免疫エフェクター細胞ハイブリッド
【課題】抗原の識別及び特性決定を助ける抗原特異的免疫エフェクター細胞を生じる簡単で且つ信頼できる手段を提供すること。
【解決手段】1以上の抗原を発現する細胞と融合させた抗原提示細胞(APCs)(antigen presenting cells)であるハイブリッド細胞を犠牲にして培養物中で拡大された、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質上純粋な集団、及び細胞の集団を用いる方法。
【解決手段】1以上の抗原を発現する細胞と融合させた抗原提示細胞(APCs)(antigen presenting cells)であるハイブリッド細胞を犠牲にして培養物中で拡大された、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質上純粋な集団、及び細胞の集団を用いる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞性免疫学の分野である。特に、本発明は、抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団及びこれら細胞を製造する方法を提供する。養子免疫療法及びこれら細胞によって認識される特定の抗原の識別の方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
癌患者に由来する腫瘍特異的T細胞は、腫瘍細胞を結合し且つ溶解する。この特異性は、MHCクラスI及びクラスII分子によって腫瘍細胞の表面上に提示される短いアミノ酸配列(エピトープ)を認識するそれらの能力に基づいている。これらエピトープは、腫瘍又は癌細胞において特有にか又は異常に発現される遺伝子によってコードされている腫瘍抗原と称される細胞内タンパク質のタンパク質分解に由来している。
【0003】
特定の抗腫瘍T細胞の有用性は、腫瘍抗原の識別、及び引き続いて抗腫瘍免疫応答を引き起こすように設計されている癌ワクチンの生成を可能にしている。抗腫瘍T細胞は、血液中(それらが末梢血単核細胞画分中に見出されうる場合)、卵巣癌患者の腹水中(腫瘍関連リンパ球すなわちTAL)又は腫瘍自体内(腫瘍浸潤性リンパ球すなわちTIL)を含めた癌患者体内に局在している。当然ながら、TILは、T細胞によって認識される腫瘍抗原及び腫瘍抗原由来ペプチドの識別において最も有用となっている。
【0004】
TILを生じる慣用法は、腫瘍生検組織を細かく切り刻み、その細胞懸濁液をin vitroにおいてT細胞成長因子IL2の存在下で培養することを行う。数日間にわたり、腫瘍細胞及びIL2の組合せは、腫瘍細胞を犠牲にした腫瘍特異的T細胞の増殖を刺激することができる。この方法で、T細胞集団を拡大させる。最初の拡大に由来するT細胞集団を、引き続き、照射された腫瘍細胞と混合し、in vitroにおいてIL2と一緒に培養して、腫瘍反応性T細胞の増殖及び富化(enrichment)を更に促す。数回のin vitro拡大後、強力な抗腫瘍T細胞集団を回収し、そして慣用的であるが単調な発現クローニング法によって腫瘍抗原を識別するのに用いることができる。Kawakami Y.ら(1994)PNAS 91(9):3515-19。
【0005】
腫瘍特異的T細胞をin vitroで生じるのに現在用いられている方法は信頼性がない。大部分の他の充実腫瘍について、抗腫瘍T細胞を生じることは難しくなっている。腫瘍生検組織が黒色腫である場合だけ、成功率は70%に達する。黒色腫認識T細胞を生じることは比較的容易なため、これまでに識別された腫瘍抗原の大多数は、この疾患に関連している。非黒色腫腫瘍抗原は僅かしか識別されていない。
【0006】
したがって、T細胞応答をin vitroで生じる試みにおいて直面する難題は、腫瘍細胞がT細胞に抗原性標的(腫瘍抗原)を提示しうるとしても、それらは、強力なT細胞応答を生じる能力を妨げることがありうる免疫抑制因子も生成するかもしれないということである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kawakami Y.ら(1994)PNAS 91(9):3515-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、抗原の識別及び特性決定を助ける抗原特異的免疫エフェクター細胞を生じる簡単で且つ信頼できる方法が要求される。本発明は、この要求を満たし、関連した利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、ハイブリッド細胞を犠牲にして培養物中で拡大された、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、ハイブリッド細胞が、1以上の抗原を発現する細胞に融合した抗原提示細胞(APC)である上記集団を提供する。
【0010】
本発明によって更に提供されるのは、抗原特異的免疫エフェクター細胞を生産する方法、養子免疫療法の方法、及びそれら免疫エフェクター細胞によって特異的に認識される抗原をコードしている遺伝子を識別する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】DC及びMC−38/MUC1細胞の融合。DC、MC−38/MUC1及び融合した細胞(FC)を、指定の抗原についてフローサイトメトリーによって分析した。Gong J.ら,Nature Medicine(1997)3(5):558-561,558の図1を参照されたい。
【図2】FC/MUC1によるMUC1特異的CTLの誘導。免疫感作されていないMUC1.Tgマウスから単離されたナイーブリンパ節細胞又はFC/MUC1で免疫感作されたMUC1.Tgマウスから単離されたCD8+T細胞を、指定のエフェクター:標的比で、51Cr標識MC−38(Φ)、MC−38/MUC1(Μ)、MB49(Θ)及びMB49/MUC1(Ο)標的細胞と一緒にインキュベートした。CTL活性は、51Cr放出によって測定した。Gong J.ら,PNAS(1998)95 :6279-6283,6281の図2を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
各種公報、特許及び公開特許明細書は、確認用引用例によって本明細書中に参照される。これら公報、特許及び公開特許明細書の開示は、本発明が関する技術の状態をより充分に記載するために本開示中に援用される。
【0013】
定義
本発明の実施は、特に断らない限り、当該技術の範囲内である分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの慣用的な技法を用いる。例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis,MOLECULAR CLONING :A LABORATORY MANUAL,第2版(1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら監修(1987));the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2 :A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames及びG.R.Taylor監修(1995))及びANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,監修(1987))を参照されたい。
【0014】
本明細書中で用いられるいくつかの用語は、次に定義の意味を有する。
【0015】
明細書及び請求の範囲で用いられる単数形には、特に断らない限り、複数の意味が含まれる。例えば、「ある細胞」という用語には、それらの混合物を含めた複数の細胞が含まれる。
【0016】
「免疫エフェクター細胞」という用語は、例えば、新生物すなわち腫瘍細胞上に存在する抗原を特異的に認識する細胞を意味する。本発明の目的に関して、免疫エフェクター細胞には、B細胞、単球、マクロファージ、NK細胞、及び細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、例えば、CTL系、CTLクローン及び腫瘍、炎症部位又は他の浸潤物からのCTLなどのT細胞が含まれるが、それらに制限されるわけではない。「Tリンパ球」は、典型的には、適当な標識技術と組み合わせて抗CD3単クローン性抗体を用いて検出される表現型に関してCD3+であるリンパ球を示す。本発明のTリンパ球は、概して、CD4、CD8又は両方にも陽性である。「ナイーブな」免疫エフェクター細胞という用語は、抗原に遭遇していない免疫エフェクター細胞を意味し、未感作及び処女と同義で示されている。「教育された(educated)」とは、抗原特異的細胞に分化するように抗原と相互作用した免疫エフェクター細胞を意味する。
【0017】
「抗原提示細胞」又は「APC」という用語には、自然のままの細胞全体も、好ましくはクラスI MHC分子を用いて1以上の抗原の提示を誘導することができる他の分子も両方とも含まれる。適当なAPCの例は、以下で詳細に考察され、マクロファージ、樹状細胞、B細胞のような細胞全体;β2−ミクログロブリンに複合体形成した精製MHCクラスI分子;及び養子抗原提示細胞が含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0018】
樹状細胞(DC)は、効力のあるAPCである。DCは、脾臓、胸腺、リンパ節、表皮及び末梢血のような種々の免疫器官の少ない方の成分である。例えば、DCは、粗製脾臓(Steinmanら(1979)J.Exp.Med.149 :1)又は表皮細胞懸濁液(Schulerら(1985)J.Exp.Med.161 :526 ;及びRomaniらJ.Invest.Dermatol.(1989)93 :600)の僅か約1%、及び末梢血中の単核細胞の約0.1−1%(FreudenthalらProc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87 :7698)である。次の参考文献は、末梢血又は骨髄の先祖からDCを単離する方法を記載している。Inabaら(1992)J.Exp.Med.175 :1157 ;Inabaら(1992)J.Exp.Med.176 :1693-1702 ;Romaniら(1994)J.Exp.Med.180 :83-93 ;及びSallustoら(1994)J.Exp.Med.179 :1109-1118。DCの単離及び培養に好ましい方法は、Benderら(1996)J.Immun.Meth.196 :121-135及びRomaniら(1996)J.Immun.Meth.196 :137-151に記載されている。
【0019】
「養子抗原提示細胞」とは、抗原提示細胞(APC)が反応する免疫エフェクター細胞に通常は接触するそれら細胞の代わりに利用される抗原提示能力を有する任意の修飾された又は天然に存在する細胞(野生型又は突然変異体)を意味する。言い換えると、それらは、T細胞がin vivoで通常遭遇するとは考えられない任意の機能性APCである。
【0020】
DCは、T細胞活性化及び増殖に必要なシグナルを全て与えることが示されている。これらシグナルは、二つの種類に分類することができる。第一の種類は、免疫応答に特異性を与え、T細胞受容体/CD3(「TCR/CD3」)複合体と、APCの表面上の腫瘍組織適合遺伝子複合体(「MHC」)クラスI又はIIタンパクによって提示される抗原性ペプチドとの間の相互作用によって媒介される。この相互作用は、T細胞活性化を生じさせるのに必要であるが,充分ではない。実際上、第二の種類のシグナルを用いることなく、第一の種類のシグナルはT細胞アネルギーを引き起こすことができる。共刺激シグナルと称される第二の種類のシグナルは、抗原特異的でもないしMHCに拘束されることもなく、第一の種類のシグナルの存在下においてT細胞の完全増殖応答及びT細胞エフェクター機能の誘導をもたらすことができる。
【0021】
したがって、「サイトカイン」という用語は、細胞に様々な作用を及ぼす、例えば、成長又は増殖を誘導する多数の因子のいずれかを意味する。サイトカインの非制限例には、IL−2、幹細胞因子(SCF)、IL−3、IL−6、IL−12、G−CSF、GM−CSF、IL−1α、IL−11、MIP−1α、LIF、c−kitリガンド、TPO及びflt3リガンドが含まれる。サイトカインは、例えば、Genzyme Corp.(フレーミンハム,マサチューセッツ州)、Genentech(サウス・サンフランシスコ,カリフォルニア州)、Amgen(サウザンド・オークス,カリフォルニア州)及びImmunex(シアトル,ワシントン州)のようないくつかの販売者から商業的に入手可能である。常に明記されてはいないが、野生型又は精製サイトカイン(例えば、組換えによって生産される)と同様の生物学的活性を有する分子は、本発明の精神及び範囲の範囲内で用いるためのものであり、したがって、野生型又は精製サイトカインの代用品であることを意味する。
【0022】
「共刺激分子」は、抗原提示細胞及びT細胞の表面上で発現される受容体−リガンド対間の相互作用に関与している。一つの典型的な受容体−リガンド対は、DCの表面上のB7共刺激分子及びT細胞上のその対受容体CD28又はCTLA−4である(Freemanら(1993)Science 262 :909-911 ;Youngら(1992)J.Clin.Invest.90 :229 ;及びNabaviら,Nature 360 :266)。他の重要な共刺激分子は、CD40、CD54、CD80及びCD86である。これらは、上に明記された販売者から商業的に入手可能である。
【0023】
「ハイブリッド」細胞とは、抗原提示能力も有するが、1以上の特定の抗原を発現もする細胞を意味する。一つの実施態様において、これらハイブリッド細胞は、in vitroにおいて、1以上の目的の抗原を発現することが知られている細胞とAPCを融合することによって形成される。
【0024】
「対照」細胞とは、抗原発現性細胞の集団と同様の抗原を発現しない細胞を意味する。
【0025】
「培養すること」という用語は、種々の培地上又は中の細胞又は微生物のin vitro増殖を意味する。培養物中の細胞成長の下降は、親細胞と完全に一致していないかもしれない(すなわち、形態学的に、遺伝学的に、又は表現型に関して)と理解される。「拡大された」とは、細胞の任意の増殖又は分裂を意味する。
【0026】
「有効量」とは、有益な又は望ましい結果を達成するのに充分な量である。有効量は、1回又はそれ以上の投与、適用又は用量で投与することができる。本発明の目的に関して、ハイブリッド細胞の有効量とは、抗原特異的免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の拡大を促す量である。
【0027】
「単離された」又は「富化された(enriched)」細胞集団は、実際上それが関係している細胞及び物質を「実質的に含まない」。「実質的に含まない」又は「実質的に純粋」とは、その集団の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、そして尚一層好ましくは、少なくとも90%が所望の細胞種類である意味である。
【0028】
本明細書中で用いられる「オートジェニック(autogeneic)」又は「自己(由来)(autologous)」という用語は、細胞の起源を示している。したがって、個体(「受容者」)に投与される細胞は、その細胞がその個体(「ドナー」)又は遺伝的に同一の個体に由来するならばオートジェニックである。オートジェニック細胞は、オートジェニック細胞の子孫でもありうる。その用語は、異なった細胞種類の細胞が、同様のドナー又は遺伝的に同一のドナーに由来するということも示している。したがって、エフェクター細胞及び抗原提示細胞は、それらが同様のドナー又はドナーと遺伝的に同一の個体に由来するならば、又はそれらが同様のドナー又はドナーと遺伝的に同一の個体に由来する細胞の子孫であるならば、オートジェニックであるといわれる。
【0029】
同様に、本明細書中で用いられる「同種(異系)(allogeneic)」という用語は、細胞の起源を示している。したがって、個体(「受容者」)に投与される細胞は、その細胞が受容者と遺伝的に同一でない個体に由来するならば同種異系であり;特に、その用語は、発現されるMHC分子の非同一性に関する。同種異系細胞は、同種異系細胞の子孫でもありうる。その用語は、異なった細胞種類の細胞が、それらが遺伝的に同一でないドナーに由来する細胞の子孫であるならば、遺伝的に同一でないドナーに由来するということも示している。例えば、APCは、それらが遺伝的に同一でないドナーに由来するならば、エフェクター細胞と同種異系であるといわれる。
【0030】
「対象」とは、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物には、ネズミ、類人猿、ヒト、家畜、スポーツ用動物及びペットが含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0031】
本明細書中で用いられる「遺伝的修飾」とは、細胞の内因性ヌクレオチドへの任意の付加、欠失又は分裂を意味する。
【0032】
「ウイルスベクター」は、in vivoか、ex vivoか又はin vitroにおいて宿主細胞中に送られるポリヌクレオチドを含む、組換えによって生産されるウイルス又はウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター等が含まれる。遺伝子転移がレトロウイルスベクターによって媒介される態様において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノム又はその一部分及び治療的遺伝子を含むポリヌクレオチドを意味する。
【0033】
本明細書中で用いられる「レトロウイルスに媒介される遺伝子転移」又は「レトロウイルス形質導入」は、同様の意味を有し、細胞に侵入し且つそのゲノムを宿主細胞ゲノム中に組み込むウイルスによって、遺伝子又は核酸配列が宿主細胞中に安定して転移される過程を意味する。そのウイルスは、その正常な感染機序によって宿主細胞中に入ることができるし又はそれが異なった宿主細胞表面受容体又はリガンドに結合して細胞に入るように修飾されうる。
【0034】
レトロウイルスは、それらの遺伝情報をRNAの形で有するが;しかしながら、そのウイルスがいったん細胞に感染すると、そのRNAは、感染した細胞のゲノムDNA中に組み込まれるDNAの形に逆転写される。組み込まれたDNAの形をプロウイルスと称する。
【0035】
遺伝子転移が、アデノウイルス(Ad)又はアデノ関連ウイルス(AAV)などのDNAウイルスベクターによって媒介される態様において、ベクター構築物とは、そのウイルスゲノム又はその一部分及び治療的遺伝子を含むポリヌクレオチドを意味する。アデノウイルス(Ad)は、50種類を越える血清型を含めた比較的充分に特性決定されている均一なウイルス群である(例えば、WO95/27071号を参照されたい)。Adは、容易に成長し、宿主細胞ゲノム中に組み込まれない。組み換え体Ad由来ベクター、特に、野生型ウイルスの組み換え及び生成に関する可能性を減少させるものも構築されている。(WO95/00655号;WO95/11984号を参照されたい)。野生型AAVは、宿主細胞ゲノム中に組み込まれた高い感染性及び特異性を有する。(Hermonat及びMuzyczka(1984)PNAS USA 81 :6466-6470 ;Lebkowskiら(1988)Mol.Cell.Biol.8 :3988-3996)。
【0036】
ポリヌクレオチドが機能的に結合することができるプロモーター及びクローニング部位両方を含有するベクターは、当該技術分野において周知である。このようなベクターは、in vitro又はin vivoでRNAを転写することができ、Stratagene(ラ・ホヤ,カリフォルニア州)及びPromega Biotech(マディソン,ウィスコンシン州)などの供給源から商業的に入手可能である。発現及び/又はin vitro転写を最適にするためには、転写か又は翻訳のレベルにおいて、それらクローンの5’及び/又は3’非翻訳部分を除去、付加又は変更して、発現を妨げる又は減少させるかもしれない余分の位置的に不適切な別の翻訳開始コドン又は他の配列を排除する必要がありうる。或いは、共通リボソーム結合部位を、出発コドンの5’のすぐ近くに挿入して、発現を促すことができる。ベクターの例は、種々の真核生物及び原核生物宿主での発現について記載されている当該技術分野において典型的に用いられるバキュロウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター及び他の組み換え体ビヒクルであり、遺伝子治療に、更には簡単なタンパク発現に用いることができる。
【0037】
これらの中には、DNA/リポソーム複合体及び標的とされるウイルスタンパク質DNA複合体を含めたいくつかの非ウイルスベクターがある。細胞への供給を促すためには、本発明の核酸又はタンパク質を、細胞表面抗原、例えば、TCR、CD3又はCD4を結合する抗体又はそれらの結合フラグメントに共役させることができる。ターゲッティング抗体又はそのフラグメントも含むリポソームは、本発明の方法で用いることができる。本発明は、本明細書中に開示された方法で用いるためのターゲッティング複合体も提供する。
【0038】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野において周知の方法を用いてベクターゲノム中に挿入される。例えば、インサート及びベクターDNAは、適当な条件下において制限酵素と接触して、互いに対になり且つリガーゼと一緒に結合しうるそれぞれの分子上に相補的末端を生成することができる。或いは、合成核酸リンカーを限られたポリヌクレオチドの末端に連結することができる。これら合成リンカーは、ベクターDNA中の特定の制限部位に該当する核酸配列を含有する。更に、終結コドン及び適当な制限部位を含有するオリゴヌクレオチドは、例えば、次の、哺乳動物細胞中の安定な又は一時的トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択可能マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの即時型遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結及びRNAプロセシングのシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40複製起点及びColE1;変化しやすい多数のクローニング部位;及びセンス及びアンチセンスRNAのin vitro転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーターのいくつか又は全部を含有するベクター中に挿入するために連結することができる。他の手段は当該技術分野において周知であり且つ利用可能である。
【0039】
本明細書中で用いられる「発現」とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写され且つペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳される過程を意味する。そのポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、適当な真核生物宿主が選択されるならば、発現には、mRNAのスプライシングが含まれうる。発現に必要な調節要素には、RNAポリメラーゼを結合するプロモーター配列及びリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌発現ベクターには、lacプロモーターなどのプロモーター及び転写開始のための Shine-Dalgarno 配列及び出発コドンAUGが含まれる(Sambrookら(1989),上記)。同様に、真核生物発現ベクターには、RNAポリメラーゼIIの異種又は同種プロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、出発コドンAUG、及びリボソームの脱離のための終結コドンが含まれる。このようなベクターは、当該技術分野において周知の方法、例えば、概してベクターを構築するための上記の方法に記載された配列によって商業的に入手できるし又は組み立てることができる。
【0040】
「主要組織適合性複合体」又は「MHC」という用語は、T細胞などの免疫エフェクター細胞への抗原提示及び迅速な移植片拒絶に必要である細胞表面分子をコードしている遺伝子の複合体を意味する。ヒトの場合、MHC複合体は、HLA複合体としても知られている。MHC複合体によってコードされているタンパク質は、「MHC分子」として知られ、クラスI及びクラスII MHC分子に分類される。クラスI MHC分子には、β2−ミクログロブリンと非共有結合によって結合したMHC中にコードされているα鎖から成る膜ヘテロダイマータンパク質が含まれる。クラスI MHC分子は、ほとんど全ての核形成細胞によって発現され、CD8+T細胞への抗原提示において機能することが知られている。クラスI分子には、ヒトの場合、HLA−A、−B及び−Cが含まれる。クラスII MHC分子にも、非共有結合によって結合したα及びβ鎖から成る膜ヘテロダイマータンパク質が含まれる。クラスII MHCは、CD4+T細胞中で機能することが知られており、ヒトの場合、HLA−DP、−DQ及びDRを含む。「MHC拘束性」という用語は、抗原がプロセシングされ、そして得られた抗原性ペプチドがクラスIか又はクラスII MHC分子と結合して提示された後にしかT細胞は抗原を認識できないというT細胞の特徴を意味する。MHCを識別し且つ比較する方法は、当該技術分野において周知であり、Allen M.ら(1994)Human Imm.40 :25-32 ;Santamaria P.ら(1993)Human Imm.37 :39-50 ;及びHurley C.K.ら(1997)Tissue Antigens 50 :401-415 に記載されている。
【0041】
「配列モチーフ」という用語は、ある分子グループ(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)中に存在するパターンを意味する。例えば、一つの実施態様において、本発明は、抗原中に存在するペプチドの中の配列モチーフの識別を提供する。この実施態様において、典型的なパターンは、疎水性、親水性、塩基性、酸性等のような特徴的なアミノ酸残基によって識別することができる。
【0042】
「ペプチド」という用語は、2個又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体又はペプチド模擬体の化合物を意味する最も広範囲の意味で用いられる。それらサブユニットは、ペプチド結合によって結合していてよい。もう一つの実施態様において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテル等によって結合していてよい。
【0043】
本明細書中で用いられる「アミノ酸」という用語は、グリシン及びD又はL両方の光学異性体を含めた天然の及び/又は非天然のすなわち合成のアミノ酸、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模擬体を意味する。3個又はそれ以上のアミノ酸のペプチドは、そのペプチド鎖が短い場合、一般的にはオリゴペプチドと称される。ペプチド鎖が長い場合、そのペプチドを、一般的にはポリペプチド又はタンパク質と称する。
【0044】
本明細書中で用いられる「固相支持体」とは、「担体」の一例として用いられ、特定の種類の支持体に制限されるわけではない。むしろ、多数の支持体が利用可能であり、当業者に知られている。固相支持体には、シリカゲル、樹脂、誘導プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲルが含まれる。適当な固相支持体は、望まれる最終用途及び種々の合成プロトコルの適合性に基づいて選択することができる。例えば、ペプチド合成に関して、固相支持体は、ポリスチレン(例えば、Bachem Inc.,Peninsula Laboratories,等から入手されるPAM樹脂)、POLYHIPE(登録商標)樹脂(Aminotech,カナダから入手される)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratories から入手される)、ポリエチレングリコールをグラフトしたポリスチレン樹脂(TentaGel(登録商標),Rapp Polymere,チュービンゲン,ドイツ)又はポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch,カリフォルニア州から入手される)のような樹脂を意味してよい。ペプチド合成の好ましい実施態様において、固相支持体は、ポリジメチルアクリルアミド樹脂を意味する。
