説明

光OFCDM伝送システム

【課題】従来、多重数が増大するのにしたがって信号光強度が多重数の2乗にしたがって急激に減衰し、符号誤り率が増大していた。本発明は、多重数によらず一定の符号誤り率で受信できる光受信回路、光受信装置及び光伝送システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る光受信回路、光受信装置及び光伝送システムは、光信号を電気信号に変換した後に電気領域において積分動作及び識別動作の離散フーリエ変換を行うこととした。電気的積分手段が含む電気的分岐手段の分岐数Mは、光OFDM信号の多重数Nに関係しない。そのため、受信回路へ入力する信号光強度が一定の状態で多重数Nが増えても受信回路内での分岐数は変化しないためBERの劣化を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光OFDM受信回路、光OFDM受信装置、光OFDM伝送システム、光OFCDM受信回路、光OFCDM受信装置および光OFCDM伝送システムの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送システムにおける伝送容量を増大するために、1本の光ファイバに光周波数の異なる光信号を多重して伝送する光周波数分割多重伝送システムが実現されている。
【0003】
図1は、光周波数分割多重伝送システムの構成例である。送信回路11−1〜11−Nは、光周波数の異なる信号光を送信する。送信された各信号光は光周波数合波手段12で合波され、光ファイバ伝送路13に出力される。受信装置16では、伝送された多重信号光を、光周波数ごとに光周波数分波手段14で分波し、それぞれ受信回路15−1〜15−Nで受信する。
【0004】
光周波数分割多重伝送システムでは、一定の光周波数帯域において、より多くの信号を伝送するために、周波数利用効率の向上が求められる。ここで、周波数利用効率は、光信号帯域をB[Hz],隣接信号光間の光周波数間隔をΔf[Hz]とすると、B/Δfと表せる。
【0005】
従来の光周波数分割多重伝送システムにおいて、隣接信号光の影響を受けずに所望の信号光を受信するためには、光周波数分波器により隣接信号光を分離することができる程度に、隣接信号光間の光周波数間隔を広くする必要があった。このため、送信回路側で片側波帯をフィルタリングするなど信号の帯域制限をせずに両側波帯を伝送し、偏波多重等を行わない場合、B/Δf≒0.4であった。
【0006】
周波数利用効率を向上する方式として、図2のような光離散フーリエ変換回路を用いることにより、B/Δf≦1で多重した光周波数分割多重信号を、光周波数分波器を用いずに受信する光直交周波数分割多重伝送方式が、特許文献1に記載されている。ここで、特許文献1の図2は、多重数が4の場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−51810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図2の光離散フーリエ変換回路に入力された信号光は光分岐手段21および23で多重数Nに応じて分岐されるため、回路を拡大する場合、回路内での分岐損が増大する。そのため、光離散フーリエ変換回路へ入力する信号光強度を一定とした場合、多重数Nが増えるに伴って変換回路内で信号光強度が減衰し、受信する際に符号誤り率(BER:Bit−Error−Rate)が劣化するという課題があった。
【0009】
更には、多重数Nを拡大した際に一定の受信感度を得るためには、光離散フーリエ変換回路ヘ入力する信号光強度を大きくする必要があった。しかし、送信回路が出力する信号光強度には限界があるため、送受信装置間における信号光の許容損失が小さくなってしまう。よって、送受信装置間で一定の許容損失を得るためには、多重数Nが制限されるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、信号光の多重数の増加に伴うBERの劣化を防止できる光受信回路ならびに光受信装置を、及び信号光の多重数の増加に伴う受信光の許容損失の低下を防止できる光伝送システムを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、第1発明に係る光OFDM受信回路、第2発明に係る光OFDM受信装置及び第3発明に係る光OFDM伝送システムは、光信号を電気信号に変換した後に電気領域において積分動作及び識別動作の離散フーリエ変換を行うこととした。
【0012】
具体的には、本願第1発明は、光信号帯域B[Hz]の信号光をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号が入力される光OFDM受信回路であって、光OFDM信号を構成する各々の信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段と、前記ビット位相調整手段からの光OFDM信号を構成する信号光のうちの1つをベースバンド電気信号に変換し且つ他を周波数がΔfの整数倍である搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号に変換して出力するコヒーレント検波手段と、前記コヒーレント検波手段からの出力を1/Δf[s]にわたって積分して出力する電気的積分手段と、前記電気的積分手段からの出力を閾値判定する識別手段と、を備える光OFDM受信回路である。
【0013】
また、本願第1発明に係る光OFDM受信回路の前記電気的積分手段は、前記コヒーレント検波手段からの電気信号をM個(Mは前記光OFDM信号を構成する信号光の数と関連のない2以上の整数)に分岐する電気的分岐手段と、前記電気的分岐手段の各出力に対して、1/(M・Δf)[s]ずつ異なった遅延を加える電気的遅延手段と、前記電気的遅延手段からの各成分を合波して出力する電気的合波手段と、前記電気的合波手段からの出力のうちで周波数がΔf[Hz]以下の成分を透過して出力する低域濾波手段と、を有し、前記識別手段は、前記低域濾波手段からの出力に含まれるM個の成分のうちで最も遅延の少ない成分を基準として、(M−1)/(M・Δf)〜1/Δf[s]にあたる部分において閾値判定する。
【0014】
本願第1発明に係る光OFDM受信回路は、まず、入力される光信号を前記コヒーレント検出手段で電気信号に変換する。次いで電気的積分手段で前記電気信号について積分動作を行う。電気的積分手段が含む電気的分岐手段の分岐数Mは、光OFDM信号の多重数Nに関係しない。そのため、受信回路へ入力する信号光強度が一定の状態で多重数Nが増えても受信回路内での分岐数は変化しないためBERの劣化を防ぐことができる。
【0015】
従って、本願第1発明は、信号光の多重数の増加に伴うBERの劣化を防止できる光受信回路を提供することができる。更に、直接検波と比較して、受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、高感度受信化が可能であるという効果もある。
【0016】
本願第2発明は、光OFDM信号を複数に分岐して出力する光分岐手段と、本願第1発明に係る複数の光OFDM受信回路と、を備える光OFDM受信装置であって、前記光分岐手段は、外部からの光OFDM信号を分岐してそれぞれの前記光OFDM受信回路へ結合することを特徴とする光OFDM受信装置である。
【0017】
引用文献1に記載されている光離散フーリエ変換回路では分岐損失はNの2乗に比例することになる。一方、本願第2発明に係る光OFDM受信装置でされる光分岐は、前記光分岐手段での1回であり分岐損失はNに比例することになる。
【0018】
従って、本願第2発明は、従来の光離散フーリエ変換回路より分岐損失を大幅に低減でき、信号光の多重数の増加に伴うBERの劣化を防止できる光受信装置を提供することができる。更に、直接検波と比較して、受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、高感度受信化が可能であるという効果もある。
【0019】
本願第2発明は、光OFDM信号を構成する信号光の各光搬送波の光周波数に等しい固有の中心透過光周波数をそれぞれ持つ複数の出力ポートを有し、それぞれの前記出力ポートが、光OFDM信号を構成する信号光のうち、光搬送波の光周波数が前記固有の中心透過光周波数と一致する信号光を透過して出力する光周波数分波手段と、本願第1発明に係る複数の光OFDM受信回路と、を備える光OFDM受信装置であって、前記光周波数分波手段は、外部からの光OFDM信号を構成する信号光をそれぞれの前記出力ポートから出力して前記光OFDM受信回路へ結合することを特徴とする光OFDM受信装置でもよい。
【0020】
前記光OFDM受信装置は、光分岐手段の代替として光周波数分波手段を備えている。 従って、光周波数分波手段を備える光OFDM受信装置は、光分岐手段を使用した光OFDM受信装置で説明した効果に加えて、送受信装置間の許容損失をより拡大することができるという効果もある。
【0021】
本願第3発明は、光信号帯域がB[Hz]の前記信号光をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号を送信する光OFDM送信装置と、光ファイバ伝送路を介して前記光OFDM送信装置と接続される本願第2発明に係る光OFDM受信装置と、を備える光OFDM伝送システムである。
【0022】
本願第3発明に係る光OFDM伝送システムは、本願第2発明に係る光OFDM受信装置で光OFDM送信装置からの光OFDM信号を受信するため、特許文献1に記載される光伝送システムに比べ、多重数Nの増加による分岐損失の増加量が小さく、送受信装置間の許容損失を拡大することが可能となる。
