説明

光CATVシステム

【課題】光CATVシステムのファイバ数を少なくし、既存機器のリプレース数を少なくする。
【解決手段】センター局とFTTHノード装置とが光ファイバを介して接続する。ノード装置からの複数の光ファイバの各々に、複数の加入者宅の光ネットワークユニットが接続している。BS−IF/CS−IF信号及び映像信号がそれぞれ、1〜2.6GHzのチャンネル、70〜770MHzのチャンネルを利用する。下り通信信号が70〜770MHzの周波数帯の空きチャンネルを利用する。また、上り通信信号が、10〜55MHzの周波数帯のチャンネルを利用する。BS−IF/CS−IF信号、映像信号、及び下り通信信号は少なくとも前二種の映像信号と下り通信信号とが互いに異なるDWDM規格の1.55μm帯の二つの波長の光信号を用いて下流に送信される。上り通信信号は、これら二つの波長以外の波長の光信号を用いて送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光CATV(Cable television)システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のCATV下りシステムでは、センター局(HE:Head End)と加入者宅とが銅線を介して接続されている。このようなCATVシステムでは、映像信号が、450MHzまでのUHF帯域中のチャンネルを利用して、加入者宅へと配信される。CATVシステムでは、一つのセンター局に対しする加入者数が数千〜数万に及ぶ。また、センター局から加入者宅までの距離が数Kmに達する場合もある。したがって、上記信号、特に高周波/広帯域の映像信号をセンター局から加入者宅まで伝送しようとすると、その幹線部分では中継増幅器を〜400m間隔で設置する必要性が生じていた。これは、高周波/広帯域信号が減衰してしまうためである。
【0003】
近年、信号の減衰を緩和するために、センター局からサブセンターまでの幹線部分に光ケーブルを用いた光化CATVシステム(HFC:Hybrid Fiber and Coaxial)が提案されている。これにより、上り信号中に含まれる流合雑音の影響が緩和されて映像信号帯域の上限が450MHzから770MHzに拡大されている。具体的に、光化CATVシステムでは、70MHz〜770MHzの周波数帯内の6MHzスパンの搬送波を用いた周波数多重信号で映像信号が配信される。また、同周波数帯の空きチャンネルが、インターネット等のための下りの通信信号用に用いられる。さらに、10〜55MHzの周波数帯内のチャンネルが上りの通信信号用に用いられる。
【0004】
更に近年になって、電話回線の全光化が一般化されつつある。全光化電話回線では、最も一般的な形態として、所謂GE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)システムといったPONシステムが採用されている。PONシステムでは、一般的に、64軒の加入者宅からの光ファイバが光カプラに結合され、64軒の加入者宅に対して光カプラからセンター局に一本の光ファイバが接続されている。このようなPONシステムは、電話用の音声信号のみならず、インターネット等のための通信信号、更には、映像信号も伝送できる容量がある。
【0005】
このような背景の下で、全光化CATVシステムの構築が話題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−166300号公報
【特許文献2】特開2005−341266号公報
【特許文献3】特開2006−005595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PONシステムにおいてセンター局に接続する光ファイバの数は、膨大な数である。したがって、CATVシステムにおいて、PONシステムと同様の光ファイバの接続形態を採用すると、センター局に光ファイバを収容することが困難である。また、センター局には、膨大な数の光ファイバからの信号を個々に処理する機器を収容するのに十分なスペースが存在しない。
【0008】
また、CATVシステムにおいて、PONシステムの構成を採用する場合には、通信方式の相違が問題となる。即ち、PONシステムでは、イーサネットのフレームをそのまま伝送するのに対して、CATVシステムでは、上り/下りのいずれの場合にも、信号を搬送波によりQPSK(Quaternary Phase Shift Keying)変調、QAM(QuadratureAmplitude Modulation)変調等の方式で変調して伝送する。したがって、CATVシステムにおいて、PONシステムの構成を採用する場合には、センター局の機器、及び、加入者宅の変復調装置全体をリプレースする必要がある。
【0009】
本発明は、センター局に繋がるファイバ数を少なくすることができ、且つ、リプレースする機器数を低減可能な光CATVシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光CATVシステムは、CATV(Cable television)センター局と、FTTH(Fiber To The Home)ノード装置、複数の加入者宅用の複数の光ネットワークユニットと、を備えている。FTTHノード装置は、センター局に接続されている。複数の光ネットワークユニットは、FTTHノード装置に接続されている。センター局は、FTTHノード装置に、当該センター局とFTTHノード装置とを接続する光ファイバを介して、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)規格の波長の光信号を用いて、映像信号を送信し、当該映像信号の波長とは異なる他のDWDMの波長の光信号を用いて、70MHz〜770MHzの周波数帯の下り通信信号を送信する。FTTHノード装置は、当該FTTHノード装置とセンター局とを接続する光ファイバを介して、センター局からの映像信号、下り通信信号に対応する複数の光信号を受信し、当該複数の光信号を複数の光ネットワークユニットに中継する。複数の光ネットワークユニットは、各光ネットワークユニットとFTTHノード装置とを接続する光ファイバを介して、FTTHノード装置からの互いに波長の異なる複数の光信号を受信し、これら波長とは異なる波長の光信号を用いて、各光ネットワークユニット専用の時分割スロットを用いた上り通信信号であって10〜55MHzの周波数帯を含み下り通信信号の周波数帯より低い周波数帯のチャンネルを利用する上り通信信号を、FTTHノード装置に送信する。各加入者宅の光ネットワークユニットは、受信した波長の異なる複数の光信号に基づいて、BS−IF及びCS−IF信号、映像信号、並びに下り通信信号を出力する。FTTHノード装置は、複数の光ネットワークユニットから送信される上り通信信号を多重化することにより多重化上り通信信号を生成し、CWDM規格の波長の光信号を用いて、多重化上り通信信号を、FTTHノード装置とセンター局とを接続する光ファイバを介して、センター局へ送信する。センター局は、FTTHノード装置からの多重化上り通信信号を、センター局とFTTHノード装置とを接続する光ファイバを介して、受信する。ここで、本CATVシステムは、複数の加入者を一群にまとめ、当該一群に属する加入者からの上り通信信号について互いに異なる波長でFTTHノード装置に送信することに特徴を有する。これにより、FTTHノード装置で複数の加入者が多重化されて多重化上り信号が生成される場合であっても、各加入者宅のネットワークユニットが発生する雑音の多重化効果を緩和することができる。
