説明

免疫アッセイ標準物質およびアッセイ内の校正標準物質を用いる臨床バイオマーカーの測定

本発明は、分析物を標準化するための新規な組成物および定量用標準物質の調製方法を提供する。これらの組成物および方法は、分析物を分析し、臨床バイオマーカーを測定するための標準物質および検量用試料の調製を可能にする。また、本発明は、アッセイ、例えば、サンドイッチ免疫アッセイに使用するための新規な組成物を含むキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫アッセイにおいて臨床バイオマーカーを測定するために標準物質および検量用試料として用いることができる新規な組成物に関する。本発明はまた、前記組成物の使用方法および前記組成物を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβ(Aβ)ペプチドは、ベータセクレターゼおよびガンマセクレターゼ酵素複合体によるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断から生じる(非特許文献1)。ベータセクレターゼは、これらのアミロイドペプチドのN末端を生じ、ガンマセクレターゼは、C末端を生じる(非特許文献1)。続いて、ガンマセクレターゼのAPP切断に応じて、典型的に、38から42アミノ酸長の範囲にある数種類のペプチドが生じる。Aβペプチドは、細胞外ドメイン(アミノ酸1〜28)および脂質二層に埋まっている膜貫通領域(アミノ酸29〜42)を有する。42アミン酸長であるアミロイドペプチド(Aβ42)は、単独または凝集物として、推定上の神経毒性種であると考えられている。これらの凝集物は、脳に神経変性を生じ、結果としてアルツハイマー病および認知症を発症させることが疑われている。Aβ42が臨床的に認知症を発症させるという仮説は、Hardyら(非特許文献2)によって発表されたようにアミロイドカスケード説と呼ばれる。
【0003】
Aβペプチドの特徴の1つは、生理学的濃度でオリゴマーに自己集合できることである(非特許文献3および4)。Aβ42種は、Aβ40およびAβ38種と比較して、オリゴマーをより形成しやすい。オリゴマー形成のメカニズムは、逆平行の形でAβペプチドの結合を介在するアミノ酸16から20(KLVFF)に位置する小さな5アミノ酸領域から生じることが示されている。よって、この小さな領域は、「凝集ドメイン」と呼ばれている(非特許文献5)。Aβペプチド凝集は、一定条件下で、特に、低いpH範囲で、急速に(すなわち、数分以内に)会合し、中和もしくは高いpHではわずかに遅延した反応速度で会合する(非特許文献3)。凝集物は、水溶液中で、特に、塩の存在中で溶解性に乏しい。AβペプチドのC末端は、塩橋により二量体のコア上で折り返し、それにより疎水性を高め、ペプチドのフィラメントもしくは線維へのさらなる多量体化を促進する。Aβ42種のさらなる2つのC末端残基は、他のAβ種と比較して疎水性を増加させる(非特許文献6)。
【0004】
臨床データにより、認知症および認知機能低下の程度は、Aβ40種またはAβ38種のいずれよりもAβ42濃度により強い関連を示すことが示唆されている。この知見により、Aβ42の急速な凝集特性とともに、Aβ42凝集の阻害が臨床的利益を示しうるという仮説が導き出された。Aβ42凝集の形成を阻害するために用いることができる異なるメカニズムを示す多くの研究が存在している。Tjernbergら(非特許文献5)は、凝集ドメインを含むペプチドがAβペプチドに十分に結合し、凝集物の形成を阻害することを示した。凝集ドメインに結合するいくつかの他の分子はまた、アミロイドペプチド凝集を阻害することが示されている(非特許文献7および8)。凝集コアドメインにおけるアミノ酸の置換または全体の凝集ドメインの欠失はまた、Aβペプチド凝集および線維形成を阻害する(非特許文献9)。さらに、Aβ42および関連するペプチド種の量を低下させるために、様々な薬物がガンマセクレターゼ活性を阻害するように設計されている。臨床におけるこれらのアプローチの有用性は、現在研究中である。
【0005】
Aβ42の発生を阻害するか、またはその凝集を阻害する分子の有効性を評価するために、Aβ42量を正確に測定することが必要である。生物学的試料中のAβ42を検出し、定量するために用いられるいくつかの技術が存在し、これらには、免疫アッセイ(非特許文献10〜12)および質量分析(MS)に基づく方法(非特許文献13および14)が含まれる。MSに基づく方法には、質量分析法を準備した液体クロマトグラフィーと組み合わせたMALDI−TOFおよびSELDI−TOFが含まれ、当該方法は、生物学的試料中の多くのアミロイドベータ種を検出することができるが、現在、臨床サンプル中のAβ42を測定するために必要とされる十分な定量的な値を供しない。
【0006】
免疫アッセイ法は、N末端に特異的である第1の抗体およびAβ42のC末端に高度に特異的である第2の抗体を含む(すなわち、その他のAβペプチド種を認識しない)二重サンドイッチ免疫アッセイに基づくものである。2つの基本型の免疫アッセイが存在する。第一の型は、固相表面に固定化されたN末端領域に特異的な抗体により生物学的試料中のAβペプチドを捕捉するものである。タグを保有するAβ42特異的な抗体は、抗体サンドイッチを完成するために免疫アッセイに加えられる。第二の型は、固相表面上に固定化されたAβ42のC末端領域に特異的な抗体により生物学的試料中のAβペプチドを捕捉するものである。タグを保有するN末端領域特異的な抗体が免疫アッセイに加えられる。いずれの型においても、第二の抗体により導入されたタグが完全な複合体の検出を可能にする。これらのアッセイは、生物学的試料の代わりに加えられるAβ42標準物質の使用により定量的に行われる。標準物質から測定されたシグナルは、検量線を作成するために用いられ、続いて生物学的試料中のAβ42を定量するために用いられる。
【0007】
これまで、免疫アッセイにおけるAβ42標準物質の使用は、典型的に最も容易に調製される合成の全長Aβ42ペプチドに依存していた。しかしながら、これらのペプチドは、強い疎水性を有しており、それゆえ水溶液に溶解しない。さらに、標準物質としてのAβ42の保存および使用には多くの問題が存在する。上記のように、Aβ42は急速に凝集物を形成し、この形成は室温および中性pHでより容易に生じる。低温(−20℃より低い)および低pHでの長期保存は、保存中の凝集を最小にすることを助けるが、凝集を防げるものではない。免疫アッセイの影響を受けやすい緩衝液中でのAβ42の再構成はまた、容易ではない。これらの溶液は、ほとんどの場合、水性であり、中性pHで緩衝化され、塩を含有し、室温で用いられるため、Aβ42凝集を促進する全ての条件に当てはまる。凝集したAβ42ペプチドは、不溶性沈殿物であり、および検出または捕捉抗体のいずれかによって認識されるサイズおよび利用可能性の両方で不均一であるため、免疫アッセイにおける標準物質として有用ではない。
【0008】
それゆえ、本発明は、液体または組織抽出試料中のAβ42ペプチドの存在量を正確に測定するために、免疫アッセイまたはその他の方法で標準物質または検量用試料として用いることができるAβ42ペプチドもしくはタンパク質構築物およびこれらの組成物を調製するのに有用な方法を提供することによって当該技術分野での必要性を満たす。とりわけ、本発明の組成物および方法は、免疫アッセイ法で使用するためのAβ42の凝集しないペプチド標準物質を調製することを目的とする。本明細書に記載の組成物および方法は、測定し、定量することが困難である他の多くのペプチドに対する広範な適用性を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Wolfe, Biochemistry, 45:7931-7939 (2006)
【非特許文献2】Science, 256:184-185 (1992)
【非特許文献3】Burdick et al., Journal of Biological Chemistry, 267:546-554 (1992)
【非特許文献4】Cerf et al., Biochemical Journal, 421:415-423 (2009)
【非特許文献5】Tjernberg et al., Journal of Biological Chemistry, 271:8545-8548 (1996)
【非特許文献6】Kim et al., Journal of Biological Chemistry, 280:35069-35076 (2005)
【非特許文献7】Martharu et al., Journal of Neurological Sciences, 280:49-58 (2009)
【非特許文献8】Kim et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 303:576-279 (2003)
【非特許文献9】Tjernberg et al., Journal of Biological Chemistry, 274:12619-12625 (1999)
【非特許文献10】Olsson et al., Clinical Chemistry, 51:336-345 (2005)
【非特許文献11】Verwey et al., Journal of Immunological Methods, 348:57-66 (2009)
【非特許文献12】Sjogren et al., Journal of Neural Transmission, 107:563-679 (2000)
【非特許文献13】Cantone et al., Journal of Neuroscience Methods, 180:255-260 (2009)
【非特許文献14】Journal of Mass Spectrometry, 40:142-145 (2005)
【発明の概要】
【0010】
ある態様において、本発明は、N末端免疫反応領域、C末端免疫反応領域およびリンカー領域を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、N末端免疫反応領域、C末端免疫反応領域およびリンカー領域を含む組成物であって、免疫アッセイにおいて標準物質として用いられる組成物を提供する。ある実施態様において、前記免疫アッセイは、サンドイッチ免疫アッセイ、単一抗体アッセイ、二重サンドイッチ免疫アッセイおよび競合アッセイからなる群から選択されるものである。別の実施態様において、前記組成物は、タンパク質、ペプチド、フラグメントおよび改変タンパク質からなる群から選択されるものである。ある実施態様において、N末端免疫反応領域は、Aβ42、Aβ40、Aβ38、タウまたはインスリン増殖因子受容体1に結合する。別の実施態様において、C末端免疫反応領域は、Aβ42、Aβ40、Aβ38、タウまたはインスリン増殖因子受容体1に結合する。別の実施態様において、前記リンカー領域は、非免疫反応ドメインである。別の実施態様において、前記リンカー領域には、ポリエチレングリコール、グルタミン残基、アラニン残基、リジン残基、脂質、球状タンパク質、核酸(DNA、RNAおよびPNAを含むが、これらだけに限定されない)およびアルキル鎖からなる群から選択されるリンカーが含まれる。
