説明

光音響装置およびその制御方法

【課題】被検体の深部の生体特性分布を測定し、血管の位置との関係を理解しやすい画像データを生成するとともに、測定位置のずれの影響を減少させることが可能な光音響装置を提供する。
【解決手段】オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい第1の波長の光と、第1の波長と異なる第2の波長の光を個別に照射可能な光源と、第1および第2の波長の光のそれぞれについて、光が被検体に吸収されて発生する音響波を受信し電気信号に変換する音響検出器と、電気信号を用いて、被検体内部の吸収係数分布を求める吸収係数分布生成部と、第1の波長の吸収係数分布から血管位置を特定する血管位置特定部と、第1および第2の波長の光の吸収係数分布から生体特性分布を求める生体特性分布生成部と、特定された血管位置により生体特性分布をトリミングするトリミング部を有する光音響装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波(音響波)を利用して被検査物(被検体)の内部の情報を取得する装置として、例えば医療診断に用いられる光音響装置が提案されている。光音響装置は、レーザーパルス光を被検体に照射し、被検体内の組織が照射光のエネルギーを吸収した結果生じる光音響波を、被検体をとり囲む複数箇所で受信する。続いて、受信した音響波の時間変化を数学的に解析処理、すなわち画像再構成する。そして、被検体内部の光学特性値に関連した情報を2次元や3次元に可視化できる。このような技術を光音響トモグラフィー(PAT:Photoacoustic tomography)とも呼ぶ。
【0003】
被検体内の組織から生じる音響波の強度は、組織に届く照射光の強度と照射光の波長に対する吸収係数によって変化する。そして、被検体内にはメラニン、脂肪、水分、ヘモグロビン、コレステロール、コラーゲン等の多くの光を吸収する組織が存在し、それぞれ波長に対する異なる吸収係数を持つ。そのため、同じ被検体の同じ組織であっても、異なる波長で測定を行い画像再構成すると異なる吸収係数分布画像が得られる。
【0004】
この波長による吸収係数分布画像を用いて、被検体の血中酸素飽和度を求める方法が知られている。被検体内の血管内に存在する2種類のヘモグロビン(オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビン)の吸収スペクトルは異なるため、異なる波長で測定すると、異なる吸収係数分布画像が得られる。これらの吸収係数分布画像よりオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの分布比(血中の酸素飽和度)を計算することが可能である。例えば、非特許文献1では、4つの波長(578−596nm)を用いて、再構成した画像から、血管内の酸素飽和度を取得している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FUNCTIONAL PHOTOACOUSTIC MICROSCOPY, HAO ZHANG, Texas A&M University, August 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1で使用されている4種の波長(578nm,584nm,590nm,596nm
)は、図6に示すように測定対象であるヘモグロビンや表皮(epidermis)や真皮(dermis
)の持つ吸収係数μaが高い波長域にある。このために、照射光が皮膚表面から数ミリ程
度しか十分に届かず、被検体内の深部の血管を測定することができないという問題があった。
【0007】
また、酸素飽和度の算出式に異なる吸収係数分布画像から得る結果の商算が含まれているため、吸収係分布画像のノイズや、被験者の体動による吸収体の位置ずれが酸素飽和度の結果のノイズや誤差に大きく影響する。
【0008】
吸収係数分布画像のノイズによる酸素飽和度のノイズを見えにくくする方法として、酸素飽和度結果を血管位置でトリミングして表示することが考えられる。ここで、血管位置はヘモグロビンの吸収係数分布が存在する場所だと考えることができる。しかし、図7に示した2種のヘモグロビンの吸収係数スペクトルから分かるように、双方の吸収係数が異
なる波長(例えば756nm)においては、動脈の吸収係数は低く、静脈の吸収係数は高くな
る。
【0009】
この吸収係数分布のある数値以上(静脈の強さを100%とした場合の30%以上)の吸収係
数を持つ位置を血管とすると、同じ太さを持つ血管であったとしても、図8に示すように異なる強度の値が算出されるため、異なる太さの血管のように見える。よって、この吸収係数分布で酸素飽和度のトリミングを行うと、図5(b)、図5(c)に示すように、同じ太さを持つ血管であっても酸素飽和度分布画像においては、違う太さの血管として表示されてしまうという問題があった(Pは静脈、Aは動脈を示す)。
【0010】
