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免疫に関連した輸血反応のための予測試験およびモニタリング試験としての、サイトカインBリンパ球刺激因子(BLYS)の血清学的なアッセイの使用
説明

免疫に関連した輸血反応のための予測試験およびモニタリング試験としての、サイトカインBリンパ球刺激因子(BLYS)の血清学的なアッセイの使用

患者における、臓器に特異的な自己免疫性疾患(例えばセリアック病および自己免疫性甲状腺炎)および/または輸血反応および/またはIgA欠乏症を包含する、免疫介在性疾患の過程における、診断、予測、および治療有効性のスクリーニングのための、血清サイトカインBリンパ球刺激因子(BLyS)のアッセイの使用は、以下のステップを包含する。すなわち、患者から血液サンプルを採取する最初のステップと、この血液サンプルを分析して、サイトカインBLySの濃度を決定するステップと、先のステップにおいて決定されたBLySのレベルと、サイトカインBLySの濃度の1つ以上の参照値とを比較するステップと、先のステップにおいて示唆された、サイトカインBLySの決定された濃度とサイトカインBLySの濃度の参照値との間の、有意な偏差を特定するステップと、先のステップに基づいて、上述の免疫介在性疾患に対して、診断を行うおよび/または予測を行う、および/または治療有効性を判断するステップとを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素因、確定診断、臨床経過、および治療有効性のマーカーとしてのサイトカインBリンパ球刺激因子(BlyS)の血清学的なアッセイの使用に基づく、免疫に関連した疾患(例えば臓器に特異的な疾患および輸血反応)の診断的および予測的な管理に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインBリンパ球刺激因子(BlyS)は、“TNFファミリーのB細胞活性化因子(BAFF)”としても知られ、1999年に腫瘍壊死因子(TNF)のスーパーファミリーのメンバーとの相同性に基づいて発見され、その特性が知られるようになった(Schneider P.ら, J Exp Med. 1999;189(11): 1747〜1756、およびNardelli B.ら, Blood. 2001; 97(1):198〜204)。
【0003】
BLySは、B細胞の発生および分化を調節する際に鍵となる因子の一つであると現在考えられているので、免疫応答において非常に重要な役割を果たす(Mackay F., Browning JL. Nat Rev Immunol 2002;2:465〜475、およびBatten Mら, J Exp Med 2000; 192(10): 1453〜1466)。
【0004】
BLySは、例えば、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞などの骨髄細胞株によって合成され、膜タンパク質として発現し、主として可溶性の形態で放出される(Huard B.ら, Int Immunol 2004;16:467〜475、およびNardelli B.ら, Blood. 2001;97(1):198〜204)。
【0005】
近年、このようなサイトカインを分泌することができる一連の細胞種はさらに増加し、非骨髄性細胞(例えば、髄様ストローマの細胞(Gorelik Lら, J Exp Med 2003;198:937〜945)、滑膜細胞(Ohata J.ら, J Immunol 2005;174(2):864〜870)、アストロサイト(Markus Krumbholzら, J Exp Med. 2005;201(2):195〜200)、唾液腺上皮(IttahIttah M, Miceli-Richard C., Eric Gottenburg Jら, Arthritis Res Ther. 2006;8(2):R51)、および腸上皮(Xu W., He B., Chiu A.ら, Nature Immunol 2007;8(3):294〜303)など)も包含するようになった。
【0006】
BLySは、3つの受容体との相互作用を介してその機能を発揮する。これらの3つの受容体の中でもっとも重要なものはBAFF受容体(BAFFR)であり、Bリンパ球によって独特の様式にて発現する(Ng LGら, J Immunol. 2004;173(2):807〜817)。BLySとBAFFRと結合によって、いくつかの抗アポトーシス因子(Bcl2、Bcl−xL、Mcl−1)の発現の増加が誘導される。これにより、成熟B細胞の生存および増殖が促進される(Craxton A,ら, J Exp Med. 2005; 202(10): 1363〜1374)。
【0007】
BLySは、APRIL(増殖を誘導するリガンド)と呼ばれるTNFスーパーファミリーの別のメンバーに対して高い相同性を有する(Hahne Mら, J Exp Med 1998;188:1185〜1190)。このAPRILは、3つの受容体のうち2つの受容体、つまり、TACI(膜貫通型活性化因子およびカルシウム調整シクロフィリンリガンド(transmembrane activator and calcium-modulating cyclophilin ligand))およびBCMA(B細胞成熟抗原)を、BLySと共有している(Thompson JS, Schneider P, Kalled SLら, J Exp Med. 2002;192(1):129〜135、およびSeshasayee D, Valdez P, Yan Mら, Immunity 2003;18(2):279〜288)。
【0008】
B細胞のホメオスタシスにおけるBLySの重要性は、マウスのモデルに関する研究によって明らかになった。
【0009】
BLySの発現が抑止されたBLySノックアウトマウスでは、成熟Bリンパ球のプールの重大な変化が観察される(Gross JAら, Immunity 2001;15:289〜302)。これに対して、BLySを過剰発現するマウス(BLyS遺伝子を導入されたマウス)は、自己免疫性疾患に典型的に見られる特徴を多数発生させる。
【0010】
この特徴としては、脾肥大およびリンパアデノ肥大、高血清レベルの自己免疫性抗体(リウマチ因子、抗DNA)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome;SS)の過程において見られるような、腺構造の破壊および分泌機能の損失をともなう耳下腺のB細胞の浸潤、全身性エリテマトーデス(SLE)に典型的な糸球体腎炎を大いに想起させる腎臓の変化、およびB細胞の異常増殖が挙げられる(Mackay Fら, J Exp Med. 1999;190(11):1697〜1710、およびThien Mら, Immunity 204;20(6):785〜798)。
【0011】
このように、実験によって得られた証拠は、BLySが生理的なレベルにおいてB細胞の生存および分化を促進するが(Mackay F, Browning JL. Nat Rev Immunol 2002;2:465〜475)、超生理的な濃度において通常は免疫系によって抑制される自己反応性Bリンパ球を生存および増殖させようにすることを示している(Thien Mら, Immunity. 2004;20(6):785〜798)。
【0012】
この実験的証拠にしたがって、BLySの高血清レベルおよび高組織レベルが、最近、いくつかの自己免疫性疾患において記録された。
【0013】
これらの自己免疫性疾患としては、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(SSc)、多発性硬化症(MS)、混合型クリオグロブリン血症(MC)、およびウェゲナー肉芽腫症などが挙げられる(Stohl W. B Curr Rheumatol Rep 2002;4(4):345〜350、Seyler TMら, J Clin Invest. 2005;115(11):3083〜3092、Mariette Xら, Ann Rheum Dis. 2003;62(2):168〜171、Matsushita Tら, Arthritis Rheum. 2006;54(1):192〜201、M. Thangarajら, J Neuroimmunol 2004;152:183〜190、Fabris Mら, J Rheumatol 2007;46:37〜43、およびM. Krumbholzら, J Autoimmun 2005;25:298〜302)。
【0014】
一般に、これらの自己免疫性疾患において、BLySの血清レベルおよび組織レベルは、患部組織(骨膜、唾液腺)における疾患に特異的な自己抗体のレベル、ならびにリンパ球浸潤の存在およびレベルと相関関係にある。特に、異所性の胚中心の形成は、BLySおよびAPRILの存在と相関関係にあるようである(Jonsson MVら, J Clin Immunol 2005;25:189〜201、およびSzodoray Pら, Clin Immunol 2005;17:168〜176)。
【0015】
自己免疫性疾患は、大きく2つのサブグループ、つまり全身的な障害と臓器に特異的な障害とに分類することができる。前者は、ヒト生命体全体に対して影響をおよぼす。また、後者は、体の1部分だけに対して特定の様式で影響を及ぼす。BLySは、一部の全身的な自己免疫性疾患について徹底的に調べられてきたが、本発明のように臓器に特異的な自己免疫性疾患について調べられていない。
【0016】
また、例えば免疫グロブリンA(IgA)欠乏症などの、一般的に自己免疫性障害を発症する素因になる免疫不全もある。
【0017】