【0023】
従って、本願第3発明は、信号光の多重数の増加に伴う受信光の許容損失の低下を防止できる光伝送システムを提供することができる。また、直接検波と比較して受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために許容損失を更に拡大することが可能であり、送受信装置間で一定の許容損失を得るために制限される多重数Nを更に拡大することが可能である。
【0024】
前記目的を達成するために、本願第4発明に係る光OFCDM受信回路、本願第5発明に係る光OFCDM受信装置及び第6発明に係る光OFCDM伝送システムは、光OFCDM信号を電気信号に変換した後に電気領域において積分動作及び識別動作の離散フーリエ変換を行うこととした。
【0025】
具体的には、本願第4発明は、符号要素(1)及び符号要素(0)からなる固有の符号が割り当てられた光OFCDM受信回路であって、隣接する光周波数成分の間隔がΔf[Hz]であり、符号の符号要素(1)又は符号要素(0)が割り当てられた多波長光の各成分のうち、符号要素(1)が割り当てられた前記成分がB/Δf≦1を満たす光信号帯域B[Hz]の信号光の光搬送波であり、且つすべての前記符号要素(1)に当たる成分が搬送する信号は同一である光OFCDM信号を前記符号要素(1)に当たる各成分が搬送する信号ごとに分離して電気信号へ変換して出力する光OFCDM信号分離装置と、前記光OFCDM信号分離装置からの各出力を前記固有の符号に応じて加減算する電気的加減算手段と、を備えることを特徴とする光OFCDM受信回路である。
【0026】
本願第4発明に係る光OFCDM受信回路の前記光OFCDM信号分離装置は、本願第2発明に係る光OFDM受信装置であってもよい。
【0027】
また、本願第4発明に係る光OFCDM受信回路の前記光OFCDM信号分離装置は、光OFCDM信号を構成する信号光の各光搬送波の光周波数に等しい固有の中心透過光周波数をそれぞれ持つ複数の出力ポートを有し、それぞれの前記出力ポートが、光OFCDM信号を構成する信号光のうち、光搬送波の光周波数が前記固有の中心透過光周波数と一致する信号光を透過して出力する光周波数分波手段と、前記光周波数分波手段の各出力ポートから出力される信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段と、前記ビット位相調整手段からの光OFCDM信号を直接検波する直接検波手段と、前記直接検波手段の出力を1/Δf[s]にわたって積分する電気的積分手段と、前記電気的積分手段の出力を閾値判定する識別手段と、を有し、外部から入力される光OFCDM信号を光周波数分波手段で分波し、光OFCDM信号を構成する信号光のビット位相を一致するように前記ビット位相調整手段で調整することを特徴とする光OFCDM受信回路でもよい。
【0028】
本願第4発明に係る光OFCDM受信回路は、まず、入力される光信号を前記光OFCDM信号分離装置で光信号の周波数成分に分波し、その成分で搬送される信号光を電気信号に変換している。光OFCDM信号は光OFDMの特殊形態であるため、本願第1発明で説明した効果と同様の効果を得られる。
【0029】
本願第5発明は、光OFCDM信号を複数に分岐して出力する光分岐手段と、本願第4発明に係る複数の光OFCDM受信回路と、を備える光OFCDM受信装置であって、前記光分岐手段は、外部からの光OFCDM信号を分岐してそれぞれの前記光OFCDM受信回路へ結合することを特徴とする光OFCDM受信装置である。
【0030】
本願第5発明に係る光OFCDM受信装置でされる光分岐は、前記光分岐手段での1回であり分岐損失はNに比例することになる。従って、本願第5発明は、本願第2発明で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0031】
本願第6発明は、割り当てられた固有の符号に対応する前記光OFCDM信号を送信する1個以上の光OFCDM送信回路及び前記光OFCDM送信回路が送信する前記光OFCDM信号を合波する前記光合波手段を有する光OFCDM送信装置と、光ファイバ伝送路を介して前記光OFCDM送信装置と接続される本願第5発明に係る光OFCDM受信装置と、を備える光OFCDM伝送システムであって、前記光OFCDM受信装置が有する前記光OFCDM受信回路は、前記光OFCDM受信回路に割り当てられた符号と同じ符号を割り当てられた前記光OFCDM送信回路が送信する前記光OFCDM信号のみを受信することを特徴とする光OFCDM伝送システムである。
【0032】
本願第6発明に係る光OFCDM伝送システムは、本願第5発明に係る光OFCDM受信装置で光OFCDM送信装置からの光OFCDM信号を受信する。本願第6発明に係る光OFCDM伝送システムは、特許文献1に記載される光伝送システムに比べ、多重数Nの増加による分岐損失の増加量が小さく、送受信装置間の許容損失を拡大することが可能となる。
【0033】
従って、本願第6発明は、本願第3発明で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光OFDM信号又は光OFCDM信号について、信号光の多重数の増加に伴うBERの劣化を防止できる光受信回路ならびに光受信装置を、及び信号光の多重数の増加に伴う受信光の許容損失の低下を防止できる光伝送システムを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の光周波数分割多重伝送システムの構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図2】従来の光離散フーリエ変換回路の構成を示したブロック図である。
【図3】第1の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信回路の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図4】第1の実施の形態で説明する、本発明に係る位相ダイバーシティを用いる光OFDM受信回路の構成を示したブロック図である。
【図5】本発明に係る光OFDM受信回路の電気的分岐手段から電気的合波手段までの間における透過周波数特性である。
【図6】本発明に係る光OFDM受信回路の電気的積分手段の出力を示したものである。横軸は時間を示している。
【図7】第2の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信回路のコヒーレント検波手段の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図8】第3の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM伝送システムの構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図9】第3の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図10】第3の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図11】第4の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM伝送システムの構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図12】本発明に係る光OFDM受信装置の光周波数分波手段の光透過特性を示したものである。
【図13】第4の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図14】第4の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図15】第4の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図16】第4の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図17】第4の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図18】第5の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図19】第6の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図20】第6の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFDM受信装置の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図21】従来の光CDM伝送システムの構成を示したブロック図である。
【図22】従来の光周波数領域における擬似バイポーラ符号化方式の概念図である。