一方、被験者の体動があった場合は、図9に示すように、吸収係数分布の位置が変化する。酸素飽和度は同じ位置にある吸収係数によって算出されるため、体動による吸収係数分布の変化が酸素飽和度の算出結果に影響を及ぼすという問題があった。特に血管の太さよりも体動が大きい場合には酸素飽和度の算出結果は意味を成さない。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、被検体の生体特性分布を血管の位置との関係を理解しやすい画像データを生成するとともに、測定位置のずれの影響を減少させることが可能な光音響装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい第1の波長の光と、前記第1の波長と異なる第2の波長の光とを個別に照射可能な光源と、前記第1の波長の光および前記第2の波長の光のそれぞれについて、光が被検体に吸収されて発生する音響波を受信し、電気信号に変換する音響検出器と、前記電気信号を用いて、被検体内部の吸収係数分布を求める吸収係数分布生成部と、前記第1の波長に対応する吸収係数分布から被検体内の血管位置を特定する血管位置特定部と、前記第1の波長の光および第2の波長の光に対応する吸収係数分布から、被検体内の生体特性分布を求める生体特性分布生成部と、前記血管位置特定部により特定された血管位置により、前記生体特性分布をトリミングするトリミング部と、を有する光音響装置である。
【0013】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、情報処理装置が、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい第1の波長の光と、前記第1の波長と異なる第2の波長の光とを個別に照射された被検体から発生する音響波に基づいて、被検体内部の吸収係数分布を求める吸収係数分布生成ステップと、情報処理装置が、前記第1の波長に対応する吸収係数分布から被検体内の血管位置を特定する血管位置特定ステップと、情報処理装置が、前記第1の波長の光および第2の波長の光に対応する吸収係数分布から、被検体内の生体特性分布を求める生体特性分布生成ステップと、情報処理装置が、前記血管位置特定ステップにて特定された血管位置により、前記生体特性分布をトリミングするトリミングステップと、を有する光音響装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被検体の深部の生体特性分布を測定し、血管の位置との関係を理解しやすい画像データを生成するとともに、測定位置のずれの影響を減少させることが可能な光音響装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の光音響装置のブロック図。
【図2】実施例1の処理を示すフロー図。
【図3】実施例2の処理を示すフロー図。
【図4】実施例3の処理を示すフロー図。
【図5】実施例1による測定結果を示す図。
【図6】被検体を組成する物質の吸収スペクトルを示す図。
【図7】オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収スペクトルを示す図。
【図8】波長による動脈と静脈の見え方の違いを示す図。
【図9】体動による吸収係数分布のずれを示す図。
【図10】体動による再構成画像の合成時のずれを示す図。
【図11】実施例4による再構成画像の合成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の光音響装置の実施形態を説明する。以下の説明においては、光音響トモグラフィーの技術を用いて被検体内部を画像化する光音響診断装置を例として挙げる。
【0017】
本発明の光音響装置は、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置である。音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波、光音響波、光超音波と呼ばれる弾性波を含む。
【0018】
図1は本実施例に係る光音響診断装置のブロック図である。
光音響診断装置は、光源1,超音波プローブ3,画像再構成部4,画像メモリ5,波長選択部6,吸収体特定条件メモリ7,血管位置特定部8,生体特性分布演算部9,画像トリミング部10,表示部11,情報処理装置12を備える。各ブロックの動作と機能については、後で詳
述する。被検体2は、例えば生体などの測定対象である。
【0019】
(光音響診断装置の動作)
図2は実施例1のフロー図である。
【0020】
ステップS201において、光音響診断装置は、対象となる被検体2に光源1からのパルス光を照射する。このパルス光は、700nm以上の波長域であり、且つ、2種類のヘモグロビン
(オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビン)の吸収係数が等しい波長Aをもつ。この
パルス光は被検体2内の光吸収体に吸収され、超音波(音響波)である光音響波が発生す
る。なお、本発明において「吸収係数が等しい」とは、吸収係数が完全に等しい場合だけでなく、実質的に吸収係数が等しい場合を含む。2種類のヘモグロビンの各吸収係数が1割以内の範囲内にあれば、2つの吸収係数は実質的に等しいとする。
【0021】
ステップS202において、発生した光音響波は超音波プローブ3に含まれる複数の素子に
よって取得され、電気信号(素子信号)に変換される。電気信号はその後、必要に応じて増幅、デジタル変換等の信号処理を施される。