【0011】
別の態様において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26または27のアミノ酸配列を有する、単離されたペプチド分子を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、生物学的試料中の分析物の質量の測定方法であって:標準物質を少なくとも2種類のビーズに結合させ、それにより第1ビーズセットおよび第2ビーズセットを生成し(ここで、前記標準物質には、第1検出抗体によって認識されるエピトープが含まれ、各ビーズセットには、異なる濃度の標準物質が含まれる);前記分析物に特異的な捕捉抗体を第3ビーズセットに結合させ;全てのビーズセットを一緒に混合してサスペンションアレイを生成し;前記生物学的試料を前記サスペンションアレイに適用し(これにより前記分析物は、第3ビーズセット上の捕捉抗体に結合する);第1検出抗体をサスペンションアレイに加え(ここで、第1検出抗体は、標準物質および捕捉抗体に結合した分析物に結合する);第1ビーズセット中の標準物質に結合した第1検出抗体から第1シグナルを測定し;第2ビーズセット中の標準物質に結合した第1検出抗体から第2シグナルを測定し;前記第1および第2シグナルに基づいて検量線を作成し;次いで、第1検出抗体から第3シグナルを測定し、前記第3シグナルを検量線上の第1および第2シグナル測定値と比較することによって、第3ビーズセット中の分析物を定量することを特徴とする方法を提供する。
【0013】
ある実施態様において、標準物質には、N末端免疫反応領域、C末端免疫反応領域およびリンカー領域を含む組成物が含まれる。別の実施態様において、標準物質には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9.10、11、12、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26または27のアミノ酸配列を有するペプチドまたは改変ペプチドが含まれる。
【0014】
別の実施態様において、生物学的試料は、血液、血清、血漿、末梢血単核球、末梢血リンパ球、組織、脳脊髄液および細胞からなる群から選択されるものである。別の実施態様において、分析物は、Aβ42、Aβ40、Aβ38、タウまたはインスリン増殖因子受容体1からなる群から選択されるものである。
【0015】
別の実施態様において、前記方法は、マルチウェルプレート、ニトロセルロースフィルター、ガラス繊維中またはスライドガラス上で行われる。別の実施態様において、第1シグナルおよび第2シグナルは、フィコエリスリン、アレクサ532、ストレプトアビジン−フィコエリスリンおよびストレプトアビジン−アレクサ532からなる群から選択されるシグナルである。別の実施態様において、標準物質は、ビーズに共有結合している。別の実施態様において、捕捉抗体は、ビーズに共有結合している。別の実施態様において、前記共有結合は、カルボジイミド結合である。
【0016】
別の態様において、本発明は、Aβ42ペプチドを検出する免疫アッセイを実施するためのキットであって、本発明の組成物を含むことを特徴とするキットを提供する。
【0017】
表の簡単な説明
表1は、Aβペプチドの所望される物理学的特性およびこれらの特性を測定するために用いられる試験を示す。
【0018】
表2は、Aβ42ペプチドおよび改変ペプチド配列ならびに説明を示す。
【0019】
表3は、タウペプチドおよび改変ペプチド配列ならびに説明を示す。
【0020】
表4は、3種類のヒト脳脊髄液(CSF)試料中のAβ42ペプチドの測定濃度を示す。
【0021】
表5は、特徴付けられた新規なAβペプチドの一覧を示す。
【0022】
表6は、動的光散乱(DLS)データの概要を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、両側(two-sided)またはサンドイッチ可溶性標準物質のスキームを示す。
【図2】図2は、典型的なAβ42サンドイッチ免疫アッセイからの検量線を示す。
【図3】図3は、改変Aβ42ペプチド標準物質を用いた典型的なAβ42サンドイッチアッセイを示す。図3Aは、改変された標準物質2(配列番号2)および4(配列番号4)からの検量線を示す。図3Bは、改変された標準物質12(配列番号12)および13(配列番号13)からの検量線を示す。図3Cは、改変された標準物質14(配列番号14)および6(配列番号6)からの検量線を示す。
【図4】図4は、Aβ42アッセイ内ビーズ法(intra-assay bead approach)のスキームを示す。
【図5】図5Aは、異なる濃度のAβ1〜10ペプチド(配列番号15)と共有結合した6種類の異なるルミネックスビーズセットの測定された平均蛍光強度(MFI)を示す。図5Bは、図2に示される曲線に類似する、Aβ40アッセイ内標準物質(円)または可溶性標準物質としての天然Aβ42ペプチド(三角形)のいずれかから4−PLで作成した検量線を示す。図5Cは、可溶性Aβ42ペプチドまたはアッセイ内Aβ40標準物質のいずれかから作成した検量線を用いたヒトCSF試料中の測定されたAβ42ペプチドを示す。
【図6】図6は、ヒト末梢血単核球溶解物中のリン酸化されたインスリン増殖因子受容体1(IGF−R1)のレベルを示す。A4パラメータ検量線は、異なるビーズセットにおけるMFI値から作成し(図6A)、PBMC溶解物中のリン酸化されたIGF−R1の相対的なレベルを決定するために用いた(図6B)。
【図7】図7は、DLSデータを示す。
【図8】図8は、円二色性分析を示す。
【図9】図9は、ペプチド安定性データを示す。全長Aβ42および7種類の改変ペプチドは、異なる温度で40日間安定性実験に付した(図9A〜9F)。
【図10】図10は、全長Aβ42と7種類の改変ペプチドとの検量線の比較を示す。
【図11】図11は、全長と改変ペプチドとの検量線分析を示す。
【図12】図12は、全長と改変ペプチドとを用いたCSF試料分析を示す。
【図13】図13は、Aβ(1-42)ペプチドに取り込まれたポリエチレングリコールスペーサーの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、下記の本発明の好ましい実施態様の詳細な説明および本明細書に含まれる実施例を参照することによってより容易に理解されうる。
【0025】
本発明は、免疫アッセイで臨床バイオマーカーを測定するために、標準物質および検量用試料として用いることができる新規な組成物および方法に関する。本発明はまた、前記組成物および前記組成物を含むキットの使用方法に関する。とりわけ、本発明の組成物および方法は、免疫アッセイ法において使用するためのAβ42またはタウについての凝集しないペプチド標準物質を作成することを目的とする。
【0026】
本発明はまた、本発明の組成物を含むキットに関する。
【0027】
定義
本明細書で用いられるように、用語「Aβ」は、アミロイドベータを意味する。
【0028】
本明細書で用いられるように、用語「Aβ42」は、アミロイドベータ1〜42を意味する。「Aβ42」は、表2に示されるようなアミノ酸配列である配列番号1を有する42アミノ酸長ペプチドを意味する。
【0029】
本明細書で用いられるように、用語「Aβ38」は、アミロイドベータ1〜38を意味する。「Aβ38」は、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGG(配列番号17)を有する38アミノ酸長のペプチドを意味する。
【0030】
本明細書で用いられるように、用語「Aβ40」は、アミロイドベータ1〜40を意味する。「Aβ40」は、表2に示されるような配列である配列番号15を有する40アミノ酸長ペプチドを意味する。
【0031】
本明細書で用いられるように、用語「タウ」は、表3に示されるようなアミノ酸配列である配列番号20に相当する天然のタウタンパク質を意味する。
【0032】
本明細書で用いられるように、用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、とりわけ、それらが選択された抗原に対して結合活性または親和性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(すなわち、二重特異性抗体)および抗体フラグメント(すなわち、Fab、F(ab’)、sub.2およびFv)を包含する。「抗体」はまた、単離された抗体と同一の特性を有するファージまたはその他の表示担体などの担体タンパク質/生物に結合または融合した抗体または抗体フラグメントを意味しうる。
【0033】
本明細書で用いられるように、用語「単離された」は、目的タンパク質およびタンパク質複合体に関して本明細書で用いられるように、通常、そのタンパク質または複合体とともに存在するであろう(すなわち、そのタンパク質または複合体が内在的に見出される細胞環境において)混入タンパク質を本質的に含まないタンパク質またはタンパク質複合体の調製を意味する。それゆえ、単離されたタンパク質複合体は、通常、単離した複合体の研究、例えば、その調節因子についてのスクリーニングに「混入する」か、または妨げるであろう細胞構成物から単離される。しかしながら、かかる「単離された」複合体は、目的タンパク質またはタンパク質複合体による調節が研究されている他のタンパク質を取り込んでいる可能性があることが理解されるべきである。
【0034】
本明細書で用いられるように、用語「単離された」は、DNAまたはRNAなどの核酸について本明細書でも用いられるように、天然に存在しない形態の分子を意味する。さらに、「単離された核酸」は、フラグメントとして天然に存在しておらず、自然界で見出されないであろう核酸フラグメントを含むものとされる。
【0035】
本明細書で用いられるように、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、必要な場合には、リボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを意味する。当該用語はまた、ヌクレオチド類似体から作り出されたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を等価物として含み、ならびに記載される実施態様に適用可能であるとして一本鎖(センスまたはアンチセンスなど)および二本鎖ポリヌクレオチドを含むものと理解されるべきである。「核酸」はまた、ペプチド核酸「PNA」または人工的に合成されたDNAもしくはRNAを意味しうる。
