できた。
【0101】
発光分光装置(ICP、CIROS CCD、SPECTRO社製)を用いて、NP1及びNP2に含まれる酸化鉄粒子量を定量した。光音響イメージング用造影剤を濃硝酸で溶解し、ICPでFe量を定量し、酸化鉄粒子の質量を計算した。光音響イメージング用造影剤の水分散液を凍結乾燥し、その後に質量を測定して、光音響イメージング用造影剤全体の質量を求めた。酸化鉄粒子の質量と、光音響イメージング用造影剤の質量から、光音響イメージング用造影剤中の酸化鉄粒子の含有率を計算したところ、NP1及びNP2は各々58及び63(wt)%であった。酸化鉄粒子を高い率で含有する光音響イメージング用造影剤が得られた。
【0102】
得られたNP1及びNP2の光吸収性は、光音響イメージング用造影剤の粒子数1モルあたりのモル吸光係数を求めることで評価した。水に分散したNP1及びNP2の光吸収は、分光光度計を用いて測定した。光音響イメージング用造影剤の粒子濃度は、上記の方法で得られた物性値より計算した。波長710、750、800、及び850nmにおける光音響イメージング用造影剤の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は表1にまとめた。波長710nmにおけるNP1、NP2、及びリゾビスト(登録商標)のモル吸光係数は、各々2.1×1010、9.9×10、1.6×10 (M−1cm−1(粒子数1モル))であった。リゾビスト(登録商標)に比べて、優れた光吸収をもつ光音響イメージング用造影剤が得られた。
【0103】
【表1】

【0104】
表2は、NP1及びNP2の1粒子あたりの規格化光音響信号である。波長710nmにおけるNP1、NP2、及びリゾビスト(登録商標)の粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は、それぞれ3.5×1011、2.0×1011、6.0×10(VJ−1−1(粒子数1モル))であった。既知の光音響イメージング用造影剤であるリゾビスト(登録商標)に比べて、強い音響信号を発する光音響イメージング用造影剤が得られた。
【0105】
【表2】

【0106】
(NP2の安定性の評価)
NP2の安定性を以下の方法で評価した。まず、NP2を水中、4℃で保存し、一定時間ごとに、NP2の粒径(キュムラント値)及び光音響信号を測定した。
【0107】
図8(a)は、NP2の粒径を経時的に測定した結果である。NP2の粒径に変化はなく、凝集は認められなかった。図8(b)は、波長710nmの光を照射した場合におけるNP2の光音響信号を経時的に測定した結果である。長期に保存しても、NP2の鉄原子1モルあたりの規格化光音響信号に変化はなく、優れた保存安定性を示した。
【0108】
(NP2上のリン脂質の定量)
NP2の表面に導入されたリン脂質の量は、末端のマレイミド基の活性を利用して定量した。NP2とL−システインを混合し、1晩インキュベートすることにより、NP2上のマレイミド基と、L−システイン上のチオール基との共有結合反応をさせた。遠心分離でNP2を沈殿させ、上澄みを回収することで、未反応のL−システインを回収した。未反応のL−システインは、5,5’−Dithiobis(2−nitrobenzoic acid)と混合し、420nmの吸光度を測定することにより定量した。1粒のNP2上にあるリン脂質の量は、5.6×10個/個であった。
【0109】
(実施例4)
(一本鎖抗体hu4D5−8scFvの調製)
HER2へ結合するIgGの可変領域の遺伝子配列(hu4D5−8)を基に、一本鎖抗体(scFv)をコードする遺伝子hu4D5−8scFvを作製した。まずhu4D5−8のVL、VH遺伝子をペプチド(GGGGS)をコードするcDNAで連結したcDNAを作製した。5’末端には制限酵素NcoI−を、3’末端には制限酵素NotIの認識サイトを導入した。以下に塩基配列を示す。
5’−CCATGGATATCCAGATGACCCAGTCCCCGAGCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGATAGGGTCACCATCACCTGCCGTGCCAGTCAGGATGTGAATACTGCTGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGAAAAGCTCCGAAACTACTGATTTACTCGGCATCCTTCCTCTACTCTGGAGTCCCTTCTCGCTTCTCTGGATCCAGATCTGGGACGGATTTCACTCTGACCATCAGCAGTCTGCAGCCGGAAGACTTCGCAACTTATTACTGTCAGCAACATTATACTACTCCTCCCACGTTCGGACAGGGTACCAAGGTGGAGATCAAAGGCGGTGGTGGCAGCGGTGGCGGTGGCAGCGGCGGTGGCGGTAGCGAGGTTCAGCTGGTGGAGTCTGGCGGTGGCCTGGTGCAGCCAGGGGGCTCACTCCGTTTGTCCTGTGCAGCTTCTGGCTTCAACATTAAAGACACCTATATACACTGGGTGCGTCAGGCCCCGGGTAAGGGCCTGGAATGGGTTGCAAGGATTTATCCTACGAATGGTTATACTAGATATGCCGATAGCGTCAAGGGCCGTTTCACTATAAGCGCAGACACATCCAAAAACACAGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACTGCCGTCTATTATTGTTCTAGATGGGGAGGGGACGGCTTCTATGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCGGCGGCCGC−3’(配列番号1)