【0045】
「異常に発現される」という用語は、同様の組織種類であろうとなかろうと、異なった細胞又は組織と比較した場合、すなわち、肺組織対肺癌組織で示差的に発現される(過発現か又は過少発現される)細胞又は組織中のポリヌクレオチド配列を意味する。
【0046】
「タグ」又は「SAGEタグ」は、メッセンジャーRNA中のある位置に存在する、概して約20ヌクレオチド未満の短いポリヌクレオチド配列である。そのタグを用いて、該当する転写物及びそれが転写された遺伝子を識別することができる。「ジタグ」は、二つの配列タグのダイマーである。
【0047】
「宿主細胞」又は「受容細胞」は、ベクターの受容者でありうる又はであった、外因性核酸分子、ポリヌクレオチド及び/又はタンパク質を包含する任意の個々の細胞又は細胞培養物を含む意味である。それは、単細胞の子孫を含むことも意味するが、その子孫は、天然の、偶然の又は故意の突然変異のために、元の親細胞とは(形態又はゲノム若しくは全DNA補体が)必ずしも完全に一致しないことがありうる。それら細胞は、原核性であってよいし又は真核性であってよく、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞及び哺乳動物細胞、例えば、ネズミ、ラット、類人猿又はヒトが含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0048】
「抗体」は、抗原を結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書中で用いられるその用語は、自然のままの免疫グロブリンのみならず、抗イディオタイプ抗体、突然変異体、フラグメント、融合タンパク質、ヒト化タンパク質、及び必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の修飾も包含する。
【0049】
「抗体複合体」は、抗体(上に定義の通り)及びその結合パートナーすなわちリガンドの組合せである。
【0050】
天然の抗原は、対象において免疫応答を引き起こすポリペプチド、タンパク質又はエピトープを含有するフラグメントである。
【0051】
「単離される」という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントが、天然において通常は結合している細胞性の及びそれ以外の成分から分離される意味である。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントは、その天然に存在する相対物からそれを区別する「単離」を必要としない。更に、「濃縮された」、「分離された」又は「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントは、容量当たりの濃度又は分子数が、その天然に存在する相対物のそれより大きく「濃縮されている」又はより少なく「分離されている」という点で、その天然に存在する相対物から区別されうる。ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントは、天然に存在する相対物とはその一次配列が、又は例えば、そのグリコシル化パターンが異なり、その一次構造、又は代わりに、グリコシル化パターンのような別の特徴によって天然に存在する相対物と区別されうるので、それが単離された形で存在する必要はない。本明細書中に開示される発明のそれぞれに明記されてはいないが、以下に開示される及び適当な条件下の組成物のそれぞれについての上記実施態様の全てが、本発明によって提供されることは理解されるはずである。したがって、天然に存在しないポリヌクレオチドを、単離される天然に存在するポリヌクレオチドとは別の実施態様として提供する。細菌細胞中で生産されるタンパク質を、天然においてそれを生産する真核生物細胞から単離される天然に存在するタンパク質とは別の実施態様として提供する。
【0052】
「組成物」とは、活性薬剤と、もう一つの、不活性(例えば検出可能薬剤、キャリヤー、固体支持体又は標識)又はアジュバントのように活性な、化合物又は組成物との組み合わせを意味するつもりである。
【0053】
「医薬組成物」とは、組成物をin vitro、in vivo又はex vivoでの診断用用途又は治療用用途に適するようにする、不活性又は活性のキャリヤーと活性薬剤の組み合わせを含むつもりである。
【0054】
本明細書中で用いられる、「医薬として許容しうるキャリヤー」には、リン酸塩バッファー溶液、水、及び、油/水又は水/油のエマルジョンのようなエマルジョン、ならびに様々な型の湿潤剤のような、任意の標準医薬キャリヤーが包含される。また、組成物は、安定剤及び防腐剤も含むことができる。キャリヤー、安定剤及びアジュバントの例としては、Martin、Remington’s Pharm.Sci.、第15版(Mack Publ.Co.,Easton,1975)を参照のこと。
【0055】
本明細書中に用いられている、用語「被験者に免疫応答を誘導する」は、この技術分野では良く理解されている用語であり、抗原(エピトープ)を被験者に導入した後、(もしあったとしても)被験者内に抗原(エピトープ)を導入する前の免疫応答と比較して、抗原(又はエピトープ)に対する免疫応答で、少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、さらにより好ましくは少なくとも約500倍、さらにより好ましくは少なくとも約1000倍、もしくはそれより多くの増加を、検出(測定)できることを指すつもりである。抗原(又はエピトープ)に対する免疫応答には、これらに限定するつもりはないが、抗原特異的(又はエピトープ特異的)抗体の生成、及び抗原(又はエピトープ)と特異的に結合する分子をその表面上に発現する免疫細胞の生成が含まれる。与えられた抗原(又はエピトープ)への免疫応答が誘導させたか否かを決定する方法は、この技術分野では周知である。例えば、抗原特異的抗体は、これらに限定するつもりはないが、例えば、固定化抗原(又はエピトープ)へのサンプル内抗体の結合を検出可能なように標識された第二の抗体(例えば酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)で検出するELISAを含む、この技術分野で既知の任意の様々な免疫アッセイを用いて検出することができる。抗原に特異的な免疫エフェクター細胞を、これらに限定するつもりはないが、FACS、又はCTLsの場合には51CR−遊離アッセイ、又は 3H−チミジン取り込みアッセイを含む、当業者らに既知の任意の様々なアッセイを用いて検出することができる。
【0056】
本発明は、1以上の抗原を発現する細胞に融合した抗原提示細胞(antigen presenting cells)(APCs)を含むハイブリッド細胞を犠牲にして、培養液内に拡大した教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を提供する。一つの実施態様では、APCは樹状突起細胞(dendric cells)(DCs)であり、ハイブリッド細胞は培養液内に拡がっている。もう一つの実施態様では、抗原(類)を発現している細胞は腫瘍細胞であり、免疫エフェクター細胞は、細胞毒性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocytes)(CTLs)である。DCsを、血液、皮膚、脾臓、骨髄、又は腫瘍のような起源から単離することができる。細胞集団を調製する方法もまた、本発明によって提供される。
【0057】
代わりの実施態様では、外因性のポリペプチドを挿入することによって、任意の又はすべての抗原特異的免疫エフェクター細胞又はハイブリッド細胞を遺伝的に修飾することができるか、又は修飾することができた。例として、細胞内に導入されるポリヌクレオチドは、ペプチド、リボザイム又はアンチセンス配列をコードする。
【0058】
別の実施態様では、抗原(類)を発現する細胞及び免疫エフェクター細胞は、腫瘍に豊富に含まれていた。さらなる実施態様では、免疫エフェクター細胞は、細胞毒性Tリンパ球(CTLs)である。また、方法は、APCs及び抗原発現細胞を同一被験者から又は別の被験者(自己由来又は同種異系)から誘導する実施態様を提供する。
【0059】
この方法をさらに修飾して、免疫エフェクター細胞を、サイトカイン、例えばIL2又はGM−CSF及び/又は共刺激分子、の存在下で培養する。
【0060】
さらに、本発明によって、免疫応答の誘導に有効な、本明細書中に記載の有効量の抗原特異的免疫エフェクター細胞を投与することを含む、養子免疫療法が提供される。
【0061】
また、本発明は、上記の方法によって調製された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を用いて、さらに抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団によって認識される抗原をコードする遺伝子のポリヌクレオチドフラグメントを同定することを提供する。方法には、a)本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される第一細胞の抗原発現集団内に1セットのポリヌクレオチドフラグメント又は遺伝子発現を提示する「タグ」を得;b)第一細胞の抗原を欠く第二の細胞セット内に1セットのポリヌクレオチドフラグメント又は遺伝子発現を提示する「タグ」を得;そして、c)第一細胞及び第二細胞から得られたポリペプチドの間に唯一なタグ、第二細胞と比較した場合に抗原発現細胞の集団内で特異に又は異常に発現する遺伝子のフラグメントを提示する唯一のタグ、を同定する:段階を含む。さらなる実施態様では、唯一のポリペプチド又は「タグ」に関連する遺伝子を単離しクローン化した。
【0062】
一つの実施態様では、(上記の)段階(c)の方法を段階(b)の前に行うこともできる。第一細胞及び第二細胞は、限定するつもりはないが、ヒト、ネズミ、ラット又はサルの細胞を含む、動物細胞である。それらは、上記のように自己由来又は同種異系であることができる。
【0063】
特異に発現したポリペプチドを同定する多くの方法がこの技術分野で既知であり、そのそれぞれを用いて、上記の方法にヌクレオチドを提供することができる。本明細書中に用いられる、用語「ポリヌクレオチドフラグメント」は、SAGEタグ(上記)ならびに定量的/相対的遺伝子発現データを得る任意の方法から得られた任意のその他の核酸を含む。そのような方法は、限定するつもりはないが、cDNA(−)法、差異的表示法、及び発現配列タグ法が含まれる。cDNA(−)又は差異的表示に基づく技術は、2つの細胞の型の間の遺伝子発現の差の比較に極めて有用である可能性がある(Hedrickら、1984、Nature,308,149及びLian及びPardee、1992、Science,257,967)。発現配列タグ(expressed sequence tag)(EST)の研究方法は、ノーザンブロッティング、RNアーゼ保護、及び逆転写酵素−ポリメラーゼ鎖反応(reberse transcriptase-polymerase chain reaction)(RT−PCR)分析(Alwineら、1977、PNAS,74,5350;Zinnら、1983、Cell,34,865;及び、Veresら、1987、Science,237,415)の様な、遺伝子発見のためのもう一つの価値ある道具である(Adamsら、1991、Science,52,1651)。さらなる方法は、即時にPCTとカップリングする差異表示及び提示的差異分析である(Lisitisyn及びWigler、1995、Meth.Enzymol.,254,291−304)。もう一つの研究方法は:(a)本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原発現細胞から、相補的デオキシリボ核酸(cDNA)ポリヌクレオチドを提供し;(b)適合する主要組織適合性複合体(MHC)を持つ細胞からのcDNAポリヌクレオチドを、抗原を発現しない段階(a)の細胞に提供し;(c)第二の細胞と比較して第一の細胞によって異常に発現するcDNAを決定し分析する:段階を要求する。一つの実施態様では、SAGEのように本明細書中で同定され、合衆国特許第5,695,937号に記載されている方法を用いて、cDNAポリヌクレオチドを得ることができる。
【0064】
段階(b)及び(c)で同定されたポリヌクレオチドを比較して、それらのポリヌクレオチド又は遺伝子に相当するポリヌクレオチド、又は、第一細胞及び第二細胞のポリヌクレオチドと共通な遺伝子のフラグメント、を同定する。共通のポリヌクレオチドとは、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原をコードする遺伝子のフラグメントを意味している。本発明のポリヌクレオチドによってコードされるペプチドの生物学的活性は、本明細書中に記載の方法を用いて、確認することができる。
【0065】
この方法は、免疫原性を持つペプチド配列あるいはモチーフ又は免疫原性タンパク質あるいはポリペプチドのフラグメントをコードする可能性のあるポリヌクレオチドを同定する。このように、方法には、さらに、適合性MHCによるAPCによって発現提示される条件下でポリヌクレオチドを細胞内に導入することによって、発現生成物が興味ある抗原をコードしていることを確認することが含まれる。免疫エフェクター細胞による認識方法は、この技術分野では熟知されている。
【0066】
代わりの方法として、同定された主要組織適合性を持つ1以上の免疫エフェクター細胞を提供し、そして、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原内のペプチド配列モチーフを同定することによって、遺伝子を同定することができる。次いで、遺伝子をコードするポリヌクレオチドを同定する。さらなる実施態様では、ペプチド配列モチーフを含むか又は包含する抗原をコードする遺伝子を単離しクローン化する。方法には:
(a)本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原を発現し、同定された主要組織適合性複合体(MHC)拘束性を持つ第一細胞、及び抗原を発現しないが第一細胞に適合する主要組織適合性複合体(MHC)を持つ1以上の第二細胞、を提供し;
(b)抗原提示細胞によって示され、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される、抗原内のペプチド、配列モチーフをコードするポリヌクレオチドを同定し;
(c)1以上の第二細胞と比較して第一細胞によって異常に発現されるポリヌクレオチドを同定し;そして、
(d)段階(c)で同定されたポリヌクレオチドを、段階(b)で同定されたペプチド配列モチーフをコードするポリヌクレオチドと比較して、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原をコードする遺伝子フラグメントを同定する:ことが含まれる。一つの実施態様では、段階(c)(上記)の方法を段階(b)の前に行うこともできる。第一及び第二の細胞は、限定するつもりはないが、ヒト、ネズミ、ラット又はサルの細胞を含む動物細胞である。それらは上記のように、自己由来又は同種異系であることができる。
【0067】
この方法では、抗原性のあるペプチド配列あるいはモチーフ、又は抗原性タンパク質あるいはポリペプチドのフラグメントをコードする可能性を持つポリヌクレオチドが同定される。このように、さらに、方法には、適合するMHCによるAPCによって発現提示される条件下で、ポリペプチドを細胞内に導入することによって、発現生成物が興味ある抗原をコードすることを確認することも、含まれる。免疫エフェクター細胞による認識方法を以下に提供する。
【0068】
「第一細胞」は2つの基準:1)免疫エフェクター細胞によって認識される抗原を発現しなければならない;及び、2)同定された主要組織適合性複合体拘束性を持たねばならない:を満たさなければならない。適合性MHC拘束性を持つ第一細胞及び第二細胞の集団を前もって選択する。MHCを同定し比較する方法は、この技術分野では良く知られており、Allen M.ら、1994、Human Imm.,40,25−32;Satamaria P.ら、1993、Human Imm.,37,39−50;及び、Hurley C.K.ら、1997、Tissue Antigens,50,401−415に記載されている。抗原が免疫エフェクター細胞によって認識されるか否かを決定する方法は、この技術分野で良く知られており、 3H−チミジンの取込み;MTTがホルマザンブルーに変化することによって検出される代謝活性;サイトカインmRNA発現の増加、サイトカインタンパク質生成物の増加;及び標的細胞によるクロムの遊離:のような方法が含まれる。
【0069】
免疫エフェクター細胞によって認識される抗原を提示する任意の細胞又は細胞集団は、有用であり、本発明の範囲内にある。そのような細胞には、限定するつもりはないが、抗原提示細胞(上記)、β2−ミクログロブリンと複合させた精製MHCクラスI分子を持つ細胞、樹状突起細胞、完全な抗原提示細胞又は養子(foster)抗原提示細胞が含まれる。これらの細胞を単離し培養する方法は、この技術分野では良く知られている。
【0070】
免疫エフェクター細胞(上記)はAPCsを認識する。目的にかなった免疫エフェクター細胞は、本発明の方法に従って調製される。これらの方法では、CTLs、ならびに、ウイルス感染部位、自己免疫浸潤部位、移植拒否部位、感染部位、リンパ球浸潤部位、及び白血球浸潤部位から単離された細胞、を用いることができる。適切なCTLsには、制限するつもりはないが、同一のMHC拘束性、2以上のCTLs又はその任意の組み合わせを共有する、一個体から単離されたポリクローナルT細胞、2以上の個体から単離されたポリクローナルT細胞が含まれる。抗原を発現しない第二の細胞は、一つの実施態様では、抗原プロセシング活性を欠き、結合ペプチドを含まないMHC分子を発現する、養子抗原提示細胞の可能性がある。
【0071】
第一細胞及び第二細胞を前もって選択した後、次に抗原提示細胞(第一細胞集団)によって示された抗原内のペプチド配列モチーフをコードするポリヌクレオチドを同定する。一つの実施態様では、ペプチド配列モチーフが最初に同定され、それから、その後ポリヌクレオチドが誘導される。免疫エフェクター細胞によって認識される抗原内のペプチド配列モチーフを同定する任意の様々な方法は、本発明のこの段階を成し遂げるために有用である。簡単に言えば、そのような方法には、限定するつもりはないが、「ファージ法」(Scott及びSmith、1990、Science,249,386−390;Cwirlaら、1990、PNAS、,87,6378−6382;及び、Devlinら、1990、Science,249,404−406)、Geysen法(Geysenら、1986、Molecular Immunology,23,709−715;及びGeysenら、1987、J.Immunologic Method,102,259−274)、Fodorら(1991、Science,251,767−773)の方法、Furkaら、1988、14th International Congress of Biochemistry,第5巻、Abstrat FR:013;Furkaら、1991、Int.J.Peptide Protein Res.,37,487ー493;Houghton、合衆国特許第4,631,211号、1986年12月発行;及びRutterら、合衆国特許第5,101,175号、1991年4月23日発行に記載の、アゴニスト又はアンタゴニストであるペプチドの試験方法、合成ライブラリーを用いる方法(Needelsら、1993、PNAS,90,10700−4;Ohlmeyerら、1993、PNAS.90.10922−10926;及びLamら、国際特許公報WO92/00252)、組み合わせペプチド表示索引を利用する方法(Ohlmeyerら、1993、PNAS,90,10922−26)、及びVan der Zee、1989、Eur.J.Immunol.,19,43−47によるpepscan技術、が含まれる。一つの実施態様では、方法には、SPHERE(PCT WO97/35035に記載)が用いられる。簡単に言えば、SPHREは、それぞれのビーズが 制御された様式で放出されうるおおよそ200ピコモルの唯一のペプチドを含む固体支持体(例えばプラスチックビーズ)上で合成されたペプチドライブラリーを用いる、MHCクラスI−拘束性CTLエピトープを同定するための実験スクリーニング法である。特別なHLA対立遺伝子(allele)(例えばHLA−A2)に高アフィニティー結合するが、残された位置を任意抽出することによって様々なTCRエピトープ目録を含む、アンカー残基を固定化することによって、合成ペプチドライブラリーを特別なHLA拘束性に仕立てる。大まかに言うと、穴当たり10,000のビーズを持つ50枚の96穴プレートは、おおよそ5x107 の複雑なライブラリーに便宜を与えるであろう。スクリーニング当たり必要とされるCTL細胞の数及び手操作の量の両方を最少にするために、溶出ペプチドをさらにプールして、穴当たりの複雑さを所望する程度にすることができる。可溶性ライブラリーでの実験を基にすると、2x106 ほどの少なさのCTL細胞を含む96穴プレートで107 ペプチド(穴当たり10,000ペプチド)をスクリーニングが可能であるはずである。ビーズからのペプチドの割合(%)を裂き、51Cr−標識APCs(例えば養子抗原提示細胞又はT2細胞)及びCLT系と共にそれらをインキュベートした後、この技術分野で既知の標準法に違って51Cr−放出を測定することによって、反応種を含むペプチドプールを定量することができる。代わりに、サイトカインの生成(例えばインターフェロン−γ)又は増殖(例えば 3H−チミジンの取り込み)アッセイを用いることができる。反応性を持つ10,000ペプチド混合物を同定した後、それらの混合物に相当するビーズをより小さいプールに分け、新たに、96穴プレートに配る(例えば穴当たり100ビーズ)。ペプチドのさらなる割合(%)をプールから遊離させ、上記の方法の一つを用いて、活性を再アッセイする。反応性を持つ100−ペプチドプールを同定する場合、それらのペプチド混合物に該当するビーズを、新たに96−穴プレートに穴当たり1ビーズになるように再配分する。再び、さらなる割合のペプチドを遊離させ、反応性ライブラリーペプチドを含む単一ビーズを単離するために、反応性についてアッセイする。個々のビーズ上のペプチドの配列は、例えば、N−末端エドマン分解又は当業者らに既知のその他の分析技術によって、ビーズと結合している残留ペプチドの配列決定を行うことによって、決定することができる。
【0072】
次いで、ペプチドモチーフ又はモチーフ(類)をコードする変性したポリヌクレオチド配列を決定する。
【0073】
上記のように、代わりの実施態様には、さらに、免疫エフェクター細胞集団によって特異的に認識される抗原をコードする遺伝子を同定することが含まれる。抗原発現細胞内に発現する遺伝子の発現クローニングは、遺伝子を同定するための一つの手段である。このような研究方法(Kawakami Y.ら、1994、PNAS、91(9),3515−3519)では、mRNAを、与えられた抗原を持つ細胞から単離する。mRNAをcDNAに変える。得られたcDNAフラグメントを、プラスミド又はその他の適当な発現ベクター内に挿入する。cDNAを、真核生物細胞(酵母、哺乳動物あるいは昆虫細胞)又は原核生物細胞(例えば細菌)又はもう一つの適当な宿主細胞内で、増幅させる。次いで、DNAを、適当なHLA分子をコードするDNAと共に、COS細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞から誘導された安定した細胞培養液)のような宿主細胞内に導入又はトランスフェクトする。次いで、腫瘍特異的免疫エフェクター細胞クローンを、トランスフェクトされた宿主細胞に加える。(cDNAを受けたため)いくつかの宿主細胞が抗原を発現するならば、CTLが刺激され、培養液中で検出可能な、IFN−γあるいは腫瘍壊死因子(TNF)(Tumor necrosis factor)のような同定されたサイトカインを生成するであろう。腫瘍のようなサンプル細胞内に存在する全mRNA分子をスクリーニングするために、ベクターを含むおおよそ105 のDNAを、100の異なる分子のプール内で試験しなければならない。次いで、T細胞刺激に対して陽性であると認められたDNAプールを分け、単一種のDNAの調製が認められるまでトランスフェクション法を繰り返すことによって、抗原の発現をトランスファーできることが分かった。
【0074】
単離されたポリヌクレオチド及び単離されたポリヌクレオチドに該当する遺伝子もまた、本発明によって提供される。本明細書中に用いられる、用語「ポリヌクレオチド」は、DNA、RNA及び核酸擬態を包含する。また、ポリヌクレオチド及びそれらの補体に加えて、本発明は、アンチセンスポリヌクレオチド鎖、例えばこれらの配列又はそれらの補体に対するアンチセンスRNA、を提供する。本発明によって提供される配列及びVander Krolら、1988、Bio Techniques,6,958に記載の方法論を用いて、アンチセンスRNAを得ることができる。
【0075】
ポリヌクレオチドを、検出可能マーカー、例えば酵素ラベル又は細胞内の核酸及び遺伝子の発現を検出するための放射性同位体、と結合することができる。検出可能なシグナルを与える能力を持つ、蛍光、放射性、酵素又はアビジン/ビオチンのようなその他のリガンドを含む、広範の適当な検出可能マーカーがこの技術分野で知られている。当業者らは、放射性試薬又は他の環境に好ましくない薬剤の代わりに、蛍光標識、又はウレアーゼ、アルカリホスファターゼあるいはペルオキシダーゼのような酵素タグを用いることができる。酵素タグの場合、ヒトの眼に又は分光光度計で見える手段を提供するために使用可能な比色指標基質が知られており、相補的核酸−含有サンプルとの特異的ハイブリダイゼーションを同定できる。簡単に言えば、さらに、本発明は、相補的一本鎖ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にする条件(好ましくは、中程度のストリンジェントハイブリダイゼーション条件)下で、又はより好ましくは、高いストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で、少なくとも4、より好ましくは、少なくとも5又は6、最も好ましくは少なくとも10の本発明の条件ヌクレオチドである、標識した一本鎖ポリヌクレオチド(プローブ)と標的の一本鎖ポリヌクレオチドを接触させることによって、一本鎖又はその補体を検出する方法を提供する。ハイブリダイズしたポリヌクレオチドペアを、ハイブリダイズしていない一本鎖ポリヌクレオチドから分離する。ハイブリダイズしたポリヌクレオチドペアは、当業者らに周知の、例えばSambrookら(1989、上記)に示された、方法を用いて検出することができる。ポリヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとして用いるための適当な試薬及び指示書を含むキット内に提供することができる。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドを、PCRを用いて複製することができる。PCR技術は、合衆国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号及び第4,683,202号の主題であり、PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら、Birkhauser Press,Boston、1994)及びそれに列挙された参考文献、に記載されている。
【0077】
代わりの方法として、当業者は、本明細書中に提供された配列及びDNAを複製するための市販のDNAシンセサイザーを用いることができる。したがって、本発明は、また、ポリヌクレオチドの直線配列、適当なプライマー分子、酵素のような化学物質、及びそれらを複製するための指示書を提供することによって、そして、ポリヌクレオチドを得るために適正な方向にヌクレオチドを化学的に複製又は連結することによって、本発明のポリヌクレオチドを得るためのプロセスをも提供する。別の実施態様では、さらに、これらのポリヌクレオチドを分離する。なおさらに、当業者は、ポリヌクレオチドを適当な複製ベクター内に挿入し、ベクターを複製し増幅するために、適当な宿主細胞(原核生物及び真核生物の細胞)内に挿入することができる。そのようにして増幅されたDNAは、当業者らに周知の方法によって、細胞から単離することができる。この方法によってポリヌクレオチドを得るための方法は、さらに、そうして得られたポリヌクレオチドと同様に、ここに提供される。