ステップS203において、増幅、デジタル変換された電気信号は、画像再構成部4によっ
て画像再構成処理され、吸収係数の分布を示す3次元画像として吸収係数分布画像Aが作
成される。画像メモリ5に吸収係数分布画像Aを一時的に保存される。
【0022】
ステップS204,S205およびS206において、被検体に、波長Aとは異なる波長Bをもつパル
ス光が照射され、発生した光音響波に基づく電気信号から、画像再構成部4で吸収係数分
布画像Bが作成される。
ステップS207において、生体特性分布演算部9は、画像メモリ5に保存された波長Aに対
応する吸収係数分布画像Aと波長Bに対応する吸収係数分布画像Bを用いて、生体特性分布
を生成する。生体特性分布は酸素飽和度分布やグルコース分布である。
【0023】
ステップS208において、血管位置特定部8では、2種類のヘモグロビンの吸収係数が略
等しい波長Aで得られた吸収係数分布画像Aに含まれる血管の位置を判断する。吸収体特
定条件メモリ7には画像の血管位置を特定するために必要な条件が保存されており、書き
換え可能である。
【0024】
ステップS209において、画像トリミング部10は、血管位置特定部8により診断された血
管位置で酸素飽和度分布等の生体特性分布が強調される画像を作成する。
ステップS210において、吸収係数分布画像や画像トリミング部10で作成された酸素飽和度画像は表示部11によって表示される。また、強調された酸素飽和度画像と吸収係数分布画像Aと重ね合わせて表示を行ってもよい。
【0025】
ここで、S201-S203で示された波長Aでの測定と、S204-S206で示された波長Bでの測定の順番は前後してもよい。また、S201,S202の後にS204,S205を行い、続いて再構成を行うステップS203,S206を行ってもよい。また、生体特性の演算S207と血管位置の特定S208の順
番は前後してもよい。
【0026】
以下、再度図1を参照しつつ、各ブロックの動作と機能について詳述する。
【0027】
(光源)
光源1は700nm以上の波長をもつナノ秒オーダーのパルス光(PLS)を発生するものであれ
ばよい。700nm以下の波長をもつ光源では、図6に示すようにヘモグロビンやコラーゲン
等の吸収が多いために、被検体内深部まで光が十分に到達できないため、700nm以上の波
長を用いることが望ましい。大出力を得るためにはレーザーが好ましいが、レーザーのかわりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。レーザーとしては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なレーザーを使用することができる。照射のタイミング、波形、強度などは不図示の光源制御部によって制御される。
【0028】
本発明では複数の波長の光を用いる。複数の波長の光を発生させるために、例えば1つの波長可変な光源を用いても良いし、それぞれの波長に対応する複数の光源を用意しても良い。複数の波長の光は、異なるタイミングで個別に照射可能なようにする。
また、光を光源から被検体に導くために、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を分散・屈折・反射するプリズム、光を伝搬させる光ファイバ、拡散板等の光学部材を用いても良い。
光は、被検体に対して超音波プローブと同じ側から照射してもよく、反対側から照射してもよい。さらに被検対の両側から照射してもよい。
【0029】
(波長選択部)
波長選択部6は光源1から照射されるパルス光の波長を選択するとともに、画像再構成部に選択波長情報(SEL)を渡す。
【0030】
(超音波プローブ)
超音波プローブ3は、音響波(超音波)を受信する素子を1つ以上有する音響検出器で
ある。素子を超音波プローブの面内に複数並べられているタイプであれば、一度に複数の位置の信号を取得可能である。これにより受信時間を短縮できると共に、被検体の振動などの影響を低減できる。
この超音波プローブは、音響波である超音波(USW)を受信して増幅し、電気信号に変換
して出力する。超音波プローブに用いられる素子は、圧電現象を用いた変換素子、光の共振を用いた変換素子、容量の変化を用いた変換素子などがある。音響波を受信して電気信号に変換できるものであればどのようなものでもよい。
【0031】
(画像再構成部)
画像再構成部4には、超音波プローブ3から電気信号が入力される。入力された電気信号を用いて画像再構成を行い、被検体内の吸収係数の分布を表す画像データである、吸収係数分布画像情報(ABS)の生成を行う。その際、波長選択部6から受け取った選択波長情報(SEL)に応じて、波長ごとに処理を行うことができる。電気信号を画像再構成部4に入力す
る前、あるいは入力後に、増幅やデジタル変換等の処理を施すことが好ましい。画像再構成部は、本発明の吸収係数分布生成部に相当する。
【0032】
この画像データを生成するための画像再構成アルゴリズムとして、例えば、トモグラフィー技術で通常に用いられるタイムドメインあるいはフーリエドメインでの逆投影などが利用できる。なお、再構成に多くの時間をかけられる場合は、繰り返し処理による逆問題解析法(iterative method)などの画像再構成手法も利用することができる。PATの画像再構成手法には、代表的なものとして、フーリエ変換法、ユニバーサルバックプロジェクション法やフィルタードバックプロジェクション法などがある。