【0011】
本発明の光CATVシステムでは、センター局から加入者宅の光ネットワークユニットまでが光ファイバにより接続されている。また、各加入者宅の光ネットワークユニットからの上り通信信号がFTTHノード装置により多重化されて一本の光ファイバによりセンター局に送信される。例えば、複数の光ネットワークユニットに対する時分割数を例えば256とすることにより、FTTHノード装置には256個の光ネットワークユニットを接続することができる。その結果、光ネットワークユニットの個数に対して、センター局に接続する光ファイバの数を少なくすることができる。また、BS−IF及びCS−IF信号、映像信号、下り通信信号、及び上り通信信号として、従来のCATVシステムと略同様の信号を用いることができるので、従来のCATVシステムで採用されていた変復調装置を採用することができる。
【0012】
また、本発明の光CATVシステムは、CATVセンター局と、FTTHクラスタノード装置と、複数のFTTHノード装置と、複数の加入者宅用の複数の光ネットワークユニットと、を備えている。FTTHクラスタノード装置は、センター局に接続されている。複数のFTTHノード装置は、FTTHクラスタノード装置に接続されている。複数の光ネットワークユニットは、複数のFTTHノード装置の何れかに接続されている。センター局は、当該センター局とFTTHクラスタノード装置とを接続する光ファイバを介して、FTTHクラスタノード装置に、DWDM規格の波長の光信号を用いて、BS−IF及びCS−IF信号、及び映像信号を送信し、DWDM規格の他の波長の光信号を用いて、70MHz〜770MHzの下り通信信号を送信する。FTTHクラスタノード装置は、センター局とFTTHクラスタノード装置とを接続する光ファイバを介して、センター局からの複数の波長の光信号を受信して、これら光信号を複数のFTTHノード装置に中継する。複数のFTTHノード装置にはそれぞれ、複数の光ネットワークユニットが接続されている。複数のFTTHノード装置の各々は、そのFTTHノード装置とFTTHクラスタノード装置とを接続する光ファイバを介して、FTTHクラスタノード装置からの複数の光信号を受信し、そのFTTHノード装置に接続された2以上の光ネットワークユニットに、これら光信号を送信する。光ネットワークユニットの各々は、その光ネットワークユニットに接続されたFTTHノード装置と当該光ネットワークユニットとを接続する光ファイバを介して、当該FTTHノード装置から複数の光信号を受信し、これら複数の光信号の波長とは異なる波長の光信号を用いて、10〜55MHzの周波数帯を含み下り通信信号の周波数帯より低い周波数帯を利用する上り通信信号を、該FTTHノード装置に送信する。複数の光ネットワークユニットは、受信した光信号からBS−IF及びCS−IF信号と、映像信号、並びに下り通信信号とを分離して出力する。複数のFTTHノード装置のうち同一のFTTHノード装置に接続された一群の光ネットワークユニットからの上り通信信号は互いに異なる波長が割当てられている。複数のFTTHノード装置の各々は、そのFTTHノード装置に接続された2以上の光ネットワークユニットから送信される上り通信信号を多重化することにより多重化上り信号を生成し、CWDM規格の波長であってFTTHクラスタノード装置に接続された他のFTTHノード装置によって利用される波長とは異なる波長の光信号を用いて、多重化上り通信信号を、そのFTTHノード装置とFTTHクラスタノード装置とを接続する光ファイバを介して、FTTHクラスタノード装置へ送信する。FTTHクラスタノード装置は、当該FTTHクラスタノード装置と複数のFTTHノード装置とを接続する光ファイバを介して、複数のFTTHノード装置からの多重化上り通信信号を受信し、FTTHクラスタノード装置とセンター局とを接続する光ファイバを介して、多重化上り通信信号を送信する。センター局は、当該センター局とFTTHクラスタノード装置とを接続する光ファイバを介して、FTTHクラスタノード装置からの多重化上り通信信号を受信する。
【0013】
本発明の光CATVシステムでは、センター局から加入者宅の光ネットワークユニットまでが光ファイバにより接続されている。また、複数の光ネットワークユニットからの上り通信信号がFTTHノード装置により多重化されることにより多重化上り通信信号とされる。ここで、複数のネットワークユニットを一群として、当該一群内の各ネットワークユニットの上り通信信号は互いに異なる波長が割当てられている。そのため、FTTHノード装置において複数の上り通信信号を多重化受光しても、各ネットワークユニットが発生する雑音の多重化効果を緩和することができる。ここで、各ネットワークユニットからの上り通信信号の波長をCWDMのグリッド波長の一つ(20nmスパン)に対応させてもよく、あるいは、その1/2の10nm間隔の波長に対応させてもよい。分割スパンが狭くなれば一つのFTTHノード装置に含まれる加入者数を増加させることができる。一方、各加入者からみると、一つの加入者に対して割り当てられたタイムスロットが減少する。波長分割間隔と一群内の加入者数は通信容量、全加入者数の関係で適宜決定することが可能である。また、BS−IF及びCS−IF信号、映像信号、下り通信信号、及び上り通信信号として、従来のCATVシステムと略同様の信号を用いることができるので、従来のCATVシステムで採用されていた変復調装置を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、センター局に繋がるファイバ数を少なくすることができ、且つ、リプレースする機器数を低減可能な光CATVシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る光CATV(Cable Television)システムを概略的に示す図である。
【図2】図1に示すセンター局の一例を詳細に示す図である。
【図3】一実施形態の光CATVシステムで利用される映像系信号及び通信信号の周波数帯を示す図である。
【図4】一実施形態の光CATVシステムで利用される光信号の波長を示す図である。
【図5】一実施形態のFTTHクラスタノード装置の構成を示す図である。
【図6】一実施形態のFTTHノード装置の構成を示す図である。
【図7】一実施形態の4重O/E変換器の構成を示す図である。
【図8】合流器の構成例を示す図である。
【図9】一実施形態の光ネットワークユニットの構成を示す図である。
【図10】別の実施形態の光CATVシステムで利用される映像系信号及び通信信号の周波数帯を示す図である。
【図11】別の実施形態の光ネットワークユニットの構成を示す図である。
【図12】更に別の実施形態の光ネットワークユニットの構成を示す図である。
【図13】別の実施形態に係わるセンター局の構成を示す図である。
【図14】別の実施形態に係わるセンター局に対応するネットワークユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1は、一実施形態に係る光CATV(Cable Television)システムを概略的に示す図である。図1に示す光CATVシステム10では、センター局12から下流の複数の加入者宅14へ映像信号及び下り通信信号が送信される。また、複数の加入者宅14から上流のセンター局12へ上り通信信号が送信される。
【0018】