【0078】
RNAは、DNAポリヌクレオチドを適当な宿主細胞内に最初に挿入することによって得られる。DNAは、任意の適当な方法によって、例えば適当な遺伝子配達ベヒクル(例えばリポソーム、プラスミド又はベクター)を用いることによって、又はエレクトロポレーションによって、挿入することができる。細胞を複製し、DNAをRNAに転写したならば、次に、RNAを、当業者らに周知の方法、例えばSambrookら(1989、上記)に示したような方法、を用いて単離できる。例えば、Sambrookら(1989、上記)に記載の方法に従って、mRNAを、様々な溶解酵素又は化学溶液を用いて単離するか、又は製造者らによって提供された指示書に従って核酸結合樹脂によって抽出することができる。
【0079】
ポリヌクレオチドを、プローブ又はプライマーとして用いることもできる。本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞もまた、本発明の範囲内にある。「完全に適合した」プローブが特異的ハイブリダイゼーションに必要でないことは、この技術分野で知られている。小数塩基の置換、欠損又は挿入によって達成されるプローブ配列のマイナーチェンジは、ハイブリダイゼーションの特異性に影響を与えない。一般に、20%程の多さの塩基誤対合は、(最適アラインの場合)寛大に受け入れることができる。好ましくは、前述のmRNAの検出に有用なプローブは、本発明のポリヌクレオチドを含む適当な大きさの相同領域と少なくとも約80%同一である。より好ましくは、プローブは、相同領域のアライメント後、該当する遺伝子配列と85%同一であり、さらにより好ましくは、それは90%の同一性を示す。
【0080】
これらのプローブをラジオアッセイ(例えば、サザン及びノーザンブロット分析)に用い、様々な細胞又はこれらの細胞を含む組織を検出又はモニターすることができる。また、プローブを、又は本発明の1以上のポリヌクレオチドに該当する遺伝子の発現を検出する高処理量スクリーニングアッセイに用いるためのチップのような固体支持体又はアレーに付着させることができる。したがって、本発明は、また、高処理量スクリーニングに用いられるチップのような固体支持体に付着させた、転写物又はこれらの配列の一つの補体の、上記のような少なくとも一つのプローブを提供する。
【0081】
さらなる実施態様では、ポリヌクレオチド又は遺伝子配列もまた、配列データベースと、例えば既知配列とサンプル配列を適合させるコンピューター法を用いて、比較することができる。配列同一性は、即ち、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、1987)、増補30版、7.7.18節、表7.7.1、に記載の方法のような、この技術分野で既知の配列アライメントプログラムを用いて、配列比較によって決定することができる。望ましいアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)であり、好ましくは、以下違約パラメーター:mismath=2;open gap=2、及びextend gap=2:を用いる。もう一つの好ましいプログラムは、2つのヌクレオチド配列のアライメント用BLASTプログラムであり、以下の違約パラメーター:open gap=50;extension gap−2;gapxdropoff=0;expect=10:word size=11:を用いた。BLASTプログラムは、以下のインターネットアドレス(http ://www.ncbi.nlm.nih.gov)で入手できる。上記のように、代わりの方法として、高い、中程度及び低いストリンジェンシ条件下でのハイブリダイゼーションもまた、配列同一性の程度を示すことができる。
【0082】
また、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞内へのポリヌクレオチドの形質導入を確認するために、APCで発現する遺伝子又は遺伝子転写物の検出用プライマーとして提供することができる。この状況では、増幅とは、合理的な忠実さで標的配列を複製する能力を持つプライマー依存性ポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント及び逆転写酵素のような、天然又は組換えDNA−ポリメラーゼによって、成し遂げることができる。プライマーの好ましい長さは、上記のプローブで同定されたそれと同一である。
【0083】
さらに、本発明は、RNA転写のプロモーター、ならびにDNAあるいはRNAの複製及び/又は一時的又は安定な発現のためのその他の調節配列、と機能し得るように連結させた単離されたポリヌクレオチドを提供する。ここに用いられている、用語「機能しうるように連結した」とは、プロモーターがDNA分子のRNAへの転写を指示するであろうそのような様式で位置することを意味している。そのようなプロモーターの例は、SP6、T4及びT7である。ある実施態様では、細胞特異的プロモーターは、終止コドン及び選択可能マーカー配列、ならびにDNAの挿入片をこの技術分野で周知であり市販されているプロモーターに機能しうるように連結することができるクローニング部位と共に、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーを含む挿入されたポリヌクレオチドの細胞特異的発現に用いられる。一般的方法論及びクローニングストラテジーに関しては、Gene Expression Technology(Goeddelら、Academic Press,Inc.、1991)及びそこに列挙された参考文献、ならびに、様々な適当なベクターに関しての、地図、機能性、市販供給者、GenEMBL供託番号のリファレンスを含む、Vectors:Essential Data Series(Gacesa及びRamji編、John Wiley & Sons,N.Y.、1994)を参照のこと。好ましくは、これらのベクターは、in vitro又はin vivoでRNAを翻訳する能力を持つ。
【0084】
これらの核酸を含む発現ベクターは、タンパク質及びポリペプチドを生成するための宿主ベクターシステムを得るために有用である。それは、これらの発現ベクターが、エピソームとして、又は染色体DNAの必須部分としてのいずれかで、宿主生物体内で複製可能なはずであることを意味している。適当な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、コスミド等を含む、ウイルスベクターが含まれる。アデノウイルスベクターは、in vitro及びin vivoの両方でのそれらの高レベルな発現及び細胞の能率的なトランスフォーメーション故に、in vivoでの組織への遺伝子の導入に、特に有用である。核酸を、適当な宿主細胞、例えば原核生物細胞又は真核生物細胞及び宿主細胞複製物内に挿入する場合、タンパク質を組み換え生成することができる。適当な宿主細胞は、ベクターに依存し、周知の方法を用いて構築された、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞及び細菌細胞を含むことができる。Sambrookら、1989(上記)を参照のこと。細胞内に外因性核酸を挿入するためのウイルスベクターの使用に加えて、細菌細胞でのトランスフォーメーション:哺乳動物細胞でのリン酸カルシウム沈殿を用いたトランスフェクション;又はDEAE−デキストラン;エレクトロポレーション;又は、ミクロインジェクション、のようなこの技術分野で周知の方法に従って、核酸を宿主細胞内に挿入することができる。この方法論については、Sambookら(1989、上記)を参照されたい。このように、本発明は、また、タンパク質又はポリペプチド又は抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、動物細胞(ラットあるいはマウス)、ヒト細胞、又は細菌細胞のような原核生物細胞をも提供する。
【0085】
ベクターをin vivo又はex vivoで遺伝子治療に用いる場合、複製−不全レトロウイルス又はアデノウイルスベクターのような、医薬として許容しうるベクターが望ましい。本発明の核酸を含む医薬として許容しうるベクターは、さらに、挿入されたポリヌクレオチドを一時的に又は安定に発現するように修飾することができる。ここに用いられている、用語「医薬として許容しうるベクター」には、限定するつもりはないが、ベクター、又は分割細胞内へ核酸を選択的に標識化し導入する能力を持つ配達ベヒクルが含まれる。そのようなベクターの例としては、感染した宿主細胞内でのベクターの広がりを不可能にするウイルスタンパク質を生成するその能力の欠如によって定義付けられる「複製−不全」ベクターである。複製−不全レトロウイルスベクターの例は、LNL6(Miller,A.D.ら、1989、BioTechniques,7,980−990)である。遺伝子マーカ−のレトロウイルス−仲介遺伝子トランスファ−用に複製−不全レトロウイスルを用いる方法論は、充分に確立されている(Correllら、1989、PNAS,86,8912;Bordignon、1989、PNAS,86,8912−52;Culver K.、1991、PNAS,88,3155;及び、Rill D.R.、1991、Blood,79(10),2694−700)。
【0086】
ポリヌクレオチド、遺伝子及びコードされたペプチド及びタンパク質を、さらに、in vitro又はin vivoでクローン化し発現することができる。宿主細胞発現システムから生成し単離されたタンパク質及びポリペプチドもまた、本発明の範囲内にある。発現ベクター及びクローニングベクターならびにこれらのポリヌクレオチド及び遺伝子を含む宿主細胞は、有効量を被験者に投与する方法と共に、ここに請求される。これらの配列に該当するペプチドを、組換え技術によって作り出すことができ、それらをワクチンとして被験者に投与することができるか、又は順々に被験者に有効量を投与するAPC内に導入することができる。遺伝子を用いて、順々にAPCをパルスするために用いることができるタンパク質を生成することができる。APCを順々に用いて、CTLsのような免疫エフェクター細胞を拡大することができる。パルスされたAPC及び拡大されたエフェクター細胞は、有効量の組成物を被験者に投与することによって、免疫療法に用いることができる。
【0087】
もう一つの実施態様では、本発明の方法は、薬剤のような定義された刺激物に応答して本発明のプローブと特異的にハイブリダイズする遺伝子の発現をモニターするために用いられる。
【0088】
一つの実施態様では、ハイブリダイズした核酸は、サンプル核酸に付着した1以上の標識を検出することによって、検出される。標識は、当業者らに周知の任意の数多くの手段によって、取り込まれうる。しかしながら、一つの態様では、標識は、サンプル核酸の調製における増幅段階の間に、同時に取り込まれる。したがって、例えば、標識プライマー又は標識ヌクレオチドでのポリメラーゼ鎖反応(PCR)は、標識された増幅生成物を提供するであろう。別の実施態様では、上記のような、標識されたヌクレオチド(例えば蛍光標識UTP及び/又はCTP)を用いた転写増幅では、転写された核酸内に標識が取り込まれる。
【0089】
代わりの方法として、標識を、直接、元来の核酸サンプル(例えば、mRNA、ポリA、mRNA、cDNA等)又は増幅完了後の増幅生成物に加えることができる。核酸に標識を付着させる手段は当業者らに周知であり、例えば、ニックトランスレーション、又は核酸をキナージングし、その後サンプル核酸を標識(例えばフルオロホア)に結合する核酸リンカーに付着(連結反応)させることによる(例えば標識RNAでの)末端標識化が含まれる。
【0090】
また、WO97/10365に開示の方法を用いて、バックグラウンドシグナルを減少させ測定感度を改良することによってサンプルの複雑性を減ずるために、高密度プローブアレイへのハイブリダイゼーション前に、ポリヌクレオチドを修飾することもできる。また、それらを、診断アッセイ及び分析アッセイに用いられるチップに付着させることもできる。このチップアッセイからの結果は、典型的には、コンピューターソフトウェアプログラムを用いて分析される。例えば、EP0717 113A2及びWO95/20681を参照のこと。ハイブリダイゼーションデータは、プログラムで読まれ、標的化遺伝子の発現レベルが計算される。この図を、病気の個人及び健康な個人についての遺伝子発現レベルの現存するデータセットに対して比較する。
【0091】
また、本発明のペプチド及びタンパク質と特異的に反応する抗体が、本発明によって提供される。そのような抗体には、制限するつもりはないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び抗体フラグメントが含まれる。これらを、検出可能標識と組み合わせ、周知の方法を用いて抗原及びそのフラグメントを同定するために用いることもができる。代わりの方法として、それらを医薬として許容しうるキャリヤーと組み合わせ、そのような治療を必要とする被験者に治療投与することができる。さらに、抗体、試薬及び使用書を含むキットが、本発明によって提供される。
【0092】
このように、常にはっきりと述べられるわけではないが、投与されるか又はin vitroで用いるためにキャリヤーと組み合わせる前に、本発明の組成物を医薬として許容しうるキャリヤーと組み合わせることができるを、理解すべきである。これらのin vitroでのキャリヤーには、制限するつもりはないが、細胞分離方法論で用いられるビーズが含まれる。
【0093】
本発明のポリヌクレオチドを含むこれらの宿主細胞は、ポリヌクレオチドの組換え複製及びペプチドの組換え生成に有用である。代わりに、細胞を用いて、本明細書に記載の方法で被験者に免疫応答を誘導することができる。宿主細胞が抗原提示細胞である場合、それらを用いて、養子免疫治療に順々に有用な腫瘍浸潤リンパ球のような免疫エフェクター細胞の集団を拡大することができる。
【0094】
有効量の細胞を被験者に投与すると、養子免疫治療が提供される。有効量のサイトカイン又は共刺激分子もまた、患者に共に投与することができる。
【0095】
さらに、本発明に従って、抗原特異的免疫エフェクター細胞を含むワクチンが提供される。さらになお、本発明によって、本明細書中に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞を用いて、抗原又はエピトープあるいは配列モチーフのようなそのフラグメントを含むワクチンが提供される。ワクチンの投与方法は、この技術分野で知られており、ワクチンを許容しうる医薬キャリヤーと組み合わせることもできる。有効量のサイトカイン及び/又は共刺激分子もまた、投与することができる。
【0096】
以下の例は、説明するためのものであって、ここに定義したように本発明を制限するつもりのものではない。
【0097】
材料及び方法
ハイブリッド細胞の調製
本発明に用いられるハイブリッド細胞は、この技術分野で既知の任意の適当な方法によって、形成させることができる。一つの実施態様では、腫瘍生検サンプルを細かに切り刻み、細胞懸濁液を作る。好ましくは、細胞懸濁液を少なくとも2つのフラクション−その一方は、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞を多く含み、もう一方は腫瘍細胞を多く含む−に分ける。また、免疫エフェクター細胞は、この技術分野で周知の方法を用いて、骨髄、血液又は皮膚から単離することができる。
【0098】
一般に、培養前の新形成細胞からの最初の接種集団を単離することが望ましい。新形成細胞からの様々な細胞型の分離は、細胞選別機、磁気ビーズ、及びパックカラムの使用を含む、任意数の方法によって、成し遂げられうる。分離するためのその他の方法には、制限するわけではないが、物理的分離;抗体−被覆磁気ビーズを用いる磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;モノクローナル抗体と結合させた、もしくはモノクローナル抗体との結合に用いられた、限定するつもりはないが補体及び細胞毒を含む細胞毒性薬剤;固体マトリックス、例えばプレートに付着させた抗体との「パンニング(panning)」、溶出;又は任意のその他の慣用の技術:が含まれる。
【0099】
物理的分離技術の使用には、限定するつもりはないが、物理的(密度勾配遠心分離及びカウンターフロー遠心分離溶出)、細胞表面(レクチン及び抗体アフィニティー)、及びウイルス染色性(ミトコンドリア−結合染料rho123及びDNA−結合染料Hoechst33342)での差に基づいた技術、が含まれる。これらの方法は、当業者らに周知である。
【0100】
モノクローナル抗体は、特定の細胞系及び/又は分化段階と関連するマーカーを同定するためのもう一つの有用な試薬である。粗精製のために、抗体を固体支持体に付着することができる。用いられる分離技術は、収集されるフラクションの生命力の保持率を最大にしなければならない。効率の異なる様々な技術を用いて、「比較的粗い」分離を得ることができる。そのような分離では、存在するマーカーを持たない全細胞中の最大で10%まで、通常約5%より少なく、好ましくは約1%より少ない細胞が,保持されている細胞集団中に残っている可能性がある。用いられる特別な技術は、細胞毒に関する分離効率、実行の容易さ及び速さ、並びに機械化された装置及び/又は技術的熟練の必要性に依存するであろう。
【0101】
細胞フラクションを分離するもう一つの方法は、所望の細胞集団の選択的増殖を許す培養条件を使用することである。例えば、一つの態様では、次に、抗原発現細胞に富むフラクションを、APCs、好ましくは樹状突起細胞と融合させる。APCsと抗原発現細胞との融合は、例えばポリエチレングリコール(PEG)又はSendiaウイルスを用いた、任意の適当な方法で行うことができる。好ましい実施態様では、ハイブリッド細胞を、Gongら、1997、Nat.Med.,3(5),558−561に記載の方法に従って、作り出すことができる。
【0102】
DCsを、哺乳動物の骨髄培養液、末梢血液、脾臓又はその他の適当な組織から、この技術分野で既知のプロトコールを用いて、得ることができる。骨髄はDC始原細胞を含み、顆粒細胞−マクロファージコロニー−刺激因子(「GM−CSF」)(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)及びインターロイキン4(「IL−4」)の様なサイトカインで処理すると、増殖してDCsに分化する。そうして得られたDCsは、(例えば脾臓DCsと比較すると)比較的未成熟である。これらの未成熟なDCsは、脾臓で認められるより成熟したDCsより融合により従順であるらしい。
【0103】
また、末梢血液は比較的未成熟なDCs又はDC始原細胞を含み、GN−CSFのような適当なサイトカイン存在下で繁殖し分化することができ、また融合に用いることもできる。
【0104】
委託前(precommitted)DCsを、例えば、メトリザマイド勾配;非粘着/粘着技術(Freduenthal,PSら、1990、PNAS,87,7698−7702);パーコール勾配分離(Mehta−Damaniら、1994、J.Immunol.,153,996−1003)及び蛍光活性化細胞選別技術(Thomasら、1993、J.Immunol.,151,6840−6852)を用いて、単離する。一つの実施態様では、本質的に、DCsを、WO96/23060に記載の方法に従って、FACS技術によって単離する。ヒトDCsに特異的な細胞上面マーカーは存在しないが、マーカーのカクテル(cocktail)(例えばHLA−DR、B7.2、CD13/33等)がDCs上に存在することは、知られている。さらに、DCsは、CD3、CD20、CD56及びCD14抗原を持たないことが知られている。したがって、負及び正のFACS技術と組み合わせて、DCs分離方法が提供される。
【0105】
一つの実施態様では、APCs及び1以上の抗原を発現する細胞は自己由来であり、即ち、腫瘍生検を得た同一被験者から誘導される。別の実施態様では、APCs及び抗原を発現する細胞は同種異系であり、即ち樹状突起細胞は初期免疫応答の生成を促進することが知られているので異なる被験者から誘導される。
【0106】
好ましくは、APCs:抗原−発現細胞の比率は、約1:100から約1000:1の間である。典型的には、非融合細胞は、培養液内では数日後に死に絶え、それ故、培養液を数日間増殖させることによって、融合細胞を親細胞から単純に分離することができる。この実施態様では、ハイブリッド細胞は両方とも、さらに生き残り、加えて、組織培養表面に軽く粘着しているのみである。親細胞は容器に強く粘着している。それ故、約5−10日培養の後、ハイブリッド細胞は穏やかに除去して新規容器に移すことができるが、非融合細胞は付着したままである。
【0107】
代わりに、融合細胞は、機能性ヒポキサチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「HGPRT」)(hypoxanthin-guanine phosphoribosyl transferase)酵素を欠き、それ故、化合物HATでの処理に対して耐性であることが示された。したがって、これらの細胞を選択するために、HATを培養液に加えることができる。しかしながら、慣用のHAT選択と違って、ハイブリッド細胞培養液を、12日より多くの期間化合物に晒すべきではない。
【0108】
典型的には、ハイブリッド細胞は、APCsの表現型特徴を保持している。したがって、樹状突起細胞と共に作成されるハイブリッドは、同一のMHCクラスIIタンパク質及びその他の細胞表面マーカーを発現するであろう。その上、ハイブリッドは、それらを形成する細胞上に発現するそれら抗原を発現するであろう。
【0109】
抗原特異細胞の拡大
一つの態様では、本発明は、これらハイブリッド細胞を用いて、抗原特異的免疫エフェクター細胞に富む集団の生成を刺激する。抗原特異的免疫エフェクター細胞はハイブリッド細胞を犠牲にして拡大し、ハイブリッド細胞は培養液中で死滅する。天然免疫エフェクター細胞がその他の細胞によって教育されるプロセスは、主に、Coulie、1997、Molec.Med.Today,261−268に記載されている。
【0110】
上記の方法に従って調製されたハイブリッド細胞を、ナイーブな抗原特異細胞と混合する。好ましくは、抗原特異細胞は、腫瘍細胞を特異的に認識し、上記の腫瘍生検サンプルから多く得られる、抗原エフェクター細胞である。所望であれば、細胞をサイトカイン、例えばIL2、の存在下で培養することもできる。DCsは、IL12の様な強力な免疫刺激性サイトカインを分泌するので、拡大の第一ラウンド及びそれに続くラウンドの間、補充サイトカインを加える必要はないであろう。任意のイベントでは、培養条件は、抗原特異的免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞より非常に速い速度で拡大する(増殖する)様な条件である。ハイブリッド細胞及び所望のサイトカインの多様な注入を行うと、さらに抗原特異細胞の集団を拡大させることができる。
【0111】
記載のようなハイブリッド細胞を用いると、免疫エフェクター細胞の強力な抗原特異集団が得られる。一つの実施態様では、細胞はT細胞であり、腫瘍特異的抗原に特異的である。
【0112】
抗原特異性のアッセイ
好ましい実施態様では、抗原特異的免疫エフェクター細胞は、CTLsである。言い換えれば、それらは、特異的抗原を発現する細胞を活発に溶解する。細胞の細胞毒性活性は、限定するつもりはないが、トリチル化チミジンの取り込み(DNA合成の指標)、及び例えばコロニーの同定による成長又は増殖についての集団の試験(例えばWO94/21287を参照のこと)を含む、様々な方法で測定されうる。もう一つの実施態様では、MTTテトラゾリウム塩(3−(4,5−ジメチル−チアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を加えることもできる(Mossman、1983、J.Immunol.Methods,65,55−63;Niks及びOtto、1990、J.Immunol.Methods,130,140−151)。生きた細胞のミトコンドリア内に認められるスクシネートデヒドロゲナーゼは、MTTをホルマザンブルーに変える。したがって、濃青色は、代謝的に活性な細胞を示すであろう。同様に、タンパク質合成は、35S−メチオニンの取り込みによって示されうる。さらなるもう一つの実施態様では、古典的なクロム放出アッセイのような細胞毒性及び細胞死滅アッセイを用いて、エピトープ特異的CTLの活性化を評価することができる。その他の適当なアッセイも、当業者らに既知であろう。
【0113】
上記のように、サイトカイン生成又は細胞溶解性51Cr放出アッセイを用いて(Douticら、1992、Int.J.Cancer,50,289−291)、抗原を同定することができる。代わりに、PCT WO97/35035に記載の方法を用いて、抗原を同定することができる。以下の実験的詳細は、この方法の詳細な説明を提供する。
【0114】
ストラテジー1.個々の穴からの上清をレプリカプレートに分配し、1−2x103 の照射した(1500ラド)養子APCs(適当なMHC対立遺伝子を発現する)を個々の穴に加える。次に、クローン化されたCTLsを、同一のMHC拘束性の等量の10−20の異なるクローンを示す全体で103−104細胞に、穴当たりの最終全容量が200μlになるように加え、そして、湿気を帯びたCO2 インキュベーター内、37゜Cで4日間、プレートをインキュベートする。次いで、個々の穴を18.5kBqの[ 3H]dThdでパルスし、CTL増殖を測定する。16時間後、分裂活性CTLsのDNA内に取り込まれた放射活性をシンチレーション計数でアッセイする(Estaquierら、1994、Eur.J.Immunol.,24,2789−2795)。増殖応答の大きさは、交差反応するエピトープの予備スクリーニングとして役立ちうる。応答が大きければ大きいほど、おそらく1以上のCTLクローンを刺激するであろう。反応性ペプチドのすべてが興味深いが、最も有効なワクチン候補は、別のドナーから誘導したCTLsと交差反応するそれらであり、最も共通なMHC対立遺伝子によって拘束される。HLA B7様スパーモチーフを含むエピトープの同定は、それが主な人種群のすべてで40%以上の個人に提示される多数のHLA B対立遺伝子と結合するであろうため、ワクチン候補として非常に価値があるであろう(Sidneyら、1995、J.Immunol.,154,247−259)。
【0115】
ストラテジー2.代わりの方法では、第一段階は、20 の娘プレートの穴に51Cr−標識T2細胞を投与し、次いで、CTLsを加えることである。4時間後、放出された51Crを標準的方法で測定する。陽性の穴を同定する場合、その穴に該当する10の娘プレートから10の穴を同様にアッセイする。この時点でエピトープ探究を、一つのマスタープレート上の単一の穴内のビーズに狭める。
【0116】
陽性を示した穴は、さらに以下のように分析されるであろう:陽性の穴に相当するビーズを新規プレートに手作業で分配(1/穴)し、保持されていたペプチドをそれぞれから遊離させる。これらのプレートを前のようにアッセイし、この方法では、反応ビーズがはっきりと単離される。ビーズ合成歴をコードする分子タグは(光分解され得ないクロスリンカーと結合した)ビーズ上に保持されているので、陽性ビーズを速く効率よくデコードすることができる。例えば、原子捕獲型キャピラリーガスクロマトグラフィーによるビーズの分析は、即座に、そのビーズ上で合成されたペプチド配列を示す(Ohlmeyerら、1993、上記)。このように、 3H−チミジン取り込みアッセイを用いるとおおよそ10日内で、そして51Cr−遊離アッセイを用いる場合2日ほどの短さで、エピトープの明確な同定が達成されうる。
【0117】
もう一つの実施態様では、標準組織培養プレート内の新たに注いだ寒天の表面にライブラリービーズを適用し、次いでペプチドの一部分を遊離させると、結果として、個々のビーズの回りに溶出ペプチドの3次元濃度勾配が生ずる。抗原提示細胞は、寒天内に存在することができるか、又はペプチド遊離後の表面に適用することができる。次に、興味あるCTLsを、寒天/ペプチド/APCs上に塗布し、次いで、37゜Cで4−12時間インキュベートする。反応性ビーズは、プラークの形成によって検出され、プラークの大きさは、応答の大きさを示している。次に、陽性ビーズをプレートから採取し、洗浄し、シークエンシングすることができる。このアッセイは、ビーズの手操作をほとんど必要とせず、全体ライブラリーを、4時間ほどの短さで同時に(一段階で)スクリーニングすることができる。さらに、ビーズを回収し、6Mグアニジンで洗浄し、再利用することができる。