【0036】
本明細書で用いられるように、用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書において相互に同じ意味として用いられる。用語「精製されたタンパク質」は、通常、細胞または細胞溶解物中でタンパク質に付着した他のタンパク質からできる限り単離されるか、あるいは実質的に含まないタンパク質の調製物を意味する。本明細書で用いられるように、用語「改変ペプチド」は、ペプチドの天然配列に対して改変されているペプチドを意味する。例えば、改変には、天然ペプチド配列内の有害なドメインの除去またはリンカーの付加が含まれる。
【0037】
本明細書で用いられるように、用語「結合する」は、生理学的条件下において、例えば、共有結合、静電気、疎水性、イオン性および/または水素結合相互作用などによる、2分子間の直接の結合を意味する。同様に、2つまたはそれ以上のポリペプチド間の「複合体形成」は、生理学的条件下において、例えば、共有結合、静電気、疎水性、イオン性および/または水素結合相互作用などによる、ポリペプチド間の直接の結合を意味する。
【0038】
本明細書で用いられるように、用語「ドメイン」は、特定の構造を含み、および/または特定の機能を発揮するタンパク質の領域(すなわち、凝集ドメインである「リン酸化ドメイン」)を意味する。本明細書で用いられるように、用語「凝集ドメイン」は、逆平行の形でAβペプチドの結合を介在するアミノ酸16から20に位置する5アミノ酸領域(KLVFF(配列番号18))を意味する。
【0039】
本明細書で用いられるように、用語「免疫反応ドメイン」は、抗体によって認識されうる特定のアミノ酸配列を含むタンパク質の領域を意味する。この領域には、当業者に公知のグリコシル化、メチル化、リン酸化またはその他の翻訳後修飾などの改変を含有するアミノ酸配列が含まれる。リン酸化されうるアミノ酸の例には、チロシン、セリンまたはスレオニンアミノ酸が含まれる。リン酸化されるアミノ酸が含まれる「免疫反応ドメイン」はまた、リン酸化ドメインとして特徴付けされうる。「免疫反応」ドメインにはまた、タンパク質の天然の折りたたみ状態で相互に近接し、抗体結合部位をともに含むタンパク質の2つまたはそれ以上の領域が含まれるであろう。
【0040】
本明細書で用いられるように、本明細書で用いられる用語「免疫アッセイ」は、1つまたはそれ以上の抗体を利用して生体マトリックス中の分析物の存在または濃度を測定する生化学的試験を意味する。このアッセイは、特異的なタンパク質またはペプチドの免疫反応ドメインに対する抗体の特異的結合に応じて測定可能なシグナルを生じうる。
【0041】
標準物質
ある態様において、本発明は、臨床バイオマーカーを測定するために標準物質および検量用試料として用いることができる組成物に関する。ある実施態様において、前記標準物質には、ペプチドが含まれる。当該ペプチドは、改変ペプチドでありうる。改変ペプチドには、非免疫反応ドメイン中のリンカー、欠失もしくは置換が含まれうる。別の実施態様において、非免疫反応ドメインは、凝集ドメインまたはリン酸化ドメインである。
【0042】
凝集または非免疫反応ドメインにおける変異
ある態様において、本発明は、標準物質として用いることができる改変ペプチドを提供する。Aβ42のような付着ペプチドとそれ自身および他の分子との自己凝集および非特異的な相互作用を生じる、公知のドメインまたはアミノ酸配列が存在する。それ自身として、これらの有害なドメインを欠失する標準物質または検量用試料を構築することができる。本発明は、有害なドメインを取り除くためにペプチドを改変するいくつかの方法を提供する。ある実施態様において、有害ドメインを含むアミノ酸は、アミノ酸配列から取り除かれ、N末端免疫反応ドメインは、Aβ42の場合、中心の17〜20アミノ酸配列ならびに様々な長さの隣接するC末端ペプチドを欠如するC末端免疫反応ドメインに結合される。欠失された中心ドメインを有するAβ42ペプチドの例は、表2、配列番号2、3および4に示される。別の実施態様において、中心の凝集ドメインと隣接するアミノ酸は、多くの異なるタイプの物質からなるリンカーまたはスペーサーと置換される。
【0043】
別の実施態様において、凝集しないアミノ酸は、リンカーとされる。ある実施態様において、凝集しないアミノ酸は、アミノ酸配列の疎水性スペーサーまたはリンカーの形態であるか、あるいはAβ42のC末端の37〜42配列(配列番号5)およびAβ42のC末端の32〜42部分(配列番号6)の両方で示されるEERPを形成する。別の実施態様において、Aβ42ペプチドには、より長い疎水性リンカー、例えば、Aβ42のC末端37〜42(配列番号7)およびC末端32〜42(配列番号8)部分の両方を有するアミノ酸配列DREPNR(配列番号16)が含まれる。
【0044】
さらに別の実施態様において、一連の荷電残基は、N末端およびC末端免疫反応ドメインの間のリンカーの形態で用いられる。別の実施態様において、整数mのリジン残基(配列番号9)または整数nのグルタミン酸残基(配列番号10)からなるリンカーが作り出される。別の実施態様において、一連の中性残基がリンカーとして用いられる。別の実施態様において、整数pのアラニン残基からなる構築物(配列番号11)が含まれる。
【0045】
本発明の別の実施態様において、ポリエチレングリコール(PEG)の様々な形態がリンカーとして用いられる。好ましい実施態様において、PEG−6atomおよびPEG−20atomは、様々なC末端部分(配列番号12〜14)とともに用いられる。別の実施態様において、アミノ酸残基に化学的に結合できるポリマーは、リンカーまたはスペーサーとして用いられる。このポリマーには、Aβ42オリゴマーおよびその他の類似する付着もしくは自己凝集分子の免疫反応性を活性化する、線形のもの、ならびにデンドリマーおよび分岐コポリマーのような公知の枝分かれ形態のものが含まれる。
【0046】
タウのリン酸化領域は、標準物質として用いられうる改変ペプチドを作成するためにも用いられうる。異常な過リン酸化タウは、神経原線維変化に関連する。タウには複数のリン酸化部位が存在しており;それらの各々は、その生物学的機能について異なる効果を有する。Ser202/Thr181/Thr212/Thr231またはSer262がリン酸化されたタウの測定は、MCI患者における認知機能低下との関連を理解する助けとなりうる。よって、別の実施態様において、改変タウペプチドは標準物質とされる。改変タウペプチドの例は、表3に示される。
【0047】
別の実施態様において、リンカーには、下記の分子のいずれか1つが含まれる:脂質、球状タンパク質、核酸(DNA、RNAおよびPNAが含まれるが、これらに限定されない)、アルキル鎖または免疫アッセイにおいて目的の2つの免疫エピトープに安定性を加えるいずれか他の連鎖。別の実施態様において、ペプチド骨格およびリンカーの間の結合には、共有結合、アビジン−ビオチン複合体またはいずれか他の安定な結合が含まれる。別の実施態様において、前記構築物は、研究実験用プラスチック、特に、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボン、ならびにピペットチップ、チューブ、プレートおよび目的の分析物が測定されうる液体を保持するその他の容器などのその他の研究実験用プラスチック樹脂に対して、自己凝集または非特異的な吸収を生じない。
【0048】
別の実施態様において、新規なAβ42またはタウ免疫アッセイ標準物質もしくは検量用試料は、N末端特異的な抗体によって認識されるN末端エピトープの存在を必要とする。当該技術分野で公知の多くのAβ42のN末端結合抗体が存在する。例えば、6E10は、Aβ3-8エピトープを認識することが知られており、3D6は、AβのN末端エピトープを認識することが知られている。重複するエピトープは、免疫アッセイの必要性および検出システムに応じて、いくつかの用いられるN末端特異的な抗体が選択できるように設計されうる。
【0049】
別の実施態様において、新規なAβ42免疫アッセイ標準物質または検量用試料は、C末端Aβ42特異的な抗体によって認識されるC末端エピトープの存在を要する。十分に特徴付けられているC末端Aβ42neo−エピトープ抗体の例には、G2−11(ヘイデルバーグ大学)、21F12(Athena Diagnostics)、4D7A3(Innogenetics)および12F4(Covance,旧Signet)が含まれる。重複するC末端エピトープは、免疫アッセイの必要性および検出システムに応じて、いくつかの用いられるC末端Aβ42特異的な抗体が選択できるように設計されうる。
【0050】
別の実施態様において、当業者に公知のN末端結合、C末端結合またはリン酸化タウ結合抗体が本発明で用いられうる。
【0051】
本発明はまた、液体または組織抽出試料中のペプチドの量を正確に測定するための免疫アッセイにおいて、標準物質または検量用試料として用いることができるペプチドまたはタンパク質構築物およびその組成物を作成する方法に関する。免疫アッセイは、多くの場合、目的の分析物またはバイオマーカーを捉えるために、抗体などの生物学的に特異的な捕捉試薬を必要とする。抗体は、当該技術分野で周知の方法によって、すなわち、抗原としてバイオマーカーで動物を免疫することによって産生することができる。バイオマーカーは、それらの結合特性に基づいて、試料から単離することができる。あるいは、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が公知である場合、ポリペプチドは、当該技術分野で周知の方法によって抗体を作成するために合成され、使用されうる。バイオマーカーの例には、Aβペプチドおよびタウが含まれる。
【0052】
本発明には、例えば、ELISAまたは蛍光に基づく免疫アッセイを含むサンドイッチ免疫アッセイ、ならびにその他の酵素免疫アッセイを含む従来の免疫アッセイが包含される。SELDIに基づく免疫アッセイにおいて、バイオマーカーの生体特異性捕捉試薬は、前もって活性化されたPROTEINCHIP(登録商標)アレイのような質量分析(MS)プローブの表面に結合される。次いで、前記バイオマーカーは、この試薬を介してバイオチップ上に特異的に捕捉され、捕捉されたバイオマーカーが質量分析によって検出される。
【0053】
よって、ある態様において、本発明は、本発明の標準物質を用いる臨床マーカーの測定方法に関する。ある実施態様において、前記標準物質は、免疫アッセイによって測定される。別の実施態様において、前記免疫アッセイは、サンドイッチ免疫アッセイである。別の実施態様において、前記免疫アッセイは、免疫反応結合部位に対して競合的もしくは「競合」様式で実施される単一抗体免疫アッセイである。さらに別の実施態様において、前記免疫アッセイは、二重サンドイッチ免疫アッセイまたは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。