【0033】
(画像メモリ)
画像メモリ5は、画像再構成部4で生成された吸収係数分布画像情報(ABS)を記録してお
く場所である。記録された情報は、必要に応じて血管位置特定部8、生体特性分布演算部9、表示部11に出力される。
【0034】
(生体特性分布演算部)
生体特性分布演算部9は、生体特性分布情報(DST)の生成を行う生体特性分布生成部である。生体特性分布情報(DST)としては、酸素飽和度分布、グルコース分布やコラーゲン分
布が挙げられる。
酸素飽和度の例を用いて、生体特性分布情報の演算法を説明する。ある波長λiで測定
した血管の吸収係数μa(λi)を求める式を式(1)に示す。吸収係数μa(λi)は、オキシヘモグロビンの吸収係数εHbO2i)と濃度[HbO2]の積と、デオキシヘモグロビン
の吸収係数εHbRi)と濃度[HbR]の積との足し合わせで表される。
【数1】

【0035】
これより、ある位置(x,y,z)のオキシヘモグロビンの濃度[HbO2]とデオキシヘモグロ
ビンの濃度[HbR]は、式(2)のように求められる。
【数2】

【0036】
ここで、Eと、Ma(x,y,z)は、下記の式(3)のように表される。
【数3】

μa(λi,x,y,z)は波長λiに対する(x,y,z)位置の吸収係数である。
【0037】
よって、ある位置(x,y,z)の酸素飽和度SO2は、式(4)のように計算される。
【数4】

【0038】
式(2)によれば、2種の波長による測定結果から[HbO2]と[HbR]を得る事ができる。
3種以上の波長による測定結果を用いると、最小二乗法によるのと同等の[HbO2]と[HbR]
の最確値が得られる。
よって、3種類以上の波長により測定を行った場合には、まず、測定した波長の結果を少なくとも1つ除いた波長の組み合わせを複数用意する。そして、それらの波長の組ごと
に式(2)を用いて複数のヘモグロビン濃度を算出した後、最小二乗法や平均を用いて酸素飽和度を算出する方法が考えられる。
【0039】
酸素飽和度以外にも、生体特性分布情報(DST)として、血中のグルコース分布を知るこ
ともできる。グルコース分布[Glc]は以下の式(5)で算出される。
【数5】

この場合は1波長に対する吸収係数によってグルコースの濃度分布が求められる。
【0040】
酸素飽和度やグルコース分布算出結果は、各波長λiでの吸収係数分布μa(λi,x,y,z
)の位置の精度に大きく左右される。よって、測定対象である被検体が測定中に動いた場合、酸素飽和度の結果に大きな誤差が生じる可能性がある。
そこで、吸収係数分布μa(λi,x,y,z)を意図的にぼかすことによって、酸素飽和度の誤差を最小限に抑える方法を用いることができる。吸収係数をぼかす方法としては周囲の吸収係数の平均をとる方法やフィルタを用いる方法がある。
【0041】
(血管位置特定部)
血管位置特定部8では、画像再構成部4で作成された吸収係数分布画像情報から血管の位置を判定し決定する。判定する条件は吸収体特定条件メモリ7に格納されている。血管位
置特定部8は、必要に応じて吸収体特定条件メモリ7にアクセスし条件を読み出す。判断方法としては、あらかじめ所定の閾値を設けておき、吸収係数がその所定の閾値以上の位置を血管位置とする方法がある。他にも、吸収係数の強い位置の並びや形状、吸収体の周辺に現れるアーチファクトの形状を吸収体特定条件メモリ7に格納されている血管条件と相
関をとり相関の高い位置を血管位置とする方法がある。
【0042】
血管位置と判定するための吸収係数強度や相関の閾値は吸収体特定条件メモリ7に格納
されていてもよいし、ノイズレベルを評価し適切な値に自動的に設定してもよい。例えば、画像内の吸収係数のヒストグラムを作成し、血管の吸収係数よりも低い位置の吸収係数の集中値をノイズレベルとする方法や、ノイズと考えられる範囲を指定しその範囲内の吸収係数の平均をノイズレベルとする方法がある。また、表示部に所定の閾値を調整するツマミを設け、術者が表示画面を参照しながら所定の閾値を調整してもよい。この血管位置判定情報(POS)は吸収体特定条件メモリ7に送られる。吸収体特定条件メモリ7として書き
換え可能なメモリを用いれば、変更した条件を記録することができる。
【0043】
(画像トリミング部)
画像トリミング部10は、生体特性分布演算部9から酸素飽和度情報を、血管位置特定部8から血管位置を判定された吸収係数情報分布画像を入力される。吸収係数情報画像の血管位置の酸素飽和度情報を強調するように酸素飽和度画像(IMG)を作成し、表示部11に出
力する。また、画像トリミング部10は強調した酸素飽和度を吸収係数分布画像と合わせた画像を出力してもよい。
【0044】
(表示部)
画像トリミング部10で出力された画像、および、再構成された吸収係数分布画像を表示する。表示方法はMIP(Maximum Intensity Projection)画像、スライス画像が考えられるが他の表示方法も適用可能である。例えば、3D画像を異なる複数の方向から表示する方法がある。また、表示画像の傾きや表示領域、ウインドウレベルやウインドウ幅を、利用者が表示を確認しながら変更する方法もある。また、酸素飽和度画像と吸収係数分布画像を並べて表示する方法や、表示画像の表示位置を合わせて表示する方法もある。