光CATVシステム10は、FTTH(Fiber To The Home)ノード装置16a〜16a、及び、複数の光ネットワークユニット(ONU:Optical Network Unit)18を備え得る。ここで、Jは、1以上の整数である。また、光CATVシステム10は、FTTHノード装置16b〜16b、FTTHクラスタノード装置20、及び複数のONU 18を備えることができる。ノード装置16a〜16aとノード装置16b〜16bは、同じ装置構成を有することができる。したがって、以下では、ノード装置16a〜16a及びノード装置16b〜16bの各々を、また、これらを総称して、ノード装置16ということがある。
【0019】
センター局12とノード装置16a〜16aとはそれぞれ、上り信号用光ファイバ22a及び下り用光ファイバ22bを介して接続されている。ノード装置16a〜16aの各々は、その下流側と、複数の光ファイバ26で接続されている。光ファイバ26からは、複数の光タップ、即ち複数の光カプラ28を介して、それぞれの光ファイバ30が分岐されている。それぞれの光ファイバ30は、複数の加入者宅14に備えられているONU 18に接続されている。
【0020】
また、センター局12とクラスタノード装置20は、下り信号用の光ファイバ32a及び32b、並びに、上り用の光ファイバ34a及び34bを介して、接続されている。クラスタノード装置20とノード装置16b〜16bの各々は、上り用光ファイバ36a及び下り用光ファイバ36bを介して接続されている。
【0021】
ノード装置16a〜16aと同様に、ノード装置16b〜16bの各々は、その下流側と、複数の光ファイバ26で接続されている。光ファイバ26からは、複数の光タップ、即ち複数の光カプラ28を介して、それぞれ光ファイバ30が分岐されている。光ファイバ30は、加入者宅14に備えられているONU 18にそれぞれ接続されている。ここで、センター局とFTTHクラスタノード装置20との間で上り、下りそれぞれ2系統の光ファイバ、32aおよび32b、34aおよび34b、を設けているのは、一方を現用系統に他方を予備系統として、システムのセキュリティを高めるためである。現用系統に断線等の事故があった場合であっても、瞬時に予備系統に切り替えることにより、各加入者宅14とセンター局12との間の通信に支障を来たさない。
【0022】
図2は、図1に示すセンター局の一例を詳細に示す図である。センター局12は、センター側のケーブルモデム(CMTS:Cable Modem Termination System) 12a〜12a、通信系光送信器12b〜12b、映像系光送信器12c〜12c、通信系光受信器12d〜12dを備えている。
【0023】
CMTS 12a,12aは、インターネット等の外部の通信ネットワークに接続されている。例えば、CMTS 12aは広域ネットワークに接続されてインターネットサービスを提供するものであり、CMTS 12aは電話回線に接続されてIP電話サービスを提供する。個々のサービスに対応してこのCMTSは準備される場合が多い。CMTS 12a〜12aは、クラスタノード装置20からの光信号に基づく上り通信信号を受信する。CMTS 12a〜12aは、受信した上り通信信号を復調して、復調した信号を外部のネットワークに送信する。また、CMTS 12a〜12aは、外部の通信ネットワークから受信した信号を変調して下り通信信号を生成し、当該下り通信信号を下流側、即ち、クラスタノード装置20側へと送信する。
【0024】
具体的には、クラスタノード装置20からの光信号が、光ファイバ34a(現用系統)及び34b(予備系統)を介してCWDM(coarse wavelength division multiplexing)フィルタ12e及び12eに送信される。光ファイバ34aを介してフィルタ12eに入力された光信号は、当該フィルタ12eによって波長毎に分波される。フィルタ12eによって分波された光信号は、個別に、光受信器12d内の一方の受光素子により光/電気変換される。同様に光ファイバ34bを介して送信された上り通信信号は、CWDMフィルタ12eにより分波された後、光受信器12d内の他方の受光素子により光/電気変換される。二つの光/電気変換された信号をスイッチ(SW)により切り替えることで、現用系統34aと予備系統34bを切り替えることができる。スイッチの出力が上り通信信号となる。なお、図2では太線で示した経路が光信号の伝播経路に対応し、細線で示した経路が電気信号の伝播経路に対応する。光受信器12dからの上り通信信号は、分配器12nで分配されて、それぞれのCMTS装置12a,12aに入力され、受信した上り通信信号が当該CMTS装置が提供するサービスであると判断された場合に、その上り通信信号を外部の広域ネット上のプロトコルに復調して送り出す。
【0025】
後述するように、クラスタノード装置20から送信される光信号は、送信元のノード装置16によって異なる波長、すなわち、CWDM伝送規格に基づく一つのグリッド波長にそれぞれ対応する波長を有する。したがって、受光装置12dはノード装置16に対応して装備する必要がある。また、CMTS装置については上述する様に個々のサービスにそれぞれ対応して装備して一セットとした上で、このセットをノード装置の数に対応させて備える。あるいは、図2に示す様にCMTS装置は一の出力(下り系統)と複数の入力(上り系統)端子を備えるのが通例である。各ノード装置の数に対応させるのではなく、一のCMTS装置セットで複数のノード装置に対応させることもできる。いずれの場合であってもCMTSは、このように上り通信信号の送信元のノード装置16を特定することができるので、上り通信信号が利用するタイムスロットから、その上り通信信号が当該ノード装置16の下流のどのONUから送信されたものかを特定することが可能である。
【0026】
また、CMTS 12a、12aからの下り通信信号は、それぞれ分配器12m,12mによりノード装置に対応する数だけ分配され、その後、図2の例では二つのCMTS装置の出力が合算器12o,12oで合算され、その出力が光送信器12b,12bに送信される。光送信器12b,12bは、E/O変換により、受信した下り通信信号を光信号に変換する。当該光信号は、合波器12g及び分配器12fを介して、光ファイバ32a及び32bに入力され、当該光ファイバ32a及び32bを介してクラスタノード装置20に送信される。
【0027】
センター局12に対してクラスタノード装置20を経由せず直接接続されたノード装置16からの光信号は、光ファイバ22aを介して、光受信器12dによって受信される。なお、センター局12とノード装置16が直接接続される場合には、現用系統と予備系統の二つの系統を備える必要性は薄れる。一つのクラスタノード装置20が関与する加入者数と、一つのノード装置が関与する加入者数の絶対数が、前者がはるかに多い所以である。光受信器12dは、受信した光信号をO/E変換することにより、上り通信信号を生成する。現用/予備系統の区別が無いので、この光受信器12dは、両者の切替スイッチ(SW)を有していない。この上り通信信号は、分配器12nで分配された後、それぞれのCMTS 12a、12aに入力される。CMTS 12a、12aからの下り通信信号は、合算器12oで合算された後、光送信器12bに入力される。光送信器12bは、E/O変換により、受信した下り通信信号を光信号に変換する。当該光信号は、合波器12hを介して、光ファイバ22bに入力され、当該光ファイバ22bを介してノード装置16に送信される。
【0028】