【0054】
好ましい実施態様において、臨床マーカーの測定方法は、標準物質を少なくとも2種類のビーズに結合させ、それにより第1ビーズセットおよび第2ビーズセットを生成し(ここで、前記標準物質には、第1検出抗体によって認識されるエピトープが含まれ、各ビーズセットには異なる濃度の標準物質が含まれる);前記分析物に特異的な捕捉抗体を第3ビーズセットに結合させ;全てのビーズセットを一緒に混合してサスペンションアレイを生成し;前記生物学的試料を前記サスペンションアレイに適用し(これにより前記分析物は第3ビーズセット上の捕捉抗体に結合する);第1検出抗体を前記サスペンションアレイに加え(ここで、第1検出抗体は、標準物質および捕捉抗体に結合した分析物に結合する);第1ビーズセット中の標準物質に結合した第1検出抗体から第1シグナルを測定し;第2ビーズセット中の標準物質に結合した第1検出抗体から第2シグナルを測定し;第1および第2シグナルに基づいて検量線を作成し;次いで第1検出抗体から第3シグナルを測定し、前記第3シグナルを検量線上の第1および第2シグナル測定値と比較することによって、第3ビーズセット中の分析物を定量する工程を特徴とする免疫アッセイを用いることによる。多重化された情報が特定の検出技術または装置とは無関係に測定できる他の固相のいずれかによって置換されうることは、本発明を限定することなく理解される。
【0055】
ある実施態様において、標準物質には、本明細書に記載の組成物が含まれる。別の実施態様において、生物学的試料は、血液、血清、血漿、末梢血単核球、末梢血リンパ球、組織、脳脊髄液および細胞からなる群から選択されるものである。さらに別の実施態様において、前記分析物は、Aβ42、Aβ40、Aβ38、タウまたはインスリン増殖因子受容体1である。
【0056】
分析物および/または標準物質は、様々な表面に結合しうる。前記表面は、抗体または標準物質が、共有結合、受動吸収(passive absorbance)、ビオチン−ストレプトアビジンまたは当業者に公知のいずれか他の結合によって固定化することができる固相表面のいずれかでありうる。例えば、前記表面は、ビーズ、プレート、スライド、繊維、表面プラズモン共鳴センサーまたはいずれかの固相でありうる。
【0057】
別の実施態様において、前記方法は、マルチウェルプレート、ニトロセルロースフィルターまたはスライドガラス上で行われる。別の実施態様において、第1および第2シグナルは、蛍光によって検出される。例えば、第1シグナルおよび第2シグナルは、フィコエリスリン、アレクサ532、ストレプトアビジン−フィコエリスリンおよびストレプトアビジン−アレクサ532からなる群から選択されるシグナルでありうる。別の実施態様において、前記シグナルは、酵素活性(すなわち、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、化学発光、放射能、赤外線放射、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)または当業者に公知のいずれか他の方法によって検出される。
【0058】
別の態様において、本発明には、Aβ42またはタウペプチドを検出する免疫アッセイを実施するためのキットであって、本発明の標準物質が含まれるキットが含まれる。
【0059】
天然Aβ42に対する新規な免疫アッセイ標準物質または検量用試料の性能比較
新規な免疫アッセイ標準物質または検量用試料の性能は、免疫アッセイにおいて天然Aβ42と同程度の性能を有するべきである。天然の全長Aβ42ペプチドは、標準的な固相技術を用いて合成しうるか、またはそれらは多くの製造業者からカタログ品として購入されうる(Anaspec Inc.、American peptide CompanyまたはInvitrogen Inc.)。標準的な方法は、当該技術分野で周知であるアミノ酸解析などの質量分析技術を用いて、不完全な種類のものから全長構築物の量を調べるために用いられうる(Kanu et al., Journal of Mass Spectrometry, 43:1-22 (2008);Bernstein et al., Journal of American Chemical Society, 127:2075-2084 (2005);Li et al., Encyclopedia of Analytical Chemistry, Meyers, R.A., ed., John Wiley & Sons Ltd. (2009))。
【0060】
例として、表1は、Aβ42ペプチドの所望される物理特性およびこれらの特性を試験するために用いられる様々な方法を列挙する。これらの方法は、標準物質の特性が天然Aβ42ペプチドの特性と同等であるかどうかを調べるために用いることができる。
表1
【表1】

【0061】
抗体に基づく免疫アッセイにおける改変された標準物質または検量用試料の使用
本発明の別の態様において、改変された標準物質は、単一抗体に基づくアッセイで用いられる。ある実施態様において、単一抗体を含有する免疫アッセイは、競合免疫アッセイによって生物学的試料中のAβ42またはタウを測定するために用いることができる。Aβ42またはタウに特異的な単一抗体は、マイクロタイタープレートのウェル、ビーズまたはその他の免疫アッセイに関連する表面などの固体表面に固定化されている。前記抗体は、カルボキシル基およびアミン基のEDC介在結合などの多くの異なる方法により、あるいは受動吸収によりまたはプロテインAもしくはプロテインG界面を介して共有結合されうる。続いて、Aβ42またはタウ競合因子は、捕捉抗体のエピトープを保持する全長Aβ42またはタウペプチドあるいは改変型を含有するAβ42またはタウ標準物質または検量用試料から調製される。Aβ42またはタウ競合因子は、生物学的試料中の天然Aβ42またはタウと、固定化された抗体上の結合部位(パラトープ)との間に競合を作り出すために用いられる。パラトープは、分析物におけるエピトープまたは免疫反応ドメインを認識する抗体上の結合領域を表すために用いられる用語である。前記Aβ42またはタウ競合因子は、検出用のタグが付けられる。ある実施態様において、前記タグは、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素である。別の実施態様において、前記タグは、フィコエリスリンなどの蛍光色素である。さらに別の実施態様において、前記タグは、ビオチンまたはルテニウムなどの別のタグである。さらに別の実施態様において、前記タグは、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)などの核酸フラッグを検出するための高感度技術を用いて、抗体の検出により定量化されるDNA、RNAまたはPNAなどの核酸である。Aβ42またはタウ競合因子の単一濃度は、前記アッセイで用いられ、生物学的試料中で見出されるAβ42またはタウの天然レベルと競合する能力に基づいて決定されるであろう。
【0062】
別の実施態様において、前記アッセイは、検量線を作成することによって定量される。別の実施態様において、定量は、全長Aβ42もしくはタウペプチドまたは捕捉抗体のエピトープを保持する改変型のいずれかであるAβ42もしくはタウ標準物質または検量用試料の一組を作成することによって行われる。これらのタグが付けられていない標準物質または検量用試料は、Aβ42またはタウを含んでいない緩衝液または生体マトリックスのいずれかで調製される。ある実施態様において、検量線は、ある濃度のタグが付けられていない標準物質または検量用試料を、固定化された抗体に対するタグが付けられたAβ42もしくはタウ競合因子と混合することによって作成される。タグが付けられていない標準物質または検量用試料の各試験濃度から得られたシグナル値は、検量線を作成するために用いられる、すなわち、タグが付けられていないAβ42またはタウ標準物質または検量用試料の濃度に対して、得られたシグナル値をプロットする。標準定量曲線が一旦作成されると、アッセイは、同一の固定濃度のタグが付けられたAβ42またはタウ競合因子を、生物学的試料と混合することによって生物学的試料中の天然Aβ42またはタウのレベルを決定するために用いられる。得られたシグナル値は、生物学的試料中のAβ42またはタウのレベルを決定するために検量線上にプロットされる。
【0063】
本発明の別の態様において、改変された標準物質は、サンドイッチ法に基づく免疫アッセイで用いられる。
【0064】
アッセイ内標準物質に基づく免疫アッセイにおける改変された標準物質または検量用試料の使用
本発明の別の態様において、Aβ42またはタウペプチドは、アッセイ内校正システムに取り入れられる。この方法において、ルミネックスビーズに基づくシステムまたはメソスケールディスカバリーECLプレートに基づくシステムなどの多重化免疫アッセイ法が用いられうる。検出抗体の抗体結合エピトープを包含するアミノ酸残基を含有するペプチドが作成される。ある実施態様において、これらのペプチドには、固相に共有結合させる改変または水溶性免疫アッセイにおける溶解性および用途を増加する改変が含まれる。これらのペプチドは、明確に定義された一組の標準物質を作成して検量線を作成するために、多重化免疫アッセイシステムにより定義されるような関連する固相に対して異なる濃度で固定化される。
【0065】
臨床試料中の水溶性バイオマーカーの測定は、多くの場合、二重抗体サンドイッチアッセイを用いて行われる。これらのアッセイは、バイオマーカーに特異的である2種類の抗体および第2の「レポーター」または「検出」抗体を用いて捕捉バイオマーカーを検出する技術を必要とする。タンパク質標準物質は、アッセイを定量するために必要とされる。これらの標準物質は、しばしば、組み換えタンパク質の形態であるが;それらはまた、生物学的試料から取得されうる。これらのアッセイのための従来のアッセイ法には、臨床試料の分析に適した定量化を供するELISA技術が含まれる。しかしながら、それらは、多くの場合、1ウェルあたり1種類のバイオマーカーアッセイに限定される。複数のバイオマーカーが単一のウェルもしくは反応管で分析できる最新の技術が開発されている。いくつかの多重化技術は、スライドガラスまたは特殊なマイクロタイタープレートなどの固体表面上にスポットされた抗体を利用する。別の方法は、抗体が溶液中で一緒に混合されるラテックスビーズに結合してアレイを形成するサスペンションアレイによるものである。
【0066】