なお、5’末端から5つ目のアミノ酸までの配列CCATG、及び、3’末端の8つ目のアミノ酸までの配列GCGGCCGCは制限酵素の認識サイトを示す。
【0110】
上記遺伝子断片hu4D5−8scFvをプラスミドpET−22b(+)(Novagen社製)のT7/lacプロモーターの下流に挿入した。具体的には、制限酵素NcoI−とNotIで消化処理したpET−22b(+)(Novagen社製)に、上記のcDNAをライゲーションする。
【0111】
この発現プラスミドを大腸菌(Escherichia coli BL21 (DE3))に形質転換し、発現用菌株を得た。得られた菌株をLB−Amp培地4mlで一晩前培養後、全量を250mlの2xYT培地に添加し、28℃、120rpmで8時間振とう培養した。その後、終濃度1mMでIPTG(Isopropyl−β−D(−)−thiogalactopyranoside)を添加し、28℃で一晩培養した。培養した大腸菌を8000xg、30分、4℃で遠心分離し、その上清の培養液を回収した。得られた培養液の60%重量の硫酸アンモニウムを添加し、塩析によりタンパク質を沈殿させた。塩析操作した溶液を一晩4℃で静置後、8000xg、30分、4℃で遠心分離することで沈殿物を回収した。得られた沈殿物を20mM Tris・HCl/500 mM NaClバッファーに溶解し、1リットルの同バッファーへ透析した。透析後のタンパク質溶液を、His・Bind(登録商標)Resin(Novagen社製)を充填したカラムへ添加し、Niイオンを介した金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。精製したhu4D5−8scFvは、還元SDS−PAGEによりシングルバンドを示し分子量は約28kDaであることを確認した。以下に調製された抗体のアミノ酸配列を示す。以後、hu4D5−8 scFvをscFvと略すことがある。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSAAALEHHHHHHGGC(配列番号2)
(一本鎖抗体hu4D5−8scFvとNP2との結合)
上記で調製したscFvを5 mM EDTAを含むリン酸バッファー(2.68 mM KCl/137 mM NaCl/1.47 mM KHPO/ 1m M NaHPO/5 mM EDTA、pH7.4)にバッファー置換後、scFvのモル量に対して20倍のトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって、25℃で約2時間、還元処理した。この還元処理したscFvを、25℃で3時間、上記で作製したNP2と反応させた。NP2の粒子モル量に対して2000倍のscFvを反応に用いた。遠心分離により、scFvを結合させたNP2の沈殿物と、未反応のscFvの上澄みを得た。未反応のscFvを液体クロマトグラフィーで定量した。1粒のNP2上に結合させたscFvは、1.4×10個/個であった。
【0112】
(実施例5)
(光音響イメージング用造影剤3(NP3)の作製)
両親媒性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤は、以下の方法で作製した。
【0113】
クロロホルム(3ml)にスチレン−無水マレイン酸共重合体(12.5mg、平均分子量:9500、スチレン:無水マレイン酸=75:25(モル比)、Polysciences社製)を溶解し、そこへMeO−PEG−NH(45mg、平均分子量:5000、SUNBRIGHT ME−50EA、日油社製)を加えて反応させることによって、両親媒性ポリマー(PEGを結合させたスチレン−無水マレイン酸共重合体)を得た。
【0114】
オレイン酸に被覆された50nm酸化鉄粒子(14mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)、及び上記の両親媒性ポリマー(50mg)をクロロホルム(3ml)に加えた後、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
【0115】
その後、水(18ml)を加えて超音波バスで1分間処理することによって、光音響イメージング用造影剤3の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤3をNP3と略す場合がある。
【0116】
NP3の粒径は211nm(重量換算)であった。また、NP3の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.9×1010 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は4.8×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0117】
cryo−TEMを用いてNP3を観察し、その結果を図9(a)に示した。図9(a)から、NP3では、複数個の酸化鉄粒子が含有されていることが確認された。
【0118】
cryo−FIB/SEMを用いてNP3を観察し、その結果を図9(b)に示した。図9(b)において、加速電圧が2kVの時、NP3の粒子表面側に酸化鉄粒子が局在化していることが確認された。更に、加速電圧を5kV、8kVに上げていくと、2kVで観察された環状に並んだ酸化鉄粒子の奥側(本明細書紙面の裏面方向)に酸化鉄粒子が存在し、NP3が中空構造を有していることが確認された。
【0119】
(実施例6)
(光音響イメージング用造影剤4(NP4)の作製)
両親媒性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤4は、以下の方法で作製した。
【0120】