【図23】第7の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM受信回路の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図24】第7の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM受信回路の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図25】第7の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM受信回路の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。本光OFCDM受信回路の光OFDM受信回路とは、(受光器44a−k−電気的加減算手段235a−電気的積分手段255a−2乗検波手段253a−識別手段254)の回路(kは1〜N)、(受光器44b−1−電気的加減算手段235b−電気的積分手段255b−2乗検波手段253b−識別手段254)の回路(kは1〜N)、の2N個の回路を意味する。
【図26】第8の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM受信回路の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図27】第8の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM受信回路の構成を示したブロック図である。各ブロック間の信号の周波数スペクトルも示している。
【図28】第9の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM伝送システムの構成を示したブロック図である。
【図29】(i)(ii)とも、第9の実施の形態で説明する、本発明に係る光OFCDM伝送システムの光OFCDM送信回路の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0037】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、光信号帯域B[Hz]の信号光をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号が入力される光OFDM受信回路であって、光OFDM信号を構成する各々の信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段と、前記ビット位相調整手段からの光OFDM信号を構成する信号光のうちの1つをベースバンド電気信号に変換し且つ他を周波数がΔfの整数倍である搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号に変換して出力するコヒーレント検波手段と、前記コヒーレント検波手段からの出力を1/Δf[s]にわたって積分して出力する電気的積分手段と、前記電気的積分手段からの出力を閾値判定する識別手段と、を備える光OFDM受信回路である。
【0038】
第1の実施形態における光直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)受信回路の構成図を図3に示す。受信回路には、光信号帯域B[Hz]の光信号をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号S(t)が入力される。図3は、B/Δf=1の場合である。光信号帯域がB[Hz]である信号光において、信号伝送速度は変調方式により異なる。例えば、2値ASK変調方式の場合の信号伝送速度はB[bit/s]であるが、多値変調により高速化が可能である。
【0039】
受信回路に入力された光OFDM信号S(t)は、光OFDM信号S(t)を構成する各信号光のビット位相が一致するようにビット位相調整手段31で調整され、コヒーレント検波手段32へ入力される。この時、コヒーレント検波手段32の入力端における光OFDM信号S(t)は、数1で表せる。
【0040】
【数1】

【0041】
ここで、fは光OFDM信号S(t)を構成する各信号光の光搬送波のうち、光周波数が最低であるものの光周波数、Nは光OFDM信号の多重数である。また、P、θ、a(t)は、それぞれ、光周波数が低い方からi番目である信号光の強度、光搬送波の初期位相、時刻tにおける信号値であり、a(t)は、シンボル時間T=1/B[s]の間で一定である。
【0042】
コヒーレント検波手段32では、光OFDM信号S(t)を局発光と混合して検波する。局発光の偏波状態は、光OFDM信号S(t)を構成する信号光のうち少なくとも所望の信号光と一致するように調整される。コヒーレント検波手段32内に局発光源を配置してもよいが、光OFDM受信回路に外部より供給される光を局発光としてもよい。局発光の光周波数fLOは、光OFDM信号S(t)を構成する各信号光の光搬送のうち所望の信号a(t)(k=1,2,・・・N)を搬送する光搬送波の光周波数とほぼ等しい。所望の信号を搬送する光搬送波と局発光との光周波数がほぼ等しいとは、光周波数差をα[Hz]とすると、αがΔfと比較して十分に小さいことを意味し、コヒーレント検波手段32では、ホモダイン検波を行うことができる。
【0043】
ホモダイン検波において、信号光と局発光の光周波数は、理想的には一致している必要がある。例えば、周波数差α[Hz]が、信号速度B[bit/s]と比較して十分に小さい場合として、α=6.8MHz(B=680[Mbit/s])、α=5MHz(B=5[Gbit/s])等でのホモダイン伝送実験が実施されている。
【0044】
この時、局発光の光周波散fLOは、数2で表せる。
【数2】

【0045】
α<<Δfであり、αを無視することとすると、局発光は数3のように表せる。
【数3】

【0046】
ここで、PLOは局発光の光強度、θLOは初期位相である。このとき、コヒーレント検波手段32の出力P(t)は数4のように表せる。
【0047】
【数4】

【0048】
つまり、光周波数が局発光とほぼ等しい光搬送波が搬送した所望の信号a(t)はベースバンド信号に変換される。一方、光周波数が局発光と異なる光搬送波が搬送した信号a(t)(i≠k)はΔfの整数倍の搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号に変換される。
【0049】
数4より、所望の信号a(t)を搬送する光搬送波と局発光の初期位相差θ−θLOが90°となる場合に、所望の信号の出力が0となる。よって、光OFDM信号S(t)を構成する各信号光の光搬送波のうち少なくとも所望の信号a(t)を搬送する光搬送波と局発光との位相同期、または、初期位相差θ−θLOに関わらずに一定の出力を得る位相ダイバーシティが必要となる。
【0050】
位相ダイバーシティを用いる光OFDM受信回路は、例えば、図4のような構成により実現される。ビット位相調整手段31からの光OFDM信号S(t)と局発光源41からの局発光を90°光ハイブリッド43に入力し、混合する。この時、局発光の偏波状態は、光OFDM信号S(t)を構成する信号光のうち少なくとも所望の信号光と一致するように偏波調整手段42で調整される。図4では、コヒーレント検波手段32内に配置された光源を局発光源41としたが、コヒーレント検波手段32内に光源を配置せずに、光OFDM受信回路に外部より供給される光を局発光としてもよい。90°光ハイブリッド43は、2つの出力ポートを備える。一方の出力ポートにおける所望の信号a(t)を搬送する光搬送波と局発光との初期位相差をφとすると、もう一方の出力ポートにおける初期位相差がφ+90°となる。ここで、2つの出力ポートにおける出力光強度は等しい。この出力を受光器44により検波した後に、電気的積分手段33による積分で得られるベースバンド信号a(t)・cosφおよびa(t)・cos(φ+90°)をそれぞれ2乗して、足し合わせることにより、初期位相差θ−θLOに関わらず一定の出力を得ることが可能である。
【0051】
前記電気的積分手段は、前記コヒーレント検波手段からの電気信号をM個(Mは前記光OFDM信号を構成する信号光の数と関連のない2以上の整数)に分岐する電気的分岐手段と、前記電気的分岐手段の各出力に対して、1/(M・Δf)[s]ずつ異なった遅延を加える電気的遅延手段と、前記電気的遅延手段からの各成分を合波して出力する電気的合波手段と、前記電気的合波手段からの出力のうちで周波数がΔf[Hz]以下の成分を透過して出力する低域濾波手段と、を有する。
【0052】
図3に示すように、コヒーレント検波手段32の出力P(t)は、電気的分岐手段35、(M−1)個の電気的遅延手段36、電気的合波手段37、低域濾波手段38により構成される電気的積分手段33に入力され、ベースバンド信号a(t)のみが取り出される。以下、積分動作について、説明する。
【0053】
(t)は、電気的分岐手段35によりM個に分岐され、それぞれ電気的遅延手段36で1/(M・ΔfS)[s]ずつ異なった遅延を加えられる。ここで、Mは、多重信号光の多重数Nによらない2以上の整数であり、電気的分岐手段35としては、1×Mデバイダや、1×2デバイダを縦列接続した構成がこれにあたる。また、電気的遅延手段36としては、位相シフタ等を可変遅延線として用いることができる。各分岐において遅延されたM個の信号は、M×1カプラや、2×1カプラを縦列接続して構成される電気的合波手段37により、合波される。
【0054】
電気的積分手段33における低域濾波手段38の前段まで、つまり、電気的分岐手段35から電気的合波手段37までの透過周波数特性は、Δf=10[GHz]、M=5とすると、図5のように、Δfの整数倍にあたる周波数は、M・Δfの整数倍にあたる50GHz、100GHz、・・・を除き、透過率が0となる。よって、電気的合波手段37の出力から、Δf以下の成分を透過する低域濾波手段38によりM・Δfの整数倍の高周波成分を除去することにより、コヒーレント検波手段32の出力P(t)から、Δfの整数倍の搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号を除去し、所望のベースバンド信号a(t)のみを取り出すことができる。