また、センター局12は、70〜770MHzの周波数帯の映像信号(BC:Broadcast)、12GHz帯のBS及びCS信号を受信し、BS及びCS信号をダウンコンバートして、1GHz〜2.6GHzの周波数帯のBS−IF及びCS−IF信号に変換する機器を有している。映像系光送信器12c、12cは、上記映像信号、並びに、BS−IF及びCS−IF信号をE/O変換することにより、光信号を生成する。光送信器12c、12cによって生成された光信号は、それぞれ光増幅器12j1、12j2により増幅された後、分配器12k、12kにより2系統に分配され、各分配された一方の光信号が合波器12hを介して、光ファイバ22bに入力され、当該光ファイバ22bを介して、ノード装置16に送信される。また、分配された他方の信号は、合波器12g、及び、分配器12fを介して、光ファイバ32a及び32bに入力され、当該光ファイバ32a及び32bを介してクラスタノード装置20に送信される。
【0029】
再び図1を参照する。本システム10では、一つのノード装置16から延びる一つの光ファイバ26に、16戸の加入者宅14、即ち、16個のONU 18が接続されているものとする。また、一つのノード装置16からは、16本の光ファイバ26が下流側に延びているものとする。したがって、一つのノード装置16に対して、本システム10は、256の加入者を参加させることができる。これら、256の加入者の通信は、異なるタイムスロットを利用する時分割により区別される。なお、ノード装置16から延びる光ファイバ26の数及び一つの光ファイバ26に接続するONU 18の数は、通信における時分割数に応じて適宜設定し得る。
【0030】
本システム10では、BS−IF及びCS−IF信号、映像信号、並びに、下り通信信号がセンター局12から光信号として加入者宅14へ送信され、また、上り通信信号が加入者宅14から、光信号としてセンター局12側へ送信される。ここで、BS−IF及びCS−IF信号、映像信号、下り通信信号、並びに、上り通信信号のそれぞれのための光信号には、異なる波長が割り当てられている。後述するように、各加入者宅14では、ONU18が、BS−IF及びCS−IF信号と、映像信号用の光信号、並びに下り通信信号用の光信号とを、波長分離フィルタにより分離する。映像信号と下り通信信号は同一の端子から出力され、それぞれ映像系信号は、セットトップボックス14cを介して、加入者宅14内のテレビ受像器といった機器14dが接続され、一方、下り通信信号はケーブルモデム14aを介してパーソナルコンピュータといった機器14bに接続される。
【0031】
以下、システム10で利用される映像系信号及び通信信号の周波数帯、及び、光信号の波長について説明する。図3は、一実施形態の光CATVシステムで利用される映像系信号及び通信信号の周波数帯を示す図である。図4は、一実施形態の光CATVシステムで利用される光信号の波長を示す図である。
【0032】
図3に示すように、システム10では、BS−IF及びCS−IF信号は、1GHz〜2.6GHzの周波数帯のチャンネルを利用する。映像信号(BC:Broad Cast)は、映像信号周波数に相当する70〜770MHzの周波数帯のチャンネルを利用する。下り通信信号(NC:Narrow Cast)は、70〜770MHzの周波数帯の空きチャンネルを利用する。また、上り通信信号は、10〜55MHzの周波数帯のチャンネルを利用する。なお、70〜770MHzの周波数帯における空きチャネルを複数束ねて利用することにより、下り通信信号の等価的な伝送速度を向上させてもよい。
【0033】
図4に示すように、本システム10では、上り通信信号用の光信号として、CWDM規格の波長の光信号が利用される。具体的には、1.29μm〜1.61μmの範囲において20nmおきに1.55μm帯の波長を除く16波長の光信号が、上り通信信号用に利用される。また、本システム10では、下り信号用の光信号として、DWDM規格の波長の光信号が利用される。具体的には、1555.75nmの波長の光信号が、BS−IF及びCS−IF信号用に利用される。1.55898μmの波長の光信号が、映像信号(BC)用に利用される。また、1.55736μmの波長の光信号が、下り通信信号(NC)用に利用される。
【0034】
以下、クラスタノード装置20、ノード装置16、ONU 18について、詳細に説明する。図5は、クラスタノード装置20の構成を示す図である。クラスタノード装置20には、その下流側に上述したCWDM波長に対応するノード装置16を接続することができる。図1に示す本実施形態では、クラスタノード装置20に、四つのノード装置16が接続している。上述したように、本実施形態では、各ノード装置16に256の加入者宅が接続し得るので、本システム10では、例えば、八つのノード装置16がクラスタノード装置20に接続している場合には、最大2048軒の加入者を、クラスタノード装置20の下流に含めることができる。
【0035】
図5に示すように、クラスタノード装置20は、下り系の要素として、光増幅器20a及び20b、光スイッチ20c、及び、分岐カプラ20dを有している。光増幅器20a及び20bは、例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)といったファイバアンプである。光ファイバ32a及び32bを介してセンター局12から送信される下り光信号は、伝送距離に応じて、光増幅器20a及び20bによって増幅され、光スイッチ20cに入力される。光増幅器20a及び20bからの下り光信号は、光スイッチ20cで切り替えられた後、分岐カプラ20dを介して、ノード装置16のそれぞれに接続された光ファイバ36bに出力される。
【0036】
また、クラスタノード装置20は、上り系の要素として、光合波フィルタ20e、及び、光カプラ20fを有している。クラスタノード装置20に接続されたノード装置16からの上り通信信号用の光信号は、光ファイバ36aを介して、光合波フィルタ20eに入力される。光ファイバ36aを伝播する光は、それぞれがCWDM規格に準拠する波長を有しており、光合波フィルタ20eは、これら複数の互いに異なる波長の光信号を多重化して、多重化した光信号を光カプラ20fに送信する。光カプラ20fは、受信した光信号を、光ファイバ34a及び34bに、同時に送信する。この構成により、下り系では現用/予備の2系統の光ファイバ32a、32bに対応し、上り系においても現用/予備それぞれの光ファイバ34a、34bに対応して、信頼性の高いシステムが構成される。
【0037】
本システム10によれば、従来のCATVシステムと同様の周波数帯を用いた映像系信号及び通信信号が光信号として送受されるので、クラスタノード装置20においては、電気的設備を備える必要がない。したがって、クラスタノード装置20を光学部品のみによって構成することが可能である。よって、クラスタノード装置20は、非常に簡易な構成を採用することができる。
【0038】
図6は、一実施形態のFTTHノード装置の構成を示す図である。図6に示すように、ノード装置16は、下り系の要素として、光増幅器16c、及び、光カプラ16dを有している。上流からノード装置16に送信される光信号、即ち、映像系信号及び下り通信信号を含む光信号は、光増幅器16cによって増幅された後、光カプラ16dに入力される。光増幅器16cは、例えば、EDFAといったファイバアンプである。本実施形態においては、光カプラ16dが、光信号を1:16に分岐する。分岐された光信号はそれぞれ、光合波フィルタ16eに入力される。本実施形態では、16個の光合波フィルタ16eが設けられている。光合波フィルタ16eの各々は、上流からの下り光信号、即ち、1.55μm波長帯の光信号を、その光合波フィルタ16eに接続されている光ファイバ26に出力する。一方、光合波フィルタ16eの各々は、対応の光ファイバ26を介して送信される上り通信信号を、以下で説明するノード装置16の上り系の要素へと出力する。