クロロホルム(3ml)にオクタデセン−無水マレイン酸交互共重合体(12.5mg、平均分子量:40000、オクタデセン:無水マレイン酸=50:50(モル比)、アルドリッチ社製)を溶解し、そこへMeO−PEG−NH(94mg、平均分子量:10000、SUNBRIGHT ME−100EA、日油社製)を加えて反応させることによって、両親媒性ポリマー(PEG鎖を導入したオクタデセン−無水マレイン酸交互共重合体)を得た。
【0121】
酸化鉄粒子(14mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)、及び上記の両親媒性ポリマー(100mg)をクロロホルム(3ml)に加えた後、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
【0122】
その後、水(18ml)を加えて超音波バスで1分間処理することによって、光音響イメージング用造影剤4の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤4をNP4と略す場合がある。
【0123】
NP4の粒径は161nm(重量換算)であった。また、NP4の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.0×1010 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は2.0×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0124】
(実施例7)
(光音響造影剤5(NP5)の作製)
両親媒性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤5は、実施例6と同様の方法で作製した。
【0125】
クロロホルム(3ml)にオクタデセン−無水マレイン酸交互共重合体(12.5mg)を溶解し、そこへMeO−PEG−NH(47mg、平均分子量:5000、SUNBRIGHT ME−50EA、日油社製)を加えて反応させることによって、両親媒性ポリマー(PEG鎖を導入したオクタデセン−無水マレイン酸交互共重合体)を得た。
【0126】
酸化鉄粒子(14mg)、及び上記の両親媒性ポリマー(50mg)をクロロホルム(3ml)に加えた後、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
【0127】
その後、水(18ml)を加えて超音波バスで1分間処理することによって、光音響イメージング用造影剤5の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤5をNP5と略す場合がある。
【0128】
NP5の粒径は163nm(重量換算)であった。また、NP5の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.2×1010 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は2.8×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0129】
(実施例8)
(光音響イメージング用造影剤6(NP6)の作製)
リン脂質、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤6は、以下の方法で作製した。
【0130】
クロロホルム(3ml)に化学式5で示される末端がメトキシ基のリン脂質(20mg、SUNBRIGHT DSPE−020CN、日油社製)を溶解した。
【0131】
酸化鉄粒子(14mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)を上記リン脂質のクロロホルム溶液に加えた後、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
【0132】
その後、水(18ml)を加えて超音波バスで1分間処理することによって、光音響イメージング用造影剤6の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤6をNP6と略す場合がある。
【0133】
NP6の粒径は183nm(重量換算)であった。また、NP6の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は2.5×1010 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は4.4×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0134】
cryo−TEMを用いてNP6を観察し、その結果を図10に示した。図10から、NP6では、複数個の酸化鉄粒子が含有されていることが確認された。
【0135】
(実施例9)
(光音響イメージング用造影剤7(NP7)の作製)
リン脂質、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤7は、実施例8と同様の方法で作製した。
【0136】
クロロホルム(3ml)に化学式5で示される末端がメトキシ基のリン脂質(20mg、DSPE−020CN、日油社製)を溶解した。
【0137】
オレイン酸で被覆された酸化鉄粒子(15mg、粒径100nm、Ocean NanoTech社製の試作品)を上記リン脂質のクロロホルム溶液に加えた後、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
【0138】