自己免疫と適切に関連しないが、臓器の損傷が由来し発生する主要メカニズムを自己免疫と共有する免疫に関連した疾患の中に、免疫に関連した輸血反応がある。免疫に関連した輸血反応としては、血漿または赤血球の不適合に起因し、輸血に伴って起こる可能性のある全ての合併症(例えばスリルハイパーセルミックシンドローム(thrill-hyperthermic syndrome)、アレルギー性反応など)が挙げられるが、特に、輸血後の溶血性反応が挙げられる。近年、自己免疫性疾患に罹患した患者は、一般的な集団と比較して、輸血後に不規則同種抗体の生成量を増加させることが観察された。不規則同種抗体とは、輸血、妊娠、または活動性免疫の獲得の後に、非自己赤血球抗原に対して生成されるか、あるいは、免疫グロブリンもしくは血漿の注入、または臓器もしくは骨髄の移植の後に受動的に獲得される抗体である。同種抗体の存在頻度は、一般的な集団において0.3%〜38%の間でばらつきがあり、血液中の同種抗体の検出に使用される新しい方法の感度が増すことによって連続的に増加している。これらの同種抗体は、臨床上の相関性を有する溶血性輸血反応の大半にとっての原因である。
【0018】
BLySのレベルの上昇は、臓器拒絶反応の過程においても見られる。この場合、T−リンパ球に対するBLySとBAFFRとの相互作用が、移植した臓器に対抗するT細胞の活性化および増殖を促進する(Ye Qら, Eur J Immunol 2004 ;34 :2750〜2759)。MHCの不適合に起因する心臓移植の拒絶反応マウスのモデルにおいて、BLyS−BAFFRを遮断すると、移植した臓器の生存が大幅に延長される。
【0019】
臓器に特異的な自己免疫性疾患(例えば自己免疫性甲状腺炎(AITD)およびセリアック病(CD)など)において、免疫に関連した輸血反応(IRTR)と同様に、Bリンパ球の役割はまだ明らかにされてない一方で、Tリンパ球の役割の方は比較的よく解明されている。実際に、AITDおよびCDは、関連する組織中に浸潤して蔓延したTリンパ球によって特徴付けられており、自己抗原に対する特異性を有するT細胞クローンの活性化は、病理学的なプロセスの基礎において常に考慮されてきた。一方、Bリンパ球(浸潤においてめったに説明されない細胞である)による自己抗体の分泌は、診断レベルにおいて非常に重要であるが、病理学的なプロセスの主要なトリガーに対して二次的なものであると考えられている。実際に、CDおよびAITDも、疾患に特異的な循環している自己抗体がない場合に診断可能である。ただし、多数の他の全身的な自己免疫性疾患、例えばRA、SS、SLE、SScなどにおいても、同様の診断上の選択肢を見つけることもできる。しかし、この後者の場合には、Bリンパ球の役割はさらに詳しく解明されている。実際、in vitroでの実験または動物モデルによって得られた発見に加えて、最近のin vivoにおける、B細胞を除去する治療法のヒトへの導入によって、慢性の病理過程の維持における、病原性の自己抗体の産生細胞としての根本的な役割のみならず、さらにT細胞の集団を活性化する抗原提示細胞としてのBリンパ球の根本的な役割が明らかにされた。自己抗体を産生するB細胞の増殖が、BLySのレベルの増加によって明確に維持されることが、広く実証されている。
【0020】
自己免疫性甲状腺疾患(AITD)は、本質的には2つの異なる病理主体、すなわち、橋本甲状腺炎(HT)およびグレーブス−バセドウ病(GBD)を含んでいる。慢性リンパ球性甲状腺炎とも呼ばれるHTは、ヒトにおいてもっともよく見られる自己免疫性疾患の一つであり、男性よりも女性の方が多く罹患し(女性:男性=18:1)、臨床病理学上、いくつかの種類がある。具体的には、甲状腺腫の型(これがもっともよくある種類である)、萎縮性の型(特発性粘液水腫としても知られる)、産後甲状腺炎、および甲状腺機能亢進性“ハシトキシコーシス”である。HTは、CD4+のTリンパ球が甲状腺に顕著に浸潤していることを常に特徴としている。リンパ球は組織化して真性のリンパ濾胞を形成し、甲状腺細胞(つまりその破壊機能の対象)に対して近接する。甲状腺腫のバリアント、産後甲状腺炎、およびハシトキシコーシスにおいて、甲状腺は肥大し、萎縮性のバリアントにおいて甲状腺は顕著に萎縮する。最もよく見られる臨床上の症状は、甲状腺機能障害によって甲状腺機能低下症(チアノーゼ;乾燥粘膜;徐脈、筋痙攣;筋無力症;各種浮腫;体重増加;呼吸困難;希発月経;貧血など)と関連している。これは、甲状腺の根本的な成分、例えばサイログロブリン(Tg)および甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)に対する自己抗体が存在することが理由である。一部の患者は、時間の経過とともにTSH受容体(TRBab)を遮断する抗体を形成する。
【0021】
診断は、臨床上の徴候および症状とアッセイとの両方に基づいて行う。アッセイは甲状腺ホルモン(FT4およびFT3)とTSHとについて行うが、前者は疾患の第1の段階において正常であり得る。また、後者はFT4が正常なレベルであっても高い値を示し、この状態は無症候性甲状腺機能低下症であると規定される。抗TPO抗体は、通常患者の90%〜95%に見られる。一方、血清の抗サイログロブリン(抗Tg)抗体は、患者の60%〜80%において陽性であるが、良好な臨床用マーカーとは考えられておらず、グレーブス・バセドウ病、甲状腺癌、および健康なヒトにも見られる。治療法はステージによって変わる。末期の甲状腺機能低下症に達していれば、治療法は合成T4(レボチオキシン(levo-Thyoxine)、LT4)の連日投与に基づく。甲状腺の機能が正常な甲状腺腫を、L−T4を用いて治療することが議論されている。この治療法によって、甲状腺腫の成長を防止し、疾患が進行し甲状腺機能低下症を発症する可能性から患者を護ることができるかもしれないが、この課題については広い意見の一致があるわけではない。萎縮性甲状腺炎は、末期の甲状腺機能低下症および粘液水腫に至ることが最も多い型であり、TSHのレベルが非常に高い。さらに、萎縮性甲状腺炎は、多くの場合(症例の20%〜50%)、TRBab抗体を有し、そしてTh2疾患を伴うT細胞の増殖によって維持される疾患であると常に考えられてきた。現在、この型の甲状腺炎について明確な診断上の基準はない。LT4の置換療法を無症状のATに罹患した患者に対して用いて、甲状腺の変性の進行を遅らせることが示唆されている。
【0022】
グレーブス・バセドウ病(GBD)は、刺激活性を有する、TSH受容体に対する抗体(TRAab)を循環させることによって引き起こされる甲状腺機能亢進症を臨床的な特徴とする、自己免疫性甲状腺疾患である。その病因は未知であるが、そのトリガーとなる環境因子(ヨウ素摂取の少ない食事、ウイルスの感染、または細菌の感染)と、遺伝的な感受性との間の相互作用に起因すると考えられている。診断は、甲状腺機能亢進症(高レベルのFT3およびFT4、TSHの低減、甲状腺機能亢進症に関連する臨床的症状(頻脈、振戦、体重の減少、発汗など))および特徴的な抗体(TRAab;患者の95%において陽性である)の存在に基づいて行われる。甲状腺腫が存在していることが多く、症例の約50%において典型的な眼疾患が見られ、症例の1%〜2%において特徴的な下肢の皮膚症が見られる。現在の治療は症状の重症度に基づいており、例えば、抗甲状腺活性化薬(各種チオナアミド)を用いた医学療法、I131を用いた放射線療法、および最後に甲状腺の外科的除去を行う。多くの患者は、医学療法から比較的利益を得る。そして、多くの場合、放射線療法によって生涯にわたる置換療法が必要な甲状腺機能低下症に至る。現在の治療法は全て、症状を治療するが、疾患を治療しない。最近ではリツキシマブが首尾よく使用されている。リツキシマブは、末梢のB細胞を欠乏させることができる、抗CD20モノクローナル抗体である。
【0023】
HT、AT、およびGBDは基本的には類似した炎症性自己免疫性プロセスの異なる発現ではないか、また、臨床上の出現は特定の患者における免疫応答の範囲を反映しているのではないか、ということが最近示唆されている。
【0024】
セリアック病において、a−tTG抗体は、病因および診断の両観点において(特に後者の観点において)根本的な特徴である(Dieterich Wら, Nat Med 1997;3:797〜801、およびTonutti Eら, J Clin Pathol 2003;56:389〜393)。
【0025】
古典的には、活動性セリアック病は、腸内および/または腸外の症状、およびa−tTG抗体の強い陽性を特徴とする。
【0026】
組織学的には、典型的な形態変化(つまり、円蓋の過形成および絨毛の萎縮)に関連した、十二指腸および空腸の粘膜の顕著なTリンパ球の浸潤がある。
【0027】
十二指腸および空腸の生検は、診断のための絶好の標準であると考えられるが、実施の際には、分析的な面でも事前分析的な面でもいくつかの問題がある。
【0028】
セリアック病は、多くの場合、他の自己免疫性疾患、特にI型糖尿病および橋本甲状腺炎に関連している。
【0029】
リンパの異常増殖は、セリアック病の最もひどい合併症の一つである。
【0030】
これらの合併症のうち、腸管T細胞リンパ腫が間違いなく最もよく見られ、そして恐ろしいことに、B細胞リンパ腫も述べられている(Celier Cら, Lancet 2000;356:203〜208)。
【0031】
リンパ腫は、反応性リンパ球が上皮内に浸潤することから始まり、低悪性度の無痛性増殖を経て、高悪性度のリンパ腫へと転換するように段階的に発展する。高悪性度のリンパ腫は、グルテンを含まない食事および免疫抑制治療を導入した後であっても、吸収が悪い状態を持続的に引き起こす(Cerf-Bensussan Nら, Gut 2002;51:304〜305)。
【0032】