【0118】
もう一つの実施態様では、CD8+ MHCクラスI限定CTLエピトープの同定について記載された方法を、CD4+ MHCクラスII限定ヘルパーT細胞(Th)エピトープの同定に適用することもできる。この場合、MHCクラスII対立遺伝子−特異的ライブラリーを、ハプロタイプ特異的アンカー残基が適当な位置に提示されるように合成する。MHCクラスIIアグレトピック(Agretopic)モチーフを共通対立遺伝子について同定した(Rammensee、1995、Curr.Opin.Immunol.,7,85−96;Altuviaら、1994、Mol.Immunol.,24,375−379;Reayら、1994、J.Immunol.,152,3946−3957;Verreckら、1994、Eur.J.Immunol.,24,375−379;Sinigaglia及びHammer、1994、Curr.Opin.Immunol.,6,52−56:Rotzschke及びFalk、1994、Curr.Opin.Immunol.,6,45−51)。ペプチドの全長は、16−20のアミノ酸残基であろう。そして前記の方法を用いると、ライブラリーの複雑さが制限される。スクリーニングプロセスは、MHCクラスI−関連エピトープに関して記載されたそれと同一であるが、T2細胞よりむしろ、Bリンパ芽球細胞系(B lymphoblastoid cell lines)(B−LCL)を抗原提示に用いた。好ましい態様では、抗原プロセシングに欠陥のある前もって特徴付けられているB−LCLs(Mellinsら、1991、J.Exp.Med.,174,1607−1615)は、こうすることによって外因的に加えられた抗原の特異的提示が可能になり、用いられる。ライブラリーを、単離されたCD4+ MHCクラスII対立遺伝子−特異的Th細胞との反応性について、スクリーニングする。反応性は、Mellinsら(上記)の方法による 3H−チミジンの取り込み、又はMHCクラスI−関連エピトープスクリーニングについて前記された任意の方法に従って、測定することができる。
【0119】
上記の方法は、養子抗原提示細胞を用いている。ヒト細胞系174xCEM .T2(T2とも呼ばれている)は、細胞表面MHCクラスI分子との外因性ペプチドの関連に限定されるその抗原プロセシング経路内に変異を含む(Zweerinkら、1993、J.Immunol.,150,1763−1771)。これは、MHCクラスI−限定CD8+ CTLsに抗原を提示する必要のある、遺伝子TAP1、TAP2、LMP1、及びLMP2を包含するMHCクラスII領域内の大きなホモ接合欠損による。実際上、「空」のMHCクラスI分子のみが、これらの細胞表面に提示される。培養液に加えた内因性ペプチドは、ペプチドが対立遺伝子特異的結合モチーフを含む限り、これらのMHC分子と結合する。これらのT2細胞を、「養子」APCsとも呼ぶ。
【0120】
遺伝的修飾
本発明の方法は、ハイブリッド細胞又は刺激剤としてハイブリッド細胞を用いて誘導した抗原特異的細胞集団のいずれか内に遺伝子トランスファーする任意の方法を包含するつもりである。遺伝的修飾の例としては、限定はしないが、ウイルス仲介遺伝子トランスファー、リポソーム仲介トランスファー、トランスフォーメーション、トランスフェクション及びトランスダクション;例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス及びヘルペスウイルス並びにレトロウイルスにも基づくベクターのようなDNAウイルスを基にしたベクターの使用のようなウイルス仲介遺伝子トランスファー;が含まれる。特に、方法は、ベクターに含まれる核酸の取り込み、又はそれによって核が細胞質内に保持される様な核を位置付けるエレメント又は配列を欠く構築物の取り込み、に適している。これらの例では、核膜が崩壊し、核酸又は治療用遺伝子の宿主細胞染色体への接近が可能な場合、M(有糸分裂)期の間に、核酸又は治療遺伝子を核に入れることができる。一つの実施態様では、遺伝的修飾をex vivoで行い、次に、修飾された(即ち導入された)細胞を、レシピエントに投与する。このように、本発明は、本発明に開示の方法によってex vivo又はin vivoで遺伝子を投与することにより、抗原特異細胞内への遺伝子トランスファーを受け入れうる疾病治療を包含する。
【0121】
拡張された抗原特異細胞の集団を遺伝的に修飾することができる。さらに、また、ハイブリッド細胞を遺伝的に修飾し、例えば、制限はしないが、ホルモン、酵素、インターフェロン、成長因子等を含む特定の分泌生成物を供給することができる。適当な調節開始領域を用いることによって、欠乏タンパク質の誘導生成を達成することができ、その結果、生成物はそのようなタンパク質を正常に生成する細胞型とは異なる細胞型にあるにもかかわらず、タンパク質生成は自然生成に匹敵する。また、リボザイム、アンチセンス又はその他のメッセージを挿入し、特定の遺伝子生成又は疾病、特に血液リンパ栄養疾病への罹りやすさ、を阻害することもできる。
【0122】
適当な発現ベクター及びトランスファーベクターは上記の通りである。
【0123】
優性阻害オリゴヌクレオチド及びペプチドをコードする治療用遺伝子ならびに調節タンパク質及びオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子も、本発明に包含される。一般に、遺伝子治療には、1以上の遺伝子が特定の疾病の治療に必要である場合もあるが、単一の治療用遺伝子のトランスファーが含まれるであろう。一つの実施態様では、治療用遺伝子は、野生型免疫抑制剤の優性阻害変異体である。代わりに、治療用遺伝子は、野生型、欠損遺伝子のコピー又は機能性同族体であることも可能であった。
【0124】
ベクター当たり1以上の遺伝子を投与することができ、代わりに1以上の遺伝子をいくつかの適当ベクターを用いて配達することもできる。遺伝子欠損によっては、治療用遺伝子は調節配列及び非翻訳配列を含む可能性もある。ヒト患者の遺伝子治療では、治療用遺伝子は、一般的に、ヒト起源であろうが、遺伝子生成物がレシピエントに逆の免疫反応を誘導しないならば、ヒトと高い相同性及び生物学的同一性又は等価の機能を示すその他の密接に関連する種からの遺伝子を用いることもできる。治療での使用に適した治療用遺伝子は、疾病によって変わるであろう。
【0125】
形質導入の成功をモニターする目的のため、及びDNA構築物を組み込んでいない細胞に対してDNAを組み込んだ細胞を選択するために、マーカー遺伝子をベクター内に含むことができる。様々なマーカー遺伝子には、限定はしないが、G418又はヒグロマイシンに耐性であるような、抗生物質耐性マーカーが含まれる。限定するつもりはないが、マーカーがHSV−tk遺伝子である場合には、アシクロビル及びガンシクロビルの様な薬剤に対して感受性の細胞を作るらしいので、便宜性の少ない負の選択を用いることがある。代わりに、FACS選別によってトランスジーン発現細胞を選択するための安定な細胞表面マーカーを用いることによって、選択を行うこともできる。NeoR(ネオマイシン/G418耐性)遺伝子が共通に用いられるが、その配列が既にレシピエント細胞内に存在しない任意の便利なマーカー遺伝子を用いることもできる。
【0126】
ウイルスベクターを修飾して、レトロウイルス粒子内にキメラエンベロープタンパク質又は非ウイルス膜タンパク質を取り込み、粒子の安定性を改良して宿主範囲を広げるか、又は感染中の細胞型特異的標的化を可能にすることができる。宿主範囲を変えるレトロウイルスベクター生成物は、例えば、WO92/14829及びWO93/14188に、教授されている。in vivoで特定の細胞型を標的とすることのできるレトロウイルスベクターもまた、例えば、Kasaharaら、1994、Science,266,1373−1376に、教授されている。Kasaharaらは、ウイルスのエンベロープタンパク質と融合させたヒトのエリトロポイエチン(EPO)からなるキメラエンベロープタンパク質を持つモロネイ(Moloney)の白血病ウイルス(MoMLV)の構築について記載している。このハイブリッドウイルスは、EPOノレセプターを持つヒト赤血球始原細胞への組織屈性を示し、それ故、鎌状赤血球貧血及びサラセミアの遺伝子治療に有用である。細胞の感染を特異的に標的化する能力を持つレトロウイルスベクターは、in vivoでの遺伝子治療に好ましい。
【0127】
トランスファー遺伝子の発現は、遺伝子トランスファーの目的及び所望の効果に依存して、様々な方法で調節することができる。このように、導入遺伝子を、特定の物理的条件下、又は特別な細胞の型でのみ、構成的に発現される遺伝子を原因とするであろうプロモーターの調節下に置くことができる。
【0128】
用いると特定の細胞型内で導入された配列の発現の原因となりうるプロモーターの例には、T細胞及びNK細胞での発現にはGranzymeA、幹細胞及び始原細胞での発現にはCD34プロモーター、細胞毒性T細胞での発現にはCD8プロモーター、及び骨髄細胞での発現にはCD11bプロモーターが含まれる。
【0129】
誘導プロモーターを、ある物理的条件下での遺伝子発現に用いることができる。例えば、求電子試薬応答エレメントを用いると、求電子性分子に応答する化学耐性遺伝子の発現が誘導される。さらに治療的利益は、適当な位置付け配列を付着させることによって、遺伝子生成物を適当な細胞内の位置、例えば核に標的化することによって、さらに増加する。
【0130】
ウイルス導入後、導入された細胞又はそれらの子孫でのウイルスベクターの存在は、PCRによって変化しうる。PCRを行うと、マーカー遺伝子又はその他のウイルス導入配列を検出することができる。一般的に、過ヨウ素化血液サンプルを採取し、例えば、NeoR遺伝子がマーカーとして用いられるならば、NeoRプローブを用いて、PCRを都合良く行った。骨髄細胞又は成熟した造血細胞内のウイルス導入配列の存在は、導入細胞による再構築の成功の証拠である。PCR技術及び試薬は、この技術分野では周知である。一般的には、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Innis,Gelfand,Sninsky & White編(Academic Press,Inc.,San Diego,1990)及び市販(Perkin−Elmer)を参照のこと。
【0131】
養子免疫療法及びワクチン
また、本発明の抗原特異的免疫エフェクター細胞の拡張集団は、養子免疫療法レジメンでの、及びワクチンとしての使用が認められる。
【0132】
養子免疫療法には、一つの態様では、1以上の抗原を発現する細胞に融合させた抗原提示細胞(APCs)であるハイブリッド細胞と共にナイーブな免疫エフェクター細胞を培養することによって作成され、そのハイブリッド細胞を犠牲にして拡大させた、実質上純粋な教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞集団の有効量を、被験者に投与することが含まれる。好ましくは、APCsはDCsである。
【0133】
細胞は、自己由来であっても、又は異質遺伝子系であっても良い。一つの実施態様では、本明細書中に記載の養子免疫療法は、自己由来である。この場合、ハイブリッド細胞は、単一患者から単離した親細胞を用いて作成される。また、拡張された集団として、その被験者から単離されたT細胞が用いられる。最終的に、拡張された抗原特異細胞の集団を、同一患者に投与する。
【0134】
もう一つの実施態様では、養子免疫療法は、異質遺伝子系である。ここでは、2人以上の患者からの細胞を用いて、ハイブリッド細胞を生成し、そして抗原特異細胞の生成を刺激する。例えば、自己由来T細胞及び/又は生検を提供する被験者からの樹状突起細胞を得ることが不可能な場合には、その他の健康な患者又は罹患患者からの細胞を用いて、抗原特異細胞を生成することができる。拡張された集団を、細胞を単離した任意の一人の被験者、又は全く別のもう一人の被験者に、投与することができる。
【0135】
また、本明細書中に記載の集団及び方法を用いて、細胞に基づくワクチンを発展させることもできる。
【0136】
さらなる用途
本明細書中に記載の集団を用いて、PCT WO97/35035に記載のそのような様々な方法を用いて、新規の抗原及びこれらの抗原をコードする遺伝子を同定することができる。もう一つの実施態様では、SAGE分析(合衆国特許第5,695,937号に記載)を用いて、拡張された集団によって認識される抗原を同定することができる。SAGE分析は、抗原発現細胞内に異常に、又は特異に発現されるヌクレオチド配列の同定を含む。簡単に言えば、SAGE分析は、(1)抗原発現集団、及び(2)その抗原を発現しない細胞、からの相補的デオキシリボ核酸(cDNA)を提供することで開始される。両方のcDNAをプライマー部位と連結させることができる。次いで、配列タグを、例えば適当なプライマーを用いて作りだし、DNAを増幅させる。2つの細胞の型の間でこれらのタグの差を測定することによって、抗原発現細胞集団内で異常に発現する配列を同定することができる。
【0137】
代わりに、腫瘍細胞:MHC複合体から溶出されたペプチドのマススペクトルメーター分析を用いることもできる。抗原を同定するためのその他の技術も当業者らに周知であろう。
【0138】
実験
免疫療法の原理は、活性特異的免疫応答を探す非専門的APCs(例えば腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等)が、in vivo及びin vitroでの免疫エフェクター細胞の教育に有効でない場合でさえ、教育された免疫エフェクター細胞への溶解標的として供されうるという知見から、予想される。この非有効性分子基礎は、少なくとも過去には、専門的APCs(例えば樹状突起細胞)で見られるそれらのようなT細胞の初期化に必要とされるほとんど定義付けられていないコスティミュレーター(costimulatory:共刺激)シグナルの欠損によるものである。Gongら[PNAS、1998、95,6279及びNat,Med.,1997、3(5),558]は、同系間の癌細胞にネズミDCsを融合すると、その結果、癌関連腫瘍抗原のスペクトルを内因的に発現し提示するが、DCsの免疫エフェクター細胞初期化能力を実質上保持しているハイブリッド細胞が生じる。ネズミとヒトのDCs間に存在する高度の形態学的、表現型及び機能性上の相同性を与えると、本発明は、in vitroで腫瘍抗原に対して直接エフェクターT細胞を教育する目的で、ヒト腫瘍細胞と融合させたヒトDCsに対するDC/腫瘍融合の用途を拡張する。ネズミ系に属する様なGongらの実験方法を以下に示す。ヒトDC融合のプロセスに適合させるために予期される融合プロトコールに有意の変化はない。
【0139】
材料及び方法
細胞培養:ネズミ(C57BL/6)MC−38及びMB49細胞を、10%の熱不活性化子ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100ユニット/mlのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシを補充したDMEM内に保持した。MC−38及びMD49細胞は、MUC1 cDNAで安定にトランスフェクトされ、MC−38/MUC1及びMB49/MUC1細胞系を作成した。
【0140】
DC/腫瘍細胞融合:ネズミ骨髄誘導樹状突起細胞を、Gongら、1997、Nat.Med.,3(5),558−561に記載の方法に従って、調製した。腫瘍系と非粘着性DCsの融合は、Ca2+又はMg2+を除いた、pH7.4のDulbeccoのPBS内、50%PEGを加えて行われた。融合細胞をHAT培地(Sigma)存在下、24穴プレートに10−14日間、塗布した。HATは、融合した細胞が選択的に成長すると言う利益を提供する。さらに、融合細胞が穏やかなピペッティングで取り外されるのに対して、非融合細胞はプレートに固く付着したままである。DCs及びMC−38細胞の融合は、FC/MC−38と表され、DCsとMC−38/MUC1細胞の融合は、FC/MUC1と表される。
【0141】
免疫化:MUC1.Tgマウス(MUC1にトランスジェニック、Rowseら、1988、Cancer Res.,58,315)を、100Gy電離放射線に晒した1x106MC−38/MUC1細胞を、0日及び7日に、皮下注射した。腫瘍予防研究のために、FC/MUC1融合細胞(5x105)を、1日及び7日に、皮下注射した。
【0142】
CD8+T細胞系の生成及び細胞毒性アッセイ:リンパ球細胞を、5ユニット/mlのMUC1抗原を含むRPM1 1640完全培地内に懸濁した。ネズミIL−2(10ユニット/ml)を培養5日後に加えた。10日及び15日に、5ユニット/mlのMUC1抗原及び抗原提示細胞として1:5照射(30Gy)の同系の脾臓細胞細胞で再刺激した。死滅細胞を除去するためにフィコール遠心分離し、残留APCsを減らすためにナイロンウールを通した後、T細胞培養物を標準51Cr−遊離アッセイで分析した。
【0143】
結果
DCs、MC−38/MUC1腫瘍細胞及びMC−38/MUC1−DC融合細胞(FC/MUC1)を含む表面マーカー発現のFACS分析を図1に示す。融合細胞を、MHCI、MHCII、B7−1、B7−2及びICAM−1を含むDCマーカーのすべてを備えていることは容易に明らかであるが、MHC1を除いて、マーカーのいずれもが親のMC−38/MUC1細胞内でアップレギュレートされない。このことは、融合細胞のDC様の「隠された」形態と矛盾しない。さらに、また、融合細胞は、腫瘍抗原MUC1を親腫瘍細胞と同じ高レベルで発現するが、MUC1発現は、親DCs内では検出されない。このように、融合細胞で認められる遺伝子発現パターンは、個々の親細胞集団で認められる発現パターンの混成物であるが、重要なことに、強力なAPC機能性を授けると信じられているDCマーカーの発現レベルは維持されている。
【0144】
また、融合細胞(FC/MUC1及びFC/MC−38)でのMUC1トランスジェニックマウス(MUC1.Tg)のワクチン接種は、腫瘍の再挑戦に対して強力で特異的な防御を供するが、一方で照射MC−38/MUC1細胞をワクチン接種されたマウスは、再挑戦時に腫瘍を発生した(表1)。これら動物は誕生からMUC1抗原を寛容に受け取っていたため、このことは、融合細胞の免疫刺激能力をはっきりと証明している。融合細胞は、MB49細胞に対する防御を提供しないので、この逆の寛容性及び付随する腫瘍防御が特異的であることを示している。
【0145】
【表1】
【0146】
さらに、FC/MUC1ワクチン接種マウスからのCD8+ リンパ節細胞は、MC−38細胞、MC−38/MUC1細胞及びFC/MUC1細胞を溶解する能力を持っていたが、MUC1(−)同系腫瘍系MB49は、溶解されない(図2)。ナイーブマウスからのリンパ節細胞は、MC−38、MC−38/MUC1、又はMB49細胞を溶解できなかった。合わせると、これらのデータは、融合細胞によって供給される腫瘍防御は、免疫エフェクター細胞の教育によって仲介され、これらのエフェクター細胞は親腫瘍細胞を溶解することができることを、意味している。親腫瘍細胞でのワクチン化が結果として強力なCD8+ 抗腫瘍応答を生じないが、免疫応答を融合細胞で刺激する場合、MC−38細胞は有効な標的であり排除されることに着目することは興味深い。
【0147】
これらの研究は、本発明の実用性を証明している。即ち、DC融合は、専門的APC環境状況に於いて、腫瘍細胞によって発現される抗原を提示することによって、免疫エフェクター細胞を教育することができる。このデータから(1)ネズミDCsをネズミ腫瘍細胞に融合する一般方法は、ヒト腫瘍細胞へのヒトDCsの融合に適用され、そして(2)ヒトDC融合細胞は、in vitroで抗腫瘍免疫エフェクター細胞を引き出す強力薬剤であり、その生成物は、治療薬(例えば養子T細胞トランスファー)として、又は腫瘍排除抗原の姿をさらに特徴化するために、直接用いることができる。
【0148】
先行する議論及び実施例は、単に技術を説明するつもりのものである。当業者には明らかなように、様々な修飾を、本発明の精神及び範囲から離れることなく、上記の様に作り出すことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞性免疫学の分野である。特に、本発明は、抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団及びこれら細胞を製造する方法を提供する。養子免疫療法及びこれら細胞によって認識される特定の抗原の識別の方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
癌患者に由来する腫瘍特異的T細胞は、腫瘍細胞を結合し且つ溶解する。この特異性は、MHCクラスI及びクラスII分子によって腫瘍細胞の表面上に提示される短いアミノ酸配列(エピトープ)を認識するそれらの能力に基づいている。これらエピトープは、腫瘍又は癌細胞において特有にか又は異常に発現される遺伝子によってコードされている腫瘍抗原と称される細胞内タンパク質のタンパク質分解に由来している。
【0003】
特定の抗腫瘍T細胞の有用性は、腫瘍抗原の識別、及び引き続いて抗腫瘍免疫応答を引き起こすように設計されている癌ワクチンの生成を可能にしている。抗腫瘍T細胞は、血液中(それらが末梢血単核細胞画分中に見出されうる場合)、卵巣癌患者の腹水中(腫瘍関連リンパ球すなわちTAL)又は腫瘍自体内(腫瘍浸潤性リンパ球すなわちTIL)を含めた癌患者体内に局在している。当然ながら、TILは、T細胞によって認識される腫瘍抗原及び腫瘍抗原由来ペプチドの識別において最も有用となっている。
【0004】
TILを生じる慣用法は、腫瘍生検組織を細かく切り刻み、その細胞懸濁液をin vitroにおいてT細胞成長因子IL2の存在下で培養することを行う。数日間にわたり、腫瘍細胞及びIL2の組合せは、腫瘍細胞を犠牲にした腫瘍特異的T細胞の増殖を刺激することができる。この方法で、T細胞集団を拡大させる。最初の拡大に由来するT細胞集団を、引き続き、照射された腫瘍細胞と混合し、in vitroにおいてIL2と一緒に培養して、腫瘍反応性T細胞の増殖及び富化(enrichment)を更に促す。数回のin vitro拡大後、強力な抗腫瘍T細胞集団を回収し、そして慣用的であるが単調な発現クローニング法によって腫瘍抗原を識別するのに用いることができる。Kawakami Y.ら(1994)PNAS 91(9):3515-19。
【0005】
腫瘍特異的T細胞をin vitroで生じるのに現在用いられている方法は信頼性がない。大部分の他の充実腫瘍について、抗腫瘍T細胞を生じることは難しくなっている。腫瘍生検組織が黒色腫である場合だけ、成功率は70%に達する。黒色腫認識T細胞を生じることは比較的容易なため、これまでに識別された腫瘍抗原の大多数は、この疾患に関連している。非黒色腫腫瘍抗原は僅かしか識別されていない。
【0006】
したがって、T細胞応答をin vitroで生じる試みにおいて直面する難題は、腫瘍細胞がT細胞に抗原性標的(腫瘍抗原)を提示しうるとしても、それらは、強力なT細胞応答を生じる能力を妨げることがありうる免疫抑制因子も生成するかもしれないということである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kawakami Y.ら(1994)PNAS 91(9):3515-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、抗原の識別及び特性決定を助ける抗原特異的免疫エフェクター細胞を生じる簡単で且つ信頼できる方法が要求される。本発明は、この要求を満たし、関連した利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、ハイブリッド細胞を犠牲にして培養物中で拡大された、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、ハイブリッド細胞が、1以上の抗原を発現する細胞に融合した抗原提示細胞(APC)である上記集団を提供する。
【0010】
本発明によって更に提供されるのは、抗原特異的免疫エフェクター細胞を生産する方法、養子免疫療法の方法、及びそれら免疫エフェクター細胞によって特異的に認識される抗原をコードしている遺伝子を識別する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】DC及びMC−38/MUC1細胞の融合。DC、MC−38/MUC1及び融合した細胞(FC)を、指定の抗原についてフローサイトメトリーによって分析した。Gong J.ら,Nature Medicine(1997)3(5):558-561,558の図1を参照されたい。
【図2】FC/MUC1によるMUC1特異的CTLの誘導。免疫感作されていないMUC1.Tgマウスから単離されたナイーブリンパ節細胞又はFC/MUC1で免疫感作されたMUC1.Tgマウスから単離されたCD8+T細胞を、指定のエフェクター:標的比で、51Cr標識MC−38(Φ)、MC−38/MUC1(Μ)、MB49(Θ)及びMB49/MUC1(Ο)標的細胞と一緒にインキュベートした。CTL活性は、51Cr放出によって測定した。Gong J.ら,PNAS(1998)95 :6279-6283,6281の図2を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
各種公報、特許及び公開特許明細書は、確認用引用例によって本明細書中に参照される。これら公報、特許及び公開特許明細書の開示は、本発明が関する技術の状態をより充分に記載するために本開示中に援用される。
【0013】
定義
本発明の実施は、特に断らない限り、当該技術の範囲内である分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの慣用的な技法を用いる。例えば、Sambrook、Fritsch及びManiatis,MOLECULAR CLONING :A LABORATORY MANUAL,第2版(1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら監修(1987));the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2 :A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames及びG.R.Taylor監修(1995))及びANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,監修(1987))を参照されたい。
【0014】
本明細書中で用いられるいくつかの用語は、次に定義の意味を有する。
【0015】
明細書及び請求の範囲で用いられる単数形には、特に断らない限り、複数の意味が含まれる。例えば、「ある細胞」という用語には、それらの混合物を含めた複数の細胞が含まれる。
【0016】
「免疫エフェクター細胞」という用語は、例えば、新生物すなわち腫瘍細胞上に存在する抗原を特異的に認識する細胞を意味する。本発明の目的に関して、免疫エフェクター細胞には、B細胞、単球、マクロファージ、NK細胞、及び細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、例えば、CTL系、CTLクローン及び腫瘍、炎症部位又は他の浸潤物からのCTLなどのT細胞が含まれるが、それらに制限されるわけではない。「Tリンパ球」は、典型的には、適当な標識技術と組み合わせて抗CD3単クローン性抗体を用いて検出される表現型に関してCD3+であるリンパ球を示す。本発明のTリンパ球は、概して、CD4、CD8又は両方にも陽性である。「ナイーブな」免疫エフェクター細胞という用語は、抗原に遭遇していない免疫エフェクター細胞を意味し、未感作及び処女と同義で示されている。「教育された(educated)」とは、抗原特異的細胞に分化するように抗原と相互作用した免疫エフェクター細胞を意味する。
【0017】
「抗原提示細胞」又は「APC」という用語には、自然のままの細胞全体も、好ましくはクラスI MHC分子を用いて1以上の抗原の提示を誘導することができる他の分子も両方とも含まれる。適当なAPCの例は、以下で詳細に考察され、マクロファージ、樹状細胞、B細胞のような細胞全体;β2−ミクログロブリンに複合体形成した精製MHCクラスI分子;及び養子抗原提示細胞が含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0018】