その後、水(18ml)を加えて超音波バスで1分間処理することによって、光音響イメージング用造影剤7の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤7をNP7と略す場合がある。
【0139】
NP7の粒径は117nm(重量換算)であった。また、NP7の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.5×10 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は2.6×1010(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0140】
TEMを用いてNP7を観察し、その結果を図11に示した。図11(b)は図11(a)を拡大した図である。図11から、NP7では、1個の酸化鉄粒子がリン脂質で被覆されていることが確認された。
【0141】
(実施例10)
(光音響イメージング用造影剤8(NP8)の作製)
両親媒性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤8は、以下の方法で作製した。
【0142】
クロロホルム(3ml)にPLGA−PEG(35mg、PLGA(乳酸−グリコール酸共重合体、平均分子量20000、PLGA−5020、和光純薬工業社製)の末端カルボン酸にPEG(平均分子量5000、SUNBRIGHT MEPA−50H、日油社製)をアミド結合した両親媒性ポリマー、自社合成品)を溶解した。
【0143】
酸化鉄粒子(16mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)を上記PLGA−PEGのクロロホルム溶液に加えた後、均一に分散させた。
【0144】
その後、水(13ml)を加えて超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調製した。
【0145】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤8の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤8をNP8と略す場合がある。
【0146】
NP8の粒径は213nm(重量換算)であった。また、NP8の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.3×1010 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は1.8×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0147】
(実施例11)
(光音響イメージング用造影剤9(NP9)の作製)
両親媒性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤9は、実施例10と同様の方法で作製した。
【0148】
クロロホルム(3ml)にPLGA−PEG(31mg、PLGA−5020の末端カルボン酸にPEG(平均分子量2000、SUNBRIGHT MEPA−20H、日油社製)をアミド結合した両親媒性ポリマー、自社合成品)を溶解した。
【0149】
酸化鉄粒子(16mg、SOR−50、Ocean NanoTech社製)を上記PLGA−PEGのクロロホルム溶液に加えた後、均一に分散させた。
【0150】
その後、水(13ml)を加えて超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調製した。
【0151】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤9の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤9をNP9と略す場合がある。
【0152】
NP9の粒径は441nm(重量換算)であった。また、NP9の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は8.1×1010 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は8.7×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0153】
(実施例12)
(光音響イメージング用造影剤10(NP10)の作製)
両親媒性ポリマー、疎水性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響造影剤10(NP10)は、以下の方法で作製した。
【0154】
オレイン酸に被覆された50nmの酸化鉄粒子(13.8mg、SOR−50、Ocean Nanotech社製)及び、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調整した。
【0155】
次に、ポリビニルアルコール(480mg、M.W.31000、ケン化度88%、シグマアルドリッチ社製)を溶解した水溶液12mlに、前記クロロホルム溶液を加えて混合溶液とした。
【0156】
その後、超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調整した。
【0157】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤10の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤10をNP10と略す場合がある。
【0158】