セリアック病と混合型クリオグロブリン血症症候群とは(Rodrigo L. World J Gastroenterol 2006;12(41):6585〜6593、およびFerri Cら, J Clin World Pathos 2002;55:4〜13)、自己免疫の形成につながるメカニズムの研究にとって非常に重要な2つのモデルである。これは、(1)セリアック病において、グルテンに対する応答の変化が、精密な遺伝的設定(HLA DQ2および8)に関連することが、広く証明されている一方、(2)混合型クリオグロブリン血症症候群において、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染症が、クリオグロブリンおよび血管炎の形成の原因となる、リウマチ因子陽性の抗体応答を引き起こす上で非常に頻繁に役割を果たすことが周知である、という理由による。
【0033】
ただし、最新の証拠は、まさにロトウイルス(Rotovirus)(Troncone R, Aurecchio S. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007;44(5):527〜528)が原因で起こるウイルス感染症も、セリアック病の病因として重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。
【0034】
さらに、一部の最も頻発するリンパ増殖性疾患(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症)の過程における腫瘍性Bリンパ球によるBLySの自己生成が、最近証明された(Chiu Aら, Blood 2007;109(2):729〜739、J. Novakら, Blood 2004;104:2247〜2253、Kern Cら, Blood 2004;103(2):679〜688、Mackay, Tangye SG. Curr Opin Pharmacol. 2004;4(4):347〜354、およびMoreaux Jら, Blood 2004;103(8):3148〜3157)。
【0035】
一般的な集団と比較すると、自己免疫性疾患は一般に、B細胞のクローン性を発現するリスクが高く、T細胞のクローン性を発現するリスクは低い。この自己免疫性疾患は、進行すると通常のリンパ管の癌になる可能性がある。
【0036】
こういったリスクが増加する根本には、遺伝的因子および後天性因子(治療)の両方の因子がいくつか存在する(Quartuccio Lら, Haematologica 2006, 91 (5) :691〜694)。現在、各種自己免疫性疾患の患者において、それが全身的な疾患であれ、あるいは臓器に特異的な疾患であれ、リンパ球のクローン性の発現を予測することができる明確な生物学的マーカーも遺伝的マーカーも存在しない。IgA欠乏症も、特に進行して、拡大した免疫グロブリン欠乏症(extended immunoglobulin deficit)になる場合、この高いリスクを抱えている。
【0037】
現在、自己免疫性疾患では、一般的な集団のように、リンパ管の腫瘍形成の主な徴候および症状(リンパアデノ肥大、脾腫、発熱、痒み、体重の減少、無力症、シェーグレン症候群の場合であれば持続性耳下腺の腫脹など)を特定するために、腫瘍形成が進行するリスクを、患者の理学的検査によって臨床的にモニタリングする。この臨床的なモニタリングの方法は、理学的検査の他に、放射線検査(超音波、CT)によっても行われ、さらに放射線検査に対しては、補助的に生検ならびに組織学的検査および分子的な検査(免疫グロブリン遺伝子またはT細胞受容体の高頻度可変領域の増幅)が実施されることもある。
【0038】
セリアック病の過程では、関連するリンパ腫の症状がなくても抗トランスグルタミナーゼ抗体のレベルが持続的に高い場合、たとえグルテンを含まない食事療法が取られていても、リンパ腫の進行の疑いが生じる。これらの場合では、BLySのレベルが持続的に高いことが、リンパ腫が発生する前の状態であることを示唆している可能性があり、そして完全な腫瘍の症状にまで進行することを防止可能な、診断過程および治療過程を示しているかもしれない。我々が現在知る限り、確定診断(diagnostic confirmation)は、信頼できる生検の結果を得ることが難しいために、時期が遅いことが多い。したがって、これらの患者においてリンパ腫の進行を防止して治療することができる可能性は、非常に限定されている。これは、診断が遅れることと、リンパ腫が非常に攻撃的な型であり、現在利用可能な治療法にあまり反応しないこととの両方が原因である。
【0039】
現在の技術レベルでは、グルテンの役割が広く認識されているセリアック病を除けば、本発明に記載される疾患の病理過程の開始の原因となるトリガー(一般にウイルス性、細菌性、環境性のもの)は、依然ほとんど未知のままである。また、その病理過程の永続化を促進し、認識された疾患が慢性的疾患になるに至る因子を見つける研究が広く行われている。
【0040】
さらに、臓器に特異的な自己免疫性疾患および免疫不全症において、リンパ管の癌に先立って起こるB/T細胞のクローン性の発現をモニタリングする有用なマーカーが欠如している。
【0041】
抗TNF抗体を用いて治療中のヒトまたはその治療の対象となる可能性のあるヒトにおいて、癌を発症する素因を決定するためにBLySのアッセイを使用することは、国際公開第2004/074511号パンフレットによって公知である。これらの薬物は、全身的な自己免疫性疾患において共通して使用されているが、本発明のように臓器に特異的な自己免疫性疾患、輸血反応、または各種免疫性欠乏症における使用に関する理論的な根拠はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】国際公開第2004/074511号パンフレット
【非特許文献】
【0043】
【非特許文献1】Schneider P.ら, J Exp Med. 1999;189(11): 1747〜1756
【非特許文献2】Nardelli B.ら, Blood. 2001;97(1):198〜204
【非特許文献3】Mackay F., Browning JL. Nat Rev Immunol 2002;2:465〜475
【非特許文献4】Batten Mら, J Exp Med 2000; 192(10): 1453〜1466
【非特許文献5】Huard B.ら, Int Immunol 2004;16:467〜475
【非特許文献6】Gorelik Lら, J Exp Med 2003;198:937〜945
【非特許文献7】Ohata J.ら, J Immunol 2005;174(2):864〜870
【非特許文献8】Markus Krumbholzら, J Exp Med. 2005;201(2):195〜200
【非特許文献9】IttahIttah M, Miceli-Richard C., Eric Gottenburg Jら, Arthritis Res Ther. 2006;8(2):R51
【非特許文献10】Xu W., He B., Chiu A.ら, Nature Immunol 2007;8(3):294〜303
【非特許文献11】Ng LGら, J Immunol. 2004;173(2):807〜817
【非特許文献12】Craxton A,ら, J Exp Med. 2005; 202(10): 1363〜1374
【非特許文献13】Hahne Mら, J Exp Med 1998;188:1185〜1190
【非特許文献14】Thompson JS, Schneider P, Kalled SLら, J Exp Med. 2002;192(1):129〜135
【非特許文献15】Seshasayee D, Valdez P, Yan Mら, Immunity 2003;18(2):279〜288
【非特許文献16】Gross JAら, Immunity 2001;15:289〜302
【非特許文献17】Mackay Fら, J Exp Med. 1999;190(11):1697〜1710
【非特許文献18】Thien Mら, Immunity 204;20(6):785〜798
【非特許文献19】Stohl W. B Curr Rheumatol Rep 2002;4(4):345〜350
【非特許文献20】Seyler TMら, J Clin Invest. 2005;115(11):3083〜3092
【非特許文献21】Mariette Xら, Ann Rheum Dis. 2003;62(2):168〜171
【非特許文献22】Matsushita Tら, Arthritis Rheum. 2006;54(1):192〜201
【非特許文献23】M. Thangarajら, J Neuroimmunol 2004;152:183〜190
【非特許文献24】Fabris Mら, J Rheumatol 2007;46:37〜43
【非特許文献25】M. Krumbholzら, J Autoimmun 2005;25:298〜302
【非特許文献26】Jonsson MVら, J Clin Immunol 2005;25:189〜201
【非特許文献27】Szodoray Pら, Clin Immunol 2005;17:168〜176
【非特許文献28】Ye Qら, Eur J Immunol 2004 ;34 :2750〜2759
【非特許文献29】Dieterich Wら, Nat Med 1997;3:797〜801
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【非特許文献31】Celier Cら, Lancet 2000;356:203〜208
【非特許文献32】Cerf-Bensussan Nら, Gut 2002;51:304〜305