樹状細胞(DC)は、効力のあるAPCである。DCは、脾臓、胸腺、リンパ節、表皮及び末梢血のような種々の免疫器官の少ない方の成分である。例えば、DCは、粗製脾臓(Steinmanら(1979)J.Exp.Med.149 :1)又は表皮細胞懸濁液(Schulerら(1985)J.Exp.Med.161 :526 ;及びRomaniらJ.Invest.Dermatol.(1989)93 :600)の僅か約1%、及び末梢血中の単核細胞の約0.1−1%(FreudenthalらProc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87 :7698)である。次の参考文献は、末梢血又は骨髄の先祖からDCを単離する方法を記載している。Inabaら(1992)J.Exp.Med.175 :1157 ;Inabaら(1992)J.Exp.Med.176 :1693-1702 ;Romaniら(1994)J.Exp.Med.180 :83-93 ;及びSallustoら(1994)J.Exp.Med.179 :1109-1118。DCの単離及び培養に好ましい方法は、Benderら(1996)J.Immun.Meth.196 :121-135及びRomaniら(1996)J.Immun.Meth.196 :137-151に記載されている。
【0019】
「養子抗原提示細胞」とは、抗原提示細胞(APC)が反応する免疫エフェクター細胞に通常は接触するそれら細胞の代わりに利用される抗原提示能力を有する任意の修飾された又は天然に存在する細胞(野生型又は突然変異体)を意味する。言い換えると、それらは、T細胞がin vivoで通常遭遇するとは考えられない任意の機能性APCである。
【0020】
DCは、T細胞活性化及び増殖に必要なシグナルを全て与えることが示されている。これらシグナルは、二つの種類に分類することができる。第一の種類は、免疫応答に特異性を与え、T細胞受容体/CD3(「TCR/CD3」)複合体と、APCの表面上の腫瘍組織適合遺伝子複合体(「MHC」)クラスI又はIIタンパクによって提示される抗原性ペプチドとの間の相互作用によって媒介される。この相互作用は、T細胞活性化を生じさせるのに必要であるが,充分ではない。実際上、第二の種類のシグナルを用いることなく、第一の種類のシグナルはT細胞アネルギーを引き起こすことができる。共刺激シグナルと称される第二の種類のシグナルは、抗原特異的でもないしMHCに拘束されることもなく、第一の種類のシグナルの存在下においてT細胞の完全増殖応答及びT細胞エフェクター機能の誘導をもたらすことができる。
【0021】
したがって、「サイトカイン」という用語は、細胞に様々な作用を及ぼす、例えば、成長又は増殖を誘導する多数の因子のいずれかを意味する。サイトカインの非制限例には、IL−2、幹細胞因子(SCF)、IL−3、IL−6、IL−12、G−CSF、GM−CSF、IL−1α、IL−11、MIP−1α、LIF、c−kitリガンド、TPO及びflt3リガンドが含まれる。サイトカインは、例えば、Genzyme Corp.(フレーミンハム,マサチューセッツ州)、Genentech(サウス・サンフランシスコ,カリフォルニア州)、Amgen(サウザンド・オークス,カリフォルニア州)及びImmunex(シアトル,ワシントン州)のようないくつかの販売者から商業的に入手可能である。常に明記されてはいないが、野生型又は精製サイトカイン(例えば、組換えによって生産される)と同様の生物学的活性を有する分子は、本発明の精神及び範囲の範囲内で用いるためのものであり、したがって、野生型又は精製サイトカインの代用品であることを意味する。
【0022】
「共刺激分子」は、抗原提示細胞及びT細胞の表面上で発現される受容体−リガンド対間の相互作用に関与している。一つの典型的な受容体−リガンド対は、DCの表面上のB7共刺激分子及びT細胞上のその対受容体CD28又はCTLA−4である(Freemanら(1993)Science 262 :909-911 ;Youngら(1992)J.Clin.Invest.90 :229 ;及びNabaviら,Nature 360 :266)。他の重要な共刺激分子は、CD40、CD54、CD80及びCD86である。これらは、上に明記された販売者から商業的に入手可能である。
【0023】
「ハイブリッド」細胞とは、抗原提示能力も有するが、1以上の特定の抗原を発現もする細胞を意味する。一つの実施態様において、これらハイブリッド細胞は、in vitroにおいて、1以上の目的の抗原を発現することが知られている細胞とAPCを融合することによって形成される。
【0024】
「対照」細胞とは、抗原発現性細胞の集団と同様の抗原を発現しない細胞を意味する。
【0025】
「培養すること」という用語は、種々の培地上又は中の細胞又は微生物のin vitro増殖を意味する。培養物中の細胞成長の下降は、親細胞と完全に一致していないかもしれない(すなわち、形態学的に、遺伝学的に、又は表現型に関して)と理解される。「拡大された」とは、細胞の任意の増殖又は分裂を意味する。
【0026】
「有効量」とは、有益な又は望ましい結果を達成するのに充分な量である。有効量は、1回又はそれ以上の投与、適用又は用量で投与することができる。本発明の目的に関して、ハイブリッド細胞の有効量とは、抗原特異的免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の拡大を促す量である。
【0027】
「単離された」又は「富化された(enriched)」細胞集団は、実際上それが関係している細胞及び物質を「実質的に含まない」。「実質的に含まない」又は「実質的に純粋」とは、その集団の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、そして尚一層好ましくは、少なくとも90%が所望の細胞種類である意味である。
【0028】
本明細書中で用いられる「オートジェニック(autogeneic)」又は「自己(由来)(autologous)」という用語は、細胞の起源を示している。したがって、個体(「受容者」)に投与される細胞は、その細胞がその個体(「ドナー」)又は遺伝的に同一の個体に由来するならばオートジェニックである。オートジェニック細胞は、オートジェニック細胞の子孫でもありうる。その用語は、異なった細胞種類の細胞が、同様のドナー又は遺伝的に同一のドナーに由来するということも示している。したがって、エフェクター細胞及び抗原提示細胞は、それらが同様のドナー又はドナーと遺伝的に同一の個体に由来するならば、又はそれらが同様のドナー又はドナーと遺伝的に同一の個体に由来する細胞の子孫であるならば、オートジェニックであるといわれる。
【0029】
同様に、本明細書中で用いられる「同種(異系)(allogeneic)」という用語は、細胞の起源を示している。したがって、個体(「受容者」)に投与される細胞は、その細胞が受容者と遺伝的に同一でない個体に由来するならば同種異系であり;特に、その用語は、発現されるMHC分子の非同一性に関する。同種異系細胞は、同種異系細胞の子孫でもありうる。その用語は、異なった細胞種類の細胞が、それらが遺伝的に同一でないドナーに由来する細胞の子孫であるならば、遺伝的に同一でないドナーに由来するということも示している。例えば、APCは、それらが遺伝的に同一でないドナーに由来するならば、エフェクター細胞と同種異系であるといわれる。
【0030】
「対象」とは、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物には、ネズミ、類人猿、ヒト、家畜、スポーツ用動物及びペットが含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0031】
本明細書中で用いられる「遺伝的修飾」とは、細胞の内因性ヌクレオチドへの任意の付加、欠失又は分裂を意味する。
【0032】
「ウイルスベクター」は、in vivoか、ex vivoか又はin vitroにおいて宿主細胞中に送られるポリヌクレオチドを含む、組換えによって生産されるウイルス又はウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター等が含まれる。遺伝子転移がレトロウイルスベクターによって媒介される態様において、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノム又はその一部分及び治療的遺伝子を含むポリヌクレオチドを意味する。
【0033】
本明細書中で用いられる「レトロウイルスに媒介される遺伝子転移」又は「レトロウイルス形質導入」は、同様の意味を有し、細胞に侵入し且つそのゲノムを宿主細胞ゲノム中に組み込むウイルスによって、遺伝子又は核酸配列が宿主細胞中に安定して転移される過程を意味する。そのウイルスは、その正常な感染機序によって宿主細胞中に入ることができるし又はそれが異なった宿主細胞表面受容体又はリガンドに結合して細胞に入るように修飾されうる。
【0034】
レトロウイルスは、それらの遺伝情報をRNAの形で有するが;しかしながら、そのウイルスがいったん細胞に感染すると、そのRNAは、感染した細胞のゲノムDNA中に組み込まれるDNAの形に逆転写される。組み込まれたDNAの形をプロウイルスと称する。
【0035】
遺伝子転移が、アデノウイルス(Ad)又はアデノ関連ウイルス(AAV)などのDNAウイルスベクターによって媒介される態様において、ベクター構築物とは、そのウイルスゲノム又はその一部分及び治療的遺伝子を含むポリヌクレオチドを意味する。アデノウイルス(Ad)は、50種類を越える血清型を含めた比較的充分に特性決定されている均一なウイルス群である(例えば、WO95/27071号を参照されたい)。Adは、容易に成長し、宿主細胞ゲノム中に組み込まれない。組み換え体Ad由来ベクター、特に、野生型ウイルスの組み換え及び生成に関する可能性を減少させるものも構築されている。(WO95/00655号;WO95/11984号を参照されたい)。野生型AAVは、宿主細胞ゲノム中に組み込まれた高い感染性及び特異性を有する。(Hermonat及びMuzyczka(1984)PNAS USA 81 :6466-6470 ;Lebkowskiら(1988)Mol.Cell.Biol.8 :3988-3996)。
【0036】
ポリヌクレオチドが機能的に結合することができるプロモーター及びクローニング部位両方を含有するベクターは、当該技術分野において周知である。このようなベクターは、in vitro又はin vivoでRNAを転写することができ、Stratagene(ラ・ホヤ,カリフォルニア州)及びPromega Biotech(マディソン,ウィスコンシン州)などの供給源から商業的に入手可能である。発現及び/又はin vitro転写を最適にするためには、転写か又は翻訳のレベルにおいて、それらクローンの5’及び/又は3’非翻訳部分を除去、付加又は変更して、発現を妨げる又は減少させるかもしれない余分の位置的に不適切な別の翻訳開始コドン又は他の配列を排除する必要がありうる。或いは、共通リボソーム結合部位を、出発コドンの5’のすぐ近くに挿入して、発現を促すことができる。ベクターの例は、種々の真核生物及び原核生物宿主での発現について記載されている当該技術分野において典型的に用いられるバキュロウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター及び他の組み換え体ビヒクルであり、遺伝子治療に、更には簡単なタンパク発現に用いることができる。
【0037】
これらの中には、DNA/リポソーム複合体及び標的とされるウイルスタンパク質DNA複合体を含めたいくつかの非ウイルスベクターがある。細胞への供給を促すためには、本発明の核酸又はタンパク質を、細胞表面抗原、例えば、TCR、CD3又はCD4を結合する抗体又はそれらの結合フラグメントに共役させることができる。ターゲッティング抗体又はそのフラグメントも含むリポソームは、本発明の方法で用いることができる。本発明は、本明細書中に開示された方法で用いるためのターゲッティング複合体も提供する。
【0038】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野において周知の方法を用いてベクターゲノム中に挿入される。例えば、インサート及びベクターDNAは、適当な条件下において制限酵素と接触して、互いに対になり且つリガーゼと一緒に結合しうるそれぞれの分子上に相補的末端を生成することができる。或いは、合成核酸リンカーを限られたポリヌクレオチドの末端に連結することができる。これら合成リンカーは、ベクターDNA中の特定の制限部位に該当する核酸配列を含有する。更に、終結コドン及び適当な制限部位を含有するオリゴヌクレオチドは、例えば、次の、哺乳動物細胞中の安定な又は一時的トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択可能マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの即時型遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結及びRNAプロセシングのシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40複製起点及びColE1;変化しやすい多数のクローニング部位;及びセンス及びアンチセンスRNAのin vitro転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーターのいくつか又は全部を含有するベクター中に挿入するために連結することができる。他の手段は当該技術分野において周知であり且つ利用可能である。
【0039】
本明細書中で用いられる「発現」とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写され且つペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳される過程を意味する。そのポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、適当な真核生物宿主が選択されるならば、発現には、mRNAのスプライシングが含まれうる。発現に必要な調節要素には、RNAポリメラーゼを結合するプロモーター配列及びリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌発現ベクターには、lacプロモーターなどのプロモーター及び転写開始のための Shine-Dalgarno 配列及び出発コドンAUGが含まれる(Sambrookら(1989),上記)。同様に、真核生物発現ベクターには、RNAポリメラーゼIIの異種又は同種プロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、出発コドンAUG、及びリボソームの脱離のための終結コドンが含まれる。このようなベクターは、当該技術分野において周知の方法、例えば、概してベクターを構築するための上記の方法に記載された配列によって商業的に入手できるし又は組み立てることができる。
【0040】
「主要組織適合性複合体」又は「MHC」という用語は、T細胞などの免疫エフェクター細胞への抗原提示及び迅速な移植片拒絶に必要である細胞表面分子をコードしている遺伝子の複合体を意味する。ヒトの場合、MHC複合体は、HLA複合体としても知られている。MHC複合体によってコードされているタンパク質は、「MHC分子」として知られ、クラスI及びクラスII MHC分子に分類される。クラスI MHC分子には、β2−ミクログロブリンと非共有結合によって結合したMHC中にコードされているα鎖から成る膜ヘテロダイマータンパク質が含まれる。クラスI MHC分子は、ほとんど全ての核形成細胞によって発現され、CD8+T細胞への抗原提示において機能することが知られている。クラスI分子には、ヒトの場合、HLA−A、−B及び−Cが含まれる。クラスII MHC分子にも、非共有結合によって結合したα及びβ鎖から成る膜ヘテロダイマータンパク質が含まれる。クラスII MHCは、CD4+T細胞中で機能することが知られており、ヒトの場合、HLA−DP、−DQ及びDRを含む。「MHC拘束性」という用語は、抗原がプロセシングされ、そして得られた抗原性ペプチドがクラスIか又はクラスII MHC分子と結合して提示された後にしかT細胞は抗原を認識できないというT細胞の特徴を意味する。MHCを識別し且つ比較する方法は、当該技術分野において周知であり、Allen M.ら(1994)Human Imm.40 :25-32 ;Santamaria P.ら(1993)Human Imm.37 :39-50 ;及びHurley C.K.ら(1997)Tissue Antigens 50 :401-415 に記載されている。
【0041】
「配列モチーフ」という用語は、ある分子グループ(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)中に存在するパターンを意味する。例えば、一つの実施態様において、本発明は、抗原中に存在するペプチドの中の配列モチーフの識別を提供する。この実施態様において、典型的なパターンは、疎水性、親水性、塩基性、酸性等のような特徴的なアミノ酸残基によって識別することができる。
【0042】
「ペプチド」という用語は、2個又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体又はペプチド模擬体の化合物を意味する最も広範囲の意味で用いられる。それらサブユニットは、ペプチド結合によって結合していてよい。もう一つの実施態様において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテル等によって結合していてよい。
【0043】
本明細書中で用いられる「アミノ酸」という用語は、グリシン及びD又はL両方の光学異性体を含めた天然の及び/又は非天然のすなわち合成のアミノ酸、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模擬体を意味する。3個又はそれ以上のアミノ酸のペプチドは、そのペプチド鎖が短い場合、一般的にはオリゴペプチドと称される。ペプチド鎖が長い場合、そのペプチドを、一般的にはポリペプチド又はタンパク質と称する。
【0044】
本明細書中で用いられる「固相支持体」とは、「担体」の一例として用いられ、特定の種類の支持体に制限されるわけではない。むしろ、多数の支持体が利用可能であり、当業者に知られている。固相支持体には、シリカゲル、樹脂、誘導プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲルが含まれる。適当な固相支持体は、望まれる最終用途及び種々の合成プロトコルの適合性に基づいて選択することができる。例えば、ペプチド合成に関して、固相支持体は、ポリスチレン(例えば、Bachem Inc.,Peninsula Laboratories,等から入手されるPAM樹脂)、POLYHIPE(登録商標)樹脂(Aminotech,カナダから入手される)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratories から入手される)、ポリエチレングリコールをグラフトしたポリスチレン樹脂(TentaGel(登録商標),Rapp Polymere,チュービンゲン,ドイツ)又はポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch,カリフォルニア州から入手される)のような樹脂を意味してよい。ペプチド合成の好ましい実施態様において、固相支持体は、ポリジメチルアクリルアミド樹脂を意味する。
【0045】
「異常に発現される」という用語は、同様の組織種類であろうとなかろうと、異なった細胞又は組織と比較した場合、すなわち、肺組織対肺癌組織で示差的に発現される(過発現か又は過少発現される)細胞又は組織中のポリヌクレオチド配列を意味する。
【0046】
「タグ」又は「SAGEタグ」は、メッセンジャーRNA中のある位置に存在する、概して約20ヌクレオチド未満の短いポリヌクレオチド配列である。そのタグを用いて、該当する転写物及びそれが転写された遺伝子を識別することができる。「ジタグ」は、二つの配列タグのダイマーである。
【0047】
「宿主細胞」又は「受容細胞」は、ベクターの受容者でありうる又はであった、外因性核酸分子、ポリヌクレオチド及び/又はタンパク質を包含する任意の個々の細胞又は細胞培養物を含む意味である。それは、単細胞の子孫を含むことも意味するが、その子孫は、天然の、偶然の又は故意の突然変異のために、元の親細胞とは(形態又はゲノム若しくは全DNA補体が)必ずしも完全に一致しないことがありうる。それら細胞は、原核性であってよいし又は真核性であってよく、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞及び哺乳動物細胞、例えば、ネズミ、ラット、類人猿又はヒトが含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0048】
「抗体」は、抗原を結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書中で用いられるその用語は、自然のままの免疫グロブリンのみならず、抗イディオタイプ抗体、突然変異体、フラグメント、融合タンパク質、ヒト化タンパク質、及び必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の修飾も包含する。
【0049】
「抗体複合体」は、抗体(上に定義の通り)及びその結合パートナーすなわちリガンドの組合せである。
【0050】
天然の抗原は、対象において免疫応答を引き起こすポリペプチド、タンパク質又はエピトープを含有するフラグメントである。
【0051】
「単離される」という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントが、天然において通常は結合している細胞性の及びそれ以外の成分から分離される意味である。当業者に明らかであるように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントは、その天然に存在する相対物からそれを区別する「単離」を必要としない。更に、「濃縮された」、「分離された」又は「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントは、容量当たりの濃度又は分子数が、その天然に存在する相対物のそれより大きく「濃縮されている」又はより少なく「分離されている」という点で、その天然に存在する相対物から区別されうる。ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はそれらのフラグメントは、天然に存在する相対物とはその一次配列が、又は例えば、そのグリコシル化パターンが異なり、その一次構造、又は代わりに、グリコシル化パターンのような別の特徴によって天然に存在する相対物と区別されうるので、それが単離された形で存在する必要はない。本明細書中に開示される発明のそれぞれに明記されてはいないが、以下に開示される及び適当な条件下の組成物のそれぞれについての上記実施態様の全てが、本発明によって提供されることは理解されるはずである。したがって、天然に存在しないポリヌクレオチドを、単離される天然に存在するポリヌクレオチドとは別の実施態様として提供する。細菌細胞中で生産されるタンパク質を、天然においてそれを生産する真核生物細胞から単離される天然に存在するタンパク質とは別の実施態様として提供する。
【0052】
「組成物」とは、活性薬剤と、もう一つの、不活性(例えば検出可能薬剤、キャリヤー、固体支持体又は標識)又はアジュバントのように活性な、化合物又は組成物との組み合わせを意味するつもりである。
【0053】
「医薬組成物」とは、組成物をin vitro、in vivo又はex vivoでの診断用用途又は治療用用途に適するようにする、不活性又は活性のキャリヤーと活性薬剤の組み合わせを含むつもりである。
【0054】
本明細書中で用いられる、「医薬として許容しうるキャリヤー」には、リン酸塩バッファー溶液、水、及び、油/水又は水/油のエマルジョンのようなエマルジョン、ならびに様々な型の湿潤剤のような、任意の標準医薬キャリヤーが包含される。また、組成物は、安定剤及び防腐剤も含むことができる。キャリヤー、安定剤及びアジュバントの例としては、Martin、Remington’s Pharm.Sci.、第15版(Mack Publ.Co.,Easton,1975)を参照のこと。
【0055】
本明細書中に用いられている、用語「被験者に免疫応答を誘導する」は、この技術分野では良く理解されている用語であり、抗原(エピトープ)を被験者に導入した後、(もしあったとしても)被験者内に抗原(エピトープ)を導入する前の免疫応答と比較して、抗原(又はエピトープ)に対する免疫応答で、少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、さらにより好ましくは少なくとも約500倍、さらにより好ましくは少なくとも約1000倍、もしくはそれより多くの増加を、検出(測定)できることを指すつもりである。抗原(又はエピトープ)に対する免疫応答には、これらに限定するつもりはないが、抗原特異的(又はエピトープ特異的)抗体の生成、及び抗原(又はエピトープ)と特異的に結合する分子をその表面上に発現する免疫細胞の生成が含まれる。与えられた抗原(又はエピトープ)への免疫応答が誘導させたか否かを決定する方法は、この技術分野では周知である。例えば、抗原特異的抗体は、これらに限定するつもりはないが、例えば、固定化抗原(又はエピトープ)へのサンプル内抗体の結合を検出可能なように標識された第二の抗体(例えば酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)で検出するELISAを含む、この技術分野で既知の任意の様々な免疫アッセイを用いて検出することができる。抗原に特異的な免疫エフェクター細胞を、これらに限定するつもりはないが、FACS、又はCTLsの場合には51CR−遊離アッセイ、又は 3H−チミジン取り込みアッセイを含む、当業者らに既知の任意の様々なアッセイを用いて検出することができる。
【0056】
本発明は、1以上の抗原を発現する細胞に融合した抗原提示細胞(antigen presenting cells)(APCs)を含むハイブリッド細胞を犠牲にして、培養液内に拡大した教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を提供する。一つの実施態様では、APCは樹状突起細胞(dendric cells)(DCs)であり、ハイブリッド細胞は培養液内に拡がっている。もう一つの実施態様では、抗原(類)を発現している細胞は腫瘍細胞であり、免疫エフェクター細胞は、細胞毒性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocytes)(CTLs)である。DCsを、血液、皮膚、脾臓、骨髄、又は腫瘍のような起源から単離することができる。細胞集団を調製する方法もまた、本発明によって提供される。
【0057】
代わりの実施態様では、外因性のポリペプチドを挿入することによって、任意の又はすべての抗原特異的免疫エフェクター細胞又はハイブリッド細胞を遺伝的に修飾することができるか、又は修飾することができた。例として、細胞内に導入されるポリヌクレオチドは、ペプチド、リボザイム又はアンチセンス配列をコードする。
【0058】
別の実施態様では、抗原(類)を発現する細胞及び免疫エフェクター細胞は、腫瘍に豊富に含まれていた。さらなる実施態様では、免疫エフェクター細胞は、細胞毒性Tリンパ球(CTLs)である。また、方法は、APCs及び抗原発現細胞を同一被験者から又は別の被験者(自己由来又は同種異系)から誘導する実施態様を提供する。
【0059】
この方法をさらに修飾して、免疫エフェクター細胞を、サイトカイン、例えばIL2又はGM−CSF及び/又は共刺激分子、の存在下で培養する。
【0060】
さらに、本発明によって、免疫応答の誘導に有効な、本明細書中に記載の有効量の抗原特異的免疫エフェクター細胞を投与することを含む、養子免疫療法が提供される。
【0061】