NP10の粒径は96nm(重量換算)であった。また、NP10の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.3×10 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は3.8×1010(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0159】
(実施例13)
(光音響イメージング用造影剤11(NP11)の作製)
リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響造影剤11(NP11)は、以下の方法で作製した。
【0160】
オレイン酸に被覆された50nmの酸化鉄粒子(13.8mg、SOR−50、Ocean Nanotech社製)及び、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調整した。
【0161】
次に、Tween20(60mg)と化学式5で示される末端がメトキシ基のリン脂質(7.3mg、DSPE−PEG−CN、SUNBRIGHT DSPE−020CN、日油社製)を溶解した水溶液12mlに、前記クロロホルム溶液を加えて混合溶液とした。
【0162】
その後、超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調整した。
【0163】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤11の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤11をNP11と略す場合がある。
【0164】
NP11の粒径は172nm(重量換算)であった。また、NP11の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は9.2×10 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は1.6×1011(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。
【0165】
(実施例14)
(光音響イメージング用造影剤12(NP12)の作製)
2種類のリン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響イメージング用造影剤12(NP12)は、以下の方法で作製した。
【0166】
オレイン酸に被覆された50nmの酸化鉄粒子(13.8mg、SOR−50、Ocean Nanotech社製)及び、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調整した。
【0167】
次に、Tween20(60mg)、化学式5で示される末端がメトキシ基のリン脂質(DSPE−PEG−CN、SUNBRIGHT DSPE−020CN、日油社製)、及び化学式1で示される末端がアミノ基のリン脂質(DSPE−PEG−NH、SUNBRIGHT DSPE−020PA、日油社製)を12mlの水に溶解させた。ただし、末端がメトキシ基のリン脂質と末端がアミノ基のリン脂質はそれぞれのモル比が100:0、99.9:0.1、99.5:0.5、99:1、95:5、90:10、合計のモル数が2.5×10−6molとなるように混合した。調整した水溶液に、前記クロロホルム溶液を加えて混合溶液とした。
【0168】
その後、超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調整した。
【0169】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤12の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤12をNP12と略す場合がある。
【0170】
表3は、光音響イメージング用造影剤12の粒径(キュムラント値)と、ゼータ電位値である。光音響イメージング用造影剤を作製するときに末端がアミノ基のリン脂質の割合が高くなると、得られた光音響イメージング用造影剤のゼータ電位は高くなる傾向となり、光音響イメージング用造影剤の表面により多くのアミノ基が導入されることが示された。なお、表3のNH2はアミノ基NHである。
【0171】
【表3】



【0172】
(NP12の安定性の評価)
NP12のうち、末端がメトキシ基のリン脂質と末端がアミノ基のリン脂質の比率 CN:NH=90:10の条件で作製した光音響イメージング用造影剤(以下NP12(90:10)と表記する)の安定性を以下の方法で評価した。
【0173】
NP12(90:10)を水、PBS、及び500mM ほう酸バッファー(Bor、pH8.5)に混合し、4℃及び37℃で保存した。1日後及び3日後の粒径(キュムラント値)と吸光度を測定した。
【0174】
図12は、PN12(90:10)の各バッファー中における安定性試験の結果である。NP12(90:10)をPBS中で保存したとき、粒径がやや大きくなる傾向にあり、凝集した可能性がある。しかし、水及びBor中では、粒径に大きな変化はなく、凝集は認められなかった。NP12(90:10)の吸光度は、いずれのバッファーにおいても大きな変化はなく、光音響イメージング用造影剤としての効果を維持していた。
【0175】
(実施例15)
(一本鎖抗体hu4D5scFvとNP12(90:10)との結合)
NP12(90:10)に、hu4D5scFvを以下の方法で結合させた。
【0176】
実施例4で調製したhu4D5scFvを5mM EDTAを含むリン酸バッファー(2.68mM KCl/137mM NaCl/1.47mM KHPO/1mM NaHPO/5mM EDTA、pH7.4)にバッファー置換後、10倍モル量のトリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)によって、25℃で約2時間、還元処理した。