【非特許文献33】Rodrigo L. World J Gastroenterol 2006;12(41):6585〜6593
【非特許文献34】Ferri Cら, J Clin World Pathos 2002;55:4〜13
【非特許文献35】Troncone R, Aurecchio S. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007;44(5):527〜528
【非特許文献36】Chiu Aら, Blood 2007;109(2):729〜739
【非特許文献37】J. Novakら, Blood 2004;104:2247〜2253
【非特許文献38】Kern Cら, Blood 2004;103(2):679〜688
【非特許文献39】Mackay, Tangye SG. Curr Opin Pharmacol. 2004;4(4):347〜354
【非特許文献40】Moreaux Jら, Blood 2004;103(8):3148〜3157
【非特許文献41】Quartuccio Lら, Haematologica 2006, 91 (5) :691〜694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
このような背景において、本発明の目的の1つは、免疫介在性疾患の診断を確定するためにサイトカインBリンパ球刺激因子(BlyS)の血清学的なアッセイを使用して、免疫介在性疾患を示唆する状況にある場合および/または免疫介在性疾患が疑われる場合および/または免疫介在性疾患の素因(細菌の感染、免疫不全症、HLA遺伝子に基づく遺伝的素因)がある場合に現在使用されている手法の限界を解消することである。なお、この免疫介在性疾患としては、臓器に特異的な自己免疫性疾患(セリアック病、自己免疫性甲状腺炎)、および免疫介在性の輸血反応(輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、輸血反応)が挙げられる。
【0045】
本発明の別の目的は、サイトカインBLySのアッセイを、鑑別診断において産後の鬱病と区別される産後の甲状腺炎が発生するリスクのマーカーとして使用することである。
【0046】
本発明のさらに別の目的は、サイトカインBLySのアッセイを、急性甲状腺炎および萎縮性甲状腺炎の過程において予測用マーカーとして使用することである。
【0047】
本発明のさらに別の目的は、サイトカインBLySのアッセイを、輸血を行う可能性のある患者、特に活動性の免疫介在性疾患の患者において輸血反応のリスクのマーカーとして使用することである。
【0048】
本発明のさらに別の目的は、個別化された治療法を選択するための方法として、治療(例えば、セリアック病の患者におけるグルテンを含まない食事)を守っているかどうかをモニタリングするための方法として、疾患における症状の面だけではなく疾患の生物学的なレベル(高レベルのBLySが、治療後に正常な範囲に戻る)においても有効な治療法をスクリーニングするための方法として、サイトカインBLySのアッセイを使用して、現在使用されている手法の限界を解消することである。ここで、この疾患としては、臓器に特異的な自己免疫性疾患(セリアック病、自己免疫性甲状腺炎)、IgA欠乏症、および輸血反応などが挙げられる。
【0049】
本発明のさらに別の目的は、BLySの血清学的なアッセイを、臓器に特異的な自己免疫性疾患(セリアック病、自己免疫性甲状腺炎)および免疫グロブリン欠乏症を包含する免疫介在性疾患における、B細胞のクローン性およびT細胞のクローン性の診断および予測のために使用して、現在使用されている手法の限界を解消することである。
【0050】
本発明のさらに別の目的は、臓器に特異的な自己免疫性疾患および免疫グロブリン欠乏症の過程において、B細胞のクローン性およびT細胞のクローン性を防止および治療する革新的な治療方法を実現するために、BLySをマーカーとして使用することである。
【0051】
現在の技術の短所を解消し、上記目的およびその他の目的を達成して長所を実現するために、出願人は、本発明について研究し、試験を行い、そして本発明を具現化した。
【課題を解決するための手段】
【0052】
本発明を独立項において規定し、その特徴を記述する。一方で、従属項には、本発明の他の特徴、または主な発明的発想の変形例を記載する。
【0053】
B細胞の集団に関する証拠およびBLySの存在に関する証拠は、本明細書に記載される臓器に特異的な自己免疫性疾患および免疫に関連した輸血反応において、全く欠如していた。したがって、BLySがこれらの障害においても重要な病原的な役割を有するということは、有望な説明ではないようであった。この仮説は、全身的な自己免疫性疾患の知見および経験から得られる顕著な科学的背景を、関連することが多い臓器に特異的な自己免疫性疾患、免疫不全症、および輸血反応の独特の特徴の調査と総合することによって形成されている。このプロセスは、共同発明者らの異なる専門知識を体系的に統合することから得られた。
【0054】
臓器に特異的な自己免疫性疾患(セリアック病および自己免疫性甲状腺炎)、IgA欠乏症、および輸血反応に関する予備的な研究から発明者らによって得られた結果は、共同発明者らが、これらの免疫に関連した疾患の診断的および予測的な管理に用いる、新しい有用なマーカーとしてBLySを見出すことにつながった。特に、BLySは、疾患のリスクおよび/または素因を示すマーカーとして、疾患の重症度および疾患がB/T細胞のクローン性であることの指標として、治療法を遵守しているかどうか検証する方法として、そして症状についてだけではなく、疾患の生物学的特徴についても有効な新しい治療方針のスクリーニングを検証する方法として、現れた。
【0055】
上述の目的に従って、本発明の1つの特徴は、免疫介在性疾患を示唆する臨床的症状を有する、および/または免疫介在性疾患の物理的もしくは生化学的な検査を受けている、または免疫介在性疾患が疑われる状況にある、患者において、あるいは免疫介在性疾患の重大な素因(慢性の細菌感染症、IgA欠乏症、遺伝的素因、家族特性)を有する患者において、サイトカインBリンパ球刺激因子(BLyS)の血清学的なアッセイを、臓器に特異的な自己免疫性疾患(例えばセリアック病、自己免疫性甲状腺疾患など)と輸血に関連した免疫介在性疾患(例えば輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、輸血反応など)とを包含する免疫介在性疾患の診断を確定するマーカーとしての、以下の方法における使用に関する。この方法は、
遠心分離によって血清が得られ得る血液サンプルを、この患者から採取する第1のステップと、
市販のキットを典型的に使用することによって、この血清サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第2のステップと、
第2の段階において決定されたサイトカインBlySの濃度と、健康な集団について前もって得られたサイトカインBlySの濃度の参照値とを比較する第3のステップと、
第3のステップにおける比較から導き出される、第2の段階において決定されたサイトカインBlySの濃度と健康なコントロールの集団について前もって得られたサイトカインBlySの濃度の参照値との間の、有意な偏差を特定して、上述の免疫介在性疾患の一つに罹患した患者を選択する第4のステップと、
免疫介在性疾患の一つに罹患したとして選択された患者の、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、サイトカインBlySの濃度の1つ以上の参照値(なお、これらの参照値は、特定の免疫介在性疾患に罹患した、および/または活動性疾患またはその特定の過程の診断が確立された、一連の患者について前もって得られたBLySのベンチマークの範囲内である。)とを比較する第5のステップと、
第5のステップにおいてなされた比較に基づいて、上述の免疫介在性疾患の1つ以上の確定的な疾患の診断を行う第6のステップと、
を包含する。
【0056】
本発明の別の革新的な特徴は、疾患における、サイトカインBリンパ球刺激因子(BlyS)の診断用マーカーとしての使用、特にBlySのアッセイの上述の方法における使用である。ここで、この疾患は、B細胞ではなくT細胞が、病的浸潤における主要な成分であり、かつこれまでに特定された発病のメカニズムにおける主要な成分であるため、発病におけるこのサイトカインの役割が容易に考えられない疾患である。
【0057】
関連する病棟の設備またはこの病棟を構成する構造物に大幅な修正を加える必要がなく、通常大規模な病院の分析ラボに存在する型の免疫学的な酵素アッセイ(酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))を実施可能な自動装置を、患者の血清中におけるBLySの濃度を分析するために第2のステップにおいて使用することは、本発明の利点である。
【0058】
本発明はさらに、臓器に特異的な自己免疫性疾患(自己免疫性甲状腺炎、セリアック病)および免疫不全症(例えばIgA欠乏症、分類不能型免疫グロブリン欠乏症)を包含する、患者の免疫介在性疾患の過程において、B/T細胞のクローン性の発現の開始を経時的にモニタリングする方法におけるBLySの使用に関する。この方法は、
この患者から血液サンプルを採取して血清を得る第1のステップと、
この血清サンプルを検査して、サイトカインBlySの濃度を決定する第2のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBlySの濃度と、患者から前もって検出された1つ以上のBlySの値とを比較する第3のステップと、