また、表示されている画像を確認しつつ、血管位置特定部8において血管位置の判定に
使われる血管特定条件を調整可能なツマミ等の入力手段を、表示部に設置することも考えられる。
【0045】
(情報処理装置)
以上に述べた各ブロックの処理は例えば、PC等の情報処理装置12が所定のプログラムを実行する制御方法として実現することができる。情報処理装置は、不図示の制御線や無線、その他の方法により各ブロックに制御内容を伝達する。必要に応じて、利用者による情報処理装置または各ブロックへの指示があっても良い。
【0046】
<実施例1>
本発明における光音響診断装置の一例について説明する。
光源にはTi:S(チタンサファイアレーザー)を用い、同光路で2波長(756nm,797nm)
の光を照射した。これらの波長の光密度は15 mJ/cm2であった。Ti:Sの励起にNd:YAGレー
ザー光(波長1064nmのナノ秒オーダーのパルス光)を用いた。被検体の深部まで届く700nm以上の波長を用いて測定を行った。
【0047】
まず、波長797nmの光を使用した。この波長は700nm以上の領域にある2種のヘモグロビ
ンの吸収係数が等しい波長の前後の波長である。波長797nmの光は、本発明の第1の波長
の光に相当する。我々の知見によれば、吸収係数が等しいと言える波長域は、その波長で測定した時の吸収係数分布画像のノイズ値よりも適度に大きい値を閾値としてトリミングした場合に血管の太さが±10%以上変化しない波長域であることが望ましい。本実施例では、血管位置の最大吸収係数の3割を閾値としてトリミングした場合に血管太さが±10%
以上は変化しない、波長域778nm−950nmの内の波長を用いた。
【0048】
次に、2つのヘモグロビンの吸収係数が異なる波長756nmの光を使用した。波長756nmには、デオキシヘモグロビンの吸収係数のピークがあり、2種類のヘモグロビンの吸収係数
差が大きい。これが、本発明の第2の波長の光に相当する。酸素飽和度を計算する際には、この波長756nmの光のように、2種類のヘモグロビンの吸収係数の差が大きく、先の波長797nmの光に対する吸収係数と同程度の吸収係数を持つ波長を選ぶと精度よく酸素飽和度
が得られる。
【0049】
上記のような光を用いて、超音波プローブの受信面に垂直な方向に50mm以上の厚みのある被検体を測定した。
まず、波長797nmの光を被検体に照射し(図2のS201に相当)、被検体からの光音響波
を超音波プローブで受信した(S202)。使用波長がメラニンやヘモグロビンの吸収係数が低い700nm以上の波長であったため、25mm以上深部からの光音響波を十分な強度で測定す
る事が出来た。その得られた光音響信号を用いて吸収係数分布画像Aを作成した(S203)
。再構成はタイムドメインでの逆投射法を用いた。
その後、波長756nmでも同様に測定を行い、吸収係数分布画像Bを作成した(S204-S206
)。
【0050】
次に、作成した吸収係数分布A,Bを用いて酸素飽和度を計算した(S207)。この時、厚
み方向に1.25 mmの吸収係数分布を平均化することによって各画像の位置ずれによる酸素
飽和度の誤差を抑えた。
【0051】
次に、吸収係数分布画像Aの閾値以上の吸収係数を血管とし、血管位置の決定を行った
(S208)。閾値は最大吸収係数の30%の値とした。閾値として吸収係数分布画像にあるノイズを十分にトリミングできる値を選択した。
【0052】
計算された酸素飽和度情報が血管位置で強調されるように、血管位置以外の酸素飽和度情報をゼロとし、表示を行った(S209-210)。
【0053】
次に本発明を実施した効果について述べる。図5(a)に、x方向30mm、y方向46mm、z方向50mm領域の模擬生体内の酸素飽和度図を示す。模擬生体は生体と同程度の音速、吸収係数と散乱係数を持つ。この模擬生体内の深さ方向zの中心25mm位置に1本は動脈血管
、1本は静脈血管に相当する酸素飽和度の模擬血管を配置した。図5(a)の右に静脈模
擬血管(図中“P”で示す)、左に動脈模擬血管(図中“A”で示す)があることを示している。模擬生体に光を各々入射させ、発生した光音響波を、xy平面に平行に配置した大きさ3cm×4.6cmのプローブで測定し、吸収係数分布画像と酸素飽和度を出した。
【0054】
図5(d)に波長797nmで測定した吸収係数分布を示す。図5(e)に波長797nmの吸収係数分布でトリミングを行った酸素飽和度画像を示す。図5(b)に波長756nmで測定し
た吸収係数分布を示す。図5(c)に波長756nmの吸収係数分布でトリミングを行った酸
素飽和度画像を示す。
【0055】
図5(b)から図5(e)において、z方向の深さ25mm位置に配置された模擬血管が認識できていることから、どちらの波長でも被検体の25mmの深部まで吸収係数分布画像を測定できることが確認された。オキシヘモグロビンの吸収係数がデオキシヘモグロビンの吸収係数よりも小さい波長756nmの光に対応する吸収係数分布画像Bを用いて血管位置を判定した場合、酸化飽和度の画像図5(c)において、静脈血管は太く、逆に動脈は細くなった。また、動脈の一部に消失がみられた。
【0056】
しかし、2種類のヘモグロビンの吸収係数が等しい波長797nmの光に対応する吸収係数分布画像Aを用いて血管位置を判定した場合には、静脈と動脈の全半値幅が±5%以内で画像