【0055】
電気的積分手段33より出力されるベースバンド信号a(t)の様子を、図6に示す。B/Δf=1、M=5とした。図6では、合波される5個の電気信号のうちで最も遅延の少ない信号を基準として4/(5・Δf)〜1/Δf[s]にあたる部分が、同一シンボルの和となっている。この部分を、識別手段34を用いて取り出す。
【0056】
前記識別手段34は、前記低域濾波手段からの出力に含まれるM個の成分のうちで最も遅延の少ない成分を基準として、(M−1)/(M・Δf)〜1/Δf[s]にあたる部分において閾値判定する。
【0057】
識別手段34の識別動作は、例えば、所望の信号a(t)のシンボルレートが、B’[Symbol/s]である場合には、電気的積分手段33から同一シンボルの和が出力される部分を閾値判定するようにタイミングを調整したB’[Hz]のクロックを識別器に与えることにより実現できる。
【0058】
第1の実施形態では、電気的積分器における電気的分岐手段の分岐数Mは、光OFDM信号の多重数Nに関係しないため、多重数Nが増えても受信回路内での分岐数は変化しない。よって、受信回路へ入力する信号光強度を一定とした場合、多重数Nが増えてもBERが劣化することがない。更に、直接検波と比較して、受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、高感度受信化が可能である。
【0059】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態における光OFDM受信回路におけるコヒーレント検波手段32において、ヘテロダイン同期検波を行う光OFDM受信回路である。コヒーレント検波手段32の構成例を図7に示す。局発光源71からの局発光の光周波数は、所望の信号a(t)を搬送する光搬送波の光周波数f[Hz]からfIF[Hz]だけ離れた光周波数に設定する。局発光の偏波状態は、光OFDM信号S(t)を構成する信号光のうち少なくとも所望の信号光と一致するように、偏波調整手段72で調整される。図7では、コヒーレント検波手段32内に配置された局発光源71の出力を局発光としたが、コヒーレント検波手段内に光源を配置せずに、光OFDM受信回路に外部より供給される光を局発光としてもよい。
【0060】
局発光の光周波数fLOを数5とすると、局発光は数6と表せる。ここに、PLOは局発光の光強度、θLOは初期位相である。
【数5】

【数6】

【0061】
このとき、受光器73の検波出力B(t)は数7のように表せる。
【数7】

【0062】
(t)を所望の信号a(t)を搬送する周波数fIF[Hz]である電気搬送波の初期位相θ−θLOと同期した周波数fIF[Hz]の高周波電気信号により同期検波する。つまり、高周波電気信号C(t)を数8とするとコヒーレント検波手段の出力P(t)は数9と表せ、第1の実施形態における光OFDM受信回路におけるコヒーレント検波手段32と同様に、所望の信号a(t)はベースバンド信号に変換され、それ以外の信号a(t)(i≠k)はΔfの整数倍の搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号に変換される。
【0063】
【数8】

【数9】

(k=1,2,・・・,N)
【0064】
その後、第1の実施形態と同様に、積分動作および識別動作を行うことにより、所望の信号a(t)のみを取り出すことができる。
【0065】
第2の実施形態では、電気的積分器における電気的分岐手段の分岐数Mは、光OFDM信号の多重数Nに関係しないため、多重数Nが増えても受信回路内での分岐数は変化しない。よって、受信回路へ入力する信号光強度を一定とした場合、多重数Nが増えてもBERが劣化することがない。更に、直接検波と比較して、受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、高感度受信化が可能である。
【0066】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、光信号帯域がB[Hz]の前記信号光をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号を送信する光OFDM送信装置と、光ファイバ伝送路を介して前記光OFDM送信装置と接続される本願第2発明に係る光OFDM受信装置と、を備える光OFDM伝送システムである。
【0067】
ここに、本願第2発明に係る光OFDM受信装置は、光OFDM信号を複数に分岐して出力する光分岐手段と、本願第1発明に係る複数の光OFDM受信回路と、を備える光OFDM受信装置であって、前記光分岐手段は、外部からの光OFDM信号を分岐してそれぞれの前記光OFDM受信回路へ結合することを特徴とする光OFDM受信装置である。
【0068】
第3の実施形態における光OFDM伝送システムは、図8のように、光信号帯域B[Hz]の光信号をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号S(t)を送信する光OFDM送信装置81が、光OFDM受信装置82と光ファイバ伝送路83により接続される構成である。光OFDM受信装置83は、少なくとも光分岐手段84と複数の第1の実施形態に記載の光OFDM受信回路85−k(kは1〜Nの自然数。)とにより構成される。図8では、B/Δf=1とした。なお、以下の説明において、「光OFDM受信回路85」と記載する場合、全ての光OFDM受信回路85−kを含むものとする。
【0069】
光OFDM受信装置82に入力された光OFDM信号S(t)は、光分岐手段84により、少なくとも光OFDM受信回路85の数に分岐され、各光OFDM受信回路85に入力される。光OFDM受信回路85は、コヒーレント検波手段32における局発光の光周波数を、所望の信号を搬送する光搬送波とほぼ等しくなるように設定することにより、光OFDM信号S(t)の中から所望の信号光を選択的に受信することが可能である。
【0070】
各光OFDM受信回路85は、入力される光OFDM信号を構成する各信号光のビット位相が、コヒーレント検波手段の入力端において一致するように調整するビット位相調整手段31を備えるが、光分岐手段84から各光OFDM受信回路までにおけるビット位相のずれを無視できる場合には、各光OFDM受信回路85からビット位相調整手段31を省き、図9の光OFDM受信装置92のように、光OFDM受信回路95−k(kは1〜Nの自然数。)間でビット位相調整手段91を共有することもできる。なお、以下の説明において、「光OFDM受信回路95」と記載する場合、全ての光OFDM受信回路95−kを含むものとする。
【0071】
図8では、光OFDM受信回路85内のコヒーレント検波手段32に配置された光源の出力を局発光としたが、コヒーレント検波手段32内に局発光源を配置せずに、図10の光OFDM受信装置102のように、各光OFDM受信回路85に外部より供給される光を局発光としてもよい。隣接成分間との光周波数間隔がΔf[Hz]であり、かつ、光周波数成分のうち光周波数が最低であるものの光周波数がf[Hz]である多波長光を、アレー導波路回折格子(AWG: arrayed waveguide grating)や誘電体多層膜フィルタなどにより、光周波数成分ごとに分離し、各光OFDM受信回路85に局発光として供給することが可能である。多波長光出力手段としては、出力光の光周波数がΔf[Hz]ずつ異なる単一モード・レーザを並べた構成、単一モード・レーザの出力をΔf[Hz]の高周波信号で強度変調または位相変調して多波長化する構成、繰り返し周波数がΔf[Hz]であるモード同期レーザ等が、これにあたる。
【0072】
この時、光分岐手段84により分岐された光OFDM信号と局発光の少なくとも一方の偏波を偏波調整手段109で調整することにより、光OFDM信号を構成する信号光のうち少なくとも各光OFDM受信回路85における所望の信号光と局発光の偏波状態が一致するように調整する。また、コヒーレント検波手段32においてホモダイン検波を行うため、光OFDM信号を構成する各信号光の光搬送波のうち少なくとも所望の信号a(t)を搬送する光搬送波と局発光との位相同期、または、位相ダイバーシティが必要となる。
【0073】
特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムでは、1×N光分岐手段に加え、N×N光合波手段内でもN分岐されるため、光離散フーリエ変換回路への入力信号光強度を一定とした場合、多重数Nが増えるに伴いNの2乗に比例して光信号の強度が減少する。一方、第3の実施形態においては、光分岐は1回であり、分岐損失はNに比例し、特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムと比較して、送受信装置間の許容損失を拡大することができる。また、直接検波と比較して受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、許容損失を更に拡大することが可能である。よって、特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムにおいて送受信装置間で一定の許容損失を得るために制限される多重数Nを、拡大することが可能である。