第3のステップにおける比較から導き出される有意な偏差(すなわち、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBlySの濃度と患者から前もって検出された1つ以上のBlyS値との間の、有意な増加)を特定する第4のステップと、
BLySの存在または第4のステップにおいて検出された有意な偏差に従って、上述の免疫介在性疾患の過程において、B細胞のクローン性またはT細胞のクローン性が発現する潜在的なリスクまたはB細胞のクローン性またはT細胞のクローン性に向かって疾患が進行する潜在的なリスクが発生するとみなす(attributing)第5のステップと、
第5のステージにて実施したアサイメント(assignment)の結果に基づいて、第1のステップから第5のステップを所定の時間間隔で繰り返すことを決定する第6のステップと、
を包含する。
【0059】
この場合、セリアック病の患者の食事療法の有効性、免疫系の活性化マーカー、臓器機能性のマーカー(FT4、FT3、TSH、自己免疫性甲状腺炎における特定の自己抗体)、患者の末梢血液または骨髄におけるBリンパ球またはTリンパ球のクローン増殖、理学的検査、患者に対するX線検査または生検などを経時的に評価することができる。なお、患者の末梢血液または骨髄におけるBリンパ球またはTリンパ球のクローン増殖は、分子生物学的な手法を使用することによって経時的に評価することができる。
【0060】
本発明の別の特徴によれば、免疫介在性疾患を予測する方法(つまり、免疫介在性疾患の、発病のリスク、過程、重症度、治療法に対する良好な応答などを予測する方法)における、サイトカインBLySアッセイの予測用マーカーとしての使用が提供される。この免疫介在性疾患としては、臓器に特異的な自己免疫性疾患(例えばセリアック病、自己免疫性甲状腺炎など)、および輸血に関連した免疫介在性疾患(例えば、輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、輸血反応)が挙げられる。この方法は、
i)慢性の細菌感染症(肝炎ウイルス、疱疹ウイルス、クラミジアなど)の存在
ii)疾患の発病のプロセスまたは一般に使用される治療法の対象における、特定のHLAの遺伝子型/または重要な因子をコードする遺伝子の存在、
iii)甲状腺腫を伴う、または伴わない無症候性甲状腺機能低下症、
iv)産後の鬱病および/または産後の甲状腺機能低下症、
v)1つ以上の活動性の免疫介在性疾患の存在、
vi)輸血の必要性、および、
vii)新しい治療法の開始
のうちの1つ以上の状況によって特徴付けられる患者、を選択する予備的なステップと、
選択された患者から血液サンプルを採取する第1のステップと、
この血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第2のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、サイトカインBLySの濃度の1つ以上の参照値とを比較する第3のステップと、
第3のステップから導き出される、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と第3のステップにおいて考慮される参照値との間の、有意な偏差を特定する第4のステップと、
上述の免疫介在性疾患について第4のステージにおいて特定された偏差に従って、予測を行う第5の段階と、
を包含する。
【0061】
本発明の別の特徴によれば、免疫介在性疾患(例えば臓器に特異的な自己免疫性疾患(例えばセリアック病、自己免疫性甲状腺炎)、輸血に関連した免疫介在性疾患(例えば輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、輸血反応)、および免疫不全症(例えばIgA欠乏症、分類不能型免疫グロブリン欠乏症))に有効な新しい治療法をスクリーニングするための方法としての、サイトカインBLySのアッセイを使用することが提供される。
【0062】
この目的を達成するために、治療の間に、BLySの血清学的な濃度のモニタリングを好適に使用して、BLySの血清レベルが正常範囲に包含されるレベルにまで実際に減少することによって示された、疾患の生物学的現象についての有効性を検証することができる。あるいは、免疫介在性疾患に罹患した患者の治療的処置の有効性を制御する方法におけるマーカーとして、BLySのアッセイを使用することができる。この方法は、
新しい治療法を行う前に、この患者から血液サンプルを採取して血清を得る第1のステップと、
この血清のサンプルを検査して、サイトカインBlySの濃度を決定する第2のステップと、
新しい治療法の開始後の所定の時間(例えば、1、3、6、12ヶ月後)に患者から血液サンプルを採取する第3のステップと、
第3のステップにおいて採取された1つ以上の血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する4のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBlySの濃度と、第4のステップにおいて決定されたサイトカインBlySの濃度とを比較する第5のステップと、
第5のステップにおける比較から導き出される、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBlySの濃度と第4のステップにおいて得られるサイトカインBlySの濃度の値との間の、有意な偏差を特定する第6のステップと、
第6のステップにおいて特定された偏差に基づいて、新しい治療法に有効性があるとみなす第7のステップと、
を包含する。
【0063】
本発明は、免疫介在性疾患(臓器に特異的な自己免疫性疾患および輸血反応の両方が挙げられる)に罹患した患者の、診断手法および予測手法の改善、ならびに治療を目的としたモニタリングの改善を可能にする。
【0064】
本発明は、免疫介在性疾患(自己免疫性甲状腺炎、セリアック病、および免疫不全症(例えばIgA欠乏症)が挙げられる)の過程における、B細胞のクローン性およびT細胞のクローン性の診断および予測に使用するために、特に有効である。
【0065】
本発明の変形例によれば、本発明に係るBLySのアッセイの使用は、
患者を対象とする、特定の疾患の主な徴候および症状が特定可能な理学的検査、
患者を対象とする、1回以上のX線検査、
患者から採取された生検用標本の組織学検査、および
患者の生検用サンプル、末梢血液、または骨髄の分子生物学的検査、
の1つ以上の分析方法と組み合わせられ得る。
【0066】
上記およびその他の本発明の特徴は、実施形態の好適な態様についての以下の記載から明らかになる。ただし、これらの実施形態は、添付の図面を参照する非制限的な例として与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、健康な血液提供者(HBD)に対して、セリアック病の患者(CD)における血清Bリンパ球刺激因子(BLyS)のレベルを比較するグラフである(正常域:<1.145ng/ml、平均+2SD)。
【図2】図2は、セリアック病の患者における、サイトカインBリンパ球刺激因子(BLyS)の濃度と抗体a−tTGの濃度との間の、有意な相関を示すグラフである。
【図3】図3は、セリアック病の患者においてグルテンを含まない食事療法(gluten-free diet;GFD)を実施した後の、Bリンパ球刺激因子(BLyS)の濃度の有意な減少を示すグラフである(1.619±0.410ng/mlから1.283±0.310ng/mlへ減少;*p=0.0122、ウィルコクソン符号順位検定)。
【図4】図4は、健康な血液提供者(HBD)に対して、IgADの患者において、全体(IgAD tot)の場合および2つのサブグループに分けた場合の、血清Bリンパ球刺激因子(BLyS)のレベルを比較するグラフである。2つのサブグループとは、セリアック病に罹患したIgADの患者(IgAD+CD)と、CDに罹患していないIgADの患者(IgAD)とである(正常域:<1.145ng/ml、平均+2SD)。
【図5】図5は、健康な血液提供者(HBD)に対して、自己免疫性甲状腺炎(AITD)の患者において、全体の場合および橋本甲状腺炎(HT)とグレーブス病/バセドウ病(GBD)とを区別した場合の、血清中のBLySのレベルを比較するグラフである(正常域:<1.145ng/ml、平均+2SD)。
【図6】図6は、FT4の正常なレベルまたはFT4の低いレベルを有するHT患者において、血清中のBLySのレベルを比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、サイトカインBリンパ球刺激因子(BLyS)について当該技術分野において公知であることを基礎とし、臓器に特異的な自己免疫性疾患(セリアック病、自己免疫性甲状腺炎)、免疫不全、および免疫介在性輸血反応を包含する、免疫に関連した疾患を診断および予測するのための、このようなサイトカインの血清学的なアッセイの革新的な使用を完成させる。
【0069】
特に、出願人が得た実験結果は、複数の免疫に関連する病状(セリアック病、IgA欠乏症、自己免疫性甲状腺炎、免疫介在性輸血反応など)におけるBLySの発現および役割に関するものである。これらの病状は、特定の臓器の症状の原因となる免疫介在性応答によって、自己抗体の分泌によって、これら疾患同士の高い相関性および他の自己免疫性疾患との高い相関性によって、およびB細胞のクローン性またはT細胞のクローン性が発現するリスクの増加によって特徴付けられている。また出願人が得た実験結果は、これらの病状における新しい診断用、予測用、および治療用のマーカーとしてBLySを特定し提案することへと導いた。
【0070】
さらに、これらの病状において得られた結果に基づいて、本発明は、将来BLySが特定される可能性のある、他の全ての免疫介在性障害にも拡張され得る。
【0071】