【0177】
NP12(90:10)の表面に存在する1級アミノ基を介して、hu4D5scFvを結合させた。まず、succinimidyl−[(N−maleimidopropionamido)−diethyleneglycol]ester(SM(PEG)、サーモサイエンティフィック社)の0.03mg(60nmol)を、NP12(90:10)の水分散液(粒子濃度:3.6×1012個/ml)の1.0mlに溶解した。次に、0.11mlの500mM ほう酸バッファー(pH8.5)を加えた。この粒子懸濁液を室温で2時間撹拌した後、PD−10脱塩カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて、マレイミド基を導入したNP12(90:10)(以下、マレイミド化NP12と略す)と未反応のSM(PEG)を、水を展開溶媒として分離し、マレイミド化NP12の水溶液およそ3mlを得た。この水溶液に1Mの2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid(HEPES)溶液を60μl加えることで、マレイミド化NP12のHEPES溶液を得た。
【0178】
前記還元処理したhu4D5scFvを、前記マレイミド化NP12のHEPES溶液に添加し、4℃で15時間以上反応させた。仕込みの反応モル比(hu4D5scFv/マレイミド化NP12)は、1125で行った。ここで「仕込み」とは反応系に加えられた、という意味であり、「仕込みの反応モル比」とは、反応系に加えられたhu4D5scFvとマレイミド化NP12のモル濃度比のことをいう。反応後、この溶液に、末端チオール基を有するポリエチレングリコール(分子量1000、PLS−606、Creative PEGWorks社製)6.8nmolを加え、室温で30分撹拌した。次いで、この溶液をフィルターろ過(ポアサイズ1.2μm)した後、100kDaのポアサイズのアミコンウルトラ−4(日本ミリポア社)を用いた限外ろ過によりマレイミド化NP12へ結合しなかったhu4D5scFvを除去して、hu4D5scFvが修飾されたNP12(90:10)を得た。
【0179】
BCA法を用いて、NP12(90:10)へのhu4D5scFvの修飾量を算出した結果、粒子あたりに847個のscFvが修飾されていることがわかった。
【0180】
(実施例16)
(NP12(90:10)の癌集積性)
NP12(90:10)の担癌マウスにおける癌集積性(EPR効果)を以下の方法で確認した。
【0181】
NP12(90:10)を公知の方法に従い、各粒子を放射性同位体(以後、RIと略す)で標識した。RI核種としては、125−ヨウ素(125Iと略す事がある)を用いた。125Iの粒子標識には、SIB法に従って行った。PD−10(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)を用いて、PBSで精製することで、125I標識NP12(90:10)溶液を得た。
【0182】
Colon26癌細胞を移植したヌードマウスに、1匹あたり1.8×1011個(鉄量に換算して0.45mg)の125I標識NP12(90:10)をヌードマウスの尾静脈から投与した。投与1、3、24、72時間後に、ヌードマウスを犠牲死し、血液及び癌の放射活性を測定した。投与量に対する割合と、血液及び癌の重さから、集積率(%ID/g)を求めた(図13)。投与後の時間経過とともに125I標識NP12(90:10)は血液中から消失したが、投与3時間後には癌への集積が認められた。
【0183】
(実施例17)
(光音響イメージング用造影剤13(NP13)の作製)
リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、疎水性ポリマー、及び酸化鉄粒子からなる光音響造影剤13(NP13)は、以下の方法で作製した。
【0184】
オレイン酸に被覆された50nmの酸化鉄粒子(13.8mg、SOR−50、Ocean Nanotech社製)及び、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調整した。
【0185】
次に、Tween20(600mg)と化学式5で示される末端がメトキシ基のリン脂質(73mg、DSPE−PEG−CN、SUNBRIGHT DSPE−020CN、日油社製)を溶解した水溶液12mlに、前記クロロホルム溶液を加えて混合溶液とした。
【0186】
その後、超音波分散機で4分間処理することによって、O/W型のエマルジョンを調整した。
【0187】
次に、前記エマルジョンを40℃、100hPaで2時間減圧し、分散質からクロロホルムを留去することによって、光音響イメージング用造影剤13の水分散液を得た。遠心分離により精製した。以後、この得られた光音響イメージング用造影剤13をNP13と略す場合がある。
【0188】
NP13の粒径は70nm(重量換算)であった。また、NP13の粒子数1モルあたりのモル吸光係数は1.2×10 (M−1cm−1(粒子数1モル))であり、粒子数1モルあたりの規格化光音響信号は3.0×1010(V J−1−1(粒子数1モル))であることを確認した。実施例13と比較して、実施例17ではTween20とリン脂質の濃度を10倍高くした。Tween20とリン脂質の濃度により、光音響イメージング造影剤の粒径をコントロールすることができた。
【0189】
(実施例18)
(光音響イメージング用造影剤の粒径と光音響信号)