【0074】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、光信号帯域がB[Hz]の前記信号光をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号を送信する光OFDM送信装置と、光ファイバ伝送路を介して前記光OFDM送信装置と接続される本願第2発明に係る光OFDM受信装置と、を備える光OFDM伝送システムである。
【0075】
ここに、本願第2発明に係る光OFDM受信装置は、光OFDM信号を構成する信号光の各光搬送波の光周波数に等しい固有の中心透過光周波数をそれぞれ持つ複数の出力ポートを有し、それぞれの前記出力ポートが、光OFDM信号を構成する信号光のうち、光搬送波の光周波数が前記固有の中心透過光周波数と一致する信号光を透過して出力する光周波数分波手段と、本願第1発明に係る複数の光OFDM受信回路と、を備える光OFDM受信装置であって、前記光周波数分波手段は、外部からの光OFDM信号を構成する信号光をそれぞれの前記出力ポートから出力して前記光OFDM受信回路へ結合することを特徴とする光OFDM受信装置である。
【0076】
第4の実施形態における光OFDM伝送システムは、図11の光OFDM受信装置112のように、光信号帯域B[Hz]の光信号をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFDM信号S(t)を送信する光OFDM送信装置111が、光OFDM受信装置112と光ファイバ伝送路113により接続される構成である。光OFDM受信装置112は、少なくとも光周波数分波手段114と複数の第1の実施形態に記載の光OFDM受信回路85とにより構成される。図11では、B/Δf=1とした。
【0077】
光周波数分波手段114の各出力ポートの中心透過光周波数は、光OFDM信号S(t)を構成する各信号光の光搬送波の光周波数と等しい。また、出力ポートの中心透過光周波数と光周波数が等しい光搬送波が搬送する光信号帯域B[Hz]の信号光は、帯域制限することなく透過される。つまり、各出力ポートの透過帯域幅は、2B[Hz]以上であり、従来の光周波数多重伝送システムにおいて用いられる光周波数分波手段と比較して、透過帯域幅が広い。図12に、各出力ポート(#1〜#N)の透過特性を示す。図12では、各出力ポートの透過帯域幅を、2B[Hz]とした。
【0078】
光OFDM受信装置112に入力された光OFDM信号S(t)は、光周波数分波手段114の各出力ポートヘ出力される。光OFDM受信回路85は、コヒーレント検波手段32における局発光の光周波数を、所望の信号を搬送する光搬送波とほぼ等しくなるように設定することにより、光OFDM信号の中から所望の信号光を選択的に受信することが可能である。
【0079】
各光OFDM受信回路85は、入力される多重信号光を構成する各信号光のビット位相が、コヒーレント検波手段32の入力端において一致するように調整するビット位相調整手段31を備えるが、光周波数分波手段114から各光OFDM受信回路85までにおけるビット位相のずれを無視できる場合には、各光OFDM受信回路85からビット位相調整手段31を省き、図13の光OFDM受信装置132のように、光OFDM受信回路95間でビット位相調整手段91を共有することもできる。
【0080】
光OFDM受信回路におけるコヒーレント検波手段内に局発光源を配置せずに、図14の光OFDM受信装置142のように、各光OFDM受信回路85に外部より供給される光を局発光としてもよい。隣接成分間との光周波数間隔がΔf[Hz]であり、かつ、光周波数成分のうち光周波数が最低であるものの光周波数がf[Hz]である多波長光を、AWGや誘電体多層膜フィルタなどにより、光周波数成分ごとに分離し、各光OFDM受信回路85に局発光として供給することが可能である。
【0081】
この時、光周波数分波手段114より出力された信号光と局発光の少なくとも一方の偏波を偏波調整手段149で調整することにより、光OFDM信号を構成する信号光のうち少なくとも各光OFDM受信回路85における所望の信号光と局発光の偏波状態が一致するように調整する。また、コヒーレント検波手段32においてホモダイン検波を行うため、光OFDM信号を構成する各信号光の光搬送波のうち少なくとも所望の信号a(t)を搬送する光搬送波と局発光との位相同期、または、位相ダイバーシティが必要となる。
【0082】
また、多波長光を光周波数成分ごとに分離せず、図15の光OFDM受信装置152のように、他波長光出力手段157からの光を光分岐手段154により、少なくとも光OFDM受信回路85の数に分岐し、各光OFDM受信回路85に局発光として供給することも可能である。
【0083】
更に、図16の光OFDM受信装置162のように、光OFDM信号S(t)と多波長光を混合した後に、光周波数分波手段114により分波して、各光OFDM受信回路85に入力することも可能である。図16の構成において位相ダイバーシティを行う場合、各光OFDM受信回路85に90゜光ハイブリッドが必要となるが、図17の光OFDM受信装置172のような構成により、光OFDM受信回路175−k(kは1〜Nの自然数。)間で90゜光ハイブリッド178を共用することが可能である。なお、以下の説明において、「光OFDM受信回路175」と記載する場合、全ての光OFDM受信回路175−kを含むものとする。
【0084】
特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムでは、光OFDM信号の多重数Nが増えるに従って、光分岐手段における分岐損失が大きくなり、一定の受信感度を得るために許容される光OFDM送信装置と受信装置との間の損失が小さくなるという課題があった。一方、第4の実施形態においては、光分岐手段を用いないために、一定の送信装置・受信装置間の許容損失を得るために、多重数Nが制限されることがない。更に、直接検波と比較して受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、許容損失を拡大することが可能である。よって、特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムにおいて送受信装置間で一定の許容損失を得るために制限される多重数Nを、拡大することが可能である。
【0085】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第3の実施形態における図8の光OFDM伝送システムの光OFDM受信装置82が、少なくとも光分岐手段84と複数の第2の実施形態に記載の光OFDM受信回路85とにより構成された光OFDM伝送システムである。
【0086】
光OFDM受信装置82に入力された光OFDM信号は、光分岐手段84により、少なくとも光OFDM受信回路85の数に分岐され、各光OFDM受信回路85に入力される。光OFDM受信回路85は、コヒーレント検波手段32における局発光の光周波数を、受信する信号を搬送する光搬送波との光周波数差が所定の中間周波数fIF[Hz]となるように設定することにより、光OFDM信号の中から所望の信号光を選択的に受信することが可能である。
【0087】
各光OFDM受信回路85は、入力される光OFDM信号を構成する各信号光のビット位相が、コヒーレント検波手段32の入力端において一致するように調整するビット位相調整手段31を備えるが、光分岐手段84から各光OFDM受信回路85までにおけるビット位相のずれを無視できる場合には、各光OFDM受信回路85からビット位相調整手段31を省き、光OFDM受信回路間でビット位相調整手段を共有することもできる。
【0088】
また、図8の光OFDM伝送システムにおいて、光OFDM受信装置82ではなく図18の光OFDM受信装置102としてもよい。光OFDM受信装置102は、光OFDM受信回路85におけるコヒーレント検波手段32内に局発光源を配置せずに、各光OFDM受信回路85に外部より供給される光を局発光としている。この時、光分岐手段84により分岐された光OFDM信号と局発光の少なくとも一方の偏波を偏波調整手段109で調整することにより、光OFDM信号を構成する信号光のうち少なくとも各光OFDM受信回路85における所望の信号光と局発光の偏波状態が一致するように調整する。
【0089】
隣接成分間との光周波数間隔がΔf[Hz]であり、かつ、光周波数成分のうち光周波数が最低であるものの光周波数がf+fIF[Hz]である多波長光を、AWGや誘電体多層膜フィルタなどにより、光周波数成分ごとに分離し、各光OFDM受信回路85に局発光として供給することが可能である。
【0090】
特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムでは、1×N光分岐手段に加え、N×N光合波手段内でもN分岐されるため、光離散フーリエ変換回路への入力信号光強度を一定とした場合、多重数Nが増えるに伴いNの2乗に比例して信号光の強度が減少する。一方、第5の実施形態においては、光分岐は1回であり、分岐損失はNに比例し、特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムと比較して、送受信装置間の許容損失を拡大することができる。また、直接検波と比較して受信感度が高いコヒーレント検波を用いているために、許容損失を更に拡大することが可能である。よって、特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムにおいて送受信装置間で一定の許容損失を得るために制限される多重数Nを、拡大することが可能である。
【0091】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、第4の実施形態における図11の光OFDM伝送システムの光OFDM受信装置112が、少なくとも光周波数分波手段114と複数の第2の実施形態に記載の光OFDM受信回路85とにより構成された光OFDM伝送システムである。