ある実施態様において、サスペンションアレイ技術が用いられる。別の実施態様において、サスペンションアレイ技術は、ルミネックスxMAP技術である。ルミネックスxMAP技術は、2種類の蛍光色素を一定の割合で含有するラテックスビーズを使用する。異なるビーズ「セット」は、これらの2種類の色素の割合を変更することによって作成される。前記ビーズは一緒に混合されてサスペンションアレイを生成する。前記ビーズ混合物は、レーザーの前を通過する際に、各ビーズを蛍光比率によって同定する装置により分析される。これらのビーズセットは、タンパク質、ペプチド、抗体などの分子の共有結合に用いられるそれらの表面上で異なる改変を有する。これにより、これらのビーズの表面上でアッセイを行うことができる。アッセイは、フィコエリスリンのような第3蛍光標識の目的分析物に対するレポーター抗体への取り込みにより定量される。装置の第2のレーザーは、ビーズが装置を通過する際にこのレポーター標識の蛍光を測定する。
【実施例】
【0067】
実施例1−Aβ42を測定するために用いることができるサンドイッチに基づくアッセイ
両側またはサンドイッチ可溶性標準の模式図が図1に示される。簡単に説明すると、Aβ42のC末端に特異的な捕捉抗体を固体表面に固定化させた。生物学的試料を加え、これによりAβ42が固定化させた抗体によって捕捉されるようにした。Aβ42のN末端に特異的である第2のタグが付けられた検出抗体を加えた。タグが付けられた検出抗体によって作成した測定シグナルを定量のために用いた。
【0068】
Aβ42を測定するために用いることができるサンドイッチアッセイの一例が図2に示される。簡単に説明すると、ビオチン標識抗C末端Aβ42抗体(565)を、96ウェルメソスケールディスカバリーのストレプトアビジンでコートしたプレート(MesoScale Discovery Inc., Gaithersburg, Maryland (MSD))に固定化させた。標準物質Aβ42ペプチド(天然配列の全長)を異なるウェルに添加した。Aβ42ペプチドを固定化した捕捉抗体によって捕捉した。Aβ42のN末端に対して第2のルテニウム(Ru)タグを付けた抗体(26D6)を加え、サンドイッチを完成させた。この複合体は、ECLを採用するMSDセクター6000装置を用いて検出した。前記装置によって測定した生の蛍光単位(raw fluorescence unit)(RFU)を4−パラメータロジスティックモデルに適合させて検量線を作成した。別の例において、いくつかの改変Aβ42ペプチドが標準物質として用いられる(表2、配列番号2、4、6、12、13および14)。これらの改変された検量用試料によって作成した検量線を図3に示す。
表2:Aβ42ペプチドおよび改変ペプチド配列および説明
【表2】



【0069】
免疫アッセイはまた、タウを測定するために用いることができる。本発明の標準物質として用いることができる改変タウペプチド配列の例を下記の表3に示す。
表3:タウペプチド配列および構築物
【表3】




【0070】
実施例2−生物学的試料中のAβ42を測定するサンドイッチAβ42アッセイ
生物学的試料中のAβ42を測定するサンドイッチAβ42アッセイの例を表3に示す。ビオチン標識抗C末端Aβ42抗体(565)を96ウェルMSDストレプトアビジンでコートしたプレートに固定化させた。標準物質Aβ42ペプチド(天然配列の全長)または改変Aβ42標準物質(配列番号2)を異なるウェルに添加した。ヒトCSF試料を異なる希釈率で異なるウェルに加えた。当該プレートを室温で2時間インキュベートして、Aβ42ペプチドを固定化させた捕捉抗体によって捕捉させた。Aβ42のN末端に対して第2のルテニウムでタグを付けた(Ru)抗体(26D6)を加えて、サンドイッチを完成させた。この複合体は、ECLを採用するMSDセクター6000装置を用いて検出した。前記装置によって測定した生の蛍光単位(raw fluorescence unit)(RFU)を4−パラメータロジスティックモデルに適合させて検量線を作成した。ヒトCSF試料中のAβ42の測定濃度を表3に示す。
表4:3つのヒト脳脊髄液(CSF)試料中のAβ42ペプチドの測定濃度
【表4】

【0071】
実施例3−Aβペプチドに基づくアッセイ内ルミネックスアッセイ
図4は、Aβ42アッセイ内ビーズ法のスキームを示す。異なる濃度のAβ42標準物質ペプチド(またはその他の天然または改変Aβペプチド)と結合させたビーズセットを、抗Aβ42−C末端特異的な捕捉抗体と結合させたビーズセットと合わせて、サスペンションアレイを生成した。当該アレイを生物学的試料とともにインキュベートする。ここで、生物学的試料中のAβ42ペプチドは、抗Aβ42捕捉抗体と結合させたビーズによって捕捉される。Aβ42ペプチドのN末端に特異的であるタグを付けた検出抗体をサスペンションアレイに加え、それにより捕捉されたAβ42ペプチドに結合し、またそれらの表面に結合したAβ42ペプチドを有するビーズにも結合する。それらの表面に結合させたAβ42ペプチドを有するビーズから得たMFI値を用いて、アッセイ内検量線を作成する。生物学的試料中のAβ42量は、アッセイ内検量線を用いて、抗Aβ42捕捉物と結合させたビーズ上の捕捉Aβ42の量から決定する。
【0072】
抗体および標準物質
天然の全長Aβ42および全長Aβ40ペプチド(それぞれ配列番号1および15)は、American Peptide Companyから得た。116B565.1マウス抗ヒトAβ42C末端抗体および26D6−B2−B3マウス抗ヒトAβ42N末端抗体は、関連するBMSが保有するハイブリドーマ細胞株から産生された培養上澄み液のプロテインG精製により得た。
【0073】
フィコエリスリン−ストレプトアビジン抱合体は、ジャクソン研究所(ペンシルバニア州,ウェストグルーブ)から得た。Tween−20、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、アジ化ナトリウム、IgGを含まないウシ血清アルブミン(BSA)およびリン酸ナトリウムは、Sigma−Aldrich Corporation(ミズーリ州,セントルイス)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Mediatech Incorporated(バージニア州,ハーンドン)から入手した。カルボキシル化されたルミネックスビーズは、Bio−Rad Incorporated(カリフォルニア州,ハーキュリーズ)から購入した。フィコエリスリン標識ヤギ抗マウスIgG抗体は、ジャクソン研究所(ペンシルバニア州,ウェストグルーブ)から入手した。
【0074】
抗Aβ42捕捉抗体のルミネックスビーズへの共有結合
116B565.1マウス抗ヒトAβ42C末端抗体は、2工程のカルボジイミド法を用いてカルボキシル化させたビーズの表面に共有結合させた。ビーズは、1.25x107個のビーズをEppendorf 5415D遠心機(ニューヨーク州,ウエストベリー)で14000xgにて4℃で5分間遠心分離することによって洗浄した。該上澄み液を慎重に取り除き、別の1.25x107個のビーズを分注し、4℃で14000xgにて5分間遠心した。上澄み液を再度慎重に取り除き、pH4.8の0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(活性化緩衝液)の800μl中で再懸濁させた。次いで、ビーズを15秒間ボルテックスにかけ、SPER SCIENTIFIC(登録商標)LTD超音波洗浄機(アリゾナ州,スコッツデール)を用いて15秒間超音波処理した。前記ビーズを活性化緩衝液でさらに2回洗浄し、活性化緩衝液中で新たに調製した5mg/mlのEDCの200μl中で再懸濁させた。該ビーズは、光から保護しながら、回転板にて室温で20分間インキュベートした。EDC工程の終了後、ビーズを洗浄し、PBSで調製した250μg/mlの捕捉抗体の1000μl中に再懸濁させ、光から保護した回転板にて室温で1時間インキュベートした。前記ビーズを洗浄し、1mlのブロッキング緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.02%(w/v)Tween−20)で光から保護しながら回転板中にて室温で1時間インキュベートした。最後に、ビーズを血球計でカウントし、ブロッキング緩衝液中に2x106個のビーズ/mlで再懸濁させ、使用準備を開始するまで4℃で光から保護しながら保存した。
【0075】
Aβ42捕捉抗体のルミネックスビーズに対する共有結合効率の表面試験
ビーズ表面上の捕捉抗体の存在は、表面試験を用いて確認した。2500個のビーズを含有するアッセイ緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.05%(w/v)Tween20、0.05%(w/v)アジド)の50μlをMilliporeフィルターボトルプレートウェル(マサチューセッツ州,ベッドフォード)に加えた。該ビーズは、該プレートをMilliporeバキュームマニフォールド(マサチューセッツ州,ベッドフォード)上に置いて液体を除去することによって洗浄し、続いて100μl/ウェルのPBST洗浄緩衝液中に再懸濁させた。最後に、洗浄緩衝液を真空によりウェルから除去し、ビーズを、アッセイ緩衝液で1/100に希釈した100μl/ウェルのPEヤギ抗マウスIgGでインキュベートした。該プレートは、光から保護しながら96ウェルプレートシェーカー(Lab Line Instruments,イリノイ州,メルロースパーク)で300rpmにて室温で30分間インキュベートした。続いて、該ビーズを、100μl/ウェルの洗浄緩衝液を用いて真空濾過により3回洗浄し、100μl/ウェルのアッセイ緩衝液中に再懸濁させた。少なくとも50個のビーズ/ウェルのMFIを、Bio−Rad Laboratories(カリフォルニア州,ハーキュリーズ)から入手したルミネックス100装置を用いて、Bioplex manager 4.1.1ソフトウェアを稼動して測定した。少なくとも20,000のMFIを用いて、ビーズ表面上の抗体の使用可能な量の存在を確認した。
【0076】
アッセイ内Aβ40ペプチドのルミネックスビーズに対する共有結合