また、本発明は、上記の方法によって調製された抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団を用いて、さらに抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団によって認識される抗原をコードする遺伝子のポリヌクレオチドフラグメントを同定することを提供する。方法には、a)本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される第一細胞の抗原発現集団内に1セットのポリヌクレオチドフラグメント又は遺伝子発現を提示する「タグ」を得;b)第一細胞の抗原を欠く第二の細胞セット内に1セットのポリヌクレオチドフラグメント又は遺伝子発現を提示する「タグ」を得;そして、c)第一細胞及び第二細胞から得られたポリペプチドの間に唯一なタグ、第二細胞と比較した場合に抗原発現細胞の集団内で特異に又は異常に発現する遺伝子のフラグメントを提示する唯一のタグ、を同定する:段階を含む。さらなる実施態様では、唯一のポリペプチド又は「タグ」に関連する遺伝子を単離しクローン化した。
【0062】
一つの実施態様では、(上記の)段階(c)の方法を段階(b)の前に行うこともできる。第一細胞及び第二細胞は、限定するつもりはないが、ヒト、ネズミ、ラット又はサルの細胞を含む、動物細胞である。それらは、上記のように自己由来又は同種異系であることができる。
【0063】
特異に発現したポリペプチドを同定する多くの方法がこの技術分野で既知であり、そのそれぞれを用いて、上記の方法にヌクレオチドを提供することができる。本明細書中に用いられる、用語「ポリヌクレオチドフラグメント」は、SAGEタグ(上記)ならびに定量的/相対的遺伝子発現データを得る任意の方法から得られた任意のその他の核酸を含む。そのような方法は、限定するつもりはないが、cDNA(−)法、差異的表示法、及び発現配列タグ法が含まれる。cDNA(−)又は差異的表示に基づく技術は、2つの細胞の型の間の遺伝子発現の差の比較に極めて有用である可能性がある(Hedrickら、1984、Nature,308,149及びLian及びPardee、1992、Science,257,967)。発現配列タグ(expressed sequence tag)(EST)の研究方法は、ノーザンブロッティング、RNアーゼ保護、及び逆転写酵素−ポリメラーゼ鎖反応(reberse transcriptase-polymerase chain reaction)(RT−PCR)分析(Alwineら、1977、PNAS,74,5350;Zinnら、1983、Cell,34,865;及び、Veresら、1987、Science,237,415)の様な、遺伝子発見のためのもう一つの価値ある道具である(Adamsら、1991、Science,52,1651)。さらなる方法は、即時にPCTとカップリングする差異表示及び提示的差異分析である(Lisitisyn及びWigler、1995、Meth.Enzymol.,254,291−304)。もう一つの研究方法は:(a)本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原発現細胞から、相補的デオキシリボ核酸(cDNA)ポリヌクレオチドを提供し;(b)適合する主要組織適合性複合体(MHC)を持つ細胞からのcDNAポリヌクレオチドを、抗原を発現しない段階(a)の細胞に提供し;(c)第二の細胞と比較して第一の細胞によって異常に発現するcDNAを決定し分析する:段階を要求する。一つの実施態様では、SAGEのように本明細書中で同定され、合衆国特許第5,695,937号に記載されている方法を用いて、cDNAポリヌクレオチドを得ることができる。
【0064】
段階(b)及び(c)で同定されたポリヌクレオチドを比較して、それらのポリヌクレオチド又は遺伝子に相当するポリヌクレオチド、又は、第一細胞及び第二細胞のポリヌクレオチドと共通な遺伝子のフラグメント、を同定する。共通のポリヌクレオチドとは、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原をコードする遺伝子のフラグメントを意味している。本発明のポリヌクレオチドによってコードされるペプチドの生物学的活性は、本明細書中に記載の方法を用いて、確認することができる。
【0065】
この方法は、免疫原性を持つペプチド配列あるいはモチーフ又は免疫原性タンパク質あるいはポリペプチドのフラグメントをコードする可能性のあるポリヌクレオチドを同定する。このように、方法には、さらに、適合性MHCによるAPCによって発現提示される条件下でポリヌクレオチドを細胞内に導入することによって、発現生成物が興味ある抗原をコードしていることを確認することが含まれる。免疫エフェクター細胞による認識方法は、この技術分野では熟知されている。
【0066】
代わりの方法として、同定された主要組織適合性を持つ1以上の免疫エフェクター細胞を提供し、そして、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原内のペプチド配列モチーフを同定することによって、遺伝子を同定することができる。次いで、遺伝子をコードするポリヌクレオチドを同定する。さらなる実施態様では、ペプチド配列モチーフを含むか又は包含する抗原をコードする遺伝子を単離しクローン化する。方法には:
(a)本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原を発現し、同定された主要組織適合性複合体(MHC)拘束性を持つ第一細胞、及び抗原を発現しないが第一細胞に適合する主要組織適合性複合体(MHC)を持つ1以上の第二細胞、を提供し;
(b)抗原提示細胞によって示され、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される、抗原内のペプチド、配列モチーフをコードするポリヌクレオチドを同定し;
(c)1以上の第二細胞と比較して第一細胞によって異常に発現されるポリヌクレオチドを同定し;そして、
(d)段階(c)で同定されたポリヌクレオチドを、段階(b)で同定されたペプチド配列モチーフをコードするポリヌクレオチドと比較して、本発明の免疫エフェクター細胞によって認識される抗原をコードする遺伝子フラグメントを同定する:ことが含まれる。一つの実施態様では、段階(c)(上記)の方法を段階(b)の前に行うこともできる。第一及び第二の細胞は、限定するつもりはないが、ヒト、ネズミ、ラット又はサルの細胞を含む動物細胞である。それらは上記のように、自己由来又は同種異系であることができる。
【0067】
この方法では、抗原性のあるペプチド配列あるいはモチーフ、又は抗原性タンパク質あるいはポリペプチドのフラグメントをコードする可能性を持つポリヌクレオチドが同定される。このように、さらに、方法には、適合するMHCによるAPCによって発現提示される条件下で、ポリペプチドを細胞内に導入することによって、発現生成物が興味ある抗原をコードすることを確認することも、含まれる。免疫エフェクター細胞による認識方法を以下に提供する。
【0068】
「第一細胞」は2つの基準:1)免疫エフェクター細胞によって認識される抗原を発現しなければならない;及び、2)同定された主要組織適合性複合体拘束性を持たねばならない:を満たさなければならない。適合性MHC拘束性を持つ第一細胞及び第二細胞の集団を前もって選択する。MHCを同定し比較する方法は、この技術分野では良く知られており、Allen M.ら、1994、Human Imm.,40,25−32;Satamaria P.ら、1993、Human Imm.,37,39−50;及び、Hurley C.K.ら、1997、Tissue Antigens,50,401−415に記載されている。抗原が免疫エフェクター細胞によって認識されるか否かを決定する方法は、この技術分野で良く知られており、 3H−チミジンの取込み;MTTがホルマザンブルーに変化することによって検出される代謝活性;サイトカインmRNA発現の増加、サイトカインタンパク質生成物の増加;及び標的細胞によるクロムの遊離:のような方法が含まれる。
【0069】
免疫エフェクター細胞によって認識される抗原を提示する任意の細胞又は細胞集団は、有用であり、本発明の範囲内にある。そのような細胞には、限定するつもりはないが、抗原提示細胞(上記)、β2−ミクログロブリンと複合させた精製MHCクラスI分子を持つ細胞、樹状突起細胞、完全な抗原提示細胞又は養子(foster)抗原提示細胞が含まれる。これらの細胞を単離し培養する方法は、この技術分野では良く知られている。
【0070】
免疫エフェクター細胞(上記)はAPCsを認識する。目的にかなった免疫エフェクター細胞は、本発明の方法に従って調製される。これらの方法では、CTLs、ならびに、ウイルス感染部位、自己免疫浸潤部位、移植拒否部位、感染部位、リンパ球浸潤部位、及び白血球浸潤部位から単離された細胞、を用いることができる。適切なCTLsには、制限するつもりはないが、同一のMHC拘束性、2以上のCTLs又はその任意の組み合わせを共有する、一個体から単離されたポリクローナルT細胞、2以上の個体から単離されたポリクローナルT細胞が含まれる。抗原を発現しない第二の細胞は、一つの実施態様では、抗原プロセシング活性を欠き、結合ペプチドを含まないMHC分子を発現する、養子抗原提示細胞の可能性がある。
【0071】
第一細胞及び第二細胞を前もって選択した後、次に抗原提示細胞(第一細胞集団)によって示された抗原内のペプチド配列モチーフをコードするポリヌクレオチドを同定する。一つの実施態様では、ペプチド配列モチーフが最初に同定され、それから、その後ポリヌクレオチドが誘導される。免疫エフェクター細胞によって認識される抗原内のペプチド配列モチーフを同定する任意の様々な方法は、本発明のこの段階を成し遂げるために有用である。簡単に言えば、そのような方法には、限定するつもりはないが、「ファージ法」(Scott及びSmith、1990、Science,249,386−390;Cwirlaら、1990、PNAS、,87,6378−6382;及び、Devlinら、1990、Science,249,404−406)、Geysen法(Geysenら、1986、Molecular Immunology,23,709−715;及びGeysenら、1987、J.Immunologic Method,102,259−274)、Fodorら(1991、Science,251,767−773)の方法、Furkaら、1988、14th International Congress of Biochemistry,第5巻、Abstrat FR:013;Furkaら、1991、Int.J.Peptide Protein Res.,37,487ー493;Houghton、合衆国特許第4,631,211号、1986年12月発行;及びRutterら、合衆国特許第5,101,175号、1991年4月23日発行に記載の、アゴニスト又はアンタゴニストであるペプチドの試験方法、合成ライブラリーを用いる方法(Needelsら、1993、PNAS,90,10700−4;Ohlmeyerら、1993、PNAS.90.10922−10926;及びLamら、国際特許公報WO92/00252)、組み合わせペプチド表示索引を利用する方法(Ohlmeyerら、1993、PNAS,90,10922−26)、及びVan der Zee、1989、Eur.J.Immunol.,19,43−47によるpepscan技術、が含まれる。一つの実施態様では、方法には、SPHERE(PCT WO97/35035に記載)が用いられる。簡単に言えば、SPHREは、それぞれのビーズが 制御された様式で放出されうるおおよそ200ピコモルの唯一のペプチドを含む固体支持体(例えばプラスチックビーズ)上で合成されたペプチドライブラリーを用いる、MHCクラスI−拘束性CTLエピトープを同定するための実験スクリーニング法である。特別なHLA対立遺伝子(allele)(例えばHLA−A2)に高アフィニティー結合するが、残された位置を任意抽出することによって様々なTCRエピトープ目録を含む、アンカー残基を固定化することによって、合成ペプチドライブラリーを特別なHLA拘束性に仕立てる。大まかに言うと、穴当たり10,000のビーズを持つ50枚の96穴プレートは、おおよそ5x107 の複雑なライブラリーに便宜を与えるであろう。スクリーニング当たり必要とされるCTL細胞の数及び手操作の量の両方を最少にするために、溶出ペプチドをさらにプールして、穴当たりの複雑さを所望する程度にすることができる。可溶性ライブラリーでの実験を基にすると、2x106 ほどの少なさのCTL細胞を含む96穴プレートで107 ペプチド(穴当たり10,000ペプチド)をスクリーニングが可能であるはずである。ビーズからのペプチドの割合(%)を裂き、51Cr−標識APCs(例えば養子抗原提示細胞又はT2細胞)及びCLT系と共にそれらをインキュベートした後、この技術分野で既知の標準法に違って51Cr−放出を測定することによって、反応種を含むペプチドプールを定量することができる。代わりに、サイトカインの生成(例えばインターフェロン−γ)又は増殖(例えば 3H−チミジンの取り込み)アッセイを用いることができる。反応性を持つ10,000ペプチド混合物を同定した後、それらの混合物に相当するビーズをより小さいプールに分け、新たに、96穴プレートに配る(例えば穴当たり100ビーズ)。ペプチドのさらなる割合(%)をプールから遊離させ、上記の方法の一つを用いて、活性を再アッセイする。反応性を持つ100−ペプチドプールを同定する場合、それらのペプチド混合物に該当するビーズを、新たに96−穴プレートに穴当たり1ビーズになるように再配分する。再び、さらなる割合のペプチドを遊離させ、反応性ライブラリーペプチドを含む単一ビーズを単離するために、反応性についてアッセイする。個々のビーズ上のペプチドの配列は、例えば、N−末端エドマン分解又は当業者らに既知のその他の分析技術によって、ビーズと結合している残留ペプチドの配列決定を行うことによって、決定することができる。
【0072】
次いで、ペプチドモチーフ又はモチーフ(類)をコードする変性したポリヌクレオチド配列を決定する。
【0073】
上記のように、代わりの実施態様には、さらに、免疫エフェクター細胞集団によって特異的に認識される抗原をコードする遺伝子を同定することが含まれる。抗原発現細胞内に発現する遺伝子の発現クローニングは、遺伝子を同定するための一つの手段である。このような研究方法(Kawakami Y.ら、1994、PNAS、91(9),3515−3519)では、mRNAを、与えられた抗原を持つ細胞から単離する。mRNAをcDNAに変える。得られたcDNAフラグメントを、プラスミド又はその他の適当な発現ベクター内に挿入する。cDNAを、真核生物細胞(酵母、哺乳動物あるいは昆虫細胞)又は原核生物細胞(例えば細菌)又はもう一つの適当な宿主細胞内で、増幅させる。次いで、DNAを、適当なHLA分子をコードするDNAと共に、COS細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞から誘導された安定した細胞培養液)のような宿主細胞内に導入又はトランスフェクトする。次いで、腫瘍特異的免疫エフェクター細胞クローンを、トランスフェクトされた宿主細胞に加える。(cDNAを受けたため)いくつかの宿主細胞が抗原を発現するならば、CTLが刺激され、培養液中で検出可能な、IFN−γあるいは腫瘍壊死因子(TNF)(Tumor necrosis factor)のような同定されたサイトカインを生成するであろう。腫瘍のようなサンプル細胞内に存在する全mRNA分子をスクリーニングするために、ベクターを含むおおよそ105 のDNAを、100の異なる分子のプール内で試験しなければならない。次いで、T細胞刺激に対して陽性であると認められたDNAプールを分け、単一種のDNAの調製が認められるまでトランスフェクション法を繰り返すことによって、抗原の発現をトランスファーできることが分かった。
【0074】
単離されたポリヌクレオチド及び単離されたポリヌクレオチドに該当する遺伝子もまた、本発明によって提供される。本明細書中に用いられる、用語「ポリヌクレオチド」は、DNA、RNA及び核酸擬態を包含する。また、ポリヌクレオチド及びそれらの補体に加えて、本発明は、アンチセンスポリヌクレオチド鎖、例えばこれらの配列又はそれらの補体に対するアンチセンスRNA、を提供する。本発明によって提供される配列及びVander Krolら、1988、Bio Techniques,6,958に記載の方法論を用いて、アンチセンスRNAを得ることができる。
【0075】
ポリヌクレオチドを、検出可能マーカー、例えば酵素ラベル又は細胞内の核酸及び遺伝子の発現を検出するための放射性同位体、と結合することができる。検出可能なシグナルを与える能力を持つ、蛍光、放射性、酵素又はアビジン/ビオチンのようなその他のリガンドを含む、広範の適当な検出可能マーカーがこの技術分野で知られている。当業者らは、放射性試薬又は他の環境に好ましくない薬剤の代わりに、蛍光標識、又はウレアーゼ、アルカリホスファターゼあるいはペルオキシダーゼのような酵素タグを用いることができる。酵素タグの場合、ヒトの眼に又は分光光度計で見える手段を提供するために使用可能な比色指標基質が知られており、相補的核酸−含有サンプルとの特異的ハイブリダイゼーションを同定できる。簡単に言えば、さらに、本発明は、相補的一本鎖ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にする条件(好ましくは、中程度のストリンジェントハイブリダイゼーション条件)下で、又はより好ましくは、高いストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で、少なくとも4、より好ましくは、少なくとも5又は6、最も好ましくは少なくとも10の本発明の条件ヌクレオチドである、標識した一本鎖ポリヌクレオチド(プローブ)と標的の一本鎖ポリヌクレオチドを接触させることによって、一本鎖又はその補体を検出する方法を提供する。ハイブリダイズしたポリヌクレオチドペアを、ハイブリダイズしていない一本鎖ポリヌクレオチドから分離する。ハイブリダイズしたポリヌクレオチドペアは、当業者らに周知の、例えばSambrookら(1989、上記)に示された、方法を用いて検出することができる。ポリヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとして用いるための適当な試薬及び指示書を含むキット内に提供することができる。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドを、PCRを用いて複製することができる。PCR技術は、合衆国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号及び第4,683,202号の主題であり、PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら、Birkhauser Press,Boston、1994)及びそれに列挙された参考文献、に記載されている。
【0077】
代わりの方法として、当業者は、本明細書中に提供された配列及びDNAを複製するための市販のDNAシンセサイザーを用いることができる。したがって、本発明は、また、ポリヌクレオチドの直線配列、適当なプライマー分子、酵素のような化学物質、及びそれらを複製するための指示書を提供することによって、そして、ポリヌクレオチドを得るために適正な方向にヌクレオチドを化学的に複製又は連結することによって、本発明のポリヌクレオチドを得るためのプロセスをも提供する。別の実施態様では、さらに、これらのポリヌクレオチドを分離する。なおさらに、当業者は、ポリヌクレオチドを適当な複製ベクター内に挿入し、ベクターを複製し増幅するために、適当な宿主細胞(原核生物及び真核生物の細胞)内に挿入することができる。そのようにして増幅されたDNAは、当業者らに周知の方法によって、細胞から単離することができる。この方法によってポリヌクレオチドを得るための方法は、さらに、そうして得られたポリヌクレオチドと同様に、ここに提供される。
【0078】
RNAは、DNAポリヌクレオチドを適当な宿主細胞内に最初に挿入することによって得られる。DNAは、任意の適当な方法によって、例えば適当な遺伝子配達ベヒクル(例えばリポソーム、プラスミド又はベクター)を用いることによって、又はエレクトロポレーションによって、挿入することができる。細胞を複製し、DNAをRNAに転写したならば、次に、RNAを、当業者らに周知の方法、例えばSambrookら(1989、上記)に示したような方法、を用いて単離できる。例えば、Sambrookら(1989、上記)に記載の方法に従って、mRNAを、様々な溶解酵素又は化学溶液を用いて単離するか、又は製造者らによって提供された指示書に従って核酸結合樹脂によって抽出することができる。
【0079】
ポリヌクレオチドを、プローブ又はプライマーとして用いることもできる。本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞もまた、本発明の範囲内にある。「完全に適合した」プローブが特異的ハイブリダイゼーションに必要でないことは、この技術分野で知られている。小数塩基の置換、欠損又は挿入によって達成されるプローブ配列のマイナーチェンジは、ハイブリダイゼーションの特異性に影響を与えない。一般に、20%程の多さの塩基誤対合は、(最適アラインの場合)寛大に受け入れることができる。好ましくは、前述のmRNAの検出に有用なプローブは、本発明のポリヌクレオチドを含む適当な大きさの相同領域と少なくとも約80%同一である。より好ましくは、プローブは、相同領域のアライメント後、該当する遺伝子配列と85%同一であり、さらにより好ましくは、それは90%の同一性を示す。
【0080】
これらのプローブをラジオアッセイ(例えば、サザン及びノーザンブロット分析)に用い、様々な細胞又はこれらの細胞を含む組織を検出又はモニターすることができる。また、プローブを、又は本発明の1以上のポリヌクレオチドに該当する遺伝子の発現を検出する高処理量スクリーニングアッセイに用いるためのチップのような固体支持体又はアレーに付着させることができる。したがって、本発明は、また、高処理量スクリーニングに用いられるチップのような固体支持体に付着させた、転写物又はこれらの配列の一つの補体の、上記のような少なくとも一つのプローブを提供する。
【0081】
さらなる実施態様では、ポリヌクレオチド又は遺伝子配列もまた、配列データベースと、例えば既知配列とサンプル配列を適合させるコンピューター法を用いて、比較することができる。配列同一性は、即ち、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、1987)、増補30版、7.7.18節、表7.7.1、に記載の方法のような、この技術分野で既知の配列アライメントプログラムを用いて、配列比較によって決定することができる。望ましいアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)であり、好ましくは、以下違約パラメーター:mismath=2;open gap=2、及びextend gap=2:を用いる。もう一つの好ましいプログラムは、2つのヌクレオチド配列のアライメント用BLASTプログラムであり、以下の違約パラメーター:open gap=50;extension gap−2;gapxdropoff=0;expect=10:word size=11:を用いた。BLASTプログラムは、以下のインターネットアドレス(http ://www.ncbi.nlm.nih.gov)で入手できる。上記のように、代わりの方法として、高い、中程度及び低いストリンジェンシ条件下でのハイブリダイゼーションもまた、配列同一性の程度を示すことができる。
【0082】
また、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞内へのポリヌクレオチドの形質導入を確認するために、APCで発現する遺伝子又は遺伝子転写物の検出用プライマーとして提供することができる。この状況では、増幅とは、合理的な忠実さで標的配列を複製する能力を持つプライマー依存性ポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント及び逆転写酵素のような、天然又は組換えDNA−ポリメラーゼによって、成し遂げることができる。プライマーの好ましい長さは、上記のプローブで同定されたそれと同一である。
【0083】
さらに、本発明は、RNA転写のプロモーター、ならびにDNAあるいはRNAの複製及び/又は一時的又は安定な発現のためのその他の調節配列、と機能し得るように連結させた単離されたポリヌクレオチドを提供する。ここに用いられている、用語「機能しうるように連結した」とは、プロモーターがDNA分子のRNAへの転写を指示するであろうそのような様式で位置することを意味している。そのようなプロモーターの例は、SP6、T4及びT7である。ある実施態様では、細胞特異的プロモーターは、終止コドン及び選択可能マーカー配列、ならびにDNAの挿入片をこの技術分野で周知であり市販されているプロモーターに機能しうるように連結することができるクローニング部位と共に、プロモーター又はプロモーター/エンハンサーを含む挿入されたポリヌクレオチドの細胞特異的発現に用いられる。一般的方法論及びクローニングストラテジーに関しては、Gene Expression Technology(Goeddelら、Academic Press,Inc.、1991)及びそこに列挙された参考文献、ならびに、様々な適当なベクターに関しての、地図、機能性、市販供給者、GenEMBL供託番号のリファレンスを含む、Vectors:Essential Data Series(Gacesa及びRamji編、John Wiley & Sons,N.Y.、1994)を参照のこと。好ましくは、これらのベクターは、in vitro又はin vivoでRNAを翻訳する能力を持つ。
【0084】
これらの核酸を含む発現ベクターは、タンパク質及びポリペプチドを生成するための宿主ベクターシステムを得るために有用である。それは、これらの発現ベクターが、エピソームとして、又は染色体DNAの必須部分としてのいずれかで、宿主生物体内で複製可能なはずであることを意味している。適当な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、コスミド等を含む、ウイルスベクターが含まれる。アデノウイルスベクターは、in vitro及びin vivoの両方でのそれらの高レベルな発現及び細胞の能率的なトランスフォーメーション故に、in vivoでの組織への遺伝子の導入に、特に有用である。核酸を、適当な宿主細胞、例えば原核生物細胞又は真核生物細胞及び宿主細胞複製物内に挿入する場合、タンパク質を組み換え生成することができる。適当な宿主細胞は、ベクターに依存し、周知の方法を用いて構築された、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞及び細菌細胞を含むことができる。Sambrookら、1989(上記)を参照のこと。細胞内に外因性核酸を挿入するためのウイルスベクターの使用に加えて、細菌細胞でのトランスフォーメーション:哺乳動物細胞でのリン酸カルシウム沈殿を用いたトランスフェクション;又はDEAE−デキストラン;エレクトロポレーション;又は、ミクロインジェクション、のようなこの技術分野で周知の方法に従って、核酸を宿主細胞内に挿入することができる。この方法論については、Sambookら(1989、上記)を参照されたい。このように、本発明は、また、タンパク質又はポリペプチド又は抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、動物細胞(ラットあるいはマウス)、ヒト細胞、又は細菌細胞のような原核生物細胞をも提供する。
【0085】
ベクターをin vivo又はex vivoで遺伝子治療に用いる場合、複製−不全レトロウイルス又はアデノウイルスベクターのような、医薬として許容しうるベクターが望ましい。本発明の核酸を含む医薬として許容しうるベクターは、さらに、挿入されたポリヌクレオチドを一時的に又は安定に発現するように修飾することができる。ここに用いられている、用語「医薬として許容しうるベクター」には、限定するつもりはないが、ベクター、又は分割細胞内へ核酸を選択的に標識化し導入する能力を持つ配達ベヒクルが含まれる。そのようなベクターの例としては、感染した宿主細胞内でのベクターの広がりを不可能にするウイルスタンパク質を生成するその能力の欠如によって定義付けられる「複製−不全」ベクターである。複製−不全レトロウイルスベクターの例は、LNL6(Miller,A.D.ら、1989、BioTechniques,7,980−990)である。遺伝子マーカ−のレトロウイルス−仲介遺伝子トランスファ−用に複製−不全レトロウイスルを用いる方法論は、充分に確立されている(Correllら、1989、PNAS,86,8912;Bordignon、1989、PNAS,86,8912−52;Culver K.、1991、PNAS,88,3155;及び、Rill D.R.、1991、Blood,79(10),2694−700)。