混合型クリオグロブリン血症症候群における上述のBLySの研究結果によって、出願人は、このようなサイトカインが発見されて以降初めて、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症によるBLySの発現の上方制御における有望で重要な役割を特定すること、および同様のメカニズムを有する他のウイルスは同じ効果を生じさせると仮定することができるようになった。本発明の対象となる臓器に特異的な自己免疫性疾患において、依然未知であるが、細菌の感染(おそらくウイルスの感染)が病理過程を引き起こすという重要な役割を果たす。出願人は、HCV感染症そのものが、BLySの発現の増加を誘発し、クリオグロブリン血症症候群が現れるまで、素因を有する被験者のサブセットにおいて自己反応性B細胞の増殖を維持することに寄与できることを示した。ただし、クリオグロブリン血症症候群に罹患した患者の血清におけるBLySの値が慢性のHCV感染症だけに罹患した被験者よりも非常に高いという条件下において、この症候群の発生は、BLySの発現がさらに増加することとタイミングが一致した(Fabris Mら, J Rheumatol 2007; 46:37〜43)。
【0072】
これらの前提において、出願人は、セリアック病および自己免疫性甲状腺炎においても、BLySのレベルが増加すると仮定した。
【0073】
この効果は、主に内因性の(endogen)抗ウイルス応答によって、つまりインターフェロンによって媒介される。なお、インターフェロンは、種々の研究によってインビトロにおいてBLySの発現を強力に誘発することが示されている。
【0074】
セリアック病の病因における、Bリンパ球の役割は、HLAおよびTリンパ球の活性化が果たす根本的な役割と比較すると、これまでは非常に小さいと考えられてきた(LM Sollid, Thorsby E. Gastroenterology 1993; 105: 910〜922、Spurkland Aら, Tissue antigens 1997 ; 49:29〜34、およびMolberg Φら, Gastroenterology 2003; 125:337〜344)。しかし、出願人は、セリアック病に罹患した患者において高い割合(>80%)で、BLySが高血清レベルにて見出される事を示した(図1)。
【0075】
特に、図1は、セリアック病の患者におけるBLySの血清レベルを、健康なコントロール(HBDとも表記され、年齢および性別において調査対象の患者に匹敵する健康な被験者、つまり血液提供者からなるコントロール)と比較して示している。BLySの血清レベルは、健康なコントロールと比べて、セリアック病の患者において非常に高い(マンホイットニーのt検定、*p<0.0001)(正常域:<1.145ng/ml、平均+2SD)。
【0076】
ここで初めて明らかにされるこの結果は、この広く見られる(集団の約1.1%)腸疾患の病因の解釈における新しい鍵を暗示している。特に重要であることは、BLySがこれまで研究されてきた自己免疫性障害の全てと比べても、BLySの上方制御は、セリアック病において最も広く記録されている(5人中4人の患者)ことである。さらに、出願人が測定および分析したBLySの血清レベルは、この疾患に特異的な抗体である抗トランスグルタミナーゼ(a−tTG)の血清レベルと有意な相関があることを示している(図2参照。同図はBLySの血清レベルとa−tTG IgAレベルとの相関関係を示している。スピアマンの順位試験:r=0.399、95%CI:0.1724〜0.5856、p=0.0007)。また、BLySとa−tTGとの両方が、グルテンを含まない食事療法の導入および疾患の臨床上の寛解と同時に減少している(図3を参照。同図は、グルテンを含まない食事療法の開始後の、BLySの血清レベルの制御を示している。)。12人中8人(75%)の患者において、食事療法後のBlySのレベルが依然正常域より高いもののを用いたアッセイ)、食事療法後のBLySのレベルには、一般に有意な減少が見られる(1.619±0.410ng/mlから1.283±0.310ng/mlへ減少;*p=0.0122、ウィルコクソン符号順位検定)(>1.145ng/ml、エサイザのキット(R&D Systems社のクアントカインELISAキット(Quantkine ELISA kit), Minneapolis, 55413 USA)。
【0077】
ただし、a−tTGが陰性になり臨床上寛解に到達する症例であっても、BLySのレベルは大幅に減少したものの、正常域には達していない。このことは、疾患が無症候状態のまま継続すること、または疾患の素因になり、広く共有され、HLAの遺伝子型に相当するBLySの基礎レベルが比較的高いことを示唆している。
【0078】
感染力を有する共同参加物(co-participation)(ロタウイルス)がセリアック病の病因において関与している可能性を示す最近の根拠からは、クリオグロブリン血症症候群において観察されたことと同じように、BLySの血清レベルの上昇について別の仮説が立てられる。
【0079】
したがって、BLySのアッセイは、非典型的な症状のある場合、陰性のa−tTGの血清レベルをともなった場合、あるいは腸生検が実施不可能、または倫理的に薦められない場合などの疑わしい場合や、前記のような上記疾患に罹患するリスクが比較的高い個体の集団におけるスクリーニングとしても、さらなる診断上のツールとなる。
【0080】
さらに、高いBLySの血清レベルが全身的に継続すると、遺伝的に素因を有する個体において、他の自己免疫性疾患に対する罹患を促進する可能性がある。これは、BLySが、初期のトリガーおよびクローンの集団の形成から逃れるまで、その強力な抗アポトーシス効果によって、膨張したB細胞において遺伝子の変異をさらに促進することと同様である。
【0081】
出願人が前もって分析した混合型クリオグロブリン血症症候群の66人の患者において、高いレベルのBLySと有意な相関性を示した臨床上の特徴は、クローナルB細胞の増殖の存在だけであった。B細胞のクローン性の患者は、B細胞のクローン性を有しない患者と比較すると、非常に高いBLySのレベルを示した被験者の割合が有意に高かった(9.8%に対して33.3%; OR=4.6、CI=1.12〜18.96、p=0.04)。
【0082】
これらの症例では、各種B細胞腫瘍(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病)、およびさらに最近では一次的SS(primary SS)の患者の唾液腺に浸潤するBリンパ球(C Daridonら, Arthritis Rheum 2007; 56:1134〜1144)において見られるように、B細胞のクローンも自己分泌刺激メカニズムによって、BLySを分泌し、疾患に寄与するのかもしれないと考えることもできる。
【0083】
BLySは、クリオグロブリン血症およびSSの過程、ならびに複数の腫瘍性障害において先に示したように、多段階プロセスにおいて重要な役割を果たし得る。このプロセスは、セリアック病においてもリンパ腫の形成を引き起こす。実際に、このプロセスはB細胞およびT細胞の両方を刺激する(Mackay F, Leung H. Semin Immunol. 2006;18(5):284-289)。びまん性大細胞型B細胞腸リンパ腫を伴うセリアック病の患者において、出願人が非常に高いレベル(8.5ng/ml)のBLySを発見したことは、この仮説と矛盾しない。
【0084】
したがって、この結果は、BLySのアッセイを、B/T細胞のクローン性が疑われる(グルテンを含まない食事療法を厳格に遵守しているにもかかわらず、高いa−tTGレベルが継続している)セリアック病の患者の症例の補助的診断法として使用することが可能であることを示唆している。
【0085】
選択的な原発性IgA欠乏症(IgAD)は、免疫不全症のもっともよく見られる型であり、白人における推定発生率は1:600である。IgA単独欠損症の個体は、正常なIgA遺伝子を有するが、リンパ球の最終分化に欠陥を有しており、このことが血清およびムコサールIgAの生成不足を引き起こす(Cunningham-Rundles C. J Clin Immunol 2001;21(5):303〜309)。IgADに関連して多数の疾患、例えば、アレルギー、胃腸管および再発上気道の疾患、特に、自己免疫性疾患が報告されている(Liblau RSら, Int Arch Allergy Immunol 1992;99(1):16〜27)。最もよく見られる相関はセリアック病(CD)との相関であり、CDは通常、IgAD患者において明らかに欠如している、特定のIgA抗体を検出することによって診断されるので、特に重要である。図4に示すように、出願人は、コントロール(0.66±0.24ng/ml;p<0.0001)よりもIgAD患者(1.57±0.51ng/ml)においてBLySの血清レベルが有意に高いことを見出した。特に、IgAD患者の77.8%(35人/45人)が、正常域を超えたBLySのレベル(>1.14ng/ml)を有している。分析対象のIgAD患者のうち、26人がセリアック病CDに罹患していたが、IgADおよびセリアック病CDの患者19人と比べて大きな違いがなかった(1.67±0.57ng/ml、p=nsに対して1.49±0.46ng/ml)。IgAD患者と、CDに罹患しているが、IgAが正常である上述した一連の患者との間では、BLySのレベルの差は見られなかった(1.54±0.46ng/ml)。したがって、BLySは、IgADの患者において上方制御され、IgADと自己免疫性疾患とを強く関連付ける因子の一つである可能性があるが、B細胞のクローン性を形成するリスクを増加させる因子の一つである可能性もある。本発明では、BLySのアッセイを、IgADに罹患した被験者におけるB細胞のクローン性の形成の予測用マーカーとして革新的に使用する。