化され、ほぼ同等に表示された。したがって、700nm以上の2種類のヘモグロビンの吸収
係数が等しい波長に対する吸収係数分布を血管位置の同定に使うことによって、被検体の深部にある動脈と静脈であっても同じように見えることを確認した。
【0057】
なお、本実施例では、2種類の波長を用いて酸素飽和度を計算したが、3種類以上の波長を用いて計算を行ってもよい。その場合は、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい波長A(797nm)、各吸収係数が異なる波長B(756nm)、吸収係数の大小に縛られない複数(1つでもよい)の波長(797nm、756nm以外の波長)を用いる。
【0058】
<実施例2>
実施例1においては、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい波長Aに対する吸収係数分布を用いて酸素飽和度を出す装置について説明した。本実施例
においては、波長Aの吸収係数分布を用いることなく酸素飽和度を計算する光音響装置を
例として説明する。本実施例のフロー図を図3に示す。ここでは、実施例1と異なる部分を特に詳しく説明する。
【0059】
本実施例では、波長Aとして797nm、波長Bとして756nm、波長Cとして825nmの波長をもつ光源を用いた。波長Bと波長Cは2種類のヘモグロビンの吸収係数が異なる波長である。光
源はTi:Sレーザーを用い、同光路で被検体に照射した。
【0060】
まず、ステップS301で波長Aの光を被検体に照射し、ステップS302で光音響波を取得し
、ステップS303で取得した音響信号を用いて画像再構成を行った。
次に、ステップS304で波長Bの光を被検体に照射し、ステップS305で光音響波を取得し
、ステップS306で画像再構成を行った。
【0061】
次に、本実施例では、ステップS311で波長Cの光を被検体に照射し、ステップS312で光
音響波を取得し、ステップS313で画像再構成を行った。
【0062】
そして、ステップS307で、2つのヘモグロビンの吸収係数の異なる波長B,Cに対する吸収係数分布画像B,Cを用いて酸素飽和度の算出を行った。波長Bの756nmはデオキシヘモグロ
ビンの吸収係数がオキシヘモグロビンよりも高く、波長Cの825nmはオキシヘモグロビンの吸収係数がデオキシヘモグロビンの吸収係数よりも高い。この波長756nm,825nmのように2種類のヘモグロビンの吸収係数の大小が逆転しており、波長Aに対する吸収係数と同じ程
度の波長を選ぶことで、酸素飽和度はより精度よく算出される。
【0063】
ステップS308で、波長Aに対する吸収係数分布画像から血管の位置を決定した。閾値を
設け、閾値以上の吸収係数のある位置を血管とした。閾値は最大吸収係数の30%の値とした。
【0064】
ステップS309で、S307とS308で計算された酸素飽和度情報と血管位置情報をもとに血管位置の酸素飽和度を強調した画像を作成した。血管位置以外の酸素飽和度をなくし、血管位置の酸素飽和度の強調を行った。
ステップS310で、S309で得られた画像を表示した。
【0065】
波長A,B,Cそれぞれの照射から再構成までの手順に相当するS301−S303、S304−S306、S311−S313の順番は前後してもよい。また、すべての波長で信号を取得した後に再構成を行ってもよい。また、S307とS308の手順についても前後して構わない。もしくはS307を終えた後にS301からS304、S308の手順を行う、またその逆を行っても構わない。
【0066】
実施した効果について次に説明する。波長A,B,Cのどの波長の場合でも、被検体の25mm
以上の深部まで吸収係数分布画像を測定することができた。波長Bで血管位置を決定した
場合には静脈の全半値幅がより画像が、波長Cで血管位置を決定した場合には動脈の全半
値幅がより大きい画像が得られた。しかし、波長Aで血管位置を決定した場合には、静脈
も動脈も全半値幅が±5%程度の違いしかなく同じように強調された画像を得た。したがって、700nm以上の2種類のヘモグロビンの吸収係数が等しい波長に対する吸収係数分布を血管位置の同定に使うことによって、被検体の深部にある動脈と静脈であっても同じように見えることを確認した。
【0067】
<実施例3>
実施例1、2では血管位置の酸素飽和度の測定を説明していたが、本実施例では血管位置のグルコース分布の測定方法を説明する。本実施例と実施例1、実施例2で異なる部分を中心に説明する。
【0068】
本実施例では2種のヘモグロビンの吸収係数が等しい波長Aと、グルコース分布を測定
するための2種類の波長B、Cの、合計3つの波長を用いた。本実施例のフロー図を図4に示す。波長Aは主に血管位置を指定するために使う。波長B,Cは700nm〜1100nmの範囲を選
択する。これはグルコースや水等の吸収係数が比較的低い波長域である。グルコース分布算出は原理的に1波長に対する吸収係数分布測定でも可能であるが、本実施例では3波長からグルコース分布を測定した。
【0069】
まず、それぞれの波長について、光を照射し、光音響波を取得し、画像再構成を行った。光源波長を変えつつ、S401−S403、S404−S406、S411−S413の処理を実行した。この部分については実施例2と同様に測定を行った。
【0070】