Aβ40の天然全長ペプチド(配列番号15)は、2.5mlのPBS中で凍結乾燥させたペプチドを再構成して10mg/mlの最終濃度にすることによって調製した。Aβ40ペプチドは、26D6抗体の結合に必要とされるN末端Aβ42エピトープをすでに発現し、抱合に必要とされる水性緩衝液中でより安定であることから、Aβ42ペプチドの代わりにAβ40ペプチドをこのアッセイに選択した。Aβ40ペプチドを、希釈緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.02%(w/v)Tween−20)を用いて異なる濃度(図5Aに示される)に希釈した。Aβ40ペプチドの各調製物は、2工程のカルボジイミド法を用いて、選択されたビーズセット(各濃度に対して異なるビーズセット)の表面に共有結合させた。各ビーズセットは、1.25x107個のビーズをEppendorf 5415D遠心機(ニューヨーク州,ウエストベリー)で14000xgにて4℃で5分間遠心分離することによって洗浄した。該上澄み液を慎重に取り除き、pH4.8で800μlの0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(活性化緩衝液)を加えた。続いて、該ビーズを15秒間ボルテックスにかけ、SPER SCIENTIFIC(登録商標)LTD超音波洗浄機(アリゾナ州,スコッツデール)を用いて15秒間超音波処理した。前記ビーズを活性化緩衝液でさらに洗浄し、活性化緩衝液で新たに調製した5mg/mlのEDCの200μl中に再懸濁させた。該ビーズは、光から保護しながら回転板にて室温で20分間インキュベートした。EDC工程の終了後、各ビーズセットを洗浄し、所定濃度のAβ40ペプチドで再懸濁させ、光から保護しながら回転板中にて室温で1時間インキュベートした。前記ビーズセットを洗浄し、1mlのブロッキング緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.02%(w/v)Tween−20)を用いて、光から保護しながら回転板にて室温で1時間インキュベートした。最後に、各ビーズセット調製物の濃度は、血球計でビーズをカウントすることによって測定した。次いで、各ビーズセットをブロッキング緩衝液中に2x106個のビーズ/mlで再懸濁させ、使用準備を開始するまで光から保護しながら4℃で保存した。
【0077】
Aβ40ペプチド結合ルミネックスビーズの試験
ビーズ表面上のAβ42N末端特異的抗体に対するN末端エピトープを含有するAβ40ペプチドの存在は、表面試験を用いて確認した。2500個のビーズを含有するアッセイ緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.05%(w/v)Tween20、0.05%(w/v)アジド)の50μlを、Milliporeフィルターボトルプレートウェル(マサチューセッツ州,ベッドフォード)に加えた。ビーズは、該プレートをMilliporeバキュームマニフォールド(マサチューセッツ州,ベッドフォード)上に置いて液体を除去することによって洗浄し、ビーズを100μl/ウェルのPBST洗浄緩衝液中に再懸濁させた。最後に、洗浄緩衝液を真空によりウェルから除去し、ビーズを、アッセイ緩衝液で希釈した100μl/ウェルのビオチン標識26D6−B2−B3抗体とインキュベートさせた。該プレートを、光から保護しながら96ウェルプレートシェーカー(Lab Line Instruments,イリノイ州,メルロースパーク)で300rpmにて室温で30分間インキュベートした。インキュベーション工程後、該ビーズを4回洗浄し、1μg/mlのフィコエリスリン−ストレプトアビジン抱合体の50μl/ウェル中に再懸濁させ、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で20分間インキュベートした。続いて、ビーズを、100μl/ウェルの洗浄緩衝液を用いて真空濾過により3回洗浄し、100μl/ウェルのアッセイ緩衝液中に再懸濁させた。少なくとも50個のビーズ/ウェルのMFIは、Bio−Rad Laboratories(カリフォルニア州,ハーキュリーズ)から入手したルミネックス100装置を用いて、Bioplex manager 4.1.1ソフトウェアを稼動して測定した。各々のビーズセットについて測定したMFIを図5Aに示す。
【0078】
生物学的試料のAβ42アッセイ内分析
アッセイ内ルミネックスに基づくアッセイを用いる試料分析は、最初に、抗C末端特異的Aβ42565捕捉抗体と結合したビーズセットおよび異なる濃度のAβ40ペプチドと結合したビーズセットを混合することによって行った(図5Aに示される)。アッセイ緩衝液で調製した50,000個のビーズ/mlの懸濁液の全てのビーズセットを合わせた混合物の50μl/ウェルを、前もって湿らせたフィルターボトム96ウェルプレートの各ウェルに加えた。該ビーズを真空濾過によりアッセイ緩衝液の100μl/ウェルで洗浄した。捕捉ビーズは、希釈したヒトCSF試料、品質コントロール試料(QC)、標準物質としての異なる濃度の全長天然Aβ42ペプチドまたは異なる濃度の改変Aβ42ペプチド標準物質の50μl中に2ウェルずつ再懸濁させ、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で1時間インキュベートした。1.0μg/mlのビオチンで標識した抗Aβ4226D6レポーター抗体を加え、次いで、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で0.5時間インキュベートした。インキュベーション工程後、ビーズを4回洗浄し、1μg/mlのフィコエリスリン−ストレプトアビジン抱合体の50μl/ウェル中に再懸濁させ、次いで、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で20分間インキュベートした。最後に、該ビーズを4回洗浄し、アッセイ緩衝液の100μl/ウェル中に再懸濁させた。1ウェルあたり少なくとも50個のビーズのMFIは、Bioplex manager 5.1ソフトウェア(Bio−Rad Laboratories,カリフォルニア州,ハーキュリーズ)を稼動するBioplexルミネックス装置を用いて測定した。検量線は、加重4−パラメータロジスティック曲線(weighted 4-parameter logistic curve fit)を用いて、可溶性Aβ42ペプチドから、あるいは異なる濃度のAβ40ペプチド(内部標準)でコートしたビーズセットから調製したシグナルから作成した(図5B)。CSFまたはQC試料中のAβ42ペプチド濃度は、関連する検量線から算出し、図5Cに示す。
【0079】
実施例4−ルミネックスビーズを用いたIGFR1についてのペプチドに基づくアッセイ内
下記は、ヒトIGF−R1受容体においてリン酸化されたチロシン残基である1162および1163の検出のためのペプチドアッセイ内に基づいたアッセイの別の実施例である。タウのリン酸化領域もまた、同じように用いられうる。
【0080】
抗体および標準物質
特注のIGF1R[pYpY1162/1163]ペプチドは、Cambridge Research Biochemicals Ltd(英国)から供された。マウス抗IGF1R捕捉抗体は、Calbiochem(カリフォルニア州,サンディエゴ)から入手し、ウサギ抗ホスホチロシン(1162/1163)−IGF1R受容体抗体は、Millipore(マサチューセッツ州,ビレリカ)から購入した。フィコエリスリン標識ヤギ抗ウサギ抗体は、ジャクソン研究所(ペンシルバニア州,ウェストグルーブ)から入手した。Tween−20、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、アジ化ナトリウム、IgGを含まないウシ血清アルブミン(BSA)およびリン酸ナトリウムは、Sigma−Aldrich Corporation(ミズーリ州,セントルイス)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Mediatech Incorporated(バージニア州,ハーンドン)から購入した。カルボキシル化されたルミネックスビーズは、Bio−Rad Incorporated(カリフォルニア州,ハーキュリーズ)から購入した。健常者のPBMC試料は、会社内ドナー(BMS,NJ)から入手した。該PBMC試料をPBSまたは100ng/mlの精製したヒトIGF1(Genetex Inc,テキサス州)のいずれかで37℃で10分間処理して、細胞上に存在するIGFRにリン酸化を導入した。該細胞を洗浄し、改変RIPA緩衝液で溶解し、−80℃で保存した。
【0081】
抗IGF−R1捕捉抗体のルミネックスビーズに対する共有結合
マウス抗ヒトIGF1R捕捉抗体は、2工程のカルボジイミド法を用いてカルボキシル化ビーズの表面に共有結合させた。該ビーズは、1.25x107個のビーズをEppendorf 5415D遠心機(ニューヨーク州,ウェストベリー)にて14000xgで4℃にて5分間遠心分離することによって洗浄した。該上澄み液を慎重に取り除き、別の1.25x107個のビーズを分注し、14000xgにて4℃で5分間遠心した。上澄み液を再度慎重に取り除き、pH4.8の0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(活性化緩衝液)800μl中に再懸濁させた。続いて、ビーズを15秒間ボルテックスにかけ、SPER SCIENTIFIC(登録商標)LTD超音波洗浄機(アリゾナ州,スコッツデール)を用いて15秒間超音波処理した。前記ビーズを活性化緩衝液でさらに2回洗浄し、活性化緩衝液で新たに調製した5mg/mlのEDCの200μl中に再懸濁させた。ビーズを、光から保護しながら回転板にて室温で20分間インキュベートした。EDC工程の終了後、ビーズを洗浄し、PBS中で調製した250μg/mlの捕捉抗体の1000μl中に再懸濁させ、光から保護しながら回転板中にて室温で1時間インキュベートした。前記ビーズを洗浄し、1mlのブロッキング緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.02%(w/v)Tween−20)で、光から保護しながら回転板中にて室温で1時間インキュベートした。最後に、ビーズを血球計でカウントし、ブロッキング緩衝液中に2x106個のビーズ/mlで再懸濁させ、使用準備を開始するまで光から保護しながら4℃で保存した。
【0082】
ルミネックスビーズに共有結合したIGF−R1捕捉抗体の試験
ビーズ表面上の捕捉抗体の存在は、表面試験を用いて確認した。2500個のビーズを含有するアッセイ緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.05%(w/v)Tween20、0.05%(w/v)アジド)の50μlを、Milliporeフィルターボトルプレートウェル(マサチューセッツ州,ベッドフォード)に加えた。該ビーズは、該プレートをMilliporeバキュームマニフォールド(マサチューセッツ州,ベッドフォード)上に置いて液体を除去することによって洗浄し、続いて100μl/ウェルのPBST洗浄緩衝液中に再懸濁させた。最後に、洗浄緩衝液を真空によりウェルから除去し、ビーズを、アッセイ緩衝液で1/100に希釈した100μl/ウェルのPE−GAMでインキュベートした。該プレートを、光から保護しながら96ウェルプレートシェーカー(Lab Line Instruments,イリノイ州,メルロースパーク)で300rpmにて室温で30分間インキュベートした。続いて、該ビーズを、100μl/ウェルの洗浄緩衝液を用いて真空濾過により3回洗浄し、100μl/ウェルのアッセイ緩衝液中に再懸濁させた。少なくとも50個のビーズ/ウェルのMFIは、Bio−Rad Laboratories(カリフォルニア州,ハーキュリーズ)から入手したルミネックス100装置を用いて、Bioplex manager 4.1.1ソフトウェアを稼動して測定した。少なくとも20,000のMFIを用いて、ビーズ表面上の抗体の使用可能な量の存在を確認した。