【0086】
自己免疫性の甲状腺疾患(AITD)は、よく見られる自己免疫性疾患であり、一般人口の罹患率は5%に上る。また、女性のほうが男性よりも罹患率が高い。甲状腺に指向する自己免疫(thyroid-directed autoimmunity)は、橋本甲状腺炎(HT)およびグレーブス・バセドウ病(GBD)の、2つの古典的自己免疫性症状において現れる。前者は、甲状腺機能低下症(抗TPOおよび抗サイログロブリン)の原因となり、後者は甲状腺機能亢進症(TSH受容体のアゴニストの自己抗体)の原因となる。AITDは、他の自己免疫性疾患(セリアック病、1型糖尿病、全身的コネクティバイティス(systemic connectivitis))と関連することが多い。AITDは、おそらく共通の自己免疫を誘発する表現型を共有しているのであろう。他の自己免疫性疾患のように、AITDは、B細胞クローナル疾患(特にHT患者)の発生リスクを増加させる。
【0087】
図5に示すように、出願人は、77人の白人のAITD患者(内訳、男性10人および女性67人、平均年齢48.2±16.1歳、HT患者52人およびGBD患者25人)を研究し、BLySの血清レベルを、77人の年齢および性別が一致する健康なコントロールと比較して分析した。AITD患者は、BLySのレベルにおいて有意な増加を示した(p<0.0001)。GBD患者は、HT患者よりも高いBLySを示す傾向があった(p=0.06)。HTおよびGDのどちらにおいても、BLySのレベルと自己抗体との間の有意な相関性は見られなかった。一方で、BLySとFT4との間では、正の相関性が見られた(r=0.31;p=0.012)。さらにその一方で、TSH(r=−0.45;p=0.0002)の場合は、逆の相関性が見られた。
【0088】
実際、HT患者において、FT4のレベルが正常である患者は、甲状腺機能低下症患者に比べてBLySが非常に高い(*p=0.0396)(図6)。
【0089】
出願人は、BLySのレベルがAITDの患者において高いことを本発明において初めて仮定し、かつ見出した。このことは、これらの自己免疫性障害においても、BLySが病因としての重要な役割をしていることを示唆している。全身的自己免疫性疾患(RA、SS、LES)において先行する実証より革新的な様式において、BLySのレベルは、甲状腺の機能性とは相関性を有するが、自己抗体の分泌とは相関性を有していない。したがって、BLySは、HTの甲状腺機能が正常な第1の段階において比較的高く、甲状腺活性化のマーカーとして(自己抗体を分泌するプラズマ細胞のマーカーとしてとしてではない)GBDにおける甲状腺機能亢進症のレベルと相関性を有する。甲状腺がその機能を喪失すると(臨床上は甲状腺機能低下症によって顕在化する)、BLySは減少する。また、BLySの過剰発現は、他の自己免疫性疾患またはリンパ増殖性疾患を発症するAITDの患者の割合の増加を説明する可能性のある、メカニズムの一つを表わしているのかもしれない。
【0090】
以上のように、本発明は、AITDの患者における治療の有効性の診断、予測、およびスクリーニングのためのBLySの血清学的なアッセイの使用を提案する。
【0091】
自己免疫性疾患の患者は、一般的な集団に比べて、輸血後に不規則同種抗体を生成する傾向が高いことが、最近観察されている。輸血反応の発生を予測できる公知のマーカーは、今のところ存在しない。自己免疫性疾患と免疫介在性のメカニズムとの関連に基づいて、出願人は、サイトカインBLySも輸血反応において役割を有する可能性があることを考えるに至った。この目的のために、ウディネ大学病院、血液製剤配布実験室の5人の患者に対して予備研究を行った。これらの5人の患者の内訳は、輸血を繰り返し行ったにもかかわらず同種抗体/自己抗体の形成を示さない患者(pts A型)が2人と、高濃度の赤血球を複数単位にて輸血した後に同種抗体/自己抗体を形成した患者が3人(pts B型)である。同種抗体/自己抗体反応のある患者(B型)では、反応のない患者(A型)に比べて、BLyS/BAFFのレベルが高い傾向があった(平均値で、1.29ng/mlに対して2.48ng/ml)。また、全てのB型の患者が、正常な閾値より高いBLySのレベルを示した(>1.14ng/ml)。
【0092】
したがって、本発明は、以下の状況において、血清BLySのアッセイを革新的な様式にて提供する。
i)以下に列挙する疾患を包含する免疫介在性疾患の過程における、診断用/予測用マーカー(確定、重症度、過程、B細胞/T細胞のクローン性)および治療効果のスクリーニング。すなわち、
例えば、セリアック病、橋本甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎、産後甲状腺炎、グレーブス・バセドウ病などの、臓器に特異的な自己免疫性疾患、
例えば、輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、輸血反応などの、輸血に関連した免疫介在性疾患、および、
例えば、IgA欠乏症、分類不能型免疫不全症などの、免疫不全症。
【0093】
したがって、患者の免疫介在性疾患における診断および/または予測および/または効果的な治療法のスクリーニングに対して適用される本発明は、以下のステップを包含する。すなわち、
患者の血清を得るための血液サンプルを採取するステップと、
この血清サンプルを検査して、濃度を決定するステップ、すなわちエサイザの技術を用いたサイトカインBLySのアッセイのステップと、
先のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、サイトカインBLySの濃度の1つ以上の参照値とを比較するステップと(なお、この参照値は、健康な集団(健康な血液提供者:HBD)について、または免疫介在性疾患に罹患した、および/または特定の臨床的症状(例えばB細胞のクローン性またはT細胞のクローン性)が見られるとの診断を受けた患者の集団について、あるいは治療法の開始前に分析した同じ患者からの血清サンプルについて決定された参照値である。)、
先のステップから得られる、サイトカインBLySの決定された濃度と、先のステップにおいて示されたサイトカインBLyS濃度の参照値との間の、有意な偏差を特定するステップと、
上記ステップに従って、特定の臨床的症状(例えばB細胞のクローン性またはT細胞のクローン性)について、または上述の免疫介在性疾患の過程における治療有効性のレベルについて診断および/または予測を行うための、決定的なおよび/または推定的な型のステップとである。
【0094】
診断方法の特定の場合において、上述の比較のステップは、患者について決定されたサイトカインBLySの濃度と、健康な集団について決定されたサイトカインBLySの濃度の1つ以上の参照値とを比較するために実施される。これにより、有意な偏差を特定するステップによって、上述の疾患の一つに罹患したとして患者を選択する。また、有意な偏差を特定するステップと、決定的なおよび/または推定的な型の最後のステップとの間で、患者について決定されたサイトカインBLySの濃度と、別の患者の集団のサイトカインBLySの濃度の値とを比較する、さらに別の比較ステップを設ける。この“別の患者”とは、免疫介在性疾患に罹患した、および/または特定の臨床的症状が見られるとの診断を受けた患者である。そして、この別の比較ステップを設けることによって、最後のステップにおいて、前述の全ての免疫介在性疾患の中から、決定された免疫介在性疾患であると診断する。
【0095】
好ましくは、アッセイは、異なる生物学的なマトリックス(血液、尿、脳脊髄液、空洞性浸出液(cavitary effusions)、組織切片、細胞培養物)におけるBlySを特定および定量化することができる方法から選択される。
【0096】
また、このアッセイは、ELISAの技術を用いた、主要病院に通常備え付けられている自動装置を使用して実現されるので、このアッセイを採用しても、この新しいマーカーを使うにあたって利用する病棟の設備またはこの病棟を構成する構造物に対して実質的な修正を加えるわけではない。
【0097】
したがって、本発明は、BLySのアッセイの使用を、以下の状況においても革新的な様式にて提供する:
ii)臓器に特異的な自己免疫性疾患および輸血反応(例えば免疫不全症(IgA欠乏症))が発生しやすい状態、他の全身的な自己免疫性疾患または臓器に特異的な自己免疫性疾患、HLAの遺伝子型、慢性のウイルス感染症が存在しやすい状態における診断用および/または予測用マーカー、
iii)第i)項で述べた、臓器に特異的な自己免疫性疾患(セリアック病の患者における食事療法の遵守、免疫系の活性化マーカー、治療法の一般的な有効性、疾患の再活動化、罹患した組織の残存機能、萎縮の進行など)のモニタリング(なお、この場合、本発明に基づいて、上記モニタリング方法は上記診断方法と同じステップを包含し、治療を伴う、または治療を伴わない臨床上の経過観察の間に、自己免疫性疾患の患者に対して適用される。さらにこの場合、上記第3の段階において、上述の比較は、患者において前もって検出されたサイトカインBLySの濃度の1つ以上の値に対しても行われ、また、患者における免疫介在性疾患の進行を経時的に評価するために、第5の診断ステップに基づいて、その後の第6のステップにおいて、先行する5つのステップを所定の時間間隔で繰り返すことが決定されてもよい。)、
v)(例えばセリアック病の患者または自己免疫性甲状腺炎において)より侵襲的アプローチの前に行う、診断のプロセスにおけるさらなる”決定を行う物(decisional maker)”。
【0098】