【0092】
光OFDM受信装置112に入力された光OFDM信号は、光周波数分波手段114の各出力ポート(#1〜#N)ヘ出力される。光周波数分波手段114の各出力ポートの中心透過光周波数は、光OFDM信号を構成する各信号光の光搬送波の光周波数と等しい。また、出力ポートの中心透過光周波数と光周波数が等しい光搬送波が搬送する光信号帯域B[Hz]の信号光は、帯域制限することなく透過される。つまり、各出力ポートの透過帯域幅は、2B[Hz]以上である。光OFDM受信回路は、コヒーレント検波手段における局発光の光周波数を、所望の信号を搬送する光搬送波との光周波数差が所定の中間周波数fIF[Hz]となるように設定することにより、光OFDM信号の中から所望の信号光を選択的に受信することが可能である。
【0093】
各光OFDM受信回路85は、入力される光OFDM信号を構成する各信号光のビット位相が、コヒーレント検波手段32の入力端において一致するように調整するビット位相調整手段31を備えるが、光周波数分波手段114から各光OFDM受信回路85までにおけるビット位相のずれを無視できる場合には、各光OFDM受信回路85からビット位相調整手段31を省き、光OFDM受信回路85間でビット位相調整手段を共有することもできる。
【0094】
また、図11の光OFDM伝送システムにおいて、光OFDM受信装置112ではなく図19の光OFDM受信装置142としてもよい。光OFDM受信装置142は、光OFDM受信回路85におけるコヒーレント検波手段32内に局発光源を配置せずに、各光OFDM受信回路85に外部より供給される光を局発光としている。この時、光周波数分波手段114より出力された信号光と局発光の少なくとも一方の偏波を偏波調整手段149で調整することにより、光OFDM信号を構成する信号光のうち少なくとも各光OFDM受信回路85における所望の信号光と局発光の偏波状態が一致するように調整する。
【0095】
隣接成分間との光周波数間隔がΔf[Hz]であり、かつ、光周波数成分のうち光周波数が最低であるものの光周波数がf+fIF[Hz]である多波長光を、AWGや誘電体多層膜フィルタなどにより、光周波数成分ごとに分離し、各光OFDM受信回路に局発光として供給することが可能である。
【0096】
また、多波長光を光周波数成分ごとに分離せず、図20の光OFDM受信装置152のように、光分岐手段154により、少なくとも光OFDM受信回路85の数に分岐し、各光OFDM受信回路85に局発光として供給することも可能である。
【0097】
特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムでは、光OFDM信号の多重数Nが増えるに従って、光分岐手段における分岐損失が大きくなり、一定の受信感度を得るために許容される光OFDM送信装置と受信装置との間の損失が小さくなるという課題があった。一方、第6の実施形態においては、光分岐手段を用いないために、一定の送信装置と受信装置との間の許容損失を得るために、多重数Nが制限されることがない。更に、直接検波と比較して受信感度が高いホモダイン検波を用いているために、許容損失を拡大することが可能である。よって、特許文献1に記載されている光OFDM伝送システムにおいて送受信装置間で一定の許容損失を得るために制限される多重数Nを、拡大することが可能である。
【0098】
(第7の実施形態)
第7の実施形態は、符号要素(1)及び符号要素(0)からなる固有の符号が割り当てられた光OFCDM受信回路であって、隣接する光周波数成分の間隔がΔf[Hz]であり、符号の符号要素(1)又は符号要素(0)が割り当てられた多波長光の各成分のうち、符号要素(1)が割り当てられた前記成分がB/Δf≦1を満たす光信号帯域B[Hz]の信号光の光搬送波であり、且つすべての前記符号要素(1)に当たる成分が搬送する信号は同一である光OFCDM信号を前記符号要素(1)に当たる各成分が搬送する信号ごとに分離して電気信号へ変換して出力する光OFCDM信号分離装置と、前記光OFCDM信号分離装置からの各出力を前記固有の符号に応じて加減算する電気的加減算手段と、を備えることを特徴とする光OFCDM受信回路である。
【0099】
第7の実施形態における光直交周波数符号分割多重(OFCDM: Orthogonal Frequency Code Division Multiplexing)受信回路は、光OFDMを適用した光符号分割多重(CDM: Code Division Multiplexing)伝送システムにおける受信回路である。
【0100】
図21に、光CDM伝送システムの構成例を示す。各送信回路は、割り当てられた符号に対応する符号器により符号化された光CDM信号を送信する。受信側では、入力された光CDM信号を、各受信回路に割り当てられた符号に対応する復号器により復号し、受信する。その際、送信回路および受信回路に割り当てられる符号は、受信回路において、割り当てられた符号と同じ符号を割り当てられた送信回路より出力される光CDM信号のみを受信することができるような符号とする。よって、多重された光CDM信号から、所望の信号のみを選択的に受信することが可能である。
【0101】
光周波数領域における擬似バイポーラ符号化方式は、光CDM方式における符号化方式の1つである。概念図を図22に示す。符号化は、送信回路に割り当てられた符号を構成する符号要素(1)、符号要素(0)を、広帯域光源の各光周波数成分に割り当て、符号要素(1)に対応する成分のみを出力することにより行う。図22は、広帯域光源の各光周波数成分f〜fに、符号長が4である符号の各符号要素を割り当てた場合である。希望ユーザ信号は、符号(0,0,1,1)で符号化され、光周波数成分f、fにより構成される。一方、他ユーザ信号は、符号(0,1,0,1)で符号化され、光周波数成分f、fにより構成される。受信側では、受信回路に割り当てられた符号を構成する符号要素(1)、符号要素(0)を、送信回路側の広帯域光源の各光周波数成分に割り当てた時に、入力光CDM信号を構成する各光周波数成分のうち光周波数が、符号要素(1)に対応する広帯域光源の光周波数成分と等しい成分を正、符号要素(0)に対応する光周波数成分と等しい成分を負として加える加減算により、正と負の符号要素を実現する。他ユーザ信号が、加減算により打ち消されるような符号を、各ユーザに割り当てることにより、他ユーザ信号を除去することができる。
【0102】
第7の実施形態における光OFCDM受信回路の前記光OFCDM信号分離装置は、本願第2発明に係る光OFDM受信装置とすることができる。
【0103】
第7の実施形態における光OFCDM受信回路を、図23に示す。光OFCDM受信回路は、第3〜6のいずれかの実施形態に記載の光OFDM伝送システムにおける光OFDM装置(図23では光OFDM受信装置112である。)と電気的加減算手段235により構成される。
【0104】
光OFCDM受信回路に入力される光OFCDM信号S’(t)は、隣接する光周波数成分の間隔がΔf[Hz]である多波長光の各成分に符号要素(1)、符号要素(0)を割り当てた時に符号要素(1)に当たる成分がB/Δf≦1を満たす光信号帯域B[Hz]の信号光の光搬送波である信号である。符号要素(1)に当たる各成分は、同一の信号a(t)を搬送する。
【0105】
光OFCDM信号S’(t)は、数10のように表せる。
【数10】

【0106】
ここで、fは符号lを構成する符号要素(1)、符号要素(0)を割り当てられた多波長光の各光周波数成分のうち光周波数が最低であるものの光周波数、Nは符号長である。また、Pは光周波数が低い方からi番目である成分が搬送する信号光の強度、θはi番目の成分の初期位相、cl,iは符号lのi番目の符号要素である。i番目の符号要素cl,iは、光周波数がf+(i−1)・Δfである成分に割り当てられる。
【0107】
光OFCDM信号S’(t)は、光OFCDM受信回路内の光OFDM受信装置にて、各光周波数成分に搬送される信号ごとに分離して出力される。この時、光OFDM受信装置内の光OFDM受信回路iはi番目の光周波数成分が搬送する信号a(t)を出力するものとすると、光OFDM受信回路iの出力はcl,i・a(t)と表せる。
【0108】
光OFCDM受信回路に割り当てられた符号を構成する符号要素(1)、符号要素(0)を、各光OFDM受信回路に割り当て、符号要素(1)の要素に対応する光OFDM受信回路の出力を正、符号要素(0)の要素に対応する光OFDM受信回路の出力を負として加える加減算を行うとすると、加減算器の出力は、数11と表せる。
【数11】

【0109】
m,iは、光OFCDM受信回路に割り当てられた符号mのi番目の符号要素であり、光OFDM受信回路iに割り当てられる。2m,i−1は、光OFDM受信回路iに割り当てた符号要素(1)の時には1、符号要素(0)の時には−1をとる。
【0110】
【数12】

数12とすると、光OFCDM受信回路に割り当てられた符号と異なる符合を割り当てられた光OFCDM信号を除去することができる。
【0111】
図23では、光OFDM受信回路85内のコヒーレント検波手段32に配置された光源の出力を局発光としたが、コヒーレント検波手段32内に光源を配置せずに、外部より供給される光を局発光としてもよい。
【0112】