【0039】
ノード装置16は、また、上り系の要素として、4重O/E変換器16f、合流器16g、及び、二つの光送信器16hを有している。16個の光合波フィルタ16eからの上り光信号は、波長1.55μm帯を除く波長1.29μm〜1.61μmの帯域を有し、それぞれ四つの系統ごとに、4重O/E変換器16fに入力される。4重O/E変換器16fは、入力された四つの光信号をO/E変換することにより四つの電気信号とし、これら電気信号を多重化して出力する。
【0040】
合流器16gは、四つの4重O/E変換器16fからの電気信号を多重化した後、二つに分岐し、二つの光送信器16hに出力する。光送信器16hはそれぞれ、入力された電気信号をE/O変換することにより、CWDM規格の波長の光信号を生成する。光送信器16hはそれぞれ、生成した光信号を、上流へと出力する。具体的に、光送信器16hによって生成された光信号は、ノード装置16a〜16aの場合には、光ファイバ22aを介して、センター局12へと送信される。一方、FTTHノード装置16b〜16bの場合には、光送信器16hによって生成された光信号は、二つの光ファイバ36aを介して、クラスタノード装置20へと送信される。
【0041】
以下、4重O/E変換器及び合流器について詳細に説明する。図7は、一実施形態の4重O/E変換器の構成を示す図である。図7に示すように、4重O/E変換器16fは、四つのフォトダイオード42、アンプ44、多重化器46、可変減衰器48、及び、主アンプ50を有している。四つのフォトダイオード42は、それらフォトダイオード42が接続されている光合波フィルタ16eからの光信号を受け、当該光信号をO/E変換することにより、電気信号を生成する。フォトダイオード42によって生成された電気信号は、対応のアンプ44によって増幅された後、多重化器46によって多重化される。多重化器46からの電気信号は、可変減衰器48で可変減衰されて、主アンプ50にて増幅された後に、上流へと出力される。主アンプ50からの信号の一部は、端子52に供給されるモニタ信号となる。
【0042】
また、図7に示すように、4重O/E変換器16fは、四つのスイッチ54、及び、コントローラ56を更に備え得る。本システム10では、下りにTDM(Time Division Multiplex)、上りにTDMA(TimeDivision Multiple Access)の通信方式が採用されている。即ち、一つのノード装置16に接続されているONU 18は、異なるタイムスロットでデータを上流へ送信する。したがって、フォトダイオード42及びアンプ44には、利用されない時間が存在する。コントローラ56は、フォトダイオード42及びアンプ44のそれぞれが利用されない時間、それらフォトダイオード42及びアンプ44と電源電位Vccとを接続するスイッチを開放することにより、フォトダイオード42及びアンプ44を停止させる。これにより、利用されないフォトダイオード42及びアンプ44等で発生するノイズによる影響が低減される。上記例では、フォトダイオード42およびアンプ44の双方の電源をオフする構成を説明したが、いずれか一方への供給電源をオフすることでも同様の効果を得ることができる。あるいは、上記方法に代え、アンプ44と多重化器46との間に半導体スイッチ等の切断/接続切替手段を設けておき、フォトダイオード42及びアンプ44のそれぞれが利用されない時間、これら切替手段を切断状態にすることにより、多重化器46の出力に現れる雑音を低減することができる。この場合、フォトダイオード42及びアンプ44のそれぞれが利用されるようになった際には、当該切替手段を接続状態に設定することで、上り通信信号は正常に伝送される。
【0043】
図8は、合流器の構成例を示す図である。図8の(a)には、一例の合流器の構成が示されており、図8の(b)には、別の例の合流器の構成が示されている。図8の(a)に示す合流器16gでは、二つの結合器58のそれぞれによって、対応の二つの4重O/E変換器16fからの電気信号が多重化され、出力される。そして、結合器60によって、二つの結合器58からの電気信号が、モデム16mからの信号と共に、多重化されて、分岐素子62へ出力される。分岐素子62は、入力される電気信号を、二分岐して出力する。
【0044】
図8の(b)に示す合流器16gでは、二つの結合器58のそれぞれによって、対応の二つの4重O/E変換器16fからの電気信号が多重化され、出力される。二つの結合器58のうち一方の結合器からの電気信号は、モデム16mからの信号と多重化されて出力される。二つの結合器58のうち他方の結合器からの電気信号は、そのまま出力される。
【0045】
図8の(a)に示す合流器16gによって二分岐されて出力される電気信号は、同じものである。したがって、ノード装置16に接続されるONU 18の数に応じた時分割で通信が行われるが、ノード装置16からの出力が冗長となるので、信頼性が向上される。
【0046】
一方、図8の(b)に示す合流器16gによって出力される二つの電気信号は、異なるONU 18からの上り通信信号に対応するものである。したがって、図8の(b)に示す合流器16gを採用する場合よりも、時分割数を半減することが可能であり、上り通信の帯域幅を等価的に大きくすることが可能である。
【0047】
再び図1及び図6を参照する。ノード装置16のうちセンター局12へ直接接続されているノード装置16は、上り通信信号用の光信号として、上述したCWDM規格の波長のうち任意の波長の光信号を利用することができる。一方、クラスタノード装置20に接続されているノード装置16は、上り通信信号用の光信号として、上述したCWDM規格の波長のうち互いに異なる波長の光信号を利用する。これにより、センター局12では、上り通信信号が、一つのクラスタノード装置20に接続されているどのノード装置16の下流からのものかを識別することができる。したがって、上り通信信号の時分割数を、一つのノード装置16の下流に存在するONU 18の数とすることが可能である。
【0048】
また、図6に示すように、ノード装置16は、フォトダイオード16k、モデム16m、及び、コントローラ16nを更に備え得る。フォトダイオード16kは、光増幅器16cから分岐された下り通信光信号をO/E変換することにより、電気信号を出力する。モデム16mは、電気信号の一部、即ち、センター局12からの制御信号用に予め割り当てられたチャンネルの下り通信信号を復調する。コントローラ16nは、復調した信号に基づいて、ノード装置16の種々の情報を収集し、収集した情報を、モデム16mを介して上り通信信号の一つとしてセンター局へ送信する。当該情報として、例えば、光送信器16hのバイアス電流値、光強度、及び/又は温度といった情報を送信することができる。あるいは、コントローラ16nは、当該ノード装置16内に搭載されている光増幅器16cの増幅度調整、光送信器16hの光出力を、センター局12から送信される制御信号に基づいて制御する。この様に、ノード装置16はセンター局12からリモート制御することができる。
【0049】