【0086】
ポリヌクレオチド、遺伝子及びコードされたペプチド及びタンパク質を、さらに、in vitro又はin vivoでクローン化し発現することができる。宿主細胞発現システムから生成し単離されたタンパク質及びポリペプチドもまた、本発明の範囲内にある。発現ベクター及びクローニングベクターならびにこれらのポリヌクレオチド及び遺伝子を含む宿主細胞は、有効量を被験者に投与する方法と共に、ここに請求される。これらの配列に該当するペプチドを、組換え技術によって作り出すことができ、それらをワクチンとして被験者に投与することができるか、又は順々に被験者に有効量を投与するAPC内に導入することができる。遺伝子を用いて、順々にAPCをパルスするために用いることができるタンパク質を生成することができる。APCを順々に用いて、CTLsのような免疫エフェクター細胞を拡大することができる。パルスされたAPC及び拡大されたエフェクター細胞は、有効量の組成物を被験者に投与することによって、免疫療法に用いることができる。
【0087】
もう一つの実施態様では、本発明の方法は、薬剤のような定義された刺激物に応答して本発明のプローブと特異的にハイブリダイズする遺伝子の発現をモニターするために用いられる。
【0088】
一つの実施態様では、ハイブリダイズした核酸は、サンプル核酸に付着した1以上の標識を検出することによって、検出される。標識は、当業者らに周知の任意の数多くの手段によって、取り込まれうる。しかしながら、一つの態様では、標識は、サンプル核酸の調製における増幅段階の間に、同時に取り込まれる。したがって、例えば、標識プライマー又は標識ヌクレオチドでのポリメラーゼ鎖反応(PCR)は、標識された増幅生成物を提供するであろう。別の実施態様では、上記のような、標識されたヌクレオチド(例えば蛍光標識UTP及び/又はCTP)を用いた転写増幅では、転写された核酸内に標識が取り込まれる。
【0089】
代わりの方法として、標識を、直接、元来の核酸サンプル(例えば、mRNA、ポリA、mRNA、cDNA等)又は増幅完了後の増幅生成物に加えることができる。核酸に標識を付着させる手段は当業者らに周知であり、例えば、ニックトランスレーション、又は核酸をキナージングし、その後サンプル核酸を標識(例えばフルオロホア)に結合する核酸リンカーに付着(連結反応)させることによる(例えば標識RNAでの)末端標識化が含まれる。
【0090】
また、WO97/10365に開示の方法を用いて、バックグラウンドシグナルを減少させ測定感度を改良することによってサンプルの複雑性を減ずるために、高密度プローブアレイへのハイブリダイゼーション前に、ポリヌクレオチドを修飾することもできる。また、それらを、診断アッセイ及び分析アッセイに用いられるチップに付着させることもできる。このチップアッセイからの結果は、典型的には、コンピューターソフトウェアプログラムを用いて分析される。例えば、EP0717 113A2及びWO95/20681を参照のこと。ハイブリダイゼーションデータは、プログラムで読まれ、標的化遺伝子の発現レベルが計算される。この図を、病気の個人及び健康な個人についての遺伝子発現レベルの現存するデータセットに対して比較する。
【0091】
また、本発明のペプチド及びタンパク質と特異的に反応する抗体が、本発明によって提供される。そのような抗体には、制限するつもりはないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び抗体フラグメントが含まれる。これらを、検出可能標識と組み合わせ、周知の方法を用いて抗原及びそのフラグメントを同定するために用いることもができる。代わりの方法として、それらを医薬として許容しうるキャリヤーと組み合わせ、そのような治療を必要とする被験者に治療投与することができる。さらに、抗体、試薬及び使用書を含むキットが、本発明によって提供される。
【0092】
このように、常にはっきりと述べられるわけではないが、投与されるか又はin vitroで用いるためにキャリヤーと組み合わせる前に、本発明の組成物を医薬として許容しうるキャリヤーと組み合わせることができるを、理解すべきである。これらのin vitroでのキャリヤーには、制限するつもりはないが、細胞分離方法論で用いられるビーズが含まれる。
【0093】
本発明のポリヌクレオチドを含むこれらの宿主細胞は、ポリヌクレオチドの組換え複製及びペプチドの組換え生成に有用である。代わりに、細胞を用いて、本明細書に記載の方法で被験者に免疫応答を誘導することができる。宿主細胞が抗原提示細胞である場合、それらを用いて、養子免疫治療に順々に有用な腫瘍浸潤リンパ球のような免疫エフェクター細胞の集団を拡大することができる。
【0094】
有効量の細胞を被験者に投与すると、養子免疫治療が提供される。有効量のサイトカイン又は共刺激分子もまた、患者に共に投与することができる。
【0095】
さらに、本発明に従って、抗原特異的免疫エフェクター細胞を含むワクチンが提供される。さらになお、本発明によって、本明細書中に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞を用いて、抗原又はエピトープあるいは配列モチーフのようなそのフラグメントを含むワクチンが提供される。ワクチンの投与方法は、この技術分野で知られており、ワクチンを許容しうる医薬キャリヤーと組み合わせることもできる。有効量のサイトカイン及び/又は共刺激分子もまた、投与することができる。
【0096】
以下の例は、説明するためのものであって、ここに定義したように本発明を制限するつもりのものではない。
【0097】
材料及び方法
ハイブリッド細胞の調製
本発明に用いられるハイブリッド細胞は、この技術分野で既知の任意の適当な方法によって、形成させることができる。一つの実施態様では、腫瘍生検サンプルを細かに切り刻み、細胞懸濁液を作る。好ましくは、細胞懸濁液を少なくとも2つのフラクション−その一方は、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞を多く含み、もう一方は腫瘍細胞を多く含む−に分ける。また、免疫エフェクター細胞は、この技術分野で周知の方法を用いて、骨髄、血液又は皮膚から単離することができる。
【0098】
一般に、培養前の新形成細胞からの最初の接種集団を単離することが望ましい。新形成細胞からの様々な細胞型の分離は、細胞選別機、磁気ビーズ、及びパックカラムの使用を含む、任意数の方法によって、成し遂げられうる。分離するためのその他の方法には、制限するわけではないが、物理的分離;抗体−被覆磁気ビーズを用いる磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;モノクローナル抗体と結合させた、もしくはモノクローナル抗体との結合に用いられた、限定するつもりはないが補体及び細胞毒を含む細胞毒性薬剤;固体マトリックス、例えばプレートに付着させた抗体との「パンニング(panning)」、溶出;又は任意のその他の慣用の技術:が含まれる。
【0099】
物理的分離技術の使用には、限定するつもりはないが、物理的(密度勾配遠心分離及びカウンターフロー遠心分離溶出)、細胞表面(レクチン及び抗体アフィニティー)、及びウイルス染色性(ミトコンドリア−結合染料rho123及びDNA−結合染料Hoechst33342)での差に基づいた技術、が含まれる。これらの方法は、当業者らに周知である。
【0100】
モノクローナル抗体は、特定の細胞系及び/又は分化段階と関連するマーカーを同定するためのもう一つの有用な試薬である。粗精製のために、抗体を固体支持体に付着することができる。用いられる分離技術は、収集されるフラクションの生命力の保持率を最大にしなければならない。効率の異なる様々な技術を用いて、「比較的粗い」分離を得ることができる。そのような分離では、存在するマーカーを持たない全細胞中の最大で10%まで、通常約5%より少なく、好ましくは約1%より少ない細胞が,保持されている細胞集団中に残っている可能性がある。用いられる特別な技術は、細胞毒に関する分離効率、実行の容易さ及び速さ、並びに機械化された装置及び/又は技術的熟練の必要性に依存するであろう。
【0101】
細胞フラクションを分離するもう一つの方法は、所望の細胞集団の選択的増殖を許す培養条件を使用することである。例えば、一つの態様では、次に、抗原発現細胞に富むフラクションを、APCs、好ましくは樹状突起細胞と融合させる。APCsと抗原発現細胞との融合は、例えばポリエチレングリコール(PEG)又はSendiaウイルスを用いた、任意の適当な方法で行うことができる。好ましい実施態様では、ハイブリッド細胞を、Gongら、1997、Nat.Med.,3(5),558−561に記載の方法に従って、作り出すことができる。
【0102】
DCsを、哺乳動物の骨髄培養液、末梢血液、脾臓又はその他の適当な組織から、この技術分野で既知のプロトコールを用いて、得ることができる。骨髄はDC始原細胞を含み、顆粒細胞−マクロファージコロニー−刺激因子(「GM−CSF」)(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)及びインターロイキン4(「IL−4」)の様なサイトカインで処理すると、増殖してDCsに分化する。そうして得られたDCsは、(例えば脾臓DCsと比較すると)比較的未成熟である。これらの未成熟なDCsは、脾臓で認められるより成熟したDCsより融合により従順であるらしい。
【0103】
また、末梢血液は比較的未成熟なDCs又はDC始原細胞を含み、GN−CSFのような適当なサイトカイン存在下で繁殖し分化することができ、また融合に用いることもできる。
【0104】
委託前(precommitted)DCsを、例えば、メトリザマイド勾配;非粘着/粘着技術(Freduenthal,PSら、1990、PNAS,87,7698−7702);パーコール勾配分離(Mehta−Damaniら、1994、J.Immunol.,153,996−1003)及び蛍光活性化細胞選別技術(Thomasら、1993、J.Immunol.,151,6840−6852)を用いて、単離する。一つの実施態様では、本質的に、DCsを、WO96/23060に記載の方法に従って、FACS技術によって単離する。ヒトDCsに特異的な細胞上面マーカーは存在しないが、マーカーのカクテル(cocktail)(例えばHLA−DR、B7.2、CD13/33等)がDCs上に存在することは、知られている。さらに、DCsは、CD3、CD20、CD56及びCD14抗原を持たないことが知られている。したがって、負及び正のFACS技術と組み合わせて、DCs分離方法が提供される。
【0105】
一つの実施態様では、APCs及び1以上の抗原を発現する細胞は自己由来であり、即ち、腫瘍生検を得た同一被験者から誘導される。別の実施態様では、APCs及び抗原を発現する細胞は同種異系であり、即ち樹状突起細胞は初期免疫応答の生成を促進することが知られているので異なる被験者から誘導される。
【0106】
好ましくは、APCs:抗原−発現細胞の比率は、約1:100から約1000:1の間である。典型的には、非融合細胞は、培養液内では数日後に死に絶え、それ故、培養液を数日間増殖させることによって、融合細胞を親細胞から単純に分離することができる。この実施態様では、ハイブリッド細胞は両方とも、さらに生き残り、加えて、組織培養表面に軽く粘着しているのみである。親細胞は容器に強く粘着している。それ故、約5−10日培養の後、ハイブリッド細胞は穏やかに除去して新規容器に移すことができるが、非融合細胞は付着したままである。
【0107】
代わりに、融合細胞は、機能性ヒポキサチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(「HGPRT」)(hypoxanthin-guanine phosphoribosyl transferase)酵素を欠き、それ故、化合物HATでの処理に対して耐性であることが示された。したがって、これらの細胞を選択するために、HATを培養液に加えることができる。しかしながら、慣用のHAT選択と違って、ハイブリッド細胞培養液を、12日より多くの期間化合物に晒すべきではない。
【0108】
典型的には、ハイブリッド細胞は、APCsの表現型特徴を保持している。したがって、樹状突起細胞と共に作成されるハイブリッドは、同一のMHCクラスIIタンパク質及びその他の細胞表面マーカーを発現するであろう。その上、ハイブリッドは、それらを形成する細胞上に発現するそれら抗原を発現するであろう。
【0109】
抗原特異細胞の拡大
一つの態様では、本発明は、これらハイブリッド細胞を用いて、抗原特異的免疫エフェクター細胞に富む集団の生成を刺激する。抗原特異的免疫エフェクター細胞はハイブリッド細胞を犠牲にして拡大し、ハイブリッド細胞は培養液中で死滅する。天然免疫エフェクター細胞がその他の細胞によって教育されるプロセスは、主に、Coulie、1997、Molec.Med.Today,261−268に記載されている。
【0110】
上記の方法に従って調製されたハイブリッド細胞を、ナイーブな抗原特異細胞と混合する。好ましくは、抗原特異細胞は、腫瘍細胞を特異的に認識し、上記の腫瘍生検サンプルから多く得られる、抗原エフェクター細胞である。所望であれば、細胞をサイトカイン、例えばIL2、の存在下で培養することもできる。DCsは、IL12の様な強力な免疫刺激性サイトカインを分泌するので、拡大の第一ラウンド及びそれに続くラウンドの間、補充サイトカインを加える必要はないであろう。任意のイベントでは、培養条件は、抗原特異的免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞より非常に速い速度で拡大する(増殖する)様な条件である。ハイブリッド細胞及び所望のサイトカインの多様な注入を行うと、さらに抗原特異細胞の集団を拡大させることができる。
【0111】
記載のようなハイブリッド細胞を用いると、免疫エフェクター細胞の強力な抗原特異集団が得られる。一つの実施態様では、細胞はT細胞であり、腫瘍特異的抗原に特異的である。
【0112】
抗原特異性のアッセイ
好ましい実施態様では、抗原特異的免疫エフェクター細胞は、CTLsである。言い換えれば、それらは、特異的抗原を発現する細胞を活発に溶解する。細胞の細胞毒性活性は、限定するつもりはないが、トリチル化チミジンの取り込み(DNA合成の指標)、及び例えばコロニーの同定による成長又は増殖についての集団の試験(例えばWO94/21287を参照のこと)を含む、様々な方法で測定されうる。もう一つの実施態様では、MTTテトラゾリウム塩(3−(4,5−ジメチル−チアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を加えることもできる(Mossman、1983、J.Immunol.Methods,65,55−63;Niks及びOtto、1990、J.Immunol.Methods,130,140−151)。生きた細胞のミトコンドリア内に認められるスクシネートデヒドロゲナーゼは、MTTをホルマザンブルーに変える。したがって、濃青色は、代謝的に活性な細胞を示すであろう。同様に、タンパク質合成は、35S−メチオニンの取り込みによって示されうる。さらなるもう一つの実施態様では、古典的なクロム放出アッセイのような細胞毒性及び細胞死滅アッセイを用いて、エピトープ特異的CTLの活性化を評価することができる。その他の適当なアッセイも、当業者らに既知であろう。
【0113】
上記のように、サイトカイン生成又は細胞溶解性51Cr放出アッセイを用いて(Douticら、1992、Int.J.Cancer,50,289−291)、抗原を同定することができる。代わりに、PCT WO97/35035に記載の方法を用いて、抗原を同定することができる。以下の実験的詳細は、この方法の詳細な説明を提供する。
【0114】
ストラテジー1.個々の穴からの上清をレプリカプレートに分配し、1−2x103 の照射した(1500ラド)養子APCs(適当なMHC対立遺伝子を発現する)を個々の穴に加える。次に、クローン化されたCTLsを、同一のMHC拘束性の等量の10−20の異なるクローンを示す全体で103−104細胞に、穴当たりの最終全容量が200μlになるように加え、そして、湿気を帯びたCO2 インキュベーター内、37゜Cで4日間、プレートをインキュベートする。次いで、個々の穴を18.5kBqの[ 3H]dThdでパルスし、CTL増殖を測定する。16時間後、分裂活性CTLsのDNA内に取り込まれた放射活性をシンチレーション計数でアッセイする(Estaquierら、1994、Eur.J.Immunol.,24,2789−2795)。増殖応答の大きさは、交差反応するエピトープの予備スクリーニングとして役立ちうる。応答が大きければ大きいほど、おそらく1以上のCTLクローンを刺激するであろう。反応性ペプチドのすべてが興味深いが、最も有効なワクチン候補は、別のドナーから誘導したCTLsと交差反応するそれらであり、最も共通なMHC対立遺伝子によって拘束される。HLA B7様スパーモチーフを含むエピトープの同定は、それが主な人種群のすべてで40%以上の個人に提示される多数のHLA B対立遺伝子と結合するであろうため、ワクチン候補として非常に価値があるであろう(Sidneyら、1995、J.Immunol.,154,247−259)。
【0115】
ストラテジー2.代わりの方法では、第一段階は、20 の娘プレートの穴に51Cr−標識T2細胞を投与し、次いで、CTLsを加えることである。4時間後、放出された51Crを標準的方法で測定する。陽性の穴を同定する場合、その穴に該当する10の娘プレートから10の穴を同様にアッセイする。この時点でエピトープ探究を、一つのマスタープレート上の単一の穴内のビーズに狭める。
【0116】
陽性を示した穴は、さらに以下のように分析されるであろう:陽性の穴に相当するビーズを新規プレートに手作業で分配(1/穴)し、保持されていたペプチドをそれぞれから遊離させる。これらのプレートを前のようにアッセイし、この方法では、反応ビーズがはっきりと単離される。ビーズ合成歴をコードする分子タグは(光分解され得ないクロスリンカーと結合した)ビーズ上に保持されているので、陽性ビーズを速く効率よくデコードすることができる。例えば、原子捕獲型キャピラリーガスクロマトグラフィーによるビーズの分析は、即座に、そのビーズ上で合成されたペプチド配列を示す(Ohlmeyerら、1993、上記)。このように、 3H−チミジン取り込みアッセイを用いるとおおよそ10日内で、そして51Cr−遊離アッセイを用いる場合2日ほどの短さで、エピトープの明確な同定が達成されうる。
【0117】
もう一つの実施態様では、標準組織培養プレート内の新たに注いだ寒天の表面にライブラリービーズを適用し、次いでペプチドの一部分を遊離させると、結果として、個々のビーズの回りに溶出ペプチドの3次元濃度勾配が生ずる。抗原提示細胞は、寒天内に存在することができるか、又はペプチド遊離後の表面に適用することができる。次に、興味あるCTLsを、寒天/ペプチド/APCs上に塗布し、次いで、37゜Cで4−12時間インキュベートする。反応性ビーズは、プラークの形成によって検出され、プラークの大きさは、応答の大きさを示している。次に、陽性ビーズをプレートから採取し、洗浄し、シークエンシングすることができる。このアッセイは、ビーズの手操作をほとんど必要とせず、全体ライブラリーを、4時間ほどの短さで同時に(一段階で)スクリーニングすることができる。さらに、ビーズを回収し、6Mグアニジンで洗浄し、再利用することができる。
【0118】
もう一つの実施態様では、CD8+ MHCクラスI限定CTLエピトープの同定について記載された方法を、CD4+ MHCクラスII限定ヘルパーT細胞(Th)エピトープの同定に適用することもできる。この場合、MHCクラスII対立遺伝子−特異的ライブラリーを、ハプロタイプ特異的アンカー残基が適当な位置に提示されるように合成する。MHCクラスIIアグレトピック(Agretopic)モチーフを共通対立遺伝子について同定した(Rammensee、1995、Curr.Opin.Immunol.,7,85−96;Altuviaら、1994、Mol.Immunol.,24,375−379;Reayら、1994、J.Immunol.,152,3946−3957;Verreckら、1994、Eur.J.Immunol.,24,375−379;Sinigaglia及びHammer、1994、Curr.Opin.Immunol.,6,52−56:Rotzschke及びFalk、1994、Curr.Opin.Immunol.,6,45−51)。ペプチドの全長は、16−20のアミノ酸残基であろう。そして前記の方法を用いると、ライブラリーの複雑さが制限される。スクリーニングプロセスは、MHCクラスI−関連エピトープに関して記載されたそれと同一であるが、T2細胞よりむしろ、Bリンパ芽球細胞系(B lymphoblastoid cell lines)(B−LCL)を抗原提示に用いた。好ましい態様では、抗原プロセシングに欠陥のある前もって特徴付けられているB−LCLs(Mellinsら、1991、J.Exp.Med.,174,1607−1615)は、こうすることによって外因的に加えられた抗原の特異的提示が可能になり、用いられる。ライブラリーを、単離されたCD4+ MHCクラスII対立遺伝子−特異的Th細胞との反応性について、スクリーニングする。反応性は、Mellinsら(上記)の方法による 3H−チミジンの取り込み、又はMHCクラスI−関連エピトープスクリーニングについて前記された任意の方法に従って、測定することができる。
【0119】
上記の方法は、養子抗原提示細胞を用いている。ヒト細胞系174xCEM .T2(T2とも呼ばれている)は、細胞表面MHCクラスI分子との外因性ペプチドの関連に限定されるその抗原プロセシング経路内に変異を含む(Zweerinkら、1993、J.Immunol.,150,1763−1771)。これは、MHCクラスI−限定CD8+ CTLsに抗原を提示する必要のある、遺伝子TAP1、TAP2、LMP1、及びLMP2を包含するMHCクラスII領域内の大きなホモ接合欠損による。実際上、「空」のMHCクラスI分子のみが、これらの細胞表面に提示される。培養液に加えた内因性ペプチドは、ペプチドが対立遺伝子特異的結合モチーフを含む限り、これらのMHC分子と結合する。これらのT2細胞を、「養子」APCsとも呼ぶ。
【0120】
遺伝的修飾
本発明の方法は、ハイブリッド細胞又は刺激剤としてハイブリッド細胞を用いて誘導した抗原特異的細胞集団のいずれか内に遺伝子トランスファーする任意の方法を包含するつもりである。遺伝的修飾の例としては、限定はしないが、ウイルス仲介遺伝子トランスファー、リポソーム仲介トランスファー、トランスフォーメーション、トランスフェクション及びトランスダクション;例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス及びヘルペスウイルス並びにレトロウイルスにも基づくベクターのようなDNAウイルスを基にしたベクターの使用のようなウイルス仲介遺伝子トランスファー;が含まれる。特に、方法は、ベクターに含まれる核酸の取り込み、又はそれによって核が細胞質内に保持される様な核を位置付けるエレメント又は配列を欠く構築物の取り込み、に適している。これらの例では、核膜が崩壊し、核酸又は治療用遺伝子の宿主細胞染色体への接近が可能な場合、M(有糸分裂)期の間に、核酸又は治療遺伝子を核に入れることができる。一つの実施態様では、遺伝的修飾をex vivoで行い、次に、修飾された(即ち導入された)細胞を、レシピエントに投与する。このように、本発明は、本発明に開示の方法によってex vivo又はin vivoで遺伝子を投与することにより、抗原特異細胞内への遺伝子トランスファーを受け入れうる疾病治療を包含する。
【0121】
拡張された抗原特異細胞の集団を遺伝的に修飾することができる。さらに、また、ハイブリッド細胞を遺伝的に修飾し、例えば、制限はしないが、ホルモン、酵素、インターフェロン、成長因子等を含む特定の分泌生成物を供給することができる。適当な調節開始領域を用いることによって、欠乏タンパク質の誘導生成を達成することができ、その結果、生成物はそのようなタンパク質を正常に生成する細胞型とは異なる細胞型にあるにもかかわらず、タンパク質生成は自然生成に匹敵する。また、リボザイム、アンチセンス又はその他のメッセージを挿入し、特定の遺伝子生成又は疾病、特に血液リンパ栄養疾病への罹りやすさ、を阻害することもできる。
【0122】
適当な発現ベクター及びトランスファーベクターは上記の通りである。
【0123】
優性阻害オリゴヌクレオチド及びペプチドをコードする治療用遺伝子ならびに調節タンパク質及びオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子も、本発明に包含される。一般に、遺伝子治療には、1以上の遺伝子が特定の疾病の治療に必要である場合もあるが、単一の治療用遺伝子のトランスファーが含まれるであろう。一つの実施態様では、治療用遺伝子は、野生型免疫抑制剤の優性阻害変異体である。代わりに、治療用遺伝子は、野生型、欠損遺伝子のコピー又は機能性同族体であることも可能であった。
【0124】
ベクター当たり1以上の遺伝子を投与することができ、代わりに1以上の遺伝子をいくつかの適当ベクターを用いて配達することもできる。遺伝子欠損によっては、治療用遺伝子は調節配列及び非翻訳配列を含む可能性もある。ヒト患者の遺伝子治療では、治療用遺伝子は、一般的に、ヒト起源であろうが、遺伝子生成物がレシピエントに逆の免疫反応を誘導しないならば、ヒトと高い相同性及び生物学的同一性又は等価の機能を示すその他の密接に関連する種からの遺伝子を用いることもできる。治療での使用に適した治療用遺伝子は、疾病によって変わるであろう。
【0125】
形質導入の成功をモニターする目的のため、及びDNA構築物を組み込んでいない細胞に対してDNAを組み込んだ細胞を選択するために、マーカー遺伝子をベクター内に含むことができる。様々なマーカー遺伝子には、限定はしないが、G418又はヒグロマイシンに耐性であるような、抗生物質耐性マーカーが含まれる。限定するつもりはないが、マーカーがHSV−tk遺伝子である場合には、アシクロビル及びガンシクロビルの様な薬剤に対して感受性の細胞を作るらしいので、便宜性の少ない負の選択を用いることがある。代わりに、FACS選別によってトランスジーン発現細胞を選択するための安定な細胞表面マーカーを用いることによって、選択を行うこともできる。NeoR(ネオマイシン/G418耐性)遺伝子が共通に用いられるが、その配列が既にレシピエント細胞内に存在しない任意の便利なマーカー遺伝子を用いることもできる。
【0126】
ウイルスベクターを修飾して、レトロウイルス粒子内にキメラエンベロープタンパク質又は非ウイルス膜タンパク質を取り込み、粒子の安定性を改良して宿主範囲を広げるか、又は感染中の細胞型特異的標的化を可能にすることができる。宿主範囲を変えるレトロウイルスベクター生成物は、例えば、WO92/14829及びWO93/14188に、教授されている。in vivoで特定の細胞型を標的とすることのできるレトロウイルスベクターもまた、例えば、Kasaharaら、1994、Science,266,1373−1376に、教授されている。Kasaharaらは、ウイルスのエンベロープタンパク質と融合させたヒトのエリトロポイエチン(EPO)からなるキメラエンベロープタンパク質を持つモロネイ(Moloney)の白血病ウイルス(MoMLV)の構築について記載している。このハイブリッドウイルスは、EPOノレセプターを持つヒト赤血球始原細胞への組織屈性を示し、それ故、鎌状赤血球貧血及びサラセミアの遺伝子治療に有用である。細胞の感染を特異的に標的化する能力を持つレトロウイルスベクターは、in vivoでの遺伝子治療に好ましい。
【0127】
トランスファー遺伝子の発現は、遺伝子トランスファーの目的及び所望の効果に依存して、様々な方法で調節することができる。このように、導入遺伝子を、特定の物理的条件下、又は特別な細胞の型でのみ、構成的に発現される遺伝子を原因とするであろうプロモーターの調節下に置くことができる。
【0128】
用いると特定の細胞型内で導入された配列の発現の原因となりうるプロモーターの例には、T細胞及びNK細胞での発現にはGranzymeA、幹細胞及び始原細胞での発現にはCD34プロモーター、細胞毒性T細胞での発現にはCD8プロモーター、及び骨髄細胞での発現にはCD11bプロモーターが含まれる。
【0129】