【0083】
アッセイ内IGF−R1ペプチド標準物質のルミネックスビーズに対する共有結合
IGF1R[PYPY1162/1163]標準物質ペプチドは、2.5mlのPBS中に凍結乾燥させたペプチドを再構成して10mg/mlの最終濃度にすることによって調製した。最初の10倍希釈は、後の10倍希釈を用いて希釈緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.02%(w/v)Tween−20)で調製した。ホスホIGF1Rペプチドは、2工程のカルボジイミド法を用いて、4種類の異なる濃度でカルボキシル化ビーズの4種類の異なるセットの表面に共有結合させた。該ビーズセットは、1.25x107個のビーズをEppendorf 5415D遠心機(ニューヨーク州,ウエストベリー)で14000xgにて4℃で5分間遠心分離することによって洗浄した。該上澄み液を慎重に取り除き、pH4.8で800μlの0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(活性化緩衝液)を加えた。次いで、該ビーズを15秒間ボルテックスにかけ、SPER SCIENTIFIC(登録商標)LTD超音波洗浄機(アリゾナ州,スコッツデール)を用いて15秒間超音波処理した。前記ビーズを活性化緩衝液でさらに洗浄し、活性化緩衝液で新たに調製した5mg/mlのEDCの200μl中に再懸濁させた。ビーズを、光から保護しながら回転板で室温にて20分間インキュベートした。EDC工程の終了後、各ビーズを洗浄し、PBSで調製した10mg/mlの10倍連続希釈から作成したホスホIGF1Rペプチドの1000、100、10および1ng/mlの各濃度で再懸濁させた。続いて、該ビーズは、光から保護した回転板中にて室温で1時間インキュベートした。前記ビーズを洗浄し、1mlのブロッキング緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.02%(w/v)Tween−20)で、光から保護しながら回転板中にて室温で1時間インキュベートした。最後に、ビーズを血球計でカウントし、ブロッキング緩衝液中に2x106個のビーズ/mlで再懸濁させ、使用準備を開始するまで光から保護しながら4℃で保存した。
【0084】
IGF−R1ペプチド結合ルミネックスビーズの試験
ビーズ表面上のホスホIGF1Rペプチドの存在は、表面試験を用いて確認した。2500個のビーズを含有するアッセイ緩衝液(PBS、1%(w/v)BSA、0.05%(w/v)Tween20、0.05%(w/v)アジド)の50μlを、Milliporeフィルターボトルプレートウェル(マサチューセッツ州,ベッドフォード)に加えた。ビーズは、該プレートをMilliporeバキュームマニフォールド(マサチューセッツ州,ベッドフォード)上に置いて液体を除去することによって洗浄し、ビーズを100μl/ウェルのPBST洗浄緩衝液中に再懸濁させた。最後に、洗浄緩衝液を真空によりウェルから除去し、ビーズを、アッセイ緩衝液で希釈した100μl/ウェルのウサギ抗ホスホIGF−R1抗体でインキュベートした。該プレートを、光から保護しながら96ウェルプレートシェーカー(Lab Line Instruments,イリノイ州,メルロースパーク)で300rpmにて室温で30分間インキュベートした。インキュベーション工程後、該ビーズを4回洗浄し、1μg/mlのフィコエリスリンで標識したヤギ抗ウサギIgG抱合体の50μl/ウェル中に再懸濁させ、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で20分間インキュベートした。続いて、ビーズを、100μl/ウェルの洗浄緩衝液を用いて真空濾過により3回洗浄し、100μl/ウェルのアッセイ緩衝液中に再懸濁させた。少なくとも50個のビーズ/ウェルのMFIは、Bio−Rad Laboratories(カリフォルニア州,ハーキュリーズ)から入手したルミネックス100装置を用いてBioplex manager 4.1.1ソフトウェアを稼動して測定した。ホスホIGF1Rペプチド。
【0085】
生物学的試料のIGF−R1アッセイ内分析
アッセイ内ルミネックスに基づくアッセイを用いる試料分析は、アッセイ緩衝液で調製した50,000個のビーズ/mlの捕捉抗体懸濁液の50μlを、前もって湿らせたフィルターボトム96ウェルプレートの各ウェルに加えることによって行った。該ビーズを真空濾過によりアッセイ緩衝液の100μl/ウェルで洗浄した。捕捉ビーズは、希釈した試料または品質コントロール試料(QC)の50μl中で2ウェルずつ再懸濁させ、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で1時間インキュベートした。該ビーズを4回洗浄し、項目2.2.3に記載のペプチドの4種類の異なるビーズセットの50,000個のビーズ/mlの50μl中で再懸濁させた。該ビーズを濾過し、1.0μg/mlの抗ホスホIGF1Rレポーター抗体の50μl/ウェル中に再懸濁させ、次いで、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で0.5時間インキュベートした。インキュベーション工程後、該ビーズを4回洗浄し、1μg/mlのPE−ヤギ抗ウサギIgGの50μl/ウェル中に再懸濁させ、光から保護しながらプレートシェーカーにて室温で20分間インキュベートした。最後に、ビーズを4回洗浄し、アッセイ緩衝液の100μl/ウェル中に再懸濁させた。1ウェルあたり少なくとも50個のビーズのMFIは、Bioplex manager 4.1ソフトウェア(Bio−Rad Laboratories,カリフォルニア州,ハーキュリーズ)を稼動するBioplexルミネックス装置を用いて測定した。ホスホIGF−R1検量線内から作成した検量線を図6Aに示す。アッセイ内4パラメータロジスティック曲線を用いた各々のPBMC溶解試料中のホスホIGF1R濃度を図6Bに示す。
【0086】
実施例5−Aβペプチドの特徴付け
ペプチド
全てのペプチドは、凍結乾燥粉末として入手した。改変ペプチドは、GenScript(GS)およびAnaspec(AN)から入手した。これらのペプチドは、当業者に公知の固相法を用いて合成した(例えば、Barany, G. et al., The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology - Special Methods in Peptide Synthesis, Part A, Vol. 2, pp. 3-284、Gross, E. et al., eds., Academic Press, New York, publ. (1980);および Stewart, J.M. et al., Solid-Phase Peptide Synthesis, 2nd Edition, Pierce Chemical Co., Rockford, IL, publ. (1984))。
【0087】
GS1〜6およびAN7ペプチドを入手し、ddH2Oで1mg/mlの濃度に再構成した。続いて、これらを、1.4mlの空のチューブPP、円形の(round)マトリックス(Thermo Scientific,cat#4249,lot1030509)中に100μlの一定分量ずつ分注した。全長Aβ42ペプチドは、MSD(lot#T03080X1)から購入した。このペプチドをDMSOで希釈して0.1mg/mlの溶液を調製した。続いて、これを1.4mlの空のチューブ中に100μlの一定分量ずつ分注した。これらのペプチドは、保存用に−70℃で凍結した。図13は、改変Aβ(1-42)ペプチドに導入したポリエチレングリコールスペーサーの構造を示す。
表5:Aβペプチドの一覧
【表5】

【0088】
動的光散乱
新規なペプチド(GenScript)は、乾燥粉末として入手し、2セットの保存試料は、1.8mlのポリプロピレン管に少量(各々〜0.5mg)を量りとり、リン酸緩衝液(10mM Na2HPO4、pH7.4、10mM NaCl、99.9%のD2O中で調製した;0.2μmフィルターにより濾過した)中に溶解させることによって調製した。1つのセットは、1.0mg/mlで調製し、もう1つのセットは、0.10mg/mlで調製し、室温で保存した。ペプチドを1分間ボルテックスにかけて溶解し、微量遠心機を用いて室温にて1,4000rpmで5分間遠心した。Aβ42試料(MSD)については、0.1mgのペプチドを含有するバイアルを1.0mlの緩衝液中に懸濁させ、上記のように処理した。各遠心分離させた1.0mg/mlの保存液の一定量(200μl)を0.5mlのポリプロピレン管に移し、NMR分析にかけた。
【0089】
全ての試料の吸収スペクトルは、NANODROP(登録商標)ND−10000装置を用いて記録し(220〜750nm)、緩衝液をブランクとした。動的光散乱分析は、Wyatt DLS DynaProプレートリーダーを用いて384ウェルポリスチレンプレート(CORNING(登録商標),タイプ3540)中で上記ペプチドについて行った。データ収集および分析は、製造業者(DYNAMICS,バージョン7.0.0.94および7.0.1.12)から入手したソフトウェアを用いて実行した。各ペプチドは、1ウェルあたり30μlを載せて3回ずつ評価し、蒸発を最少にするために5μlのミネラルオイルで覆った。緩衝液ブランクもまた、対照用の分析として含ませた。プレートを載せ、透明な接着シールテープでプレートに蓋をし、該プレートを1000rpmで2分間遠心分離した。プレート上の各試料は、25℃の温度を維持しながら、1試料につき5秒で30回読み取った。データセットは、1.0mg/mlおよび0.10mg/mlの両方の試料について27日間にわたり収集した。接着カバーは、プレートリーダー内で試料を読み取るために取り外し、27日間にわたる読み取りの間プレートを覆うために使用した。
【0090】
図7Aから7Fは、動的光散乱データを示す。図7において、全長Aβ42ペプチドをDLS分析にかけ、4種類の代表的な改変ペプチドを比較した。全長ペプチドは、82から231nm長である異なる凝集種の半径が算出された結果により、凝集することが示された。これは、溶液中で大きな分子量の凝集物となることを示す。しかしながら、改変ペプチドは、分子量ならびに半径の両方によって決定されるように単量体のままである。GS♯3は、凝集したままであったため、その他のペプチドと比較した(図7E)。これらの結果は、凝集ドメインを欠失している改変ペプチドが実際に溶液中で単量体のままであることを示す。図7aは、全5種類のペプチドについて蓄積された生のデータを示す。時間に対する強度自己相関を示す。より高い強度自己相関数は、溶液中のペプチドのより大きい半径を示す。図7b〜7fは、ペプチド半径に対するパーセント質量を示す。単量体ペプチドは、より小さい半径サイズでより大きいパーセント質量によって表されるであろう。より大きな凝集ペプチドは、大きい半径サイズでより小さいパーセント質量を有する。