ステップS407で、波長A,B,Cから得られた吸収係数分布と、式(5)に示した数式を用
いてグルコース分布算出を行った。各波長に対して得られたグルコース分布の平均を算出し、グルコース分布画像を作成した。
【0071】
ステップS408で、波長Aに対する吸収係数分布画像に最大吸収係数の3割の閾値を掛け、それ以上吸収係数のある吸収体を血管とし、血管位置を判定した。
【0072】
そして、ステップS409で、S408から得た血管位置情報を元に、S407にて得られたグルコース分布画像を、血管位置以外の分布をゼロとするようにして、血管位置が強調されるように画像を調整した。
【0073】
実施例の効果について次に説明する。被検体の25mm以上の深部まで吸収係数分布画像を測定することができ、グルコース分布の表示を動脈や静脈に関係なく同じ太さの血管に見えることを確認した。
【0074】
<実施例4>
上記実施例では複数の波長の光を用いて測定を行うので、各波長での測定の間に時差が生じる。もし時差の間に体動により被検体の測定位置がずれると、複数の再構成画像の位置がずれるおそれがある。その結果、例えば位置合せやトリミングの精度が低下し、動脈や静脈の位置が合わない、生体特性分布画像がぼやける等のおそれがある。
【0075】
この様子を図10に示す。図10(a)は、被検体の測定領域に対して、2種のヘモグロビンの吸収係数がほぼ等しい波長797nmの光を照射したときの吸収係数分布である。測
定領域内に静脈に由来する像Pと、動脈に由来する像Aが確認できる。図10(b)は、2種のヘモグロビンで吸収係数が異なる波長756nmの光を照射したときの吸収係数分布で
ある。このとき、波長を変えて測定をする間に体動があると、合成したときに図10(c
)のように血管の位置がずれてしまう。
【0076】
このような体動の影響への一つの対処として、血管位置特定部で血管位置の判断に用いる閾値などの条件を調整することが考えられる。また、特徴量の比較、動きベクトルの追跡、マーカによる位置合せなどにより、複数の再構成画像の間で対応する測定位置を特定し、画像化することも考えられる。
【0077】
本実施例では、体動により複数の画像で光吸収体の位置にずれが生じた場合に、少なくとも一つの画像での光吸収体を大きくすることにより、合成画像において他の画像での光吸収体と重畳させる方法について説明する。光吸収体を大きくするために、画像空間での分解能を低減させる方法を用いる。これにより、その光吸収体を見かけ上ぼかして大きくすることができる。このように分解能を低減させる方法であれば、被検体のターゲット領域(ボクセル、ピクセル等)ごとに位置ずれを把握する必要がないので、演算量を抑制できる点で好ましい。本発明において、画像空間での分解能を低減させる方法とは、吸収係数分布において、隣接する位置間(ボクセル間、ピクセル間)の吸収係数値の変動を小さくすることで、光吸収体の像を見かけ上ぼかす方法を示す。
【0078】
本実施例での一連の処理の流れを説明する。まず画像再構成部は、上記の実施例と同様にそれぞれの波長での光音響波測定結果から、吸収係数分布画像を作成する。そして血管位置特定部は、それぞれの波長に対応する吸収係数分布画像から血管位置を特定するとともに、双方の画像の間の大まかな位置のずれ量を把握する。ここでは詳細な(例えボクセル、ピクセル等)のレベルは必要なく、分解能を低減させる度合いを決定できる程度の大まかなずれ量で良い。ずれ量を把握する方法としては、例えば再構成画像の分析、体動の様子を機械的に測定したり光学的に撮影したりして行う分析、利用者による手動での入力などがあり、いずれの方法でも構わない。光学的な撮影による場合、被検体上で特徴となり得る目印の位置を比較したり、マーカを設置したりしても良い。また位置ずれの有無の判定やずれ量の把握を行う位置ずれ判定部を設けても良い。
【0079】
そして、把握されたずれ量に基づいて、分解能低減の程度が決定される。この決定は血管部位特定部が行ってもよいし、生体特性分布演算部、画像トリミング部あるいは追加された他のブロックがずれ量を受信して行っても良い。一方の画像のみ分解能を低減させる場合、少なくとも、分解能低減により見かけが大きくなった方の血管の画像の中に、分解能低減させていない方の画像の血管が含まれる程度の処理を行うものとする。
【0080】
分解能を低減させる際には、画像をフィルタ処理する種々の手法を用いることができる。例えば再構成画像に移動平均フィルタやガウシアンフィルタをかけることにより血管等のイメージをぼやけさせることができる。フィルタをかける範囲やフィルタ係数を調整すれば、分解能低減の程度を変更することができる。例えば位置のずれ量に応じてどの程度分解能を低減させるかの関係をあらかじめ決定しておき、テーブルや関係式の形で記憶させておけば良い。また、同じ再構成画像の中でも、吸収体の大きさ(血管像の太さ)に応じて低減の程度を変更しても良い。
【0081】
本実施例を適用した結果を図11に示す。図11(a)は図10(a)と同じく波長797nmの光を照射したときの吸収係数分布である。図11(b)は、体動により位置ずれが
生じた図10(b)の画像に対して、分解能低減処理を施したイメージを示す。図示したように、血管像がぼやけて、見かけ上大きくなっている。分解能低減処理の程度は、図11(c)のように合成処理を行ったときに、2つの画像の光吸収体同士が重畳するように決定される。合成を行った後、あるいはその前に、画像トリミング部が、図11(a)の血管像の範囲でトリミングを行ってもよい。