また、各光OFDM受信回路85は、入力される光OFCDM信号を構成する各信号光のビット位相が、コヒーレント検波手段32の入力端において一致するように調整するビット位相調整手段31を備えるが、光分岐手段(第3の実施形態又は第5の実施形態における図8の光OFDM伝送システムの光OFDM受信装置82を用いた場合)または光周波数分波手段(第4の実施形態又は第6の実施形態における図11の光OFDM伝送システムにおける光OFDM受信装置112を用いた場合)から各光OFDM受信回路85までにおけるビット位相のずれを無視できる場合には、各光OFDM受信回路85からビット位相調整手段31を省き、図9又は図13に示す光OFDM受信装置のように光OFDM受信回路95間でビット位相調整手段91を共有することもできる。
【0113】
更に、コヒーレント検波手段32において、位相ダイバーシティを用いたホモダイン検波を行う場合、図4のように各光OFDM受信回路に90°光ハイブリッドが必要となるが、図24のように各光OFDM受信回路175間で90゜光ハイブリッド178を共用することが可能である。
【0114】
以上より、図24のように、光OFCDM受信回路の構成を簡易化することが、可能である。また、図25のように電気的加減算手段235aを電気的積分手段255aの前に配置及び電気的加減算手段235bを電気的積分手段255bの前に配置し、各光OFDM受信回路間で電気的積分手段255a、電気的積分手段255b、2乗検波手段253a、2乗検波手段253b、識別手段254を共用することで、構成の更なる簡易化が可能である。
【0115】
(第8の実施形態)
第8の実施形態における光OFCDM受信回路の前記光OFCDM信号分離装置は、光OFCDM信号を構成する信号光の各光搬送波の光周波数に等しい固有の中心透過光周波数をそれぞれ持つ複数の出力ポートを有し、それぞれの前記出力ポートが、光OFCDM信号を構成する信号光のうち、光搬送波の光周波数が前記固有の中心透過光周波数と一致する信号光を透過して出力する光周波数分波手段と、前記光周波数分波手段の各出力ポートから出力される信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段と、前記ビット位相調整手段からの光OFCDM信号を直接検波する直接検波手段と、前記直接検波手段の出力を1/Δf[s]にわたって積分する電気的積分手段と、前記電気的積分手段の出力を閾値判定する識別手段と、を有し、外部から入力される光OFCDM信号を光周波数分波手段で分波し、光OFCDM信号を構成する信号光のビット位相を一致するように前記ビット位相調整手段で調整することを特徴とする。
【0116】
第8の実施形態における光OFCDM受信回路の構成図を、図26に示す。光OFCDM受信回路は、光OFCDM信号分離装置264と電気的加減算手段235を備える。光OFCDM信号分離装置264は、光OFCDM信号を受信して、各光搬送波が搬送する信号ごとに分離して出力する。電気的加減算手段235は、光OFCDM信号分離装置264より出力された各信号を、光OFCDM受信回路に割り当てられた符号に応じて加減算する。
【0117】
光OFCDM信号分離装置264に入力された光OFCDM信号は、図12のような透過特性を有する光周波数分波手段114に入力される。光周波数分波手段114の出力ポート(#1〜#N)からは、光OFCDM信号を構成する信号光のうち、出力ポートの中心透過光周波数と光周波数が等しい光搬送波が搬送する所望の信号光および隣接する光搬送波が搬送する信号光のクロストーク成分が出力される。
【0118】
出力された信号光は、各信号光のビット位相が一致するようにビット位相調整手段31で調整され、直接検波手段262にて直接検波される。直接検波手段262からは、所望の信号光および隣接する信号光を直接検波したベースバンド信号と、信号光間のビート成分が出力される。
【0119】
直接検波手段262の出力は、電気的積分手段33、識別手段34に入力される。ここで、信号光間のビート成分は、光搬送波の光周波数間隔であるΔf[Hz]の整数倍の搬送波に搬送されるため、第1の実施形態又は第2の実施形態における図3の光OFDM受信回路と同様の積分動作および識別動作を行うことにより、取り除くことができる。また、光OFCDM信号の各搬送波は同じ信号を搬送するため、隣接する信号光を直接検波して得られた成分も、所望の信号と見なすことができる。
【0120】
図26の光OFCDM受信回路では、光周波数分波手段114の各出力ポートの出力端(#1〜#N)に、各信号光のビット位相が一致するように調整するビット位相調整手段31を備えるが、光周波数分波手段114から各直接検波手段262までにおけるビット位相のずれを無視できる場合には、ビット位相調整手段31を光周波数分波手段114の前に配置して、共有することもできる。さらに、図27のように、電気的加減算手段235を電気的積分手段の前に配置し、各光OFDM受信回路間で電気的積分手段および識別手段を共用することで、構成を簡易化することが可能である。
【0121】
(第9の実施形態)
第9の実施形態は、割り当てられた固有の符号に対応する前記光OFCDM信号を送信する1個以上の光OFCDM送信回路及び前記光OFCDM送信回路が送信する前記光OFCDM信号を合波する前記光合波手段を有する光OFCDM送信装置と、光ファイバ伝送路を介して前記光OFCDM送信装置と接続される本願第5発明に係る光OFCDM受信装置と、を備える光OFCDM伝送システムであって、前記光OFCDM受信装置が有する前記光OFCDM受信回路は、前記光OFCDM受信回路に割り当てられた符号と同じ符号を割り当てられた前記光OFCDM送信回路が送信する前記光OFCDM信号のみを受信することを特徴とする光OFCDM伝送システムである。
【0122】
ここに、本願第5発明に係る光OFCDM受信装置は、光OFCDM信号を複数に分岐して出力する光分岐手段と、本願第4発明に係る複数の光OFCDM受信回路と、を備える光OFCDM受信装置であって、前記光分岐手段は、外部からの光OFCDM信号を分岐してそれぞれの前記光OFCDM受信回路へ結合することを特徴とする光OFCDM受信装置である。
【0123】
第9の実施形態における光OFCDM伝送システムを、図28に示す。光OFCDM送信装置281と光OFCDM受信装置282とが、光ファイバ伝送路283により接続された構成である。
【0124】
光OFCDM送信装置281は、少なくとも、複数の光OFCDM送信回路284と、各光OFCDM送信回路284が出力する光OFCDM信号を合波する光合波手段285とにより構成される。
【0125】
光OFCDM送信回路284は、隣接する光周波数成分の間隔がΔf[Hz]であり、成分数が符号長以上である多波長光を出力する手段を有する。多波長光出力手段としては、出力光の光周波数がΔf[Hz]ずつ異なる単一モード・レーザを並べた構成、単一モード・レーザの出力をΔf[Hz]の高周波信号で強度変調または位相変調して多波長化する構成、繰り返し周波数がΔf[Hz]であるモード同期レーザ等が、これにあたる。
【0126】
光OFCDM送信回路284では、例えば、図29(i)、(ii)のような構成により、光OFCDM送信回路284に割り当てられた符号を構成する符号要素(1)、符号要素(0)を、多波長光の各光周波数成分に割り当て、符号要素(1)に対応する成分を光搬送波とする光信号帯域B[Hz]の信号光をB/Δf≦1を満たす光周波数間隔Δf[Hz]で多重した光OFCDM信号を送信する。ここで、符号要素(1)に当たる各成分は、同一の信号a(t)を搬送する。
【0127】
図29(i)の光OFCDM送信回路284では、多波長光をAWGや誘電体多層膜フィルタなどの光周波数分波手段292により光周波数成分ごとに分波し、それぞれ光スイッチ293に入力する。各光スイッチ293に各符号要素を割り当て、符号要素(1)の要素に対応する光スイッチ293のみをONにして、符号要素(1)の要素に対応する光周波数成分のみを、それぞれ変調手段294により同一のデータ信号a(t)で変調する。光スイッチ293と変調手段294は、順番を入れ替えることも可能である。変調手段294の出力は、合波され、光OFCDM信号が出力される。合波する際には、N×1カプラや、2×1カプラを縦列接続した構成等の光合波手段を用いることができる。また、各出力ポートの中心透過光周波数が、多波長光の各光周波数成分の光周波数と等しく、透過帯域幅が2B[Hz]以上である、図12のような透過特性を有する光周波数分波手段を逆にして、光周波数合波手段として用いても、合波できる。図29(i)では光周波数合波手段295を接続している。
【0128】
図29(ii)の光OFCDM送信回路284では、光周波数分波手段292により光周波数成分ごとに分波した多波長光の各光周波数成分を、それぞれ光スイッチ293に入力する。各光スイッチ293に各符号要素を割り当て、符号要素(1)の要素に対応する光スイッチ293のみをONにして、符号要素(1)の要素に対応する光周波数成分のみを合波し、変調手段296によりデータ信号a(t)で一括変調した光OFCDM信号を出力する。
【0129】
各光OFCDM送信回路284から出力された光OFCDM信号は、光合波手段285で合波され、光OFCDM受信装置282ヘ光ファイバ伝送される。
【0130】
光OFCDM受信装置282は、少なくとも光分岐手段286と複数の光OFCDM受信回路287とにより構成される。光OFCDM受信回路287は図23で説明した第7の実施形態に係る光OFCDM受信回路又は図26で説明した第8の実施形態に係る光OFCDM受信回路であることが例示される。光OFCDM受信装置282に伝送された光OFCDM信号は、光分岐手段286により、少なくとも光OFCDM受信回路287の数に分岐され、各光OFCDM受信回路287に入力される。
【0131】