従来のシステム、特にHFCシステムにおいても、送信経路途中に挿入される中間アンプをセンター局からリモート制御することは可能であった。が、その場合、中間アンプに搭載される受信器は専用化されており、かつ、中間アンプは送信経路内で直列に接続されているため、センター局が特定の中間アンプをリモート制御する際には、いわゆる、ポーリングを用いて制御対象の中間アンプを特定することが必要であった。これに対し、図6に示すノード装置16内に当該ノード装置の監視/制御用に搭載されているのは、加入者宅に設置されるのと同じ構成のモデム装置16nでよく、さらに、ノード装置16はセンター局に対して一対一に対応しているため、上記ポーリングにより個々のノード装置を特定する必要が無い、等の利点を有している。
【0050】
以下、ONU 18について詳細に説明する。図9は、一実施形態の光ネットワークユニットの構成を示す図である。図9に示すように、ONU 18は、合分波フィルタ66、光フィルタ68、光受信器70、視聴制御部72、光受信器74、利得可変アンプ75、アンプ76、方向性結合器78、フィルタ80、アンプ82、光送信器84、光フィルタ86、制御モデム102、並びにコントローラ104を有している。
【0051】
合分波フィルタ66は、上り信号と下り信号とを分離する。具体的には、光フィルタ66は、下り信号に対しては1.55μm帯の波長の光信号を通過させるバンドパス特性を有し、上り信号に対しては同帯域を遮断するバンドノッチフィルタとして機能する。したがって、合分波フィルタ66は、光ファイバ30からの下り映像系信号及び下り通信信号を光フィルタ68へと出力し、光フィルタ86からの光信号を光ファイバ30へと出力する。
【0052】
光フィルタ68は、帯域フィルタであり、波長1.55575μmの光信号と、波長1.555898μm及び1.555736μmの光信号とを分離する。図3及び図4を参照すると、波長1.55575μmの光信号はBS−IF信号およびCS−IF信号を含み、波長1.555736μmの光信号は下り通信用光信号を含み、波長1.555898μmの光信号は映像信号を含む。光フィルタ68は、波長1.55575μmの光信号を、光受信器70へと出力する。一方、光フィルタ68は、波長1.555898μmの光信号及び1.555736μmの光信号を光受信器74へと出力する。
【0053】
光受信器70は、波長1.55575μmの光信号をO/E変換することにより、BS−IF及びCS−IF信号を生成する。光受信器70からのBS−IF及びCS−IF信号は、視聴制御部72を介して端子T1に出力される。この端子T1からの出力を、テレビ受像器のBSアンテナ端子に接続することで衛星放送(アナログ、デジタルの双方)をそのまま受像することができる。なお、このBS−IF/CS−IF信号の系統には、契約外の視聴を制御するための視聴制御装置を介在させる。
【0054】
光受信器74は、波長1.555898μmの光信号及び1.555736μmの光信号をO/E変換することにより、70MHz〜770MHzの映像信号、及び、下り通信信号を出力する。これら映像信号及び下り通信信号は、利得可変アンプ75でその出力レベルが適正化され、アンプ76を介して、方向性結合器78に出力される。したがって、入力光信号光強度、特に波長1.555898μmと1.555736μmの光信号、が伝送距離、あるいは、ノード装置16とONU 18との間での光結合効率に起因して一定しない場合であっても、端子T2から出力される映像信号、下り通信信号の強度はほぼ一定に保たれる。
【0055】
方向性結合器78は、映像信号及び下り通信信号、即ち、70MHz以上の周波数帯の信号を端子T2へと出力する。また、方向性結合器78は、端子T2からの上り通信信号、即ち、55MHz以下の周波数帯の信号を、フィルタ80へと出力する。この端子T2には、双方向性機能を有するテレビ受像器、ケーブルモデム、VoIP対応の電話機器、等が想定される。
【0056】
端子T2からの上り通信信号は、上述したように、10MHz〜55MHzの周波数帯の信号を通過させるローパスフィルタ80及びアンプ82を介して、光送信器84に出力される。光送信器84は、上り通信信号をE/O変換することにより、上述したようにCWDM規格における所定の波長の光信号を生成する。光送信器84によって生成された光信号は、CWDMバンドパスフィルタ86及び合分波フィルタ66を介して、光ファイバ30へと出力される。なお、一つの光ファイバ26に接続する複数のONU 18は、CWDM規格の波長のうち1.55μm帯の波長を除く波長であって互いに異なる波長の光信号を上り通信信号用に用いることが可能である。モデム102は、ノード装置16に搭載されているモデム16mと同様の機能を有する。すなわち、センター局から下り通信信号の一部を用いて制御信号が送信され、コントローラ104はこの制御信号をデコードして、ONU 18に搭載されている部品の状態、例えば、受信光強度、光送信器84内に搭載されているレーザ等の部品の経時変化度をモニターして、これら情報をセンター局に伝える。あるいは、センター局から直接にレーザの駆動条件を更新することもできる。
【0057】
図9に示すように、ONU 18は、コントローラ90を更に備えることができる。ONU 18は、予め定められたタイムスロットを利用して上り通信信号を送信する。即ち、ONU 18では、所定のタイムスロット以外では、光送信器84のレーザといった発光素子を利用する必要がない。上記したコントローラ104の指令に基づき、電源Vccと光送信器84との間に設けられたコントローラ90を、ONU 18に割り当てられたタイムスロット以外では、開放状態とするように制御する。これにより、ONU 18のタイムスロット以外の時間に光送信器84が発する光がノイズとなることを防止することができる。あるいは、コントローラ90は、図9に示す様に増幅器82の出力を常時監視し、上り通信信号の有無を検知する。そして、上り通信信号が無い状態では自動的に光送信器84の電源Vccを断とすることで、光送信器84が発する光がノイズとなることを低減することができる。この場合、光送信器84の全体の電源を断とすることでも、送信器84内に搭載されているレーザの光出力レベルを低減させることでも同様の効果を得ることができる。
【0058】
以上の様に、本CATVシステムにおいては、各加入者宅のONU 18から発信される上り通信用光信号について、異なる波長を用いて通信を行う構成を採用している。既に説明した様に、ノード装置16には最多256加入者を含めることができ、各加入者に上り通信は例えば1/256に割当られた時間スロットを用いて実施されるため、上りの光通信について加入者を信号波長で区別する必要性は本来ならば希薄である。しかしながら、全ての加入者が同じ波長を用いて上り通信を行う場合には、各加入者宅ONU 18の光送信器84に起因する光雑音が大きくなり正常な上り通信を阻害してしまう。光CATVシステムにおいては、インターネット、IP電話等の異なるサービスが存在するため、それぞれのサービスのいて固有の時分割スロット信号が存在する。そのため複数のONUから周波数は異なるものの同時に上り通信信号が送信される場合がある。すなわち同じ波長の光信号が同時に送信される場合があり、その場合、光信号は衝突し、光雑音が大きくなってしまう問題がある。本CATVシステムにおいては、各加入者を16軒ごとにまとめこれを一群とし、それぞれの加入者が異なる波長で上り通信を行うことで、ノード装置16の受信端に現れる雑音を低減することに加え、さらに、各加入者宅のONU 18に、上り通信信号が「無し」の状態ではその発光を停止する機能を付加することにより、ノード装置受信端に現れる雑音をさらに低減させている。