誘導プロモーターを、ある物理的条件下での遺伝子発現に用いることができる。例えば、求電子試薬応答エレメントを用いると、求電子性分子に応答する化学耐性遺伝子の発現が誘導される。さらに治療的利益は、適当な位置付け配列を付着させることによって、遺伝子生成物を適当な細胞内の位置、例えば核に標的化することによって、さらに増加する。
【0130】
ウイルス導入後、導入された細胞又はそれらの子孫でのウイルスベクターの存在は、PCRによって変化しうる。PCRを行うと、マーカー遺伝子又はその他のウイルス導入配列を検出することができる。一般的に、過ヨウ素化血液サンプルを採取し、例えば、NeoR遺伝子がマーカーとして用いられるならば、NeoRプローブを用いて、PCRを都合良く行った。骨髄細胞又は成熟した造血細胞内のウイルス導入配列の存在は、導入細胞による再構築の成功の証拠である。PCR技術及び試薬は、この技術分野では周知である。一般的には、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Innis,Gelfand,Sninsky & White編(Academic Press,Inc.,San Diego,1990)及び市販(Perkin−Elmer)を参照のこと。
【0131】
養子免疫療法及びワクチン
また、本発明の抗原特異的免疫エフェクター細胞の拡張集団は、養子免疫療法レジメンでの、及びワクチンとしての使用が認められる。
【0132】
養子免疫療法には、一つの態様では、1以上の抗原を発現する細胞に融合させた抗原提示細胞(APCs)であるハイブリッド細胞と共にナイーブな免疫エフェクター細胞を培養することによって作成され、そのハイブリッド細胞を犠牲にして拡大させた、実質上純粋な教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞集団の有効量を、被験者に投与することが含まれる。好ましくは、APCsはDCsである。
【0133】
細胞は、自己由来であっても、又は異質遺伝子系であっても良い。一つの実施態様では、本明細書中に記載の養子免疫療法は、自己由来である。この場合、ハイブリッド細胞は、単一患者から単離した親細胞を用いて作成される。また、拡張された集団として、その被験者から単離されたT細胞が用いられる。最終的に、拡張された抗原特異細胞の集団を、同一患者に投与する。
【0134】
もう一つの実施態様では、養子免疫療法は、異質遺伝子系である。ここでは、2人以上の患者からの細胞を用いて、ハイブリッド細胞を生成し、そして抗原特異細胞の生成を刺激する。例えば、自己由来T細胞及び/又は生検を提供する被験者からの樹状突起細胞を得ることが不可能な場合には、その他の健康な患者又は罹患患者からの細胞を用いて、抗原特異細胞を生成することができる。拡張された集団を、細胞を単離した任意の一人の被験者、又は全く別のもう一人の被験者に、投与することができる。
【0135】
また、本明細書中に記載の集団及び方法を用いて、細胞に基づくワクチンを発展させることもできる。
【0136】
さらなる用途
本明細書中に記載の集団を用いて、PCT WO97/35035に記載のそのような様々な方法を用いて、新規の抗原及びこれらの抗原をコードする遺伝子を同定することができる。もう一つの実施態様では、SAGE分析(合衆国特許第5,695,937号に記載)を用いて、拡張された集団によって認識される抗原を同定することができる。SAGE分析は、抗原発現細胞内に異常に、又は特異に発現されるヌクレオチド配列の同定を含む。簡単に言えば、SAGE分析は、(1)抗原発現集団、及び(2)その抗原を発現しない細胞、からの相補的デオキシリボ核酸(cDNA)を提供することで開始される。両方のcDNAをプライマー部位と連結させることができる。次いで、配列タグを、例えば適当なプライマーを用いて作りだし、DNAを増幅させる。2つの細胞の型の間でこれらのタグの差を測定することによって、抗原発現細胞集団内で異常に発現する配列を同定することができる。
【0137】
代わりに、腫瘍細胞:MHC複合体から溶出されたペプチドのマススペクトルメーター分析を用いることもできる。抗原を同定するためのその他の技術も当業者らに周知であろう。
【0138】
実験
免疫療法の原理は、活性特異的免疫応答を探す非専門的APCs(例えば腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等)が、in vivo及びin vitroでの免疫エフェクター細胞の教育に有効でない場合でさえ、教育された免疫エフェクター細胞への溶解標的として供されうるという知見から、予想される。この非有効性分子基礎は、少なくとも過去には、専門的APCs(例えば樹状突起細胞)で見られるそれらのようなT細胞の初期化に必要とされるほとんど定義付けられていないコスティミュレーター(costimulatory:共刺激)シグナルの欠損によるものである。Gongら[PNAS、1998、95,6279及びNat,Med.,1997、3(5),558]は、同系間の癌細胞にネズミDCsを融合すると、その結果、癌関連腫瘍抗原のスペクトルを内因的に発現し提示するが、DCsの免疫エフェクター細胞初期化能力を実質上保持しているハイブリッド細胞が生じる。ネズミとヒトのDCs間に存在する高度の形態学的、表現型及び機能性上の相同性を与えると、本発明は、in vitroで腫瘍抗原に対して直接エフェクターT細胞を教育する目的で、ヒト腫瘍細胞と融合させたヒトDCsに対するDC/腫瘍融合の用途を拡張する。ネズミ系に属する様なGongらの実験方法を以下に示す。ヒトDC融合のプロセスに適合させるために予期される融合プロトコールに有意の変化はない。
【0139】
材料及び方法
細胞培養:ネズミ(C57BL/6)MC−38及びMB49細胞を、10%の熱不活性化子ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100ユニット/mlのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシを補充したDMEM内に保持した。MC−38及びMD49細胞は、MUC1 cDNAで安定にトランスフェクトされ、MC−38/MUC1及びMB49/MUC1細胞系を作成した。
【0140】
DC/腫瘍細胞融合:ネズミ骨髄誘導樹状突起細胞を、Gongら、1997、Nat.Med.,3(5),558−561に記載の方法に従って、調製した。腫瘍系と非粘着性DCsの融合は、Ca2+又はMg2+を除いた、pH7.4のDulbeccoのPBS内、50%PEGを加えて行われた。融合細胞をHAT培地(Sigma)存在下、24穴プレートに10−14日間、塗布した。HATは、融合した細胞が選択的に成長すると言う利益を提供する。さらに、融合細胞が穏やかなピペッティングで取り外されるのに対して、非融合細胞はプレートに固く付着したままである。DCs及びMC−38細胞の融合は、FC/MC−38と表され、DCsとMC−38/MUC1細胞の融合は、FC/MUC1と表される。
【0141】
免疫化:MUC1.Tgマウス(MUC1にトランスジェニック、Rowseら、1988、Cancer Res.,58,315)を、100Gy電離放射線に晒した1x106MC−38/MUC1細胞を、0日及び7日に、皮下注射した。腫瘍予防研究のために、FC/MUC1融合細胞(5x105)を、1日及び7日に、皮下注射した。
【0142】
CD8+T細胞系の生成及び細胞毒性アッセイ:リンパ球細胞を、5ユニット/mlのMUC1抗原を含むRPM1 1640完全培地内に懸濁した。ネズミIL−2(10ユニット/ml)を培養5日後に加えた。10日及び15日に、5ユニット/mlのMUC1抗原及び抗原提示細胞として1:5照射(30Gy)の同系の脾臓細胞細胞で再刺激した。死滅細胞を除去するためにフィコール遠心分離し、残留APCsを減らすためにナイロンウールを通した後、T細胞培養物を標準51Cr−遊離アッセイで分析した。
【0143】
結果
DCs、MC−38/MUC1腫瘍細胞及びMC−38/MUC1−DC融合細胞(FC/MUC1)を含む表面マーカー発現のFACS分析を図1に示す。融合細胞を、MHCI、MHCII、B7−1、B7−2及びICAM−1を含むDCマーカーのすべてを備えていることは容易に明らかであるが、MHC1を除いて、マーカーのいずれもが親のMC−38/MUC1細胞内でアップレギュレートされない。このことは、融合細胞のDC様の「隠された」形態と矛盾しない。さらに、また、融合細胞は、腫瘍抗原MUC1を親腫瘍細胞と同じ高レベルで発現するが、MUC1発現は、親DCs内では検出されない。このように、融合細胞で認められる遺伝子発現パターンは、個々の親細胞集団で認められる発現パターンの混成物であるが、重要なことに、強力なAPC機能性を授けると信じられているDCマーカーの発現レベルは維持されている。
【0144】
また、融合細胞(FC/MUC1及びFC/MC−38)でのMUC1トランスジェニックマウス(MUC1.Tg)のワクチン接種は、腫瘍の再挑戦に対して強力で特異的な防御を供するが、一方で照射MC−38/MUC1細胞をワクチン接種されたマウスは、再挑戦時に腫瘍を発生した(表1)。これら動物は誕生からMUC1抗原を寛容に受け取っていたため、このことは、融合細胞の免疫刺激能力をはっきりと証明している。融合細胞は、MB49細胞に対する防御を提供しないので、この逆の寛容性及び付随する腫瘍防御が特異的であることを示している。
【0145】
【表1】
【0146】
さらに、FC/MUC1ワクチン接種マウスからのCD8+ リンパ節細胞は、MC−38細胞、MC−38/MUC1細胞及びFC/MUC1細胞を溶解する能力を持っていたが、MUC1(−)同系腫瘍系MB49は、溶解されない(図2)。ナイーブマウスからのリンパ節細胞は、MC−38、MC−38/MUC1、又はMB49細胞を溶解できなかった。合わせると、これらのデータは、融合細胞によって供給される腫瘍防御は、免疫エフェクター細胞の教育によって仲介され、これらのエフェクター細胞は親腫瘍細胞を溶解することができることを、意味している。親腫瘍細胞でのワクチン化が結果として強力なCD8+ 抗腫瘍応答を生じないが、免疫応答を融合細胞で刺激する場合、MC−38細胞は有効な標的であり排除されることに着目することは興味深い。
【0147】
これらの研究は、本発明の実用性を証明している。即ち、DC融合は、専門的APC環境状況に於いて、腫瘍細胞によって発現される抗原を提示することによって、免疫エフェクター細胞を教育することができる。このデータから(1)ネズミDCsをネズミ腫瘍細胞に融合する一般方法は、ヒト腫瘍細胞へのヒトDCsの融合に適用され、そして(2)ヒトDC融合細胞は、in vitroで抗腫瘍免疫エフェクター細胞を引き出す強力薬剤であり、その生成物は、治療薬(例えば養子T細胞トランスファー)として、又は腫瘍排除抗原の姿をさらに特徴化するために、直接用いることができる。
【0148】
先行する議論及び実施例は、単に技術を説明するつもりのものである。当業者には明らかなように、様々な修飾を、本発明の精神及び範囲から離れることなく、上記の様に作り出すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
教育され、ハイブリッド細胞を犠牲にして培養物中で拡大された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、ハイブリッド細胞が1以上の抗原を発現する細胞へ融合された抗原提示細胞(APC)を含む、上記集団。
【請求項2】
抗原提示細胞が樹状細胞(DC)である、請求項1に記載の集団。
【請求項3】
1又は複数の抗原を発現する細胞が腫瘍特異的である、請求項1に記載の集団。
【請求項4】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項1に記載の集団。
【請求項5】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項1に記載の集団。
【請求項6】
ハイブリッド細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項1に記載の集団。
【請求項7】
遺伝的修飾がポリヌクレオチドの導入を含む、請求項5に記載の集団。
【請求項8】
ポリヌクレオチドが、ペプチド、リボザイム又はアンチセンス配列をコードしている、請求項7に記載の集団。
【請求項9】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が自己由来である、請求項1に記載の集団。
【請求項10】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が同種異系である、請求項1に記載の集団。
【請求項11】
教育され、ハイブリッド細胞と一緒に免疫エフェクター細胞を培養することによって生産された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、ハイブリッド細胞が1以上の抗原を発現する細胞へ融合された抗原提示細胞(APC)であり、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞を犠牲にして拡大されたものである、上記集団。
【請求項12】
抗原提示細胞が樹状細胞(DC)である、請求項11に記載の集団。
【請求項13】
1以上の抗原を発現する細胞が腫瘍特異的である、請求項11に記載の集団。
【請求項14】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項11に記載の集団。
【請求項15】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項11に記載の集団。
【請求項16】
ハイブリッド細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項11に記載の集団。
【請求項17】
遺伝的修飾がポリヌクレオチドの導入を含む、請求項15に記載の集団。
【請求項18】
ポリヌクレオチドが、ペプチド、リボザイム又はアンチセンス配列をコードしている、請求項17に記載の集団。
【請求項19】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が自己由来である、請求項11に記載の集団。
【請求項20】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が同種異系である、請求項11に記載の集団。
【請求項21】
免疫エフェクター細胞がナイーブである、請求項11に記載の集団。
【請求項22】
免疫エフェクター細胞が教育されたものである、請求項11に記載の集団。
【請求項23】
免疫エフェクター細胞が、サイトカインの存在下においてハイブリッド細胞と一緒に免疫エフェクター細胞を培養することによって生産されたものである、請求項11に記載の集団。
【請求項24】
サイトカインがIL−2である、請求項23に記載の集団。
【請求項25】
抗原特異的免疫エフェクター細胞を生産する方法であって、有効量のハイブリッド細胞中で免疫エフェクター細胞を培養することを含み、このとき、ハイブリッド細胞が1以上の抗原を発現する細胞へ融合された抗原提示細胞(APC)を含み、抗原特異的免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞を犠牲にして生産されたものである、上記方法。
【請求項26】
APCが樹状細胞(DC)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
DCが血液、骨髄又は皮膚に由来し、免疫エフェクター細胞が腫瘍組織に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
1以上の抗原を発現する細胞及び免疫エフェクター細胞が、腫瘍から富化されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が自己由来である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が同種異系である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
免疫エフェクター細胞がナイーブである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
免疫エフェクター細胞が教育されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
免疫エフェクター細胞を有効量のサイトカインの存在下において培養することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
サイトカインがIL−2である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1又は請求項11に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団によって認識される抗原をコードしている遺伝子のフラグメントを識別する方法であって、
(a)請求項1又は請求項11に記載の第一細胞集団であって同一の主要組織適合性複合体(MHC)拘束性を有する細胞、及び第一細胞に適合しうる主要組織適合性複合体(MHC)を有するが抗原を発現しない1以上の第二細胞を提供し;
(b)請求項1又は請求項11に記載の第一細胞集団によって示される抗原中のペプチド配列モチーフをコードしているポリヌクレオチドを識別し;
(c)1以上の第二細胞と比較して、第一細胞によって異常に発現されるポリヌクレオチドを識別し;そして
(d)工程(c)で識別されるポリヌクレオチドを工程(b)で識別されるポリヌクレオチドモチーフと比較し、免疫エフェクター細胞によって認識される抗原をコードしている遺伝子のフラグメントを識別することを含む、上記方法。
【請求項36】
工程(b)の前に工程(c)を行う、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1又は請求項11に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団によって認識される抗原中に存在する配列モチーフをコードしているポリペプチドを識別する方法であって、
(a)請求項1又は請求項13に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の細胞集団であって同一の主要組織適合性複合体(MHC)拘束性を有する細胞集団を提供し;そして
(b)免疫エフェクター細胞によって認識される抗原中の配列モチーフをコードしているポリペプチドを識別することを含む、上記方法。
【請求項38】
請求項1又は請求項11に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団及び薬学的に許容しうる担体を含むワクチン。
【請求項39】
請求項11に記載の方法による抗原特異的免疫エフェクター細胞を含むワクチン。
【請求項40】
請求項35に記載の方法によって識別される抗原を含むワクチン。
【請求項41】
請求項37に記載の方法によって識別される抗原を含むワクチン。
【請求項1】
教育され、ハイブリッド細胞を犠牲にして培養物中で拡大された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、ハイブリッド細胞が1以上の抗原を発現する細胞へ融合された抗原提示細胞(APC)を含む、上記集団。
【請求項2】
抗原提示細胞が樹状細胞(DC)である、請求項1に記載の集団。
【請求項3】
1又は複数の抗原を発現する細胞が腫瘍特異的である、請求項1に記載の集団。
【請求項4】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項1に記載の集団。
【請求項5】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項1に記載の集団。
【請求項6】
ハイブリッド細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項1に記載の集団。
【請求項7】
遺伝的修飾がポリヌクレオチドの導入を含む、請求項5に記載の集団。
【請求項8】
ポリヌクレオチドが、ペプチド、リボザイム又はアンチセンス配列をコードしている、請求項7に記載の集団。
【請求項9】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が自己由来である、請求項1に記載の集団。
【請求項10】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が同種異系である、請求項1に記載の集団。
【請求項11】
教育され、ハイブリッド細胞と一緒に免疫エフェクター細胞を培養することによって生産された抗原特異的免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団であって、ハイブリッド細胞が1以上の抗原を発現する細胞へ融合された抗原提示細胞(APC)であり、教育された抗原特異的免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞を犠牲にして拡大されたものである、上記集団。
【請求項12】
抗原提示細胞が樹状細胞(DC)である、請求項11に記載の集団。
【請求項13】
1以上の抗原を発現する細胞が腫瘍特異的である、請求項11に記載の集団。
【請求項14】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項11に記載の集団。
【請求項15】
抗原特異的免疫エフェクター細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項11に記載の集団。
【請求項16】
ハイブリッド細胞が遺伝的修飾のされた細胞である、請求項11に記載の集団。
【請求項17】
遺伝的修飾がポリヌクレオチドの導入を含む、請求項15に記載の集団。
【請求項18】
ポリヌクレオチドが、ペプチド、リボザイム又はアンチセンス配列をコードしている、請求項17に記載の集団。
【請求項19】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が自己由来である、請求項11に記載の集団。
【請求項20】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が同種異系である、請求項11に記載の集団。
【請求項21】
免疫エフェクター細胞がナイーブである、請求項11に記載の集団。
【請求項22】
免疫エフェクター細胞が教育されたものである、請求項11に記載の集団。
【請求項23】
免疫エフェクター細胞が、サイトカインの存在下においてハイブリッド細胞と一緒に免疫エフェクター細胞を培養することによって生産されたものである、請求項11に記載の集団。
【請求項24】
サイトカインがIL−2である、請求項23に記載の集団。
【請求項25】
抗原特異的免疫エフェクター細胞を生産する方法であって、有効量のハイブリッド細胞中で免疫エフェクター細胞を培養することを含み、このとき、ハイブリッド細胞が1以上の抗原を発現する細胞へ融合された抗原提示細胞(APC)を含み、抗原特異的免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞を犠牲にして生産されたものである、上記方法。
【請求項26】
APCが樹状細胞(DC)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
DCが血液、骨髄又は皮膚に由来し、免疫エフェクター細胞が腫瘍組織に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
1以上の抗原を発現する細胞及び免疫エフェクター細胞が、腫瘍から富化されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が自己由来である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
APC及び1以上の抗原を発現する細胞が同種異系である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
免疫エフェクター細胞がナイーブである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
免疫エフェクター細胞が教育されたものである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
免疫エフェクター細胞を有効量のサイトカインの存在下において培養することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
サイトカインがIL−2である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1又は請求項11に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団によって認識される抗原をコードしている遺伝子のフラグメントを識別する方法であって、
(a)請求項1又は請求項11に記載の第一細胞集団であって同一の主要組織適合性複合体(MHC)拘束性を有する細胞、及び第一細胞に適合しうる主要組織適合性複合体(MHC)を有するが抗原を発現しない1以上の第二細胞を提供し;
(b)請求項1又は請求項11に記載の第一細胞集団によって示される抗原中のペプチド配列モチーフをコードしているポリヌクレオチドを識別し;
(c)1以上の第二細胞と比較して、第一細胞によって異常に発現されるポリヌクレオチドを識別し;そして
(d)工程(c)で識別されるポリヌクレオチドを工程(b)で識別されるポリヌクレオチドモチーフと比較し、免疫エフェクター細胞によって認識される抗原をコードしている遺伝子のフラグメントを識別することを含む、上記方法。
【請求項36】
工程(b)の前に工程(c)を行う、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1又は請求項11に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団によって認識される抗原中に存在する配列モチーフをコードしているポリペプチドを識別する方法であって、
(a)請求項1又は請求項13に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の細胞集団であって同一の主要組織適合性複合体(MHC)拘束性を有する細胞集団を提供し;そして
(b)免疫エフェクター細胞によって認識される抗原中の配列モチーフをコードしているポリペプチドを識別することを含む、上記方法。
【請求項38】
請求項1又は請求項11に記載の抗原特異的免疫エフェクター細胞の集団及び薬学的に許容しうる担体を含むワクチン。
【請求項39】
請求項11に記載の方法による抗原特異的免疫エフェクター細胞を含むワクチン。
【請求項40】
請求項35に記載の方法によって識別される抗原を含むワクチン。
【請求項41】
請求項37に記載の方法によって識別される抗原を含むワクチン。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2009−195235(P2009−195235A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102653(P2009−102653)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2000−528295(P2000−528295)の分割
【原出願日】平成11年1月25日(1999.1.25)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【出願人】(500204740)ダナ−ファーバー キャンサー インスチチュート インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2000−528295(P2000−528295)の分割
【原出願日】平成11年1月25日(1999.1.25)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【出願人】(500204740)ダナ−ファーバー キャンサー インスチチュート インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
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