光OFCDM受信回路287において、割り当てられた符号と同じ符号を割り当てられた光OFCDM送信回路284の出力する光OFCDM信号以外が打ち消されるような符号を各送受信回路に割り当てることにより、多重された光OFCDM信号の中から所望の光OFCDM信号を選択的に受信することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明に係る光OFDM伝送システム及び光OFCDM伝送システムは、光信号に限らず無線信号を伝送する場合にも利用することができる。
【符号の説明】
【0133】
図1から図29において図面を跨いで同一の符号が使用されている場合、同一のものを示している。
10 送信装置
11−k 送信回路(kは1〜Nの自然数)
12 光周波数合波手段
13 光ファイバ伝送路
14 光周波数分波手段
15−k 受信回路(kは1〜Nの自然数)
16 受信装置
21 光分岐手段
22 遅延手段
23 光分岐手段
24 位相シフタ
25 光合波手段
27 光合波手段
28 時間ゲート
31 ビット位相調整手段
32 コヒーレント検波手段
33 電気的積分手段
34 識別手段
35 電気的分岐手段
36 電気的遅延手段
37 電気的合波手段
38 低域濾波手段
41 局発光源
42 偏波調整手段
43 90°光ハイブリッド
71 局発光源
72 偏波調整手段
73 受光器
81 光OFDM送信装置
82 光OFDM受信装置
83 光ファイバ伝送路
84 光分岐手段
85−k 光OFDM受信回路(kは1〜Nの自然数)
91 ビット位相調整手段
92 光OFDM受信装置
94 光分岐手段
95−k 光OFDM受信回路(kは1〜Nの自然数)
102 光OFDM受信装置
109 偏波調整手段
111 光OFDM送信装置
112 光OFDM受信装置
113 光ファイバ伝送路
114 光周波数分波手段
132 光OFDM受信装置
142 光OFDM受信装置
149 偏波調整手段
152 光OFDM受信装置
154 光分岐手段
157 多波長光出力手段
162 光OFDM受信装置
167 多波長光出力手段
172 光OFDM受信装置
175−k 光OFDM受信回路(kは1〜Nの自然数)
178 90°光ハイブリッド
235、235a、235b 電気的加減算手段
253a、253b 2乗検波手段
254 識別手段
255a、255b 電気的積分手段
258 90°光ハイブリッド
262 直接検波手段
264 光OFCDM信号分離装置
265−k 光OFDM受信回路(kは1〜Nの自然数)
273 電気的積分手段
274 識別手段
281 光OFCDM送信装置
282 光OFCDM受信装置
283 光ファイバ伝送路
284 光OFCDM送信回路
285 光合波手段
286 光分岐手段
287 光OFCDM受信回路
291 多波長光出力手段
292 光周波数分波手段
293 光スイッチ
294 変調手段
295 光周波数合波手段
296 変調手段
S(t) 光OFDM信号
S’(t) 光OFCDM信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号要素(1)及び符号要素(0)からなる固有の符号が割り当てられた1個以上の光OFCDM送信回路及び前記光OFCDM送信回路が送信する光OFCDM信号を合波する光合波手段を有する光OFCDM送信装置と、
光ファイバ伝送路を介して前記光OFCDM送信装置と接続される光OFCDM受信装置と、
を備える光OFCDM伝送システムであって、
前記光OFCDM信号は、前記光OFCDM送信回路へ割り当てられた符号の符号要素(1)又は符号要素(0)が割り当てられた隣接する光周波数成分の間隔がΔf[Hz]である多波長光の各成分のうち、符号要素(1)が割り当てられた前記成分がB/Δf≦1を満たす光信号帯域B[Hz]の信号光の光搬送波であり、且つすべての前記符号要素(1)に当たる成分が搬送する信号は同一である多波長信号光であり、
前記光OFCDM受信装置は、
光分岐手段と、
符号要素(1)及び符号要素(0)からなる固有の符号が割り当てられた複数の光OFCDM受信回路と、を備え、
前記光分岐手段は、外部からの光OFCDM信号を分岐してそれぞれの前記光OFCDM受信回路へ結合し、
前記OFCDM受信回路は、前記光OFCDM信号を前記符号要素(1)に当たる各成分が搬送する信号ごとに分離して電気信号へ変換して出力する光OFCDM信号分離装置と、
前記多波長光の各成分の光周波数に前記光OFCDM受信回路に割り当てられた固有の符号を構成する要素を順に割り当てた際に、符号要素(1)にあたる光周波数である信号光から生成された前記電気信号を正、符号要素(0)にあたる光周波数である信号光から生成された前記電気信号を負として加算する電気的加減算手段と、
を有することを特徴とする光OFCDM伝送システム。
【請求項2】
前記光OFCDM信号分離装置は、
前記光OFCDM信号が入力され、前記光OFCDM信号を複数に分岐して出力するOFCDM光分岐手段と、
前記OFCDM光分岐手段からの前記光OFCDM信号が入力され、前記光OFCDM信号を構成する各々の信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段、前記ビット位相調整手段からの光OFCDM信号を構成する信号光のうちの1つをベースバンド電気信号に変換し且つ他を周波数がΔfの整数倍である搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号に変換して出力するコヒーレント検波手段、前記コヒーレント検波手段からの出力を1/Δf[s]にわたって積分して出力する電気的積分手段、及び前記電気的積分手段からの出力を閾値判定する識別手段を備える複数の光OFDM受信回路と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光OFCDM伝送システム。
【請求項3】
前記光OFCDM信号分離装置は、
前記光OFCDM信号が入力され、前記光OFCDM信号を構成する信号光の各光搬送波の光周波数に等しい固有の中心透過光周波数をそれぞれ持つ複数の出力ポートを有し、それぞれの前記出力ポートが、前記光OFCDM信号を構成する信号光のうち、光搬送波の光周波数が前記固有の中心透過光周波数と一致する信号光を透過して出力する光周波数分波手段と、
前記OFCDM光分岐手段からの前記光OFCDM信号が入力され、前記光OFCDM信号を構成する各々の信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段、前記ビット位相調整手段からの光OFCDM信号を構成する信号光のうちの1つをベースバンド電気信号に変換し且つ他を周波数がΔfの整数倍である搬送波に搬送される中間周波数帯電気信号に変換して出力するコヒーレント検波手段、前記コヒーレント検波手段からの出力を1/Δf[s]にわたって積分して出力する電気的積分手段、及び前記電気的積分手段からの出力を閾値判定する識別手段を備える複数の光OFDM受信回路と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光OFCDM伝送システム。
【請求項4】
前記電気的積分手段は、
前記コヒーレント検波手段からの電気信号を前記光OFDM信号を構成する信号光の数と異なる数のM個(Mは2以上の整数)に分岐する電気的分岐手段と、
前記電気的分岐手段の各出力に対して、1/(M・Δf)[s]ずつ異なった遅延を加える電気的遅延手段と、
前記電気的遅延手段からの各成分を合波して出力する電気的合波手段と、
前記電気的合波手段からの出力のうちで周波数がΔf[Hz]以下の成分を透過して出力する低域濾波手段と、
を有し、
前記識別手段は、前記低域濾波手段からの出力に含まれるM個の成分のうちで最も遅延の少ない成分を基準として、(M−1)/(M・Δf)〜1/Δf[s]にあたる部分において閾値判定する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光OFCDM伝送システム。
【請求項5】
前記光OFCDM信号分離装置は、
光OFCDM信号を構成する信号光の各光搬送波の光周波数に等しい固有の中心透過光周波数をそれぞれ持つ複数の出力ポートを有し、それぞれの前記出力ポートが、光OFCDM信号を構成する信号光のうち、光搬送波の光周波数が前記固有の中心透過光周波数と一致する信号光を透過して出力する光周波数分波手段と、
前記光周波数分波手段の各出力ポートから出力される信号光のビット位相を一致させるように調整するビット位相調整手段と、
前記ビット位相調整手段からの光OFCDM信号を直接検波する直接検波手段と、
前記直接検波手段の出力を1/Δf[s]にわたって積分する電気的積分手段と、
前記電気的積分手段の出力を閾値判定する識別手段と、
を有し、外部から入力される光OFCDM信号を光周波数分波手段で分波し、光OFCDM信号を構成する信号光のビット位相を一致するように前記ビット位相調整手段で調整することを特徴とする請求項1に記載の光OFCDM伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−130504(P2011−130504A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55141(P2011−55141)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2006−320795(P2006−320795)の分割
【原出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】