【0082】
本実施例の処理によれば、体動により測定位置のずれが生じた場合でも、酸素飽和度に代表される生体特性分布画像をある程度の精度を持って合成することができる。さらに表示部への表示の際、トリミングに用いる血管位置を、2種のヘモグロビンの吸収係数がほぼ等しい波長の光に対応する再構成画像に基づいて特定すれば、実際の血管の太さを反映した見やすい生体特性分布情報を提供できる。
【符号の説明】
【0083】
1:光源,4:画像再構成部,8:血管位置特定部,9:生体特性分布演算部,10:画像トリミング部,11:表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい第1の波長の光と、前記第1の波長と異なる第2の波長の光とを個別に照射可能な光源と、
前記第1の波長の光および前記第2の波長の光のそれぞれについて、光が被検体に吸収されて発生する音響波を受信し、電気信号に変換する音響検出器と、
前記電気信号を用いて、被検体内部の吸収係数分布を求める吸収係数分布生成部と、
前記第1の波長に対応する吸収係数分布から被検体内の血管位置を特定する血管位置特定部と、
前記第1の波長の光および第2の波長の光に対応する吸収係数分布から、被検体内の生体特性分布を求める生体特性分布生成部と、
前記血管位置特定部により特定された血管位置により、前記生体特性分布をトリミングするトリミング部と、
を有する光音響装置。
【請求項2】
前記生体特性分布とは血中の酸素飽和度の分布である
請求項1に記載の光音響装置。
【請求項3】
前記第2の波長とはオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が異なる波長である
請求項2に記載の光音響装置。
【請求項4】
前記生体特性分布とはグルコース分布である
請求項1に記載の光音響装置。
【請求項5】
前記第1の波長は778nmから950nmの間の波長である
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光音響装置。
【請求項6】
前記生体特性分布演算部は、前記第1の波長および前記第2の波長のうち、少なくとも一方の波長に対応する吸収係数分布の分解能を低減させて生体特性分布を求める
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光音響装置。
【請求項7】
前記生体特性分布演算部は、フィルタ処理により吸収係数分布の分解能を低減させる
請求項6に記載の光音響装置。
【請求項8】
前記生体特性分布演算部は、前記フィルタ処理において移動平均フィルタまたはガウシアンフィルタを用いる
請求項7に記載の光音響装置。
【請求項9】
前記生体特性分布演算部は、前記第2の波長に対応する吸収係数分布の分解能を低減させる
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の光音響装置。
【請求項10】
前記生体特性分布演算部は、前記第1の波長の光を照射したときと前記第2の波長の光を照射したときで被検体の位置ずれが生じた場合に、吸収係数分布の分解能を低減させる請求項6ないし9のいずれか1項に記載の光音響装置。
【請求項11】
前記血管位置特定部は、吸収係数が所定の閾値以上である場合に血管位置であると特定する
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の光音響装置。
【請求項12】
前記血管位置特定部は、吸収係数分布のノイズレベルに基づいて前記所定の閾値を決定する
請求項11に記載の光音響装置。
【請求項13】
トリミング部によりトリミングされたデータに基づいて被検体内の生体特性分布を表示する表示部と、
表示された生体特性分布を確認しつつ前記所定の閾値を調整することを可能とする入力手段をさらに有する
請求項11に記載の光音響装置。
【請求項14】
情報処理装置が、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収係数が等しい第1の波長の光と、前記第1の波長と異なる第2の波長の光とを個別に照射された被検体から発生する音響波に基づいて、被検体内部の吸収係数分布を求める吸収係数分布生成ステップと、
情報処理装置が、前記第1の波長に対応する吸収係数分布から被検体内の血管位置を特定する血管位置特定ステップと、
情報処理装置が、前記第1の波長の光および第2の波長の光に対応する吸収係数分布から、被検体内の生体特性分布を求める生体特性分布生成ステップと、
情報処理装置が、前記血管位置特定ステップにて特定された血管位置により、前記生体特性分布をトリミングするトリミングステップと、
を有する光音響装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217554(P2012−217554A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84794(P2011−84794)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】