【0059】
以下、別の実施形態に係る光CATVシステムについて説明する。図10は、別の実施形態の光CATVシステムで利用される映像系信号及び通信信号の周波数帯を示す図である。図10に示すように、別の実施形態では、下り通信信号の周波数帯の上限周波数を、770MHzより大きい周波数とすることができる。また、上り通信信号の周波数帯の上限周波数を55MHzより大きい周波数とすることができる。本例では、下り通信信号は、70MHzから870MHzの周波数帯のチャンネルで送信される。また、上り通信信号は、10〜90MHzの周波数帯のチャンネルで送信される。
【0060】
本実施形態では、上述したONU 18とは異なるONUが利用される。図11は、別の実施形態の光ネットワークユニットの構成を示す図である。図11に示すONU 18Aは、ONU 18と同様の要素に加えて、アンプ94、フィルタ96、方向性結合器98、及びアンプ100を更に備えている。
【0061】
ONU 18Aでは、光受信器74によって生成された映像信号、及び、下り通信信号は、二分岐され、一方のパスでは、アンプ76に出力される。アンプ76を含むパスを介して端子T2に出力される信号は、従来のCATVシステムと同様に、周波数帯70〜770MHzのチャンネルを利用する映像信号及び下り通信信号である。
【0062】
光受信器74の後の二つのパスのうち他方のパスでは、信号が、アンプ94及びハイパスフィルタ96を介して、方向性結合器98に出力される。ハイパスフィルタ96は、70MHzより大きい周波数の下限周波数から770MHzより大きい上限周波数の周波数帯の信号を通過させる。本例では、ハイパスフィルタ96は、120MHz〜870MHzの周波数帯の信号を通過させる。このハイパスフィルタ96を経由した信号は、端子T3に出力される。
【0063】
ONU 18の外部に従来のモデムより高速伝送を可能にするモデムを接続すると、下り帯域として120〜870MHz、特に770MHz〜870MHzの拡張帯域に対応し、また、上り帯域として10〜90MHzに対応するシステムを構成することができる。図11はその時のONU 18Aの構成を示す図である。具体的には、外部高速モデムは、120〜870MHz帯の下り通信信号を復調することができ、10〜90MHz帯の上り通信信号を変調することができる。これにより、従来特に不足が顕著になっている上り通信信号の帯域を拡張することができる。
【0064】
外部モデムは端子T3に接続されている。この端子T3には、1000Base−Tケーブルを接続することができる。また、120〜870MHzの周波数帯のうち、120〜770MHz帯は、従来の帯域と重複しているので、端子T3に従来と同様の機器を接続することも可能である。
【0065】
外部モデム102から端子T3に供給される上り通信信号(10〜90MHz帯)は、方向性結合器98及びアンプ100を介して、光送信器84に出力される。光送信器84に出力された上り通信信号は、当該光送信器84によって、ONU 18の場合と同様に、O/E変換される。これにより、CWDM規格に準ずる波長の光信号を用いて、上り通信信号が送信される。
【0066】
ONU 18Aでは、端子T3に至る経路が、従来と同じ周波数帯(70〜770MHz)の下り信号から、完全に切り離されている。上り信号に対応する光信号として、下り信号の光信号の波長とは完全に異なる波長の光信号が用いられている。これにより、ONU 18Aによれば、従来は下り信号と重複することで使用することのできなかった周波数帯の信号を、上り通信信号として利用することが可能となる。例えば、下り通信信号の周波数帯として約300MHz以上の周波数帯を利用することを定めておけば、モデム102を利用する上り通信信号用の周波数帯を250MHzまで増加させることも可能である。
【0067】
外部高速モデムをONU内に内蔵させることも可能である。図12は高速モデム102aを内蔵したONU 18Bの構成を示している。方向性結合器98の出力は直接端子T3とは接続されず高速モデム102aを経由して端子T3と接続される。さらにモデム102aにはコントローラ104が接続されることにより、この高速モデム102aを図9、11に示す監視/制御用モデム102の機能を持たせることができる。すなわち、下り通信信号に含まれる制御信号をこの高速モデム102aで受け、コントローラ104で当該制御信号を解析することにより、ONU 18B内の各部品の監視/制御を行う。監視情報は、高速モデム102aを採用することで可能となった例えば90MHzまでの拡張上り帯域のチャネルのいずれかを用いて送信することも可能であるし、あるいは、従来の55MHzまでの帯域で送信することも可能である。さらに、制御信号も、770〜870MHzの拡張帯域で受信することも可能となる。
【0068】
図13は別の形態の係わるセンター局12Bの構成を示す図である。図2に示すセンター局12の構成においては、映像信号(BC)とBS−IF/CS−IF信号を別の波長を用いて送信した。BC信号(周波数70MHz〜770MHz)とBS−IF/CS−IF信号(周波数1.0〜2.6GHz)は周波数が異なるので衝突する可能性は低い。それ故、図13ではこれら二つの映像信号を一つの波長を用いて送信する構成を示している。すなわち、BC信号とBS−IF/CS−IF信号はカプラ12pにより予め電気的に合波され一つの光送信器12cにより送信される。光送信器12cの出力がそれぞれの系統、ノード装置系統16もしくはクラスタノード装置系統20、に分配されるのは図2の構成と同様である。この場合、この光送信器12cにより出力される映像系信号の波長は1.55575μmとすることができる。一方、通信下り系信号の波長は図2の構成と同様に1.55736μmを用いることができる。
【0069】
図14は、図13のセンター局構成に対応したONU 18Cの一構成を示す。光ファイバ30からの光信号は、合分波フィルタ66で分波され、そのうちの1.55μm帯の光信号が光受信器70で受信されO/E変換される。この光信号には周波数70MHz〜2.6GHzのBC信号、BS−IF/CS−IF信号の両方を含んでいる。そして光受信器70で変換された電気信号が二分されて一方は周波数1〜2.6GHzを通過させるハイパスフィルタ72を介して端子T1から、他方は周波数70Mz〜770MHzを通過させるローパスフィルタ72aを介して図9のONU 18と同様な構成を経て端子T2から出力される。端子T1に繋がる系統に契約外の視聴を制限する視聴制御部を設けるのは図9の例と同様である。図14においては、可変利得増幅器75をBC信号の経路にのみ挿入しているが、光受信器70の直後に設けて、可変利得増幅器75の出力を二分する構成を採用しても同様の効果を得ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明した。上述した実施形態の光CATVシステムでは、一つのノード装置16に接続するONU 18の個数に対して、センター局12に収容すべき光ファイバの本数を少なくすることが可能である。複数の加入者を一群として当該郡内の加入者宅からの上り通信信号の波長を区別することにより、上り通信信号に含まれる雑音を低減することが可能である。上記実施の形態では、この波長をCWDM規格のグリッド波長(20nmスパン)に対応させる構成を挙げて説明したが本システムはCWDMのグリッド波長に限定されることはない。例えばスパン幅を規格の1/2である10nmとすれば、一群に含まれる加入者数を倍増させることが可能となる。この場合、一台のノード装置に含まれる加入者が倍増して、各加入者に充当されるタイムスロットが最大半減することにもなるが、加入者の上り通信の需要との関係で適宜一群に含まれる加入者数を決定すればよい。