粒径の異なる光音響イメージング用造影剤は、以下の方法で作製した。酸化鉄粒子として、オレイン酸に被覆された50nmの酸化鉄粒子(SOR−50、Ocean NanoTech社製)、20nmの酸化鉄粒子(SOR−20、Ocean NanoTech社製)、及びオレイン酸に被覆された5nmの酸化鉄粒子(SOR−05、Ocean NanoTech社製)を用いた。
【0190】
5nm、20nm、及び50nmの酸化鉄粒子(13.8mg)、及びポリ乳酸とグリコール酸の共重合体(9.2mg)をクロロホルム(1ml)に加えて、超音波バスで10分間照射し、クロロホルム溶液を調製した。
【0191】
次に、Tween20(60mg、キシダ化学社製)を溶解した水溶液(12ml)に、リン脂質の添加ありなし、リン脂質を添加する場合はリン脂質の末端の官能基の種類を変え、様々な種類のTween20水溶液を作製し、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。以下、NP1及びNP2と同様の方法で作製した。
【0192】
TEM観察と、光音響イメージング用造影剤中の酸化鉄粒子の含有率から、得られた光音響イメージング用造影剤には、複数個の酸化鉄粒子が密に詰まっていることが確認できた。図14は、50nm、20nm、及び5nmの酸化鉄粒子を含有する光音響イメージング用造影剤の粒径(重量換算)と、光音響信号との関係を示している。光音響信号として、図14(a)では鉄原子1モルあたりの規格化光音響信号を、図14(b)では光音響イメージング用造影剤粒子数1モルあたりの規格化光音響信号を示している。50nm及び20nmの酸化鉄粒子を含有させた光音響イメージング用造影剤では、光音響イメージング用造影剤の粒径が大きくなると、鉄原子1モルあたりの光音響信号の増加が認められた。その傾向は、作製方法、つまり酸化鉄粒子以外の成分に関係がなかった。また、この傾向により、50nmの酸化鉄粒子を含有する光音響イメージング用造影剤では、光音響イメージング用造影剤の粒子数1モルあたりの光音響イメージング用造影剤も増加し、強い光音響信号を発する光音響イメージング用造影剤が得られた。
【符号の説明】
【0193】
1 光音響イメージング用造影剤
2 酸化鉄粒子
3 両親媒性化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄粒子を有する光音響イメージング用造影剤において、前記酸化鉄粒子の粒径が15nm以上500nm以下であることを特徴とする光音響イメージング用造影剤。
【請求項2】
酸化鉄粒子を有する光音響イメージング用造影剤において、前記酸化鉄粒子の粒径が20nm以上500nm以下であることを特徴とする光音響イメージング用造影剤。
【請求項3】
前記酸化鉄粒子が、炭素数6以下のヒドロキシカルボン酸を有するモノマーからなる、ホモポリマー、あるいは、2種類以上の前記モノマーからなるコポリマーのうち少なくともいずれか1つで被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光音響イメージング用造影剤はさらに両親媒性化合物を有し、前記両親媒性化合物が、リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステル、両親媒性ポリマーから選択された少なくとも1つの両親媒性化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルが、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80から選択された少なくとも1つのポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項4に記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項6】
前記リン脂質がPEGを有するホスファチジル系リン脂質を有することを特徴とする請求項4に記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項7】
前記両親媒性ポリマーがPEGを結合させたオクタデセン−無水マレイン酸交互共重合体、PEGを結合させたスチレン−無水マレイン酸共重合体、PEGを結合させたポリ乳酸、PEGを結合させた乳酸−グリコール酸共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコールから選択された少なくとも1つのポリオキシエチレンソルビタン系脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項4に記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項8】
前記両親媒性化合物の少なくとも一部に捕捉分子が結合した請求項5乃至7のいずれかに記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項9】
前記捕捉分子が一本鎖抗体であることを特徴とする請求項8に記載の光音響イメージング用造影剤。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光音響イメージング用造影剤が投与された検体に600nm乃至1300nmのうち少なくともいずれかの波長の光を照射する工程と、
前記検体内に存在する前記造影剤から発生する音響波を検出する工程と、
を有することを特徴とする光音響イメージング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−97067(P2012−97067A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79566(P2011−79566)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】