上述したような免疫介在性疾患の過程における診断方法および予測方法における、サイトカインBリンパ球刺激因子の血清学的なアッセイの使用に対して、本発明の分野および範囲から逸脱することなく、各部および/またはステップの修正および/または付加を行ってもよいことは明らかである。また、本発明は特定の例を参照して記載されているが、当該技術分野の当業者が、診断方法および予測方法における、サイトカインBリンパ球刺激因子の血清学的なアッセイの使用の他の等価の形態を実現することができることも明らかであるが、これらの形態は全て請求項において説明する特性を有している限り、請求項において規定する保護の対象となるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において免疫介在性疾患を確定するための診断用マーカーとしてのサイトカインBリンパ球刺激因子(BLyS)のアッセイの使用であって、
該免疫介在性疾患は、
セリアック病、および自己免疫性甲状腺炎などの、臓器に特異的な自己免疫性疾患と、
輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、および輸血反応などの、輸血に関連した免疫介在性疾患と、
を含む群に包含され、
該患者は、該免疫介在性疾患を示唆する症状または徴候を有する、および/または該免疫介在性疾患が疑われる状況にある、および/または該免疫介在性疾患の素因を有する患者であり、
該患者から血液サンプルを採取する第1のステップと、
該血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第2のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度を、健康なコントロール群について前もって得られたサイトカインBlySの濃度の1つ以上の参照値と比較する第3のステップと、
第3のステップにおける比較から導き出される、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBlySの濃度と該健康なコントロール群について前もって得られたサイトカインBlySの濃度の参照値との間の、有意な偏差を特定して、該免疫介在性疾患の一つに罹患したとして患者を選択する第4のステップと、
該免疫介在性疾患の一つに罹患したとして選択された患者の、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、サイトカインBlySの濃度の1つ以上の参照値であって、該免疫介在性疾患に罹患した、および/または活動性疾患またはその特定の過程の診断が確立された、一連の患者について前もって得られたBLySの参照値の範囲内である参照値とを比較する第5のステップと、
第5のステップにおいてなされた比較に基づいて、該免疫介在性疾患の1つ以上の確定的な疾患の診断を行う第6のステップと、
を包含する方法における、使用。
【請求項2】
前記方法の前記第2のステップが、ELISAの技術に基づく自動装置を用いて実施されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
免疫介在性疾患の過程におけるクローン性のB細胞またはT細胞の出現において、患者を経時的にモニタリングするための方法におけるマーカーとしてのサイトカインBLySのアッセイの使用であって、
該免疫介在性疾患は、
セリアック病、および自己免疫性甲状腺炎などの、臓器に特異的な自己免疫性疾患と、
輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、および輸血反応などの、輸血に関連した免疫介在性疾患と、
IgA欠乏症、および分類不能型免疫不全症などの、免疫不全症と、
の群に包含され、
該方法は、
該免疫介在性疾患に罹患した患者から血液サンプルを採取する第1のステップと、
該血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第2のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、サイトカインBLySの濃度の1つ以上の参照値および/または患者から前もって検出されたサイトカインBLySの1つ以上の値とを比較する第3のステップと、
第3のステップにおける比較から導き出される、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と第3のステップにおいて示されたサイトカインBLySの濃度の参照値との間の、有意な偏差を特定する第4のステップと、
第4のステップにおいて特定された偏差に従って、該免疫介在性疾患の過程においてB細胞のクローン性/T細胞のクローン性へと進行するリスクが発生するとみなす第5のステップと、
第5のステップの結果に基づいて、第1のステップから第5のステップを所定の時間間隔で経時的に繰り返すことを決定する第6のステップと、
を包含する、使用。
【請求項4】
免疫介在性疾患の予測をするための方法における予測用マーカーとしてのサイトカインBリンパ球刺激因子(BlyS)の使用であって、
該免疫介在性疾患は、
セリアック病、および自己免疫性甲状腺炎などの、臓器に特異的な自己免疫性疾患と、
輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、および輸血反応などの、輸血に起因する免疫介在性疾患と、
を含む群に包含され、
該方法は、
i)慢性の細菌感染症(肝炎ウイルス、疱疹ウイルス、クラミジアなど)の存在、
ii)疾患の発病のプロセスまたは一般に使用される治療法の対象における、特定のHLAの遺伝子型または重要因子をコードする遺伝子の存在、
iii)甲状腺腫を伴う、または伴わない無症候性甲状腺機能低下症、
iv)産後の鬱病および/または産後の甲状腺機能低下症、
v)1つ以上の活動性の免疫介在性疾患の存在、
vi)輸血の必要性、および
vii)新しい治療法の開始
の状況の1つ以上によって特徴付けられる患者を選択する予備的なステップと、
選択された患者から血液サンプルを採取する第1のステップと、
該血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第2のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、サイトカインBLySの濃度の1つ以上の参照値とを比較する第3のステップと、
第3のステップにおける比較から導き出される、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と第3のステップにおいて考慮される参照値との間の、有意な偏差を特定する第4のステップと、
該免疫介在性疾患について第4のステップにおいて特定された偏差に基づいて、予測を行う第5のステップと、
を包含する、使用。
【請求項5】
免疫介在性疾患に罹患した患者の治療をモニタリングする方法におけるマーカーとしてのサイトカインBLySのアッセイの使用であって、
該免疫介在性疾患は、
セリアック病、および自己免疫性甲状腺炎などの、臓器に特異的な自己免疫性疾患と、
輸血後の免疫処置、母体と胎児との間の不適合、および輸血反応などの、輸血に起因する免疫介在性疾患と、
を含む群に包含され、
該方法は、
該免疫介在性疾患を治療する治療ステップと、
治療法を行う前に、該患者から血液サンプルを採取する第1のステップと、
該血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第2のステップと、
治療法の開始後に、所定の時間間隔で該患者から1つ以上の血液サンプルを採取する第3のステップと、
第3のステップの該1つ以上の血液サンプルを検査して、サイトカインBLySの濃度を決定する第4のステップと、
第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と、第4のステップにおいて患者から検出されたサイトカインBLySの濃度の値とを比較する第5のステップと、
第5のステップにおける比較から導き出される、第2のステップにおいて決定されたサイトカインBLySの濃度と第4のステップにおいて検出されたBLySの値との間の、有意な偏差を特定する第6のステップと、
第6のステップにおいて特定された偏差に基づいて、治療的処置に有効性があるとみなす第7のステップと、
を包含する、使用。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用であって、前記サイトカインBLySのアッセイが、
患者を対象とする、前記免疫介在性疾患の主な徴候および症状を特定可能な理学的検査、
患者を対象とする、1回以上のX線検査、
上記患者から採取された生検用標本の組織学検査、および
上記患者から採取された生検用標本、末梢血液、または骨髄の、分子的な分析
からなる群より選択される、1回または複数回の検査のステップと組み合わせられ得る、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−540948(P2010−540948A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527431(P2010−527431)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063081
【国際公開番号】WO2009/043848
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510089502)ウニヴェルシタ デグリ ストゥディ ディ ウーディネ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA’ DEGLI STUDI DI UDINE
【住所又は居所原語表記】Via Palladio,8,I−33100 Udine,Italy
【Fターム(参考)】