【0071】
また、CWDM規格の互いに異なる波長の光信号を上り通信信号用の光信号として用いることにより、複数のノード装置16とセンター局12との間にクラスタノード装置20を介在させることが可能である。これにより、クラスタノード装置20の下流のONU 18の個数に対して、センター局12に収容すべき光ファイバの本数を少なくすることが可能である。
【0072】
また、従来のCATVシステムと同様の周波数帯の信号を利用することができるので、モデムといった変復調装置のリプレースを抑制することが可能である。さらに、図10に示す周波数帯を利用し、図11に示すONUを利用することにより、より高速な通信を実現することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
10…光CATVシステム、12b、12b…通信系光送信器、12c、12c…映像系光送信器、12d、12d…通信系光受信器、12e,12e…CWDMフィルタ、12f、12k、12k…光分配器、12g、12h…光合波器、12j、12j…光アンプ、12n、12n、12m、12m…分配器、12o、12o…合算器、14…加入者宅、14a…ケーブルモデム、14c…セットトップボックス、16,16a〜16a,16b〜16b…FTTHノード装置、16c…光増幅器、16d…光カプラ、16e…光合波フィルタ、16f…4重O/E変換器、16g…合流器、16h…光送信器、16k…フォトダイオード、16m…モデム、16n…コントローラ、18…光ネットワークユニット(ONU)、20…クラスタノード装置、20a,20b…光増幅器、20c…光スイッチ、20d…分岐カプラ、20e…光合波フィルタ、20f…光カプラ、22a…上り信号用光ファイバ、22b…下り信号用光ファイバ、26…光ファイバ、28…光カプラ、30…光ファイバ、32a,32b…下り信号用光ファイバ、34a,34b…上り信号用光ファイバ、36a…上り信号用光ファイバ,36b…下り信号用光ファイバ、42…フォトダイオード、44…アンプ、46…多重化器、48…可変減衰器、50…主アンプ、54…スイッチ、56…コントローラ、58…結合器、60…結合器、62…分岐素子、66…合分波フィルタ、68…光フィルタ、70…光受信器、72…ハイパスフィルタ、72a…ローパスフィルタ、74…光受信器、75…可変利得アンプ、76…アンプ、78…方向性結合器、80…ローパスフィルタ、82…アンプ、84…光送信器、86…バンドパスフィルタ、90…コントローラ、94…アンプ、96…ハイパスフィルタ、98…方向性結合器、100…アンプ、102、102a…モデム、104…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CATV(Cable television)センター局と、
前記センター局に接続されたFTTH(Fiber To The Home)ノード装置と、
前記FTTHノード装置に接続された複数の加入者宅にそれぞれ備えられた複数の光ネットワークユニットと、
を備え、
前記センター局は、前記FTTHノード装置に、該センター局と前記FTTHノード装置とを接続する光ファイバを介して、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)規格の波長の光信号を用いて映像信号を送信し、前記波長とは異なるDWDM規格の波長の光信号を用いて下り通信信号を送信し、
前記FTTHノード装置は、前記センター局から互いに波長の異なる前記複数の光信号を受信し、これら複数の光信号を前記複数の光ネットワークユニットに中継し、
前記複数の光ネットワークユニットは、
前記FTTHノード装置から前記互いに波長の異なる複数の光信号を受信し、
前記複数の波長とは異なる波長の光信号を用いて、10〜55MHzの周波数帯を含み前記下り通信信号の周波数帯より低い周波数帯を利用する上り通信信号を、前記FTTHノード装置に送信する、
光CATVシステムにおいて、
前記複数の光ネットワークワークユニットは、それぞれ当該複数の光ネットワークユニットの一部を含む群に分割され、当該群内の光ネットワークユニットは互いに異なる波長でかつ、前記複数の光信号の有する波長とは異なる波長の上り通信信号を、前記FTTHノード装置に出力する、
ことを特徴とする光CATVシステム。
【請求項2】
前記FTTHノード装置からは、複数の光ファイバが下流側に延びており、
当該複数の光ファイバの一つに接続される前記複数の光ネットワークユニットが前記一群を構成する、
請求項1に記載の光CATVシステム。
【請求項3】
前記一群に含まれる光ネットワークユニットは、互いに異なるCWDM規格に準拠する一つのグリッド波長を有する上り通信信号を送信する、請求項1に記載の光CATVシステム。
【請求項4】
前記映像信号は、ブロードキャスト(BC)信号とBS−IF/CS−IF信号を含み、
当該BC信号とBS−IF/CS−IF信号とはそれぞれ異なるDWDM規格で割当てられた一の波長で送信される、
請求項1に記載のCATVシステム。
【請求項5】
前記映像信号は、ブロードキャスト(BC)信号とBS−IF/CS−IF信号を含み、
当該BC信号とBS−IF/CS−IF信号とは電気的に合成され前記DWDM規格で割当てられた一の波長で送信される、
請求項1に記載のCATVシステム。
【請求項6】
前記複数の光信号を前記FTTHノードに中継するFTTHクラスタノード装置を更に含み、
前記FTTHノード装置は、当該FTTHノード装置に接続される複数の光ネットワークユニットからの上り通信信号を光/電気変換し、その後、当該変換された電気信号を、CWDM規格のグリッド波長を有する多重化光信号に変換して前記FTTHクラスタノードに送信し、
前記FTTHクラスタノード装置は、前記FTTHノード装置が送信した上り多重化光信号を前記センター局に中継する、
請求項1に記載の光CATVシステム。
【請求項6】
前記FTTHノード装置は、前記下り通信信号に含まれる制御信号を受信するモデム装置と、当該制御信号を解析するコントローラを備え、
前記センター局は当該制御信号を介して当該FTTHノード装置をリモート制御する、
請求項1に記載の光CATVシステム。
【請求項7】
前記FTTHノード装置は、前記上り通信光信号を光/電気変換する光受信器と、当該光受信器の出力を増幅する増幅器を含み、
当該光受信器と当該増幅器の少なくとも一方は、前記上り通信光信号が消失した時にはその動作を停止する機能を有する、
請求項1に記載の光CATVシステム。
【請求項8】
前記光ネットワークユニットは、発光素子を含み、さらに、当該光ネットワークユニットからの通信上り信号が消失した状態を検知して、当該発光素子の動作を停止する機能を有する、請求項1に記載の光CATVシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−4095(P2011−4095A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144715(P2009−144715)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
2.イーサネット
【出願人】(500241273)株式会社ブロードネットマックス (10)
【Fターム(参考)】