表6:DLSデータの概要
【表6】

【0091】
円二色性
円二色性(CD)スペクトルは、Avivモデル202円二色性分光法を用いて収集した。試料を1mm層長の石英キュベット中にピペットで移し、260〜185nmでスキャンした。データを収集するためのパラメータには、1.00nmのスペクトルバンド幅、1.0nmの刻み幅、1回あたり20秒の平均時間、25℃の温度設定が含まれる。試料を室温で石英キュベットに保存し、23日間の一定期間にわたりスキャンした。生のデータをブランク緩衝液の寄与について補正し、波長に対してmdegの形で表した。
【0092】
図8は、円二色性分析を示す。円二色性分析は、全長Aβ42および4種類の代表的なペプチドについて行い、これらのペプチドの規則性(order)および二次構造を決定した。図8に示されるように、全長ペプチドは、他のペプチドより規則的な構造を示す。4種類の代表的なペプチドは、全長ペプチドと比較して不規則なCDスペクトルを含有する。これらのデータにより、改変ペプチドは凝集することなく、または全長ペプチドより高い規則性の構造を形成していないことが示される。
【0093】
MSD ELISA
ビオチンで標識した抗C末端Aβ42抗体(565〜20μg/ml)は、30μl/ウェルを加えることによって96ウェルMSDストレプトアビジンでコートしたプレートに固定化させた。次いで、プレートをカバーし、500rpmで振蘯させながら25℃で終夜インキュベートした。次いで、プレートを300μl/ウェルの洗浄緩衝液(R&Dsystem cat♯WA126)で3回洗浄した。洗浄後、225μl/ウェルでブロッキング緩衝液(PBSで1% BSA+0.1% Tween−20)をプレートに加え、500rpmで振蘯させて室温で30分間インキュベートした。ブロッキング工程後、プレートを上記のように洗浄した。標準物質Aβ42ペプチド(全長または改変ペプチド)をウェルに加えた。Aβ42ペプチドは、固定化させた捕捉抗体によって捕捉した。Aβ42のN末端に対して第2のルテニウムでタグを付けた(Ru)抗体(26D6)を加え、これによりサンドイッチを完成させた。この複合体は、ECLを採用するMSDセクター6000装置で検出した。前記装置によって測定した生の蛍光単位(raw fluorescence unit)(RFU)を4−パラメータロジスティックモデルに適合させて検量線を作成した。
【0094】
図9は、ペプチド安定性データを示す。全長Aβ42および7種類の改変ペプチドは、40日間にわたり異なる温度で安定性実験にかけた(図9A〜9F)。これらのペプチドを4℃、25℃および37℃で一定期間保ち、次いでアッセイを行うまで凍結させた。続いてペプチドを収集し、MSD Elisa法にかけた。結果は、0時間で測定した各ペプチドの基準シグナルのパーセントとして示す。実際、37℃での短時間のインキュベーションを用いて、4℃および室温での分子の長期間の安定性が推定されている(Anderson et al., Clinical Chemistry, 37(3): 398-402 (1991))。よって、短期間の分析のための37℃でのペプチドのインキュベーションを用いて、ペプチドの長期間の安定性を測定することができる。図9に示されるように、全長Aβ42ペプチドシグナルは、37℃で16時間のインキュベーションで劇的に低下し始める。対照的に、改変ペプチドは、測定した全ての温度で安定のままである。このデータにより、これらの改変ペプチドが全長Aβ42より安定であることが示されうる。
【0095】
図10A〜10Iは、全長Aβ42および7種類の改変ペプチドを60日間にわたり異なる温度で安定性実験にかけた。これらのペプチドを25℃および37℃で一定期間保ち、次いでアッセイを行うまで凍結させた。続いて、ペプチドを収集し、MSD Elisa法にかけた。結果は、ペプチド濃度に対してシグナルをプロットする検量線として示す。図10に示されるように、全長ペプチドは、25℃および37℃で検量線の減少を示した。対照的に、分析した全7種類のペプチドは、全ての時点および温度範囲で同様の曲線を示した(37℃のみを示す)。これらの結果は、アッセイ再現性に関して標準物質として用いる場合、改変ペプチドが全長Aβ42ペプチドより一貫したシグナルを供することを示す。
【0096】
図11は、全長と改変ペプチドの検量線分析を示す。全長Aβ42および7種類の改変ペプチドを8点検量線について希釈し、MSD Elisa法にかけた。図11に示すように、全てのペプチドがほぼ同一の検量線を生じた。この結果は、試料マトリックス中のAβの算出について、改変ペプチドが全長ペプチドの代わりに用いることができることを示す。
【0097】
図12は、全長と改変ペプチドを用いたCSF試料分析を示す。全長Aβ42および7種類の改変ペプチドを8点検量線について希釈し、13個のCSF試料でMSD Elisa法にかけた。各CSF試料中のAβ濃度は、各ペプチドの検量線に基づいて算出した。図12に示されるように、CSF試料中の逆算されたAβ濃度は同等であり、検量線用に用いられたAβペプチドとは無関係であった。このことは、Aβレベルの算出に影響を与えることなくこれらのアッセイにおいて、これらの改変ペプチドが全長Aβ42ペプチドの代わりに用いることができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端免疫反応領域、C末端免疫反応領域およびリンカー領域を含む、組成物。
【請求項2】
N末端免疫反応領域、C末端免疫反応領域およびリンカー領域を含み、免疫アッセイにおいて標準物質として用いられる組成物。
【請求項3】
前記免疫アッセイが、サンドイッチ免疫アッセイ、単一抗体アッセイ、二重サンドイッチ免疫アッセイおよび競合アッセイからなる群から選択されるものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
N末端免疫反応領域が、Aβ42に結合する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
C末端免疫反応領域が、Aβ42に結合する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記リンカー領域が、非免疫反応ドメインである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記リンカー領域が、ポリエチレングリコール、グルタミン残基、アラニン残基、リジン残基、脂質、球状タンパク質、核酸およびアルキル鎖からなる群から選択されるリンカーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26および27からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、単離された改変ペプチド分子。
【請求項9】
生物学的試料中の分析物の質量の測定方法であって:
(a)標準物質を少なくとも2種類のビーズに結合させ、それにより第1ビーズセットおよび第2ビーズセットを生成し(ここで、前記標準物質には、第1検出抗体によって認識されるエピトープが含まれ、各ビーズセットには異なる濃度の標準物質が含まれる);
(b)前記分析物に特異的な捕捉抗体を第3ビーズセットに結合させ;
(c)全てのビーズセットを一緒に混合してサスペンションアレイを生成し;
(d)前記生物学的試料を前記サスペンションアレイに適用し(これにより前記分析物は第3ビーズセット上の捕捉抗体に結合する);
(e)第1検出抗体を前記サスペンションアレイに加え(ここで、第1検出抗体は、標準物質および捕捉抗体に結合した分析物に結合する);
(f)第1ビーズセット中の標準物質に結合した第1検出抗体から第1シグナルを測定し;
(g)第2ビーズセット中の標準物質に結合した第1検出抗体から第2シグナルを測定し;
(h)第1および第2シグナルに基づいて検量線を作成し;次いで
(i)第1検出抗体からの第3シグナルを測定し、前記第3シグナルを検量線上の第1および第2シグナル測定値と比較することによって、第3ビーズセット中の分析物を定量することを特徴とする測定方法。
【請求項10】
前記標準物質が、請求項1、2または8に記載の組成物を含むものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的試料が、血液、血清、血漿、末梢血単核球、末梢血リンパ球、組織、脳脊髄液および細胞からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記分析物が、Aβ42、Aβ40、Aβ38、タウおよびインスリン増殖因子受容体1からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、マルチウェルプレート、ニトロセルロースフィルター、ガラス繊維中またはスライドガラス上で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1シグナルおよび第2シグナルが、フィコエリスリン、アレクサ532、ストレプトアビジン−フィコエリスリンおよびストレプトアビジン−アレクサ532からなる群から選択されるシグナルである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
Aβ42ペプチドを検出する免疫アッセイを実施するためのキットであって、請求項1、2または8に記載の組成物を含むことを特徴とするキット。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【図10−8】
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【図10−9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−518927(P2013−518927A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552940(P2012−552940)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024151
【国際公開番号】WO2011/100292
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】